エレン「本当にアニなのか…?」(64)

8巻までのネタバレあります

ライナー「ん?おい…、あいつ…」

エレン「ん?あぁ…アニか…。また教官にバレないようにうまいことサボってるな」

アニ「…」

ライナー「…。よーしエレン、アニにも短刀の対処を教えてやるぞ」

エレン「は?」

ライナー「あの不真面目な奴にも説教だ。兵士とはどうあるべきか…教えてやろうじゃないか」






アニ「…」

ライナー「教官の頭突きは嫌か?それ以上身長を縮めたくなかったら、ここに来た時を思い出して真面目にやるんだな」

エレン「は?何だその言い草…」チラッ

エレン(すげぇ怒ってる…。いつも怖い顔してると思ってたけど…本当に怒った顔は比じゃねぇな…)

ライナー「そら!始めるぞエレン!」







エレン「お前の倍近くあるライナーが宙を舞ったぞ…。すげぇ技術だな」

アニ「…!」

エレン「誰かから教わったんだろ?」

アニ「…お父さんが…」

エレン「親父さんがこの技術の体現者なのか?」

アニ「どうでもいい…」スタスタ

エレン「あ…。行っちまった…」

こいつとの出会いは本当に何ともないことだった

いつものようにライナーが私にちょっかいを出して来た時に、たまたまいただけだ

こんなうるさい上に弱いやつは、本当にどうでもいいと思っていた

エレン「しかし、どうだ!俺の蹴り技は?見よう見まねだが、うまく決まったよな」

アニ「は…、全然駄目。全くなってない」

エレン「何だよ…。どこが悪いって言うんだ?」

アニ「…。そんなにこの技が気に入ったんなら、教えてやってもいいけど?」

エレン「え?やだよ。足蹴られんの痛いし」

アニ「……。遠慮なんかしなくていいって」









それは単なる気まぐれだった

久しぶりに話しかけてきたやつが、自分の足技を誉めてきて、気分が良くなったからなのか、それもよく分からない

とにかく気まぐれとしか言いようがなかった

でもそれは本当にいらない事をした
後でそう後悔した…

こいつの、言い出したら聞かない性格は、有名だったからなんとなく知っていた

でもこんなにしつこいなんて思わなかった…

本当に面倒な事をした





それからというもの、格闘術の度、毎回毎回勝負を挑んで来た…

エレン「おいアニ!今日も組もうぜ!」

アニ「…何回言えば分かるんだ。私はあんたとはやりたくない」

エレン「…でも俺はお前に勝つまで挑み続けるって決めたんだ」

アニ「勝手に私を巻き込まないでくれないか」

エレン「…頼む!!」

アニ「チッ…。やるからには手加減しないよ…」

私は1度も負けることなく、約1年が経った

とにかくうっとうしい…その言葉しかなかった

でもわざと負けようかとも思ったけど、それはしなかった

なんとなくここまでバカみたいに一生懸命なやつに、少し悪い気がしたからだ

でもある時、私は口が滑った…









エレン「チクショウ…また負けた…」

アニ「…そろそろ諦めたらどうだい」

エレン「いや…諦めねぇ…」

アニ「言っとくけど、こっちだって迷惑してんだ」

エレン「…悪い。…そうだ!訓練後に教えてくれよ!頼む!」

アニ「…え…あぁ…」

エレン「やったぜ!!」

アニ「あっ…私はまだ

エレン「じゃあ、飯終わったらまたここに集合な」タタッ

アニ「あ…おい!」





いつもそうだった。
こいつは本当に強引でバカだ
勘違いして、なんでも自分で勝手に話を進める

いつからだろう…その性格も別にうっとうしくなく感じて来たのは…


夕食後、私は行く義理は全くなかった
むしろ断るつもりで行ったのに…



エレン「お、アニ!来てくれたんだな!ありがとう!」

アニ「いや、私は…

エレン「それより見てくれよ!いくぞ…フッ!」バキッ

アニ「……」

エレン「ほら、どうだ?かなり上手くなってないか?」

アニ「…まだ全然甘い」

エレン「そっか…じゃあ、やってみせてくれよ」

アニ「…しょうがないね。…ハッ!」バキィィ

エレン「……すげぇ。やっぱアニはすげぇな!」

アニ「フンッ…こんぐらい普通だよ」










エレン「…ふぅ。今日はありがとうな」

アニ「…フンッ。くだらない事に時間を使いすぎたよ」

エレン「そんなこと言うなよな。アニだって凄く生き生きしてただろ」

アニ「…そんなことはない」


エレン「いや、いつもつまんなそうにしてんのに、今は生き生きしてて、…なんていうか、すごく綺麗だった」

アニ「……。下らない。私は帰るよ」

エレン「アニ待てよ。…そうだ、また今度も頼むぜ!」

アニ「…あぁ」







なぜだろう、いつもこいつの勝手なペースに狂わされる

そのせいで、いつの間にか訓練後にまた一緒に格闘術をやる、という変な関係も築かれてしまった…



でも気付いたら、あっという間に訓練兵団の解散式の前日になっていた

そして、いつの間にか、こいつといるのが、楽しく感じてた…

そんな時間がずっと続けば良かったのに…




エレン「明日から訓練兵団じゃないってのに、格闘術の練習してるなんてよく考えたら、俺らすごくバカだな」

アニ「あんたが誘ったんだろ…」

エレン「そうだな…。まぁ…今日はこの練習も最後だと思って、感謝の気持ちも伝えたくてな」

アニ「へぇ…あんたでもそんな気が回るんだ…」

エレン「おい、バカにすんなって!」


アニ「…で、何なのさ?」

エレン「あぁ…、俺昨日の寝る前にさ、アニとの訓練をずーっと思い返してみたんだ」

エレン「…でな、ここまで長い間頑張ってこれたのは、相手がアニだったからだ…って思ったんだ」

アニ「…」

エレン「最初の内はアニの事何も知らなくて、常に怒ってんのかなって思ってた…」

エレン「でも、…実はすごく優しいんだよな」


エレン「いやいややってるって言いつつ、最後まで俺の練習付き合ってくれたしさ」

アニ「…それはあんたがしつこいからさ」

エレン「本当にありがとうな。結局勝てなかったけど、すげぇ強くなれたと思うし」

アニ「…フン。あんたはまだまだだよ」

エレン「あぁ…。」


エレン「アニ、お前は憲兵団に行くんだよな?」

アニ「…そうだけど」

エレン「俺は調査兵団に行く。」

アニ「知ってるよ」

エレン「俺は兵団が違うのはどうでもいい」

エレン「…でもアニと関われなくなるのは嫌なんだ」

エレン「アニと訓練できなくなる…って言うだけじゃない」

エレン「俺にとってアニといる時間はすごく大切だった」

エレン「アニの事が本当に好きになってた…」

エレン「だからアニ、俺と付き合ってくれな…

アニ「やめて!!」


エレン「えっ…」

アニ「私と付き合った人間は絶対に後悔する」

アニ「…特にあんたみたいなやつはね」

アニ「…私だって、あんたに特別な感情がなかったわけじゃない…」

アニ「でも、…あんたは私といると絶対に不幸になる。」

エレン「…させない。」

アニ「は…?」

エレン「…俺は絶対に後悔しないし、アニにも後悔させないし、不幸にもさせない」

エレン「だから、…俺を信じてくれないか?」

アニ「………あんたは本当にバカだよ…」

アニ「…何も知らないくせに、分かろうともしない…それでいて勝手に突っ走る…」

エレン「…自分がバカだってのは知ってる。でも…俺は絶対にアニといない方が後悔する」

エレン「だから、アニ…俺と付き合ってくれ!!…どんなことでも俺は受け止めてみせる!!」

アニ「…………分かったよ。……あんたはしつこいんだったね…。」

エレン「アニ!」ギュ

アニ「…あんたは本当に大馬鹿だ…」グス

エレン「あぁ……。…アニ…好きだ」

アニ「……私も…」ギュ


こんな私でも少しは幸せになってもいいのかな…

そんな風に思ってしまってた…










アルミン『トーマス・ワグナー ナック・ティアス ミリウス・ゼルムスキー ミーナ・カロライナ エレン・イェーガー』

アルミン『以上5名は自分の使命を全うし…壮絶な戦死を遂げました…』









………私はそう聞いたとき、もちろんとても大きな喪失感に襲われた…

つい2日前にあんなことを言ったそばから…

でも、それと同時に、…本当にこれで良かった。

…そう思っていた
喪失感と同じか、もしくはそれ以上に…

私の全てを知ったらこいつは絶対に私の事を憎む…

それがわかっていたから、心の底から、良かったんだと安心した…

本気で好きになったこいつに嫌われずに済んだ、と思ったから…

私は最低だ…
こいつに言う勇気がなかったし、自分の使命に逆らう勇気もなかった…









…でも、その安心はすぐに崩された






アルミン「共食い…?」

ミカサ「どうにかして、あの巨人の謎を解明できれば…、この絶望的な現状を、打開するきっかけに、なるかもしれないと思ったに…」

ライナー「同感だ!あのまま食い尽くされちゃ何も分からず終いだ!あの巨人にこびりついてる奴らを俺たちで排除して…とりあえずは延命させよう!」


ジャン『正気かライナー!やっと…この窮地から脱出できるんだぞ!?』

アニ「例えばあの巨人が味方になる可能性があるとしたら どう…?どんな大砲よりも強力な武器になると思わない?」

ジャン「!?…味方だと…!?本気で言ってるのか!?」


アルミン「…あいつは…トーマスを食った奇行種…!?」


『アアアアアアアアアアァァァァ』









ジャン「……オイ。何を助けるって?」

ジャン「さすがに力尽きたみてぇだな。もういいだろ……?ずらかるぞ!あんな化け物が味方なわけねぇ。巨人は巨人なんだ」

ジャン「…?…オイ」







目の前にいる巨人が、こいつがエレンなんて…

…それはエレンが死んだことよりも……もっと…もっと悲しかった

……やっぱり私は幸せにはなれないんだ…


~兵団決定から約1ヶ月~

「今回の壁外調査でエレンを奪う」

アニ「…」

「アニは予定通りに頼む」

アニ「……分かった…」









この世界は残酷なんだね…

そのことをこれほどまでに感じたことはなかったよ…

……私は再び非情になるしかないんだ……

でも…せめて私だって事は気付かないで……








ズバッ!

リヴァイ「オイ!ずらかるぞ!!」

ミカサ「エレン!!」

リヴァイ「多分無事だ生きてる。汚ねぇが…。もうヤツには関わるな…撤退する」

リヴァイ「作戦の本質を見失うな。自分の欲求を満たすことの方が大事なのか?お前の大切な友人だろ?」

ミカサ「……ちがう……私は……」

リヴァイ「!?」
(……涙…か?)







私はこの作戦に失敗した……

多分私は調査兵団に目星を付けられるだろう…

きっと、もう……エレンを奪うとしたら……正体がばれずにはすまない……

……これで…エレンにまで後悔させることになる………

せめて…自分だけが不幸になるなら…
エレンまで巻き込みたくなかった……

ガチャ

エルヴィン「遅れて申し訳ない」

エレン「いえ…」ガタッ

エレン「アルミン?ミカサも…」

エルヴィン「女型の巨人と思わしき人物を見つけた」








エルヴィン「女型と接触したアルミンの推察によるところでは、いわく女型は君達104期訓練兵団である可能性があり、生け捕りにした2体の巨人を殺した犯人とも思われる」

エルヴィン「彼女の名は」

『アニ・レオンハート』









エレン「アニが…?女型の巨人?」

エレン「何で…そう思うんだよ…アルミン」







リヴァイ「オイ ガキ。さっきから女型と思われる、だとか言ってるが、他に根拠は無いのか?」

アルミン「はい…」

ミカサ「アニは…女型と顔が似ていると私は思いました」


エレン「は!?何言ってんだ?そんな根拠で…」

リヴァイ「つまり…根拠はねぇがやるんだな…」

エレン「…根拠がない?何だそれ?どうすんだよ…アニじゃなかったら」

ミカサ「アニじゃなかったら…アニの疑いが晴れるだけ」

アルミン「そうなったらアニには悪いと思うよ…。でも…だからって、何もしなければ、エレンが中央のヤツの生け贄になるだけだ」


エレン「…。アニを…疑うなんてどうかしてる…」

ミカサ「エレン。アニと聞いた今思い当たることは無いの?女型の巨人と格闘戦を交えたのなら、アニ独特の技術を目にしたりしなかったの?」








『わかっているんでしょ?』






ミカサ『女型の巨人がアニだってこと…』

ミカサ『じゃあ…戦わなくちゃダメでしょ?』






エレン『な…何でお前らは…戦えるんだよ』

ミカサ「仕方ないでしょ?」

ミカサ『世界は残酷なんだから』







エレン『…だよな』ガリッ










『アァァアアアアァ』

「アニ…」

「お前は…いつも 周りがバカに見えて仕方がないって顔してたな……」

「いつも…つまんなそうにしてた」


「そんなお前が生き生きしてる時がある」

「その格闘術を披露する時だ…」

「お前は…」

「嘘をつくのがヘタな奴だと…」

「俺はそう 思っていた…」


「なぁ…アニ」

「お前……何のために…戦ってんだ」

「どんな大義があって」

「人を殺せた」







ミカサ「……アニ」 トンッ

ミカサ「落ちて」







……やっぱり私は…あんたを不幸にさせた…

……エレン…ごめんなさい……

…あんたにだけは…知って欲しくなかった…嫌われたくなかった………









エレン「…アルミン」

エレン「アニは…どう…なった…?」

アルミン「エレン…。多分今は…誰にもわからない…」





~終わり~

(´;ω;`)乙


一緒に故郷に帰る場合のも読んでみたいな

コメントありがとうございます


>>58

最後の方だけ変えてって感じでいいなら、今度書いてみたいって思ってます

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