鳰「いやぁまさか黒組でいじめにあうとは夢にも思わなかったッス」 (1000)

黒組教室

溝呂木「…であるからしてだな~」カリカリ

鳰「…」

クスクスクス

鳰「…」

クスクスクス

鳰「…」

クスクス…

ポイッ

鳰「いてっ」

プッ…

ククク…

クスクスクス…

鳰「…」ポリポリ

鳰(…はぁ)

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鳰(…背中に当たった感触からして、今のは消しゴムの切れ端ッスかねぇ)

鳰(やったのは…誰ッスかね。後ろの席の誰かだとは思うんだけど、ちょっと判断つかねッス)

クスクスクス

鳰(…ま、こんな程度の嫌がらせなんか別にど~~~~~~~~~っっっっでもいーッスけどね)

鳰(っていうかむしろ逆に暗殺者が11人も揃ってこんなもん?って感じもするッス)

鳰(まるで本当にただの女子高生みたいな幼稚な嫌がらせばっかしてきて…)

鳰(今回の黒組がこんな低レベルな連中揃いだったとは知らなかったッス)

鳰(こんな弱虫で仕事もろくにできなさそうな暗殺者どもばっかじゃ今回は晴ちゃんが無事生き延びて大勝利ッスかね)

鳰「…」

クスクスクス…

ポイッ

鳰「いてっ」コツン

鳰「…」

鳰(…今度は頭に当ててきやがったッス)

ポイッ ポイッ ポイッ

鳰「…」コツン コツン コツン

鳰(続けて3つヒットッス。精度上がってやがるとこが流石腐っても職業暗殺者って感じで腹立たしいッス)

鳰(いや、別にウチはこの程度の嫌がらせなんにも気にしてないッスよ?)

鳰(気にしてないッスけど、客観的に見て。裁定者として客観的に見ての率直な感想としての意見として)

鳰(…別にこんな雑魚どもの嫌がらせなんかウチにはなんも堪えてないッスけど)グスッ

鳰(…や、や、や。今のは違うッス。最近眼精疲労から目が痛くなることあるだけッス)ゴシゴシ

溝呂木「でだなー。この食物連鎖っていうのは通常ピラミッドの形をしていて…」カリカリ

鳰(はー。痛かったーッス。この謎の眼精疲労、そういえばちょうどこのいじめが始まった1ヶ月前からだったかなー。なんの因果関係もないッスけど)

溝呂木「頂点捕食者はたいてい猛禽類とか大型の肉食哺乳類とかで、その下には草食の動物が入るんだぞー」カリカリ

鳰(溝呂木先生は相変わらず持ち前の鈍さ発揮して全然気付いてないッスけど…)

鳰(まあ逆に好都合ッス。下手に首突っ込まれて色々調べられたらたまったもんじゃないもん)

溝呂木「それじゃあ次、走り。教科書68ページの問3読んでくれるかー」クルッ

鳰「あ、はいッス」ペラペラ

鳰(おっとっと、危ない危ない。考え事してて聞き逃すところだったッス。まあ、アウトローな鳰ちゃんは教科書も開いて無かったんッスけど)

鳰(たまには授業に集中するのもいいかもッスね。余計なこと考えないで済むし)ペラペラ

鳰(お、あったあった。68ページのー…問3……)

鳰「…」ピタッ

溝呂木「ん?どうした?走りー」

鳰「…えーっと」

溝呂木「?」

鳰「…か、漢字が読めないんでパス1ッス」

溝呂木「ええ!?」

クスクスクス

鳰「‥」

溝呂木「おいおい、そんなに難しい字はどこにも…あー。いや違うな。意地悪い言い方した先生が悪かった」

鳰「あ、あははは…生物の授業なのに漢字の勉強も入れてくるとか卑怯ッスよー……ごめんなさい」

溝呂木「わからないことがあるのは悪いことじゃないぞ。そのままにせずに復習して誰かに教えてもらうか、先生にいつでも聞きに来いよ」

鳰「…」

溝呂木「それじゃあ一ノ瀬、代わりに頼んでいいか?」

晴「わかりました!えーっと。下記の生物のうち、湖における生態系ピラミッドを生産者から順に並べなさい。ミドリムシ、フナ、ミジンコ、メダカ…」

鳰「…」

鳰(…問題のとこがマジックの落書きで塗りつぶされててなんも読めなかったッス)

鳰(教科書開くの久しぶりだったからいつやられたのかすらわかんないッスし、いやぁ参った参った。はっはっは)

鳰「…」パラッ

鳰(ちなみに他のページも…お決まりの死ねとかブスとか。語彙が貧弱すぎて泣けてきちゃうッスね)グスッ

鳰「…」

鳰(…違うッス。この涙は貧弱センスな悪戯の実行犯を憐れむ涙ッス。馬鹿ってそれだけで可哀想だからッス)シクシク

溝呂木(走りが泣いてる!問題が解けなかったのがそんなに悲しかったのか…)

溝呂木(いや!僕が彼女のプライドを傷つけるようなやり方をしてしまったのかもしれない!未熟な先生ですまない、走り!)

晴「先生、終わりました!」

溝呂木「あ、ああ。ありがとう一ノ瀬」

晴「…」トントン

鳰(どうしてこんなことになっちゃったんッスかねぇ……ん?)シクシク

晴「…」ニコニコ

鳰「…晴?」

晴「大丈夫だよ、鳰。わからないところはあとで晴と一緒に勉強しよ?ね?」

鳰「…」

鳰(…まったく、世の中ってほんとままならないっつーか、予想できない方向に転んでくものだと思うッス)

溝呂木「それじゃあ今日の授業はここまでー」

晴「ありがとうございましたー!」

溝呂木「あ、そうだ一ノ瀬」ヒソヒソ

晴「?」

溝呂木「走りのフォロー、頼んでいいか?」ヒソヒソ

晴「はい!お任せください!」ヒソヒソ

溝呂木「すまないなー。年頃の女の子の気持ちは先生には難しくて…」ヒソヒソ

晴「ふふふ。晴がばっちり励ましちゃいますから安心してください♪」ヒソヒソ

溝呂木「面目ない。頼んだぞ」ヒソヒソ

鳰(二人が何を勘違いしてるかは知らねーッスけど、ヒソヒソ話の内容はまるっと聞こえてるッスよ)

鳰「…」

コツン

鳰「…」ヒョイッ

鳰(丸めた紙?)ガサガサ

『調子に乗るな。殺すぞ』

鳰「…」

鳰(今年の4月から始まった10年黒組は、当初楽勝で終わるであろうと考えていたウチの予想を超えた事態が多数発生していたッス)

鳰(事態1。いじめ。それもターゲットがまさかのウチ)

鳰(いやぁまさか黒組でいじめにあうとは夢にも思わなかったッス。連中、暗殺者とかいいながらなんだかんだ年頃の女子と全然変わんない精神レベルだったんッスねぇ)

鳰(ちなみに実行犯は誰だと思うッスか?せっかくだからなぞなぞっぽくしてみるッス。正解はこの後で)

鳰(理由は…そういえば聞いたことないッスね。最初はどうせ黒組なんてすぐに終わるものだしどーでもいいかって思ってたんで)

鳰(…いや、今でもどうでもいいんッスけど)

鳰(…)

鳰(…そうそう。それに繋がって事態2ッス)

鳰(事態2。誰も予告状を出さない)

鳰(これはウチも勘違いしてたッス。最初の数日はみんなして牽制し合ってるのかと思ってたんッスけど)

鳰(誰一人予告状を出すことなく一ヶ月が経ち。二ヶ月が経ち。そして気付けばもうすぐ金星祭ッス)

鳰(なんなんッスかねー。やっぱ今回の殺し屋共はヘタレばっかなんッスかね。ウチが裁定者なんて損な役割してなかったらもうとっくに殺ってたッスよ)

鳰(…もう誰でもいいからさっさと終わらせて解放してくれって気持ちがないと言えば嘘になるッス)

鳰(話が逸れたッスね。ここまでで予想外の事態は2つ)

鳰(まあ、でもこれくらいなら大した問題では無かったッス。なんなら黒組終わった後に各個お礼参りとかしてやっても良かったッス。西の葛葉ナメんなッス)

鳰(…でも、問題はそれだけで終わりじゃ無かったんッスよね)

鳰(ウチにとって最も予想外だった事態。それは…)

晴「ふー。授業大変だったねー。それじゃあ鳰、晴と一緒に図書室に行かない?」

鳰「えー?さっき授業終わったのにまたすぐ勉強ッスかー?」

晴「だって先生がさっき言ってたじゃない。わからないことをそのままにするなーって。ほら、立って立って」

鳰「わかったッスわかったッス。それじゃあせめて勉強前の糖分補給にプチメロだけでも買いに行かせて欲しいッス」

晴「あ、それなら晴もチョコ食べたいから売店一緒に行こうっ」

鳰(ターゲットの一ノ瀬晴だけはなんでかウチに優しくしてくれるんッスよね~……)

鳰(…あ、ちなみにさっきのなぞなぞ、実行犯は誰?の答え。)

鳰(もう半分以上答え言ってるようなもんだった気もしないでもないッスけど一応答えときましょうか)

鳰(答えは11人ッス)

鳰(暗殺者11人。晴ちゃんと溝呂木先生以外の黒組全員がウチいじめの実行犯ッス)

図書室

晴「それでねー。兎角さんったら…」

鳰「あはははは!あの人もかわいいとこあるんッスねー」

鳰(そういえば)

鳰(晴ちゃんはウチのいじめのこと知らないんッスかね?)

鳰(今もなんの邪気もない顔でウチに兎角さんのこと話してるし、気付いてなさそうッスね)

鳰(それに連中無駄に巧妙ッスからね。晴ちゃんに気付かれるような足は付かせないっつーか)

鳰(ウチのプライドが誰かに相談するのを許さないってのも見抜かれてる気がするし…)

鳰(そりゃ当然か。ターゲットにいじめの相談する殺し屋なんてどこの宇宙にいるのかって話ッス)

晴「ふふふふ…鳰はやっぱりお話聞くの上手だねー。晴、こんなに喋ってて楽しいの久しぶりー」

鳰「いやぁ、晴ちゃんのお話が面白いからッスよー」

晴「でも打てば響くっていうか、兎角さんはすぐ話の腰折ろうとしてくるんだもん」

鳰(って言ってる割には口を開けば兎角兎角って。自分で気付いてないッスね、晴ちゃん)

鳰(あいつのこと話す時はいっつも優しい顔ッス。相手が黒組の連中じゃなきゃお惚気ごちそうさまですーとでも言ってやりたい気分なんッスけど…)

晴「あ。噂をすれば影。兎角さんだ」

鳰「っ!」ビクッ

鳰(…って、な、何をビクッってしてるッスかウチは!)

兎角「…やあ一ノ瀬。…と、走り」

晴「兎角さんも勉強してく?」

兎角「いや。それより図書室では静かにしろ」

晴「あ…」

兎角「…まあ、どうせ走りのやつが勉強したくない一心でお前を調子に乗らせておしゃべりにシフトさせたんだろうが」

晴「はっ!?そういえば勉強!?」

鳰(悔しながら図星ッス!)

兎角「まったく…おい走り」

鳰「な、なんッスか…」

兎角「晴は返してもらうぞ。そろそろ夕食の時間だ」

晴「あ、だったら鳰も一緒に…」

鳰「い、いやいいッス。そういえばそろそろ用事があるんでウチはこれで…」

晴「そう?なら無理に誘うのも悪いかな。じゃあまた寮で…」

鳰「そ、そうッスね。それじゃまたあとで…」

兎角「待て。走り」

鳰「ひっ…」ビクッ

兎角「…英がお前のことを探していたぞ」

鳰「…」

七号室

鳰「…」コンコン

純恋子「あら、やっと来たんですの」ガチャ

鳰「…なんの用ッスか」

純恋子「何の用事って?そんなの決まってますわ。お茶が切れてしまいましたの。それくらい察しなさいな、グズ。急いで買ってきてくださる?」

鳰「…」

純恋子「ダージリンのファーストフラッシュ…学園内の売店ではろくな品質のものが売っていませんの」

鳰(知るかッス!紅茶花伝でも飲んでろッス!)

純恋子「勿論、最高級の品質のものを買ってくるのですわよ?今お風呂に入りに行った番馬さんがあがってきたらティーパーティをしたいのですから」

鳰(ウチ知ってるッス!そんなこと言って、いっつも断られて一人寂しく飲む羽目になってるの知ってるッス!)

純恋子「それまでにきちんと買って来れないと…分かってますわよね?」

鳰「…ちなみに、嫌だって言ったらどうなるッスか」

純恋子「それは勿論」クスッ

純恋子「おしおきですわ」

ゴスッ!

鳰「ぐえっ!」

鳰(こ、コイツ…!いきなり腹ぶん殴って来やがったッス!)

純恋子「例えばこんな感じで…ってあらあら大丈夫ですの?軽くお腹を小突いただけのつもりでしたのに」

鳰「うぶっ…!ごふっ。げほっ!けほっ!けほけほっ!」

純恋子「そんな、今にも死にそうな苦しそうなお顔で蹲るなんて貴女本当に暗殺者ですの?」クスクスクス

鳰(みぞおちに…入ったッス…息…できな…)

鳰「けほっ…おえっ…!」

鳰(気持ち…悪いッス…頭、痛い…!)

純恋子「まあはしたない。えづくのは不快でも許してさしますが、万が一ここで吐いたりしたら全部舐めて掃除させますからね」

鳰「げほっ…!うぷ…おえっ!げほっ…!おえっ!」

鳰(なんなんッスかこれ……お腹…痛…苦し……!)

鳰「はー…!はー…!ひゅー!」

純恋子「手加減はしたつもりだったのですが脆いですわねぇ。…それより早く行きなさいな。いつまでもグズグズしていると番場さんが大浴場から帰ってきてしまいますわ」

鳰「ちょ…待って…痛いッス…洒落になんないッス…」

純恋子「なんですの?もう一発欲しいんですの?」

鳰「ひっ…わ、わかったッス!わかったから待って欲しいッス…」

純恋子「今から5数えますから、その前に行かないと今度は顔を殴りますわよ」

鳰「ううう…」フラフラ

純恋子「ほら、急ぎなさいな。立ち上がっただけじゃ紅茶は買いに行けませんわ。はい5ー」

鳰「…」ノロノロ

純恋子「4ー」

鳰「…」フラフラ

鳰(身体、重いッス…)

純恋子「3ー」

鳰「痛いッス…気持ち悪いッス…」ズルズル

純恋子「2-」

鳰(なんでウチがこんな目に…)ズルズル

純恋子「1…と、まあ。今回はこの辺で許してあげますわ。急いで買って来なさいな」

鳰(痛いッス…辛いッス…なんで…なんで…)

金星寮前の道

鳰(…さて困ったッス。紅茶買って来いとかいきなり言われてもあの冗談みたいな金持ちお嬢様が納得するような高級紅茶売ってる店なんてウチは知らないし…)

鳰(理事長なら持ってるかも…ううん。駄目ッス。あんなやつに理事長の物を分けるとか死んだほうがマシッス)

鳰(遠出して街の方行けば売ってるかもしれないッスけど、番場さんがお風呂からあがってくるまでって、いくらあの人が長湯でもそんなの間に合うわけ無いし…)

鳰(…仕方ないッス。購買の紅茶買ってって、今回もまた諦めて大人しくぶん殴られるの覚悟するしかないッスね。せめて虫の居所がいいことを願うッス)

柩「あ、見てください千足さん。パシリさんです」

千足「ん?ああ、どうも腐った臭いがすると思ったらあいつが近づいてきたのか」

鳰「…げっ」

柩「どう思います?千足さん。パシリさん、今度は誰に何を買いに行かされてるんでしょうか」

千足「どうだろうな…今日は苦しそうに腹を抑えているし、すぐに手が出る奴と見た。東にカレーメシかな。それとも犬飼に化粧品か?」

鳰(好き勝手言わてるけど無視無視ッス。そうすればやり過ごせるかも…)

柩「なんなんでしょうねー。ちょっと聞いてきてもいいですか?」

鳰(来んなッス!)

千足「なんにせよあんな奴どうでもいい。そんなことよりもう行くぞ、桐ケ谷」

鳰(おっ!ラッキー!?)

柩「えー?千足さんは気にならないんですかー?」

千足「桐ケ谷のその旺盛な探究心は素晴らしいと思うがな。そんなお前だからこそ自らゴミと関わり合いになりに行くのはわたしは関心しないな」

柩「ぶー。わかりました。千足さんがそう言うなら」

鳰(…ほっ。生田目さんはウチにあんまり関心ないから助かるッス…でも…)

柩「…」

千足「…桐ケ谷?」

柩「…そういえば千足さん。ぼく、今日の授業で気になったことがあるのを思い出しました」

千足「…ふふ。勉強熱心なのは良いことだ。なんだ?私に答えられることなら答えよう」

柩「今日の生態系ピラミッドの話なんですけど…」

千足「ああ」

柩「湖の生物の生態系…植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、動物プランクトンをメダカのような小さなお魚が食べ…」

千足「そうだな。よく覚えていた。偉いぞ桐ケ谷」ナデナデ

柩「小魚をフナのような大きめのお魚が食べて、そのお魚は今度は上位捕食者の水鳥に食べられるんですよね?」

千足「ああ、そうだ」

柩「ぼく、見てみたいです」

千足「ん?」

柩「水鳥(カイツブリ)がお魚を食べてるシーン。見てみたいです」ジー

鳰「」ビクッ

千足「桐ケ谷は勉強熱心だなぁ」

柩「本当は寮に帰ってから呼び出してさせるつもりだったんですけど…今ちょうどいいからやらせちゃいましょう」ゴソゴソ

鳰「なっ!なんッスか!?なにやらせようってんッスか!?」

柩「じゃーん。見てください千足さん。さっき学園の池から獲ってきました。フナです」スッ

鳰「なにやらせるつもりッスかあああああああああああああ!!?」

千足「あいつはカイツブリの名前持ちってだけで本物の鳥ではないのだが…まあいい、お前がやりたいなら止めはしないよ」

柩「にひひひ」ニコッ

柩「さあ、パシリカイツブリさん。ぐいっといっちゃって下さい。好物でしょう?ちょっともう死んじゃってますけど、獲れたて新鮮ですよ?」グイッ

鳰「ちょ、なんッスか!?なにが好物ッスか!?新鮮ってなんッスか!?」

千足「おい、走り。暴れるなよ。桐ケ谷が怪我する。…そうだな、念のため組み伏せておこう」グイッ

鳰「いたたたたたた!!ひっ!やめろッス!生臭っ!おえっ!顔に近づけんなッス!」

柩「さあどうぞ。味の感想聞かせてくださいね♪」ニコニコ

鳰「むぐうううーーー!!んむーーーー!!」ポロポロ

柩「あはっ。見てください千足さん。パシリさん涙を流していやいやしてます。鳥さんも涙流すんですね」

柩「ほらパシリさん。お口あけるのですよ。じゃないとお魚食べられないのです」グイグイ

鳰(いやッス!絶対食べたくないッス!絶対嫌ッス!!)ポロポロポロ

千足「お、おい桐ケ谷。もうそろそろ冗談はこの辺にして許してやったら…」

柩「もー。あはは、走りさんったら強情なんですから」グイグイグイ

鳰「むー!む~~~~~~!!」シクシクシク

柩「ほら走りさんったらー。たべてー。たべてくださーいーえいえーい」グイグイグイ

鳰(絶対いーーーーやーーーーーッスーーーーーーー!!)イヤイヤ

千足「お、おい桐ケ…」

柩「もー。好き嫌いするなんてしょうがない鳥さんですねー」ニコニコ

柩「……食べなさいよ」

鳰「ひっ…!」

柩「あ、隙ありです♪」グイッ

千足「あ」

鳰「うぶっ…!」

鳰「おえええええええええええええええええええっっっ!!」

千足「うわっ!汚っ!」

柩「…」グイッ

千足「…桐ケ谷?」

鳰「うぐっ!おげっ!うぐぐ」

柩「…ちゃんと食べなさいよ」グイグイ

鳰「うげ…うえ…うえええ…」

柩「残さず食べなさいよ。せっかく貴女に食べさせるために命を奪われたお魚さんが可哀想でしょ?」グイグイ

鳰「うぶ…うっぷ…も、もうやめ…やめ…ッス……やめてくださいッス……」

柩「止める?おかしなことを言うのね。早く食べなさいよ。お口開けて。じっくり咀嚼して。味わって。命を頂いてることに感謝して」クスクスクス

鳰「うえ…もう…許してッス…ごめんなさいッス…やだ…うえ…おええ…助け…」

柩「ほら。ほら。ほら。早く。早く。早く」クスクスクス

鳰「…」シクシクシク

柩「…」

千足「…」

柩「…あーあ。泣きながら失禁しちゃいました。千足さん、行きましょう。おしっこ臭くてこんなところにはもういられません」

千足「あ、ああ。そうだな桐ケ谷」

柩「実験結果が出ました。カイツブリは敵に襲われたら嫌な臭いのおしっこを出して撃退しようとするんですね」テクテク

千足「そんな動物や昆虫いたな」スタスタ

鳰「…」

鳰「…」

鳰「…おえっ」ビチャッ

鳰「うぷ…おえっ…!おえええっ!おええええ…っ!」ビチャビチャビチャ

鳰「ぜー…はー…」

鳰「うっぷ…おえっ…」

鳰「はー…はー…はー…」

鳰「…はー」

鳰「…あはははは」

鳰「いやー助かったッス。おしっこしたら逃げてったッス。お陰でお魚食わされるの切り抜けること出来たッスよ」

鳰「ウチ、ナイス機転。いや、別にしようと思ってしたわけじゃないッスけど。身体の自衛機能でも働いたッスかね。サンキューマイボディッス」

鳰「これでなんとか紅茶買いに行けるッスよー。もうとっくに番場さんのお風呂も終わっていつまでかかってんだこのグズ!ってブチギレ体罰確定の流れッスけど」

鳰「あ、そういえばお金貰ってなかったッスー。って、これはいつものとおりか。英さんお金持ちなんだからちょっと色つけて渡してくれりゃウチだってパシられんの吝かじゃねーのに」

鳰「そういえば桐ケ谷ちゃん面白いこと言ってたッスねー。走り鳰ならぬ、パシリ鳰ってかー。上手いっ!座布団一枚ーって、オヤジギャグかーい!」

鳰「あはははは!うけるー。ウチこういうくだらねーギャグ大好きッスよー。持ちネタにしよ。あ、でも話せる相手いないか。自虐も過ぎるとドン引きされるッスからねーあはははは!」

鳰「はー笑える。笑える。笑えすぎて涙出て来ちゃった。あーお腹痛い。ただでさえお腹真っ青になってるのに止めて欲しいッスわ」

鳰「あー痛い、痛い。でもお腹痛くなるくらい笑えるなんてウチ幸せだなー。あー楽しい」

鳰「楽しい」

鳰「たのし…」

鳰「…」

鳰「…なんなんッスか。これ……」


                    -‐- 、
               --、 //⌒\\
              //⌒ヽ/     ヽ ヽ
           {{           } }
              \        / /
                \       //
                     _ /__
               >''" ̄⌒/⌒\  ̄`  、
        x'''"       /              \
      /         /      }      \ \ 
     /   /    /l    }   -―-  ヽ  ヽ \   きょうはここまでにしとくッス
   //        /"{⌒  ;  /  ヽ    l   }    、
  ///  /    /   !  / / _ Y   } l /    Y
  {(  {   j    /,,x=≡l  // "⌒~`~ /}/j/     `、
    人  { {  / "   }/    ,,,,,,, /}/         \
  /  \{  / ''''''              {  /  ノ    ヽ   ヽ
 /  /{   乂(       `ー~’    /"⌒\/   j  }〉    }
 `~( \_ヽ >'"⌒ヽ ____{       \ ノ  ノ    /
       )ノ / ,,. ''" ̄ ̄>'" ̄~`< ̄ ̄~` 、 ) 、/人( ̄
       ,.. '"     /       >ー-、   `ヽ\
      / ⌒>''" ̄ >'" ̄ ̄ ̄`ヽ    `<⌒\\
    /  /   /       _,,>< ̄⌒\ー\}

   /  ,,,x-――/" ̄ ̄`>< ̄       \   ヽ  ヽ
   // /    /     /   `ヽ         ヽ_ `、 ヽ
   ;   /   /     /         \  '"~ ̄ ̄Y ̄`ヽ  Y
   { ∥   ∥_ _/            /\      }    }  }
    \{ /∥    / ̄`ヽ     /   ヽ    l   ノ /
      `~ミ_       \   /     _、_ -~''"
           ̄ ̄`''''ー----―'''" ̄ ̄

鳰「…」

鳰(…寒くなってきたッス)

鳰(五号室の二人が帰ってから、もうどれくらい経ったッスかね…体感時間的には20分くらい?)

鳰(でも、ウチはあれから全部の気力が失せて英さんの紅茶さえ買いに行かずそのまま道の端っこで座り込んでいたッス)

鳰(もうなんか全部がどうでもよくなってきて…なるようになれって感じ)

鳰(これからどうしよう…部屋に帰るのは怖いッス。英さんが殴りこんできたらどうしようって)ノロノロ

鳰(理事長のとこ?駄目ッス。今のこんな弱ってる顔見せたらいろいろ勘ぐられちゃいそうッス)

鳰(それはウチのなけなしのプライドが許さない)

鳰(…とりあえず寮の側にはいたくないッスね。トイレで顔洗って口ゆすいで、適当に学園内を散歩でもするッス)

鳰(それからは…本当にどうしよう)

鳰「はぁ…」

鳰「元のクラスに戻りたいッス……」

ガヤガヤ

鳰「…」トボトボ

鳰(なんてことを道すがらずっと考えながら歩いていたら)

鳰(元のクラスの教室の近くまで来ちゃったッス)

鳰(ほんの数カ月前だっていうのに、随分懐かしいッスねぇ)

鳰(もう時間も遅いし電気は付いてない。もうみんな帰っちゃったみたいッスね。残念)

鳰(久しぶりにみんなに会いたかったんッスけどね…)

鳰(…みんな盛大に送り出してくれたなぁ)

鳰(鳰がいなくなったら寂しくなるね…なんて言ってくれて)

鳰(そういえば、あの時に貰った色紙、引っ越しの荷物から出してなかったッスね)

鳰(今日部屋に帰ったら出して見てみようかな)

鳰「はぁ…」

鳰(この教室に帰りたいッス…)

鳰「…ちょっとくらい教室の中に入っても大丈夫ッスよね?」カラカラ

鳰「…はー」

鳰「ウチ、馬鹿ッスねぇ」

鳰「そういえばあれから進学があって、この教室はもういっこ下の学年の子らの教室になってたッス」

鳰「貼ってるプリントも置いてある荷物も全然違うし…」

鳰「当然あの時の友達はみんなもうばらばらに散らばって新しいクラスにいるし」

鳰「ウチの居場所も、帰る場所も、もうここにはとっくに無くなってたッスね…」

鳰「なんだったらウチの晴ちゃん暗殺の成功報酬、元のクラスに戻して…って考えてたのに」

鳰「もう…無理…だし……」

鳰「あ、あははは…あはははははは…ウチ…馬鹿…だなぁ…新しいお願い考えなきゃ…あははは…」

鳰「あはははは…はははは…」

鳰「う…うう…うううう…あ、あは…ううう…」

鳰「ううううううう…」

鳰「みんなぁ…寂しいッスよぉ……」

鳰「…」モキュモキュ

鳰(…いくら寂しくても、悲しくても、辛くても、お腹は空くもんッスね)

鳰(英さんから貰ったきっつい一発のダメージもようやく収まってきて…そしたら途端にお腹が鳴ってしまったッス)

鳰(で、折角だから購買で大好物のプチメロ買って、今はこうして一人さっきの教室に戻って寂しい晩御飯ッス)

鳰(学年は変わって、クラスメイトが誰もいなくなって、教室の雰囲気も全然違うものにはなったけど…)

鳰(変わらないものもあったッス)

鳰(ウチの使ってた机…)ナデナデ

鳰(懐かしいッス。授業中よく落書きとか、シャーペンで表面削ったりとかしてたッスから)

鳰(特に我ながら上手に描けたと思ってたパンダの落書きの、消されてなかったッス)

鳰「…」ナデナデ

ガラッ

鳰「あっ…」

真夜「見ぃ~つけたぁ♪きしししし♪」

鳰「真夜…さん?なんでこんなとこに…」

真夜「いやぁ~探したぜぇ。風呂からあがって部屋に帰ってきたら純恋子のやつが随分ご立腹でよぉ~」ズカズカ

真夜「どうしたんだって尋ねたらパシリがいつまで経っても帰って来ねえっつーのよ。俺にまでトゲっちくてなだめんのに苦労したぜぇ~」ニヤニヤ

鳰「えっと…それは…」

真夜「ああ、心配しなくてもいいぜ?もう今日はアイツ寝かせたからよ。明日になったらちったー落ち着いてるだろ」

鳰「それは…その…あ、ありがとうございますッス…」

真夜「ったく感謝しろよ?あいつお前の部屋に殴りこんで部屋ごとぶっ壊す勢いだったんだからよ~」ガタッ

真夜「ふ~…ここ誰の机だ?まあいいや椅子借りるぜ」ドッカ

鳰「…」

真夜「お、そういやなんでここにいるのかってか?色々駆けずって聞き込みしてよ。こっちの校舎で見たって聞いたもんであとは虱潰しよ」

鳰「それは…ご足労をかけたッス」

真夜「な~に気にすんなって。ま、明日は不自然じゃない程度に軽くあいつのこと避けとけ。どーせ大した用事じゃなかったんだ。すぐ忘れるだろ」ニヤニヤ

鳰「…」

真夜「ははっ。そう構えんなって。用事はそれ伝えに来ただけだ。別に他の連中みたいにお前をいたぶろうなんて気はねーよ」ニヤニヤ

鳰(…この人だけは、よくわかんないッス)

鳰(クラスで一番凶暴で脳みそ足りてないような雰囲気出してるくせに、たまに妙に理知的で常識人だったり…気まぐれでこうやって庇ってくれたり)

鳰(真昼の方がウチに対しては無視決め込んだりぼそぼそ死ね死ね言ってきたりでよっぽど残酷ッス)

鳰(暗殺者11人全員がウチのこといじめる…って前に言ったッスけど)

鳰(だから…その…この人は今のとこ対象外っつーか。員数に数えていいのかわかんなかったんで番外にしてたッス)

鳰(…信用してもいいんッスかね…?)

鳰「…」ジー

真夜「」ニヤニヤ

鳰(でもなー。なんかいやらしいっていうか、胡散臭い笑顔してこっち見てるんッスよねぇ…いやウチあんま人のこと言えないッスけど)

真夜「で、どうしたよ」

鳰「え?」

真夜「随分しょげてるようだったからよ。また今日もろくでもねー目に合ったんだろ?」

鳰「…」

真夜「ま、無理にとは言わねーし俺が積極的に動いて解決してやるなんて気もねーが」

真夜「どーせ暇だし、愚痴くらいなら聞いてやっても別にいいぜ」ニタニタ

鳰「…」

鳰(あ。まずいッス)

鳰(泣く)

鳰「ごめんなさい真夜さん。愚痴とかいいッス」

真夜「ん~?そうかぁ~」ニタニタ

鳰「その代わりちょ~っとだけでいいッスから」

真夜「お~。なんだぁ?」ニタニタ

鳰「ちょっとだけでいいんで…」

鳰「…ぎゅってしてもらっていいッスか」

真夜「ハッ!泣きながらンなこと言いやがってダセェなぁ!…別にいいぜ」

鳰「…」キュッ

真夜「…」ニタニタ

鳰「うー…」

真夜「おめぇチビなくせに胸でけぇなぁ。ケケケ」

鳰「ううううー…」

真夜「…」ナデナデ

鳰「うううううううー…!」

真夜「そうやってすぐ泣いてよぉ。暗殺者のくせによぉ」ナデナデ

鳰「うええええええええー…」

真夜「お前向いてないんじゃねぇのか?へっ。黒組なんかやめちまえばいいのによ」ナデナデ

鳰「うええええええええん…」

真夜「泣き虫だし、めんどくせぇやつだし、いじめられっ子だし」ギュッ

鳰「うえええええええええ…」ギュッ

真夜「…可哀想になぁ」ボソッ

鳰「…」グスグス

真夜「…」ギューッ

鳰(…あったかいッス)

真夜「…」

真夜「…あ、ちょっとタンマ」

鳰「へ?」

真夜「おいおい待て待て。ちょっと落ち着け」

鳰「…真夜さん?」

真夜「いや別にお前の敵になるつもりはねーし。っていうか当たり前だろ。どんな時だって俺の一番はお前だけど…」

鳰「あのー真夜さん?」

真夜「いやいやいやだってお前いくらなんでも…」

鳰「おーい。真夜さーん…ッス」

真夜「あー…だから待てってば…おいおいおいお前そんな強引な…」

鳰「…」

真夜「…走り」

鳰「…はいなんでしょう。なんとなくオチが見えたッス」

真夜「逃げてもいいぞ」

鳰「…じゃあまずその腕を離して解放して欲しいッス」

真夜(?)「わり。無理だわ。もう主導権向こう…ます」

鳰「…はぁ」

真昼「…」

鳰「…」

真昼「…」

鳰「…」

真昼「…」

鳰(せめてなんか喋って欲しいッス)

真昼「……」ボソボソ

鳰「はい?なんッスか?」

真昼「気持ち悪い胡散臭いゴミビッチの癖になんで楽しそうに生きてるんだよ死ねよゴミ虫死ね死ね死ね死ね」ボソボソボソ

鳰「…」

真昼「死ね死ね死ね死ね刺されて死ね撃たれて死ね毒盛られて死ね高いところから落ちて死ね裏切られて死ね殴られて死ね首締められ死ね」ボソボソボソ

真昼「転んで死ねうっかり死ね嫌われて死ね飢えて死ね食べられて死ね狂って死ね嬲られて死ね犯されて死ね泣きながら死ねとりあえず死ねとにかく死ね」ボソボソボソボソ

鳰(耳元で死ね死ね連発されるだけなんで、まだ他の連中に比べればマシッスね…)

真昼「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

鳰(でもなんかずっと拘束されたままこんな呪詛もどき聞いてるのは精神的にかなり来るッス…)

真昼「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死にぇ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ぬ」

鳰(耳くすぐったいし…)

鳰(ま、でも良いッス。真夜さんはウチのこと消極的にでも味方してくれるっていうなら、それだけでも大分救われた気分…)

1時間後

鳰(…と、そんなこと考えてたウチが甘かったッス)

鳰「…」

元クラスメイトA「ひっ…!鳰!」

元クラスメイトB「に、鳰!鳰だ!」

鳰「…ごめんなさいッス」ペコリ

元クラスメイトC「鳰…アンタみたいな子がまさか不良になっちゃうなんて…」

鳰「…誤解ッス。…って言いたいけどきっと信じて貰えないッスよね…」

元クラスメイトD「当たり前よ!なんなのよあの女!」

元クラスメイトE「ダチのお前を探してるって…Aがちゃんと答えたのにいきなり笑いだして胸ぐら掴んで教室で大暴れして!」

元クラスメイトF「お前本当にあんな奴の友達なのか!?」

鳰「…遺憾ながらその通りッス」

元クラスメイトG「あんな奴とつるむなんて見損なったわ!もうアンタなんか友達じゃないから!」

鳰「…」

鳰(真夜さんが、どういう人かって。ウチ、ほんとにさっぱり、全く全然これっぽっちも理解できてなかったッス)

鳰(ウチを探して、生徒に聞き込みまでしてくれたって言ってたッスね。ありがとうございますッス)

鳰(でもさぁ…)

鳰(悪気がなくて…この惨状)

鳰(真昼さんが死ね死ねコールに満足して帰った後、微妙な心持ちでプラプラしてたらなんだか騒がしい教室を見つけたッス)

鳰(なんだろうって気になって覗いてみたら、そこにはウチの元クラスメイト達…しかも5人は包帯を巻いてるッス)

鳰(教室はドアが吹っ飛ばされてて。机が6つぶっ壊れてて。内一個には椅子が突き刺さってて)

鳰(床には中身の文房具や教科書、いろんなものの破片が散らばってグチャグチャ)

鳰(包帯巻いてる子らの他にもみんな青痣があったり…泣いてる子がたくさんと、それを慰めてる子…)

鳰(それに…)

鳰(金星祭の出し物であったろうお化け屋敷のセットが…粉々…)

鳰(みんなこんな遅い時間まで…一生懸命頑張って作ってたはずなのに)ズキン

元クラスメイトH「出てけよ!」ポロポロ

元クラスメイトI「出てって!なんでアンタの友達がこんな酷いことするのよ!出てけ!!」ポロポロ

元クラスメイトJ「親友だと思ってたのに…クラスは変わっても…ずっと友達だって…」シクシク

鳰(…さすがッスよ真夜さん)

鳰(今までのどんないじめより心にきたッス)

鳰「…本当にごめんなさいッス。……もう、迷惑…かけません」ペコリ

金星寮四号室

鳰「…」ボー

鳰「…もうなんにもやる気しないッス」

鳰「はぁ…汗が気持ち悪い。シャワーくらい浴びなきゃ…でもめんどくさいッス」

鳰「もういいや。このまま寝ちゃおう…」

鳰「このまま永遠に目が覚めなきゃ楽になれるッスかねぇ…」

鳰「…」

コンコン

鳰「…」

コンコンコン

鳰「…」

ゴンゴンゴン!!

鳰「…」

ドンドンドン!!

「ちょっと!返事くらいしてよー!勝手に入るよー!」

鳰「…はぁ」

あれ?
1号室兎晴
2号室春伊
3号室涼香
4号室千柩
5号室乙しえ
6号室純真
7号室鳰
であってる?

乙哉「おーい。鳰っちー。寝てるのー?起きろー。寝てる間にチョッキンしちゃうよ~」

ガチャ

乙哉「あ、やっぱり起きてた」

鳰「…乙哉さん」

乙哉「んっふふ~♪ごめんねぇ~鳰っち。疲れてるとは思ったけど、どうしても寝る前に鳰っちに会いたくなっちゃってさ~」

鳰「…ウチは会いたくなかったッス」ボソッ

乙哉「ん~?」

鳰「…なんでもないッス」

乙哉「そっかそっか。ね。ね。また今日も部屋に入れてくれる?」

鳰「…断っても勝手に入るんでしょ。いいッスよ」

乙哉「話はや~い。これだから鳰っち好き~」

鳰「…」

鳰(…一番めんどくさくて疲れるのが来たッス)

乙哉「」ニコニコ

鳰(コイツも真夜さんと同じで悪意は無い…比較的無いタイプッス。むしろ…)

乙哉「ああ~。鳰っちのお部屋は相変わらず綺麗だなぁ~」

乙哉「いい匂いがするし。鳰っちの匂いかな?まるで生臭い血の泥みたいな芳しい香り~」

乙哉「それに鳰っちも抜群に可愛いしね。晴っちやしえなちゃんにも負けてないよぉ~」

鳰「…それは、どうもッス」

乙哉「特にみんなにいじめられて焦燥してる時の鳰っちの顔なんて特に生唾ごっくんモノで、想像するだけで…」

乙哉「…んふ」

乙哉「んふふ」

乙哉「んふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」ジュルリ

鳰(残念なことに好かれてる節があるッス)

>>94
wikiだと

一号室 東兎角/一ノ瀬晴
二号室 犬飼伊介/寒河江春紀
三号室 神長香子/首藤涼
四号室 走り鳰
五号室 生田目千足/桐ヶ谷柩
六号室 剣持しえな/武智乙哉
七号室 英純恋子/番場真昼

ってなってるッス

乙哉「はぁはぁはぁ…」ジリジリ

鳰「…」

乙哉「ね、ね。今日こそチョッキンしていい?先っちょだけ、先っちょだけでいいからさ?」チョキチョキ

鳰「…」

鳰(なんかもう…笑けてきちゃうッスね。一難去ってまた一難どころか…遂に生命の危機ッス)

乙哉「んふふふ…まずは鳰っちのふわふわの髪の毛。チョッキンして、徐々に刻んで…」チョキチョキ

鳰(それもこんな変態猟奇殺人女に…あ、でもそれもいいかもッスね。これからもずっと辛い思いするくらいなら、いっそここでコイツに殺されるのも)

鳰(惨めな人生送ってきたウチの惨めな最後ってことで。滑稽で笑えるかも)クスッ

乙哉「それでそれで、指を切り落として、皮をつつーっと剥いで、筋繊維を少しずつプチプチーっと…」

乙哉「…てぇ」

乙哉「なんか反応薄くない~?」

>>96
アニヲタwiki見たのかな?
今編集し直してきたっス!

乙哉さん通常運転のド変態で素晴らしいな

鳰「…刻みたいんなら好きにすればいいッス。ウチはもう疲れたッス」

乙哉「むぅ~。まさかの無抵抗。もうちょっと慌てるとか怯えるとか、できれば反撃とかしてくれないとつまんないんだけど」

鳰「腐ってもウチは暗殺者ッス。覚悟はとっくに出来てるッスよ。反撃は…ずっと前には考えたことなかったわけではないけど、もういいッス」

鳰「どうせそんなことしたらここぞとばかりにみんなでウチのこと嬲り者にするんでしょ?11対1でやってもろくな目に合わないだろうことくらいわかってるッス」

乙哉「むむむ。覚悟が出来てるというかそれはどっちかというと負け犬根性とか捨て鉢根性ってやつだよ鳰っち」

鳰「なんとでも言えばいいッス。ウチは疲れたッス」

乙哉「む~ん…」

鳰「さあ、一思いに」

乙哉「…やーめた」

鳰「…そうッスか」

乙哉「鳰っちには、もっとこう人生の楽しみを謳歌して貰ってさ。人生の絶頂が来た!みたいなタイミングでどん底に突き落とした時の顔が見たい!」

鳰「…流石。ハイセンスなご趣味してるッス」

乙哉「もー!そんなジトーっとした目で見ないでよー!ほら、分かるでしょ?」

乙哉「自分はこれからも幸せな人生を歩むんだ~って信じきってる顔がさ!恐怖と絶望で変わった時の!ほら!落差!あれ!なんていうの!?ギャップ萌えってやつ!?」チョキチョキ

乙哉「ああ、想像しただけでたまんないわ。ハァハァハァハァ」チョキチョキ

鳰「…」

乙哉「…ってわけでしばらくはチョッキン我慢するけど…鳰っちも幸せになるよう努力しなきゃ駄目だよ?」

乙哉「幸せになったらチョッキンしに来てあげるからさ」

鳰「つまりウチは普通に幸せな人生は歩めないの確定ってことッスか。まあ暗殺者だし当然っちゃ当然ではあるんッスけど」

乙哉「もー!そんな擦れたことばっか言わないでよー!ちょっと前の明るく楽しい鳰っちどこ行ったの~!?」

鳰「…クラスの殆どにいじめられちゃあ、そんなキャラも作るだけしんどいんッスよ。むしろ晴ちゃんの前でだけでも維持出来てるウチを褒めて欲しいくらいッス」

乙哉「まったく…仕方ないなぁ」

鳰「…?」

乙哉「本命はしえなちゃんだし…これは人生の楽しみを教えるっていう名目のボランティアであって…」ブツブツ

鳰「…何ブツブツ言ってるッスか」

乙哉「…つまり、これはあくまで浮気じゃないよ?」

鳰「はぁ?」

乙哉「それにやっぱりなにもチョッキンしないのは欲求不満すぎてつらいから!せめて服だけでも!」ジャキッ

鳰「ちょっ!?」

ジョキジョキジョキ

乙哉「はい、完了。パラパラパラ~」

鳰「…」

乙哉「いや~あたし前から気になってたんだ~。鳰っち大浴場にも来ないし、お洋服も長袖ばっかだしさ~」

乙哉「顔見たらせっかく綺麗なすべすべのお肌してるのに?全然晒さないから勿体無いじゃん?おっぱいだっておっきいのに」

乙哉「だからさ~。ちょっとセクハラだけど、これくらい許してね?チョッキン頑張って我慢するあたしへのご褒美ってことで!」

乙哉「綺麗な鳰っちのありのままの姿…官能的な姿にかえって我慢できなくなるかもだけど…ああ…ステキ…」

鳰「…」

乙哉「んっふっふっふ。流石に驚いたみたいだね。どうですかあたしのこの鋏さばき。お肌に傷ひとつ付けずにお洋服だけバラバラに。こんなことだってできるんだよ~…って~…」

鳰「…やったッスね」

乙哉「…あれ?鳰っち…?」

鳰「…見たッスね」

乙哉「…何?その…全身の…刺青……?」

鳰「見たッスね…!」

鳰「ついに…見ちゃったんッスね…!!」

               __
           x彡-――-ミ 、
         /         \\
       /             Yハ
                      }ノ
                 _ ∥__

            >''" ̄   / ⌒\ ̄ ̄`丶、
           /      /      \    \
             /                        \   きょうはここまでにしとくッス
         /     /                    \
        /     /!     }  }        \    \
       /   /  /:::::l     ;  八         \   ヽ
      / /  /  /:::::::{\    / /::::ヽ/        ヽ   `、
     / //  / /}:::/ \   / /::::/::\_   }      Y   人
    {( /  /   ノ:::{   }  / /:::::::T  ̄   } /  }  l }    \
        {    /::::弋__ノ∨//::::::::::::;    /}/  / / /         \
       人 {  /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::乂_/:::::}  /l/l/     ヽ   ヽ
    /  \ (          ::::::::::::::::::::::::::::::j/       }  }〉   }
    (   /{    `ト、\_  __ __ )\ /  / /    ノ  ノ"  /
    `~(弋  \  `ト`<~w v__ vV_) {  / {/  / /{ /彡''"
         ̄)ノ~、メ  {  ̄/ ハYハ::::::::::::\l /  { 人(   `(
               )ノ /::::::ノl不l:l:::::::::::::::::∨   ∨
                   〈;;::::::{::∨:ノ:::::::::::::::/::::Y
                  _l  ̄l:::l└ァ~ミ/:::::::::l
                x-―气 }   {:::l/   /::::::::::::::::{
              {::}:::::::::::ヽ{ _ト-{_ /_ ̄\:::〉
             └-----― し ~ (ノ:::::::::::::::\ \
                            l:::::::::::::::/"~"
                       乂;;;;)/


で、お礼を言っておきます
>>99、訂正サンキュー
まさかwikiまで雑だとは思わず、雑な設定で書いてしまった

5号室乙しえ部屋

しえな「…ふう」

しえな「武智のやつ、また走りの部屋に行ってるのか」

しえな(…嫌がってるんだからよしてやればいいのに)

しえな(…いや。よそう。あいつが猟奇殺人犯だっていうなら、あいつの興味の矛先はボク以外のところに向いててもらわないと…)

しえな(なんでよりによってボクの同居人が連続猟奇殺人犯なんだよ…)ガックリ

しえな(いじめは許さない!…なんて最初に武智に偉そうなこと言っておいて、今はあいつに目を付けられないように走りに押し付けて見て見ぬふりしてる…)

しえな(走りのやつ、他の連中からもいじめられてるんだよな…せめて他のやつらからは守ってやりたいけど…)

しえな(武智のやつがそういう人間大好き(悪い意味で)みたいだからなぁ…)

しえな(うう…ごめんね。走り…)

しえな(結局、ボクも自分が一番可愛い最低な人間たちの一人なのかな…)

しえな「…いや。違う…!ボクはあんな奴らと一緒じゃない…!!」

しえな「…うん。そうだ。ボクは今まで何をやってたんだ!そうだよ!いじめを見て見ぬふりなんて!そんなのあいつらと一緒だ!」

しえな「今からでも遅くないはず。これからすぐに走りのところに行って助けてやろう!」

カチャッ

しえな「…って、あれ?武智、戻ってきたのか」ガクッ

しえな(人が盛り上がってきた途端に帰ってくるなんて間の悪いやつ)

しえな(でもちょうどいいや。武智にちょっとお説教してやろう。そして私は走りの側に付くって言ってやるんだ)

しえな(こいつなんだかんだ私の言うこと素直に聞いてくれるしな。ついでに協力してくれたら結構心強いな)

しえな(でも、怒らせたらどうしよう…走りに言って泊めてもらおうかな…)

しえな「…」

しえな「…武智?」

しえな(…珍しいな。いつもだったら帰って来たら開口一番「しえなちゃ~ん!」って抱きついてくるのに…)

しえな「どうしたんだ?武智。早く部屋に入ってこいよ。エアコンの冷気逃げちゃうだろ」

「…」

しえな「?」

しえな(あれ?もしかして違う人かな?珍しいな、この部屋に客人なんて)

「…」スタスタ

しえな「…って、なんだ。やっぱり武智じゃないか。珍しいな、お前がこんなに静かだなんて」

乙哉「ん?そう?変だったかな?」ニコッ

しえな「いや、別に変ってわけじゃないけど…むしろいつもそれくらい大人しくしてくれるとボクとしては楽でいいかな」

乙哉「へー、そっかそっかー。そんな感じだったか」

しえな「ん?」

乙哉「ん。なんでもないよ」

しえな「…そう」

乙哉「そうそう」ニコニコ

しえな「…?」

しえな(なんか違和感…が…?)

しえな「…」

乙哉「…」ボソボソ

しえな「…」

しえな(いや。気のせいか。武智はいつもこんな感じだ)

乙哉「ふっふっふ…」

乙哉「ふぅ。ちょっと疲れたな~」ボフッ

しえな「あ、こら。そこはボクのベッドだぞ。勝手に座るなって言っただろ」

乙哉「そうだっけ?ふふふ。まあいいじゃん」

しえな「よくないっての…まったく」ブツブツ

乙哉「ところで剣持さ…しえなちゃん、何してたの?」

しえな「え?どういう意味だ?」

しえな(あれ、ボクさっきまでなにしようとしてたんだっけ。えーっと…)

乙哉「うん。あたしが出かけてからこっち、今までしえなちゃんはなにしてたのかな~って」

しえな「いや、何をって特になにも…あれ、それよりボク、お前に何か言わなきゃいけないことあったような…」

乙哉「ふ~ん。まあそれは後でいいっしょ。そういえばしえなちゃん、あたしがさっきまでどこに行ってたかは知ってたっけ?」

しえな「そりゃ当たり前だろ。お前走りのとこ行くときはいつも先に言ってくるし」

乙哉「あ、なんだそうだったんだ。しえなちゃん知ってたんだ~」

しえな「だから武智が自分から言ってるだろって…」

乙哉(?)「知ってたのに止めてくんなかったんッスね…」ボソッ

しえな「え?」

乙哉(?)「自分だっていじめられっ子だった癖に…」ボソボソ

しえな「武…智…?」

乙哉(?)「…コホン」

乙哉「…鳰っちから全部聞いたよ~。しえなちゃん、ガチいじめられっ子だったんだって?」ニヤニヤ

しえな「え…」

乙哉「前の学校で酷いいじめに遭ってさ。それを誰にも相談出来ずに塞ぎ込んでいたところで、いじめっこへの復讐グループ「集団下校」に勧誘されて加入したって?」

しえな「な、なんでそれを…」

乙哉「ダサイ集団だよねー。いじめられっ子達がつるんでいじめっこ達への仕返しなんてしょぼい目的のためにさー。なんか大仰な仲間意識持って、秘密組織っぽい名前まで作って」

しえな「え…ちょっと、嘘だろ…」

乙哉「黒組への参加の目的もその辺が関わってるのかな?弱いもの同士の傷の舐め合い団体なんてどーせカスみたいな連中の吹き溜まりでしょ?ちゃんと殺せんの?」

しえな「あ、あわ、あわわわ…」

乙哉「虫酸が走るんッスよねー。雑魚同士つるんでお友達ごっこってやつッスか?」

しえな「そ、そんなんじゃない!」

乙哉「そんな目的の団体に加入してるくせに目の前でいじめられてる子のこと見て見ぬふりしてたってのも気に食わないッス」

しえな「…っ!」

乙哉「なんで助けてくんなかったッスか!鳰っち、いつも苦しんでたッスよ!アンタいじめられる痛み一番良く知ってるはずでしょ!!」

しえな「そ、それは…」

乙哉「それなのになんで自分可愛さにウチのこと助けてくんなかったッスか!!!」

しえな「…」

乙哉「アンタみたいのが一番卑怯ッス!気に食わないッス!許せないッス!!」

しえな「…な、なあお前」

乙哉「なんでウチのこと…うう…うううううう……」

しえな「…も、もしかして…お前、走り…なの、か…?」

乙哉(?)「…お察しの通りッス。どうやら興奮しすぎて演技を忘れちゃったみたいッスね」

鳰「…ここまで来たらもう即席の幻術じゃ騙せないッス。解くッスよ」フッ

しえな「あ…!武智が走りに…!」

鳰「…これがウチの技術ッス」

しえな「そんな…嘘だろ、魔法みたいな…」

鳰「驚いたッスか?でも西の葛葉ならできるんッスよ」

しえな「っっっっっ!!?」

鳰「…剣持さんみたいな人でも名前くらいは知っててくれたみたいなんで話が早いッス」

しえな「た、武智は…」

鳰「なんッスか?」

しえな「…武智は、どうした?」

鳰「…殺した」

しえな「ひっ!」

鳰「…と、言ってやりたいところでしたけど」

鳰「…ウチは、黒組の裁定者ッス」

鳰「そう簡単に参加者に手を出すわけにはいかないんで。今頃まだウチの部屋で気絶してる筈ッス」

しえな「そ、そうか…良かった」

鳰「はぁ!?」

しえな「ひっ!」

鳰「良かった!?なんッスかそれ!?ウチがあの変態シリアルキラーに付き纏われて苦労してる間自分は部屋でボケーッとしてたくせに!!」

しえな「そ、それは…」

鳰「さっきも言った通り!ウチはアンタみたいのが一番虫唾走るッスよ!自分ばっかり被害者面してっ!ウチが苦しんでる間、痛みだって知ってるくせに無視決め込んでっ!」

しえな(走り…泣いてる…)

鳰「なんで庇ってくれなかったッスか!なんで助けてくれなかったッスか!なんで…なんで…!」

鳰「なんで、一言私はお前の味方だって…!その一言だけでもかけてくれたら、ウチはあんなに苦しまないで済んだのに…!!」

しえな「…」

鳰「ううううう…ううううう…ううううううーーーー!!」

しえな「…ごめん」

鳰「もう謝っても許さないッス…」

しえな「…それでも、ごめん」

鳰「…絶対許さないッス」

しえな「…いいよ、許さなくて」

鳰「…」

しえな「ボクはボクで、勝手に罪悪感感じるだけだから」

鳰「…」

しえな「許さなくていいから…」

鳰「…」

しえな「許さなくていいから、今後は私が勝手にお前の味方をすることを許してくれないか?」

鳰「…」

しえな「…危うく「集団下校」の人間としての最低限の資格を失うところだった。ボクは今後、もう絶対に目の前にあるいじめを許さないから」

鳰「…」

しえな「走りのこと、絶対に、守るから」

鳰「…勝手にするッス」

しえな「ああ。勝手にする」ギュッ

鳰「…勝手に抱きしめていいなんて言ってないッス」ギュッ

鳰(…でも、あったかいから許してやるッス…)

しえな「…」

乙哉「あ、痛った~。くっそぉ、頭ガンガンする。おのれやるじゃん鳰っち~」ガチャッ

しえな「あ」

鳰「…」

乙哉「あ、鳰っちだ。おのれさっきはよくもやってくれたな~!ナイスファイトだこんにゃろ~!」

鳰(…しくったッス。気絶する催眠かけただけで放置してきたのは大失敗ッスね)

鳰(まさかこんなに早く復活してくるとは。ウチのこと怖がる暗示でもついでにかけときゃ良かったッス!)

乙哉「おっと。残念だけど鳰っちのスタイルはもう分かってるよ。そうそう催眠術にはやられませーん。べーだ」

鳰「くっ…!」

鳰(相手の心の隙間に入り込むことで暗示にかけるウチの術は、当然相手に最初から警戒されてるとかけにくくなるッス!)

乙哉「ま、しえなちゃんを人質にされてるみたいだし今手を出すのは諦めるよ~」

鳰「それは…ちょっとだけ助かるッス」

しえな「え~っと…いや、別に人質って訳じゃないんだけど…」

乙哉「え、そうなの?え~。だったらなんで抱き合ってるのさー。いつの間にそんな仲になったの?」

しえな「えっ!?えっ!?ば、ばばばばばばか!そんなんじゃないっての!」

乙哉「いいっていいって。しえなちゃん恥ずかしがることないよ~」ニコニコ

乙哉「っていうか、私的好みの女の子断トツ3トップのうち2人が抱き合ってるとかなにこの美味しいシチュエーション!」ジュルリ

しえな「それって現状、お前には断トツで切り刻みたい子が現状3人いて、そのうちの一人がボクってことか」ゲンナリ

乙哉「そうそう!あとの二人は鳰っちと晴っちね~。あ~、でも黒組の他の子もみんなレベル高いし、捨てがたいよなぁ~」

鳰「…難儀な性癖ッスねぇ」ゲンナリ

乙哉「あ~。ここに晴っちも加えたいな~。それでそれで、みんな裸に剥いて抱き合わせて」

乙哉「誰が一番最初に刻まれたいかな~って質問して友情を確かめ合うようにお互いを庇わせあったりしてさ」

乙哉「あたしは誰を最初にチョッキンするのが美しいか決めかねて迷いに迷っちゃうの」

乙哉「そんなあたしの油断を突くように晴っちが無謀にもあたしに飛びかかってきて「みんな!逃げて!」とか言ってみんなを逃がそうとして」

乙哉「そんな晴っちの想いを受けてどうすればいいか迷った他の二人がおろおろしてる間にあたしは晴っちを組み敷いて、その柔らかい肌を堪能しつつゆっくり鋏を入れていって…」

乙哉「ハァハァハァハァ」チョキチョキチョキ

乙哉「あ、勿論二人のことも後でじっくり刻んであげるからね?」ニコッ

乙哉「はふぅ…想像しただけでもう我慢できなぁい…」クネクネ

しえな「…はぁ」

鳰「ほんっっっっっっと、難儀な性癖ッスねぇ……」

しえな「…悪い走り。今日そっちの部屋に泊めてくれないか。今日はいつもに増して首筋が寒い」

鳰「そうッスねぇ…」

鳰(…ま、いっかッス)

7号室鳰部屋

鳰「…で」

鳰「…なんでウチの部屋に武智さんも来てるッスか!?」

乙哉「え~!?だってだって~!一人で寝るの寂しいも~ん!」

しえな「ボクは興奮したお前が怖いから走りの部屋に泊めてもらいたかったんだけど…」

鳰「ウチだってさっきまで命狙ってた人と同じ部屋で寝たくないッス」

乙哉「大丈夫だよー!寝てる間にチョッキンしたら反応見れなくてつまんないじゃん?ちゃーんと起きてる時にするから!ね?ね?」

鳰「逆に寝首掻くのとかどうッスか」

しえな「それいいかもな」

乙哉「酷いっ!」

鳰「それにウチの部屋、よくよく考えたらベッド一個しかないッス」

乙哉「スルー!?」

しえな「そうだ…走りの部屋に入るのは初めてだから失念していたけど、考えてみればお前は一人部屋だったな」

乙哉「あまつさえしえなちゃんも!?」

鳰「剣持さん一人ならウチがソファとかでも良かったッスけど…あ、武智さんは床にでも寝てろッス」

しえな「いやいや。家主にそんなことをさせるのは気が引ける。ボクがソファでいいよ。武智は玄関な」

乙哉「これが弱い者達が夕暮れ、さらに弱い者をたたく理論…!お前ら少しくらいいじめられっ子の気持ちわかれー!」

鳰しえな「「アンタ(お前)が言うな!!」」

乙哉「だいたいさ!床とか玄関とかは論外として!ソファとかベッドとかそうやって境遇に格差を設けるからいじめなんかが起こるんだよ!」プンプン

鳰「いや武智さんは床ッスっよ。主にウチらの命の安全のために」

乙哉「床とか玄関とかは論外としてっ!」

しえな「ベランダって言わないだけボクらの寛容さと度胸に感謝しろよいやマジで」

乙哉「…とにかくっ!」

乙哉「あたしにいい考えがある!!」

鳰(…で、結果としてはその武智さんのいい考え(いい考えであるとは言ってないッス。少なくともウチは)に押し切られた結果、今ウチはベッドの中にいるッス)

鳰(あれからちょっと一悶着はあったッスけど、いい加減夜も更けてきて。明日も早いからってことで各自順番にシャワーで汗を流し、速攻就寝体制)

鳰(部屋は電気を消してすでに真っ暗ッス。武智さんシャワーに入ってる間に剣持さんと協力して鋏も全部取り上げたんで、ひとまず安心ッスね)

鳰(服に暗器みたいに沢山隠されてたんでもういっそ服ごと隠してやったら大騒ぎされたッス)

鳰(武士の情けでバスタオルだけは貸してやったッスけど…なんなんッスかあの子。ブラとかパンツとか、しまいには髪留めからさえ仕込み鋏がポロポロと…)

鳰(…ま、まあさすがに風呂場にまでは錆びるの嫌がって持ってってなかったみたいッスから?これでひとまずは安心…安心ッスよね?段々不安になってきたッス)

しえな「…なあ、走り」

鳰「あ…剣持さん。まだ寝てなかったッスか」

しえな「まあ…そりゃあ。こんな状態でそうそう寝れるかっていうと…」クスッ

鳰「はは…」

しえな「…ちょっと狭いな」

鳰「さすがにシングルベッドに3人は…ねえ」

乙哉「え~?名案じゃんー!なんかワクワクしない?ほら、鳰っちのお肌すべすべだよ、しえなちゃん!」

しえな「武智。ただでさえ狭いんだから暴れないで」

乙哉「え~やだつまんない~!鋏も取り上げられてセクハラも駄目とか厳しすぎ~!」

鳰(どうしてこうなったッスか…!!)

鳰(そしてこれ考えたの今週入って何度目ッスか…!!)

乙哉「あ、もしかしてしえなちゃん妬いてるの?大丈夫だよ、あたしは4人までなら一人で満足させてあげれるから。うりうり~」

しえな「ちょ、馬鹿!どこ触って…おい!なんで服脱がそうとしてるんだ!」

乙哉「あれ~?もうパジャマのボタン解けちゃったよ~あれあれ~?これな~んだ、しえなちゃんのブラジャー」ニヤニヤ

しえな「こいつほんと悪い意味で器用だな!!」

乙哉「はい。それじゃこのおべべは全部お役御免でーす。ぽーい」ポーイ

しえな「あっ…こら!」

乙哉「ひょっひょっひょ」

しえな「まったく…あんな遠くに投げて。取りに行くのも一仕事…おい!離せ!」

乙哉「え~?なんのことですかぁ~?」

しえな「とーぼーけーるーなー!腰に抱きつくな!服を取りにいけないだろ!」

乙哉「しえなちゃん柔らかいなぁ~」

しえな「話をきけー!」

乙哉「すりすりすり。はぁ~あったかくて柔らかくてすべすべだぁ…チョッキンしたいよぉ」

しえな「このっ!ならせめてバスタオル貰うっ!」グイッ

乙哉「おっとぉ!これは渡せないなぁ♪」ギューッ

しえな「人の服勝手に脱がせておいてなんだそれっ!このっ!」

乙哉「へへーん。悔しかったら私を脱がせてみろ~」

キャッキャッ

鳰「…ふぅ」ゴロン

鳰(なんだかんだお二人、仲いいッスねぇ…)

鳰(なんか入ってけそうにないッス。ちょっと、いえかなり疎外感…)

鳰(っていうか、お前ら自分の部屋でやれッス)

キャッキャッ

しえな「あっ…このっ!どこ触って…」

乙哉「ふふふー。チョッキンチョッキン。鋏がなくても挟めるんだよ~?こうやって、指で、ね?」

しえな「くぅ…っ!」

乙哉「おーおー。声押し殺して耐えるねー。でもこれはどうかな?ほら、チョッキン」

しえな「んんっ!」

乙哉「はふぅ…しえなちゃん可愛いよぉ…」ジュルリ

しえな「よだれ、垂らすな…はしたない…」

乙哉「おっと、ごめんごめん。もったいないよね。それじゃあこのあたしの口の中に溜まったえっちなお汁はしえなちゃんに…」

しえな「んふ…んん…」

チュッ…チュパ…クチュ…

鳰(…あー)

鳰(こいつら寝た後やっぱ殺そうかなッス)

鳰(なんかどんどん自分の心が死んでくのがわかるッス)

鳰(っていうか背中越しに何やってるんッスかこの人ら)

鳰(すごいチュパチュパいってるんッスけど)

鳰(人の布団でおっ始めてんじゃねぇッス)

鳰(変な汁とか付いてたらどうしてくれるッスか)

鳰(明日絶対布団買い換えようッス)

鳰「…」

鳰(…はぁ)

しえな「んっ…んっ…」チュプチュプ

乙哉「ふー…ふー…」チュプチュプ

鳰「…」ゴソゴソ

鳰「…んっ」ビクッ

鳰「…」モゾモゾモゾ

鳰「……~~っ!」ビクッ

鳰(…はぁ)

鳰(ウチ…何やってるんッスかね)

鳰(折角友達になれたっぽいのに…)クチュッ

鳰(その日のうちに友達の情事、横で感じながら自分慰めるとか…)クチュクチュクチュ

鳰「んっ…!」ブルブルッ

鳰「…っ」クチュクチュッ

鳰(…でも、これ、すげー…いいッス…!んっ…!)クチュクチュクチュ

鳰(あっ…あっ!あっ!ヤバイッス!これ…ヤバイッス…!んんんんんんう~~~っっっっっ!!)グチャグチャグチャ

しえな「ちょっ!武智!これ以上はヤバイって!大きな出る!走りが起きちゃう!」

乙哉「大丈夫だって!ここまでやっても全然起きてくるそぶりないし一度寝たらなかなか起きないタイプなんでしょ~」

しえな「あっ…!ああああっ!!だけっ…どっ!」

乙哉「よいっしょ…それじゃあ、いくよー!」

しえな「~~~~~~~~っ!!」ビクビクビクッ

鳰「…」

乙哉「はふ…やりきったぁ」

しえな「ばか…」チュッ

乙哉「えへへ」

鳰「…」

鳰(イク前に賢者という名の愚者になってしまったッス)

鳰(あ~~~。ま~た死にたくなってきた…)

乙哉「…しえなちゃん優しいじゃん。しえなちゃんからキスしてくれるなんて」

しえな「…心境の変化かな。あと、お前を利用してやろうと思って。お前のボクに対する好意を利用してやる」

鳰(…ん?)

乙哉「言うねぇ~。…利用?」

しえな「うん。走りのこと」

鳰(えっ)

乙哉「…もしかしていじめのこと?」

鳰(…)

しえな「うん。ボク一人じゃ、ちょっと荷が重いかなって。手伝ってくれ」

鳰(…剣持さん)ジーン

乙哉「仕方ないなぁ。惚れた弱みだ。あたしも手伝ってやるか」チュッ

鳰(武智さんも…)グスッ

しえな「ありがと。迷惑かける。ボクはいじめを許してはいけないんだ」

鳰(…すみません、お二方。ウチ、ちょっと拗ねてたッス。お二人はやっぱ…天使ッス!)

乙哉「うん…あたしはそんな優しいしえなちゃん、好きだな…チョッキンしたい」

しえな「ふふっ…ぶち壊しだ、馬鹿。…髪の毛くらいは許してやるよ」

鳰(ありがとうッス!ありがとうッス!やっぱりお二人はウチの味方…)

乙哉「ほんとっ!?」ガバッ

鳰(!?)

しえな「あっ…こら、また…!」

乙哉「第二ラウンド!第二ラウンド!」

しえな「仕方ないなぁ…」

チュッ…チュッ…

鳰「…」

しえな「んっ…こっちだっていつまでもやられっぱなしじゃないんだぞ」チュッ

乙哉「えっ…んっ!?…やるねぇしえなちゃん」

ギシッ…ギシッ…ギシッ…

鳰「…」

鳰「…」モゾッ

鳰「…」クチュッ

鳰「…」

鳰「…」クチュクチュクチュクチュクチュ

鳰「~~~~っ!」ビクビクッ

鳰「…」

鳰「…ふぅ」

ギシギシギシギシ

鳰「…」

鳰(あはははは…ちょっとこれ以上の惨めさは今のウチには想像できないかな~)

鳰(はは…ははははは…)

鳰「…はぁ」

             ___
        x彡-‐――-ミ 、
        /            ヽ\
      /                Yハ
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  / /  /    / y=ミ、    / / 云=气x__        `、
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   人 {   / '" ̄            ̄~"冖"/j/  }/            ヽ
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  `~( \ (_\   弋           「`ー〉    人/ /  /  ノ_/
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            `く:::::::::L:}><{::::l::::::::::::::/::::::ヽ::ヽ-‐ 〉
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翌朝

鳰「ふあぁ~…」

乙哉「おっはよー鳰っち!昨日はぐっすりだったね~」

しえな「…ぉはよ」ウツラウツラ

鳰「おはようッス、おふたりとも」

鳰(ンなわけないッス。結局あれから一睡もしてないッスからね)

しえな「ふわぁ……ん…メガネメガネ…」ゴソゴソ

乙哉「んもうしえなちゃんったらだらしないなぁ。ほら、メガネはここだよ」ポン

しえな「ん…」フラフラ

乙哉「こら~!ちゃんと持て~!」

鳰(無理もないッス。結局この二人、朝方まで乳繰りあってたッス。むしろなんで武智さんこんな元気ッスか。ってかツヤツヤしてるッスか)

乙哉「あれ?でも鳰っちもよく見たらちょっとまぶた重そうじゃない?…そっか、やっぱり今まではいじめのことで夜も眠れないくらい苦しんでたのか」

鳰(確かに不眠症気味でしたけど、昨夜に限ってはそれはあんま関係ないと思うッス)

鳰(…ちょっと複雑ではありましたけど、あんなに安心して横になれたのは久しぶりだったッスから)

鳰(…声に出して調子に乗られてまたウチのベッドで乳繰り合われても困るんで言わないッスけど)

乙哉「しっかし、鳰っち昨日は勿体無いことしたねぇ。もうちょっと頑張って起きてたら一緒に楽しいことしてあげれたのに」ニコッ

鳰「」

鳰(…え。なんッスか。もしかしてウチ、昨日ガチで貞操奪われそうなピンチだったッスか)

しえな「ん~…よっし、起きた。起きたぞー。こら武智。走りが困ってるじゃないか。それに眠ってた走りに昨日のこと言っても…」

鳰「…ゆうべはおたのしみだったみたいッスね」

しえな「起きてたのか!?どれくらい起きてた!?もしかしてうるさくして起こしたか!?それとも最初から…」

鳰「…ノーコメントッス」

しえな「はううう…」ヘナヘナ

しえな「頼む走り。このことは3人の秘密に…」

鳰「いやぁ…別に言うような相手いないんで安心して欲しいッス」

しえな「…」

乙哉「え~?だって、三人でやったら絶対気持ちいいよ~」

しえな「お前はそうやって前の話蒸し返して!」

乙哉「いいじゃんいーじゃん~。そうだ!今晩もしえなちゃんと2人で来るからさ!今晩は最初から3人でシようよ~」

鳰「…この人、ほんと色々吹っ切れたお人ッスね。自由すぎて段々羨ましくなってきたッス」

しえな「引き返せ走り!その道はヤバイ!!」

乙哉「そんなこと言って。しえなちゃんあたしを独り占めできなくなるの嫌なんじゃないの~?もー独占欲強いんだから~」ペロッ

しえな「ひゃんっ!」

鳰「…ちなみに興味本位で聞くんッスけど、お二人があんな関係になった経緯ってどんな感じだったッスか」

しえな「…それは、武智が」

乙哉「そりゃ勿論、嫌がるノンケのしえなちゃんをあたしのこのテクニックで骨抜きに…にゅふふふふ」

乙哉「やっぱさ~。最初から同性愛の女の子も良いけど、一番は普通の性癖の処女だと思うんだ~」

乙哉「『同性愛なんて怖いわ!私はいつかやってくる白馬の王子さまの為にこの純血を捧げるの!』って顔してる可憐な一輪の花を手折るこの感触も、チョッキンとはまた違う快楽だよねぇ~」

乙哉「まあ最終的にはチョッキンもするんだけど」

しえな「うう…着々とコイツの思い通りに調教されていってる気がして我が身が不安になってくる…」

鳰「まあ、だいたいそんな感じだったろうとは思ったッス。そんなことよりそろそろ支度しないと学校遅刻しそうッスね。いい加減ベッドから出ましょうか」

しえな「そうだな。ああ、ついでに登校までの時間を利用して今後のことを一緒に考えようか。作戦会議だ」

鳰「えっ?」

乙哉「それもそうだね。目標は鳰っちのいじめを無くすことかな?」

鳰「お二方…」

しえな「ああ。まずはどうやっていじめを無くすか、方法を考えなければいけないけれど…」

乙哉「チョッキン」

しえな「それはもういい。3人で暗殺者9人敵に回して勝てるわけないだろ」

乙哉「いやいや各個撃破していけばなんとか…」

しえな「だからそう都合よくだな~!」

鳰「剣持さん…武智さん…」グスッ

しえな「あ、そうだ。それで思い出した。言おうと思ってたことがあるんだけどな、走り」

鳰「はい?」

しえな「…」

鳰「…?」

しえな「…えーっと、だな」

鳰「はあ」

しえな「その…あれだ」

鳰「はい」

しえな「ほら、その…わかるだろ?」モゴモゴ

鳰(わかんねーッス…)

しえな「あー…だからな!」

しえな「…そ、その…友達になったんだから」モゴモゴ

しえな「いつまでも名字呼びっていうのもその…あれだと思うし」モニョモニョ

鳰「…はあ」

しえな「…『しえな』でいい」ボソッ

鳰「え?」

しえな「…」

鳰「…え?今、なんて…」

しえな「な、なんでもないっ!」

しえな「…」カァァァ

乙哉「そうだねー!あたしも乙哉って呼んで良いよー!なんだったらおとやんとかでも!」

しえな「うわわわわ!」

鳰「あ…」

乙哉「もー。しえなちゃんったらこんな恥ずかしいこと格好つけて言っちゃって~」ナデナデ

しえな「あ、あううう…」

鳰「えっと…」

鳰「…ありがとうッス。しえなさん。乙哉さん。良かったら、ウチのことも鳰って呼んで下さいッス」

同時刻
1号室兎晴部屋

晴「おはよー!兎角さん!」

兎角「…ああ。おはよう、晴」

晴「いい朝だねー。今日もいっぱいいい事が起こりそう!」

兎角「そうか?別になんのこともない普通の朝だと思うが」

晴「ううん。晴にとってはこうして気持よく朝を迎えられるのはとても幸せなことで、それはきっと素敵な一日のはじまりなのです」

兎角「よくわからん…」

晴「特に黒組に来てからは、毎日が平和ですっごく楽しいんだもん。みんなも晴によくしてくれるし!」

兎角「油断はするなよ。確かにこの数ヶ月は誰も仕掛けてくる素振りは見せないが、あいつらの本質は全員暗殺者だ」

晴「そうなのかな?でも、実はみんなもここの居心地が良くて諦めてくれたっていう可能性も…」

兎角「甘い。そんなわけないだろう。お前の隙を伺っているに過ぎないに決まってる」

晴「うー…でもでも…」

兎角「大体お前は、何を考えてるんだ。昨日は放課後すぐに私にさえ声をかけずに桐ケ谷と何をしに行っていた?」

晴「えーっと…柩ちゃんが学園の池に大きなお魚さんがいるのを見たって言うので一緒に観察に行ってました…」

兎角「はぁ…あいつだって見た目は幼くとも暗殺者だぞ。二人きりになったところで襲われていたらどうするつもりだったんだ」

晴「うぐ…」

兎角「一昨日だって英の部屋に一人で遊びに行って紅茶を馳走になったと言っていたな。一昨日は勝手に犬飼をうちの部屋に呼んで一緒にお茶会だ」

兎角「その前は武智と植物園だったか?あの時は私も近くにいたから一緒に行けたのでまだ良かったが…」

晴「ぶー。兎角さん今日は朝からお説教臭いです!…でも、すみません。今後はちょっと気をつけます」

兎角「まったく…まあ、私も言い過ぎた。お前がクラスの連中と仲良くしたいと思ってるのは理解しているつもりだ」

兎角「無駄だと思うがやれるだけやってみればいい。だが油断しすぎてあっさり死なれては私もつまらないからな」

晴「えへへ…兎角さんなんだかんだ優しい…」

兎角「ふん。…で、今日は誰とどんな約束をしているんだ?」

晴「え?」

兎角「どうせお前のことだ。今日だってとっくに誰かと約束を取り付けていることだろう。今日は私も同行するからな」

晴「流石兎角さん。おみそれしました…晴の行動パターン読まれちゃってます!うん。兎角さんがいてくれると心強い!えへへ」

兎角「調子のいい…まあいい。で、誰とどこに何をしにいくつもりだった?」

晴「えーっとですね…」

晴「今日は学校帰りに首藤さんと小物を買いに行く約束をしていました♪」

             ___
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      /                Yハ
                    } }
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          >''" ̄ ̄/  ⌒\ ̄ ̄`~、
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   人 {   / 弋;;;;こヽ         ̄ ̄ /j/        ヽ     ヽ
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今日は精神的にヘビーなの書ける気しないんでおやすみッス
明日も多分帰ってこれないんでおやすみっぽいッス

以上業務報告でした~

今日はおやすみと言ったッスな
あれは嘘ッス

テニス見てテンション上がったので待ち時間に書き溜めたものを含めちょっとだけ投下するッス
あとNHKで見てるのでネタバレだけはマジで真剣にやめてッス

始業時間前
教室

しえな「…」

乙哉「…」

鳰「…」

晴「それでね、鳰。今日は晴、首藤さんと一緒にお買い物に行くことになってるんだけど…」

鳰「へーそうなんッスか~。いいねー、晴。何買いに行くの?」

晴「えへへ。それは秘密。楽しみにしててね~」

鳰「ん?楽しみ?って、なんでウチが…」

晴「はうっ!」ビクッ

鳰「おわっ!?」ビクッ

晴「な、なんでもないよっ!なんでもない!えっと…あ、アクセサリー?うん、アクセサリー買いに行くの!」

鳰「は、はぁ…」

鳰(ぜってー嘘ッス。晴ちゃんなん隠してる?ウチに知らせたくないもの買いに行くんッスかねぇ…)

晴「そ、そうそう!アクセサリー!あ、あははは…」

鳰「…怪しい」ジトー

晴「ううう…」

鳰「何買いに行くんッスか~?気になる~。ウチに言えないもの買うんッスか~?」ニヤニヤ

晴「ううううう…鳰がいじわるだ…」

しえな「…」ジー

乙哉「ちょいちょい」ツンツン

しえな「…ん。なんだ?武智」

乙哉「なんだっていうか…なんなの」

しえな「ん?だから何がだ」

乙哉「いや。だってさ。晴っちと鳰っちが楽しく会話してるのはいいけど」

乙哉「せっかく昨日から鳰っち守るぞーって結論に至ったのに、あたしらなんで普段通り遠巻きに見ているのだい?しえなちゃん」

しえな「あのなぁ。それはさっき説明しただろ」ハァ

しえな「作戦だよ」

乙哉「そうだっけ。あー…ちょっと待って、今思い出すから」

乙哉「えーっと確か…」


しえな『まずは、いじめの首謀者を見つけるのが先決だ』


乙哉「うん、確か鳰っちの部屋を出る前にしえなちゃんはこんなこと言ってたような気がする」

乙哉「それから何話したっけ?」

鳰『首謀者…ッスか?』

しえな『ああ。走りいじめの首謀者だ。いじめっていうのは、たいてい首謀者がいるものなんだ』

しえな『そして首謀者さえなんとかしてしまえば、いじめは収まる可能性がかなり高い』

乙哉『それって経験談?』

しえな『うるさいっ!…まあ、他にも色々な。仮にも対いじめ組織みたいなものに属していた身だ。対策方法はこれまでも色々考えてきたんだよ』

しえな『で、走りは心当たりあるか?それがわかってるなら話はかなり早い。わからないなら主犯格だけでもいいぞ』

しえな『…ボクは見て見ぬふり、武智は連中とは関係ない独自の粘着ストーカーだっただからあいつらとは繋がってなかった』

しえな『悔しいけどあいつらのうち誰がどんなことを走りにしてきたのか、よくわかっていないんだ』

鳰『う~ん…そうッスねぇ。誰が首謀者かって言われるとちょっとわかんないッスけど…』

鳰『あ、でもよくいじめてくる人っていうんッスか。そういう人らのことを主犯格っていうなら、当然のことながらわかってるッスよ』

乙哉『へ~。ちなみに誰?英さんがよくパシってるのは知ってる』

しえな『ボクは桐ケ谷がちょっかいをかけてた場面がよく目に付いたな』

しえな『あとはなんといっても犬飼だな。よく罵詈雑言を浴びながら小突かれてたよな。あれは酷かった』

乙哉『あれは鳰っちも悪いよ~。殴られてるのにヘラヘラ笑っちゃってさ~。殴り返してやればいいのに』

鳰『そんなことしたらリンチ確定じゃないッスか…それにあの人しつこいし』

しえな『そうだな…いじめっこっていうのはまず雰囲気からして反撃しにくいものを出してるしな』

乙哉『そういうものなのかぁ…』

しえな『ボクの予想だと、あいつが首謀者の可能性が高いんだがな』

乙哉『そうなの?だったらダメ元でチョッキンしちゃえばいいじゃん。違ったら次の人~って感じで』

しえな『馬鹿。そんなことしても駄目だ。違ったら真の首謀者を完全に敵に回すだけだし』

しえな『そもそも相手は普通の学生じゃなくて暗殺者だぞ。返り討ちにあったらどうするんだ』

乙哉『いやぁ~負けないっしょ。こっちは3人だよ?それもしえなちゃんはともかく二人はあたしと…西の葛葉たる鳰っち』

乙哉『闇討ちすれば楽勝だって』

しえな『…ボクがともかく扱いなのはとりあえず置いておくが、多分走りは今回戦力にならんぞ』

乙哉『へ?』

鳰『…』

乙哉『あれ…なんでそんな怯えた目でブルってんの?鳰っち。西の葛葉サンともあろうものが…』

乙哉『って、あたしは暗殺者の事情なんてよく知らないんだけど。なんか凄い一族だってのは知ってるよ?』

しえな『さっきボクが教えたからな』

乙哉『今は知ってるし!』

鳰『…駄目ッス。その…あの人の前に立って戦うことを想像したら…か、身体の震えが…』ガタガタ

しえな『…長い間いじめられてきたせいで、潜在意識があいつらに対する恐怖を感じてしまっているんだろう』

鳰『ひっ…や、やッス…怖い…怖いッス…!う、うううう……ううううう……』ガタガタ

乙哉『鳰っち…』

鳰「ひいいいいい!あっ!やだっ!やだやだっ!やめてっ!」

しえな『可哀想に…こんなになるまで我慢し続けていたんだな。すまない、ボクがもう少し早く勇気を出して歩み寄っていれば…』

乙哉『…どうどう。大丈夫だよ。ここには怖い子はいないから』ギュッ

鳰『ふー…!ふー…!』ガタガタ

しえな『大丈夫だ、走り。お前があいつらと戦う必要はない。ボクらに任せろ』

しえな『お前は自分の身を守って、もう少しだけ我慢していてくれればいい』

しえな『そうしたらボクらが絶対にお前を助けだしてやるから…』

乙哉『…やだ。しえなちゃん格好いい…』

しえな『今そういうこと言うな!』

乙哉『え~?でも格好良かったんだもん!珍しく!』

しえな『珍しくとか言うな~!せっかく…あーーーー!!』

鳰『…』

ギャーギャー

鳰『…ぷっ』

しえな『!!』

鳰『…あはは』

鳰『あはははは…す、すみませんッス』

鳰『でもお二人ちょっとおもしろすぎッス。漫才みたい』クスクス

しえな『…』

乙哉『落ち着いた?』

鳰『はい。…すみません、ご迷惑をおかけして』

しえな『ん。大丈夫そうだな』

しえな『よし、それじゃあまずは当面の話だ。さっきあがった名前の連中に優先して注意を払おう。そして万が一走りに何かしようとしてきたら、さり気なく割って入る』

しえな『でもまだ面と向かって敵対はしちゃ駄目だぞ。走りには悪いけど、完全に走りの味方をしているようには見せかけるわけにはいかない』

しえな『あくまでさりげなくだ。もう少しだけ苦労をかけるけど、ボク達は昨日までとあまり変わらないようなスタンスを取る』

乙哉『はいはーい。質問~』

しえな『なんだ?武智』

乙哉『なんですぐに鳰っちのこと庇ってあげちゃ駄目なわけ?』

乙哉『勝てるか勝てないかで考えなくても、どうせ最後には首謀者とは戦わなきゃいけないわけだしいじめてくる奴らを直に片っ端からチョッキンしてけばいいじゃない』

しえな『却下』

乙哉『ええー!なんで~!?』

しえな『敵はボクら以外の黒組全員だぞ?…いや一ノ瀬は違うか』

しえな『でも、ほぼ全員と言っていい。それも暗殺訓練を得た生粋の暗殺者たちだ』

しえな『そんな連中と反抗的な態度で敵対すれば最悪血を見ることになる。それも戦力的に言えば一方的なリンチだ』

乙哉『うー…』

しえな『だからこそ、確実に首謀者を見つけ出してそいつを叩く』

しえな『まあ…話くらいは聞いてやってもいいだろう。どうして走りをいじめるのか、ってな』

しえな『その返答次第では…武智。ボクが許可する』

乙哉『ん~?』

しえな『好きにしてもいいぞ』

乙哉『…』

乙哉『…くすっ』

乙哉『それは…嬉しいなぁ』クスクスクス

乙哉『そうしたら、た~っぷり準備して、たぁ~っぷり時間をかけて』

乙哉『たぁあああああっぷり、可愛がってあげなきゃね』チョキチョキ

乙哉「うん。思い出した。首謀者はチョッキンしていいから、泳がせて様子を見ながら確実に割り出さないと駄目なんだっけか」ニヤニヤ

しえな「細部が微妙にお前の都合の良いよう改変されている気もしないでもないが…まあ、概ねその通りだ」

乙哉「だからそれまでの間は我慢しなきゃ駄目なんだよね~。あ~焦らさないで欲しいよ、まったくもう」チョキチョキ

しえな「武智。もうすぐ先生が来る。鋏しまえ」

乙哉「とは言っても…今は晴っちが付きっきりだから誰も手出せてないよね」

しえな「…そうだな。連中も本来のターゲットの前だと調子が狂うのか、一ノ瀬のいるところでは走りにちょっかいを出さないんだ」

乙哉「怖いところ見せて嫌われたらお仕事しにくくなっちゃうもんね?」

しえな「東もそうだな。守護対象、それも同室相手に嫌われるのは避けたいだろう」

乙哉「あ。それで思い出した」

しえな「ん?」

乙哉「しえなちゃんは犬飼が首謀者じゃないかってあたりつけてるんだっけ?」

しえな「あくまで現状一番可能性が高そうな奴ってことだけどな。それがどうした?」

乙哉「あたしの予想は違うんだな~」

しえな「何?」

乙哉「まあ、特に理由があるってわけじゃなくて、これは勘だけどね?」

しえな「興味深いな。ならお前の予想だと誰なんだ?いじめの主犯格は」

乙哉「ふっふっふ…」

しえな「…なんだよ。その含みを持った笑いは」

チョンチョン

晴「?」

涼「晴ちゃんや。もうすぐホームルームの時間じゃぞ」

晴「あっ、いけない!それじゃあ鳰、またあとでね~」

鳰「うん。またね~」

鳰(ふう…)

鳰(今日は晴ちゃんが話に夢中でずっとそばに居てくれたから朝は誰にもなんにもされなかったッス)

鳰(昨日の夜から…ちょっとだけ運回ってきたッスかね~)

晴「~♪」

涼「…あと、ちょっといいかいのう?」ボソッ

晴「なに?首藤さん」

涼「ホームルームが終わったら、ワシと一緒に放課後回る店について二人で作戦会議をせんか?」ボソボソ

涼「誰にも邪魔されんよう別の教室での」ニヤッ

晴「…はい!」ニコッ

鳰「…?晴ちゃん?」

晴「ふふふ…なんでもないよ♪」

鳰「はぁ…」

晴「ふふふふふ…」ニヤニヤ

鳰「…?……?」

涼「…」チラッ

兎角「…」コクン

伊助「…」ニヤッ

純恋子「…」クスッ

柩「…」クスクス

真昼「走り鳰…ブサイク…いじめ…泣かす…殺す…学校辞めろ…」ブツブツ

千足「…」

春紀「…」

香子「…」

溝呂木「みんなおはよう!今日も授業を始めるぞー!!」ガラッ

香子「起立!」

ガタッ

乙哉「首藤涼…」ボソッ

しえな「え?」

乙哉「一番いろいろ隠してて胡散臭いのはあいつかな…って」

しえな「…」

乙哉「ま、ほんとにただの勘で根拠なんかないんだけどね」

乙哉「一番底知れないっつーか…」

乙哉「一番何考えてるかわかんないから」

しえな「…どうなんだろうな」

しえな「なんにせよいじめは許さないし首謀者は必ずボクが見つけ出す」

しえな「必ずだ」

溝呂木「それじゃあ朝のホームルームはここまで!」

溝呂木「おっとそうだ。次は生物の小テストだ。10分の休憩時間の間によく最終確認しておくんだぞ」

鳰「げっ」

しえな「あっ」

乙哉「うげ」

伊介「やだぁ。伊介テストきら~い」

溝呂木「そうは言ってもこれは前々から予告していたテストだからなぁ~」

溝呂木「じゃ、またあとでな」

香子「起立。気をつけ。礼」

ガタガタッ

鳰(やっべ~ッス。昨日は色々ありすぎてテストのこと完全に忘れてたッス)

しえな(しまった…完全に忘れてた)

乙哉(覚えてたけど二人に覚えてるか確認するの忘れてた)

鳰「…ふ~」

鳰(まあ今更じたばた足掻いてもしゃーないッスね。大人しく出たとこ勝負するッスよ)

鳰(それよりもこれからテストならみんなウチにちょっかい出す余裕がなくなってまた楽できるかも…)

ガラッ

鳰「ん?」

晴「」コソコソ

涼「」スタスタ

鳰(あれ…晴ちゃん首藤さんと二人でどこ行くッスか?)

ガラッ

鳰(あれあれ…大丈夫ッスか?晴ちゃん。次テストッスよ~)

ピシャッ

鳰(休み時間10分しかないッスよ。大丈夫?トイレかな?でもそれだったらウチのこと誘ってくれても…)

鳰(…あ)

伊介「くすっ。はぁ~い」

鳰「…あ、い、伊介さん」

伊介「伊介様。何回言ったら覚えるの?この鳥頭」

鳰「す、すみませんッス。伊介様」

伊介「相変わらずムカつくぅ」クスクス

鳰「あ、あははは…すみません」

伊介「だぇ~め。許してあげない。そうやってヘラヘラしてるのもムカつく」

鳰「そ、そんなぁ。えへへへ…」

伊介「その媚びた声も」クスッ

伊介「殺しちゃおうかしらぁ」クスクスクス

鳰「や、やだなぁ~。冗談きついッスよぉ…」

伊介「…」

鳰「ひっ…」

しえな(きたか。一ノ瀬がいなくなったと思ったら早速だったな)

乙哉「…」

伊介「ねえパシリ。伊介、喉乾いちゃった。ミネラルウォーター買ってきて。ダッシュで」

鳰「え。でももうすぐ授業…」

伊介「伊介喉乾いちゃったぁ」

鳰「…」

伊介「買ってきてくれる?伊介、金星寮食堂にだけ売ってる深層海洋水がいい」

鳰「…」

伊介「早く買ってこい、殺すぞ♪」

鳰「…で、でも今から行ったらどう考えてもテストまでに間に合わないし…」ゴニョゴニョ

伊介「アンタのテストがどうなろうが伊介知らな~い。それよりいっぱい話しちゃってどんどん喉乾いてきてるんだけど」

鳰「で、でも…」

伊介「いい加減にしなさいよ。本気で殺すよ?」

鳰「…」

伊介「うつむいて急ぎなさい」グイッ

鳰「痛たたたっ!やめてッス!髪の毛掴むのは…いたたっ!」

伊介「ダサい髪型ぁ。芋臭いのよ。ナイフあるし、いっそバッサリここで切っちゃおうか?」

鳰「や、やッスそれだけは!わかりました!行きますからそれだけは勘弁して欲しいッス!」

伊介「わかればいいのよ。ダッシュね」グイッ

ゴツッ

鳰「あうっ!」

しえな「改めて見ると酷いな。ボクはこんなのを見て見ぬふりしていたのか」

しえな「でもちょっとだけ我慢してくれ、走り。すぐにボクらが首謀者を見つけ出すから…」

乙哉「…」ガタッ

乙哉「…」ツカツカ

しえな「…武智?」

乙哉「ねえねえ、犬飼」

しえな「お、おい!」

伊介「ん~?武智?」

鳰「武智…さん…」

乙哉「そんなに喉乾いてるなら別に鳰っちパシリにしないでも、あたしが水あげるよ」

しえな「ちょっと待て!おい!何する気だ!?」

伊介「え~?なにそれ、きも~い。猟奇殺人犯のくれた水なんか何入ってるかわかんねーし飲む気しねーっつーの♪」

伊介「ほらパシリ。いつまでも呆けてねーで早く行け♪」

乙哉「まあまあそう言わずにさぁ…」グイッ

しえな「おい!聞いてるのか武智!」

乙哉「お前は花瓶の水でも被ってろ」

バシャッ

鳰「っ!!」


                        -―__ ―-- 、

                        ''" ̄ ̄    ̄ ̄"''~ミx、
                   /                     ヽY
                  /                  }}
                                     //
                                _  /
                          lヽ   _ / }'" ̄   ̄>―- 、
                         } } ''"  / /   / /   ヽ   \
                    >''"j lr~-、/   / /     l    \
                 /  /  / / //    / //      }     ヽ   きょうはここまでにしとくッス
                  / / __/   {ノ、/ {/フ/ //       j     l    Y  あとしえなちゃんと乙哉ちゃんがやたら良い子になってるけど
              ////{ソ         / / , /        ハ   l     i  どうしてこんなことになってるのか>>1自身にも謎ッス
              x-‐/ 八     _ノ //  l j     / /!   |/ }  l
                /   八   \/}  / /   { l    / / l   l l l l   l  /}
          /      \   // /_ { l 八l    / / !   l l l l‐ rヘ/ /
          /            ̄ノ //   ̄lヽl   l  /l / | ( \ ノ } |j {
       >'"              /  /    `ト l  l  / j7"⌒`ト \ \ {ノし  }
   >'"             >''"    {、,,二,,,_ ヽ l  / -‐    !   /ヽ      ノ}\__
  /         >'"   {/{   \ l`~⌒`ヾ、 l/  r‐_,,,,__  | /  \_ /(/ } ヽ
. /       _彡''"\  ヽ { l  λ\       、    '"⌒ヾミ-l /  / 込_./  /  l
〈       / ノ寸へ )ノ人 _人  人     、_...     、_/j/ / / } \ _ /    l
 `<     /   l l::::: ̄ ̄::::::::::::ヽ トl\   {/⌒`ー''    `ー--‐彡 / 乂         l
    `<      l l::::::::::::::::::::::::::::::::)ノ:::::/\ 乂_ノ    //  / / ノ/\         l
       `<   ノ ハ::::::::::::::::::::::::/::::::::/  {\_   -‐'"/:::/ /-―-、__ノ)ヽ       八
          \/ /::::::::::::::::::l::/:::::/⌒\  乂 _/  /::::::{(:::l:::::::::::::::::::::: ̄/ V       ヽ
         / /:::::::::::::::::l:::く::::::::::l    \/ l ハ   斗―┐::::l::::::::::::::::::::::::/ / /{         ∧
         └~ミ::::::::::::lノ:::\::::}     ヽ-r'''" ̄    /:::::::l:::::::::::::::::::::/ / /( \        ∧
                 \::::/:::::::::::::>!      人/       /::::::::::l:::/::::::::::::/ /               }
                /::::::::::/:::{    // l\    /:::::::_l/:::::::::::::/ /_   __    /
                {::::::/::::く└‐'''"  /  l  ヽ  ∧::::「 ̄::::l:::::::::::::::{ {ソ  ̄ ̄    ̄ ̄
               l:::::::\::::::::: ̄\/   l   ヽ/__}::::l::::::::::}:::/ ̄ ̄
              八::::::::::\:::::::::::::::l    l/ ̄::::::::::::::l:::::::::j/
                 ヽ::::::::::::\::::::::::l   /:::::::::::::::::::::::斗::::::/
                  l\::::::::::::\:::::l  /::::::::::::>'''":::::::::::/
                 l:::::::::::::::::::::::\l /::::>'"::::::::::::::::::/
                 l:::::::::::::::::::::::::::::}/::::::::::::::::::::::::::/

永らくお待たせして本当申し訳ないッス
明日…明日再開するからちょっと待ってくださいッス…

鳰(ウチが絡んできた乙哉さんに怯えてたこの瞬間、武智さんは誰も予想だにしなかった行動を取ったんッス)

ポタッ・・・ポタッ・・・

鳰「あ…」

伊介「…」

乙哉「…」

鳰(武智さんは突如立ち上がり、ウチの席でウチに絡んでる伊介さんめがけて教室に生けてあった花瓶の水をおもいっきりぶち撒けたッス)

鳰(不意打ち気味にその水を受けた伊介さんが、服をびしょびしょに濡らして一瞬呆気にとられたような顔をしていて…)

しえな「…なんてこった」

鳰(後ろの方で剣持さんがそう呟いてるのが聞こえたッス。でもそれはウチが助けられたのが悪いとかそういうことではなく)

鳰(当初の約束ではいじめの主犯が割れるまで様子を見るはずだったのに、その計画が一瞬で台無しになったからッス)

伊介「…ふふっ」

鳰(びしょ濡れになったまま、身体にまとわりついたお花を振り払うこともなく。いえ、水をかけられた瞬間から微動だにすることなく、伊介さんが笑ったッス)

伊介「…ふふふふふ」

伊介「あははははははは」

鳰(その笑いは…なんていうか、とても恐ろしい笑いだったッス。愉快で仕方ないといった感じの)

鳰(でも目だけが全然おもしろくないって主張して、武智さんの顔を睨みつけて…)

伊介「あははははははははははははははははは!!」

鳰(そうやって教室の空気が一瞬で凍るような高笑いをあげ、ほぼ藪睨みで武智さんの顔を見た後)

伊介「…あ~」

鳰(額に手を当て急に天を仰ぐように首を上げ、何かを考えるように呟いて)

乙哉「…」

鳰(そんな伊介さんを、ただ一人武智さんだけが彼女に優るとも劣らないくらい怖い目で睨みつけていて…)

鳰(しばらくそのまま時間が経過した後、伊介さんが今度は何かを嘆くように落胆した声を出して顔を下ろし、再び武智さんの顔を見たッス)

伊介「あ~あ」

乙哉「…」

伊介「…あーあ。あーあ。あーーーーあ~~~」

鳰(そう残念そうな声音喉を鳴らしながら、髪をひとつかき上げ、身体にまとわりついた花の残骸を摘んで捨てていく伊介さんが)

伊介「…っ!」グイッ

乙哉「…」

鳰(急にスイッチが入ったかのような勢いで、すさまじいスピードで武智さんの胸ぐらを掴みあげて言ったッス)

伊介「なにすんの?♪殺すぞ」

乙哉「なるほど、ね。こんな感じなのか。悪くないな」

鳰(対する武智さんはそんな伊介さんの噛みつかんばかりの形相にも涼しい顔で独り言を呟いていて)

伊介「ふふふふ…答えになってなぁい♪何ひとりごと呟いてんの、殺すぞ♪」

乙哉「うんうん。いいねゾクゾクするよこれ」

鳰(苛立った伊介さんの言葉も受け流し)

伊介「ふふふ、この期に及んで伊介のこと無視ぃ?残酷に殺す♪」

乙哉「は?何言っちゃってんの」クスッ

伊介「…は?」ピクッ

鳰(冷静を通り越し…伊介さんを無視して冷酷な表情に変わってウチら…ウチと、剣持さんに対して言ったッス)

しえな「武智!!」

乙哉「あー…ごめん二人共。やっぱあたし駄目だわ」

しえな「武智?お前さっきから何考えて…」

鳰(そこで剣持さんの言葉を遮るように言葉を被せ、ついに伊介さんに対して武智さんが話しかけたんッスけど…)

鳰(その瞬間ウチは…ううん。おそらくは、黒組の全員がきっと、感じたはずッス)

乙哉「ねえ犬養。アンタさぁ」クスッ

伊介「…なぁに♪遺言なら聞いてあげる♪一瞬で忘れるけど♪」

乙哉「いやぁ、あたし今朝から改めて黒組ってレベル高いなーって思ってたんだけどさ。中でもアンタのことマジで見なおしたわ」

伊介「…?」

乙哉「アンタみたいに自分に自信があって、強気で、残酷で、力強くて、ついでにとびっきりエロ美しい女見たことない」

伊介「あ、そう。ありがと。でも今更褒めても許してあげない♪」

伊介「…で?」

乙哉「うん。つまりね」

乙哉「こんなに極上で嬲り殺し甲斐のありそうな獲物目の当たりにして、我慢なんかできるわけないじゃんねーって話」クスッ

乙哉「偉そうで自信に溢れたアンタの怯え切った表情が見たくて堪んないんだよ」

伊介「うわ♪流石猟奇殺人鬼♪キモ♪」

伊介「…それじゃあそろそろ死ぬか♪豚」クスッ

乙哉「残念だけど、あたしはすぐには殺さないよ。ゆっくりじっくりいたぶって楽しみたいからさ」

鳰(このままじゃ、血が流れる…)

鳰(…って、冷静に客観視してる場合じゃなくないッスかこれ!?)

鳰(やばいやばいやばいやばいやばいやばい!やばいやばいッス!止めなきゃ!)

鳰「あわあわわわ」

鳰(声出ねーーー!ウチ使えねーーー!剣持さんお二人を止めて下さいお願いッス!)

しえな「武智!お前いい加減に…」

伊介「…」ゴキッゴキッ

乙哉「…」チャキッ

鳰(って聞いちゃいねーーーー!伊介さんが見せつけるように拳ゴキゴキ鳴らして、武智さんなんかいつの間にか鋏構えてるッス!!?)

鳰(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!もうすぐ先生来るし!このままじゃ何もかも滅茶苦茶で黒組どころじゃ…)

香子「お前いいかげんにしろ!!!!!授業前だぞ!!!!!!!」

鳰「…」ポカーン

しえな「…」パクパク

伊介「…」

乙哉「…」

香子「しかもこれからテストだぞ!?お前達の成績がどうなろうと知ったことではないが、人の復習の邪魔をするな!!騒ぐな!!!」

鳰(えーっと…)

鳰「す、すみませんでした……ッス」

しえな「…ご、ごめ…ん?」

香子「ふんっっっ!!!!」

香子「今度騒いだら教室から叩き出すぞ」

鳰(お、おおう。神長さん、今日のテストはいつになく気合入ってるッスね。お陰で助かったッス…)

乙哉「えーっと…」チョキチョキ

鳰(あ。武智さんが鋏の振り下ろしどころを失って寂しそうにチョキチョキしてる。珍しいッス)

伊介「…何それ。冷める。でもそんなの伊介の知ったことじゃないし?来ないんなら先に仕掛けるだけだけ…」グイッ

伊介「……ど?」フラッ

春紀「まあまあ落ち着いてよ伊介様。こんなとこで大喧嘩してるのバレたら溝呂木チャンが学級崩壊だーって大号泣しちゃうよ?」ニコニコ

伊介「ちょ、ちょっと♪春紀、急に横から抱きつかないでよ。殺すぞ♪」

春紀「いやいや。だって放っといたら伊介様このまま武智に飛びかかる勢いだったし」

伊介「むー…」

鳰(春紀さん。いつの間に…)

春紀「ね?ね?今日のお昼クレープ奢るから。ここはあたしの顔を立てると思って!」

伊介「…はぁ。つまんない。チョコクレープだからね」

春紀「なんならあたしの手からのあーんもセットで付けるけど?」

伊介「余計なことしたら殺す♪」

春紀「はいはい…ふう。手痛い出費……」

ガラッ

鳰「っ!」

晴「ふー危なかった!良かったね首藤さん。ギリギリセーフ!まだ先生来てないよ!」

涼「そうじゃのう。結局厠にも寄ったせいであんまり話をすることができなんだ。また昼休みにでも時間を貰って良いか?」

晴「うん!」

涼「重々すまんのう……って」


涼「どうしたんじゃ?この空気」

1時間後

鳰(ふいー)

鳰(晴ちゃん達が戻ってきて、伊介さん達もみんな自分の席に帰って)

鳰(それからすぐ、溝呂木先生が来てそのままテストが始まったッス)

鳰(当然ノー勉だったんでウチの成績のことはまあ…置いといて)

鳰(今は次の授業までの休憩時間)

鳰(次は移動教室なんでみんなその準備でウチに構わないでくれてる感じッス)

鳰(それにしても、いやぁさっきは肝を冷やしたッス。なんとかあの場は収まって良かった良かった)

鳰(伊介さん、ちょっと…いや正直クラスで一番怖いんッスよね)

鳰(一番暴力的で性格もねちっこいから…今日も地味ないやがらせされるところだったッスし)

鳰(今回は武智さんが助けてくれたおかげでなんとか…)

鳰(って、いやさっきの会話聞いてる限りあの人ウチを助けるっていうより自分の性癖に忠実に従っただけな気がしないでもない気がするんッスけど)

鳰(それに剣持さんが立ててくれた作戦は台無しッスね。ウチは正直凄く救われた気持ちになったッスけど…)

鳰(これが今後作戦にどう影響してくるかを考えると若干頭痛いッス)

鳰(…でも、ありがとうッス。武智さん)

乙哉「鳰っち、鳰っち」コソコソ

鳰「あ、武智さん。先ほどはどうも…」

乙哉「いやぁ、さっきはごめんねぇ。どうしても我慢できなくなっちゃってさぁ」

鳰「いえ、お気になさらず。ウチとしてはとても嬉しかったッスから」

乙哉「でもねー。せっかくしえなちゃんが作戦立ててくれたのに台無しにしちゃったみたいで…」

しえな「まったくだ、この考え無しが。お陰でボクの立てた計画が全部パーだよ。どうしてくれる」

鳰「剣持さん」

乙哉「ぎゃふーん」

しえな「でも正直ちょっと見なおした。武智。お前は間違ってない」

乙哉「え?」

しえな「さっき犬養に絡まれている走りを見て思ったんだ。ボクの立てた計画はいじめられている走りを助けるためのものじゃなくなってた」

しえな「いじめっ子を見つけ出し、そいつをやっつけることに主眼を置いてしまっていたんだ」

しえな「そしてそのために被害者である走りの心を犠牲にすることの強要なんかして」

しえな「情けない話だよな。友達が苦しんでるのを知っていて、これじゃあボクは見て見ぬふりをしていた時と全然変わらないじゃないか」

鳰「そんな。でも剣持さんはウチのこと救うために…」

しえな「だからって今辛い思いをしている走りを見殺しにするようなやり方は間違っていたって言いたいのさ」

鳰「…」

しえな「もっと知恵を絞って、走りを守りつついじめの主犯を見つける方法を見つけなきゃいけない」

しえな「多少難易度は上がるかもしれないけど、そんなのも考えつかないようじゃボクは走りの友達失格だ」

しえな「すまなかった。今度こそもう絶対に走りを見捨てないよ。今度走りがいじめられているのを見たら、ボクも助けに行くよ」

しえな「武智ももうさっきみたいに下手くそな悪人演技なんかしないで素直に走りを助けに行っていいんだぞ」クスッ

乙哉「え?なんのこと?」キョトン

しえな「またまた。ああやって猟奇殺人犯の血が騒いだ風を装って走りを助けたんだろ?最低限ボクらが走りの味方だと敵に悟らせないように」

しえな「バレバレだったけど、工夫と努力は買おうじゃないか」クスクス

乙哉「…?…………ああ。あー……うん。うん」

しえな「なにはともあれ、だ。これからはなるべくボク達と一緒に行動しよう。そうすれば相手もいじめ難くなるはずだ」

しえな「そして、相手がやってきたらこう言ってやるんだ。ボクの友達に手を出すな。絶対にゆるさないぞ。ってね」

鳰「剣持さん…」

しえな「あ、そうだ。それと一個だけお前に文句がある」

鳰「え?」

しえな「『しえな』」

鳰「…え?」

しえな「…さっきから、そういえばまだ剣持さん呼びだっただろ。ずっと。『しえな』でいいって言ったのに」

鳰「あ…」

しえな「だからボクも…その、なんとなく呼び方改めるの躊躇ってさっきから走り呼びにせざるを得なかったじゃないか」

乙哉「えー?それは別にしえなちゃんから歩み寄っても良かったと思うけど。もしかして恥ずかしがってたの?」

しえな「う、うるさいっ!」

鳰「…」

しえな「とっ、とにかく!しえな!今度からしえなって呼ぶんだぞ!じゃないともう返事しないからな!」

鳰「えっと…」

しえな「わかったか!?わかったら返事!」

鳰「は、はいッス…」

しえな「んっ!よ、よし!」

乙哉「不器用だねぇ」クスクス

しえな「お前にはなんだかどうしても絶対に言われたくない!」

乙哉「はいはい。それじゃあそろそろあたしらも教室移動しないと授業遅れちゃうし、そろそろ行くよ。しえなちゃん。鳰っち」

鳰「あ…そ、そうッスね。待ってください、今準備を…」ゴソゴソ

しえな「まだ準備してなかったのか。まったく…お前は入学当初はもっと世渡り上手でそつがない感じだったのにな」

乙哉「それもそうだねぇ。いじめられてるうちにいろいろポンコツになっちゃった?しえなちゃんみたいに」

しえな「武智は本当にうるさいなぁ…いつか絶対ギャフンと言わせてやるからな。ほら、準備出来たな?置いてくぞ」

鳰「あ。待ってくださいッス。行くッス…」ガタッ

しえな「ほら。早くしろ。その…」

しえな「……に、にお」ボソッ

鳰「え?」

しえな「………」

しえな「…………は、早くしろ」

しえな「……」

しえな「…………………に、鳰」

鳰「…!」

乙哉「おーい、そろそろ本気で遅刻しちゃうぞー。鳰っちー。しえなちゃーん」

しえな「うわっ!まずい!ほら急げ!武智!鳰!」

鳰「…はい!すぐ行くッス!乙哉ちゃん!しえなちゃん!」

























乙哉「ところであたしは何故にどうして頑なに武智呼びなのかね、しえなちゃんや」

しえな「下手にお前に心許す素振り見せると翌日には首と胴体離れてそうで怖いんだよ」

鳰「あははは…」

昼休み
食堂

鳰「…驚いたッス」

しえな「本当だな。何事もまずは直球勝負してみるものかもしれないな」

乙哉「まさかあれから誰もちょっかいかけてこなくなるとはねぇ」

鳰「ちょっとした休み時間とか授業中とか、いつもなら絶対って言っていいほどちょっかいかけられてたのに…」

しえな「武智が抑止力になったか?下手に鳰に手を出してこいつに目を付けられると面倒だと思われたか」

乙哉「うーん。ちょっと残念な気がしないでもないけど…犬養とさっきの続きしたかったなぁ」

鳰「止めて欲しいッス」

しえな「そうだな。これでいじめが収まるならある意味儲けものだ。だがいじめの首謀者には今までの相応の報いを与えてやらないと気が済まないからな」

鳰「…」

しえな「そんな顔をするな。鳰をまたいじめに晒させずに首謀者をあぶり出す作戦を考えるから」

しえな「じゃないといつまでもまたいつ誰にいじめられ始めるか怯えて暮らさないといけないだろ?そんなのボクが許さない」

鳰「しえなちゃん…」

しえな「なんだ?鳰」

鳰「…あ、いえ。なんでもないッス。ただ名前を呼んで見たかっただけッス。しえなちゃん」

しえな「…変な鳰だな」

鳰「…そんなことないッスよ、しえなちゃん」

しえな「…あまり名前を連呼しないでくれないか、鳰。ちょっと恥ずかしい」

鳰「すみませんッス。しえなちゃん」

しえな「…鳰」

鳰「…なんッスか?しえなちゃん」

しえな「鳰鳰鳰鳰鳰」

鳰「…しえなちゃんこそ意味もなくウチの名前連呼するの止めて欲しいッス。照れるッス」

しえな「ああ、悪かったな。鳰」

鳰「…」

しえな「…」

鳰「しえなちゃんしえなちゃんしえなちゃんしえなちゃんしえなちゃんしえなちゃんしえなちゃんしえなちゃんしえなちゃん」

しえな「鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰鳰」

乙哉「なにいちゃついてるのきみたち」

しえな「ああ、蚊帳の外にしてすまなかった武智」

鳰「武智さんお昼ごはん何食べるッスか?」

乙哉「あたしだって凹むことあるって、意外かもしれないけどいちおうおぼえておいてほしいんだ」

鳰「えへ。調子に乗っちゃったッス」ペロ

しえな「ざまあみろ」

乙哉「まったく…でもちょっとだけ安心したかなー」

しえな「ん?」

鳰「何がッスか?」

乙哉「だって、鳰っちが久しぶりに入学当初みたいになってる」

鳰「…え?」

しえな「ああ。言われてみればそうだな」

鳰「なんッスか?ウチ、なんか変だったッスか?」

しえな「そうだな…初めて会った頃の鳰は…もっと快活だった」

乙哉「かなりお調子者っぽくて、ムードメーカーって感じだったもんね」

しえな「胡散臭さも相当だったけどな」

鳰「えっと…」

しえな「それがここ数ヶ月のいじめの影響で相当卑屈になってた」

乙哉「誰かをイジったりオヤジギャグ言ったりとかほとんどしなくなってたもんねー」

鳰「で、でも晴ちゃんといる時はいつも通り振る舞ってたと思うんッスけど…」

しえな「そうか?今朝観察していたが、相当自虐が増えていたぞ」

乙哉「あと、晴ちゃんよりよっぽど喋ってたのに最近は聞き役になるのが増えてたよね」

鳰(そんな…自分では今まで通り振る舞ってたつもりだったッスけど、外から見たらそんな変わってたッスか)

しえな「まあなんにせよだ。このままいじめが収まっていれば、昔の明るかった鳰も戻ってくるかもな」

乙哉「そうだねぇ。あの頃の鳰っちのがちょっきんし甲斐がありそうで可愛かったし」ジュルリ

しえな「台無しだよ」

鳰「あ、あははは…」

鳰(おふたりとも…ほんと、優しいッスねぇ…)

鳰(ありがとうッス。ウチ、二人が居てくれればどんないじめにだって負けないでいられそうッス)

鳰(そう。二人が居てくれれば、どんないじめにだって…)

乙哉「おっ。鳰っち、ちょっと下がってな」

鳰「え?」

しえな「…来たか」

鳰「え?何が…ってあれは」

乙哉「へっへっへ。嬉しいねぇ。今朝の続きかな?」

乙哉「ねえ鳰っち。黒組って同じ同級生は巻き込んで…ううん。この際はっきり言っちゃうけど」

乙哉「私が犬養伊介を殺しても、黒組資格は剥奪じゃあないんだよね?」

鳰「…一応。ルール上は」

乙哉「んふふふふ…」ニヤニヤ

伊介「ふふ。物騒で下品な笑顔♪殺したい♪」

伊介「はぁい。ゴミ蟲」

鳰「っ!」ビクッ

しえな「鳰。下がってろ」スッ

伊介「…ふん。つまんない奴。最低の卑怯者」

しえな「…寄ってたかって一人をいじめる人間ほどじゃあないと思うぞ」

伊介「朝からどうも変だとは思ってたけど、やっぱりそういうことだったんだ」

しえな「何?」

伊介「どんな心境の変化かは知らないけど。二人はその屑の味方するんだ♪」

しえな「…そうだ。文句あるか」

伊介「別にぃ。ただ、っていうことは伊介の敵になる覚悟は出来てるんでしょ?可哀想にねって思っただけ♪」

しえな「…」

乙哉「可哀想?なんで?あたしはお前が敵対してくれるならお前をチョッキン出来る大義名分できて万々歳なんだけど」スッ

伊介「クスッ。やれるもんならやってみろ♪雑ぁ~魚」

乙哉「…へぇ」ガタッ

しえな「二人共。ここは公衆の面前だぞ。流石に控えろ」

伊介「余計な心配しないでも伊介はそれくらい弁えてるわよ」

伊介「ただ、春紀と食堂にクレープ食べにきたら見かけたからついでにアンタらがつるんでるのかどうかっての確認したかっただけ♪」

しえな「…」

乙哉「寒河江も一緒か。あいつもなかなか美味しそうなんだよな」ジュルッ

伊介「春紀に手出したら殺すから」

伊介「指一本でも触れたら、アンタの大事なもの全部壊して、殺してくれって懇願するまでいたぶって嬲りになぶって殺すから」

乙哉「…」

伊介「ま、アンタらみたいな素人もどき集団じゃ伊介には勿論、春紀にだって敵わないと思うけど♪」

乙哉「本当、随分自分に自信ある感じで壊し甲斐がある子だよね」

伊介「…ふふ。伊介もアンタに同じこと思ってる♪おそろいね♪」

乙哉「…しえなちゃん。こいつがいじめの首謀者説提唱してたよね?」

しえな「ひゅっ!?」ビクッ

伊介「へえ?」クスッ

しえな「そ、そそそそ、そんなこと確かに…あ、あう…あうううう、た、確かに、い、いいいい言った気がしなくもないが」アタフタ

伊介「そっかぁ…伊介が屑いじめの言い出しっぺだって思ってるんだぁ」ニヤニヤ

鳰(しえなちゃん、ビビっちゃってるッス。まあ無理もないッスよね、この子も元いじめられっ子だし…)

乙哉「…で、どうなの?実際のところ」

伊介「教えなぁい♪」

乙哉「…そっか」

鳰(まあ…そりゃそうッスよね。この人がそんなこと聞かれて素直に答えるはずが…)

乙哉「ねえしえなちゃん。とりあえずこいつがいじめの首謀者知ってるってのはわかったよ」

しえな「へっ?」

鳰「へ?」

伊介「…何?」

乙哉「だって、首謀者の存在を知らないはずなら普通アンタいじめの首謀者?って聞かれたら「なにそれおいしいの?」って反応でしょ」

乙哉「それが「教えない」だもん。少なくともこのいじめに首謀者がいるって知ってるのは確定」

乙哉「ついでに、いじめっ子グループ?的なのに属してるんなら、リーダーが誰かだって知ってるに決まってるし」

乙哉「まさかたかがいじめのグループのリーダーがでっかい金色のコンドルのレリーフから声だけで指令を送るような存在じゃないだろうしね」

乙哉「ま、コイツの性格からして首謀者ってのがリーダーってほど明確に上下関係ある人間でもないってのもほぼ確定」

乙哉「偉そうに命令してくる人間に大人しく従うような可愛い子ちゃんでもないし、きっと鳰っちいじめようよって提唱しただけとかそんなノリで」

乙哉「それを持ちかけられて賛同したメンバーはあとは好き勝手にいじめましょーってくらいかな」

乙哉「あとはあたしらが誘われてないってことは多分…」

伊介「いつまでもペラペラとお喋りしてるんじゃないわよ!うざいわねこの変態女!!」

乙哉「…ふーん。なるほどねー」ニヤニヤ

しえな「お、おい武智…?」

鳰「乙哉ちゃん?…どうしたッスか?」

乙哉「あたし、鳰っちいじめの原因わかっちゃったかも」

鳰「えっ!?」

しえな「ちょ、どういうことだ!?武智!詳しく説明を…」

乙哉「それはいいけど…でもそれ言ったら目の前のこの人が顔真っ赤にして怒りそうだしなぁ」

伊介「…何を想像してるのか知らないけど、伊介はそこの屑が気に入らないからいじめてるだけなんですけど」

乙哉「へー。へー。あれがよっぽど気に食わなかったんだ。うわー。うわー。もしかして伊介ちゃんって結構…」

伊介「っ!!そこまでにしときなさいよ!!あと伊介ちゃんって言うな!伊介様って言え!!」

乙哉「はいはい。楽しいランチタイムをこれ以上邪魔されてもご飯食べる時間無くなっちゃうしねー」

伊介「…」

乙哉「分かったよ。どうしてもって言うならこの場は黙っててあげる」

乙哉「その代わりいじめの首謀者教えてくれる?それ教えてくれて、もう鳰っちのこといじめないって約束するなら手打ちにしてあげてもいいけど」

伊介「…ふざけんなっ。そんなの信用できるわけないでしょ。そいつの口から漏れる可能性だってあるんだし…」

乙哉「あ、認めた。伊介ちゃんかわいいー」

伊介「…」ブチッ

鳰(なんだかよくわからないがとりあえずやばい事態になってる気がするッス)

しえな「鳰、なんだかよくわからないがとりあえずやばい」

鳰「しえなちゃん。同感ッス」

乙哉「お?なになに?やる?やっちゃう?」

伊介「…そうね。殺っちゃおうかしら」ボソッ

しえな「お、おい二人共…」

鳰「ここ食堂ッス…周りに学生いっぱいいるッスよ…」

伊介「でも、ここじゃ周りがうざくてじっくり嬲れないし…」

乙哉「それは同感だねぇ」ニヤニヤ

伊介「ねえ武智…それじゃあ伊介、提案♪」ニヤニヤ

乙哉「なになに?」ニヤニヤ

伊介「今夜、伊介と二人きりで深夜デートしよ♪植物園なんかどう?」

乙哉「おっ、いいねいいねー。人いないし、静かだし」

伊介「それまで絶対口外するんじゃねーぞ♪伊介はそこのゴミが気に食わないからいじめてるだけだけど…」

伊介「変なこと吹きこまれて誤解されたら伊介の威信に関わるんだから♪」

伊介「どうせお前は伊介のことバラしたいって性的衝動からこんな挑発してきたんだろ?それまでに喋ったらデートすっぽかすから」

乙哉「んふ♪わかってらっしゃる」

伊介「伊介も…久しぶりに雑魚を嬲り殺したくなっちゃった♪」

伊介「それじゃあ、夜になったら部屋に誘いに行くから」

伊介「それまで絶対喋るんじゃねーぞ♪」

乙哉「…ふう」

鳰「…」

しえな「…」

乙哉「計画通り」グッ

しえな「アホかっ!!!」

鳰「嘘ッス!絶対思いつきで行動したッス!!!」

乙哉「ってわけだから二人共、ごめんあたし今日の夜はちょっと用事が入っちゃったんで…」

しえな「全部聞こえてたわ!何勝手に行動してるんだお前!?」

鳰「乙哉ちゃん、ウチが言うのもなんッスけどもうちょっとこう…こう…」

しえな「あとなんだ!?お前一人で色々勘付いた風なこと連呼して!完全に置いてけぼりだったぞ!?」

鳰「そういえばウチがいじめられてる原因ってなんなんッスか?気になるッス。教えて欲しいッス」

しえな「目の前で殺し合いの約束取り付けられてボクらどうすれば良かったんだ!?ああもう!悪戯に身を危険に晒してっ!心配する方の身にもなれよ!」

鳰「伊介さんがあんなにムキになるなんて珍しい…こともないわけでもないッスけど、あそこまで嫌がるのは珍しいッス。ウチもしかしてなんかしちゃったッスか?」

しえな「大体何だ!?殺し合いが終わるまではボクらにも口外しないみたいな約束!勿論夜になる前に説明してくれるんだよな!?」

しえな「そうだ!話せばデートと言う名の殺し合いもお流れだって話だったよな!?そうだったそうだ!馬鹿め!なら武智がここで話してもデメリットは一切ないじゃないか!」

しえな「よし武智!今すぐ話せ!今すぐだ!早く!電光石火で!マッハで!光速を超えて音速でだ!」

乙哉「やだなぁしえなちゃん。声は音なんだから話したら音速になるに決まってるじゃん」

しえな「返事が欲しいところはそこじゃない!!」

乙哉「大丈夫大丈夫。あたしが負けるわけないじゃん。それに鳰っちがいじめられるようになった原因、話しちゃってデートすっぽかされたら嫌だし」

しえな「ああもうっ!こいつほんとに自分勝手だな!あと他にもいろいろツッコミどころが多すぎて指摘しきれない!!」

乙哉「それにカマかけてほぼ確信はしたけど、絶対それが原因っていう確証はないしね~。間違ってたら無駄に鳰っち苦しめるだけで悪いもん」

しえな「だからってだな…」

乙哉「だから、デートで伊介ちゃん拷問にでもかけてさ。ついでにお口ゲロさせちゃって必要な情報全部ゲット。どう?しえなちゃん。あたしの作戦上出来でしょ?」

しえな「全部うまく保証も無いし、リスクが大きすぎる。ボクは反対だ。っていうか推論でいいから全部話せ」

乙哉「やだ。あたし的には勿論チョッキンデート事態の要素はおっきいよ」

しえな「はぁ…駄目だこいつ」

乙哉「最近誰も殺ってないからウズウズして欲求不満でさぁ…いつ我慢できなくなってしえなちゃん達襲っちゃうかわかんないし」ウズウズ

しえな「…」

乙哉「そんな嫌そうな顔しなくても大丈夫だって。今晩で解消すればしばらくは衝動も収まるはずだし」

乙哉「……多分」

しえな「聞こえてるぞ」

鳰「乙哉ちゃん。その…」

乙哉「あ~。鳰っちもごめんね?なんか気付いたら鳰っちダシにしてあたしの欲求の捌け口見つける方優先しちゃったけど」

乙哉「でもさ~。これもあたしなんだよ。ま、その辺だけ理解頂戴な」

鳰「それは…外で乙哉ちゃんが何してきたかは全部知ってるし今更何も言えないッスけど」

乙哉「うんうん」

鳰「…でも、気を付けて欲しいッス。伊介さんはプロ中のプロッスよ」

鳰「できれば、あんまりリスクは背負わないで欲しいッス。今からでもデートはキャンセルできないか…」

乙哉「それは楽しみ。手強い子ほど好物だよ」

しえな「…何言っても無駄か」

鳰「…ま、まだ怖いッスけど、友達のためならウチ、加勢を…」

乙哉「ぶー!それは無粋!大丈夫だって。今夜はあたし一人に任せて!」

しえな「…」

鳰「…」

乙哉「もう。そんなに暗い顔しないでよ。友達は信じるもんだよ」

乙哉「ほらほら。もうお昼終わっちゃうよ。ご飯食べた食べた」

乙哉「…学校終わったらあたしらの部屋で3人でお茶でもしようか」

放課後
ショッピングモール

晴「~♪」

涼「ふふ。晴ちゃん楽しそうじゃのう」

兎角「…」

涼「小物もいっぱい買い込んで。ほれ、入学当初にアクセサリー作ったって言ってワシらに配っておったじゃろ。また新しいの作りたいんじゃと」

兎角「…そうか」

涼「素人にしてはなかなかの出来じゃのう。これ。ほれ、今も持ってきておるよ」

兎角「…調子に乗るなよ」

涼「うん?」クスッ

兎角「…とぼけるな。今日、私に黙って晴を外に連れ出そうとしたろう」

涼「それはそうじゃが…それがなにか?」クスクス

兎角「ふざけるな…っ!裁定者である走りの現状があれな影響で、確かに今の黒組はほぼ休戦状態だ。だが黒組が機能を失ったわけではないのはお前も知っているだろう」

兎角「つまり、強引にでも誰かが予告状と共に晴を殺せばそれはルールとして成立する可能性が十分にある。いや。ほぼ成立可能性はかなり高い」

兎角「この生殺しのような状況に逸った誰かが晴を殺そうとする可能性は、今だって十二分にあるんだ。例えば今日のお前とか、な」

涼「…」

兎角「首藤。私はお前のことは他の黒組の連中より多少は話せるやつだと思っている」

兎角「だが、それでもみすみす晴と二人きりにさせてやろうというほど私はお人好しではないぞ。肝に銘じておけ」

涼「おお、怖い怖い」クスクス

兎角「…ちっ!」

涼「まあ安心せい。ワシはそこまで功を焦るたちではない」

兎角「どうだか…」

涼「あまりイライラすると身体に悪いぞ?もう少しドンと構えとけばええのに」

兎角「…それができれば苦労はしない。だからお前に頼った。遺憾ながらもな」

涼「難儀じゃのう。そこまで追い詰められておったか」

兎角「…」

涼「ま、安心せい。ワシだって晴ちゃんがそんなことをしているとはとても思えん」

兎角「…やっぱり、そうだよな。まさか晴に限って…」

涼「だからそう暗い顔をするな。その確信を得たいから恥を忍んでワシに頼み込んで来たんじゃろ」

兎角「くっ…」

涼「今日晴ちゃんを連れ出したのもそれと関係ないわけではないぞ?こうして2人…まあ、3人になったが」

涼「とにかく、少人数で話をよくし、あの子がどんななのかを見極めるという方策の一つじゃ」

兎角「わかってはいる。わかってはいるが…」

涼「まあ、なんにせよ、じゃ」

兎角「…」

涼「お前さんは知りたいんじゃろ?」

涼「晴ちゃんが走り鳰いじめの首謀者であるのかどうか、を」

                        __

                         彡-――-ミ、
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                  八{ x~-、
             /⌒  ̄       `丶、
            /           ⌒ヽ   \
            /             Y   \
         /               l      \
         /         l      l |      ヽ
         / /       /{ {      } }      l  、   きょうはここまでにしとくッス
        {/ /    { l/ l  \   l j  }  l l い   あと大変遅くなって申し訳ありませんでしたッス
      >''"   {  {   l┼‐-L_| \  ' 斗-/‐  l l |l
    /       l  l  ∧l  乂 l  l  / / }/ l } } } ハ }
   /      /|∧ トミx==ミ`l\l /l_,,x=xシ}/ / メ、 ノ

   八      { l/ \ト、       /      / / / \
    \     {\    ヽ      "    / }/ / /  〉
      ヽ トx-―‐-\    }  `ー- ~’   /  // /
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晴「あ、このビーズいいな。あっ、この紐も可愛い!」


兎角「…で、実際のところお前はどう見る?首藤」

涼「まあそう焦るな。まだ買い物は始まったばかりじゃ」

兎角「だが…」

涼「やれやれ。今日の10分休みや昼休みも使ってそれとなく晴ちゃんに聞いた限りは、そこまで悪意は感じなかったがのう」

兎角「そうか、なら…!」

涼「だからそう結論を焦るな。ワシにもまだわからんと言っておろう」

兎角「…すまない。私はどうかしているようだ」

涼「なに、気にするな。お前さんのそんなそそっかしいところ、嫌いではないがのう」クスクス

兎角「…」

兎角「…私は」

涼「…」

兎角「…私は、辛いんだ。晴が。あの優しい晴が。もし万が一にでも、いじめなんかをするようになってしまったというのなら…」

兎角「…それはもしかしたら私の責任かもしれないと思うと」

涼「何を言う。お前さんは何も悪いことはしとらんじゃろう」

涼「あの時だって、ワシはむしろお前さんのことを見直したんじゃぞ?あの東の女がこうも優しい女だったとは、とな」

兎角「…あれはそんなんじゃない。ただの気まぐれだ」

涼「それでもじゃ。あれ以来ワシはお前さんのこと、人間として好いとるよ。勿論、晴ちゃんのことも」

兎角「…」

涼「まあ殺し屋のワシに言われても嬉しくはないかもしれんがな」

兎角「…いや。ありがとう。一応礼は言っておく」

涼「…今日のお前さんは殊勝で本当に可愛いのう。ちょっと気持ち悪いくらいじゃ」クスッ

兎角「…ふざけるな」

涼「はいはい」


晴「首藤さーーん!兎角さーーーーん!こっちこっちー!これどう思うーーーー!?」

涼「…おっと、そうこうしてる間にしびれを切らした晴ちゃんがお呼びじゃな」

兎角「あいつ、いつの間にあんな遠くに…」

涼「さて、いつまでもワシら二人で話をしていても晴ちゃんがかわいそうじゃ。そろそろ行ってあげようかの」

兎角「…お前が行ってこい」

涼「およ?お前さんは?」

兎角「…喉が渇いた。それにこういう空気のところはあまり好かない。少し休憩してくる」

涼「いいのか?ワシを晴ちゃんと二人きりにして」

兎角「安心しろ。変な気を起こしたらすぐに駆けつけてあっという間に取り押さえてやる」

涼「そうか…なら止めておこうかの」

兎角「…晴を頼んだ」

涼「あいわかった。任せておけ」

兎角「…」スタスタ

兎角「…」

兎角「…くそっ!」

兎角「我ながら情けない…晴をいじめっ子だなどと疑うとは」

兎角「だが…」

兎角「だがしかし…」

兎角「最近あいつがよく夜に会うようになった連中…」

兎角「英」

兎角「犬飼」

兎角「桐ケ谷」

兎角「どいつもこいつも、執拗に走りをいじめてる奴らばかりだ!」

兎角「それに動機だって…」

兎角「…」

兎角「…いや、馬鹿を言うな。そんなわけない」

兎角「晴に限ってあんなことを根に持つなんて…」

兎角「…」

兎角「…いや。むしろ晴だからこそ…」

兎角「…くそっ!だから違うだろ私っ!!」 

兎角「あいつのことを信じられず、何が守護者だ!しっかりしろ!!」                                                                 ママーアノヒト… シッ!ミチャイケマセンッ

兎角「…とにかく、今あいつのことを疑っても仕方ない。そのために首藤に対して頭も下げたんだ」

兎角「結果が出るまでは…私は晴のことを信じよう」

兎角「…はぁ」

兎角「晴……」

ブー ブー

兎角「…ちっ」スッ

兎角「…メールか」パカッ

兎角「…」





from:カイバ先生
件名:暇だから小テストな ※考査じゃねーけど無視したら評価減点




本文


問題

女王蜂と働き蜂
相手を利用してるのはどっち?



兎角「…この糞面倒な時にこいつは…っ!!」ポチポチポチポチ

兎角「こんなくだらないメール…まともに回答してられるか!!」

兎角「無視しなければいいんだろ!?馬鹿!!!」ポチッ





to:カイバ先生
件名:Re:暇だから小テストな ※考査じゃねーけど無視したら評価減点




本文



女王蜂に決まってるだろ!!馬鹿!!!!!!



同時刻
金星寮六号室乙しえ部屋

乙哉「…と、いうわけで」

乙哉「お茶会だーーーーーー!!」

しえな「…」

鳰「…」

乙哉「…もー。ノリわるーい」

しえな「…当たり前だろ。これから夜になったら同居人が殺し合いに行くっていうのに」

鳰「…ねえ乙哉ちゃん。やっぱ考え直せないッスか?」

乙哉「無理無理。だってあんな会話したあとじゃあたしもう滾っちゃって滾っちゃって」

乙哉「ここでお預け食らっちゃったらもう我慢出来ないの確定。二人のこと狙っちゃうよ?」

しえな「お前ってやつは本当にめんどくさいやつだな…」

乙哉「だからさー。ほら、どうせならお楽しみ前の景気づけにさ。折角仲良くなった2人と別の楽しみも満喫しておこうかなって」

鳰「やめて欲しいッス。なんか乙哉ちゃん、さっきから死亡フラグばっか立ててるッス」

しえな「そうだな…どうも嫌な予感が拭えないんだ。お前は何も感じないのか?」

乙哉「何も感じてないわけ無いじゃん。滅茶苦茶感じてるよ?これまででサイコーのエクスタシーの予感…」ジュルリ

しえな「もうダメだこれ」

鳰「もう止めるのは無理…ッスか」

乙哉「そうそう。だから二人もいい加減諦めてあたしとお茶会を楽しんでよ」

しえな「…」ズズ

鳰「…」チビチビ

乙哉「どう?どう?あたしが淹れたお茶の味!」

しえな「…まずい」

鳰「苦いッス。お茶っ葉入れ過ぎじゃないッスか?」

乙哉「えー?そうかな…」ズズ

乙哉「…うん、こりゃ駄目だ」オエッ

しえな「…ふふっ」

乙哉「うぇー。ごめんね二人共。今新しいの淹れ直すから…とほほ、変に張り切ってお茶淹れるとか言うんじゃなかった」

しえな「いや、ボクはいいよ」

乙哉「しえなちゃん?」

しえな「今日はお茶うけのカステラが甘いし。ちょっと渋いくらいどうってことない」

乙哉「…」

しえな「今日のところはこのまずいお茶で我慢しておく。しょうがなくな」

しえな「その代わり、今度からのお茶会もずっと武智が淹れろ」

乙哉「…」

しえな「絶対に帰ってこい。負けてもいいから。逃げてもいいし最悪無様に命乞いしてでも絶対生きて帰って来い」

乙哉「いや負けるのはちょっと…」

しえな「ボクはこの部屋ではお前の淹れたお茶以外死んでも飲まないからな」

乙哉「…」

しえな「最初は下手くそでもいいから。その代わり今度からはビシビシ文句言って上達するよう厳しく指導してやる」

しえな「…ボクだっていつまでもまずいお茶飲まされるのはごめんだし」

乙哉「…なんか、しえなちゃんの方があたしに死亡フラグ立てようとしてない?」クスッ

鳰「…乙哉ちゃん。無事帰って来て欲しいッス」

乙哉「…もう。結局二人共こっちの話に持ってきちゃうんだから」

乙哉「はいはい、もうこの話はやめ!次やったら怒るよ!…今はこの時間を楽しも?」

しえな「…わかったよ。このまずいお茶で楽しめるかはわからないけどな」

乙哉「そういうこというなら飲むなーーーーーー!!」

鳰「ぷっ…」

乙哉「…おっ?」

しえな「…ふふふ」

乙哉「…あはっ」

しえな「っくくっくくく…」

鳰「あははははは!」

乙哉「あははは…」

しえな「あははははは!」

鳰「あっはっはっは!二人共、息ぴったりでほんっと面白いッスね!」

しえな「はっはっはっは!!」

乙哉「あ、あはははは…参ったねこりゃ…はぁ」

乙哉「…ふふっ」

深夜

コンコン

乙哉「開いてるよ」

ガチャッ

伊介「はぁい♪楽しいデートのお迎えに来たぞ♪」

乙哉「もうーおっそいよ。待ちくたびれて寝ちゃいそうだったっての」

伊介「あら、ごめん。ちょっとお風呂あがりの爪の手入れに時間かかっちゃって♪」

乙哉「待ち合わせの時間くらい決めておくべきだったかなぁ…」

伊介「やだ♪そこまでするとほんとのデートみたいでキモい♪」

乙哉「え~?いいじゃん。あたし的にはそんなに変わんないし」

伊介「やば♪やっぱこいつほんとキモい♪早く殺そ」

乙哉「今度は逸って植物園まで待ちきれないとかそういうのは無しだよ?」

伊介「しねーよば~ぁか♪伊介はプロだもん」

乙哉「そっかそっか。それじゃあちょっと待ってね。今服着るから」

伊介「…どうでもいいけどなんで下着姿なのよ。アンタら伊介が来るまで部屋で何してた?」

乙哉「見てわかんない?一人で雑誌読んでたんだけど。二人共疲れて寝ちゃって退屈だったからさー」

伊介「…そうじゃなくって」

乙哉「ああ、その前?そりゃあ…ねえ?」クスッ

伊介「…」

乙哉「いやぁ、前戯にはちょうど良かったよ。アンタとのデート待ちきれないくらい楽しみだったから」

乙哉「この昂って昂ってしょうがないあたしのココロ…暴れ出さないよう抑えるにはこれくらいでもしないと無理っぽくて」

乙哉「二人は黒組の中でもとびっきり素敵な女の子だし、身体を重ねれば気持ちいいのも確かだけど…」

乙哉「やっぱりこんなんじゃあたしの本当の欲求は全然慰められないんだ。…と、あれ?ネクタイどこやったっけ。あ、あったあった」ゴソゴソ

乙哉「女の子は血塗れで泣き叫んでる時が1番かわいい!!」

伊介「…へぇ。さっきまでと顔、全然違う♪卑らしい。いい顔」

伊介「伊介の1番いじめたいタイプ♪」

乙哉「ああ…アンタの泣き顔を想像するだけで…」

伊介「ううん…アンタの苦しむ顔を想像するだけで…」

乙哉「だめぇ、濡れちゃう……♪」

伊介「やだ、滾る……♪」

乙哉「よ…っと。よし、ストッキングも履いたしこれで着替え完了!お待たせ♪」

伊介「おそぉい♪ほんと、やっぱり時間決めとけば良かった♪」

乙哉「さ、行こうか♪」

伊介「うん。行こうか♪」

乙哉伊介「「アンタの死に場所へ」」

金星寮三号室香涼部屋

涼「晴ちゃんはどうした?」

兎角「疲れて寝たよ。だからこうしてお前たちの部屋に来た」

涼「そうかそうか」

兎角「…すまない。結局後半はほぼお前に任せきりにしてしまった」

涼「なに。元よりそういう依頼じゃったろう」

兎角「…この埋め合わせはいずれする」

涼「ふふ。楽しみにしておるよ」

涼「…おっと。香子ちゃんすまなんだな。勉強の邪魔をしてしまって」

香子「…好きにしろ。私は今日はもう疲れた。明日の予習だけしたらもう寝る」

兎角「…珍しいな。いつもの神長なら消灯時間を過ぎてからの部屋移動など見咎められるかと思っていたのだが」

香子「…」

涼「ふふ。そんな気力も残っておらんよな」

香子「根を詰めすぎた。もうスッカラカンだ」

涼「前回のテストで晴ちゃんにクラス最高点を奪われてそう悔しかったらしい」

涼「それで今日に向けて猛勉強しとったんじゃよ」

兎角「ああ。あの時のか。晴は逆に大喜びしていたな」

香子「あの一問…あの一問さえ解けていればギリギリ勝てたはずだったんだ」ギリギリ

涼「引きずるのう」

香子「…」

涼「あれはしょうがなかろうに。先生が間違えてテスト範囲外の問題を出してしもうたんじゃから」

香子「だが一ノ瀬は解いたんだぞ…」

兎角「晴はあの問題に関しては偶然詳しかったのでラッキーだった言っていた」

涼「そうなのか、テスト範囲外もしっかり勉強してて偉いのうなんて思っとったんじゃが」

香子「偶然…?偶然ってなんだ…」フラフラ

香子「うぐう」パターン

涼「あ、机に突っ伏しよった」

兎角「…話を元に戻すぞ」

涼「おお、すまなんだな」

兎角「…で、首藤が今日一日晴と接してみた感じ…どうだった?」

涼「そうじゃのう…」

兎角「…」

涼「結論から言えば」

兎角「…ああ」

涼「晴ちゃんは『白』じゃ」

春紀「…おーい、伊介様ー」

春紀「伊介様ー」

春紀「伊介サマー?」

春紀「…伊介ー」ボソッ

春紀「…」

春紀「…っかしいなぁ」ポリポリ

春紀「人が風呂入ってる間にどこ行ったんだ?」

春紀「ったく、どっかの部屋にでも遊びに行ってんのかねぇ」ガチャッ

春紀「消灯時間過ぎて委員長に見つかったら同室のあたしにまでとばっちりのお説教来るのに勘弁してくれっての」

春紀「さ、ちゃちゃっと見っけて部屋に帰らんと」キョロキョロ

春紀「まずは1番あの子が行ってる可能性が高そうなとこ…え~っと…うん」

春紀「晴ちゃんのいる1号室かな」



バタン


          //         -―-Y/       `ヽ、
         //     /             `ヽ、  \
         ∥    /    /      \     \  \    きょうはここまでにしとくッス
          {    /       ;  {        ヽ      \  \   いつもより更に文章量が少ない?
             /       !   、       い     \ \ ヽ  け、けっして録画してたもののけ姫見ながら書いたからとかじゃないッスよ!? 
            / /    {   ゙、      l   \   \\ \  
             / /       l   ヽ      l\ _ヽ   ヽ \ `<
          ハ /  {      l  l   \   |l/\  Y   Y\\  `~ 、
        / // j/}     l l\   \l  /l u \  i    l    \   ヽ ヽ
     __  / /// /     l_,,斗―-   l\ j ,,x=云メ、l\  }         }) }
     { У // / l    '" l| l   \  l /j 〃  ,,, ノ / \   j/    / /
     j/ / /  l  l      l _x云=ミ \l/  u   ー彡イノ  j   ノ   //
    /    ̄ ̄}人 ト、    =シ" ,,,, u  ヽ       /    / /  / /
    /   u ̄ ̄} ヽl \ \   ミ=-    、__,.::-‐イ u ∥  j / /  /{/
   /     /-‐/   l   ヽ   ̄ \ u `く_ノ  イ八 /{(   / {
   / u   / ̄       )\ \ ヽ>ミ,,,_ ー / l┐ ヽ{  { /
  /     ノ    \        \ Y } ヽ/L__ ̄u /弋、  ト从(
  /{  u  jく `ー- `~、 ヽ_ _ヽ }ヽ}ノ//}   ̄Y^ヽ  ヽ\{ ___
  Yミー-‐彡}    \} \} /:::::::::::: ̄/l ̄`~、 /     / ̄ ̄ト:::::::::::::::::::ヽ
  }  ̄ ̄  l\       ノ/::::::::::::::::::/ l      `Y⌒Y      l V:::::::::::::::::::Y
  ∧     ノ  }     /::::::::::::::::::/ /}        {   }       l、 V:::::::::::::::::::}

金星寮1号室晴兎部屋前

コンコン



コンコン

………

春紀「…」

春紀「…おーい、誰かいるかー」コンコンコン

春紀「…」

春紀「…あれぇ?」

春紀「誰もいねえのかなぁ…それとも気付いてないのか?」

春紀「ま、いいや。返事がないなら悪いけど開けさせてもらうよ、っと」ギィ…

春紀「いなさそうだけど一応伊介様いないか確認…」

春紀「…部屋真っ暗か」

春紀「ってことはやっぱり誰もいないな?」

春紀「まさか風呂場とかトイレに隠れて悪戯狙いってわけでもなさそうだし…うん。やっぱりいない」ガチャッ

春紀「ベッドも一応確認…寝てるわけでもなさそうだな。すると勘違いだったか~」

春紀「するとあとは…どこ行ってんだ?伊介様が他ちょっかいかけそうな奴っていうと…ああ。走りのやつのとこかもな」

春紀「もし居なくても、あいつならぶん殴って脅しとけば委員長に告げ口もしないだろうし」

春紀「他の連中に消灯時間過ぎてるのチクられる可能性よりはリスク少ないか」

春紀「よっし。そうと決まったら早く行こうっと」クルッ

バタン

春紀(…っていうか、この部屋の二人も意外とやるじゃん。夜中にこっそり遊びに行くなんて♪)

植物園

乙哉「~♪」スタスタ

伊介「…」キョロキョロ

乙哉「いやぁ、楽しみだねぇ♪燃えちゃうねぇ。萌えちゃうねぇ。手強い女の子は大好物だよ。早くチョッキンしたぁい♪」

伊介「…そうね」キョロキョロ

乙哉「で、どこまで行くの?もう植物園にはとっくに着いてるわけで。待ちきれないあたし的にはもういっそ背後からざっくりいちゃおうかなとさえ思い始めてるんだけど」

伊介「焦れないの。せっかちは嫌いよ♪」キョロキョロ

乙哉「まぁいいけどさ…さっきからそうやってやたらキョロキョロしてるけど、何?もしかして罠でも張っちゃってるわけ?」

乙哉「だったらあたしは今まさに蜘蛛の巣にふらふら近づいてってる哀れなチョウチョみたいなもんだ~」

伊介「やだ…みくびるなよ♪お前ごとき殺すのに罠なんか張んね~っつーの♪」

乙哉「…だったら何探してるわけ?」

伊介「んっ…あ、見つけた♪」

乙哉「…ここって」

伊介「そ♪大きな大きな♪杉の木の下♪ここでアンタを…殺す♪」

乙哉「…なんでここにした?」

伊介「そりゃあ勿論」クスッ

伊介「ゆくゆくは走り鳰もここで殺すつもりだから♪」

伊介「せめてお友達と同じ場所で殺してあげようって。伊介の優しさ♪」

乙哉「…へえ」

伊介「…伊介、アイツを殺すときもここに呼び寄せるの」

伊介「で。殺す直前にアンタもここで死んだって教えて」

伊介「死ぬ前にお前のせいで死んだんだって散々責めて。責めて。罵倒して。死ぬほど後悔させて…苦しめて…傷めつけて…」

伊介「絶望を噛み締めさせながら嬲り殺す♪」

乙哉「…なるほど」クスッ

伊介「…なに?その笑み…」

乙哉「それはそれは伊介ちゃんったら…」

乙哉「お優しいこと」

乙哉「で!」ヒュッ

伊介「!」

乙哉「お命ちょうだい!」

伊介(抜き打ち!?獲物は…ナイフ!いや…)

伊介(鋏の…かたっぽ?!?)

伊介「ふっ!」

スカッ

伊介「あぶな♪」

乙哉「…あちゃ、かわされたか。やるぅ♪」

伊介「ふざけんじゃねーぞ、この早漏野郎♪」

乙哉「でもま、これで終わっちゃったら不完全燃焼もいいとこだったし安心したよ」クスッ

伊介「不意打ちしといてその言い草?お前ろくな死に方させねーぞ♪」

伊介「それとその獲物…鋏の片刃?…ねぇ」スッ

乙哉(おっと。腰落として構えたか。目つきも変わった。ひゅー!やっぱ本物の職業暗殺者はその辺の女の子とは対峙した時の迫力からして違うね!)

乙哉「そ。ほら見て。じゃきーん。もう一個と合わせたら鋏になるんだよ」ジャキン

伊介(こいつ…鋏なんて変な獲物使ってるけど武器としての鋏捌きは今まで見たことないレベル)

伊介(…っていうか、そもそも鋏使いなんてイロモノとやった経験なんか伊介にはねーよ♪)

伊介(型も決まってなさそうだし多分馬鹿高い身体能力と野生の勘で動いてるだけの、つまり…ちょっとやりにくいタイプ♪)

伊介「いやん♪変な獲物♪それにいきなり暴発なんて酷ぉい♪」スッ

乙哉(さり気なく抜いてきた。…こいつの獲物はナイフか。構えて持ってるとこは初めて見るな。うわぁ、ビリビリくる。いいねいいね!)

乙哉「だって…朝っぱらからこっち、ずっと焦らされてお預け食らってたお陰で…あたしもう…もう…もう…!」

乙哉「我慢の限界なんだもん!」

伊介「あはっ♪ほんと、しつけのなってない獣みたい♪」

伊介「張り切り過ぎてアッて間にイクんじゃねーぞ♪」

乙哉「そっちこそあたしに感じさせるまもなくイっちゃったら許さないから!」

ちょっと前
金星寮六号室乙しえ部屋

鳰「…」

しえな「…」

鳰「…もう二人は行ったッスか?」

しえな「…身体だるい」

鳰「しえなちゃん」

しえな「わかってる。もう行ったみたいだ」ムクリ

鳰「…ちなみにウチはさっき3回位イかされたッス」ヨロヨロ

しえな「うるさいな。オヤジギャグで上手いこと言ったつもりか?…ボクは5回だ」ゴソゴソ

鳰「初めてだったのにあんな野獣みたいに…乙哉ちゃん酷い…」シクシク

しえな「あれ、まだ手加減されてた方だぞ?その分ボクが執拗に責められたんだけど」

鳰「いっつもあんな感じなんッスか?あの子」

しえな「まさか。確かにいつもあんな感じで責めてはくるけど、今日はいつもの比じゃなかった」

鳰「やっぱ、殺しの前に滾っちゃってたんッスかねぇ…」

しえな「だろうな…っと、こっちは準備できたぞ」

鳰「ウチもッス」

しえな「よし」

鳰「乙哉ちゃんには悪いッスけど…でも、やっぱりウチ、ウチが原因で友達が死ぬかもしれないってのはキツイッス」

しえな「ボクだって友達のせいで友達が傷つくのは嫌だ。それが例えアイツの自業自得でもな」

鳰「あとで怒られるかもしれないけど…」

しえな「いや、もっと面倒なことになる可能性がかなり高い気がしないでもないけど」

鳰「…でも、それでもやっぱり止めに行きたいッス」

しえな「ああ。それじゃあ、急ぐぞ。植物園だったな?」

鳰「らじゃ!」ビシッ

7号室鳰部屋

春紀「伊介様いる?」ガチャッ

春紀「…あれ。ここも真っ暗じゃん」

春紀「なんだよ…ったくよー!」パチッ

春紀「電気付けても…やっぱ誰もいないし。走りも怯えて隠れてるわけでもないっぽいな」

春紀「さて。参った。どうすっかな」ボフッ

春紀「…くそっ。走りの癖に上等なベッド使ってるじゃねーか」ボフッボフッボフッ

春紀「…はぁ」

春紀「ったくどこ行ったんだよ伊介様」

春紀「…」

春紀「…あー。他に行ってそうな場所が思いつかない!ちょっと休憩!」ゴロン

春紀「せめて走りがいれば探すの手伝わせられたのにアイツも使えねー!」ジタバタ

春紀「…ふー。馬鹿かあたしは。駄々っ子か」

春紀「…」ゴロゴロ

春紀「…10分経ったらまた捜索再開」ウトウト

春紀「…」

4号室千柩部屋

柩「ふう。今日も楽しかった。ね?そう思いません?千足さん」

千足「…ああ。そうだな。桐ケ谷。テストの方はどうだった?」

柩「何問かはわからないところがありましたけど…でも、概ね上手くできたと思います」

柩「これも千足さんがぼくにお勉強を教えてくれるおかげです」

千足「そんなことはない。桐ケ谷が頑張って予習した成果だ」

柩「でも、千足さんが教えてくれなければぼくは今ほど頑張れていたかわかりません」ポフッ

千足「…そうか」ナデナデ

柩「ええ…お勉強だけじゃありません。私生活だって。千足さんが支えてくれていたから今のぼくがあるんです」スリスリ

柩「そうじゃないと、きっと黒組に入ってから…ぼくは、潰れちゃっていたと思います」

千足「大げさだな。桐ケ谷はそんなに弱くないよ。寂しくても、きっと一人でだって立ち直れていたさ」

柩「…おおげさなんかじゃありません。ぼくは千足さんが思っているほど強くありませんよ」

千足「…」

千足「そう……かもな」ギュッ

柩「…千足さん、あったかい」キュッ

千足「……柩は、そんなに強くは、ない…のかもな」

柩「…」

柩「…でも、千足さんが思っているほどぼくは弱くもないと思います」トンッ

千足「…どうした?桐ケ谷」

柩「ふふ…さっきと言っていることが反対になっちゃいましたね。でも、これはどっちもぼくの本心です」スクッ

千足「桐ケ谷…?」

柩「さっき今日は楽しかったと言いましたが…今日はあまり走りさんをいじめることができませんでした。そこはちょっと反省です」スタスタ

千足「…」

柩「明日こそはもっと酷いいじめをしてあげますよ。ここ最近は随分参ってきているようではありましたけど」

柩「今日は5号室の二人がちょっとあの子を庇っていたこともあって、久しぶりに少し元気を取り戻していたみたいです」

柩「このままじゃまた調子に乗ってしまう」

千足「…桐ケ谷。そのことなんだが」

柩「ぼくは、あの子が幸せそうな顔をしているのが我慢ならないんですよ。千足さんもそう思うでしょ?」

柩「屑は屑らしく。苦しく惨めで、救いの無い。赦しの無い人生を送る必要があって。千足さんもそう思うでしょ?」クスッ

千足「…桐ケ谷」

柩「なんですか?千足さん」

千足「…そのことなんだが。その…最近のお前の走りいじめについてだ」

柩「ええ。なんでしょう?あ、もしかしていいいじめの方法を思いついたとか!」パァッ

千足「…いや、そうじゃない」

柩「え?それじゃあ…?」

千足「…その…だな」

千足「お前の最近の走りいじめは…その…」

千足「…少々、目に余る」

柩「…え?」

千足「…」

柩「…千足…さん…?」

柩「…なんで?」

千足「…」

柩「なんで?どうしてそんなことを言うんですか…?」

千足「…」

柩「…あ。わかった。ジョークですか?もう。危うく騙されちゃうところでした。そうですよね?千足さん」

千足「…」

柩「ねえ?そうでしょ?そうですよね?千足さん。だってだって。そうでもなきゃなんで千足さんがあんな子を」

柩「正義感の強い千足さんがあんな子を庇うなんてそんなはずありませんものねそうです。そうに決まってます」

柩「ねえ、そうでしょ?千足さん。そうだって言って下さい千足さん」

千足「…」

柩「ねえ…お願いです。お願いですから千足さん…千足さん…千足さん…」

柩「千足さん…なんで…?」

千足「…いや。冗談では…ない。すまない、桐ケ谷」

柩「なんでですか!?なんでそんなことを言うんですか!?千足さん!」

千足「言葉のとおりだ。走りは、あそこまでされていいほど悪いことはしていないだろう」

柩「…っっっ!!」

千足「なあ、桐ケ谷。そろそろ…」

柩「いやっ!嫌です!!」

千足「…そろそろ」

柩「そんなっ!!!」

千足「…桐ケ谷の気持ちもわかる。勿論、他のいじめをしている連中の気持ちもな。だが…」

柩「いやっ!!」

千足「なあ。桐ケ谷。頼むよ」

柩「言わないで!!」

千足「…走りを、許してやってくれないか」

柩「…そん……な…」フラフラ

千足「…」

柩「なんで…なんで…」

千足「…」

柩「なんで千足さんが…」

柩「嘘でしょ?ねえ、千足さん」

千足「…」

柩「嘘ですよね?」

千足「…」

柩「嘘ですよね?千足さん」

千足「…すまない、柩。だが…もう止めてやって欲しいんだ。頼む」

柩「……嘘」

柩「

  嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん
  嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん
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  嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん嘘ですよね?千足さん」

一個だけ千促さんが混じってるな

              / /     / /         \     \
            / /     // /     ヽ     ヽ     ヽ
          /  /    //∥ ;     jいヽ    ___ ゙、
          /  /      / l j !     }  l ゙、   乂___ ̄\      きょうはここまでにしとくッス  
       /  /  /   /  l l j    j| l  ゙、       r--‐`  `<
       {/ //  /   /  l l |    |j |  ゙、    ├―       `< _
       / //l  ;   l   /l l  l    j /l l_         「 ̄        \ 入
      //// !  {    l  ,.斗圦‐-    l/"「/ \ ̄`ヽ \  乂二>ミ_     ノ /ヽ_
    / /  j j {  j   /j   ヽl\\  l   jr‐  \ \   \  l     ̄癶  / /  〉 \
   / // l {  l  l   l l _,,,,__‐-\\{   ,,x=ミx,,,l \\ `~-l  } 弋  ̄ /   /     Y
   j l/  l l  l  l    -xシ"⌒`  \l  '" ,,,,,, `゙j   /\\l  } j/   \    /     l
 / { {   八l/八 l   八  '''''      、         / /  l  } j/   / ヽ-‐''"       l
∥ 八l     \ \ \   \        ,   // /  j ノ/     八           l
{  {     八{  \ \ `~ミ=   `t''" ̄{   ̄/ /    //     /   V               l
 ヽ !     >―-、  l    \    乂__.ノ    {/    /    // /  ∨          l
   \ /{/Χ  fヽ 乂     ヽト..._  ー  / j   / /   /  //     V           l
    //フ/}  } {  ヽ`'''ー-ミ l~x >-< 斗 | { /   { /    〈(  ___V             l
   / / ノ Χ ヾ}ヽ }     /ヽ} /ハ /ハ  八乂   {(-~、x-~'":::/  /ヽ             l
  / / 癶 /\Χノ::{ ̄ ̄ ̄ `< /  V  {>''" ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/::::::/:::/   / ̄//ト、         l
  / / // ̄ニフ~〉:l         \ /__/         /:::/::::::/   / / 弋 ヽ       l
  }  /┌――――――――――――――――――――――――――――┐  \       }
  ヽ     |   柩. こ こ お か し い ん じ ゃ な い ッ ス か ぁ ?|        ノ
   \  └――――――――――――――――――――――――――――┘        /
    \    }//:::l       / j | | \       }::::::::::::〉 〉|   {              /

?「嘘ですよね?>>365さん」

金星寮三号室香涼部屋

バタン

涼「…」

涼「…ふう。やれやれ」

香子「…東のやつ、帰ったか」

涼「香子ちゃん。起きておったんか?」

香子「いや…今のドアの音でな。それにちゃんと布団で寝ないと明日が辛い」ボフッ

涼「ふふ…」

香子「で、結局なんの話だったんだ?東のやつ随分と安心したような顔をしていたが」

涼「ん…なに。大したことじゃないんじゃ」

香子「それは気になるな。だがお前がそういうなら私はあえて聞こうとは思わんよ」

涼「…そうじゃなぁ」

香子「さあ、もう寝よう。消灯時間を過ぎての部屋の移動も今日だけの特別だからな。緊急の用のようだったから大目に見たが」

涼「わかっておるよ。もうやりはせん」

香子「ふわぁ…」

涼「…」

香子「電気消すぞ」パチッ

涼「…のう香子ちゃんや」

香子「なんだ?」

涼「走りのことなんじゃが」

香子「ああ?」

涼「なにか、あの一件以降変わったところは見受けられるかいのう?」

香子「…?いや、特に。そもそもあまりあいつのことをよく見ていないというのもあるが」

涼「そうか…」

香子「私があいつに関して知っていることと言ったら…いつも一ノ瀬と仲良さそうにしているよな。クラスの連中とも積極的に絡みに行くし。それくらいか?ムードメーカーってやつなのかな」

涼「…」

香子「…まあ、黒組の裁定者を任されているそうだし当然それだけの人間ではないだろうとも思うよ。油断できないやつだ。底知れないところがあるよな。首藤、お前も気をつけておいた方がいい」

涼「…そうじゃのう」

香子「どうした?首藤。突然あいつのことを聞くなんて珍しいな」

涼「いや。なんでもないんじゃ。なんとなく香子ちゃんが走りのことをどう思っておるのか知りたかったんでのう」

香子「…?そうか?なんだかよくわからないが…」

涼「ん。ワシはもう寝る。おやすみ、香子ちゃん」ゴロッ

香子「あー…ああ、おやすみ」

涼「…」

香子「…ん?走り……?」

涼「…なんじゃ?どうかしたんかの?香子ちゃん」

香子「…」ブツブツ

涼「香子ちゃん?」

香子「…いや。…おかしいな。なにか忘れているような気がするんだ。それを思い出した」ブツブツ

涼「…」

香子「…なんだったか。大事なことだ。…どうしても言っておかなければいけないと思っていたことを…」

香子「少し前に、頼まれて……いた…よう、な……」

涼「…」

香子「…」

香子「…ん。すまない、もうちょっとで出てきそうな気がするん。あとすこし…」

香子「うむむ…」

涼「…今日はもう遅い。また思い出した時でも良いじゃろう」

香子「だが……」

涼「なに、大丈夫じゃって。そんなに重要なことならそう忘れることもあるまい。香子ちゃんは真面目じゃからのう」

涼「大方それほど重要ではない案件を責任感持って考えすぎておったんじゃろ。だから思い出した時でもいいよ」

香子「そんなものか…」

涼「うむ。特に今は頭を使ったばかりでだいぶ疲れておるようだし」

香子「…実は、そう…なんだ。全然…頭が、まわ…ら…い上…眠い………」

涼「そうかそうか」

香子「こんなに…眠…久しぶり…なんだ…」ウツラウツラ

涼「そうじゃのう。香子ちゃん、今回頑張っておったからのう。だから…」

香子「だから、すまない…首藤…私は…もう…ね…」

涼「…うむ」

香子「…すー…すー」

涼「…」

涼「…」モゾモゾ

涼「…香子ちゃん?」

涼「…」

涼「香子ちゃん」

涼「…」

涼「…」

涼「…」

涼「…寝たか」

涼「…さて、と」ムクリ

涼「んー…」ノビー

涼「…ふう」

涼「さて…それじゃあそろそろ…」

涼「ワシもあの子の泣き顔拝みにいくとするかのう」クスッ

金星寮1号室晴兎部屋

兎角「…一ノ瀬?」

兎角「おい一ノ瀬。どこにいる」

兎角「っ!!油断した!!」

兎角「予告状は…!」

兎角「…ない…か…?」

兎角「争った形跡もないし…いや、あいつなら眠ったまま起きずにそのまま拉致された可能性もあるか…」

兎角「…いや。馬鹿な。そんなことをする前に、もし暗殺者に狙われたというならこの部屋で始末されているに決まっている」

兎角「だとしたら…」

兎角「また勝手にどこかに行ったな!!?」ダッ

バタン!!

植物園入口前

鳰「…」

しえな「…」

真夜「はぁ~い」ニヤニヤ

鳰「…真夜さん。そこをどいて欲しいッス」

真夜「ん~?……却下」

鳰「…」

しえな「頼む。どいてくれ。ボク達は植物園に用があるんだ」

真夜「ん~、おいおい駄目だろう~。こんな時間に無断外出。しかも閉まった学校施設に無断侵入。もしかして不良か?」ニヤニヤ

鳰「…」

真夜「この植物園、アニマルさんたちも住んでっからよぉ?夜に騒音出したらおったまげて眠れなくなって可哀想じゃねぇか~」

鳰「…うるさくしないッス。だから後生ッス。お願い。真夜さん」

真夜「ん~…だぁめぇ。ぶっぶー」

しえな「そんな!なんでだよ!?どうしてボクたちの邪魔するんだ!?」

真夜「ああん?なんでってそりゃあ…頼まれたからさ。誰もここ通さないでくれってよぉ」

しえな「頼まれた!?誰にだ!?」

真夜「そりゃあお前…」

真夜「…誰だと思うよ?当ててみな。プレゼントを進呈するぜ」ニヤッ

鳰「…真昼さんッスか」

真夜「はい外れ~ざんね~ん」

鳰「…」

しえな「…武智か、犬飼か」

真夜「はいそれもざんね~ん。はいしっかーく。これじゃあプレゼントはあげらんねーなー。勿体無い」

鳰「…真夜さん。ウチ、いろいろとちょっと怒ってるッスよ。あんまりしつこいとウチだって…」

しえな「鳰!よせ!」

真夜「さてさてそれでは気になる正解は~!?」

鳰「…」

7号室鳰部屋

涼「…おや」

春紀「…あれ」

兎角「…ちっ」

涼「…およ?何故お主が走りのベッドで寝ておるんじゃ?」

春紀「あー…やっべ、ちょっと休憩するつもりが寝ちまってた…」

涼「おやおや」

兎角「そんなことはどうでもいい!ここには寒河江だけか?走りは…どうでもいいが、お前たち一ノ瀬は見ていないか!」

涼「見ておらんのう。部屋におらんかったのか?」

春紀「なに?どうしたのさ。晴ちゃんがなんかした?」

兎角「…クソッ!部屋に帰ったら寝ていたはずの一ノ瀬が居ないんだ!」

涼「おやおや」

春紀「えー?奇遇だな。あたしんとこも伊介様がどっか行っちゃってさ。探すつもりでこの部屋来たんだよ」

涼「ワシらの部屋には来ておらんのう。来ても香子ちゃんは寝てしまっておるし…」

兎角「犬飼が!?最悪じゃないか…!」

春紀「あ~…もしかしたら伊介様がついに動いた?晴ちゃん予告状貰ったのか!?」

兎角「いや、それはわからないが…」

涼「ふむ…これはもしかするともしかするのか…?」

春紀「やっばぁ…出し抜かれちゃったかも?これはいよいよ走りなんか相手にしてる場合じゃなくなって来たな…あたしの願いは伊介様にだって譲れないんだよ!」

兎角「ちっ!この際だ!ならお前も晴探しを手伝え!」

春紀「…ええい、仕方ない!背に腹は変えられんってか?あくまで探すの手伝うだけだかんな!伊介様にはあたしが手伝ったって内緒にしておけよ!?」

兎角「十分だ!」

タタタタタ

涼「やれやれ、そそっかしいのう。ドアも閉めずに行ってしもうたわい」

涼「…ま、好都合じゃ」クスッ

涼「ふふふふ。このワシがいじめ…か。我ながら呆れてしまうわい」

涼「十分の一も生きとらん小娘をいじめたくなるなぞ、これだけ生きてまだ幼稚な部分が残っておったとはな」

涼「英や犬飼、桐ケ谷など…他の連中と違ってワシはそこまで激しい感情を持つことはないと思っておったんじゃが」

涼「まさか嗜虐心の方がくすぐられてきよるとは」クスクス

涼「さて、まずは何をしようかの。部屋に荷物は…ほとんど無いか。あまり弄り甲斐の無い部屋じゃ」

涼「ん~…」

涼「家具はベッドは…これ、学園の備品の可能性が高いんじゃろうな。壊して後で弁償請求されるのは勘弁じゃ」

涼「とりあえずゴミ箱はぶち撒けておこうかの?」ゲシッ

涼「授業道具への悪戯は…なんじゃこれ、最初から全然使っとらんな?使った形跡がほとんどないわいあの不真面目娘めが」

涼「全部捨ててやっても良いんじゃが、そうするといくらなんでも流石に溝呂木先生に怪しまれるじゃろうし…怪しまれるじゃろな?うん、流石に怪しまれると思うわい」

涼「…」

涼「…」

涼「…いかんのう、他に全然弄れるところがない」

涼「うーむ…ワシ、いじめの才能ないんかのう。あまり陰湿なのさらっと思い浮かばんわい」

涼「…やはり本人に会って直接やらんと思いつかんな。走りが部屋におらんならワシはあやつを探そうか」

涼「…っと、その前に」

涼「地味にドアノブに仕込みの刃のトラップと」カチャカチャ

涼「書き残しだけは置いていこうかの」

涼「~♪」サラサラ

植物園

乙哉「はぁ…ぜぇ…」

伊介「くすっ♥」

乙哉「ぜぇ…はぁ…はぁ…!うぁ…」

伊介「思ったよりは楽しかったわよ」

乙哉「はぁ…はぁ…はぁ…ちぇ、しくじった…」

伊介「まさか伊介のナイフを鋏で壊しちゃうなんて。正直、結構焦った」

乙哉「…はぁ…はぁ…」

伊介「でも残念♥伊介は素手でも強いのよ。どう?相手の獲物壊して油断した?」

乙哉「…おしり重い。どいて」

伊介「むっ。重くないわよ。軽いわよ」ギリッ

乙哉「カハッ!」

伊介「知ってる?この態勢。マウントポジション。格闘技でも有名でしょ。あ、もしかしてそういうのは見ない?」

乙哉「はぁっ…!げほっ!ごほっ!けほっ!」

伊介「首締められても逃げられないでしょ。苦しそうな顔。…ふふ、無様で情けなくて、いい感じ♥」ギリギリ

乙哉「あ…ああ…!あああああああ!!」

伊介「せめて腕がまだ使えればねぇ?」スッ

乙哉「…あ…あ…あ…やだ、やめてそこには触らないで…」

伊介「でも残念。あんたのこの悪さする腕はさっき伊介が腕ひしぎで折っちゃった♥どっちの腕も。丁寧に。こうやって」グリッ

乙哉「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」

伊介「あはっ♥いい声!次はどうする?そのばたつかせてる足も折る?それとももぐ?」

乙哉「なんで…」

伊介「ん?」

乙哉「なんで一思いに殺さないのさ…!」

伊介「そりゃあ…だって、アンタあの子の友達でしょ?」

乙哉「…だよ。悪い?」

伊介「自分のせいでどれだけ友達が苦しんだかっていうの、分かるような死に方させないとあの子が苦しまないじゃない♥」

乙哉「…趣味、悪」

伊介「猟奇殺人鬼が吠えてんじゃねーぞ、キチガイが♥」ボキッ

乙哉「あああああああああああああああああ!!」

伊介「腕、もう一箇所折れちゃったわねぇ」クスクス

乙哉「はぁはぁはぁはぁ」

伊介「凄い脂汗。息も荒いし、凄く痛そう」ニヤニヤ

伊介「もっと痛がれ♥苦しめ♥叫べ♥」ボキッ

乙哉「ぎゃああああああああああああああああああ!!」

伊介「アハハハハ!この声、録音してあとであの子に聞かせてやろっと」

乙哉「…」ボソボソ

伊介「…ん?」

乙哉「……が………で」ボソッ

伊介「…なに?聞こえないんだけど。もっとはっきり…」スッ

乙哉「がああああああああああああ!!」ガブッ

伊介「きゃっ!?」

乙哉「…ぐう」ドサッ

伊介「…びっくりした。まさか顔近づけた瞬間、両腕折れた状態から噛み付こうとしてくるとはね。危ない危ない♥」

乙哉「…」

伊介「反射的に飛び退けなきゃ鼻くらい持ってかれてたかも」クスッ

伊介「でも今みたいに芋虫みたいに這いつくばってるアンタ、お似合いかもね」グリッ

乙哉「…っ!」

伊介「…で、ほんとはなんて言いたかったのよ?」

乙哉「…」

乙哉「たかがあれしきのことでここまでやるなんて…って」

伊介「何よそれ、下手くそな命乞い?」クスッ

乙哉「…いやいや」ニヤニヤ

伊介(脂汗かきながらよく笑えること。強がりはたいしたもんだわ。まあもう殺すけど)

乙哉「鳰っちへのいじめのことさ。伊介ちゃんだけじゃなくて英さんや柩ちゃんもそうだけど、よくもまああんなくだらないことが理由でここまでやるなって思ってさ」

伊介「…なによ。関係ないわよ。伊介はあの子が気に入らないからいじめてるだけなんですけど」

乙哉「へー。ってことは鳰っち、伊介ちゃんが気に入らないようなことしたんだ。しかもこんないじめの枠超えたくらいの嫌がらせしたくなっちゃうくらいの」ニヤニヤ

伊介「…だから違うっての。あと伊介ちゃんって言うな。伊介様って言いなさいよ今すぐ殺すわよ」

乙哉「だとしたらやっぱ『あれ』が原因ってことっしょー!!?」

伊介「だから違うって…!」

乙哉「だとしたらさー。伊介ちゃんってほんとはもしかして…」

伊介「…黙れ」

乙哉「あれあれあれ?なんで怒ってるの?もしかして図星?図星だった?」

伊介「それ以上言ったら殺す」

乙哉「伊介ちゃんって実はもしかして、もしかして、もしかして~~~~~♪…ううん、もしかしなくても」

伊介「そんなのが遺言になって良いの?いやでしょ?ならやめなさいって」

乙哉「伊介ちゃんって、心優しい女の子だったんだね♥」

伊介「…」

乙哉「ばっかみたいにね。ばーーーーーーーーーーか」

伊介「…死ね」

植物園入口前

純恋子「終わりましたわ」カチャッ

真夜「あらら」ガクッ

鳰「…っ!」ビクッ

しえな「英…」

真夜「なんだ残念。勿体ぶってさあこれからだ!ってタイミングで正解に出てこられるとか拍子抜けだっての」ブツブツ

純恋子「あらそれは失礼致しました」クスクス

鳰「…英さん」

純恋子「御機嫌よう。剣持さん。それに塵芥虫」

しえな「…」

真夜「まあ、今更正解言ってもなんだけどさー。そ、俺にお前らの足止め依頼したのは純恋子だよー」ブスー

純恋子「あらあら。そう拗ねないでくださいまし」ナデナデ

真夜「けっ…」

しえな「なにがなんだかわからない…けど、英。申し訳ないけどボク達は急いでいて…」

鳰「…終わったって、何がッスか」

真夜「…」

純恋子「…」ニコッ

しえな「え?」

鳰「…もう一度聞くッス。英さん、終わったって、なにが終わったんッスか?」

純恋子「ふふふ…」ニコニコ

しえな「ちょ、ちょっと。鳰、何言ってるんだ?今はそんなこと言ってる場合じゃ…こいつらのことは後でいいから…」

鳰「早く答えて欲しいッス…!!」

純恋子「何をって…」

鳰「…!」

しえな「…」

純恋子「害獣駆除ですわ」

純恋子「自らの欲望の為になんの罪も無い人々の命を狙う不逞の輩」

純恋子「そんな浅ましく卑しい獣を一匹、先程正義の暗殺者が仕留めたようでしたので」

鳰「…!」

しえな「…嘘だ」

純恋子「いいえ、ウソではありませんわ。なんだったら死体をご覧になられる?」

純恋子「犬飼さんに会えれば快く見せてくださると思いますけれど」

鳰「…っ」ダッ

しえな「あっ…鳰!待て、ボクも行く!」タタタタ

純恋子「…」

真夜「…お疲れさん。で、当の犬飼は?」

純恋子「今の走りさんに会わせては流石に逆上して襲われる危険がありますわ。絶対に遭遇しないよう脱出ルートをGPSで誘導する手はずになっています」

真夜「『死体』は?」

純恋子「首をくくって絶対に手の届かない高さまで持ち上げてから、杉の木に磔ですわ。さながらキリストのようで素敵でしたわよ」

真夜「うわ。趣味わりい!真昼が喜びそうだ!」

純恋子「うふふふ…」

真夜「まあお前らがそれで納得するならいいけどよぉ…俺はちょっと可哀想かなーって思うんだけど…」

純恋子「何をおっしゃいます。あの子は絶対に許しませんわ。まずはひとつ…ご友人が自分のせいで殺されたという罪の呵責を与えることに成功しました」

純恋子「今は相当ピリピリしていましたけれど…頭が冷え怒りが収まってきたころ、この罪の意識というのはかなり効いてくるでしょう」

純恋子「これからもどんどん痛めつけていきますわよ。苦しめて苦しめて、自分から死にたいと思い命を絶たせなければいけません」

純恋子「幸いまだまだ手段のレパートリーはありますし、今回武智さんと剣持さんという良い手札も手に入りました。…まあ武智さんのカードはもう使ってしまったのですけれど」

純恋子「あとは剣持さんのカードを有効なタイミングで使い、トドメに今まで背負ってきた罪の意識を刺激する」

純恋子「なかなか完璧な手順だと思いませんこと?」クスッ

真夜「どうだかなぁ…」

真夜「ま、俺はお前らが満足するなら別にそれでいいけどよ」

植物園

鳰「…」

しえな「…嘘」

鳰「…」

しえな「…なんで」

鳰「…」ガクッ

しえな「武智」ペタン

鳰「…ウチのせいッス」

しえな「…」

鳰「…ウチが」

しえな「…」

鳰「ウチがいなければ乙哉ちゃんは」

しえな「…」

鳰「乙哉ちゃんは死なずに済んだッス…」

しえな「…」

鳰「…あは」

しえな「…」

鳰「あはは…」

鳰「…あははははははは」

しえな「…おい」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

しえな「なんで笑ってるんだよ!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

しえな「笑うな!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

しえな「笑うな!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

しえな「笑うなよおおおおおお!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

鳰「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」


                         x彡三ミx、  
                        //    `ヽ、
                         ∥           \
                         {{           \
                  >'"⌒`ヽll _
                /         ̄   ̄`ヽ、
              /  /   /     ヽ   \
               /   /    /       Y     ヽ
            /   /     ∥        } l      Y    きょうはここまでにしとくッス 
              /  /     l         j l }       l    乙哉ちゃんもうちょっとリョナりたかったけど時間かかりそうだったから自重したッス
           / /  /  /l l       /   ハ     l    ほめて
         / /   /  /  l l     / / /     l  !
      -‐'"  /   /  --―‐l-、  / / / l }    }  l
      /  γ // /  /     l l / /-―-!、/   j }|
      八  弋/  八 {ヾ彡宀ミ`l  //    } /   / ハ }
      ヽ   \   \ \    j/  x=气、/   / } / }
        \   \  `~\    ノ     /  /八/
         `~ミ ヽ   ト   、__     =彡~'"  } /\
             \}トr―l\    ̄   /     ノ  ヽ Y
         --―――rj:::::{  \  -‐</ _ ノ/   ノ ノ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::;::::::⌒}  ノ::::}~{/ _/  /_/
    /::::::f(三三三三三三三::::廴ノ::::::::::::::{(:::::`~< ̄/ノ

    /::::::::l l          l::::::::::::::::・:::::::::::::::::::::::::::::∨ /  /)
   /::::::::::l l       /ノ/ 〉:::::::::;゚::::::::::::::::::r 、:::::::/ / //

   /::::::::::::l l      //  /〉:::::。゚::::::::::::::::::::} }::::/ {//
  /::::::::::::::l l    /      〈:┌┐::::::::::::::::::::} У  / )
  /::::::::::::::::l l:::::::::::::/      /フ l::::::::::::::::::: {    l / /ヽ
 /:::::;;x~⌒>'"{f{      /__  _]::::::::::::::八   } `(/ /
./:/::::::>''":::::::::::l人  _/ |:::l l |::::::::::::::::::::::::::`r<    八
У:::/::::::::::::::::::::::::l/⌒ー-ニ:::::::::l l l::::::::::::::::::>~}l\ ̄ ノ}:::l

{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::`~l l l~r‐''"    八  ̄  l::::\
乂:::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::LL |:::::l        {:::l    /::\::}
  ヽ:::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::○:::::::::::::::::l      l:::l   /::::::::::::ヽ
   `ー--イ\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j       Yヽ/:::::::::::::::::/
     /:::\::`<;;;;;_:::::::::::::::_ 彡ィ"         弋::::::::::::::::::::::/
   /::::::::::::::`<:::::::::::: ̄ ̄ ̄::::::::::癶           \:::::::::::::ノ
   /:::::::::::::::::::::::::::::::ミ:::ー-----::彡:::::::ヽ         ヽ:::::::/
  /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、           └'"

しえな「……とにかく、どうにかして武智を下ろしてやらなくちゃ。武智が可哀想だ」

鳰「…」

しえな「少しは落ち着いたか?」

鳰「…」

しえな(……さっきまで大笑いしてたかと思ったら、急に静かになったな)

しえな(まったく。ボクだってショックだっていうのに。隣であんなに壊れられたらおちおち取り乱すこともできないじゃないか)

しえな「しかし、一体何メートル上に磔にされているんだ?どうやって…いや、そんなことはどうでもいいか」

しえな「さて、どうやってあいつを下ろすか…」

鳰「……もう無駄ッスよ」

しえな「走り?」

鳰「表情までは見えないけど…腕が折れてるのにピクリともしないッス。首も変な方向に曲がってて、呼吸もしてるように見えない」

鳰「どう見てももう死んでるッス。……下ろすだけ無駄ッス」

しえな「……そうはいうけど、でも可哀想だろ?」

鳰「……可哀想?」

しえな「ああ。死んでなおあんな格好で磔にされてるなんて。武智だって報われないだろう。だからせめて……」

鳰「せめてなんだって言うんッスか!!!」

しえな「っ!」ビクッ

鳰「いいッスか?しえなちゃん。もう死んじゃったらそれまでなんッス」

しえな「…」

鳰「もう。駄目なんッス」

しえな「…」

鳰「もう、意味が無いんッスよ……」

しえな「走り……?」

鳰「ウチらにできることは……」

しえな「…」

鳰「他ならぬしえなちゃんになら、わかるッスよね?」

しえな「まさか…」

鳰「先行ってるッス」スッ

しえな「あ……」

しえな「…行ってしまった」

しえな「…」

しえな「……武智」

しえな「……鳰」

しえな「…」

しえな「……っ!!!勝手にしろ、馬鹿走り!!」

しえな「ボクは一人でも武智をここから下ろすからな!」

真夜「さて。で、これからどうするんだ?」

純恋子「と、おっしゃりますと?」

真夜「このあとさ。『死体』をそのままほっとくわけにもいかねーだろ?昼間に他のクラスのやつらが来たら騒ぎになっちまうし」

純恋子「そうですわね。後で私が直々に植物園の開園前に下ろしておきますわ」

真夜「でもたけーとこにあるんだろ?病弱のお前一人でどうやって…」

純恋子「ご安心を。木登りは得意ですの」

真夜「ん?そうなのか?意外だなぁ」

純恋子「それに、そもそも死体を磔にしたのも私ですし」クスクス

真夜「……はぁ?なんだそりゃ」

純恋子「…あら?」

真夜「おっ」

伊介「はぁい。なんの話をしてたのかしら?」

真夜「おう、お疲れさん。武智の奴とやりあったんだって?どうだったんだ」

純恋子「…」

伊介「ん…伊介にかかれば楽勝♥」

伊介「……二人もグルだったんッスね」ボソッ

純恋子「…」クスッ

真夜「へー。あいつ結構やりそうなもんだったけどな。やるじゃねぇか犬飼。無傷での勝利とはよ」

伊介「ありがと♥でも疲れちゃった。これからどうするの?」

純恋子「どうもしませんわ。帰りますわよ。今から帰れば授業までに数時間は眠れますわ」クルッ

真夜「へいへいっと」

伊介「…」

純恋子「…ところで犬飼さん」

伊介「…何よ」

純恋子「武智乙哉の最後はどんな感じだったか、伺ってもよろしくて?」クスクス

伊介「……っ!!」ギリッ

真夜「…ん?」

純恋子「その様子ですと、さぞかし圧倒的な勝利だったとお見受けいたしますわ」

純恋子「やはり正規の訓練を受けた暗殺者と気狂いの野良犬とでは暗殺者としての格が違った、ということですか」

伊介「はぁ…!はぁ…!」プルプル

真夜「おいどうした?犬飼。急に息荒くして……」

純恋子「まああんな野良犬、私達にとってはどうでも良い存在ではありますけれど……」

純恋子「さぞかし愉快でみっともない死に方をしたのなら、紅茶のお供にでも是非お聞かせ願いたいと」

伊介「…そうねぇ。知りたい?」

伊介「知りたいなら教えてあげる」

伊介「全身グチャグチャになって…腕もへし折れて…首も変なふうに曲がっていたわ」

伊介「来ていた服もボロボロで、鋏は持っていなかった。戦闘中に取り落としたのかもね」

伊介「杉の木に磔っていうのは趣味が悪いと思うわよ。手のひらに大釘を打ち付けて固定って、まるでキリストじゃない」

伊介「馬鹿みたいに高いところに吊り上げられてたせいで表情は見えなかった。でもかえって良かったかもね」

伊介「だってそうでしょ?死に顔を見たらもっと気がおかしくなって。流石に折れてここまで来れなかったたかもしれないッスもん」

伊介「ここで……こうして……」

伊介「あんたらに復讐をするために!!ここに!!!」ヒュッ

真夜「うおっ!?」

純恋子「あら危ないですわよ真夜さん」ヒョイッ

伊介「っっ!!離せッス!!」

真夜「おい犬飼!?てめ、なんでいきなり……」

純恋子「真夜さん。この子、犬飼さんじゃありませんわ」

真夜「はぁ?おいおい何言ってんだ!どう考えてもこいつは犬飼……」

純恋子「西の葛葉」ギリギリ

伊介「離せ!!離すッス!くそっ!!あああっ!!」

純恋子「噂には聞いていましたけど、幻術で人に化けるっていうのは本当だったみたいですわね」

鳰「離せっ!!離せ!!!殺してやる!!お前らみんな殺してやるッス!!」ジタバタ

真夜「マジかよ…よくわかったな?」

純恋子「だって、犬飼さんにはここには来ないよう伝えていますもの。それに知っているはずの情報も知らないようですし」クスクス

真夜「ああ。言われてみればどーもなんか変だと……」

純恋子「西の葛葉ともあろうものが、実に安直で考えなしの騙し打ちを思いついたものですわね。呆れてしまいますわ」

鳰「うううううううううう!!!!うううああああああああああああああ!!!離せぇえええええええええええええ!!!」

純恋子「はい、離しましたわ」パッ

鳰「…えっ?」

真夜「…」

純恋子「どうかしまして?言われた通り腕を離しましたわよ?」

鳰「…っ!!馬鹿にしてっ!!」ヒュンッ

純恋子「おっと危ない」キンッ

鳰「…?……あ」

純恋子「あら、失礼。ナイフを手で受け止めてしまったせいで刃が折れてしまいましたわね」

鳰「あ、あああ……」

純恋子「さて。では、次は何をしてくださるのかしら?私を殺したいのでしょう?」

鳰「あ、あああ……ああああああああああああああああああああああ!!!」

純恋子「……がっかりですわね。考えもなしに飛びかってくるなんて」

真夜「…」

純恋子「結構大変ですのよ?人間が壊れない程度に力を調整して殴るのは」ドスッ

鳰「うげ…っっっっ!!」ドサッ

純恋子「はい、終わり。残念でしたわね」

鳰「うげ…っ!おえええええええ!!」ビチャビチャ

純恋子「あらあらみっともない。友達の仇を討ちにここまで来たのに、たった一発殴られただけで這いつくばって嘔吐して戦闘不能?」

鳰「おええええええええ!!げほっ!かはっ!おえっ!うぇっ…」ビチャビチャ

純恋子「武智さんは貴女のために文字通り命を賭けて、死ぬまで戦ったのに。当の本人は情けないですわねぇ」クスクス

鳰「げほっ!げほっ!おえっ!ううう…ううううう…」ポロポロ

純恋子「挙句の果てに涙まで流して…嗚呼情けないですわ。みっともないですわ!こんなんじゃ武智さんも報われないですわね!」

鳰「うううう…う…っっっ!おえええええええええええええええ!!」

純恋子「あはははははははは!!」

真夜「…純恋子」

純恋子「あら、どうかいたしました?真夜さん」

真夜「いや…なんでもねー。そろそろ帰ろうぜ」

純恋子「…」チラッ

鳰「…おえっ…うううううう…うううううう…」シクシク

純恋子「…それもそうですわね。今回はこのくらいにしておきましょうか」

鳰「ま、待つッス…」

純恋子「」スタスタ

真夜「」スタスタ

鳰「待つッスよ…」

鳰「待て…」

鳰「待って…」

鳰「……殺す」

鳰「殺す」

鳰「絶対殺してやるッス…」

鳰「殺してやる…」

鳰「殺す」

鳰「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

鳰「……殺して」

鳰「…」ガクッ

植物園

しえな「よし、うまい具合に脚立があった。これでなんとか武智を下ろしてやれる」

しえな「もう少しだけ待っててくれ、武智。今ボクが下ろしてやるからな」

しえな「……まったく。お前って奴は最後の最後まで迷惑なやつだったよ」

しえな「挙句の果てにこんな辛い思いをさせてくれるなんて…」

しえな「お前がいてくれなかったら、ボクはどうすればいいんだ?」

しえな「走りのやつを守るって…決めたのに…お前でも敵わなかったやつら相手にボク一人で…」

しえな「…」

しえな「…ごめん。今はそんなことを考える時じゃないよな。今下ろしてやるから…ん?」


晴「」キョロキョロ


しえな「一ノ…瀬…?」


晴「ん~。いないなぁ……」キョロキョロ


しえな(馬鹿な。どうしてあいつがこの時間にここに?)

晴「」キョロキョロ


しえな「まだこちらには気付いてないみたいだけど…こんなところでなにをしてるんだあいつは」

しえな(まずいな。あいつは一般人だ。いくらなんでも武智の無残な死体を見せるのは気が引ける)

しえな(自分が原因とはいえ、走りでさえあれだけ取り乱したんだ。日なたの世界の一ノ瀬が今の武智を見たら…)

しえな「…」

しえな「…すまない武智。もう少しだけ待っていてくれ」

しえな「生前のお前ならどう思っていたかはわからないけど…ボクは、これ以上お前の影響で人が傷つくところを見たくない」

しえな「先に一ノ瀬を部屋に帰してから、また助けにくるよ。それまで、もう少しだけ我慢していてくれ……」

しえな「…」


晴「う~ん…やっぱりこの時間じゃ…」


しえな「おおーい!一ノ瀬ーーーー!!」

晴「あれ?しえなちゃん?」

しえな「どうしたんだ?こんな時間にこんなところで」

晴「へっ?あ、えーっと…」オロオロ

しえな「それに寝巻き姿じゃないか。駄目だぞ?いくら夏とはいえ、こんな格好で植物園なんかうろついていたら。虫にでも刺されたらどうするんだ」

晴「あ、あははは…う、うん。寝る前にちょっとだけ見に来るだけのつもりだったから……」

しえな「寝る前にって…植物園はこの時間原則立入禁止だぞ?そんな軽い散歩感覚で…」

晴「い、いや決して晴は軽い気持ちで来たというわけはないのですが…うう~ん…」

しえな「まあいい。とにかく、お前もう帰れ。きっと東も心配しているぞ」

晴「あー…」

しえな「…どうしたんだ?」

晴「…もうちょっといたら駄目かな?」

しえな「お前なぁ…」ハァ

晴「そ、そうだ!っていうか、しえなちゃんこそどうなの!?なんでここにいるの!?」

しえな「それは…い、いいだろ!とにかくお前帰れ!」

晴「あっ、誤魔化した!」

しえな「うるさいなぁ!じゃあボクも一緒に寮まで戻るから帰るぞ!ほら!」グイッ

晴「あっ、ちょっと痛いよそんなに強く引っ張らないでしえなちゃん!」

しえな(くっ…!あくまで抵抗するか!いい加減にしろよ?ボクだって苛立っているんだから…)

晴「わかった、わかったよ!しえなちゃん、一緒に帰ろ?だから一回手を離して…あっ」

しえな「へ?」

晴「兎角さん」

しえな「」ゾクッ

兎角「……晴」

兎角「剣持。一ノ瀬から手を離せ」ギロッ

しえな「ひっ…」パッ

晴「え、えっと…兎角さん?」

兎角「…」

晴「兎角さん…」

兎角「なんだ」

晴「……お、怒って、ます?」

兎角「当たり前だ馬鹿。よく生きてたな馬鹿。運が良かったな馬鹿。お前、自分の立場を忘れてるんじゃないか?馬鹿」

晴「…ごめんなさい」

兎角「だがまさか犬飼ではなく剣持が来るとは私にも予想外だったかな」

しえな「お、おい。その目はなんだよ?東」

兎角「やるじゃないか剣持。まさか全員出し抜いてこのタイミングで晴をこんなところに連れ出すとは」

しえな「待て。待て待て待て。おい東。お前なにか誤解をしていないか?」

晴「と、兎角さん?ちょっと落ち着いて欲しいの」

兎角「私は冷静だ」

兎角「だから冷静にそいつを痛めつける。もう二度とこんな巫山戯た真似をしようとは思えない程度にな」

しえな「ひ…!」

晴「ちょ、ちょっと兎角さん!落ち着いて!落ち着いてよ!違うの!しえなちゃんは…」

兎角「さあ、覚悟はいいか?剣持」

しえな「あ、ああ…」

しえな(なんだよこれ…こいつ、なんて恐ろしい目をするんだ)

しえな(今まで会ってきた奴の中で、こんなに怖い目をするやつには会ったことがない)

しえな(ヤバイ…絶対に。でも…)

しえな(ここでボクがやられたら、武智はあのままだし、鳰だって孤立してしまう…!!)

しえな(けど…!!)

兎角「では死ね。半分くらいな」

晴「もうっ!待ってってば!!兎角さん!!!」ガバッ

植物園入口

鳰「…う」

鳰「…うう。気を失ってたッスか?」フラフラ

鳰「あの二人は…もうとっくに帰っちゃったッスよね」

鳰「…畜生。惨めッス」

鳰「仇討ちに勇んで突っ込んで、冷静さを欠いてあっさり術を看破された挙句散々嬲られた上で放置って…」

鳰「……ウチ、なにをしてるんッスか」

鳰「…おなか痛いッス。くそっ。あの馬鹿力お嬢様め」

鳰「……この感じだと青あざになってるッスかね。酷いもんッス」

鳰「…はぁ。これからどうしよう」

鳰「……決まってるッス。しえなちゃんのとこに戻って、さっきの酷いこと言ったの謝って乙哉ちゃんを下ろしてあげないと……」

鳰(でも、ちょっと戻りにくい……)

春紀「伊介、様……?」

鳰「……え?」

春紀「おいおいおい、どうしたんだよ伊介様。ボロボロじゃんか!」

鳰「春紀……さん……?」

春紀「あーあーあー服もこんなにして。顔も土だらけだし…って、うわっ、ゲロ吐いてたの?ばっちい!」

鳰(あ……そういえば、術を解くの忘れてたッス)

春紀「……あ、悪い。ばっちいとか、女の子に対して言うセリフじゃなかったな」

鳰「…」

春紀「ってか、涙の跡まであるんじゃん。なんだよ、どうしたの?ここで何があったのさ」

鳰「…」

春紀「……言いたくなきゃ言わなくてもいいけどさ」

鳰「…」

鳰(……春紀さんが優しいッス。この人もウチに対して結構手が出てたイメージだったのに。なんか変なの)

春紀「あー……」

鳰「…」

春紀「……とりあえず、部屋に帰ろっか?」

鳰「…」

春紀(東のやつには晴ちゃん探し手伝うって言って来たけど、まあ晴ちゃんに対する危険人物の伊介様がこんな感じでここにいるんだったらもう大丈夫だろ)

鳰「……うん」

春紀「よし、決まり。それじゃあ帰るよ。おぶってってやろうか?」

鳰「いい。歩ける」

春紀「そっか」

鳰(触られたら身体の大きさの違いでバレちゃうっすからね)

鳰(……まだ、どうやら悪運は残ってたみたいッス)

鳰(犬飼伊介)

鳰(ウチが1番殺してやらなきゃ気が済まない女)

鳰(それに、春紀さんは伊介さんが1番お気に入りだし)

鳰(ウチがアンタに乙哉ちゃんを殺されたように。ううん。もっと残酷に。ウチもアンタの目の前で春紀さんを奪ってやる)

鳰(そして絶望したところで、地獄に叩き込んで高笑いしてやるッス)

鳰(だから、ごめん。しえなちゃん。乙哉ちゃんのこと、勝手ながらお願いするッスよ)

鳰(こんな自分勝手なウチのこと……やっぱり嫌いになっちゃたッスかね?でも、それでもいいッス)

鳰(ううん、むしろそうなってくれたほうが……)

鳰(あの人らのことッス。ウチがまだしえなちゃんと仲良くしてたら、今度はしえなちゃんを……)

鳰(そんなことになるくらいならいっそ)

鳰(いっそ、しえなちゃんもウチのこといじめる側に回ってくれた方が……)

鳰「…」グスッ

春紀「伊介様?」

鳰「なん…でもな…い…っ!」

春紀「…」

春紀「涙声でそんなこと言われても、かえって気になっちゃうだけだっつーの…」ボソッ

数分後

ガチャッ

晴「あー…良かった。兎角さんがわかってくれて」

兎角「まったく、紛らわしいんだよ」ブツブツ

しえな「寿命が縮んだかと思った……」

兎角「悪かったよ。私も気が動転していたんだ」

晴「ふふっ……でも、兎角さんが晴のことそんなに気にかけてくれてたなんて、晴ちょっと嬉しいな」

兎角「一ノ瀬、調子に乗るなよ?」

晴「ごめんなさーい」

しえな「まだ心臓がドキドキしているよ」

兎角「だから悪かったって」

晴「全くだよ。兎角さん全然話聞いてくれなかったんだもん。しえなちゃんは晴のこと心配してくれてただけなのに」

兎角「晴。また調子に乗ってる」

しえな「まあもういいから。早く帰ろう」

兎角「そうだな。明日も早いんだ。私はもう今日は絶対に何にも付き合わないからな。絶対寝る。起きられなくて遅刻しても知らん」

晴「もー。ごめんなさいって言ってるでしょ。拗ねないでよ兎角さんも」

しえな(参ったな……)

しえな(一ノ瀬のお陰でなんとか危機は乗り越えられたけど)

しえな(武智を下ろす前に随分時間を消費してしまった)

しえな(東にだけは伝えようかと思ったけれど、もうこれ以上話をややこしくして時間を浪費するのは御免だ)

しえな(こいつらを寮に帰したら、すぐに植物園に戻らなきゃ)

しえな(ああもうっ!なんなんだよっ!!)

しえな(さっきまで入り口に居た英と番場もいつの間にかどこかにいなくなってるし)

しえな(おそらくは犬飼を探しに行った走りもいない……)

しえな(くそっ!!!問題が山積みだ!!)

兎角「ところで、どうして二人はあんなところにいたんだ?」

晴「それは……」

しえな「ほら二人共!いつまでも口を開いてないでそろそろ急いで部屋に戻るぞ」

しえな「万が一委員長にでも見つかったらたっぷりお小言とお説教だ。そんなの御免だろ?」

晴「はっ!そうだよ兎角さん!急いで戻らないと!」

兎角「あー……まったく。お前らってやつらはめんどくさい。わかったよ。それじゃあ行くぞ。小走りだ。物音は立てるなよ」

晴「らじゃっ!隊長!」ビシッ

しえな「…」

しえな(…ふう。これで十数分は稼げる…かな?)

植物園

涼「ほうほう。これはこれは…」

純恋子「あら。首藤さんじゃありませんこと」

涼「おお。英か」

純恋子「どうですか?この『死体』。なかなかに芸術的な造形ではなくて?」

涼「そうじゃのう……これを走りに?」

純恋子「ええ。見せましたわ。もっとも、私が直に見ているところを確認したわけではないのですけれど」

涼「ふうん…」

純恋子「それと……剣持さんにも」

涼「なに?それは……」

純恋子「ええ。彼女には悪いことをしてしまったとは思いますわ」

涼「そうじゃのう。走りいじめのためとはいえ、あの子は関係なかろうに」

純恋子「…」

涼「……まあ、もう済んでしまったことは仕方あるまい。あれ、どうするんじゃ?」

涼「このまま放置しといては騒ぎになるぞ?」

純恋子「勿論回収致しますわ。バラバラにして人目の付かないように捨ててしまえば、はい終わり」

涼「とはいえあの『ゴミ』、随分高いところにあるようじゃが」

純恋子「こうするまでですわ」ガシッ

涼「…おお」

純恋子「本当は手の内を見せることは避けたかったのですが……まあ、これくらいはいいでしょう」

涼「これは驚いた。なんじゃお前さん暗器使いか?手から伸びたワイヤーであっという間に……いやしかしこれはまるで油圧のような力じゃのう」

純恋子「……ええ。まあそんなところですわ」

涼「ふぅん」

純恋子「で、これをこうやって細かく引きちぎって、と」ブチブチブチ

涼「うへぇ」

純恋子「あとは……そうですわね。てっとり早いので杉の木の下に埋めてしまいましょうかしら」ガガガガ

涼「はぁ~。まるで重機じゃのう。あっという間に穴が掘れた」

純恋子「感心して頂いているところ誠に恐縮ですが」

涼「おお、なんじゃ?」

純恋子「この事は他言無用ですわよ?」

涼「はて。それは何に関してかのう?お主の武器についての話か?『ゴミ』の捨て場所についての話か?それとも…」ニヤリ

純恋子「……勿論、全部に関してですわ」

涼「はいはい。あいわかったわい。だからそんな恐ろしい目でワシを見るな」クスクス

純恋子「さて、用はすべて済んだので撤退しますわよ」

涼「ん。剣持が戻って来る前にじゃな?」

純恋子「ええ。監視衛生によると、もう一ノ瀬さんと東さんと別れてこっちに走ってきていますし」

涼「では…」

純恋子「ええ。これで死体消失完了。彼女からすればまるで狐に抓まれたような気分でしょうね」

涼「やれやれ。哀れな娘じゃ」

純恋子「…」

涼「ん?どうした?帰らんのか?」

純恋子「…そういえば、ちょっと気になったことがありまして。せっかくですので首藤さんにご意見伺ってみてもよろしくて?」

涼「うむ。ワシに答えられることなら」

純恋子「実は私、先ほどの犬飼さんと武智さんの戦闘の一部始終、音声でリアルタイムで確認していたのですが」

涼「……準備が良いのう」

純恋子「ええ。それはもう。あの方信用なりませんし。準備しておいて正解でしたわ」ハァ

涼「……で?それがどうかしたのかの?」

純恋子「ええ。すでにお察しとは存じますが戦闘は犬飼さんが勝利に終わり、万策尽きた武智さんは最後に、犬飼さんと会話を始めたのですわ」

涼「そりゃあのう…って、会話?」

純恋子「ええ。会話」

涼「どんな会話じゃ?気になるのう。友情のために戦い破れ、自らの死を悟った猟奇殺人鬼が一体何を最後に話したのか」

純恋子「そうですわね……私もそれが気になって耳を傾けて居たのですが」

涼「?」

純恋子「訳のわからないことを言っていましたわ」

涼「それは、どういう……?」

純恋子「こうですわ」

乙哉『伊介ちゃんって、心優しい女の子だったんだね♥』

伊介『…』

乙哉『ばっかみたいにね。ばーーーーーーーーーーか』

伊介『…死ね』






純恋子「その先があるのですわ」




乙哉「…死ね、か。ふふ……そうだねぇ。やっぱそうなっちゃうのかねぇ」

伊介「……?」

乙哉「……あーあ。なんだろね。散々快楽のために人殺してきたあたしだし、いつかこんなことになるって気はなんとなくしてたんだけど」

伊介「……はぁ?」

乙哉「……あーあ。まさかこんなに早くその時がくるとはなー。もっとやりたいこといっぱいあったのに」

伊介「なによ。今更そういうこと言い始めちゃうわけ?言っとくけど伊介はそういうおセンチ系には心動かないタイプだから」

乙哉「となり町のOLさん。もうちょっとで身体許してくれそうだったのになー。あと2週間もあれば寝床でチョッキンできたって思えば勿体無い」

乙哉「近所の大学のおねーさん。あたしのアドバイスで友達できたって嬉しそうだったよなー」

乙哉「信頼は十分得れてたし、あとは二人きりになるタイミングさえあればヤっちゃえたのに悠長にしてるんじゃなかった」

乙哉「ケーキ屋のおねーさん。あたしのために特製ケーキ作ってくれるって。それ食べてみたかったからって食い意地張って待ってたうちにこのザマだし」

乙哉「高校の同級生。生徒会長。陸上部で800mやってるって言ってた後輩。みんなみんな。食べ損なっちゃった」

乙哉「本当のあたしを教えてあげ損なっちゃった。みんなみんな、綺麗で可愛くて、優しくて素敵で輝いてて美味しそうだったのに」クスッ

伊介「……アンタ。伊介が言うのもなんだけどほんと屑ね。伊介、実は今すごく正義の味方してる?」

乙哉「ねえ、伊介ちゃんさぁ」

伊介「なによ。伊介ちゃん言うなって何回言わせるのよ」

乙哉「『世界は赦しに満ちている』」

伊介「…」

乙哉「……って、言葉知ってる?」

伊介「知らないわよ。何?やっぱり命乞い?ふざけんなよ♥」

乙哉「そうじゃなくて……あたしさ。この言葉、覚えてないんだけどちょっと前にどっかで聞いたことがあってさ。それ以来考えてたことがあって」

伊介「…」

乙哉「赦しってなんだろうねー。って」

伊介「…はぁ?」

乙哉「いやだってさ?赦しって言っても、世の中シチュエーションいっぱいじゃん。許されないことだっていくらでもあるし」

伊介「…」

乙哉「例えばだよ?あたしみたいな可愛い未成年の女の子がやるんならともかく、そこらのおっさんがトチ狂って女の子大量殺人したらどう考えても死刑でしょ」

乙哉「あ、ちなみにあたしの場合未成年犯罪だから死刑にならないって意味である意味許されてるんだと思うけどね」

伊介「伊介にあんまり常識とか良識って観点からのツッコミを考えさせないで欲しいんだけど……」

乙哉「死刑っていうのは、赦されてないってことでしょ?」

伊介「そんなの伊介に聞かれてもわかんないし。ってか興味ない」

乙哉「そっかぁ……。普段テスト白紙の伊介ちゃんには難しかったかぁ……」

伊介「失礼ね。本気出したらそこそこできるわよ。伊介頭いいわよ。……多分」

乙哉「だったらさぁ、伊介ちゃん。あたしの最後の思考に付き合ってよ。たまには頭使わないと脳みそ腐っちゃうよ?」

伊介「先天的に脳みそ腐ってるやつに言われたくないけど。そこまで言うならいいわよ」

乙哉「おっけ。そうこなくちゃ。それじゃあ改めて第一問にして最終問」

伊介「…」

乙哉「ねえ、伊介ちゃん」

伊介「なによ」

乙哉「赦しって、な~んだ」

伊介「…」

乙哉「……すぐに答えは出さないでいいよ。考えておいてくれれば」

伊介「なに?宿題ってわけ?出題者これから死ぬのに」

乙哉「…」

伊介「まあ、どうでもいいけど。伊介、クイズ番組の答え気にならないタイプだし」

乙哉「実はこれ、答え決まって無いんだよね」

伊介「あっそ。なら意味ないじゃない。そろそろ死ぬ?」

乙哉「答えは、これから伊介ちゃんが決めていいんだ」

伊介「……もうわけわかんない。痛みで混乱してきたとか?」

乙哉「そうじゃないよ。これはれっきとしたなぞなぞ。あたしは真剣だよ」

伊介「…」

乙哉「答えはあたしに教えてくれなくてもいいよ、でももしよかったらいいんだけどさ。それ、回答が決まったら。決まったらでいいから」

伊介「…」

乙哉「できれば、鳰っちのこと。伊介ちゃんの中での赦しに値するかどうかって、一度考えてあげてほしいんだ」

伊介「…」

乙哉「できれば……もう、さ。いい加減、鳰っちのこと赦してあげて欲しいって、そう思ったから」

伊介「……そうね」

乙哉「ほんと?」

伊介「…」

乙哉「……そっか、ありがと」

伊介「…」

乙哉「じゃ、もういいや。そろそろ痛みに耐えてるのもしんどくなってきた」

伊介「…」

乙哉「そろそろ殺してよ」

伊介「その前にアンタも一個教えなさいよ」

乙哉「?」

伊介「アンタにとっての赦しって、何?」

乙哉「…」

伊介「これはカンニングじゃないわよ。ただ伊介が気になっただけだから。参考までに」

乙哉「……そうだなぁ」

伊介「…」

乙哉「……」ボソッ

伊介「…え?」

乙哉「……かな」

伊介「……そう」

乙哉「ん。それじゃあ、そろそろ……はは、ほんと痛みがしんどくなってきた……」

伊介「……わかった」

伊介「それじゃあ死になさい」






































純恋子「以上ですわ」

涼「ふむ……」

純恋子「私が気になるのは、最後に武智さんが言った、彼女にとっての赦しとは何か」

純恋子「相当の痛みに耐えてのことだったのでしょう。途中から声が小さくなってきて、肝心の彼女にとっての答えが聞き取れませんでしたの」

涼「なるほどのう」

純恋子「犬飼さんは聞き取れていたはずなのですが、どうもくだらないと判断したらしく、問いただしてもどうでもいいと……」

涼「ふむ」

純恋子「まあ些細なことではあるのですが。一度気になると引っかかってしまうたちですので、首藤さんなら何かご存じないかと」

涼「そうじゃのう……」

純恋子「何か心当たりはありますかしら?」

涼「いやさっぱり」

純恋子「そうですの…残念ですわ」

涼「じゃが……」

純恋子「?」

涼「……あー。もし。もしもじゃ。もしもワシがその答えを決めて良いというのなら」

純恋子「…」

涼「ワシにとっての赦しとは、未来かの」

純恋子「…」

涼「過去に遺して来たものを振りきって、その先に進むことができたのなら……」

涼「ワシは、恐らく赦されたのだと感じるじゃろうて」

涼「もっとも、この世界が赦しに満ちているなどと、そんな戯言は夢にも考えたことはなかったがの」

純恋子「…そうですか」

涼「すまんのう。大した役に立つような話もできんで」

純恋子「いえ……参考になりましたわ」

涼「そうか。ならなによりじゃ」

純恋子「…」フラッ

涼「……大丈夫か?」

純恋子「……ええ。なんでもありませんわ」

涼「そうか。さあ、そろそろ剣持のやつが戻ってくるんじゃないか?見つからないようワシらも帰ろう」

純恋子「ええ。……そうですわね」

純恋子「…」

涼「…」

涼(のう英や)

涼(ならばお主にとっての赦しとはいったいなんぞや?)

涼(その答えを今ここでワシが聞かなかったのは、恐らくまだ決まっていないのだろうと判断したからじゃ)

涼(もし可能なら、いつかお主の決めた答えをワシにも教えてくれると嬉しいのう)

数分後

しえな「……なんでだよ」

しえな「……」

しえな「どうして武智の遺体がどこにもなくなっているんだ!!!!!」

しえな「畜生っっっっ!!!頭が変になりそうだ!!!」

しえな「うわああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!」

同時刻
???

伊介「……」

伊介「……『赦しって、な~んだ』……か」

伊介「決まってるじゃん」

伊介「伊介にとっての赦しってのは、殺すこと」

伊介「そいつを殺すのは、赦されるようにしてやるってこと」

伊介「赦されない罪を負ったやつを死刑にするのは、死ぬのが赦しだから」

伊介「伊介は、間違ってない」

伊介「償えない罪は死ぬことでしか赦されないんでしょ?」

伊介「だったら、やっぱり……」

伊介「伊介の選択は、間違ってない……」

2号室春伊部屋

鳰「…」

春紀「ほら、着いたよ。大丈夫か?」

鳰「ん……」

春紀「……ったく。ここまで元気ないと調子狂うなぁ」

鳰「ごめん」

春紀「いいさ。こんなしおらしい伊介様も珍しいしね」ケラケラ

鳰「…」

鳰(いいッスね。楽しそうな笑顔で)

鳰(いいッスね。伊介さんは春紀さんみたいに無条件で大事にしてくれる人がいて)

鳰(ねえ、伊介さん)

鳰「……ねえ、春紀」

鳰(ウチは嬉しいッスよ)

春紀「ん?」

鳰「伊介、お風呂入りたい。入れて来て」

春紀「はいはい。……ったく、しょうがないなあ。今から入れてくるよ。一緒に入ろうか?」

鳰(こんなにアンタのこと大事にしてくれる人を、アンタから奪ってやれるだなんて)

               /     /              \
              /     /                \
            /     /          /        \
            /      /       }    /     l  l   ヽ
             /    / /        l  /    /   l  { {   `、
          ノ     / //          l /     /  /| |l   `、     きょうはここまでにしとくッス♥
         / /   / //  /     ; /     /  /  l   い     `、    ところで、なんでただの胸糞ss書こうと思って立てたスレが
       / /   / //  /    / //     ;   _/l  ゙、、  } `、   こんなことなってるんッスかね……
     //   /  /  /     / //     j  / / ̄`ト、  、} j   ゙、
    //   /  // /    / / l j     l  / /    ト \ \/    、
  //   / /  //     / /  l l     {  汽ミx,,,_ l/ / / / \ ハ}
   //  / /   / /  ///l  l l l   l l 乂タ气、V / /  / j
{  {/ / //  ー=彡イ  / /{  { { l| l   ∧|  ヽ  {/  / / ノ
人   { {(     {/ /     、 い ト{`从  {          \彡//
  ヽ   ゙、   {   { /   l   }  Y 、     \ l          //
    \  ヽ  l     い   }  ∥  }  \    \  ゝ..__/
     \ Y 人   乂  j  /  ノl }   ヽ    }    ...ノ
      ヽ ト、 \   ヽノ / / ノノl }  ハ  } j__  /
        )ノ \ l\ /イ//     } ノ / } ノj/   ̄  /^ヽ
              ヽ}  ヽ }        ノ  {  j/   {ヽ / /⌒Y
           ノ   )ノ         ヽ    ノ } 〈_/ / }
                 /               `~、 {  Y } / \
             /                   `ー-└" __ }
            /                         / / _〉
             /                     /〈_/ / ヽ
          j                        /::::::::└'"  _ 、
          {::、                /::::::::/   /:::::::::!
           V:、        l       /::::::::/   /::::::::::-‐l
           V:\         }    ....:::::::ヽ::/   /::::::/  /:!
              ∨:::ヽ       l:  ,,..彡--‐''"\  /:::::/  /::::::::l
                V ))      {::. ((     ....::::::\彡'"   /::::/ /l
                 V::ヽ       ゙、:::...  ...:::-―'''" ヽ     /::::/ /::::l
                 V ))      \:::..((         ゙、  /::::/ /:::/ l
                 l         ヽ::::..         ゙、 /::::/ /::/  l

純「ちょっ、なにを!?」
晴「晴は死ぬわけには行かないんです(暗黒微笑)」ゲシッゲシッ

晴ちゃんがいれば安心

ジャバジャバジャバ

鳰「…」

春紀「…」

鳰「…」

春紀「…ねえ、どうしたのさ?伊介様」

鳰「…なにが?」

春紀「だから。さっき植物園で会ってから全然元気ないじゃん。本当にどうしたのさ」

鳰「どうもしない。余計な詮索しないでよ」

春紀「…そっか。悪い。そうだよな。あたし勘違いしてた」

鳰「…」

鳰(…そろそろお風呂沸く時間ッスかね)

春紀「…でも、ちょっとだけホッとしたよ」

鳰「…?」

春紀「あたし、てっきり伊介様が予告状出して失敗したのかって思っちゃったもんだから」

鳰「…」

春紀「でも、どうやら違ったみたいだしさ。だってほら。伊介様の予告状、この部屋にあるし」

鳰「…」

春紀「でも、だったら夜中にあんな場所で伊介様ってば何を…あ、ごめん。また余計なこと口走っちゃってんな、あたし」

春紀「悪い。忘れて。もうなんにも言わないよ」

鳰「…お風呂、沸いたと思うから入ってくるわ」スッ

バスルーム

鳰「…ふぅ」

鳰「…我ながら汚いッスねぇ。汚物まみれッス。それに服もボロボロ、血塗れッス」

鳰「痛っ…くぅ、染みるッス」

鳰「はぁ…」ザバッ

鳰「ぶくぶくぶく……」

鳰「……ぷはっ!」

鳰「…ふぅ」

鳰(さて。風呂から上がったらどうするッスかね)

鳰(伊介さんはまだ帰って来ないッスけど…いつ帰ってくるかわかんない)

鳰(出来るだけあの人に絶望感を与えてから殺すには、やっぱり春紀さんだとは思うんッスけど)

鳰(どうやるのが1番あの人の心を痛めつけられるのか。迷うッスねぇ)

鳰(方法1。伊介さんが帰ってきたところにボロ雑巾みたいになった春紀さんの死体を見せて殺す)

鳰(方法2。春紀さんの姿で、春紀さんの言葉であの人への呪いの言葉を放って最後まで春紀さんに殺られてると思わせて殺す)

鳰(方法3。方法2で、最後の最後今際の際に正体がウチだと告げて春紀さんの死体を見せてから殺す)

鳰(それとも方法4…)

鳰「…」

鳰「決めたッス」

春紀「…はぁ」

ガチャッ

春紀「…あ、伊介様。風呂どうだった…って」

鳰「…」

春紀「走り…?」

鳰「春紀さん」

春紀「なんで走りがバスルームに?いつの間に入ってたんだよ、いやそもそも今までどこいたんだよ」

鳰「春紀さん」

春紀「あれ?っつーかなんでバスタオル一枚なんだよ、風呂には伊介様が入ってたはずだろ?伊介様どうしたんだよ」

鳰「春紀さん聞いて欲しいッス」

春紀「あっ!もしかして伊介様の元気なかったのお前のせいか!?だとしたら許せないんだけどさぁ。おい走り、お前歯食いしばれよ。とりあえず一発殴らせろ」

鳰「…聞く耳なし、ッスか。ま、それは想定内ッス」クスッ

春紀「は!?おい何笑ってんだ?走りの癖に。ムカついたからとりあえず動けなくなるまでボコボコにして…」

鳰「…」パサッ

春紀「!?」

鳰「…あんまり人にこの身体見せるのは好きじゃないんッスよ?」

春紀「な…全身に、刺青……?お前、いったい……」

鳰「でもね。ウチのこの一糸まとわぬ身体を…この刺青を、ゆっくり見るッス。ほら、鳳凰ッスよ。どうッスか?」

春紀「…」

鳰「綺麗な刺青っしょ?彫るのに凄い時間かかったんッスよ。その間痛くて痛くて、何度も気絶しそうになったッス」

春紀「…」ボー

鳰「ふふ、魅入ってきたッスね。でもね、その痛い思いしただけの価値はあったんッス。この刺青は、呪いッス」

春紀「…」

鳰「人を欺き、操り、陥れるための呪いがかかった刺青…。そう。この刺青はね。春紀さん」

春紀「…」

鳰「これから春紀さんをウチの物にするための魔法がかかってるんッス」

春紀「あ…う…」

鳰「風呂場で滅茶苦茶準備したッスからね。それにまじないを強烈にかけるためにわざわざ刺青も全部見せたッス」

鳰「これでかかんなきゃ嘘ッスよ。ウチの全力を持って今、アンタは催眠をかけられてるッス」

春紀「…あたし…は…今…今……ううう……」

鳰「くふふふ…」

鳰「では、いいッスか?春紀さん」

春紀「…」

鳰「春紀さんは今、ここであったことの全てを忘れるッス。伊介さんが帰ってきたら暖かく迎え入れてあげるッスよ」

春紀「…」

鳰「でも注意して欲しいのは、さっきまでと2つだけ決定的に変わっちゃってることがあるッス」

春紀「・・」

鳰「それはね?春紀さん。アンタはウチのことが大好きッス。アンタはウチに死ねって言われたら喜んで死ねるくらいウチのことが大好きッス」

春紀「…走り…すき…あたしは……はしり…が…」ブツブツ

鳰「そして本当は春紀さんは伊介さんのことが大嫌いッス」

春紀「…」

鳰「春紀さんは伊介さんのことが大嫌いッス。憎んでるッス。見下してるッス。反吐が出るッス」

春紀「あたし…あたし……あたしは……」ガクガク

鳰「だけど、優しい春紀さんはそんなことはおくびにも出さずに伊介さんと生活してたんッスよ。寮生活ですし当然ッスよね?悟られたら住みにくくなるだけだし」

春紀「…」

鳰「そう。今までは」

鳰「でも、もう我慢する必要はないんッスよ?」

鳰「必要ならウチが部屋に招いてあげるッス」

鳰「必要ならウチが抱きしめてあげるッス」

鳰「必要ならウチが伊介さんから守ってあげるッス」

鳰「でも、それだけじゃ今まで伊介さんに好き放題我儘言わせてた腹の虫が収まんないッスよね?」

鳰「だから、ウチは提案があるんッスよ」

鳰「ウチと一緒に、アイツの春紀さんへの気持ちを利用して弄んでやりましょうよ」

鳰「弄んで、いじめ倒して、苦しめて」

鳰「生きてるのが辛くなるくらい、ウチと一緒にあの犬飼伊介を」

鳰「絶望させてから殺してやるッスよ」
















春紀「…」

春紀「…あれ?」

春紀「……」

春紀「………あたしなにしてたんだっけ」

???

「そうして、ようやく今日という長い一日が終わりを迎えた……と」

「犬飼伊介は朝になっても結局戻ることがなかった」

「寒河江春紀はまんまと幻術の餌食になったようね。犬飼伊介が戻ればまた一悶着あるかもしれないわ」

「剣持しえなは結局朝日が昇るまで植物園を走り回っていた。絶望の中で混乱しているようね」

「武智乙哉の犠牲を無駄にできないという強迫観念にも似た想いに突き動かされ、立ち止まれずにいるのかしら。でももし万が一その足が止まってしまった瞬間、彼女はどうなる?」

「五号室の二人……生田目千足と桐ヶ谷柩はあれからすぐに眠ったようだわ。でも彼女らの間には目に見えない、けれど決定的な溝が出来た。二人はそれに気付いているのかしら?」

「首藤涼はさすがというか一歩引いて誰より冷静に物事を見れているようだけど、自身も気付かない内にそれに毒されている」

「神長香子は目の前にあるものに気を取られ、全てを台無しにしてしまっている。けれど、これを全て彼女だけの責任にするのは酷ね」

「英純恋子は何かを企んでいるようね。真昼の方はわからないけれど、番場真夜はそれに不信感を抱いている様子ね」

「東兎角と一ノ瀬晴は何も気付かずに部屋に戻って眠りについた。けれど、東兎角。あなたはどこまで自分の意思で行動しているのかしら?」

「一ノ瀬晴は…………可哀想な子だわ」

「……鳰さん。貴女はきっと愚かな道を歩んでいる」

「でも、貴女があの瞬間、それを選択した時から、私は貴女を助けることはしないと決めたのよ」

「だから頑張りなさい。自分の力だけで」

「そうしてすべてが終わったら」

目一「その時はきっと……」

金星寮4号室鳰部屋前

鳰「…ちょっとだけ、眠るッス」

鳰「…ふふ、普段は全然寝ないでも大丈夫だっていうのに」

鳰「こんなに悔しくて悲しい日なのに、いつもより断然眠いなんて」

鳰「変な子ッスねぇ……ウチって」ガチャッ

鳰「つぁっ!!?」サッ

鳰「痛…っ!」

鳰「…あー」

鳰「…はは。ドアノブに仕込み刃のトラップッスか。くだらねー」

鳰「あーあ。ざっくりいっちゃったッス。止血しなきゃこれ、死ぬッスね」

鳰「…」

鳰「…止血しよ。救急箱救急箱」ゴソゴソ

鳰「…」

鳰「……ん?なんッスか?これ、手紙?」

鳰「…っと、止血完了。誰からッスかね。トラップの犯人ッスか?」ゴソゴソ

鳰「なんの目的でこんなガキの悪戯みたいな仕掛けを……」ガサッ

鳰「…」







               『お前が殺した』





鳰「…違うッス」

鳰「違うッス」

鳰「違うッス違うッス違うッス」

鳰「違うッ!!!」

鳰「違う違う違う違う違う違う違う違う!!」

鳰「なんなんッスかこの手紙!?ふざけるな!死ねっ!!!」

鳰「違うッス!!ウチは殺してないッス!!ウチのせいじゃない!!ウチは悪くない!!!!」

鳰「なんでウチばっかり悪く言われるんッスか!?ウチのせいになるんッスか!?悪いのはウチじゃない!!」

鳰「そうッス!悪いのはウチじゃないッス!悪いのはあの子ッス!!!」

鳰「あいつが悪いんッス!!あの屑が!!下衆が!!」

鳰「ああああああああああああああっ!!!」

鳰「許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!」

鳰「絶対赦してやらないッス!!」

                                //
                        >'''"⌒>'"⌒\

                         >'"                ̄\
                   /       / /     }   \
                      // /     / / /     j     ヽ   きょうはここまでにしとくッス
                 / / /       / / /     ∥ l    、  エタらなかったウチ偉いっしょ!
                 / / /    // / /    //l  l    l   ……ちょっと気を抜いてたらもう10日弱ッスか、正直すまんかったッス
                   / { {   ー-/-‐lイ"   \//|  l  l   l
                      ノl ∧   / ⌒`l   /-/\l  l  l l  l
                 /  l/ ヘ  lx,,_‐、l / /   l`~  l l   l
             /   / /\ l`""⌒    -ミx,,__  l 八 l l  l
              {  {  {/    {      "    ̄⌒ソl/  ヽl }  人
              \ ヽ   人\人   ー-、_, `ー彡     jノヽ   \
                 ヽ     )/\          /    ノ   } )〉 ヽ
                ノ ノヽ }  }  \   .......::/ /// /   /   ノ
                     ̄   )ノ\ノヽ/ }  ̄_ ノ{   _/ _/ x-‐''"
            _  r‐-く ̄:::へ::::ノ ハ /   /`<_{/ 〈(
       _  ///"⌒  ー-く   \/ / >-―‐┐l::::::::::: ̄\
       /  ̄/  { {         \  /7"      /::l::::::::::::::::::::::ヽ
   _ /   /{  八∨\       \x-{       /::::l::::::::::::::::::::::::::Y
 / ̄     / `ーイ::::::::::>、 {ヽ\\\l\   人-‐┘/:::::::::::::::::::::::>- 、
 {         __/:::::::::/::{::::l l/\\> l  ヽ//:::::::::;:::::::::::::::-‐'"::::::::::::::\
/     // Vヘ::::::::::/:::::l::弋}  / `┘ l\__/::::\:::::{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ >
乂      ノ  _Vヘ::::::::{:::::::l:::::::l /   /:::::::::::::::::::::;;;>八:::::::::::::::::::::::::::::/ /\_
   ̄`ー'" ̄ ̄  Vヘ::::八::::λ:::::! ;  /:::::::::;;:::::''" ̄:::::::::::::、:::::::::::::::::::/ / ――  \
                ̄ ̄ ヽ:::ヘ:::::!l /::::::;;ィ''":::::::::::::::::::::::::/ \::::::::/ ∠_  -―
                   }::\\l/::/:::::::::::::::::::::::::::::::::/    \ /   \

今日は短くてあれッスけど、明日以降は何日か連続更新できると思いますわ

キエーーーーーーッ!!!
明日急な仕事入って動けなくなったッスよぉおおおおおお!!!
体力的に自信ないんで今日はもう寝るッス!!
明日の仕事が終わったら!明日の仕事が終わったら戻ってくるッス!!
もしくは明日の朝無駄に早起きできたらちょっと書いてから出るッス

翌朝
黒組教室ホームルーム

溝呂木「おはようみんなー。出席取るぞー」ガラッ

溝呂木「…っと。あれ?」

しえな「…」

春紀「…」

溝呂木「犬飼と走りと武智はどうした?ルームメイト、知ってるか?なあ寒河江」

春紀「あたしは知らない。伊介様はサボりじゃないの」

溝呂木「寒河江、そんな突っぱねた言い方するなよ。なんだ、喧嘩でもしたか?」

春紀「さあね。そんなとこじゃない。とにかくあたしはあんなやつ知らないから」プイッ

溝呂木「おいおいほんとに喧嘩っぽいな……。分かった、犬飼は欠席、と」

溝呂木「剣持。武智はどうしたか知ってるか?」

しえな「…」

溝呂木「剣持ー?」

純恋子「…くすっ」

しえな「…………風邪です」

純恋子「…くすくすくす」

涼「……くくっ」

しえな「…ちっ」

溝呂木「そうかー。珍しいな。具合はどんな感じだ?」

しえな「…」

純恋子「くすくす。珍しいこともあるものですわね。健康が取り柄の武智さんが風邪をひかれるなんて」ヒソヒソ

涼「くっくっく。まったくじゃな。これは後で見舞いに行ってやらねばならんかのう」ヒソヒソ

しえな(聞こえてるぞ、お前ら。わざとだろ?これみよがしに)

しえな(……ということは首藤も共犯か?)

溝呂木「剣持ー?」

しえな「あ、えーと…け、結構高い熱が出てるみたいで。感染ったら悪いから見舞いは遠慮すると」

溝呂木「そんなに酷いのか」

純恋子「あらあら。あの武智さんが随分と殊勝なこと。よっぽど病状が酷いのですわね」

涼「可哀想にのう。さぞかし苦しいじゃろうのう。死んでしまわねばよいのじゃが」

純恋子「なんでしたら手遅れになる前に私が最高の医療スタッフのいる病院を手配して差し上げましょうか?」

しえな「…っ!!」ギリッ

しえな「そ、そこまで、お、大げさにする必要はないっ!」

溝呂木「剣持?」

しえな「あいつは馬鹿だからな!夏風邪をひいただけだ!!び、病状についても大げさに言ってるだけなんだよ!」

しえな「先生!というわけで!アイツは大丈夫だけど、しばらく風邪で休むと思います!!!」

溝呂木「わ、わかった」

純恋子「くすくすくす。あらあら。早く治って欲しいものですわ」

涼「まったく。早くあやつの元気な顔をまた見たいものじゃわい」

しえな(覚えてろよ……!!お前ら!!)

溝呂木「で、あとは走りだけど……」

しえな「…」

しえな(鳰は……塞ぎこんでたんだよな)

しえな(さっき一応声はかけてみたんだけど)

しえな(今日はサボるッスってドア越しに拒絶されて)

しえな(……無理もないのかもな。むしろなんでボクなんかみたいな弱虫がこんなに頑張れてるのか不思議なくらいだ)

しえな(でも、ボクが頑張らないと武智の仇はとれないし、なにより鳰を守れない)

しえな(それに、早くあいつの遺体を見つけて弔ってやらないと……)

しえな(くそっ!犬飼のやつも学校に来ないのは誤算だった!!アイツなら人一人殺したってしれっとした顔で今日も来ると思ったのに!)

しえな(よりによってサボり?なんだそれ!!気まぐれにも程があるだろ!)

しえな「…」チラッ

純恋子「次の授業何でしたっけ?」

涼「次は英語じゃよ」

しえな(もしアイツらが死体隠しの犯人だったら、犬飼以外に素直に口を割らなさそうなんだよな…特にあの二人は話術もボクより上だし)

溝呂木「なんだ、誰も走りについては知らないのかー?」

しえな「……ああ。走りも同じ風邪です」

溝呂木「そうだったのか」

しえな「はい。昨日一緒に遊んだ時に感染ったのかもしれません」

溝呂木「流行ってるのかな。夏とはいえ、みんなも風邪ひかないように気を付けろよー」

晴「はーい」

しえな「…」

千足「…」

溝呂木「おっと、もう予鈴が鳴るな。よし、それじゃあホームルームはここまで。授業の準備しとけよー」

香子「起立!礼!」

しえな(さて困った。いきなり手詰まりだ。味方もいないし。次はどう動く?いっそボクも風邪ひいたことにしてもう早退しようか……)

しえな(でもなぁ。早退して何をするんだ?手がかりもなしに武智の遺体を探しても見つかるはずないし)

しえな(せめて犬飼の居場所だけでもなんとか突き止める必要があるけど)チラッ

春紀「…」

しえな(……同室の寒河江が犬飼と喧嘩してるのか?普段あんなに仲がいいのに今日は忌々しそうにあいつのこと話してたし)

しえな(そんな状態の寒河江に犬飼の居場所聞いても、例え知ってたとして教えてくれるとは思えない……)ハァ

千足「なあ、剣持。大丈夫か?」

しえな「え?生田目?」

千足「武智が具合悪いそうだな。走りも。お前も随分疲れているようだし、大丈夫か?」

しえな「あ…うん。ありがとう。うん、ボクは大丈夫だ」

千足「そうか。だが同室の武智が風邪をひいて、一緒に遊んでいた走りも風邪なんだろう?お前もあまり無理をするな」

しえな「…」

千足「なんだったら早退してもいいんだぞ?風邪はひき始めの養生が大事だからな。先生には私が上手く言っておいてやる」

しえな「ありがとう生田目」

千足「…」

しえな「でも珍しいな?生田目がわざわざボクにそんなことを言いに来てくれるなんて」

千足「ああ。お前達は最近走りと仲がいいからな」

しえな「…」

千足「そう警戒した顔をするな。私は他の奴らとは少し違う」

千足「……いや。やはり同じか。私もアイツのことを毛嫌いしていたし、何よりいじめを見て見ぬふりしていた」

しえな「…」

千足「話がある。桐ケ谷には内緒でな。だから私と会っていると悟られないよう、できれば早退したということにして姿を隠して欲しい」ヒソヒソ

しえな「…」

千足「もし聞いても良いと思うなら昼休みに体育倉庫に来てくれ」

しえな「……なんの話をしたいって言うんだ?」

千足「…」

しえな「…」

千足「走りへのいじめについてだ」

しえな「…」

千足「私は桐ケ谷にそれを止めさせたい。だから相談に乗って欲しいんだ」

しえな「……わかった。受けよう。昼に体育倉庫だな?」















柩「…」


昼休み
体育倉庫

千足「すまない、待たせた。すまないな。桐ケ谷を誤魔化すのに手間取った」

しえな「ああ。大丈夫だ」

千足「…本当に大丈夫か?今朝より顔色が悪いぞ。本当に風邪にかかってるんじゃないか?」

しえな「いや。早退してからこっちさっきまで走り回ってたからな」

千足「なんだってまた…まあいい。あまり時間がないし本題に入るぞ」

しえな「……うん。桐ケ谷のいじめを止めさせたいって言ってたよな」

千足「そうだ」

しえな「急にどうしたんだよ?ボクもあまり偉そうなことは言えないけど、生田目だって鳰いじめには黙認だったのに」

千足「…」

しえな「それとも、本当はいじめは嫌だったとか?」

千足「…そうだな。そうなのかもしれない」

しえな「?」

千足「だがそれ以上に許せないんだ。他ならぬ桐ケ谷にあんな残酷なことをさせるのが」

しえな「…」

千足「あの子は本当は優しい子だ。だけど精神的に幼いがゆえに相手に対して恨みを持った時にかえって平気で残酷なことをできてしまう」

しえな「……そうだな。正直に言って、桐ケ谷のいじめは他の連中のいじめに比べて1番その…性格が悪かった。少なくとも昨日までは」

千足「あの子の将来のためには今悪いことをしてはいけないのだとはっきり認識させる必要がある。正しいことは何かということを教えてやりたいんだ」

しえな「…」

しえな(生田目、黒組にいる人間は一ノ瀬以外全員暗殺者だって忘れてるんじゃないか?)

千足「……本音を言うと、辛いんだ。桐ケ谷が走りを嬲って笑っているのを見るのがどうしようもなく悲しい。走りは確かに悪いことをしたと思う」

しえな「…」

千足「だが、あれくらいのことであそこまで。いや。クラス全員でいじめの的にするなんて、初めから間違っていたんだ」

しえな「……結局何が言いたいんだ?」

千足「走りへの罪滅ぼしをしたい。許されるとは期待していない。だが、それが人間として最低限の義務だと思う。その姿を桐ケ谷にも見せて反省を促したい」

千足「私もいじめの加担者の一人だ。今更善人を気取るのも滑稽だが……」

千足「走りに味方することを選んだお前たち二人の勇気に、私もどうか便乗させてはもらえないだろうか」

しえな「鳰を庇う側に回りたいって?」

千足「そうだ。恥を忍んで頼みたい。できれば走りへの橋渡しも。情けないが今私が寄って行っても怖がらせるだけだろうしな」

しえな「…桐ケ谷が鳰をいじめてきたらどうする?お前、桐ケ谷に甘いだろ。またいじめるの眺めるハメになるんじゃないのか?」

千足「その時は……身を挺してでも庇うさ。そして本気で叱ってやる。いじめは卑怯な行為なのだと。私も同罪だから、一緒に謝って罪滅ぼしをしようと」

しえな(結局、桐ケ谷のためじゃないか)

しえな(でも……)

しえな「……ひとつ言っておくけどな」

千足「…」

しえな「ボクにそんな決定権は無いぞ。ちょっと考えればわかることだと思うけど」

千足「…」

しえな「鳰の味方したいなら勝手にすればいいと思う。ボクだってそうしてるんだ。友達だからな」

千足「……それもそうだな」

しえな「…」

千足「すまない。一人で盛り上がっていたようだ。馬鹿なことを言った。忘れてくれ」

しえな「……でも」

千足「?」

しえな「……でも、正直生田目が味方になってくれるとものすごく心強い」

千足「…!」

しえな「あとで鳰に会ってやってくれないかな。ボクがフォローするから」

千足「……!!ありがとう!!」

しえな「いや。こちらこそ……ありがとう。すまない」

しえな(はっきり言ってボクは生田目に少し幻滅した)

しえな(凄く格好いい人だし、優しくて頼もしい、正義感の強い人だっていうのはわかってる)

しえな(だけど、なんていうか…上手く説明できないんだけど、どうも気に入らないんだ)

しえな(いじめっ子の桐ケ谷に対しての優しさと、いじめられっ子の鳰に対しての優しさに差が感じられるからなのかな?)

しえな(それだけじゃない。なにか、どこか生田目の考え方に不自然な何かを感じるんだ)

しえな(それがボクには気に入らない)

しえな(だけど、それはそれとして生田目が頼りになるのはわかってる。武智がいない今、ボクなんかよりずっと鳰を守る戦力になるだろうし)

しえな(口約束とはいえ一度決めたことをひっくり返すような奴でもない。言ったからには本当に命を懸けて鳰をいじめから庇ってくれるだろう)

しえな(……だから、ボクは申し訳ないんだけど、彼女に少しだけ嘘を吐くことにした)

千足「そういえば、武智は大丈夫なのか?あいつにも説明しておいたほうがいいよな」

しえな「ああ、あいつにはボクから説明しておくよ。心配しないでいい」

千足「そんなに酷いのか?部屋にかぜ薬あるし、後で渡しに行こうか」

しえな「ううん。必要ない」

千足「そうか?だが…」

しえな「本当はね、生田目」

しえな「武智は今、学園の外なんだ」

しえな「病気っていうのも嘘さ。本当はボクの組織の仲間と接触して、外部からいじめの首謀者を探すために活動してるんだ」

しえな「ボクの分析によると、もしかしたら桐ケ谷もその首謀者に誑かされていじめを始めたのかもしれないな」

しえな「だからその首謀者を暴いてやっつければ桐ケ谷も改心してくれるかもしれないよ」

千足「そんなことをしていたのか。想像以上に大掛かりだな」

しえな「……まあね。あ、でも武智の話は内緒だぞ?他の連中にはあくまでボクらの部屋で寝てるって思わせないと駄目だから」

千足「ああ。心得ている」

しえな(武智殺しの話はまだ教えるわけにはいかない。まさか生き死にの話になってるとは流石に思ってないだろうし)

しえな(そうなったら桐ケ谷を第一に考えてる生田目があいつを守るために鳰の元を離れる危険性だってある)

しえな(知らせないことで生田目の身は危険に晒されやすくなるだろうが、それでもそのリスクを考えたら悪いが仕方ない。遺体探しの協力を頼めなくなるのもつらいなぁ)

しえな(それに正義感の強い生田目はいじめグループの連中とすぐにでも対決しようとするだろう)

しえな(それは駄目だ。今はまだこちらの手札のほうが全然弱いんだ)

しえな(最終的にいじめグループとの全面対決になった時には生田目の戦力は不可欠だし、みすみす失うわけにはいかないんだよ)

しえな(ああ。でも桐ケ谷が首謀者だった場合のことを考えるとその時は生田目がそれを悟って後ろから刺してくる前にどこかで切り捨てないと……)

しえな(そもそも鳰もまだ塞ぎこんでるだろうし、生田目と上手く打ち解けられるかわかんないし)

しえな(ああ。考えることがまた増えた。頭痛いなぁほんと)

しえな「さて、そろそろ昼休みも終わるよ。ボクは一旦寮に戻って鳰の様子を見てくる」

千足「ああ。そういえば、走りの方は…」

しえな「風邪でも特別な何かがあったわけでもないよ。連日のいじめでちょっと参ってただけ」

千足「そうか。やはりアイツでもつらいものはつらいんだな。つくづく悪いことをしていたと思うよ」

しえな「本人にそう言ってやってくれ」

千足「ああ。では、私も午後の授業に戻るよ。また放課後会おう」

しえな「うん。またあとで」

しえな「…」

しえな「…行ったみたいだな」

しえな「さて、それじゃあもう少しだけ武智の遺体探しして。3時になったら鳰の部屋もう一回訪ねるかな」

しえな(…そっか)

しえな(なんで武智に死なれて、こんなに頭も身体も酷使してるのに意外と平気なのかって、なんとなくわかったぞ)

しえな(逆にこうやって馬鹿みたいにやらなきゃいけないことがあるから、やるべきことがあるから頑張れるんだ)

しえな(だって、ここで立ち止まったらボク、武智になんにもしてやれないじゃないか)

しえな(そんなのごめんだ。ボクだってあいつに何かしてやらないと。アイツにいいように振り回されて置いてかれてそれでさよならか?)

しえな(そんなの悔しいじゃないか。結局一度もアイツより凄いこと出来てないんだ。アイツに勝てたこと、一度もなかったんだ)

しえな(だから今度こそ、アイツが出来なかったことをボクがやるんだ)

しえな(鳰を守って。武智の死体を見つけて弔って。いじめっ子どもをやっつけて。武智の仇を取るんだ)

しえな(それで全部終わったら……そしたらお前の墓の前で思いっきり泣いてやる。しばらく泣き止まないからな)

しえな(まったくずるい猟奇殺人鬼だよ。快楽のために散々人殺してるくせに、いざ自分が死んだらちゃんと泣いてくれる奴残しとくなんて、さ)

金星寮7号室鳰部屋

鳰「…」

鳰「…はぁ」

鳰(眠れないッス)

鳰(手紙読んで散々怒り狂った後、いきなり身体の力抜けてベッドに倒れ込んだのはいいんッスけど)

鳰(半分やけくそでもうなんもかも忘れて寝ようって思ったのに、全然寝れない)

鳰(結局やる気出なくて、昨日の明け方から今日の夕方までベッドの上でゴロゴロ)

鳰(…そろそろ五時間目始まってる頃ッスねぇ)

鳰(こんなことなら溝呂木先生の授業受けるためだけにでも学校行っといた方が良かったッスかね?)

鳰(あの人の授業、寝なくても大丈夫なように訓練されたウチすら一瞬で深い眠りに落とす究極の催眠術ッスから)

鳰(他の人は大抵起きてる?そんなの知らんッス。ウチの頭脳でちんぷんかんぷんな授業する溝呂木先生が悪いッス。もっと簡単で面白い話しろッス)

鳰(……って、今行ったらあの人らもいるし気分悪いから行かなくてやっぱ正解だったッス)

鳰(はぁ…今度安眠用に溝呂木先生の授業録音してこようかなー……)

鳰「…」ウトウト

鳰「…」

鳰(あ。ようやく眠気来た)

鳰(良かった。これでようやく身体休められる)

鳰(しんどかったッス。いろいろありすぎて…)

鳰(眠りたかったッス……どうせ悪夢見るのはわかってるけど)

鳰(でも。それでも。この現実よりはきっとマシだから……)

鳰「…」

カタカタ

鳰(…?)

カチャッ

鳰(ドアが開いた音?)

トントントン

鳰(足音…誰か来るッス)

トントントン

「…」ピタッ

鳰(近い……でも、目を開けるのも億劫ッス)

「…」

鳰(見られてる。殺気は感じないしわざわざ相手する必要はないッスかね)

「…」

鳰(…それにしてもちょっと近すぎっしょ?アンタの相手する気力は今のウチにはないッスよ)

「…」

鳰(ようやく来た眠気逃したくないんッスよ…早く帰って欲しいッス)

「……寝てる?」

鳰(…だからウチ寝てるっしょ。見てわかんないッスかね)

「……ふう」

鳰(なんッスかその呆れたようなため息)

「……がっかり」

鳰(あーそうッスか。……やばい、もう眠気MAX近いッス)

「意外……ボソボソ……無警戒……ボソボソ」

鳰(何喋ってるのかもわかんなくなってきた……ウチとしたことが知らない人間が侵入してきてるのにこんな無防備な姿を……)

「……ふっ」

鳰(笑われてるッス…でも、こんなの、その気になったらいつでも殺され……もういいや)

「…」

鳰(殺すなら殺せッス)

「…」ペチン

鳰(いてっッス)

「…」

鳰(おでこになんか衝撃きたッス。でもかろうじて眠気は残ってるし)

「…」

鳰(もうどうでもいいッス)

「…」

鳰(悪いッスけど、ウチはもう完全寝る態勢入っちゃってるッス。もうこのまま寝…る……)

「……はぁ」

鳰(…)

「……ボソボソはボソボソる…………病…に…………い…わ…」

鳰(…)

「…」

鳰(……え?)

「……じゃあ。伝えたから」

鳰(ちょっと待つッス)

カチャッ

鳰(アンタ誰ッスか?)

パタン

鳰(今なんて言ったッスか?)

コツ…コツ…コツ…

鳰(なんでウチにそんなことを……)

鳰「……またたちの悪いいやがらせなんッスか!?」ガバッ

鳰「……っ!!」ドタドタドタ

鳰「待つッス!!」ガチャッ

鳰「…」

鳰「……居ないッス」

鳰「…」

鳰「……どういうことッスか」






「武智乙哉は生きている。外の病院に入院しているわよ」




鳰「今更そんな話、信じられるわけないッスよ……」

鳰「ウチは……ウチとしえなちゃんはこの目で乙哉ちゃんの死体を見てるんッスから……」

鳰「なのに、なんでこんな、こんな、ウチは……」

鳰(また裏切られると分かってて)

鳰(誰とも知れない奴のあんな嘘の言葉に喜んでるッスか!!?忌々しい!!!!)

鳰「これもまたあいつらの悪戯ッスか!!?だったら寝てる暇なんて無い!!絶対に許せないッス!!絶対に赦さないッス!!」

鳰「侵入者を特定して、くだらない嘘を吐いた罪で最高の苦痛を与えながら嬲り殺しにしてやる!!!」

                __
              / ̄   ̄ヽ
             /          }}
                         ∥
                     /
                      _/__
                  '" ̄       ̄`丶、
            /      /      ヽ   \
        //     /  /       Y    ヽ     きょうはここまでにしとくッス
        / /      /  /      l      ヘ    さっさと終わらせてほのぼのかギャグかエロいの書きたいッス
       / /       /  ;     l  l      ヘ
       /  /       l   { l     }   }       ヘ
        l  /   /  /{   l {      j   j      い
        jノ/ /  / / |{ い    /l  / }   l  } !
      /   j  l \ |ト、乂   / l/ } /   l  ハ}
   /     {  _ { `''┼l-\\ /斗‐'"l/_ /} / 人
  / /   人~气ミ≡=云z、ヽ /,,z云斤")シ / j/   ヽ

  {  乂 {  {  \ `l乂:゚::ノ   )/ 弋゚::ノ /// / ノ)   〉
  `~、 弋  {  ヽl   ̄ _      ̄ /    //  /
      )ノ\  ヽ  ヽ  ‘~二フ   / _彡//x~"
        ヽト、\  } `'''ーr----ァ'''"::{//j/ {(
           )ノ)ノ:::::r‐弋 Yノ‐┐::::::>

              /\::/乂 ノ弌 ノ:::/ \
           〈  -‐くヽく::Ⅵ Ⅳ:>::}-‐ ノ
             \  癶}::::\∨/::ノヽ/
                ̄)_ノ:::::::::::::}::::::::ト〈
              /:::::::::::::::{:::::::∧

              /`ーミ::::::::l:::::::::癶
                /   /  ̄l ̄ヽ ヽ
            └ミ__/   l   ヽ/
                   \___l_ イ
                |::::::l   V:::::l
                {::::::{   V::::l
                八:::::l    Y:::}
                   ヽJ    {ノ

午後3時
金星寮7号室鳰部屋前

しえな「…ふう」

しえな「…」コンコン

『誰ッス?』

しえな「鳰。ボクだ、しえなだ。入ってもいいか?」

『いいッスよ』

しえな「…お邪魔します」ガチャッ

鳰「しえなちゃん」

しえな「その……変なことを聞くようだけど、大丈夫か?」

鳰「はい。もうウチは大丈夫ッスよ。冷静になったッス」

しえな「そうか…ん?どうしたんだその右手は。包帯が巻かれてるけど」

鳰「ああ。ちょっと怪我しちゃって」

しえな「…」

鳰「それで、どうかしたんッスか?何か用事ッス?」

しえな「……ああ。ちょっと様子を見に来たんだ」

鳰「…そうッスか。心配かけてごめん。しえなちゃん」

しえな「いいさ。ちょっと話しをしたいんだけど、いいかな」

鳰「どうぞッス」

しえな「ありがとう。じゃあ椅子借りるぞ」

鳰「…」

しえな「…はぁ」

鳰「…今日はどんな感じだったッスか?」

しえな「酷いもんだよ。英と首藤が楽しそうに煽ってきてさ。何度か本気でキレそうになった」

鳰「そうだったッスか…」

しえな「まあ、学校に行ったのは昼までで、残りの授業はサボったんだけどな」

鳰「…」

しえな「武智の遺体を探そうと思ったんだけど、見つからなかった」

鳰「……え?」

しえな「……そうだ、鳰には言ってなかったな。昨日、二人で武智の遺体を見つけた後の話だ」

しえな「あの後、ボクは武智の遺体を下ろそうと四苦八苦していたんだけど、途中で一ノ瀬が来てな」

鳰「なんで晴ちゃんが…」

しえな「わからない。でも、一ノ瀬に武智の遺体を見せるのは気が引けたんで…なんとか先に一ノ瀬を寮に帰すことにしたんだ」

鳰「…」

しえな「で、他にもいろいろとありはしたんだが…最終的に渋る一ノ瀬と一緒にボクも寮に戻ることで決着がついてな」

しえな「アイツを寮に帰してからすぐに武智のいたところに引き返したんだが、そうしたら武智の遺体が無くなっていたんだ」

『武智乙哉は生きている。外の病院に入院しているわよ』

鳰(まさか…ッスよね)

しえな「鳰?」

鳰「…あ、いや。なんでもないッス。どういうことなんッスかね」

しえな「そんなのボクにだってさっぱりだ。でもせめて弔ってやらなきゃ可哀想だろ?」

鳰「…そうッスね」

しえな「もしかしたら学園の無関係な誰かに見つかって騒ぎになってやしないかとも考えたが、そんなこともないようだし」

しえな「となると、武智と戦った犬飼かその仲間の立場にある黒組の連中か…」

鳰「…」

しえな「どうやら首藤も仲間だったようだし、今のところ最有力の実行犯は犬飼、首藤、そして英だ」

鳰「…」

しえな「昨日の様子見てたら、お前がすうぐにでも復讐したいって思う気持ちはわかるけどさ」

しえな「もし可能なら武智の遺体の在処を聞き出したいから、その前には殺さないでくれよ?」

鳰「…」

しえな「……特に、犬飼は。3人の中ではアイツが一番口を滑らせそうだから」

鳰「考えておくッス」

しえな「…でも良かったよ」

鳰「へ?なにがッスか?」

しえな「昨日の鳰、ちょっと怖かったから」

鳰「…」

しえな「なんとか冷静に話をできるところまで落ち着いてくれてて、本当に良かった」

鳰「…ごめん。しえなちゃん。ウチ、昨日は乙哉ちゃんのこと後回しにして…」

しえな「いいよ、気にするな」

鳰「でも、あの時ウチが乙哉ちゃんのこと優先してしえなちゃんと二人で弔うこと考えてたら……」

しえな「それも過ぎたことさ。第一返り討ちは武智の自業自得だ。本当はボクらが気に病むことじゃない」

鳰「……しえなちゃん?」

しえな「それでも悔しいのは、ボクがアイツの事、友達だって思ってたからなんだろうけど……」

鳰「…」

しえな「ごめん。なんでもない。それより、ひとつぐらい良いニュースも伝えておこうか」

鳰「え?なんッスか?」

しえな「とりあえず、味方が増えるぞ」

鳰「味方?」

しえな「ああ。生田目だ」

鳰「なんで」

しえな「桐ケ谷がお前をいじめている姿を見たくないんだとさ。それで、お前を守って桐ケ谷の目を覚まさせたいんだって」

鳰「……信用できるッス?」

しえな「……大丈夫だろう。アイツはこういう卑怯な嘘を吐く人間じゃない」

鳰「ウチ、あの人にクズ扱いされまくってるんッスけど」

しえな「そうだけど……でも、ボクはあいつの戦力が欲しい」

鳰「…」

しえな「武智がいなくなった今、ボクだけの力じゃ悔しいけど鳰を守りきれると思えないんだ」

鳰「…」

しえな「だから、な。心まで許す必要はない。利用するだけでいいから、アイツもこっちの陣営に加えてしまおうじゃないか」

鳰「……しえなちゃんが言うなら」

しえな「良かった。決まりだな。それじゃあボクは、後で生田目を呼んでもう一回部屋に来るから、その時もう一度今後の話をしよう」

鳰「あ、ちょっと待って欲しいッス」

しえな「ん?」

鳰「来るなら夜からのほうがいいッス。そうッスね……。20時くらいからでどうッスか?」

しえな「……わかった。それじゃあ、その時間にまた」

バタン

鳰「…」

鳰「…」

鳰「……ふーん」

鳰「……ま、いいッス。寒河江さんは暴言吐きながらもわりとウチのこと庇ってくれたりもしてたんで」

鳰「でもなんかモヤモヤするッスねぇ」

鳰「こういう時はどうするか……」

鳰「昨日手に入れた玩具で時間までストレス解消して遊ぶッスよ」ピッピッ

鳰「……よし、送信完了っと」

鳰「ふふ。こうやって少しずつ確実にあの子を調教していって」

鳰「伊介さんに出来上がった玩具の具合を突きつけてやる時が来るのが楽しみッスねぇ」ニヤニヤ




To: 寒河江春紀

件名:今すぐ部屋に来るッス

本文
退屈だから遊んでやるッスよ

同5号室

しえな「……ふう」パタン

しえな「少し疲れたな。昨日から全然寝てないし……」ボフッ

しえな「……とりあえず生田目に20時5分前にボクの部屋に来てもらうようにメールして…と」ポチポチ

しえな「それまで仮眠をとろう」

しえな「……部屋、広いな」

しえな「ボク一人だと、こうも広いんだ。この部屋」

しえな「あいつ一人居ないだけで、こんなに静かで」

しえな「こんなに寂しいんだ……」

しえな「…」

しえな「…」モゾモゾ

しえな「…ごめんな、武智」スッ

しえな「絶対仇、とってやるからな」

しえな「いつかボクが死んで、地獄に落ちたら。その時はまた、もう一回抱きしめてくれよ」ゴソゴソ

しえな「……今日は、お前の使ってた布団で我慢するから」

しえな「……武智」

しえな「…ばかぁ」クスン

しえな「……すー」

しえな「……すー」

コンコン

しえな「…」

コンコンコン

しえな「……すー」

ガチャッ

しえな「…」

コツコツコツ

しえな「……すー」

「…」

しえな「……すー」

柩「…」

しえな「ん……」モゾモゾ

柩「…」ピクッ

しえな「……すー」

柩「…」

しえな「……すー」

柩「…」クスッ

柩「よいっしょっと」ピョンッ

ギシッ

柩「…」ジー

しえな「…」

柩「……さっき、千足さんと何を話してたんです?」

しえな「…すー」

柩「……最近走りさんとも仲が良いみたいですし」

しえな「…すー」

柩「貴女なんて眼中にありませんでしたけど」

柩「…」カプッ

しえな「…っ!?」ズキッ

しえな「痛…やめろよ武智」ムニャムニャ

柩「あんまりぼくの目に止まるところでうろちょろ煩わしいと、踏み潰しちゃいますよ?」クスクス

しえな「…」

柩「……今日はその忠告をしに来ただけです」

柩「もっとも、眠ってるんなら覚えてないでしょうけどね」

柩「でも予告はしましたから。次癇に障ったら消します」クルッ

パタン

しえな「…う……」モゾモゾ

しえな「…あれ?」

しえな「夢か」

しえな「……武智に噛み付かれた夢って。ボクはなんて夢見てるんだ」カキカキ

しえな「…あれ」

しえな「鎖骨のとこ、血が出てるや。虫にでも噛まれたかな」

しえな「…」

しえな「……寝直そ」

再度7号室

春紀「来たよ、走り」

鳰「ふふっ。いらっしゃい。早かったッスね」

春紀「ああ。授業終わってすぐに走って来たからな」

鳰「それはそれは。伊介さんが嫉妬してるんじゃないッスかね?」ニヤニヤ

春紀「伊介?ああ、アイツは昨日から部屋に帰ってないよ」

鳰「……へえ。そうだったんッスか」ピクッ

春紀「そんなことより、さ」

鳰「…」

春紀「あたし、何をすればいいかな?」

鳰「そうッスねぇ…どうしようっかなぁ」ニヤニヤ

春紀「はぁ……ねえ、走り。あたし、もう、さ」

鳰「…」

春紀「はぁ…はぁ……焦らさないでよ走り。あたし……もう……もう…」

鳰「…」ニヤリ

鳰「ならまずはその場で裸になって跪いて貰うッスかね」

春紀「…」ゴソゴソ

鳰「…」

春紀「…これでいいか?」

鳰「犬みたいッスね」

春紀「…」

鳰「何してるッスか。犬。次はウチの足、舐めるッスよ」

春紀「…」ペロッ

鳰「おっと、ストッキング越しに舐めるとか馬鹿なんッスか?」

春紀「…ごめん」

鳰「まずは口だけでストッキング外して貰うッスよ」

春紀「はふぅぅ……」

鳰「ふふ。いい感じにウチの言いなりッスねぇ」

春紀「ん…」グイグイ

鳰「思えば、春紀さんも結構ウチのこといじめてくれてたッスよねぇ?」

春紀「はぁ……はぁ……」グイグイ

鳰「意味もなくぶん殴られたり、足引っ掛けられて転んばされたり。ちゃんと覚えてるッスよ?」

春紀「あ…あの時は、ごめん……どうかしてたんだ」

鳰「いいッス。いいッス」グイッ

春紀「あ……」

春紀(走りの足が、あたしの顎を持ち上げてる……)

鳰「もう春紀さんはウチの物になったんッスから」ニヤニヤ

春紀「…」

鳰「これからウチの言うこと聞いていい子にしてれば、ちゃぁんと赦してあげるッスよ」

春紀「あ、ありがとう、走り……」

鳰「ちゃんとウチの言うこと聞いてくれれば、ね」

春紀「聞くさ……なんでも聞く……だからあたしのこと見捨てないでよ……」

鳰「ふふふ。ほら、口が止まってるッスよ?」

春紀「ご、ごめん」カプッ

鳰「くっくっく…伊介さんに見せたいッスねぇ。この光景」

春紀「…」チュパチュパ

鳰「でも、まだ足りないッス。春紀さんがもっとウチのこと大好きだって、伊介さんなんかどうでもいいんだってのを身体で示してくれないと」

春紀「むぐっ……」

鳰「もっと恥ずかしいことまで、ウチ相手にならしてくれるって証明してくれないと」

春紀「んぐっ…!じゅるっ…ちゅぱちゅば…」

鳰「ほら、もっと必死にやらないと捨てちゃうッスよぉ?」

春紀「っ!むぐっ!じゅぼっ!じゅぶぶぶぶ!!」

鳰「あっはっは!無様ッスねぇ~!卑しいッスねぇ~!可愛いッスねぇ」

鳰「アンタにはそこまで大きな恨みはないッスけど、伊介さんのお気に入りだってんなら話は別ッス」

鳰「尊厳とか全部ぶち壊してからあの人に見せつけてやるから、せいぜい無様晒すッスよ」

春紀「ふー!ふー!」

鳰「もっとも、もうすでに結構ケダモノみたくなっちゃってるッスけど?ここから更にどこまで堕ちられるか、楽しみッスね」

鳰「ね?ウチのストッキングしゃぶるのに必死になってる雌豚の、春紀さん?」

春紀「ふー!ふー!」

鳰「あっはっはっはっは!!」

2号室

伊介「ただいま。春紀。伊介疲れた。お風呂沸かしてよ」ガチャッ

伊介「……なんだ、まだ帰ってきてないじゃない」

伊介「もう学校終わってるわよね?ったく、寄り道してんじゃないわよ」ブツブツ

伊介「……ふぅ」

伊介「春紀戻ってくるまで暇ね。何してよう」

伊介「……とりあえずお風呂入るかぁ」

午後7時55分
5号室しえな部屋

千足「やあ」

しえな「生田目」

千足「約束の時間だ。走りのところに行こうじゃないか」

しえな「うん、行こうか。……桐ケ谷は?」

千足「風呂に行かせたよ。私が付いてかないことにぶーぶー言っていたがね」

しえな「そう。よく一人で行ってくれたな」

千足「あの子はそこまで聞き分けの悪い子じゃないよ」

しえな「…」ポリポリ

千足「どうしたんだ?」

しえな「いや……ちょっと、寝ていたら虫に刺されたみたいで」

千足「痒いのか。痕になったら大変だし、掻かないほうがいいぞ」

しえな「うん、そうなんだけど……」

千足「良かったら部屋から虫さされの薬持ってこようか?」

しえな「いや、いいよ。鳰待たせるのも悪いし。覚えていたら後で貸してくれないか」

千足「わかった」

しえな「おっと、そうこう話してる内にもう約束の時間だ、行こうか」

千足「ああ」

コンコン

しえな「鳰ー。いいかー」

『はーい、待ってたッスよー』

しえな「…?」

千足「どうした?剣持」

しえな「いや……随分声が明るいなって」

千足「…?いいことじゃないか」

しえな「それはそうなんだけど……」

『しえなちゃーん?』

千足「それより、入らないのか」

しえな「あ、そうだった。約束通り生田目連れて来たけど、入ってもいい?」

『どうぞお入りくださいッス~』

しえな「…」

千足「と言っているが」

しえな「ん……そ、そうだな。入ろうか」

しえな「お邪魔します…っと」ガチャッ

鳰「はいいらっしゃいッスー。しえなちゃん。それと生田目さん」

千足「走り…」

しえな「ん…あれ?」

鳰「あれあれ、どうしたッスか?しえなちゃん。そんなカイツブリが豆鉄砲食らったみたいな顔して」ニコニコ

しえな「いや…だって」

春紀「よっ」

しえな「……なんで寒河江がここに」

鳰「あ、春紀さんお茶淹れてもらえるッス?一式そこの棚にあるんで」

春紀「あいよ。これか……紅茶でいい?」

鳰「おっけーッス」

しえな「おい鳰ってば」

鳰「ふっふっふ」

千足「…」

鳰「春紀さんも生田目さんと一緒ッス。伊介さんの意地悪に我慢なら無くなってウチの側に着いてくれることになったッスよ」

しえな「えー……」

鳰「いやぁ流石!春紀さんは正義感強い人でウチ、嬉しいッス!」ニコニコ

千足「嬉しそうな理由はそれか?」

鳰「勿論、生田目さんが味方してくれるのも大変心強いッス」

春紀「4人分でいいんだよね?」

鳰「そうッスよー」

しえな「…ちょっと。鳰」ヒソヒソ

鳰「なんっすか?」

しえな「寒河江って……本当に大丈夫なのかよ」ヒソヒソ

鳰「平気ッスよー」

しえな「でもこいつ、完全に犬飼親派じゃないか。それにこいつ自身だって……」

鳰「あー。確かに転べ!とか言ってロッカーに叩きつけられたり色々したこともあるッスけど」

しえな「……けど?」

鳰「ま、それはそれってことで。味方してくれるっていうなら心強いじゃないッスか~」

しえな「…・・お前そんなに脳天気なやつだっけ。あ、いや変な意味じゃなくて」

鳰「しえなちゃんひどーい」

春紀「ま、警戒されるのも当然だけどね」スッ

しえな「あ…」

春紀「おまたせ。紅茶入ったよ。砂糖は…自分で入れてくれ」

しえな「…」ジー

鳰「わーい、ありがとう春紀さん♪」

春紀「お安いご用だって♪」

しえな「なんだこれ……ほんとなんだこれ……」

千足「よくわからないが……私もあまり人のことは言えない立場だしな。寒河江、本当に走りを守る気があるのか?」

春紀「ああ。伊介様……犬飼のやつにはほとほと愛想が尽きたんだ。元々嫌な奴だとは思ってたけど鳰に対するいじめの陰湿さで遂に我慢できなくなってさ」

千足「そうか…なら私とは少し違うな」

春紀「…って言うと?」

千足「私は桐ケ谷を更正させるためにここに来た」

春紀「ふぅん…ま、それもいいんじゃねぇの?あたしは犬飼のことはもう見限ったけどね」

鳰「」ニヤニヤ

しえな「鳰、ちょっと」グイッ

鳰「おっと、しえなちゃん?」

しえな「予想外だったけど、寒河江のことはこの際置いておくぞ」ヒソヒソ

鳰「うん。どうかしたッスか?」

しえな「あいつにはどこまで話した?」

鳰「っていうと?」

しえな「生田目には武智のことは言ってないし、言うつもりもなかったんだ。あんまり踏み込んだこと告げるのが不安だったからなんだけど……」ヒソヒソ

鳰「そうだったんッスか。なら春紀さんもそういうことにする……じゃなくて、まだなんにも教えてないから上手くその辺は誤魔化しましょうか?」ヒソヒソ

しえな「あ、まだだったのか。良かった……。うん、そうだな。あの二人にはそこまで大事な情報は教えないようにしておこう」ヒソヒソ


しえな「でも困ったな……寒河江がこっち陣営だとして、犬飼から直接武智殺害の話を聞かされたらそれが生田目にも伝わってって感じで知らされてしまったら」ヒソヒソ

しえな「そんな大事な情報を渡していなかったっていうことで不信感を覚えられる恐れがある」ヒソヒソ

鳰「…」

鳰「多分、それは大丈夫ッスよ」

しえな「なんでだ?根拠を聞いてもいい?」

鳰「…」

しえな「…」

鳰「……勘ッス」

しえな「勘って……」

鳰「とにかく、その時はその時ッス。まだ信用しきれていなかったとかなんとか言って、なんとでも誤魔化せられるッスよ」ヒソヒソ

しえな「うーん……でもなぁ」

鳰「万が一バレるかもしれない危険性より、今知られて不審に思われる方が絶対リスク高いッス。だから黙ってるッスよ」ヒソヒソ

しえな「……わかったよ。お前がそう言うなら」

鳰「うし、話は決まったッスね?」

千足「……もう相談はいいか?」

しえな「あ、ああすまない。ちょっと鳰とどこまで寒河江に話をしたのかっていう確認を……」

千足「別にそう取り繕う必要はないさ。我々のことをいきなり信用出来ないのは当然だろう」

千足「話せることだけ話してくれればいい。その上で我々に何が出来るかを決めようじゃないか」

しえな「……ごめん。ありがとう」

春紀「で、あたしらはこれから何をすればいいんだ?ただ集まって交流を深めましょうってわけじゃないんだろ?」

しえな「…」

しえな「そうだな。まずは、これからの話をしようじゃないか」

しえな「はじめに確認だ。ボク達の集まっている目的は何かわかっているか?」

千足「第一に、走りへのいじめをやめさせることだ」

春紀「ついでにいじめの首謀者をとっちめることかな」

鳰「…」

しえな「その通り。ちゃんとわかっているようで安心したよ」

しえな「まずは鳰を守ることだ。これを第一に考えて欲しい」

しえな「次に、いじめの首謀者を倒すこと。守ってばかりじゃジリ貧だ。こっちから攻撃を仕掛ける必要がある」

しえな「中途半端ないじめならこっちが手強いと思わせればそれだけで止めさせることも出来るだろうが、今回のケースはそうじゃないからな」

しえな「相手は執拗かつ残酷な奴らだ。油断すると二人も危ない目にあわされる恐れがあるから、気を付けて欲しい」

春紀「で、そのいじめの首謀者ってのは誰なのさ?」

しえな「それがわかっていれば楽なんだけどな」

千足「…」

しえな「ただ、今のところ怪しいのは4人だ。犬飼、英、桐ケ谷。そして首藤だ」

春紀「……あいつか」

千足「桐ケ谷がそうだとは思いたくないが……」

しえな「個人的には英が怪しいと思っている。けど、武智は首藤が怪しいと言ってた。ボクの推測よりそっちの方が信頼性は高いかもな」

春紀「首藤~?」

千足「あいつはないだろう。そんなことをするような奴か?」

しえな「ボクもそう思ってたんだけどな……でも、ちょっと前から結構感じ悪いんだ、アイツ」

千足「そういえば今朝も英と楽しそうに笑っていたな」

春紀「いじめっ子同士で……ってこと?」

しえな「…」

千足「わかった。では、その4人は特に注意して動向を見る必要があるということだな」

千足「……考えたくはないが桐ケ谷については私が責任を持って監視しておこう」

春紀「ならあたしは犬飼な。絶対アイツ怪しい。性格最悪だし。ていうか、別に首謀者じゃなくてもいじめの実行犯ではあるんだしぶっ飛ばしちゃ駄目なの?」

しえな「それは首謀者を見つけた後にしてくれ。特に二人はまだいじめ側に敵だと認識されてないだろうし、あっちからの接触があるかもしれない」

しえな「そうしたらしめたものだ。ボクらは労せずあっさり向こうの全容を把握できることになる」

春紀「なるほどね。ま。その時が来たら遠慮無くボコることにするよ」

千足「桐ケ谷……違っていてくれよ」

しえな「……方針としては、こんなものかな。後手後手に回るようだけど、あとは向こうからのリアクションがないとボクらができることは少ない」

しえな「後、できることと言えば……」

鳰「どうするッスかしえなちゃん?」

しえな「……今回、生田目、寒河江の二人がが鳰の仲間になってくれたことで戦力は大幅に向上したと思ってる」

しえな「二人はクラスでの人望もあるし、味方をしてくれてとても心強いよ。本当にありがとう」

千足「よしてくれ。むしろ今まで見てみるふりしてた自分を恥じているところだ」

春紀「…」

しえな「でも、ボクはまだ、いじめっ子たちと真っ向から戦うことになった場合は戦力が足りないと思ってるんだ」

しえな「だから、更に味方を増やせないかと考えている」

鳰「……って、いうと?」

しえな「今、鳰の味方をしているのはボクと、生田目と、寒河江。……それと、武智の4人。鳰を入れれば5人だ」

鳰「結構味方してくれる人増えたッスね」

しえな「明らかに敵対しているのは犬飼、英、桐ケ谷、首藤の4人」

鳰「…」

千足「なんだ。もう味方の方が多いくらいじゃないか」

春紀「ほんとだ。もういじめっ子のほうがマイノリティじゃん」

しえな「こいつらは数くらいで止めるような連中じゃないんだ」

千足「む…」

しえな「あとは、いじめに関わってるんだかいないんだかわからない連中だ」

しえな「つまり神長、番場の二人。それと1号室の二人」

しえな「…正直、番場はどちらもいじめっ子寄りだと思ってる。昨日だって……」

春紀「だとしてもあの二人に黒幕は無理だろうなぁ」

千足「真昼が走りに死ねと言ってるのは見たことがある。だが真夜の方もか?あいつは暴れん坊だがそんな人間ではあにと思っていたが」

鳰「……昨日、やられたッス。昔のクラスの友達をボコボコにされたッス」

千足「なんだって!?」

しえな「おいおいボクも初耳だぞ?それにそれって黒組のルール違反じゃ…」

鳰「それが黒組のルールには反して無いんッスよ。晴ちゃんの暗殺に巻き込んだら駄目ではあるッスけど、あれはただの喧嘩ッスから」

鳰「そうなると今度は逆に黒組は特別なクラスなんで校則から守られるッス」

鳰「普通なら喧嘩した罰で停学処分くらい食らってもおかしくないんッスけど。お咎め無しッス」

千足「くっ!一般人にまで手を出すとは!」

しえな「……はぁ。となると残りは神長、東、一ノ瀬だな。この辺を抱き込めないか考えてみよう」

鳰「…」

春紀「晴ちゃんなら楽勝じゃない?あの子走りと仲いいっしょ」

鳰「……嫌ッス。あの子は多分いじめのこと知らないし」

春紀「はぁ!?」

千足「……確かに、不思議なことに一ノ瀬の前では皆走りにちょっかいをかけていなかったな」

しえな「恐らく、本来のターゲットの一ノ瀬に恐れられるのを避けたかったんじゃないかな」

春紀「なるほど」

千足「それに、こういうのもなんだが一ノ瀬は表の世界の人間だ。いくら走りのためとはいえ巻き込むのも……」

鳰「……それに、ウチあの子苦手ッス」

しえな「え?」

鳰「……あの子、見てると、嫌な気分になるんッスよ。いい気なもんで向こうはウチに楽しそうに話しかけてくるッスけど」

しえな「そういえばいじめが始まる前くらいに、鳰、一ノ瀬のことさり気なく避けてた時期あったよな」

鳰「もっとも、いじめがしんどくなってきてからはあの子が近くにいるといじめが無くなるんでちょっと助かってたッスけどね」

鳰「それでも、進んであの子と仲良くなるのは、ちょっと遠慮したいんッス。勝手かもしれないッスけど」

春紀「あたしら暗殺者だからねぇ……。日なたが眩しくなっちゃうことはあるよね」

鳰(違うんッスよ。でも……)

しえな「……わかった。それじゃあ一ノ瀬に関しては今後も関わらせないということで」

しえな「首藤はどうかな?」

春紀「うーん…首藤のお気に入りだからなぁ」

千足「いや、いいんじゃないか?生真面目な子だし、いじめに気付いていないだけの可能性があると思うぞ」

鳰「…」

しえな「そうか、首藤と同室なんだよな…となるとちょっと怖いな。もう少し様子を見たほうがいいかもしれない」

春紀「となるとあと残ってるのは…」

鳰「…」

春紀「東?」

                                     / ̄ ̄ ̄`ヽ、
                                  〃           \
                             --―-、∥           ヽ
                           '"           ⌒`ヽ、
                        /         /     \
                      /      /    /       }  \
                     /  /    /    /       } ハ   ヽ
                       /   /   /  / /   /   // }     l
              --‐'''"    /  / / -―-<l  /   /  ハ    l  きょうはここまでにしとくッス
             /         { / / _,ィ,,,_   lヽ /  /  /  l   l
             {   γ/      八//ィヾr冖う气、l ∥/  / l   }  } 八
          八   {/    / ∥   い   {:::゚ノ) }∥ //⌒ ト、 j ∥ } l
            ヽ  ヽ     !  j {  } } `'''ー  j//  云气 l  / ∥ ハ l
             \     {  l 八 }  j        ;.   {;;゚ノシ j/ ノ / l }
                ヽ ト、   l  ソ /     ,     `冖/ノ / /  jノ
                   )ノ ヽ l l  //ヽ     ̄`ー     / /j//   /
             __   )ノ} ノ/V  `、          イ   /  ノハ
             /    `'''ー---{::::::::\  \_ -‐'"// j/ /ノ ハ
         /              l:::::::::::::ミー--┴   //         _ノ
          /            /人::::::::::::::::::::::::/_ / x~イ/ ̄ ̄
          /     __ /   \:::::::::::::/{   ̄`ヽ 〈(
         _/   /; ; ;/; l:::::`ヽ、     ̄ ̄   l     Y
      ∧{   /; ; ; ;/; ; l::::::::::::::\        ヽ      }
      /  l  / ; ; ; //; ;l:::::::::::::::::::\        _}__/  /
      /   /; ; ; ; / ; ; ; ; l:::::::::::::::::::::::>--<:::::::::/V; ;} /
     /    / ; ; /; ; ; ; ; ; ;!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ; l ノ /
    /   /; ; / ; ; ; ; ; ; ; ; !::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/; ; ; ;l /
    /   ノ; / l ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;} ::::::::::::::::::::::::::::::::::::/; ; ; ; ;} 〉
   / /; ;/  }; ; ; ; ; ; ; ; ; /::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ; ; ; ; ノ

  / /; ; ;/   j; ; ; ; ; ; ; ; ;/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::; ; ; ; ; ;/
/ /; ; ; ;/    /; ; ; ; ; ; ; ;/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{; ; ; /

乙ッス!
しえなちゃんが案外計算して事を進めてるのカッケーって思っちゃった
これで東サンがこっちに来れば百人力ッスねえええ!

誤字の報告ッス

>しえな「首藤はどうかな?」

>春紀「うーん…首藤のお気に入りだからなぁ」


ここしえなちゃんの方は神長?ッスよね
続きも楽しみにしてるッスよおおおお

今更ッスけど、>>612
>鳰「……ま、いいッス。寒河江さんは暴言吐きながらもわりとウチのこと庇ってくれたりもしてたんで」
ってとこ、生田目さんの間違いじゃないッスか?

金星寮1号室晴兎部屋

コンコン

晴「はーい」

ガチャッ

しえな「やあ、一ノ瀬」

晴「あれ?しえなちゃんだ」

千足「私もいるよ」

晴「千足さんも」

兎角「どうした?晴、誰か来たのか」

晴「あ、兎角さん」

兎角「まったく。どうして私が出るまで待っていられないんだ。相手が殺す気だったらお前もう死んでるぞ」ブツブツ

晴「えー?大丈夫だよ~」

千足「安心して欲しい。私達に一ノ瀬への害意は無いよ」

しえな「少なくとも今はね」

兎角「……お前たちか。なんのようだ?」

しえな「えっと…」

千足「相談があって来たんだ」

晴「そうだん?」

しえな「うん。相談だ。それで……一ノ瀬には悪いんだけど、東を貸して欲しいんだけど」

兎角「…」

晴「兎角さんにだけ?」

しえな「あ…」

兎角「言ってみろ。内容次第で乗るかどうか決める」

千足「あー…すまない。今回の相談の内容は…その、できるだけ人には聞かれたくないというか、なんというか」

晴「そうなんだ…」ショボン

兎角「……」ジー

しえな「あ、も、もちろん変な相談じゃないぞ!でも、今回は東だけに聞いて欲しいっていうか…」

兎角「…」

晴「兎角さん?」

兎角「怪しいな。そんなこと言って私が晴の側を離れた隙に誰かが襲う算段なんじゃないか?」

しえな「馬鹿言うなよ!そんなことしてなんの得がある。それじゃ報酬もボクらに入らないしな」

千足「柄じゃないことをしている自覚はある。だが、お前にしか頼めないことなんだ。東」

兎角「…ふむ」

晴「…」

兎角「どう思う?晴」

晴「晴は、嘘じゃないと思う。良かったら兎角さん、聞いてあげて」

兎角「…だろうな。お前ならそう言うと思ったよ。……はぁ」

しえな「…」

千足「…」

兎角「いいだろう。私以外の人間には聞かれたくないんだな?だったら場所を変えようか」

千足「…ありがとう、東」

しえな「助かるよ。だったらボクの部屋に行こうか。そこで話そう」

兎角「…じゃあ、ちょっと行ってくる。晴、何かあったらすぐに電話してこいよ」

晴「はい。いってらっしゃい兎角さん」

しえな(よし、まずは上手く行った。あとは…)

千足(東が話に乗ってくれるかどうか…か)





バタン

晴「…」

晴「……珍しい組み合わせだね」

晴「しえなちゃんと千足さんだって」

晴「相談事ってなんだろう?」

晴「うーん…」

コンコン

晴「…あれ?」

コンコンコン

晴「兎角さん忘れ物でもした?」

ガチャッ

柩「こんばんわ、一ノ瀬さん」

晴「あ、柩ちゃん!」

柩「東さんは…いないんですか?」キョロキョロ

晴「うん。入れ違いにちょっと、ね。ついさっきしえなちゃんと千足さんが相談があるって連れていっちゃった」ニコニコ

柩「…へえ」ピクッ

晴「真剣な顔して兎角さんにお願いしててね。晴には話せないことみたいで…ってことでしえなちゃん達のお部屋に行ったはずだよ?」

柩「…」

晴「晴には話せない内容だって言われたのはちょっと寂しいけど、でも真面目な相談に兎角さんが頼られるっていうのはちょっと嬉しいかな。えへへ……」

柩「そうですか、千足さんと剣持さんが……」ユラリ

晴「……って、ああああああっ!!!」

柩「わっ!?」ビクッ

晴「あ、あわわわ…」

柩「ど、どうしたんです?」

晴「ひ、柩ちゃんごめん。今の聞かなかったことにして…」

柩「えーっと…それはどうしてですか?」

晴「だ、だってできるだけ人には聞かれたくない相談だって言われてたのに、そんなことをしてるって話されたら…晴だったらショックです」

柩「……ああ」

晴「ごめんね柩ちゃん!ほんとごめん!だから今のは聞かなかったことに!後生ですので!」

柩「……ふう。わかりました。一ノ瀬さんおっちょこちょいですね」

晴「ありがとう~……ごめんね」

柩「いえ、いいんですよ。本当は僕も東さんにちょっと真面目なお話があったんですが…だったらまたそれは次の機会に」

晴「はぁ……兎角さんモテモテだぁ」

柩「ふふっ。そうですね」

晴「うーん。嬉しいんだけど複雑な気分。柩ちゃん、そのお話晴にじゃダメかな?」

柩「そうですね。申し訳ありませんが」ニコニコ

晴「はうう。晴、人徳ないのかなぁ」ガックリ

柩「そんなことないですよ。でも、今回は東さんの方が適任っていうだけで」

晴「うー……ずるいなぁ。晴もみんなに頼りにされてみたい……」クスン

柩「……まあ、それはちょっとむずかしいかもしれませんけど」

晴「柩ちゃんってなにげに毒舌だよね」

柩「今、ちょうど東さん、いないんですよね?」クスッ

晴「…」ピクッ

柩「だったら、せっかくですので例の『ゲーム』についてお話、僕と少ししませんか?」

晴「…」

晴「……いいけど、兎角さん戻ってくる前にお部屋に戻るんだよ?」

柩「はい♪」

5号室しえな部屋

兎角「断る」

しえな「えっ」

千足「…」

兎角「なんで私があんな面倒くさい奴を庇ってやらなければいけないんだ」

しえな「な、なんだと!?お前仮にもクラスメイトを…」

兎角「全員敵で、しかも暗殺者のクラスメイトをか?他の暗殺者達のいじめから護れって?馬鹿も休み休み言えよ」

千足「…どうしても駄目か?」

兎角「ああ。駄目だ。例え晴の頼みでも断っていただろうな」

しえな「そんな…!なんで!」

兎角「当たり前だろ。晴を護るだけでも大変なのになんでわざわざ私があんなやつまで護らなければいけないんだ」

しえな「ぐっ……!でも!いじめなんて……!」

兎角「知るか。お前たちで勝手に潰し合いしてくれるなら私としてはむしろ好都合だ。思う存分戦ってくれ。ただし、晴の目に付かないところでな」

千足「…」

兎角「……と、言うか。今思ったんだが裁定者が消えたら黒組はどうなるんだ?」

兎角「審判なしでも継続できるのか?判定不可能で無条件でこちら側の勝ちになったりしないのか?だとしたら……」

しえな「……っ!もういいっ!」

兎角「…」

しえな「お前がそんなやつだとは思わなかった!ぶっきらぼうだけど、もっと、優しいやつだって!」

兎角「優しい?ふん。私はたった今お前に対するイメージが決まったぞ。人を見る目が無い奴だ」

千足「剣持。もういい。わざわざ呼び出してすまなかったな、東。もう帰っていいぞ」

兎角「ああ。帰らせてもらう。じゃあな」

千足「……待て」

兎角「……今度はなんだ。少しうんざりしてきたぞ」

千足「……安心しろ。もうお前には変なことを頼みもしないし頼りもしないよ。正直に言えば私もお前には幻滅した口だ」

兎角「そうか。もう帰ってもいいか?」

千足「……だが、覚えておけ。お前が中立を気取るならそれでいい」

千足「しかし万が一だ。万が一にも、走りに手を出そうものならその時は……」

兎角「……その時は?」

千足「私はお前の敵だ」

兎角「……ふん」

千足「…」

兎角「まるで今まで敵ではなかったような口ぶりだな」

バタン

しえな「…」

千足「…」

しえな「……くそっ!!」

千足「剣持……」

しえな「くそっ!くそっ!くそっ!!東の馬鹿野郎!冷血漢!カレー女!!」

千足「…泣いてるのか」

しえな「なんでだよっ!どうして鳰があんな目に合ってるの知ってて…あんなに無関心でいられるんだ!!」

千足「剣持…」

しえな「うううう……うううううー……」ポロポロ

千足「…」ギュッ

しえな「…」

千足「お前は優しい女だな」

しえな「…生田目」

千足「お前も暗殺者だというのにな。嫌いじゃないぞ。むしろ好感が持てる。でも、そう東を責めてやるな」

しえな「だって……」

千足「あいつだって色々あるだろう。そもそもがあいつは一人でも一ノ瀬という暗殺のターゲットを守ろうと躍起にあっている女だ」

しえな「…」

千足「考えようによっては、クラス全員から命を狙われている一ノ瀬は走り以上のいじめられっ子だと思わないか?」

千足「単身それを守ろうと決めたんだ。命を懸けてまでな。あいつだって根は悪いやつじゃないはずだ」

しえな「…」

千足「だから、私達は私達でできることをしよう。何もこれで手詰まりというわけじゃない」

しえな「……わかった」

千足「……よし。それじゃあ走りと寒河江が待っている部屋に戻ろうか。失敗は失敗だ。二人で謝らないとな」

しえな「……優しいのは、生田目の方だよ」ボソッ

千足「ん?」

しえな「……なんでもない」

千足「そうか」

しえな「…」

千足「剣持?」

しえな「……ごめん、もうちょっと待って」

千足「…」

しえな「もうちょっとだけ、このままでいさせて。すぐに泣き止むから……」

千足「…ああ。わかった」ナデナデ

金星寮廊下

兎角「…ちっ」

兎角「なんなんだあいつらは」イライラ

兎角「晴を狙う暗殺者のくせに走りをいじめから助けろだ?ふざけるな!!!」

兎角「勝手にやってろ!!」

ガチャッ

兎角「……ん?」

柩「」イソイソ

柩「…!」ビクッ

兎角「…ん?」

柩「こ、こんばんわ…」

兎角「ああ…?」

柩「お、おやすみなさい」ピューッ

兎角「…」

バタン

兎角「桐ケ谷?なんで私達の部屋から出て自分の部屋に戻ってったんだ?」

兎角「…はぁ。晴め。また不用心に他のクラスメートを招き入れて……」

兎角「……ちゃんと無事なんだろうな」

2号室春伊部屋

伊介「うん、暇♥」ニコッ

伊介「伊介がせっかくお風呂からあがったっていうのに、春紀のやつどこほっつき歩いてんのよ」イライラ

伊介「帰った来たら絶対とっちめてやるんだから♥」

伊介「…」

伊介(不思議なもんね。最後にあいつの顔見てからまだ1日も経って無いはずなのに)

伊介(こんなにあのムカつく顔が見たいって思ってる)

伊介(伊介、壊れちゃったのかな?)

伊介(春紀……こんなに会いたいなんて……)

伊介(こんなに寂しいなんて……)

伊介「…」

伊介「…あー!もうっ!やめやめ!!」

伊介「なんで伊介があんなバカのために悩まなきゃいけないわけ?ふざけんなっつーの♥」

伊介「気分転換に散歩でもしてこよーっと」

伊介「そうねぇ……まずは」

伊介「もう一人のバカのとこ行って様子見てこようかしらん♥」

7号室鳰部屋

鳰「…しえなちゃん達、遅いッスねぇ」

春紀「…だな」

鳰「…」

春紀「…」

鳰「…はぁ」

春紀「…どうした?走り」

鳰「……春紀さん、頭痛かったりしないッスか?」

春紀「…?いや、あたしは別に」

鳰「そうッスか。ならいいッス」

春紀「?」

鳰「あ、紅茶もう一杯淹れて貰えるッス?」

春紀「ああ。いいよ」

鳰「すまないッスね~」

春紀「なーに…ん?」

ガチャッ

伊介「よっ♥元気してたぁ?に~おっ♥」

春紀「…伊介様」

鳰「…」

伊介「……あん?春紀じゃん。なんでこんなとこいるのよ。ふざけんな♥」

春紀「そっちこそ昨日の晩からどこほっつき歩いてたんだ?」

伊介「そんなのどうでもいいじゃない♥」

春紀「ならあたしがどこにいようがアンタにはどうでもいいよな」

伊介「…妙にトゲトゲしいわねぇ」ピクッ

鳰「…ふっ」

伊介「……ああ、忘れてたわ。鳰、随分元気そうね。伊介、安心。でもまあいいや、今は春紀よ」

鳰「…」ギリッ

春紀「…走り?」ボソッ

鳰「ふ、ふふふ…お、お陰様でウチは元気ッスよ…」

春紀「…おい、落ち着けって」ヒソヒソ

鳰「わかってるッスよ」

伊介「…?なに二人でヒソヒソ話なんかしちゃってるわけ?」

伊介「つーか鳰。アンタ春紀にだっていじめられてた癖にティーカップ片手に随分余裕ある顔してんな♥引き攣ってるけど♥」

鳰「…ふぅ」

春紀「…くくっ」

伊介「…?」

鳰「…げひっ♪」ニヤッ

伊介「……随分久しぶりに見た。その厭らしい笑み。なんだ?喧嘩売ってんのか♥」

鳰「いえいえ。まさかそんな、黒組でも最強クラスの伊介さんに喧嘩売るなんてウチにはとてもとても」ニタニタ

伊介「……なに企んでんのよ。あんま調子乗ってると泣かすぞ♥」

鳰「いやん怖いッス~。泣かされちゃうッス~。誰か助けて欲しいッス~♥」ニタニタ

伊介「……?」

鳰「ねえ、春紀さん?」

春紀「大丈夫さ、走り。あんなやつ、ちょっかい出してきたらあたしがぶっ飛ばしてやるから」

鳰「うわ~い!流石春紀さんは頼りになるッスよぉ~♥」

鳰「ね?伊介さん」チラッ

伊介「…」

春紀「ああ、任せな。走り♪」ナデナデ

鳰「むっふ~♪」

伊介「…」

鳰「…」ニヤニヤ

鳰「…」チラッ

伊介「…」














伊介「………は?」











鳰「ぷっはー!春紀さんの淹れてくれた紅茶は美味しいッスね~!もういっぱ~い!」

春紀「はいはい。ったく、ちゃんと味わって飲めよな」

鳰「だって美味しいんッスも~ん」

春紀「ま、悪い気はしないけどな。でもこれティーパックだけど…」トポトポ

伊介「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

鳰「…ぎひっ」クスッ

春紀「はい、どーぞ」

鳰「さんきゅーッス」

春紀「……ああ、まだいたの?伊介様」

伊介「ま、まだいたですってぇ……?」ワナワナ

鳰「ふーふー…」

春紀「ってか、もう『様』要らないよな?伊介。……これも違うな。犬飼」

伊介「はぁあああああああ!!!?」

鳰「ずずず…うわっ!あちちちっッス!」

春紀「うわっ!バカ、走りなにやってんだよ!」

鳰「あちゃちゃちゃ!お湯こぼしちゃったッス!」

春紀「おい犬飼!お前が急に大声出すから走りがびっくりしちまっただろ!火傷したらどうすんだ!」

伊介「…」ポカーン

鳰「春紀さん、そんなこと言ってないで冷まして欲しいッス!」

春紀「あ、悪い悪い、どこにかかったんだ?」

鳰「…指ッス」ニヤッ

伊介「…」

鳰「鳰の、右手の人差指の先にかかったッスよぉ…」

春紀「…ああ、そこかぁ」トロン

鳰「春紀さんのその舌で、ウチの指を舐めて冷まして欲しいッス…」ニヤニヤ

春紀「ん……」スッ

伊介「ちょ、なにやってんのよ、春紀……?」

春紀「あー…」

鳰「…」チラッ

伊介「え…ちょっと…なによこれ……?」

鳰「…」ドキドキ

春紀「……ーん…」

伊介「いや…ちょっと、止めてよ冗談でしょ?春紀……」

鳰「……ぎひっ♪」

春紀「…ぱくっ」

伊介「…」

春紀「ん~…ちゅっ…ちゅぱっ…じゅるっ……」

鳰「ん~。その調子ッスよ春紀さん。熱いのが退いてくッスよ~」チラッ

春紀「ん…ちゅっ…ちゅばちゅば…んっ…れろっ」

伊介「…」

鳰「……ぎひっ♪」

鳰「春紀さんの舌、気持ちいッスね~。舌使い上手ッス。そのまま丁寧に舐めて冷やすッスよ~?」

鳰「…」チラッ

伊介「…」

鳰「……くふっ!………うぷぷぷ!」

春紀「…」ペロペロチュパチュバ

鳰「ふぅ…もうそろそろ大丈夫ッスよ、春紀さん」

春紀「ん……」スッ

伊介「…はっ!?ちょ、ちょっと!?二人共なんなのよ!?伊介の前でいきなりわけわかんないこと……」

鳰「あ、手が滑ったッス」ポタッ

伊介「!?」

鳰「あーあ。折角春紀さんがウチの手を舐めて綺麗にしてくれたのに、今度は足の先に紅茶を一滴零しちゃったッスよぉ」ニヤニヤ

春紀「…それは大変だ。すぐに冷まさなきゃ」

鳰「すみませんねぇ春紀さん。そしたらまた、お願いするッスよ」

春紀「…」スッ

伊介「は、春紀……?な、なんでそんな、鳰なんかの足元に跪いて……」

春紀「……ぺろっ」

伊介「…」

鳰「あははは!春紀さんこの態勢好きッスね~!ウチここまでしろなんて言ってないッスよ~?とんだマゾ犬ッスね!!」

伊介「……鳰。アンタ春紀になんかしたでしょ」

鳰「いいえ~?ただ、春紀さんウチのこと大好きみたいッスよ~。ね?春紀さん♥」

春紀「ん…ちゅば…ちゅぶちゅぶ…」

鳰「あら、ウチの足舐めるのに夢中で聞いてないみたいッス」ニヤニヤ

伊介「…」

鳰「……ねえ、伊介さん。ウチはあの後、考えたんッスよ」

伊介「…」

鳰「伊介さんが乙哉ちゃんを殺したって聞いてから。ずっとずっと考えてたんッス」

鳰「どうしたらアンタに乙哉ちゃんやしえなちゃん、そしてウチが負った以上の苦しみと絶望を与えられるか」

鳰「これを思い付いたのは偶然ッスけどね?でも、予想以上に心にキテるっしょ?伊介さん、顔が真っ青ッスもん」

伊介「…」

鳰「伊介さん、春紀さんのことだ~ぁい好きだったッスもんね」

伊介「…」

鳰「だからウチ、春紀さんを伊介さんから寝とっちゃうことにしたんッス」

鳰「この子の身も心も全部……もう完全にウチのもんッスよ」

伊介「…」

鳰「伊介さんの入る余地なんか……もう一辺の欠片も残ってないッス♥」

伊介「…春紀」

春紀「…ん……走り……ちゅぱ……」

鳰「鳰でいいッスよ」

伊介「ねえ、春紀……?」

春紀「鳰……鳰……ちゅっ…じゅばっ」

伊介「帰ろう?春紀……」

春紀「鳰……好きだよ……愛してるよ……」

伊介「春紀。伊介、謝るから。ごめん、伊介ちょっと普段意地悪言い過ぎた?それで怒った?」

春紀「ああ……頭がどうにかなりそうだよ、鳰。好きだ。好きだ。……もっと、舐めたい、鳰!」

伊介「ねえ、春紀ぃ……」

鳰「ふふっ。いいッスよ……なら今回は特別に」スッ

ピリピリッ

鳰「ストッキング越しじゃなくて、ウチの素足を舐めることを許可するッス」

伊介「春紀ってば……」

春紀「フー!フゥーー!あむっ!ちゅばっ!くちゅむぐ…ぺろ、あむ…じゅるるるるるるっっ!!」

伊介「春紀……」

鳰「……ね?見た通りっしょ?」

伊介「…」

鳰「アンタの居場所はここには無いんだよ。殺す前に絶望する時間だけは与えてやるから自分の部屋に帰れ」

伊介「…」

鳰「……ッス」

バタン

鳰「…」

春紀「ちゅぱちゅぱ……」

鳰「ふ…」

鳰「ふふふ…」

鳰「あっはっは!!」

鳰「やってやったッス!やってやったッスよ乙哉ちゃん!あいつの大事なもの奪ってやったッス!!」

鳰「かかってくる気力もなくすごすごと自分の部屋戻ってたッス!あの犬飼伊介ともあろうものが!」

鳰「無様ッス!哀れッス!惨めッス!格好悪いッス!あっはっは!痛快だったッスよ~~~!!」

鳰「…」

春紀「…ちゅっ…ちゅぷ……」

鳰「……いつまで舐めてるッスか。豚」ゲシッ

春紀「がっ!?」ゴロッ

鳰「…ちっ。虫酸が走る」

春紀「いててて……ん?あれ、走り。どうしたんだ?」

鳰「…」

鳰「……いえ。なんでもないッス♪しえなちゃん達遅いッスね~」

春紀「あ、ああ……?あれ、あたしなにしてたんだっけか……」

春紀「……っつ、頭、痛てて」

鳰「…」

春紀「あれ、血が出てるや。テーブルにでもぶっけたか?ったくなにやってんだあたしは……」

鳰「……春紀さん」

春紀「ん?どうした?走り」

鳰「紅茶が飲みたいッス」

金星寮廊下

ガチャッ

千足「もう大丈夫か?剣持」

しえな「うん……ごめん。情けないところ見せて」

千足「なに。気にするな」

しえな「すっかり遅くなってしまった。早く鳰のところに行ってあげなくちゃだな。心配してるかもしれない」

千足「そうだな……ん?」

しえな「どうしたんだ?」

千足「参ったな……桐ケ谷からメールが来ている」

しえな「……なんて?」

千足「なんだか寂しくて眠れないそうだ。すまない、ちょっと寝かしつけてくる」

しえな「そうか……いや、いいよ。遅くなったのは僕のせいだしな。話は全部僕の方からしておく。今日は解散にしよう」

千足「そうか?なら、すまない。お言葉に甘えさせてもらう」

しえな「ううん。……ありがとう生田目」

千足「……どうしたんだ?急に」

しえな「ううん。なんでもない。ただ、生田目が味方になってくれて本当に良かったって思って。本当に頼りになるよ」

千足「ふっ……。なんだそれ」

しえな「ごめんごめん。本当になんでもないんだ。じゃあ、ボクはもう行くから」

千足「ああ。……剣持!」

しえな「……なに?」

千足「私はお前『を』とても頼もしいやつだと思ってるぞ!」

しえな「…そう」クルッ

しえな「……生田目も早く行けよ!桐ケ谷が待ってるだろ!!」タタタッ

千足「?あ、ああ…」

しえな(……なんだよそれ)

しえな(卑怯だ!)

しえな(そんなこと生田目みたいなやつに言われたら……)

しえな(武智が死んだばっかりだっていうのに)

しえな(ちょっと、嬉しい気分になっちゃうじゃないか……!!)

しえな(ああもうっ!引き締まれボクのほっぺた!!)ニヤニヤ

ガチャッ

しえな「っ!」

伊介「…」

しえな「い、犬飼!7号室から!?」

伊介「…」

しえな(生田目!…くっ!ダメだ、もう部屋に入ってしまっている!大声で呼ぶか?ダメだ、他の連中に気付かれたらデメリットのほうが多い)

しえな(それより鳰は!鳰は大丈夫なのか!?あいつが部屋から出てきたってことは…)

伊介「…」フラフラ

しえな「…あれ?」

伊介「…」ヨロッ

しえな「…」

伊介「…」ゴン

しえな「…」

伊介「…」ヨロヨロ

しえな「…」

伊介「……ぐすっ」ガチャッ

バタン

しえな「……泣いてた?嘘だろ、あの犬飼が……」

しえな「…もしかして寒河江がやってくれたのか?そういえばあいつ犬飼の扱い妙に上手かったよな」

しえな「…と、とにかく鳰が無事か確認しなきゃだ」コンコン

しえな「鳰ー。大丈夫か?ボクだ、しえなだ。開けていいかー」

ガチャッ

鳰「しえなちゃん」ガバッ

しえな「うわっ!?」

鳰「やったッス!やったッスよー!!」スリスリ

しえな「無事だったか鳰……って、ちょ、待って、くすぐったい!」

鳰「追っ払ってやったッス!やっつけてやったッス!乙哉ちゃんの仇の伊介さんやっつけたッス!やったッスよ~!」スリスリ

しえな「ああ……やっぱりそうだったのか。よく撃退できたな。これって初勝利か?だからくすぐったいって」

鳰「なんもかも春紀さんのおかげッスよ~」スリスリ

春紀「あれ、そうだったっけか。あたしあんまりなんかした記憶ないけど……」

鳰「覚えてないんッスか!?春紀さん八面六臂の大活躍!春紀さんがいたからこそウチ助かったようなもんッス!」スリスリ

しえな「そうだったのか……ありがとう寒河江。流石だな。あと鳰、くすぐったい」

鳰「ウチは優しくて頼りになる人達に護ってもらえて、本当幸せッスね~」スリスリ

しえな「ああもうっ!鳰、さっきからくすぐったいってば!言ってるだろ!」

鳰「おっと、失礼をば」サッ

鳰「……あれ?千足さんは?」

しえな「あ……そうだった。あいつは桐ケ谷に呼ばれてな。怪しまれてもなんだしっていうことで今日はもう帰した」

鳰「なるほど。了解ッス」

春紀「で。兎角サンはどうだったのさ?」

しえな「あ、そうだ。すまない。アイツは駄目だった。仲間には引き込めなかった」

春紀「そっか……」

しえな「ああ。生田目の分析だと、一ノ瀬を狙ってるボクらがいじめ云々言うのが気に入らないんじゃないかって」

春紀「なるほどなぁ。それを言われるとこっちも困っちゃうね。筋は通ってる」

鳰「…」

しえな「でも、あの口ぶりだといじめに加担する可能性も薄いかなっていう感じはある。それならまあ、プラマイ0だし良しとしよう」

鳰「兎角さんは敵に回すのほんとしんどいッスからねぇ」

春紀「東のアズマ、だっけか。晴ちゃん暗殺の件では仕方ないけど、こっちでも相手しなくて済むならホッとしたよ」

しえな「さて。それじゃあ今日はこの後だけど……」

鳰「ウチ、もう疲れちゃったッス」

春紀「あたしもだ」

しえな「ボクもだ。というわけで、今日はもう解散にしないか?生田目も帰ったことだし」

春紀「賛成」

鳰「異存なしッス。今日は久しぶりにゆっくり寝たいッスよ」

春紀「あたしも……あ~、でも困ったな」

しえな「ん?」

春紀「今部屋に帰るのは正直きっついわ」

鳰「あ…」

しえな「ああ、犬飼……」

春紀「悪い鳰!今日あたしのこと泊めてくんないか!?」

鳰「……うん。いいッスよ」

しえな「そうか。寒河江が鳰と一緒の部屋にいてくれるなら安心だな」

鳰「ウチの部屋お泊りしたいっていうなら、今夜は寝かせないッスよぉ~?」

春紀「あはは!それは楽しみだなぁ」

しえな(鳰も冗談を言える相手が増えてちょっと安心だな。寒河江は懐が広いから)

しえな(生田目という寒河江といい、改めて頼りに二人が仲間になってくれたんだな)

しえな(……あとは武智さえいてくれたら、いじめっ子たちにだって負けないのに)

しえな(いや、止そう。今は明日に備えてゆっくり休むんだ)

しえな(そして明日からまた全力で動き回るんだ!身体も、頭も!)










                   「あした?」











しえな「はぁ…はぁ…はぁ…」
















                                    「クスッ」

しえな「暑…」ゴロン







                     クスクスクス                  
                   
                               
   カチャッ……        
                                    あーあ



          クスクスクス                           コツ…     

                              クスクスクス

     コツ…
                      
                             かわいそう

                                                あはははは  
                     コツ……              
   クスクスクス

   
                                   ふふっ♪
             コツ……

                                          クスクスクス

 
                               コッ                         




しえな「ん…むにゃむにゃ……武智……」









                 「可笑しなことを言う人ですね」                          










しえな「…っ?」ブルッ




                      クスクスクス

  拳銃           
                  クスクスクス
                                               釘
 
     猛毒
                                      血
              あはっ♪                           

                            クスクスクス 
                                           痛
     あはは
              クスクスクス
                                楽には殺さない

        
                    あはははは   
                                                ゲーム    

      クスクスクス
                              あはははははははは
  

     天使
                  あははははははははははははははははは!!!!!




しえな「なんだか寒気が……」モゾッ







                  「貴女に明日なんて」







しえな「ひっ……!」









                      「来ませんよ?」









しえな「お、お前……っ!」





柩「ねっ?剣持さん」ニコッ


                   /⌒ヾ⌒ヾ⌒ヾ´ ̄`ト、
             ┌<´_    >┴大∨ ヘ `丶、

              {    `>‐'´/⌒-丶ミュ.l_ i ヽ\_
             厶イ´ ̄  ,/     ヽ `丶`\ヘ   ヽ   きょうはここまぐえー
          _,rーヘ      i {        Y   \ヾ__ノ
    ∧、-‐¬ヘ     ヽ   / ハ   、        j_>ュ、_
  /  \  \ \   ∨ィ′/ゝ ゝ   ヽ         <-'´   `\_
. //     />‐< _≧ / {  {ゝ   \   } ノ   ノ ミト        `
 {  \ /  /⌒、\// 〈   ` ̄  ` ̄ .:  イ  爪_
 `ー- Y  / ヘヽ ヽ. ∨ゝ \ゝ    ー─-       ヘヽ ` ̄ ̄ ̄ ̄
     \ト ∨ ヘ、 ト-′.:\ \ 、          //ノ ノ

          \〉-' `i   Y彡  ノ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´

今更レス見返してたら気付いたんで報告ッスけど
>>652>>654の誤字報告はご指摘の通りッス

他にも色々誤字脱字間違い探せば腐るほど出てきそうで恥ずかしい限りッス
赦して欲しいッス

深夜1時
金星寮廊下

しえな「はっ、はっ、はっ」タタタタ

しえな「…っ!」キョロキョロ

しえな「…っ!あっち!」タタッ

しえな「はぁはぁ…っ!くそっ!もっと普段運動しとくんだった!」タタタタ

しえな(でも、桐ケ谷だってそんなに身体能力は高くなさそうだしなんとかなるはず。このまま朝を迎えれば…)タタタタ

しえな(ああもうっ!どうしてこうなった!!)

しえな(…って、どうしてもこうしても、それもこれも!全部ボクがさっき寝苦しさで起きたら横に怖い顔した桐ケ谷が立ってたことから始まったんだ!)

しえな「あのチビ、何がゲームをしましょうだっっ!」ガンッ

しえな「…~~~っっつ~ッ!!」プルプル

「あれ?この音は…もしかして剣持さんそっちですか~?」

しえな「やばっ!」タタタッ

「ふふ。逃がしませんよ。でもまだ捕まえません。ゆっくりじっくり、時間をかけて追い詰めてあげますからね」

コツ コツ コツ

しえな(状況を整理しよう)

しえな(ボクは今、金星寮を舞台にして桐ケ谷と二人きり、深夜の鬼ごっこの真っ最中だ)

しえな(勿論やりたくてやっているわけじゃない。桐ケ谷がどうしてもやりたいと言ってきたから付き合っている)

しえな(……強制参加で。ボクに拒否の選択肢は無かった)

しえな(鬼は桐ケ谷。ボクは鬼から必死で逃げる役だ)

しえな(ルールは簡単。ボクが朝になるまでアイツから逃げ切れば勝ち。捕まれば死。金星寮から出てはいけない。それだけ)

しえな(朝になって誰かが、特に生田目が起きてくれば桐ケ谷は自重せざるを得なくなる。だからボクの勝ちだ)

しえな(それだけならルールを破って寮の外に逃げて朝まで時間を潰せばいい?それも駄目だ。人質がいる)

しえな(鳰じゃない。ましてや寒河江でもないし、桐ケ谷にとって生田目を人質にするなんて発送は論外だ)

しえな(人質はボク自身。桐ケ谷のやつ、いつの間にかボクの身体にとんでもないものを仕込んでいやがった)

しえな(蜂毒。それもスズメバチの毒だ)




しえな『スズメバチの毒?』

柩『ええ。ほんの少し前ですけど。まさかこんなに早く使うことになるとは思いませんでした』

しえな『……どういう意味だ』

柩『僕はね、剣持さん。嫉妬しているんですよ』

しえな『嫉妬?』

柩『ええ』

しえな『何をおかしなことを。お前がボクに嫉妬する要素なんて…』

柩『最近千足さんは貴女たちのことばかりです』

しえな『…』

柩『今までだって僕にいじめを止めるよう言ってきたり。それは正義感の強い千足さんです、気持ちは少しわかります』

柩『でも、どうやって千足さんのことを誑かしたのかは知りませんが公然と貴女達の味方を始めたのは流石にショックでした』

柩『どう考えても悪いのは走りさんなのに…千足さんはよりにもよって僕より走りさんを選んだんですよ!?』

しえな『生田目が正義感強いって一番知ってるのはお前だろ?桐ケ谷。いじめをしてるって自覚があるならそれはなにも不思議なことじゃ…』

柩『黙って下さい。あまつさえ千足さんは貴女とは特に親しげで…僕はちゃんと見ていました!貴女が千足さんに甘えているところも!抱きしめられているところだって!』

しえな『あ、あれを見られてたのか……でもボクと生田目はそういうのじゃなくて』

柩『五月蝿い喋るな!僕が一番許せないのは、剣持さん!貴女が千足さんに頼りになる人だと評されていることです!』

しえな『な…それも聞いてたのか!?』

柩『ええ。ええ。聞いてました。全てです。だから僕は赦せないんですよ。千足さんはすごい人です。なんでも一人で出来て、なんでも上手にやってしまって』

柩『僕が困っていたら何でもあっという間に解決してくれる優しい人です。でもそれは言い換えれば僕に頼ってくれたことは一度もなかったということでもあるんです』

柩『ルームメートで、いつだって一番近くにいて、一番千足さんのことが大好きな僕でさえ千足さんは頼ってくれないのに』

柩『千足さんは貴女が頼りになるって!!』

しえな『…』

柩『だから僕は思ったんです』

柩『貴女を消すのは簡単です。でも、それだけじゃ僕の鬱憤は晴らせない。それに、貴女が頼りになるなんて幻想を千足さんに見せたことも赦せない』

柩『だからなるべく対等の条件から無様に殺してあげましょう。僕から必死で逃げ惑い、赦しを懇願し、惨めに殺されなさい』

柩『ゲームです。僕の持っている毒から無事逃れてみなさい。僕の獲物はこの、スズメバチの毒が塗ってある針』

柩『剣持さんは朝、太陽が昇って誰かが起きてくるまで逃げ切れば勝ちってことにしてあげましょう。……ああ。万に一つも無いと思いますけど、僕をやっつけられたらそれでも勝ちでいいですよ』

しえな『なんだよそれ…』

柩『あ、剣持さんにこのゲームの拒否権はありませんよ?貴女は既に一度僕に毒を受けています』

しえな『…それがさっきのスズメバチの毒ってわけか』

柩『ええ。厳密には少し違いますけどね。アナフィラキシーショックって知ってますか?剣持さんが寝てる間に僕は一度貴女にこの針のと同じ毒を注射しています』

柩『痛みもほとんど無かったでしょう?僕がスズメバチの毒を改良して作った新毒で、痛みは従来のハチ毒に比べて少ないのにアレルギー反応だけは強烈になっているという自慢の一品です』

柩『これと同じ毒をもう一度受けると、血圧がものすごい勢いで下がり、筋肉が硬直し、組織がめちゃくちゃになって呼吸できなくなって死にます。絶対に助かりません』

柩『このゲームの誘いを断ってとしても、僕達がクラスメートな限りすぐにまた顔を合わせることになるでしょう?その時に、いいえ。もしかしたら剣持さんがまた寝ている時に』

柩『いつだって殺せるんですよ。それも、誰も死因は蜂に刺されて死んだとしか判断できないんです。間抜けな死に方ですね』

柩『だったら、覚悟を決めてゲームに乗って万が一に賭けた方が得だと思いますけど』

しえな『…』

柩『あ、今千足さんを頼ろうとしました?駄目ですよ。あの人は今、僕の盛った睡眠薬でぐっすりです』

柩『さあ、いい加減お喋りにも飽きました。ゲームを始めましょう。ルールは基本鬼ごっこです』

しえな(で、無様にあいつから逃げ回りながら今に至る、と)

しえな(…ふう、疲れてきた。いくら捕まったら終わりとはいえ、一晩中逃げまわるのは体力的に考えても無理だよな)

しえな(どこか隠れられる場所を探してそこで時間を稼がないと…)

しえな(いや、もっと他に良い方法はないのか?)

しえな(正直、今回の桐ケ谷の暴走は予想外だった。だけどいくらなんでもこんな考えなしなことをする奴だったか?)

しえな(確かにゲーム自体は僕に拒否権のない状況で持ちかけられたから否応なしだったけど)

しえな(はっきり言ってこんなゲーム、ルールが穴だらけでお粗末もいいところだ)

しえな(生田目に頼るのを防止するために薬を盛ったと言っていたが、ボクが眠っている生田目を人質にしたらどうするつもりだったんだ?)

しえな(鳰や寒河江に頼ったっていい。あいつらの戦闘力なら対峙した桐ケ谷相手を倒すことは簡単だろう)

しえな(ルールを無視して寮から出て、朝に起きてきた生田目に告げ口するのだっていい。あいつの生田目への愛情は疑いようがないからな)

しえな(ああ、ぱっと考えついた方法だがこれは一番簡単かもしれない。桐ケ谷は考えなかったのか?)

しえな(そもそもスズメバチの毒?そんな回りくどいものを使わなくても、あいつが毒使いってのはわかったんだ、もっと強力で解析困難な毒をチラつかせればそれで十分だろ?)

しえな(それなのにわざわざ穴だらけの間抜けなルールを持ち出して鬼ごっこなんて。一体あいつは何がしたいんだ?)

しえな(可能性としては…)

しえな(罠か、アイツ自身もテンパってるかのどっちかなんだ)

しえな(ボクがさっき考えたあからさま過ぎるルールの抜け道)

しえな(それが実行した時に桐ケ谷の考えの意表をついた会心の一手になるのか、それとも罠にハマった間抜けな一手になるのか)

しえな(あまりに単純過ぎる抜け道と、あまりに衝動的な行動原理なだけに逆に判断が付かないんだ)

しえな(そういえば英や番場、犬飼、首藤はこの件に噛んでいるのか?だとしたら顔を出さないのは何故だ?)

しえな(いや、今回は鳰は関係なしに生田目と特に仲良くしていたボクへの個人的な怒りが理由なのかもしれない)

しえな(と、思わせて実は桐ケ谷がボクを追いかけ回してる内に鳰を囲ってたりするかもしれないし…)

しえな(で、いじめも佳境になったタイミングで桐ケ谷がボロ雑巾みたいになったボクを連れてきて)

しえな(武智の時みたいにそれを鳰に見せてまた精神的に傷めつけるとか)

しえな(……まずいなこれ。ボクが外に逃げてたら鳰はボクに見捨てられたってストーリーに仕立てることできる)

しえな(外に逃げるのはやっぱり無しだな)

しえな(生田目を人質に、ってのは、真っ先に切り捨てた。あいつはもう仲間だし、そんなことできるわけがない)

しえな(それ以上に、これやって失敗した時の桐ケ谷が怖過ぎるしな)

しえな(あと残された裏ワザは、鳰の部屋に駆け込むって手段だけなんだけど…)

しえな(うーんどうしたものか)

しえな(英達がいると仮定して、そうするとその部屋にボク+桐ケ谷で、総合的な戦力としてマイナスになって足を引っ張りかねない)

しえな(逆にいないと仮定して、そしたら寒河江もいるから戦力的に逆転できるし申し分ないんだけど……)

しえな(現状頼りにならなきゃいけないはずの存在のボクが鳰達を頼るのはどうも心情的になぁ)

しえな「…」

しえな(いやそんなこと言ってられないんだけど)

しえな(さて、それじゃあベストな方法を考えようか)

しえな(正直、あいつの言うルールってのを守って朝まで逃げ切ることって方法はできる気がしないし疲れるし眠いし色々と最悪なので論外だ)

しえな(そこでルール破りをさせてもらうのを前提で考えるけど、だとしたらやっぱり一番リスクの低い鳰と寒河江に助けを求める方法がいいと思う)

しえな(で、英達がもしも鳰の部屋にいる場合。ボクだけがそこに駆けつけて桐ケ谷が来ないのがベスト)

しえな(……英達が鳰の部屋にいない場合。ボクだけがそこに駆けつけて桐ケ谷が来ない。後に3人で桐ケ谷を撃破。これが一番スカッとする)

しえな(つまり、だ)

しえな(桐ケ谷相手なら…………できるはずだ!)



柩「クスクス。剣持さん、どこですか?さっき物音がしました。近くにいますよね?ほら早く逃げないと」コツコツ

柩「まだまだ時間はいっぱいあるんです。もうちょっと長く楽しませてくれないと僕、怒っちゃいますよ?」

しえな「安心しろ。お前にはたっぷりと時間を使わせてやる」

柩「……へえ。まさか命がけの鬼ごっこの最中で鬼を挑発しに来るなんて。剣持さんはしゃぎ過ぎじゃないです?」

しえな「桐ケ谷の足が遅いからね。ちょっとばかりスリルだけどまだ余裕があるからやってられるのさ」

柩「体力無しのメガネがそんなことする余裕あるんですかね……」

しえな「非力なお子様相手には運動不足の引きこもりメガネだって十分なんだよ。お前こそそろそろおネムの時間じゃないか?」

柩「……面白いですね。あんまり舐めた真似されても、わざわざ引き伸ばしのために手を抜くなんてことは僕は出来ませんから」

しえな「そんなことされちゃ逆に困るね。今からお前をトラップに嵌めてやるんだ。しっかり付いて来てもらわなきゃ。ちゃんと追って来いよ?」

柩「獲物に堂々とそんなこと宣言されるなんて僕、初めてです。無謀と勇気は違うと思いますけど、その糞度胸は褒めてあげますよ」

しえな「ありがとう。でも困ったな」

柩「何がですか?」

しえな「トラップに引っ掛けると宣言したは良いものの、口に出してしまったことで桐ケ谷に怖気づかれてしまったかもしれない」

柩「……下手くそな挑発ですね。そんな罠、どこに仕掛けたんですか?」

しえな「それは教えられないな。でも確実に罠にかける自信はあるし、それでボクの勝ち確だ。……ああ、またやってしまった。そう怯えないでくれ」

柩「……本当に下手くそな挑発です。そんなのしなくてもちゃんと追いかけてあげますよ」

しえな「本当に?」

柩「馬鹿なんですか?逃げられたらそこに行かないと捕まえられないじゃないですか」

しえな「……ああ。言われてみればそうだな」

柩「……はぁ。なんですかこれ。気が抜けちゃいますね」

しえな「しまったなー。そうか、桐ケ谷が来る前にもっとたくさんトラップを仕掛けておけば良かったのかー」

柩「…」

しえな「まあ、お前なんか引っ掛けるにはトラップは一つで十分なんだけどな」

柩「……いい加減それ以上の軽口は侮辱とみなしますよ。今すぐ死にたいんですか?」

しえな「おお怖い。それじゃあお前のお子様足でもボクのこと見失わないよう小走りでトラップのとこまで連れてくから、しっかり着いて来いよ!」

柩「…」

しえな「よし、それじゃあ、来い!」

しえな(かかった!あとは……)

柩「……トラップ?ふざけないでよ。そんな大したもの仕掛ける時間なんてなかったでしょうに、玄人相手に自信満々で」ブツブツ

しえな「…」

柩「集団下校でしたっけ?いじめられっ子の集団だって調べは着いてんですよ。これだからド素人のお遊びサークルは……!」イライラ

しえな「…」

しえな(桐ケ谷怖っっ!!)

柩「」ギロッ

しえな「え、えーっと……い、今から行くから、つ、着いてくるんだぞ……お、追いつかれそうになったら全速力で逃げるけど見失うなよ……」

柩「早く行きなさいよ今すぐ殺して欲しいの!?」イライライラ

しえな(……ひゃああああああああ!!!滅茶苦茶ドキドキするよぉおおおお、武智ぃいいいいい!!)

                    _
                  /フ´
             >─-' イ´ ̄ ̄ ̄`丶、

            ´/  //         \
            ///    i   ヘヽヽ  \\
            // //   ,  |  |  | i i ヽ ∧_≧=-
          /   /  / / |  |  | j. ヘ i ∧      きょうはここまでにしとく
       -=≦,イ  /  /,イ∧! i |  ///\、 |  ∧
         ´ //_厶イ /三二ヾ寸イ/斗十ト  ト、!
         /イ  /、 ∨ ゞえン j/r=ァリ//  | ヾ
          / /| ∨ ト\ ̄ ̄´ ̄,`Lゞ' ,ノトミ、 イ|!
           !/ |  ∨|∨ト、  、    ̄入∧ヘ
           !、 \/  ト、  ` ̄ / \ヽヘ∧
           \  ∨人 `ー イ ーミY   ヘ

             {   { ヽ >ュノi Y イ ヽ   ∧
        , -─'7`ト   く  ∧∧!  く ヾ 、 /´ヽ
        / 、    ! ゝゝ ノ\|∧ハヽ、  \ く    \
        }  ヽ  `¬ヲ ∧ ∨ Y ヽ !   \\ヽ >二ユ、
          |  /\  /|   ト、∨|  i }  \ ヽ´Y/   \
         _レ'    ∨`jト!   iヾ \  i|\∧ヽ }  `ト     \
      i´     /  ∧  |ト   ィm厶ヘヽ j`\∧       }
.       ノ     /    ∧ ̄ ̄`>トi j イiュ レ_  \>   ,ノ
      /     ∧   r7/ガンガン ∧ ツソ⌒7¬i    ̄ ̄ ̄
    /  >==─¬⌒7{′    レ′i彡イ´   j
     i           { jj             /
     |           ∨j     トi      /
     |    _   ─'7 ゞ三三二ニュ   __/
    ` ̄ ̄´       /      ̄ ̄`丁¨¬〒ヨ
             〈\        |     {
            / \〉      0j    ∧
          /               |    ∧

お待たせして申し訳ないッス(小声)
明日書きに来るッス
9月中の完結を目標に来月からは更新頻度ガン上げするんで許して欲しいッス

>>1かどうか分からないんで、酉あった方が分かりやすかあっす

てすと

>>837で言われたんで以後この酉つけることにするッス

同時刻
7号室鳰部屋

鳰「…」ギリギリ

春紀「はぁ…はぁ…はぁ…っ」

鳰「…」ギリギリ

春紀「うあっ…!げほっ!…はぁっ…ううう…」

鳰「…」ギリッ

春紀「ごほっ!けほっ!っっ!はふっ…ひゅっ!」

鳰「…ふぅ」パッ

春紀「ゲホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!おえっ…」

鳰「……つまんない」

春紀「ハァハァハァ…」

鳰「首絞めてみたらどんな反応するのかって思って見てみたッスけど…春紀さんやっぱつまんないッスね」

鳰「幻術は素直な人間にはかかりやすいもんッスけど…こうもガンギマリされてると思い通りすぎて段々飽きてきたッス」

春紀「は、走り…も、もう勘弁してくれよ、あたし、もう…」

鳰「首を絞められ、白目剥きかける程追い詰められても反抗的態度の一つもとってこない」

鳰「事あるごとにウチのこと小突いてきた糞ムカつく春紀さんはどこ行ったんッスか?」

鳰「……ああ。ウチが眠らせたんでしたね。催眠術で」

春紀「走り…?お、おい。アンタさっきから何言って…」

鳰「ん~…あ、いいこと思い付いた、それじゃあ、ほいっ」パチン

春紀「っっ!?」ビクッ

鳰「…」

春紀「?……?」

鳰「さっきウチ、約束しましたよね?春紀さんのこと、今夜寝かさないって。……ぎひっ」

春紀「な、なんだ…?お、おい走り?なんか…ど、どうしたのさ。そんな…な、なんか嫌だよ?その笑顔…」

鳰「五月蝿いんだよ。これからアンタはまたウチのこと慰める玩具になってもらうッスから」

春紀「…っ!?」ビクッ

春紀「な、なんだ…?か、身体が、身体が熱い…熱い…熱い熱い熱い熱い!」

鳰「せいぜいウチの傷ついた心を癒やすためにさぁ。無様で滑稽な姿晒してウチのこと楽しませてよ」

鳰「そうッスね~。手始めに、床で悶え転げまわってくださいッス♪」

春紀「熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!あああああっ!!」

鳰「…くふっ」

春紀「熱いっ!熱いっ!熱いっ!!助けて走り!身体がっ!身体が焼けるっ!あああああっ!」

鳰「くふふふ」

春紀「ひっ!?火だ!火がついた!走り!走り!火が!あたしの身体に火が!燃えるっ!焼けるっ!」

鳰「くふふふふふふふふ」

春紀「ああああああああああああっ!」

鳰「あはははは!あははははははは!!げらげらげら」

鳰「…」パチン

春紀「っ!」ビクッ

鳰「…はい、火は消してあげたッスよ」ニヤニヤ

春紀「…?……?」

鳰「熱かったッスよねぇ?大変でしたねぇ、春紀さん……」

鳰「……ところで、喉乾かないッスか?」パチン

春紀「の……ど……?」ゴクリ

春紀「の……ど…………」

春紀「……のど、かわいた」

春紀「~~~ヒッ!」

鳰「ひひひひ……」

春紀「のど…渇いた…走り……のど、渇いたんだ……なんでだろう、さっきまで火に焼かれてたからかなぁ…」

鳰「うんうん。そうッスねぇ。熱い熱い火に炙られてたッスもんねぇ?」ニヤニヤ

春紀「喉が…渇く…喉が……痛い……水…水が欲しい……」

春紀「っっ!?い…きっ……がっ!」

春紀「ぜひ…ぜひっ…!」

鳰「あーらら、可哀想な春紀さん。今度は喉が渇いちゃったッスかぁ?しかたないッスねぇ」

春紀「はぁ…はぁ……走り……つらい……助け……」

鳰「いいッスよ。ウチも大切な守護者の春紀さんが喉の渇きで死んじゃったりしたら悲しいッスから」

鳰「春紀さんの喉を潤すために一肌脱いであげるッス」

鳰「ん~……」

鳰「……え~~~」ダラッ

ポタッ

鳰「はい、水分ッス。ウチの涎ッスけどね」

春紀「っ!水っ!じゅるっ!じゅるるるっ!」

鳰「あはは。早速飛びついたか。卑しいッスねぇ」ニヤニヤ

春紀「ん…ぺろっ…じゅるっ…んっ…もっと…もっと水…水…」

鳰「いいッスよぉ。まだまだ水はここにあるッス。はい、え~~…」ダラッ

ポタッ

鳰「どうぞ」ニタニタ

春紀「フー…!フー…!」ジュブジュブ

鳰「あっはっはっは!これ楽しいなぁ。もうちょっと暇潰せそうー」

深夜2時
金星寮廊下

しえな「はぁ…はぁ…はぁ……っ!」タタタタ

柩「まだ逃げるんですか?もうかれこれ15分はこうして追いかけっこです」スタスタ

しえな「ぜは…ぜは…はぁ…」タタタタ

柩「本当にトラップなんて仕掛けているんですか?僕ももうそろそろうんざりしてきたんですけど」スタスタ

しえな(桐ケ谷は…ちゃんとついて来てるな)

しえな「もう少しだ!もう少しで現場に着く!その時がお前の最後だからな!」

柩「……やれやれ。まるで映画の小物のやられ役ですね」

しえな(くっ!うるさいほっとけ!)

柩(馬鹿な人ですね。僕から距離を保ちつつ誘導もしないといけないから、あっちは必然駆け足。僕は悠々と徒歩でそれを追いかけるだけ)

柩(息があがってるように見えますよ?足も時折よろめいて。体力がもう限界に近いんじゃないんですか?)

柩(もうそろそろゲームも終わりが近づいているようですね。力尽きて足が止まった時が貴女の最期です)

柩(僕から千足さんを掠め取ろうとした罪。僕が得られない信頼を勝ち取った罰)

柩(無力感と、絶望と、恐怖をたっぷりその身に刻み込んで殺してやりますよ)

しえな「…」

しえな(悠然と歩んで。くそっ!ムカつくなあ)

しえな(でも、こうしてわざわざケレン味たっぷりに演出してくれるのはありがたい)

しえな(圧倒的な力の差をボクに見せつけて怯えさせようというのが目的なんだろうけど)

しえな(それはつまりそれだけボクをナメているってことでもある)

しえな(その隙、存分に突かせて貰うぞ。職業暗殺者)

しえな(……もうすぐ着くな。距離を離そう。あそこなら……)

柩(僕が隙だらけだと見てさっきから何か企んでるのは、ちゃんとわかってますよ?)

柩(それもわざとです。その方が万策尽きた時の絶望感が増すでしょう?)

柩(僕は貴女のようなド素人とは違って本物のプロです。油断?ありえない。どんな小賢しい策を巡らせてこようと関係ない)

柩(追いかけっこにも退屈してきました。仕掛けてきたその瞬間に少しばかりお仕置きをしてあげましょう)

柩(そっちこそプロをナメた授業料を払わせてやります)

柩(さあ、そろそろ焦ってきてますね?僕を気にする頻度が増えて、距離を長めに保とうと速度を速めましたね?)

しえな(……よし)

柩(……ほら)

しえな(仕掛けるか)

柩(仕掛けて来る)

6号室純真部屋

純恋子「…困りましたわね」

真夜「んあ?どうかしたか?純恋子ー」

純恋子「寮内に私が仕掛けた盗聴器の一つに引っかかりましたわ。どうやら桐ケ谷さんが剣持さんを襲っているようです」

真夜「はぁ?アイツ何やってんだ?」

純恋子「まったく。あれほど走りさん以外に危害を加えないようにいっておきましたのに」

真夜「どうする?止めてくるか?」

純恋子「いいえ。とはいえ、これは走りさんとは別案件の遺恨のようです」

純恋子「無理に首を突っ込んでかの有名なエンゼルトランペットの恨みを買うのもぞっとしない話ですわ。放っておきましょう」

真夜「剣持か~。いい奴だったんだけどな~。たまに出す俺のクロスワードクイズにも相手してくれたし」

純恋子「……あれ、嫌がってましたわよ。彼女。貴女が怖くて言い出せないだけで」

真夜「ま、あいつに暗殺者は向いてないだろーな。見りゃわかる。桐ケ谷相手じゃ無理ゲーだわ」

純恋子「そうですわね……あら?」

真夜「ん?どうした?もう殺られたか?だったら真昼のために死体から聖遺物でも貰ってきてやるかな……」

純恋子「……いえ」

真夜「ありゃ。ひょっとして嬲り殺しか?桐ケ谷のやつ残虐そうだもんなぁ。獲物は嬲ってから殺すっつーか」

純恋子「多分彼女も貴女には言われたくないと思いますが……コホン。失礼。そういうわけでもなく」

真夜「とにかくだ。俺らが助けにいかねーってんなら、どうせあいつはもう助からねーわ。奇跡でも起こらねー限りな」

純恋子「この音は……」

純恋子「……へぇ」

真夜「……純恋子?何があった?」

純恋子「…いいえ」

真夜「……?」

純恋子「ねえ真夜さん。今、奇跡でも起こらない限り…と、そうおっしゃいましたわね?」

真夜「あん?……あ~。まあよぉ。だってそりゃそうだろ?だって、あの桐ケ谷と剣持だろ?そりゃ、よほどのことが起きでもしねー限り……」

純恋子「でしたら」クスッ

真夜「…」

純恋子「もしかしたら。もしかしたら、ですけれど」

純恋子「これから起こる……かもしれませんわね」

純恋子「その、奇跡が」クスクス

真夜「?」

純恋子(ま、多少のイレギュラーではありますが。この二人に関してはどうでも良いでしょう)

純恋子(計画はまだまだ序の口。ここまでが予定通りのなのは当然。問題はこれからですわ)

純恋子(全ては、わたくしが最強であることを証明するために)

純恋子(そう。全てはわたくしの勝利のため)

純恋子(一ノ瀬晴への、勝利のために……!!)

しえな「っっ!!」ダッ

柩「…」

柩(…一気に全力で距離を取った。何かを見つけましたね?目的のものでしょうか。彼女の行く先にあるものは……)

しえな「はっ!はぁっ!」フラフラ

しえな「っ!」グッ

柩「…」

しえな「はぁっ!ぜえっ!」カチャカチャ

柩「…はぁ」

しえな「はぁ…はぁっ!……っっ!」グイッ

柩「……やれやれ」

しえな「喰らえっ!」ブシュッ!!

柩「…くだらない」

しえな「うわああああああああああああ!!」ブシュウウウウ

柩「消火器……こんなつまらない武器が貴女の頼りの綱だったんですか」サッ

しえな「あああああああああああああああああああ!!!うわあああああああああああああ!!」ブシュウウウウ

しえな「くっ…重っ!重いぞくそおおおおおおおおお!!!」ブシュウウウウ

柩「確かに多少は脅威かもしれませんね。仮にその僕にその液を当てられれば。でも、そのためには距離がちょっと遠すぎます。最後に剣持さんが慌てて走って距離を稼いだせいですよ」

しえな「あああああああああああああああっ!!」ブシュウウウウ

柩「まあ、安全栓を抜いてホースを外す手間がかかるので仕方ない判断だったとは思います。でないと手間取ってる内に追いつかれて刺されて終わりですもんね」

ブシュウウウウウウウ

柩「でも残念。貴女がそれを見つけて一目散に駈け出した瞬間から、僕にはそれから貴女が何をするかの判断がついてしまいました」

柩「だからこうして、ほら。貴女が重そうにえっちら消火器を持ち上げてる隙に安全な曲がり角へ悠々と避難できてしまったんです」

柩「大方消火器で怯んだ隙を付いて格闘戦を仕掛けるとか。あわよくばそのまま戦闘不能にとか考えていたんでしょうけど」

柩「徒労に終わりましたね。重すぎてフラフラとしか持ち歩けないから、攻めに転じることも出来ない。角の先、どこに僕が潜んでいるかわかりませんものね!」

ブシュウウウ…

柩「そんな思いつきのような子供騙しで僕を倒すつもりだったんですか!!?ふざけるのもいい加減にしなさい!!」

柩「人を虚仮にして……!!大概にしなさいよ!?ほらもう液が枯れてきた!こんなもの時間稼ぎにもなりはしない!!」

柩「多少は期待した僕が愚かでした!所詮貴女の浅知恵なんてこんなものですか!!」

シュウウ…

柩「…はい、打ち止め」

柩「失望しましたよ。同時に素人のおままごとに付き合うのももう我慢の限界です」コツコツ

柩「お遊びはもう終わり。サクッと狩って、あとはゆっくり毒の実験台にしてあげます」

柩「まったく、惨めですね、剣持さん。こんなつまらない手段が貴女の最期の悪あがきになるなんて」

柩「あはははは!!」スッ

一般生徒A「えっ?」

柩「…」

一般生徒A「……えっ?」

柩「……えっ?」

ガチャッ

一般生徒B「もー。さっきからうるさい誰さ夜中にこんなとこで騒いでるのは…」

一般生徒A「…」

一般生徒B「…ってうわっ!なんだこれ廊下真っ白じゃん!A!?アンタやったの!?」

一般生徒A「いや、私も外が騒がしくて…」

一般生徒B「なんだ、そうなの?……ん?そこの子、見ない顔だね」

一般生徒C「なんだぁ?」ガチャッ

一般生徒D「うがー!こんな時間にはしゃいでる馬鹿はどいつだー!」ガチャッ

柩「…」

ガチャッ

ガチャッ

ガヤガヤガヤ

柩(これは……!)

「うわっ!なにこれ!?」

「消火器が落ちてるよ。これが原因じゃない?」

ザワザワザワ

「一体誰がこんなことを……」

「あれ?あの子……」

「あんな子ウチの棟にいたっけ?」

「アンタ知ってる?」

「いや…」

ザワザワザワ

柩「……っ!!」バッ

柩「…」キョロキョロ

柩「……!!」

柩(やられた!!)

柩(ここは、黒組の部屋があるC棟じゃない!一般生徒が使っているB棟です!!)

柩(部屋の配置がまったく一緒だから全然気付けなかった。いえ、剣持さんのことを追いかけて寮内をぐるぐる回っている内に、いつのまにか意識を逸らされていたんです)

柩(剣持さんを追いかけていればいいというある意味の信頼を抱いて道を進んでいたために、いつもと違う道を歩かされていたことに気付かなかった)

柩(普段見慣れている風景が続いていることに安心して、確認を怠ってしまった!)

柩(剣持さんはいつの間にかいません。おそらく、僕が消火器から逃れるために死角に入った時点で逃走したんでしょう)

柩(それだけならいいです。また探し出して再び追い詰めればいい。僕も二度同じヘマはしません)

ガヤガヤガヤ

柩(でも…)

「ねえ、君…えっと、あれ?小学生かな?どうしてこんなところにいるの?」

「くまのぬいぐるみ持って、可愛いね。でも、こんな時間に騒いじゃ駄目だよ」

「困ったなぁ。どこの棟の子だろ。ねえ、誰か管理人さん呼んできてー」

「もしかしてキミが消火器いじった?うーん…イタズラのつもりだったのかもしれないし、そしたら先生に突き出すのもかわいそうだなぁ……」

「いやいや。でもイタズラはイタズラだよ?いくら小さい子だからって許されるわけじゃないし、第一この子が犯人だったら庇ったら私らに疑い来るわけで…」

「とにかく、キミ、悪いんだけどお姉さんたちと一緒にいてね?今、大人の人呼んでるから」

柩(黒組ルール2条。「黒組生徒以外の人間を巻き込んではならない」……!)

柩(この状況下でこれを守るには、大人しく彼らに従い責任者を待たなくてはならない)

柩(こんな形でルールを利用されるとは、なんて不覚!)

しえな「はっ…はっ…はっ…」タッタッタ

しえな「ハァ…ハァ…ハァ…」タッタッタ

しえな「ぜ……は……はぁ……」タッタッタ

しえな「……ふう」

しえな「…」

しえな「……ここまでくればもう大丈夫だろう」

しえな「あとはあいつが朝までこってり絞られてくれるのを祈るだけ」

しえな「ざまあみろ。まんまと出し抜いてやった」

しえな「……出し抜いてやった」

しえな「……っ!出し抜いてやったぞーーーーーーー!!」

しえな「見たか桐ケ谷!見てたか武智!やったぞ鳰!」

しえな「僕の……」

しえな「僕の……!」

しえな「僕の勝ちだーーーー!!」ピョンッ

しえな「……おっとっと」フラッ

しえな「……はは。でも、流石に疲れた。なけなしの体力使っちゃったからな」ヨロッ

しえな「それに、桐ケ谷が朝まで拘束されてる保証はまだないんだ」ヨロヨロ

しえな「あいつずるいからあんなのは反則です無効ですーって言ってくるかもしれないしな。子供だし」フラッ

しえな「それに鳰達の方も気になる。早くあいつらの部屋に行って無事を確かめなきゃだし……」

しえな「……あわよくば、朝まで匿ってもらおう。もう正直もう一回桐ケ谷に会ったら出し抜ける気がしない」

しえな「そうだ、そうしよう。鳰達に何事も無かったら、部屋からタオルケットだけ持って…」

しえな「あいつらの……部屋に……」

しえな「泊めて…もらおう…」フラフラ

6号室鳰部屋前

しえな「…」コンコン

しえな「…」

しえな「…」コンコンコン

しえな「…」

しえな「…」ドンドンドン

しえな「おーい鳰ー」

しえな「…」

しえな「……おかしいな」

しえな「もう寝ちゃったのか?」

しえな「……それとも、考えたくないことだけど、英達に襲われて……」

しえな「……とにかく、それが一番怖いんだ。申し訳ないけど、勝手に入らせてもらおう」

しえな「よいっしょ…っと」ギィッ

しえな「鳰、それに寒河江。大丈夫……」

しえな「……か?」

しえな「…」

しえな(……え?)

6号室鳰部屋内

鳰「はっ。もうこの遊びにも飽きたッスね。春紀さんほんとつまんねーッス」

鳰「ふぁーあ。もうこんな時間ッスか。そしたらそろそろ最後にして今日は終わりにするッスよ」

春紀「はぁ……はぁ……」

鳰「おい豚。まーだ這いつくばったまんまッスか?そんなに情けない格好で裸晒すの愉快なんッスか?変態豚女」

春紀「ま、待って……走り……ぜぇ……あたし……これ以上はもう……」

鳰「しらねーッスよ。アンタはウチの命令に従って愉快な格好して、面白い声出して、ウチ楽しませればそれでいいんッス」シュッ           コンコン

春紀「う……ううう……うううう……」ポロポロ

鳰「へへー。今度は悲しみの感情を増幅させる香を炊いたッスよ。アンタネガティブな性格してるからきついっしょ。つらいっしょ」          コンコンコン

春紀「うわああああああああ!!」

鳰「あっはっはっは!ああ~悲壮感篭ってていい泣き声ッスね~!ほんといじめたくなる声してるッス」ボスッ                       ドンドンドン


春紀「っ!げほっ!くぁっ……」

鳰「きひひひひ。これでもう、何カ所目ッスかねぇ?青痣またできちゃったッスね~。春紀さんの綺麗な身体が見るも無残に…」

ギィッ

鳰「……ん?」

間違えた鳰部屋7号室ッス

ガチャッ

しえな「鳰、それに寒河江。大丈夫……」

鳰「……えっ?」

しえな「……か?」

しえな「…」

鳰「…」

春紀「…う、ううう……うううううう……」シクシク

しえな「…」

鳰「…」

しえな「……走り?」

鳰「…」

鳰(……おおう)

しえな「どういうことだこれ」

鳰(今もんのすんごい勢いで背中に汗が……っ!)ブワッ

しえな「説明してもらうからなっ!!」

鳰「」パクパク

しえな「なんとか言え!!!」

鳰「…」

鳰「…」

鳰「…」

鳰(……えーっと)

鳰「……んなぅ」

金星寮B棟

柩「…」ショボン

柩「……すみません。あそこから助けていただいて」

柩「お説教から助けてくれたのもそうですけど、あんな形で学校から処分を受けてしまっては、洒落で済まない恥になるところでした」

柩「正直、僕のいた組織での株も落ちて今の地位も危なかったかも……ええ。本当に助かりました。貸し一つ、ですね」

柩「いえ、本当に感謝しています。だからこうして……」

柩「……え?……ああ。そうですね。僕一人だと、C棟に戻れるかも怪しかったかもしれません。その点も感謝しています。えー?それで貸し二つは…はい、わかりました」

柩「だから置いてくのは無しですよ……って、え?なんですか?それ。なぞなぞ?」

柩「そうですね……。ちょっとすぐには答えられそうにはないです。考えてみてもいいですか?はい、ありがとうございます。ええ。答えが出たらすぐにお伝えしますね」

柩「…」

柩「……剣持さんを?……仕方ありません。貴女がそうおっしゃるなら。借りもあることですし。これで一個チャラですね」

柩「っていうか、見てたんですね?どこからです?あー……そうですか。たまたま」

柩「……ま、いいです。そういうことにしておきましょう。ところで……」

柩「……ちょっと雰囲気変わりました?犬飼さん」

伊介「……そーお?伊介はいつも通りよ♥」


                       --―――-- 、
                   ''" ̄ ̄   ̄ ̄~"ヽx、
                /                 ヽY
              /               }}

                                   ∥
                       _  -―-、〃
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                   /      /          \
                    /       /  /     l     ヽ
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             / /        /   j         j      い
               ///    /   /   l       ∥     l l  
            / / /    /  / l !  {      / ∧      l  l   きょうはここまでにしとくッス
         /// ∥     j   / l {   l    / / ∨    }  l  l   実は大切な人が病気を患って看病に専念してたッス
         / / { {     l  / | l  |  / /   V   j   }  l   残念ながら現代医学では手の施しようが無かったッスけど……
          { /  人 l      {ー- _ l       /     l     j   l
          {/    、   l/    介ー- l ー-―'''" ̄ } ̄∥     l
        /}     \ト  l ,,_   `l- ヽ } / __,,xz云竺、/  /    l
      /  /   /   \\"''宀冖  )ノj/  弋゚;;ノ /`  /    ヘ                         /  \
      {   {      {    人 ̄       .:j    `冖''"/ /  } ヽ   \                         / / \ \
      \  ヽ    \\  \    、_  _,  =彡 イ    j  、   ヽ                    / //////\o\
         \ }\ \  )/\ } \ -‐`"`^"^Y\  /   /  /   }     Y                    / /Google///\ \
         )/  ヽ } \ }  )ノ /  斗 ―-l- l ヾ{  // /   ノ     ノ                    / ///上手い言い訳/\ \
           __ ソ  ノ _ / イ  l __ }   l ∨  {/   /   彡                 / /////赦される方法/// >   >
       /     ̄ ̄/  j ィ  ̄l     } ⌒ト、} /{  -‐/~''" ̄               / ///////同情の買い方// /
      /       /   {  {  /Y^Yヽ j  l_j //                      / /////////貧乳は病気// /
      /         /   r‐ 弋-l‐' / l | l }  ̄j /_                        \ \/////////三十路//// /
     / /       \    l:::::「 \ / / l  }  __/::}  ̄\                       \/ }/////////////// /
    / /       l    \  }:::::j  У /  / / //:::::∧    ヽ                       / ノ ◎ //////// /
     }/       l     >廴∧     / // /:::::/ ヘ     Y                  / / //\ \//// /
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  /          \ / 人   \// { l:::::::::::::::::::Y    ̄    ヽ            _/ }   / {/
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  /-―--~''" ̄ //        ノ   ;  / ̄ ̄\  l        \       /  {  い    イ
 / ____ / /       /l   /  /     /   l            >、    /  人 \\/ ∥
  ̄`<三彡/  /       /::::::l::... /  /:::::::::::/    }     >''" ̄ _〉     /      \  ー/
     } /   /     /\:::::::l::::/:::ノ:::>'"::::::::...   ;     /  >''" \  //        ̄ ノ
    /「/         /:::::::::::\:::l///::::::::::::::::::::::::. ∧ /  /    _//           >'"
   八           /:::::::::::::::::::::ヽj//:::::::::::::::::::::::::::::/ ∨ /    //           >''"
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       `ー-‐<          /       /          ̄ `く         /
       〈              /      /                  `~、    /


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                       _  -―-、〃
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                    /       /  /     l     ヽ
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             / /        /   j         j      い
               ///    /   /   l       ∥     l l  
            / / /    /  / l !  {      / ∧      l  l   …………
         /// ∥     j   / l {   l    / / ∨    }  l  l   
         / / { {     l  /u| l  |  / / u V   j   }  l  
          { /  人 l      {ー- _ l       /u    l     j   l
          {/    、   l/ u   介ー- l ー-―'''" ̄ } ̄∥     l
        /}     \ト  l ,,_   `l- ヽ } / __,,xz云竺、/  /    l
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      {   {      {    人 ̄u   u  .:j  u `冖''"/ /  } ヽ   \                         /     \
      \  ヽ    \\  \ u  、_  _,  =彡 イ    j  、   ヽ                    /        \   
         \ }\ \  )/\ } \ -‐`"`^"^Y\u /   /  /   }     Y                    /           \
         )/  ヽ } \ }  )ノ /  斗 ―-l- l ヾ{  // /   ノ     ノ                    /               \
           __ ソ  ノ _ / イ  l __ }   l ∨  {/   /   彡                 /                   > ) クルッ
       /     ̄ ̄/  j ィ  ̄l     } ⌒ト、} /{  -‐/~''" ̄               /       裏          /  
      /       /   {  {  /Y^Yヽ j  l_j //                      /                   /   
      /         /   r‐ 弋-l‐' / l | l }  ̄j /_                        \                  /
     / /       \    l:::::「 \ / / l  }  __/::}  ̄\                       \/ }             /
    / /       l    \  }:::::j  У /  / / //:::::∧    ヽ                       / ノ           /
     }/       l     >廴∧ u   /u// /:::::/ ヘ     Y                  / / //\       /
    /             /r-/ { {  u    x<;;;;;;/  /    l                   l  ヽ 〈_/-\    /
   /         / / {  ヘ  ーァ'"l ̄::::::::::ヽ/ _  ミ┴ 、                   l u } ノ / \/
  /          \ / 人   \// { l:::::::::::::::::::Y    ̄    ヽ            _/ }   / {/
  /        _ У     \_ /  ! 廴:::::::::::;;;;;} {       `、            / / { { u  u /
  /-―--~''" ̄ //        ノ   ;  / ̄ ̄\  l        \       /  {  い    イ
 / ____ / /       /l   /  /     /   l            >、    /  人 \\/ ∥
  ̄`<三彡/  /       /::::::l::... /  /:::::::::::/    }     >''" ̄ _〉     /      \  ー/
     } /   /     /\:::::::l::::/:::ノ:::>'"::::::::...   ;     /  >''" \  //        ̄ ノ
    /「/         /:::::::::::\:::l///::::::::::::::::::::::::. ∧ /  /    _//           >'"
   八           /:::::::::::::::::::::ヽj//:::::::::::::::::::::::::::::/ ∨ /    //           >''"
     ヽ     /       O }}  ::::::::::::::::::>''"    `ミー\  /          /
       `ー-‐<          /       /          ̄ `く         /
       〈              /      /                  `~、    /



トリを忘れた>>1ッス

エアコン「逆流水ダバァwwww」

PC「ウーワッ ウーワッ ウーワッ」

KO

ってことがあってパソコン死んだんで復活まで来れないです
ほんとすみません












夜明け前

黒組教室

鳰「……」

鳰「……」カチャカチャ

鳰「……」

鳰「……」カチャッ

鳰「……」トクトクトク

鳰「……」

鳰「……乙哉ちゃんの机はここッスよね」

鳰「……」コトッ

鳰「……遅くなってごめん。乙哉ちゃん」

鳰「黒組の裁定者として、正式に乙哉ちゃんの黒組退学を認定するッス」

鳰「……死んじゃったのに今更っていうツッコミは勘弁願いたいッス。一応、決まりッスから」

鳰「暗殺者同士の争いで殺されちゃった人は、当然ながら失格。裁定者はそういう人が出た場合、それを受諾して今後の黒組に影響が出ないように処理をする必要があるんッス」

鳰「ほんと、もうどうでもいいんッスけど……ね」

鳰「この花瓶に挿さってる花はヤマユリの花ッスよ」

鳰「花言葉は『人生の楽しみ』」

鳰「ウチが、乙哉ちゃんとしえなちゃんのおかげでつかの間思い出せたものッス」

鳰「きっと、乙哉ちゃんなら別のことを思い浮かべると思うッスけど」チョキチョキ

鳰「……って、はは。両手でピースしてチョキチョキって、蟹かっつーの」

鳰「……」

鳰「……溝呂木先生の手前、乙哉ちゃんは転校したことになるッス」

鳰「原因は……まあ、適当にでっち上げとくッス。乙哉ちゃんだったらどんな嘘で喜んでくれるッスか?……ウチにはまだわかんないから」

鳰「……しえなちゃんならわかるのかな」

鳰「……」

鳰「……えへ」

鳰「えへへ……」

鳰「えへへへへへ……」

鳰「……はぁ」

鳰「ごめん、乙哉ちゃん。ウチ、しえなちゃんに嫌われちゃった」

鳰「喧嘩?ううん。違うッス。ウチが馬鹿だったんッス」

鳰「馬鹿っつーか……クズっつーか……まあ、多分そもそもの性根が腐ってるんっしょ」

鳰「乙哉ちゃんの仇を討つとか自分を正当化して、なんの関係もない春紀さんに酷いことやっちゃったッス」

鳰「あの人も意地悪ではあったけど……あれは筋違いッスよね」

鳰「結局、自分が八つ当たりでいじめれる相手欲しかっただけだし」

鳰「……って、しえなちゃんに言われたッス」

鳰「……」

鳰「結局、ウチもいじめっ子側の人間なんだって」

鳰「たちの悪いいじめっ子が、ここじゃたまたまいじめられる側に回っただけなんじゃないかって」

鳰「そう言われたッス」

鳰「……ま、正解なんッスけどね」

鳰「ウチ、本来はいじめる側の人間ッスもん。はは、幻滅した?それとも、乙哉ちゃんなら気付いてたッスかね」

鳰「楽しいもんなぁ~。弱いものいじめってやつは……」

鳰「やられる側に回るなんて、つい最近まで夢にさえ思ったこと無かったッスよ。あははは」

鳰「……」

鳰「自業自得なんッスかね?」

鳰「……もうすぐ夜が明けるッス」

鳰「そんでもって数時間もしたら学校が始まる時間になって……」

鳰「そしたらまたクラスのみんながこの教室に来て、さ」

鳰「乙哉ちゃんのいないこの教室で、みんなは何事もなかったかのようにまた日々を過ごすッス」

鳰「そんで、ウチはまたみんなにいじめられて」

鳰「しえなちゃんも今回ばっかりはウチのこと見限ったっしょ。また誰も助けてくんない日々に逆戻りッス」

鳰「『見損なった』って言われちゃったし……」

鳰「ま、しえなちゃんなら、いじめる側に加わるようなことはないだろうし、まだマシ……かな」

鳰「流石にそれされたらウチも耐え切れなくてどうなっちゃうかわかんないッスね。はは……」

鳰「……ふっ」

鳰「ふ……ぐひっ……」

鳰「ひっく……」

鳰「ひっ……ふ……っ……!あ、あはは、そ、そうぞ……っ……!」

鳰「そ……想ぞ……想像……っ……した、だけで、な、泣けてきたッスわ……あはは……」ゴシゴシ

鳰「うーーーー……」

鳰「うう……」

ガラッ

鳰「っ!」ビクッ

鳰(ま、まだ5時前ッスよ!?こんな時間に誰ッスか!?)

鳰「~~~っ!」ゴシゴシ

しえな「……あ」

鳰「……」

しえな「……走り」

鳰「……しえなちゃん」

しえな「武智の机で何してた?」コツコツ

鳰「……もう終わりましたんで」スッ

しえな「逃げるな」

鳰「っ!」ビクッ

しえな「……別にお前のことをいじめようなんて、ボクは思わないから」コツコツ

鳰「……」

しえな「幻滅はしたけどな」ピタッ

鳰「……」

しえな「……花?」

鳰「……」

しえな「……この花、鳰が?」

鳰「……ッス」

しえな「そっか」

鳰「……」

しえな「……」

鳰「あ、あの、それじゃウチはこれで……」

しえな「だから逃げるなって。そんなに後ろめたいのか?」

鳰「……」

しえな「それなら最初からしなければいいんだ。馬鹿」

鳰「……返す言葉もないッス」

しえな「……」

鳰「……」

しえな「……」

鳰「……」

鳰(沈黙が苦しい。窒息死しそうッス)

しえな「武智は死んだんだな」

鳰「……あの」

しえな「いや、いい。言わなくて」

しえな「なんか、急に全部曖昧になっちゃってさ。嘘だったんじゃないかって」

鳰「嘘?」

しえな「ああ。ボクなんかが桐ケ谷を出し抜けたのも、武智が死んだのも、全部、嘘かボクの見たたちの悪い夢だったんじゃないかって」

しえな「走りが昨日部屋で寒河江にしていたことも」

鳰「……」

しえな「昨日、走りの部屋に行った後さ。頭が変になりそうな位混乱して、怒って、部屋に帰ってから」

鳰(『ボクが必死に桐ケ谷と戦っていた間にお前は何をしていたんだ!?』って、怒鳴られたッス)

しえな「あんまりにも腹が立ってたもんで、眠れないんじゃないかって思ってたのに、いつの間にかベッドでぐっすり眠ってたよ。よっぽど疲れてたんだろうな」

鳰「……」

しえな「それはいいんだ。それで、目覚ましでめが覚めて、朝ベッドから起き上がってさ。一昨日までなら武智が隣で眠っていたんだ。たまに起きてこっち見つめてたこともあるけど」

しえな「でもそれがなかった」

しえな「それが物凄い違和感でさ。昨日の朝はずっと駆けまわってたから気付かなかった」

鳰「……」

しえな「ま、それで違和感のある部屋に嫌気が差してさっさと登校したボクも馬鹿だとは思うけどさ」

しえな「でも僥倖だったよ。確認したいことがあったんだ」

鳰「……なんッスか?」

しえな「一つは、寒河江のその後だ。衝動的にお前の部屋を出て後になってから後悔したんだ。あの後寒河江をどうした?」

鳰「……なんもしないッス。物凄くやっちゃった気分になって……全部忘れさせて部屋に帰したッス」

しえな「忘れさせて?」

鳰「……そうッス。記憶を……忘れさせて」

しえな「仕返しされないように、自分に危害が及ばないように、ね」

鳰「……もう二度としないッス」

しえな「ふうん」

鳰「……」

しえな「いいさ。そういうなら信じるよ。もう一個確認したいことがあったんだ」

鳰「……なんでしょう」

しえな「さっきの話でさ、めざまし、随分早いなって思わなかったか?」

鳰「え?あ……そういえば確かに。まだ5時前ッスよ?いつもこんなに早いんッスか?」

しえな「まさか。ボクも今朝は驚いたよ。どうやら武智がセットしたみたいなんだ」

鳰「……イタズラかなんかッスか?」

しえな「そう思うか?ボクはわかったぞ。周りくどいやり方だと思うけどな」

鳰「……?」

しえな「まったく、あいつらしいというか、らしくないというか、さ」ブツブツ

鳰「……」

しえな「一昨日、万が一自分が犬飼に負けた時のためにって、ボクに一応のヒントを残してったんだ。気付かなかったらどうするつもりだったんだかな」

しえな「っていうか。気付いてたんなら早く言えっての。確証がなかったから言う気になれなかったのか?」

鳰「?」

しえな「そりゃあ、常識的に考えたらあれくらいのことでここまで酷いいじめをしようなんて誰も考えないだろうけどさ」

鳰「えっと……」

しえな「っていうかボクは今だって信じられないよ。でも、普通に考えれば鳰いじめはあれの直後から始まったわけだし、他に考えうる原因もないわけだし」

鳰「しえな、ちゃん?」

しえな「だとしたらどう考えてもそういうことだろう」

鳰「あの……つまりどういうことッスか?」

しえな「……つまり、だ」

鳰「……はあ」

しえな「ボクは気付いたぞ。鳰、お前がいじめられている原因」

鳰「え……」

しえな「ボクはそれでほぼ間違いないと思う。だとしたら、やり過ぎだとは思うけどこう言っちゃなんだが桐ケ谷達の気持ちもわからなくはない」

鳰「……」

しえな「それにお前は寒河江に対して報復としては度が過ぎるくらいのいじめを行っていた。武智に対する仇討ちの気持ちがあったとかならまだしも、あいつは関係ないしな」

しえな「この場で蒸し返すようでなんだが、あそこまでする必要はどう考えても無かっただろう。あれはお前が楽しむためにやっていた。そうだろう?」

鳰「……」

しえな「っていうか、お前、それ以前にあの時のこと覚えてるか?そういえばあれに対して申し訳無さそうにしてるだとか、反省してるだとかそういうような言葉を走りの口から聞いたことがないぞ」

しえな「まさか本当に忘れてるとかじゃないだろうな?そんなにお前にとっては取るに足らないことだったのか?」

鳰「えっと……」

しえな「ああ」

鳰「ごめんしえなちゃん、ウチにはなんのことだかさっぱり……」

しえな「……マジか。本当に忘れてるってことなのか?お前、それは人間としておかしいだろう。いくらなんでも……!!」

鳰「あ、あの……できればどういうことかしえなちゃんから説明してくれると……」

しえな「……」

しえな「あいつの残したヒントは『早朝』と『めざまし』。なんなら大サービスで『当番』って言葉を添えてやってもいい。つまりそういうことさ」

鳰「『早朝』と『めざまし』と……『当番』?」

しえな「その様子だと全然みたいだな」

鳰「……」

しえな「はっきり言うと、ボクはお前のことが信じられなくなってきた」

しえな「……というより、本気で見損なった。正直お前と関わりあったことを死ぬほど後悔している」

鳰「……」イラッ

しえな「あの時……いや、なんでもない。とにかく、今言った以上のヒントを教える気もない」

鳰(なんッスかそれ。乙哉ちゃんのこと周りくどいとか言いながら、自分だって回りくどいことしてるんじゃないッスか)

鳰(自分だっていじめられっ子のくせに、どうして今いじめられてるウチの気持ちわかってくんないんッスか?)

鳰(原因があってそれに気付いてるっていうなら、それさっさと教えてくれたっていいじゃないッスか)

鳰(それに『あの時……』の後で飲み込んだ言葉。乙哉ちゃんを説得してウチのことスルーすれば死なせずに済んだとかそんな感じのことッスかね)

鳰(つまり本心じゃそういう風に思ってるってことッスよね?)

しえな「お前があれに関して後悔も反省もしていないどころか覚えてすらいないというなら、しばらく考えるといいさ」

鳰(考える……?ウチ、なんかやらかしたッスか?しえなちゃんまでそんなことを言うんッスか?いじめを許さないとか言いながら、そんなこと言うんッスか?)

しえな「少し痛い目にあったほうがいいんじゃないか?お前が本気であの件に関して反省して謝罪をすれば、もしかしたらみんな許してくれるかもしれないぞ?」

鳰(いやいや、それはもう無理っしょ。あの人らだってそんな怒ってるんならウチが謝ったところで。それはちょっと甘いッスよ)

しえな「……いや、それは難しいかもしれないけど。なんだったらボクも一緒に謝ってやるから」

鳰(そんなことしても死体が一つ増えるだけなんじゃないッスかね。保護者気取りッスか!?)

鳰(っていうかなんでウチが身に覚えないなんかに関して謝る流れになってるんッスか?)

鳰(長々お説教はもううんざりッス)

鳰(この……)

鳰(この……!!)

鳰(いじめられっ子風情が!!)

鳰「もういい!!」

しえな「っ!!」ビクッ

鳰「もういいッス。しえなちゃん」

しえな「もういいって……鳰?」

鳰「ウチ、眠いんで帰るんで。あとよろしく。後付いて来ないでね」

しえな「はぁ?お前何言って……待てよ!まだ話は終わって……」

鳰「うるせぇんッスよ」グイッ

しえな「ひっ!」ビクッ

鳰「……つまりしえなちゃんはこう言いたいってことっしょ?」

鳰「『いじめられっ子にはいじめられる方に原因がある』」

しえな「に、鳰……?」

鳰「そうッスね。しえなちゃんの言うとおりかもしんねーッス」

鳰「だってアンタ、きしょいもんな」ドンッ

しえな「……」フラッ

鳰「ちょっとウチがやらかした?かなんだかで屑共のいじめのターゲットにあったくらいで、くだらねーシンパシー感じて擦り寄ってきたんだろ?」

鳰「そりゃ当たり前にいじめられるッスわ。反吐が出る。きめえ。きめえ。きめえ」

しえな「な……」

鳰「喋んな。うっとおしい」

しえな「……」

鳰(……やっぱ、ブルちゃうッスよね。そりゃ堅気と対して変わんない子だし当たり前か)

鳰(はぁ……帰って寝直そ)ガラッ

しえな「……」

鳰「……じゃ」

しえな「……」

鳰「……」ピシャン

鳰「……」

鳰「……」

鳰「……はぁ」

鳰「ウチってば、心底クズッスねぇ」

鳰(……今すんげぇ死にたいッス)


            _
       _,ノ;:。-:ヽ            きょうはここまでにしとくッス
        ̄`ヽ .l|            久しぶり過ぎて伏線とかキャラとか忘れてないか不安ッス
          ノ_ノl _,,.,.,..,..,.,..,.,.,,_     こんな糞ssを4ヶ月近く見捨てずに我慢強く読んでくれてるお前らは天使か何かッスか?
        /;;;:ノ:´;'::;'::;'::;'::;'::;'::;'`>:"7

        _l  "ー''""´´""""""´゙ヾ:/
       、 `゙''''ーー~ー--―ー―''" ̄ ̄
         ̄  ―  _   二   ー

『早朝』『めざまし』『当番』、あんなこと、乙哉曰く伊介様は優しい
もしかして「お前が殺した」は乙哉のことじゃなくて…って可能性もあるのか?

『早朝』『めざまし』『当番』、あんなこと、乙哉曰く伊介様は優しい
もしかして「お前が殺した」は乙哉のことじゃなくて…って可能性もあるのか?

『早朝』『めざまし』『当番』、あんなこと、乙哉曰く伊介様は優しい
もしかして「お前が殺した」は乙哉のことじゃなくて…って可能性もあるのか?

一回しか押してないのになんで三回書き込んでるねん…

昼休み
食堂

しえな「……」モソモソ

しえな「……はぁ」

しえな(おいしくない)

しえな「……」モソモソ

しえな「……ふぅ」

柩「……」テコテコ

しえな「はぁ……」

柩「……」ジー

しえな「ふー……」

柩「……」ジーー

しえな「はぁ……」

柩「さっきから黙ってみていれば、随分憂鬱そうですね。剣持さん」

しえな「ひょおおおおっ!!?」ガタッ

柩「うるさいですねぇ。なんですか?食堂で悪目立ちしないでくださいよ恥ずかしい」

しえな「き、ききききき桐ケ谷!?なんでここに!?」

柩「なんでって、ご飯食べに来たに決まってるじゃないですか。あ、隣いいですか?」コトッ

柩「っていうかなんですかそのメニュー。フライドポテトとジュースだけ?身体に悪そう」

しえな「い、いやいいよ!ボクは今すぐどこか行くから……」

柩「やめてくださいよ。僕が追い出したみたいになるじゃないですか」

柩「さっきの剣持さんの奇声のせいでちょっと注目されてるんですから」パクッ

しえな「う……」

柩「う~ん、美味しい♪」

しえな(カツ丼大盛りに野菜炒め、八宝菜とハンバーグに、かき揚げうどん……いやいや食べ過ぎだろ)

柩「日本人ならやっぱり一汁三菜が基本ですよ」モグモグ

しえな「あえてツッコミは入れないぞ」

柩「?」

しえな「……まあいいさ。で、ほんとは何をしに来たんだ?食事だけならわざわざボクの隣になんか来ないだろお前は」

柩「まあそうですけど」モグモグ

しえな「ま、まさか昨日の仕返しとか」ビクビク

柩「しませんよ。昨日あれだけ約束したのに。ええ。約束しましたとも。剣持さんには今後一切手を出しませんのでご安心を」モグモグ

しえな「そ、そうか……信じていいんだな?」

柩「そりゃあ剣持さんみたいな雑魚に出し抜かれて腸煮えくり返るくらいムカついてますけど、それはどっちかっていうと自分への怒りですし」モグモグ

しえな(ムカついてるって言ったぞこいつ。腸煮えくり返るくらいムカついてるって)

しえな(あと食べながら話すなよ)

柩「そういえば食堂のフライドポテト食べたことないんですけど、どんな味なんです?」ヒョイッ

しえな「あっ」

柩「うん、そこそこいけますね」モグモグ

しえな「……まあ一本くらいいいけどな」

しえな(っていうか食べるの早いな!もう野菜炒めとうどんなくなってるし!)

柩「それより気になったのはこの僕相手に大金星を上げたその雑魚が、今朝のホームルーム前から随分と沈んでたことですよ」ビシッ

しえな「箸で人を指すな。箸で」

柩「ついでに言えば今日は走りさんとも全然話してませんでしたよね。もしかして喧嘩でもしました?」

しえな「……」

柩「え?もしかして本当に?」

しえな「ん……まあ」

柩「ふーん」モグモグ

しえな「……」

柩「……」ヒョイッ

しえな「……無言で人のポテト奪うんじゃない」

柩「……」モグモグ

しえな「無視決め込んで食べやがったな?」

柩「ふう……美味しかった」ポンポン

しえな「もう食べたのか」

柩「ええ。食後のデザートに」ヒョイッ

しえな「……もう好きにしろよ。いいよ。どうせ食欲なかったし全部あげるから」

柩「わーい」サッ

しえな「躊躇なしとか桐ケ谷ってマジ桐ケ谷だよな」

柩「なんですかそれ」ムシャムシャ

しえな「そういえば生田目は?いつも一緒に行動してるお前らが別に食事をとるなんて珍しいじゃないか」

柩「……」モグモグ

しえな「それにボクも落ち込んでたからあまり周囲に目を向けていなかったけど、考えてみたらさ」

しえな「今日はお前も生田目もやけに静かだったんだよな。どうしたんだ?もしかしてお前たちも喧嘩か?」ニヤッ

柩「……」モグモグ

柩「……」バクバクバクバク

しえな「速っ!?」

柩「……けぷっ」

しえな「ま、まさか本当にそうだったのか……」

柩「……昨日のことが千足さんにバレまして」

しえな「は?」

柩「あの後、部屋に帰ったらですね?千足さんが何故だか起きていて……」

しえな「何故だか?」

柩「千足さんにばれないように剣持さんを処理するために薬盛って寝かしておいたはずだったんです」

しえな「桐ケ谷ってマジ桐ケ谷だよな!!」

柩「僕が甘かったんです。千足さんになにかあったらと無意識の内に薬の量をセーブしていたんだと思います」

柩「それに千足さんは流石一流の殺し屋といいますか。訓練で薬物に対する耐性を付けているのかな、とも。それが複合的に合わさって早く覚醒したんだと思いますけど」

柩「……それはそうですよね。千足さんの仇のエンゼルトランペットは毒薬使いですもんね」ボソッ

しえな「……」

柩「……で、薬を盛ったことと剣持さんを殺そうとしたことのどちらもバレまして……それから遅刻ギリギリまでお説教です」

しえな「……」

柩「今回ばっかりは本気で怒らせてしまいまして。話は剣持さんのことだけじゃなくて、今まで見過ごしてきていた走りさんいじめのことにも及んでですね」

しえな「……」

柩「お説教が終わった後は『しばらく今後の桐ケ谷との付き合い方を考える時間をくれ』なんて言われてしまいまして」ズイッ

しえな「あ、ああ」ビクッ

柩「僕が謝っても『薬のことはもう許すが走りと剣持に対する狼藉は謝罪する相手が違うよな?』なんて言われまして」ズイズイッ

柩「剣持さんと走りさんに許してもらえるまで誠心誠意謝罪して来いなんても言われまして」ズズズ

しえな「桐ケ谷、顔近い」

柩「朝出るときも僕が身支度を整えてる間に先に登校してしまいましたし、教室では話しかけるなオーラを出して近寄らせてくれませんし」グスッ

柩「走りさんはなんかいつもにまして暗い雰囲気でなんだか近寄りがたいレベルですし!」グググ

柩「お昼休みにもう一回千足さんに謝ろうと思ったら避けるように逃げられちゃいましたし!!」ググググググ

しえな「近い近い近い!」ググググ

柩「それで、まあ」

柩「とりあえず一番チョロそうな剣持さんに赦してもらおうと思って逃げ場のない食堂で捕まえることにしたわけです」

しえな「お前ボクをなんだと思ってんだ」

柩「ダメですか?」

しえな「……」

柩「ほら、拳を交えた仲じゃないですか。戦い終わって日が暮れてって言いますし」

しえな「拳を交えるっていうか、一方的にハンティングの対象にされただけな記憶があるんだけど」

柩「勝負の先に友情が残ってもいいと思うんです!」

しえな「信じられないほど打算的な友情だ」

柩「そりゃあ、それで千足さんが赦してくれるって言うならミミズだってオケラだって僕にとっては友達ですよ?」

柩「勿論剣持さんだって大丈夫です」ニコッ

しえな「なんだこいつ。ここにきて凄い上からきたぞ」

しえな「あとミミズやオケラよりボクのが地球ランキング的に下っぽい口ぶりしなかったか?」

柩「って言う訳でですね」

しえな「……」

柩「あー……」

柩「……すみませんでした!!」ペコリ

しえな「!?」

柩「本当にすみませんでした!僕、千足さんと急に仲が良くなった剣持さんに嫉妬していたんです!」

柩「正義感が強い千足さんが走りさんのことを不憫に思っていたのは知っていたのに、僕は面白がって走りさんいじめに加担して」

柩「真剣に走りさんを救おうとしている剣持さんと僕の行いを見た時に、千足さんが剣持さんの方に好感を持つのは当たり前なんです」

柩「それなのに僕ってば剣持さんに千足さんを盗られるんじゃないかって逆恨みして、千足さんに薬を盛ってまで剣持さんを殺そうとして……」

しえな「ちょ、ちょっと待ってよ。いきなりそんな真面目に謝られても」

柩「許してくださいなんて言うつもりはありません。……千足さんからは許して貰えるまで、と言われましたが正直なところ最初からお二人の赦しを貰えるとは思っていません」

柩「当たり前ですよね?殺されそうになっているんですもん。簡単に赦せるような問題じゃないのは分かってます」

柩「でも、謝らせて欲しいんです。千足さんにお説教されて、千足さんに赦して貰いたいっていうだけじゃない、僕に生まれた罪悪感をどうにかして処理するためにも!」

しえな「……意外すぎて戸惑ってるんだけど。桐ケ谷にも罪悪感とかあったのか」

柩「多分ちょっと前の僕だったらこんな気持ちにはならなかったと思います。きっとこの感情は千足さんと出会って芽生えたものの一つなんです」

しえな「……」

柩「だから大切にしたい。僕はもうとっくの昔に千足さんに赦して貰うには罪を重ねすぎている」

柩「でも千足さんから貰った気持ちにだけは、正直でありたいから」

しえな「うーん……」

柩「……」

しえな「なんていうか、聞いてみるとやっぱり桐ケ谷だったな」

しえな「結局謝るのも自分と生田目のためって感じだし」

しえな「罪悪感っていうのもボクや鳰に対してっていうよりは生田目から学んだモラルを犯したことに対してってのが強そうだし」

しえな「自己満足だよな?」

柩「はい」

しえな「即答って」

柩「だってその通りです。こんな気持ちも初めてで、何言っていいのかもわかりませんし」

しえな「そうだなぁ……」

しえな「生田目もなんていうか、無責任だなぁ」

しえな「許して貰えるまでってのもなんていうか丸投げだし、曖昧だし」

しえな「あともしあんまりにもしつこく許して許してって来られてたらボクだと絶対『もう許すからどっか行って』って言ってた」

柩「!」

しえな「そこ!その手があったか!みたいな顔しない!」

柩「そういえば、許してもらうってどういうことなんでしょう」

柩「千足さんに言われたんで謝ることしか考えてませんでしたけど、やっぱりなんだかんだなんとなく許してもらうことと紐付けて考えてましたし」

しえな「やっぱりさっきの謝罪打算的だったな」

柩「うーん。実際どうなんです?剣持さん的には僕が誠心誠意謝罪したから許してやろうって気持ちになってくれました?」

しえな「いや全然。お前の言葉は心に全く響かないんで」

柩「ですよねぇ」

しえな「だって僕に向けられてないだろあの言葉。あれ桐ケ谷自身とこの場にいない生田目に向けた言葉だぞ」

柩「……謝罪って難しいです」

しえな「そうだなぁ……そもそもいじめっ子に対して殺人っていう復讐を果たした我ながら極端なボクに許すって感情があるのだろうか」

柩「あ、それ言っちゃいます?」

しえな「もういいよ。どうせ調べ付いてるんだろ?」

柩「はい。一応殺そうとする前に組織に調べさせましたので。経緯も家族構成も趣味嗜好も大体把握してます」

しえな「怖いって。許す許さない以前にボクが許して欲しい気分なんだけど」

柩「許しますよ?」

しえな「ああ。はい、ありがとう。……もうどうでも良くなってきたや」

柩「……」

しえな「うーん……桐ケ谷に罪悪感があるってのもなんだか疑わしいものだけど」

しえな「もうボクらに危害を加える意思はさっぱりないんだろうって確信だけは持てた」

しえな「どうなんだろうな。昔ボクをいじめてた連中も、ある日突然いじめを止めてくれてたらボクは集団下校に入ることはなかったんだろうか」

しえな「でもそれは許すっていうのとは違っただろうしなぁ」

しえな「……」

柩「剣持さん?」

しえな「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事」

柩「そうですか。もうすぐ昼休み終わりますよ?」

しえな「ああ、そうか。それじゃあ食器を返してボクらも教室に戻ろうか」

柩「剣持さんの食器はそのフライドポテトの皿とコップだけですよね?僕のトレーの上に乗せてくれたら一緒に片付けますよ」

しえな「ああ、ありがとう」

柩「いえどういたしまして」

しえな「ん?」

柩「え?」

しえな「……」

柩「剣持さん?おーい」フリフリ

しえな「……お礼を言ってしまった」

柩「?」

しえな「そうか、嫌なやつ相手でもされて嬉しい事をされたら嬉しいって思うこともあるんだな」

柩「今さらっと嫌なやつって言われました」

しえな「……なあ、桐ケ谷」

柩「はい?」

しえな「……」

柩「……」

しえな「生田目との仲取り持ってやろうか?」

柩「へ?」

しえな「……」

柩「……ええ!?」

しえな「その代わり条件がある」

柩「乗ります!!」

しえな(ボクはかつていじめられたあいつらを許せない)

しえな(未来永劫許すことはないだろう)

しえな(なぜならあいつらは、ボクをいじめることになんの抵抗も、罪悪感もなく、面白がっていたからだ)

しえな(そう考えていたけれど、きっとそれは違うんだ)

しえな(きっとボクが本当に許せないのは、孤独だったからだ)

しえな(あの時、誰か一人でもボクを庇って、最後まで味方してくれる人間がいたのなら)

しえな(ボクは人殺しになんか堕ちなかった)

しえな(いじめの本当に怖いところは、理不尽な暴力や嫌がらせじゃない。……度を越せば話はまた違うけど)

しえな(ほんとうに怖いのは、自分が今いる世界から拒絶されることなんだ)

しえな(悪意に追い立てられ、どこにも自分の居場所がなくなる。それが当たり前になってしまう)

しえな(そうすると人はあっさりと孤独になり、不幸しか感じられなくなる)

しえな(難しい話だ。だからと言って誰かのために自分のリスクを考慮せずいじめっ子から誰かを庇える人間なんか滅多にいない)

しえな(でも、それでもそれをすることができる人間がいるとしたら)

しえな(ボクの様にかつていじめられ、その痛みを知っている人間か)

しえな(生田目のように純粋に正義感が強い人間か)

しえな(あとは……)

しえな「また即答か。具体的な条件もまだ言ってないのに」

柩「メリットに対して断る理由がありません。それに大体想像は付きますし。でも一応聞いておきましょうか。条件ってなんです?」

しえな「……」

しえな「お前もボクらの仲間になれ」

柩「ええ。わかりました」ニコッ

しえな(いじめっ子相手に戦うことを全く恐れないほどに強い人間)

しえな(それもいじめっ子と戦うことが自分の得に繋がっているなら、なお良い)

しえな(生田目がこっち陣営にいる限り、このナチュラルボーンいじめっ子は絶対ボクより戦力になってくれるだろう)

しえな「ああ、それともう一つ」

柩「はい?」

しえな「これはちょっと個人的っていうか、言いにくいことなんだけど……」

柩「ええ」

しえな「今の鳰は、ちょっとナーバスになっているっていうか……ボクも喧嘩中でちょっと近寄りがたいから」

しえな「桐ケ谷も最初はちょっと遠くから見守る感じでさ。やってあげて欲しいんだ。頭が冷えるまででいい」

柩「はあ……」

しえな「で、ボクはきっと嫌われちゃったから今後は主なフォローは生田目に頼まなけりゃって思ってたところだから、そのサポートも頼むよ」

柩「嫌われた?変な話ですね。剣持さんこんなに走りさんのために頑張ってるのに」

しえな「……まあ、色々あるんだよ。いじめられっ子には」

柩「ふーん……まあいいです」

しえな「よし、話は決まったな」

柩「ええ。さて、それじゃあ僕からも一ついいですか?剣持さん」

しえな「ああ。なんだ?」

柩「もう昼の授業時間始まってますよ」

しえな「え」

屋上

鳰「……はぁ」

鳰「やっちゃった。しえなちゃんに逆ギレかましちゃったッス」

鳰「あー。もう駄目だ。絶対嫌われた」

鳰「このまま飛び降りちゃおうかな~……」

鳰「……」

「何物騒なこと言ってるんだか♥」

鳰「……伊介さん」

伊介「よっ。鳰」

鳰「……なんッスか。ウチいじめるのにこんなとこまで追いかけて来たッスか?」

伊介「ちげーよば~か♥伊介は今日はここでご飯食べんの。ほら、購買で買ってきたパン」ヒラヒラ

鳰(そういえば今昼休みだったッスね。朝からなんも食べてないからちょっとお腹空いたッス)

伊介「物欲しそうな顔してんじゃねーよ♥ほら、プチメロ一個食べる?」クスクス

鳰「……よくも」ボソッ

伊介「ん?」

鳰「……なんでもないッス。ならお言葉に甘えて一個」スッ

伊介「ん」

鳰「……」モソモソ

伊介「ん。おいし」モグモグ

鳰「……」

鳰(こいつが乙哉ちゃんを殺した……!)

伊介「やだ、そんな熱い視線寄越さないでようっとおしい♥」

鳰「……すんません」ブルッ

鳰(……っ!なんでウチは震えてるッスか!?西の葛の葉ッスよ!?ウチ!)

鳰(こんな程度の暗殺者に遅れを取るわけないって、わかってるはずなのに……!)カタカタ

伊介「……」ジー

鳰(今までのいじめの積み重ねが、こうしてウチの身体に伊介さんを怖がらせてるッス)

伊介「……あのさぁ鳰」

鳰「ひっ!は、はい!」

鳰(んがあ!なんで裏声出てんッスか!いくらなんでもビビリすぎっしょ!乙哉ちゃんの仇に!)

伊介「伊介のこと憎い?」

鳰(当たり前ッス!)

鳰「あ、う、え」

伊介「なにそれ」クスッ

鳰「……」

伊介「……ま、当たり前かぁ」

鳰「……何が言いたいんッスか?」

伊介「別にぃ~」

鳰「……」スッ

伊介「ちょっと、どこ行くの?」スッ

鳰(付いてくんなッス!)

鳰「お手洗いッス」

伊介「そう?なら伊介も一緒に行く~」

鳰「……」

伊介「ほれ、変な顔してねーで連れション行くぞ♥」ニコニコ

鳰「……お下品ッスよ」

伊介「ん?」ニコッ

鳰「ひっ!す、すんません!」ビクッ

伊介「クスッ。別にそんなビビんなくていいじゃん。伊介なんかした?」

鳰「……めっちゃしまくってるじゃないッスか」ボソッ

伊介「口答えすんな♥」

鳰(なんという理不尽)

伊介「ま、今後はなんもしないから。仲良くやろうか♥」グイッ

鳰「ひっ!?」ビクッ

伊介「あはは!肩組んだだけでそんな怯えんなよ♥ほらさっさとトイレ行くぞ」グイグイ

鳰「ひいいいいい……」ズルズルズル

鳰(な、なんッスか、これ!?)

鳰(伊介さん不自然なくらい上機嫌だし!怖いッス!滅茶苦茶怖いッス!)

鳰(ていうかトイレ行くって答えたのもしかして相当やらかした系ッスか!?)

鳰(トイレ連れ込まれて、ウチどうなっちゃうんッスか!!?)

鳰(何されちゃうッスか!?アレでナニでソレなことされちゃうんッスか!!?)

鳰(ウチに救いは無いんッスか!?)

鳰(ぎゃあああああああああああああ!!)

鳰(誰か!)

鳰(誰か、助けてッス!!!)


                                                   ,. -―…―- ミ
                                                 ‐ァ⌒´         \
                                              /  /            ―ヽ-ミ
                                           /   ,′          \/   \
                                             /     l:  /| |       ∨  |  ‘,  きょうはこのへんにしておいてあげます
                                               /    || |  /⌒| |\\ i|   |/ ハ   :i  
                                             /  / :|| |: /x=圦 {  x=ミ |   | / ‘,  |
                                          {  /  八八{ |__| \  |__| |   / イ  '  |
                                          八_:{___   ∨|           厶イ    | |
                                          =|{__}}   | ゝ.    ▽   ∠    ‘, |八{
                                              {{つ〈\  |  .ィ≧=ー=≦ |i:iヽ    ‘,  }
                                           (う_| /\lィi〔:i:iY⌒'---'⌒Yi∧.    ‘,
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   きょうはこのへんにしておいてやる      /: : /: : : : l: : : : : : : : : : : : : : : \ /   l  (___ノ八__ノ '、 / |/ :リ
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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月02日 (水) 11:06:00   ID: 2U4__6QI

ハッピーエンドにしてくれ

2 :  SS好きの774さん   2014年07月05日 (土) 01:25:08   ID: VHoNfSsW

武智超かっけーww

3 :  デッドプール   2014年07月05日 (土) 08:00:27   ID: a7930HtN

やっべ、続き楽しみ!

4 :  SS好きの774さん   2014年07月05日 (土) 09:58:09   ID: 2YElR1gn

いじめなんかに負けるな鳰ちゃん!!続きが楽しみッス!

5 :  SS好きの774さん   2014年07月05日 (土) 12:10:41   ID: kWdwVxVm

千足さんは柩のいじめに若干引いてたな。それでも十分ひどいけど。
香子、春紀がどう出るか楽しみ。

6 :  SS好きの774さん   2014年07月05日 (土) 17:08:29   ID: e6k_TytN

武智様うほおお

7 :  SS好きの774さん   2014年07月05日 (土) 23:25:32   ID: cKsppvEV

出来れば兄弟を養っている春紀と先輩を無くしてる香子ちゃんは味方になって欲しいわ
頑張れ鳰っ!

8 :  SS好きの774さん   2014年07月07日 (月) 01:47:48   ID: yhEC-G2X

性欲でしか動かない武智くんはこういう時周りに左右されなくて頼りになるな

9 :  SS好きの774さん   2014年07月07日 (月) 02:55:06   ID: crbgns-b

乙哉かっこいい!
見てて辛いけどがんばれ鳰!
続き楽しみッス!

10 :  SS好きの774さん   2014年07月07日 (月) 05:18:25   ID: Ghjmo8SI

しえなちゃんもかっこいいよ!

11 :  SS好きの774さん   2014年07月09日 (水) 16:54:28   ID: -M_GJpGl

乙哉ほれるわー

12 :  SS好きの774さん   2014年07月09日 (水) 23:40:35   ID: Fv7cib1E

柩ちゃん外道やなwww

13 :  SS好きの774さん   2014年07月10日 (木) 01:35:44   ID: wkFrJ1-w

柩ちゃんがやべぇよ…やべぇよ…

14 :  SS好きの774さん   2014年07月10日 (木) 14:42:46   ID: VpjXz3LO

むぅ、春紀もいじめッ子側なんだ…残念っ
此処は乙哉と涼姐さんに頑張ってもらうしかない!

15 :  SS好きの774さん   2014年07月13日 (日) 09:04:54   ID: 0kM0m0hi

柩ちゃん怖すぎるッスよ....泣

16 :  SS好きの774さん   2014年07月13日 (日) 23:26:24   ID: FECywtNk

続きになるッスよー

17 :  SS好きの774さん   2014年07月14日 (月) 03:04:03   ID: zJuQVcMg

柩ちゃんやばいWWWWWWWW
続き楽しみにしてるッス!

18 :  SS好きの774さん   2014年07月14日 (月) 23:23:47   ID: LR_tX73x

是非とも続きをお願いします‼

19 :  SS好きの774さん   2014年07月15日 (火) 12:05:03   ID: NGqMfV5I

台詞なげえ・・・

20 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 14:36:14   ID: GkZhn5dA

何か思ってた展開と違ってきたな。
胸糞なら別にいいや

21 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 23:16:54   ID: gPRp43CP

風呂敷畳めるのかこれ

22 :  SS好きの774さん   2014年07月21日 (月) 22:29:48   ID: gdvnlH0p

続き待ってる

23 :  SS好きの774さん   2014年07月21日 (月) 23:29:50   ID: O2Q4CZ8L

武智かっこよすぎだろwww
死んだのはショックだわ
この先味方増えて胸糞ssじゃなくて鳰の逆襲にしてほしい

24 :  SS好きの774さん   2014年07月23日 (水) 02:41:49   ID: Ix9STpPq

春紀はイジメとかしなそうだけどなー
続きたのしみ

25 :  SS好きの774さん   2014年07月24日 (木) 18:17:43   ID: DizkyUye

面白いから更新はよ頼む

26 :  SS好きの774さん   2014年07月25日 (金) 23:48:18   ID: -Ti2oZ7S

待ってました‼楽しみにしてます‼

27 :  SS好きの774さん   2014年07月26日 (土) 11:30:44   ID: c-ATw0bc

岸和田最強

28 :  SS好きの774さん   2014年08月02日 (土) 13:24:23   ID: KWxo5PKs

続きよろしくお願いします‼︎
柩〜 love

29 :  SS好きの774さん   2014年08月02日 (土) 14:53:06   ID: orkAno5l

あくしろよ

30 :  SS好きの774さん   2014年08月03日 (日) 02:42:57   ID: e-_Je3fB

続き頑張ってください!

31 :  SS好きの774さん   2014年08月04日 (月) 19:15:22   ID: Kkedko9U

続きが物凄い気になる!

武智イケメンだな

32 :  SS好きの774さん   2014年08月05日 (火) 21:32:13   ID: AjPiufWi

続きー求む
柩かわいい(≧∇≦)
ちたひつ大好きです‼︎

33 :  SS好きの774さん   2014年08月06日 (水) 01:29:59   ID: 5jx3_fYP

続きよろしくお願いしますm(_ _)m
柩(≧∇≦)

34 :  SS好きの774さん   2014年08月06日 (水) 07:27:46   ID: 5jx3_fYP

武智どうなった?
気になる〜

35 :  SS好きの774さん   2014年08月07日 (木) 21:53:24   ID: BM8H5Z8k

この止め方は卑怯ッスよ〜‼

36 :  SS好きの774さん   2014年08月08日 (金) 19:42:34   ID: 3Xp7G51k

乙哉最高(((o(*゚∀゚*)o)))

37 :  SS好きの774さん   2014年08月09日 (土) 10:31:41   ID: wmlkuRZS

柩どうなるの?気になる〜
千足さんとの絡みもよろしくお願いしますm(_ _)m

38 :  SS好きの774さん   2014年08月09日 (土) 17:43:42   ID: qNhCFuq8

続き( `・ω・´)ノ ヨロシクー

39 :  SS好きの774さん   2014年08月10日 (日) 23:29:39   ID: 3qGQkA5F

続きをよろしくお願いしますm(_ _)m
毎回楽しみです‼︎

40 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 22:07:59   ID: lVNnBuNI

続き待ってます!
頑張ってください(=゚ω゚)ノ

41 :  SS好きの774さん   2014年08月12日 (火) 23:05:49   ID: k9IeZa72

続きよろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ
毎回楽しみで仕方ないです!
まさに神‼︎

42 :  SS好きの774さん   2014年08月14日 (木) 15:05:56   ID: ElthVytD

続き早く〜
待ちきれないです(≧∇≦)

43 :  SS好きの774さん   2014年08月15日 (金) 01:37:20   ID: _WefaNM4

続き楽しみだー。応援してますー

44 :  SS好きの774さん   2014年08月16日 (土) 06:25:36   ID: wDCmmOEK

期待

45 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 00:25:01   ID: Tg9pwrz7

続きとても期待してます!!!
乙哉めっちゃくちゃかっけー!!!

46 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 12:11:58   ID: Ib7pl_Sb

続きいつなんですか(≧∇≦)
すごい楽しみなんでよろしくですm(_ _)m

47 :  SS好きの774さん   2014年08月25日 (月) 23:34:01   ID: WAAeR1MB

気になる(≧∇≦)
終わり方がー*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

48 :  SS好きの774さん   2014年08月26日 (火) 00:37:31   ID: ryUl0cOY

終わり方のタイミング((((;゚Д゚)))))))

続き楽しみにしてます‼

49 :  SS好きの774さん   2014年09月20日 (土) 14:09:04   ID: 3qqBZgZ1

本スレ落ちたっぽいなあ

50 :  SS好きの774さん   2014年10月15日 (水) 06:09:47   ID: BC1wfFUa

再開ありがとうございます❗️

51 :  SS好きの774さん   2014年10月23日 (木) 12:44:05   ID: G5u6_JBG

岸和田最強

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