穂乃果「100万回生きたエリーチカ」 (21)



穂乃果「――むかしむかしのさむいところに、一匹のエリーチカがいました。」


穂乃果「白い白い雪のふる、さむいさむいところでした。」


穂乃果「エリーチカは美しい真っ白なからだをしていました。」


穂乃果「だけど残念ながら、かしこくはありませんでした。」


穂乃果「かしこくないエリーチカは、雪の中でのじょうずなえさのとりかたがわかりませんでした。」


穂乃果「やがて、こごえてしんでしまいました。だけどいちども、泣きませんでした。」


穂乃果「エリーチカはしぬときに、もっとあたたかいところがよかったわ、とおもいました。」


穂乃果「さいごまでずっと、ひとりぼっちでした。他人のあたたかさを、しりませんでした。」


穂乃果「たおれたからだに雪がふりつもり、ますます白くなりました。」



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海未「――あるときエリーチカは、あたたかな島でうまれかわりました。」


海未「きらきらとした太陽がふりそそぐ、とてもあたたかなところでした。」


海未「まわりは海でかこまれて、波がきらきらと光っていました。」


海未「たくさんのきらきらにかこまれて、エリーチカの毛は金色に輝きました。」


海未「きらきら光る波にさそわれて、エリーチカは海にとびこみました。」


海未「しかしエリーチカはじょうずなおよぎかたがわかりませんでした。」


海未「そして海でおぼれてしんでしまいました。」


海未「エリーチカはしぬときに、もっとかしこくなりたいわ、とねがいました。」


海未「海をただようからだには、太陽の光がふりそそぎ、毛はますます金色に輝きました。」



ことり「――あるときエリーチカは、かしこい数学者でした。」


ことり「来る日も来る日も、計算ばかりしていました。」


ことり「地面にまぁるい図形をえがき、ほかのことには一切興味がありませんでした。」


ことり「あるひ、ひとりの兵士がエリーチカの家にやってきました。」


ことり「しかし他人に興味がなかったエリーチカは、兵士に目もくれませんでした。」


ことり「すると兵士が図形を踏み荒らしたので、エリーチカはつよく怒鳴りました。」


ことり「兵士はそんなエリーチカを激しく憎み、体を剣で貫きました。」


ことり「エリーチカはしぬときに、もっと強くなりたいわ、とねがいました。」


ことり「憎しみによって貫かれた体のあなの大きさを、さいごまで計算しながらはてました。」



真姫「――あるときエリーチカは、戦いの軍師でした。」


真姫「かしこいつよいエリーチカは、天才軍師とよばれ、まけしらずの連戦連勝でした。」


真姫「つよく、つよく、戦いました。勝って、勝って、まけしらずでした。」


真姫「エリーチカの心には、まだ憎しみのあながのこっていました。」


真姫「歯向かう者は容赦なくうちのめし、歯向かわない部下も容赦なくうちのめしました。」


真姫「部下たちはみんな、エリーチカがきらいでした。」


真姫「けれどもエリーチカはいっこうにかまいませんでした。」


真姫「そしてやがて部下たちは、エリーチカを焼き討ちにしました。」


真姫「エリーチカはしぬときに、もっと偉くなりたいわ、とねがいました。」


真姫「燃え上がったからだのその熱さを、つよく心に焼きつけました。」



花陽「――あるときエリーチカは、皇帝の娘でした。」


花陽「燃えさかる心のエリーチカは、貴族たちを掌握しました。」


花陽「権力のすべてを集め、敵対する貴族はいなくなり、贅沢の限りをつくしました。」


花陽「しかしほどなくして革命がおき、民衆たちがうごきだしました。」


花陽「民衆から憎悪のすべてを集めたエリーチカは、処刑されてしまいした。」


花陽「エリーチカはしぬときに、もっとたくさんの人に愛されたいわ、とねがいました。」


花陽「ギロチンの刃はとてもつめたいとかんじました。」



凛「――あるときエリーチカは、美しいバレリーナでした。」


凛「バレリーナエリーチカは、たくさんの人々から愛されました。」


凛「雪のように白い肌で、太陽のようにきらきらした髪をなびかせて踊りました。」


凛「計算されつくしたステップを踏み、コンクールではまけをしらず、人気のすべてを集めました。」


凛「たくさんの人々から愛され、たくさんの人々から求愛されました。」


凛「たくさんの人々が、エリーチカに手をさしのべました。」


凛「だけどエリーチカは、だれの手もとりませんでした。他人の手をさわりたくなかったのです。」


凛「とうぜん、ほかのバレリーナたちはおもしろくありません。」


凛「嫉妬にかられたバレリーナたちは、エリーチカのくつにがびょうをいれました。」


凛「なにもしらずにくつをはいて、エリーチカはがびょうをふんでしにました。」


凛「エリーチカはしぬときに、もうふつうの生活がしたいわ、とねがいました。」


凛「かしこさも、つよさも、人気もなにも、いらないわ。」


凛「あしのうらが、ちくちくしました。」


凛「白い肌と金色の髪だけが、のこりました。」



にこ「――あるときエリーチカは、ふつうの女の子でした。」


にこ「エリーチカはうまれてはじめて退屈しました。」


にこ「また戦うことにきめたエリーチカは、生徒会長になりました。」


にこ「また心が燃えさかり、だれもよりつかなくなりました。」


にこ「そしてスクールアイドルの踊りを見ました。」


にこ「バレリーナだったエリーチカには、素人にしか見えませんでした。」



希「――やがてエリーチカはひとりの女の子にであいました。」


希「その女の子は踊りをみせてほしい、とエリーチカにたのみました。」


希「踊ろうとしたら、エリーチカのあしのうらがちくちくしました。」


希「いたみにたえきれなくなったエリーチカは、たまらずそこから逃げ出しました。」


希「しかしちくちくは、どんどん、どんどん大きくなり、エリーチカの心にまたあながあきました。」



絵里「――エリーチカはいたくて泣きました。うまれてはじめて、泣きました。」


絵里「エリーチカはこごえてしにそうでした。いまだ他人のあたたかさをしりませんでした。」


絵里「ひとりでこごえて、ふるえていると、そこに女の子がやってきました。」


絵里「そして女の子はエリーチカに手をさしのべて、太陽のようにほほえみました。」


絵里「まわりを見ると、きらきらとした波が光っていました。」


絵里「……エリーチカは手をとりました。」


絵里「その手はもう、ふるえていませんでした。」


絵里「エリーチカははじめてひとの手のあたたかさをしりました。」


絵里「気づくともう、心のあなはふさがっていました。」


絵里「それに気づいたエリーチカは、また、声を上げて泣きました。」


ぱたん




穂乃果「おわりだよっ!」


あるときはツンチカ、あるときはデレチカ。
あるときは敵チカ、あるときは幼馴染チカ。
漫画チカに、SIDチカ。一期チカに、二期チカ。
あるときはかしこいエリチカ、あるときはかしこくないエリチカ。
みんなから愛される、たくさんのエリーチカ。
かしこいかわいいエリーチカ。
9人で9レスの小作品でした。
ありがとうございました。

依頼だしてきます
ではまた

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月28日 (土) 18:53:19   ID: xm82jA7X

短いけど良かった♪

2 :  SS好きの774さん   2014年06月28日 (土) 23:45:39   ID: FZ5Tcud3

よかった

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