にこ「ちょっとあんた」花陽「うぅ...」 (36)

にこ「ぶつかっといて謝罪の言葉もないわけ?」

花陽「あぅ...ご、ごめんなさい!」

にこ「大体なんで陸上部が廊下で走ってんのよ、危ないじゃない」

花陽「あの...今日は雨が降ってて、グラウンドが使えなくて...」

にこ「でも廊下は走るところじゃないわ」

花陽「うぅ、でも」

にこ「走っちゃだめでしょ?」

花陽「はい...ごめんなさい...あ」
花陽「と、友達が待ってるので、し、失礼します」タタタ ポトッ

にこ「あ、ちょっ、なんか落としたわよ!ちょっと!」
にこ「もう、なにこれ...お守り?」


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翌日 グラウンド


花陽「ハァッ、ハァッ、ハァッ...」

花陽「ハァッ、ハァッ」モウダメ

花陽「....ふぅ」

にこ「...ちょっとあんた」

花陽「ピャア!!こ、ここんにちは!」

にこ「今日は晴れたからグラウンドでやってるのね。ほらこれ。あんたのでしょ。」

花陽「え、あ...!!ありがとうございます!私のです!」

にこ「.....なんでお守りなんかもってんのよ」

花陽「いやなんていうか、本当にただ持ってるだけっていうか、えっと...(誰なんだろうこの人)」

にこ「....にこよ。3年生。」

花陽「は、花陽です...一年生です」

にこ「花陽...ね」

にこ「にしてもあんた、陸上部らしくないわね...。どんくさいし」

花陽「!!!」ガーン

花陽「そ、そうです...わたしは陸上部なんか向いてないんです...太ってるし、もともと運動得意じゃないし...」

にこ「じゃあなんでやってるのよ...」

花陽「友達が誘ってくれたから...あと、苦手だけど嫌いではないんです、運動....」

にこ「っへぇ~。ちなみに100mのタイムは?」

花陽「18秒07です」

にこ「おっそ....!!!本当に陸上部...?」

花陽「うぅ...で、でも、自分なりに目標は立てていて、三年間で3秒タイムを縮めるのが目標なんです...」

にこ「さ、3秒....あんたの三年間をたった3秒に捧げるのね...」

花陽「はい!」

にこ「....」

にこ「ま、まあ頑張りなさいよ。応援し
花陽「あっ、友達が呼んでるので失礼します!」

にこ「えっあっ、お、うん....じゃあね」


にこ「....部活行かなきゃ」

にこ「と言っても一人じゃ特にやることないけど...」

にこ「....」



希「にこっちが図書室くるなんて珍しいね」

にこ「うるさいわよ」


希「(陸上の本読み漁っとる...アイ活に取り入れるんかな...)」

翌週 グラウンド



花陽「うぅ、うぅーーっ....」ストレッチ

花陽「ふぅ、ふぅ、アイテテテ」

花陽「うぅ~~.....」

にこ「ちょっとあんた」

花陽「ピャア!!...あ、にこ先輩」

にこ「本当に陸上部らしくないわね...ストレッチにどんだけ苦戦してんのよ...」

花陽「えへへ....あれ、今日はどうしたんですか?」

にこ「いやあの、....ホラこれ!」

花陽「...?この、ファイルはなんですか?」

にこ「タイム!タイムを、縮めるために必要なコツとか、練習法とか、調べておいたから!」

花陽「え...あ、すごい」

にこ「特に重要なところは赤で囲っといたわ...あんたまず走るフォームとかがダメな気がしたから」

花陽「ほぇー...って、あれ?もしかしてこれって、私のために?」

にこ「か、勘違いすんじゃないわよ!ついでよついで!」

花陽「...ふふ、ありがとうございますっ!」

にこ「あんたのペースじゃ3年間で3秒は無理そうだし!だからよ!」

花陽「えへへ、確かにそうかも。
にこ先輩は優しいんですね。」

にこ「そんなんじゃないわよ....」

花陽「そんなことあります」ニコニコ

にこ「な、ないっていってんでしょぉ!」

花陽「ふふ」ニコニコ

にこ「...!!!」

にこ「...あ、あんたアイドルって好
花陽「あっ、ミーティングなんで失礼しますね!ありがとうございました!」

にこ「ああっ、あの、日曜日、今度、アライズのライブ....」

にこ「いなくなる時は速いわね...」

にこ「ただいまー」

にこ母「おかえりにこ」

にこ「あ、ママ!今日は早いのね!」

にこ母「ちょっとにこに話があってね」

にこ「え?」

にこ母「まあちょっとこっちに来なさい」

にこ「うん....」


にこ「転勤....?」


にこ母「そう、ちょっと職場の方でそういうことになっちゃって、少し遠くまで越すことになるわ」

にこ「そ、そんな!急に...!!」

にこ母「ごめんねにこ、でも仕方がないことなの。もちろんにこは転校ってことになってしまうわ....」

にこ「....!!」

にこ母「にこにも音ノ木坂の友達がいるだろうし、そこは本当に申し訳ないと思ってるけど....」

にこ「いやそれは....(ほとんどいないし....)」

にこ「....!!」


にこ先輩は優しいんですね

ふふ、ありがとうございます

3年で3秒タイムを縮めるのが目標なんです!


にこ「....3年....」

にこ母「2週間後には出発するわ。
ごめんねにこ...」

にこ「....」

次の日 廊下



希「あちゃー、やっぱりかー。
なんか昨日嫌な予感してたんよね」

にこ「テキトー言うんじゃないわよまったく...」

希「あははバレたか。でも、急やね」

にこ「仕方ないけどね。にこも3年生だしあんまり変わりないわよ。すこし早くここを去るだけ」

「にこっち...」

希「もうにこっち、また強がって~」

にこ「強がってなんかないわよ!」

希「...寂しくなるね」

にこ「....ちょくちょくあたしに構ってくれてありがとね。」

希「うちがそうしたくてしたんや。お礼なんていらんよ」

にこ「...そう」

花陽「あ!にこ先輩!」

にこ「!?....ああ、なによ、花陽じゃない」

花陽「こ、こんにちは!」

希「? 誰?」

にこ「あ、えっと、後輩...いや、あの陸上部の」

希「...にこっち顔真っ赤やで?」

にこ「なっ!んなわけないでしょ!」

花陽「...?」

希「...あーなるほど。ふふふ。じゃあウチはお邪魔やね。かーえろ」ニヤニヤ

にこ「ちょっとなんなのよ!!」

希「はなよちゃん!にこっちをよろしくやでー!」

花陽「....?は、はい」

にこ「何いってんのよ!あんたも何返事してんのよ!!」

花陽「えええぇ...?」

にこ「そ、それより、なんか用?」

花陽「あっ、はい!にこ先輩に
報告があって!」

花陽「わたし!先輩のファイルにある通りに練習してみて、腕の振り方をですね...こう、変えて見たんです!」

花陽「そしたらなんと、0.4秒もタイムが縮まりました!」

花陽「にこ先輩のおかげです!」

にこ「(すごいじゃない....)」

にこ「....」


にこ「(あと2週間....)」



にこ「たったそれっぽっちなの?」

花陽「え....?」

にこ「いい?花陽!」ガシッ

花陽「きゃ!?」

あと2週間でタイムを3秒縮めなさい!」

花陽「え、ええっ!?
む、無理ですぅ!そんなの...」

にこ「あんたのペースじゃ、一人だけ取り残されちゃうわよ!いい?2週間よ!」

花陽「な、なんでいきなり...!」

にこ「...二週間後の深夜。グラウンドに来なさい。」

花陽「えええええっっ?」

にこ「絶対よ!!」
にこ「...じゃ。」


花陽「....どうしたんだろう」

希「....」コソッ

2週間後 グラウンド


花陽「うぅ、先輩...大丈夫なんですか、勝手に入って....」

にこ「大丈夫よ。なんか知らないけど鍵壊れてたし。」

花陽「まるで超能力でも使ったような壊れ方でしたよね....。どうやったらああなるんでしょう....。」


にこ「よし、花陽。あんたここで走って見なさい」

花陽「...え?」

にこ「にこがタイムを計ってあげるわ。」

にこ「タイム。縮まってんでしょうね?」


花陽「...はいっ」

花陽「ハァッハァッハァッ....」

にこ「....ダメね。もう一回よ。」

花陽「先輩...私もう」

にこ「もうちょっとよ。頑張りましょ。」

花陽「.....」ウルウル

花陽「なんでこんなことしなくちゃいけないんですか?」

花陽「なんでグラウンドに忍び込んで、今日中に3秒縮めろなんて言うんですか?」

にこ「....今のタイム、16秒07。
あなたの今までの自己ベストは?」

花陽「17秒02です...」

にこ「この2週間で1秒、今だけでまた1秒縮んだのよ?いけるはずよ!」

花陽「にこ先輩は陸上を知らないからそんなこと言えるんです!」

花陽「陸上選手にとって、タイムを1秒縮めることはすごく大変なことなんです!プロの選手でも血の滲むような苦労が必要なんです!!」

花陽「今日中に3秒縮めるなんて無理です!」

にこ「....」

ザァァァア

花陽「あ、雨が...、にこ先輩、むこうに行きましょう」

にこ「....そうね」

にこ「あんたってそんな大きい声出るのね。びっくりしちゃった。」

花陽「あ、いいえ、すみません....」

にこ「いいのよ。確かに私のワガママだった。一日で3秒縮めるなんて無理よね。」

にこ「ごめん....」

花陽「いやあの....でも、嬉しかったです...」

にこ「え?」

花陽「嬉しかったです。だって1日に3秒なんてできるはずないのに。にこ先輩はできるって言ってくれた。こんな私にできるって言ってくれたんです」

花陽「私に陸上なんて向いてない。誰だってそう思うし私自身もそう思ってたのに、にこ先輩は私を信じてくれてた。私以上に私を信じてくれてたから....」

花陽「だから....嬉しかったです」

にこ「.....」

にこ「....ちょっとあんた。あんたってさ、好きな人っているの?」

花陽「えっ、ええっ!!!な、なんでいきなり!!」

にこ「い、いいから答えなさいよ!」

花陽「えぇ...えっと、私なんかにはまだ恋愛は早いって言うか....私なんか好きになってくれる人いないっていうか....」

にこ「はぁー、あんたねぇ....」

花陽「にこ先輩はいるんですか?」

にこ「ウェエエ!?いやっそりゃっ、あんたそれは、あんた////」

にこ「それは、にこのその////、好きな人はあの、あんた
花陽「あっ、警備員です!!逃げましょう先輩!」タタタ

にこ「ええっ!いやあの好き、かも
花陽「先輩はやく!!」
にこ「なんなのよもう!!」タタタ

翌日 駅

にこ「.....」

にこ「はぁ。くるわけない、か」

にこ「そりゃあそうよね。伝えてないし。あの後も結局なにも言ってないし...」

にこ「....」

にこ母「にこ、そろそろ乗りなさい」

にこ「...はーい」

にこ「じゃあね、音ノ木坂」

にこ「...花陽」

花陽「ハァッハァッハァッ」

花陽「ハァッハァッ、先輩...?」





花陽「先輩!!にこ先輩!」

花陽「....いない。」

花陽「うぅ...間に合わなかった....」ポロポロ

花陽「私が走るの遅いから...にこ先輩にまで置いてかれちゃったよ....」ポロポロ

花陽「もっと速かったら....。間に合ってたのかなぁ....?」ポロポロ

花陽「うぅ....」

にこ「ちょっとあんた」

花陽「!!」



にこ「なーに泣いてんのよ。」

花陽「にこ先輩!?あれ、行っちゃったんじゃ!?」

にこ「次の電車で行くのよ....。ていうかあんた、なんで私がここにいること知ってんのよ」

花陽「なんか、今日関西弁の先輩に教えてもらって、部活を抜け出してきちゃいました....」

にこ「関西弁....そう。最後まで世話になっちゃったわね...」

花陽「先輩、私、ここに走ってくる時今までで一番はやく走れた気がするんです。」

花陽「も、もちろん!タイム計ったわけじゃないんですけどね、でもすごくはやく走れたんです。なんでだか分かりませんけど....」

にこ「....そう」

にこ「花陽、あんたオリンピック出なさいよ」

花陽「えええええっっ?いやっさすがにオリンピックはちょっと!」

にこ「そうでもしないと、あたしは走るあんたが見れないからね」

花陽「...わかりました。頑張ります」

にこ「約束よ?破ったら承知しないんだから」

花陽「じゃあ先輩。私とも約束してくれますか?」

にこ「なによ」


花陽「...スゥー」
花陽「花陽がオリンピックに出れたら、私と付き合ってください」

にこ「....!!」

にこ「.....ハッ、生意気。このタイミングでそんなこと言う?フツー....」

花陽「えへへ、でも今しかないから...」

にこ「まったく....じゃあ私はそろそろいくわね」

花陽「えっ、えええええっっ?へ、返事は.....!?」

にこ「もう、そんなの...」


にこ「OKに決まってるでしょ!」

希「めでたしめでたしやね!おっ、ここの駅弁おいしいな」

-おしまい-

バナナマンの「先輩とオマエ」っていうコント見て「かよちんはμ's誘われてなかったら凛ちゃんと陸上部入ってたのかな」とか思って書きました。
ありがとうございました。

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