巴マミ「寄生獣?」 (997)

※とりあえず暫定的な諸注意

1これはアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」と漫画「寄生獣」のクロスオーバーです。

そういった物が苦手な方は読まない方がいいです。


2寄生獣側の人間は登場しません。まどかマギカ主体です。

あくまでまどマギ世界にパラサイトが飛来してきたらという設定です。


3タイトル通り魔法少女ともえ☆マギカと言えるくらいマミさん中心です。

主人公はあくまでまどかじゃなきゃ嫌だという方も読まない方がいいです。


4かなり多くの本編で描写されてない所に関しての独自解釈を含みます。

(特にまどマギについて)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1358688893

〜☆

ある日の夜の事だ。

「ソレ」は世界中に降り注いだ。

「ソレ」は生き物であった。

「ソレ」は明らかに異質な物であった。

当然「ソレ」についての疑問が生じる。

しかし我々は神ではないので、

どれほどたくさんの事を見聞きし知った所で必ず認識の範囲外となる未知の領域が存在する。

「ソレ」がどこから来たのか、

「ソレ」はどうしてやって来たのか、

そして「ソレ」はいったい何なのかという疑問もまたそれに当たるのかもしれない。

〜☆

「ソレ」はさながら毛の生えたテニスボールのような形をしていた。

「ソレ」が地に落ちて暫くの後、ひとりでにパクンと割れ、

中から日常生活で見たことも聞いた事もないような姿をした生物が生まれ落ちた。

「それ」に我々が馴染みのある地球上の生物の中で

最も容貌が似ているのはミミズやヒルであろうが、

上半身の突起や頭部の先細り具合などは明らかに、

「それ」が全く別の構造を持つ生物である事を予感させるし、事実その通りだった。

「それ」が地べたをウネウネ這いずり回る様子には、

なんだかまるで猛毒を持った蛇を見かけてしまった時の様な不吉さがある。

全長約十五センチくらいと思われる「それ」は本能の赴くままに

あちこちを動き回り自分の「家」を探していた。

世界中に散らばった「それら」がそれぞれ現時点で理解している事は3つ。

このまま「家」が見つからないままだと自分は死んでしまう事。

死にたくないという自身の生物として自然な欲求。

それと自分がこれから住むべき「家」について。

「それら」は皆同じ行動原理に従い行動している。

しかし「それら」にも個体差、

そして時の運という物があり、次第にイレギュラーな事態が各地で発生した。

その中でも日本で起きた一つのイレギュラーは他に類を見ないほど特異であると言える。

〜☆

世界各地に散らばっている「それ」の一つを日本で偶然見かけたのはなんと宇宙人であった。

ほとんどの地球人に知られる事なく潜伏している彼らはインキュベーターと総称される者達で、

地球ではキュゥべえと名乗り活動している。

インキュベーターは人間がまだ洞穴の中で生活していた頃から人類に関わってきており、

人類の繁栄は彼らの起こす奇跡と共にあった。

彼らが起こす奇跡だってタダではない。そこにはきちんとした彼らの利益、目的がある。

彼らの目的は人間の持つ感情エネルギーである。

人類は彼らにとってあくまで自分たちには生成出来ないエネルギーを生産してくれる

便利なエネルギー源に過ぎなかった。

何かがエネルギー源としてより良い物とされるのは

それが生み出すエネルギー量とそれを生み出すまでにかかるエネルギー量の差故である。

となると必然感情エネルギーを採取するのにより適しているのは

様々なエネルギーを消費する前である子供という事になる。

インキュベーターはさらにその中で感情の起伏が激しく、

魂が不安定な思春期の少女をそのエネルギー源として選んだ。

彼女達は子供を作るという事にこれから関わる。

子供を作るという事はすなわちその際に胎内で子供の肉体と共に新たな魂を創造する事である。

思春期は女性のこの機能が身体的に成熟を迎える頃であり、

魂にとっても重要で最も不安定な時期となる。

つまりこの時期の女子は他のどんな人間より「作業」が簡単に済むのである。

インキュベーターは彼女たちの願い事を一つ、

魂の変換の際にかかる感情エネルギーのロスを利用して叶える。

そして魂という実体として存在しない物を「ソウルジェム」と彼らが呼ぶ宝石に具現化させるのだ。

魂が物質された事によりその振れ幅を示す感情は

現実に作用するエネルギーとして扱う事が出来るようになる。

そのエネルギー願いが叶ったという希望から深い絶望の底に突き落とされた瞬間に

最も大きな物となる。

インキュベーターは「契約」を交わし魂を固定化させた者の事を「魔法少女」、

その成れの果てを「魔女」と呼ぶ。

魔法少女という存在は願いという希望によって自身を固定化させる事で生まれた。

魔法少女が感情の動きなどにより生じる絶望エネルギーを

ゼロの状態からそのまま取り除く事なく溜めこんでいくと、

最後は「ジェム」がエネルギーに耐え切れなくなり、

魂の内に秘めたエネルギーを全て開放する。

その時に生まれたエネルギーを回収するのがインキュベーターであり、

その副産物が有り余るエネルギーの影響により彼女達の魂が変貌を遂げた魔女という化け物である。

これが地球でインキュベーターという宇宙人が行っている事のほぼ全容だ。

しかしそんな恐ろしい技術を用いる人間にとって未知の領域にいるインキュベーターですら、

「それ」が何なのかはわからなかった。

これは普通に考えてありえない事態であった。

何故ならインキュベーターはずっとずっと昔から全個体で記憶と意識の共有と保存を行っている。

いつも絶えず記憶共有を行っている訳ではないとはいえ、

一日で突然彼らの預かり知らぬこのような完全新種の生物が生まれるとは考えにくかった。

「それ」を見つめている一個体、

キュゥべえの頭の中にあるのは「これはいったい何だろう?」という疑問と関心だけである。

キュゥべえは地球上の生物が「それ」を見ることで感じるであろう

恐怖の前身である不快感の様な物を「それ」に対して感じていなかった。

このキュゥべえが何も特別なのではない。

彼らには感情が無かった。そして危機察知能力もなかった。

何故なら彼が死んだ所でスペアは幾らでもある。

そもそも死はキュゥべえ達それぞれにとって危機ではない。

あくまで彼らにとっては自分の命よりインキュベーター全体の利益が大切なのだ。

キュゥべえは考える。今はとりあえずこれが何なのかを把握しなければ。

もしこれが危険な生物でボクが殺されたとして、

他のキュゥべえが僕が死んだ事に気づいて僕の死体を回収。

それでこの生物の何らかのデータが取れればいい。

そう思いそれの存在を星に報告するために

まずはサンプルとして目の前の「それ」を殺すことにした。

キュゥべえはのそりのそりと「それ」に近づく。

すると「それ」はいち早くキュウべえの動きから本能的に命の危機を察知し、

素早くキュゥべえの懐に飛び込みキュゥべえの額めがけて跳ね上がった。

至近距離で唐突に予想外の素早い動きを見せられては対処の仕様がない。

「それ」の細長い先端からいきなりニョキッと伸びたドリル状の物が

キュゥべえの額に突き刺さった。

こんな序盤で申し訳ないが一時中断します

明日の朝5時には書けてるぶんをもう少し投下出来ると思う

マミさん自分に寄生するパラサイトと対面する前まで

再開します

あと>>1で何か忘れてると思ってたら寝て起きて思い出したので追加

5どちらかの作品を見た事のない人でも理解できるよう

最初の方でこれの中での設定も含めて最低限必要な知識を書いておきますが、

重大なネタばれ(特にまどマギ)を含むのでまだ見た事がない人でそういうのが嫌な人は読むのをやめた方が良いです


既に手遅れじゃねーか!

ごめん

〜☆

「そんなにずっと同じ景色ばかり見ていて面白いかい?」

キュゥべえがキュゥべえに問いかけをしている。ちょっと珍しい光景であった。

「ああ、とても興味深いよ」

彼は先ほどからずっと道端で朝の街並みを眺め続けている。

そこにはせわしくなく通勤するサラリーマンに朝の学生といった毎日よく見られる騒がしい光景があるだけであった。

「そうかい。お楽しみの所を邪魔して悪いけどキミをこれから処分させて貰うよ。ボク達としては当然の判断だけどね」

彼にはその判断の理由が掴みかねた。

何故なら彼はもう本物のキュゥべえではないのだ。

「それはいったいどうしてだい?」

首をかしげる「キュゥべえ」であったがその動作はどこか白々しい。

それも当然のことである。なにしろまだ生まれて一日たっていないのだ。

「日付が変わるたびに行われている記憶と意識の交換にキミは参加しなかった。

それで様子を見に来て見れば

この至近距離でもボクの出している問いかけの信号にキミは答えようとしない。

つまりキミはどこかがおかしくなっているわけだ。

なら治すより処分したほうが早いし効率がいい」

その言葉と同時に今までどこにいたのか周りの物陰から何十匹ものキュゥべえが現れる。

しかし道行く人達は誰もその異常な光景に目を止めようとしない。いや、気付いてすらいない。

「なるほどあの信号はそういう意味だったんだね。ボクの勉強不足だ。……しかし困ったな」

キュゥべえ達が「キュゥべえ」に飛びかかる。

「初めての食事が一度にこんなにたくさんだと

いくら燃費のいい高性能な体だといっても壊れてしまうかもしれない」

「キュゥべえ」の顔がその中心から花の蕾が咲くように裂けた。

花の花弁に当たる部分には猛獣にすらついていないであろう鋭利な歯が付いている。

飛びかかって来た一匹のキュゥべえの頭をその「花」を閉じることで食いちぎった。

〜☆

世界各地で何百人どころではない人間達がキュゥべえと同じように

「それ」に乗っ取られ本能のまま人を食らった。

しかし今のところ誰もその事実には気づいていない。

「キュゥべえ」はあくまで特殊なパターンであって、

「それ」の本能が「家」として指定していたのは人間であった。

そんな中、日本には「キュゥべえ」程ではないがまた別な形のイレギュラーがあった。

脳に寄生される事なく他の部位に寄生された人間が同じ市になんと二人。

見滝原市の「巴マミ」と「上条恭介」である。

続きはマミさんが寄生される過程と上条が寄生される過程をそれぞれ書き終わるごとに投稿します。

後質問なのですがこれを読んでくださっている方で「寄生獣」を読んだ事の無い方はいますか?

何人も居るなら後々の対応をちょっと変えようと思っています

マミさんの股間に寄生獣が!?

大体今の所ほぼ皆知ってるみたいですね
別にストーリーを変える訳ではないのですが
それならそれなりの対応をします

後マミさん寄生されるところまで書き終わったので
ひとまず今日の4時頃にはパラサイト遭遇前まで投下します

しかし長くなりそうだなこれまだプロローグ的な所じゃないか…
ただ上条寄生を終えた辺りからポンポン進む様になるはずです…予定では
QBと魔法少女についてあれだけ長々と述べたのは
これの中での世界観の説明とパラサイトは人間じゃないので魔法少女になれない根拠を固めておきたかったんです
なれたら…ねぇ、そりゃ勝てないでしょ

>>29
股間ではないから安心しろ右腕でもないけど

>右腕でもない



マミぱいか…

それでは再開します

マミさん寄生される箇所が判明するのは明日

マミさんのどこに寄生されるのかあてられるのが嫌だったら右腕に寄生しないとか言わないし

別に好きなように話してくれていいです

ただ戦闘の山場というか展開の山場が大まかに

1シャルロッテ戦

2ワルプルギスの夜戦

3そしてワルプル後に???と一戦

といった構成でそこら辺について予想が当たっちゃうと困ります

という訳で上条寄生後についての予想はある程度控え目にしてくれるとありがたいです

〜☆

巴マミは中学三年生の女の子、より正確に表現するなら魔法少女である。

現在彼女は親戚が所有しているマンションの一室で一人暮らしている。

彼女がその年頃の女の子としては明らかに不自然である一人暮らしをしている理由は、

細かい紆余曲折を省き単純に一言で言ってしまえば両親と死に別れた為だった。

数年前の事だ。

家族全員三人で車に乗っていた幸せなマミ達に無慈悲にも襲いかかったのは交通事故。

マミはその恐ろしい記憶をどうにか忘れようと必死で目をそ向け続けてきたので、

今となってはその事故が誰のせいで起きた物だったのかもう覚えていない。

もしかすると両親のどちらかがいい加減な運転をしていたのかもしれない。

あるいは他の車の不注意のせいかもしれないし違うかもしれない。

けれども今のマミにとって重要なのは、

それで両親が死んでしまった事とそれにより自分が魔法少女となった事だ。

マミの両親はその事故でどちらも即死していた。

しかしマミは一時だけでもしっかり意識を保つ事が出来る程度の怪我で済んでいた。

最もマミも明らかな致命傷を負っていたのでそれだけで幸運だったとは全く言えないが。

だがマミに突如過酷で不条理な試練を課した神様は、

その一方で彼女を完全に見捨ててはいなかった。

彼女はその時生まれて初めて感じた死への恐怖にただただ戦慄し、

どうにか自分の命を生き永らえさせてくれと神様に一心に願い続ける。

そこに偶然キュゥべえが通りかかった。

元々マミは生まれつき並の人よりかなり多い因果を背負っている。

キュゥべえが彼女に契約を持ちかけたのは至極当然の事であった。

因果はその人がどれだけ世界に影響し得るかの指標であり、

また同時に世界がその人にどれだけ干渉したがるかを示す。

因果を簡単に説明するなら

その人が生涯で起こせる事象の限界、可能性、才能という表現が最も適切かもしれない。

魔法少女の強さは魂をソウルジェム化する前の

因果量、願いの強さ、経験で培われた戦闘の勘とどれだけ上手く魔力をやりくり出来るかで決まる。

マミは自身の延命を心の底から願い契約する事で見滝原付近では敵なしの魔法少女となった。

そのためこの数年間を魔法少女という絶望に向かう事を求められ造られた

過酷な環境の中でどうにか生き延びる事が出来た。

しかし一方で契約時に両親を生き返らせる事を願わなかった事が

マミの人格形成に両親の死以上に深い影を落とした。

その時のマミには既に起きてしまった死を覆そうなどという発想はなく、

自分がそうなる事を回避しようとしていただけでまさに不可抗力と言わざる負えない。

だがそれは生きていく支えを突如失った

善良なマミの不安定になった自我を打ちのめすには十分過ぎた。

人格的基盤を喪失した彼女は、思春期に求められるアイデンティティの確立に際して、

他社の承認を得る前にまずは自分の存在を容認する事が必要となった。

マミは自分の命の為だけに願い事を使ってしまった事を 

いくら悔やんでも悔やみきれない程後悔していたので、

自身が出来るだけ正しい存在になる事で

自分だけがおめおめ生き延びた事を正当化しようとした。

魔法少女は魔女という化け物、予定通りいけば彼女たちもいずれそうなるであろう存在を倒し、

彼らが落とす「グリーフシード」でソウルジェムを浄化しなくては生きていけない。

それは魔法少女達の無意識の領域にも否応なく刻みつけられている避ける事の叶わぬ現実だ。

しかしマミは魔女達が他の一般人に与える悪影響を少しでも減らすために、

狩る必要のない魔女それぞれ固有の手下である「使い魔」も見つけ次第殲滅し、

なおかつ無力な一般人達の為に学校から帰宅した後は毎日欠かさずパトロールをしている。

自分の事だけ考えるなら魔女だけを狙う方が効率が良いし、

それ以外に労力を注ぎ過ぎるといざ魔女との戦いの際に魔力不足に陥りやすくなる。

しかもたとえ使い魔との戦闘であっても、

それは万全の状態にも関わらず殺されてしまう魔法少女が時には居るほど危険なものなのだ。

しかしそのぎりぎりの状況こそがマミに自分が生きていてもいいんだという自信を与えた。

彼女は全ての人々が少しでも幸せになれる事を祈って毎日戦っている。

それは心からの思いでありそこに嘘偽りは無い。

だがたとえそうだとして、人間は自分という存在を介さずに他人を思いやる事は出来ない。

マミは誰かを助ける為に戦うのと同じくらい、

いやそれ以上に自らの為にいつも死に物狂いで戦っていた。

彼女が善をなすのはそれが自分にとって正しいと思われる行為であるからだし、

それは結局自分が自分として生きるために必要な事であった。

彼女は善い事をするために生きているのではない。

自分が生きるために善い事をしているのだ。

他人の幸せが自分の幸せ。

これを力強く感じる事の出来る才能を幸か不幸かマミは備えている。

たったこれだけのすぐれた魂の気質が彼女の血塗られた日常を支えていた。

〜☆

マミが日課のパトロールを終えて帰宅した。

時刻は午後十時。疲れ切った体に鞭打ちしばし入浴。

お風呂上がりにこだわりの茶葉を使った紅茶とケーキを嗜む。

マミは家に帰るとどんな時間であってもすぐそれらの習慣を欠かさず行い、

その順番は変わる事がない。

入浴は自分の体にこびり付いている気がする「嫌な物」を清める為の物で、

ケーキと紅茶は学校から帰ると母親が欠かさず出してくれたという

状況を再現する事を目的としている。いわばこれらの二つの行為はマミにとって、

魔女の蔓延る異常空間から日常空間への復帰の儀式、あるいは験担ぎであった。

最も紅茶とケーキに関しては純粋に彼女がそう言った物が大好きで、

日頃のストレスの発散も兼ね一日のご褒美として食べているという面もある。

彼女はいつもこれから食べるケーキのカロりーを計算しては悩み、

結局紅茶に入れる砂糖の量を減らす事に落ち着く。

マミは砂糖の量すら楽しかったあの頃と出来るだけ変わらぬ様に心がけ、

自分からはそれを決して変えようとしない。

マミが一人で黙々とケーキを口に運んでいる。

フォークを扱うカチャカチャという音がやけに喧しく部屋に響いた。

〜☆

マミが寝静まってからしばらく経った頃、部屋の外のベランダに「ソレ」は飛来した。

暫くしたら「それ」が這い出して来るだろう。

「それ」は蛇やミミズのような体の特性を生かし、

非常に狭い隙間からでも室内などに侵入する事が出来るが、

本日マミの家に侵入するのにそんな能力は何ら必要なかった。

窓が少し開いているのだ。マミは時折自分の部屋の夜の静けさに耐えられなくなる事がある。

そんな日は幾ら黙って目を瞑っていた所で眠りはやって来ない。

そういう時は部屋の窓をほんの少しだけ開けておく。

すると街の音が微かにだがマミの耳に届く様になる。

見滝原市は現在急速に発展を遂げている町だ。

夜が多少更けた所で、人々が出す何らかの音が自然とどこかから聞こえてくる。

たとえ朝が近づき町がひっそり静まり返ってしまったとしても問題はない。

この窓を開けるという行為はあくまでマミにとって所詮ある種の儀式に過ぎないのだ。

つまりマミは誰かと何らかの形で繋がっているという形が欲しくてたまらない。

閉じられた空間は彼女に嫌でも孤独という物を感じさせる。

それが彼女にとっては死ぬ事を除けば何よりも恐ろしい。

ふと突然風に揺られベランダの「ソレ」が少し動いた。

中から「それ」が顔を見せる様子はまだない。

しかし夜はまだまだこれからである。

今日は短いですがこれで投下終了ですありがとうございました

地球上の誰かはふと思わなかったのか?

魂がソウルジェムに移ってて体は抜け殻なわけだから
それが乗っ取られると……どうなるんだ?

再開します

今日はある意味初めての戦闘シーンですが文章力が無いせいで
どう盛り上がるように書けばいいのか良くわからない
まあ私の実力不足な所はどうにか脳内で変換してお楽しみくださいごめんなさい

>>53
誰かが願ったはずですがそれはこの話の主題ではないのでカットしました
最終的な全体の構造としては
資源として人間を保護しようとするQBvs滅ぼそうとするパラサイト
という構図になるでしょうが、
そういった客観的な視点はあくまで舞台装置であって
マミが「あれか、これか」という主体的な選択を通じて自分の為に足掻くというのが話の肝なので、
人間と環境間の問題はこのSSではあまり重視されません
あくまでマミのメンタルを揺さぶる為には登場しますが

>>57-59
そういう話を後々するためにわざわざ最初の方のキュゥべえの所で長く尺を取りました
話の中で出てくるまで議論したり想像したり自由にお楽しみください

〜☆

「それ」が部屋への侵入を果たした。ズルリ、ズルリと「それ」が這う。

マミが目を覚ました。部屋の何らかしらの物音で思わず目を覚ましてしまうほど、

こういう眠れなかった日のマミの神経は張り詰めている。マミは咄嗟に泥棒が入って来たのだと思い、

素早い動きで侵入者の正体を確認しようと部屋の電気を付けに向かった。

電気をつけ辺りを見回すと目に映ったのはミミズの様な蛇の様な「それ」。

両者は互いをじっと観察している。

「それ」は鼻や耳から密かにマミの中に侵入する事を諦め、

堂々とマミの体に穴を開け直接侵入することにした。

「それ」が何の予備動作もなくマミの額を目がけて跳び上がる。

マミは自分に向かってくる「それ」を手などで払いのけようとする事なく、

「それ」が向かってきた方とは逆方向に倒れるようにして身をかわした。

というよりは寝起き且つ突然の事態で頭がまだ上手く働いておらず、

慌てて避けようとして転んでしまった。

「それ」の方も壁にドリル状の先端が突き刺さってしまい、

マミに素早く追撃を仕掛ける事が出来ない。

マミは倒れる勢いそのままに顔をしこたま強く顔を床に打ちつけた。

しかしそのまま動きを止める事なく、

出来るだけ「それ」のいるであろう場所から離れようと横にコロコロと転がる。

背中が壁にぶつかった。痛い。

マミの鼻から血が垂れている。目の前も多少チカチカしている。

だがマミはそんな些細な事は全く気にしていなかった。

マミの頭の中にあったのは「それ」の次の一撃である。

別にマミは先程の「それ」の一撃を予測していた訳でも運良くまぐれで避けられた訳でもない。

そこに動かぬまま居たら危険だと魔法少女として培ってきた戦闘の勘と経験が告げていた。

だからマミは素直にそれに従ったのである。

そしてその「本能」がマミに告げている。アレは危険な生物だと。

壁に背中を付け辺りを何度見回しても異常は「それ」が壁にあけた小さな穴しかない。

「それ」は部屋のどこかの物陰に潜んでいるのだ。

マミは眠る時はソウルジェムを指輪の形態ですら身につけようとしない。

理由は単純にアクセサリーを付けたまま眠るのが気持ち悪いというマミの嗜好であった。

しかし普段はそれ位の我儘をしても問題ない程度の実力をマミは備えている。

魔力に関連した物が近づいてくれば、

どんな微弱な物であれ事前に絶対に気づくのは明らかだったし、

一般人の強盗くらいなら変身しなくても組み伏せる程度の膂力を備えていた。

むしろ下手に変身してしまった方が後々面倒になる。

マミの体は、本人は気付いていないが魂と肉体の関係上

その動きにかなり多くの割合で魔力が関係している。

常日頃から魂の命令を身体に伝達する為に魔力がある一定以上身体をめぐっているのだ。

だが今日ばかりはその我儘が致命的と言えるほど裏目に出た。

つい自宅にいるという状況に気を抜いてしまっていたマミは、

寝る前にテーブルにソウルジェムを置きっぱなしでそのまま床に就いてしまっている。

運悪く今マミが背中を付けている壁はテーブルから一番離れた玄関に近い方の壁だ。

ソウルジェムがなくては変身も魔法を使う事も出来ない。

アレに武器無しで対処するのは絶対にまずい。

今すぐにこの状況をどうにかしなくては。マミのこの性急な判断が実に良くなかった。

壁から離れテーブルへ向かって歩を進めあと一歩という所までたどり着く。

しかしそれによって今まで考慮する必要のなかった死角が背後に出来あがる。

ズルッという不吉な音がした。音のした方に首を向けるがそこには何もない。

ようやくマミも事態の深刻さに気付いた。

これでは相手がどの角度から襲ってきてもおかしくない。

戦う為の武器がないという恐怖に冷静さを失ったマミは、

必死でソウルジェムを掴もうと最後の一歩を踏み出す。

「それ」も本能から、

テーブルの上に置いてある宝石をマミに触らせてはいけないという事を理解していた。

不意打ちは基本仕掛ける方が有利。

簡単にマミの右下側から懐に潜り込み顔めがけて跳ぶ。

マミの反応が一瞬遅れる。

体を左に捻りつつ後ろに仰け反りどうにか無理やりにでもその一撃をマミは避けようとした。

しかし無慈悲にもズブリとマミの身体に「それ」の先端が突き立つ。

「それ」が侵入した部位はマミの右胸部であった。

今日の更新終わりです
短くて申し訳ない…
一度ノートに書いてからパソコンに打ち込んでしかも文章チェックしてるので
どうも書き溜めが無いと進むのが遅くてしょうがない…

最初これを書き始めた時には特に気にしていませんでしたが
今後の展開はキルケゴールの思想の流れを意識して貰えるとわかりやすいっぽいです
「死にいたる病」が絶望だったり意外とまどマギとテーマの共通点が多い気がする

そういえば>>32正解ですおめでとうございます

ばれたら困るので展開予想は焦りますが

これの中で設定どうなってんだとかの話はどんどんしちゃってください

レスがあるとやっぱりモチベーションが上がるので


胸寄生型か…名前はどうなるんだろう?
マミさん特製厨2ネームか?

マミさんのメンタルがダダ下がるなこりゃ……まぁ宇田さんよりは扱いやすそうな場所だけど

どっから何処までかな、右肩からわき腹まで扇状にくらいか?

パラサイト側を激しく動かす時は必ず服の胸の部分は破けるわけだよな

ゴクリ

上条が寄生されて一区切りつくまでは毎日少しづつでも投稿していこうと思いましたが、
昨日と今日の朝寝過ごしたんで今日は無理そうです
上条の所が終わったら、今までの皆さんのレスのおかげで書く気が出てきたので
時間の合間を縫って一度最初から最後まで大雑把なプロットを固めてから投稿しようと思います
なので少し間が空きます
シャル戦からが本編と全然違う展開となる予定です
それまでは多分一応本編の筋をある程度なぞった形になるはず

これだけだともったいないので今後の展開の面白そうな所のネタばれにならない程度にレス返し

>>71
私がわざわざ『右』胸部に寄生させた事からお察し下さい
別に他の右にある部位でも良かったんですけど
マミさんといったら胸が思い浮かんだので安直に

>>73
本編では多分描写しないだろうと思いますが右胸全てと右脇の下の辺りを想定しています
肩は含んでいないので割としっかり詰まってる
ただし肺などの重要器官についてはあくまでマミの物を使用しているという事で
完全に支配しているのは右胸のみ
ミギーが新一の心臓を動かしたのは多分イレギュラーだと思っています
それとジョーみたいに心臓動かして避けなくても魔力を使えば治せる設定です(少なくともこれの中では)

>>76
私も最初どうやって闘わせればいいのか結構悩みました
その上で言わせて貰いますとあなたの服には袖はついてないのですか?

再開します
新一はミギーの事を夢かと考えましたが百戦錬磨の魔法少女がそんな楽観的な物の見方する訳がない
それと次回から上条パートです

〜☆

胸の中を進み「それ」が頭を目指す。何者かに体内に侵入されたと理解したマミの行動は迅速だった。

ソウルジェムを掴み、変身はせずにリボンを出現させる。

そして自分の右胸部の根元をリボンでぎりぎりと痛みに構わず全力で締め上げた。

暫くすると徐々に痛みが無くなっていき、

胸の中で「それ」が蠢く感触も薄れていった。

マミは少しも緊張を和らげる事なくリボンはそのままに魔法少女姿に変身する。

そしてマスケット銃を頭上に出現させ、魔法により自身の右胸部に照準がきちんと合うよう空中で静止させた。

「はっ……。はっ……。は……」部屋中にマミの荒い息遣いが滲みる様に伝っていく。

マミはこのまま自分の胸を打ち抜くかを悩んでいた。

この距離から発砲すればいくら威力を調整した所でただでは済まない。

マミはこれまで魔法少女としての戦闘で大きな怪我をした事がなかった。

一人で狩りをする者にとって、

たとえ後で治療可能であったとしても、

戦闘中に動きを鈍らせるほどの傷を負う事は時として死に直結する。

マミは優秀な魔法少女であった。

だがそれ故に自分の魔法がどこまで自身の怪我を治す事が出来るのかわからない。

マミは魔法少女の肉体が魂と分離されていて理論上いくらでも修復可能な事を知らなかった。

また、当たり前の事だがマミは人に向けて発砲した経験がない。

自身の魔法がどれほど人を破壊できる物なのかは直観的にわかる。

人体をどこまで傷つけずに済むのかがわからない。想像もつかない。

今はもう体の内に先程までの「それ」が上へ上へ登ろうとする恐ろしい感触はなかった。

それでもマミにはどうしても「それ」が今も自分の中を這いずり回っている様な気がしてしまう。

やはり「それ」に侵入された胸をこのままにしておく訳にいかない事に変わりはない。

でももう手遅れなのかもしれない。そんな考えがマミの脳裏を掠める。

「それ」の所在がわからぬ以上「それ」が人体の別の場所に移動していてもおかしくはない。

撃っても撃たなくても死ぬかもしれない。

必死で解決策を探るマミに単純な、しかし画期的な天啓が下る。

侵入された傷口から手を入れて探せばいい。

急いで自分の右胸部の下部分をまさぐるが異常が見当たらない。

そんな馬鹿な。あれは全て夢だったのだろうか?いや、そんなはずはない。

もうどうしたらいいのかどころか何が起きているのかすら判別がつかない。

マミに数年前の事故の時の恐怖が再び襲いかかる。

数々の死線を潜り抜けてきた今となってはその輪郭はかなりはっきりしていた。

軽いパニック状態に陥る。

「キュゥべえ……。パパ……。ママ……。佐倉さん……」

涙を流しながら親しい人の名前を呼び助けを求めようとする彼女の声に答える者は誰もいない。

〜☆

彼女のソウルジェムが完全に絶望で黒く染まらずに済んだのは、

皮肉にも「それ」のおかげであった。

「それ」は生き物の体内に侵入する際に乗っ取りをスムーズに行う為に

強烈な痛み止めと睡眠作用のある物質を体内から分泌する。

マミの魂は体と分離されているが、どちらも完全に互いから独立して存在する訳ではない。

現在マミはぐっすり穏やかに眠っている。

部屋でしている物音はマミの規則正しい寝息のみ。

しかしこの室内で独自の自我を持ち思索に黙々と耽る者が居た。マミの『胸』である。

『胸』は自分の失敗を悔やんでいた。

まだ言語を獲得していない為その思考はわれわれより感覚的で抽象的だ。

しかし内容をわかりやすく要約してしまうと概ね次のようになる。

「失敗した……。

ここに定着してしまっては二度と体全体の動かし方を理解する事はできない。

口惜しい……。

口惜しい……。

しかも間違えて寄生してしまったのがよりによってこの部位だ。

腕や足ならまだ日常生活で必ず使う必要性がある以上、

宿主に私との共存を認めて貰う為の交渉材料に成り得る。

だがこんな生活する際に何の役にも立たない箇所に寄生してしまっては、

危険だと判断されればきっと即座にこの部位ごと取り除いてしまおうと宿主は考えるだろう。

その上この宿主の精神は今が彼女にとって異常な状況であるという事を差し引いても

どうも普段から多少不安定であるらしい。

私が宿主を殺す事は簡単だ。ここから心臓を一突きしてやればいい。

だがそれでは無意味だ。私は何が何でも生きていたい。まだ知らぬ様々な物を知りたい。

このまま互いの利益を衝突させてしまえばおそらく我々は長生き出来ない。

私が長い期間安定して生き延びる為に必要な事はなんだ?宿主と交渉する事だ。

その為には宿主の為に何をしてやれるのか、

この宿主と生きる事で私にどのようなメリットがあるのかをより明確にしなくてはならない。

最低明日一日は気付かれる事のないよう大人しくして居よう。

そして宿主の用いる情報伝達手段、周囲の環境、宿主の願望を観察し学習するのだ」




着々と夜が明けようとしていた。

誰か私にタイピング力をください。今日の投下はこれでお終い。

上条パート書いてみると結構長いです

これが他の登場人物達にもやるならただただ絶望しかありませんが

寄生された人の心情しか掘り下げるつもりは今の所ありません




諸注意を追加


6これにはおりこ☆マギカやかずみ☆マギカの登場人物は登場しません

また独自解釈の際にもしかしたら生じるかもしれない多少の不都合は時間軸が違うからとかいう

ご都合主義で済まそうと思っています

ご注意ください


7百合展開などはありませんが

恋愛展開は理由などもきちんとやりますが恭介からの好意を前提とした両想い恭さやです

恭さやについて恭介がさやかの事好きな訳ないだろ!とか仁美以外に好意を抱くのが嫌だといった方、

アニメのさやかがピエロっぽくなるから嫌だなどと感じる人たちは読まない方が幸せです

続き投下します

宇田さん辺りがもっと描写されて欲しかったという願望と
恭介のさやかへの思いをなるべく合理的に説明しようとしたら長くなりました
御覚悟ください

そう言えば最近意識したんですけど現在速報内で連載されてるマミさん主人公クロスって
私のも含めて把握してるだけで四つあります
最近完結したり連載されてるクロス以外のを含めるともう少し増えますし
いつの間にかマミさんブームが到来していた……?

〜☆

上条恭介は絶望していた。上条は裕福な家庭で生まれ育った普通の中学二年生の男の子であった。

最もそれは魔法少女と比べての普通であって、

彼はいくつものコンクールで賞を貰い、

プロの音楽家としての将来を皆に期待されている天才ヴァイオリニスト、金の卵である。

しかし上条のヴァイオリニストとしての人生は奇跡でも起こらない限りもう期待できそうにない。

彼は左腕を自力で動かせなくなってしまったのだ。

その原因は交通事故。彼が交通事故に遭ったのは丁度数日前の事だ。両足を骨折し全身を強く打ち体全身にひびが入っている。

それだけで全治数カ月以上の大怪我であるが、左腕の方は二度とヴァイオリンが弾けるレベルにまで回復する事はない。

医者も十中八九上条の腕が治る事はないだろうと考えている。

けれど精神がまだ不安定な状態にある彼にその事を伝えるつもりはない。

上条がその事を知らないで居られるのはきっと幸せな事だろう。

ヴァイオリンは彼が自身の全てを注ぎ込んできた物だ。

だけれどそれを失う事は上条にとって

自分の才能を発揮できなくなるという事のみを意味するのではなかった。

今でこそ上条にとってかけがえの無いほど大切なヴァイオリンだが、

上条がヴァイオリンを弾き始めたのは親が弾かせたがったからでも

自分で弾いてみたいと思ったからでもない。

ただその音色でたった一人の心を動かしたかったのだ。

「恭介ー。今日も元気にしてたー?」

「やあさやか。今日は遅かったね」

彼の思い人、美樹さやかが病室の扉を開け入ってきた。

〜☆

上条とさやかは俗に言う幼馴染という間柄である。

上条は小さい頃自分という存在に何ら価値を見いだせずにいた。

周囲の望めばなんでも与えられる贅沢な環境は彼にとって苦痛でしかなく、

両親の愛情、自身の肉体すらも当時の上条には煩わしい物でしかない。

物心つく前から彼の周囲にはあらゆる方面に優れた人達が居た。

そういった人達は彼の為に自ら何でもしようとしてくれたが、

それが上条の苦しみの始まりだった。

物心が付き始めた頃に一つの事件が起こる。

上条はふとした拍子に彼らの胸の底に自分に気に入られようとする醜い利己的な愛を見たのだ。

彼はその年の幼子としては不幸なほど他人の気持ちに対して聡明だった。

他者からの施しは親からの物ですら上条に将来彼が一角の人物になる事を期待していた。

上条には周囲の人がそこまで目をかけるほど自分が大した人物だと思えなかったし、

それに応えられる様になれるとも思えない。

彼には自分自身の存在そのものが既に不正であり恥ずべき物だった。

そしてそんな「紛い物」の区別も碌につかぬ周囲の者たちも哀れで取るに足らない物に思われた。

そんな自己卑下、他者卑下の意識は自然と彼に「外」への興味を喪失させていき、

彼を臆病で内向的に成長させていく。

いつまで経っても友人の一人すら作ろうとしない我が子の姿に見かねた両親が

古くからの友人の娘をなんとなく息子の友達にあてがった。それがさやかである。

〜☆

選ばれた理由は何であれ、

確かにさやかは上条の心の病を取り除くには最も適したタイプの人間であったと言える。

初めて上条とさやかが出会った日の事だ。

さやかは上条を一発殴りつけた。

上条の厭世的で全ての物事を始める前からいちいち否定しようとする態度。

その年頃の子としては不快なほど理屈っぽい言い回しと、

まるで上から全てを俯瞰しているかの様なその態度。

他者は全て馬鹿者であるとでも言いたげな相手をせせら笑うそのうすら寒い態度。

その全てがさやかの癪に障った。

さやかは激怒した。

必ずかの無知蒙昧な馬鹿の目を覚ましてやらねばならぬと決意した。

さやかに理屈はわからぬ。さやかはただの元気な子供である。

毎日外で遊んでは服を汚して、すぐに服を駄目にしては親に叱られた。

けれども「楽しみ」については人一倍敏感であった。

彼女はこれ程「楽しみ」に充ち溢れている世界をはなから否定してかかる上条を許せなかった。

さやかの内にささやかながらも築かれていた哲学と言える物は、

世界は生きており、それはきっと面白い物だという彼女なりの経験に基づいた確信である。

上条はそれを侮辱する敵で、それは倒されなければならぬ悪だった。

だから殴った。間違いを犯しても痛くなければそれは治らならぬ。

これも毎日の様に擦り傷をこさえる彼女なりの知恵だった。

その場で激怒したのはさやかだけではない。

目の前で息子を殴られた上条の両親達もであった。

さやかがそのまま詫びもせず黙って家に帰った後、彼らはさやかの両親に文句を言おうと考えた。

しかし上条がそれを止めさせた。上条はさやかが何か間違った事をしたとは微塵も思わなかった。

自分におべっかを使う周囲の連中に比べればさやかに殴られた事などてんで不快ではない。

むしろ自分が碌でもない存在だとはっきり且つすっきりした形で面と向かい言ってくれた気がした。自分の在り方を初めて別の誰かが否定してくれた。

何もかもが息苦しかった今までとは異なりどこか救われた心持ちがする。

機会があればまた彼女と会ってみたいな。その上条の願いは図らずもすぐ叶う事となった。

今日の更新はここまで
この上条さんは一発くらいぶん殴られるのが丁度良い

本来は違う奴で仁美に使おうと思ってた設定?なのですが
ヴァイオリンなんてまともにやるには金がかかるし
あの家から見て少なくとも貧乏って事はないだろって事で流用しました

ようやく上条パートひとまず書き終わりました……
という訳で随時パソコンに打ち込み文章のチェックが終わり次第投稿していきます

今日の更新は非常に短めです

〜☆

次の日さやかが上条の家に一人訪ねて来た。

「家に何の御用ですか?」

冷やかに尋ねる上条の母親にさやかはただ一言こう答える。

「山」

〜☆

さやかが上条を連れ出し向かった先は山というよりは

どちらかというと丘と表現するのがふさわしい所だ。

そこは当時、後の急速な発展の兆しを既に見せつつあった見滝原に残された、

自然と直に触れ合える数少ないその近辺に住む子供達皆共有の遊び場であった。

そこでさやかは上条に色々な物を見せた。魚釣りに虫捕り、秘密基地に木登り、落とし穴などなど。

これを一日でやられては元々運動など大してしてこなかった上条にはたまったものではない。

それに見せられた内容も上条にとって別段興味引かれる物ではなかった。

しかしそういった活動を通じて彼の目を釘付けにさせた物が一つだけある。

美樹さやかだ。彼女はまず自らその何かで遊んで見せた。そして上条にやってみろと促す。

上条は不思議で仕方がなかった。先日さやかが見せた敵意は紛れもなく本物だったはずだ。

それが今ではその相手と二人きりでしかもその状況を心から楽しんでいる。

さやかは遊びの達人であった。遊びに関するあらゆる技能もさることながら、

何もかもを貪欲に楽しもうとするその態度。

上条はさやかの人としての在り方に非常に強い関心を抱いた。

また上条にとってさやかと過ごす時間は信じ難いほど居心地が良かった。

さやかは上条にこうあれといった具体的なビジョンを要求しない。

ただ自然体で己に正直でいる事だけを求める。

上条がこれは余りにも面白くないと素直に言うとすぐさま別の遊びを提案するのだ。

彼女の前でだけは上条は無価値な自分であることを無条件に容認された。

ただ全てを自由にさやかと一緒に楽しみさえすればいい。

結局その日は上条にとって生涯この日の事を決して忘れはしないだろうと思わせるほど

面白い一日となった。

今日はここまで
あ、明日からはもうちょっと増量していけるはずだから…
はたして地の文によりがっつり展開される恭さやに需要はあるのか?

上条パートの特に山場というか特筆すべき所も
上条に寄生するパラサイトについて上条の動かない腕をどうするかと
普通に放っておくと耳や鼻から入られて頭に行かれちゃうんで
原作に出ていない設定の隙間?をちょっと独自解釈した所くらいです
こじつけではないと信じたい

数日恭介とさやかの普通の恋愛模様に嫌でもお付き合い頂く事になると思います

そろそろ再開します

一昨日明日更新すると言ったな?

あれは嘘だ

〜☆

それからほぼ毎日上条はさやかに連れられ色々な所で様々な遊びをした。

その中で多くのさやかの友達と接する機会もあったが、

上条が誰かに対して興味を示したのはあくまでもさやかにのみであった。

そんな有様な物だから一部の男の子達等からは上条の腰巾着などとからかわれる始末だ。

最も本人もさやかも彼らの言う事などこれっぽっちも気にしてはいなかったのだが。

ただしさやかがその様な誹りを受ける事は一度たりともなかった。

彼女はその近辺の子供達皆から一目置かれる存在だったのだ。

彼女は自分の気に食わない物に対しては誰であれ何であれ決して屈服する事なく向かって行った。

上条と出会ってから数年の後、

「山」に数日出没した不審な男に猛然と向かっていった小学生時代のさやかの姿は、

それを見ていなかった子供たちの間ですら伝説に、

見滝原の母親達の間では

今も決して真似してはいけない良き反面教師として子供たちに話す小噺として浸透している。

当時彼女を暴れ馬やじゃじゃ馬などといった言葉で明らかな意図を持って侮辱すれば、

その者は後々自分の頬をさやかに殴り飛ばされる事を覚悟しなくてはならなかった。

むしろ上条が侮辱された際もおそらく上条本人が毎回止めに入らなければ、

言い出した者はその右頬を差し出さなくてはならなかっただろう。

それほどあちこちでお転婆としか言いようのない活動をしていた

幼いさやかがほとんどの子供達から疎まれる事なく、

むしろ積極的に受け入れられていたのには、

彼女が外交的で人と仲良くなる能力に優れていた事以外にも大きな理由があった。

さやかがその拳を振るったのは自らの名誉を守る為の場合を除けば、

何時如何なる時も弱い者を守ろうとした時だけだったからである。

上条はさやかに強い憧れと共に、

決して上条が到達する事のないであろう境地に彼女が居る事に嫉妬していた。

さやかは誰か一人でも楽しんでいない者が居ると

自分も楽しくないという純粋なただそれだけの理由で困っている人達に手を差し伸べた。

上条にはそう易々と誰かの為に何か行動を起こす事はどうしても出来ない。

この人を助ける事にはどういう意味があるのか、

自分にそれは可能であるのかとつい考えてしまう。

もちろん幼い頃のさやかにだってそこまで厳格な正義感があった訳ではないし、

誰であっても助けようとするのはそれが結果自分にとって楽しい事に繋がっている事を

どこかで理解していた故の平等さだった。

しかし周りの人間が何か見返りを求めて

自分に奉仕する姿をさんざん見せつけられていた上条にとっては、

さやかの見返りを求めぬ平等な奉仕の姿は一段と輝いて見えた。

この年代もしくはもう少し上の年齢の子供達は

よくカッコいい戦隊物などのヒーローに憧れるものだが、

上条は結局一度もそう言ったテレビなどから映し出されるヒーローなどには関心を示さなかった。

なにしろ上条にとってのヒーローは彼のすぐ傍にずっと居たのだ。

上条はさやかと日々接していくにつれ、

だんだんと彼女の施しを受けるばかりで

何も彼女に与える事の出来ない自分自身が恥ずかしくなっていった。

けれどその感情は彼が他の者に今まで抱いた物とは質的な面で決定的に異なっている。

上条はさやかと釣り合う人間になりたかった。

さやかに自分の事を一人の人間として意識して貰いたかったのだ。

彼が自身のさやかへの思いが恋心であると気づくのはそう遠くない未来の話である。

それならばさやかにとっての上条はどういう存在だっただろうか?

さやかも上条の事を大切に思っていた。

さやかはロボットではない。

彼女が他者から見て毎日どれほど満ち足りた毎日を送っていたとして、

その生活に完全に満足しきっていなくともそれは仕方のない事だ。

人間の欲望は突き詰めればどこまでも際限がない。

さやかにとって欠けていたピースはほんの些細な物で、

おそらく普通の人ならもっと早くに見切りをつけ諦めてしまうものだった。

さやかは常日頃自分自身に「正直」であることを己に要求し、

それを他者にも態度として求めた。

しかしそれを皆は平気で破っていく。

本当は楽しいと思っていないのに楽しいと口に出す者。

みんな仲良くなどと言いながら実は自分が集団の中で占めている位置を気にかけて居る者。

皆で遊んで居るはずなのに蓋を開けてみればそれぞれが自分勝手に自分なりの遊びを楽しんでいる。

それには色々なタイプがあるが当時のさやかにはこれが全く理解できなかった。

わざと嘘をつく者ならまだ理解はできる。それは欺瞞だからだ。

明確な悪であり事実他の者達もそれには眉をひそめ顔をしかめる。

しかし彼らもまた同じように嘘をついて居るはずなのにそれには疑問を持たず

しかもそれを楽しんでいる。

これは悪ではないのかな?楽しみの中に陰る淀みの様なもの。

遊びは一人でしても面白くない。

こういった違和感を時々感じつつもさやかにはどうする事も出来ず、

頭のどこかに疑問符を浮かべながらもいつも通り遊ぶしかなかった。

そんなさやかの悩みを解決したのが上条との出会いだ。

上条は面白くないと思う物に対してはきちんと面白くないと意見を述べたし、

何よりもさやかの目線で、さやかと「一緒に」遊ぼうとしてくれた。

さやかに対して何時でも「正直」に接してくれた。

本当はさやかも上条が彼女の提示する遊びをそれほど好むような性格でない事はわかっている。

それでもさやかは上条と遊びたいと思った。

彼が何を楽しんでくれているかはわからないが、

彼が自分と居る事を楽しんでくれているのは確かに感じられるし、

さやかも上条が楽しんでくれている姿を見るのが大好きだった。

二人で一緒に居る事さえ出来ればさやかは周りの全てを遊びに変える事が出来た。

さやかにとっての上条は、最初はただの「治すべき患者」で、

「楽しみ」という感情を忘れた彼にそれを思い出させる事さえ出来ればそれで十分。

それがまるっきり変わってしまったのはいったい何時の頃からだっただろうか?

〜☆

さやかと上条が初めて出会ってまだ一年目の事だ。

上条は日頃の感謝も込めてさやかの誕生日を祝う計画を彼女に知られぬようこっそり立てていた。

その頃の上条がさやかのおかげで少なくとも人並みに活発に、

言葉の節々の嫌みたらしさも抜け普通の子供らしくなった事もあり、

上条の両親もさやかに対して最初の険悪な態度はどこへやらひどく好意的で、

その企画にも喜んで協力した。

それはともかく重要なのはその日のプログラムは上条が全て考えた物で、

上条もさやかの事は既に熟知しているつもりで居るから彼女を心から喜ばせる自信があった事だ。

いつも通り上条の家を訪れたさやかは

心の底でプレゼントの一つや二つくらい貰えるかもしれないとちょっと期待していた。

しかし実際上条に連れられ向かった先にあったのは

まるで豪華なパーティー会場と化したかの様な室内であった。

家の中に居るメンバーはいつもさやかが上条の家を訪れる時に見る物とほとんど変化はない。

明らかに一芸に秀でていますよと言わんばかりのが数人いるだけだ。

だが部屋の装飾と料理に関しては事情が違った。

割と見滝原内では庶民階級のさやかが見てもわかるくらいに

どう見ても一日で使う量ではない金額がかかっているのである。

それも当然の事であった。計画を立てたのは上条自身だったが、

心を込めて用意したのはあくまで彼の両親だ。

どう言い繕った所で余所の子供の為に用意するパーティーとしてはやり過ぎである。

彼らも又上条に初めての友達が出来て、

しかもその友達の誕生日を自分達の家で祝うという事態に舞い上がっていたのだ。

誰が悪いか?と問われれば、

おそらく今まで友達も作らず親に心配させてきた上条が悪いという事になるだろう。

さやかは本当に自分の心臓が止まってしまったのではないかと疑問に思う程度にはびっくりした。

ここまでは上条の思惑通りである。

ただびっくりはしたのだが、

残念な事に彼女はこのサプライズを喜ぶより先に恐縮してしまった。

そして上条にこれはさやかの為に全て用意したのだと言われてしまった暁には

もう顔を強張らせるしかない。

せっかく今日の為に用意したのにさやかはあまり喜んでいないようだ。

上条のこの困惑とさやかへの申し訳なさが後の事件の印象を彼の内でさらに強める事となった。

今日はここまで

次回今まで知られていなかった上条さんがヴァイオリンを弾き始めた理由を解き明かすパートです

※念のため言っておきますがあくまで私の話の中だけの設定です本気にしないでください

乙です。
スゴイ期待してます。

上条君のキャラクターを真剣に掘り下げて
さやかちゃんとの関係を丁寧に描写してるのはスゴク良いと思う。
大抵のSSだと上条君はクズか空気だもんね。
二人の微妙な距離関係も甘酸っぱくてステキ。

でも寄生獣を期待して開いたのに長々と回想パートが続くのはちょっとテンポ悪く感じるな。
例えばテレビアニメで想像して欲しいんだけど
もしも第2話から回想が始まってずっと山場のない回想回が続いたら視聴者もダレるでしょ?
もっとエンターテイメント性の高い見せ場があったほうが良いと思う。

もちろん>>1が上条君の過去を丁寧に描写して魅力あるキャラクターに見せたい、という意図も良く分かるよ。
でもそれならいっぺんに回想を消化するんじゃなくて、
ストーリーの要所要所に回想を入れるとかの方が良かったんじゃないかな。

要するに何が言いたいかっていうとマミさんのおっぱいが見たい。

長文乙といいたいところだけど、わりと同意できる

あと何故上条は上条表記なんでしょうか
恭介じゃダメなんでしょうか

続き投下します
今日で過去編丁度終了なんで我慢してちょ
まあ今更予定変える気はないんですけどね

>>156
言い訳にしかならないんですけど私盛り上がったりとかしてる時に
別の回想入ったりするのあんま好きじゃないんです
だからマミを思いっきり動かしたりする前に最初にそういう面倒な所をやっておきたかったんで、
上条編もこれからのパラサイト寄生部分の方がむしろ肝
順番も上条主体の所これ終ったら告白パートしかないし
一部だけを変える訳にはちょっといかない
過去編が長いのはどのシーン削っていいのか判別付かなかった私の構成力の無さと、
事前に書き溜めてなかったせいですごめんなさい

>>157
中沢が名字だから男はそっちに合わせるという何となくの基準
知久?ショウさん?知らん
中沢の登場予定はまだないですけど
もしかしたらひき肉ミンチ殺人事件が
被害者中沢視点で描かれるかもしれないじゃないですか
知らんけど

〜☆

上条にはそれまで自分からこれが趣味と言える趣味は無かった。

何故なら上条の周りの物は全て誰かに与えられた物で自分で選んだ物ではなかったからだ。

しかしそういった物の中でも彼を格段と惹き付けた物が一つだけあった。音楽である。

幼い上条は音楽を他人から与えられた物の一つとして

特に他との感じの差を意識していなかった。

それでも上条には自分で聞こうとしなくても

家族に連れられコンサートに出向いたりと、素晴らしい音楽を聞く機会がいくらでもある。

そして今日この日の為に上条は色々聞いてきた中で

特に自身の琴線に触れた音楽をさやかに聞かせてあげようと、

両親に頼み込んでその演奏者に来て貰っていた。

豊かな感受性を持つのは上条に限った事ではない。さやかも一緒である。

それまでは縮こまり細々と食事を摘まんでいたさやかであったが、

「彼」の演奏が始まると、

生まれてこの方聞いた事のない美しい音の調べに我を忘れじっと耳を傾けた。

この日最初にさやかを本当に楽しませたのは僕のサプライズじゃなくてこの演奏という訳か。

上条が今日初めて見たさやかの楽しげな表情を見て感じたのは、

さやかがやっと楽しんでくれた事への喜びでも

「彼」を選んだ自分の目利きへの誇らしさでも無い。

今日という特別な日にさやかにこれほど一個人として意識されている

「彼」への強烈な嫉妬であった。

〜☆

このさやかの誕生日に起きたちょっとした事件以来上条の生活は一変した。

丁度何か習い事を始めさせたがっていた両親を説得し、

ヴァイオリンを習い出した上条は毎日毎日一心不乱にヴァイオリンを弾き続けた。

どれほど長い時間弾き続けたとして苦ではなかった。

耳を澄まさなくたってじっとしているだけで頭の内に聞こえてくる「彼」のヴァイオリンの音色、

さやかの「彼」を見るあの呆けた馬鹿みたいな顔。

これらが上条が何もせずに居ると遮二無二演奏へと駆り立てる。

音楽に関して天賦の才能があった上条にはもう頭の中に

「彼」の奏でた音以上の音のビジョンがあった。

ただその為の技術がまるで足りない。体がついていかない。だから一日中弾き続けた。

さやかに「彼」の様に認めて貰いたかった。

さやかには僕だけを見て居て欲しい。これが上条を突き動かした原動力だ。

上条にとって己が最も素晴らしいと感じる物、

己が最も高みへと上り詰める事が出来るであろう物、それが音楽でありヴァイオリンだった。

ただ当然の事ながら上条がヴァイオリンにのめり込めばのめり込むほど、

さやかと一緒に遊べる時間は激減して行く。

しかしさやかは周りの誰よりも全身全霊で一つの物に取り組む上条の姿に憧れ、

格好良いと感じた。

さやかは上条と遊べなくなると自然に他の同年代の女の子達と遊ぶようになっていった。

けれども二人の距離が離れれば離れるほど、かえって互いが互いを想い合い、

二人の絆をより強固な物へと作り変えて行ったのである。

〜☆

そして時は現在に戻る。上条は絶望していた。

さやかも上条もとっくにかつての彼らではなくなっている。

さやかは昔ほど無鉄砲でお転婆ではない活発で正義感溢れる普通の女の子だし、

上条もヴァイオリンを通じて自分に一定の価値を見出していた。

さやかの変化。それは他の皆と同じ様に物事の正しさだけではなく、

自分の利害も意識する存在になったという事である。

しかしいったいそれが上条の想いに何の影響を与え得るだろうか?

どれほどさやかが昔と変わってしまっていても、

彼女が依然優しさに満ちた素晴らしい勇敢な人間である事にはなんら変わりはないし、

かえって彼女が普通の人間に近づけば近づくほど、

上条にはさやかの優れた魂の気質がより眩しく見えた。

上条にとって今やさやかは誰よりも何よりも自分よりも大切な存在である。

しかしだからこそ上条は彼女と対等で居なくてはならなかった。

彼がさやかと対等で居る為には絶対に欠かす事の出来ない物があった。ヴァイオリンだ。

さやかはきっとヴァイオリンを弾けなくなった上条も肯定するであろう。

しかしそれでは駄目なのだ。

さやかにだけは無様な生き恥を晒す訳にはいかない。

上条は連日祈り続ける。神でも悪魔でも何だって良い、どうか僕を助けてくれ。

ヴァイオリンが弾けなくなった僕は何を持ってさやかの隣を歩けばいいのだろう。

さやかだけは。さやかにだけは……。

そんなある日の夜の事だった。「ソレ」が飛来したのは。

今日の投下はここまで
次回 パラサイト襲来

マミさんパートまでマミさんの出番はお待ちください
前も言ったけど上条パートが完全に終わったら構成が複雑になるので
きちんとプロットを組まなきゃいけないし、
リアルもちょっとたてこんでるんでしばらく間を空けます

という事でマミさんがこれの中で普段の習慣にしてる入浴の際の
パラサイトとの絡みでも想像して待ってて下さい

そろそろ再開します

これからはもう誰かの過去パートに飛ぶ予定はありません
やったぜ!

きちんと描写できてるかは定かではありませんが
やっぱパラサイトが登場すると話の雰囲気がガラッと変わる気がします
気のせいかも

〜☆

窓の隙間から侵入した「それ」は病室の床を這う。

そして難なく上条の耳から頭の中へ侵入する。

「それ」がいざ身体を乗っ取ろうとした時、深刻な問題が判明した。

「それ」は人間の身体を乗っとる際に一度体全体に「信号」を流して、

その反応によりこれから動かす身体の情報を得る。

しかし「それ」がいくら上条の身体に「信号」を流しても全く左手が反応しない。

「それ」の人間への寄生は完璧である。

宿主の身体が生命を維持するのに困難な状態に陥った際、

それから逃れるため違う安全な身体に移る必要に迫られれば、

違う人間の頭を切り落としてそこにすげ変わることも、

身体一つ丸ごと環境を変えた拒絶反応などが起こるにしても不可能な事ではない。

ただそれは寄生が完全に成功した場合の話だ。

最初に人間の頭を掌握してしまえばそこから他の部位に移ることは容易である。

でも例えば他の部位で成熟してしまえば他の部位の操り方は一生理解できない。

せいぜいそこより単純な部位に安全に移動できるくらいだ。

これと似た問題が上条の中で今まさに乗っ取ろうとしている「それ」と上条の間に起こっていた。

「それ」は身体に何か欠損を抱えた人間を動かすようには出来ていない。

このまま頭を掌握してしまえば必ず後々実際に身体を動かす時に

「それ」の意識と上条の肉体にどうしても齟齬が生じ上手く身体を動かせないだろう。

これは「それ」の生物的構造からくる問題で、

身体の操作が不慣れな為に起こる問題とは決定的に異なり

いくら訓練などを積んでも改善される事はない。

まず上条を乗っ取ってから誰かほかの人間の身体に移るという選択肢もない。

一度ここで成熟してしまえば二度と左手を動かす感覚は理解できず、

結局問題は何一つ解決されないからだ。

今から他の人間を探しに行くという選択肢も駄目だ。

既に「信号」は出されてしまった。「信号」はあくまでそれが生まれて一度限りの物だ。

この身体をどうにかするしかない。そうなると「それ」に残された道は、

まずどれほど損傷しているかもわからぬ左腕に出向いてそこに定着してしまう前に全てを治療する。

そして脳まで戻りそこから脳を再度乗っ取る算段を整えるしかない。

「それ」が上条の腕を目指し、もぞもぞと上条の身体の中へ潜り込んで行く。

〜☆

翌日。上条は普段通り何の違和感もなく目を覚ました。

いつもと変わらない朝。変わってくれるはずもない朝。

上条は何とはなしに左腕を動かそうとして溜息をついた。

上条は左腕を足ほど重症ではないが骨折しギプスで固めていた状態だった。

この骨折のおかげで上条は自分の腕が治るという希望にすがって居られたのだ。

まさか指を動かす神経すらも駄目になっているとどうして上条が想像する事が出来ようか。

しかし少なくとも一日で動かせるようになるはずはない。

上条は自分が病人の身の上だという事を寝起きの極僅かな時間であれ忘れていた。

今日も憂鬱で何の変わり映えもしない一日が始まるに違いない。

朝の時点では上条にはそう思えたし、そう思わない理由がなかった。

〜☆

昼食を終え暫くが経った頃の事、

上条は自分の病室のベッドという安らぎの為に用意されたはずの場所に

腰かけながら精神的に荒れに荒れていた。

リハビリが全く上手くいかないのだ。今日も夕方になれば学校を終えたさやかが来るだろう。

今この状態で毎日さやかに会う事は上条にとってひたすら苦痛であった。

さやかの立場からしたら当然であったが彼女は上条をどうにか元気づけようと必死だった。

さやかは心の弱り切った上条を自らの手で寄り添い支えようとしていたが、

それは彼にとってさやかに自分がどこか下に見られているという事に他ならなかった。

誰かを助けようという発想は完全に自分より優れているか

それとも対等な関係にある人間に対しては起こるはずもない。

前者なら助けて貰う必要がないし、後者ならそれは助け合いという形で表れるはずだ。

本来なら辛い時ほど支えとなってしかるべきはずのさやかの存在が、

心も身体も傷ついた上条をますます厳しく責め立てていた。

お前は価値の無い存在だと上条に告げていた。

状況はヴァイオリンを引き始める前よりなお悪い。

あの頃の上条はさやかを見上げていたにしても、決して憐れまれる様な事はなかったのだから。

ヴァイオリンを弾く事で今まで積み上げてきた上条のプライドはもうズタズタだ。

眼を閉じれば浮かんでくる。無理をして明るく振る舞うさやかの姿。

さやかのこちらを見る憐れむ様な表情が。

その表情が他の誰かの物なら誰であろうと気にはならなかった。

たとえゴミ虫を見るような視線を向けられ蔑まれ、

唾を吐きかけられたって構わない。だがさやかがこちらを見ている。

無価値な僕を肯定し優しく手を差し伸べようとする。それだけは絶対に許せない。

さやかだけは。

さやかにだけは……。

「はっ……。はっ……。は……」

上条の荒い息遣いが病室に染み通る。上条は極度の興奮状態にあった。

脈拍、心拍数、血圧、上条のそういった身体の状態に関する物を今計測したとしたら

何もかもが異常な数値を示すだろう。

「動けよ……。僕の左腕……。動けよ…!」

なんだか念力で動かそうとでもしているが如き形相で目をぎゅっと瞑り、

動かし方も忘れてしまった左腕に力を込めようとする。

その時上条の身体全身にビリビリと電気が通ったような刺激が走った。

痛みともまた異なる感覚。おそらく痺れと表現するのが適切だろう。

思わず呻き声を上げ、感覚の出所はどこだと見遣るとそこは左腕であった。

左腕には何の異常も見受けられない。まさにそれこそが異常であった。

上条にはどうも左腕が怪我をする前の状態に完全に戻っているようにしか思えない。

確かめるべく無我夢中でギプスを外そうとするが、

普通に考えてギプスがそう簡単に外れる訳がない。

だがギプスは力を込めるとポキッと可愛らしい音がしそうなくらい簡単に壊れた。

無理やりギプスを外し左手を試しに肩の高さにベッドに平行になるよう上げてみる。

なんともない。骨折していた事が嘘みたいだ。

手をグーパーグーパー開いたり閉じたりを繰り返す。異常はない。

指を親指から順番に折り曲げ今度は小指から開いていく。異常はない。

なんだか今まで大怪我をしていた事の方が嘘みたいだった。

「はは……。ははは!やった!やったぞ!奇跡だ!」

肩をぐるぐる回したり肘の折り曲げを繰り返したり「日常」の動作を何度も行ってみる。

神様は本当に居たんだ。

そう上条が無邪気に幸せに浸っていると左手が徐々に上条の意図しない動きを見せ始める。

必死で制御しようとするが先程まであった腕の感覚がない。

いったい僕の左腕に何が起こっているんだ?

その疑問は上条にとって予想外の形で付きつけられる事になる。

突然左手の人差し指と中指の合間が裂けた。

驚愕する上条を余所に、ぐにゃりぐにゃりと手首から上の部位が変形していく。

勝手に自分から裂け始めた箇所はそのまま手のひらの中央部分まで広がっていき、

変形の末どう見ても人間の口にあたる器官を形成した。

ご丁寧にもちゃんと唇があるし健康的な歯並びをしている。

中指と薬指の先端はカタツムリをデフォルメしたような大きくつぶらな丸い眼に。

人差し指と小指の先端はそれぞれちゃんと五本ずつ指のついた小さな人間の右手と左手に。

変形を最後まで終えた「それ」の姿をどう表現するかについては

色々と言い方が存在するだろうが、

「それ」の容貌が尋常ならざる異形のそれであったというのは疑いようがない。

上条は驚きと恐怖で声も出せない。

それまで手だったと思わしき「それ」が口を開く。

「カミジョ……。失敗…。腕……。悔しい……。頭……。カミジョ……」

口の中から覗く白い歯と真っ赤な口内と舌。

およそ現実的ではないグロテスクなその光景はいよいよ上条を震え上がらせた。

「僕の腕はどうなってしまったんだい…?」

上ずった声で上条が尋ねる。なぜ言葉が通じるのだろう?

そんな疑問はこの異常事態の前には何の意味も持たない。

「喰っちまった……」

両足を骨折し現在一人きりで病室のベッドに腰掛けている上条に自衛の手段はない。

それにギプスを壊したのは間違いなく「それ」の仕業だ。

素直に大人しく問答を続けるしかなかった。

「お前はいったい何なんだ?」

「わからない……。言葉も……。上手くわからない……。教えて……。カミジョ…。カミジョ……」

チロチロと赤い舌が左手だった物からとびだす。

その時上条はふと思い至った。これはきっと神の施しなどではない。

ならばこれは悪魔の所業なのではないかと。

投下終了
パラサイトの容貌が良くイメージできないという方は
申し訳ありませんが原作一巻の新一と初対面ミギーを確認してください

ただし原作は右手の甲、こちらは左手のひらです

うわーお
寄生獣クロスあったのかよ
上条を主人公にした寄生獣クロスを考えてコレ医者に見つかったら詰むじゃん、ってなって数ヶ月前に挫折したがこのスレではどう解決するんだろう
何はともあれ応援するよ! 乙

※急遽募集中※

>>1が無計画に前回を投稿する直前に
骨折した事がなくてギプスについてもろくに知らないのに

「あっ…骨折させるなら事故数日だからギプス要るんじゃね?」

とか考えて後先考えずにギプス設定突っ込んだ為、
急遽現在ギプスを破壊してしまった事を
看護師や医師にばれずX線検査を受けるトリックを考えなくてはいけなくなり
大変難航しております

なので読んで下さっている方々に

ギプスを上条でも破壊出来る方法、
人間本気になれば素手でギプスくらい壊せるよという具体的な根拠
又は上条がギプスを修復できる方法のどれかを募集しております

特にギプスカッターやグラスファイバー、石膏ギプスの強度などの知識をお持ちの方、
骨折経験があり「ギプス切断?ああ、あれね」

という方々の情報提供お待ちしております

もしきちんとした案が見当たらないor思い付かない場合は仕方がないので

詳細は伏せますが上条君が奇策「天狗じゃ、天狗の仕業じゃ!」を発動する事になります
今後の展開も大きく変わる事になりそうです

何卒、何卒宜しく御願い申し上げます

パラサイトってギプスに擬態は出来なかったっけ?

>>198

ごめん書き間違えた
本当に問題なのは
擬態して検査までやり過ごした後
「X線検査を受けて」腕が完治してる事が確認されてから
どうやって「ギプスをいざ取り除く時をやり過ごす」かなんだ

私には奇策かつ今後のさやかの立場を変革してしまう方法しか思い付かなくて…
いや、さやかの立場変革は面白いけど解決策の奇策が過ぎる気もするし
考えてた話の筋道が変わるから出来るなら避けたいんです

パラサイトをギプスに擬態させてやり過ごそうとすると、
X線検査を受けて腕が完治してる事を確認させても
ギプスを取り除く時に腕ごと切られてしまう事になるので擬態させる以外の方法を考えたいって事で良いかな?

>>206さんが正解ですすいません

ただ両足骨折(このSS内)の上条が真夜中這うのは…
他どこで手に入りますかね?

うっかりコテミスしたな
仕方ないね
お忘れください

うっかりコテミスしたな
仕方ないね
お忘れください

>>208
多分詰所か診察室か倉庫にでも行かないとギプスは手に入らないと思う・・・
松葉杖突いて歩けば両足骨折でも何とか移動出来ないかな?

医者がパラサイトされてて結果を捏造してくれるとか

何度もレスして申し訳ないと思っています
鬱陶しいならば言って下さい

ギプス抜けた設定ならば、そのままはめ込めばいいだけですが

パラサイトがギプス擬態 → 医師による回診 そのときに、回診車(包帯やら消毒液、注射器が乗っている車)からギプス包帯を盗む → 真夜中になってからさらの尿便に飲み水を溜めて、包帯を水に浸す → ギプス包帯を巻く

こんなのはどうでしょうか?

もちろん、回診車からギプス包帯がなくなる事件が生まれますし
ギプス包帯はかなり周囲が汚れるので、ベッドシーツを(場合によっては病室にあるので)一枚拝借、そのまま処分 ってことになります

>>211
上条アニメだと車椅子で押されてたけど松葉杖あるかな?

やっぱそういう専門外のとこおっかなびっくりやろうとするより堂々と「天狗」やるべきなのかもしれない
どこが矛盾してるわからないから逆に?怖くなってきた

>>212
医者を引き継ぎ出来たら教師どころじゃないと思うの
外科医ならまだ…?

>>214
いい感じか…?大丈夫なのか…?私にはわからん…喘息で小さい頃入院したことしかないんだ…

よし明後日までの投票制で決めようか!
わっかんないよ何が何だか!
1か2で選ぶ様な奴

ギプスの原形が残ってるならパラサイトにギプスの微細な凸凹を内側から掴んで引っ張らせて形状を保持し、
ギプスを外す時になったら引っ張るのを止めさせても良いかも。
万が一切る時にパラサイトに刃が当たっても
ギプスカッターで切るんなら腕がざっくり切れるような事は無いし。

それではアンケートです
※もちろん意見も随時募集しております

1 今後募集した意見から決定する普通ルート(さやか変動なし-さやかはパラサイト部外者)

2 天狗ルート(さやか変動パラサイトの存在をこの時点で知る-上条との対比が後により強調される)


個人的には2が思ったより面白くいける気がしてきた
1が私の知識だと不安なだけ余計に
ただし話が延びるからリアルが忙しくなるので上条編最後まで行かず休載の可能性が高まります

期限は今日の日付が変わるまで

ギプスが壊れた理由——もう「混じっている」から。
左手の修復のために正常な右手の構造を参考にしようと行ったり来たりしているうちに細胞を
持っていかれたことにする。
ギプス破壊を知られない方法——ギプスのことなどどうでもいいぐらいの大問題が起きる。
具体的には「Aがやって来て病院がひどいことになる」。どさくさで退院し、別の病院で
治療を足に限定して継続する。シャルロッテ戦はそちらの病院で。

恭介が寄生されるとさやかが信号を発することができるようになって廃墟で相合傘の落書きをする
展開になってしまうから>>193同様やめた。杏子に「てめえには血も涙もねえのか!」とか
言わせるのもありかとは思ったのだけど。このスレのさやかは生存するといいな。

(あれ?コレもしかして俺が>>193で余計なこと口走ったせい?)

>>217
それも考えましたがギプスカッターがギプスの破損部分に沿って切ってくれないと
切った後謎の破損箇所がでそうかなと思ったのですがどうでしょう?

>>222
ギプスが壊れたのはパラサイトがついポキッてやっちゃっいました

腕に関しての独自解釈の伏線は申し訳程度にちゃんとはってます
原作とは矛盾はしてないはず…多分
でも後で原作のどういう所からそういう設定を作ったのかという話はしようと思ってます
元の腕の状態が違うのでシンイチ達と上条達それぞれの関係性はイコールではありません

そこらの設定は書く前から決まってたので
今回はただ行き当たりばったりのギプスが問題だっただけです

後原作のAの行動は殺戮が目的ではなくシンイチの排除が目的なはずなので
この時点で上条が狙われる理由がないのと
両足骨折上条じゃAに背伸びしても勝てないのでその案はおそらく無理です
わざわざ御意見有難うございます

>>223
さすがに上条の腕の設定固めずには始めないので偶然です
ご安心ください
ギプス急にぶっ込んだ私が悪い
骨折設定を除けば良かった

こんな独自設定じゃ駄目ですか?

ミギーがぐにゃぐにゃ動かしてる時は骨の働きをする物はないのは確か

でもシンイチが動かしてる時はどうだろう?
明らかに定形で関節のある動きをしてるし
私達が「骨無し」の腕を違和感無しに動かせる方がおかしい気もする
ミギーは硬化出来るわけだから寝る時元の腕の状態、腕の中身を再現してシンイチに渡してるんじゃないかなという発想
母パラ戦はミギー寝てるから剣のままでしか動かせなかったし

対してあの時のパラサイト戦は「どうやって」パラサイトを見分けるかパラサイト側にはわかっていなかった
だから固定する物のない螺旋型やらパファア…やらやりやすい何時もの自然体でいた
現に口付近に歯らしき物は映ってたし
だから何時レントゲンで撮られる事と身体構造さえわかってたら実はやり過ごせる説


強引ですかね?

投稿後にこんな致命的なミスが見つかるの初めてだったので
慌ててしまいご迷惑おかけしましたが
恐れず自信を持って「天狗」パートでいきたいと思います

投稿初めは多分今日の午前7時から12時の間です

とりあえず投稿再開

一度間を開けて今日続き投稿するかも?

〜☆

多少の時間をおき冷静になった上条がまず最初に考えた事は

自分の命に関しての心配などではなく、ヴァイオリンに関する事だった。

この化け物を取り除き元の左腕に戻すことは可能だろうか?多分不可能だろう。

「それ」はどう見ても悪霊の類ではなかった。

上条の血と肉で生きる現実に存在する得体のしれない生物だった。

それならばこいつと協力してヴァイオリンを弾くことは可能だろうか?多分可能だろう。

先ほど左腕が勝手に動き出すまで短い時間だが「それ」の意志を微塵も感じる事なく

上条自身の意志だけで左腕を動かす事が出来ていた。

必要なのはこいつと協力する事だ。僕がヴァイオリンを弾く時には主導権を譲ってもらう。

今更こいつに恨み言を言った所でヴァイオリンがまた弾けるようになる訳じゃない。

上条にとっては正体のわからぬ「それ」への恐怖以上に

現在のヴァイオリンが弾けないという事実の方が恐ろしかった。

もし、上条が連日神や悪魔などに自身の腕に関して祈りを捧げていなかったなら

これ程簡単に「それ」を受け入れはしなかっただろう。

だが上条には覚悟があった。

ヴァイオリンをすぐに再び弾けるようになるなら

悪魔に魂を売り渡しても構わないと願うほどだった。

「それ」は上条と共存する事に決めているらしい。なら僕もその道を選ぶ事にしよう。

だがそれには重大な問題があった。

突然左腕が動くようになったと皆に知られたらどう思われるだろう?

その情報が医者に伝わってしまったら最悪だ。

「それ」の存在が暴き出され左腕を切り取られてしまうかもしれない。

医者がそうするであろう理由ならいくつもある。

そうなってしまえば僕の

「ヴァイオリンで満足する音色を奏でさやかに聞かせる」という夢は儚く潰えるだろう。

こいつの存在が誰かにばれる訳にはいかない。

その為にはこいつと早く解決策を話し合わなくちゃいけない。

自分から碌に動く事も出来ない絶望的な状況の中で

一つだけ上条にとって有利となる事柄があった。

非常に裕福な家に生まれたという事である。

上条の病室にはそれは本当に必要なのかと思えるような物までいくつも備えてあったし、

一個人の患者としては不自然に感じられるほど完全なプライバシーが保証されていた。

ばれる心配があるのは看護師や医師が病室に入ってくる時、

両親やさやかが入ってくる時、

どちらも時間帯は決まっているし他の人達の面会は今のところお断りしている。

その時をやり過ごしさえすれば時間は最低何日か稼げる。

事故に遭ってからこれまで上条の精神が酷く不安定な状態だった事もあり

皆は上条を出来るだけ刺激しないように動いていた。

しかし今の上条の精神は「それ」に対して抱いた恐怖より、

ヴァイオリンを弾ける目処が立った事による安堵が上回りかえって安定している。

とはいえ周囲にはもう少しの間不安定な様子を見せる必要がありそうだ。

精神が不安定な患者の言動ならば、何かあっても多少の不自然は見過ごされるに違いない。

さて、次の問題は破壊されたギプスである。

これは明らかに片腕と両足を骨折した人間の出来る事じゃない。

少しでも疑念を抱かせるような事があってはならない。

「それ」も何らかの生物だ。

まだ断定的な事は言えないけれど検査などされては

その存在がばれてしまう危険性がある。

間が悪い事に今日はこの後僕の体調を確認する検診があるはずだ。

何かおかしな様子を見せたら急遽検査という事になるかもしれない。

ひとまずこの絶体絶命の状況をどうにか凌がなくちゃ駄目だ。

けれど上条が解決の為に行動する事は事実上不可能だった。

その為「それ」と拙い会話を繰り返してどうにか

最低限の意志疎通を行い何としても自分に協力させなくてならない。

実際「それ」の知能は並はずれて高く、

上条の意図するところを理解させるのにそう時間はかからなかった。

〜☆

医師がトントンと上条の病室の扉をノックし、しばしの間を開け入室する。

室内はさっと一瞥しただけでは何らおかしな所はない様に見受けられる。

だが実際は見つからないであろう場所に壊れたギプスが隠してあるし、

上条の左手のギプスは「それ」が擬態した物なのだ。

上条は「それ」がぐにゃりぐにゃりと自由に変形する事から

せめてギプスの見た目だけでも再現して貰おうとしたのだが、

「それ」はギプスの質感、硬さまで再現した。

なので上条は医師に見たり触ったりされた程度では

ばれる心配はないとすっかり安心しきっていた。

そのおかげで上条の医師に対する態度はいつも通り平坦な物で、

最後まで医師に疑問を一つも抱かせる事なく検診をやり過ごす事に成功したのである。

やっぱり今日はここまで

キリがいいとこまで出来たら明日投稿する

既に8レス分くらいできたので明日はいつもより多めに更新できるかも

続き投下します

ただ昨日の文章が気に食わないので訂正から
せっかくなので今までの細かい訂正も一気にやっちゃいます

>>8※訂正

インキュベーターは彼女たちの願い事を一つ、

魂の変換の際にかかる感情エネルギーのロスを利用して叶え、

魂という実体として存在しない物を「ソウルジェム」と彼らが呼ぶ宝石に具現化させる。

魂が物質された事によりその振れ幅を示す感情は

現実に作用するエネルギーとして扱う事が出来るようになった。

新たに感情から産み出されるエネルギーが最も大きくなるのは、

定形化された魂が願いが叶ったという最高の希望の状態から深い絶望の底に突き落とされた場合だ。

インキュベーターは「契約」を交わし魂を固定化させた者の事を「魔法少女」、

その成れの果てを「魔女」と呼ぶ。

>>45※訂正

人格的基盤を喪失した彼女は、思春期に求められるアイデンティティの確立に際して、

他者の承認を得る前にまずは自分の存在を容認する事が必要となった。

マミは自分の命の為だけに願い事を使ってしまった事を 

いくら悔やんでも悔やみきれない程後悔していたので、

自身が出来るだけ正しい存在になる事で

自分だけがおめおめ生き延びた事を正当化しようとした。

>>88※訂正

〜☆

胸の中を進み「それ」が頭を目指す。何者かに体内に侵入されたと理解したマミの行動は迅速だった。

ソウルジェムを掴み、変身はせずにリボンを出現させる。

そして自分の右胸部の根元をリボンでぎりぎりと痛みに構わず全力で締め上げた。

暫くすると徐々に痛みが無くなっていき、

胸の中で「それ」が蠢く感触も薄れていった。

それでもマミは少しも緊張を和らげる事なく縛り上げたリボンはそのままに魔法少女姿に変身する。

しかし何故か手が小刻みに震えてまともに武器を握れそうにない。

仕方がないのでマスケット銃を頭上に出現させ、

魔法により自身の右胸部に照準がきちんと合うよう空中で静止させた。

「はっ……。はっ……。は……」部屋中にマミの荒い息遣いが滲みる様に伝っていく。

マミはこのまま自分の胸を打ち抜いて良いものか悩んでいた。

この距離から発砲すればいくら威力を調整した所でただでは済まない。

マミはこれまで魔法少女としての戦闘で大きな怪我をした事がなかった。

>>236※訂正

必要なのはこいつと協力する事だ。僕がヴァイオリンを弾く時には主導権を譲ってもらう。

今更こいつに恨み言を言った所でヴァイオリンがまた弾けるようになる訳じゃない。

上条にとっては正体のわからぬ「それ」への恐怖以上に

現在のヴァイオリンが弾けないという事実の方が恐ろしかった。

もし、上条が連日神や悪魔などに自身の腕に関して祈りを捧げていなかったなら

これ程簡単に「それ」を受け入れはしなかっただろう。

だが上条には覚悟があった。

ヴァイオリンをすぐに再び弾けるようになるなら

悪魔に魂を売り渡しても構わないと願うほどだった。

「それ」は僕と共存する事に決めているらしい。なら僕もその道を選ぶ事にしよう。

>>237

だがそれには重大な問題があった。

突然左腕が動くようになったと他の者達に知られたらどう思われるだろう?

その情報が医者に伝わってしまったら最悪だ。

「それ」の存在が暴き出され左腕を切り取られてしまうかもしれない。

医者がそうするであろう理由ならいくつもある。

そうなってしまえば上条の

「満足出来る音色をヴァイオリンで奏でさやかに聞かせる」という夢は儚く潰えるだろう。

「それ」の存在が誰かにばれる訳にはいかない。

その為には上条と「それ」は早く解決策について話し合わなくちゃいけない。

自分から碌に動く事も出来ない絶望的な状況の中で

一つだけ上条にとって有利となる事柄があった。

>>240※訂正

「それ」も何らかの生物だ。

この状況下ではまだ断定的な事は言えなかったが

検査などされてはその存在がばれてしまう危険性があった。

間が悪い事に今日はこの後上条の体調を確認する検診がある。

何かおかしな様子を見せたら急遽検査という事になるかもしれない。

ひとまずこの絶体絶命の状況をどうにか凌がなくては駄目だ。

けれど上条が解決の為に行動する事は事実上不可能だった。

その為「それ」と拙い会話を繰り返してどうにか最低限の意志疎通を行い

何としても上条は「それ」を自分に協力させなくてならない。

実際「それ」の知能は並はずれて高く、

上条の意図するところを理解させるのにそう時間はかからなかった。

なんか他にもあったけどとりあえず続き投下します

〜☆

それから数日上条は「それ」をギプスに擬態させる事で人目をやり過ごしながら

「それ」に色々な知識を身につけさせる事に時間を費やした。

病室には「それ」が知識を得る事が出来る物として、

上条が復学した時に困らないよう用意された各教科の教科書や参考書、

音楽関連の本たくさんに著名な小説少々、小型のラジオなどがあった。

「それ」の知識欲は驚くほど旺盛でそれら様々の本を何冊も何冊も飽きることなく読み耽る。

そして約一日ほどでもう人間の言葉をほとんど学習してしまった。

しかし上条はそれだけでは満足せず、

とにかく一通り「それ」が満足のいく学習を終えるまで待ち続けた。

あくまで二人が行わなくてならないのはこれからの話し合いだ。

「それ」が知識を得れば得るだけ解決策はより具体的かつ現実的な物になる事だろう。

「それ」の知識欲と学習の成果は上条の期待に十二分に応える物だった。

彼らの時間はそれほど悠長に事を構えて居られるほど無制限にはない。

これからの方向性決めと現在の状況把握に時間をかければかけるだけ

イレギュラーな事態が発生する確率は高まり、

彼らにとってイレギュラーな事態などという物はそのまま自分達の破滅を意味していた。

そんな訳で「それ」のひとまずの学習が済むと彼らは急いで話し合いを始めた。

「それ」はどこから来たのか、

「それ」はいったい何者なのか、上条自身の腕はどうなってしまったのか、

「それ」にはどのような事が出来るのかといった根本的な問題の認識から。

そういった問いかけの応答により、

上条は自身の左腕が本来もう二度と完治する見込みのない物であった事と、

「それ」が自由自在にその形を変えられる事、伸縮性も抜群でゴムの様に伸び縮みする事、

硬質化し例えば刃物の形状になり気軽に人間を真っ二つに出来る事などの

「それ」の基本的な性質を知った。

上条に再びヴァイオリンへの道へ進む手段を与えてはくれたが

やはり「それ」は悪魔の産物に違いない。

そう確信した上条であったが、「それ」はあくまで寄生生物なので、

上条の身体から養分をもらわないと生きていけず、

「それ」が上条に危害を加える事はないし、

周りの人間に対しても上条が望むか自身が危険だと判断しなければ

攻撃しない知ってとりあえずはほっと胸をなでおろした。

ただし上条の左腕に寄生している「それ」には他の「それ」の仲間達とは違う特徴がある。

まず疲れやすく他の個体と比べ長時間あるいは深く眠らないと活動できないという事だ。

「それ」が寄生しその間を仲介するまで上条の左腕の神経は完全に断裂し、

いうなれば「血の通った肉」とでも表現するのがふさわしい状態であった。

「それ」はあくまで正常に機能している身体の部位でないと

まともに操縦できないしそこに寄生する事も出来ない。

左手に見られる異常のどれが深刻な欠陥をもたらしているのか

事前に把握できていなかったので、

「それ」は片っぱしから定着していく事で怪我を治療していく。

その結果として「それ」が左腕の骨折を完全に修復し

ようやく神経にたどり着いた時にはもう脳に戻るのは

事実不可能なレベルで上条の肉体でほぼ成熟していた。

「それ」は頭部への帰還を諦め

その神経の断裂を自身が仲介する事で繋げ直した。

その大がかりな手術が終わり疲労回復の為睡眠をとっていた「それ」を目覚めさせたのが、

寄生された初日に上条が左腕を無理やりにでも動かそうと念じた時の異常な興奮だ。

ここでもう一つ大きな問題がある事がわかる。

「上条は朝起床してからそれまで全く腕を動かせなかった」。

もしこれが正常な腕で成熟した「それ」が上条の左腕を切り落とし

そこに居座ったという事なら話は全く別だっただろう。

けれども神経の断裂は生憎「それ」が間を仲介しそこに定着する事で繋ぎ直された。

そのせいで上条は「それ」に依存する形でしか左腕をきちんと動かす事は出来ないし、

「それ」も本来腕が正常であったなら腕に任せてさえ居ればばいい事を

絶えず代わりに行わなくてはならない為満足に眠る事が出来ず疲れを取り切る事が出来ない。

「それ」は上条も腕が動かせなくなるほど深く眠るのなら計5時間、

上条が動かせる程度に意識を残して浅く眠るなら計12時間ほどの睡眠が必要とし、

「それ」が浅い睡眠状態にある間は上条が左腕を動かそうとしても反応はいくらか鈍る。

ヴァイオリンを満足に弾く為には一日の「それ」の睡眠予定を厳格に決めておく必要があった、

彼らの関係は世界中の「それ」の同胞達と見比べてもかなり特異だったが、

「それ」の別個体に出くわした事のない彼らにはそんな事は分かるはずもない。

同胞が近付けばいくら深く眠っていたとしても「それ」は眼を覚ましたであろうが、

幸運にも病院に「それら」が近付いて来た事は今の所一度もなかった。

彼らの関係について両者ともに一定の理解に達した後次に問題にされたのはこれからの事だ。

目下の問題としてあったのはギプスを取り外す時の事である。

検診の間はギプスに擬態する事でいくらでも誤魔化せるであろう。

しかしギプスを取り除く時に何が起きるかはちょっと想像したくない。

中を開かれては十中八九「それ」が何か得体のしれない物だという事がばれるだろう。

新しいギプスを手に入れるのもかなり困難だった。

そもそもギプスがどこに行けば手に入るのかどころか、

この病院の中がどうなっているのかさえ自力で外に出られない上条はほとんど知らなかった。

医師や看護師などは精神が不安定な上条を出来るだけ刺激しない為に

この病室に必要最低限の物しか持ち込まないから部屋から出ずにこっそり盗む事も期待できない。

そして検査そのものについての問題だ。

繋がらないはずだった神経が何故か繋がったなどという奇跡が起きた時に

はたして検査はX線検査だけで済むだろうか?

精密な検査を断るなら多少強引でも周囲が違和感を持つ事のないよう

断れる理由がなくてはならない。

X線検査については問題なかった。

「それ」は身体を乗っ取る際に右腕の情報を入手しているし、

左腕の治療の際に左腕を存分に扱った。

「私が完璧に硬さや質感といった物の外観を自身を変形させる事で

コピーする事が出来るのはキョウスケも理解しているだろう。

いつレントゲンで撮られるかさえわかって居たら

腕の中身も再現し人間の目をごまかす事など造作もないよ」

と「それ」は自信満々に豪語している。

X線以上に詳しく検査されると大丈夫かどうかは正直怪しい。

「それ」がどう見た目を繕った所で人間とは別次元の能力を備えているのは明らかだった。

きっと細胞とかを調べられたらぼろが出るに違いない。

上条の直感は正しい。だがわかっていた所で解決策が思いつかなければどうしようもない。

しかも上条達には長く事を構えて居られない理由があった。

上条自身のメンタルとフィジカルである。

上条は身体が弾ける状態にあるのに

ヴァイオリンに触れない事へのストレスで既にどうにかなりそうだった。

いくら優れた音楽を音楽再生プレーヤーで聴いても駄目だ。

ヴァイオリンから離れれば離れるだけ上条の中にある「自分の音」のイメージが薄れていく。

焦れば焦るだけ事態は悪化する事がわかっていてももうどうする事も出来なかった。

しかも毎日訪ねてくるさやかがまた鋭い。

寄生初日病室に入って来たと思ったら第一声が

「何か変わった事あった?え?なんでわかるかって?そりゃわかるよ恭介の事だもん」である。

秘密のある後ろめたさとばれるかもという不安から

自然さやかをなおざりに扱わざる負えなくなり、

それが上条の気分をより落ち込ませる。

さやかは上条がさやかと居る事に居心地の悪さを感じているのに完全に気づいている。

さやかが傷ついているのは明らかだ。

最近は病室に居るさやかまで居心地が悪そうに見える。

その歯がゆさはせっかく安定した上条の精神を激しく揺さぶる。

悠長に両足が全快するまで待って居たら

上条が体調を崩すか錯乱しそこから何かぼろが出るのは明らかである。

時間をかける事無く、ギプスを新しく調達せずに、

精密な検査を受けなくても病院から退院出来るだろう方法、

そんな都合のいい事神様にしか出来ないじゃないか。

「神様」、その時突然上条は一つの計略を思いついた。

しかしそれでも外に連れて行ってくれる協力者がどうしても必要となる。

誰か一人絶対に僕を裏切らないと、人間として信用に足る人物に全て話すしか……。

どれほど考えても上条の頭の中にその条件に合致する人間はただ一人しか思いつかなかった。

〜☆

さやかが上条の病室の前で深呼吸を繰り返している。

さやかはこのまま上条と面会せず帰ってしまいたいという気持ちと必死で闘っていた。

さやかは上条の事がかなり好きだ。知的な眼差し、

同年代にはあまり見られない大人びた雰囲気、もちろんそういった物も好きだが、

そんな物はあくまで上条の表象に過ぎない。

さやかが一番好きなのは上条がヴァイオリンに真摯に向かっている姿だ。

さやかは普段上条が一人でヴァイオリン弾いているのを

近くで聴いている時間が一番幸せに感じた。

時々ヴァイオリンを弾いてる上条は

己が出している音の事のみを考えていて他の事は全て忘れているのではないかとすら思える。

さやかは一見何も考えずヴァイオリンを弾いて居そうな上条が

実は心の中ではどんな事を考えているのか想像するのが好きだった。

月日が経つにつれみるみる洗練されていく音が好きだった。

自分の人生をそこまで賭けるほどヴァイオリンに打ち込める上条が

なんだか誇らしくそして少し妬ましい。

だからこそ左腕の動かなくなった上条を見るのは忍びなかった。

代われる物なら自分がその怪我を背負ってあげたかった、

さやかは上条の為に何も出来ない自分の無力さに一人苦悩したが、

上条が彼女以上に苦しんでいるであろうことも当然理解していた。

だからさやかは傷ついた上条に寄り添い支える事で彼を助けようと思った。

しかし現実はそう甘いものではない。

毎日上条のもとに通えば通うほど

自分が彼に厄介者として扱われている事がわかる。理解してしまう。

今日このままこの扉を開けずに帰ればきっとあんな思いはせずに済むだろう。

あんな思いはもう二度としたくない。

でも、それでも、私は闘うと決めたんだ。

恭介だって自分の怪我と、自分自身と闘ってる。私が先に負けてどうするんだ。馬鹿。

さやかは勇気を奮い立たせ病室の扉を開く。

中ではベッドの上で上条が当たり前のように

左手をゆっくり開いたり閉じたりと「普通」に動かしていた。

扉が開いた事に気づき上条が左手に向けていた視線をさやかの方に向ける。

上条がいつもと何も変わらぬ調子で喋り出した。

「やあ、さやか。そろそろ来る頃だと思ったよ。

扉をちゃんと閉めてすぐ部屋に入って来てくれ。大事な話があるんだ」

さやかは言われるがまま扉を確認しながらきちんと閉め、

上条のベッドの隣に置いてある椅子に座る。

恭介が普通に左腕を動かしてる。どういう事なんだろう。

そんな急に骨折って治るのかな。私は夢を見てるのかも。

さやかはまだ知らない。

上条の口からこれから語られ実際に示される現実がもっと夢物語じみた物である事を。

今日はここまで

結局寝坊したので量はこんなもんです

残念

投下します

昨日も今日も全然書いてなかったので余り進みません、ハイ

ただ上条編は調子にもよりますが後1〜3回の間に終わる予定です、ハイ

さやかが上条の乗った車椅子を押しながら坂を上っている。

ここは彼らが小さい頃良く遊んだ「山」の中だ。

上条の外出許可はさやかが付き添うという条件の元で

気分転換にと一日だけ病院側に承諾された。

さやかが足を止める。

目の前にあったのは彼女ら二人がかつて遊んだ二人以外は誰も知らない秘密基地だった。

さやかに手伝ってもらいながらも上条は服が汚れたりしないよう

地面に敷かれたマットの上に腰を下ろす。

「大丈夫?身体は痛くない?」

「うん、大丈夫だよ」

子供が二人でそれっぽく作った物なので秘密基地の中はそれほど大きくない。

だけどそれだけ誰かから見つかる心配を減らしてくれる。

上条が立てた計画はこうだ。

まずさやかに病院や上条の両親の様子を見て貰いながら数日失踪する。

折を見て病院に戻りいざ検査という段階になったら

「天狗だ!天狗に攫われたんだ!」

と訳のわからない事を云いながら適当に暴れる。

そして検査をX線だけにどうにか留めて

自宅療養という形に持っていくという非常に強引な物だ。

一見無謀に思える計画だが上条はそれほど成功確率が低いとは思っていない。

この計画の肝を握っているのは上条の両親の存在だ。上条は知っている。

彼らが自分を愛しているのと同じくらい世間体という物を気にしている事を。

おそらく彼らは息子が失踪したと警察に届け出る事さえなるべく避けようとするだろうし、

息子が「天狗だ!」などとのたまう事態を最も嫌うだろう。

これがただ息子が失踪しただけなら子供の戯言で済む。

しかし現に息子の左腕は完璧にこの短期間で完治している。そこには明らかな謎がある。

とはいえ調査を進めていく内に周囲の者達に

「あの家の息子さんは天狗に攫われてたんですって」

などと噂をされてしまっては「家」の評判に傷がつく。

彼らは上条から見れば病的に思えるほどの事無かれ主義者だ。

大事な上条が無事に戻って来た事さえわかれば、

対応に詰まった彼らは今回の事件を封殺しようと躍起になるだろう。

もちろんこれは上条の推測であって

どこかに綻びが出来てしまえば全て崩れてしまう脆い計画だ。

それでも上条は失敗を恐れていなかった。

ずっと彼らを見ていたのだ。生まれた時からずっと。ずっと。

いまさら何を読み違える事があろうか。

むしろ問題だったのはこの計画を左手の「それ」に納得させる事であった。

結局納得させるのに一週間以上かかった。

上条はこのまま何もせずに居たら自分がどうにかなってしまう事、

解決策を探ろうにも自分が動けない以上行動が限られてしまう事などで説得しようとした。

けれど「それ」が問題にしたのは別の事であった。

協力を求めるにはどうしてもさやかに「それ」の存在をばらさなくてはならない事だ。

完全に事情を明かせていない協力者などこの場合不安定要素になるだけである。

だが打ち明ける相手としてさやかを信用する理由が「それ」には全くない。

上条は必死でさやかの魅力、彼女の人間としての素晴らしさを数日かけ「それ」に伝え続けた。

今回の計画を「それ」が承諾したのは、

彼?がさやかという人間に対して興味を抱いたのも大きな要因の一つだ。

「なんか懐かしいね……昔も二人でこうして座っていたっけ……」

腰を下ろした上条の左隣にさやかが密着するように座る。

上条を支える為に腰に回されていた手はそのままに。

上条の肩にさやかがもたれかかる。

昔は絶対こんなおいしいイベントは無かった。

上条はそんな事を考えながら鼻息を荒くする。

「ねえ……恭介?」

さやかが上条の方を向く。

何か間違えが起きてしまえば唇と唇が接触してしまってもおかしくない距離だ。

心なしかさやかの顔がほんのり赤くなっているように見える。

目も潤んでいるかもしれない。口元をもごもごさせ何かを伝えようとしている。

上条は思う。これはキスくらいなやっちゃってもいいのかもしれない。

正直上条は今までさやかとのファーストキスはロマンチックな場所で

高校生くらいになってから遂げたいなどと夢想していた。

だが思い出の場所で秘密を共有した二人が愛の口付けを交わす。

良いんじゃないかな?

それ以上の事は結婚してからだ。上条は身持ちの固い男であった

上条が今日はここに来る前に歯磨きをちゃんとしてきたしいける、

いけるぞなどと心の中で確認を行っているのを余所にさやかが口を開く。

「コレ何?」

コレ?


顔を真っ赤にしたさやかが右手で何かを指さしている。



眼をそちらに向けるとあったのは聳え立つナニ。




怒張するソレ。





さっきまでは上条の左腕の形をしていたモノ。



有体に言ってしまえばチンポがあった。

今日の更新終わり
下半身と上半身とじゃ考えてる事と違うからね、仕方ないね
でも上条はちょっとムラッときちゃったくらいだと私は信じてます

もう皆さんも上条編にうんざりしてきた頃だと思いますので全部書き溜めてから投稿します

なので明日か明後日までに投稿出来そうになかったら
寄生獣小ネタ「くぅ〜つかれました みつを」でも投稿してお茶を濁しますのでご了承ください

どうでもいいですが寄生獣原作に上条という名前の男が居る事に最近気付きました
今まで何故気付かなかったのか

せいぞーんほうこくー 
きっと何者にも(ry
生存報告、しましょうか!

投稿が無いのは上条編最後の展開に詰まっているという事では別になく、
一身上の都合により全く書いてないというだけです
リアルの方が大事ですしね、仕方ない
一応盛り上がりそうな展開の吟味とか頭の中でやってたけどそこまでいくのはだいぶ先です
本文投稿再開は少なくとも三月になるまでありません

展開はほむら転校(まだ現時点でほむらは転校してきていません)と
シャルロッテ戦後はほとんど決まっています
本当に展開に詰まるとしたらその間

寄生獣原作でジョーも名前なんてどうでもいいと言っていたのでこのスレタイで始めましたが

巴マミ「ある日突然右胸が勝手に動き出した」 ミギー「喰っちまった……」

とかもうちょっと捻れば良かったかなーなんて
でもやっぱりわかりやすいのが一番だと思うんです
タイトルにだけ釣られてきた人を繋ぎ止める自信はないですし
じゃあわかりにくい地の文過多についてはどう落とし前つけるの?すいません

下ネタで止めとくのも何なんで上条編後の予告的な何かをしておきます(飽きられないように)
このクロスは全部で五部構成です
当然まだ一部すら終わってません
……上条編終了で一部が終わるし、長さもまちまちだから大丈夫さ、何が?

1地の文過多
2オリジナル設定(独自解釈含むしかも今後増加)多め
3途中でみっともないアンケート
4主人公が序盤なのに出て来ない
etc

正直読者側なら切ってる気がする
でもここで時間かけないと話として上条とさやか後々空気みたいになるのよね難しいね
ちゅ、中盤から後半は展開だけなら自信あるよ!
(そこまで無事たどり着けるとも上手く描写出来るとも言っていない)


小ネタ「くぅ〜つかれました みつを」をバレンタイン仕様にしたら速報当日投稿できず
今日生存報告しようと書きこんだらエラーで打ち込んだ物全部消えた
運が悪いとしか言えない

【予告】※この予告の内容はまだ未確定なので急遽変更される場合があります





「わたしはわたし以外の命を大事に考えたことはない」





ある日巴マミの右胸に得体のしれない「何か」が棲み付いた。



「それ」はマミを脅す。



私を殺そうとするなら道連れになるくらいは覚悟するべきだ。



死ぬ前に君の心臓を一突きするなど造作もない事だと。



「何か」はマミに提案する。



私が生きていくためには絶対にキミの存在が必要だ。



もし君が私と共存していく事を認めてくれるなら私は君を出来るだけサポートしようと。



マミは「それ」をひどく恐れた。



「それ」そのものが恐ろしかったというだけではない。



自分の本当の願いを改めて眼前につきつけられた気持ちがした。



命をつなぎとめたあの時の願い。



そして多分今も変わる事のない願い。




「死にたくない……。誰でも良いから私……私を助けて……」



マミには自身の醜さが自分を罰するために「それ」を産み出したようにすら感じられた。



数日後、マミは「それ」の同類の食事現場に遭遇する。



「ヒト」が人を食べる。



「ヒト」が私に襲いかかる。





私が「ヒト」を殺す?



彼女の根底を揺さぶる出来事




「死にたいのかマミ!アレはもう人ではない。人の形をしてはいるが全く別物だ」



「ならば私がやる。君は奴の足元に銃弾を撃ち込み、



銃痕からのリボンで敵のバランスを崩してくれさえすればいい」





「君の命は君だけの命ではない。私の命でもある」



マミはずっと一人ぼっちだった。


かつての弟子は引き留めようとする彼女の元を去った。


誰かに自分の存在を無条件に肯定して欲しかったのに。


ならそれは人間でなくても構わないのではないか?


「それ」は絶対的にマミを必要としていた。


マミもまた「誰か」を必要としていた。




「あなたに名前をつけましょう。とびっきりカッコいい……」



「ミギーだ」



「ええっ?」



「右胸を食って育ったからミギー」



「も、もっとカッコいい名前色々考えてたのになぁ……本人がそう言うなら仕方ないわね」

暁美ほむらという魔法少女が居る。



彼女は約一か月を何度も繰り返す時間遡行者である。




「次こそは……。次こそは必ず……」




しかし今回彼女を待ち受けるのはたくさんのイレギュラー。



転校初日まで何故か鹿目まどかを勧誘しようとしないインキュベーター。



転校初日既に復学していた上条恭介。何故か美樹さやかとラブラブしている。



インキュベーターとまどかの初の顔合わせ。



魔法少女に関しての説明を全て巴マミに聞けと言い残しその場を立ち去るインキュベーター。



魔法少女体験ツアー。



魅せる戦い方を止めより戦闘を効率化させた巴マミ。



事態を把握しきれないほむらは市外に出向き見つけたインキュベーターに問いただす。



どうしてまどかを勧誘しようとしないの?


彼女が魔女になった時のエネルギーが欲しくはないの?



それどころじゃないのさ。もちろんボクもまどかと契約はしたい。


だけどこちらの問題の原因解明と解決が為されなくては、


まどかとの契約はしても無為に終わる可能性が高いからね。


問題?


そう、世界中で多発している






「目的不明の魔法少女狩りとインキュベーター達の謎の失踪」さ。


巴マミの預かり知らぬ所で、ゆっくりと、だが着々と彼女の運命の歯車が回転していた。

【第二部 パラサイト共存編 公開三月予定】
※公開時期については告知なしに延期される場合があります

予告終わり

寄生獣原作で一番かわいいのは新一のお母さん信子さん

異論は認めない

小ネタ くぅ〜つかれました みつお

加奈「光夫……。好き……。愛してる……。世界で一番カッコいいよあんたは……」

光夫「おいおいあのチビの事はもう良いのかよ」

加奈「あんな奴の事なんかもう興味無いよ……。アタシには光夫が居てさえくれたら……」

光夫「加奈ァ!」

加奈「光夫……!」

ーそして二人は永遠の愛を誓いキスをするー

くぅ〜疲れちまったwこれで何もかも全部もうお終いにしよう!

実は突然彼女を寝取られて何も出来ずに居たら、

大好きだったその女が何者かに殺されちまったのが始まりでした。

本当はあのチビが何もワルくない事なんてわかってたけど→

加奈をどうしても忘れられなかったのでケンカをふっかけてみた所存ですw

以下加奈が生きてた頃の皆の俺へのメッセジ(発言)をどぞ

ミギー「光夫のパワーは18だ(要約)」

村野「やめてよ〜やめてよ〜」

上条「西高のすぐ近所でよ……度胸あンな」

モブA「知ってっか?光夫のヤツとうとう完ッペキにふられたらしいぜ」

モブB「そりゃとーぶん近づかない方が無難だな」

そして

加奈「ずう体のわりにはいつまでもウジウジと!

てめえとなんか口もききたくねえツラも見たくねえんだよ!」










光夫「血も涙もねえとはてめえのことだ!!」

光夫「」ガン、ドッ、ズガッ、バグッ、ドカッ

光夫「ぐおっごほっぐへえ」

新一「なんでそんなすぐに寝る!」

本当の本当に終わり

あまりにもしょうもないし寄生獣知らないとさっぱりなので
投稿するのやめようと思ったけどせっかく書いてもったいないからついでに

やっとリアルが落ち着いたのでまた書き始めます
結局上条編最後まで書いてから投稿した方がいいか
それとも区切りのいいとこまで出来あがったらすぐ投稿していく形のどっちがいいですかね?

久しぶりに今までの読み返したら
両方見た事のない人でもわかるようって言っておきながら
QBの容貌描写してなかった事に気づいたので次に細かいの二つと一緒に修正します

……やっぱ文章や描写のボロを少しでも減らす為に書き溜めたほうがいいかもしれませんね

>>6訂正

〜☆

世界各地に散らばっている「それ」の一つを日本で偶然見かけたのはなんと宇宙人であった。

ほとんどの地球人に知られる事なく潜伏している彼らはインキュベーターと総称される者達で、

地球ではキュゥべえと名乗り活動している。

キュゥべえの外見は一見するとまるで白い猫の珍種の様だ。

けれどもその両目は紅く大きなガラス玉の様で、全体的にその姿はどこか浮世離れしていて、

左右の耳から金色の輪がついたイカの触腕みたいな物が生えている事も考慮すると、

イメージとしてはむしろ動くぬいぐるみと表現した方がより適切だろう。

インキュベーターは人間がまだ洞穴の中で生活していた頃から人類に関わってきており、

人類の繁栄は彼らの起こす奇跡と共にあった。

彼らが起こす奇跡だってタダではない。そこにはきちんとした彼らの利益、目的がある。

彼らの目的は人間の持つ感情エネルギーである。

人類は彼らにとってあくまで自分たちには生成出来ないエネルギーを生産してくれる

便利なエネルギー源に過ぎなかった。

訂正

>>62 八行目

× マミは倒れる勢いそのままに顔をしこたま強く顔を床に打ちつけた。

○ マミは倒れる勢いそのままに顔をしこたま強く床に打ちつけた。

>>116

× だから殴った。間違いを犯しても痛くなければそれは治らならぬ。

○ だから殴った。間違いを犯しても痛くなければそれは治らぬ。

>>176 三行目

× でも例えば他の部位で成熟してしまえば他の部位の操り方は一生理解できない。

○ でも例えば他の部位で成熟してしまえばその他の複雑な部位の操り方は一生理解できない。

間違えすぎてごめんなさい
でも何度も読み返してると気になる気になる

更新再開
上条編最後まで書き切ってから投稿しようと思ったけど
上条編書く気が今更中々湧かないというか
さっき道を歩いてたら「まどマギ」と「ベルセルク」クロスの大雑把な構想が浮かんでしまい
このままだとこれがいよいよエタリそうなので
はやく書きたいマミ編まで分割して投稿して無理やり自分を急きたてます

〜☆

泣き出してしまったさやかをどうにかなだめて帰宅させる。

事前に左手の異変について話し「それ」と対面させておいたから良かったものの、

もし対面させていなかったらと考えると上条は背筋が凍る思いがした。

さやかが居なくなって必然上条と「それ」は二人?きりになる。

二人の間に重い空気が流れた。上条がまず口を開く。

「どうしてあんな事をしたんだい?」

あれさえなければ今頃上条とさやかはキスをしていたに違いない。

思いを伝えるのにはまさに一世一代のチャンスだった。

けれどキスをせずに済んで却って良かったのかもしれないと上条は思う。

相手の同意を得ずにキスなどしてしまえばそれは冗談では済まされない。

いくら親しい幼馴染とはいえやって良い事と悪い事があるのだ。

つい場の雰囲気と己の欲望に惑わされてしまったが

さやかがそれを受け入れてくれるかは分からない。

むしろ手酷く嫌われてしまっても何らおかしくない。危ない危ない。

いくらさやかが普段からおかしいくらい僕に優しくしてくれるからといって、

僕の事をそういう目で見てるとは限らないしきっとそんなはずはない。

今の情けない自分にさやかに好かれる要素があるなんて思うのは

ちょっと自惚れが過ぎるんじゃないか?

悲しいかな上条は今だ過剰な自己卑下の意識から完全に脱却していなかった。

上条の内心の葛藤もどこ吹く風と言わんばかりに「それ」が落ち着いた様子で理由を語り始める。

「人間の生殖行動に興味があった。

キョウスケはサヤカと交尾したい気持ちがありながら

アピールの仕方がやたら遠回しなのだ。だから……」

「僕は今日キス以上の事までさやかとするつもりはなかったんだけど……」

「それ」は宿主の血液の微妙な変化で宿主が

性欲、眠気、驚き、困惑、空腹、興奮、恐怖心

などを感じた時にそれを大雑把に把握できる。

しかし今回はその能力が裏目に出て双方にとって余計な事態をもたらしてしまった。

その場の勢いでキスをせずに済んだのは確かに僥倖かもしれないが、

今後どうするかを改めて確認するさやかとの話し合いが阻害されてしまったのは明らかに痛手だ。

「それ」もまだ人間あるいは人間社会に関する認識が不十分であった。

しかし「それ」はいまだ成長である。

知識に関して、殊更自身の生命活動に必要と思われる知識についてはどこまでも貪欲だった。

例えば人間そのものの一般的な性質や、その行為の持つ意味についてだ。

「キョウスケがどうしてそこまでキスという行為自体に深い意味を見出すのかも良くわからん。

なぜ唇と唇を合わせるだけの行為をそこまで重視するのか。

せいぜい生殖活動の為の前戯という類のものだろう」

「それ」の余りにも露骨に性的な表現に上条は顔をしかめる。

彼はそういった諸事の純粋さあるいは理想を重視するタイプの人間だった。

「知らないよそんな事。

ただそういう君達にとっては無意味に見えるだろう細かい事は人間にとって凄く重要なんだ。

これからは少なくともそれだけでも理解して行動して欲しいね」

「なるほど努力しよう。私もキョウスケとの間に無駄ないざこざは起こしたくない」

上条の左腕に住み付いた「それ」は他の個体に比べ好奇心が旺盛という個性があった。

上条にさやかがどれほど優れた人間であるかを何度も力説され、

彼女に興味を抱き危険を承知で対面してみたのがそれの最も顕著な例だ。

「それ」はほかの色々な面でも他の個体と異なる。

脳を奪う事に失敗した為全身の操り方がわからないし、

上条の血液から養分を摂取しているので人間を食べたいと思うどころか食欲を感じた事が無い。

睡眠時間をより多く取らなければならないという生物として明らかに劣っている面もある。

しかし「それ」にも当然他の個体と共通した性質がある。

冷徹にどこまでも自己保存に努めようとする生物としての本能だ。

上条と安定して共存していける関係を築く事、

これが彼?のとりあえずの当面の目標であった。

「そういった人間一般の模範的な行動や考え方などについては

追々学んでいくとして私が今すべきことはまずはこれだな」

「それ」が傍らに置かれたおもちゃのヴァイオリンを掴み、

口頭による上条の指導の元、ヴァイオリニストが演奏する際の一般的な構えを真似る。

ぱっと見上条の右腕から得体のしれない何かの上半身らしきものが生え、

それがヴァイオリンを弾こうとしているようで実に気味が悪い。

別に音を出す事が目的という訳ではない。

ただ「それ」が書物のみで学べる事にも限度があるので、

せめて形だけでも先に触れさせておこうという試みだ。

「ふむ、さすがにこれだけではいまいち上条の片腕として

どう演奏をサポートしていけば良いのかわからん。

やはり実際やってみないとどうとも言えないという事か」

「ちょっとした事でも良いから何かしらの収穫みたいな物は……?」

「ない」

「そ、そっか……」

「それ」がヴァイオリンを構える姿に何かしらの収穫を得たのはむしろ上条の方であった。

こうやって「それ」が所詮おもちゃに過ぎなくともヴァイオリンを構えている姿を見ると、

いよいよ自分はこいつとこれから協力して演奏していくんだと実感が湧いてくる。

すると上条は自分の中から「それ」に対する強い親近感、

同類意識の様なものまでが急に湧き上がって来たのを感じた。

突然の感覚に上条は戸惑ったがそれは決して不愉快な類の戸惑いではない。

むしろ積極的で曖昧な未来への期待感に溢れた物だった。

今は「それ」の得体の知れなさが上条をまだ見ぬ音楽の境地へと連れてって行ってくれる

未知なる切符の様にすら感じられる。

もしかしたらこいつとだったら今までの代わり映えのしない自分を変えられるかもしれない。

こいつなら僕を変えてくれるかもしれない。

……パートナーに対してこいつとか君って呼び続けるのも

なんだかずいぶんと味気無いなぁ。

「君の名前どうしようか?」

「名前?」

「うん、いつまで経ってもお前とかこいつとかそういう風に呼んでたら

いざという時紛らわしいしね」

「……では『ヒダリー』と呼んでくれ」

「え?ヒダリー?」

「左腕を喰って育ったからヒダリー」

「……まあ本人がそういうならそれでいいか」

上条はヒダリーから視線を外し、目を瞑って聞こえるはずのない演奏の音に耳を澄ます。

自分の中に嫌というほど刻みつけられた音のイメージ。

それはもうだいぶ薄れてしまっているけれど、それでも美しく上条の中でその音は響いていた。

今日の更新終わり明日頑張れば上条編は多分あと三回くらい

ヒダリーの名前については
「ダリー・レフ」とかどっかの国のボクサーかなんかに居そうな名前にしようかなー
とかちょっと悩みましたが
完全版五巻に掲載されているアフタヌーン1992年9月号の読者ページに

Qミギーが左手に寄生したらヒダリーなの?

A当然そうに決まってんじゃん
(本当はちょっと違う感じに書いてある持ってなくて興味が湧いたら買って読んでみてね!)

みたいな事が書いてあるのでそっちに従いました

次回と次次回予定の個所に最高に書く気が起こらない所があるけど頑張ります
やっぱ天狗パートは思いついた勢いとテンションで書かなきゃ駄目だったんだと思います

更新再開
まあどうにか頑張ったので今回で書きたくなかった所終了
次回で上条編終了?

〜☆

上条がさやかの手を借りて病院から抜け出した翌日の昼下がり、さやかが上条の元を訪れた。

「思ったより来るのがすいぶん遅かったね」

「いやー、昨日家帰ったら大変だったんだよ。警察の人達が来ててさー」

「え?」

「上条恭介はどうしたんだ、って聞かれたから

私も今まであちこち探していたんですって咄嗟に。

これ恭介が居ないのと帰るのが遅くなった

言い訳に使おうと始めから思ってたんだけど、

恭介が警察の人は来ないって言ってたからてんぱっちゃってね。

咄嗟に口から出てきて本当によかったよ」

「……それで?」

「それからはひたすら事情聴取の嵐だったなー。

警察の人達凄く怖かったんだからね。

少し後になってから来た恭介のご両親が助け船を出してくれてなかったら

今も個室に隔離されて色々尋問されてたかも。

……あそこまで信頼されているのにそれを完璧に裏切ってると思うと

正直罪悪感で今にも胸がつぶれそう」

「……うーん、困ったな」

上条はいきなり計画が頓挫するかしないかの瀬戸際に立たされた。

まさかあの両親が自分達の家の評判の事も顧みずに即座に警察に相談するなんて。

このままでは否応なく捜査という形で上条に関する話は周囲に広まってしまい、

そうなってしまえば成り行き上もうとことんまで調べない訳にはいかなくなる。

上条達に残された時間は少ない。

事情を詳しく知らない周囲の人達に、

上条の失踪はちょっとした悪戯の類だったに違いない

と思わせる程度の軽い事件にしておかなくてはならない。

しかしそれでは事件の異常性が薄れ、

これからの上条のとんちきな行動の説得力が薄れてしまう。

ならば他の所で異常性を演出するしかない。

上条は自らの恥を捨て、道化になる覚悟を決めた。

「これ以上事件を大きな物にする訳にはいかない。

ごめんさやか、今日……いや、明日の深夜に病院に戻らなくちゃ駄目みたいだ。手伝ってくれ」

自分がどれほど身勝手な事を頼んでるかは上条も理解している。

ただの女子中学生に過ぎないさやかに深夜ここに一人で来いと言っているのだ。

しかも上条の両親のとりなしがあったとはいえ

今だ疑いの目を向けられているさやかに家をどうにかして抜け出せと言っている。

これ程困難な任務にも関わらずそれに見合った特別な報酬を上条は用意する事が出来ない。

出来る事と言ったら一生をかけてさやかに恩返しをしていくくらいだ。

どう考えても割に合わない。結局さやかの親切心にすがるしかなかった。

上条は俯き、自分の命運を別けるであろう返事を待つ。

「いいよ、恭介の為なら私頑張れるから」

さやかは上条の頼みに即座に返答した。

上条が顔を上げるとそこには優しく包み込むような笑みを浮かべたさやかが居た。

「ご、ごめん、この埋め合わせはいずれ必ず……」

力を込めて自分に恩を返す意思がある事をさやかに示そうとする上条だったが、

さやかはゆっくり首を横に振りそれを遮った。

「いいよそんなの。私がやりたくてやるんだから。

私は恭介の手助けがしたい。恭介は私の力を借りたい。対等な取引だと思うけど」

「で、でも……」

なおも食い下がろうとする上条だったがさやかは首を激しく横に振りそれも拒絶する。

「だからいいんだって。家を抜け出して日付が変わるくらいの頃に

ここに又来ればいいんだよね?じゃあ私一度帰るから」

「あっ!ま、待って!」

珍しく上条が大きな声を出した。さやかの肩がビクリと震える。

「な、なによ?」

「そ、そのそれとは別にお願いがあるんだけど……」

上条が何やらモジモジしている。

さやかはそれを見ながらいやはや中々様になってるなーなどとぼんやり思った。

さやかは考える。もしかしたらこれは

『僕には君にあげられる物が一つしかない。……僕自身を受け取ってくれないかな?』

とか言ってキスしてくる流れなんじゃないかと?

さやかは上条にはそういうちょっと気取った所があり、

しかも一般人と感覚が微妙にずれている事を知っている。

こいつならそれくらいの事をやりかねん。

そんな事を考え上条を見つめながら、いやいや恭介が私なんかの事好きな訳無いじゃん!

と一人悶えるさやかを余所に、ちょっと涙目の上条が重い口を開き喋り出した。

「今から僕のオムツ取り換えるの手伝って欲しいんだ。

あ、それと帰る途中に中身をどうにか処理して欲しい。

本当は僕もこんな事をさやかに頼みたくないんだけどさ。本当に申し訳ないと思う」

「は?」

上条が何を言ってるのか純粋に理解できなかったさやかはごく単純な疑問の言葉を返す。

しかしそれを非難の言葉と受け取った上条は機関銃のごとく理由を語り始めた。

「ちょ、長期戦になりそうだったからオムツは用意してあるんだ。

でも排泄物の処理はナースさんがしてくれてたし、

今はヒダリー……あっ、この左腕に居る奴のことなんだけど、

こいつが熟睡してて左腕が動かせないんだ。それに加えて両足骨折してる状態で、

自分一人で取り換えをやると多分地面が大変な事になると思う。

でもやらないと今お尻がむずむずすして凄く辛いし放っておくと臭うし、

仮に後々ヒダリーに手伝って貰って取り換えたとして

その中身をそこらへんに捨てておく訳にもいかないだろ?

だから今帰る直前のさやかに手伝ってもらうのが一番合理的っていうか……、

あっ!もちろんやましい気持ちは無いよ!本当だよ!」

わざわざ自分からそれを言ったら疑われるだけでしょ……。

呆れ顔のさやかはそう心の中で呟いて溜息をついた。

そしておそらく今の上条にはやましい気持ちは本当に無い。

こういう重要な時に意味のない嘘をつくような奴ではない事は

付き合いの長いさやかはちゃんと理解していた。

でもだからこそ自分が異性として認識されていない様で余計に腹が立った。

もっともこの場面でやましい気持ちからオムツを換えてと要求するような奴を

助けてやるつもりには絶対ならなかっただろうからそこは難しい所だ。

「……良いよ。恭介の手助けがしたいってさっき自分で言ってたもん私」

「……まことに申し訳ありません」

ふぅ。気分を切り替えようと深呼吸したさやかだったが、

結果として辺りに漂う異臭を今日初めて感じてしまう結果となった。

〜☆

時刻は深夜、さやかが上条の乗った車椅子を押して病院の前にたどり着いた。

上条の膝元には昼間ヒダリーに集めてもらった木の葉が一杯に詰まったゴミ袋が入っている。

「じゃあ車椅子についてはよろしくねさやか」

上条はヒダリーとさやかの手により無事に地面に下ろされた。

後は病院の入り口まで這うなり発見されるまで待つなり

とにかくさやかなしでどうにかするつもりだった。

「なぁ、キョウスケ。本当にこの作戦で大丈夫なのかい?」

「今更計画の変更なんて無理だよ。運を天に任せよう」

「……予想外に私との共生をあっさり認めてくれたからと言って

キミを無批判に信頼し過ぎたのかもしれないな。

キョウスケ、今確信したが君は間違い無く大馬鹿者だよ」

「はは、つき合わせて悪いね」

「いざとなったら私は私の正体を目撃した人間を

全員殺すつもりで居るからそこは事前にきちんと覚悟しておいてくれ」

一瞬で場の空気が凍りついた。一気に場の空気が張り詰めていく。

「さ、さやかは……?」

「彼女は協力者だからね。我々に敵対する行動をとりさえしなければ殺すつもりはない」

「そ、そうか」

上条は少し緊張した表情を和らげた。

「いやいやいやいやダメでしょ!恭介なに良かったって顔してんの!」

「とはいっても僕にはヒダリーが誰かを殺すのを止める術がない。

せめてどうにかそうならない様に事態を運ぶしかないんだ。

残念だけど今の僕とヒダリーに誰かを気遣っている余裕なんてほとんどないんだよ」

「安心しろ、サヤカ。

私もキョウスケの両足の状態からして騒ぎを起こせば十中八九逃げられない事は理解している。

あくまでこれは最終手段だ。計画が無事成功しさえすればそれでいい」

ヒダリーと一緒に一見冷酷な事を述べて居る様に聞こえる上条の発言だったが、

その声は酷く震えていた。

さやかはひとまずほっとする。

ヒダリーはどこからどう見ても人間じゃない。

恭介の味方ではあるらしいけどそれでも私達人類全体の味方ではない。

だけどヒダリーがどんなに冷血な生物であったしても、

上条は歴とした血の通った人間だと今改めてはっきりした。

強気の態度をとっていないと自分が背負っている重圧に押しつぶされてしまいそうなのだろう。

さやかには上条がどう行動するのが一番正しかったのか、

又は正しいのかなんて事はさっぱりわからない。

彼女に出来るのは計画が無事に成功するように祈る事だけだ。

「……じゃあね。私はこれで帰るけど全て上手くいくよう家で祈ってるから」

「あっ、待ってよさやか。ちょっとの間僕に背を向けててくれるかな?」

言われるがまま待っていると何やらゴソゴソ物音が背後から聞こえてくる。

恭介は何をしているんだろう?そう思っても口には出さず黙って待ち続ける。

「よし、OKだ。これを帰る途中で車椅子と一緒にあの秘密基地に隠しといてくれ」

ヒダリーが自身の身体を伸ばし『それ』をさやかの目の前に運んでくる。

それは先程まで木の葉が入っていたゴミ袋。

ただし今は上条が先程身につけて居たらしき衣類が入っている。

え?いったいどういう事?半ば無意識でさやかは上条の方へと振り返った。

「あっ!振り返っちゃダメじゃないか!」

上条の言葉も時既に遅くさやかの目には一糸纏わぬ上条の裸体、

ただし身体全体に木の葉が振りかけられている様子が映し出された。

「……何してんの?」

「キョウスケ曰くこれは天狗に攫われた被害者はこうなるであろうという様子の再現なのだそうだ」

「……バッカじゃないの?」

「私もそう思う」

「……」

その時上条の身体一面にやけに冷たい風がサワサワと吹きつけた。

今日の更新終わり

Q こんなの書いてバッカじゃないの?

A 私もそう思う

書いてて余りの辛さに最低いつもの二倍以上時間がかかりました
こんなもんまともなテンションで書くもんじゃないよ
書いた本人が今一番恥ずかしいです
今日の恥ずかしさを引きずらなければ上条編明日で完結

更新再開
上条は今回で主人公的な立ち場を終えてこれから一登場人物としての役割を果たす事になります
上条視点で話が進むのは告白飛ばす事にしたのでしばらく先にあと一回だけの予定です

〜☆

「天狗だー!天狗の仕業なんだー!」

上条が叫ぶ。

どうにか病院の玄関先までヒダリーの力を借りつつ、

自力で移動して無事発見されることに成功した上条は、

まず大げさに両腕を動かして左手が普通に動くという事をアピールする。

そして急遽行われたX線検査を終えた上条はさらなる検査に移ろうとする医者に向かって再び叫ぶ。

「天狗だー!天狗の仕業なんだー!」

医者はどうにか上条を落ち着かせようとするが上条も必死である。

何しろ周囲の人間皆の首がかかっているのだ。

抵抗の意志と精神が現在極度に不安定な状態にあるのだという事を印象付ける為、

周りに置いてある物をなりふり構わず、それで居て人に当たる事のないよう投げる。

たとえ怪我をしていなかったとしても

上条の細い身体つきから考えて本来投げられるはずのない物まで投げる。

その姿は周囲の人達には極度の興奮状態に陥った上条が

火事場の馬鹿力を発揮しているように見えたことだろう。

だが実際はヒダリーの力による物であった。

「僕はもう大丈夫だから放っておいてくれ!僕は正常なんだ!

僕を実験動物にでもする気か!?そんな事絶対に許さないぞ!」

「恭介」

声を張り上げる上条にそれほど大きくない声で、

だがはっきりと病院から連絡を受け急いでやって来た上条の父が呼びかけをする。

上条は何もかもの動作をつい一度止めてしまった。

「父さん……」

「皆さんすみませんが暫く二人きりで息子と話をさせていただけませんか?」

上条の父が医師達に向かって頭を下げる。

その言葉を受け上条の周りの人達は皆大人しく退室していった。

〜☆

「と、父さん……。僕はもう大丈夫なんだ。ほら、左腕も普通に動くでしょ?」

「……」

上条がいくら父に話しかけても応えるそぶりはない。

しかし上条をじっと見据えるその目つきは話し続けろと上条に告げていた。

「ええっと……、X線検査でも何も異常がないって出たよね。

後は両足だけどこれは自力で治せるはずなんだ。

だから自宅療養に切り替えて欲しいかなー……」

同じ話のループが三周目を終えた頃、初めて上条の父は口を開いた。

「『両足だけどこれは自力で治せるはず』というのはどういう事だ?

何だかまるで左腕は自力で治る見込みがほとんどなかったみたいじゃないか」

そうだ、僕がその事実を知っていた訳がない。

上条は自分の血の気がさっと引いて行くのを感じた。

落ち着け。父さんは僕に揺さぶりをかけに来てるだけだ。

「左腕は絶対に完璧な状態で治さなくっちゃならないから。

家で勝手に治そうとして万が一が起きたら目も当てられないでしょ?」

「……」

しばしの沈黙の後、父は再び口を開いた。

「どうして恭介はそこまで精密な検査をされる事を嫌がるんだ」

「どうしてって……もう左腕がちゃんと治ってるのはX線検査でわかってるし

これ以上余計な事されたくないんだ。

得体のしれない実験動物みたいに扱われるのは嫌だし……」

「本当にそれだけか?」

上条の全身から汗が噴き出る。激しく心臓が鼓動する。

落ち着け、落ち着け。まだ大丈夫だ。ヒダリーもまだ動くそぶりを見せて居ない。落ち着け。

「うん、それだけだよ」

上条は精一杯父と目を合わせなるべくいつも通りに聞こえるよう返事をする。父は溜息をついた。

「大丈夫なんだな?何かどうしようもない事に巻き込まれてたりしないか?」

「大丈夫だよ父さん」

上条はこの質問にだけははっきりと答える事が出来た。

確かにどうしようもない事には巻き込まれているのかもしれないけど、それは僕の意思でもある。

ヒダリーとなら大丈夫なはずだ。きっと良い演奏が出来るし僕も変わっていける。

なぜだかそんな気がしていた。

「……わかった。退院の手続きやら

お前の身辺を世話してくれる人などについての手配などは済ませておく」

そう言い残して病室を立ち去ろうとする父に思わず上条は声をかけてしまった。

「い、良いのかい?」

上条は疑問を口に出してしまってからそれを非常に後悔した。

これではやましい何かがあると自白しているようなものではないか。

一人焦る上条を知ってか知らずか父は振り返らずポツリポツリと語り始めた。

「お前が初めて私に自分の意思でまともに反抗らしい反抗をしたからな。

人の親として正しい事なのかはわからんが私が出来る限りの尻拭いはしてやるから好きにやれ。

ただし何かあったら手遅れになる前に私あるいは母さんにちゃんと相談するんだぞ。

……それと帰ったら母さんに謝っておけ。

さやかさんからお前が居なくなったと聞いた後の母さんの様子には

私も彼女の気が違ってしまったのかと思ってしまったくらいだ」

言いたい事が言い終わったらしい彼はそのまま退室した。

そして病室の外で医師達と何やら話しているらしい。

「一時はどうなるかと思ったが意外とどうにかなったな」

ヒダリーが小声で上条に囁く。

「うん、そうだね」

上条は上の空で返事をする。父さんと母さんはどうも僕を真剣に愛してくれているらしい。

それを僕が勝手に壁を造り滑稽にも一人でいじけていた訳だ。

なんて馬鹿な子供。自分が情けなくて恥ずかしさのあまり顔から火が出てしまいそうだった。

「やけに嬉しそうだなキョウスケ。だがまだ安心するのは早い。気を抜くなよ」

「わかってるってそんなことくらい」

僕が喜んでいる?確かにそうだ。

計画と微妙にずれた気もするが何事も無く今日という日を潜り抜ける事が出来た。

だがそれ以上に何だか今まで背負っていた肩の荷がどっと取り払われた気分でもあった。

〜☆

恭介とヒダリー共同によるヴァイオリン演奏は思ったよりスムーズにはいかなかった。

ヴァイオリン演奏の手順はこうだ。まず本来なら脳から左腕に命令がいく。

しかしヒダリーが寄生する前に左腕の神経が断裂されていた事が原因で、

ヒダリーが左腕を形と中身だけ再現して上条に主導権を渡しても上条は動かす事が出来ない。

おそらく上条の左腕である事をやめ誰かあるいは上条の右腕を切り落とし

そこに移動したならヒダリーは眠ったままでも腕の役割を果たすだろう。

ヒダリーは頭と左腕以外の機能は問題無く果たす事が出来る。

だがヒダリーが左腕を再現できるのは中身の構造までであって

その機能に関しては上手く「理解」出来ていなかった。

そこで演奏の際にはヒダリーが脳の信号を自分から「読み取り」

その動きのイメージをそっくりそのまま自分で動いて再現する。

ヒダリーが主体になって腕の操作は行われる為、

ヒダリーが完全に目を覚ましていないとどうしてもその動きは阻害されてしまう訳だ。

そしてそれはただ左腕を再現または自分で自由に動くより体力を使う。そして繊細な作業だった。

初めてヒダリーと共にヴァイオリンに触ってみた時上条は愕然とした。

日常動作に関しては何も問題は無い。しかし演奏となると何か違うのだ。

まだヒダリーが脳の「信号」に合わせ自ら動く事に慣れていなかった為である。

こんな演奏をさやかに聞かせる訳には断じていかない。

さやかに頼み込んで演奏を聴かせるまで一週間の練習時間を貰った上条は、

一度だけ両親に久しぶりの演奏を聞かせた後一日中ヴァイオリンを弾き続けた。

上条も最初は一週間だけで果たして間に合うか不安だったが

、三日目でその悩みは解決され事故前の演奏が戻って来た。

ひとまず安心した上条だったがそれでも満足する事無く

一日中ヴァイオリンを弾き続ける。明らかな変化が確認されたのはその二日後、

練習を始めて五日後だった。

今までこれ程上手く左手を扱えた事は演奏中に一度も無かった。

ついにヒダリーがその動作に慣れたのである。

左手が頭の中でイメージした通り、いや、それ以上に動く。

するとそれに釣られて右手、演奏そのものが良くなっていく。

これほど劇的な成長を見せる事はもう二度とないだろう。

何故ならヒダリーは既にその運動における完成系に至っておりこれ以上成長する事は無いからだ。

しかし、ヴァイオリンは左腕だけで演奏する訳ではない。

ヒダリーと演奏出来るという事は上条に自信と明確な目標を与えた。

やっぱりヒダリーとならいつか最高の演奏が出来るだろう。

自分で一週間と決めたはずなのに

上条はさやかに現時点の演奏を今すぐにでも聴かせたくてたまらなくなった。

〜☆

「それで今日恭介はどの曲を私に聞かせてくれるの?」

「色々考えたんだけどね、さやかが好きで、

なおかつ僕にとっても思い出深い

僕がヴァイオリンを始めるきっかけになった曲にしようと思う」

「へー。それで曲名は?」

「アヴェ・マリアさ」

上条が目を瞑り演奏を始める。

それを部屋の中、一人だけの観客として耳を傾けるさやか。

さやかには音楽の良さなんて

耳で聞いてそれを良いと思うかどうかといった主観的な面でしかわからない。

それでもその演奏はとても美しく繊細で、

上条に連れられ時折聞いたプロの演奏と比べても決して遜色がないように聞こえた。

しかしさやかの心に一抹の不安が浮かぶ。

上条が事故に遭う前の演奏と何かが違う。違和感がどうしても拭いきれない。

何だか上条が演奏しているというよりは演奏の歯車として上条が動かされているみたいだ。

まるでそのまま上条がどこか遠くに行ってしまう様な……。

けれどさやかのそんな曖昧な不安は一瞬にして彼女の頭から吹き飛んだ。

上条が本当に楽しそうに笑っていたのだ。

さやかはこれ程楽しそうに笑う彼を今まで一度も見た事が無かった。

彼女の心を幸せな気持ちが満たす。

良かったね、恭介。

気付けばさやかも心から楽しい気持ちになって彼と一緒に笑っていた。

【第一部 パラサイト飛来編 終わり】

今日の更新終わり

恭介の左手設定はパラサイトと共同作業させたかったとか
いろいろ細かい理由とか意味があるけど
一番大きい理由は行動の制限ですね
余り自由に動き回られると書いてる方が困るという(ry

次回お久しぶりにマミさんが登場
胸がどうもしびれるなーからのスタートです

今日もTDSと寄生獣原作を読み直す
TDSとは時間の流れやらが色々違いますけど
特に杏子のキャラ
多分寄生獣の方は15回は読んだな……
普通「漫画だから」で解釈せず済ますだろう所もこういう人の褌で相撲とる時は
解釈しとかないと気持ち悪い性分なので非常に大変

再開

気は急いて時間もあるが書けないという若干スランプ気味
多分書きたいとこまで言ったらペース上がると思うけど
一日二〜三時間書くと飽きる
まあ二日でこんだけ書ければ十分じゃないっすかね、はい

〜☆

各地にパラサイトが飛来した翌日の朝、いつも通りの時間にマミが目を覚ました。

目を覚ました彼女はいつもの習慣でソウルジェムの汚れ具合を確認しようとする。

しかしいつもなら置いてあるはずのテーブルの上には見当たらなかった。

少しの間テーブルの周りを捜索し予想外の場所にそれを見つける。

どうも昨日は指輪として身につけたまま寝てしまったらしい。

ソウルジェムを指輪の形から宝石状の形に変化させ具合をチェックすると、

ジェムの中はかなり濁っておりかなり危険な状態であることを示している。

慌ててマミはストックのグリーフシードを用意した。

マミの手によりソウルジェムの傍に寄せられたグリーフシードがその穢れを吸い始める。

「グリーフシード」、魔女の卵。グリーフシードは一言で表すなら空の器だ。

感情エネルギーを溜めこみ過ぎて限界を超えたソウルジェムが

そのエネルギーと魂を完全に放出した後残るソウルジェムの「殻」の様な物。

魔法少女の魂が変質を遂げ魔女になるようにグリーフシードもソウルジェムとはまた別物である。

事実それを魂の器として使う事は出来ない。

しかし魔法の使用などによりソウルジェムに溜まってしまったエネルギーを、

その空になった器に移す事くらいなら出来る。

けれどもそれもいつまでも使えるという代物ではない。

グリーフシードにも限界があって、

それを超えるエネルギーを注いでしまえばやはり魔女が生まれる。

しかもその魔女は言うなれば「二回」変質を遂げたという事になり、

最初の魔女よりも強くそれが落とすグリーフシードは最初の物より品質が悪い。

グリーフシードの元となるソウルジェムの本来の役割は

物質化された魂を保護する外殻となる事であるが、

変質する度にその機能は損なわれてしまい

結果として感情エネルギーを最初より内に含む事が困難になる為だ。

多くの新米魔法少女がグリーフシードの再利用を企み痛い目を見る。

そして使用済みのグリーフシードは大人しくインキュベーターに渡されるようになり、

そこから溜まった感情エネルギーが回収される。

結局魔法少女には新しい魔女を倒し続けるしか生き延びる術は残されていない。

戦う事の出来なくなった魔法少女に残される道は自分の命を断つか、

魔女となり周囲に災いをふりまきそして他の魔法少女の「餌」になるかを選ぶ事だけ。

戦う事しか許されない。だから皆戦い続ける。

そして誰もが最後には絶望に足をとられて破滅する。

もしもその宿命に少しでも多くあらがう事が出来る者が居るならそれは強者しかいない。

果たしてマミにその資格があるだろうか?

マミのソウルジェムが無事に元の山吹色の美しい輝きを取り戻した。

マミは汚れを吸わせたグリーフシードがもう使用出来るぎりぎりであることを確認すると、

インキュベーターの名を呼んだ。

「キュゥべえ!」

キュゥべえがどこからともなく現れる。

彼らは常日頃から魔法少女のそばにいるという訳ではなく、

例えばこういうグリーフシードを使い終わった時などを敏感に察知して現れる。

「やあ、マミ。今回はいつもよりやけに消費が早いね。何かあったのかい?」

「……ちょっと、ね」

マミが言い淀む。正直に話した所でキュゥべえに信じて貰えるかわからないからだ。

それにマミ本人も昨日のアレが実際何だったのかあまりよくわかっていないというのもある。

キュゥべえはマミの煮え切らぬ態度に首をかしげたがそれ以上深く追及する事は無かった。

キュゥべえが使用済みのグリーフシードを回収して立ち去ろうとする。

「あ、ま、待って!」

「どうしたんだいマミ?」

「きょ、今日泊まっていって欲しいんだけど……」

これはキュゥべえとマミの間で交わされる毎度毎度の決まったパターンの様なものであった。

キュゥべえが自分からマミの家に泊まりに来てくれた事は一度だって無い。

しかし今まで泊まっていってと言われ断った事も一度も無かった。

自然キュゥべえに自分の家で暮らして貰いたいなんて事まで考えているマミが、

キュゥべえと顔を合わせるごとに泊まっていってと誘うという奇妙な関係が出来あがっていた。

「ごめんマミ。今日は忙しくてその頼みは引き受けられそうにないんだ」

だけど今日はいつもと少し様子が違っていた。

「そう……」

思わぬ拒絶に露骨に落胆するマミ。しかし健気にも気持ちをすぐに切り替えようとする。

泊まっていってくれないという事ならどうせしばらく会えなくなるでしょうし、

今の内に私の身体に何かおかしな事が起きていないか聞いておかないと。

「ねえキュゥべえ、私の身体に何か異変とか見当たらないかしら?」

「異変?ボクの目には君が健康で何もおかしな所は無い様に見えるよ」

キュゥべえが言うなら大丈夫に違いない。マミは少し安堵した。

きっとアレは私の体内に入って魔法少女としての免疫か何かにやられたのでしょう。

それに治療魔法も掛けておいたもの。異常なんてあるはずないわよね。

マミは自分を襲う不安と危機感からわざと目を逸らした。でも一応最後に念を押しておく。

「特に右胸なんだけどね、何だかちょっと痺れちゃって……」

「それは不思議だね。ボクの目にはどこにも異常は見当たらないよ。

何かおかしな所があったらボクにはわかるはずなのに。

まあ少なくともボクの目が正しければいつも通りの君の胸だ。

もしかしたら痺れの原因は何か精神的な物かもしれないね」

精神的……やっぱりあれは夢だったのかしら?

そんなはずはないのにマミの思考は徐々に自分にとって都合の良い方へと流れていく。

「ありがとうキュゥべえ。じゃあまたね」

「またねマミ」

キュゥべえが現れた時と同じように唐突にその場から居なくなった。

〜☆

「さあ今日のマミのお弁当は何かなー?」

「アンタまたマミにおかず分けて貰う気でしょー」

「ええー、良いじゃんちゃんと交換してるし。自分だっておかずのわけっこに参加してる癖に」

「アンタは明らかに取り過ぎなの!」

「ふ、二人とも落ち着いて……」

クラスメイトとの昼食。マミにとって学校での時間はとても大切な物だった。

自分がいったい何を守る為に戦っているのかを再認識できるし、

同年代の子達とこうやって仲睦まじく話す事が出来るのもこういう時だけだからだ。

マミが鞄からお弁当を出して机の上に置く。

「え……?ちょ、ちょっとそれ多くない?おかずのわけっこ前提って事?」

「うわ……凄いね。これ一人で食べるの?」

二人が同時にほぼ同じ内容の言葉を口にする。

「え?」

言われてみれば確かにいつもよりだいぶ量が多い。マミも不思議だった。

毎日朝の時点でだいたいお昼にはこれくらいお腹が空くだろうと見当をつけてお弁当を詰める。

事実今この量を一人で食べる事に何の抵抗も湧いてこなかった。

いつもだったらいくら魔法少女として体力を使うからと言ってこんなに食べれる訳はないのに。

「い、いつもマミの食べる量は人よりちょっと多いなーとは思ってたけど

ついにフードファイター目指し始めたって事?」

「そんな訳無いじゃない!」

つい大きな声を出して言われた事を否定してしまう。

何だか遠回しにそんなに食べると太ると言われたようでマミは少し傷ついた。

ただでさえ毎日の紅茶とケーキのせいで体重には人一倍気を使っているというのに。

しかし相手はそういうつもりで言った訳ではなかったらしい。

「いいなー食べた分の養分が全部胸に行くんだろーなー良いなー」

「素直に大きな胸が羨ましいって言いなよ」

「それはなんか自分に負けた気がするからやだ」

「なにその訳わかんない理屈」

妙な方向にずれ始めた二人の会話に耳を傾けながら、

マミは黙々と弁当を食べ進めて居た。

食事をしている時は黙って今日一日の恵みに感謝して食べる。

マミは行儀のいい娘であった。

マミがこの二人から食いしん坊マミのあだ名?

で呼ばれる様になる未来はそう先のことではない。

〜☆

放課後、マミは町中をパトロールしていた。

本当はマミも一日くらい友達と放課後思い切り遊んでみたいと思う事がある。

というより実際しょっちゅうそう思っている。

しかしそれは叶うはずのない夢、願望の話だ。

魔女や使い魔は残念ながらマミの都合では動いてくれない。

魔女達は普段「結界」という俗世から隔離された空間に籠っているので

人間達の前に自分から直接出てくる事は無く、

健全に毎日を送っている人に対しては基本無害な存在である。

けれど不安や苦しみといった負の感情によって

心に何かしらの「傷」がついた人達に対しては事情が違う。

魔女達はそういった心が不安定になった人間に

「魔女の口付け」と魔法少女達の間で呼ばれる物を施す。

そしてそれを受けた者は心の不安定さを極端に増幅され、

その魔女それぞれによって様々の悲惨な最期を迎える事になる。

建物の屋上から飛び降りて自殺したり、

集団自殺を図ったり、

魔女の結界内に招かれ使い魔達に喰い殺されたりなどなど。

基本魔女や使い魔の結界の中もしくはその近くで殺されるという共通点があり、

「魔女の口付け」を受けた本人が自力でそれを解くことは出来ない。

それを未然に防ぐ事の出来る唯一の手段は、

魔法少女が「魔女の口付け」を施した大元の魔女や使い魔を先に殺す事だけだ。

つまりマミが友達と一日中遊ぶような事があれば、

それだけ見滝原市内で本来起きるはずの無かった

人が死んだり失踪したりする事件が起こる可能性がぐんと高まる。

戦わなくてはならない。休んでなどいられない。

今日もマミは使い魔が張った結界を見つけた。

ここ数日は魔女の結界を見かけていない。

魔女とはそういう物だ。

短期間に何匹も対処に困るほど発生する事もあればずいぶん長い事見かけない事もある。

それでも使い魔すら全く見かけない日というのはそれほど長く続くものではないし、

ここ見滝原はたくさんの人間、思いが溢れているので彼らも餌に事欠かない。

魔女たちの数も周囲の地域に比べれば圧倒的に多い。

自然全く戦わずに済む日はそれほど多くなかった。

マミが結界を潜る。結界の中には一般人は普通立ち入る事が出来ない。

入れるのは「魔女の口付け」を受け招かれた者、

魔法少女の資質を持ち運悪くその結界に巻き込まれてしまった者、

そして魔法少女だけだ。

結界の中で使い魔を発見したマミが華麗にステップを踏み変身する。

それを見ていたのは使い魔を除けばたったの「一人」。

〜☆

一日のパトロールを終え帰宅して、

いつも通り入浴しようとしたマミは脱いだ制服に小さな穴が空いてるのを見つけた。

右脇腹のあたりに一つ。

おそらく普通に生活している分には周囲の人は誰も気づかないだろう。

そんな小さな何の変哲もない穴。

マミはそれを虫食いの穴だと判断した。

予備の制服を使えばいいし次の休みに穴を縫ってしまおう。

今日も疲れた。早く寝てしまいたい。

マミはそう考え頭の中からすぐにその穴の存在を放り出してしまった。

しかしそれは虫食いの穴などでは決して無い。それは「覗き穴」であった。

〜☆

真夜中、マミの持ち帰った教科書やノートなどを使い

マミの右胸の「それ」がどうにか学習をしようと苦戦している。

今日は不思議な事がいっぱいあった。

朝の見えも聞こえもしない誰かとマミとの間の謎の会話。

夕方頃のどういう方法を用いたのかわからない一瞬の早着替え。

そして戦闘。計三度同じ様な早着替えと戦闘があった。

「それ」は制服だけではなく、

マミの魔法少女の衣装にも穴を空けこっそり外を覗いていた。

「それ」はマミが先程戦っていた相手について暫く思いを巡らせ、そして思考を放棄した。

アレについてはここにある情報では何であるかの判別は出来ない。

詳しい事は本人に直接聞いてみるしかないだろう。

しかしその為にはまず私の存在をマミに認めて貰わなければ。

今はどうやってマミと安全に交渉するかを考えるのが一番大切な課題だ。

早着替えの際のマミの動き、

戦闘後のマミの振る舞い、

それと一日中観察したマミの色々な行動などを考慮すると、

マミの不可思議な力にはあの宝石が重要な役割を果たしているに違いない。

指輪状から宝石の形へ、

そして戦闘時には髪飾りに変形する不思議な髪飾り、

それが今マミの枕元に置かれていた。

昨日の失態に懲りたマミが

今日からはソウルジェムをテーブルではなく枕元に置くようにしたのだった。

今日の更新終わり

寄生獣原作の時間の流れは微妙に分かり辛い所もありますが後藤戦まで最低二年間はあるはず
対してこっちは上条の骨折関係からしてパラサイトが飛来してからワルプルまで最高半年くらい
ここら辺を違和感なく埋めるもしくは状況を変える事にこれから四苦八苦していきます
わかってはいたけどやっぱり面倒です

次回vs初パラサイトちゃん(人間)まで行ければ良いですね
調子がのらない限り多分無理

更新再開
余り時間はとれなかったけど結構量は書けてる
スランプ脱したかな?それスランプっていうんですかね……?

〜☆

翌日、昼食時にマミはクラスメイトからちょっとショッキングな話を耳にした。

『ひき肉ミンチ殺人事件』。

昨日見滝原市に暮らすごく普通の家庭で起きた凄惨な事件だ。

その内容は四人家族の妻、娘、息子が何者かに殺害され、

家の中に手足がバラバラの身体の大半がグチャグチャ、

「ひき肉」の状態で散らかされていたという物だ。

現在姿をくらましている夫が

犯行に何らかの形で関わっているのではないかと警察の手により捜索されている。

マミはそのニュースを聞いてまず真っ先に魔女の存在を疑った。

彼女としてはごく当然の思考の経過である。

世の中で起こる原因不明の自殺や殺人事件は、

かなりの確率で魔女や使い魔達の仕業なのだ。

だがここまで残虐な事件は魔法少女生活が長いマミにもちょっと記憶に無かった。

これが魔女の仕業なのだとすればよほど手ごわい相手に違いない。

自分という者がありながらこれ程までに惨い事件を事前に防げなかった事をマミは悔やんだ。

とりあえず今日はもっと入念にパトロールをして、

周囲の地域の魔法少女にも注意を促し情報交換をしておこう。

そう考えひとまずは意識を日常へと戻した。

〜☆

パトロールを終えマミが帰宅した。

疲れからお風呂場に向かう間何度も倒れそうになりながら身体を引きずる。

今日は魔女を二匹倒した。グリーフシードも手に入った。

しかしいくら歩きまわり何人もの魔法少女に話を聞いても、

肝心の『ひき肉ミンチ殺人事件』に関わっていそうな

凶悪な魔女や使い魔についての情報は何一つ手に入らなかった。

家に帰る途中疲労困憊の身体が言う事を聞かなくなって

道端で眠ってしまわなかっただけ幸運という物だ。

どうにか入浴を済ませ、ケーキを食して紅茶を飲み、

ちょっとした日常のてんやわんやを済ませてから

やっとの思いでベッドに仰向けの状態で身体をうずめた。

さあ眠ろうとソウルジェムを指輪から宝石の形に変化させ枕元に置く。

その時首元から何か細長い物が伸びた。

「それ」はソウルジェムに巻き付き、

さらにその長さを伸ばし天井に届かんばかりの位置まで

ソウルジェムを掴んだまま上昇し停止する。

マミがどう手を伸ばしても届くはずのない高さだ。

いったい私の身の上に今何が起きたというの?

疲れと混乱でマミの思考は一時完全に停止する。

しかしそんな生ぬるい時間は一瞬にして終わりを告げた。

首元にナイフを突き付けられているような冷たい感触を感じたからだ。

マミの脳内も既に手遅れぎみではありながらようやく覚醒し、

事態の把握に努めようと自らの首元を見やる。

すると右の胸元が盛り上がり服の中から目玉が覗いていた。

一昨日の「ヤツ」だ!

マミは「それ」を見た瞬間にそう直感し自分の判断の甘さを嘆いた。

けれどそんな事を今更してみた所でもはや後の祭りでしかない。

「それ」が生まれて初めて肉声を外界に向かって発した。

「マミ……これから私はキミと私にとって有益な提案をしたいと思う。

ただし残念ながら君に拒否権は無い。何が何でも聞いてもらう」

首筋に突き付けられた刃物状に変化した「それ」は微動だにしない。

それがかえってマミの恐怖を誘う。

下手な事をすれば容易く首を切り落とされかねない。

マミにはその事が十二分に理解できた。

マミの額を汗が一筋滴り落ちる。

「話し合い」は完全に「それ」のペースの元行われる事となった。

ちょっと休憩挟みます

〜☆

数日後、パトロールを終えてマミが帰宅した。

そのままマミがベッドに倒れ込むと右胸がもぞもぞ蠢き、

服の中から顔を見せた「それ」がマミの身辺を色々世話していく。

風呂を沸かし、食事の支度をし、

明日の時間割を確認しながら鞄の中に明日学校に必要な物を詰め込んでいく。

最後に軽く掃除を済ませてからマミの元に戻ると、

マミはすやすや寝息をたてていた。「それ」がマミの頬を優しく数度叩く。

「マミ、食事だぞ」

「……んあぅ」

マミがまどろみから目を覚まし、自分が呑気に眠っていたという事実を恥じた。

いくら疲れているからといってこんな奴に気を許してしまうなんて。

マミは「それ」をまだ信用した訳ではなかった。

「それ」がマミと初めて対面した日から数日しか経っていないのだからそれも当然の事だ。

初めて対面した日、「それ」がまずマミに告げたのは、

私はマミの血液から与えられる養分が無いと生きていけない。

だからマミには私とこれから共生してもらうしかないという内容の話であった。

もしマミが「それ」の要求を拒否するという事ならば、

マミは当然どうにかして「それ」を取り除かなくてはならなくなる。

「それ」はマミに向かって言う。

確かに私は君の右胸に寄生している儚くか弱い一生物に過ぎない。

しかし私はマミの右胸部に寄生しているのだから、

マミが行動を起こす前にいとも容易くマミの心臓を貫ける。

となればマミの命は実質私が握っている様な物だ。

私を殺すつもりなら一緒に道連れになるくらいは最低限覚悟して欲しい。

「それ」は明らかにマミを脅迫していた。

「それ」はマミの血液の流れからマミがどういう感情を抱いているか、

例えば「それ」に対しての敵意などを、大体大雑把に把握できる。

「それ」に対してマミが奇襲を仕掛ける事はほぼ不可能であるといってもいい。

それでももし、自分の身体は魔力でかなりの場合において再生可能な事をマミが知っていて、

勝負を一瞬で決める覚悟さえあったならば

「それ」を取り除く事はさほど難しい事ではなかっただろう。

けれどマミはその事を知らなかったし、

知っていたとして

自分が僅かでも死ぬ可能性のある賭けをする踏ん切りは中々付かなかったはずだ。

死にたくない。生きていたい。

この強い思いが今までマミを支えてきた原動力の一つなのだから。

そしてそれは皮肉にもマミにとって『敵』であるはずの

「それ」の行動理念と一致していた。

「死にたくない」

そう一貫して主張し続ける生き物を殺そうと考える事は、

たとえ相手が得体のしれない何かであってもマミにとって余り気持ちのいい話ではない。

もっとも当然そんな得体のしれない何かを

身体の内に潜ませたまま毎日の生活を送りたくもない。

マミの「それ」に対するどっちつかずの気持ちは

「それ」に対する態度もどっちつかずの物にしていた。

「それ」はマミにとって自分がただの邪魔な闖入者でしかないのを十分に理解していたので、

これからマミが毎日快適に暮らしていくのをなるべくサポートしていくつもりだと表明していた。

そしてそれが一層マミを悩ませた。

そんな訳でここ数日はマミの代わりに

「それ」がどれだけ家事などを行えるのかを実験している状態だった。

「マミ、急がないとご飯が冷めてしまう。後片付けもあるし」

とはいえいきなりこう完璧に身の回りの雑用を

気に食わない相手にこなされるとそれはそれで不思議と腹が立ってくる物で、

マミは精一杯のろのろとベッドから立ち上がり、

食事の用意されたテーブルの元へとゆっくり向かう。

ただの無意味な当てつけにしかならない反抗である。

ある意味マミはここ数年魔法少女になってから一番年相応に子供らしい行為をしていた。

マミが「それ」の作った食事を無言で口に運ぶ。

「それ」には味覚は無いし、

養分はマミの血液から摂取しているので食欲という欲求そのものが無い。

なのでマミも最初の内は「それ」に料理など作れる訳はないと思っていたのだが、

存外レシピなど一から教えてみた所それが出来てしまった。

結局マミのしたことを真似ているだけなので予想外の事態には弱いし

まだレパートリーも少ないが、

それでも「それ」は確かにマミが作ったのと同じ味の料理を提供している。

マミは悔しく思いながらも「それ」のスペックの高さにはただただ感心するしかなかった。

だけどそれだけに「それ」をこのまま野放しにして

大丈夫なのかという疑問が浮かんでくる。

「それ」が色々な知識を身につけ

成長し手がつけられなくなる前に今の内にどうにかするべきではないのか?

でも「それ」が特別誰かにとって害になるような行動をとった訳ではまだないはずだ。

ところが実際そうでもない。

マミが「それ」にどうして私の右胸部に居るのかという旨の質問をした際、

「それ」は、本当は最初はマミの脳を目指して進んでいたけれど

それに失敗したと回答している。

「それ」の記憶は脳にたどり着けなかったという

後悔の気持を抱いた所から始まっているので、

どこからやって来たのか、

どうして人間の脳を奪おうとしたのかについてはわからなかった。

しかし「それ」の話した内容だけを考慮しても

マミにとって状況はかなり危険な物であった事がわかる。

もしあの時眠りから目を覚まさないままだったとしたら……。

マミの「それ」への色々な物が入り混じった複雑な恐怖は

二人の間に明確な「壁」を形作っていた。

「マミ、そろそろお風呂にしよう。身体は自分で洗うかい?」

「当たり前でしょ!」

マミは憤慨した。

せっかく人が湿っぽい気分で物想いにふけっていたというのに全て台無しだ。

場を和まそうと冗談で言っている訳ではないらしい。

いくら「それ」に性別が無いからといって

この年で誰かに身体を洗われるなんて恥ずかしすぎる。

全く常識という物が無いんだから。

デリカシーが無くて時々大真面目で冗談じゃないのかと思わず疑ってしまう事を言う。

なんだかまるでキュゥべえみたいじゃない。

マミは自分の頭の中に浮かんだ考えを慌てて打ち消す。

こいつとキュゥべえは全然違う。キュゥべえは私のお友達なんだから。

こいつのペースに乗せられてはダメ。

私にはこいつが人類にとって危険な存在であるか警戒し確認する義務がある。

こいつは友達なんかじゃない。だから今の所は情も何も湧いていないはず。

冷静に判断し、もしもの時は解決策を模索しなくてはならない。

大丈夫、私は何も乱されてなんかいないわ。今日も日常通りな一日だったはずよ。

しかしマミは気づいていなかった。

その日既にマミは自分がうとうと寝てしまったせいではあるとはいえ、

帰宅後入浴しその後にケーキと紅茶を飲む毎日の習慣と食事の順番を入れ替えていた事に。

今日の更新終わり

自分の腕が勝手に動き出すのは誰もが一度は夢みる妄想であるように思いますが、
寝ている間に家事が全部終わっているという空想も誰もが一度はすると思います。

マミさんチョロイ
まあ解決策が思いつかないからというのが大きいですが


結果的に命助けられたとはいえ感情のない異星生物をお友達とか言っちゃうくらいだし
あの年頃でいきなり一人になったらそりゃ誰かに縋りたくもなるわな

更新再開
一度、vsパラサイトの前まで書いて違和感バリバリだったので展開変えて書きなおしたから時間かかりました
今回The☆説明ってくらい露骨に説明の為の展開だけど許してください

>>406
すがる相手が人間を資源利用してる宇宙人(特にこのSS内では)か
環境保全の為人間を絶滅させるべく生まれてきたらしき新生物しかいない
マミさんの並はずれたぼっち感

〜☆

マミがぐっすり眠りに就いた後、

「それ」は一人物想いにふけっていた。マミの不思議な力についてだ。

マミからの証言、それと「それ」が自分でも本を読んだりなどして調べた結果、

マミの『力』は一般的な常識の埒外にある力の類だという事がわかった。

これは彼自分の身を守るのに大いに役立つ力だ。

何しろ寄生している「それ」にとって人間部分は普通弱点にしかならない。

しかしマミは傷ついた身体を自分の『力』で再生できて、

しかも自衛の手段まで備えている。

まだ現時点で一人も出会った事はないが、

おそらく世界のどこかに居るであろうと「それ」が考え、

実際世界中に散らばっている同胞達のほとんどはこの『力』を知らないはずだ。

もし彼らの誰かと万が一何らかの原因でいざこざを起こしてしまっても、

「それ」は一対一なら負ける気がしなかった。

先手をとれさえすれば負ける可能性はほぼ無い。

相手の知らない攻撃や回復の手段を有しているというのはかなりの強みだ。

脳を奪えなかったという失敗に目をつむり、

自身の生命の保存という点だけ考慮すれば、

マミの右胸に寄生したのは「それ」にとってかなり幸運な出来事だった。

一人暮らしであるが故に、誰かに自分の存在がばれにくい自由な生活が確保されているし、

マミが学生なおかげで自然色々な事について学べる機会が多い。

そして便利な『力』がある。

さらに例えば仮にマミの脳を奪ってしまって居たら、

「それ」はほぼ間違いなくそれほど遠くない未来に生命を落としていただろう。

ソウルジェムはあくまで魂の在りかであって、

普通、人間が外界からの刺激を知覚し思考するのは脳である。

脳を奪った「それ」は一般人と同じでキュゥべえを認識できない。

ソウルジェムの有効範囲外に出ればそこで人間部分が死ぬ。

浄化されず放置されたソウルジェムが汚れを溜め切ってしまえば、

ソウルジェムから魔女が生まれ抜け殻となった身体に残された「それ」は死ぬ。

たとえ何らかの要因で真実にたどり着き、

グリーフシードを集めようとしても、

結界の入り口を知覚する事が出来ない。

「それ」は死ぬ。

魔法少女に寄生して生き延びる唯一の術は脳を食らわずどこかに寄生するしかない。

最も魔法少女に寄生するデメリットが無い訳ではないし、

現時点で明らかになっている事実からして既に事態は深刻だった。

「それ」やマミにとって魔法少女の『力』がいくら便利であっても、

結局それは彼らにとって原理のわからぬ未知の力である。

現実で普通起こり得ない事象を引き起こす魔法という『力』。

ならばその力の源は何なのだろう。

マミはそれを魔法だからと無批判に受け入れたが、

「それ」は魔法をそのまま曖昧なままにして済ますのをよしとしなかった。

「それ」は考えた。魔法を使うとソウルジェムが濁る。

つまり魔法の源はソウルジェムのはずだ。

でもそうなると普通に日常生活を送るだけでも

ソウルジェムは徐々に濁っていくというのが問題になってくる。

マミによれば何か辛かったり悲しかった事があるとより濁りやすくなるらしい。

どうして魔法を使わなくてもソウルジェムは濁ってしまうのか?

わからない。情報が不足している。

マミはキュゥべえという存在に願い事を一度叶えて貰うという

『契約』を交わし魔法少女になったと言っていた。

この契約の内容がはっきりしない。

ソウルジェムが完全に濁ってしまえばどうなるのかとマミに聞いてみると、

彼女は二度と魔法が使えなくなると答えた。

キュゥべえがそう言っていたらしい。

ならばマミは普段の生活で無意識にどんな魔法を使っているというのだろう?

それにただ魔法が使えなくなるだけだとしたら、

かつて魔法少女だった女性が世の中に相当数居るはずなのだ。

彼女達は今何をしている?この問題はこれに限った話ではない。

どうして魔法少女に関する情報が色々調べてもここまで綺麗さっぱり見つからないのか。

皆自分の命は大切なはずだ。なるべく自分の生命を長らえさせようと努めるだろう。

魔法が使えなくなった魔法少女がそのまま生き残るとしたら、

かなりの数の元魔法少女と魔法少女が現在世の中に居るに違いない。

そしてその全員が揃いも揃って口を噤む?

そんな都合の良い話が本当に現実で起こり得るのだろうか。

魔法が使えなくなると魔法に関する記憶もすべて消去される?

わからない。

ただ一つわかるのは、

そのキュゥべえという存在が明らかに情報を小出しにしているという事実だけ。

普通に生きているだけでも絶対に消費せざる負えない物とは何だ?

マミ自身のエネルギー、生命力ではないだろうか。

もしかしたら魔法の元になっているのはマミの生命力なのかもしれない。

つまりソウルジェムが濁り切ってしまえば……。

魔法少女で居られなくなった者が皆死んでしまうという事なら

世の中に魔法少女についての存在が全く知られていないという事にも少しは納得がいく。

記憶の消去か、死か、はたまた別の何かか。

真実は別の所にあるが「それ」にとって重要なのはそこではなかった。

重要なのはソウルジェムが実際に濁りきる、

もしくはそれを近くで目撃するまで

どうなるのかいくら考えてもそれは所詮推測の域を出ないという事だ。

マミのソウルジェムを必要以上に濁らせる訳にはいかない。

そしてそれこそが「それ」にとって困難な今後の最重要課題だった。

「それ」はまだここ数日その様を観察しただけだが、

マミの戦い方には重大な欠陥がある。『燃費』の悪さだ。

おそらくマミは見滝原の様な魔女が豊富な場所以外で今の様に暮らしていたとしたら、

とっくにグリーフシード不足のせいでソウルジェムを完全に濁らせていただろう。

不足を解決する最も簡単な方法は使い魔を倒さずに育てればいい。

そうすればやがてグリーフシードを孕む魔女となる。

しかし「それ」は使い魔を倒す現在のマミの方針に反対するつもりはなく、

むしろ賛成する立場であった。

これ以上一日における魔女との死闘の回数が増えれば

マミは疲弊するばかりで却って肉体的、精神的によくない。

時には間引くことも必要だ。十分にグリーフシードはある。

問題となるのは手に入れたグリーフシードの使用量をどう節約するか。

例えばマミは一匹の魔女を倒すのに15の力で倒せるとして、

それにたどり着くまでの間に1から3で倒せる使い魔達に3から7の力を使ってしまう。

これでは無事に倒せるにしても非常に魔力がもったいない。

けれども「それ」が忠告した所で無意味だ。

マミは「それ」を信頼していない。

自分の戦い方について何か言われたとして気分を害すだけだろう。

「それ」は眼前の『資料』のページをめくった。

その資料はマミが魔法少女になってからずっと書き続けてきた戦いに関する記録だ。

そこから読み取れるのはいかに発生した魔女や使い魔を迅速に見つけて倒すかへの苦心、

そして「戦い方」への執念。

自身の魔法の性質についての研究、

戦った魔女の記録、

魔女や使い魔が居た場所と時間帯、

全てのページから魔女や使い魔を根絶しようとする彼女の意識が感じられる。

それはまさに彼女の『正義』の軌跡そのものだった。

一見そこには何も悪い所は見当たらないように見えるがそうでもない。

そこにはただ「現れる魔女や使い魔を倒すという意識しか」ないのだ。

その『正義』は一般人達の目に留まる事は無い。

だからこそマミは余計その形に執着する。より完璧を目指す。

自身の身を削れば削るほど、

自分がどれだけ『正義』に身を捧げているかが実感出来る。

それはマミにとって大きな満足を生むのと同時にとても危険な事だ。

自分を大切にする意識が足りない。

生き延びようと足掻く意志が薄弱である。

それはただでさえ死と隣り合わせであるマミを死へとより近付ける。

大ベテランであるマミを脅かす魔女は資料を見る限りここ最近ほとんど現れていないらしい。

けれどそういう魔女がマミの前にいつ現れるかなんてわかったものじゃない。

現れてしまえばその時マミの命運を決めるのは対応力、そして魔力の残量だ。

他にも例えば、魔女を近辺でしばしの間見かけなくなり、

使い魔ばかりが出現するようになったとして、

どうしてもグリーフシードが足りなくなってしまえば、

使い魔を養殖するか隣町などの魔法少女から借りる、又は奪うしかなくなる。

マミはその事をよしとしないだろう。

なるべくそうならないように努めたからといって

絶対そうならないという訳ではもちろんないが、

出来るだけそういう事態は避けられるように行動していかなくてはならない。

となるとやはり、より安全に長生きしようと思うなら

限界まで魔力を節約していく必要があった。

予想外の事態が起きてしまってからでは遅い。対策は事前に建てておくべきだ。

そうは言っても「それ」が強引にマミに自身の意見を押しつけることは出来ない。

下手に刺激してマミの精神を動揺させたり、

マミと敵対してしまうような事があれば本末転倒だ。

どうやったらマミに自然と戦い方の改善を要請できるほど

マミとの間に信頼関係を築く事が出来るだろうか。

「それ」は頭を悩ませたが

その問題が一日二日で解決するような物ではない事だけは確かだった。

今日の更新終わり
という訳で次回vsパラサイト

今回パラサイトは魔法少女に寄生するとヤバいっていう設定を提示しましたが
他の設定全部は使わずに忘れそうな予感
特にQB関係忘れたらヤバいんですがお披露目するのだいぶ先だから……
後現時点でQBが見えるパラサイトは一匹だけですね、はい


パラサイトは食った器官を模倣できるから、魔法少女の頭を食ったらそのまま再現できそうなものだが、そういう問題ではないのかな

物理的な模倣と精神的な素質はちがうんだろう
パラサイトが全て模倣出来るなら原作で感情やら愛情やらも模倣できてたんじゃないか

多分今日中にはキリのいいとこまで書いて投稿できると思います(駄目だったら明日)
それと書き始めてから気づいた

※グロ注意

寄生獣だから仕方ないです
グロを避けたら余りに味気なさすぎる
ボロができるだけ出ないように書かずに済む所は極限まで描写しないよう心がけてるんですが今回のとかはさすがに
こういう時は文章力の拙さが多少慰めになるかな
多分グロ苦手でも身がまえなくて大丈夫だと思います
そんな人がこれ読んでるのか?
それはともかく戦闘やら場面の描写のイメージが湧かなかったら原作読んでくださいごめんなさい


>>424
だいたい>>425が言ってくれた感じです
素質のある少女の脳とそれ以外の人間の脳は違うってのも面白そうですが
多分キュゥべえは魂の素質の有無で選別してるのではないでしょうか
だから魔法少女自身じゃないと認識出来ない
パラサイトに魂はないという(これでの)設定なので

それに普段は脳をそっくりそのまま真似てないですからね
これの中ではやろうと思えばできるくらいのつもりでやってますけどやる必要が無い
頭をのっとった後身体を動かせるのは疑似脳としての機能を果たしているからですが
脳をそっくりそのまま真似てたらろくに変形も出来やしない
考える筋肉の持ち腐れです

ただ主導権を渡す事を意識して脳の機能を真似ながら眠りについたら
魔法少女が身体を動かす事は可能くらいに今の所考えています
その思考の過程にただの脳として関わればキュゥべえを魔法少女の目を通して見る事は可能かもですが
それはあくまで夢の中でだろうといった感じ
つまりそこははあやふやできちんと考えてない

ただパラサイト側にそれに見合うメリットが中々ないし、
この場合ソウルジェムの機能やキュゥべえを知らないので無理
それにこの種を喰い殺せの命令を既にこいつらは受け取ってますから
おそらく人間と協力する事をよしとしないでしょうし
魔法少女側も普通納得しないと思います

再開
昨日速報が落ちたせいで今回の更新はちょっと長め
本当は今回で戦闘終わらせるつもりだったけど昨日書いてて飽きちゃった
今回いきなり話がドロドロしだします

〜☆

数日後、マミは「それ」と共に街中をパトロールをしていた。

ここ暫くずっとマミの頭を悩ませている問題がある。

近頃世間を騒がせている『ひき肉ミンチ殺人事件』についてだ。

その波は国内どころか国外にまで広がっており、

被害者は増加するばかりだというのに犯人の影も形も見当たらない。

確実に魔女一匹が起こす事件としてはその規模が大き過ぎた。

しかしたとえ魔女が関係していなかったとしても、

町の平和を脅かす存在を野放しにしておく訳にはいかない。

けれど解決しようにもその事件に関する手掛かりがどこにあるのか皆目見当がつかない。

ならばキュゥべえに聞けば何か情報をくれるかもとマミは考えてみたが、

キュゥべえは何やら曖昧な言葉を返すばかりだった。

今日も事件の手掛かりは見つかりそうにないわね、

そんな事を考えながらマミが足を止める。

人気のない場所に使い魔の結界を発見したマミであったが、

『ひき肉』の事で頭が一杯な彼女は多少注意力散漫といった様子であった。

それだけに胸元で突然「それ」があげた大声に酷く驚かされた。

「マミ!同種だ!同種が近くに居る!」

「えっ!?何!?同種!!?」

「初めてだがわかるぞ。脳波の様なものを感じる。ここから直線にして約300メートルだ」

同種、その言葉はマミをひどく動揺させた。

「それ」はマミの脳を奪おうとして失敗したからこそ右胸にいる。

だったら脳を奪うのに成功したであろう「それ」の仲間は……?

「ま、まずは近くの使い魔をどうにかしましょう。人命を優先すべきだわ」

マミがそそくさと結界を潜ろうとする。

しかし袖から顔を出した「それ」が近くの電信柱に巻きついて動こうとしない。

「ちょ、ちょっと何してるのよ!行くわよ!」

「駄目だ。ここで同種との対面を逃がせば次いつ遭遇出来るかわからない。

私も君も、私という存在がいったい何なのかより正確に把握する必要がある」

急遽行われた話し合いの末、

こっそり使い魔に気づかれぬよう結界の中を覗いて、

一般人が巻き込まれていない事が確認出来たら

ひとまず「それ」の同類の元へ向かう事で二人は合意した。

〜☆

「それ」の同種は普段人が立ち入らないであろう廃墟にいた。

発展目覚ましい見滝原市だったが、

開発ばかりが進んでいて町のはずれにはこういう寂れた光景が珍しくない。

「ふー。ふー。ふー」

マミは何度も深呼吸を繰り返す。

この建物に足を踏み入れればすぐに「それ」の同種の姿が視界に入ってくるはずだ。

大丈夫、だって私は日々魔女っていう怪物と戦ってるじゃない。

怖がってちゃダメ。怖がる必要なんてない。マミは必死で自分を鼓舞していた。

そしてマミが目を瞑りながらではあるが

意を決して建物に足を踏み入れた瞬間「それ」が呟いた。

「どうやら食事中らしいな」

「え?」


嫌な音がマミの耳をざわりざわりとくすぐる。




ぐじゅる……。ぐじゅる……。




ボリボリ、ガリ、ガリガリガリガリ。




その音がつい気になって、マミは不用意に目を開けてしまった。


無防備なマミの目に「食事」の様子がしっかりと映し出される。

「あっ……。あ……。ああっ……あぁ……」

マミは自分の目に映る光景に小さなうめき声を上げる事しか出来ない。

一瞬マミは地獄に足を踏み入れたのかと思った。

間違い無い。あれが本来の「それ」の完成系。私がなっていたかもしれない姿なんだ。

あの化け物の首から下は人間だなんて信じたくなかった。

「かれ」の人間の顔、頭にあたる部位は大きく前方へと引き伸ばされていて、

顔面の中心にあたる部分からそれぞれ八つに裂け、

その裂け目は側頭部にまで広がっている。

別れた八つの部分の内側には鋭利な牙が生えており、

それらで包み込むように獲物である人間の身体にかじりつき肉だけでなく骨ごと咀嚼する。

現在食事は上半身の四割方まで進んでいて、

いまだ食べ残され身体とかろうじて繋がっている右腕がだらりと下向きに垂れていた。

「かれ」と捕食されている人間どちらも血まみれである。

その血は彼らの足元を赤く濡らしていた。

「かれ」の長い舌が獲物の身体を滴る血を舐めとる。

「かれ」の口の中、といってもそれは頭部のほぼ全体であるが、

そこは一面人間の口の中と同じ綺麗な赤色をしていた。

そこに今新しく血の赤が混じる。



ぺちゃぺちゃ……。ぺちゃぺちゃ……。

「おっ、おっ、おええええええぇ」

たまらずマミが胃の内容物を地面に吐きだした。

食事に夢中だったらしい「かれ」もマミに気づいてマミの方に顔を向ける。

「……人間だと?」

「かれ」はおどろおどろしい「赤い花」が咲いている様に見えなくもない

食事用の形態をとるのをやめ、広げた「口」を一度閉じた。

完全に人間の顔の形に戻した訳ではないが、

それは「かれ」が黙ってそのまま食事を続けるという意思を無くした事を意味する。

「かれ」が食べかけの「肉」を地面に放り捨てた。

ドサリと音を立てて地面に転がる肉。

マミはその一部始終から目を離す事が出来ない。

ソウルジェムがじわりじわりと濁る。

そうこうしている内に「かれ」の顔に今度は縦の切れ目が数本走る。

攻撃態勢に移行するのだ。

変形の末「かれ」は左右に一本ずつ触手を伸ばす形態を選んだ。

触手の先端は人間の身体など容易く一瞬で両断可能なほど鋭く尖らせている。

「なるほど脳を乗っ取るのに失敗したのか、

無様だな。……しかしこいつは危険、危険だ」

「マミ!逃げろ!こいつはきみを殺す気だ!」

マミを促す「それ」の叫びがしっかり耳に届いているのに、

マミは足をガタガタ震わせ、目をカッと見開くばかりでその場から動こうとしない。

完全にパニック状態に陥っている。

当然「かれ」はマミの都合など考慮してくれない。

ゴムのように伸縮自在で強靭な触手の性能をフルに生かし、

刃物状の先端を二本それぞれ別角度から目にもとまらぬ速さでマミに向かって突き出した。

しかしその一撃を予測していた「それ」が

マミの右腕の袖から二股に分かれながら自身を伸ばし、

先端を硬化させて左右両方の攻撃を防ぐ。

ガキィンと金属音とは異なる衝突音が建物の中に響いた。

「マミ!何をしている急げ!死にたいのか!走れ!走るんだ!」

死にたいのか。その一言にマミはびくりと体を震わせ、

無我夢中で「かれ」に背を向け走り出した。

今彼女の脳内には死にたくないという本能と、

「かれ」に背を向け逃げる為に全力で走るという意識しかない。

けれどこの状況下においてはそれで十分だったしそれ以上はかえって余計だった。

「かれ」も戦闘形態をとるのをやめて

誰かに目撃されても大丈夫なよう人間の顔に戻し、

廃墟の外へ向かって駆け出しマミを追跡する。

普通だったら人間の身体的な潜在能力をぎりぎりまで引き出せる

「かれ」あるいは「それ」の同種に追いかけられ、

無事に人間が逃げ切るなんて事が起こるはずがない。

けれどマミは魔法少女である。

無意識のうちに自分に身体強化の魔法をかけその脚力を強化していた。

魔法少女だったおかげでマミはこの場を無事に生き延びる事が出来た。

もしマミがただの人間だったならば

戦う「それ」の足を引っ張りあっけなくここで死んでいただろう。

ただしその魔法の当然の代償として、

走れば走るだけ徐々にではあるがマミのソウルジェムが濁ってゆくのだった。

〜☆

「うぅっ……、うっ……、はぁ、はぁ、はぁ、うえぇええええぇ」

本日二度目の嘔吐。

一旦「かれ」と距離をとり状況が落ち着いてくると、

ただでさえ良くなかったマミの精神状態がさらに悪化した。

逃げている間は走る事だけを意識していればよかったが

状況が落ち着いてくればそうもいかない。

どうしても何か考えてしまう。

あの「食事」風景が目の裏にこびり付いて離れない。

赤、肉、血、口、赤、赤。

自分と同じ人間が何者かに捕食されている

その生々しい光景はマミにはとても耐えがたい物だった。

それにあそこまで露骨に見せられたら馬鹿にだってわかる。

あれが各地で起こっている『ひき肉ミンチ殺人事件』の真実なのだと。





つまりミンチにされた被害者は皆食べ……。

「げほっ、ごほっ、あぇ、うぁ、あぁ」

吐き気は幾らでもこみ上げるのにマミの口からは何も出てこない。

既に胃の中身を全て吐きだしてしまったのだ。

これ以上何かを吐き出すとしたらそれは胃液だろう。

無理もない。マミは今日これまで生きてきた中で一番恐ろしい状況を目にしてしまった。

確かにマミは今までに何度も散々な目にあってきている。

家族を事故で失い心が裂けるのではないかと思うほど悲しんだし、

それからずっと魔女という恐ろしい存在と命がけで闘ってきた。

だが結局の所マミは人間の「平凡な」死に様を多少見慣れているに過ぎない。

それに彼女は家族の死を受け入れた訳ではない。

目を背け続けているだけだ。

しかもマミは魔女や使い魔によって引き起こされる

どうしようもない現実からも意図的に目を背けていた。

マミが魔法少女として優秀であればあるだけ人々の被る被害は最小限となる。

しかしマミがどれだけ優秀だったとしても全ての人を救う事は出来ない。

多くの人の命を救い続ける事によって、

救う事が叶わず失われていった数少ない命の事を無理矢理にでも頭の片隅に追いやった。

そうするしかなかった。

そうしなければ次は自分が壊れてしまう。

見知らぬ誰かを守る為に必死で戦う事で、

今も誰かが必ずどこかで悲惨な目にあっている、

そういった現実、それに伴う無力感から目を背けていた。

その現実が今突然彼女の眼前に魔女とは別の最悪な形で突き付けられた。

私の知らない所で人がこんな風に無残に殺されていて、

それに対して私は何も出来なかったのだと。

そして成り行きとはいえマミはその場から背を向け逃げ出してしまった。

正義の魔法少女としては絶対にあってはならない行為。

その時点でマミは自分が唯一誇っていた自分自身の価値をどこかに無くしてしまった。

ならばマミはこれからどんな自分の価値にすがって生きていけばいいのだろう?

しかもマミにとって恐ろしいのはそれだけではない。

魔女は人の弱い心に付け入る。

そこには絶望を振り撒く明確な悪意がある。

だがあそこにあったのはただの食事。食うか食われるか、ただそれだけ。

悪意ですらない生存に必須な食欲という暴力に曝され無情にも食い散らかされる人間。

それをするのはかつて同じ人間であったはずの何かなのだ。

首から下はおそらく普通の人間と同じ。

パラサイトが飛来した日マミも一歩間違えればああなっていた。

となると自然マミの頭の中にはこういう考えが浮かんでくる。





もしあの時目を覚ましていなければ正義の魔法少女であるはずの私が人を食べ……?

「マミ、魔法少女の変身を一度解け」

マミは「それ」の言葉に大人しく従う。

こういう非常時の為にグリーフシードを必ず一個は持ち歩いている。

「マミ、ソウルジェムを宝石の形にしてくれないと浄化出来ないのだが」

これにもマミは素直に従う。

マミのソウルジェムの状態は手遅れになるぎりぎり手前といった所だった。

グリーフシードが汚れを吸う。

「どうして……。私はどうしていつも何も……」

マミのソウルジェムは一時ピカピカの状態にまで輝きを取り戻したが、又徐々に濁り始める。

これではきりが無いな。

「それ」はひとまず乱れたマミの精神をどうにかして落ち着かせることにした。

「先程の事はマミにはどうしようもなかった。

今は自分を責め落ち込んでいる場合ではない。

それより今は自分が生き延びる事を考えてくれ。

ヤツは脳が残っていて人間のままのきみに対して異常に敵意を抱いていた。

ヤツは必ず我々を追ってくるぞ」

生き延びる……ですって?

マミにはその言葉がひどく滑稽に聞こえた。

私が今まで努力してきた事は無意味だった。

私がどんなに頑張っても周りには苦しくて辛くて逃げ出したくなる事ばかりだ。

どうして私がこんな目に遭わなくてはならないの?

何者かに貪り食われる。

いったいどれ程の悪事を犯していたとしたら

あんな惨い結末が人としてふさわしい物だと言えるの?

もう疲れてしまった。

私なんてどうせ誰も必要としてくれない。

所詮私ごときには何も出来はしない。

いつまで経っても苦しかったり辛かったりする事は決してこの世界からなくならない。

私もあの時事故で家族と一緒に死んでしまえばよかったんだ。

そうすれば私は一人ぼっちが寂しくて何度も夜に枕を濡らさずに済んだ。

あの時何も出来なかった過去の自分を何度も嘆かずに済んだ。

誰にも心から必要とされない虚しさを意識せずに済んだ。

今こうして己の正義すらまともに果たせぬ自分自身の不甲斐なさに苦しまずに済んだ。

マミのソウルジェムがドロリと濁る。

「もう、良いのよ。私なんかどうせいなくなったって……放っておいてよ」

「マミ、そういう訳には……」

「何よ!あいつの首から下は全部人間なんでしょ!

だったら私があいつを殺したとしたらそれは人殺しと同じような物じゃない!嫌!嫌!嫌!」

「ヤツは人間ではない。私の同種だ。ヤツの首から下も人間ではない。

人間の形をしたただの生きた肉の塊だ」

「うるさいうるさい!どうせ私なんていなくても何も変わらないのよ!

だったらこのままあいつに殺されちゃえばいっそ楽になれて清々するわ!」

死への恐怖。マミをこれまで突き動かしてきた原動力の一つだが、

今それが麻痺してしまうほど

マミを怯えさせる恐怖がマミの心の中に渦巻いていた。

このまま生き続けることへの恐怖。

今を生き延びた所で誰からも必要とされないなら、

自分ですら生きる意味を見いだせないなら

それは無意味に苦しみを長引かせるだけではないのか?

その時「それ」がマミに簡潔に語りかけた。

「自暴自棄になるのはやめてくれ。マミに死なれては私が困る」

「え……?」

マミに死なれては私が困る。

その言葉は精神がボロボロになりもはや擦り切れる寸前だったマミを強く揺さぶった。

私が誰かに必要とされている?

マミは声を震わせながら「それ」に尋ねた。

「私が必要なの……?」

「当然だ。きみから供給される血液が無くては私は死んでしまう。

……きみと短い間だが共に暮らしてきて、

マミが人間を助けるという事に並々ならぬ思いを注いでいるのは良くわかった。

だがそれが可能なのはきみが生きていればこその話だ。

ここで全てを諦めてしまえばきみがこれ以上他の人間を助ける事はもう叶わなくなる。

それはマミにとっても不本意な事だろう?」

「それ」の言葉そのものにマミを説得する力は無かった。

けれど自分の存在が誰かの生命を支えているという事実はマミの胸を強く打った。

元から死にたい訳ではなかった。

ただ自分が生きていても良い理由が見つからなくなってしまった。

誰でもいいから自分を無条件に肯定して欲しかった。

それさえあればそれにしがみついてでも生きていたかった。

死にたくない。

それがマミの心からの願いだったのだから。

「私は生きていても良いの?」

藁にもすがる思いだった。

自分の存在を肯定できる要因は何一つ無かった。

だからすがった。

すがるしかなかった。

たとえ肯定してくれる相手が同じ人間でなかったとしても。

「繰り返すようだがマミが生きていてくれないと私は困る。

今現在きみの命はきみの為だけの命ではない。私の為の命でもあるのだから」

その言葉はマミを踏み止まらせるのに十分足る物であった。

思ったより短かった今日の更新終わり
え?なんでマミさん踏みとどまれたんですか?だって?
本編のソウルジェムが魔女を産むなら〜は友達だと思ってたキュゥべえに騙されてたのと
さやかが帰らぬ人になってしまった
自分が悪だと思って倒してた魔女が実はそれだけじゃなかったとか
色々な要素が絡みあっての事だと思っています

どちらにしてもマミさんのメンタルぎりぎりですけど


グロ描写も戦闘描写も難しいしお食事描写はもっと難しい
とりあえずこんな感じで大丈夫ですかね?

お食事描写しなきゃいけないのは予定ではあと一回だけ


>>1の作品を渋で見つけたぜ

やだ、ミギ乳さんまるでお母さんみたい

更新再開
寝る前に展開吟味というか先の文章考えるんですが
ここ数日ほむら転校後をつい考えちゃうせいでいざ書く時に中々進まないという現象が
>>458
ラインナップ見て分かる通り今まで基本まどほむしか書いてない
ここでの投稿の練習も兼ねて手直ししたのが全部SS速報にあるから
見るならSS速報かあやめ速報で見た方がいいです
ただほぼ全部、何かしらの実験的な奴なので見なくてもいいと思います
ある程度まともなのは和歌タイトルとお断りくらいかな?

書く前からただ面白そうだったという理由だけで書き始めたのはこれが初めてですね
だからこそ三人称地の文なんて使ってこんなめんどくさいの真面目にやってる訳です
まだアニメの一話にすら到達してないけど

>>460
ミギママはお母さん、お父さん、家政婦さん、友達、武器、相棒
などあらゆる仕事をこなすオールマイティな仕事人です
自堕落な人間の夢と希望が詰まっています

〜☆

マミと「それ」は使い魔の結界の前に戻って来ていた。

「本当にここにいればあいつは来るの?」

訝しげに尋ねるマミに「それ」は答える。

「絶対とは言い切れないがかなり高い確率だと思う。

あの廃墟からここまでは約300メートル、

私とヤツが互いを探知出来る範囲にある。

ヤツはおそらく一度あそこに戻るはずだ。

遠くを捜索するほど我々に関する手掛かりはないし

あそこにはまだ食べ残しがある」

「それ」の食べ残しという言い草にマミは顔をしかめた。

しかし今はそれどころではない。

「戦わなくちゃ……駄目なのよね」

「きみが戦わなくては我々が殺されるだけだ」

「……あいつと戦わなくちゃいけないっていうのは私にも頭ではわかってる。

でもそれでもやっぱり私には人間だった者を殺すのは無理かもしれない」

「大丈夫。きみが人の死、人を殺すという事について

非常に強い嫌悪感を抱いているのは私も理解している。

だから直接手を下すのは私がやるから心配いらない。

君は奴の足元に銃弾を撃ち込み、

銃痕からのリボンで敵の両足を引っ張りバランスを崩してくれさえすればいい」

「……ごめんなさい」

いったい何に対しての謝罪であるのか。

それはマミ本人にも良くわからなかった。

〜☆

「かれ」がマミ達を見つけ出すのを諦め廃墟に戻ると、

直線距離で約300メートル先に同種の出す信号を感知した。

「かれら」にとって信号の差異で

相手が「誰」なのか個別に識別するのは至難の業である。

それでも今この状況で付近をうろついている

同種の存在など「一人」しか思いつかなかった。

「かれ」が町を駆ける。

たどり着いたのはまるで人気がなく、

視界の開けたまっすぐ長い路地裏。

誘われていたという訳か。

冷静に「かれ」はそう状況を判断したが駆ける足を止める事はない。

ここで奴を殺す。

人間の脳が残った存在、奴は敵だ。危険な存在だ。

「かれ」の目にマミの姿が映る。

先程とは何故か服装が違う。

だがそれ以上に「かれ」を驚かせたのはその手に握られていたマスケット銃だった。

そんな馬鹿な、

日本であの年齢の子供が本物の銃を入手できる機会などどこにある?

はったりか?一瞬足を止めそうになるがそれでも足を止めない。

どちらにせよ叩き落とす。

銃口の照準がこちらの心臓を向いていない。

さしずめ狙っているのは肩先といったところか。

肩に一発何かを当てて怯ませようという魂胆なのだろう。

「かれ」はそう決めつけた。

両者の距離が近づく。

何故この距離で撃たない。

奴の技量が酷いという事だろうか?銃の性能が悪いのか?

それとも私を殺す事を躊躇っているのか?

もしそうだとしたらこの期に及んで相手を殺す事を躊躇うなど愚かにも程がある。

それにたとえ仮にあの銃が本物だとしても

一発くらいなら受けてそのまま押し通れるはずだ。

「かれ」は走りながら戦闘形態に移行する。

するとそれとほぼ同時にマミも「かれ」の方へと向かい走り出した。

マミと「かれ」の距離が急速に縮まる。

「かれ」の触手の射程圏内にマミが入リかけたその瞬間「それ」が叫んだ。

「撃て!」

バァン!

弾丸が打ち出された音と共に「かれ」の足元に穴が開く。

走りながら撃った為に手元が狂ったのだろう、「かれ」はそう思った。

それよりも今は前だ。

触手の射程内にマミが入る。

「かれ」が触手を伸ばした瞬間、

「かれ」の頭の中には

もう通り過ぎた地面に空けられた穴の存在の事など残ってはいない。

あったのは前に居る敵の事だけ。

あの銃をマミの手から叩き落とす事、

「それ」の防御を掻い潜る事、

そしてマミに致命傷を負わせる事。

その時「かれ」の後方、

マミのマスケット銃が地に穿った穴から不意にリボンが伸びる。

リボンは勢いよく「かれ」の両足を絡めとり

そのまま強い力で「かれ」を穴の方へと引きずった。

この状況下で突然後ろから足をとられ引っ張られるなんて夢にも思っていなかった

「かれ」は見事に転倒しズルズルとリボンに引かれていく。

「かれ」が突然の事態に対処できずじたばたもがくが

その間もマミは走るのを止めない。

「かれ」がうろたえ引きずられたのはそれほど長い時間ではなかったが、

この戦いにおいてそれは致命的な時間の浪費だった。

「それ」の一刀が「かれ」を肉体ごと縦に両断する。

美しい切断面から体内の臓器がボトリとこぼれ、露出し外気に触れた。

咄嗟にマミはその惨状から目を背ける。

「かれ」はその後も決死の抵抗を続けたが、

結局何も出来ぬまま数分も経たぬ内にうめき声をあげ「かれ」は絶命した。

〜☆

マミが「かれ」の遺体に近づく。

「終わったわね……」

そうポツリとつぶやくマミ。

「終わってなどいない。私が何のために戦いの場にここを選んだと思っている」

え?という顔をしてマミが胸元の「それ」の方へと顔を向けた。

「後始末さ。このままでは死体が残る。

ヤツの死骸から私という生物の存在が人間側にばれるのは看過できない。

使い魔の結界に死体を放り込んで、

使い魔を全て倒し結界を閉じる。こうすれば今日起きた事は全て闇の中だ。

それを知る者はマミと私しか残らない」

「そ、そんな……で、でも」

ぞっとした。

これが生まれて初めて出会えた

同種を殺したばかりの者が真っ先に言う言葉なのだろうか?

マミは急に自分が今血も涙も無い昆虫の類と話をしているような気がした。

「いいか、マミ。これはもう既にただの肉だ。

きみが死についてどのような考えを抱いているかは知らないが、

我々は現在、

両者の生存という明確な目的の為共に行動している。

それを目指す中で、

見知らぬ誰かに私という生き物の情報を握られるのはデメリットしかないのだ。

敵の死んだ後までわざわざ配慮してやれるほどのゆとりは今ない。わかってくれ」

敵。その言葉はマミを少し安堵させた。

何故ならその言葉は「それ」はマミの味方であるという事も同時に示しているのだから。

「もう一仕事だ。帰ったら家事やらの雑事は私がしてやるから元気を出せ」

「はぁ……」

容赦なく「それ」が結界の中にブツを放り込んでいくのを余所に、

そちらを見ないで済むよう全く別の方角に目を凝らしながら、

これから「それ」の事を理解し打ち解けていくのは中々骨が折れそうだとマミは思った。

〜☆

マミが帰宅した。結界内の使い魔を無事に全て倒した後、

きちんと一日分のパトロールを終わらせてきたが、

あの後他に使い魔や魔女が見当たらなかったのは

心身ともに疲れ切っていたマミにとって幸いだった。

ようやく家に帰って来られたと意識すると、

それまでマミの精神力によって抑えつけられていた疲れがどっと噴出した。

玄関先でふらふら倒れそうになる。

「疲労、特に精神的な物が酷い。

私が家事などを済ませている間一度眠った方がいい」

「そう……させて、もらっちゃおうかな」

家に入り、そのまま靴を適当に脱ぎ捨てた所までしかマミには確かな記憶がない。

ほとんど夢遊病者の様な有様でベッドに倒れ込んだ。

〜☆

マミは夢を見ていた。

長い長い道を歩く夢。

最初は両親が隣を歩いていた。

手を繋ぎ三人仲良く歩く。

真ん中にマミがいる。

そんな時間がいつまでも続くと思っていた。

しかしふとした拍子に両親はマミの手を離し脇道に逸れてしまった。

駄目よ。そっちに行っちゃ。

キキィ、ドン。

「誰か……。誰でもいいから……。私を助けて……」

それでもマミは一人泣きながら歩き続けた。

それからは白い妖精さんが周りをうろうろする様になった。

私を心配してくれるのかな?

一人で心細かったマミは何度もその妖精を捕まえようと試みた。

しかしいつも妖精はマミの手をすり抜ける。

いつしかマミは妖精を捕まえる事を半ば諦める様になった。

色々な人達がマミが道を歩くのを遠く離れた道の外側から眺めている。

時には道の中に入ってこようとする物好きな人達もいた。

けれどそれをマミは拒んだ。

私の歩く道に無関係な人達を巻き込む訳にはいかない。

ある時マミは赤毛の少女が後ろを歩いている事に気付いた。

二人は手を繋いで歩きだした。

もう絶対にこの手を離すものか。

一人は怖い。

語りかけても帰ってくるのは静寂だけ。

あんな寂しい思いをするのは二度とごめんだ。

それにマミには自信があった。

今の私は昔の何も出来なかった私とは違う。

今の私は正しい。

今の私には力がある。

きっと私の事を彼女はわかってくれる。

きっと私の事を彼女は必要としてくれる。

きっと私達ならワルプルギスの夜だって……。

突如赤毛の少女が燃え上がった。

絶叫をあげマミの手を振り払い、脇道へ逸れようとする赤毛の子。

駄目よ。そっちに行っちゃ。

マミは彼女を無理やりリボンで拘束しようとする。

しかし少女は手に持っていた槍で迫り来るリボンを切り裂きどこか遠くへ去って行った。

また一人ぼっちになった。

それでもマミは歩みを止める訳にはいかなかった。

ここで足を止めてしまえばもう二度と歩き出せなくなる。

私がここで歩くのをやめれば両親の一生は結局何も生み出さなかったという事になる。

そんなのはごめんだ。

二人の命は私という存在を通して現世とまだ繋がっている。

すべてを投げ出す事は二人をもう一度見殺しにする事と同じだ。

それにマミ本人が一番必要としていた。

全ての悪を薙ぎ払う正義を。

全ての弱者を救済する正義を。

全ての正義すらも屈服させる真実の正義を。

そんな存在はこの世に一人だっていない。

そんなこと誰にも出来はしない。

そんなのおかしい。

そんなの絶対間違ってる。

ならば私がならなくちゃ。

だから歩いた。

泣きながら、

躓きながら、

挫けながら、

喚きながら、

足を引きずってでも、

たとえ這いつくばってでも。

けれど悪戦苦闘の末ついにその道は断たれた。

すべてを投げ出してしまった。

絶望した。

歩くのをやめてしまった。

もう駄目だ。

怖いのも辛いのも苦しいのももうたくさんだ。

「誰か……。誰でもいいから……。私を助けて……」

一人その場にうずくまるマミ。

全てが終わろうとしていた。

そして絶望がマミの足を掴み取ろうとしたまさにその瞬間、誰かがマミに語りかけた。





      「自暴自棄になるのはやめてくれ。マミに死なれては私が困る」




前方から差し伸ばされる手。

マミは半ば無意識にその手をとった。

マミが顔をあげる。




      「あなたのお名前は……?」


〜☆

マミが目を覚ました。

お腹がぐぅと鳴る。

顔を赤く染めながら周囲の状況の把握に努めると、

部屋中にいい匂いが漂っていた。

空腹で目が覚めたらしい。

マミはその事を非常に恥じた。

「マミ、目を覚ましたか。

きみの体調を考慮して今日はたまご粥を作ってみたぞ」

たまご粥……?

マミは首をかしげた。

そんなレシピを「それ」に教えた覚えはない。

「どうやって作ったの?私あなたにたまご粥なんて教えてないわよね?」

「料理本に消化に良い食べ物としてのっていたからその通りに作ってみた。

口に合わなかったら残してくれて構わない」

家事スキルを「それ」に追い抜かれるのも

そう遠い未来ではないのかもしれない。

マミはそう思った。

身体をベッドから起こしテーブルの前に座る。

さて、食事にしようか、そんな中マミがポツリと呟いた。

「……あなたの名前、どうしましょうか?」

「名前?」

「ええ、いつまでも名前が無いままだと呼ぶ時に不便だわ」

とびっきりカッコいい名前を考えなくちゃ、

内心そう息巻くマミだったが「それ」は簡潔にこう返した。

「ならミギーで」

「え?」

「右胸を食って育ったからミギー」

「そ、そう……」

そんな名前で本当にいいのだろうか?

マミは少し悩んだが本人がそう言うならそう呼ぶのが一番だろう、

そう考え納得した。

「じゃあミギー、いただきます」

「めしあがれ」

マミがたまご粥を口に運ぶ。

なんというか何の変哲もないたまご粥だった。

〜☆

約一ヶ月後、マミは学校でクラスメイトと会話していた。

今は朝のホームルーム前だ。

これぞ日常の一風景、そんな穏やかで平和な時間。

その時右の脇腹がトントントンと三度叩かれた。

マミとミギーの間で決められた有事の際のサインだ。

マミがクラスメイトとの会話を打ち切り、一時廊下に出る。

そしてこっそり小さく首元まで顔を出したミギーと小声で会話する。

「どうしたの?」

「今、私の仲間が校舎の中に入って来た」

「なんですって?」

マミの声のボリュームは変わらない。

それでもその声には冷徹な調子が籠った。

あれからマミとミギーは何匹か『ミギーの仲間』を倒している。

倒したくはない。

しかしそれらは町の人々の平和を脅かす存在、

絶対に許す訳にはいかなかった。

「どうする?相手はまだ我々に敵意を抱いていない。

おそらくマミが脳を残した人間のままである事に気づいていないのだろう。

倒すなら先手必勝だぞ」

「休み時間に一度様子を見に行きましょう。

いくらなんでもこんな人目だらけの場所で騒ぎを起こすほど相手も馬鹿ではないはずよ」

「放課後まで待つのは?」

「どうせどっちでも一緒よ。

私が魔法少女である事さえ知られていなければやりようはいくらでもあるわ。

それより相手がどういう奴なのかが気になる」

「マミは中々好奇心旺盛で好戦的だな」

「放っておいてちょうだい」

痛い所を突かれマミは顔をしかめた。

ミギーに任せれば敵の捜索は可能な事はわかっていても、

それでも自分の目で敵を先に視認しなければどうにも落ちつかなかった。

マミが教室に戻る。

そして真剣に授業を受ける為、頭の中を切り替えた。

今日の更新終わり

寄生獣七不思議のひとつ(私が勝手に言ってるだけ)
こっちに来いよとミギーを勧誘し殺されたパラサイトの死体はどうなったのか
田村玲子さんの三匹に襲われた際の反応を見る限り
死後ちょっと時間が経てば寄生細胞は死滅して人に見られたりしても問題無くなるようですが、
あの死体を新一とミギーはどうしたのか
まさか放っておいてそのまま帰ったのでしょうか?

それはともかく魔法少女とパラサイトは良く似ていると思います
片方は人間を本能の赴くまま直接食べる
片方は魔法少女として生き残る為に魔女を必要とする
魔女は人を殺す
つまり人が死ななければ魔法少女は生きられない

ただしパラサイトは人を食べなくても生きて行けるけど
魔法少女は必ずどこかで人が死ななければ生きていけない
それに魔法少女も生身の人間とはもはや別の存在ですし

という訳でマミの行く先は前途多難ですがお付き合いください
そろそろほむら転校してくる頃です
書き始める前はほむら登場までに500レスかかると思ってなかった

更新再開
マミさんの必殺技ネームはイタリア語ですが
ペットやその他にどういう名前をつけるかはよく分からない
……名前なんてどうでもいいんですよ、多分


流れとしては大体原作どおりなので許して下さい

〜☆

「あの車椅子に座っている奴がそうだ」

休み時間、

ミギーに案内されるまま「仲間」の居る場所へ向かうとそこは二年生の教室だった。

教室内にミギーの言う条件に当てはまる人間を探すと確かに居た。

というより一人だけが普通の椅子ではなく

移動可能な車椅子に座っているせいでとても目立っている。

「あの男の子が……」

普通の人と比べ外見において変わった所はどこにも見受けられない。

隣に座っている少女と何やら話をしている。

それは日常的なごく当たり前の一風景だった。

マミはかつて人間だっただろう頃の彼を想い胸を痛めた。

しかしミギーがマミの予想に反する事を口にする。

「あいつ人間としての脳が残っているな」

「え?」

「我々と同じ境遇という訳だ。あちらの場合は失敗して左腕に寄生したようだが」

「え、ええ?」

混乱するマミだったがミギーは冷静なままだった。

二人だけの話を終えたらしく、

問題の少年の車椅子を押しながら

彼の話相手だった少女がマミの方に歩いてくる。

そして廊下に立ち教室を覗き込んでいたマミと

少年を向かい合わせる形になる位置に立つ。

「初めまして、僕の名前は上条恭介です」

そういって椅子の上からにこやかに右手を差し出す上条、

ぎこちないながらもマミはその手をとった。

「え、ええっと……、と、巴マミですはじめまして」

その時車椅子をここまで押してきた少女が上条の隣に立った。

「そしてこっちが美樹さやか、僕の協力者です」

「は、はじめまして」

緊張した面持ちでマミを見つめるさやか。

「は、はじめまして」

マミが挨拶を返す。

一学年上なはずなのにマミもさやかと同じくらい緊張している。

しばし三人の間に気まずい無言の時間が流れた。

そんな沈黙をまず破ったのは上条だった。

「こんな所で話すには色々と内容がアレですから、放課後どこか別の場所で話しませんか?」

「ええ、わかりました。じゃあそういう事なら放課後私の家に来て貰えますか?」

上条の言葉にマミは即座にそう提案する。

どうやら脳を乗っ取られていないらしい事はわかった。

けれど上条がどういう人間かはまだわからない。

どうせこうやって顔を合わせた以上身元は嫌でもばれる。

ならばせめて話をするのは自分が勝手を知っている場所でありたい。

マミの提案にはそういう魂胆があった。

上条が頷く。

「わかりました。でも当然巴さんの家の場所がわからないので、

放課後家まで連れて行って貰って良いですよね?」

「じゃあ車椅子を私が押すって事……」

「ああ、それは大丈夫です。さやかに押してもらいますので」

「で、でもこの話を他の人に聞かせる訳には……」

チラチラとマミがさやかの方に顔を向ける。

さやかも何故かその視線から自分の目線を外し下や上ばかり見ている。

「ああ、大丈夫です。さやかは僕の左腕について全部知っています。

さっきも言いましたが彼女は僕の協力者なんです」

全部知っている?ミギーの仲間が誰かに存在を知られる様な危険を冒したというの?

もしそうだとしたらきっとこの「二人」は相当の変わり種ね。

自分達の事を棚にあげマミはそう思った。

〜☆

放課後、

マミの家に着くまでの間に三人は当たり障りのない会話のキャッチボールを繰り返し、

そして結構打ち解けるのに成功していた。

例えば交通事故が原因の怪我で上条はしばらく学校を休んでいて、

今日復学した為マミとこうして接触する事になった話などをした。

そして何事もなく無事マミの家に到着した後、

せっかくのお客様なのでマミが紅茶とケーキを振る舞う。

「ひゃー。マミさんこのケーキめちゃうまっすね!」

「さやか、行儀が悪いよ」

マミの家で出されたケーキの思いがけないおいしさに感激するさやかをたしなめる上条。

それを受け目に見えてシュンとしてしまったさやかを見てマミはつい笑ってしまった。

「あー!なに笑ってるんですかマミさん!」

「ご、ごめんね、ちょっとおかしくって」

声のボリュームを多少大にするさやかだったが

もちろんその声に怒りの感情は込められていない。

ただのちょっとしたコミュニケーションだ。

その時マミの右胸がもぞもぞうごめいた。さやかがビクリとのけぞる。

「うわっ!」

「ちょ、ちょっとミギー!」

ニョロリとマミの首元からミギーが首?を伸ばす。

「十分に待った。そろそろ話とやらを始めてくれ」

すると今度は上条の左腕の手の甲に目玉と口が浮き上がった。

「全くだ。交流を深めるのは後にしてさっさと情報交換しようじゃないか」

「マ、マミさんは右胸なんですね」

さやかの顔が若干引きつっている。自然マミの顔も引きつった。

「ええ、ちょっと色々あってね……」

ミギーとヒダリーが今後の話の段取りについて話している。

「まずは両方の今までの経緯からといこうか。どちらから先に話す?」

「そちらからお願いして良いだろうか?

ただしこちらは右胸に寄生した後の経緯はあまり詳しく話せないが」

「……わかった」

そんな二人の会話をよそにマミ達も勝手に別の話をしていた。

「そういえばさっき巴さんと初めて会った時

どうしてさやかはあんなに萎縮していたんだい?

誰とでもすぐ仲良くなれるのはさやかの特技じゃないか」

「いや、だって、マミさんってボン、キュッ、ボーンって感じでしょ?

見るからに大人の女性の雰囲気があって、

美人でしかも先輩だったからどういう風に接していいのか分からなくなっちゃって……」

「や、やめて!恥ずかしいからやめて!」

顔を真っ赤にしながら手で覆うマミ。

頭をポリポリと掻くさやか。

何を考えてるのかわからない表情を浮かべ座る上条。

二人だけで話を進めようとするミギーとヒダリー。

まさにカオスとしか言いようのない空間がそこに形成されていた。

〜☆

互いに色々な話をした。

上条達は自分達の寄生の経緯とそれからを大雑把に説明した。

ただしどうやって病院を退院したかなどのごたごたについては大半を省いた。

マミ達も寄生の経緯などを話したが、魔法少女の事に触れない様に話をした為、

どうしても上条達より話が曖昧になってしまう。

その代わり、上条達の知らなかった巷を騒がせている

『ひき肉ミンチ殺人事件』についての真相を明かした。

そしてさやかに注意を促す。

絶対に一人で人気のない所を出歩いたりしないようにと。

マミは自分が全てを包み隠さず話せない事から

二人がそれをどう思うかを気にしたが、

二人は別にその事を重要視しなかった。

事情を全部話せない私の事信じてくれるの?

そう問いかけるマミに二人は口を揃え答えた。

全部聞かなくても、今まで短い時間ではあるけど

一緒に話をしてマミさんが悪い人じゃない事は

わかりますから気にしないでください。

悪い人じゃない。

その評価はマミにとってニコリとしてしまうくらい嬉しい物だったが

同時に苦々しい言葉でもあった。

かつての弟子、

己の願いから全てを失いこれからは自分の為に生きるとマミの元を去った彼女、

佐倉杏子。

人としての道を踏み外した彼女の話は今でもマミの耳に時々入る。

使い魔にわざと人を襲わせるようなことはしてないようだが、

魔女以外を積極的に倒しはせず使い魔達が育ち魔女になるのを待つ良くいるタイプの魔法少女。

それだけではなく銀行のATMを破壊したりなど数々の悪事、

人を直接傷つけない様々な事に魔法の力を利用し今日もたくましく生きているらしい。

マミの弟子であった頃とは違い、

今となっては彼女もベテランと呼ばれる程長い間魔法少女をやっている。

彼女の姿はもう長らく見ていない、

それでもマミは断言できた、彼女は絶対に悪い子ではない。

それだけにマミは知っていた。

悪い人ばかりが悪い事をする訳ではない。

人柄だけで相手を判断するのは愚かだ。

力、それをどう用いるかでその人の立ち位置は目まぐるしく変わる。

だからこそマミは最初上条の事を警戒した。

彼が良い人かどうかわからなかったし、

たとえ良い人だったとしても突然手に入れた力は人を誤った方向に進めてしまいがちだ。

色々話をした今ではある程度までは彼らを信頼できていたが、

それでも完全に信じきることはできない。人は時間と共に変わる物だからだ。

そしてこの心構えこそが上条やさやか一般人と

自分との間にある越えられない「壁」なのだとわかっていた。

もし私が誰かを本当に信じられるなんて事があるとするなら

その相手はきっと『魔法少女』だ。何故なら私もまた魔法少女だから。

誰かを完璧に理解し身を任せる事ができるとしたら

それはその相手と自分が完全に同じ境遇にいる時だけ。

それも契約前から魔法少女について教えてあげられるような事があるともっと良い。

マミは魔法少女という物についてこう考える。

人間誰しも奇跡にすがりたくなる事はある。

そして魔法少女になれば奇跡が一つその人の元へもたらされる。

まるで魔法少女になる事にはメリットしかないみたいだ。

だけど現実の魔法少女はそんなに甘い物じゃない。

魔法少女になるというのは恋や友達に勉強、

そんな当たり前の物と決別し、恐ろしい戦いに自ら身を捧げる事なのだ。

本当だったら魔法少女になるなんて百害あって一利なし、

願い事が一つ叶う事を考慮しても割に合わない事なのかもしれない。

絶対にその場の勢いでなって良い類の物ではない。

けれどマミは知っていた。魂を揺さぶる渇望を。

生きていたい。自分の正義を成し遂げたい、

一人ではいたくない、誰か私を見て、

どれもマミの心からの望みだ。

自分を焼き尽くさんばかりに己が身を熱く恋い焦す滾る思い。

本当に心の底から叶えたい願い。

それが叶わない事がどれほど恐ろしい事なのかをマミは知っていた。

それは自分の全てを賭けるに値するものだ。

自分の全てを賭けてもなお後悔しない望みを叶えたならば、

きっとどんなに辛い事があっても歩いて行ける。

何故ならマミ自身があの時仕方なかったとはいえ、

魔法少女として契約し今をきちんと生きていけているのだから。

自分が今この瞬間にたとえどんなに辛く苦しくても立って居られる事、

これがマミにとっては証明だった。

人の思いが未来を切り開く。

もしそうでなかったとしたらそんなの間違ってる。

何年も魔法少女を続けてきた巴マミだからこその矜持、

譲れない思いがそこにあった。

だからこそ願い事を空費して欲しくない。

未来の後輩には何が自分の本当の望みなのかしっかりと見極めて欲しい。

もう一度願いを叶えるチャンスがあるとしたらマミは両親を生き返らせる事を祈るだろう。

だけどそのチャンスはもうない。

後戻りはできない。

今ある物でどうにかするしかないのだ。

マミの魔法少女についての考え方はこのように、

一見とても厳しい目で見つめている様で、ちょっとした希望の射す隙間がある。

丁度人一人、あるいはマミ自身が通れる程度の隙間。

しかしその隙間を絶えず塞ぐ者がいる。

『赤い幽霊』がそこに立っている。

彼女は自身の心からの望みを叶えた。

ならばどうしてあんな目に遭ってしまったというの?

それに対してマミはこう考える。

それは道を踏み間違えたからだ。

どこで踏み違えたのかは私にもわからない。

けれど正しい道を歩んでさえいれば大丈夫。

今度は私も間違えない。

あんな事はもう二度と……。

もう二度と……。

〜☆

「何故このさやかという少女に自分の存在をばらす事を承諾したのか、

どういう経緯があったにせよ私にはそれが理解できない」

物想いに耽るマミの意識をミギーの声が突然現実に引き戻した。

ミギーとヒダリーが依然話し合いを続けていた。

「キョウスケがさやかを素晴らしい人間だとあまりにしつこく述べるものだから、

果たしてどんな奴なのか気になったのだ。たいした心酔具合だったよ。

話だけ聞いていたら歴史上の聖人でも出てくるのかと勘違いするくらいだ。

まあ実際会ってみたらさやかだったわけだが」

「ちょっとどういう意味よ」

さやかが抗議の声をあげる。

しかしそれを気にも留めず釈然としない様子でミギーが問いを続ける。

「興味が湧いた?なおさら納得できないな。

我々の存在を誰かに知られるのというのは、

自分の生命を脅かすリスクがあまりに高すぎる。

他に何か方法は模索できなかったのか?」

ヒダリーは少し考え込むそぶりを見せたがそれでもしっかりとした口調で返答した。

「なるほど、あったかもわからない。

だがキョウスケの足の状態から出来る行動が限られていたのは事実だ。

それに興味関心という物が

キミには自己の生存という目的以上の行動の理由にはならないのだろうが

私にはなりうる。

キミは人間らしく考えてみた事はあるか?

我々、いや、私はなぜ生まれてきたのか。

あるいは自分はどこから来てどこへ行くのかという事をだ」

「ふーむ」

このヒダリーの返事にミギーは口を閉ざし何かを深く考え込んでしまった。

ヒダリーの言葉を受け考えに耽ったのは人間側である他の三人も同じだった。

何故彼らは生まれてきた?

何故これ程の超生物が人に寄生しなければ生きていけない?

何故人を食らう?

いつまでも続くかと思われた長いその静寂を全く別の切り口で破ったのはさやかだった。

「……ヒダリーはいろんな物の外見、質感をカンペキに真似るよね。

だったら普段のミギーってマミさんのおっぱいそのものの柔らかさなの?」

「そうだが」

肯定するミギー。今更当然の事実だった。

もちろんさやかにとってもそれは確かにわかりきった事実ではあったが、

一度意識してしまうとその事はさやかを悩みの坩堝へと放り込んだ。

マミの中学三年生としてはどう考えても規格外なあのバストサイズ。

なのに右胸と左胸ではそれは事実上別物なのだ。

片方は本物、正真正銘のマミの胸。純国産的な何か。いわゆる未加工物。

もう片方はミギーが完璧に擬態した胸。

職人技が光る食品サンプルという訳ではないが、

少なくともカニといまだかつてない技術で完璧にカニの風味を再現した

カニカマくらいの違いはある。

昨今色々と整形の是非などが騒がれる中でこれは凄く重要な事なのではないか、

贋作が本物に追いついた場合それはどう扱えばいいのか。

大体こんな感じの事がさやかの興味を著しくそそった。

一度気になってしまうととことん追求しなければ止まれないのがさやかの性分である。

どう扱えば良いかわからないどころか、

実際のミギーが擬態した胸がどういう感じなのかよくわからない。

ならば触ってみるしかないじゃないか。

さやかはそう決断した。

「マミさん!普段の右胸、いえ、ミギーを触らせてください!」

「ええっ!?」

さやかのしょうもない要求に最初は渋っていたマミだったが

さやかのしつこさについに根負けして、

直接私が触らせて貰うのはマミさんの胸じゃなくてミギーだし、

という微妙にわけのわからない理屈に押し切られる形で結局ミギーを触られるのを承諾した。

「そ、それでは失礼します」

特に断る理由のないミギーは

いつも通りの普段の胸の姿に自身を変形させる。

さやかがマミの前にかがみ込む体勢になり左手をそっと伸ばす。

ゆったりとしてなおかつ断固とした意思を感じさせる

その動きにマミと上条はゴクリと喉を鳴らした。

いざミギーにさやかの手が触れようとしたその瞬間、

さやかの脳裏に稲妻が走った様な衝撃が走る。

私、マミさんの本物のおっぱいの感触を知らない……。

これではミギーを触っても本物がどういうものかわかっていない以上、

ミギーを触る事に何の意味もない。

考えろ、考えるんだ。左胸を今から揉ませてくださいなんて言う事は不可能だ。

一回だけ、一回だけと辛抱強く頼み込んでの泣きの一回。

今この瞬間の勢いを逃したらマミさんは恥ずかしがってもう触らせてくれないはずだ。

自分のを後から触ってみた所でそれでは大きさが足りない。

それじゃせっかく頼み込んだ意味がない。

考えろ……。考えろ……。

その時、さやかに天啓が下る。

そうか!私にあるのは左手だけじゃない!両手を使えば良いのか!

先程、私が触らせて貰うのはマミさんの胸じゃなくてミギーだし、

と口にした事を都合よく忘れさやかが

優しい手つきで両手をマミの左右の胸にのせ揉みしだく。

「きゃああああああああああああああああああ!」

マミの悲痛な叫びが

幸いきちんとした防音対策が施されている室中に響き渡った。

今日の更新終わり
何か内部サーバーエラーらしいけど多分投稿できてるでしょ、うん

上条じゃなくて島田秀雄意識するかなーと思ったら普通にばれた
ただ今日の途中からの展開の変化は予想付かなかったと思います
書いてる私がここまで途中深刻な空気にするつもりなかったんですから当然です

杏子をこんだけ登場させてる事から分かるでしょうけどもちろん杏子も出します
だいたいアニメ本編くらいの時期、シャルロッテ後なので
現実時間でいつの話になるかは分かりません
一カ月じゃ済まないでしょうね

ミギーとヒダリーの問答なんか寄生獣っぽくて凄く良いのだがラストは意味あったのかww

昨日書いてないから今日多少短めですが更新再開

>>521
意味はあるけどこういうのを物語の外で詳しく説明するのはあまり良くないと思うから
何がやりたかったかちょっと大雑把な手掛かり?だけ

さやかが本物と思ったのは実は魔法少女の体、厳密に言えば人間と全く同じではない
人間の体は一度致命的なダメージを受けたら終わりだけど
魔法少女はどんなに傷ついてもソウルジェムが無事なら理論上どんな怪我でも修復が可能(この話ではね)
「本物」より「贋作」の方が優れてる訳です
ならばどう扱えばいいの?
仮に魔法少女の体を「本物」と同じと認めるならパラサイトを「偽物」という根拠が薄くなる
だって人間の胸を完璧に再現してるんだから

後は好きにお考えください

〜☆

その後皆でなんやかんや時間を過ごして日が傾きかけた頃、

本日の集まりはこれでお開きにする事にした。

マミが上条とさやかを玄関まで見送りに行く。

「お邪魔しました」

「お邪魔しましたー」

二人がマミを見つめる。

当然マミからも別れのあいさつがあるはずだと思ったからだ。

しかしマミの口から出てきた言葉は全く別の物だった。

その言葉はマミが結局今の今まで何だか恐ろしくて言いだせなかった言葉だ。

「ねえ上条君、あなたはヒダリーが怖くないの?」

「え?」

上条がキョトンとした表情をする。

「だって……、

ミギーやヒダリーの仲間が今この瞬間も

どこかで人間を食べてるのかもしれないのよ?

怖くないの?」

マミは不思議だった。

上条は自分とは違う、ただの一般人だ。

私のように常日頃から死の恐怖に曝されたりはしていないはず。

それなのに今日初めて

ヒダリーの仲間が人間を食っているという話を聞いて

どうしてここまで冷静でいられるのだろう?

何故自分の身体に

そんな生き物を住まわせておいて

そこまで堂々としていられるのだろうか?

上条はマミの突然の質問に困った顔を見せたが

ちょっと間を置き普通に質問に答えた。

「そりゃ僕もそいつらは怖いですよ。

さやかが万が一巻き込まれでもしたらと思ったら不安でしょうがないです。

でもそいつらとヒダリーは違います。

まずヒダリーには食欲がない。しかも彼は僕の左手で生きている。

わざわざ人間に危害を加えて僕との関係を悪化させる事なんてしないはずです」

そんな事はマミにもわかっていた。

マミを悩ませていたのはそんな些末な問題ではない。

何メートルも離れた人間の身体を視認できないスピードで容易く両断できる、

そんな生物を人間である自分がこっそり体内に飼っている恐ろしさ。

彼が自分の中にいる事を意識すると、

マミは魔法少女である事以上に、自分が普通の人間から遠ざかってしまった実感を覚えた。

それにマミとヒダリーは体内で繋がっている。

それがどんな影響をこれからマミにもたらすかわからないし、

その変化は自分では気付けない可能性も高い。

マミが上条に言った

ミギー達の仲間が人を食っている

というのは恐ろしさの理由としてあくまで方便。

マミが本当に恐ろしかったのは自分自身の

「人間らしさ」がミギーの存在によって不安定になっている事だ。

私はミギーの冷めた心情を理解できない。

しかし私もいつかミギーと同じような心の冷めた存在にならないとどうして言い切れる?

彼の冷徹な心が血から脳へと徐々に伝い私の心にもうつるかもしれない。

自分がいつ「人間」でなくなるかわからない恐怖、これがマミを支配していた。

焦れたマミが違う言葉で上条に質問しようとした時、上条が再び口を開く。

「でもやっぱり、一番重要なのはヒダリーが僕の大切なパートナーだって事ですかね」

「パートナー?」

「ええ、僕の左腕はヒダリーがいなかったら

ヴァイオリンが満足に演奏ができるほど回復しなかった。

彼という存在に凄く感謝してるんです。

それにヒダリーと一緒なら僕は変わって行ける気がする、

だからヒダリーに感謝こそすれ怖いなんて絶対に思いませんよ」

一緒にいる事で自分が変わって行ける。

その発想はマミにとって衝撃的な物だった。

何しろミギーの影響を受け、

変わってしまいたくないとマミはそれまで思い続けていたのだから。

マミはそれまでミギーを尊重すべき同じ立場にいる一存在として見た事がなかった。

ミギーとの関係は生きていく為に

協力していかざるおえない必要性から生まれた物としか思っていなかった。

確かにマミはミギーに対して最初に比べだいぶ打ち解けた。

ミギーの仲間に人が食われていたあの事件のおかげだ。

ミギーは自分が生きている事を無条件に肯定してくれる。

それに利害関係がはっきりしているのでその点では結構彼の事を信頼もしている。

けれど味方、友達、どのような言葉で装飾した所で、

マミにとってミギーは、関わりを持つ際にはこちらから特別の理解を示す事が必要な、

例えばキュゥべえと同じ存在、異なる価値観を持った人間と別種の生命体に過ぎなかった。

マミは今まで自分がミギーとの間にわざと分厚く大きい

「壁」を築いていたのだという事に初めて気づいた。

今、相手を中々上手い事理解出来ないなんてのはきっとたいして重要じゃない。

ミギーを信じる事、

そしてマミが信頼を勝ち得る為には

まずマミが精一杯ミギーを理解しようとする事、

理解したいと望む事、

相手と共に生きていきたいと思えるかどうかが重要なのではないか。

自暴自棄になるのはやめてくれ。マミに死なれては私が困る。

あの時のミギーの言葉がマミの脳裏に再び甦った。

今私が生きていられるのは絶望していた私をミギーが繋ぎとめてくれたからだ。

自然と感謝の気持ちがマミの内から湧き上がってくる。

「ありがとう……」

「ええ?」

不思議そうな顔をする上条。

至極当然の反応だ。

気恥ずかしくなったマミは咳払いをしてごまかす。

「ゴホン、何でも無いの、変な事聞いてごめんなさい。

じゃあまたね、上条君、美樹さん」

「じゃあねマミさん!」

「それではまた」

上条達が歩き去り見えなくなるまで、

マミはにこやかにほほ笑みながらその場でずっと手を振り続けた。

今日の更新終わり
チョロイように見えて中々しぶといマミさん
心理描写ばっかで全然話進まないじゃないですかー!やだー!

今後
ミギー今日の一日反省パート→日常パート→ほむらと初接触の予定

天狗パートにして面白いと思うのはここから
アニメ一話の時点でマミさんと上条さやかが接触してる
上条の腕が表向き治ってる
そして三人が秘密を共有してる
けれどさやかはマミさんが魔法少女な事を知らない

ここに何も知らないほむらが加わる
というわけで次回ほむら初登場です(多分)

更新再開
イベント書いてる間に色々弄った
ミギー反省イベントはもう消した
その代わり後々の予定だったイベントを最後に突っ込んだ
こっちの方が面白そうかなーなんて

〜☆

それから約三カ月後、今日は休日。

何の予定も無い。朝から清々しい陽気だ。マミが起床する。

そしてすぐにのそのそと布団から這い出し、

寝ぼけ眼をパチクリさせながらもグリーフシードを使いジェムを浄化した。

別に昨日の内に浄化しても良かったのだが、

穢れも大した量では無かったので

なんとなく身体の疲れに身を委ねてそのまま寝てしまったのだ。

浄化が終わるといつも通りキュゥべえに呼びかける。

「キュゥべえ!」

「やぁ、マミ。おはよう」

マミの声に呼応してどこからともなくキュゥべえが現れた。

いつもと同じ調子のキュゥべえ。

何もおかしな所はない。

だがマミはふと思う。

どうしてキュゥべえはいつも私が呼んですぐに現れる事が出来るんだろう?

実はミギーの事も陰から既に見られているのではないか……?

とても落ち着かない気持ちになる。

「ねえキュゥべえ」

「何だいマミ?」

キュゥべえが耳についた触腕で自分の頭をかく。

グリーフシードを回収し終えたキュゥべえはなんだか満足げに見えた。

「あなたいつも私が呼んだらすぐ現れるじゃない?あれってどうやってるの?」

「どうやってるって、

ボクはグリーフシードがギリギリまで使用されたらそれがわかるからね。

呼ばれる前にキミのそばに居るってだけさ。

それにキミが特別ってわけでもないよ他の子の場合も大体同じだ」

それってつまり……!

マミの心臓が激しく波打つ。

まだ、まだ大丈夫なはずよ。

だってもしミギーの事がばれてたら何かこちらに言ってくるはずだもの。

「じゃああなたは魔法少女に名前を呼ばれたりするまでその子の私生活を覗いてるってわけ?」

「いや、そうじゃない、それは誤解だよマミ」

キュゥべえが首を横に振る。

「キミ達のプライバシーには出来るだけ干渉しないようにしてるんだ。

キミ達の自由意思を尊重する事がボク達のいずれの利益に繋がっていくからね。

昔はグリーフシードを回収する際に魔法少女の前にいきなり現れる方法をとった事もあった。

けれどキミ達は決まって心臓に悪いだのデリカシーがないだの何かしらの文句を言ってくる。

だからまず名前を呼ばれるまで近くで待機、

呼ばれたら目の前に姿を現すという方法に変えたんだ。

もっとも所定の場所にグリーフシードを置いておくとか

そういう方法をとりたがる魔法少女もいるから当然例外はあるのだけど」

「へえ……」

マミは驚いた。彼とは数年来の付き合いのはずなのにそんなこと全然知らなかった。

キュゥべえとの間に思わぬ溝を見つけた様でちょっとさびしい気持ちになる。

「どうして今まで何も言ってくれなかったの?」

「聞かれなかったからね。

別にこの情報をマミが知らないからといって双方に不利益が出る訳でもないだろう?」

「それはそうだけど……」

「マミにだって聞かれたくない、知られたくないって事はきっとあるよね。それと一緒さ。

ボクは双方にとって不利益になるとあらかじめわかっている場合でも無ければ、

キミ達魔法少女にむやみやたらに

自分から情報の開示を求めないしその情報の把握に努める事も無い。

その代わりにこちらから余計な事を言う事も無いというだけだ。

きっとそういう風に互いで適切な距離ってものを保つ事が、

両者が互いを助け合っていく関係を築いていく中で重要なんじゃないかな?」

可愛らしく、それでいて感情の起伏を感じさせないどこか無機質な声。

マミはキュゥべえとこういう真剣な話をするのがあまり好きではなかった。

どうしても彼が人間とは違う別の生き物だというのが身にしみて感じられてしまうからだ。

「じゃあキュゥべえは私に言いたくない事があるの?」

それは意地悪な質問だった。

しかしキュゥべえは全く慌てない。

「そういう事を誰かから聞きたいのなら

まずは自分が隠したい情報の一つや二つ先に提示するのが普通なんじゃないかな?

例えばキミの体重とかスリーサイズとかをね。どうも最近ふっくらしてきてないかい?」

「もうっ!キュゥべえの馬鹿!」

キュゥべえの脳天にマミの振り下ろしたチョップが刺さる。

「きゅっぷい!何をするんだマミ。ひどいや、キミから始めた話題なのに」

キュゥべえがマミから距離をとる。

実際マミの体重にここ最近で大した変化はない。

それはキュゥべえなりの冗談だった。

そしてそれは同時に、

キュゥべえが人類との長きに渡る交流の中で身につけて来た

実利的な話題逸らしのテクニックでもあった。

「あっ、……そういえば、もう一つ聞きたかった事があるわ」

無言でキュゥべえはマミを見つめる。

ここ最近のマミは明らかに今までの彼女とは違う。

今までの彼女は環境が変わってしまう事を極端に恐れていた。

たとえ何か疑問を抱いても、

どんな影響がそれを口にする事でもたらされるか考え躊躇し、

不安に苛まれ、

そしてその疑問を心の奥底にしまってしまうきらいがあった。

それなのに今彼女はボクに向かって堂々と

頭に浮かんだ質問を躊躇いなくぶつけている。

彼女を変える何かが近頃あったというのは確かに違いない。

メンタルが前と比べ格段に安定してきている。

マミには確固とした実力がある。

これだと少なくともしばらくは魔女化せずに済むだろう。

キュゥべえの思考はそこで止まる。

どうせ考えた所で仕方のない事だ。

マミが魔女化するかしないか、

生きるか死ぬか、

そんな事はインキュベーターの掲げる

崇高な目的に費やされる長い長い時間の中では、

塵よりも小さな、一つの粒子未満の物である。

自らの生き方を選択するのはあくまでマミ個人、

ボク達はボク達に出来る方法で

より多くの利益を人類との関係の中でただ模索していくだけだ。

「キュゥべえが一般人に見えないのはいったいどういう理屈なの?」

「うーん、それには魂が関係してるんだけどね」

「魂?」

「そう、魂。普段からボクは他者のボクに関する

認識を妨害する『電波』の様な物を身体から出してるんだ」

「電波……」

「そしてそれは魂の波長が魔法少女の契約に

ふさわしい人間には影響のない様に調整されててね、

もちろん任意で魔法少女の素質の無い人間に姿を見せる事も可能だよ。

だけどそれ以外の者はボクの姿が視界に入っても、

それを周りの風景その他とは別の物だと認識する事が出来ない。

唯一の例外として魔法少女の認識を阻害する事は

出来ないんだけど別にそれで困る事はない。

だってする必要がないからね」

「じゃあ人間以外は?」

「というと?」

「ええっと、例えば犬とか猫とかそういう動物の野生の第六感が働いてとどうとか……」

「まず不可能だね。

そういう蓋然性の類でどうにかなるほどボクの身体から出る

『電波』の様なものは生易しい物じゃない。

あくまで魂を持っていて素質を備えてるか

それとも魔法少女かが基準さ。

動物達にだって見せようと思えば姿を見せれるけどね。

いや、でもあえてさらにボクの姿が見える例外をあげるなら『キュゥべえ』かな。

もし仮に姿が確認出来なくなったとしたら凄く不便だ」

「ふーん」

だからミギーにはキュゥべえが見えないのね。

キュゥべえには私の知らない事がまだまだたくさんありそう。

聞かなくても自分から色々教えてくれるミギーは結構親切なのかもしれない。

マミはそう思った。

「もうこれで質問は終わりかな?じゃあね、マミ」

「ええ、じゃあねキュゥべえ」

キュゥべえがトコトコ歩いてどこかへと消える。

キュゥべえは部屋を去る間際に少しだけ考えた。

最後にマミがボクに家に泊まってくれと頼んだのはいつだったかなと。

〜☆

午後、マミがたくさんの本を持って帰宅する。

まず一度パトロールを終えてその帰りに図書館によって来たのだ。

使い魔であれ魔女であれ、そう短時間に発生し人に被害をもたらす事はない。

今日は念の為にもう一度夜に見回るだけで十分。

あとは自由時間にしよう。

マミがテレビの前でゲーム機をあれこれし準備する。

テレビとゲーム機、どちらも最近買った物だ。

お店には持ち運び可能なゲーム機やら色々マミにとって目新しい物もあったが、

マミは画面が大きい方がわかりやすくて良いと思ったのでこっちにした。

どうせそこまで大してのめり込む気はないしミギーと遊ぶ用である。

テレビもニュースが見れたりして便利だ。

新聞を読んだりクラスメイト、魔法少女達、

それと特にキュゥべえから色々話を聞くだけでだいぶ事足りてしまうけど。

格闘ゲームのタイトル画面がテレビに表示される。

その頃ミギーはお風呂掃除をしていた。

「ミギー!まだー?!」

マミが大きな声で風呂場のミギーに問う。

「まだだよ」

マミの胸元から声がする。

切り離してる訳ではないのだから叫ぶ必要なんてない。

当たり前の事だった。

そんな事にも気付かなかった恥ずかしさからマミの顔が赤く染まる。

「ば、馬鹿!」

「きみは突然何を言ってるんだ。私がバカ呼ばわりされた理由がさっぱりわからん」

正論を言われた嫌がらせに自分の右胸にチョップをしても虚しいだけなので、

マミはふくれっ面をして自分が不機嫌である事を表現した。

〜☆

「また、負けた……」

その日、何度ゲームで戦いを挑んでもマミがミギーに勝つ事はなかった。

ここ数日ずっと同じような流れだ。

暇を見つけありとあらゆるゲームで対戦してみてもミギーに勝てない。

運要素の強いゲームをやればマミもミギーと十分に戦えたがそれでは意味がない。

ゲームを初めて最初の内は基本両方初心者なのだが、

圧倒的スピードでミギーがゲームに慣れマミをボコボコにして、マミを涙目にする。

大体いつもこんな流れだった。マミは悔しかった。

ミギーとの圧倒的な力の差に翻弄されている自分が。

別にミギーが手を抜いている訳ではない。

そうではないのだが、ミギーは先程借りた本を読みながらの試合である。

自分とは生物としての在り方が違う。

頭では納得できても心で納得できないのが人間である。

それに元々マミは負けず嫌いだった。

「次はジェンガで勝負よ……」

「ジェンガ?また急な遊びの変更だな。

緊張すると手がプルプルするマミにはあまり向いていない遊びだと思うぞ」

「うるさい!ジェンガをやるの!ジェンガ!ジェンガ!ジェンガ!」

「やれやれ、わかったからそんな駄々をこねるな」

「駄々なんてこねてないもん!」

これまで散々抑圧されてきた鬱憤を発散しているのか、

近頃ミギーと二人きりだと若干精神が幼くなりつつあるマミだった。

〜☆

夜、街中をパトロールをする。

朝には数匹使い魔を見かけたが、今度は特に異常は見当たらなかった。

パトロールを終え家に帰ろうとするマミの背後から突如声がかかる。

それは少女の声だった。

「巴マミ、この地域の魔法少女ね」

帰ろうとしていたとはいえマミは一応周囲を警戒していた。

そんな状態のマミが気付ぬ内に

誰かに後ろに立たれるなどここ数年一度も無かった事だ。

そんな芸当ができるとしたらそれは同業者、魔法少女、それもかなりの手練、

あるいはミギーの仲間くらいしか思い付かない。

身体を強張らせながら瞬時に振りかえる。

そこには長い黒髪をした少女がいた。

私服姿で特別マミに対する戦意は感じられない。

それでもマミは直感していた。

彼女は強い力を持った魔法少女だと。

どんな魔法を使うかはまだわからないが、

私どころではない歳月を魔法少女として過ごしているだろうかなりのベテランだ。

その堂々とした様子、立ち振る舞い、

そういう物からも確かに彼女の実力は察せられたが、

それ以上に特徴的だったのが彼女の表情と目だった。

いったいどれほど長い事魔法少女を続けていたらこんな表情が出来るのだろう。

じっとマミを見つめている目の奥には感情がどこにも見当たらない。

得体が知れない。彼女が何を自分に期待しているのかマミにはわからなかった。

マミに呼びかけてからずっと彼女は黙ったまま口を開こうとしない。

それでいてどこか焦れた様子だ。

どうもまずマミが喋るのを待っているらしい。

表情はさっきから依然変わらないのだが、

注意しなければ気付かない程ちょこっと身体を左右にゆらゆら動かしている。

じっとしていられないらしい。

思ったよりせっかちなのだろうか?

だったら自分が話を切り出せばいいのに。

得体が知れなくてどこか不器用、

彼女のその有様が何だか少しキュゥべえに似ているようにマミには思えた。

「あなたはいったい何者?」

このままでいても話が進まないのでとりあえずのっかってみる。

「暁美ほむら。これから見滝原中学に転入する事になったの。

だからこの縄張りの主であるあなたにここで魔女を狩る許可をもらいに来た」

はきはきと事務的にしゃべるほむら。

露骨に敵対する態度はとっていないが、

だからといってマミに友好的という事でもなさそうだった。

「使い魔はどうするつもり?」

重要な事だ。もし使い魔を狩らないという事なら

マミが狩る使い魔の割合が今までより増えるわけだし、

下手をしたら使い魔を狩るか狩らないかで争いになる恐れがある。

一部の魔法少女にとって使い魔は魔女になってくれる重要な資源だ。

「あなたの方針に従うわ。どうしたらいい?」

マミは心の中でほっと胸をなでおろした。

縄張り争いの為、戦闘に至る最悪のパターンはどうやら防げそうだった。

経験も豊富みたいだし、

チームを組むとまではいかなくても彼女とならある程度上手くやっていけるかもしれない。

マミはそう感じた。

「そういう事なら使い魔も狩ってちょうだい。

大丈夫、ここ見滝原は魔女が多いから使い魔を残しておくと

むしろ増えすぎて手が回らなくなるもの」

マミは友好の印にと握手を求めほむらに向かって手を伸ばす。

しかしその手はパシリと払いのけられた。

「勘違いしないで、私はあなたと慣れ合うつもりはこれっぽっちも無いから」

そう言い残しほむらは踵を返し立ち去ろうとする。

「あっ、ちょっと!」

それは偶然の産物だった。

別に深い考えがあった訳ではない。

予想外の拒絶に対する反発、

今の礼を欠いた行動の説明を求めようとした、

ただそれだけの行為、

マミの右手がほむらの右肩を掴んだ。

「ひゃぅっ!」

可愛い声をあげてほむらはマミの手を強く振り払い、

マミに背中を見せる形で身を低く屈める。

その体勢から腕が顔を覆うように頭に手を置き、

さっと首をマミの方に向け、

腕の隙間からマミを覗き込むようにして見る。

心なしかプルプル震えていて、

気持ち涙目の様にも見える。

その姿はどこからどう見ても完全に怯えていた。

「ぶふっ、くふっ……くくっ……く、くく」

思わずマミは噴き出してしまった。

クールという言葉がぴったりはまる謎に満ち満ちた彼女が、

あの緊張感の中マミに肩を掴まれただけで、

か弱い野兎のように可愛らしく丸まってしまったのがマミのつぼにはまった。

自分の取り返しのつかない失態に気づいたほむらが

顔を真っ赤にして弾かれた様に立ち上がる。

そしてマミに何かを言おうとしたらしく大きく口を開けたが、

結局何も言わずその口を真一文字に閉じスタスタと足早に歩き去った。

「ぐ、くく……くふふ」

ほむらの姿が完全に見えなくなってから、

ミギーが首元から少し顔を出しいまだ爆笑を続けるマミに囁く。

「何だかよくわからんが変な奴だったな」

〜☆

ある時、「キュゥべえ」は『彼女』を見つけた。

というよりはインキュベーターが得た情報を記憶の共有に参加し盗み見たと言うべきか。

『彼女』の存在を知った時彼を襲ったのは歓喜という初めて経験する純粋な感情。

ミギーやヒダリーの仲間、

インキュベーター達の間では「パラサイト」、

あるいは寄生虫ならぬ「寄生獣」と呼ばれている者達、

「かれら」は人間とは全く違った心の有り様をしている。

今の所パラサイト達はそれぞれどこまでも利己的であり、

個体差はあれど感情という物を完全に理解した者は誰一人としていなかった。

つまり「キュゥべえ」が感情を自ら発現させた最初の個体という事になる。

彼はこの世に生まれ落ち、

インキュベーターに寄生してから様々な情報を収集しつつずっと考えていた。




何故私は生まれて来た?






何故我々は生まれて来た?

答えの出ない問いかけの中、

彼は自分の生きる意味を「パラサイト」という種族全体を守る事に見出した。

利他的な行動をとる事に生きる意味を見いだした個体もおそらく彼が初めてだろう。

それは困難な道だった。

皆人間達を大なり小なり侮るばかりで

どれほど自分達が危険な状況にいるのか理解していない。

「キュゥべえ」以外の個体は自分達が本当に恐れ、

立ち向かうべき敵の事を理解していない。

自分達の命が誰に握られているのかまるでわかっていない。

見事に目を曇らされている。

インキュベーター、彼らに何かしらの害があると判断されてしまえば

そこでパラサイトの未来は全て終わってしまうのだ。

当然そんな中での「キュゥべえ」のレジスタンス活動は孤独かつ困難な物だった。

インキュベーターに決して気付かれぬよう、

わけもわからぬ中をひっそり手探りしていく毎日。

必要なのは強固な組織、

インキュベーターに抗い得るのは数の力。

その為には集団をまとめ上げる為の絶対的な力の象徴、明確なリーダーが必要となる。

「キュゥべえ」にその器はない。

「キュゥべえ」自身に他の個体と比べて大した戦闘能力がある訳ではない。

出来るのはせいぜい参謀として働くくらいだ。

けれどだからといって、はいそうですかと諦めて良い問題でもない。

ないのならばどうにかしてどこかから用意するしかないのだ。

数か月日本の各地を這いずり回り、

「数匹」あるいは「数人」のパラサイトを仲間に引き込み、

インキュベーターから情報を掠め取り続け、実験を繰り返し、

ようやくそれの為の手段は整った。

しかしその為の「土台」が絶望的に欠けている。

まさに手詰まりという状況だった。

それは突き詰めれば突き詰めるだけ無謀な事のように思えた。

ある日突然その絶望的だった状況がひっくり返る。

普通程度の魔法少女としての素質しかなかったはずの一人の少女から、

急に測定不可能なレベルで莫大な素質が検出されたのだ。

それは一夜の内に起こった本来有り得るはずのない変化、

そして「キュゥべえ」にとっては突如訪れた

インキュベーター対抗の為の唯一のチャンスだった。

絶対に失敗する訳にはいかない。

彼女、





『鹿目まどか』を我々の手中に収める。





今日も「キュゥべえ」はあちらこちらを人知れず暗躍していた。

今日の更新終わり
ようやく大体予告のとこまで来たか……


前に三つ巴とレスをしてくださった方がいますがもう少し細かく分けると
勢力的には五つ巴くらい

まどか(騒動の中心なのに蚊帳の外というかまだ実質登場してない)
ほむら(まどかを守る、絶対に契約阻止)
マミ&ミギー(正義の魔法少女)
上条&ヒダリー&さやか(半一般人)
パラサイト(キュゥべえグループ)(インキュベーターへの抵抗の為まどかを狙う)
インキュベーター(宇宙のエネルギーの為まどかを契約させ魔女化させたい)

……ややこしいなぁ

まどか見た事が無い寄生獣しか知らない人でも楽しめる話が書きたいが
書きたい事書くとそういう訳にもなかなかいかないのが辛い所
まどかしか知らない人!寄生獣原作面白いよ!(マーケティング)

乙でした

ミギーには見えないのに、なんで寄生されたん?

>>569
すまぬ……すまぬ……次の更新で直すわ
そこら辺一度書いて書き直したせいだわ本当にごめん

本当は理性をもった存在にしか電波的な何かは効かないって内容の話の予定だったんだけど
何をとち狂ったか前の場面のセリフ変える前をそこに挿入したらしいね
そしてそのまま違和感がないように続けた

結果 致命的じゃんこれ

やっぱ書いてから時間ちょっと置かないと危険だね
だから反省して更新ペースを落としてゆっくりやるよ!


ただでさえこれから展開めんどくさいし
このペースでやってたらそろそろ私の現実生活にも悪影響出る

書くのにハマると面白くて睡眠時間削っちまうんだよな
昼間よりも寝る時間になるにつれ勢い乗ってきてタイプが進むという
俺はそれで額の後退を早めた経験があるので>>1も無理しないでくれと言いたい

訂正
>>548

※訂正

「じゃあ人間以外は?」

「というと?」

「ええっと、例えば犬とか猫とかそういう動物の野生の第六感が働いてとどうとか……」

「不可能ではないよ。ボクの身体から出る『電波』の様な物は、

あくまで相手の複雑で論理的な思考、理性的な認識の過程を阻害する類の物だから、

その対象の思考が論理的ではなく、感覚的であればあるほどその影響を受けにくいんだ。

ただ人間に限らず確固とした理性を備えた存在に関して言えば、

ボクを見る為の条件は魂を持っていて素質を備えてるか、それとも魔法少女かが基準さ。

その為に必要な魂を持つのが人間以外に見当たらないというだけだ。

魔法少女には魂を持った者しかなれないし。

いや、でもあえてさらにボクの姿が見える例外をあげるなら『キュゥべえ』かな。

もし姿を確認出来なくなったとしたら凄く不便だからね」

「ふーん」

更新再開
今日はそこまで量が無いぶん明日も更新するよ

訂正については動物には理性が無いってのは
さすがに古臭すぎると思ったからこうした

犬猫カラスとかは見れるか怪しいけど
カタツムリとかは見れるとかそんなレベルの話のつもり

蛇形態?の寄生前パラサイトならキュゥべえを見れるけど
今のパラサイト達は成熟して理性を身に付けたからもう無理だ
多分問題ないよね……?

>>572
そうならないように昼更新し終わったらパソコン触らず
頭の中で弄るだけに留めてるんだけど
さすがに前日全く書いてない状況からの起きてから8時間ぶっ通しで
書いてチェック修正して投稿は私の実力だと集中力が持たない事が解った
程々に質を落とさぬ様頑張るよ

〜☆

後日、マミが午後にパトロールしていると、

偶然ほむらと街中でばったり遭遇した。

駅前の喫茶店で少しお話でもどうかしら?

マミが駄目元で誘ってみるとほむらはそれを承諾した。

二人は現在店内で向かい合い座っている。

マミは紅茶、ほむらはコーヒーをそれぞれ注文した。

互いに注文した物がテーブルに届いたのを見届けると、

まずほむらが口を開く。

「『ひき肉ミンチ殺人事件』って知ってるわよね?」

「ゴホッ!」

予想外の質問に驚き紅茶にむせるマミ。

しかしほむらはそれを特別気にとめる様子も無く、

自分の手元を見つめながらスプーンでコーヒーをかき混ぜていた。

「ど、どうしていきなりそんな質問を?」

「あなた程の優秀で正義に燃えた魔法少女が

この異常な事件について何も調べていないはずがない。

だからあなたのこの事件についての見解を聞かせて貰いたいの」

優秀で正義に燃えた魔法少女。

突然自分の事をさも当然の様に褒められひどく照れ臭い気分になる。

マミが頭をポリポリと掻いた。

ほむらがどういうつもりでいきなりマミにこのような事を尋ねたのか

マミにはさっぱりわからなかったが、

事実マミはその事件の真相を知っている。

けれど当然その事をほむらに話す訳にはいかない。

「見解……、当然何か特定の魔女の仕業とは考えにくいわね。

それにしては明らかに規模が大きすぎる」

「確かに……」

ほむらはマミの言葉を聞くと、

顎を手で押さえ真剣に考え込むそぶりを見せた。

あれ?

本当に何も知らないのかしら?

マミは首をかしげる。

パラサイト達が飛来して既に数か月経っているのだから、

さすがにこれくらいは判断出来てて良いはずである。

ほむらはどう見ても右も左もわからぬ新米の魔法少女ではない。

とはいえベテランがこの程度の判断をするのに数カ月かかるはずがない。

まるで『ひき肉ミンチ殺人事件』を最近初めて知ったみたいだ。

そんなはずがあるだろうか?

全国どころか世界中で起きているこれ程異常な事件だ。

ほむらがどこで今まで何をして過ごしてきたかをマミは知らないが、

それでもこの事件についてを

まるで知らないというのはとても不自然な事に感じられる。

やはり彼女は得体が知れない、そう思った。

「魔女の仕業でないのだとしたら

いったいどういう種類の事件だと思う?

単独犯でないのはもちろんとして、

こんな事をして犯人達にいったいどういう得があるというの?

こんな異常で残忍な……」

食べる為よ、

マミはそう心の中で呟くが声には出さない。

代わりに別の言葉を口にする。

「さあ、なんとも言えないわね。

私もこの事件に関してはお手上げ状態ですもの」

話していてマミは暗い気持ちになった。

マミはパラサイトを見つけたら、

相手が攻撃体勢に移行するのを確認してから全員倒すようにしている。

しかし現実、見滝原市内でしか活動出来ていないし、

世界中どころか日本全国で起こる

毎月の事件数には何ら影響を与えられていない。

それに世の中に悲惨な事件として現れてくるのは氷山の一角に違いないのだ。

「食べ残し」が見つからなければ

それは行方不明者として扱われる事になる。

真実を知っているのに魔法少女として

何もできない自分が歯がゆくて仕方がなかった。

「ふぅ……」

ほむらがため息をついた。

場の空気が重い。

喫茶店でお話しましょうと誘って

まさかこんな雰囲気になるなんて思っていなかったマミは冷や汗をかく。

無言のほむらから物凄いプレッシャーを感じる。

マミの手汗が凄い。

や、やっぱりこの子と仲良くなるなんて無理よ!

そう胸中では思うがその事はおくびにも出さず話題の転換を試みる。

「ええっと……あの時はついあなたの事笑っちゃってごめんなさい」

それを聞いたほむらの頬が引きつる。

やってしまった……。

マミは藪蛇だったと後悔したが時既に遅い。

けれどほむらと話して空気が重くならなそうで、

かつ会話が続きそうな話題といったらそれしか思いつかなかったのだ。

……紅茶とコーヒーの話題にでもしておけば良かった。

今更無難な話題をマミは思い付く。

「気にしないで、あなたは悪くないわ」

それでも意外と優しい言葉が返ってきて拍子抜けしてしまう。

そのせいで今度こそ本当に不用意な言葉がマミの口から飛び出る。

「あの大げさな反応は何か昔に嫌な事でもあったの?」

ほむらの肩が一度ビクリと震える。

そして今まで無表情だった彼女が口角を上げ、

自嘲的で見てる方がぞっとする様な笑みを浮かべた。

慌てて自分の言った事を取り消そうとするマミだったが

ほむらはそれを遮り話し始めた。

「もうだいぶ昔の話よ。

何度か凄く仲良くなった金髪の魔法少女に殺されかけた事があるの。

大抵いつも何も出来ない様に拘束されてね。

無様に命乞いをしてみた事もあったけど駄目だったわ。

信じてたのに、

彼女を信じてたのに……!

……頭の中ではその事についてちゃんと整理をつけたつもりなんだけど

体はそうもいかないみたい。

体が覚えてるの、

あの時の恐怖を、

あの時の何も出来なかった自分を、

何度も裏切られたやるせなさを」

後半は矢継ぎ早になりながらほむらが喋り終える。

その場の空気はまるで凍りついた様に冷たい。

その中でマミはほむらに向かって右手を差し出した。

ほむらは不思議そうな表情をする。

「どういうつもり?」

「友好の証」

「……前、断ったわよね?」

「それでも、よ」

マミは自分以上にほむらが辛い人生を歩んできたのだろうという事を察した。

それだけに彼女をそのままにしておく事が我慢出来ない。

だからまずは自分から手を差し伸べた。

そこに仲間が欲しいなどの打算的な感情はない。

自分はミギーのおかげで今こうして毎日を大変でも楽しく生きていられる。

ミギー程とはいかなくても、

こうして今苦しんでいる彼女を自分が少しでも苦しみから救ってあげたかった。

ほむらが目の前で苦しんでいる姿を何も出来ずにただ眺めているのは耐えがたかった。

マミには彼女の辛さが十分に理解できたから。

ほむらはマミの突然の行動に一瞬ポカンとした顔をして、

その後大きな声をあげ笑った。

「アハハハハハハハハハハハハハ!」

ほむらの手が前と同じようにマミの手を払いのける。

「お断りよ」

マミが下唇を噛み、しょんぼり下を向く。

コーヒーを飲み終わったほむらが立ち上がりレジへと向かう。

けれどほむらはその途中で一度足を止めた。

「慣れ合うのは嫌。

だけど……だけどもし、

誰かの力をどうしても借りなければならない事態が訪れたとしたら、

その時はまず真っ先にあなたの手を借りてみる事を考えてみるのも良いかもしれない。

それくらいは私もあなたを信じてみたい。

とりあえず今は気持だけ受け取っておくわ巴マミ、……ありがとう」

マミがほむらの方を見遣ると

彼女はもうマミの方を見る事なく支払いを済ませさっさと立ち去っていく。

ミギーが周囲の人々にばれないよう囁いた。

「やはり何だか良くわからん奴だ」

今日の更新終わり
トラウマミさん

マミさんカッケー!したいのと
巴って字何だか寄生する前のパラサイトに見える!
とか言うしょうもない動機で書き始めたこれですが

まどマギキャラ全員好きな中で私はほむらが一番好きです
だからちょっとくらい優遇してもいいよね……?(過酷さ的な意味で)


ほむほむは最近知ったんですもんね
少しずつ能力バレの手がかりを零していってる感じ
推理するのはミギーかもしれんがな!

何度も殺されかけるまで信じてたというのは
それで生きてるのもすげーが
信頼してたことが本編以上に強調して感じられるな

小ネタ2

だいぶ前に没にした展開�

『パラサイト殺し過ぎて「A」みたいな一匹のパラサイトにマミが目をつけられたという前提』

(学校)

ミギー「仲間が来た。まるで殺意の塊だ」

マミ「なんて事……!」ガタッ

〜戦闘と決着〜

約一月後

(まどか達のクラス)

教師A「えー、あー、あの痛ましい事件のせいでお亡くなりになった、

このクラスの担任兼ね英語担当だった早乙女先生の穴を埋める為に新しい先生が赴任してきました。

今日から彼女にこのクラスの副担任を務めて貰います」

田宮良子「田宮良子です。これからよろしくお願いします」ペコリ

恭介(どうしてこうなった……どうしてこうなった……)ガタガタ

さやか「綺麗な人だねー」

まどか「ねー」

仁美「ですわねー」

『話の収拾がつかなくなる気がしてやめた』

今日の更新はこれ以上ないよ
い、一応約束は守ったから許してくれ


>>589
信頼というよりはマミの正義への信仰に近いつもりでいる
そういう例えでいくなら
周回ごとのマミの挫折はほむらにとって
踏み絵を繰り返させられるような効果があったみたいな

話の途中で組み込む方法が見つからなかったからほむら関連の話ざっと次次回やる
我が家のゲーム機の歴史はPS2で止まってるのでまどポはやってませんし
漫画版小説版は読んでないのでそこらの描写と矛盾する可能性は大いにありますが
時間軸が違う、それらとは別のほむらだとお考えいただければ幸いです

次次次回ほむら転校
600までにまどか登場できませんでした残念

更新だよ
短い割に内容は濃いよ
ただ最近内容ずっと濃いから気にならないと思うけど
それと漫画版まどマギ買って来る事にしました

〜☆

就寝間際、マミがミギーに話しかける。

「ねえ、ミギー。やっぱり暁美さんと仲良くなるなんて無理よ」

マミが今日喫茶店に誘ったりと

ほむらとの距離を縮めようとしたのは

ミギーがそうした方がいいと勧めたからだ。

そこで手を差し伸べたのは彼女の意思だが、

それを拒絶されただけにほむらとの距離を縮める事に消極的な気持ちになっていた。

「なぜ?」

「だってこれで二回も断られたじゃない。

暁美さんもこれ以上私にしつこくされたらきっと嫌だと思うわ」

「今日は普段協力関係を結ぶのは御免だが、

有事の際には協力を求めるかもしれないという趣旨の返答だったじゃないか、

諦めるにはまだ早いよ」

「でも……」

仲間はずっと欲しいと思っていた。

しかしこうしていざ実際に誰か魔法少女と仲良くなろうとすると、

マミの頭の隅にはかつてコンビを組んでいた佐倉杏子の幻影がちらつく。

彼女とのコンビ以上に最高のコンビは、

他の誰とであってももう二度とマミには出来ない気がする。

いや、もしかしたらそれ以上のコンビを作るのが嫌なのかもしれない。

それに今はミギーがいた。

別に焦って誰かに自分の事を認めて貰わなくて良いのだ。

ミギーは人間じゃないけどそれでも私の大切なお友達、

でもあの子は二度も私の手を……。

拒絶されるのは怖い。でも仲間が欲しくない訳ではない。

底知れぬ実力などのほむらの得体の知れなさが怖い。

同時に彼女はきっとそんなに悪い子じゃないと思う自分もいる。

だけど私にはこの街を守る責任がある。

もし彼女がこの街を狙う魔法少女で、

私がそれに敗れたらこの街はどうなってしまうだろう。

憶測だけで誰かと共闘関係を組むのは……。

煮え切らない態度を見せるマミだったが、

それに比べてミギーの態度は最初からずっと一貫していた。

ほむらへの興味関心と、彼女との関係が自分達にどう役立てられるかだ。

「同じ狩り場でこれから魔女を狩るというのに、

その相手の事を名前と外見以外

ほとんど知らないという今の状況はあまり芳しくない。

しかしほむらとこれから親交を深め信頼されていけば、

自然と彼女の固有魔法やその他の素性も徐々にわかってくるはずだ。

それに彼女と例えば曜日ごとのローテーションを組んだりと協力していく事で、

我々の自由時間や行動の幅も増えていく事を考慮しても

彼女ととりあえず仲良くしようとするのは重要だと思う。

むやみな争いはしたくないし」

「だけどキュゥべえが彼女と契約した覚えがないって……」

ほむらに関して特に大きな問題はこれだった。

キュゥべえが自身の契約したはずの

魔法少女を把握していないというのはどういう訳だろう?

ほむらは確実にそこらの普通一般の魔法少女とは別の存在だった。

彼女はどこから来た?

今までどこで何をしていた?

いったい何が目的なの?

おそらく自分をはるかに上回るであろう

魔法少女としての経歴の長さを持つベテラン。

もしそうだとしたらいったい何歳の時に契約したというの?

……キュゥべえが用心した方が良いと言っていた。

考えれば考えるほど悪い想像がマミの頭を占めていく。

「だからこそだよ。

魔法少女という制度にも何か穴があるのかもしれない。

面白いじゃないか」

「あなたはいっつもそんなことばっかり……。

でもやっぱり素性の知れぬ人と仲良くするのは怖いわ」

「怖がる必要はないと思う。

今の所彼女が我々に敵対しようとしている様には思えない。

多少の節度を弁えた接触に危険はそれほどないだろう。

むしろ彼女の事をほとんど知らぬ内に何か不審な行動を起こされた方が困る。

行動の真意についての判断がつかないから、

こちらの反応がどうしても鈍らざる負えない」

「でもやっぱり、いくらなんでもキュゥべえが契約した覚えがないって言うのは……」

「そのキュゥべえだって素性の知れなさでは負けてないじゃないか。

どこから来た?何が目的だ?

キュゥべえがマミに情報を自分から全部くれる訳じゃないだろう?

そのほむらの事だってきみが彼に尋ねたからわかった事だ。

キュゥべえだけじゃない。

私だって自分がどこから来たのかなんて知らない。

今大切なのは彼女の存在が我々の生存において

どういう風に役立ちあるいは害を与えうるかだ。

私達は暁美ほむらについての判断を早急につけなくてはならない。

その為にはまず彼女の事を知る必要がある。

相手の事を知るのに最適なのはその相手との距離を詰める事だよ」

「……もし、もしもよ。暁美さんが悪い人だったり、

私達に害を及ぼす存在だったらどうするの?

またはミギーの存在が暁美さんにばれてしまった場合とかの

困った状況になった時でも良いけど」

「その場合は殺す」

ぞっとした。

マミにも少なからずその覚悟はあった。

魔法少女同士の争いとは本来そういう物だ。

しかし彼女と仲良くなる有意義性を語っていたその舌の根も乾かぬ内に

その相手を殺す事をあっさり示唆するなんて……。

「いくら暁美ほむらの得体が知れないからといって、

普段からずっと何かしらの魔法を展開してる訳ではなかったのだろう?」

「え、ええ……」

「ある程度の距離をマミには詰めて貰って、

暁美ほむらがこちらの攻撃の意思を察する前に私が彼女の首を切断する。

私の一撃を人間は知覚できないはずだから、

彼女が何かしらの魔法を使う前に一瞬で決着が付くはずだ。

キミが手を汚す訳ではないが、

仮にも同じ魔法少女を自分の右胸が殺すという事実については

目をつぶってもらうしかないな。

……逆に言えば私という切り札があっていつでも殺せる以上、

マミは暁美ほむらとのやりとりにそこまで気を張る必要はないという訳だ」

これから寝ようという時間なのに、

何か目の覚める様な悪寒がマミの背筋を走った。

今日の更新終わり
ミギー流励ましが炸裂しました

久々寄生獣読み返してるんだが、宇多とジョーは防御力だけ取れば
後藤の次くらいに凄いな。首筋と臓器守れるのは大きいわ
宇多が冷静に行動できれば相当強キャラになるんじゃないかと思った
このスレのミギーは心臓は把握できるみたいだけど他の臓器はどうなんかね

要るか要らないかわからないけどいきなりばったり更新停止するのも微妙なので一応生存報告
忙しい+書く為に本読まなきゃ+場面が際どくて書くの難しい
これが重なってるので現在全然書けてないし書いてない
寝る前頭の中でどうしよっかなーくらいしかしてないです次回の更新は未定
エイプリルフールじゃないよ

エイプリルフールネタで
ミギーの存在がほむらにばれ
マミがほむらに襲撃されあっさり瀕死
ミギーがほむらに
「取引だ、マミを殺す前に私を君の胸に移らしてくれ。これならば私は君を攻撃しない」
「私のありもしない胸にどうやって移るのよ!」
みたいなブラックなネタをやろうかとも思ったけど
本編書けてないのにやることじゃないと思ったからやめました

>>612
防御力はまあ高いけど「息が苦しい」を改善できるか不明ですし
田村玲子みたいに複数相手にするのはきついでしょうね
それに頭から下の「馬の差」は結構激しいと思うので
強キャラと呼ぶにはきついんじゃないでしょうか?
例えばダメージを受けたら人間何かしらの反応を示すはずで
完全にジョーの足を引っ張らないというのはいくら宇田さんの性格変わってもきつそう
とりあえず最低限ダイエットしなきゃ

このスレのミギーについてはとりあえず>>85
しかも武器としてのマスケット銃に拘束とか色々出来るリボン
魔法少女としての肉体強化(ソウルジェムは濁る)
原作の後藤以外なら多分数匹相手でも勝てるだろう厨スペ(意味あってるかは微妙)です
田村玲子と、ミギーと混ざった新一、三木相手なら一対一でも負けるかもくらいかな

本当はこの周回でのほむら転校前まで一回の更新で行こうと思ってたけど
一回の更新で50レス以上になったりとかしたらいやだなぁと思ったので
書き終わったアニメでやってたのとほぼ同じほむら契約までの過去話まで更新
三週目?に関しては先の方までとっておきます

一応漫画版やアニメ版とは違うパラレルワールド設定でお願いします、すいません
ていうかパラサイト飛来してる時点で(ry
漫画版はグリーフシードを時々しか落とさなかったり想定してる設定とちょっと違う場合や
もう二年経つので私が細かいアニメ本編の描写を忘れて書いた可能性があるからです、はい

〜☆

暁美ほむらは時間遡行の能力を持つ魔法少女である。

マミとミギーが初めてほむらと対面する何日か前の事だ。

ほむらが目を覚ましたのは飽きるほど見慣れた病室のベッドの上だった。

また駄目だった……。

そう心中一人ごち、そして己に喝を入れ直す。

もう終わってしまった事を今更くよくよ悩んでいったい何になる?

今の私にはまどかの運命を変えるという使命がある。

弱音を吐くことは許されない。

私が背負っているのはまどかそのものなのだから。

慣れた所作でベッドの上に無造作に置いてあった

ソウルジェムを目の前にかざし、視力を魔法の力で矯正する。

これで何度目かもわからぬ視力の矯正を終え、

ほむらは何度だって繰り返される呪われた「毎日」へと、

迷う事無くその足を踏み入れた。

〜☆

ほむらが魔法少女になる前、

彼女が普通の人間と同じ時の流れを生きていた頃。

まどかと出会うまで、

彼女の人生における楽しみと呼べる代物は、

わずかしかなかった。

「あ、あ、あ……暁美ほむらです。

その、えっと、よ、よろしくお願いします」

心臓病を患っていたせいで、

それまでの彼女の人生は病院暮らしが大きくその割合を占めていた。

それが原因で身体はびっくりするぐらい貧弱で、勉強も全くできない。

自分に自信が無く、

人に話しかけるのも話しかけられるのも億劫だった。

友達なんて生まれて一度も出来た事がなかった。

「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたの。

久しぶりの学校だから、色々と戸惑うことも多いでしょう。

みんな助けてあげてね」

見滝原で生まれた画期的な新技術を求め、

両親を仕事の為に地元に残しほむらは一人見滝原の病院に転院してきた。

そしてそのおかげで体調もだいぶ安定し、

こうして中学生活を送れるまでに回復したのだ。

しかし彼女が生きていく為に費やされてきた金額は

いったいどれほどの物だっただろう?

その事実だけでほむらは萎縮してしまう。

自分の命がそれにつり合う物とは到底思えない。

金喰い虫。

どうして治っちゃったのかな……。

私なんかがこれから生きていたって

どうせ惨めな人生を送るだけ……。

だったら他の誰かにあのお金は費やされるべきだったんじゃ……。

私なんかが……。

「ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ!」

転校初日、保健室に連れて行って貰う途中に鹿目まどかに言われた一言。

その一言が今もほむらの耳にこびりつき、

決して離れようとしない。

〜☆

まどかが普通の女の子とは違う存在、

魔法少女だとほむらが知ったのは

転校初日の放課後の事だった。

転校初日、勉強はさっぱりわからず、

体育は準備体操だけで脱落し、

クラスにもうまく溶け込めなかったほむらは放課後酷く落ち込んでいた。

そんな時ほむらの脳裏にその日休み時間にまどかに言われた言葉が甦る。

何人ものクラスメイトから絶え間なく浴びせかけられた質問の嵐。

その中で困っていた私を連れ出してくれた優しい人。

まどかと呼んでと言っていた。

ほむらちゃんと呼んでいいかと言っていた。

ほむらはそれまで自分の名前が嫌いだった。

自分の名前を意識するたびに、

名前の厳めしさによって、

自身の情けなさがより際立ってしまう気がしていたからだ。

「ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ!」

無理だよ。

私、何も出来ない。

人に迷惑ばっかり掛けて、恥かいて。

どうしてなの?

私、これからも、ずっとこのままなの?

『だったらいっそ、死んだほうがいいよね』

「誰か」の声がする。

死んだ方が、良いのかな。

『そう、死んじゃえばいいんだよ』

私なんて死んでしまった方が……?

「ど、どこなの。ここ?」

気がつけば辺り一面異様な光景が広がっていた。

まるで悪い夢を見ている様な……。

混乱するばかりで何も出来ない。

しかしほむらは直感していた。

これはきっと悪い夢なんかじゃなくて紛れもない現実。

とても良くない事が今周囲で起こっている。

……私、ここで死んじゃうのかな?

「間一髪って所だね」

そんな時、奇抜な格好をしたまどかが

突然ほむらの前に姿を現した。

金髪の少女、巴マミと共に現れた

まどかの姿をほむらが忘れる事はないだろう。

その姿は可憐で可愛らしく、

服装はピンクを基調としておりとても彼女に似合っていた。

それはまさにほむらが小さい頃憧れていた

魔法少女のイメージそのものだった。

「いきなり秘密がバレちゃったね」

まどかが弓にピンクの魔法の矢をつがえる。

「クラスのみんなには、内緒だよっ!」

矢が異形の化け物を襲う。

ほむらは思った。

ああ、私もいつかこんな風になれたら……。

〜☆

「鹿目さん……」

ほむらが一人まどかの亡骸の前にうずくまっている。

ほむらはまどかと出会ってから、

何度も魔法少女になろうとした。

まどかとマミに勧められ

『魔法少女体験ツアー』に幾度も参加した。

そして魔法少女、マミ、特にまどかへの憧憬をますます強めた。

けれど結局魔法少女になる踏ん切りは最後までつかなかった。

怖かったのだ。

魔法少女になってさえ

何も役に立てないかもしれない自分自身が。

死に近い環境で長い間過ごしてきた彼女だからこそ、

現実の魔法少女という物が、

アニメなどで見られるような

希望にばかり溢れた物ではない事が本能的に理解出来ていた。

死ぬのは怖い。

戦うのは怖い。

だがそれ以上にまどか達から見限られてしまうのはもっと怖い。

自分が魔法少女に加わる事で、

せっかくのマミとまどかの息の合った美しい連携、

それに『魔法少女』そのもの自体を穢してしまう気がした。

だからマミとまどかの好意に甘え判断をズルズル先延ばしにした。

だがそれの結果がこれだ。

最後の最後までほむらは事態を近くで見ているばかり、

ただ怯えるばかりで何も出来なかった。

マミは死んだ。

なによりまどかが死んでしまった。

私のたった一人の最愛の友人。

まどかと出会えてからのほむらの毎日はまさに薔薇色だった。

毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかった。

苦しい事も辛い事でさえも彼女と一緒なら意味のあるものに思えた。

気が合うとか話が合うとかそういう次元の話ではない。

まどかはほむらにとって

私にはこの人しかいないと思わせる様な本当の、最高の友達だった。

最初の友人、そしてかけがえのない唯一無二の親友。

その人が何も為せずにあっさりと死んだ。

ワルプルギスの夜はまどかが死んでからもしばらく見滝原を荒らし続け、

終いには勝手に満足してどこかに消えていった。

正義の魔法少女、巴マミは高貴に戦い、敗れ、そして最初に死んだ。

かなりのベテランで、

ここら一帯の魔法少女達の間で

最強の称号を欲しいままにしていた彼女が死んでしまっては、

魔法少女としてただの新米に毛が生えた程度の経歴しか持たない

まどかにはどうしようもなかったのだ。

それがほむらにはたまらなく許せなかった。

まどかの笑顔、未来、幸せの全てを

どうしようもなく邪魔する現実を憎悪するしかなった。

「どうして?死んじゃうって、わかってたのに。

私なんか助けるよりも、貴女に、生きててほしかったのに」

その時まどかの言葉がほむらの脳裏に甦る。

ほむらちゃん。

私ね、あなたと友達になれて嬉しかった。

あなたが魔女に襲われた時、間に合って。

今でもそれが自慢なの。

ほむらは思う。

そう、私だけがあの地獄をおめおめ生き延びてしまった。

なにも出来ずただ無力に見ている事しか出来なかった。



どうせ私なんかにはアレはどうしようもなかったんだ。

……本当に私には何も出来なかったのだろうか?

そんなはずはない。

機会は幾らでもあった。

あの時私がああしていれば。


あの時ああしてさえいれば。



あの時。




あの時……。





あの時……!

後悔は止む事なく心の底から溢れ、

そして行き場を無くしやるせのない怨恨へと変わる。

こんな私ではまどかにふさわしくない。

友達だと胸を張って言えはしない。

貴女の様になりたかった。

貴女に守られるばかりではなく、

貴女を守れるようになりたかった。

貴女一緒に、隣を歩きたかった。

ただ、それだけなのに。

けれど失った時間は帰ってこない。

やり直す事は出来ない。

都合良く奇跡が起こりでもしない限りは。

「その言葉は本当かい?暁美ほむら。

君のその祈りの為に、魂を賭けられるかい?

戦いの定めを受け入れてまで、

叶えたい望みがあるなら、

僕が力になってあげられるよ」

今、インキュベーターの甘い囁きを拒絶するなんて事は

ほむらには欠片も考えられなかった。




そしてその日、新たな魔法少女が一人生まれた。

更新終わり
描写がくどい気がする
今回露骨にマミさん関連の話を避けたのはおわかり頂けるでしょう
次回マミさん関連もろもろの話

更新時期は未定!


>>1のせいで寄生獣を買い始めました
すごく面白いね興味はあったけど早く買えばよかったよ…

更新再開
丁度いいとこで途中切ったのでまたしても転校までは先延ばし

>>636
誰かが新しく寄生獣に接するきっかけに
コレがなれたのなら私としてもとても嬉しい限りです

ただどちらかの原作とかをなぞるだけの様な内容だったらそれこそ原作読めば済む話なので
出来るだけ面白く、元の作品を又見返したり新たに見てみたくなるような話にしたいと思っています

原作好きな人がこれを気に入らない事はあるでしょうが
これが面白いと少しでも思って頂けるようなら自信を持って寄生獣をお薦めできると思います
まどマギの方についてはどうかわかりませんが

〜☆

おかしい。こんなはずはない。

『今回』は何か世界を構成している重要な「歯車」が狂っているに違いない。

暁美ほむらは焦っていた。

彼女の主な能力は『時間移動』である。

魔法少女変身時、

左腕に装着した魔法の盾に収納されている砂時計の上部分にある砂が、

全て下に落ち切った時から発動する事が可能。

その時から約一か月前の平行世界に移動し、

新しく全てをやり直す事が出来る。

砂時計内で落ちる砂の流れを止めて時間を停止させたり、

様々な物を盾の中に収納したりする事も出来るが、

それは時間移動という能力の副産物に過ぎない。

時間を移動できる。

それは何度失敗しても、

自分の意思が折れずにいる限り

何度だってその失敗を否定出来るという事だ。

しかし平行世界への時間移動というのは中々厄介な物で、

色々細かかったり割とそうでもない事象がそれぞれの「時間軸」、

ほむらの繰り返しの起点から既に異なっている。

巴マミの事故の時期、巴マミと佐倉杏子との関係。

上条恭介のさやかへの好感度、

魔女の出現時期などの様々。

しかも一見シチュエーションが同じに思える一カ月を、

前の時と全く同じように行動してもその結果は異なってしまう。

人間の心の動き、行動はそれだけ微妙な物だという事なのかもしれない。

ほむらにとってこの微妙な差は明らかに不利だ。

けれども、それは同時に

「ワルプルギスの夜」を無事に超える可能性が

ちょっとした所に転がっている事を意味しているようにも思えた。

ほむらは諦めない。

たとえどんなに未来の展望があやふやであっても。

鹿目まどかを魔女に、

魔法少女なんかに絶対させずにワルプルギスの夜を越えてみせる。

自分自身と繰り返しの中で死んでいったそれぞれのまどかにそう誓っていた。

繰り返す度に毎度毎度大なり小なり変容する予測のつかない「約一か月」を

ほむらはまどかの為に辛抱強く奔走し続ける。

そして数えるのを諦めるほど同じ時間を繰り返し、

時間軸それぞれのデータを独自の資料にまとめたりなどした結果、

時間軸ごとに起きるイベントのパターンを大雑把ではあるが

ある程度までは読めるようになった。

しかし『今回』のイレギュラーはほむらの想像の範疇を遥かに超えている。

まずインキュベーターが積極的にまどかに接触しようとしていない。

時間移動し終えてから転校するまでのこの約一週間に、

ほむらは最初の頃かなり手間取ったものだ。

インキュベーターとまどかとの接触は出来るだけ避けておく必要があった。

インキュベーターとまどかとの接触が早まれば早まるだけ、

まどかが契約してしまう確率、

それもより早い時期に契約してしまう確率が高まってしまう。

まどかが魔法少女になる。

それはその平行世界の全てが、

ほむらにとって既に無意味な物となった事を意味するばかりでなく、

文字通りほむらの生命、

そして時間遡行そのものを揺るがす重大な問題だった。

ほむらが時間遡行を繰り返した結果、

まどかにはほむらの巡って来た数多の平行世界の因果が全て繋がれてしまった。

だからまどかには本来有り得ないレベルで莫大な魔法少女としての素質が備わっている。

つまりそれは最悪の魔女にもなりうるという事でもある。

因果の膨れ上がったまどかの魔女化は、

気が遠くなる様な量の感情エネルギーを発生させると同時に、

地球を滅ぼすという結果へと繋がる。

しかもまどかの因果はほむらの遡行回数に応じて次第に増大していき、

必然まどかの魔女化による地球滅亡にかかる時間はどんどん短くなっていく。

ほむらは盾の中の砂が完全に落ち切るまでは新たな平行世界へと移動する事は出来ない。

もしまどかが早い段階で魔女になってしまえばそこに待っているのは恐ろしい逃避行だ。

救う事の叶わなかったまどかから背を向け逃げ去る。

そして時間遡行が間に合わなければもう二度とまどかを救う事は叶わない。

それはほむらにとって絶対に避けなくてはならない事だった。

絶対にまどかの運命を変えて見せる。

彼女が背負っているのはまさにまどかの未来そのものだ。

その上さらに最悪の可能性はそれだけではない。

下手をしたらまどかが魔女化した瞬間に

地球が滅亡するという可能性すらある。

ほむらがまどかの魔女化を最後に目撃したのは

だいぶ前の時間軸における出来事なのだ。

となるとまどかが契約してしまった場合、

魔女になる前に彼女のソウルジェムを砕く必要が出てくる可能性がある。

しかしほむらにとってそれはとても耐えがたい事だった。

自分の守るべき人を自分が手にかける。

あんな事は一度でもう十分だ。

あんな事はもう二度と……。

だからこれまでインキュベーターがまどかに接触するのを

なるべく妨害するように努めて来た。

ところが『今回』は、

そもそもインキュベーターをまどかの傍どころか市中で見かけないし、

ほむらというイレギュラーな魔法少女の実態把握の為に

接触を試みようとしてくる事すらない。

インキュベーターの行動は時間移動の中でほとんど変化しない物の一つだった。

まず遡行し終えたばかりのほむらと一度接触を試みる事、

まどかとの契約の機会を伺う事、

この行動パターンをインキュベーターが変更するというのは明らかにおかしい。

それにそれ以上に明確な、

今まで見た事も聞いた事も無いイレギュラーが

『今回』の時間軸には存在する。

『ひき肉ミンチ殺人事件』だ。

ほむらが調べた結果、

それが何カ月も前から全世界で多発している

凄惨で異常な事件だという事はわかった。

しかしどうにも妙なのだ。

いくら情報を調べてもその全体像がはっきりしない。

まるで何者かに情報の収集を妨害されている様な気すらする。

おそらくこの事件は魔女の仕業ではないのだろう。

それにしては余りに規模が大きすぎる。

もっともほむらはこの簡単な推測に、

マミに言われてようやく思い至ったわけなのだが。

巴、マミ……。

ほむらがマミについて思いを馳せる。

『今回』の彼女はいつもと比べてまるで別人のようだ。

精神が明らかに安定している。

この時期いつもの警戒心と緊張感の塊みたいな彼女だったら、

得体のしれない魔法少女である私の肩を馴れ馴れしく急に掴んだり、

手を合計二度も差し伸べようとはしなかったはず。

もしかしたら、今度こそ、今度こそは……。

ほむらは強く唇を噛み締めた。

駄目だ。

何度同じ間違いをすれば気が済むのか。

彼女は『魔法少女』の真実を受け入れるにはあまりに「正しすぎる」。

自分の理想に妥協する事、

それは彼女にとって自身の何もかもを完全に否定する事と一緒なのだ。

でも、それでも……。

それでも……。

ほむらの意識が過去へと向けられる。

まどかが彼女にとっての「憧れ」だとしたら、

彼女にとってマミは「正義のヒーロー」そのものだった。

〜☆

ほむらが契約する前、

彼女が本当に初めてマミと出会った時間軸。

ほむらはマミの事が苦手だった。

優しく気丈で正義感に溢れる、落ち着いて大人びた先輩。

全てがその頃のほむらには眩し過ぎた。

それでももし、互いに心を開きあう事が出来てさえいれば、

もっと二人は仲良くなれていたのかもしれない。

しかしほむらはマミが自分を完全に認めていないと感じていた。

別にマミがほむらに対して特別何かを言ったりした訳ではない。

けれど自分と同じ魔法少女のまどかと

「ただの一般人」であったほむらに向ける「目」が明らかに違っていた。

ベテランの彼女が魔法少女以外の者に対して無意識に作っていた心の壁。

おそらくほとんどの人はそれに気づかないだろう。

だけれども、日々周囲の人の目に敏感に怯え、

自身の無力さに打ちひしがれていたほむらにとって、

それはマミとの間に明確に立ちふさがる頑丈な壁だった。

「完璧」な彼女にそんな目で見つめられてしまっては

ほむらはどうしたって萎縮するしかない。

そしてマミと「後輩」と「先輩」以上の関係を築く事は結局叶わぬまま、

ワルプルギスの夜に敗れマミが死んだ。

ほむらが契約した後も、

彼女のマミへの苦手意識は消える事はなかったし、

むしろそれは悪化した。

マミとまどかのコンビは美しかった。

二人のコンビはほむらが夢想した

「まどかとほむらの魔法少女コンビ」の理想像だった。

マミは戦い方が華やかだし、

ベテランで経験も豊富である。

ほむらが客観的に見て、

まどかの傍に立つのにふさわしいのは自分ではなく

マミであるように思えた。

だって私は時間を止める事しか出来ない。

巴さんには何一つとっても及ばない。

魔法少女だけでじゃない。

何もかもでだ。

ほむらは彼女に嫉妬せずにはいられなかった。

私が、私が本当はまどかの隣に立つべきなんだ。

あなたになんか……、あなたになんか……?

心の中で勝手に対抗心を燃やしている負い目のせいで、

マミが魔法少女になったほむらに心を開いても、

今度はほむらの方が歩み寄れなかった。

とはいえほむらがマミを嫌っていたかというとそうではなくて、

むしろマミは彼女にとって尊敬、あるいは崇拝の対象だった。

それまで誰にも知られずに、

たとえ一人でも町の人を守る為に自分の利益を省みず

使い魔や魔女とずっと戦い続けていた彼女。

いつも正しくて、

誰にでも優しくて、

どんな事があっても挫けない。

確かにちょっと警戒心は強いかもしれないけど、

それは町の皆を守る責任を彼女が背負ってるって事の裏返しだ。

あの恐ろしいワルプルギスの夜に恐れず躊躇う事なく挑んでいったマミの姿は、

契約前だったほむらの目に焼きつき、

魔法少女になったばかりの彼女に常に勇気と活力を与えてくれた。

どんなに怖くたって心の内に「正しさ」を有した人間は

前を見て歩いていけるんだ。

ほむらにとってマミはまどかとはまた違った意味で精神的な支柱だった。

ほむらにとってマミは、

この世界には「正義」がきちんと存在している事の象徴だった。

だからこそマミの凶行。

マミの死。

マミを殺す事。

マミが挫ける事。

全てがほむらの魂を根底から揺さぶり、

自分の力では決して癒す事の出来ない心の傷を彼女の内に残した。

今日の更新はお終い

次回更新は未定と何度も予防線を張っておきながら
結局分けて投稿しちゃうので日にちがあんまり経たない
目処は経ってないんだよ!本当だよ!

更新
次回から本編一話
今まで実に長かった

例えるならちゃんと育てばこんな実がなるなーとか
考えながらずっと種まきをしていた様な物です
とりあえず種はあらかた撒き終えました


……収穫せずに放置して腐らせないように頑張ります

〜☆

初めてマミに殺されかけた時の事をほむらはとてもよく覚えている。

……あんな光景、あんな出来事、絶対に忘れられるはずがない。

その惨劇のきっかけとなったのは、

魔法少女の契約を交わしたさやかが魔女と化した事だ。

魔女となったさやかはほむらが殺した。

助けられるはずもなかったからだ。

そしてさやかの死を各々が受け入れられずにいる中、

それは起こった。

その場には魔法少女が四人いた。

誰も変身をまだ解いていなかった。

最初の犠牲者は当時協力関係にあった佐倉杏子。

彼女は何の前触れもなしにマミにマスケット銃で撃たれ、

ソウルジェムを砕かれた。

「はっ」

ほむらの口から音が漏れる。

ほむらはマミのリボンによって、

佐倉杏子が殺害される直前に、

その身体をあっと思う間もなく拘束されていた。

「巴さん……?」

ほむらにはまるで意味がわからなかった。

マミがどうしていきなり杏子を殺したのか、

そこまで彼女の頭の中はまだ回っていない。

ほむらの頭の中にあった疑問はそれではない。

どうして自分が銃を向けられているのだろう。

マミはいつも「正しい」。

ならば私が間違っているに違いない。

でもいったい何を?

マミに銃を向けられる理由について、ほむらの心当たりは一つだけ。

さやかの魔女を殺した事だけだ。

でもそれ以外他にどうしようがあったというのだろう?

あれはどうしようもなかった。

だって……。

「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!」

ベテランで判断力に優れ、

咄嗟の行動に移れる杏子をまず油断している最初の内に殺害し、

その前に時を止める厄介な能力を持つほむらを縛っておく。

どれほど自暴自棄になっての行動かは定かではないが、

優しい彼女に似合わぬどこか冷徹さを感じさせる手際の良さだった。

しかしそんな細かい所まで半分パニック状態にあるほむらの頭が回るはずもない。

ほむらはただこう思った。

いずれ魔女になるから皆死ぬべき?

そんなのおかしい。

マミがどういう経緯でその発言をし、

杏子を殺しほむらを殺そうとしたのか、

それは今となってはもうわからない。

それどころかその時間軸のマミと杏子の関係、

あまつさえ何故さやかが魔女になってしまったのかもはっきりしていない。

その時間軸のほむらはまどかの事しか頭になかった。

魔法少女になったら順当にいけばいつかは魔女になってしまう。

なのにまどかが魔法少女になるのを止められなかった。

助けなくては、助けなくては。助けなくては……。

だからさやかとの対立も何もかも、解決は二の次だった。

皆のソウルジェムを極力濁らせないよう徹底させる。

キュゥべえについて皆に警告する。

それしか頭になかった。

その当時、五人のチームの雰囲気は最悪だった。

さやかとほむらの対立、そこに杏子が加わる。

まどかはとても穏やかで優しい性格をしているが、

自ら主体的に意見を発して集団を引っ張っていくタイプではない。

しかもどちらかといえばいつもほむら寄りの立場をとった。

となると必然的にそういった争いを仲裁したりと、

集団をまとめ上げるのは全てマミの役目となる。

皆全てのストレスをマミに任せきりにして、

各々好き勝手な事を言っていた様な物だった。

マミが誰にも相談出来ず、

ずっと一人で頭を悩ませていたのは間違いない。

でも本当にそれだけなのだろうか?

マミには他にも何かあったのではないか?

五人も同じ町に魔法少女がいたせいで当然発生した

グリーフシード枯渇の問題。

マミの友達であるキュゥべえを警戒すべきだと説く

ほむらへの不信感。

考え付く問題は幾つもあった。

何を抱えていたとしてもおかしくない。

ただ一つ確かなのはほむらがマミにリボンで拘束され、

マスケット銃を向けられているというこの状況だけ。

どうにかしてこの拘束から逃れなくてはならない。

「あなたも、私も!」

マミが照準をほむらに合わせる。

それはほんの僅かの時間だった。

しかし同時にほむらにとって全てが決定する時間でもある。

「正義」であるはずの巴さんが私を撃とうとしている。

でも私は間違っていない。

だったら巴さんは「正しくない」?

そんなはずはない。

巴さんはいつも正しい。

優しくて、気丈で、強くて、そしてどんな事があっても……。

巴さんは私を殺そうとしている。

それは間違っていないの?

違う、私は魔法少女だ。

「魔女になるんだ」。

人間じゃない。

でも「それ」がいったい何になる?

私のこの「まどかを助けたい」って思い。

「これ」は本物のはずだ。

「これ」がある限り私はまだ死ぬわけにはいかない。

「これ」がある限り私はまだ「人間」だ。

心さえ残っていればその人はまだ「人間」なはず。

身体なんて物は元々所詮ただの魂の容れ物だ。

魔法少女になる前の私は、

いつも自分が弱くて何もできない事に苦悩するばかりだった。

身体は人間の本質じゃない。

役に立たない身体に執着するくらいなら魔法少女になった方がましだ。

その方がずっと役に立つ。

魔法少女はいつかは魔女になるのかもしれないけれど、

だったらそうなる少し前に自分の手で死んでしまえば良い。

魔女は当然人間じゃない。

ただ少なくとも今の私は「人間」だ。

生きようとする意志のある一人の「人間」だ。

私にはまだやらなくてはならない事が残されている。

……「正義」であるはずの巴さんが「人間」を殺そうとしている。

いや、さっき佐倉さんを殺した。

巴さんは間違っている。

いや、でも……。

私は正しい。

いや、でも……。

ほむらがリボンの中でもがく。

しかしそれは完全にほむらを捕らえていて、

彼女の力ではどうする事も出来ない。

いくら考えたって解決策なんて思いつくはずがない。

全てがほむらの思考の中でぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。

何が何がかわけがわからない。

怖い。

怖い……。

だからほむらの口から反射的に飛び出した言葉はたった一言だけだった。

「や、やめてっ……」

その時まどかが矢を放つ。

マミの頭部にあった髪飾り状のソウルジェムが砕けた。

倒れるマミ。

その途中発射される銃弾。

しかしそれはほむらからは外れ、

少しだけ離れた地面に着弾した。

自分が今マミに殺されかけたというのに、

ほむらの心はマミが倒れ動かなくなったのを見て

どんどん凍てついていった。

恐怖心が麻痺していく。

私は生きている。巴さんは死んだ。

巴さんは私を撃たなかった。

大丈夫、巴さんは「正しい」。

でも、もし……。

もし、もしあの時……。

巴さんに撃たれていたら私はもう二度と……。

「嫌だぁ……。もう嫌だよぉ……。こんなの……」

まどかが泣いている。

まどかを助けなくちゃ。

地に転がるマミの死体から目を逸らし、

ほむらは泣き崩れるまどかの元へと歩き近づいて行った。

〜☆

それから何度も繰り返しを重ねた結果、ほむらは悟った。

マミに魔法少女は魔女になるという真実を受け入れさせるのは無理だと。

きちんと段取りを整えさえすれば、

あんな惨劇は起こさずマミに魔法少女の真実を伝える事は出来た。

しかし真実を知ってしまったマミは「魔女を殺す事が出来なくなる」。

魔法少女にとって魔女を殺せないというのは致命的だ。

それにたとえ仮にそれまでチームが上手くいっていたとしても、

誰か一人が精神の均衡を失ってしまうだけで、

それは滅茶苦茶になってしまいがちである。

ましてやマミは、

「佐倉杏子」や「美樹さやか」の精神的な面で

かなり重要な位置を占めている事が多いのだからなおさらだ。

マミが魔法少女の真実を知ってから

魔女を倒す為に戦う事が出来たのは最高で三回程度。

マミにとって魔女は、

頭ではもう人間ではないとわかっていたとしても、

かつて人間だったモノ、

自分が本来守るべき相手に変わりなかったのだ。

戦えない魔法少女一人を養いながら戦っていくというのは

中々大変な労力を要する。

マミは何も出来ない自分を悔やんでしまう。

するとソウルジェムが濁る。

戦って帰って来たメンツより

マミのソウルジェムが濁っていた事が何度もあった。

放っておくと壊れてしまう「お荷物」。

手入れをしなくてはならない。

けれどそんな事をしている場合ではないのだ。

ワルプルギスの夜までは日にちも余裕もありはしない。

しかし黙って捨てておく訳にもいかない。

実に厄介な「お荷物」だった。

ほむらはそんな不甲斐ない状態のマミにどうしても激しく苛立ってしまう。

貴女は「正義」の魔法少女のはず。

いったい何をやっているの。

だからといってマミを最初から完全に度外視するという訳にもいかなかった。

ワルプルギスの夜と戦うには欠かすのがあまりに惜しい貴重な戦力だからだ。

ワルプルギスの夜は超弩級の大型魔女であり、

結界を必要とせず辺り一帯を荒らしまわる。

スカートから覗く巨大な歯車と、

宙に逆さに浮かんでいるのが特徴的である。

『彼女』が他の一般的な魔女と比べ物にならないのはそのサイズだけでなく、

攻撃力と防御力もそれらとは桁違いだ。

攻撃を一発貰えばあっという間に削られてしまう。

魔力の籠っていない攻撃はほぼ無効化されてしまうし、

魔法少女の攻撃も生半可な物では通用しない。

たとえ攻撃力が高くとも、

ベテランの魔法少女以外が『彼女』と戦うのは

よほどの才能がない限り自殺行為だった。

『彼女』との闘いの基本は回避。

その為には何よりもまず最初に、

磨き上げられた戦闘のセンスが重要だからだ。

そして近接タイプの魔法少女もあまり『彼女』と戦うのには好ましくない。

ある程度の距離がなければ『彼女』の攻撃を回避するのは至難の業である。

こうした魔法少女としての相性を考慮すると、

ベテランで遠距離タイプかつ火力のあるマミは、

ワルプルギスの夜と戦うのにかなり適した魔法少女だった。

ほむらの「時間を止める能力」。

更に杏子が周囲の露払いその他をする。

これでようやく『彼女』とまともに戦える手筈が整う。

もしさやかがベテランの魔法少女だったら

もっと容易く勝機を増やす事は可能だっただろう。

しかし現実問題、

たとえ近辺の魔法少女に助けて貰おうとしても、

見滝原近辺にワルプルギスの夜とまともに戦えるレベルのベテラン魔法少女は

杏子とマミしかいなかった。

一か月では誰かを教育するには月日が全然足りない。

つまりマミが戦いに加わらないというだけで、

『彼女』から勝利を収めるのはかなり難しくなってしまう。

けれどマミは魔法少女の真実を受け入れられない。

……別に真実を知らなければそれに悩む事もないんじゃないか。

杏子にさやかだって真実を知って平常心でいられるという訳ではないのだ。

どうしてわざわざそれを教えて彼女達の精神の平穏を乱す必要があるというのか。

だからほむらは誰かに真実を全て話して打ち解け協力を求める方法をやめた。

私の事を全てを信じて貰う必要なんてない。

ワルプルギスの夜との闘いに協力さえしてもらえればそれで十分なのだから。

すると当然マミと信頼関係を築くのは困難になる。

まどかとの接触阻止の為にキュゥべえを妨害しなくてはならないのも、

彼女との良好な関係を築くのに暗い影を落とした。

彼女にリボンで拘束されたのは一度や二度ではなかった。

しかしほむらはマミを信じていた。

突然現れた私を信じられないというのも当然だ。

それでもいつかは巴さんと協力出来るに違いない。

だって彼女は「正しい」。

私達はわかりあえるはずなんだ。

手を取り合っていけるはずなんだ。

そしてとある時間時間軸で、

そんなほむらの微かなマミへの希望すら打ち砕く

まさに決定的な事件が起こった。

ちょっと用事で続きの投下は時間空きます多分午後以降です


3週目のあれではないとすると何だろう?
TDSか?ほむら視点から見たら魔法少女の真実を知ってまどかを魔法少女にしたようなものだからな
それからマミさんとワルプルギスとの相性がいいと言うが
1週目、2週目では真っ先にやられてるんだよな…

〜☆

事のあらましはこうだ。

その時間軸、ほむらは素性その他を皆に明かそうとはしないが、

出来るだけ全員に友好的で愛想よく振る舞うように努めていた。

さやかが魔法少女になった。

杏子が仲間になった。

さやかを教育するのに何日も何日も費やした。

さやかの状態が芳しくない。

さやかが魔女になってしまった。

これくらいの事ならそれほど珍しい事ではない。

「魔法少女」という世界は元々幸せだった少女が生きていくには余りに辛い。

それに、使い魔に襲われた幼い女の子を

さやかが目の前で助けられなかったりなどと、

運悪く不幸が幾つも重なったというのもある。

しかし残念ながらこの時間軸はそれだけでは済まなかった。

杏子がさやかを助けようと単身結界に乗り込んで説得を試み、

最後はさやかを道連れに自爆した。

その時間軸でのさやか、マミ、杏子の仲はほとんど一心同体と呼べる程であり、

ほむらの経験上でもかなり珍しい良好な状態だった。

そして二人の死をマミとほむらは、

それの一部始終を目撃していたキュゥべえから聞かされたのだ。

どうしてそんな大切な事教えてくれなかったの!?

聞かれなかったからね。

これもキミ達が聞いたから教えてあげただけだよ。

その後、心の糸がぷっつり切れてしまったらしいマミが、

ほむらをリボンで拘束し彼女に向かって発砲した。

ほむらが今も生きていられるのは、

ソウルジェムを破壊されなければちょっとやそっとでは魔法少女は死なない、

という事をマミが知らなかったからだ。

マミはほむらの心臓を撃ちぬき、

咽び泣きながらほむらに背を向けた。

ほむらから少し離れた場所までそのまま歩いて行って、

跪き自分の心臓を撃ち抜く。

ビクリとマミの身体が跳ねる。

しかしそれでは死ねない。

何度もマスケット銃を出現させては、

繰り返し自分の心臓があるはずの場所を撃ちぬく。



パン!パン!パン!パン!……。

どうして……。

どうして死ねないの……?

苦痛に身を震わせながら、

膝を地につけ身体を前のめりにするマミ。

既にほむらの拘束は解かれていた。

盾から拳銃を取り出す。

コツコツ、コツコツ。

ほむらの靴音が、

マミのすすり泣く声以外全く静かな辺り一帯に微かに響く。

しかしマミは自分の事で精一杯で、

背後の物音に気づく余裕がないらしかった。

ほむらが拳銃を構える。

ほむらは彼女のソウルジェムを背後から拳銃で撃ちぬいた。

しかし事はそれだけではまだ終わらない。






その翌日、まどかが三人を生き返らせる為に契約してしまった。

今、ほむらが生きていられるのはおそらく奇跡と呼んで良い事だろう。

「正義」の魔法少女、巴マミは真実を受け入れられない。

彼女ほど優しくて、気丈で、強くて、どんな事があっても……。

それなら「誰が」この真実を乗り越えられるというのか。

「誰も」、未来を信じない。「誰も」、未来を受け止められない。

だったら、私は……。

だからほむらは決めた。

もう、誰にも頼らない。

誰にわかってもらう必要もない。

もう、まどかには戦わせない。

全ての魔女は、私一人で片付ける。

そして今度こそ、ワルプルギスの夜を、この手で。

……だけれども、現実問題それは不可能だった。

それでも少なくともほむらは、

マミにワルプルギスの夜との戦いに関する事以外で

もう必要以上に干渉する気はないし、

無理に信じてもらうつもりもない。

マミと対立する場面が前に比べて格段に増えた。

リボンで拘束される機会が増えた。

その拘束はマミにとって、

威嚇以上の意味を持たない事も多かったのかもしれない。

とはいえほむらにとってマミに拘束される事は

殺されかける事ともはや同義だった。

怖い、怖い。怖い。怖い……。

マミはほむらにとって必要な戦力、

「味方」であるのと同時に、

自分を脅かす「敵」だった。

……それだというのに時々今でも魅了されてしまう。

マミが魔女と華麗に戦っている姿に、

魔女との戦闘終了後優雅に紅茶を嗜む彼女の姿に、

自分の理想を曲げられないその不器用さに。

いまだにほむらにとってマミは「正義」の象徴だった。

そしてそれはいつだって、

「正義」なんてこの世には決して存在しないのだという事を

容赦なくほむらに突きつけた。

〜☆

ほむらがマミについて物思いに耽っている頃、

マミは町のパトロールをとっくに終えて、

ミギーと二人?きりで自宅にてゴロゴロしていた。

「さっきからずっと携帯の画面を眺めてニヤニヤしてばかりいるが、

いったい何がそんなに面白いんだ?」

「ニ、ニヤニヤなんてしてないわ!酷い言いがかりよ!」

不自然に慌てるマミ。

彼女にも自分が多分今ニヤニヤしてただろうなという自覚はあった。

「それで?何がそんなに面白いんだ?」

「……アドレス帳」

「アドレス帳?」

「美樹さんと上条君の電話番号とアドレス前貰ったじゃない」

「うん」

「それって友達っぽいと思わない?」

「クラスメイト二人とマミの親戚の電話番号、アドレスも前から入ってたじゃないか」

「多ければ多いほうがいいの!それに親戚の人達は友達じゃないわ」

「さっききみは電話番号とアドレスを貰う事を友達らしい事だと言っていたぞ」

「……もういいわよ」

それからしばらく二人はただ黙っていた。ミギーがぼそりと囁く。

「明美ほむら」

「え?」

「彼女のアドレスも入手しておくべきだったな。

これからの何かを彼女と取り決めようとしても連絡手段がない」

マミは何かを口にしようとしてまた口を閉じた。

そして今度は幾分控えめに口を開く。

「彼女にもし、そういうのとは別にプライベートなメールを送ったとしたら、

何か返してくれると思う?」

「…………難しい問題だな」

「難しい問題よね」

結局その後も特に何もなく、二人の一日はのんびりと過ぎていった。

今日の更新終わり
ほむら優遇(悪い意味で)

TDSもドロッと具合が物足りなかったので勝手に独自イベントを追加しました
書く前はここら辺もうちょっとエグくなるかなーと思ったらそうでもなかった
……色々と感覚麻痺してるかもしれない

>>681
まどか(とほむら)を守る為に、
常に前に出て庇いながら戦ってたせいで一、二週は真っ先に死んでしまいました(という設定)
足手まといいたら勝てないね、仕方ないね

ワルプルは普通はベテラン+時間停止、
ほむらの経験があってまともに戦えるくらいの難易度のつもり

漫画版との矛盾はスルーでお願いします、はい
(まどポは知らないけど矛盾してたら目を瞑ってください)

(全く関係ないけど最近巴だけじゃなくて乙までパラサイトに見えてきた)

更新

昨日更新予定だったけど
別に昨日投下できなくても
大して書く為の時間が空く訳ではなかったから
二日落ちても影響は特になかった

それと多分今日更新途中途中少し離れます

〜☆

「じゃあ、暁美さん、いらっしゃい」

ほむらが扉を開け教室に足を踏み入れる。

何度も繰り返されてきた転校初日。

彼女がこの学校に転校してきたのはいったい何度目の事だろう。

何とはなくほむらがクラス内を一瞥する。

すると強烈な違和感がほむらを襲った。

特に何か教室の設備がいつもと違っているという訳ではない。

それならいったい何が……。

「はい、それじゃあ自己紹介いってみよう」

その時ほむらの目がついに違和感の正体を見つけた。

上条恭介がクラスに当たり前の様にいるのだ。

彼だけ車椅子に座っており、

それでいてさも当たり前であるかのように、

クラスの風景に実に良く馴染んでいた。

「暁美ほむら……です。よろしく、お願い、します」

おかしい。絶対におかしい。

ほむらが上条をじっと凝視する。

その視界には彼の隣に座っているさやかの姿も映っていた。

今までほむらの経験上、

上条が完治不可能な大怪我を

左腕に負っていなかった事は一度もなかった。

ならば何故上条は今こうして当たり前のように

ピンピンとしているのだろう?

まさかさやかが既に契約してしまったという事だろうか。

これは由々しき事態だ。

ただでさえ『今回』には、

『ひき肉ミンチ殺人事件』という

決定的な特異点があるのだ。

より一層注意しなくてはならない。

「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたの。

久しぶりの学校だから、色々と戸惑うことも多いでしょう。

みんな助けてあげてね」

だけれどもし、

もしもさやかの契約なしで、何か別の要因によって上条の腕が完治。

あるいは彼が『今回』左腕にそこまで酷い怪我をしていなかったとしたら……?

そうだとしたらそれは千載一遇のチャンスだ。

本来親友であるさやかの存在は、

まどかの幸せな未来には欠かす事の出来ない……。

「えぇっと、……暁美さん?」

ほむらが我に帰る。

自らの名前が呼ばれた方に顔を向けると、

クラスの担任である早乙女先生が

ほむらの座るべき席を示していた。

「す、すいません。ちょっとぼうっとしてました」

慌ててほむらは席へと向かい、

少し縮こまる様にして自分の席に座った。

〜☆

休み時間になるとすぐに、

ほむらは数人のクラスメイト達に席の周りを取り囲まれた。

囲んでいる者達にほむらへの悪意があるという訳ではない。

ただ単に転校生という存在が物珍しいだけなのだ。

ほむらも転校してきてすぐの

こういうゴタゴタにはもうとっくに慣れっこだった。

しかし『今日』は少しばかりその様相が違っていた。

そんな些末な事柄を気にしていられない程に

彼女の関心を強く惹く対象があった。

「暁美さん?」

怪訝そうな声で名前を呼ばれる。

考え事を一時切り上げ視線を移す。

それまでほむらの視線は、

今も仲睦まじ気に戯れている上条とさやかの元にあった。

「ええっと、ごめんなさい。何かしら?」

「それもうさっきから三回目だよ……。大丈夫?具合悪かったりしない?」

思わぬ所で心配されてしまう。

これでまた一つ、

ほむらのいつも決まったパターンが崩れてしまった。

その場に即した行動をきちんととれないというのは、

ほむらにとっては時として、

死の危険に直結しかねない危険な事だ。

ほむらは自らの不注意さを深く反省した。

しかし同時にその不注意さは、

ほむらに周囲の人々を上手く退散させる口実を舞い込ませた。

「……確かにまだ退院したばかりだし、

学校も随分久しぶりで少し緊張もしてるから、

ちょっと疲れてるかもしれない。

ごめんなさい、

今日の所は質問も程々に一人にさせて貰えないかしら?」

「あっ!ご、ごめんなさい。

その、暁美さんの事情を良く考えもしないで……」

「いえ、気にしないで。

それじゃあ私に関する話はまた今度という事にしましょう」

ほむらのその言葉を契機として、

クラスメイト達は辺りに散らばって行く。

再度、ほむらが視線を上条とさやかに戻した。

何故?

どうして?

さやかが魔法少女になっていたとはっきり判別できたなら、

話はまだ簡単だっただろう。

しかしさやかの指には

魔法少女の証であるソウルジェム、指輪が見当たらない。

とはいえ宝石状の形で持ち歩くのは不便だが、

別に有り得ないという訳でもない。

本当に問題なのは、

さやかがほむらの指にはめられたソウルジェムに

全く何の関心も示さない事だ。

仮にそれが演技だったとして、

魔法少女としての経歴は

もう大ベテランの域に入っている

ほむらの目と「勘」を、

さやかが完全に誤魔化しうるとは考えにくかった。

けれどさやかがいつ頃契約していてもおかしくない以上、

「いつもの」彼女と同じと考えるべきではないのかもしれない。

当然と言えば当然だが、

『ひき肉ミンチ殺人事件』と

上条の『左腕』の間にほむらは何ら関連性を見い出さない。

けれど『今回』がかなり特異な、

警戒すべき時間軸であるという事は既にひしひしと、

嫌になる程感じていた。

「あ、あの、暁美さん……?」

ほむらの肩がビクリと跳ねる。

まどかの声だった。

いつの間にか机を挟んで目の前に立っていたまどかと眼が合う。

ほむらの大げさな突然の反応に、

まどかは少しまごついているように見える。

「……何かしら?」

まどか。

ほむらの張り詰めた心の内が

彼女の前にいる事で少し和らぐ。

いつも通り、契約する前の彼女だ。

優しくて、

普段は少しおどおどしがちな様で、

実は結構芯が強い。

たった一人の大切な友達。

いつも誰かの事を想って傷ついて、そして……。

「えっと、その、保健室……。

あ、暁美さん休み時間お薬飲むんだよね、

だから、えっと……」

いつも通りというのは少し語弊があるかもしれない。

『今回』のまどかは明らかに元気がなかった。

いつも自分に確かな自信が持てないという

悩みを抱えているとはいえ、

誰かと話すだけでこんなにまごまごするような子ではない。

原因はおそらくさやかだった。

彼女が上条と一緒にいてばかりいるせいだろう。

本来さやかと合わせて、

仲良しこよし三人トリオであるまどかと志筑仁美は、

たとえさやかが抜けてもいつも通り二人一緒にいた。

けれども先程クラスメイト達に囲まれていた際、

ほむらがちょっとした拍子に軽く視線を走らせた限りでは、

二人はどことなく憂鬱そうで、

独特のちょっぴり暗い雰囲気を醸し出していた。

仁美にとっては当然の感情だろう。

自分の想い人と親友が目の前でずっとイチャイチャしているのだ。

あの様子だとこの状態はきっと一日二日ではない。

まどかが仁美の気持ちにどれ程気付いているかは定かではないが、

人が自分といる時にどういう事を感じているかなどの

空気を察するのは中々聡い子だ。

二人の仲は自然ギクシャクしてしまって、

それが多分「さやかがいなくては自分には何もできない」と

まどかの自信の無さに拍車をかけている。

いつものさやかなら

そういう風にまどかが何か考え込み過ぎたりした時には、

何か彼女なりのやり方で

まどかを元気づけてやったり気を逸らすのだろうが、

見た所今のさやかは完全に幸せに浮かれてしまっている。

いざこうなってみるとよくわかる。

やはりさやかはまどかにとって絶対に必要な存在なのだ。

しかし今のさやかにはまどかが苦しんでいる事に

気づいてやれるほどの余裕はないだろう。

となると……。

「ええ、保健室の場所がわからなくて正直困ってたの。案内、お願い出来るかしら」

「う、うん」

ほむらが教室を出る際にちらりと仁美の方を見遣る。

彼女はどこかの会話の輪に入る事も無く、

一人ぽつねんとしていた。

〜☆

「鹿目さん」

「な、何?」

廊下に出てすぐほむらはまどかに話しかける。

ほむらは何となく笑いだしたくなる気持ちになった。

いつもなら今頃ここでまどかに『警告』をしているはずだ。

多少棘のある様に、

何を言っているのかわからないと困惑させる様に、

得体のしれない近づき難い人間だと彼女に思われる様に。

だってもし、

まどかがほむらに親近感を抱いてしまえば、

それだけ彼女は魔法少女の世界に近づいてしまうのだから。

彼女の契約理由の大半は自分の為に何かを欲するという物でない。

「誰かの為に」契約してしまうのだ。

そのリスクを自分からあえて増やしたくはなかった。

魔法少女の世界は甘くない。

ましてやほむらが歩んでいる道はもっとそうだ。

だから運動も、勉強も、そっけないクールな態度も、

全て彼女の為に時間をかけて拵えた。

まどかが苦手意識を自分に持ってくれる様に。

彼女に嫌われる事も、

怖がられる事も、

二度と彼女と解り合えない事も、

ほむらは覚悟しなくてはならなかった。

まどかと笑ったり、

冗談を言ったり、

遊んだり、

楽しんだり……。

それはさやか、あるいは仁美の仕事だ。

私の使命は別にある。

まどかにワルプルギスの夜を無事「何事もなく」越えられた未来を見せる。

奇跡なんかにすがらなくたってまどかは十分に幸せなのだから。

そこに私がいなくたってそれは仕方のない事だ。

もう私は十分貴女から生きる意味を貰った。

後は受け取ったモノを返さなくてはならない。

貴女と約束をした。

絶対に貴女を助けてみせる。

もしかしたら、

貴女は私のいない未来で

何か酷い目に遭ってしまうかもしれない。

でも、それでも私には許せないのだ。

貴女があそこで死んでしまうなんて。

貴女に開かれた未来が存在しないなんて。

貴女が絶対に幸せな未来を掴めないなんて。

……貴女の未来をたとえ少しでも切り開く。

その為には

『まどかと私は決して最小限以上の関わり合いを持つべきではない』。

それなのにほむらは今、

まどかのガス抜きをする為ではあるが、

自分から彼女との心の距離を少し縮めようとしていた。

「上条恭介君っているでしょ。あの車椅子に座ってた男の子」

「う、うん」

「彼、天才ヴァイオリン少年として結構有名よね。

私ファンなの。まさか転校してきた学校で

彼と同じクラスになれるなんて驚いたわ」

「わ、私クラシックとかよくわかんないけど

上条君の演奏は凄いと素直に思うよ。うん」

「それで質問なのだけれど、

彼の隣にずっといた

実に活発そうな女の子っていったいどんな子なのかしら?」

「さやか……ちゃん?」

まどかの目に警戒の色が浮かぶ。

どうやらさやかから上条をかっさらおうとしている疑いを、

微かにではあるが持たれたらしい。

ほむらはまどかが気づかぬ程度に

歩調を徐々に緩めながら、

気にせず話を続けた。

「さやかって言うのね。

羨ましい、あんな風に誰かと、

純粋に愛し愛される関係になれるなんて」

「あ、暁美さんはそんなに可愛いのに、

今まで男の子と何もなかったの?」

少しほむらが赤くなって照れる。

しかしすぐに普段と変わらぬ無表情さを取り戻した。

「病院生活も長かったし、

まだ誰かに恋愛感情を抱いた事はないわね。

上条君のファンだと言ったって

それはあくまで彼の演奏が大好きなだけ。

羨ましいわ。

何か自分の本当にやりたい事が見つかってる人って……。

私にはやりたくても出来ない事だらけだったから……」

ほむらが落ち込んでると見える様、顔を伏せる。

下を見つめてはいるが、

まどかが気まずさから焦っている姿が

今にも目の前に浮かんできそうだ。

「あ、あの、その、えっと、あ、暁美さん」

「さやかって子の事よく知ってる?」

「あ、うん、知ってるよ。幼馴染だもん。その、うん?」

「彼女の事をもっと色々知りたいの。

参考にしたいと言っても良いわね。

上条君っていう素晴らしい演奏家、

素晴らしい感性を持つ人の心を射止めたのだから、

彼女もまた素晴らしい人間、

女性であるに違いないわ。

私もせっかく身体の調子が良くなったし、

キャラを変えたいというか、

彼女の様に明るく元気になりたいというか、その……」

自分が今口にしている話の内容のあまりの出まかせ具合に、

ほむらはだんだん言ってて自分が恥ずかしくなってきた。

しかしほむらが言う口から出まかせも、

ある程度までは嘘ではない。

彼女の様に親友として、

堂々とまどかの隣を歩きたい。

さやかの様になりたい。

それは彼女の内に秘められ隠された願望の一つだからだ。

「い、いきなり言われても困っちゃうかなーって……」

それもそうだ。

いくら親友の事とはいえ、

本人の知らぬ所で勝手に他人にその人の事を色々話すのに

抵抗を感じるのは至極当然の事である。

しかしまどかはこういう時の雰囲気と押しに弱い。

多分もうちょっとだ。

そうほむらは見当をつけた。

「そうね、例えば……」

ほむらが彼女の知っているさやかについての知識を駆使しながら、

まどかの口からちょっとずつ、

じっくりと色々な言葉、話を引き出していく。

ほむらにとってこんな事は造作も無い事だった。

まどかを今までずっと見てきた。

多分まどかの事なら他の誰よりも詳しいだろう。

教師、友達、両親、

そしてきっとまどか本人さえよりも……。

まどかとほむら。

保健室へと向かう二人の歩く早さはゆったりと、

まさに牛の歩みの様だった。

〜☆

二人は長い時間をかけてようやく保健室の前にたどり着いた。

申し訳ないという気持ちを

声やら表情やら一杯にこめてまどかが謝る。

「私が色々喋っちゃったせいで、

案内にこんな時間かけちゃってごめんね暁美さん。

……正直退屈だったでしょ?」

「いいえ、ちっともそんな事ないわ。

まどかと喋ってると凄く楽しい。まどかは違うの?」

まどかの表情はさっき教室にいた時と比べてだいぶ明るくなった。

溜めこんでいた物をかなり吐き出してスッキリしたらしい。

ほむらに意図せぬ笑みがこぼれる。

まどかには出来る事ならずっと楽しく笑っていて欲しい。

そう一心に願い続けるほむらからすれば、

まどかが元気になるのに自分が少しでも役に立ったというのは、

思わず微笑んでしまうくらい嬉しい事だった。

「わ、私も暁美さんと喋ってると凄く楽しいよ、うん」

だからだろうか、

つい不用意な言葉がほむらの口から出てしまったのは。

これ以上まどかとの距離を詰めるべきではない事など

本当はわかりきっていたはずなのに。

「ほむらで良いわ」

「……ほむらちゃん?」

「……ええ、そう、そんな感じ」

いつになったら私は懲りるのだろう。

苦々しい気持ちでほむらの胸が一杯になる。

私はまどかと仲良くなんてなれない。

なるべきではない。

そう頭ではわかってるはずなのに、

ふとした時にボロが出る。

自分を抑えられない。

……さやかにはなれない。

なるべきではない。

キリキリとほむらの胸の奥が痛んだ。

そんな時、まどかがポツリと喋り始めた。

「えっとね、ほむらちゃん。放課後空いてる?」

「どうして?」

「ほむらちゃん退院してすぐで、

しかも転校してきたばかりでしょ?

だから見滝原の色々を案内してあげられたらなーって……」

「それは……」

断るべきだ。

聞いてすぐはそう思った。

しかしそんなほむらの脳裏に一つの懸念事項が浮かぶ。

『ひき肉ミンチ殺人事件』。

犯人の目的も正体もわからないこの事件。

魔女や使い魔の結界に巻き込まれたりしただけならば、

助けに行くのもそれほど難しくないし、

何よりこの街には巴マミがいる。

まどかとの距離を一度とり直す為に

ここはこの誘いを断るべきだ。

けれど『ひき肉ミンチ殺人事件』に

もし万が一まどかが巻き込まれたりでもしたら、

私には、そしておそらくマミにもどうしようもない。

どうせここまで来たら彼女を完全に突き放すにはもう手遅れなのだから、

まどかが家に帰るまでなら一緒にいても良いのではないか?

それにまださやかについての話を全部聞いた訳ではない。

さやかが上条と当たり前の様に付き合っているらしいというのも不思議な話だ。

まどかは重要な情報源となりうる。

でもまどかとこれ以上距離を詰めるのは……。

「ほむらちゃん……?」

まどかが不安そうな顔をしてほむらの方を見ている。

その時ほむらは悟った。

ああ、私に今のまどかの頼みを断るなんて事は不可能だと。

どう考えても今のこの雰囲気は、

私とまどかが打ち解けて、

私が友達よろしくまどかの誘いを受ける流れだ。

せっかく元気になったというのに、

少しでも落ち込ませるようなショックを彼女に与えたくない。

与える訳にはいかない。

「ええ、わかったわ。じゃあ放課後お願いするわね」

「う、うんわかった!良かったぁ、一瞬断られるかと思ったもん」

まどかがほむらに心の底からの嬉しそうな笑みを向ける。

その時その日一番の苦しみが、

これでもかと言わんばかりにほむらの心をきつく締めあげた。

私は決してさやかにはなれない。

なるべきではない。

「それじゃあ、授業始まっちゃうし私は先に教室に戻ってるね。ほむらちゃんまた後で」

「ええ、また後で。まどか」

別れの言葉を述べてほむらはまどかに背を向ける。

そして必要のない薬を貰う為、

わざわざ保健室の扉を潜って行ったのだった

更新終わり

コミュ障扱いされてばかりのほむらさんなので

頑張ってそう思われぬ様に努力しました
心なしかまどか狂いっぽくなってしまったのは私の趣味です

(まどかに対してだけ)コミュ力Maxにしただけな感も正直否めない気もします

更新
また途中で抜けるかも

〜☆

放課後、町の案内も兼ねて、

いったい何時ぶりかわからない程『久しぶり』に、

ほむらはまどかと一緒に寄り道しながら下校する事となった。

しかし二人きりでという訳ではない。

仁美にさやかも一緒だった。

どうしてさやかは上条と帰るのではなくこちらを選んだのだろう?

訝るほむらだったが、

良く働くさやかの口から飛び出す話の断片断片から、

すぐにその疑問は解決される事となった。

最近、上条はさやかの手助けなしでもやっていける様にと、

色々自分で何かと試行錯誤しているらしい。

それに加えて放課後は、

ずっとヴァイオリンに向かっている事の方が元々多かった様だけれど、

その傾向に最近更に拍車が掛かっていて、

さやかとの時間を満足にとれなくなっているらしい。

歩きながら聞いてもいないのに

さやかの口は勝手にペラペラ惚気話を吐きだす。

恋愛に、というよりまどかの関係しない事柄全般に

関心の薄いほむらには正直話のほとんどが退屈だった。

しかし、色々上手くいかない事ばかりだけど、

好きになっちゃったんだから仕方ないよね。

そうはにかみながら幸せそうに口にするさやかと、

それを聞いて少しさやかから目を逸らし、

口元を固く結んだ仁美の姿はほむらの印象に強く残った。

四人は一度、

三人が普段放課後良く行く

ハンバーガーショップに立ち寄る事にした。

各々好きな物を注文しテーブルについてさっそく、

さやかが喋り始める。

「しかしよくぞ目下クラスで話題沸騰中の、

文武両道、才色兼備、

超美少女転校生暁美ほむらを確保した!偉いぞまどか!」

現在四人はほむらとまどかが隣同士、

テーブルを挟んでさやかと仁美が座るという位置関係にある。

テーブルから身を乗り出すようにして、

さやかが両手で握り込む様にまどかの手を包んで、

縦にブンブン振った。

幸せに浮かれているさやかは

存外予想を遥かに上回るレベルで面倒臭い、

そうほむらは思った。

「わ、私の手柄というよりさやかちゃんのおかげというか……」

「え?」

まどかの予想外の回答にさやかではなくほむらが疑問の声を漏らす。

「ほむらちゃんはね、

さっき休み時間に聞いたんだけど

前から上条君の演奏が大好きなんだって」

「へー、なかなか良いセンスしてますねー暁美さんは」

さやかがウンウン頷く。

「それでそこからそんな上条君のずっと隣にいる女の子、

さやかちゃんの話になってね。

さやかちゃんの話で凄く二人盛りあがったんだ」

さやかがキョトンとする

「それで?私について何話したのさ?」

「えっとね、ほむらちゃん、

いつかさやかちゃんみたいになりたいんだって。

明るくて元気で、素晴らしい……」

「あーやめやめ!照れるからやめて!」

思いもよらずいきなり自分が褒められ、

羞恥から顔を少し赤くしてまどかの口を押さえ話を遮るさやか。

けれどそれよりも激烈な恥ずかしさがほむらには襲いかかっていた。

自分が先程確かに言った言葉であるけれど、

さやかに少しでも、

彼女に対して何かしらの羨望を持っていると、

万が一にでも意識されるのは

ほむらにとってとても屈辱的な事だった。

「照れる必要なんてありませんわ。

さやかさんが素晴らしい人間だというのは、

私もまどかさんもずっと前から知っている事ですもの」

「えっ?仁美まで?……い、いやぁそれほどでも、ある、かな!」

良家の正統派お嬢様で、

男子からはしばしラブレターが届くほどモテモテ、

日々あらゆる努力を欠かさない。

普段のさやか曰く「超人」である仁美からの滅多にない賛辞に、

気を良くしたさやかは今度はぎこちなくではあるがエッヘンと胸を張る。

「とはいえ勉強に関してはもちろん言うまでもなく、

さやかさんが得意な運動でも暁美さんとのスペック差が

明らかなのもまた確かな事ですけれど」

「……ですよねー」

一瞬で冷静なテンションに引き戻されたさやかは、

改まってほむらの方に向き直る。

「まあそんな訳で私なんかの何かが

暁美さんの参考になるとはとても思えないんだけど、

聞きたい事があるなら何でも聞いてよ。

私だけの事じゃなくても、

恭介の事なら昔からのかなり深い付き合いだし、

多分大体の事なら知ってると思う。

でも恭介の事に関しては自分の事じゃないから

当然他人に勝手に話せる事は限られてくるだろうけどね」

何でも聞いてよ。

そうさやかに言われたので、

お言葉に甘えてほむらは素直に直球勝負で行く事にした。

「上条君とキスは何回したの?」

仁美が少し身じろぎする。

さやかが飲んでいたドリンクにむせる。

ひとしきり下を向いてゴホゴホ咳き込んだ後、

多少涙目になりながらほむらの方を見た。

「そ、それっていったいどういう種類の質問?」

「恋バナよ、恋バナ」

ほむらはもうさやかについてかなりの点で判断を済ませていた。

これまで話した限りだと彼女はおそらく契約してはいない。

魔法少女契約前、

確かに今のさやかには幸せに浮かれていて

『いつも』と違う面もあるが、

魔法少女という重い使命、

運命を背負い込んでしまった者には

発する事の出来ない朗らかな空気の様な物をさやかから感じる。

こういった一般人か魔法少女かどうかの嗅ぎ分けなどに関して、

経験ももちろんたくさん積んではいるが、

ほむらは天才的な性分を持っていた。

それは動物の野生の勘、

例えば草食動物が自身を喰らう肉食動物と

それ以外を本能的に識別したりする能力に少し似ていた。

現在ほむらが知りたかったのは二つ。

上条の腕がどうして治ったのか、

そしてさやかが上条の左腕が治った今でも、

魔法少女になる道を選びかねない強い願いを持っているかどうかだ。

その為にはさやかと上条の関係がどれほど進んでいて、

それに対してさやかがどう感じているかを知るのがおそらく一番手っ取り早い。

そうほむらは考えた。

「ううーん、さっき何でも答えるって言っちゃったからなー。

……よし、じゃあ特別に言うけど、

交換条件として暁美さんの恋愛についての話も後で聴かせてね」

「えっ、でも……」

ほむらには今まで恋愛経験などない。

そう言おうとしたであろうまどかを

ほむらは黙って視線で制止する。

「ええ、私が話せる限りならいくらでも話すわ」

「言ったなー。忘れるなよー」

恋愛経験は全くないけれども、

話の内容が妄想その他でいけないとは言われていない。

所謂詭弁である。

どうせ恋愛以外の何か物珍しい話で誤魔化せばいい。

特に悪びれもせずほむらはそう考えた。

「……キスはまだ一回だけ。

恭介に告白された時に一度だけ。

ギュッと抱きしめられてね……って

これじゃ告白場面までばらしちゃってるじゃん!」

恥ずかしさのあまりさやかの顔は真っ赤に染まり、

彼女は両手で自分の顔を覆う。

その時、今日休み時間に感じた苦しさに少し似た感情が、

ほむらの胸中に浮かび上がってくる。

ここまで完全な「幸せ」に満たされているさやかを

ほむらは今まで見た事がなかった。

何か「幸せ」その他をさやかが手にする時、

そこには必ず魔法少女という運命が付きまとっていた。

そしてそんなささやかな「幸せ」を手にした

さやかに待っていたのはいつも何らかの形の破滅だった。

長い長い時間をかけていけば

当然また違った形の幸せがどこかに転がっているのかもしれない。

きっとそれはまず間違いなく事実なのだろう。

しかしそんな事はほむらにとっては何も問題にならなかった。

ほむらが現実として強く認識しているのは

この繰り返される『一か月』の間の事だけ。

ほむらにとって問題なのは『今』だけだった。

自分の目に映っているこの『今』だけだった。

その観点から見れば、

上条の腕が治らなくてはさやかの本当の「幸せ」は見つからない。

さやかとほむらの境遇は良く似ていた。

たった一人の人の為に、

自分の全てを捧げても良いという思いを秘めていた。

だからこそ、

さやかが魔法少女の契約をして、

いつも潰れていくのを見るのは歯痒かった。

本当はどうにかしてやりたかった。

しかし恋愛や、複雑な他人の人間関係に関しては

自分が関わらない方がきっと上手くいく。

そういう確信がほむらの中にはあった。

それにほむらは最初出会った時からさやかの事が本当はあまり好きでなかった。

元気で明るくて溌剌としていて……。

彼女は自分にない物、契約前のほむらが欲しかったものを全て持っていた。

なおかつまどかの無二の親友だった。

ほむらが契約した後も本当に渇望した物を彼女は最初から持っていた。

ほむらに絶対必要だった、

脅威と戦う為の勇気も元から持ち合わせていた。

そんな恵まれた存在であるはずの彼女が、

自身の運命に押しつぶされてしまうなんて事は本来あってはならない。

大切な誰かへの思いが本物であるはずならば、

どこまでも歩いていけるはずなのだ。

ほむらはさやかの様になりたかった。

けれどさやかはほむらの弱さの象徴でもあった。

恐れる心、

苦悩する心、

全ての印象を強烈に受け取る豊かな感受性、

感情的で繊細な行動原理、

どれもほむらにとっては無用で、

それどころか邪魔にしかならない。

私は彼女の様なへまは絶対にやらない。

さやかの弱さをほむらは心の底では見下していた。

だけれども、まどかとずっと一緒にいるべきなのは、

さやかの様な人間だとも同時に思っていた。

私はさやかにはなれない。

なるわけにはいかない。

さやかの自分への潔癖さ、正義感、優れた感性、

間違いなく彼女は魔法少女に向いていない。

けれど上条の左腕が何らかの原因で治っていて、

魔法少女になる意志さえないのならば、

さやかが諸々のへまの心配をする必要はないのだ。

ほむらが神妙な面持ちで口を開いた。

「上条君と付き合えてあなたは今幸せ?

現在それ以外に何かしたい事、欲しい物は何かある?」

突然のほむらの真剣な調子に少し面食らったさやかではあったが、

顔を覆っていた手を外して、

ほむらの目をじっと見つめる。

そして彼女の問いに堂々とした口調で答えた。

「十分過ぎるくらい幸せだよ。

これ以上欲しい物なんてある訳ない。

きっとこれ以上望んだら罰が当たっちゃう。

このまま毎日の日常が何事も無く続いてくれるなら

私は他に何も要らないね」

さやかがとびっきりの笑みを満面に浮かべる。

その瞬間ほむらは確信した。

『今回』のさやかは魔法少女にはならない。

奇跡なんかよりも今の彼女にはもっと大事な、

確固とした価値を持つ物がある。

彼女は自分の全てを賭けるに足る物を自分の力ではなく、

たとえ偶然であるとしても、

その手中に収めたのだ。

……私はさやかにはなれない。

なるべきではない。

私が「それ」をこの手に掴む事は決してあり得ない。

「そう、それは良かったわね。私も嬉しいわ」

ほむらが笑った。

それを見た三人は全く同じ感想をその笑みに対して抱いた。

まず最初に感じたのはただただ美しいと見惚れる感情だった。

けれどそれ以上に彼女達の心を鷲掴みにしたのはその笑みの儚さ、

絶望的なまでの物悲しさである。

ほむらを見つめる彼女達の胸の内は、

まるでキリキリと締め付けられる様に、

どこにあるとも知れぬほむらの苦しみに共感し呻き声をあげていた。

急ピッチで投下完了
ただでさえ普段から多い誤字その他が不安だけど時間がないから仕方がない

ほむほむが泣くかと思ったがそんなことはなかった
乙!

更新
水、土しかまともに書く時間とれないので更新ペース多分落ちますが気にしないでください

>>753
こういう時に泣かせるべきかは私も悩んだのですが、
泣くのはきっとどうしようもなくなって絶望した時かなと思ったので

笑いに関してはマミの正義に自身を重ねるみたいに
さやかの幸福な姿に自身を重ねて「ハハッ良かったわね」と
清々しいくらいのさっぱりした祝福の気持ちからの笑いのつもり
うん、上手く説明できません
どちらにしても多分病んでる気がするけど気のせいだと思いたいです

〜☆

その後、四人はしばし他愛無い雑談を交わす。

そしてこれから習い事のある仁美と別れ、

三人は街中を歩きだした。

どれもほむらにとっては見覚えのある場所、

多分『今』のまどかとさやかよりは

彼女はこの街のあらゆる場所に関して詳しいだろう。

しかしまどか達の優しさは一々身にしみた。

使い魔や魔女の出現の可能性が低いと思われる場所を

案内してくれるように色々二人を誘導した。

だから無意識の内に安心していたのだろうか。

三人で歩く中、ほむらは視界の隅にさっと白い影が映るまで

ほぼ完全に警戒を怠ってしまっていた。

もう既に手遅れだった。

白い小動物の様な姿をした『宇宙人』が

三人の、特にまどかの正面に立つ。

赤い目がまどかを下から見上げていた。

ほむらは歯ぎしりする。

インキュベーター……!

迂闊だった。

『今回』これまでインキュベーターが

まどかと接触しようとしなかったからといって、

これからも接触しないという事である訳はないのだ。

もうこうなってしまっては

まどかの見えない所で射殺して

時間を稼いだりする事も出来ない。

せっかくさやかの契約の可能性がなくなった

最高の時間軸であるというのに。

自分の不手際がたまらなくもったいなかった。

憎しみを込めながら、

ほむらはインキュベーターが

まどかに向かっていつもの契約文句を言うのを待つ。

「鹿目まどか!美樹さやか!

ここから速く逃げるんだ!

あるいは今すぐボクと契約して魔法少女になってよ!」

しかしそれはほむらの予想していた言葉より

ずっと緊迫した文句だった。

沈黙が三人と一匹の間に流れる。

三人の頭の中を流れる思考は

それぞれ三者三様である。

まどかは「ここから速く逃げるんだ」という言葉に

恐怖を掻き立てられながらも、

「魔法少女になってよ」という言葉に

ぼんやりと甘美な響きを感じ取った。

さやかは未確認生物が

自分の前に急に姿を見せたという事実に困惑し、

そして「契約」という言葉に警戒の念を抱いた。

第一、珍妙不可思議な生物は

ヒダリーとミギーだけでさやかにとってはもう手一杯なのだ。

せっかく順風満帆で幸せ一杯なのに、

厄介事をこれ以上抱え込みたくない。

ほむらは「ここから速く逃げるんだ」という言葉が強く引っかかった。

付近に魔女や使い魔はいない。

それは間違いない。

だとしたらいったい何から逃げるというのだろう。

三人と一匹、一番最初に口を開いたのはまどかだった。

「魔法少女……?」

さやかがはっとした様に後に続く。

「そうだよ、あんたの名前も契約内容もまるでわからないのに、

うかうか契約なんてできる訳ないじゃん!

ちゃんと説明してよね」

ほむらはさやかのキュゥべえへの態度に目を見張った。

まさかさやかの口から

そんな殊勝な言葉が聞けるなんて。

とはいえさやかがいきなり『いつも』より賢くなって、

分別が付いたという訳ではない。

突然現れて自分達に今危機が刻々と迫っていると告げ、

契約を迫る謎の白い獣。

下手をしたら今の大切な平穏が

彼?の出現によって崩壊してしまうかもしれない。

それは半ば反射的な、

無意識的な拒否反応に近い、

理性ではなく感情、印象に基づいた判断だった。

けれどたとえ理性に基づいていなくとも、

さやかが現時点でインキュベーターに

強い警戒心を抱いているのは紛れもない事実だ。

ほむらにとってそれはとても良い兆候だった。

「ボクの名前はキュゥべえ!わかった、説明するよ。魔法少女はね……」

その瞬間キュゥべえがビクリと身体を震わせた。

「いや、どうやらその時間はなさそうだね。

ボクは今ヤツらに追われているんだ。

急いで逃げなくちゃならない。

魔法少女については、

この地域を縄張りとしている

キミ達と同じ見滝原中学に通っている三年生、

ベテラン魔法少女の巴マミに聞いてくれ」

「え?嘘、マミさんが!?」

さやかが大きな声を出す。

しかしインキュベーターは

さやかのその様子に特に気を止める事なく、

凄まじいスピードでその場を走り去っていった。

ほむらが眉をひそめた。

明らかにさやかがマミの事を知っている……?

その時だった。

ほむらの魔力で視力を強化している目に、

こちらへと遠くから走ってくる

見覚えのある金髪ロールが映った。

巴マミだ。

彼女はかなりのスピードで

三人の傍まで近づいてきた後、

腰を屈め下を向いて、

膝を少し曲げて両手で押さえ

はあはあと息をついた。

よほど急いで走って来たらしい。

息をどうにか落ち着かせたマミが

にこやかに顔をあげる。

「あなた達、大丈夫?」

そして、えっ?という顔をしてそのままの姿勢で静止した。

走っている途中は気が急いていて

ほむら達の顔を確認していなかったらしい。

三人の内、二人は顔見知りだった。

一人は魔法少女繋がり、

一人はミギー繋がり、

あまりに予想外だった。

「え、ええっと……マミさーん?もしもーし」

さやかがマミの顔の前で手を振る。

おかげで思考停止から回復したマミは姿勢を正し、

三人に再び尋ねた。

「大丈夫?怪我はない?

何か怖い目に遭わなかった?」

「ああ、えっと、

キュゥべえとかいう変なのは見かけましたけど

それ以外は特には……」

「え?キュゥべえ?」

先程から会話しているのはさやかとマミばかりで

ほむらとまどかはまるで蚊帳の外だった。

しかしまどかが何が何やらわからず、

どうにか会話に参加しようと

そわそわ機会を伺っているのに対して、

ほむらは落ち着いてさやかとマミを観察していた。

間違いない、二人は何かしらの縁ある知り合いなのだ。

私が時間遡行して来るまでに

マミとさやかが知り合ってるなんて事は今までなかった。

完全なイレギュラーだ。

だけどさやかは魔法少女について

何も知らない様子だった。

だったら魔法少女以外の

何か特別な縁があったはずだ。

何か特別な……。

その時初めてぼんやりとではあるが、

ほむらの頭の中で、

『上条の腕が治った事』と『ひき肉ミンチ殺人事件』が、

微かな関係を持った様に感じられた。

「あ、あのぅ……」

まどかがおずおずと声を発した。

自然三人はまどかの方へと顔を向ける。

「巴マミ、さんですか?」

「ええ、たしかに私は巴マミよ」

マミは言葉と共に頷いて肯定の意思を示す。

「キュゥべえに魔法少女については

巴さんに聞けって言われたんですけど……」

「あら、そうなの」

少し考え込むそぶりを見せたが、

マミはすぐにこう言った。

「じゃあこんな所で話すにはなんだし、

私の家に来ない?」

「あ、えっと、その」

「おおー!マミさんケーキは出ますか?」

「ちょ、ちょっとやめてさやかちゃん。恥ずかしいよ」

マミは二人の仲睦まじい様子に

クスクスと笑いをこぼし、

ほむらを明らかに見つめてこう言った。

「ええ、もちろんおいしい

ケーキと紅茶をごちそうさせて貰うわ。

……もちろん暁美さんも来てくれるわよね?」

今、この和やかな空気を無視し

これを断って立ち去るというのは、

せっかく上手く築いたまどかとさやかからの

信頼を揺るがしかねない行為だ。

しかも下手をしたらマミに

彼女へ対する敵対行為ととられかねないし、

得体の知れない私について

二人に何か吹き込むかもしれない。

承諾するしかないようね。

渋々の成り行きではあるが、

ほむらは何時ぶりかわからない程久しぶりに、

マミの家を訪ねる事となった。

〜☆

マミの部屋で、

まどかはマミと向かい合い座っていた。

それに対してほむらとさやかは

呑気にマミの家に置いてあった格闘ゲームで対戦の真っ最中だ。

今の所さやかが全戦全勝中である。

ほむらは無表情でポチポチコントローラーを操作している。

まるでとても綺麗なお人形さんみたいだった。

しかしさやかに負けた事がはっきりすると、

その度にほむらは凄く酸っぱい梅干しを食べているみたいな

なんとも形容しがたい表情をする。

マミが真剣な話をしているというのに、

まどかはそれを見ると

毎回つい笑い出してしまいそうになった。

どちらかというとさやかの方が

まどかよりも真剣にマミの話を

聞いているのかもしれない。

ゲームをしているというのに

明らかに心其処に有らずといった様子だからだ。

そんな状態のさやかに

ボコボコにされるというのは、

ほむらが弱過ぎるのか

それともさやかが強いのか、

ゲームをあまりしないまどかにはわからなかった。

マミの優しい声がまどかの耳をくすぐる。

しかしその内容は現実離れしていて、

どこか他人事の様に思えてならない。

まどかにとって唯一現実味を持って感じられたのは

「一つ願いがかなう」という事だった。

魔法少女になる時に、

キュゥべえは何でも一つ

女の子の願い事を叶えてくれる。

マミはそう言った。

ソウルジェム、綺麗な宝石だった。

魔女との闘いはきっと恐ろしく、

死の危険と隣り合わせだ。

事実マミはそう言っていたし、

まどかにだってイメージするくらいならできる。

だけれどそんなのは「今の私」にとっては

ずっと遠くにある事柄の様に感じられた。

何も出来ない。

無力な自分。

ずっと悩んでいた。

何か自分にできる事はないのだろうか?

何か……。

まどかの脳裏にあの時見た光景が甦る。

赤、肉、血、口、赤、赤…………。

私に出来る事は何かないのかな?

まどかは今ようやく見つけたのだ。

自分が出来る何かを。

「マミさん、契約したら本当に、

何でも願い事がかなうんですか?」

ぼそっとまどかが呟いた。

「ええ、そうよ。

あくまで理論上だから

その子の素質の如何によるけどね」

「じゃぁ、じゃあ、

今各地で起きてる

『ひき肉ミンチ殺人事件』を

無くしたりする事だって出来るんですよね?

例えば、は、犯人の存在をこの世界から消したりして」

まどかは下を向いていたし、

仮に顔を上げていても

それに気づく事はなかっただろう。

しかしほむらは違う。

けれどもまどかが契約しようとする意志があるらしいと知って、

首の向きを急にテレビから切り替え、

ほむらは彼女を食い入るように見つめていた。

だからさやかとマミが、

ほぼ同時にさも意味ありげな鋭い視線を

マミの右胸元に向けた事に気付いた者は、

視線を向けられた「本人」を除けばその場には誰もいなかった。

更新終わり

ぶっちゃけまどかの契約動機が
上条の左腕をヒダリーなしで動かなくした最も大きな理由です
まどかに契約されると困る人間が二人、厳密に言えば三人
(さっき書いてて理由思いだしたなんて言えない……)

Q 何故キュゥべえは逃げていて、まどか達と接触する事となったのか?
ミステリー物を目指す気はさらさらないので
なるべくわかりやすく単純になるよう頑張りたいと思います
それとももうわかっちゃったりします?それならそれで良いんですけど

更新だよ

これ以上先まで書くと、後々更新する時に多すぎてアップアップするのが目に見えるので
キリは悪いけど更新
本当はマミさんとミギーが自室で今後について話し合うとこまで行きたかったんだけどね

〜☆

「やあ、まどか」

「っキュゥべえ!」

まどかがマミの家から帰宅して、

食事や入浴などの日常におけるごく当たり前な活動を済ませた後、

さて眠ろうとベッドで布団を被っていると、

まるで壁から湧き出たかのように、

キュゥべえが自然にふらりと部屋の片隅に現れた。

「あれから大丈夫だったの?」

まどかの言葉を聞いたキュゥべえは

なんとも可愛らしく首を傾げる。

「何がかな?」

「だってさっき誰かに追われてるって……」

「まどかには、どう見える?」

「うーん……、大丈夫そうに見える、かな?」

キュゥべえはトコトコまどかのベッドの下に歩み寄り、

ピョンと跳ねてまどかのお腹辺りの掛け布団の上に飛び乗った。

まどかが感じた重さは、

羽がふわりと布団の上に舞って落ちて来た程度の物で、

つまりキュゥべえが乗っているのかいないのか、

目を瞑ってしまえばわからないくらいキュゥうべえは軽かった。

「ボクが夜分遅く君をこうして訪ねたのは、

契約について出来るだけ早く、

キミにきちんと説明しておく必要性があると感じたからなんだ。

本当は一契約候補者にこういう特別な配慮をするというのは

余り良くない事なんだけどね。キミに関しては特別さ」

「私が……特別?」

「そう、キミは特別なんだよ」

目の前で喋っているはずなのに

全く動かない表情筋と口、

無機質で変化のない丸い宝石の様な眼。

非現実的なその有様。

その時のまどかにはキュゥうべえが幸せを運ぶ白い妖精に見えた。

「本当は明日くらいに学校とかでマミに教えて貰えばいいんだろうけど、

それまで時間があるし、だったらボクの口から今……」

「あっ!巴さんにはさっきキュゥべえと別れてから会ったよ!」

「本当かい?」

「本当だよ。だってこんな事で

キュゥべえに嘘なんてついてもしょうがないもん」

「へぇ、凄い偶然だね」

本当に「へぇ」という気持ちが籠っているとは

てんで感じられない完璧な棒読みだった。

「じゃあボクの口から言うべき事はたぶん特に残ってないだろうね。

……どうだい?契約の意思は固まりそうかな?」

それまでは特に間を開ける事なく

普通に受け答えしていたというのに、

キュゥべえの問いかけにまどかはいきなり黙り込んだ。

かと思うと、両者が会話している間、

ずっとキュゥべえの目に向け続けていた視線をすっと下に逸らした。

「……どうだろ、わかんないや」

「わからない?」

「うん、願い事はもうあるんだよ。

だけど、マミさんにほむらちゃん、

それにさやかちゃんまで、

私にもっとじっくり良く考えて契約した方が良いって言うんだもん……」

『ひき肉ミンチ殺人事件』をこの世界から完全になくして。

それはまどかにとっては否定をはさむ余地のない完成された願いだった。

それにもかかわらず皆に一度考え直して見るよう窘められてしまったのだ。

マミとまどかが「誰かの為に願い事を使う危険性」について議論を交わしている中、

突如ほむらはまどかに激しい剣幕で詰め寄り、

魔法少女になろうだなんて思うのは絶対にやめなさいと、

きつい棘の籠った突き放すような口調で言い放った。

まどかにとってそれまでほむらは、

何事にも心を乱されないいつも平静な強い心の持ち主という印象だった。

そんな彼女が自分が契約の意思を見せた事に関して

これでもかと激昂している。

いったい私が契約する事の何が彼女をそこまで揺さぶるのか、

まどかはただただ困惑した。

まどかには、さやかの言った事が、

どうしてほむらやマミ達がまどかの契約を渋るのか、

それからだいぶ時間が経過した今となっても上手く納得できなかった。

アレ以上の願い事なんて他にあるわけない。

願い事以外の解決策なんて他に思いつくはずない。

皆は『ひき肉ミンチ殺人事件』が別に解決しなくて良いと思ってるのかな?

皆は『あの事件』に心を悩ませていないのかな?

怖くないのかな?

自分、家族、友人、いつどこの誰が犠牲になっても不思議ではないのに。

そして現に犠牲者は今もどこかで出続けてる。

そっか、皆薄情なんだ。



……。


…………いや、違うよ。マミさんにほむらちゃんも、

私に魔法少女の厳しさって物についてもっと深く考えさせようとしてるんだ。

じゃあそれならさやかちゃんは?そんなのずっと前から知ってる。

さやかちゃんは情に凄く厚い優しい女の子。

ならいったいどうして……?

「今のまどかの頭の中には例えばどんな願い事があるんだい?」

キュゥうべえの声によって

思念の中から強制的に意識を引き戻される。

まどかは眼を数秒パチクリさせてから、

自分のありのままの願いを素直に口にした。

「ひき肉ミンチ殺人事件を、

この世界から完全になくしたい」

「へぇ……」

心なしかさっきと比べて、

今度の「へぇ」は本当に驚いている様に聞こえなくもなかった。

「私、どうしたらいいのかな?」

つい弱気になってまどかはキュゥうべえに聞いてしまう。

「さぁ、ボクにはどうとも言えないね。

……ただ一つ注意しておかなきゃいけないのは、

キミは望むなら何でもあらゆる願いを叶えられるってことだよ」

「そんな大げさな……」

願えば何でも叶う。

確かにマミにもまどかはそう言われたけれど、

それはあくまで日常生活を普通におくっていてはとても叶わない様な事であっても、

キュゥうべえに頼めば一度だけ叶えてくれるという軽いニュアンスで受け取っていた。

しかしキュゥうべえは首を横に振る。

「ううん、全然大げさなんかじゃない。

いまだかつてこの世界にキミほどの素質を持った人間は存在した事がなかった。

キミの莫大な素質を持ってすればこの世界なんて物はどうとでも、

いくらでもその形を変える事が出来るんだ。

そうだね、太陽を二つにしてみたり、

この世界の過去から未来にかけて人類を全員女性にしてみたり、

なんならこの世界を丸ごと消滅させる事だってキミの思いのままだ」

「えっ、ええ……」

まどかは怖くなった。

キュゥべえの淡々とした口ぶりで語られる異常の数々。

キュゥべえによればそれは自分が一度口に出しさえすれば

何でも容易に実現してしまうらしい。

何のとりえも無いはずの自分が

それほど大きな世界の決定権を今現在その手に握っている。

それはきっととても恐ろしい事に違いなかった。

そしてキュゥべえは動揺しているまどかを

無慈悲にも気遣う事すらせず自分の話を続けた。

「だけどね、注意しなくちゃいけない事がある。

それはキミが願いを叶えた後の事だよ。

いいかい、まどか。

『願い』、そして『契約』からもたらされるのは奇跡の力だ。

つまりそれは言い方を変えれば現実を

どういう形であれ大なり小なり歪めるという事なんだ。

もちろん並の魔法少女はそんな事を気にする必要はない。

だけれど君は特別、完全な例外だ。

ボクはキミの言った通りにその願いを叶える。

でもその後の事については何も保証できないんだ。

少しの言葉選びのミスが致命的になりかねない。

例えばもしキミが、ほんのちょっとしたはずみで、

結果として自分の存在そのものを否定してまう願いをしてしまったならば、

キミはおそらくこの世界から自分という存在を完全にかき消してしまう事になる。

するとどうなるかといえば、

これはボクの立てた一仮説にすぎないけど、

誰からも干渉されず、

なおかつ自分は誰にも干渉できない『まどか』という一存在として、

この世界から永久に閉め出されてしまう事になるだろうね」

それを聞いたまどかの身体はガタガタと震えだした。

自分の存在が予期せずこの世界からあっさり忽然と消えてしまう。

そんな事生まれて一度も想像してみた事もなかったからだ。

しかもそれは自分が「誰か」に対してそれまで願おうと思っていた事柄だった。

でも、でもそれは仕方がないんだよ。

だって、だって……。

「まどかはこれからどうするつもりなのかな?」

完全に混乱状態に陥っているまどかに

キュゥべえは更に容赦なく言葉の追撃を加える。

すっかりしょげかえってしまったまどかは弱りきった口調でこう答えた。

「もう、わかんないよ……、そんなの」

キュゥべえは今度は少し間をおいてまどかに考える時間を与えた。

そしていつも通りに口を開く事なく喋り始める。

「マミはキミがこれからどうすべきだって言ってた?」

「マミ……さん?」

まどかが先程のマミの言っていたことを改めて思い返す。

「ええっと、今の私に必要なのは、

その願いを叶える事によって

自分が絶対に後悔しないことをちゃんとはっきりさせること、

そして魔女との闘いがどういう物かについて

もっと認識を深めること。

だからこれからしばらく

私の魔女退治に付き合ってみないかって誘われて……」

「じゃあひとまずはそれに従った方がいいとボクは思うね。

マミはかなりのベテランだ。

ベテランの言う事はひとまず聞いてみた方が、

キミにとって得になるんじゃないかな」

キュゥべえがベッドからひょいと飛び降りる。

帰るつもりらしかった。

「ねえ、キュゥべえ?」

「何かな?」

もう既にまどかに背中を向けていたキュゥべえが、

首だけ曲げてまどかの方を見る。

「ほむらちゃんも、ベテランなの?」

「……さあ、どうだろうか?」

「え?」

「彼女について契約したという記録は何一つ残っていない。

ボクがキミに今言えるのは、

彼女の素性がボクにはまるで分からないという簡潔な事実だけさ」

それ以上は何も言う事なく、

キュゥべえは現れた時と同じようにスッと物陰に消えていった。

〜☆




「そうだね、予想外だよ。

鹿目まどかがまさかボク達に関係のある

願い事を望んでいるなんてね」



「うん、確かに元々彼女と接触したのは、

ボク達の準備が整わない内に、

インキュベーターがさっさと

彼女と魔法少女の契約を済ますなんて事態になるのを、

こちらから先にそれに干渉して未然に防ぐのが主な目的だ」




「確かにボクのしたことは一見、藪蛇に見えるかもしれない。

だけどね、鹿目まどかは自分という存在の無力さに

今かなり嫌気がさしている精神状態にある。

これを出来るだけ事前に改善しておく事は

我々の計画の確実性をより高めてくれるはずだ。

彼女のより確固とした希望から

最悪の絶望へという『感情』の急激な転落が、

我々にとって必要な『エネルギー』を

もっとも多く生み出してくれるのだから」




「いや、準備が整うまでにはまだ時間がある。

無茶をするには人手も、時間などのあらゆる余裕もない。

今鹿目まどかを誘拐した所で不必要な手間が多くかかるだけだ。

計画の準備が整うまでの長い時間、

まどかに関するインキュベーターの目を

完全に誤魔化すのは流石に骨が折れる。

その気になれば彼女を連れ去る事なんてのは

どうとでもなるんだから何も焦る必要はない」




「契約をこれからどう防ぐかだって?

うーん、巴マミは最初の内は間違いなく

彼女を契約させる事に関して渋るだろうけど、

インキュベーターの巴マミに関する観察が正しいならば、

いずれ鹿目まどかの自由意思を尊重して

彼女の契約を認める事も大いにありえる話だ。

だからボクはとりあえず今の所

暁美ほむらに期待してみようと思ってる」

「彼女は得体の知れないイレギュラーだ。

素性も、魔法も、何もかも明らかになっていない。

だけど先程、鹿目まどかの家を出てから、

ぶらりと情報収集の為に

美樹さやかの家を訪れた際に小耳にはさんだのだけど、

暁美ほむらは巴マミの家で、

鹿目まどかが契約の意思を見せた事に

感情を非常に高ぶらせたらしい。

得体が知れないからこそ、

彼女のそういった態度に興味が湧いてくるという物だ。

まあ実際に向かい合って暁美ほむらと話してみないと、

はたして本当に、

ボク達の役に実際立ってくれるかなんてわからないけどね」




「上条恭介に関する話も後だ。

むやみに今、誰かの注意を引きたくない。

下手に恨みを買うのは危険だよ。

いずれは彼も巴マミも殺すけどね。

今は時期じゃない」



「ああ、もちろん。

ボクは鹿目まどかの今の葛藤が、

後々良い結果をボク達に

もたらしてくれるだろうという事をほぼ確信しているよ」




その語り合いはこっそりと、

ちょっとした物陰のさらに奥、

誰も他には見当たらない、

ひっそり寂れた暗がりで行われていた。

今日の更新終わり

さすがにこんだけ露骨にやったらわかるだろ
「キュゥべえ」の話長すぎてごめんなさい
半分わざとだけどすっげえ読みづらいです


次回予告(予定)
まどかの契約を阻止しようと皆が躍起になっている中、
マミとミギーはまどかを魔法少女体験ツアーで、
まどかをどん引きさせる事を企む
そして今、マミのティロフィナーレ(物理)が炸裂する!

次回、寄生少女 ともえ☆マミカ
「魔法を使うと、ジェムが濁るなら、レベルをあげて物理で殴るしかないじゃない!」

期待はしないでください

恭介は戦えるんだろうか

更新
ああー今回書くの難しかった
吟味の結果、話が伸びた事もあり次回予告は延期ですごめんなさい、次回ですらないです
イベントの数自体はシャルロッテ戦まで、つまり第二部終わるまではあともう少しです


先日一ヵ月半から二カ月ぶりくらいに最初から今までのこのスレを読み返した結果、かなり新鮮な気持ちで楽しめました
先の展開知ってるだけにへーなるほどここがああいう風にあそこで絡んでいくんだなみたいな
それじゃ駄目じゃん、……き、気をつけます


>>803
書かないけど恭介は今の所ヴァイオリン弾けてるから多少なおざりにしていた足のリハビリも進み、
車いすを止めて、松葉杖で歩くちょっと前もしくは歩気始めてるくらいの時期のつもりです
お察し下さい

〜☆

皆が帰宅した後、マミとミギーが話し合いをしていた。

マミはテーブルの前に楽な姿勢で腰を下ろしていて、

ミギーはマミの首元から身体を伸ばし、

彼女の目の前のテーブルの上に、

そう表現するのがふさわしいのか甚だ疑問だが、

ペタンと座っていた。

「我々が現在直面している問題は大きく分けて二つある」

「一つ目は?」

ミギーが思索に耽っている為か、

身体の上部分をウネウネくねらせ

何やら自分一人で絡まり合っている。

もしかしたらほむらやまどかがいた為に、

ほとんど今日一日服の中で大人しくしていたから

ストレスが溜まっているのかもしれない、

そうマミは感じた。

「決まっている。

今日遭遇した不審な私の同類達についての問題だ」

パトロールの途中、

ミギーが「仲間」の『信号』を突然二匹分キャッチした。

しかしどちらと接触するか決めあぐねている間に

さっさと「彼ら」は逃げ出してしまった。

仕方がないのでどちらも追いかけずに

何となくそのまま真っすぐ進んだ所、

まどか達を見かけて、

マミは慌てて彼女達が大丈夫かどうか

走って確認に向かった訳だ。

「……別にヤツらを街中で見かけるのは

それほど珍しくはないわよね。

確かに鹿目さん達が

危険な状態にあったっていうのは

間違いないと思うけど、

いったい何が問題なの?」

「ふむ、それはだな、

彼らが明らかに組織立った動き、

しかも我々を意識した行動をとっていた事だ」

「何ですって?」

マミはちゃんとミギーの話が聞こえていたにも関わらず、

自分の聞いた事が信じられなくて

思わず一度聞き返してしまった。

「ヤツら」が組織立った行動をとり始めた。

ミギーの言う事がもし本当なのだとしたら、

それはとても恐ろしい事だ。

何しろ「彼ら」が以前より成長して、

人間社会で遭遇しうる

多種多様な危険を避ける為の「人間らしい」知恵、

狡猾さを徐々に身に付けつつあるという事に

おそらく他ならないのだから。

「つまりヤツらが前と比べて成長しているって事が問題だって事……?」

「いや、違う。問題はそこじゃない。

彼らが成長しているなんて事は

今更わざわざ言うまでもない。

例えばそう、

最近どうもニュースで『ひき肉ミンチ殺人事件』の話を聞くのが減った、

なんてマミは思わないか?」

ミギーに言われるがまま、

マミは素直にここしばらくで耳にしたニュースを思い返してみる。

「ええ、確かに耳にする事は減ったと思うけど、

でもそれは報道しなきゃいけない同じような

『事件』の数がどんどん増え過ぎて、

話題性が低いから下火になってるんじゃ……」

「違う、その逆だ。

『事件』その物の数自体は

確かにちょっとずつではあるが減少しつつある。

しかしその代わりに最近ひっそり上昇しつつある数字がある。

何だと思う?」

「…………何?」

「行方不明者の数だよ」

マミの唇がワナワナと震えた。

どうせ私に『ひき肉ミンチ殺人事件』を

どうにかする事なんて出来やしない。

だから最近は情報収集もなおざりぎみだったのだ。

しかしこれは……。

「まあ食事の『後始末』をきちんとする様になった個体が増えたのだろうな。

考えてもみろ。

私は毎日キミと共に生活して日々成長している。

だったら私以外の仲間達も成長していると考えるのが道理じゃないか」

ミギーの言葉にマミはしばしテーブルに肘を付き頭を抱える。

そしてひとまずその事について考える事をやめた。

何故ならマミにはそれはやはりどうしようもない事だからだ。

「それで?私達にとって今問題なのは、

えっと、何だったかしら」

なかなかミギーの言葉の意図を

汲み取る事の出来ないマミだったが、

ミギーはその事に

別段気分を害されたりするような事はない。

ただ淡々と説明していく。

「彼らが組織的に動いていて、

私達を意識して行動していた事だよ」

「組織的、……という事は純粋に、

私達とヤツらが争いになるとして

一対一じゃなくなるから問題なのね」

「うん。一対一なら我々が負ける事はまずない。

しかし複数相手は経験も無いし

だいぶ事情が変わってくるはずだ。

相手の組織がどれほど大きな物なのかもわからないしな」

「私達の事を意識して行動していたっていうのはどういう事?」

「私があの時『信号』を捕らえたのは二匹。

私に色々な能力がある事はマミも知っているだろ?」

「ええ、例えば分離したり分裂したりがそれよね」

ミギーはマミの身体から数分の間ではあるが

分離して独自の活動をする事が可能である。

それだけではなく二つ以上に別れて、

それぞれが別の思考、行動を取ることも可能だ。

最もあまり小さく分裂し過ぎると、

その破片は思考力を失って、

そのままだと干からびてあっけなく死んでしまうのだが。

「これも私という生物に

元から備わったそういった能力の一つと言える。

我々は『仲間』にしかわからない信号を

常日頃から発しているけれど、

それは互いの存在、

位置を知らせる意味を持つだけではない。

相手がどのような事を感じているかを

大雑把に把握できたり、

両者の間で事前にサインを決めておけば

会話は無理でも、

例えばモールス信号の様なやり取りが可能になる」

「普通に凄いわね、それ」

魔法少女もある程度の範囲内であれば

互いにテレパシーが可能で、

モールス信号どころか

言葉を交わして会話が出来るが、

もちろんそれは魔法のオマケの様な能力であって、

生物としてそういう機能を

持ち合わせている訳ではない。

何でこんな凄い生物が

何かに寄生しないと生きていけないのか、

改めてマミはそう思った。

「それでここからが本題なのだけども、

私が今日彼らを最初に感じたその瞬間、

あちらは既にこちらを強く意識していた。

しかも私達が来たとわかるやいなや

何か意味のあるらしい『信号』を発し始めたのだ」

「え?どういう事?」

マミは首を傾げた。

ミギーの絡まり具合が先ほどよりも酷くなる。

どうやら酷く興奮しているらしい。

「私が彼らに気づいたのはおよそ300メートル先、

お互いを探知できるギリギリだ。

あちらの方がずっと早くこちらを認識していた、

なんて事はまずない。

それに彼らには私が何者だろうかと

考えようとする素振りが感じられなかった。

となると残される可能性は

私と会う前から既に私を意識していた、

つまり私の事を最初から知っていたという事になる」

ミギーの事、つまり私を知っていた?

恐怖がマミを襲う。

そんな、それじゃ、いつヤツらが

一斉に襲ってきてもおかしくないって……。

「まあそれくらいの事なら

いずれはそうなるかもしれないと想定できた

レベルの話な訳だけど。

我々はこの街を毎日パトロールして、

見かけた『敵』を片っぱしから殺してきたのだから、

多少彼らの内で有名になっていても不思議ではない」

「……じゃあ一体全体何が問題なのよ」

ぶすっとして投げやり気味にマミが尋ねる。

マミは話に一々驚くばかりで

中々中身についていけない

自分にだんだん嫌気がさしてきていた。

「彼らの間の空いた立ち位置、

あの規律のとれた素早い逃走、

我々の存在を最初からじっと動かず警戒していた。

さらに私達が現れたとわかると、

何か彼ら独自の合図らしき『信号』を発した事。

これらから推測される、

彼らの役割がおそらく

見張りだっただろうという事が問題なのだ」

「見張り?」

「ああ。おそらく少なくとももう一人誰か、

そして我々に見られては困る何かがあの時前方にあったのだろう。

合図を必要とする誰かが

私の感知できなかった先にいなければ、

私達が来たからといって

何かしらの『信号』を発する必要性はかなり低くなる」

「うーん」

だんだんマミは頭が痛くなってきた。

パラサイト達の成長やら、

自分が「彼ら」の一部に既に知られている等の

恐るべき色々な事柄を、

いきなり突き付けられ混乱しているのだった。

「いったい、私達はどうすればいいのかしら?」

ミギーが即答する。

「今の所どうしようもないよ」

「ええっ?」

マミは素っ頓狂な声をあげた。

「だって今の所彼らに関する情報なんて

何一つわからないじゃないか。

ひとまず今はこういう問題があるんだと

認識しておく必要があるってだけだよ。

なりふり構わず何かをとりあえず調べてみて、

それで解決できるならそれに越したことはないけど」

うーんと暫く唸った後、

マミは言われるままに解決を保留する事にした。

実際自分で考えてみても

特に何も解決策は思いつかなかったからだ。

そして質問を続ける。

「二つ目の問題はなに?」

「二つ目は鹿目まどかに関する問題だ。

キミが言うには全く予想が付かない程の

魔法少女としての才能が彼女にはあるのだろう?」

マミが憂鬱そうな顔をする。

もし、まどかが一般的なレベルの魔法少女としての

素質しか持たないのなら特別悩まずに済んだ。

世界中のパラサイトに関係する願い。

おそらく彼女の願いは素質不十分で聞き届けられないだろう。

しかし彼女は「普通」ではなかった。

ベテランである為か、

はたまたそれは自分より強い者を

見分ける野生の勘に似た物を

マミが備えているという事なのか、

まどかに膨大な魔法少女としての

素質が秘められている事を

マミは既に感じ取っていた。

ほむらが先程まどかに詰め寄った時の話の内容も、

それが事実である可能性を高めてくれている。

これといって確かな証拠はない。

しかしマミは確信していた。

鹿目さん、彼女に叶えられない願いなど

おそらく一つも存在しない。

そして今問題なのは、

まどかが自身の願いを

叶えられない可能性がある事ではなく、

彼女にたとえ少しでも願いを

叶えられる可能性がある事だった。

「鹿目まどか、

私は当然彼女の契約を容認する事は出来ない。

何故なら彼女の契約によって生じる影響が

どの程度にまで及ぶものなのか、

実際に彼女がキュゥべえと契約をして

その願いを叶えてみなければわからないからだ」

「そんな事、私にだってもうわかってるわよ……!」

イラついた声でミギーにマミが言葉を返す。

マミはまどかの願いを

考え直してみるようにと一度否定した。

けれど本当は心の内では

マミもまどかの願いが『正しい』物だと思っていたのだ。

『ひき肉ミンチ殺人事件を、

この世界から完全になくしたい』。

それはマミにはどうしようも出来ない

歯痒い部分に手が届く、

マミにとっても欠点の見当たらない

素晴らしい願いだった。

後本来必要なのは、

厳しい魔法少女という世界に

踏み込むまどかの覚悟だけ。

ただしそれは今現在、

マミがミギーという存在と

「友達」として毎日の生活を

共にしていなければの話である。

ミギーは私の大切なお友達だ。

ミギーを喪いたくない。

ミギーを喪う、

それは今やマミにとって

そう仮定するだけで

もう背筋が寒くなってくる嫌な想像だった。

もし、まどかの願いが寄生生物達、

パラサイト達に元々備わっている

自分の寄生先を「共食い」する衝動、

本能を抑制する方向に働いたとしたら。

その場合は元々マミの右胸に寄生し、

そういった本能とは無縁であるミギーにとっては

何の影響も無い無害な物になるだろう。

しかし、

その願いがパラサイトという存在を

この世から消滅させる方向に働いた場合、

もしそれが食人欲求を持つパラサイトのみに

働いてくれるならば

大いに結構な事だが、

ミギーに影響が出る可能性は

どうしたって否定する事は出来ない。

一度叶えた願いの取り消しは不可能だ。

一度まどかに試しにやらせてみるには、

マミとミギーには

その願いはあまりにもリスクが高過ぎた。

まどかの意思を恣意的に誘導してでも

彼女達はまどかの「契約」を

阻止しなくてはならない。

だが、だからといって

それはマミにとって

容易く諦め切れる「誘惑」ではない。

誰か、

マミの知らない所で誰かが

あんな無残に食い散らかされる光景を

完璧にこの世から無くす事が出来る。

かつて人だったモノが

人を喰らう恐ろしい関係を

無くす事が出来る。

ただまどかがキュゥべえの前で

正式にそれを口に出すだけで良いのだ。

たくさんの人々の命を救う事が出来る。

『正義』の魔法少女であるマミにとって、

その選択肢をあえて無視する事は

とても口惜しい、

惜しくないはずがない。



……。




…………。


あるいは本当にマミが

『正義』の魔法少女であるのならば、

彼女はミギーに起こるかもしれない

「影響」に目をつぶってでも、

まどかが契約する意思を

自分から持てるよう

むしろ誘導するべきではないのか……?

マミとミギーは一度口を閉ざす。

マミがミギーに話しかけた。

「ねえ、鹿目さんにあなたの事を

バラしてみるっていうのはどうかしら?

そしてあなたには影響が確実に出ないような

願い事になる様に内容を少し変えて貰えば……」

「キミは本気で言っているのか?

この問題は私達に限った事ではない。

上条にヒダリーも巻き込む問題なんだぞ。

つまりキミが今言ったのはこういう事だ。

まず、鹿目まどかに私達の存在をばらす。

この時点で私にはそれを許容する事は出来ない。

だったら鹿目まどかの契約を予め阻止するよう

動くほうがより確実だからだ。

そしておそらく上条達についても

事前に承諾をとってから彼らの事を紹介する。

それから鹿目まどかが私達の存在を認めて、

かつ私とヒダリーに影響が出ない様な範囲で

納得のいく願いを叶える。

ここまで何もかも上手くいくのは

かなり望み薄だと私は思うけどね」

「そ、そんなの……」

実際にやってみないと

わからないじゃない。

マミの言葉は口から出る途中で

ピタリと止まってしまう。

そう、

実際にやってみないと

わからないのだ。

やってみないとわからない、

そんな不確かな状態でミギーを

自分にだけ都合のいい行動に

つき合わせるのは酷に思えた。

何しろこれは彼自身の命が掛かっている問題なのだから。

「それに問題なのはそれだけじゃない。

彼女が魔法少女になった後の事も問題だ。

この街には既に魔法少女が二人いる。

はたして彼女という、

キミの言う事が正しければ

規格外の魔法少女が新しく誕生したとして、

この街のグリーフシードは足りるのか?

それ程の才能にあふれた彼女だからこそ、

魔法が強力な代わりに

魔力消費が多かったりなどの

欠点がないと何故言い切れる。

事実キミが契約してから

ずっと記録してきた『資料』によれば、

一般の魔法少女より素質の高いらしいキミは、

彼女らよりずっと魔力消費が激しいじゃないか」

魔力消費が激しい。

それを聞いてマミはかつての後輩、

佐倉杏子の事を思い出した。

彼女は回復魔法が苦手であるという欠点を

どうにか補えさえすれば、

とても強力な魔法少女になるはずだった。

いや、もうなっているのかもしれない。

それはともかく彼女の幻覚魔法も私の魔法と同じように、

魔力の消費は他の魔法少女に比べて比較的多かった。

やはり魔力の消費量はその少女の元の才能の高さに比例するのだろうか?

物思いに耽るマミを気にせずミギーは自分の話を続ける。

「もちろん契約した鹿目まどかの

魔法の燃費が悪いかなんて事は今はわかるはずもない。

いざ蓋を開けてみれば

彼女も他の魔法少女と同じ程度の

魔力消費で戦う事が出来て、

何も問題なかったという事もあり得る。

しかしグリーフシードが

一度足りなくなってしまったら

その時は既に遅いのだ。

マミにももう解り過ぎるほど

わかっている事だと思うが、

この問題は魔法少女にとって

先延ばしにできない

とても重要な問題なはずだぞ」

「…………」

腹が立つくらいに正論だった。

もし、だったら、

そういう仮定に基づき

考えなしに行動した為に

破滅していった魔法少女を

マミは何人も知っている。

私だけが痛い目を見るならまだ良い。

まどかの契約はミギーも、

上条君にヒダリーも、

そしてまどか自身にも

多大な被害をもたらす可能性がある物なのだ。

まどかはマミが見る限り

実に素晴らしい人生を送っていた。

自分に自信が持てない様だけど、

他人を思いやれる優しさに充ち溢れていて、

家族、友人、あらゆる幸せに

囲まれているように見えた。

やっぱり、ミギーの言う通り、

彼女は契約するべきではないのかも知れない。

魔法少女になるという事が要求する

様々な幸せの放棄を思えばなおさらだった。

結局マミは悩んだ末に

まどかの契約を止める立場につくことを決めた。

「じゃあそれなら、

鹿目さんを魔法少女にしない為に

これから私達はどう動けばいいのかしら?」

「そうだな、

それじゃあまずは

明日の魔女退治で

鹿目まどかを

上手くドン引きさせられるか

一つやってみよう」

「え?」

「どうせいつもと同じ戦い方は出来ない。

だったら少し彼女の夢が壊れるくらい

羽目を外してみてもいいだろう?」

いつもの戦い方。

マミとミギーはいろいろ試した結果、

使い魔は基本ミギーが倒し、

魔女はマミが相手をするという戦い方で落ち着いていた。

魔女は厄介な特性を持っている事が多く、

それに魔法以外の攻撃は

ほとんど通らないし致命傷にならないのだ。

魔法少女にしか倒せないというのは、

別にインキュベーターがそう仕組んだ訳でもないが、

彼らにとって嬉しい誤算であるに違いない。

それはともかく、

それまで使い魔に使っていた魔力を

節約できる様になったおかげで、

マミのグリーフシードのストックもだいぶ増えてきた。

頭では分かる。

今の戦い方はミギーと出会う前の戦い方に比べて

遥かに「合理的」だ。

しかしその戦い方に優雅さや華麗さはない。

使い魔に対して行われるのは一方的な虐殺だ。

それはマミの正義の理念にそぐわない物だった。

それなのにドン引きさせる為に

そこから更に羽目を外す……?

「……冗談、よね?」

「私が冗談を言った事があるか?」

そんな事一度も無かった。

冗談を言ってるのかと疑いたくなるような事を

大真面目に言うのがミギーだった。

羽目を外すという言葉も、

それ相応の効果を狙った行動を意味するに過ぎない訳だ。

「大丈夫だ、私に任せろ。私に一つ作戦がある」

あなたに任せる。

それが一番心配なのよ……。

マミは肩を深く落として大きく一つ溜息をついた。

更新終わり

裏設定?
見張り達は本当は後もう一人いて
それぞれ正三角形の頂点の位置に立ってて
まどかと「キュゥべえ」が真ん中になるよう囲んでた
そして予定通り現れたマミをまどかに引き合わせる為に、誘い込むようにすたこらと逃げる

「キュゥべえ」、つまりパラサイトが
まどか達の前にいたっていう不自然な状況を気取られない為の計画的犯行
その為の丁度良いまどかとマミの位置関係になる様
一日中遠くから追いかけまわしてました
話の本筋に関係ないしミギーが解る訳ないから割愛

「キュゥべえ」グループは食糧確保の手間やら色々あるせいで
深刻な人材不足で「キュゥべえ」合わせてまともに動かせるの今の所四人しかいない
こっちは後々話に出す設定の予定(第四部でだけど)

乙。
本家QBはパラQBについて魔法少女に説明しないんだろうか
「ボクの偽者がいるから怪しいヤツとの契約は十分気をつけてねきゅっぷい!」
なんというお前が言うな


原作的に考えてもマミさんが強引なことを言えば
ミギーがまどかを*しちゃおうとする危険性は否めないところ
とにかくミギーが秘密の開示には消極的だからどうやって味方を増やすかが課題なんやな
ほむほむはマミさんの言動に疑問を感じてそうな気がするが

シャルで第二部
構想は少なくとも第四部…
第何部まであるんですかねえ



魔女に魔法以外通じないとするとヤバいな
ほむほむ勝てない

魔法少女が普通の武器を使う時は
意識しなくても魔翌力がコーティングされているとか何とか

何だかんだいって最近は水曜土曜辺りにきちんと更新出来てたので一応お知らせ
それと返しておいた方が良さそうなレス返しをいくつか

GW4日間は出かけていたのでパソコンを使えておらず
現在書き溜めストックはございません
そして15日までにしなきゃいけない事があるので
それが速く終わらない限りは来週も更新はありません

以下レス返し
>>844
>>564にも書いたけど「キュゥべえ」の活動はインキュベーターにばれていません
そして
>>370で書いたけどインキュベーターはぱふぁ…でも直に見ない限りパラサイトを識別できません
だから今の所は「彼」の存在もばれていません
これについての細かい話は第四部の予定です

ただし今の内に付け加えておくなら「キュゥべえ」は
インキュベーターと同じ運動性能を備えていますが
魔法少女との契約はできません
まどかに対して色々言ってるのは全てハッタリです
インキュベーターは強引にごまかしはするけど嘘はつきません(これの設定)
パラサイトは必要なら真っ赤な嘘もさらっとつきます
そこらへんの私の細かい設定のさじ加減の詳しい所はやっぱり四部で

>>845
全部で第五部構成
第二部シャルロッテまで
第三部ワルプルまで
第四部この話の中核
第五部まとめ、後日談的な物
第三部からの内容は三月くらいからもうほぼ完全に決まってるけど
第五部がそんなに長くない事以外は書いてみないと何とも言えません

>>846
忘れて(ry
>>847路線で行けば別に矛盾はしないのですが、
>>676のワルプル描写との文脈的な兼ね合いがうーんなのと、
ほむらが何故実銃とかを使って戦えてるのかの話を
つけ足すのが面倒でしかも発生するかもしれない新たな矛盾が怖いので
素直に次回修正します
細かい所は見切り発車なのでここおかしくね?と思ったらすぐ言ってください
伏線だった場合はスルーします
伏線じゃなくても全レスは返さないけど

用事が早く終わったので出来たとこまでとりあえず投下
いつも以上に区切りが悪い
ほむらと「キュゥべえ」対談の第一ラウンドです
本物偽物関係なしに不気味なインキュベーターを目指してます、頑張ります

※修正

>>838

いつもの戦い方。

マミとミギーはいろいろ試した結果、

使い魔は基本ミギーが倒し、

魔女はマミが相手をするという戦い方で落ち着いていた。

魔女は厄介な特性を持っている事が多く、

それに使い魔とは違って、

魔女に対しては魔力の籠っていない攻撃は魔法に比べて効果が薄い。

下手にミギーを刃物状に硬化させて斬り付け戦わせるよりは、

マミが魔法の銃を生成し、

自分で戦った方が魔女相手に関しては効率が良いという訳だ。

〜☆

深夜、ほむらが暗がりを一人歩いている。

彼女が今日こんな夜中に外出していた目的は、

グリーフシードの確保、つまり魔女を倒す為ではなく、

自分の武器を新たに補充する為だった。

彼女は『時間停止』という固有能力に

魔法少女としての資質をほとんど割り振ってしまった為、

他の魔法少女達と同じように

自分で固有の魔法武器を生成する事が出来ない。

その為、ほむらは魔女と戦う為に魔法ではなく

現実の武器に頼らざる負えず、

これまでの長いループの間に様々な経験を積んできた結果、

銃その他の武器を『時間停止』の能力を使って

どこかから盗みだすのが

一番自分に適した戦い方だという結論に至った。

いくら魔女の物理攻撃への耐性が基本高いといっても、

普通の魔女なら威力のある弾丸を

何発も撃ち込めば十分ダメージになる。

それに『時間停止』という切り札、

経験量の豊富さからいって、

今となってはそういった魔法少女としての

「日常生活」におけるハンデも特に問題にならなかった。

かつては彼女も、生き残るためだとはいえ

盗みという行為に手を染める自分自身に強く罪悪感、

嫌悪感を抱いたものだが、

今となってはもうすっかり手慣れた物だ。

そんな日常的な盗みを今夜も無事に難なく終えた帰り道での事だった。

突然何の前触れもなしにほむらの前にキュゥべえが姿を見せた。

「キュ、キュゥべえ……!」

驚き声が上ずるほむら。

周りには人の姿も気配もない。

ほとんど無意識にその場で変身し、

素早く盾から取りだした拳銃を

キュゥべえの眉間に向かって構える。

「やあ、暁美ほむら」

目の前のキュゥべえは特に何も動じる様子を見せない。

どの時間軸でも共通の、いつも通りの彼らだった。

忌々しいインキュベーター。

ほむらが歯ぎしりする。

あなた達のせいでまどかが、まどかが……。

「今日はキミに相談があって来たんだ」

さも他に何の他意も無い、

ほむらについての疑問なんて何もない、

そんな気さくな話かけ方だった。

しかしそんなはずはない。

ほむらがこの時間軸に遡行して来てから、

彼らが直接ほむらに接触を図った事はこれまで一度もない。

現時点でどれほどほむらに関する調べがついているかは定かではないが、

ほむらが彼らに尻尾を出した事は一度も無いのだから、

心の底では聞きたいことが山ほどあるに違いない。

しかし彼らはそんな思惑はおくびにも出さない。

自分の手札を出来るだけ知られないように、

かつそれでいてこちらから最大限の利益を引き出そうとする、

いつものキュゥべえのやり口。

そこに魔法少女達に対する「情」などといった物はどこにもない。

あるのはただ彼らの利益だけ。

ほむらは虫唾が走る思いがした。

「ふざけないで。私にはあなたと話す事なんて何もないから」

ほむらの指が拳銃のトリガーに

力を込めようとしたちょうどその時、

キュゥべえが言った。

「まずは鹿目まどか」

ほむらの指がそのままピタリと止まる、

それどころかほむらは銃口を一度下に下ろした。

キュゥべえが続ける。

「彼女についてキミに頼みたい事が……」

「いいえ、お断りよ。

私はまどかの契約を絶対に認めない。

決してあなたの思い通りになんてさせない」

キュゥべえの言葉に間髪入れず、

ほむらは手を払いのけるように激しく動かし、

拒絶の意思を身振りで示しながら強い口調で言い放った。

キュゥべえはいつもまどかを、

魔法少女を魔女にする為色々と画策している。

彼らの頭の中には感情エネルギーの事しかないのだ。

ほむらはキュゥべえの話とやらを、

おそらくまどかに契約の意思を起こさせてくれ

という類の頼みだろうと考えた。

だからキュゥべえの出鼻をまず先手を取って挫きに行く。

しかしほむらの返事を受けて、

キュゥべえはゆっくり首を左右に振った。

「何を勘違いしているんだい?

僕が彼女についてキミに頼みたいのは

キミの懸念しているであろう事柄のむしろ逆だよ」

「逆……?」

「ボクとキミの利害はその点では一致している。

ボクがキミにお願いしに来たのは、

鹿目まどかを魔法少女にならないよう

頑張って説得してくれという事なんだからね」

予想外すぎるキュゥべえの提案に、

ほむらは思わず口をあんぐり空け、

さっき払った手もダラリと脱力させて、

その場でぼうっと立ちつくしてしまった。

「近頃『ひき肉ミンチ殺人事件』が

世界各地で起きているのはキミも知ってるよね?」

「ええ、当然」

キュゥべえが一度間を置く。

ほむらはその余裕綽々といった態度に非常に苛立った。

自分がキュゥべえの掌の上で転がされているような嫌な気持ちがした。

「彼女はこの事件を解決する事を

願いにしようとしている。

ところが今、彼女に魔法少女になられると

とても困る事があるんだ」

「困る事?」

ほむらが微かに首を傾げた。

「実はね、『ひき肉ミンチ殺人事件』以外にもう一つ、

ここ日本で現在原因不明の大規模な事件が起きているんだ」

キュゥべえが再びしばしの間、口を閉ざす。

両者の間を沈黙が流れる。

ほむらの我慢は限界を超えた。

キュゥべえへの憎悪が彼女を駆り立てる。

銃口をまたキュゥべえの方へと向けた。

「言いたい事があるならはやく済ませなさい」

「それはつまりボクの相談をきちんと聞いてくれるという事だね?」

キュゥべえが目をパチクリさせる。

ほむらは自分の衝動的で軽率な行動を今になって後悔した。

完全に会話の主導権をキュゥべえに握られてしまっていた。

ほむらが小さく舌打ちする。銃を下に向け直した。

「わかったからはやくして。私は忙しいの」

ほむらからの承諾を受け、

どことなく満足げにほむらの目を見つめキュゥべえは言った。

「それはね、『魔法少女狩り』さ」

「何ですって?」

ほむらが怪訝そうに顔をしかめる

ほむらはキュゥべえから告げられる予想外の言葉の連続に、

頭の中の整理が追い付かずだんだん眩暈がしてきた。

キュゥべえがハキハキと喋る。

「ここ数カ月で殺されていた魔法少女の数はもう優に二桁を超えた。

もしかしたらこの事件の被害者かもしれない

魔法少女を含めるなら三桁を超えるね」

「魔女に負けた、という訳ではないの?」

ほむらが当然の疑問を口にする。

「いや、その可能性がある事例は既に除外している。

ボクが現在『魔法少女狩り』だと断定しているのは

死体が残されていた魔法少女達についてだ。

彼女達が魔女や使い魔に殺されたと考えるのは明らかにおかしい、

結界内で死んでしまった者は例外なくこちらに帰ってこれないはずだ。

しかも死体となった彼女達は

誰もグリーフシードを一つも所持していないんだ。

家や彼女らに関係したその他の場所を探してみても全く見当たらない。

一人や二人ならまだしも

全員グリーフシードが見つからないというのはおかしいだろう?

まさかグリーフシードを魔女がわざわざ奪うとも考えにくい」

「魔法少女に敗れたという事……?」

「その可能性が今の所一番高いかな。

それに事件の分布が全国に広まっている以上、

他にも関係があるんじゃないかと疑わしい事件は山ほどある、

例えばベテラン、実力者達の突然の失踪だったりね。

もちろんそれらはただの可能性でしかないけど。

……だけど、犯人を魔法少女だと仮定しても、

多少不自然な点はまだ残る。

事件の分布の広さから考えて、

一人の縄張りを持った魔法少女が起こしているとはとても思えない。

となると彼女、あるいは何かしらの魔法少女の集団が根なし草、

あちこちを放浪するスタイルをとっているに違いない。

ところがその条件に当てはまる魔法少女は、

ボクが契約した覚えのある魔法少女達の中には誰一人として見受けられないんだ」

ほむらがキュゥべえを強く睨みつける。

「…………つまり私が怪しいと言いたいの?」

今日の更新はここまで
おりマギの魔法少女狩りとは多少事情が違います
もちろんほむらは犯人じゃない
犯人は誰かなー(棒)
どこまで「キュゥべえ」が嘘をついているかが問題な訳です

次回に続く

      ,.-‐''"´`゙''、,.斗''"`` 、   ./
  ,.--'´ノ /    / /__ヽ_ /     更  :
 (´ ( / l| /// /´ ,   -—{      新  :
  .〉  ミォ州川川///彡ミミ、-— l     だ  :
 ( ミミ州''"´     ``ミミ、__/     .よ   :
 )ミ 彡'"  _, /´`_,.-、 ミ‐--l         :
 ( 彡! ,-‐‐''"-‐'´ ___   ``ミヘ

  し(ヘ /´ ( ==''ン‐-、  , ヾヘ

    (ミ,.-‐ュ_  ("'{,r,‐ァ ≦ン ヽ
      '. l´,.-ヽ   ´二ン     rヽ
     ‘,‐’''ンヘ         〈  りミォ=----i r—
        ‘ フ'´  .)  う''''''""ヽ、ヽ 〈´l州ミ� ,リ
       ヽ、 ノL__/    _,,ノ) ヽヽヽツ
    二     ‘,ヽ、  _,.ン'"ノ'ノ   /'. \
         ‘,├‐''"       /  ヽ_ `‐ァ---
     ヤ.   ‘,ヽ        ノヘ      /
              ゙ー—--、=''"ヽ、ヽ      /
       リ        >ヽ、 ノ  ll/


(美津代さんを貼って話が全然進まないのを誤魔化すの図)

「ボクがキミを犯人だと思ってるってことかい?」

「ええ、あなたが言いたいのはそういう事でしょ?」

ほむらがキュゥべえの赤い目をじっと見据える。

しかしそこからは何の情報も読み取る事が出来ない。

実に薄気味悪い、感情の感じられない目をしていた。

「うーん、キミの言う、怪しい、

という言葉のニュアンスには少し語弊があるかな。

今の所ボクにはこの事件の全貌も何もかも、

まるで判別がついていない。

ただ魔法少女の犯行と考えるのが一番合理的だろうと考えているだけだ。

そんな事件へのあやふやな展望の中で、

キミ以外に疑わしい人物が現時点で特に見当たらないから、

きっとキミが犯人だろうと扱うのは少し無理があり過ぎる。

それに別に他の魔法少女達に犯行が不可能という訳ではないからね。

何と言ったってキミ達魔法少女は条理を覆す存在だ。

あくまでキミは事件の調査への数少ない糸口、

とっかかりの一つに過ぎない。

キミの素性が知れずボクにはキミが信用できない、

という事は否定しないけど、

キミが見滝原に現れてからも依然各地で事件は相変わらず続いている。

キミが何か犯行に関わっている、あるいは何も関わっていない、

現状どちらとも言い切れない、という所がボクの本音だよ」

「……そう」

ほむらは内心ほっとする。元々ほむらには

『時間遡行』、『時間停止』これしか特別な手札がない。

この能力、切り札について

キュゥべえに知られるのは色々と不都合があり過ぎる。

なるべく隠し通すしかない。

キュゥべえに怪しまれるのは最初から覚悟の上だった。

しかしだからといって、

キュゥべえに事件に関与しているに違いないなどと疑われ、

何か強硬な行動をとられるのは恐ろしかった。

何故なら、まどかの契約を執拗に狙ったりと、

今までのループにおいて、

結果としてほむらの妨げになる行動を

キュゥべえは山ほどしてきたが、

キュゥべえがほむらに対して直接何か、

強く圧力なり妨害なりを仕掛けてくる事はなかったからだ。

それは、ほむらもまた一人の魔法少女である事から

原則通りある程度の不干渉を決め込んでいたのと、

ほむらがそれほどまどかに対する

契約の妨げになると思われていなかった事が大きいだろうが、

それだけに本気でほむらを

潰しにかかったらいったい何をするのか、

彼女にはてんで想像がつかなかった。

「それで、結局私にあなたは何の相談、頼みがあるというの?」

ほむらは腰を低く屈め、

キュゥべえに目線を合わせた。

「ボクがキミに頼みたい事は三つある。

一つ目はさっきも言ったけど

鹿目まどかを魔法少女にならないように説得する事。

二つ目は一日に何度かボクがキミの前に

前触れなく監視目的で現れるのを承諾する事。

三つ目はキミの一日の行動その他の情報を

毎晩おおまかにボクに報告する事だ」

まどかに契約させずに済む。

さっきのあれは言い間違えでも、

他に突拍子もない

別の意味が込められていた訳でもなかった。

キュゥべえの言葉に

いよいよほむらの胸は高鳴った。

しかしなるべく平静を装う。

絶好のチャンスを

万が一にでも逃す訳にはいかない。

ほむらが深く首を傾げた。

「その事件とあなたがまどかを

契約させたくない事とどうつながるというの?

『魔法少女狩り』がどんな魔法少女その他が

行っている事なのかは知らないけれど、

もしまどかが魔法少女になったとすれば、

彼女が誰かに負けるなんてとても私には考えられないわ」

「そうとも限らないさ。戦いにおいて

必要不可欠なのは力の総量ではなく勝機だよ」

勝機……。

ほむらは一人ごちる。

確かに、

いざとなれば私は時間を止めて

契約したまどかのソウルジェムを

撃ちぬく事が可能だろう。

なるほど、奇襲その他の襲撃で、

まどかが魔女になる前に

そのソウルジェムを破壊されてしまう事は、

インキュベーターにとっては困る事に違いなかった。


「まどかが『ひき肉ミンチ殺人事件』の犯人を

消滅させるという願いを叶えボクと契約したとする。

そしてまどかが『魔法少女狩り』の犯人に何らかの要因、

もしくは偶然目をつけられたとする。

相手の正体、能力がわからない以上

まどかが負ける可能性もゼロではない。

となるとひとまず事件解決までは

まどかの契約は見送るというのが一番確実だ。

ところがボクは少女から願い事を言われたら言われたとおりそのまま叶える、

少女の契約の意思には干渉しない、

これがボクと魔法少女の契約における原則的な『ルール』なんだ。

だから多少無理やりな手段ではあるけど、

誰かにこうして頭を下げて頼むしか

ボクにはまどかの契約を止める手立てがないんだよ」

「何故私にまどかの契約阻止を頼むの?

この街には巴マミがいるじゃない。

得体の知れない私にわざわざ頼む必要はないはずよ」

「マミは魔法少女の仲間を欲しがっている。

それにいざとなると相手の契約の意思、

決断を重視する可能性が高い。

誰かが魔法少女になるのを止めてくれと

相談する相手としてはあまり適切じゃない。

キミはまどかとクラスメイトだし、

仲も出会ってこの短期間にしてはかなり良好だ。

だからキミに頼む事にしたんだよ。

少なくとも一般人の美樹さやかに頼むよりは、

魔法少女であるキミに説得して貰う方が筋が通ってるだろう?」

感情がない割にキュゥべえは

意外と人間の事をきちんと理解しているらしい。

ほむらは驚いた。

「ボクがキミとこの取引きをしたいのは

この事件の完全な解決までだ。

これはキミが他の魔法少女達と同じように

ボクに取って『信用できる』対象かどうかを

査定する目的も含んでいる。

拒否する事はあまりお勧めできないね」

「私がそれらを承諾するメリットは他にはないの?」

まどかに契約を止めるよう堂々と言う事ができる。

本当は一も二も無く承諾したかった。

けれどまどかに対して何か特別な執着があるなんて

キュゥべえに下手に思われては困る。

冷静な対応をとる事がほむらには必要だった。

「メリット……。

そうだね、まずボクがキミを

監視する目的で傍にいる時は

キミに近辺の魔女に関する

位置情報を教えてあげよう。

本当は誰か一魔法少女に無闇に

肩入れするような行動は

取るべきじゃないんだけど特例としてね。

後はキミにかけられた疑いを

自らなるべく早く晴らせるよう、

この事件に関する情報を

色々ボクが自主的にキミに提供する

という条件でどうかな?」

体よく事件解決の手駒として

働かせたいだけなんじゃ……。

少しだけほむらはそう思った。

「もし、あなたの頼みを断ったら?」

キュゥべえがひょいと跳ねて屈んでいるほむらの肩に飛び乗る。

そして耳元で囁いた。

「ボクはキミを完全な敵だと判断する事になる。

今までと同じように

まともに生きていけるとは思わない方が良いよ?

少なくともキミの毎日の生活全てから

完全にプライバシーは失われると思ってくれていい」

ほむらの背筋が寒くなった。

キュゥべえはいつでもどこへでも現れる。

普段は自分からその姿を見せるから存在を視認できるが、

もし本気で物陰に潜まれ、

こっそりこちらを観察されたら……。

頼みなんて名ばかりの明白な脅迫だった。

「わかったわ。その頼み、引き受ける事にする」

ほむらの答えを聞いてすぐ、

キュゥべえは彼女の肩から背中を抜けてスルリと地面に降りた。

振り向いてキュゥべえを目で追う、ほむらの方へと向き直す事は無く、

キュゥべえはそのままゆっくりと歩き去ろうとしていた。

「良い返事が聞けて良かったよほむら。それじゃあまた明日」

キュゥべえがどこか闇の中へと姿を消した。

精神的な疲労がどっとほむらを襲う。

『魔法少女狩り』。

懸念事項であることには間違いないが、

それが解決されるまで

キュゥべえがまどかとの契約を保留すると言うなら

私は……。

私は……。


……一段と、夜の闇が深くなった気がした。

今日の更新終わり
キュゥべえは普通魔法少女に面と向かって露骨に脅迫しないと思う
その点こういうシチュエーションは非常に便利

オマケ 

本編には要らない、なんでインキュベーターがこれを事件だと判断したか等の設定

魔法少女が魔女、使い魔に殺される→結界内に取り残される(死体は残らない)
魔法少女が魔女になる→抜けがら、身体は魔女の結界に巻き込まれる(死体は残らない)
死体が残ってる→誰かに殺された可能性が高い→グリーフシードがない→魔法少女?
ある時期から急にそういう死体が増えだした→同一犯?

疑わしい事例
魔法少女があちこちで総計結構な数失踪→グリーフシードが見当たらない→魔女化?
→しかし近くに魔女はいない→何故?魔法少女が犯人か?


インキュベーターが警戒する理由
全世界に散らばっているキュゥべえ達が数カ月
捜索しても事件解決の糸口を全く見つけられないから

何故魔法少女達に注意しないのか?
魔法少女達はわざわざ注意しなくとも、
普通は最初から縄張り争いとかを警戒して既にピリピリしてる

犯人探しは魔法少女がやるよりも、
全世界のどこにでも行ったり潜んだり出来る
インキュベーターがやった方が効率が良い。

というよりインキュベーターが見つけられないのに魔法少女達が見つけられる訳がない

下手に魔法少女達に疑心暗鬼その他を植え付けると、
騒ぎが悪化して第二第三の『魔法少女狩り』等につながりかねない

更新

〜☆

次の日、ほむらがまどか、

そして仁美と一緒に登校していると

通学路の途中でばったりマミと出会った。

「あら、暁美さんと鹿目さん、おはよう」

「あっ、マミさんおはようございます」

にこやかにほほ笑むマミに

まどかが軽く頭を軽く下げた。

「おはよう、ございます。巴マミ、さん」

仁美とまどかの手前、

先輩に無礼な態度をとるわけにもいかず、

多少ギクシャクとはしながらも

一応丁寧な挨拶をほむらはマミに返した。

そのいつものほむららしからぬ態度に、

クスクスとマミは先程よりも笑みを深くする。

「ええっと、お二人とも

この御方とお知り合いなのですか?」

仁美がおずおずとまどかとほむらに尋ねた。

まどかがそれに答える。

「うん、丁度ほむらちゃんが今フルネームを言ってたけど、

巴マミさん。私達の一つ年上、先輩なんだよ」

それを聞いて仁美が何度も

交互にほむらとマミの顔を見遣る。

両者の胸付近にもそっとチラチラ

視線を遣っているのは多分気のせいではないだろう。

そして仁美は感心した様子でこう言った。

「転校してきてすぐにまどかさんを虜にしたばかりか、

こんな綺麗な人ともあっという間にお知り合いになるなんて

ほむらさんは思っていたより中々のやり手のようですわね」

「突然何を言ってるのよ志筑さんは……」

ほむらが吐息交じりに呟くように言った。

しかし仁美の指摘は鋭い。

クラスメイトの質問や接触をやんわりとはねつけ、

まどかとの交流だけを持ったほむらが、

何の接点も無いはずの先輩と知り合うなど

普通に考えれば不思議な話だった。

詳しく追及されたら

ちょっと困った事になるかも知れない。

ほむらの身体がその場にいたマミ以外は

気付かぬほど微妙に強張る。

「あら、まどかさんの事はまどかとお呼びになるのに、

私の事は仁美とは呼んでくださらないのですか?」

けれどほむらの懸念とは全く関係の無い事を、

少し意地の悪い表情をしながら仁美はほむらに言った。

自然肩の力が抜けて脱力する。

「それは……」

だってまどかは友達だから。

ほむらの思いは言葉にはならない。

ならば私は友達ではないという事ですか?

なんて返される光景が目に浮かぶ。

せっかく自分に仁美が向けてくれている

誠実な好意をきちんとした理由もなく

無闇に跳ねのけたくはなかった。

彼女は魔法少女、

同情や共感が命取りになりかねない

血塗られた世界とは全く無縁の存在だ。

理由も無く誰かを無下に拒絶する事を

ほむらはあまり好まない。

何しろ本来自分は

誰かをにべなく拒絶できるほど

上等な人間ではないはずなのだから。

「ひ、仁美」

【暁美さん】

仁美さん、

そう言おうと思っていた

ほむらにいきなりテレパシーで

マミが声をかけた。

驚いたほむらは

口からはっと息を漏らして、

何と言おうと思っていたかを

そのまま全部忘れてしまった。

「はい、ほむらさん。何でしょうか?」

仁美がニッコリと笑みを浮かべる。

どうやら仁美は名前だけで呼ぶ事を

無事に承諾されたと考えたらしい。

もう、何でもいいや、どうにでもなれ。

そんな投げやりな気持ちで、

仁美との事は一時頭から追いやり、

マミの方にほむらが首を向けると、

彼女はまどかと他愛ない世間話を交わしている。

ほむらが自分の方を向いたとマミはすぐに気付いて、

チラリと目を一瞬だけほむらの方に向けると

まどかの顔にその先を戻した。

【ちょっと二人だけでしたい大事な話があるの。

お昼休みに私のクラスに来てくれないかしら】

ほむらの頭の中でマミの声がした。

その間もマミはまどかと世間話を続けている。

会話をしながらテレパシーをするとは

中々器用な事をする。

ほむらはマミの地味な妙技に舌を巻いた。

やはり巴マミは底知れぬ実力を備えている、

そんな事をふと思ってみる。

【ええ、わかったわ】

「ほむらさん?」

仁美がほむらの顔を覗き込んだ。

それにびっくりしたほむらは

つい大げさに見えるくらい後ろに仰け反ってしまう。

「ど、どうしたのほむらちゃん?」

まどかが心配そうな声をあげる。

まどかに自分のかっこ悪い姿を見られてしまった。

ほむらの胸の中を熱い羞恥心が一杯に満たす。

ほむらの頬にほんのりと赤みが差した。

「何でも無いわ。少し考え事をしていただけ」

そう言ってほむらは

自身の長く美しい黒髪を

サラッと優雅にかきあげた。

〜☆

昼休み、チャイムが鳴ってまもなく

ほむらは用事があるからとどこかに向かい、

仁美は係の仕事があるという事なので、

まどかとさやかは二人屋上で昼食をとっていた。

そしてその最中、

ふらりとやって来たキュゥべえと合流した。

キュゥべえにお弁当のおかずを食べさせてみたりと

和やかな時間が流れる。

「ねえ、まどか」

「なあにさやかちゃん?」

「まどかは、本当に契約する気なの?」

まどかが箸を一時置く。

そして弁当箱から目を離しさやかの方を見た。

「うん」

力強く頷くまどか。

対してさやかは渋い表情をしている。

「多分やめた方が、良いと思うよ」

さやかの囁くような声は低く震え、

そこには明らかな躊躇いがあった。

しかしそれでいて断固とした否定の意思を内に秘めていた。

「どうして?さやかちゃんは

『ひき肉ミンチ殺人事件』をどうにかしたくないの?

私が覚悟を決めさえすればそれが出来るのに、

何で私の願いを否定するの?」

まどかの声に苛立ちが混じる。

まどかにはまるで理解できなかった。

私がやろうとしている事は絶対に正しい事なはずなのに

皆よってたかって私を否定する。

仁美と同じく一番気心の知れた

親友の一人であるはずのさやかまでも。

それが無性にまどかの心中を煮えくりかえらせた。

「ええっと、なんて言うのかな……、

私達ってさ、きっと幸せバカなんだよ」

「え?」

唐突なさやかの話の展開にまどかは面食らう。

さやかはそのまま独り言を口にするように喋り続けた。

「毎日朝決まった時間に起きて、

朝ごはん食べて、学校に行って、勉強して、遊んで……。

私もそうだけどさ、まどかも毎日幸せだよね?」

「うん」

「あのね、きっと何を犠牲にしてでも

私達が日々感じてる幸せを掴みたいって人、

世の中にきっと大勢いるって私思うんだ」

どうにも自分の言いたい事が上手く伝えられず

さやかがワシャワシャと頭を掻きむしる。

「それなのに私達は、どれだけ自分が今こうして

毎日を穏やかに過ごせてる事が幸せな事なのか、

中々上手く実感できない。

それは私達が不幸を知らないからだと思う。

恵まれ過ぎて多分馬鹿になっちゃってるんだよ」

そしてさやかがまどかの目をしっかりと見据え言った。

「まどかはさ、本当に今はっきり言い切れるの?

自分の大切な日常を誰かの為に全部自分から投げ捨てて、

それがもし自分の本当に望む物を自分にもたらしてくれなかったとして、

自分のせいで毎日がとても苦しくて、

辛くて、投げ出したくなっても

後から自分のした事を絶対に後悔しないでいられるんだって」

まどかはさやかの言葉に返す言葉を探した。

しかし言葉は自分の中にはどこにも見当たらなかった。

自分が誰かの為に生きて後悔する。

そんな事彼女は生まれて一度も考えてみた事がなかったからだ。

そしてそんな彼女の様子をキュゥべえは何も言わずじっと眺めていた。

区切りも良いのでちょっと休憩挟みますごめんなさい

〜☆

まどかとさやかが二人で話している頃、

マミとほむらは二人並んで人気のない廊下にいた。

教室で顔を合わせてからここまで

両者とも一言も口を聞いていない。

まず先にマミが口火を切った。

「こんにちは暁美さん」

「こんにちは、巴マミ。それで?用事って何?

手短に済ませて貰えるとこちらも有り難いわ」

ほむらのせっつく様子に動じることなく、

マミは自分のいつものペースで喋り始める。

「手を組みましょう」

そしてほむらの方に片手を差し出した。

「あなたは…………」

マミからの三度目の勧誘を

全くもって予想していなった

ほむらは呆れ顔でマミを暫く凝視した。

「本気で言っているの?

前も言ったけど私はあなたと」

「鹿目さん」

その一言でほむらの口から

出かけていた言葉は押し留められてしまった。

昨日も同じような事があった。

まさかあの時みたいにまた衝撃の事実を

聞かされるのだろうか?

ほむらの胃が想像でキリキリと痛んだ。

「私は彼女の契約を止めたい。

けれど彼女の契約を確実に止めるには

私だけの力だけでは不十分。

より確実性を高めるには

私と同じく長い間魔法少女をやっていて、

私以上に鹿目さんと接触する機会のある

あなたの協力が必要だわ。

あなたも昨日鹿目さんの契約には反対していた。

私と協力する事はあなたにとっては

不本意かもしれないけど、

冷静に考えれば

これはあなたにとって悪い取引では

全然ないとわかるはずよ」

ほむらは自分の頭をガツンと

鈍器で殴られた様な衝撃を、

マミの話の内容から印象として受けた。

マミがまどか、あるいはさやかの

契約を自分の意思で止めにかかる。

それはマミという人間に関するほむらの判断、

経験に照らし合わせると、

どう考えても起こり得ないはずの事態だった。

自分に真っすぐな目を向けてくるマミを、

ほむらは何の感情も悟らせない

無表情さを持って黙って見返していた。

しかしその胸中は人知れず荒れ狂っている。

悪い取引では全然ない?

ほむらにとってはとてもそんな言葉で

収まりきるレベルの話ではない。

マミという「正義の魔法少女」に憧れる。

それはこれまでの『時間遡行』における、

まどかやさやかにとって

契約のきっかけの一つとなる

重要なファクターだった。

その原因である張本人がほむらに

まどかの契約を一緒に協力して止めようと言っている。

あれ程何度も何度も

こちらの思惑に沿った行動をとってくれなかった

巴マミ自らが何の因果ゆえかそう口にしている。

願ったり叶ったり、

もしこの機会を逃してしまえば

こんな都合のいい展開は

二度と自分の前で起こらないかもしれない。




……もし、これが「昔」のほむらだったら

きっと一も二も無く承諾し、

あまつさえ涙を流して

マミにすがりついていたに違いなかった。

「何よ……、一体何のつもりよ……」

ほむらの声は彼女自身の耳に

酷く弱弱しく掠れて聞こえた。

爆発的な感情の渦が激しく

彼女の中でせめぎ合っていた。

地獄の様なあの日々の苦しみの吐露、

マミの美しく洗練された「正義」への憧れ、

マミと対等の立場で共闘する自分、

それは脳を痺れさせる甘い誘惑だった。

だけれど