穂乃果「叶え!私たちの…夢!!」 (46)

※ほのえり 

地の文あり

初めて書いたので色々と至らない点が多いと思いますがそれでよければどうぞ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1404492406


μ'sのラストライブとなったラブライブ本選から数年の時が経ち、いろんなことが変わりました。

私たちの母校、音乃木坂学院はその後も何度も廃校に危機にさらされるものの生徒数を回復させることに成功し…廃校問題を解決させた

現在はかのUT-X学園と姉妹校として協力し合っているし…

μ'sのライバルA-RIZEはその後もアイドル活動を続け、今では日本を代表するトップアイドルの一つとなっています。

はてさて、私たちμ'sの今ですが…メンバー全員が新しい夢を見つけました。

それぞれが自分たちの夢を叶えるため…自分で自分たちの物語を叶えるために今は離れて生活をしています。

でも、離れていても心は一緒。μ'sは今も繋がっているのです。

私、高坂穂乃果も例に漏れず新しい夢を見つけました。

今日も今日とて夢に向かってまっしぐらです!

その夢とは…

「ほのかー!おきゃくさーん!」

「はーい!今行きまーす!」

「お待たせしました!ようこそ!穂むらへ!」

そう、自分の実家、和菓子屋・穂むらを常に行列ができるような有名なお店にすることでした。

究極的な目標はミシェランガイドに店の名前を載せること!

店を継ぐと決めた時に決めたその目標にはまだまだ遠いけれど…やるったらやる!!!!!

この精神で毎日ブレイク必至な新商品を作るべく、毎日店番に立ちながら日夜試行錯誤に励んでいます!!!!

いつも結構人の来る時間帯である午後3時を回ったあたり。

少し暇になって、私はカウンター側に置かれた小さな木の椅子を引っ張り出し腰掛けます。

立ち仕事っていうのは疲れるなぁ…学生の頃には感じなかったお母さんの苦労を身をもって知ったよー…

今、穂むらの店の店番はほとんど穂乃果がやっています

一応、新メニューの研究をする日の午前中とか私たちのお休みの日とかはお母さんに任せていますが、それ以外の日は基本的に穂乃果が店番に立つことになっている。

そのおかげか少しづつだけど、常連さんに対しての対応の仕方とか客層に分けてどういう商品を勧めるべきなのかとかが見えてきて

少しづつ前に進めているのかなぁとか私は感じ始めていました

お客さんがいなく、喋る相手のいない状況が少し我慢ならなくなった私は暖簾をくぐり、作業場に顔を出してみることにした。

いくら店番担当って言っても喋らず、何もせず待ち続けるっていうのは苦行でしかない。暖簾をくぐって私は作業場に顔を出しました

いつもならばいつも通りの険しい顔で菓子の成形を行っているはずのお父さんの姿はなく、そこにいたのは一人だけ。

「あれ?お父さんは?」

「御義父様なら、ここから先は絵里に任せるって言って煙草を蒸しに出かけられたわよ?」

作業場でお菓子の整形を行っていたのはお父さんではなく、私の恋人の絢瀬絵里ちゃん。彼女ただひとりでした

私と絵里ちゃんと付き合い始めたのは高校2年の最後。絵里ちゃんたち、3年生の卒業式の日のこと。

卒業式が終わり、多くの生徒が下校してほとんどの生徒が学校からいなくなった屋上。

μ'sのみんなの前で私は絵里ちゃんから告白を受けました。

私も前から絵里ちゃんのことが好きだったから、その時は涙が出てしまうくらい嬉しくて。

私は2つ返事でそれを受け入れて、それからずっと穂乃果と絵里ちゃんはずっと恋人として付き合い続けています

そして今、絵里ちゃんは紆余曲折の結果。うちのお店で和菓子職人として働いているのです

「もー…お父さんったら。あれだけ煙草は体に良くないって言ってるのに…」

私は軽くため息をついて、お父さんの不摂生を憂う。

体に悪いって医学的にも解明されているはずなのになんでみんなタバコなんて吸い続けるんだろう?

お金も馬鹿にならないのに。

穂乃果にとっては永遠の謎である

それを聞いた絵里ちゃんはかるく苦笑を浮かべると

「お父様曰く、ライフワークらしいわよ?でもお体には気をつけてくださいとは言っておいたけど」

絵里ちゃんはどうにもお父さんに甘いような気がする

こういう不摂生は絵里ちゃんは結構嫌なはずなのに

「もっと強く言ってもいいんだよ?お父さん、絵里ちゃんの言うことは素直に聞くし」

「うーん…師匠な訳だし、恩義もあるから…おいそれとはいかないわよ」

答えながら絵里ちゃんは成形作業を続ける。

うーん…そんなものなのかなぁ…?

そういうものなのよ。と絵里ちゃんは言う。

絵里ちゃんはもっとお父さんとお母さんに気を許してもいいと思うんだけどな…

あんなに気に入られてるのに

「それでね。絵里ちゃん、さっきお客さんから聞いた話なんだけど…」

その後も私と絵里ちゃんは他愛もない話をしながら穏やかな時間を過ごします

時間にすると20分くらいですが、この時間は私にとっては1日における重要な時間です。

なぜなら大好きな絵里ちゃんと一緒にいて、一緒に夢を追いかけられる幸せを感じることができる時間。

そう思うと思わず私はつい嬉しくなって、笑みがこぼれてしまう

「えへへ…」

「どうしたの?穂乃果?」

絵里ちゃんは不思議そうに尋ねてきます。しあわせだな…そんな気持ちが心を飛び出して体全体を支配する

想いを抑えられなくなった私は絵里ちゃんの背後に回り、絵里ちゃんの華奢なその身に抱きついた

「ほのか…作業中なんだけど」

絵里ちゃんは困ったような表情を浮かべて、穂乃果に体を離すように言ってきます。

でも、穂乃果はしあわせだから。嬉しいから。考えるより先に言葉のほうが先に出てきてしまう

「えりちゃん、大好き」

体から溢れてくる気持ちに私は全てを委ね、絵里ちゃんの背中に体を押し付けより密着するようにくっついた

穂乃果がそう言ったら絵里ちゃんははにかみながら嬉しそうに微笑んでくれて。

私は絵里ちゃんのこの笑顔が大好き。私も余計に嬉しくなってしまう。

「私も大好きよ。穂乃果」

たったこれだけのやりとりなのに、私は幸せを感じずにはいられない。

こうやってこうしていられるのは絵里ちゃんがいて、私を好きでいてくれて。ともに一生を歩き続けると言ってくれたからだから。

はにかんだ絵里ちゃんの笑顔とその一言だけで私は満足がいってしまい、体を離す。

たった一言だけでわかっちゃうから。心だけじゃなく…体でも

絵里ちゃんもきっと穂乃果と同じ気持ちで、幸せを感じてくれているんだということが。

「ところでほのか?」

「なに?絵里ちゃん?」

先ほどのやり取りから数分、絵里ちゃんの作業を横からしばらく眺めていたらいきなり絵里ちゃんが口を開き、穂乃果に尋ねた

「今日は新メニューの試作品の発表会だったけど…新メニューの試作品はできたのかしら?」

私たちがお店を任せられるようになってからは2ヶ月に1度、穂むらでは新メニューを出すことになっています

今日はその新メニューの試作品をお互いに発表して試食し、今後発売する新メニューの方向性を決める日になっていました

行列ができるようなお店になるためにはヒット商品の創作が必需!穂むまんに続くヒット商品を作るのが私たちの一代目標なのです

もちろん今日も私は自信の新作を用意している

しかも今回の試作品は超のつくほど良い出来!絵里ちゃんを驚かせられると意気込んでいたのです

「もちろん!絵里ちゃんは?」

「えぇ、今回のは自信作よ。…って、穂乃果も自信ありげな感じね」

ID変わってるだろうけど1です
続き行きます
とりあえずageときますね

絵里ちゃんは意外そうな表情を浮かべて私に尋ねてきた

最近は絵里ちゃんに新作の採用枠を奪われっぱなしだったからね!今日は気合を入れて準備したよ!

なんていったって今回は生地からこだわったからね!

「うん!今日のは凄いよ~なんてったって…」

「はいはい。それは後で聞くから…というより、そういうのは後のお楽しみなんじゃないの?」

そうでした。こういうのは夜に試食会で教えて驚いてもらわないと。雪穂と亜里沙ちゃんも驚くだろうなぁ…

私の新メニューに雪穂と亜里沙ちゃんと驚く姿が見えるようで少しだけ、笑みがこぼれる

そうしていると店先からお客さんの呼ぶ声が聞こえてくる

「すいませーん」

今日のこの時間に来るって言うことはあのお客さんかな。

確か、お饅頭を買っていくお客さんだったはず…

絵里ちゃんが顔を動かして、穂乃果を促すように言う

「ほら、お客さんが呼んでるわよ?行かないと」

「あ、はーい!それじゃあ絵里ちゃん。また後でね!」

「えぇ、頑張ってね」

私は絵里ちゃんと軽く言葉を交わして、また店番に戻っていくのでした

忙しい1日も終わりに近づいた夜。

いつも通りの閉店時間に合わせて暖簾を下ろして穂むらの1日は終わります。

「ふぃ~疲れたぁ~…」

暖簾を店内にしまい、ほっと一つ息をつく。

今日は割とお客さんが多かったからなー…結構疲れちゃったよ

「ふふ、お疲れ様。ほのか」

お茶の入ったお椀を二つお盆に持った絵里ちゃんが労ってくれる

絵里ちゃんは店の中に備えられているテーブルの1つに腰掛けると手でこちらに来るように催促した

「お疲れ~絵里ちゃん。ふぅ、今日は常連のお婆ちゃんたちが多かったから結構立ってる時間が長くなっちゃって疲れちゃったよ」

「ふふ、穂乃果は近くのおばあさん達にも大人気だものね?」

椅子に座って絵里ちゃんが淹れてくれたお茶を一口啜る。

最近絵里ちゃんはお茶に凝っているらしく、最近はいろんな種類のお茶を淹れてくれます。

このお茶も美味しい。抹茶みたいだけど…

「今日は抹茶にしてみたわ。抹茶を立てるのは初めてだったのだけれど…どうかしら?」

「美味しいよ!!抹茶って初めて飲んだけどこんなに飲みやすいものだったんだね!」

絵里ちゃんの淹れてくれた抹茶は一切止まることなくスムーズに嚥下され私の胃の中に吸い込まれていく

抹茶アイスとかそういうお菓子に転用された抹茶というのはいくらでも食べたことがあるけど、実際飲んでみるとこうも違うとは!

もちろん、絵里ちゃんはこういうことに関してはかなり勉強して凝ったものを作ってくるからというのもあるけど

絵里ちゃんが入れてくれたものだと知っているから余計に美味しく感じるというのもあるんだろうなとも思った

「…ありがと。いい抹茶を作ってる農家さんがあるって花陽が言ってたのを思い出して。そこから取り寄せたのよ」

花陽ちゃんもまた私たちと同様に夢を追いかけ、歩んでいます。

その夢はなんと…

「そうなんだ…花陽ちゃんたち、大変だろうなぁ~農家って休みないんでしょ??」

そう、彼女はその有り余るお米への愛を自分で昇華すべく自らお米を生産する立場になることを決め、今は静岡の方の田舎で農家をやっています。

自分の理想のお米を作りたいです!そして、それをみんなに味わってほしい!そう言って田舎に旅立った彼女は今となっては立派な一農業従業者。

大学で農業を学び、彼女の親族が手放す予定だという農地をもらった彼女は従来のお米を作りながら色々研究を重ねているらしい

若い農業従事者ということで周りの人達にも愛されているらしい彼女はよく知り合いの農家さんからもらった野菜や果物をよく送ってくれるのです

「そうね。でも、花陽は楽しいらしいからいいんじゃないかしら」

色んなものを試して、成功や失敗を繰り返すのが楽しいの!って息を荒くして言ってたわ。と絵里ちゃんは花陽ちゃんのモノマネをしながらお茶目に笑う

夢を追いかけ続けているのは私たちだけじゃなくて、μ'sのみんなもそうだった。みんなみんな一生懸命頑張っていていつも刺激を与えられます

「凛ちゃんも大変そうだよね。かよちゃんの手伝いしながら他のお仕事やってるんだし」

凛ちゃんは花陽ちゃんと一緒に田舎に行き、近くの幼稚園で先生をやっています。

元々体を動かすのが好きだった凛ちゃんは元気な子供たちに振り回されながらも楽しくやっているみたい

休みの日は花陽ちゃんを手伝って、お米作りに精を出しているそうで…

かよちんの夢は凛の夢だから!そう言った彼女たちもまた一生懸命に二人の夢を追っているようです

「でも楽しいみたいよ?送られてきた抹茶に同封されてた写真もいい顔をしていたし」

「何それ?!ほのか、見てないよ!」

え、何それ。初耳なんですけど!私、手紙はいっつも楽しみにしてるのに!

「それはそうよ。…見せてないもの」

「絵里ちゃんずるいよー」

そういうのは早く見せて欲しかった。みんなとはメールや電話等で頻繁に連絡は取り合っているけど

不定期で贈ったり贈られたりしてくる手紙は聞けなかったことだったり、それだけでは見えてこない他の人とのつながりであったりとかが見えてくるようで毎回楽しみにしている事柄だったから。

絵里ちゃんもそれは知っているはずだけど…

「ごめんなさい。でも、この抹茶が今日の試作品の秘密兵器なんだから…しょうがないんじゃないかしら?」

「え、そうなの?」

そうなんだ。最近お茶に凝ってたのはそういうことだったんだね。

お茶を使ったお菓子が今回の絵里ちゃんの新メニューなんだ…

すっごく楽しみだよ!

「えぇ、もう隠す意味もないしね。終わったら見せてあげるわ」

「やったー!」

これが終わったら絵里ちゃんと一緒にお返事を考えなきゃね!

花陽ちゃんたちも楽しみにしてるだろうし!毎回新作のお菓子を送ってるけど、喜んでくれてるみたいだし!

絵里ちゃんが淹れてくれた抹茶を飲み終えると店側に玄関が開いて、2人の人間が入ってくる。

雪穂と亜里沙ちゃんだ

「ただいまー…ってココにいたんだ」

「お、お邪魔します」

「お、来たねー!いらっしゃい!」

雪穂と亜里沙ちゃんも私たちと同じで恋人同士。姉同士がカップルならば妹同士もカップル。

付き合い始めたときは両親に申し訳が立たないなぁと感じてしまったのは内緒です

2人はここから少し離れた場所で2人で暮らしていて、それぞれ違う仕事を持っています

1ヶ月に1度、こうして新メニューを検討するときには雪穂と亜里沙ちゃんに第3者としての意見を聞くことになっています

雪穂も亜里沙ちゃんもスーツ姿。仕事が終わってから直行してくれたのかな?ありがたやありがたや…

「いらっしゃい。いつも悪いわね…付き合わせちゃって」

「いえいえ、晩ご飯食べなくてよくなるし絵里さんのお菓子美味しいし。全然大丈夫ですよ」

「大丈夫だよお姉ちゃん!亜里沙、和菓子、大好きだから!」

「2人とも…ありがとうね。待ってて、お茶を淹れてくるから。穂乃果もここで待ってていいわよ。あなたの分の試作品も持ってくるから」

そう言って絵里ちゃんは席を立つと、暖簾の中に消えていった。

「ハラショー!今日も楽しみです!仕事中はこのために頑張ってきました!!!!」

「仕事帰りで直行コースとは思わなかったよ…むぅ、あのセクハラ部長め…」

雪歩と亜里沙ちゃんも席についていよいよ試食会といった様相に入っていく。

品評を貰うときの緊張はやっぱり慣れません。

だって、美味しいって言ってもらうために私たちは頑張っているわけで

緊張モードに入る私を差し置いて二人はすっかり駄弁りモードに突入していた

「で、亜里沙。今日は仕事どうだったの?」

「聞いてよ雪穂~あのね…」

傍から見る限りではこの二人の関係性はは中学生時代からあまり変わっていないような気がする

亜里沙ちゃんは亜里沙ちゃんだし、雪穂は雪穂だし。雪穂があまり亜里沙ちゃんと二人きりになるとどうなるかを知らないというのはあるけど

絵里ちゃん言うにはもしかしたら私達より進んでいるかもとか言ってたけどどうなんだろ。とてもそうは見えないけど。

「でね…最悪だったの~お菓子のために頑張ったんだ!褒めて!」

「…いや、お菓子以外のためにも頑張ってよ」

「だって、2人のお菓子とっても美味しいんだもん!今日はそのことだけをずっと考えていたんだもん!!!」

「まぁ、それはわかるけど…というか今日はそのことしか考えてなかったってさっき言ってたけど例の件は忘れてないよね?」

亜里沙ちゃんと雪穂は対面に座る私に目もくれず、ふたりの会話を楽しんでいる。

うーん。こうして見るとこの2人もカップルなんだなぁと感じるなぁ。何か、踏み込み難い空間みたいなのが展開されている感じがする…

色々雪穂&亜里沙ちゃんコンビについて観察しているうちに私の中で興味が出てくる。今度、雪穂が実家に泊まる時にいろいろ聞いてみちゃおうかな。

これまでは雪穂が嫌がるかなと思って聞かなかったけれど、全然知らないというのも少し問題だったのかも。

話せる相手が少ない話な以上、雪穂が自分から話に行くというのは難しいんだろうからそこは自分から話を聞きに行くべきだったのかもしれない。少しだけ後悔する

のちのち相談されることもあるかもしれないし、話を聞きたいし聞いてあげたいし。今度、2人で話し合ってみようかな

せっかく血のつながりのある姉妹なんだしね。私がそう心に決めたところで絵里ちゃんが作業場から抹茶の入ったお椀を4つもって戻ってきた

「お待たせ。抹茶を淹れてみたからお菓子と一緒にに食べてね?」

「ハラショー!抹茶美味しそう!」

「さて、お腹すいたし早く食べさせてくださいよ~あ、お姉ちゃんのはいいですけど」

「雪穂…お姉ちゃんに対してそれはひどいんじゃない?!」

実は前回の穂乃果の作品は失敗作。雪穂から酷評されてしまっていました。

そのせいか今日の雪穂はいささか…いや、だいぶ辛辣です。

むむむ、前回と今回は違うんだからね!

「ふふん。そう言われたくないんだったらたまにはスゴイのを作ってきてから言ってよね!」

「むむむ…」

「でも、穂乃果。今回のは自信作なんでしょう?」

「!そうそう!そうなんだよ!」

穂乃果が困っていた時に絵里ちゃんが助け舟を出してくれる

さすが絵里ちゃん!そうなんだよ!自信作なんだよ!今日のは!!

それを聞いた雪穂はふーん…と軽く聞き流して右手の指先を弄りながら言う

「…これはゲテ物級を想像しとくべきかもねー」

「ちょっとぉ!?」

流石にそれは失礼すぎませんか妹さん!!

いくら私でもゲテモノ料理なんて作らないから!

そう不満を漏らして抗議する私を見た雪穂はあははと笑うとじょーだんだよ、じょーだん。と笑顔で言う。

最近調子に乗りすぎてるね雪穂…これは教育的指導(くすぐりの刑)が必要だね!と私は刑の近日実行を決めた

そんなことをしてる裏では亜里沙ちゃんが興奮気味に絵里ちゃんに喋りかけていた

「ハラショー!ゲテ物、亜里沙初めて食べるよ!」

「…亜里沙。ゲテ物は褒め言葉じゃないのよ…?」

亜里沙ちゃん…期待してくれるのは嬉しいんだけど。ゲテモノなんて作れないからね?

時々どこかズれた発言をするところも学生時代から変わらなく、童顔なのも変わらない亜里沙ちゃん。

数年前にとうに通り過ぎた学生時代とあまり変わっていないように思えます。

絵里ちゃんもそうだろうけど私も彼女のことが時々、心配になる。危なっかしいんだよね、穂乃果が言えたことじゃないけど

まぁ、社会人だから仕事とプライベートはちゃんと区別してるのかもしれないけど。

「お姉ちゃん、とりあえず早く食べようよ。アリサの天然ボケに付き合ってたら日が昇っちゃう」

このままじゃ埒が明かないと判断したのか雪穂は試食会の開始を急かしてくる。

確かにこのままじゃいつまで経っても始まらないかも…

すると、亜里沙ちゃんにゲテモノ料理についての解説をしていたであろう絵里ちゃんがいきなり切り出した

「このままじゃ埒があかないわね…穂乃果、早く始めてしまいましょう?」

絵里ちゃんも雪穂と同じ結論にたどり着いたようで、亜里沙ちゃんとの会話を途中で無理やり中断して試食会の開始を訴えてくる

私としてはこういう時間も好きなので構わないんだけど。みんながそういう以上仕方ないかな。

早速開始を宣言しよう。自分のお菓子の評価も気になるけど、絵里ちゃんのお菓子も楽しみだ!

「わかった。じゃ、始めようか!今回は絵里ちゃんからスタートで…」

「むむむ…いいじゃん!!!!たまには素直に褒めてよー!!!!」ギャー!

「…褒められたいくらいて騒ぐな!子供か!」

ポカッ。

雪穂は軽く私の頭を叩いてツッコミを入れました。むぅ…雪穂はいつも手厳しいなぁ。

こんな感じで私と雪歩がふざけ合っている隣では絵里ちゃんと亜里沙ちゃんがこちらを見ながらくすくすと笑っていて。

私も雪穂も二人に釣られるようにして笑ってしまう。雪穂と亜里沙ちゃんも、なんだかんだ言いつつ予定を調整してくれるのは

こういう時間を過ごせるというのが嬉しいのではないかなと私は思っています。

私たちも楽しいし、これからもこの試食会は続けていきたいなぁ…

ひとしきり笑いつくすと雪穂は急に真面目な表情になります。

なんだろ?真剣な話なのかな?そう思っていると…

「…正直、今回のは両方とも採用でいいと思います。試作品で終わらせるの、もったいない」

雪穂が私の試作品と絵里ちゃんの試作品。両方を持ちながら優しげな表情に変えると嬉しそうに言った。

亜里沙ちゃんもそれに同調するように頷くと、両手で私と絵里ちゃんの手を片方ずつ握る。

そうして、嬉しそうに微笑むと目を輝かせながら前に顔を突き出しながら前のめりになりつつ言う

「そうですよ!今回のはどっちものはすっっっごく美味しかったですから!ハラショー!」

亜里沙ちゃんはとても喜んでくれているみたい。ここまで喜ばれるとさすがに自信が湧いてきます

今回は直前で没にされたあのお菓子のお返しができるのかな!そう思うとやっぱり嬉しい

どうやら今回の試作品は自信を持ってもいいようです。少し、安心した

でも、気を抜いてばかりもいられません。なぜなら、まだ関門は残っているから。

絵里ちゃんは二人にありがとう。嬉しいわ。と伝えたあとでこう繋げた

「でもちょっとここは直したほうがいいっていうところはどっちもあるみたいだから…そこを直してから最終審査してもらいましょう」

これはいわば一時審査。私たちのお菓子を店頭に出すためには最終審査でお父さんとお母さんの許可を取らなくてはいけません

だから、直すべきところは直さないと商品としては出せません。そこで没になればそこで即刻御蔵入りとなるのです

だから細心の注意を払わなくてはいけない以上、まだまだ商品化の道の先は長いのです

「そうだね。お父さんのチェック、厳しいもんね」

その最終チェックの厳しさを知っている雪穂はうんうんと頷きながら同意する。

前回雪穂チェックを通った私の作品は最終チェックで落とされそのまま御蔵入り…悔しい思いをしました

それだけに今回はわたし的には並々ならぬ思いがあったり。

今回は太鼓判をもらっているだけに失敗したくない!今回は気を貼らなければ…そう気持ちを新たにしたところで

雪穂がいきなり席を立つと自分のバッグをもって帰り支度を始めた。

あれ?もう帰っちゃうの?

「それじゃ、私たちは帰るね?」

「えっ、もう帰っちゃうの?ゆっくりしていけばいいのに…」

他のお菓子もあるよ?それにいつもなら夕飯まで一緒に食べてから帰るはずなのに、何か用事でもあるのかな?

絵里ちゃんも意外そうな顔で二人を見つめている。

それ以上に意外そうにしていたのは当事者であるはずの亜里沙ちゃん。雪穂に疑問を投げかけます

「えー…もう少しここにいようよ~」

「亜里沙…明日は旅行の日だってこと忘れてないよね?」

「旅行?」

亜里沙ちゃんは不思議そうにこちらの方を見ながら尋ねるように行った

いや、さすがにそれは知らないよ…何もわからない私と絵里ちゃんは亜里沙ちゃんに苦笑を返すほかありませんでした

思い出せない様子の亜里沙ちゃんにはぁ…と大きくため息をついた雪穂は亜里沙ちゃんに説明する

「いや、私たち明日から北海道に旅行に行くんだよ。忘れたの?」

「…北海道…そうだった!そうだったよユキホ!旅行だよ旅行!」

…亜里沙ちゃん、本当に忘れてたみたい。それだけこの試食会を楽しんでくれてたって事でいいのかな。

それは嬉しいんだけど。雪穂が浮かばれないなぁとも思ってしまう、我が妹よ…苦労するね。

絵里ちゃんもため息混じりだ。でもそんなところも亜里沙ちゃんのチャームポイントだしいいんじゃないかな。

心配ではあるのは確かだけど

「ということで、絵里さん。お姉ちゃん、帰るね?」

「うん!旅行、穂乃果たちの分も楽しんできてね!後お土産も忘れすにね!」

「楽しんで来てね。いい旅を」

亜里沙ちゃんも納得したところで二人そろって席を立つ。

北海道かぁ…いいなぁ。中学の時は京都だったし、高校の時は沖縄だったから北海道には行ったことがないから凄く羨ましい

お土産と土産話を強くお願いしたところで私たちも席を立ち、店の前まで見送りに向かうことにする

「じゃあ、これで。御馳走様でした!」

「ゴチソウサマでしたー!」

「今日はありがとねー!」

「気をつけて帰るのよー」

雪歩と亜里沙ちゃんはあいさつを交わしてから会釈をすると、逆の方向へ体を向けて歩き出した。

2人の姿が見えなくなる前の曲がり角で亜里沙ちゃんが何か2言3言発すると雪穂が少しだけ顔を赤くする。

2人は自然に手をつなぎ合わせると亜里沙ちゃんは嬉しそうに手を振りながら歩いて、そのまま夜の宵闇に姿を消した

「ふぅ、私たちも帰ろうか?」

「ふふ、そうね。帰りましょうか。まぁ、すぐそこだけどね」

こうして、私と絵里ちゃんの長い1日は終わりを迎えたのでありました

「うん…そうなんだー!それはそれは…」

「ほのかー、お風呂上がったからドライヤー…って、電話中?」

さっきまでの試食会から2時間後くらい。

あの後、家でお母さんのごはんをご馳走になった私と絵里ちゃんは穂むらからほど近いところにある私たち2人のアパートに帰ってきていた。

最初に私がお風呂に入り、1時間ほど前に上がってその後絵里ちゃんが入り。たった今、上がってきたというのが今までの流れ。

タオルを首にかけ、顔を拭きながらリビングに現れた絵里ちゃんは青を基調としたちょっぴり上品なネグリジェを纏っています。

白く陶器のように綺麗な肌はお風呂上がりのためか少し紅潮していて、どこか色気すら感じさせる

ですが、その顔は少し曇り模様のよう。少し不機嫌そうに顔を歪めています。

絵里ちゃんがいないうちに他の人と電話してるといつもこうなるんだよね。今日ぐらいは許して欲しいものなんだけど…

明日の朝も早いので、そろそろ寝なきゃいけないんですが、今日はちょっと特別。

私はある友達のところに電話をかけていました。

さて、なんとかしないとね。

「ん?あ、絵里ちゃん!いいよ。すぐ切るから、うん、それじゃ。またね!」

「…誰に電話してたの?」

そう言って相手の子の了解を取って、電話を切る。そして私は見るからに不機嫌そうな絵里ちゃんの方を向き直します。

そうしたら絵里ちゃんはジトーとした目でこちらを睨みながら電話について聞いてきた。

絵里ちゃんがかなり嫉妬深くて、独占欲の強い人だっていうことは恋人になってから知ったこと。

こういう時にはぐらかすと後々大変なことになるので、ここはちゃんとすぐにその子の名前を言っておきます

隠す意味もないしね。

「花陽ちゃん!お手紙ありがとうって電話したんだ!」

そう、私が電話していた相手は花陽ちゃん。

絵里ちゃんが隠していたお手紙をかえってすぐに読ませてもらった私は、かよちゃんに即日でありがとう電話をしていたのでした

朝が早いって聞いていたし、早めに切るつもりだったんだけど…絵里ちゃんが普通にお風呂から上がってきたところを見ると、結構な時間話し込んでいたみたい

いっぱい話すことがあると大変だね!やっぱり。

「そうなの。私の分もお礼、言ってくれた?」

相手が花陽ちゃんだとわかったので絵里ちゃんは警戒心を緩めたようで、タオルを置いてドライヤーで髪を乾かし始めながら言った。

もう…雪穂もそうだけど絵里ちゃんももう少し穂乃果のことを信用したっていいんじゃないかな?

そんなことを思いながら私は後ろのベッドに背中をくっつけて、そのまま腕を組んで背伸びをしながら絵里ちゃんに答える。

「もちろん!いつもお菓子もらってるからそのお返しだって」

「こっちの方がいっぱい貰ってるのに…花陽ってば。」

花陽ちゃんはほぼ毎月のようにμ'sのみんなに何かしらの頂き物を送ってきてくれます。

お米はもちろんお野菜や果物、時には魚なんかも送られてきて。私たちの食卓を救ってくれる救世主的存在になっていたり

私たちはまだお菓子を作って送ることができるけど他の皆はそうはいかないらしく、お返しを決めるのに四苦八苦しているなんて話もよく聞くくらいだったり。

絵里ちゃんが髪を乾かすのに集中し始め、私は手持ち無沙汰になったのでリモコンを手に取り、テレビをの電源を入れた。

特に見るものもなかったので、適当にチャンネルを回していく。

バラエティや少しB級がかったドラマ、そしてニュース。いろいろやっているみたいだけどどうにも私の心は惹かれない。

結局、暇な私はテレビはつけたままにして私は頭を動かし、絵里ちゃんの方に顔を向けることにする。

綺麗なブロンドの長髪、日本人離れした整った容姿と澄んだアクアブルーの瞳。そして、モデル並みの抜群のスタイル。

うん。いつ見ても綺麗だ。とそう思う

穂乃果は絵里ちゃんを毎日見ているけど彼女の姿を見るのは全然飽きなくて、むしろ毎日のように新しい発見があるくらい。

絵里ちゃんを観察することが最近の私の趣味と化していたりします。

絵里ちゃんのことを観察しているうちに絵里ちゃんがドライヤーを止める。

そろそろ時刻は深夜0時、そろそろ私たちは明日の仕込みのために寝る時間です。

絵里ちゃんはベッドに向かって行き、寝る準備を始めていました

…どうも今日の私はスキンシップに飢えているみたい。絵里ちゃんの体に触りたくなってきた

「どうしたの?穂乃果…って…!?」

このまま寝ればいいし!と考えを決定づけた私はベッドの近くのものを片付けていた絵里ちゃんをベッドの上に押し倒すことにして、それを即実行する。

絵里ちゃんはベッドに向かって倒れこむ。絵里ちゃんの上にたった私はそのまま絵里ちゃんの体を抱きしめる。

絵里ちゃんの髪からはお風呂上がり特有のシャンプーの匂いがした

「えへへ…えーりちゃん!」

「…今日はどうしたの?随分と今日は甘えんぼさんね?」

穂乃果にベッドの上に押し倒されてベッドの上に仰向けになっている絵里ちゃん。でもその表情にはまだ余裕が見えます

むぅ…穂乃果の方が上なのに絵里ちゃんはちっとも動揺してくれないんだね!!

まぁ、そういう雰囲気でもないし甘えたいだけだから別にかまわないけど

絵里ちゃんの豊満でフカフカな胸元に顔を埋めながら穂乃果は絵里ちゃんに答えます

「絵里ちゃんにくっつきたくなるのに理由なんてないよー」

そう、理由なんてない。ただ、絵里ちゃんに甘えたくてくっついていたいだけ。

絵里ちゃんのことが好きで、ずっとこうしていたいだけだけ。

さらに甘えながら答えた穂乃果に絵里ちゃんは嬉しそうに笑う。

最近は忙しかったせいか、こうやってイチャイチャする時間がなかったからか、絵里ちゃんも嬉しそうに見える

「もう…穂乃果ったら。でも、今日は本当にどうしたの?いつもは仕事中に抱きついてきたりとかしないのに」

絵里ちゃんは両手を穂乃果の背中あたりに置くと穂乃果に尋ねてくる

確かにいつもは仕事中はさすがにそこまではしない。なんといっても仕事だし、そこは節度を持ってやっている。

でも…今日は何か、違った。何か特別なことがあったわけでもなければ何かの記念日という訳でもないけれど。

感情に流されたといえばそうなんだろうけど。

ただ…

「さっきも言ったけど理由なんてないよ。でもね…今日はいつもよりずっと私、幸せだなぁって感じたの。それだけ。」

「しあわせ?」

私は胸元から顔を話すとそのままベッドに横たわると絵里ちゃんの方に顔を向けてそう言うと

絵里ちゃんが穂乃果の頭を撫でながら不思議そうに聞いてきた。

うーん…口で言っても表しきれない感じの感情だっただけにどういったらいいのか迷うなぁ。

絵里ちゃんの透き通り、吸い込まれそうなほどに蒼い目が穂乃果を覗き込む。

その目がはっきり思ったことをそのまま言うのが穂乃果でしょ?と訴えかけているように私には思えて。なら、そうしようとそのまま口に出すことにした

うん!隣に絵里ちゃんがいてくれて、一緒に穂むらで働いてくれていて。2人で穂むらの名前をミシェランに載せようっていう新しい夢に向かって進んでて。穂乃果は今、すっごくしあわせなの」

「ほのか…」

絵里ちゃんもベッドから起き上がってベッドの上に腰掛けながら話を聞いてくれる。

穂乃果もベッドの上に腰掛けると、そのまま絵里ちゃんの肩の上に頭を乗っける

そして話を続けた

「穂乃果は絵里ちゃんと一緒にいるだけで嬉しくてたまらないし、穂乃果は絵里ちゃんが悲しそうにしてたら悲しくなっちゃう…絵里ちゃんのことが大好きだからかな?」

「だから、絵里ちゃんがね穂乃果のこと好きー!って言ってくれるとすっごく嬉しくなる。一緒にいて、お菓子作ってるだけでも幸せを感じちゃう」

「一緒にいるだけなのに穂乃果が絵里ちゃんのことが大好きだし、絵里ちゃんが穂乃果のことが好きだって思ってくれてるって思っちゃって。だから今日はその嬉しいが爆発しちゃった」

「今日はくっつきたくなっちゃったんだ…嫌だったらごめんね?」

穂乃果が頭を上げて絵里ちゃんの体をこちらに抱き寄せると少し赤く紅潮した絵里ちゃんの顔が目に入る。

絵里ちゃんはやっぱり可愛いなぁ。そう思った穂乃果は絵里ちゃんが急に愛おしくなってしまう。

キス…したいな。そう思ったが最後、私は自分を御する暇もなく絵里ちゃんの頬に口付けていた

唇を離すと絵里ちゃんは真っ赤にして軽く体を震わせていて。それを見た私は具合でも悪いのかな??と思い…

「絵里ちゃんどうしたの!?顔真っ赤だしなんか震えてるよ?」

私は咄嗟にひたいと額を合わせて熱があるかどうかを確認した。

熱はないみたいだけど…

額を離すと絵里ちゃんはハァ…と一つため息をつく

え、何かやっちゃったんだろうか…私が絵里ちゃんの様子を伺っていると絵里ちゃんは独りでに語りだします

「…穂乃果は恥ずかしいことを簡単に言っちゃうし、やっちゃうわよね。こっちの方が恥ずかしくなっちゃうわ」

「…ごめんなさい?」

謝ったほうがいいのかな。

でも、思ったことを素直に言っただけだからそんなに悪いことをしたとは思えないんだけど

「おまけに自分がどんなに可愛いことを言ってくれちゃったか理解してないみたいだし」

「????」

絵里ちゃんは何が言いたいんだろ。

穂乃果は首をひねります。よくわからない

「…はぁ。穂乃果、私はね…多分あなたが思っているよりずっと…」

あなたのことが好きなのよ?そう言うと、とベッドの方に穂乃果の体を押し倒す。

さっきまで穂乃果は押し倒した側だったのにあっというまに逆転されるのは正直少し複雑ではある

私を組み敷いた絵里ちゃんは真剣な顔で穂乃果を見抜いた。

「絵里…ちゃん?」

絵里ちゃんの綺麗で整った顔が近づいてくる。

初めてキスをした卒業式の日のドキドキを私は今も覚えていて、そしてそれは今もちっとも変わらなくて。

今も絵里ちゃんとキスをするときはそれから何年経っても同じくらい穂乃果の心臓はドキドキする。

唇と唇が触れる瞬間。緊張が一気に安心感に変わると、私は吸い込まれるかのようにその行為に没頭してしまう

穂乃果の気持ちと絵里ちゃんの気持ちが心とも身体ともつかない深いところで混ざり合うと、溺れてしまうような深い幸福感に包まれて行く。

何分か経ち、息が続かなくなって一旦唇を離すと、絵里ちゃんはそのまま私の背中に腕を回すと、正面から強く抱きしめてくる。

絵里ちゃんは穂乃果の肩あたりに頭を乗せると穂乃果の体を抱きしめながらさっきから中断されていた言葉を続きを紡ぎ出した

「私はね。正直自分でも怖いくらいあなたのことが好き。穂乃果が話しかけてくれるだけで嬉しくて顔が緩んでしまいそうになるし、穂乃果が抱きしめてくれるだけで悲しい気持ちがどこかへ消え去ってしまう。」

「穂乃果がキスをくれれば思考も何もかもが消え失せて…好きという気持ちで頭がいっぱいになっちゃう。好きという気持ちが溢れすぎて、もうどうしようもないくらいにね」

「絵里ちゃん…」

…さっきのセリフそっくりそのままお返ししたいよ。絵里ちゃんだって恥ずかしいことよく言っちゃうじゃん

こういうのを歯が浮くようなセリフって言うんだっけ。とか思いつつ、抱きしめられていた腕をほどくと絵里ちゃんの逆の方を向いた

私は自分の顔が赤くなっていることを自覚して、顔を落として絵里ちゃんから隠そうとした

でもそんなことは無駄な足掻きだったようで、すぐに肩を捕まれて絵里ちゃんの方に体を向けられると

顎の下を持ち上げられて絵里ちゃんの青く美しい目の下に赤くなった顔を晒される

「ハラショー。顔が真っ赤よ?穂乃果」

わかってるよ。ものすごく熱いし、絵里ちゃんの顔まともに見れないし

私は照れ隠しのために顔だけそっぽを向かせてこう言った

「…絵里ちゃんのせいだよ」

そう言うと絵里ちゃんはすごく嬉しそうに私の顔を眺めると満足そうに笑う。

すると、絵里ちゃんは穂乃果の左手を持ち上げるとその甲に口付ける。穂乃果がくすぐったそうにすると絵里ちゃんはまたニヤリと笑う。

今度は首筋にキスをしてきて、今度ばかりは声が出てしまう

「んぅ‥」

「ハラショー…」

どうやら絵里ちゃんのスイッチが入ってしまったみたいだ。こういう風にやたらハラショーを連呼するときはそういう気になってしまった証拠。

絵里ちゃんは穂乃果の首筋にキスマークをつけるのが本当に好きみたいで。

首筋に何度も何度も吸い付いてくる

もう!これじゃ絵里ちゃんの方がよっぽど穂乃果より犬っぽいよ!

情欲に身を焦がしている様子の絵里ちゃんは穂乃果の首筋についているであろうキスマークを見ると満足気に笑うと次はこっちだとばかりに

目にやる気を燃やしながら聞いてきた

「ねぇ、穂乃果。…襲っていい?」

「ダメ」

先程も言いましたが私たちは明日はお仕事で、仕込みもあります。なので、寝なきゃいけません。

絵里ちゃんは露骨に残念がる。

「…穂乃果から誘ってきたんでしょう…?させてよ」

「ダメです。明日も仕事があるでしょ?」

誘った覚えもないし。明日も早起きなんだからそんなの無理に決まってるでしょ?

「…ほのかのけち」

…ケチじゃありません。

時計を見るとすでに1時を回っていた

まずい…早く寝ないと明日はレッ○ブルと1日お友達しないといけなくなる!!!

穂乃果は急いで電気を消しに行きます。でも絵里ちゃんが暗闇が嫌いなので一番小さな電球のみをつけてベッドに横になります。

絵里ちゃんも時計を見て納得したようで大人しくベッドに入りました。

薄暗くなった室内で私は横になったまま隣にいる絵里ちゃんに話しかけました。

「絵里ちゃん。これからもよろしくね?夢、叶えなくちゃ」

わたしは自分のの左手に絵里ちゃんの手を合わせて隣で横になっている絵里ちゃんの方を見ながら言う

小さな明かりの下だったけどその時は絵里ちゃんの顔がよく見えた。

「えぇ、任されたわ。この店を超がつくほどの有名店にしちゃいましょう?」

絵里ちゃんは優しく微笑んで握った手を軽くギュッと握り返していった。

やっぱり絵里ちゃんは穂乃果のベストパートナーだよ。そう言ってくれると安心するし、自信が湧いてくる

「よぉーし!目指せミシェラン☆3つ!!」

あいた左腕を腕を高く上げ、宣言する。目標は遠く、そして果てしない。でも…

きっとできるよね。だって、絵里ちゃんが一緒なんだもん!!!

「(ミシェランガイドは日本料理屋さんとか焼き鳥屋さんとかしかのれないはずだけど…ま、いっか。)」

絵里ちゃんが何か言っていたようだけど、穂乃果には聞こえなかったのでそれはよし!穂乃果はベッドに入って今日は寝ます!

なぜなら明日も仕事だから!

まだ先は遠く、ゴールも見えない道だけど。穂乃果と絵里ちゃんの夢への道はまだ始まったばかり!

ユメノトビラを開け、それを叶えるまで穂乃果は諦めず、頑張ります!!!

叶え!私たちの…夢!

終わりです

何回か寝落ちしたりしてすいませんでした

読んでいただいた方ありがとうございました

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