照・小蒔「カフェ・ド・コマキ」 (53)

ここは九州、霧島神宮

晩秋を迎えめっきり涼しくなった昼すぎの社務所に、霞さんのきゃーという叫び声が響き渡りました

霞「あわわ…あわわ…」

初美「どうしたんですか?またしわが出来たんですか?霞ちゃんは私たちと違ってもう歳なんですよ?あれほどドモホルンリンクルの購入を進めましたのに…」


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巴「どうしたんですか?大きな声を出して…」

初美だったもの「 」しゅー…

霞「あらあら…ちょっと巴ちゃん、今月の家計簿を見てもらえるかしら?」

巴「うわ!?なんですかこれ?宗教法人にあるまじき赤字じゃないですか?」

初美「うぅ…痛いですよ…」

巴「自業自得です…」

巴「はぁ…しかし、どうしてこんなにも赤字が?」

霞「それもこれも小蒔ちゃんの食費が原因なのよ」

初美「姫様はよく食べますからね、朝起きてまず朝のおめざ、それから当然朝ご飯に登校中につまむ軽食、昼ご飯前の早弁にお昼もたくさん食べますし、それから夕ご飯前の食事、夕飯と就寝前の軽食…3時のおやつも含めると一日8食は食べてますよ」

霞「それだけなら…まぁ…なんとかなるわ…でもね…小蒔ちゃんには九柱の女神様が宿ってるの、その神様全員の神饌(神様に捧げる食事)を用意するだけでも大変なことになるわ」

巴「それでこんな膨大な食費が…」

春「おかげで満足に黒糖も食べられない…」げっそり…

巴「うわぁ!春ちゃん!」

巴「しかし、これは問題ですね」

霞「こうなったら小蒔ちゃんには悪いけどせめて一日6食くらいに制限させてもらうわ」

春「しょうがない…私も姫様の食費のせいで、おこずかいを減らされて黒糖をもう5時間も食べてない」げっそり…

初美「ですよー」

その様子を柱の影より覗いていた、神代小蒔…

小蒔「あわわ…そんな…」カタカタ…

所変わって東京の白糸台…

こちらも部長である弘世菫の突然の叫び声が部室内に響きました

菫「なんじゃこりゃ~あ!?」

淡「どったのスミレ?往年の松田優作並のリアクションして?」

尭深「…」ずずー…

誠子「また、阿知賀の次鋒の人にふられたんですか?」

菫「違う!みんな、これをみてくれ!」

淡「なになに…」

がらがら…

照「あ~さやけ~の光の中に立つ影は~♪テル~マン~♫」

照「今だ!コークスクリュを使え!」ドゴー

菫「おふぅ!?」ボコー

照「ふんふむ…うわ!こんなに赤字が…どうせ菫が宥さんに貢ぎまくったんでしょ…」

菫「というわけだ、このままだと部の存続に関わる」

照だったもの「 」しゅー…

誠子「私は少しでも部費を抑えるため、電気の付けっぱなしとかには気をつけてますよ」

菫「偉いぞ誠子」

淡「私も少しでも麻雀部に負担させない為に時々さぼってるよ」

菫「いや、ちゃんと部活しろよ」ビシッ

尭深「私も部長に出すお茶だけは安物の出がらしを使うようにしてる…」

菫「!?」

尭深「しれっ…」ピューピュー♪

菫「とにかく、各々無駄な出費を抑えること!」

淡(無駄な出費…そういえば部費を使ってたびたび穏乃に逢いに行ってたっけ…)

尭深(部費で自分用の高級茶葉を取り寄せてる…)

誠子(部費を使ってこっそり新しい釣り竿買っちゃったなぁ…)

照「どうせみんなが無駄遣いしてる、私には関係ない」

菫「あのなぁ…お前のお菓子代が一番出費が多いんだぞ」

照「ほわぁい?」

菫「ホワァイ?じゃないが…」

照「わいーる?」

菫「うるさい、とにかくお前は今日からお菓子を控えること、いいな!」

照「そんな…てるてる干涸びちゃう…」

菫「自業自得だ!」

淡「テルーかわいそう…私の持ってるお菓子食べる?」

菫「淡も照を甘やかすな!とにかく部長命令は絶対だからな!」

照「そんな…菫の馬鹿!もう知らない!」どひゅーん

誠子「あぁ宮永先輩がどこかへ行ってしまいますよ」

菫「ほっとけ、どうせ腹が減ったら帰って来るだろう」

尭深「………」ずずっ

一方、赤坂博士は砂糖と小麦粉と卵で出来た巨大ロボットを完成させた!

巨大ロボット「………」ゴゴゴゴ!!!

郁乃「イヒヒ~完成やで~ぼっちのエネルギーで動く巨大ロボットや!」

末原「うわぁ!?なんですかこの巨大ケーキは?」

漫「美味しそうですね…」

洋榎「なんや、永水の先鋒をデフォルメしたみたいな見た目やな」

郁乃「ケーキちゃうで、ロボットやで~」

絹恵「ロボットってガンダム?みたいなのですか?」

郁乃「そうや!中に入って操縦も出来るで!」

末原「はぁ…こんなもんなんで作ったんですか?そんな暇があるなら少しは代行の仕事してくださいよ…」

郁乃「いやや!ウチはこれに乗って世界征服するんや!」

末原「はぁ…世界征服って…」

郁乃「それじゃあまずは関西からや、いくのんの野望 阿知賀編始まるで~」

漫「いってらっしゃい」

由子「お土産よろしくなのよー」

巨大ロボット「………」ガシャンガシャン!

末原「うわ!本当に動いた!?」

洋榎「どうなっとるんやろ?」

絹恵「あ!ちょっとクリームが落ちてる」

それからしばらくして…

菫「おかしいな、アイツ何処行ったんだ?」

尭深「帰ってきませんね」

誠子「部長があんなこと言うから」

淡「そーだそーだ」

菫「うるさい!まぁ仕方ないな…探しに行くか」

誠子「探すって言ってもどこを?」

菫「あいつは常に何か食べないと身が持たない…しかし小遣いは全部、お菓子に使って常に素寒貧だ」

菫「尭深、この辺で大食いチャレンジの店はあるか?タブレットで調べてくれ」

尭深「数件ある」

菫「その数件の店に連絡して、ここ数日以内でまだ開店時間内なのに諸事情で店を閉めていないか聞いてみてくれ」

尭深「わかった」

pppp♪

尭深「もしもし…えぇ…すみません…本当ですか?」

尭深「ありました、臨海にあるらあめん屋です」

菫「よし、とにかくその店の周辺からまた大食いチャレンジの店を割り出す、そうやってたどって行けばいつか照の消息がつかめるぞ」

誠子「はぁ…」

菫「おい、亦野ため息なんかついてる場合じゃないぞ!さぁ行くぞみんな」

淡「おー!」

尭深「………」ずずっ

誠子「本当にこんなんで見つかるのかなぁ…」

そして、ここ永水でも同じように神代小蒔が行方不明になったことで、てんやわんやであった

初美「大変ですよー!姫様が何処にもいませんよ!」

巴「あわわ!?姫様ー!何処に居るんですかー!返事をして下さい!」

霞「大変よ!小蒔ちゃんの部屋から書き置きが!」

『私は旅にでます、探さないで下さい。神代小蒔』

春「もしかして私たちが姫様の食事を減らすようにと話していたことを姫様に聞かれたんじゃ…」

初美「と、とにかく急いで探しますよ!」

巴「あわわ…姫様…」ぶくぶく…

初美「あぁ、もう!巴はことのあまりの重大さに気を失いましたね、仕方ないので私とはるるで探しに行きましょう!」

春「うん…」

霞「大丈夫?初美ちゃん?春ちゃん?」

初美「任せておいて下さいよー姫様ならかすかなお砂糖とクリームの甘い匂いがするのでたどって行けばなんとか探し出せますよ」

春「私も鼻が利く」

霞「お願いね…初美ちゃん…春ちゃん…」

初美「それじゃあ行ってきますよーお留守番お願いしますね」

春「くんくん…」

霞「いってらっしゃい…無事戻ってきてね…」

ばたん!

霞「行ったかしら…」

霞「さて掛け軸の裏に隠したへそくりをっと♫」
__
|外|
|道|
|祭|
|文|←掛け軸
––––

ごそごそ…

霞「確かこの辺に…」

『カスミンのへそくり☆』

霞「あった♪初美ちゃんと春ちゃんのお小遣いをこっそり減らして貯めた私のへそくりが♫」

霞「ふふん♫本当は小蒔ちゃんの食費くらいたかが知れてるのよねー出費のほとんどは私の貯金…」

チャリン♫

霞「あら?何かしら、見た事無い小銭ね…外国のお金かしら?」

霞「まぁいいか♫これで思いっきりショッピングに行きましょう、ルンルン♪」

バタン…

小銭「………」ゴゴゴゴゴゴ!!!!!!

しかし、この小銭が持つ重大な秘密がこの後、永水どころか日本麻雀界を騒がせる事になろうとは、今の石戸霞には知るよしもなかった

一方、東京白糸台を遠く離れ、ここ奈良では…

照「はぁ…思いきって出て行ったのはいいけど、さりとて行く宛も無く、ぶらぶらしてるうちにお金もなくなった…」

照「もう大食いチャレンジのお店にはブラックリスト入りして、どこも入れてくれなくなった…」

「おーい!照ー!居るか?」

照「!?菫達だ…もう追ってきたんだ…」

照は菫たちに気づいてとっさに草むらに隠れた

菫「おかしいなぁ、ここら辺に居るような気がしたんだが…」

誠子「はぁ…ここ奈良ですよ?本当にこんなところまで来てるんですかね?」

淡「スミレがただ単に宥さんに逢いたいだけなんじゃない?」

菫「な!?そ、そ、そんな訳…」

尭深「怪しい…」

ガサガサ…

菫「!?今、物音が…おい!照居るのか?」

照(まずい…見つかっちゃう…)

「ホーホケキョ♪」

菫「なんだ…ウグイスか…」

照(江戸家猫八師匠の落語を聞いて野鳥の鳴き声を勉強しておいてよかった…)ほっ

誠子「部長、もう行きましょう」

菫「そうだな、次行くか」

淡「ねぇ、せっかく奈良まで来たんだから穏乃に逢いに行こうよ」

尭深「ついでに練習試合でもしますか?」

菫「そうだな…せっかくだし阿知賀にでもよってくか…」

菫達がその場を去って行く…

照「やっと行ったか…」

「そこに居るのはどなたですか?」

照「見つかった!?」

小蒔「あわわ!もしかして白糸台のチャンピオンさん?」

照「貴女は、永水の…」

二人は会ったばかりなのに、まるで生き別れの姉妹のようにすぐに意気投合しました

照「そう…貴女も…」

小蒔「えぇ…食事量を減らすと言われ、たまらなくなり逃げ出してきました」

照「しかし…私たち二人とも行く宛がない…これからどうしよう…」

「おや?貴女達は…」

照「誰?」

玄「インハイで戦った、松実玄です!」

照「あぁ…あの時の…」

小蒔「確か阿知賀の…」

玄「それにしても一体どうしたんですか?こんなところまで?」

照「実は深い理由があって…それにしても私たち行く宛がない」

玄「そうなんですか!それならウチに来て下さい!サービスしますよ」

照「本当?ちょうど泊まるとこが無いから困っていた…」

小蒔「捨てる神あれば救う神あり、助かりましたね♪」

玄「どうぞどうぞ♫二名様ご案内♪」

こうして二人は松実旅館にお世話になる事になりました

玄「ささ♪どうぞどうぞ♫」

照「ここが私たちの部屋…」

小蒔「綺麗な良い部屋ですね」

玄「はい、当旅館でも最高の部屋ですよ」

照「ふぅ~長旅で疲れたなぁ」ぐぅ~

小蒔「永水から奈良まで、さすがに疲れました」ぐぅ~

玄「おやおや?お腹がすいているようで?」

照「お恥ずかしながら…」

玄「待ってて下さいね、今お夕飯用意しますから」

照「ありがとう…」

それから数分後…

宥「はぁ~い♫あったか定食お持ちしました♪」

小蒔「わぁ♪すみません」

照「ハンバーグに海老フライ、どれも美味しそう」

玄「まだまだありますのでたくさん食べて下さいね♫」

照「遠慮なくいただく…」もぐもぐぱくぱく

宥「ささ、お夕飯が済んだら楽しい出し物もありますからね♫」

玄「ト~ラ~ト~ラ~♪」ベンベン♫

小蒔「虎拳だ♫」

照「私が虎♪」がおー

小蒔「私が老婆なので…あ!負けましたね♫」杖を突くジェスチャー

虎拳とは…

部屋に屏風を立て、『虎』を四つん這い、『老婆』を杖を突くジェスチャー、『和藤内』を拳を腰に当てて表現し、虎>老婆>和藤内>虎の三すくみで勝負が決まる、お座敷遊びのひとつである

近松門左衛門の浄瑠璃『国性爺合戦』から誕生した拳遊びで、虎を倒すほどの豪傑であった和藤内も自分の母である老婆には頭が上がらなかったことからこのような遊びになっている

照「虎だから娘は食べちゃうぞ♪」

宥「いやーん♫」

秋の夜はふけてゆく…

チュンチュン…

照「ふぁ~あ…もう朝か」

小蒔「昨日は楽しかったですね」

玄「おはようございます!朝食おもちいたしました」

照「お味噌汁と漬け物とアジのひらき、それに菜めしか…」

小蒔「この菜めし美味しいですね」もぐもぐ

玄「はい、小松菜と塩と炊きたての白米を混ぜ合わせたシンプルなものですが、シンプルだからこそこの塩加減が難しい、少しでも多かったり少なかったりしたらこの味は出せませんからね」

照「味噌汁もアジのひらきも最高」もぐもぐ

玄「まだまだおかわりはいっぱいありますからたくさん食べて下さいね」

玄「お昼には冷や麦を用意しています、それまで近くを散歩するなり部屋でのんびりするなり、ごゆるりとお過ごしくださいませ」

照「ふぅ…至れり尽くせりだね…」

小蒔「なんだか悪いですね」

照「それじゃ、二人で紅葉狩りにでも行って来る」

玄「はい、いってらっしゃいませ♫」

そして夕方…

憧「やっほー、遊びに来たわよ」

玄「あ!憧ちゃん、今お客様にお出しするお夕飯の準備にとりかかってるところなの」

憧「お客様?珍しいわね、年中閑古鳥が鳴いてる松実旅館にお客様なんて…」

玄「うん!今作ってるのは夕飯の一品のアジのなめろう、アジは繊細な魚だから叩きすぎるとつみれになっちゃう、だから、力加減が肝心、右手は強めにトントン!左手で優しくトントン♫このトントン♫が大事」

玄「いっぱい食べて遊んでくれるから、とても助かってますのだ」

憧「そんなに羽振りの良いお客様なの?」

ちょうどその時、外へ散歩に出掛けた照と小蒔が旅館へ帰ってきました

玄「お帰りなさいませ、散歩は楽しかったですか?」

照「ただいま、なかなかよかった…」

小蒔「紅葉綺麗でしたよ」

玄「それはよかったですね」

憧「………」じっ…

憧(ちょっと玄、いい機会だし宿泊料のこと切り出してみなさいよ)

玄(わかりましたのだ)

玄「ところで、失礼なのですが宿泊料の話なんですけど…」

照「え!?」あせあせ…

小蒔「宿泊料取るん…もがもが…」

照「はは!しゅ、宿泊料ね…わかっ照」

照「ちなみにおいくらで?」どきどき…

玄「へぇ、2泊3日お料理の代金も含めてお一人三万四千円になります」

照「さ、三万!?」

憧「ん?どうしたんですか、チャンピオンさん?」

照「い、いやぁ…安いなぁと思って…」

玄「そうですか、なら代金は…」

照「う、うん…明日ここを発つ時に支払うよ」

小蒔「そんなお金ある…もごもご…」

照「そ、それじゃあ私たちは上でゆっくりしてる…じゃあ…」あせあせ

ばたん!

玄「ほら、ちゃんと払ってくれるでしょ?」

憧「怪しい…どう見ても払えなさそうだった」

玄「そんなぁ…」

憧「ここに来る前に白糸台と永水の人に会ったわ、どうやら二人とも家出してきたみたい」

玄「なんと!?」

憧「とにかく、あいつらをちゃんと見張っておく必要があるわね」

照と小蒔の部屋では…

玄「はい、お夕飯は終わりましたね」

照「う、うん、美味しかった」

小蒔「ごちそうさまでした」

玄「それでは、また何かあったら呼んで下さいね」

ばたん!

小蒔「あわわ、どうするんですか?お金なんて無いですよ」

照「どうにかして逃げ出さなければ…」

小蒔「でもどうやって?玄関は玄さん達が居ますし…」

照「よし、コークスクリュで壁に穴をあけて脱出を…」

小蒔「ごくり…」

がらがら…

玄「お風呂の準備が出来ました…」

照「だ~れが殺したクックロビン♫だ~れが殺したクックロビン♫」

小蒔「さぁ!みなさんご一緒に♪」

玄「何やってるんですか?」

照「ちょ、ちょっと運動を…」

玄「はぁ…お風呂は9時には閉めますので早めに入って下さいね」

ばたん!

照「ほっ…」

小蒔「危なかったですね…」

下の階では

玄「憧ちゃんの言う通り見てきたけど何も変な様子は…」

憧「どうだか?もしかしたら壁に穴を開けて逃げるつもりかもしれないよ」

玄「そんな…」

憧「九州と東京からここまで来るほどの奴らよ?そんくらいするに決まってるじゃない」

玄「あわわ…もし逃げられでもしたら…」カタカタ

憧「とにかく、あの二人から何が何でも宿泊料を取らないと、この旅館つぶれちゃうよ?」

玄「うぅ…それは嫌だよ、路頭に迷うことになったらお姉ちゃんも…あわわ…」

憧「今度こそ、ちゃんと料金の話をしてくるの!わかった?」

玄「は、はいですのだ!」どひゅ~ん!

再び照と小蒔の部屋

玄「あの…すみません…」

照「!?な、なに?」

玄「お客様を疑うようで心苦しいのですが…その…本当に払ってもらえるんですよね?」

照「も、もちろん!」

小蒔「そ、そうですよ!私たちが無銭飲食なんて…」

憧「話は聞いたわ!アンタ達、無一文でしょ!」

照「ぎくっ!」

小蒔「な、なんでそんなことを…」

憧「たまたま近くに来てた白糸台の人と永水の人に聞いたわ!貴女達、身一つで家出して来たんでしょ?」

照「あわわ…菫達が…」

憧「さぁ、白糸台の人と永水の人に言って料金を立て替えてもらいましょう!」

照「そ、それは困る…そんなことされたらますます部での私の扱いが悪く…」

憧「自業自得よ!」けっ

このまま菫に連れ戻されては、自分の家出は失敗に終わる

なんとかここは阿知賀の人達に穏便に済ませてもらえないだろうか…

照は一生懸命考えました

照「なんとか宿泊料は払うからそれだけは…」

玄「払うと言ってもどうするんですか?まさか働いて返すなんて…」

照「そう!働いて返す!マキマキ、ちょっと耳貸して…」ごにょごにょ…

小蒔「ふんふむ…なるほどなるほど…なるほど♪」

小蒔「あの…紙と筆を貸していただけませんか?」

憧「はぁ?そんなもので何するのよ?」

玄「まぁいいでしょう…今持ってきますね」

そう言うと、玄は旅館の事務室から半紙と筆を持ってきました

小蒔は、その半紙と筆を手に持つとすらすらと何やら書き上げました

玄「何ですかこれは?」

その半紙には達筆な文字でこう書いてありました

『食べてほしい物はありませんか?食べ物が余って困ってませんか?

胃袋を鍛え上げた二名のスタッフが、あなたの指定した食べ物をすべて残らず平らげます!

胃薬不要!キャベジン無用!用意するのは食べ物だけ!

スイーツからお魚お肉にお野菜までなんでもござれ

料金は1万円から要相談!

スタッフ:宮永照 神代小蒔より』

これを読んだ憧は、つま先から頭の先まで真っ赤にして怒り狂いました

憧「はぁ!?ふざけるんじゃないわよ!この世の中のどこに食べ物を食べて金まで払ってくれるお人好しが居るのよ!」

照「あわわ…もしかしたら…そんな物好きも居るかもしれない?」

小蒔「そ、そうですよ…それを明日朝一に旅館の外へ張り出して下さい。そうすればたちまち私たちに仕事の依頼をしたいという方が現れますので…」

憧「そんなわけないじゃない!?もう怒った!永水と白糸台の人に…」

玄「まぁまぁ…この二人の言った通りにしてみようよ」

憧「で、でも…」

玄「もしこれで誰も仕事をたのまなかったら、その時は本当に永水と白糸台の人に言えばいいし…」

憧「玄がそう言うなら、その代わり明日誰も仕事を頼まなかったら二人とも引き渡すからね!」

照「わかっ照…」

小蒔「わわ!大丈夫です!」

次の朝、玄は言われた通りその張り紙を旅館の一番目立つ所に張り出しました

玄「ぺたぺた…本当にこんなんで人が来るのかなぁ」

「もし…」

玄「ひやぁ!?」

初瀬「あの…ここに書いてあることは本当ですか?」

玄「え!?当旅館にお泊まりのお客様ですか?」

初瀬「いえ、この紙に書いてあることです」

玄「え?え?そ、そうですよねーふ、ふざけてますよねー」

初瀬「いえ…その紙に書いてあることが本当なら、依頼をしたいのですが…」

玄「え!?本当ですか?」

玄は初瀬という少女の話を聞く事にしました

その初瀬の言う事には、明日の午後より晩成の王者を讃えるパーティーがあるようです

そこで出し物として巨大ケーキの大食い大会を開いたのですが、参加選手のドン・タコスとジュンにゃんが急な用事で来れなくなり、参加人数が足りなくなったのです

この企画、スポンサーからたくさんの出資を受けていて、失敗する訳にはいかない

初瀬「ということで有名女子高生雀士でかつ、大食いに自信のある方を急遽探していたという訳です」

初瀬「一人、ゴム有り(食べ過ぎでお腹が張るのでゴムなどウェストの緩いお召し物で)ホ別(宿泊施設は各自用意して下さい)3万で応相談ということで…」

玄「はわ、はわわ…そ、そういうことなら…」

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