エレン「今日は肌寒いな…」(80)

エレンの瞳には二つの色が映し出されていた。

すなわち深緑と群青である。

このまま世界の果てまで続くのではないのだろうかと勘ぐってしまうほど、広大な草原と青天が、今、彼の前には広がっている。

地平線を遮るものは何一つない。ここは壁の外の世界だ。

巨人が蔓延り始め、やがて人類が追放された土地。

もともとは人類の宝であったろうそんな世界を、今彼らは馬に乗って疾駆していた。


ライナー「…先輩方、無事だろうか」

アルミン「きっと……大丈夫さ。奇行種とはいえ、そんなに大きいサイズじゃなかった」

サシャ「なんていっても、調査兵団のベテランの先輩ですよ!もうすぐ帰ってくるはずです……」

エレンのこめかみを汗が伝って、馬の背に落ちてはじけ飛んだ。

彼のそばで馬に乗ってる人物は全て新兵である。

先ほど遭遇した巨人の討伐を数名の先輩が買ってでて、一時的に隊列を離れたのだ。

もし、この新兵だけの状況で巨人に出くわしたら……


ミカサ「エレン、大丈夫?」

エレン「……あ、ああ。なんでもねえ」


いけない。
悪い想像ばかりしていても仕方ない、と己を叱咤した。

おかげで彼女が、横から心配という文字を顔中に書いて覗きこんでくる。

エレンはこの空気を吹き飛ばそうと、軽口を叩いた。

エレン「今日はなんか肌寒いな……。晴れてんのにな。なんでだろ」

コニー「えー?寒いか?お前だけじゃね?」

エレン「いや、結構冷えるぜ……見ろ、俺の腕こんなに鳥肌立って…」


エレンはコニーに腕を見せるため、袖をまくりあげようとした。

そこで――あることに気づく。

己の異常な状態に気づいた時、エレンの口からは知らず知らずのうちに叫び声が発せられていた。


エレン「っああああ―――――――!!!!???」


アルミン「!?」

ライナー「ど、どうしたエレン!?」

エレン「まずい!!!」

ミカサ「エレン!?……どうしたの!?」


エレン「服を―――服を着てくるのを、忘れた!!」


サシャ「な……なんですって? ああっ!!本当です!」

エレン「パンツと立体機動のためのベルトだけ……それだけは身に纏ったんだが、シャツもズボンもジャケットも着るの忘れた!!」

ライナー「おいおいマジじゃねえかよ!なにしてんだエレン!寮に戻る時間はねえぞ!!」

アルミン「…だからか!今日寮の部屋を出る前、何故エレンのベッドの脇に畳まれた団服があるのかと不思議に思ってたんだ……」

エレン「その時点で言ってくれよ……」

ジャン「ぶぁっはっはっはっは!エレン、マジかよ!傑作だぜその裸ベルト姿!!」ゲラゲラ

ミカサ「それは大変。エレンがお腹を冷やしてしまう……ライナー、一回壁の中に戻らない?」

ライナー「何言ってんだミカサ。そんな暇ねえよ……ったく、エレン、俺が今上着を脱ぐからそれでも着てろ」

エレン「さ、サンキュ」ブルブル

ライナー「……はぁ…エレンらしくねーな。ここは壁の外なんだぞ?」

ライナー「おい、ほかの奴もよく聞けよ。一瞬の油断もするな。気を引き締めて―――――――ううおおおおおおあああああああ!!!??」


頼れる兄貴分と皆から慕われるライナー・ブラウン。

彼がエレンのために上着を脱ごうと、服に手をかけた瞬間……衝撃が彼の脳髄を揺らす。

ライナー「なんだこりゃ――――!?!?」

エレン「ライナー!?何があった!?」

ライナー「俺の……立体機動の、ベルト……こりゃベルトじゃねえ!!」

ライナー「……昆布だ!!!!」



サシャ「コンブ!?なんですかそれ!?」

アルミン「konbuとは、海に生えてる海藻類のことだってお爺ちゃんの本に書いてあったよ!」

ミカサ「海?壁の中には海はないでしょう?」

ライナー「わ、わからん!!とにかく朝起きたら、ベッドの脇にこれが置いてあったんだ……だから俺はベルトだと思って、いつも通り……!!」

ジャン「どういうことだッ!?」

彼らの間に一層緊張が高まり、次々に動揺が広がった。

エレンは裸ベルトであるし、ライナーは昆布では立体機動は使えないと見ていいだろう。

なぜなら―――昆布では彼の重量に耐えられず、立体機動中に引きちぎれてしまう可能性が高いからだ。


エレン「まずいぞ……」

ライナー「すまん、みんな!」

ジャン「おいおい、なにやってんだ本当……ライナーまで……。まさか、ほかにも朝にうっかりしてた奴なんていないよな?」

ミカサ「いるわけない」

コニー「だよな。ハハハッ」ビチビチ

サシャ「………あの、今の何の音です?」

コニー「え?」ビチビチ

サシャ「ビチビチって……コニーの方から音がするんですけど」

コニー「は?何言って………ぐぁあああ――――――ッ!!!!!!」

コニー「あああああああああ―――――!!!!」ビチビチ

エレン「コニー!?」

アルミン「コニー!一体何が!?」

コニー「俺……!!俺の、ベルト……!!」

ライナー「まさか、お前も昆布を!?」

コニー「……昆布じゃあ、ねえっ……!!!」

コニー「ウナギだ……!!!!」ビチビチ


ミカサ「……ウナギ!?どうして……!?」

エレン「……むしろよく結べたな!?」

ジャン「生臭っ」

コニー「あっやばい!!逃げたっ!!」

サシャ「ああ……」

エレン「おい、なんか今日みんなおかしいぞ!?何やってんだ!!」

ライナー「やばいな……壁外だってのに…おい!みんな!自分の装備を確認してみるんだ!!」

ミカサ「う、うん…」


サシャ「――――あああああ!?しまった!!」

ジャン「次はサシャか……どうした!」

サシャ「ブーツじゃなくて、部屋用の猫さんスリッパ履いてきちゃいました~~~~!!!!どうしよう!!!」

エレン「微妙にかわいいうっかりしてんじゃねぇよ!!そんなの履いてんのかよ!」

サシャ「外で履いたら汚れちゃいます……!!」

コニー「そっちかよ!」

しかし彼らがサシャの猫さんスリッパで笑ってる場合ではなかった。

ドシン、ドシンと―――聞きなれた音が鼓膜を揺らす。

最初に気づいたのは、やはり聴覚のいいサシャだった。


サシャ「……ああっ!!どうしましょうみなさん!!巨人が……巨人が接近中ですよぉーーーー!!!」

エレン「な……、あ!右方から5m級接近中!!」

ジャン「くそ!こんな時に!!エレン、ライナー、コニー、サシャのボンクラどもは使い物にならねぇ……!」

ジャン「俺とミカサ、ベルトルトの3人でなんとかするしかねえか…」

訂正

ジャン「俺とミカサ、ベルトルト、アルミンの4人でなんとかするしかねえか…」

ジャン「ミカサ!俺とアルミンとベルトルトが巨人の腱を削ぐ!その隙にお前はうなじをやってくれ!!」

ミカサ「分かった」ジャキッ

アルミン「よしっ…!やってや――――んんんんッ!?!?」ガチャ

アルミン「こ……これは、なんだ!?ブレードじゃないッ!!」

エレン「アルミンまで!?座学トップの賢いアルミンはまさかそんなことあるわけないよな!?」


しかしアルミンの土気色の顔が、真実を物語っていた―――

座学でトップの成績を修め、その類まれな頭脳から軍師とまで呼ばれたアルミン・アルレルトも……完璧な人間などではなかった。

彼の手にするものを見た者の目は、驚愕で見開かれる。

アルミンはブレードの代わりに、大根の桂むきを掲げていた。

ひらひらと半透明の大根が風になびいている。大根では巨人を切れない――――誰かが脳内でそんなことを囁いた。

アルミンは絶望した。

ライナー「アルミンまで……一体これは、なんなんだ?呪いでも俺たちにかかったのか…?」

アルミン「いや…これは自業自得なんだ。昨日、装備の整備をしながら、僕が大根の桂むきの練習なんてしていたから…ッ」

アルミン「きっとその時に、紛れ込んでしまったんだろう。失策だった……くそ!!」

エレン「過ぎたことを悔やんでも仕方ねえよ、アルミン」



ジャン「くっ…!!アルミンまでも、か。こうなったら仕方ねえ。3人だな」

ジャン「ミカサ、ベルトルト!!準備はいいか!?」

ミカサ「……いつでも」

ジャン「じゃあ………って、おい。ベルトルト、いくら無口だからって、返事くらいしろよ!!!」クルッ

ジャン「――――!?」

ジャン「なぁ……!?」

ミカサ「ジャン、どうかした?」

ジャン「ベ、ベルトルトが……いねぇぞ!?」

ライナー「おいおい、ジャンまでおかしくなっちまったのか?ベルトルトなら俺の隣に―――――あああああああ!?」

コニー「……!!!」

サシャ「馬しか……いない!!!」

エレン「どういうことだ!まさか、落馬したのか!?大変だ!!」

アルミン「いや、待ってくれ!エレン!」

アルミン「僕が寮をでるとき……ベルトルトの布団がこころなしか盛り上がってた気がする……!」

ライナー「な……に!?」

ジャン「とすると……まさかベルトルトは!?」


アルミン「ああ……寝坊したんだろう……」

ジャン「あの……っ、クソ野郎がぁ!!」

エレン「寝坊かよ……」

ライナー「力抜けるな……」


巨人「……」ドシンドシン


サシャ「脱力してる場合じゃないです!巨人がどんどん近付いてきますよ!?」

ミカサ「ジャン、二人でやるしかない。ジャンは巨人の気をひいて。私がうなじを刈るから」ジャキ

ジャン「あっ……ああ!!やるっきゃねえな!おいクソッタレども、馬頼んだぞ!!」

コニー「まかせとけっ!!」

ジャン「うおおおおおおおおおおお!!!」


ジャンはブレードを抜こうとした。いつも通り、取っ手とブレードがきっちり噛みあう音が聞こえるはずだった。

だったのだが、おかしい。

ジュブンッ……そんな不快な音が腰のあたりから聞こえた。

まるで何か柔らかいものに取っ手を突き刺したかのような音だ。

ジャン「おっ………!?」

ジャン「おあああああああああああああああああああああああ」

ミカサ「ジャン!」

ジャン「チッ……しくじった!!晴れて俺もお前らの仲間入りだよクソッタレ!!」

ライナー「ジャン!落ち着け!…何があったのか、教えてくれ」

ジャン「俺の腰についてるものを見ろ!!これは刃をしまうためのものじゃねえッ!!」

ジャン「豆腐だよ!!!俺は豆腐を腰の両脇にくっつけた大馬鹿野郎だ!!!笑えよ!!!さあ!!!」

アルミン「な、なんだってー!?」

エレン「馬鹿!なんであのでけえ刃収納ボックスと豆腐を間違えるんだよ!?」

ジャン「服を着忘れたテメエに言われたくねえよ!」

アルミン「…まあ確かに色は似てるけど…」

サシャ「ジャン、いらないならくださいよ」

ジャン「巨人から逃げ切れたらくれてやるよ!!ああークッソ!昨日装備の確認しながら豆腐食うんじゃなかったぜ!!」

ライナー「……これでまともに戦えるのがミカサしかいなくなっちまったが……ミカサ、やれるか!?」

ミカサ「……」

ミカサ「……できる」

コニー「……!へへっ……さすが俺ら104期の希望の星だな」

エレン「ミカサ…!頼むぜ!」

アルミン「ごめんミカサ……こんな重荷を背負わせて……」

ミカサ「構わない。私は強い。ので…ひとりでも、奴を……」


巨人「ウアー」


ミカサ「削ぐことが、できる…!」ギラッ



ジャン「うおおおおおおおミカサのイケメンオーラっぱねーーーー!!!」

ライナー「胸の高鳴りとまんねえええええええええ!!!さすがだぜミカサーーーー!!」

アルミン「抱いてくれミカサああああああああああああああ」

エレン「頑張れミカサあああああああああああああ」


キャーキャー!(野太い声)
 キャーキャー!(野太い声)

ミカサは黄色い声援を背に受けながら、アンカーを巨人の身体に刺す。

立体機動に移るために、ガスを吹かしてワイヤーを巻きとろうとした。


ミカサ「………うん?」チャプッ

ミカサ「……あれ?………なんで……ガスが…?」チャプチャプ

ミカサ「……!?」チャプチャプ

ミカサ「んあああああああああああああああああああああっ!!!」


エレン「ミカサ―――――!?どうした―――!!」

ミカサ「私の背の……ッ!ガスを吹かす立体機動装置……!!間違えて……」

ミカサ「酒樽をつけてきてしまった………!!!!」チャプチャプ

アルミン「な、なんだって―――!?」

コニー「もう馬鹿!全員馬鹿!!どうすんだよおい巨人すぐそこまで来てんぞおい!!」

ライナー「もう昆布食うしかねえッ!!!」モチャモチャ

サシャ「豆腐も食うしかねえッ!!!」モチャモチャ

ミカサ「酒も飲むしかねえッ!!!」ゴクゴク

アルミン「くっ!!絶体絶命のピンチだ!どうする……立体機動が使えるのは僕とジャンだけ……!」

ジャン(ブレードをほかの奴らに借りるか!?いや……戦闘能力の低いアルミンと、俺の二人だけでは厳しいな)

エレン(俺がせめて戦えれば!!しかし、素肌にベルトが食い込んできっとものすごく痛いことが予測される……!それは無理だッ!!)

巨人「ウガー」ドシンドシン


エレン「と、とりあえず全力で奴から逃げ切るぞ!!!」


ドドドドドドドドド…

一方その頃、同じ空の下、遠く離れた地では別の班―――ナナバ、ゲルガー、クリスタ、ユミルが馬で駈けていた。


クリスタ「……巨人になかなか遭いませんね…」

ナナバ「油断してはいけないよ。そういう時にこそ奴らは来る」

ゲルガー「そーだぜ。気を引き締めることに越したこたぁねえ」

ユミル「……」

クリスタ(サシャたち…大丈夫かな)


小隊が大きな岩を通りすぎた時だった。

何か岩の奥で光るものがあった。ナナバとゲルガーが素早くそちらに視線を送る。

ナナバ「……噂をすれば、だね。新兵二人は下がってて。私たちが仕留めるから」

クリスタ「あっ…!!」

岩の向こうに巨人がうずくまっていたようだ。ギョロリと目玉がこちらに向いた瞬間、ゲルガーはアンカーを発射する。

ゲルガー「俺たちにまかしときな!!」

ユミル(速い…!)


ゲルガー「よし、行くぜナナバ!……ん?」ガチャガチャ

ナナバ「どうした、ゲルガー?」

ゲルガー「いや、おう……ブレードを引き抜きたいんだが……あああああッ!?!?」

クリスタ「先輩!?」


ゲルガー「しまった!こりゃあ―――弁当箱だ!!間違えて弁当箱を腰にくくってきちまった!!!すまん!!!」


ナナバ「―――――はぁ?」ギロッ

ナナバ「ゲルガー……冗談言ってる状況じゃないだろ?」

ゲルガー「いや、まじで…「は?本気で言ってるなら尚更タチが悪いよね?」あ…はい……」

ナナバ「調査兵団入って何年目?今日はクリスタやユミルの後輩もいるんだよ?」

ナナバ「先輩がそんなんでどうするんだ?大体なんだよ、弁当箱って」

ナナバ「普通気づくだろ?装備してる時点で。それともまさか常時酔っ払ってるとかじゃないよね?」

ゲルガー「あの……ごめんなさい……本当に……」

ナナバ「謝るくらいなら最初からしないでくれ、ゲルガー。君のそんな姿見たくなかったよ。

ナナバ「戦友と思っていたけれど、正直失望させられた。今日からゲロガーに改名してくれないか」

ゲルガー「はい…ゲロガーです……」グスン

ゲルガー「…生まれてきてごめんなさい……ゲロから生まれしゲロガーです……」シクシク

クリスタ(なんでお弁当箱……)

ユミル(調査兵団ってこんな奴ばっかりなのか?)



ナナバ「二人とも、こいつのような兵士になってはいけないよ。装備の確認はしっかりするように」

ナナバ「自分の命が惜しければ、ね」

クリスタ「は、はい!」

ユミル「…はい」

ナナバ「しかしゲロガーが使い物にならないとすると…二人にも討伐の補佐をしてもらいたいんだ。いいかな」

クリスタ「了解です!」ゴクリ

ユミル「…でーす」

巨人「アアアア」ドシンドシン


ナナバ「さあ、来るよ!(アンカーは…あのあたりでいいか)」


バシュッ!

――――グチャァッ



ナナバ「!? なに!?アンカーが……刺さらない!?」

クリスタ「ナナバさん、どうしたんですか!?」

ナナバ「………うあああああああああああああああああああああッ!!あれはアンカーじゃない!!」ハッ


ナナバ「バナナか!!!!」


ユミル「先輩方二人とも死んじまって結構ですよぉ」ビキビキ

ドドドドドドドド……
ドドドドドドドド……


エレン「あああああああああ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」

ミカサ「!? エレン、左を見て!あれは…」

アルミン「クリスタとユミルの班だ!助かった!!」


クリスタ「あっ!先輩!!あれは首席のミカサがいる班です!」

ナナバ「よかった。私たちを追いかけてきてる巨人を始末してもらおうか」

ユミル「…でも、あいつらも……追われてませんか」

ライナー「おーい!」
クリスタ「みんなー!」


「「助けて!!!」」


コニー「…え」

ナナバ「…は」




エレン「結局巨人が2体に増えただけじゃねええええええええええか!!」

クリスタ「なんでみんな装備ちゃんと確認しないのー!?」

ライナー「すいません!!」

ミカサ「…お酒残ってますが飲みますか?」

ゲルガー「…!!あ……ありがてえ!!!」ブワッ

ナナバ「どうするんだこの状況……!」


サシャ「……あ!リヴァイ兵長です!あれ!」

エレン「本当か!?助かった!!兵長なら一人で巨人2体ぐらいどうってことないだろうしな!」

ジャン「兵長ーーー!!へい…………兵長!?」

アルミン「そんな………嘘だ………!」


アルミンは目を疑った。その場にいる全員の心に絶望が押し寄せた。

彼らの前に現れた人類最強の男は…

パンツ一丁に昆布とウナギだけを身にまとい、酒樽を背中にくくり付け、さらに猫さんスリッパを履いて、
左腰には豆腐を、右腰には弁当箱を備え付け、
右手に大根の桂むきブレード、左手にバナナを握りしめていた。


その姿は、不審者にしか思えなかった―――
人類最強の不審者誕生の瞬間だった―――

最悪の光景だった。

ナナバ「……どうしてそうなった…?」

リヴァイ「寝ぼけていたんだ」

アルミン「ああ……なら……仕方ないですよね………」

リヴァイ「おいなんで誰も俺と目を合わさねえ」

ミカサ「エレンに近づかないで……悪影響……」

エレン「……」

リヴァイ「そいつの格好の相当だがな…」


完全にお通夜の雰囲気になってしまったが、背後に迫ってくる巨人2匹はそんなのお構いなしである。

彼らに知性があれば、絶対に近づきたくない集団だったろうが……残念ながら巨人に知性は備わってなかった。


ライナー「どうするんだこれ……!俺たちゃこのまま巨人の餌か!?」

リヴァイ「……諦めんのか?」

アルミン「……え?」

リヴァイ「大根で切れねえと誰か決めた?バナナが刺さらないと誰が決めた?」

リヴァイ「酒が立体機動に使えねえと……一体誰が決めたんだ?」

エレン「……兵、長…」

サシャ「……」

リヴァイ「自分の可能性を自分で狭めるんじゃねえ。いいか……どんな過酷な状況でも、命ある限り諦めるな」

ライナー「……!」

コニー「……!!」

リヴァイ「俺がやれっつったら、やるんだ。やるなっつったら、やるな」

リヴァイ「諦めるんじゃねえ!クソ野郎どもが!!」

エレンゎ迷った……
はだかだから……
ちょっとさむぃ……

でも……
リヴァィが……
ぁきらめるのよくなぃって……
ゅってたから……

エレンは……
がんばろって……
ぉもった……

でも……
きょじんの顔……
こわぃ……

でも……
くちくしたぃって……
エレンはぉもったから……

エレンは……
がんばろって……
ぉもった……

エレン「…兵長の仰る通りです。俺、やります!!」バシュッ

ミカサ「エレン!裸で立体機動なんてやったら……!」

エレン「分かってる……ッあああああああああああああ!!!!!」


全身を引き裂かれるような痛みがエレンを襲った。
しかしエレンの瞳は燃える闘志を宿し続けている。
彼にはもう、裸だとかパンツ一丁だとか、そんなことは瑣末なことに過ぎなかった。

目の前の巨人を殺す―――それだけが彼を突き動かしている。


ミカサ「……エレン!一人で飛び出しちゃ…だめ!!」


そして彼女も、エレンを守りたい一心で宙を飛んだ。
そう、彼女こそ酒樽で立体機動を成し遂げたただ一人の人類である。

ナナバ「…ハッ。新兵の前で情けない姿見せちゃったね」

ゲルガー「ああ……俺たちも行くか!」

クリスタ「あっ!ナナバさん、ゲルガーさん!そんな…無茶です!」


でも……
むちゃじゃなかった……

バナナはちゃんと……
グサッって刺さった……

みんなも……
がんばってる……!

アルミンの大根のぅすぃのが……
きょじんの足の後ろのところを……
ザクッって切った……

きょじんは……バターンってなった……

そしたら……
ジャンの豆腐ブレードが……
きょじんの後頭部を深く抉り取った……

エレン(あと一匹! ミカサ、俺とライナーが右から行く!お前は左からだ!)

ライナー(おう!)

ミカサ(分かった)

サシャ(ならその他私たちで3人をサポートします!)


みんなががんばるその姿は……
さながら怒り猛る獅子の群れが……
一寸の無駄もない連携で……
獲物を追い詰めるようだってぉもって……

リヴァィは……
ちょっとびっくりした……

ベルトルト「………んん……むにゃ……」

ベルトルト「…あ……もう朝か……今日は壁外調査の日だ」

ベルトルト「あれ…?なんでみんないないんだろ」

ベルトルト「……もしかして…僕、寝坊した…?」

ベルトルト「…………どうみても窓の空が夕焼けな件」


―――ガララッ
タダイマー アーツカレタ
 メシメシ


ベルトルト「あっ……帰ってきた…」

ベルトルト「お帰り……みんな……」

ライナー「ベルトルト、お前やっぱ寝坊したのか」

ジャン「まあ、途中まで全然気付かなかったんだけどな!」

エレン「横見たらお前の馬だけ走っててよー、今思い出したらかなり笑えるな!」ハハハ

ベルトルト「ひどい……。っていうか、何その格好…?僕の目がおかしいの?」

アルミン「まあ、いろいろあったのさ」

ベルトルト「そ、そう。……で、今回の調査の成果は得られたのかい?」

エレン「ああ。勿論だ」



エレン「食べ物で遊んじゃいけないっていう、教訓を得られたぜ」ボロッ

ミカサ「…出かける前に、ちゃんと装備は確認した方がいいという教訓も得られた」ボロッ

ベルトルト「…………それって……当たり前のことじゃないかな?」



おわり

バナナさんのナナバネタが書きたいだけだった
バナナとナナバは……ズッ友だょ……!

読んでくれた方ありがとうございました

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