モバP「七月一日は藤居の誕生日」 (62)

P「駄目」

さくら「なんでですかぁ!」

P「駄目」

さくら「ちょっとだけ、ちょっとだけなのでぇ」

P「駄目」

さくら「いいじゃないですかちょっとくらい!」

P「駄目」

さくら「けち」

P「なんだと」

さくら「ねぇー、プロデューサーさぁん、ちょっとだけ、これくらい」

P「駄目」

さくら「……ぐすん」

P「泣く真似しても駄目」

さくら「うあーん」

P「泣く真似しても……ん? 本当に泣いてる?」

さくら「ぐすぐす」

P「物凄く嘘泣きっぽい」

朋「……?」

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P「村松泣いてる? ん? 本当に?」

さくら「すんすん」

P「うん? どうなの? ちょっと手どかしてみろ手」

朋「さっきから何の騒ぎなの」

P「村松が泣いてしまった」

朋「ほんとに泣いてるのか微妙だけど……まぁ、見てたからそこは分かる」

P「村松がサプライズパーティーをやってほしいと言うので、お断り申し上げた」

朋「それは、何と言うか……コメントしにくいわね」

さくら「ちょっとだけなのに、ちょっとやったら満足なのに」

P「駄目」

さくら「……ぐすん」

朋「あの、さくらちゃん」

さくら「……はい」

朋「ええと、言いにくいんだけど……」

さくら「……」

朋「やってほしいって頼みに来ちゃったら、サプライズにならないんじゃない?」

さくら「……」

朋「……」

さくら「……?」

P「サプライズの意味を考えてみるべき」

さくら「んー……びっくり」

P「よしよし、落花生をあげような」

さくら「わぁい」

さくら「……」

パキッ パキパキッ

さくら「……」モグモグ

朋「驚くほど静かになったわね」

P「殻を剥くのに集中している」

朋「で、サプライズじゃなくても、やってあげればいいじゃない、パーティー」

P「駄目」

朋「何でよ」

P「パーティーはここぞという時にやるものだから、乱発してはいけない」

朋「頼みに来るくらいだから、ここぞという時なんじゃないの?」

P「そうでもない」

朋「誕生日……は、さくらちゃんは三月だったわよね」

P「うん」

朋「……さくらちゃんは何のパーティーがしたいの?」

さくら「サプライズパーティー」

P「噛み合ってない」

朋「あたしレッスン行かなきゃなんだけど……大丈夫?」

P「落花生を食べているうちは大丈夫」

朋「……ねぇ、ちょっと耳貸して」

P「何でしょう。くすぐったい」

朋「愛梨に手伝ってもらってさ、ケーキ焼くくらいはしてあげましょうよ」

P「んー」

朋「それくらいはいいでしょ? ね、お願い」

P「考えておく」

朋「ん、ありがと」

P「じゃあ、レッスン頑張ってくるといい」

朋「うん、行って来ます」

P「行ってらっしゃい」

ガチャッ バタンッ

P「村松」

さくら「んー?」モグモグ

P「村松は泣く真似が下手だな」

さくら「えー」

P「でもその下手さが絶妙である」

さくら「必殺技なのに」

P「えっ殺すの」

P「じゃあ村松は衛藤を呼んでくる係な」

さくら「はぁい」

パキッ パキパキッ

さくら「……すぐ?」

P「すぐじゃなくてもいい」

さくら「了解でぇす」モグモグ

P「……」

さくら「……」

パキパキッ

さくら「……」モグモグ

P「ちょっとだけすぐ」

さくら「あっ、はぁい」

三時間後

朋「ありがとうございました」

トレーナー「はい、お疲れ様です」

朋「……ねぇ、トレーナーさん」

トレーナー「はい?」

朋「ばれちゃってるサプライズパーティーを成功させるには、どうしたらいいと思う?」

トレーナー「えっ、えーと、ばれちゃってる時点でサプライズではないですよね……」

朋「そうなんだけど、何かいいアイデアないかな」

トレーナー「うーん……何か、思いもよらないものを仕込むとか」

朋「あー、やっぱりそうなるわよね」

トレーナー「あとは……何か別のもので目を逸らさせておく、とか?」

朋「別のもの、別のものか……それいいかも。ケーキ作りとか」

トレーナー「いいですね」

朋「あっ、いっそ別のパーティーを開いちゃうとかどうかな」

トレーナー「ああ、そのための準備と思わせておいて……みたいな感じですか?」

朋「うん」

トレーナー「面白そう! いいじゃないですか」

朋「あっ、でも……」

トレーナー「何か問題が?」

朋「自分のパーティー開いて欲しいみたいだから、別のパーティーやるって言ったら納得してくれないかも」

トレーナー「ああ、自分のパーティーはやってくれないのに、ってことですか」

朋「うん」

トレーナー「パーティーなんですから、一瞬でも嫌な思いさせるようなのは避けたいですよね」

朋「難しい。……うん、でも、ちょっと考えてみるわ。ありがとうございます」

トレーナー「すみません、お役に立てなくて」

朋「えっ、そんなことないわよ! とっても参考になったわ」

トレーナー「ふふっ、それなら、良かったです」

朋「うん。それじゃあ、ありがとうございました、お疲れ様です」

トレーナー「はい」

ガチャッ

朋「ただいま」

P「藤居だ。……あっ、俺ウインクできない」

朋「ウインクする必要は別にないでしょ」

P「合図が」

朋「合図って、ただいまに対しては普通におかえりでいいんじゃないの」

美紗希「朋ちゃん……」

朋「美紗希さん、お疲れ様」

美紗希「うん」

朋「……どしたの? 何かあった?」

美紗希「ううん……ねぇ、プロデューサー」

P「はい」

美紗希「あたしがしっかり監督するからぁ」

P「でもなー」

美紗希「ちゃんと責任持って見てるから、パーティーやるの、許してあげて?」

朋「あっ、さくらちゃん今度は美紗希さんに頼んだんだ」

美紗希「うん……それで、プロデューサーに許可貰いに来たんだけど」

P「俺が悪者みたいになっている」

美紗希「えっ、違うのぉ、そういうつもりじゃなくって」

P「ときどき目つきが怖いって言われます。どこ見てるか分からないって」

朋「それはまた別の話でしょうに」

P「そもそも何についてお祝いするのか」

美紗希「……さくらちゃんが可愛い記念日」

P「そうなると毎日パーティーしなくてはならない」

朋「さくらちゃん毎日可愛いもんね」

P「うん」

美紗希「……どうしても駄目?」

P「んー……藤居もやってあげればって言ってたな」

朋「まぁ、出来ればやってあげたいかな」

P「……じゃあ、二人でしっかり責任持ってやるな?」

美紗希「やるっ! もちろんですよぉ、ねっ、朋ちゃん」

朋「うん、許可してくれるんなら、当然最後まで面倒見るわ」

P「なら、今回だけ特別」

美紗希「やったぁ! さすがプロデューサー、カッコいいかもっ」

P「あっ」

朋「なに?」

P「藤居も毎日可愛い」

朋「えっ、何よ急に」

P「衛藤も毎日可愛い」

美紗希「うふふっ、ありがとぉ、プロデューサーも可愛いっ」

P「なんと。と言うことは俺もアイドルになれる可能性が」

朋「それは……」

美紗希「うん……」

P「察した」

P「じゃあどうやってサプライズにするか、衛藤なにかいい案――」

朋「あっ、あたしちょっとだけど考えがあるの」

P「えっ」

美紗希「えっ」

朋「えっ?」

P「いえ別に。続きをどうぞ」

朋「うん、あのね、元々はトレーナーさんが、目を逸らさせておくってアイデアを出してくれたところからなんだけど」

P「うんうん」

美紗希「……」

朋「最初はあたし、別のパーティーを開いちゃって、それの準備をしてると思いきや、っていうのを思いついたの」

美紗希「なんかどきどきするぅ」

朋「?? ……でも、それだと当日までさくらちゃんが可哀想じゃない?」

美紗希「あー、さくらちゃんのパーティーはやらないことになっちゃってるもんねぇ」

朋「うん、だから、プチパーティーに見せかけて、意外と大々的な、っていう騙し方がいいと思うんだけど」

美紗希「ここまでくると感動的かもぉ」

朋「どしたの美紗希さん、さっきからちょっと変よ?」

美紗希「ううん、なんでもなぁい」

朋「??」

P「ふむ」

美紗希「……」チラッ

P「似てる」

朋「何が」

P「思考回路が」

朋「誰と?」

P「俺と藤居が」

朋「……そうなの?」

P「まあ、いけるだろう……あっ、ウインク出来ない」

朋「ウインク流行ってるの?」

美紗希「あっ、じゃあ結局、さくらちゃんにも準備を手伝ってもらった上で、ビックリさせられればいいんだよね?」

朋「それがベストなんだけど、でも具体的にどうやるかが思いつかなくて……」

美紗希「じゃあ、無いって思ってたパーティーがあるからビックリなんじゃなくてぇ」

朋「うん」

美紗希「事務所が一瞬でパーティー会場に早変わりでビックリ、なんてどうかな?」

亜季「ではこれより、本作戦の概要を説明する!」

「「「はーい」」」

亜季「口から愛らしい声を出す前と後にSirと言え! わかったかアイドル共!」

朋「亜季さんもアイドルよね」

亜季「そうでありましたな。では美紗希殿、お願いします」

美紗希「うん、任せてぇ」

朋「亜季さんが説明するんじゃないんだ」

美紗希「じゃあ、まず総監を、あたしがやりまぁす」

パチパチパチパチ

美紗希「拍手ありがとぉ。でぇ、ケーキを作る係のリーダーにぃ、愛梨ちゃんっ」

愛梨「はいっ、一生懸命頑張ります」

パチパチパチパチ

美紗希「事務所の飾りを作る係のリーダーが、亜季ちゃんね」

亜季「はいっ! お任せを」

パチパチパチパチ

美紗希「えぇとぉ、あとぉ、色んな雑務とかの大変なお仕事を、朋ちゃんが買って出てくれましたぁ」

朋「うん、まあ、企画者の一人として、これくらいはね?」

パチパチパチパチ

P「俺は?」

美紗希「んー、プロデューサーは、何やりたい?」

P「将来的には無人島を開拓して住みたい」

美紗希「じゃあ、朋ちゃんと一緒に材料の調達ね、荷物持つ係」

P「そうか」

美紗希「ケーキとお料理の係は当日だけだからぁ、お仕事とか急がしい人はそっちやるといいかも」

亜季「仕事の無い者は私と一緒に装飾作りを」

朋「言い方……」

P「ううぅ……」

朋「はいはい、大丈夫よ、あんたのせいじゃないから」

P「藤居優しい」

美紗希「じゃあ朋ちゃんが優しいところでぇ、説明続けまぁす」

朋「……」

美紗希「パーティー決行日はぁ、明後日です」

朋「明後日!? 急すぎない?」

美紗希「んーん、明後日じゃなくちゃいけない理由があるのぉ」

朋「そうなの? どんな理由?」

美紗希「うふふっ、それは、内緒っ♪」

朋「?? 飾り作るのとか、間に合うの?」

美紗希「はぁい、暇な人ぉ」

瑛梨華「HI・MA☆」

笑美「まぁ暇やな」

蓮実「そうですね、暇といえば、はい」

彩華「彩華もぉ」

朋「……」

P「ううぅ……」

朋「大丈夫だってば、もう……」

美紗希「当日までのさくらちゃんのコントロールはぁ、泉ちゃんと亜子ちゃんに任せてありまぁす」

笑美「そう言えばさくら、今日は珍しく事務所におらんな」

P「おいしいタイヤキ屋さんのチラシをあげたら大石と土屋を連れて飛んでいった」

笑美「飛んでったんか」

P「空を」

笑美「空を飛んでったんか、波やのに」

美紗希「質問ある人ー」

P「はい。どうして空は青いの?」

美紗希「波長の短い青色が空気中で屈折しやすくて空いっぱいに広がるからですねぇ。はい、他にはぁ?」

笑美「予算はどっから出るん?」

美紗希「DASH村方式になりまぁす。あとはぁ?」

P「はい。人間にとっての『生きる』って何?」

美紗希「トルストイの人生論にはぁ、愛していてこそ生きている、みたいに書いてありますよ。他はぁ?」

P「はい」

美紗希「プロデューサー以外でぇ」

P「なんでだ!」

朋「怒られないだけましと思いなさいよ……」

翌日

朋「なんだかんだでお金使っちゃったわね」

P「DASH村方式は無理があった。TOKIOは凄い」

朋「……ねぇ、やっぱりあたしもお金出すわ」

P「いらない」

朋「美紗希さんからは受け取ったのに」

P「衛藤はいい。俺と衛藤は共謀してるから」

朋「あたしは混ぜてくれないの?」

P「ノーコメント」

朋「……それってさ」

P「うん?」

朋「……あっ、やっぱり何でもない、凄い勘違い」

P「何が?」

朋「何でもないの。思い上がりも甚だしいって言うか……」

P「そうか。よし、じゃあ後はゲームセンターに寄って帰ろう」

朋「遊んでくのは、駄目なんじゃない?」

P「遊びじゃない」

朋「そうなの?」

P「宝石店の隣にゲームセンターが並ぶという妙な場所」

朋「なんだか不思議な見栄えがするわね……」

P「藤居は宝石とか興味あるか?」

朋「えっ? んー、一応女の子だし、きらきらしたものは好きだけど」

P「一応じゃなくても女の子に見える」

朋「どちらかというと占いの道具としてとか、石言葉とか、そういうのへの興味のほうが大きいかな」

P「そうか」

朋「でもこういうのにお金かけるのは、もうちょっと稼げるようになってからよね」

P「仕事たくさん取ってくる」

朋「うん、期待してる」

P「ではゲームセンターに突入だ」

朋「なにやるの?」

P「エイリアンアブダクション」

朋「なにそれ」

P「じゃあ手繋いで行こうな」

朋「……駄目でしょ、人いっぱいいるし、なんか恥ずかしいし」

P「あ、そう」

朋「普通にUFOキャッチャーじゃない」

P「うん」

朋「ぴにゃこら太取るの?」

P「うん、明日の村松パーティーのささやかなプレゼント」

朋「プレゼントならもう少しいいものあるでしょ……」

P「別に誕生日とかじゃないからいいものはあげない」

朋「あ、うん、そういえばそうなのよね」

P「そう」

朋「……明日から七月よね」

P「早い」

朋「そうね。……七月一日」

P「……」

朋「……」

P「あ、取れそう」

朋「え? あ、わっ、凄い! 一回で取れちゃうんだ」

P「得意」

朋「意外な才能ね……あっ、奥のぬいぐるみ可愛い」

P「あれは取るの難しいやつ」

朋「そうなんだ。やっぱりそういうのあるのね」

P「事務所に帰ってきました!」

朋「声大きくない?」

P「開けゴマ!」

朋「開くわけ無いでしょ……」

<カエッテキタ!

<ヤバイ

<アワワワワ

<カクシテ! カクシテ!

朋「何か騒がしいわね」

P「そうだな」

ガチャッ

P「ただいまー」

美紗希「あっ、プロデューサーおかえりー」

智絵里「はぁ、はぁ、お……おかえり、はぁ、おかえり、なさい、です……」

朋「智絵里ちゃん大丈夫?」

智絵里「だ、はぁ、はぁ……大丈夫、です、はぁ……」

朋「ならいいけど……。で、なに隠したの?」

美紗希「んー?」

笑美「なんも隠しとらんよ?」

朋「慌てたような声が外まで聞こえてたけど」

美紗希「あー、うん、あのぉ……さくらちゃんが帰って来たと思ってぇ」

朋「さくらちゃん?」

美紗希「うん、見ての通り、飾りとかぁ、横断幕とか作ってたからぁ」

朋「ふぅん……智絵里ちゃんホントに大丈夫?」

智絵里「は、はひっ、大丈夫、です……か、隠す係とかじゃ、ないです……」

朋「う、うん、そう……」

パーティー当日・夕方

彩華「じゃあー、さくらちゃんの好きなようにぃ、いちご乗っけちゃってぇ」

さくら「わぁい。真ん中とぉ、あと回りに並べてぇ」

彩華「さくらちゃん上手ぅ。どこかでこういうの習ってたのぉ?」

さくら「えっ? 習ってないです、これくらい簡単だもぉん」

彩華「そうなのぉ? すごーい! 不器用な彩華としてはぁ、尊敬しちゃうなぁ」

さくら「えへへぇ」

笑美「彩華のよいしょ能力ハンパないな」

朋「色んなパーティーで身に付けた社交術なんでしょ」

ガチャッ

美紗希「笑美ちゃん、朋ちゃんも」コソコソ

朋「あっ、美紗希さん、首尾はどうなの、お料理組は」コソコソ

美紗希「もうバッチリ、いつでもいけるよぉ」コソコソ

笑美「ほんなら後は、ニューウェーブにジュース買って来てーて頼んで」

朋「行ってもらってる間に、料理を運んで飾りつけ、で大丈夫よね」

美紗希「うん、そんな感じぃ」

さくら「あれー? この箱なんだろぉ?」

朋「っ!!」

笑美「あれマズイんちゃう? 横断幕とか入ってる箱やろ」

朋「見てないで止めなきゃ! ちょっと、待ってさくらちゃん!」

さくら「これたぶんー、プロデューサーさんの新しい謎のアイテムですよぉ。こっそり見ちゃおー」

朋「駄目! 待って、あの、それ、カブトムシ育ててるから」

さくら「えぇー、虫にがて。勝手に見ようとしてごめんなさぁい」

朋「それは、うん、いいんだけど……」

さくら「じゃあいちご乗せる作業に戻りまぁす」

朋「……」

笑美「カブトムシて」

朋「女の子が、開けたくなくなるようなのがいいと思って……」

美紗希「羽化するといいねっ」

笑美「卵産んだら分けてな」

朋「……二人ともやっぱりあたしのこと嫌いでしょ」

美紗希「ちょっと恥ずかしいくらい大好き」

笑美「ウチふじともグッズ二百個くらい持っとるで」

朋「二百個もグッズ出てないわよ」

笑美「まずふじとも占星術ボールペンが五百本」

美紗希「ふでばこ死んじゃう」

朋「いきなり二百超えてるけど」

さくら「あっ! こっちにも箱あります! なにかなー」

朋「……いちご乗せないの?」

さくら「あっ、そうか」

P「村松の出番だ!」

さくら「えっ、出番!? ……映画?」

P「映画じゃない。ジュース買って来る係」

さくら「早とちりしました」

P「そうか。大石と土屋と三人で行っておいで」

さくら「はぁい」

P「二千円あげるから好きなものたくさん買ってくるんだぞ」

さくら「了解でぇす」

P「ちゃんと持てるか?」

さくら「モテモテでぇす」

P「モテモテか」

さくら「でもイズミンはもっとモテモテですよぉ」

泉「そんなことないよ」

亜子「先週また告られてなかった?」

泉「あれは単に、お祭り行こうって誘われただけ。そのとき話したいことあるからって」

亜子「いや絶対いずみのこと好きやんそいつ」

泉「お祭りへの誘いがイコールで好意とは限らないんじゃない?」

亜子「マジかこの子……え、で、行くの?」

泉「ううん、断った。事務所のみんなと行きたいし、それ以外はいいかなって思って」

P「モテモテしている」

朋「何の話してるの? はい、エコバッグ渡しとくわね」

美紗希「さくらちゃんたち出てってから何分ぐらい経ったかなぁ」

智絵里「えっと、ええと、あの、四分、くらいです」

笑美「そろそろ戻ってくるな」

朋「案外時間かかるわね飾りつけ。予行演習しとくんだったわ」

智絵里「でも、用意の時間も、あんまりなくて……」

朋「うん、まぁ、言ってもしょうがないわよね。もうちょっとだから頑張りましょ」

亜季「料理の運び入れが完了いたしました!」

愛梨「あっ、亜季さーん、横断幕かけるの手伝ってくださーい!」

亜季「お任せを!」

『さくらちゃんが可愛い記念日』

朋「最終的に可愛い記念日で落ち着いたのね」

笑美「せやな。あれの字、ウチが書いてん」

朋「あっ、料理の盛り付けはこのままでいいの?」

笑美「あれ無視? さっきの仕返しか? カブトムシとまるで無視がかかってたりする?」

P「あとローストチキン盛るだけ。でもトング小さい、掴みにくい」

朋「大丈夫? 代わろうか?」

P「取りにくっ」

笑美「鶏肉っ」

朋「そういうのいいから」

< We don't need your money, money, money ♪

蓮実「亜子ちゃんの声、ですね。近づいてきます」

笑美「Price Tag 歌いながら帰ってきよった」

美紗希「『あなたのお金なんか必要ない』って、嘘でしょ亜子ちゃん……」

笑美「money, money,って言いたいだけちゃうか?」

朋「なに歌っててもいいけど、ちょっとまずいわね」

智絵里「ど、ど、どうしよう……」

美紗希「朋ちゃん、三十秒だけ時間稼いできてもらえない?」

朋「ん、やってみる」

美紗希「お願ぁい」

朋「でも亜子ちゃんが大声で歌って知らせてくれて助かったわね」

美紗希「……」

朋「大声で、知らせて、合図……ん?」

美紗希「朋ちゃん早めにっ、入ってきちゃうよぉ」

朋「あっ、ごめん、そうよね」

ガチャッ パタンッ

朋「あっ、三人とも、お帰り」

さくら「ただいまー。いっぱい買って来ましたよぉ」

朋「うん、ありがと。どんなの買ったの?」

さくら「イチゴオレとぉ、なっちゃんとぉ、あとお茶とぉ、色々でぇす」

朋「重かったでしょ」

さくら「三人で持ったから平気ですよぉ。じゃあ早速パーティーにしましょー」

朋「あっ、待って」

さくら「えっ?」

朋「えっと、その……先日へびに襲われたとき、あたしは思わず聞いたのよ」

さくら「へび!? えー、大丈夫でしたかぁ?」

朋「あっ、うん。で、『ねえあなた、もしかして毒持ってる?』ってへびに聞いたの」

さくら「へびに話しかけちゃったんですかぁ……」

朋「……そしたらそのへび何て言ったと思う?」

さくら「??」

朋「『Yes, I have』、ですってっ」

さくら「へびが喋った!?」

亜子「さくら、そこじゃない」

泉「ふふっ」

朋「……入ろっか」

亜子「朋さんちょい待ち」

朋「うん?」

亜子「ちょっと手相見てもらえない?」

朋「?? うん、まぁ、いいけど」

亜子「運命線ってどれ?」

朋「これ、真ん中の、縦の……亜子ちゃんいい手してるわね」

亜子「そう?」

prrrrrrrr prrrrrrrr

朋「ん? 電話?」

亜子「あっ、アタシだ……朋さん手相、やっぱり後でええわ」

朋「?」

ガチャッ

朋「……」ソー

美紗希「……」オッケー

朋「はい、入って入って」

さくら「わぁい……あれぇ!? すごい変わってる!?」

朋「ふふっ、どうかな、びっくりした?」

さくら「ふゎい……思ってたよりスゴい」

笑美「さくらそれ素の感想やろ」

朋「?」

美紗希「じゃあ、さくらちゃんが可愛い記念日パーティー、始めよっかぁ」

朋「そうね、お料理冷めちゃわないうちに食べなきゃ」

さくら「すごい! 鳥! おっきい鳥」

P「俺が盛り付けたやつ。センスが窺える」

さくら「食べると手がぺたぺたしそう」

P「なんとおしぼりが用意してある」

さくら「準備万端でぇす」

P「あと村松にプレゼント」

さくら「プレゼント!」

P「ぴにゃこら太」

さくら「……わぁー」

P「嬉しいか?」

さくら「……」

P「……」

さくら「……わぁー」

P「凄く嬉しそう」

P「料理おいしかった」

笑美「となると次は、デザートタイムやな」

愛梨「さくらちゃんっ、この箱あけてみて下さい」

さくら「なんだろー、なんだろうなー」

P「棒読み感」

さくら「えいっ」

パカッ

さくら「ケーキです! ピンクのケーキ、可愛い」

愛梨「クリームにイチゴのソースを練り込んでみました」

さくら「ちっちゃい可愛い人が乗ってますよぉ」

愛梨「私なりにさくらちゃんを作ってみたんですっ。それも食べられますよー」

さくら「すごく可愛い」

P「まとめた髪の筆みたいな部分もよく表現できている」

さくら「筆?」

さくら「さっそく切り分けましょー」

愛梨「ええと、何等分?」

笑美「えー、何人おるん? ひいふうみい……十三人か」

蓮実「夕方レッスンの皆さんがそろそろ合流するので、十七人ですね」

P「担当してる子みんな居る」

美紗希「響子ちゃんがトレーナーさんも連れてくるって言ってたよぉ」

朋「けっこう細かくなるわね……あれ? こっちの箱は? これもケーキ?」

愛梨「あっ、はい、そうです。さくらちゃんの作ったケーキも入れて三個あるから、一つを六等分でちょうどですね」

さくら「そろそろ準備しなきゃ。あれ、どこだっけ? ……あった」テレーン

朋「なんでクラッカー?」

愛梨「こっちのケーキは私が切るので、そっちは朋さんお願いします」

朋「わかった。じゃあさくらちゃん、こっちの箱も開けちゃって」

さくら「いま両手がふさがってるのでぇ」

朋「なんでクラッカー構えてるのよ……じゃあ開けちゃうわね」

パカッ

『朋ちゃんお誕生日おめでとう』

朋「……」

カポッ

P「何故また被せた」

朋「なんか、あの……えっ、何これ?」

P「サプライズなので」

パンッ

朋「きゃっ! えっ、何?」

さくら「クラッカーでぇす」

朋「……見えてたのにビックリした」

P「サプライズなので」

笑美「動揺が見て取れるな。そんなら、せーのでっ」

パンパンッ パパパンッ パンッ

朋「!」ビクッ

「「「朋ちゃん、お誕生日おめでとー!」」」

朋「えっ? ……ええっ!?」

P「藤居おめでとう!」

朋「……?」

美紗希「朋ちゃん固まっちゃってるぅ」

朋「えっ、だって、今日はさくらちゃんの……横断幕だって」

美紗希「ひっくり返しまぁす」

『さくらちゃんが可愛い記念日』

クルッ

『朋ちゃんのお誕生日パーティー!!』

朋「……」ポカーン

瑛梨華「あれ、あれー!? 瑛梨華ちゃんのクラッカーNA・RA・NA・I☆ ヒモ切れた」

P「赤西をハリセンで叩いて同じような音を出そう」

瑛梨華「YA・ME・TE☆」

P「みんなプレゼント渡したか?」

蓮実「あっ、私がまだ……どうぞ、硝子細工のインテリアです」

朋「ありがとう。凄い、林檎の形の宝石みたい」

愛海「あたしからは下着のセットね。タグ見てみてタグ」

朋「……サイズぴったりなんだけど」

愛海「でしょ?」

朋「……いろいろ言いたいけど、あの、ありがとう」

イヴ「おやおや~? プレゼントと言えば~、どなたかお忘れではありませんか~?」

美紗希「あたしから朋ちゃんにぃ、石鹸の詰め合わせをプレゼントー」

朋「ありがと、美紗希さん。大事に使わせてもらうから」

イヴ「おや~?」

瑛梨華「そろそろ瑛梨華ちゃんのプレゼントが見たいよね!? 待ってたよね!?」

里美「金の延べ棒と、テーマパークの招待券なら、どちらがよろしいでしょうかぁ」

朋「……招待券、かな」

里美「ほわぁ、では延べ棒はドアのストッパーにしますぅ」

瑛梨華「そろそろ瑛梨華ちゃんの! プレゼント!」

P「自己主張の強い奴ほど後回しになる不思議」

笑美「あの、まさかこのまま延べ棒スルーせぇへんよな?」

P「では最後に俺からのプレゼント。これだ、ぬいぐるみ」

朋「……あっ、これ、取るの難しいって言ってたぬいぐるみ」

P「そう。UFOキャッチャーの景品」

美紗希「……」

彩華「……」

笑美「……」

朋「えっと……なんで静かになったの? あの、普通に嬉しいからね? 取るのに結構かかったでしょ」

P「二百円で取れた」

朋「そ、そうなの……ええと……可愛いし、凄く嬉しい、大事にするから」

P「と見せかけて本当のプレゼントはぬいぐるみの首にかかっている!」

朋「えっ? あ、ほんとだ」

智絵里「わぁ、可愛いです、ネックレス」

亜季「月と、星の飾りでありますな」

朋「……この、星の真ん中に付いてる石って」

P「ペリドット」

朋「だよね、そうだよね……えっ、ど、どうしよう……」

笑美「朋はんが今までに無いくらい赤くなってんねんけど」

美紗希「ペリドットってパワーストーン? 石言葉とかぁ、あったよね?」

朋「そ、そうだっけ……あの、わかんないけど」

美紗希「じゃあー、Google先生に聞いてあげるぅ」

朋「あっ、待って! 違うの、ほんとは知ってて……あの……」

美紗希「……うん、なら調べなくておっけーかなぁ。それじゃあそろそろぉ」

笑美「せやな。料理の残り始末して、ちょっと騒いで後片付けと参るか」

さくら「……」モグモグ

笑美「……ずっと食べとったんとは、ちゃうやんな?」

さくら「ん?」

帰り道

朋「響子ちゃん、片付け凄く張り切ってたわね」

P「そうだな。レッスンあって料理に参加できなかったし、あと出番無かったし」

朋「出番?」

P「それにしても俺の考えた藤居サプライズ作戦は完璧だったな」

朋「自分で言っちゃうんだ」

P「藤居は今回のサプライズに気付いてたか?」

朋「ん、んー……もしかしたら、ひょっとして、ってくらいには思ってたけど」

P「そうか」

朋「……ネタバレされてから思い返してみると、気付かせようとしてるとしか思えない言動が色々あったわね」

P「うん」

朋「いろいろ合図とか送り合ってたし、無用心な会話とか……」

P「ときどき藤居にだけ秘密にしたりとか、隠したりとか」

朋「うん。まあ、けっきょく直前のばたばたで全部飛んじゃってて、見事にサプライズされちゃったけど」

P「当日ばたばたするのも作戦のうち」

朋「そうなの?」

P「藤居に気付かれちゃうのも作戦のうち」

朋「えー、それはいま作ったでしょ」

P「本当である。藤居が自分の誕生日忘れられてるって思って悲しくならないように」

朋「……また調子のいいこと言ってる」

P「気付かせようとしてるとしか思えない言動」

朋「……」

P「藤居と俺は考えることが似てる」

P「そろそろ駅に着く」

朋「……」

P「はいこれ、みんなからのプレゼント、重いから気をつけて持って帰るように」

朋「……あの」

P「うん?」

朋「えっと、荷物あたしが全部持つから、っていうかここまで持ってもらってありがとうなんだけど」

P「どういたしまして」

朋「あの……もう一駅歩いたりとか、そういうのは、駄目だよね。やっぱり何でもない」

P「ん? いいよ、もう一駅くらい。では行こう」

朋「あっ、荷物……」

P「平気だ。生肉とかメロンをダンベル代わりに鍛えてるから」

朋「……」

P「……あっ、星みつけた星、二個ある」

朋「……無駄に歩かせちゃってごめん」

P「えっ、いや無駄じゃなかろうに。藤居がいるから楽しい」

朋「……」

P「あっ、あれはオリオン座だ」

朋「……」

P「嘘である」

朋「……」

P「でも冬になったらオリオン座みつけられる。オリオン座は得意」

朋「……やっぱり半分持つ」

P「うん?」

朋「荷物、半分持つ」

P「そうか。はい、じゃあこれ半分。藤居は優しいな、心遣いばっちり」

朋「……」

P「で、俺はこと座が苦手かな。全然ことに見えないし、見つけられる気がしない」

朋「……」

P「……?」

朋「……今日は、手繋ぐって、言わないの?」

P「ん? ……ああ、じゃあちょうど片手が開いたから、手繋いで行こうな」

朋「……うん」

朋「今日は色々ありがと」

P「うん」

朋「いま送ってもらってるのも、パーティーも……あとプレゼントも」

P「うん」

朋「……もうすぐ、次の駅ついちゃうわね」

P「そうだな」

朋「……ほんとにありがと」

P「どういたしまして」

朋「……」

P「……」

朋「……あのさ、一個、伝えたいことが、あって」

P「どうぞ」

朋「……聞く?」

P「もちろん」

朋「あの、でも、パーティーの余韻で変なテンションだし、どきどきしてるし……変なこと言うかもよ?」

P「藤居が言いたいなら、何でも聞くつもり」

朋「……じゃあ、言うけど」

P「うん」

朋「あのね」

P「……」

朋「その……」

P「……」

朋「……」

P「……」

朋「……こと座なんだけど、あの大きい星が目印なの。ほら見て、ベガっていう、大三角形の一部」

P「えっマジか。……ベガを教えてもらってもこと座が発見できない」

翌日

亜子「このドアストッパー、家にもうちょい良いのあるよ? 取替えとこか?」

P「いや、俺の家にももっと良いのあるから、それと取り替える」

瑛梨華「……」ソワソワ

亜子「……半分こしよか」

P「良い案」

笑美「それ重いやろ? 三分の一くらいがええんちゃう?」

里美「ほわぁ」

瑛梨華「……そろそろ瑛梨華ちゃんのお誕生日! DA・NE☆」

P「ん?」

瑛梨華「サプライズあるよね? なんかいつもの事務所だけど、おっきいケーキとか準備してるよね?」

P「サプライズあるよ」

瑛梨華「DA・YO・NE☆ これでひと安心、じゃあレッスン行ってくるね!」

ガチャッ バタンッ

朋「……ほんとにやるの?」

P「やる」

笑美「パーティーと見せかけて武道館ライブの仕事って、サプライズどころの話ちゃうで」

智絵里「わ、私だったら……気絶しちゃう、かもです」

P「赤西なら大丈夫」

笑美「んー、確かに瑛梨華なら、いけそうな気もせんでもないけど……」

P「赤西は芸人魂あるから」

笑美「……そう考えるとおいしいネタやな」

朋「あの、芸人じゃなくてアイドルなんだけど……」

P「……!」

笑美「……!」

朋「何その反応」

美紗希「……なんか朋ちゃんとプロデューサー、距離近くない?」

朋「えっ、そうかな?」

P「藤居おいでおいで」

朋「……それは、まだ、ごめん」

P「そうか」

美紗希「なんかいつもの朋ちゃんじゃない……」

以上です。
大切なのはお祝いする気持ちであって、それに比べたら日付などほんの些細な問題に過ぎず、本当に朋ちゃんごめんなさい。
あとおめでとう。HTML化の依頼を出した後、五日前に買ったケーキを恐る恐る食べて参ります。

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のシリーズになります。名前付き複数Pとあまり好まれない要素も含みますのでご注意を。
朋ちゃんを好きになってもらえて嬉しく思います。あわよくば朋ちゃんssも増えますように。みうさぎssも待ってます。
ご覧頂きましてありがとうございました。

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