少女不満足 (39)

よう!お前ら!
以前に球磨川君の物語を書いていた者です。
きっと貴方が思っているよりも駄文なのでご注意下さいませ。
大体週に一本上げられたらいいかなという感じで、
ゆったりと進めていきたいと思うのでよろしくお願いします。
ではでは。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368901319




あの本を書くときに、十年掛かった。

あれから一年が経つ事となるのだろう、正確にはあの本の終盤から考えると一年と数カ月となるのだが、それ位は許容範囲として見てほしい。

一年、感慨深いのだろうか。

あんな風に自分のトラウマというものをもの惜しげなく余す所なく出版しておきながら、そういう感情に浸るなどと失笑されてしまうかもしれないが。

正直この一年で変わったことと言えば特にこれと言ってない、あれから一年経ったというのに、いや、あれから十一年経っても何一つとして変っていなかった。

あのトラウマから、人間として何一つとして成長した気が余りないというのは、やはり僕が捻くれているからだろうか、

一年間で人が変わるだなんてそれこそありえない、まるで小説のような話ではあるが、それでも、十一年で人が変わらないなどと、そちらの方が小説のようだ。

現実なのに。

僕はあの頃から変わらず、いつも通りに朝五時に起きて執筆を始める、今だ十一年前からのスタイルを、ルーチンワークを、捨てきれていない、それどころか悪化している。

情けないが、朝五時に起きる事が出来なければ小説を書く事が出来ない、一年前まではそう思っていた、いや、そうだったのだが、今は違う、

書く事が出来ないどころか、落ち着かない、まるで中毒のようだ、書きたいのに書けない、何というか、一日限りのスランプというような感じで、

不思議な感覚になってしまう、あのトラウマを書いた小説で、僕は『いっそのことスランプになってしまえ。』などと言ってはいたけれど、今思うと、

なんて馬鹿な事を言ってしまったのだろうと思う、オーバーワークなんてものじゃあないが、そこまでじゃないが、それでも書かなかったら一生書けないのではないかと思う程である。

これでは本当に変人だ、変人を気取るというよりも、そのものだ。

話がそれてしまったが、十一年で変わったことと言えば、きっとその程度の事だろう、一年前に僕の担当編集が変わったことを含めなかったら、なのだが。




一年前、僕の担当編集者が寿退社をしてしまい、担当編集者が変わった、夕暮誘、若くして入社、期待の新星などとレッテルを張られてしまっている可哀想な彼女だが、

どうやら自分から僕の担当編集になると迫ったようで(もちろん、彼女の優秀さと努力家な所も又、相まって、らしいが)だがしかし、そんな気楽に僕の担当編集者になったのが最後、

彼女の運も実力も、ここで尽きるかと思われたりもしていたらしい、実際に少なからずそういう気も僕にはあった。

しかし、驚く事に彼女の優秀さは群を抜いていて、それは僕が思っていた以上であったのもまた事実なのだが、最近はよく、僕の家に入り浸っていたりする、

無論、僕が強いている訳ではない、断じてない、絶対にない、僕の尊厳と彼女の身の潔白の為にも、言わせてもらおう、断言させて貰おう、彼女は決して、誓って、

そういう関係性ではなく、そんな小説のような関係ではなく、担当と作家、それ以上でも、それ以下でもない、もっというなら僕からしてみれば担当編集者以上、担当編集者以下、という所なのだ。

そして彼女から言わせてみれば。

「私がちゃんとしなければ、柿本先生の本が読めなくなっちゃいますから。」

「それは嫌です、から。」

どうにも期待されているようだ、その時僕は苦虫を噛み潰したような顔をしていたとかしていないとか、
いや、また、そんな小説のような表現をしてしまったが、要は、簡単に言って、とても嫌な顔をした。

僕は人に期待されるのが一番嫌なのだ、だからその時はそういう顔をしてしまったのだが、その時の彼女の怒り様と言ったらなかった、人生で初めて、

笑いながら、笑顔のまま、微笑みながら静かに怒るというのはああいう事を言うのだろうか、それとも、ただ彼女が異質なだけだったか。

僕はそれを見た。

それでも、きっとそんな彼女を見て小説に使えると思った僕は完全に変人そのものだった。うん。

その後僕がこっ酷くお叱りを受けたのは言うまでもない。




「先生、柿本先生。」

そんな風に、僕は平坦な声の元、なだらかで、声のトーンが一段と低い声で、耳元に響く。

僕は稀にだが、極稀に、執筆中にふと寝てしまう事がある、どうしてかは知らないのだが、机の上で結構無理な姿勢で寝てしまう、
(寧ろ机で無理無く寝れる人が居たら教えてほしい、そしてその方法をどうか僕に伝授してほしい。)

それは良いとして、結構に揺らされて起こされた僕は、子供の様に不機嫌であった、

勿論揺らされて起こされたことに対して怒っているのではなく、ルーチンワークが達成できなかったことに対しての怒りだったのだが。

流石に誘に向かって八つ当たりするなどという事は全くなく、それをよく理解していた誘は、僕にホットミルクを勧めてくれた。

「柿本先生、お話の方はどうですか?」

「流石は、先生ですね、ほとんど出来ているじゃないですか。」

……ちなみにあと二百ページは書くつもりなのだが、やはり今まで書いてきた作品が作品だったか、数百のページをそんな軽く扱ってくれる。

そんな風に生き生きとされると、なんだかこちらが申し訳なくなってくる、今まで一年間で彼女に渡した原稿は単行本にして約三本分程、

今はいろいろと企画が進んでいるのでそちらにも足を運んでいたりするのだが、どちらかと言えばそれはまた別の話なので今回は省く事とする。

それはそうと、寝起きの僕は何と言ったか、他愛無い挨拶とさり気にもう少し時間が掛かる事を言っていたと思う。
それを聞くと彼女は、誘は、

「ええ、それは全然構いませんよ、最も、柿本先生の締め切りは本当はもっと長いんですから。」

「体には、もっと気にかけてくださいね。」

「先生には、私がいますけど。」

僕は正直に反論もできないので素直に返事を返す、ただ、締め切りに関してしまえばどうしようもないような気がする、僕は好きで変人なのだから、

僕は好きでこのルーチンワークを気に入って実行に移しているのだから。
正直に言ってしまえば好きでルーチンワークをしている訳では正確に言えば違うような気がしないでもないのだが。それはいいとしよう。

そういう性分なのだ、それで体を壊すのは頂けないが、それもまた仕方がないだろうと思う。あくまでも思うだけだ。口に出してしまえばまた怒られるので言わないで置く。

それでは、後日談をしよう、今回この話を書く事となった原因、小説に描ききれなかった今から遡る事十一年前、あのトラウマ、あの小説の後日談、お話の裏、

少女UがU・Uが夕暮誘として、

社会復帰した原因を、彼女が、夕暮誘は、

幸せに暮らしているという事を、夕暮誘は変わった変人で、異質であり続け、異様でありながらに、人一倍、幸せになっているという事を。

これは決して僕達が、

僕と誘が話し合って決めたわけではないし、

誘から言い出したわけではない、

これは僕の自己満足だ、

きっと誰も得などしないことなど分かり切っているが、

それでも、僕は皆に言っておきたいのだ、十一年前の様に、

どんなに変わっていようとも、幸せになって良いんだよ。と。

はい、導入はここまでとなります、恐らく章番号20以内には終わると思うので、軽く暇潰しにでも見て頂けたら幸いです。
多分シリアスにはならないと思います、あくまでも、自己満足で終わるので。
誘ちゃんが幸せななんでもいいや、そんな気分で書いて行きます、どうかお付き合い下さいませ。
それではまた来週にでも。

今週のエンドカードという名の落書き
http://uproda.2ch-library.com/665600wVz/lib665600.jpg

少女不十分は中々に面白いとは思いますがだからと言って全員が全員面白いとは思えないはずです、
西尾さんも言っていましたがね、抽象画のようなもので誰でも解釈が違ってくるのがそれだという風に私は思っています
とはいえ、紅いものを蒼いと言い切ることなどできない事かもしれませんが。
それでは投下を始めていきます




勿論僕が夕暮誘の幸せなど知らない、

あれだけの大見えを切っておきながら恥ずかしい限りなのだが、彼女が今、幸せなのかどうかも分からない。

しかし僕からの目線で、僕から見て、彼女はよく笑うようになった。

にこやかに、健康的に、十一年前は思う事さえできなかっただろう。

正直な所、彼女と初めて食事をした時までは彼女に感情があるのかどうかさえも分からなかった所だ。

一年前、担当が変わった時に、彼女の笑顔を初めて見た、

年相応に笑う彼女を見て、

ああ、きっと彼女は、夕暮誘は幸せになる権利を手に入れる事が出来たのだろうと、

心の底から思う事が出来た、よかった、と。

しかし、これだけ言っておきながら、あの小説にも書いたことなのだが、

本当に彼女は不自由帳から解放されたのかというと、実の所少しばかり疑問が残るところである。

誘は、時に隠して時に惜しげも無く恥ずかしげも無く、不自由帳の通りの事をする、勿論僕が全ての内容を覚えている訳ではない。

十一年前の事なのだ、その辺はご了承願いたい、

勿論あの時の様に、普通の人はそうそう交通事故を目の当たりにはしないので、

ゲームをセーブしてから友人に駆け寄るなどという事を今するのかどうかは分からない。

分かりたくもないが。




例えば、彼女は自分のお茶を注がない、

これは余り妙には思われないが、どうしてか彼女は自分で自分の飲み物を注いでこない、

無論の事だが少し訂正すればハッとしたように忙しなく注いでくる。

先程あったように彼女は僕にホットミルクを勧めてはくれたが、彼女が持っていたカップ数は一つだった。

例えば、彼女はお土産というものをよく知らない、

彼女自身が貰った事が無いのか、それともあの親が与えなかったのか、定かではないが。

この前、僕が友人から地方に行った時のお土産を貰うのを不思議そうに見ていた。

これもちゃんと説明したら納得してくれた、十一年前に一万円を説明した時を何となく思い出した。

勿論このように全てが悪い訳ではないし、むしろ良い事だってある、

『人の話を聞く事』

『自分で出来る事はちゃんとすること』

その他にもあったかもしれないが、余り思い出せない。

それに彼女にとっても十一年前は嫌な思い出でもあるらしい、皆さんもあるのではないだろうか、

子供のころに信じていたことを大人になって後悔するというのは。

勿論、僕にだってある、あの時はなぜあんな行動に出てしまったのか、なに口走ってんだよ、と。

いや、僕の話などどうでもいい、誘の話だ、彼女は健啖家であることをどうやら恥ずかしく思っているらしい、

別段僕としてはそれが恥ずべきものなのかどうかはともかくとして、

彼女にその話をすると赤面して否定してくる、その他にあるとしたら、僕があの約一週間で、恐らく一番傷ついた『臭い』の一言、その話をすると、

それはもう、恥ずかしいというよりかは、怒っているように。

というか、僕は何だか彼女に怒られることが多いような気がする、それほど僕の信用は無いのだろうか、今度聞いてみる事としよう。

うん、そういえば、もう一つだけあった、恐らく不自由帳とは関係なんてないんだろうが、誘は一度たりとも僕に別れの挨拶を言わない、十一年前から、

さようなら、と。




さようなら、またね、バイバイ、彼女は別れの言葉という言葉を一切言わない、

これは今気付いたことなので余り確証も何もないのだが。

いや、流石に一度もという事は無いだろう、それは無かった筈だ、多分、これもまた、確証が無い、確かじゃない。

逆に考えてしまうと、逆に言うと、不自由帳には挨拶の事に関しては厳しく、

それこそ一つ残らず、一つたりとも取り残らず、あの自由帳に書かれていたはずだ。

それを考えると、やはり彼女は、あの不自由帳から、解放されつつあるのではないか?それは喜ぶべき事なのだろう、

どう考えても異質なものより普通であった方がいい、普通で、何ら変わりなく、人生を過ごせるのなら、断然そちらの方がいい。

きっと彼女にとってはそれが一番なのだろう。

また話が逸れてしまった、修正しよう、

僕と誘の関係を、遡る事一年前、担当が変わったあの時、あの瞬間、取り敢えず、まずはそこから話を始めよう——

十一年前、僕は十年ぶりに彼女に会った、少女U・Uはその面影を残して、とても綺麗に、なっていた。

「こんにちは。私は夕暮誘と言います」

「先生の作品を、子供の頃からずっと愛読していました。こうしてお会いできて、とっても嬉しいです。これからよろしくお願いします。」

「楽しいお話を、たくさん聞かせてくださいね」

そう、彼女は丁寧に、懇切丁寧に、挨拶をした、

ああ、何と返そうか、久し振り?——いや、こんにちは?——いや、意表をついてこんばんわとでも?——否、

「初めまして」

と、僕は夕暮誘に、挨拶をした。




…………正直、とても苦々しく思った、

意気揚々とした彼女を前に、僕はほんの十秒前まで逃げ帰ろうとしていたのだ、それはもう、重々しい空気と言ったらなかった。

空気に押しつぶされる、という表現がある、

まさか自分が味わう事になろうとは思ってもみなかった、一体彼女とは何から話したらいいのだろうか。

「柿本先生、まずはこっちに」

忘れてしまっていたが、ここは都市ホテル内のロビーなのだ、大の大人が二人も揃って何をしているのだろうか、

誘はソファーの方に手を差し伸べて催促してくる、

僕はどちらかと言えば下座に座りたいのだが、恐らくは不自由帳に、

いや、どうだろうか、いくらなんでもそこまであの親は誘に求めたのだろうか?

今となっては確かめようもない事実となってしまった、が、そんな事を心配する前に、彼女は眼の前の椅子に座っていた、

上座と下座の間は何と言ったか、それに関してはどうでもいい。

多分資料を広げるとしたらそこが一番最適だったのだろう、僕は遠慮なく下座に座らせて貰う事とした。

読者の皆様に担当受け継ぎの場面を見せることなどできないので、ここからは割愛させていただく事とする。

その間も、僕は一つ聞きたかったことがある、これまでの生活の事、ではなく、どうして担当編集を目指したのか、である。

僕はそれを聞く事とした、

どうしてこの世界に入ったのか。と、世界、という程大きくも無いしそこまでして聞く事でもなかったかもしれない、

無理に聞く事でもなかったかもしれないと、今になって思うが、その時、珍しくも僕は後先を考えずに行動をしていた。

それを聞いた誘は、少し困ったような顔を見せた、十年前にも、こんなことがあったような。

「……私は、あの後、少し迷っていました。どうすればいいのか、海外にまで行って、一体どうしたらいいのか、そしたら、見つけたんです」

十年前のお話を。




誘はゆっくりと、語りだした、それは、もう一度自分に聞かせるように、一つ一つを確かめるように。


言葉だけを頼りにかろうじて生きている少年と世界を支配する青い髪の天才少女の物語を。


妹を病的に溺愛する兄と物事の曖昧をどうしても許せない女子高生の物語を。


知恵と勇気だけで地球を救おうとする小学生と成長と成熟を夢見る魔法少女の物語を。


家族愛を重んじる殺人鬼と人殺しの魅力に惹きつけられるニット帽の物語を。


死にかけの化物を助けてしまった偽善者と彼を愛してしまった吸血鬼の物語を。


映画館に行くことを嫌う男と彼の十七番目の妹の物語を。


隔絶された島で育てられた感情のない大男と恨みや怒りでその身を焼かれた感情まみれの小娘の物語を。


挫折を知った格闘家と挫折を無視する格闘家の物語を。


意に反して売れてしまった流行作家と求職中の姪っ子の物語を。


奇妙に偏向した本読みと本屋に住む変わり者の物語を。


何をしても失敗ばかりの請負人とそんな彼女に好んで振り回される刑事の物語を。


意志だけになって生き続けるくのいちと彼女に見守られる頭領の物語を。


英雄と貶された少年と聞こえるものが聞こえない少女の物語を。


十年前のお話を、思い出したんです。と。

彼女は、懐かしむ様に、笑顔で僕に向かって、

「幸せに、なってみてもいいのかなって、思ったんです」

幸せ、僕には一体何が彼女の幸せになるかが分からない。

それでも、彼女は自分で自分の道を、普通の道には乗れなくとも、歩めなくとも、自分の道を歩んでいた。

今週分の投下はこれで終わりとなります、どうやら上手く行けば再来週位には終われそうです、
今だ書きたいものもたくさんあるので、どんどん早く書けて行けたらとは思っているところです。
そういえば、やはりというかなんというか、自分で書いていて思ったのですが、
テンポが速すぎではないかと少しばかり心配になっていたりします。
改善点があったら遠慮なく言っていただけたら出来るだけ対応したいと思いますのでよろしくです。
それでは、また来週にでも。


しかしまたなんというマニアックな……俺得過ぎるぜ!

面白いよ!

ただ、句読点の使い方は統一してほしいかも。

やってしまった……>>12
十一年前、僕は十年ぶりに彼女に会った

の所ですが、

一年前、僕は十年ぶりに彼女に会った
ですね、十一年前の十年ぶりって二十一年前になってしまう、いい大人どころかおっさんじゃねえか。
まだまだ修行が足りませんね。

>>16
そう言って頂けるとこちらも嬉しいです。

>>17
何だか書いてて初めて面白いといわれたような気がする、
句読点は原作基準の方でやって行こうと思います、急に変えてすみません。

こんな時間に眠たい私です。
最近少女不十分なりに考えてはいるのですが、
ネタが切れるかも知れない(;=ω=)
そうなったらそうなったで考えましょう。




きっと僕の小説だったのならば、

ここで小説そのものが終わっているか、それとも展開が五転六転でもしているのだろう。

けれどこれは現実なのだ、紛れも無く、

現実、しかし十一年前とは違う、少女の幸せを願う物語ではない、

夕暮誘の、少女Uではなく、現在の彼女の幸せを描く物語なのだ、

展開に山も無ければ落ちも無いければ、起承転結も無い、ぐだぐだに歩んで、

それでも意味のある物語になればと心から思う、捻くれず、真っ直ぐとして、そう切に願う。


10

あれから一カ月が経過していた頃だと思う、今から振り返れば一年と二カ月前ほどの事だった、

初めに誘自身が僕の家に直接来ることに少なからずも驚いた僕だったが、

(あの小説にだって書いていることだが、僕の小説はデータとして東京にある出版社へと送る、勿論CDに焼いてパッキングすることを忘れない、

僕が実際に出版社に行くのはあくまでも急ぎの仕事のときだけである、それでもいまだその時が来た回数と言えば少ない、

無論少ないに越したことはないのだが。)

それもまた、違和感が無くなっていったというか、慣れとは恐ろしいものである、

いや、こんな風に書いてしまったらそれこそ都合の良い小説のようではないか、

それは違う……と思いたい、

いや確かにそれこそ現実なのだが、これ以上に言いえて妙な言葉が思いつかない、要は私の力量不足なのだが、

慣れとは恐ろしい、久々に実感した瞬間であった、

今思うとあの時どうして僕は何も感じなかったのだろう、恐ろしいと言うよりかは、怖いくらいに。

ともあれ、一カ月の間に、僕と誘の仲が進展するという事は余りなく、それどころか距離を置いていたように思う、

まあ無理も無い、僕は僕で未だぎこちなく、あの時を恥じていたのだ、

僕が十一年前、彼女に言った言葉を、忘れていたことなど断じてない、

あの事件は僕にとってのトラウマであり、(正確にはもう僕の中では物語として昇華してしまっているようなものなのだが。)

僕にとって忘れる事の出来ない出来事だという事を、

一年前にそう言ったはずだ、むしろ忘れるものか、あれ程僕は大見得を切って、彼女に誇らしげに、

「幸せになってもいいんだ」

なんて言ってしまったのだ、

誘はとっくに幸せだったのかもしれないのに、そういう所はやはり僕だった、僕らしく、どこまでも僕だった。

何時までも気にすることではないと、そう思っているのは確かだが、

兎も角、僕はその時誘を嫌ってなどいなかったが、少なくとも苦手だった。


11

僕には嫌いなものは少ないが、苦手意識を持つ物はとても多い、

食べられない訳ではないが、余り食べたくはないものなどがそうだ、

苦手は克服できる、嫌な物でもそうだが、苦手の方がどちらかと言えば克服しやすく、

(そして僕は誘の事を決して嫌いではなかったので、今回は苦手意識、と言わせてもらう。)

だからと言ってとても馴れ馴れしくあった訳ではないのだが、昔からの付き合いがあるような、

そんな何とも言い様の無い居心地の良さを感じてしまっていたのは、間違いであったのだろうか。

僕はいよいよにも彼女の変質を、彼女の異様を、受け取り、いや、取ってはいなかったかもしれない、

もしかしたら僕の知らない間に何処かに落っことしている可能性だってある。

その場合は、また誘に謝らなければいけないだろう、彼女はきっと心の底から分からないだろうが、そういう表情をするのだろうが。

僕は彼女の異質を受け入れていた、理解は出来なかったかもしれない、それだろうと彼女の事を確かに思ってはいた。

三カ月、三カ月である。

僕が誘と出会い、克服し、親しんだ、(と思う、確信は無い。)

あの衝撃的な出会いから、一カ月後の二カ月間、少々描写に困る部分もあるのだが、

きっと一番彼女の話が尽きないのはここだと思うので、それを考えてみると、少しばかり初々しいかも知れない、

(初々しいなどと言うと他の極一部の人たちに迷惑や期待を持たせるようなことになってしまうが、勿論上記に書いたように、

僕と誘の関係は、担当者と執筆者、作家と担当なのだ、それ以上でも無ければそれ以下でもない、それはどうか、分かって欲しい。)

そんな初々しい僕と彼女の二カ月間を、そこから、

取り敢えずは描いて行こう。

うん。書き込みが全く足りないね、うん。
やっぱりというか危惧していた事態が起きそうです、ネタが無い。
元々私は今まで投稿してきたペースはおおよそ週に二回、
>>2から>>4までを大体二時間程度で仕上げるという具合に遅いのですが、
今回四日も書かなかったせいなのか筆がさらに遅く磨きがかかるという具合になりました。
スランプにはなりたくはないものです。ネタも尽きたくは無いものです。
思考が低下して来て一体何書いているか分からなくなって来た所で、
また今週にでも。

1から11まで見返しましたけど、書く書く詐欺になっているような気がしてならない……
なるべく可及的速やかに誘を幸せのどん底に叩き落としたいと思いますのでよければお付き合い下さい。

出来るだけ展開も更新もスピードアップできるように頑張りたい所です、


12

僕は職業柄、よく地方の取材に行くことが多い、北は北海道、南は沖縄というまで幅広くと言うまでは無かったけれど、

約三日間、移動時間を含め一週間足らずと言った所か。

今回向かうのは東北地方、とだけ言っておこう、

そこもまた暈さなければ、何処かで迷惑をかけてしまうための僕なりの配慮である。

「柿本先生!この季節にまだ雪が降っていますよ!」

やはり、若いとは良いものである、そう思ってしまったら負けだろうか、

僕も歳を取ったという事だ、十一年間、僕は変わる事が無くとも、歳だけは一丁前に取っているのだから笑えない、

最早清々しいと思えるのかもしれないが、未だ僕はその境地には立ってはいない。

しかし、誘を待たせる訳には行かないだろう、

先程から律儀に僕を待つ彼女の身体は、少しばかり震えている、温度差には流石の若さも勝てないという事か。

その姿には僕からしてみれば子犬のようであり、とても愛らしいものがそこにはあったが、

その時の僕にはさほどそうも思えなかった、

と書いてしまうと、

「先生にはそういうものを感じる感性が無いのですね」

と貶されてしまうやもしれないが、これには理由がある。

これは実に単純で、誘に耐えられなかった寒さに僕が打ち勝つこともできず、

そういう余裕が僕にはなかっただけである。

雪は綺麗だった。

「先生……私でも寒いのは分かりますけれど、早く来ないともっと寒いですよー」

さて、これ以上待たせるのも誘に悪い、早くに行こう。時間も少ないのだ。


13

僕達が向かったのは旅館だった、

和式の畳十二畳分くらいだったか、結構な広間だった、誘が言うには温泉の効能がいいらしいが、

それもまた、僕にとっては余りピンとこない、彼女も年頃という事だろうか、

「…………一応、先生の事も思ってこの旅館を選んだんですよ」

なんだか経費で落とすには勿体ない、申し訳ないと思う、

これもまた、誘の優秀さも合わさっているのだと考えるとさらに。

しかし来てしまったのなら十二分に堪能しなければ損というものだ。

そういう切り替えの早さも、僕の自慢の一つだった。

「先生、もう日も暮れていますし、今日の取材は……」

気が付くともう五時を回っている、元々一日目は移動日として取っておいたので何ら問題は無い、その事を誘に伝えると、

まるで少女の様に笑みを浮かべる。

「ああ!それは良かったです、

思ったよりも時間が掛かってしまってどうしようかと思っていたところでした……まだ夕食には時間があるみたいですし、

温泉に行きましょう、温泉に!」

彼女としてもとても楽しみだったのだろう、

その目は今までにないくらいに活き活きとしていた、温泉……何時振りだろうか、

なんだか感傷に浸ってばかりのような気がする、この感傷は、温泉で洗い流す事としよう。

「いや、温泉は、久しぶりですね……先生?」

ああ、そうだね、と返すと何処か少し赤みを帯びた頬で浮かべた笑顔を彼女は僕に向けた、

しかし僕はそれに気付けなかった。

しかし今回温泉へと向かう準備が早かったのは僕であり、そういう所でも男性と女性の準備の違いが出るのか、

と勘違いしていた所で、

誘は気まずそうに、僕に水着を差し出した、無論、男性用のである。

次回、衝撃の水着回!?

短いやもしれませんが出来る事なら毎日更新を目指していきたいと思います、
勿論R、つまりは規制の入る表現などは無いと願いたいです、やはりそこは人の感性によると思うので、
誤解されないようにも死力を尽くして頑張りたい所です、
ではまた今週にでも。

正直もうゴールしたい……終わりが見えない……(´・ω・`)


14

男性用の水着、どうして僕がそれが水着だと分かったかといえば、

それが新品でパッケージに楽しく泳いでいる親子と大きく描かれた『男性用』という文字がよく見えたからである。

いや、そんな事は関係あるまい。

どうして今、誘が僕にそんなものを差し出しているのかという事だ。

いやいや、勘違いをしてはいけない、これはもっと何かがあるはずだ。

そう、例えばきっと次に『明日一緒に海に行きましょう!』とか——

「明日……一緒に行ってくれますか…………?」

うん。やっぱり僕は捻くれている、それが再確認できた日だった。

次の日の朝、また戻ってくるであろうこの部屋に荷物を降ろし、最低限の物を持っていく、無論金銭類は半分にする。

誘にも同じ事を言おうと思ったが、余り自分の価値観を他人に押し付けるのもよくは無いだろう、

怒られたくも無いので、言わないようにした。

ちなみに旅館にはこんよくというよく分からない文字があったが、僕にはよく読めなかったのでスルーした。


15

青い空、美しい海、なんて語呂を並べれば、それはもう美しい風景が浮かび上がる事だろう、

それは当然、捻くれている僕にだって同じだ。それなりに美しいとは思うだろうし。

実際に綺麗だと思えたのでこれは良しとしよう。

別段僕が泳げない訳ではないので行っても良いと言ったのはいいけれど、どれくらい待っただろうか、


右腕に巻いた時計を見遣ると既に十分——

不意に首に物冷たい感触が、急の事なので吃驚してしまい、変な裏声が出てしまった、もう三十代なのに、

いい大人がなんて声を出しているのだ、情けない。

不満そうに後ろを見るといい笑顔の誘がいらっしゃった。溜息を吐くと冷たいお茶を差し出されたので。

受け取っておくとした、泳ぎについては何も言うまい、誘は初めての海だったそうでとてもはしゃいでいた、

泳ぎに関しては何も言うまい、一言添えるのなら、涙目だった、とだけ言っておこう。

日が上がりきる前に戻ったはいいが、まるで子供の様に——否、

僕から見ればいつの子供のようなものなのだけれど——子供の様に眠ってしまったので、

交通事故に遭わないように、安全運転で現地に向かうようにとタクシーを呼びとめた。

無論割愛だ。

という訳で六月ですね、発売日は何時だったか忘れましたけれど、
悲惨伝が発売となるので買わぬ訳にはいられないでしょう。
金が!
それでは今回で最終投稿とさせていただきます、長く苦しい戦いでしたが、
これもまた一つの糧となれたらいいなと思います、次回作も既に考えてあるので、
次に活かせられたらと思います。


17

僕としてはゆっくりと眠っている誘を起こさないようにと配慮したつもりだったのだが、

どうやら誘は現地にも行ってみたかったらしく、僕が帰ってくる頃には不機嫌そうな、

どころか明らかに不機嫌な誘が居座っていた、

(所がのちに話を聞いてみると取材よりも現地の特産品の方が目当てだったらしい、どういう特産品かは伏せておくが

僕はあんなものを口に入れたくはない、どうやら誘の健啖家っぷりは現在でもいかんなく発揮されるらしい)

そんな事を話すと、

「柿本先生は苦手なものが多すぎるんですよ、もっとちゃんと好き嫌いしないようにしましょうよ」

大人なんですから。子供に示しがつかない、とまで言われてしまった。

別に僕に子供に見せる事の出来る示しなんてものは特別にこれといっては無いので特に困りもしないのだが。

それに僕としては嫌いなものがあるのは普通の事なのだ、苦手であろうと嫌いであろうと。それが普通だと思う。

苦手だからこそ見えるものだってあるだろうし、勿論そんなものは屁理屈であり、

自分を正当化したいという思惑が見え見えなので、僕は何も言うまい。

説教と愚痴のようなものを聞かされているとすすり泣く様な音が聞こえてくる、

誘がいきなり泣き始めたのだ、僕は何も言っていないというのにだ、如何にもという具合に僕は挙動不審になり、

旅館の人でも見ていたら即座にでも警察が呼ばれるのではないかという気がして気が気でなかったが、(この時は、

確か午後六時から七時の間だったと思う、夕食の設定を多少遅らせておいてよかった、本当に)

そんな事は幸いにも起こらなかったようで、誘をあやす……というとこれまた誤解が生じるような気もするが、

とにかく、誘に近づくにつれ、僕は違和感を感じた。

僕が気付かなかったのも悪いが、どうやら彼女の背中に隠れて見えなかったらしい。

恐らく誘は、お酒を飲んでいた。ビールを一缶だけ。


18

僕はそもそもとしてはお酒を飲まない方なのでその相場というものを知らないが、

憶測で物を言わせてもらうとするならば、人はビール一缶で酔えるのだろうか……

この前テレビを見ていた時には水で酔える人が居たと思うが、その時はその時で、プラシーボ効果とは凄いものだ。

とも思わないでもなかったが、それと似たようなものなのだろうか、兎も角、この惨状を何とかせねばなるまい。

幸い誘は浴衣に着替えてからお酒は飲んだらしく、僕が着替えさせるなどという、

常軌を逸した行動は取らなくてもいい事が分かっているので良かったのだが、(もちろん彼女がスーツ姿であろうと、

後に料理を運んできた旅館の女性にでも手伝って貰うよう懇願したと思うので、

僕が着替えさせるという事は起こらないと思うが)

用意周到にも既に布団は部屋の奥の方で畳まれていたので、広げるのにそうそう時間はかからなかったのだが、

やはり誘をそこまで誘導するのに時間が掛かってしまった、酔いつぶれた人というのは何処か飄々としているというか、

酔っているからか色々なことを口走ったりするので余り僕は好きではない、これもまた僕がお酒を飲まない原因でもある。

それにどうしてか異常に腕力が強くなっているような気がしてならないのだ、一回りも歳が離れているというのに、

僕にしがみついて離さないその姿は何処か親猿にしがみつく子猿や木について離れないナマケモノを連想させるものがあった。

僕は親でも何でもないというのに。


19

その後夕食を僕が誘との二人分を全て平らげ、(キャンセルするのがとても申し訳なかったからだ)

僕の分の布団を侵食されてしまったので、毛布だけで一夜を過ごした。

翌朝、僕はいつも通りに午前五時に起きる、いくら取材時とは言えこのルーチンワークは欠かせない、

とは言っても流石にここで仕事ができる訳ではないので、時間を持て余してしまった、ふむ、どうしたものかと思いつつも、

取り敢えず外に出てみる、一応僕にも人間関係というものがある、数少ない友人にでも何か一つお土産を渡そうと、

近くを軽く見て回る、僕には余り物を選ぶセンスというものが無いので、適当に食べれるものを見繕っていく所で、

時刻が午前六時を回ろうとしていたので、急いで旅館の個室へと戻る。

扉を開けると、着替え中の誘が目の前に——何て展開は無く、ただ普通に二日酔いの誘がそこに居た。

ビール一缶で二日酔いとは情けない、多分だが僕の方がもっと飲める、飲みたくはないが。

頭を抱える誘は僕に気付き、挨拶をしようとする、とても表情は苦々しく、

爽やかな朝とは間違っても言えないような状況だったが、

「今日は…………とてもいい天気ですね」

無理して話題を振るからそうなる、ちなみに今日は曇りだ、十一年前にもこんなやり取りがあったが、

もしかしたら本当に誘は曇りをいい天気と捉えているのかも知れない、

晴れよりも雨が降っている方が好きだというあの感じと似ているのかも知れなかった。


20

そんな風に思えたのもつかの間、朝食が運ばれてきた、洋式のようなトーストとスクランブルエッグではなく、

ご飯と味噌汁、鮭等の刺身といかにもという風な和式御飯が並んだ、

僕は特に問題ないのだが、二日酔いに朝からこんなにも食べさせて大丈夫なのだろうか……

しかも昨日言ったことは覚えているようで、

「か柿本先生に言ったのに自分ではできないのは格好が悪いじゃあないですか」

そもそもとしては君が格好付ける理由は無いのだし、無理は体にもよくは無いと思うのだが、

しかしちゃんと平らげたはいいものの、流石にそこが限界だったようで、かなりグロッキーで駄目になってしまったので、

部屋で安静にしているようにと告げると精力無く

「……はい」

と声が響きもしなかった。

これは誘のお話なので僕しかいないところは極力省いていく、つまりは割愛である。

お詫びにと、二日酔いに効く薬とついでに幾つかの特産品を持って行った。(食べれるものから食べれないものまで幅広く)

誘は表情をかえて喜々として眼を輝かせる。

正直餌付けでもしているような気分でなにともいえないような気分だったが、これもまた伏せておくとしよう。


21

一週間……とてもじゃあないがこれを二カ月分となると章番号が50や60になってしまう、

それは避けたいところだ、それには僕の力量と確かに存在するのだが、それでもやはり僕としても、

ずっとこれを書き続けることなど不可能に近いだろう、無論僕の人生も恐らくは後最低でも二十年はあること間違いなしだ、

誘に至っては後六十年は生きられるだろう、何処かで健啖家は寿命が長いと聞いたことがある、

真偽のほどは定かではないにしてもだ。

そう、打ち切りではないが僕たちの人生はこれからも続くのであり、終わりへと近づいていくのだ。

無論僕の描いた物語の主人公、脇役や主要人物達にも、同じことが言えるだろう、

彼らの冒険はいまだ始まったばかりなのだ、と。

それでも十分だろう、たった一週間でも、

十二分に誘は普通で異質の両方を両双を兼ね備えた生活を送れているのだと、

彼女はあくまでも人間であり、今でも人間であり続ける事が出来るのだと、読者諸君にも分って頂けたことであろう。

それならば、一週間で十分だ、僕が描いたあの幾つもの物語も、きっと喜んでくれることだろう。

事実、誘の様に幸せになれた人間がいるのだ、僕の様に、幸せを感じる事の出来ないように人でも、

心からよかったと思える、感情が一部死滅していようとも、こんな風に生きていけるのだ、と。

きっとこの現実も、読者の中で物語として昇華されていくのだろう。

ならば僕は満足だ。

一から十まで僕の自己満足と偏見とそれに伴う感性だけで描かれたこの現実という物語も、

何処かの誰かの一部になれたらと思う、あの少女だって、笑って許してくれるだろう。

彼女としては十分ではないのかもしれないが、その時は又、その時だ。

それではここで切らせてもらう事としよう、幕は閉じ、物語は昇華される、

次は小説で会おう。ではでは。

約十日間で書き連ねた苦渋の少女不満足でした。
正直、本当につらかったです、多分見ている方がつらいと思いますが、
そこら辺を考えると、最後まで見てくれた人がどのくらいいるのやら…………
こんな駄スレでしたが、最後まで見てくれた人には感謝ですね、本当に。
ちらっと見てくれた人にも感謝です、それではまた次回にでも、
また来週、うん。

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