ゴルゴ「キュウべえだと・・・?」2(23)

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ゴルゴ「キュウべえだと…?」 - SSまとめ速報
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見滝原中学校の昼休み時。
生徒達は友人と遊び、語らうためにそれぞれ思い思いの場所におり、廊下や教室内に固まった生徒達のがやがやという声が騒がしく学校内の空気を圧している。

まどかががらがらと教室の扉を開け、浮かなげに入ってくる。
まどか「マミさん今日も学校来てないみたい…」
さやか「そう・・・」

二人は話し始めるが、あちこちで楽しげに大声で、時に嬌声も交えてしゃべる生徒達とは別に、教室の隅でこそこそと、声を潜めて浮かない調子だ。
まどか「大丈夫かな…」
さやか「まあメール送ったらたまに返事帰ってくるから魔女にやられたんじゃないと思うけど…」
まどか「やっぱりあれかな、東郷さんのこと-」
まどかが顔を暗くし、少し下に傾けた顔の口に軽く手を近づけ、ますますこっそり声を抑えた調子でしゃべる。
さやか「-まあ、そうだろうね。仁美もあれから学校休みがちだし」
ちらりと主のない机を見やる。

さやかが手を頭の後ろに組み、天井を振り仰いで息を吐き
さやか「まさか東郷さんの相手がよりによって和子先生だとはねー」
まどか「うん・・・」
浮かなく返事をするまどか

二人の会話を少し離れた自席に黙って一人で座りながら聞くほむら。
ほむら「・・・」

ブワッ
一瞬宙空に黒い空間が開き一人の人影を吐き出すと、空間はみるみる閉じ、マミは元いたオフィスビルの曲がった廊下に立っていた。夜中のビルには人気がなく、あちこちに設置された非常灯だけが淡い光で廊下を照らしている。

ハァッハァッ
マミは前かがみになり、軽く曲げた膝頭に両手をついて上体を支えながら、荒い息をついている。顔に前髪が多くかかった表情には暗鬱の気が漂い、髪飾りに装飾を施して付いたソウルジェムが薄黒く濁っている。

ハァッ
しばらく荒い息をついていたマミだが
マミ「!」
気配を感じて顔を振り仰ぐとそばにほむらが立っていた。

ほむらは無表情な目でマミを見つめていたが、
ほむら「ソウルジェムがだいぶ濁っているようね、これを使いなさい」
すっと手に持った小さな魔女の卵、グリーフシードを差し出した。

顔に汗を湛え、厳しい眼で見つめるマミ。その眼には薄い隈ができ、深い疲労を感じさせる。

マミ「-りがとう。いらないわ-」
かすれた声で返事すると、身を屈め、廊下の地面に落ちた、今しがた倒したばかりの魔女のグリーフシードを拾い、すぐに身をひるがえすマミ。

黙って見ていたほむらだが、
ほむら「それだけでは-」
マミ「うるさいわね」
似つかわしくない言葉を言い置いてくるりと完全にほむらに背を向けると、一散に走り出した。

ほむら「・・・」

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ダッと廊下から階段を駆け下り、警備詰所のあるビル正面を避けて横壁から、魔翌力を使って脱出するマミ。
ハァハァと息をついて、髪留めに付けたソウルジェムを外すと、それに今しがた拾ったグリーフシードをあてがう。
フシュゥゥゥゥ
ソウルジェムの黒い濁りが徐々にグリーフシードに吸い取られてゆき、原色の黄色を取り戻してゆく

シュッ
グリーフシードが吸い取った魔翌力で逆に漆黒に染まった。
吸収能力を無くしたグリーフシードをもう一方の手につまんだソウルジェムから放し、ポケットに入れる。
マミ「・・・」
しばらく黙ってソウルジェムを見つめるマミ
するとソウルジェムの表面下に大気が動くかのようにまたすぐに灰色の渦が出始めた

マミ「-・・・ッ!」
握りしめたソウルジェムを胸に押し付け、顎を引いて歯を食いしばるマミ。その目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。

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キュウべえ「マミのソウルジェムははだいぶ消耗しているようだね?」
じっと見送ったほむらの横にぴょこんとキュウべえが現れた


キュウべえ「-無理もない。あんなことがあってはね-」
冷たい眼で見据えるほむら
ほむら「-
 そうなるように仕向けたのはあなたじゃないの?」

キュウべえ「仕向けるだなんてとんでもない!」
愛らしい声を甲高く上げ、クリクリとした瞳で見つめながら、可愛らしく首をかしげる。

キュウべえ「-僕はただ、マミにあの東郷という男を手に入れるチャンスがあるかもしれないと示唆しただけさ。
 -もっとも、あの男は僕の想像以上にドライだったようだがね」

冷えた眼をしながらじっとキュウべえを斜めに見下ろすほむら
ほむら「あなたの思い通りにはさせないわ。-インキュベーター」
キュウべえはくりくりとほむらを見つめた

見滝原中央部の大通り。
中学校の下校時刻に広い歩道を二人並んで歩く学校帰りの美樹さやかと上条恭介の姿があった。
ヴァイオリニストを目指しながらも、交通事故による重傷で寝たきりの入院生活を余儀なくされていた恭介は、さやかが魔法少女になる際の契約で、その傷-特にヴァイオリンを再開することを絶望視されていた手-を癒され、今は松葉杖によるものながらも、付き合い始めたさやかの助けを得て登校を再開していたのだった。
片足にギプスをはめ、松葉杖で一生懸命歩く恭介を気遣ってさやかは生来の早足を抑え、恭介はそんなさやかに気を使わせぬようにと拙い動きながらも精一杯移動速度を上げようとする。
しかし恭介はそんな一杯の動きながらも足元に注意を振り向けず、さやかの方に顔を向け熱っぽくしゃべっている。
恭介「さやかがこの前持ってきてくれたCD凄かったよ!シモン・ゴールドベルクの私家盤ライブ録音CD。ゴールドベルクのライブ演奏がこんなに凄かったなんて、特にバルトークの無伴奏-」
さやか「-あ、あはは、あたしよくわからなくて、中古屋でとりあえず安かったから買ってみただけなんだけど…」
さやかは恭介の足元を気遣いながらも、話についていけなくて少し困ったように、しかし、大半は恭介の顔の接近による照れからくるように、顔の前に両掌を防ぐように広げ、笑いながら答えた。
と、不意と二人の目が合った。恭介の目がじっとさやかの目を捉え、それに魅入られたさやかは背筋を伸ばしてぼーっとして動きを止める。
恭介「-さやか。僕はほんとに君に感謝してるんだ-」
さやか「-恭介-」

しばらく往来の真ん中で見つめ合って立ち尽くしていた二人だが、ふと視線を感じてさやかが目を横に向けると-
-今日も登校していないはずの巴マミが私服姿でじっと二人の姿を見つめていた。
その双眸には暗い光が漂っている。

さやか「マミさ-」
くると身をひるがえし走り去るマミ。
戸惑う恭介をよそに、そんなマミの姿をさやかは暗い顔で見つめるばかりだった。

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公園のまばらな木立の間に駆けてきて入ったマミ。
膝に手をついてハァハァ息を切らせながらも、懸命に元の意思を取り戻そうとしているようだった。
マミの目には先ほど見た、後輩のさやかと恭介が見つめ合う姿の残像が、耳にはその時二人がかわしたささやき声のこだまが残っていた。

見滝原市内の路線を通る電車の車両中

男A「それでね?俺その時持ち金も貯金も有り金全部無くなっちゃったわけ。あー、こりゃ強盗でもしなきゃ死ぬって思ったね。そしたらあいつに出会ってさ、あいつ俺の事情聞いたら家に一緒に住み込んでもいいって、飯も全部食わせてやるっていうのよ。ヒモ生活で俺助かったわけ」
男B「さすがショウさんすごい強運っすね」
男A「でさ、一緒に海行った時、あいつ沖の方で溺れかけてね?俺泳ぎ得意じゃん。ダッシュで泳いで行ってね、助けてやったわけ。そしたらあいつ今まで以上にベタ惚れして結婚してくれって。でもそのあと俺が他の女作ったら自殺未遂起こしてやんの。アハハ」
男B「うわ、女ってマジ最低。捨てるときがさぁ、ほんとウザイっすよね」

と、その時向かいの席に座った豊かな金髪の少女がふと立ち上がった。顔には暗い翳が漂っている。
二人の前についと立つと、
マミ「その人のこと聞かせてくれません?」
男A「はい?」
男B「お嬢ちゃん中学生?夜遊びは良くないぞ」
マミ「その人あなたを助けて、あなたもその人助けたんでしょ。命の助け合いをしてどうして平然と切り捨てられるの?」
男A「何コイツ知り合い?」
男B「いや・・・」
マミ「ねえ、あたしが今まで人のために戦ってきたのは何なの?
 教えてくださいな今すぐあなたが教えてくださいよ・・・」

マミ「でないとあたし・・・」
少女の体全体から黒い瘴気が漂い出始めた。

まどか「マミさん、こんなとこにいた」
宵口に街中でマミを見つけたまどかが追うと、魔翌力でこじ開けたものなのか、休業日か、閉店後かの人気のない喫茶店の扉が開け放されており、マミはソファ席の一つに手に両膝を重ねて置いた状態で前かがみになって座っていた。喫茶店の照明はついておらず、マミがつけたものなのか、大画面のテレビに映し出される映像だけが店内を照らしていた。

まどか「マミさん・・・」
マミは横に座ったまどかの方にくるりと首を回す。目に隈が出来ており、髪は少し乱れ、睡眠不足と疲労からなのか、肌にやつれを感じさせる。
しばらくぼんやりした目でまどかを見ていたマミだが、ふっと力なく笑うと、再び、前に顔を俯け、
マミ「-以前、私が魔法少女になった時の話をしたわよね。両親を交通事故で失って、願い事で私だけが生き残ったって-」
まどか「-!」
マミ「-私はあの時からずっと一人で戦ってきたわ。ただ街のために、みんなのために、そして自分が魔法少女として一人生き残ったことを無駄にしないためにって。意味なんて-これも意味とはいえるけど-目的なんて無いと思っていたわ。少なくとも私個人のための意味なんてね。これが成り行きなんだって-」
まどか「・・・」
マミ「-でも、東郷さんに会って変わった。初めてこの人と一緒に戦いたい、支えてもらいたい-戦うことに意味を見出すことができたの」
まどか「マミさん…」

暗い顔で見つめるまどかの方を向き、今度は自嘲気味にスンという鼻音交じりに笑うと、
マミ「-でもね、東郷さんは別の女の人と付き合っていた。それもうちの先生とね」
まどか「-でも、マミさん、それは-!」
両拳を握り、勢いよく立ち上がるまどかに腕を伸ばし、手のひらに乗せた物体を示すマミ。
まどか「あっ」
かつてマミの魔女退治に付き合っていたころ、まばゆいほど黄色く輝いていたソウルジェムが黒く、どろっと穢れ切っていた。
手を差し出したまま目を閉じ
マミ「もうこんなになっちゃたら魔女退治もできない。どっちみち私に意味はないんだけどね」

マミ「また一人ぼっちね」

まどか「うわっ!」
ブワッとソウルジェムから空間を通した黄色い圧力が発し、まどかはその勢いでソファから軽く浮き飛ばされた。

ピシッ
ソウルジェムの表面がひび割れると、中から、輪っか内部の小さな丸い物体が浮いている空洞を無視して貫いたかのように装飾針が上下に通された形の灰黒い物体が現れた。
マミが魔女退治の後にしばしば拾い集めていたグリーフシードだ。

やがて、周りに黄色い空間が広がり現れ、喫茶店内部の風景が覆い尽くされていく。
その間にまどかが垣間見ると、マミはフッとスイッチが切れたロボットのように目から光が消え、ことりと横に倒れていた。

『オホホホホホ』という声が四周から聞こえ、周囲は黄色地にところどころ白黒のチェック柄があつらえられた極彩色の景色に変貌していた。

まどか「-ッ!」
ティーカップやクッキーに奇妙に手足が添えられた存在達がちらほら現れ始め、まどかに迫る。

ダーンガウーン
銃声が響き、使い魔の何体かが倒され、迫っていた使い魔たちの動きがピタリと止まる。

ほむら「何とか間に合ったようね」
まどか「-ほむらちゃん!マミさんが…!」
まどかは潤んだ目で横たえられたマミの姿を見る。
ほむら「事情は分かるわ。しかしとにかくここから逃げ出しましょう」
まどか「でも・・・」
再びちらりと、糸が切れた操り人形のようにだらんとしたマミの方を見やる。

ほむら「-・・・残念だけどもうどうしようもないことよ。手遅れで手の施しようがないわ」
まどかの手を引き、うながすほむら。使い魔たちの動きが再開し、迫ってくる。周囲の風景の細部が完成されていくにつれ、動きも活発化していっているようだ。

ガガウーンダーン
銃を何発か使い魔に向けて発砲して走り出すほむら。
引かれたまどかは名残惜しそうにちらちらとマミの体の方を見やるが、勢いに負けてともに走り出し、やがてマミの姿は完全に見えなくなった。

さやか「あれっ、転校生に-まどか!?」
目の前に剣を引き抜いた構えの、騎士服の魔法少女姿のさやかが現れた。
まどか「さやかちゃん・・・」
さやか「急に強力な魔力にソウルジェムが反応しだしたからさ、来てみたんだけど-」
きょろきょろと周囲を見回すさやか
さやか「この風景、どっかで見覚えがあるような…」
ほむら「魔女化したマミの結界よ」
さやか「-はあ!?あんた何言ってんの!?」
まどか「ほんとだよさやかちゃん・・・」
暗い顔で力なく言葉を発したまどかを見てひるんだように口をつぐむさやか。

今しがた二人が逃げてきた箇所から『オホホホホホ』という声が響き追ってくる。
わらわらと使い魔たちの群れの姿が見え始めた。

ほむら「話してる暇はないわ。とりあえずここから脱出しましょう」
走り出す三人

見滝原ショッピングモールの最上階
フードコートの一角の、緑地に白の英字の洒落たデザインの天幕やパラソルが巡らされているカフェの、骨組みに布地でできたチェアの一つに脚を組んで寄りかかり、夕日の方を眺めながらゆったりと葉巻を吸うゴルゴの姿があった。

ほむら「呼び出して悪かったわね」
携帯電話でゴルゴを呼び出した暁美ほむらがそばに姿を現す。
ゴルゴ「何の用だ…?」
悠然と葉巻を吸い続けるゴルゴ
ほむら「マミが魔女化したわ」
ゴルゴ「!」
指で葉巻をつまんだ腕が空中でピクリと止まる。

ほむらの方を向き、
ゴルゴ「ソウルジェムが…濁り切ったのか…?」
ほむら「ええ、そうよ。原因は-
-あなたへの失恋のようよ」
ゴルゴ「・・・」
再び元の姿勢に戻り、葉巻を吸い直すゴルゴ

黙ってその様を眺めていたほむらだが、やがて口を開き、
ほむら「動揺しないようね?」
ゴルゴはゆっくりと葉巻をふかしながら
ゴルゴ「俺には…関わりのない話だ…」
ほむら「-そうね・・・私もとうにそういう段階は過ぎたわ」

共に暮れ落ちようとする夕日を眺める二人の顔を赤い残照が照らした

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???「何!?マミの野郎がやられただと!?」
キュウべえ「やられたというのは正確な表現ではないが、とにかくマミ自身はもうこの世にいないほうがいいと思ったほうがいい」
???「-ちっ・・・、何だよ、わかりにくい言い方しやがって」

キュウべえ「今あの街には極め付きのイレギュラーが二人いてね、どう動くは僕にも予想がつかない。-そして、そのうちの一人が今回のマミの原因を作ったと言ってもいい」
???「なるほど・・・、そいつがマミにちょっかいかけたってわけか…。面白え」
少女はむしゃりと手にした食いかけの鯛焼きを食いちぎった。

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