【9マイル】友「君は偶然が存在することを主張するのだね?」男「ああ、もちろん」 (27)

事の発端は30分ほど前になろう。







友「一体君はどうしてそう分からず屋なんだ!」

男「分からず屋は君の方じゃないかい?」

友「ああ、なるほど。では君はヒトラーがああなったのは全くの偶然だと、そう言いたいんだね?」

男「僕の理論ではそうなるが、彼のそうした素質が起因しているのは自明だろうよ」

友「またそうやって君は自分の結論を先伸ばすじゃないか! はっきりしたまえ!!」

男「今日の君はやけに腹の虫が騒いでるな。ああそうさ、私はこの世の構成因子に偶然が含まれていると思っている」

友「そら見ろ! やっぱりだ! 君はカトリックだな!」

男「おいおいそれは横暴だろ? ではそれを証明してみせようか?」

友「ほう? それならその方法を言ってみてくれよ」

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男「僕の論理で行けば、ありとあらゆる全ての物事が理屈で繋がる」

男「というのは破綻するはずだ」

友「ああ、勿論」

男「それなら僕が何かしらの物に理屈をくっつけて、ありもしない空想をでっち上げようじゃないか」

友「ふむ、でも君は先に理屈で物事が繋がる、とそう言ったね? もう破綻してるじゃないか」

男「理屈に敵っていて、しかもありもしない現実離れした結論を証明してみせるよ」

友「じゃあゲームスタートだな」

友「さて、具体的なゲーム内容を決めようか」

男「そうだな。まず僕の勝利条件から。僕の勝利条件は理屈に敵っていて、かつ、現実離れした結論を導き出すことだ」

男「ここで言う理屈に敵うとは君に反論されないことを指す。こんなもんでどうだい?」

友「いいだろう。ではこちらの勝利条件は君の理屈にケチを付けて空想のものだと示すことだな?」

男「それでいいだろう」

友「楽しそうじゃないか、やってみよう」

【勝利条件】

男・・・理に敵っていて、かつ、現実離れした結論を導き出すこと。

友・・・男の導き出す過程・及び結論に対して、論理的矛盾を示す。
ただし、男は示された矛盾について論理の修正が認められる。

(練習)

男「では肩慣らしに適当なのをやってみよう」

男「君が何か文章を言ってくれ。そうだな、出来れば長い物を希望したい」

友「なるほど。その文章からありもしない空想を導き出すつもりだな?」

友「となるとあんまり抽象的なのは良くないな・・・」

男「具体的過ぎるのもぶっ飛んだ結論を導きにくい。適当なのを頼む。」

友「では>>7という文章でやってみるか。」

彼は背後にひそかな足音を聞いた。それはあまり良い意味を示すものではない。
誰がこんな夜更けに、しかもこんな街灯のお粗末な港街の狭い小道で彼をつけて来るというのだ。

人生の航路を捻じ曲げ、その獲物と共に立ち去ろうとしている、その丁度今。

彼のこの仕事への恐れを和らげるために、数多い仲間の中に同じ考えを抱き、
彼を見守り、待っている者がいるというのか。

それとも背後の足音の主は、この街に無数にいる法監視役で、
強靭な罰をすぐにも彼の手首にガシャンと下すというのか。

友『 彼は背後にひそかな足音を聞いた。それはあまり良い意味を示すものではない。
誰がこんな夜更けに、しかもこんな街灯のお粗末な港街の狭い小道で彼をつけて来るというのだ。

人生の航路を捻じ曲げ、その獲物と共に立ち去ろうとしている、その丁度今。

彼のこの仕事への恐れを和らげるために、数多い仲間の中に同じ考えを抱き、
彼を見守り、待っている者がいるというのか。

それとも背後の足音の主は、この街に無数にいる法監視役で、
強靭な罰をすぐにも彼の手首にガシャンと下すというのか。 』


男「君は文豪かね」

友「僕のデータベースからちょろちょろっと引用したのさ」

男「良かろう」

男「まず、語っている人間は男だ」

友「おっと、人間だという証拠を提示してもらおうか」

男「はあ、『手首』と書いてある。これだけで十分だろう?」

友「いいだろう、続けてくれ」

男「次に彼は追われていることが見てとれる」

友「それは僕にも分かるよ、文脈から明らかだ」

男「しかもかなり危機的な状況なのだろう」

友「なぜだね?」

男「この仕事への恐れ、及び彼の手首にガシャンとのくだりからだ」

友「君はガシャンとするものをなんだと思っているのかな?」

男「さあ? なんだろうな、法監視役とあるから、手錠と考えるのが適当だろう」

友「宜しい、続けたまえ」

男「では文章を最初から見ていってみようか」

友「構わないとも」

男「彼は背後にひそかな足音を聞いた。」

友「普通の文章じゃないか」

男「とんでもない! 全く、この状況は異常じゃないか!」

友「ほほう? 教えてみてくれ」

男「彼はひそかな足音を聞き分けられる程に静かな場所にいる」

友「静かな場所なんてどこにでもあるじゃないか」

男「そうかね? ではここは置いておこう」

男「次に彼はひそかな足音を聞き分けられる程に緊張している」

友「まあ確かに、ひそかな足音とあるからな」

男「彼はなぜ緊張しているのか、それはまだ分からない」

友「次の文章に進もう」

友「それはあまり良い意味を示すものではない。」

男「良くないんだろうな、単純に。彼にとって。」

友「なぜ良くない意味を示すんだね?」

男「彼の緊張具合に何か関係しているのかもしない。」

友「次の文だ」

友「 誰がこんな夜更けに、しかもこんな街灯のお粗末な港街の狭い小道で彼をつけて来るというのだ。 」

男「彼は自問自答をしている。」

男「つまり、先の文章のあまり良い意味を示すものではない、という部分に対する答えだ。」

友「なるほど。ではこの文から読み取れることは?」

男「彼のいる地点は街灯があまり無く、それによって夜は人通りが少ない。」

男「もしくは、元々人通りが少なく、それに伴って街灯があまり取り付けられていない」

男「おそらく後者だろう。なぜなら、その後の文に狭い小道とあるからだ。」

友「狭い道だとなぜ街灯が少ないことになるのかね?」

男「狭い道は物資を運ぶのに適さないからだよ」

友「なるほど、つまり狭い道には物資を運ぶという利用価値は無く、その為に私的な利用しか為されない」

友「つまり街灯が少なくても問題ないということだね?」

男「全く」

友「ではなぜ彼はそんな不便な所にいるのだい?」

男「さあ?」

男「もう少し読み取れそうなんだが・・・」

男「・・・彼は追われている」

友「君、それはさっきも聞いたよ」

男「彼が、追われているんだ」

友「なぜ断定出来るのかね?」

男「狭い道には人通りが少ない、彼は彼の背後で足音を聞いたからだ」

友「ちょっと待ってくれ! それだけじゃ彼だと断定出来ないよ」

男「そうかい? 彼は人通りの少ない道にいる。そんな中背後から足音がすれば、自分を見ているとすぐに思うだろう」

男「もし自分の手前に人がいれば、後ろの足音は前の奴を見ているのかも知れないと思うはずだ」

男「しかしそんな奴はいない。だからこそ彼は『つけられている』と感じたんだ」

友「なあ・・・」

男「どうした?」

友「いや、なんでもない・・・」

友「 人生の航路を捻じ曲げ、その獲物と共に立ち去ろうとしている、その丁度今。 」

男「ここは解釈が難解な部分だ」

友「確かに、比喩表現と思われる表現がいくつか見られるな」

男「そこは置いておこう」

男「まず彼は人生をよくない方向へと捻じ曲げられている」

男「文末の今、という単語からこれは過去の話ではなく、今現在も捻じ曲げられていることがわかる」

友「ふむでは人生の航路とは何だね?」

男「航路とは船の進むべき道、この船を自身の乗っている人生と例えていると考えると、人生という方向、という意味になると考えられる。」

友「つまり彼は彼の人生の方向を今もなお曲げられ続けていると、そういうことかい?」

男「ああ、しかも捻じ曲げられるという表現から、それは彼の望む、彼にとって喜ばしいものではないと予想される」

友「いいだろう」

友「後半だ。 その獲物と共に立ち去ろうとしている、とはどういう意味だと思うね? 」

男「・・・さあ、次の文章に進もう」

友「ほう? やけにあっさりじゃないか」

男「そこはこの文章の要だからね。今取り扱うのは危険だ」

友「 彼のこの仕事への恐れを和らげるために、数多い仲間の中に同じ考えを抱き、
彼を見守り、待っている者がいるというのか。 」

男「この文も自問自答と考えるのが適当だろう」

友「どの文に対する答えかね?」

男「獲物からのくだりだ。 ただこの文からでも十分読み取れる」

男「彼はこの仕事を恐れている。捻じ曲げられた彼の人生とはこの仕事に関係していると考えるのが妥当だ」

友「数多い仲間とは?」

男「同士の者達だ。もしそうだとするならば、彼らも同様に追われ、緊張している。」

友「彼を見守り、待っている人がいるのか」

男「居ないだろうな。これは反語表現にあたるのだろう。もし居たならば『彼を見守り、待っている人がいるのだから。』と書くだろうよ」

男「ゆえに後ろの足音は同士でない。ここで足音が味方ではないことが判明し、男が良い状況ではないと言ったことは証明される」

友「随分遠回りをしているような気がするな」

男「遠回りをするほど状況はよく見えるものさ」

男「先ほどの結論より、彼は現在孤独だ」

男「つまり妻子はいない。恋人もいないと言ってしまっていいだろう」

友「 それとも背後の足音の主は、この街に無数にいる法監視役で、
強靭な罰をすぐにも彼の手首にガシャンと下すというのか。 」

男「そこでようやく足音の正体が判明する」

男「彼の言う足音とは法律、もしくはそれに従事する者全てだ」

友「ここは説明を要求するまでもないな。書いてある」

男「それとも、とあるから、彼の敵は法律だけでないとも考えられる」

友「では、最後の説明をしてもらおうか」

友「 その獲物と共に立ち去ろうとしている、その丁度今。 」

男「獲物、とはすなわち言い換えるなら標的だ」

男「彼の敵は法律であるから、彼は犯罪者だと考えられる。」

男「犯罪者の狙う標的とは・・・」

友「・・・」

男「共に立ち去ろうということは・・・」

友「・・・」

男「彼には同士もいる・・・」

友「・・・」

男「彼はテロリストで、彼の狙う人間に対して自爆テロをやろうと目論んでいる。」

男「しかし彼の不審な動向を気にした警察に彼は追われ、今現在危機的な状況にある。」

男「そう考えることができる。」

男「どうだい?」

友「・・・」

友「なかなかに現実離れしている結論だ」

友「しかし君は間違ってしまったね」

男「是非間違ったことを証明して貰いたいね」

友「君の主張は偶然の介入する余地は存在する、なんだろ?」

友「君の論理は論理的で、偶然の介入する余地なんて無かったじゃないか」

友「しかも君はぶっ飛んだ結論を導いてしまった」

友「これは完全に君の主張は折れてしまったね」












男「全く、いつも君には一本取られるよ」

男「ここは僕に奢らせてくれ」

友「まいど」


【完】

サクサクっと書いてしまいました。
矛盾があったらごめんちゃいね(´・ω・`)

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