小鳥「プロデューサーさんの右手は幻想殺しですね!」 (66)




小鳥「間違いありません!」バンッ!




P「……」




小鳥「……」




小鳥「……なんですか? その、『また始まったよ』みたいな目は」


P「みたいなというか、まさにそう思っていたんですが」



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小鳥「もしかして、信じてませんね? プロデューサーさん」

P「いや、もしかしてもなにも……」

小鳥「プロデューサーさんはその右手で、異能の力を打ち消すことができるんですよっ!」



P「……」



小鳥「……」



P「……あー……はは……そうですねー。うんうん。俺もはやく三期が来ないかなって、楽しみにしてるんですよ」

小鳥「なんで話を流そうとしてるんですかっ! そういうことじゃなくてですね?」

P「そういうことじゃない? あ、そうですね。レールガンの二期がありましたもんね。まだ気が早いか。ははは、失礼しました」

小鳥「真面目に聞いてくださいよ! 私はアニメ談議がしたいんじゃなくて」

P「格闘ゲームにも参戦したんですよね。あのゲーム、結構好きなんですよ。ははは」




小鳥「……」



P「……」



小鳥「……わかりました」



P(おさまったか)



小鳥「なら、一から説明しなければなりませんね」


P(だめだったか)



P「はあ……わかりました、聞きますよ。で? なんで俺は幻想殺しなんですか? なにか理由が無ければ、そう思いませんよね?」

小鳥「ええ、そうです。私がその考えに至った理由……それは……」


P「それは?」



小鳥「第一に……あずささんです」


P「……あずささんが、理由? すみません、意味がわからないんですけど」

小鳥「わからなくても無理はありませんよ。……プロデューサーさん。落ち着いて聞いてくださいね?」



P(なんで俺のほうが落ち着けって言われてるんだろう)



小鳥「実はですね……」


P「……」



小鳥「……あずささんも……能力者だったんですよっ!!」バンッ!



P「……」




小鳥「……やっぱり信じてませんね?」

P「……いや……だから信じるもなにも……いえ、もういいです。こういうやりとりも面倒なので、小鳥さんの言う通り、あずささんが能力者だったとして話をすすめましょう」

小鳥「ありがとうございます」


P「それなら、あずささんはいったいどんな能力を持っているんですか? 発火能力? 風力使い?」

小鳥「いえ、ちがいます。多分プロデューサーさんも予想がつくと思いますよ」

P「予想がつく? ……って……まさか……」


P「……いつも迷子になってしまうのは、能力のせい……って、ことですか?」

小鳥「はい! その通りです!」



P「」



小鳥「……沈黙。ということは……納得したということで、話をすすめますね!」


P(!?)



小鳥「能力名は……そうですね。仮に、『次元転移(ジャンピングフラッシュ)』とでもしましょうか」


P(どうしよう、名前までつけ始めた)


小鳥「プロデューサーさん、よく迷子になってしまったあずささんを探しに行きますよね?」

P「え? はい。そりゃあ、プロデューサーですし……」

小鳥「では今、あずささんを探しに行ったとしましょう。道の向こうにあずささんを見つけました。……どうします?」

P「どうって……んー……声をかけますね」

小鳥「呼びかけても、あずささんは気がつきません。どうします?」

P「ええ? じゃあ……近づいて……肩でも叩きますかね」

小鳥「それです」


P「は?」

小鳥「その瞬間! 右手であずささんの肩を触ったとき! まさに幻想殺しが発動しているんですよっ!!」

P「しているんですよっ!! って、何言ってんですか!?」


小鳥「……これでも信じてくれませんか」

P「当り前ですよっ!! どこからそんな自信がっ―――」


Prrr


P「ん?」

小鳥「電話ですね」

P「携帯に……誰だろう……」ゴソゴソ

P「……これは、あずささん……なんてタイミングに」ピッ


P「もしもし? あずささん? どうかしましたか?」



『あ、プロデューサーさんですか? おつかれさまです~。実は、その~……お仕事が終わったので、事務所に帰ろうと思ったんですが……』



P「……迷ってしまったと」


『はい~。すみません……』



P「いえ、気にしないでください。今どの辺りです? ……はい……あ、そこだったら事務所の近くですよ。今迎えに行くんで、待っててください。五分もかからないと思います」


『いつもすみません……よろしくお願いしますね?』


ピッ


P「……よし。じゃあちょっと行ってきま―――」

小鳥「プロデューサーさんっ!!」ガタッ!

P「うわぁっ!? な、なんですかっ!?」

小鳥「チャンスですよ! 私の言ったことが本当かどうか、確かめてきてください!」

P「まだ言ってるんですか……。あとにしてくださいよ、あずささんが待ってるんで……」

小鳥「お願いしますっ! 難しいことは何もないですから!」

P「んー……まあ……いいか。肩に触ってくる……んでしたよね? わかりました。やってきますよ」


小鳥「いえ、それだけでは足りないですね」

P「え?」


小鳥「肩に触っただけだと、その瞬間のみ能力が無効化されるだけですから。一緒に歩いている間に、また能力が発動するかもしれません」

P「? また迷子になってしまうかもってことですか? じゃあ、どうすれば……」

小鳥「決まっています。ずっと幻想殺しを使っていればいいんです。つまり、あずささんと事務所まで手をつないだまま帰ってきてください」


P「……手を、つないで? そうすればあずささんは絶対迷子にならないと?」

小鳥「はい! 突然ふらっと姿を消してしまうこともありません! プロデューサーの右手が本物だっていう証拠にもなりますし!」


P「……わかりました、それで納得するならやってきますよ。いってきます……やれやれ」

小鳥「お願いしますねー♪」


バタン




小鳥「……さて」



小鳥「……さすがに信じてくれないですかねー」



小鳥「……いや。でもプロデューサーさんなら……きっと」




小鳥「さあ、今のうちに隠しカメラの準備を……」ゴソゴソ




――――




ガチャ




小鳥「あ、おかえりなさい。二人とも」



P「戻りました」


あずさ「た、ただいま戻りました~……///」



小鳥「お疲れ様です。大丈夫でしたか、あずささん?」

あずさ「あ、だ、大丈夫です。お騒がせしてすみません……」

小鳥「いえいえ。プロデューサーさんがちゃんと見つけてくれたわけですし。何事もなかったならいいんですよ」

あずさ「え、ええ……そうですね、何事も、なかったというか……むしろあったというか……普段よりも大胆だったというか……///」


小鳥「? どういうことです……あら? あずささん、顔が赤いですよ?」

あずさ「えっ!? あっ、えっと、これは……/// ちょっと外が、暑かったのかもしれません……///」

小鳥「そんなに暑かったですか? まあ、確かにだいぶ暖かくなってきましたが」

あずさ「じゃ、じゃあ、風邪でも引いちゃったのかも……」

P「風邪? もしかしてあずささん、熱が……ちょっとおでこを」スッ

あずさ「っ!? い、いえっ、平気です! それ以上触られたら、もっと熱く……///」

P「?」


あずさ「あ。……あ、あらあら、私ったらなにを言って///」

P「……本当に大丈夫ですか?」


あずさ「大丈夫ですっ。……じゃ、じゃあレッスン場に向かいますね。レッスンの時間になってしまうので」

P「もうですか? ちょっと早いような……まあいいか。じゃあまた一緒に……」

あずさ「だっ、大丈夫ですからっ! 律子さんと合流する約束なのでっ!!」

P「そ、そうなんですか。なら大丈夫か……」

あずさ「はい。じゃ、じゃあまたいってきますね……///」



バタンッ



P「……」



小鳥「……」



P「……小鳥さん」


小鳥「……なんですか?」

P「小鳥さんに言われた通り、事務所までずっと手をつないできました」

小鳥「そうですか……それで、結果は?」


P「……確かに……迷いませんでした。いきなりどこかに消えてしまうこともなかったです」

小鳥「やっぱり。私のにらんだ通りでしたね」

P「はい……それに、事務所に戻ってからも様子が変でした。あれは……」

小鳥「おそらく、何が起こったかわからなかったんでしょうね。いつも使えたテレポート能力が発動しなかったので、慌ててしまったんです」

P「そう……なんでしょうか……」

小鳥「間違いないです」


P「じゃ、じゃあ……俺の右手は、やっぱり……」



小鳥「……」



P「……」




P「……いやっ!! そんなわけがないっ!!」

小鳥(ちっ、まだ足りないか)


小鳥「まだ信じられませんか?」

P「よく考えたら、あずささんがテレポートできるって前提からおかしいんだ! 手をつないだまま歩いてるんだから、途中ではぐれたりしないのは当たり前ですし……」

小鳥「プロデューサーさん」

P「な、なんです?」

小鳥「信じられないというのなら、また試してみるしかありません」

P「また……というと?」

小鳥「……その前にプロデューサーさんに、真実を伝えなければなりません」

P「……?」



小鳥「実は……765プロに所属しているアイドルの子たちは……」



P「……」




小鳥「全員……能力者だったんですよっ!!」




P「……な……なんだって?」


小鳥「……本当のことです」


P「そ、そんなばかな……じゃ、じゃあ……例えば春香は?」

小鳥「転ぶたびにお菓子を生成する能力です」


P「なっ……じゃあ貴音は!?」

小鳥「胃袋の中に宇宙を展開する能力です」


P「律子は!? 美希は!?」

小鳥「律子さんは、メガネを通してアイドル力(ちから)を数値化する能力。美希ちゃんは眠っている間に、物事を学習できる能力です」


P「伊織はっ!?」

小鳥「額から超電磁砲です」


P「真はっ!?」

小鳥「瞬獄殺です」


P「亜美は!? 真美は!?」

小鳥「声帯模写です」


P「響はっ!?」

小鳥「くぃどぅるるる」




P「―――なんてこった」



小鳥「驚くのも無理はないです。……そういえば、もうすぐ雪歩ちゃんが事務所に来る時間ですね」


P「雪歩、ですか。ということは……」

小鳥「ええ、そうです。プロデューサーさんがまだ半信半疑だというのなら、もう一度試すべきです。その右手で雪歩ちゃんの能力を打ち消せるのか……!」

P「やるしかないですね……」



P「……ちなみに……雪歩の能力は?」



小鳥「それは……男性からの接触を、全て反射する能力……すなわち『男子禁制(シークレットガーデン)』です!!」



――――――



<オハヨウゴザイマース



小鳥「来ましたね……プロデューサーさん!」


P「わかりました。やってみます!」

小鳥「さっき話した作戦通りお願いしますね! 私は陰から撮え……ゲフンゲフン。見守っているので!!」

P「はいっ!」


――――――




雪歩「……あれ? 誰もいない……」



P「雪歩!」

雪歩「ひっ!! プ、プロデューサー……おどかさないでくださいぃ……」


P「あ、悪い。おどかすつもりは無かったんだ」

雪歩「誰もいないかと思いました……」

P「たまたま俺も小鳥さんも席をはずしてただけだよ。律子もレッスンの方に行ってるし」

雪歩「そうだったんですか? びっくりしました……」

P「ははは……」



P「……そうだ、雪歩。今日の予定はわかってるか?」

雪歩「あ、はい! 今日はCMの撮影って……」

P「ああ。準備は大丈夫か?」

雪歩「はいっ! いつでも大丈夫です!」



P「……大丈夫か。本当に? 心の準備も?」

雪歩「……? こ、心の準備、ですか? えっと、どういう」

P「そう。心の準備だ。……黙ってたんだが、実はな……」


雪歩「な、なんですか……?」


P「今日の撮影は雪歩だけじゃないんだ。他にも共演する人もいるんだよ」

雪歩「他にも……じゃあ、二人で撮影だったんですか?」

P「ああ。その共演者は……男性アイドルだ」


雪歩「……え?」
 


雪歩「―――え、ええぇっ!? きょ、共演者さんって、男の人ですかぁっ!?」


P「悪いとは思ったんだが、最初からそう言ってたら断っただろ?」

雪歩「うぅ……だ、だって……男の人となんて……」



P「……」



P(いつも通りの反応だ……男が苦手だから、こんな反応だと思っていたが……もしかして、能力が発動してしまうのを避けるためだったのか?)


雪歩「あ、あのぅ……」


P「……ん? ああ、悪い。なんだ雪歩」

雪歩「プロデューサー……どうしても……私じゃなきゃだめですか?」

P「……いやか?」

雪歩「うぅ……ごめんなさい……最近は、だいぶ慣れてきたと思ってたんですけど……。ち、ちなみにどんなCMなんですか?」

P「爽やかな感じのCMだな。えっと、最初に二人で手をつないで―――」

雪歩「無理ですぅっ!」

P「……。無理か」

雪歩「は、はい……うぅ……」



P(この拒否の仕方……やっぱり……)


雪歩「ごめんなさい。やっぱり私、ダメダメで……」

P「ダメじゃないさ。雪歩はがんばってる。前だったら、スタッフに男がいるだけでも警戒してただろ? 成長してるじゃないか」

雪歩「本当ですか? 私、変われてますか? 今だってお仕事いやだって言ってるのに……」

P「それは……」


雪歩「……わ、わたしなんか、穴を掘って……」




P(まずい、雪歩のお家芸がでる……俺の能力が本物だとしたら、今だ!)




雪歩「埋まってま―――」

P「雪歩」ガシッ


雪歩「っ! ぷ、ぷ、プロデューサー!? な、ななんで……手を握ってるんですかっ……///」


P「こうすれば、成長してるって信じてくれると思って。ほら、俺が手を握っても平気だろ? ……嫌だったか?」

雪歩「いっ、嫌じゃないですっ! ない……ですけど……平気ですけど……///」

P「良かった。でもこれで信じてくれるよな。雪歩は変われてるって」

雪歩「こ……これは……その……ぷ、プロデューサー……だから///」



P(小鳥さんの言う通りだった。男性の共演者と手をつなぐと聞いたら、激しく慌てていた。でも、俺の右手で触れば……何も起きない……)



雪歩「……///」



P「……」



雪歩「……プロデューサー……あの……いつまで」

P「……あっ。悪い雪歩」パッ

雪歩「いえっ。平気です……。えへへ♪」


P(? なんだか機嫌が良くなったな。反射が発動しなくて安心したのか? ……っ! そうか! 能力が無効化されて男性とも触れ合うことができるなら……能力が誤って発動するのを防ぐことができる! 俺の右手で雪歩を助けることができるんだ!!)



P「……雪歩、安心しろ! これからも俺は見守ってるからな!」

雪歩「―――! はいっ! よろしくお願いしますっ!」




P「……あ、それとな。さっきの共演者の話は嘘なんだ」



雪歩「……え?」




P「CMの内容。雪歩一人の出演だから、共演者どころか、誰かと手をつなぐシーンなんてまったく無いんだ。ごめんな」

雪歩「ええっ!?」




――――――




小鳥「どうでしたか?」


P「ええ。嘘までついて、雪歩には悪いことをしてしまいましたが、確信は持てました」


小鳥「やっと信じてくれましたね! プロデューサーさん!」

P「はい! 俺の右手は、確かに幻想殺しでした! それと……もうひとつ、気付いたんです」

小鳥「もうひとつ?」

P「はい。それは、俺の能力で雪歩のことを……いやっ! 765プロのアイドルたちを助けられる! 守ってあげられるんだって!!」

小鳥「おお!!」

P「俺、やります! この右手は、アイドルたちのために使います! 俺の右手で、みんなをプロデュースしますから!!」



小鳥(俺の右手でプロデュース……なんだか性的だわ)



P「……小鳥さん?」


小鳥「ピヨッ!? あ、えっと……。そ、そうですね! すばらしい考えだと思います!」

P「そう言ってもらえるとうれしいです!」


小鳥「ぜひ、どんどん実践するべきです! ただ、その時は私も同行させてくださいね? プロデューサーさんは、まだその能力に気付いたばかりです。私のアドバイスが必要な時もあると思うので」

P「本当ですか? 助かります! 何から何まで……」

小鳥「気にしないでください! さあ、そうと決まったら、また他の子にも実践してみましょう! みんなを助けるために!」

P「はいっ! よし、待ってろよみんな……!」




小鳥(ここまで煽っておいてなんだけど……この人、なんでこんなにピュアなんだろう。ちょっと心配になる……)


小鳥(……でも、おもしろいからいいわよね!!)





P「でも何でこんな能力が……春香たちならともかく、俺は学生じゃないのに」

小鳥「えっ!? あ、あー……な、なんででしょうね? まあ深くは考えないようにしましょう! ねっ!!」

P「え? まあ、小鳥さんがそう言うなら……」



小鳥(あ、危い。そんな細かい設定まで考えてなかった)




<オハヨーゴザイマース!!




P「ん? この声は、やよいか。早いな」

小鳥「……プロデューサーさん」

P「……わかってます。まず、やよいの能力を教えてください」

小鳥「はい。やよいちゃんの能力は、いつも元気でいられる能力『戦意高揚(ゲンキトリッパー)』です」

P「……いつも、元気に? なんだ。それなら誤発動して困るってことも無いか」


小鳥「甘いです。プロデューサーさん」

P「?」


小鳥「いつも元気に。その能力はいつも発動しています。そう、いつも……」

P「いつも……?」


P「……はっ!! つまり、悲しい時でも、つらい事があった時でも発動する……やよいの本当の感情は、誰にもわからない!?」

小鳥「そうです。もう、わかりましたね?」

P「ありがとうございます! くそっ、俺はなんて甘い考えを……待ってろやよい! もうお前はひとりじゃないぞ!!」ダッ!!




小鳥「……」




小鳥「……さあ、カメラカメラ」ゴソゴソ



――――――



P「やよいっ!」



やよい「あっ、プロデューサー! おはようございまーす!!」



P「あ、ああ。おはよう」

やよい「今日もお仕事、がんばりましょーっ!」

P「……やよいはいつも元気だな。疲れたりしないか?」

やよい「大丈夫です! プロデューサーにそう言ってもらえると、もっと元気が出ちゃいますっ!」

P「そうか。はは……」



P(そう。やよいはいつも元気だ。でも……もしかしたら、これも能力の……)

P(でも大丈夫だ。俺が……この右手で……!)


やよい「プロデューサーもいっしょにがんばりましょうね! あの、いつもの、いいですか?」

P「……あれだな。ああ、いいぞ」

やよい「えへへ、じゃあいきまーす! ハイ、ターッチ!」



P(ここだ……幻想殺しっ!!)



パンッ!


やよい「いぇい!」


P(……)



やよい「ありがとうございましたっ! これで、もーっと元気にがんばれちゃいます! うっうー!」




P(……)




やよい「~♪」




P(……)






P(……あれ?)



やよい「……? どうかしましたか?」


P「……え? あ、いや……その……。やよい……元気……だよな?」

やよい「? さっきも聞きましたよね?」

P「あ、ああ……そうなんだけどな……」

やよい「?」




P(あれ? なんでだ? 右手でタッチしたのに、なにも変わらないぞ? なんで……もともと元気だったから? いや、それにしたってもっとこう、変化が表れても……)






コソコソ……




小鳥(……迂闊だったわ。やよいちゃんにはハイタッチがあるんだった。πタッチとかならまだしも、普通のハイタッチでレアなリアクションは望めないわよね)●REC


小鳥(さすがにこうなると、ばれちゃうわよね。もう右手は使っちゃったし。んー……。仕方ない。残念だけど、ネタばらしといきましょうか……)



P「―――そうか! わかったぞっ!!」

やよい「はわっ!?」ビクッ!!



小鳥(っ!?)



やよい「び、びっくりしましたぁ……」


P「あっ……。すまんやよい、ただの独り言だよ。ははは……」

やよい「……?」



P(危ない危ない。つい声が出てしまった……)

P(だが……やっと、わかった)





小鳥(どうしたんだろうプロデューサーさん。わかったって、なにが……)

小鳥(もしかして……これはワンチャンス、あるかも……)



P「……なあ、やよい」スッ

ポン


やよい「……え? はわっ、わっ、ど、どうしたんですかっ。なんで、いきなり頭をっ///」

P「撫でられるの、いやか?」

やよい「えっ!? あ、あの……いやじゃ、ないですけど……ちょっと、恥ずかしいかなーって……///」

P「いやじゃないんだな。じゃあ恥ずかしいのは我慢してくれ」

やよい「え? は……はい……。うう……///」



P(よし。大人しくなった。思った通りだな。あとはこのまま……)



P「やよい。何か困ってることはないか? つらいこととか、悲しいこととか、我慢してるんじゃないのか?」

やよい「え、え? 困ってること……ですか? うーん……」

P「俺はやよいのプロデューサーだからな。なんでも言ってくれていいんだ。それに、今は俺とやよいだけなんだから、何も気にしなくていいぞ」


やよい「私とプロデューサーだけ……」


やよい「あ、あの、じゃあ……えっと……お願いが、あるんですけど……」

P「! そうか! なんだ、やよい?」


やよい「あの、困ってることとか、そういうことじゃないんですけど。……少し、甘えちゃってもいい、ですか?」

P「……? 甘える?」

やよい「はい。えっと……もっと、頭、撫でてくれたらうれしいかなーって……えへへ」



P「……! わかった、いいぞ! いくらでも撫でてやるからな!」ナデナデ


やよい「あっ……ありがとうございますっ///」




P(……よし、成功だ!)

P(そうだったのか。やよいは甘えたかったんだな)

P(一番上のお姉さんだもんな。家ではしっかりお姉さんしてるだろうけど、たまには思いきり甘えたいときもあるよな)

P(でも大丈夫。今は俺の右手の力で、何の遠慮もなく甘えることができる。もう無理しなくていいんだぞ……やよい……!)ナデナデ



やよい「……///」






小鳥(……)●REC



小鳥(……ワンチャンス、あったわね!)グッ




――――――



P「お疲れ様です!」

小鳥「あ、お疲れ様です! プロデューサーさん! うまくいったようですね!」

P「はい! それに……」

小鳥「なんです?」


P「この右手……だんだん使い方がわかってきたと思います!」


小鳥(おおぅ……すごく得意げだわ。ここまで信じるとは……)



小鳥「よ、良かったですね! これでやよいちゃんも、すごく安心できたと思いますよ」

P「はい! はじめにハイタッチした時、幻想殺しが効かなかったので焦りましたが……やよいの能力は、常時発動しているタイプなんですね! ハイタッチが終わって右手を離したから、また能力が発動してしまったんですよ!」

小鳥「え? あー……そう解釈したんですね……。じゃないっ! さすがプロデューサーさんです! 機転がききますね!」

P「はは、あまり褒めないでくださいよ。……でも、この調子で次のアイドルもいきたいと思います!」


小鳥「……次ですか」



小鳥(……さて。お宝映像はだいぶ貯まったし。さすがにこれ以上の結果は望めないわね。さっきのやよいちゃんの時だって、ばれてしまいそうだったし)

小鳥(すっかり信じ込んでるようだけれど……頃合いですね。次の子が終わった辺りで、ネタばらしといきましょう)


P「さあ! 次は誰が来る! どんどん殺してやるからな!」

小鳥「ちょ、プロデューサーさん、その言い方はちょっと……」



<オハヨウゴザイマース!

<オハヨウゴザイマス



P「! 来た!」

小鳥「今度は二人ですね! 春香ちゃんと千早ちゃんです!」

P「春香と千早か……」



P「……ん? 春香、だって?」



P「……っ!! まずいっ!!」ダッ!!

小鳥「えっ? ちょっと! プ、プロデューサーさん!?」


――――――



バッ!!


P「―――止まれっ!!」



春香「わっ!?」ビクッ!!

千早「きゃっ!?」ビクッ!!



春香「びっ、びっくりした……。な、なんですかプロデューサーさん……」

千早「何かあったんですか……?」


P「おはよう、春香。千早。悪いけどちょっと動かないでくれ。今そっちに行くから」


春香「え? 本当にどうしたんですか? というか、わざわざ来なくても、私からそっちに行きますけど……」スタスタ


P「あっ!? だから動くなって!?」


春香「動くなって、いったいさっきから何を……って、うわわっ!?」

P「ああっ!!」



どんがらがっしゃーん


春香「いたた……」


千早「……もう。大丈夫?」スッ

春香「ご、ごめん千早ちゃん」

千早「いつものことだから気にしてないわ。……でも、今のはプロデューサーも悪かったと思います。さっきからいったい何なんですか?」



P「……ああ。本当にその通りだ。千早の言うとおり、悪いのは……全部俺だ」



千早「え? あ、あの、別に責めているわけでは……そういう意味で言ったのではなく」

P「すまない……くそっ、間に合わなかったなんて……情けない……」


千早「プ、プロデューサー?」


春香(ね、ねえ千早ちゃん。プロデューサーさん、何かおかしくない?)ヒソヒソ

千早(え、ええ。言い過ぎてしまったかしら……)ヒソヒソ

春香(言い過ぎっていうより……最初から様子が変だったような……)ヒソヒソ



P「春香が転んでしまった……。これじゃあ、またお菓子が……」


春香「……へ? お菓子?」


P「ああ、お菓子だ。また、お菓子を作ってしまったんだな……」

春香「あ、はい。今日はクッキーを……って、え? 作ってしまったんだなって……作ったら、まずかったですか?」


P「いや、まずくない。まずくないんだ。春香のお菓子はいつもおいしいぞ……」

P「でも……そんなに自分を犠牲にしてまで……俺たちにお菓子を振舞ってくれなくても……いいんだよ……っ!」


春香「いや、大げさ過ぎますよ!? 犠牲って……」

千早「やっぱりなにか変ね……」



コソコソ

小鳥(……ふう。よかった、間に合ったわね)●REC



小鳥(でも……んー……春香ちゃんとの絡みは、ちょっとインパクトに欠けたわね。転びそうな春香ちゃんを右手で受け止める! ぐらいならよかったけど)

小鳥(まあ、プロデューサーさんはだいぶ面白いことになってるけど。しっかり覚えてたのね、春香ちゃんの能力……)

小鳥(まあとにかく、今度こそネタばらしね。春香ちゃんのターンは終わっちゃったし、千早ちゃんの能力は、まだ教えてなかったし)

小鳥(では……)




小鳥「プロデューサーさ―――」



P「だがまだだっ!!」



春香・千早「「っ!?」」



小鳥(!?)


小鳥(え? まだって……)



P「……」スッ


千早「? プロデューサー、なにを……」




小鳥(右手を構えた……間違いないわ! 千早ちゃんにも、右手を使うつもりね!)


小鳥(でも、千早ちゃんの能力なんて教えてない……ハッ!? こ、これはまさか……)






P『千早の、その絶壁という名の幻想!! 俺がぶち殺……あれ? これ幻想じゃないわー、現実だったわー』





千早『―――ihbf殺wq―――』ゴゴゴゴゴゴ……









小鳥(……というオチ!? いや、もしくはやよいちゃんに対して、中身が出てしまうという幻想!? それとも『んあー』的な!? なんにせよ止めないと!! 千早ちゃんが神にも等しい力の片鱗に目覚めてしまう!!)



小鳥(そ……それに……もし今、この場に律子さんが戻ってきたら……しかも私の仕業だってばれてしまったら……)






律子『―――――小ォォォ鳥さァァァァァァァァン!! 愉快にハネ振って、もしかして誘ってるンですかァ!?』



律子『―――さァて問題です……この薄い本をシュレッダーにかけるとどうなってしまうでしょうかァ?』



律子『圧縮圧縮ゥ! HDDも圧縮ゥ!!(物理)』






小鳥『ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!』







小鳥(なんて……一方通行な罰を受ける羽目に……! まずいわ! それは避けないと……ああっ、でもここからじゃ……もう間に合わない……っ!!)




P「千早……その幻想を……」スッ



千早「は、はい?」




小鳥(あっ、ああっ)




P「――――――ぶち殺すっ!!」バッ!!



千早「――――――っ!?」






小鳥(ああああああーーーーーーっ!!!)







小鳥(あ……)






小鳥(……)






小鳥(……あ、あら?)






――――――





律子「……で。こういう結果になった、と」



小鳥「はい。その通りです……」



律子「まったく小鳥さんは……またそうやってくだらないことを」

小鳥「う」

律子「まあ、そんな話を信じ込むプロデューサー殿もどうかと思うけど」

春香「ま、真面目な人なんですよ! プロデューサーさんは!」

律子「真面目ねえ……」チラ



律子「……今のあの姿を見たら、真面目どころか、プロデューサーとしてどうかと思うけど」

春香「あ……あはは……」


律子「でも今回は多めに見ましょうか。千早が本気で嫌がってるわけじゃなさそうだし。千早のためにもなるかもね」

小鳥「ですよね! あんな千早ちゃんが見れるなら―――」

律子「カメラはしまってください」

小鳥「はい……」





小鳥(……プロデューサーさんが千早ちゃんの手を握った時は、どうなることかと思ったけど)

小鳥(まさか手をつないだまま、千早ちゃんの機械音痴を治そうとするなんて……さすがね。予想外だったわ)

小鳥(今だって二人で、同じイヤホンを使いながら、携帯プレーヤーのレクチャーしてるし……)

小鳥(なんとか危機は回避したけれど……でも、ああっ! くやしい! 密着している二人! 赤くなった千早ちゃん! これを映像に残すことができないなんて……っ!!)





千早「こ、こうですか?」

P「いや、そうじゃない。そこはこうやって……」スッ

千早「っ! ///」


P「こう、やって……んー……やっぱり右手が塞がってると操作しづらいな……」

千早「な、ならもっと離れた方が……ちょっと近すぎるかと……///」

P「それじゃあだめだ。きっと千早は、魔術サイドの人間なんだよ。だから機械もあまり得意じゃないんだ。千早の持つ魔術の力が、邪魔しているのかもしれない。千早の手は、終わるまで絶対に離さないからな」

千早「? 何を言って……やっぱり今日のプロデューサーはおかしいです」

P「おかしくて結構。安心しろ千早。俺に全部任せてくれればいいから」スッ

千早「!? だ、だから近いですっ、プロデューサーっ/// ……は、春香っ。見てないで助けて……」


春香「えー? でも千早ちゃん、まんざらでもないって顔してるしー」

律子「そうねー。でもしっかり使い方も覚えなさいよー? イチャイチャするだけじゃなくて」


千早「してないわよっ!!/// ……もう。律子まで……」




律子「ふふ。耳まで真っ赤ね」

春香「本気で照れてる。千早ちゃん可愛いー……あっ、そうだ! プロデューサーさんっ! 今度は私も助けてくださいね! また転ばないように、いっしょに歩いてくれませんか!?」


P「ん? ああ! もちろんだ! その時は春香の手も、しっかり握っておいてやるからな!」


春香「ありがとうございまーすっ! ……えへへ。やったぁ

律子「抜け目ないわね……ほどほどにしておきなさいよ?」

春香「はーい♪」




P「よし。春香も協力的になってくれた。今度こそ春香の能力を無効化してみせるぞ! ……おっと。でも今は千早だな。レッスンまでまだ時間はある。操作方法、全部覚えるまでがんばるぞ! 千早!」ギュッ



千早「もう……好きにしてください……くっ……///」




――――――





千早ちゃんの公開羞恥プレイは、映像に残せなかったですが。


千早ちゃんより前に撮った映像は、律子さんにはばれませんでした。今回はそれで良しとしましょう。


いや、むしろ充分すぎるでしょうか。


さあ。次はどんな手でお宝映像を集めましょうか?


また協力お願いしますね? プロデューサーさん♪








……あ。ちなみにその後、ちゃんとネタばらししましたよ?

「おでこがビリビリ中学生」とか言いつつ、伊織ちゃんのおでこをペタペタ触ってたら、思いっきり蹴られてましたから。




 おわり


おわりです。

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