岡部「ありがとう……ただいま。紅莉栖」 紅莉栖「?」 (41)

紅莉栖「ハロー」

岡部「おぅ……紅莉栖か……」

紅莉栖「……何時にもまして、テンションが低いわね。」

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岡部「あぁ…………どうやら、夏風邪でも引いたらしい……体調がすこぶる優れなくてな…」

紅莉栖「テンションの低いあんたなんか、炭酸の抜けたドクペみたいでなんか嫌ね」

岡部「そ、それ……どうゆう…意味だ」

紅莉栖「ほんとにダメそうね」

岡部「すまんが…冷蔵庫にポカリがあるはずだ……取ってくれ…」

紅莉栖「はいはい、あんたはそこでそのまま横たわってなさい。」

岡部「すまんな…」

紅莉栖「……っと、これね」

紅莉栖「岡部ー 持ってきたわ……よ?」

岡部「……スゥ………スゥ」

紅莉栖「寝てる…か」

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「……」

「ねぇ……」

「ねぇ岡部ってば」

 肩を揺らす振動が、意識を覚醒させる。

「ん…あ、あぁ」

 目を開くと目の前には紅莉栖の顔があった。

 視界を動かし、状況を把握する。

 パソコンの前にある緑色の山のようなものは、言うまでもなくダルであろう。

 水色の帽子が俺の横たわるソファの傍で揺れている。
 まゆりが、コスプレを縫っていることが容易く予想できる。
 実際そうだろうし、

 いつもどおりのラボだ。

 俺が、調子を崩していないこと以外は…

「買い出しに付き合って」

 ……コイツは、何を言っているんだ?

 まぁいいだろう
 幸い調子も戻ってきたらしく、体のだるさもない。

 ラボを出て階段を下りる。

 ラボの外に出ても肌に感じる温度は、変わることなく俺の肌をベタつかせる。

 路面に立つと、強烈な太陽光と強烈な照り返しでまるで、レンジの中に放り込まれたかのように思える程だ。

 数歩先を歩く紅莉栖

紅莉栖「………。」

 着いていこうと歩き出すが、地面がままならない。

 あれ?

紅莉栖「……………?」

 視界が歪む。歪んで混ざる。

紅莉栖「………!?」

 蜃気楼とも陽炎とも言えない世界に、

紅莉栖「………!」

 俺は、

 沈んでいった。

紅莉栖「岡部!」

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 気がつくと、俺は暗闇にいた。


 いや、正確には暗闇ではない。

 暗闇のような空間に俺はいた。

 ただの暗闇とは異なり、自分の姿を視認することができた。

 シルエットではなく、色味を失った己の姿を。

 自分の灰色の手を眺めていると、不意に何か異物を認識した。


 白衣を着た何かを


 『よう、はじめまして……か?
 それとも、久しぶり……か?』

 何を言ってるのだ?
というか、お前は誰だ? ここはどこだ?

 『ここがどこなのかは、正確には俺にも良く分からない。
 ただ一つ言えるのは、俺の名は、������だ。』

 は? お、おまえは何を言っているのだ?

 『だから、������だと言っているではないか!
 聞き覚えがあるだろう?! お前なら!』

 意味が頭に入ってこないのか、頭が理解を拒否しているのか解らんが、言っている言葉の理解ができん。

 『………くそぅ、これも運��の扉��択なのか。』

 『ま、まあいい! 今この世界で俺の名前など世界一どうでもいい情報だ!』

 『今重要なのは、お前に訪れた………いや、お前に今から訪れる事態だ。』

 『お前は………覚えているかどうかわからんが。
 今のお前は、昏睡状態にある。
 牧��莉�と買い出しに行った途中で倒れたのだ。』

 やはり、理解ができない。
 言葉として認識はしているのだが、意味を汲み取れない。

 『理解できなくても聞け。 
 聞くことに意味があるのだ。』

 『いいか、お前が目を覚ますのは、遥か彼方の未来。
 2036年だ。』

 『その時代には、��瀬��栖は居ない。
 橋��も……、二人とも既に死んだ未来だ。……』

 『だが、それは��の�択ではない。』

 『お前が昏睡状態に陥ったことによる世界線の変動によるせいだ。』

 『この未来を変えたければ、選択を誤るな。』

 『世界は、お前の手の中にあるのだから』

 『健闘を祈る』

 『�ル・��イ・コン���』


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 そいつの白衣に飲まれるかのように視界が白に包まれる。

 気がつくと俺は、天井を見上げていた。

 薬品系の匂い、そして電子機器が定期的に音を鳴らす………

 ここは、

 「病院?」

 俺が音を発したことによるのか、
 傍の人物が飛び上がるかのようにのぞきこんでくる

 揺れる二つのおさげ

 「お、おじさん? 気が……ついた…の?」

 『鈴羽か。』

 声をだそうとしたが、出し方をど忘れしたみたいなので
頷いて答える。

 「そ、そっか 本当に今日、目覚めたんだね。 いやはや、流石と言うべきか。」

 「……ちなみにさ、私……誰だかわかる?」

 忘れるはずもない、俺が見たままの鈴羽なのだから。

 コクン

 「そっかぁ〜 よかったぁ」

 「あ、お医者さん呼んでくるよ。」

 そう言っておさげが視界から消えると、急に意識が遠のいていった。

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 不意に覚醒すると
目の前には、

 タイムリープマシンがあった。

 細かいディティールは違いども、確かに俺は、それをタイムリープマシンと認識できた。


 「いい、おじさん」

 「説明をはじめるね」

 『頼む』

 ……やはり、声は出ない。鈴羽の目を見ながら頷く

 「おっけー、まず……」
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 鈴羽の説明を要約すると

・現在の時間軸は、2036年

・岡部倫太郎は、20年以上昏睡状態にあった

・牧瀬紅莉栖は既にこの世には居ない

・橋田至も同様

 ……そして最も重要なのは

・牧瀬紅莉栖は、タイムリープマシンを完成させた。 マシンの使用目的は、岡部倫太郎を助けるため

 だという

 『その日、ラボにはあなた以外のメンバーが揃った。』

 『夢で、あなたを見た。 と皆が口を揃えてたわ。』

 『内容は、僅かな差異はあれど一貫していた。』

 『あなたが、タイムリープマシンを使っていた。』

 『そして、最後に少し落ち着いた……あなたの様であなたではない
 誰かの声を聞いた。』

 『聞いたのは、私だけだけど』

 『世界を巻き戻せ……と』

 『何が正しいのかわからない。』

 『私が、タイムリープマシンを作ったのは、もしかするとあなたにとっては絶望かもしれない。』

 『でも、これを作ることが世界を変える鍵なのよと……おそらく』

 『出来たら、私が直にあなたにこれの使い方を教えたかったのだけれど……』

 『あなたならば大丈夫よね。』

 『後は…任せたわ。』

 まさか、

 皆が夢で見たというのは、もしや別世界線?

 ということは、リーディングシュタイナーが発動したというのか?

 確かに今までに夢で別世界線を見る。 という現象には、既に遭遇している。

 だが、ラボメン皆に同じタイミングで発動する…などありえるのか?

 しかも、紅莉栖のビデオにあった不審人物の声。

 まさか…………

 機関!!??


 「……っと、ビデオはここまで」

 「? おじさん?」

 考え込んでいると、お下げが斜めになったので、のぞき込んできたということがわかった。

 『あ、いや。 なんでもない。』

 「そっか じゃいいや」

 「で、どうするの?」

 『どうする……とは?』

 「その……たいむりーぷましんを使うの? ってこと」

 『あ、あぁ ちょっと考えさせてくれ。』

 「うん いいよ」

 タイムリープマシン

 これは、あってはならない物

 作ってはいけない物だ。

 世界に反逆する術

 どうする? これを使うと、何が起こるか。………

 いや、待て!

 もしかすると……これを作るという事が、既に世界に影響を与えている?

 これが存在してる世界は、全て何かしらの歪みが起きうる。

 この世界の歪みは?

 ……もしかして、

 鈴羽に聞いてみるか

 『なぁ、鈴羽』

 「ん〜?」

 『紅莉栖って………どうやって……』

 『何が…原因で』

 『死んだんだ?……』

 「えっと、確か」

 「心不全 だったかな」

 『心不全……ということは、原因は』

 「詳しくはわかってない。 
 病気もないし、外傷もなかった。
 いつもどおりのある日、いきなり牧瀬紅莉栖は亡くなった。」

 そうか、これが


 歪みか

 紅莉栖は心不全で死んだ

 おそらく、それは世界の歪みのせい

 そして、歪みの原因はこのタイムリープマシン

 これを作ったがために紅莉栖は死んだ。

 ならばどうする。


 ……どうやら今回は、悩む必要はないらしい。


 紅莉栖が残してくれたタイムリープマシン

 これには、改良が施されている。

 飛ぶ期間に制限はない。


 つまり、紅莉栖がタイムリープマシンを完成させる前に戻ることができる。

 そして、タイムリープマシンを完成させなければ、紅莉栖は死なない。


 やることは、決まった。

 『鈴羽』

 「ん?」

 『ちょっと手伝ってくれ』

 「オーキードーキー」


 ヘッドセットだけではなく、様々な付加装置を着けなければならず
 体がだるくて動かない俺には、一苦労だった。
 鈴羽に感謝しなければ。

 「こ〜れ〜で……よしっ! と」

 「まだなんかある?」

 『あぁ、すまんがパソコンに俺が言う設定を打ち込んでくれ。』

 「軽い軽い〜」

 画面に、戻る日時の設定画面が出る。

 「で、いつ?」

 『あぁ、それは俺が倒れた日にしてくれ。』

 「おっけー」

 『分かるのか?』

 「牧瀬紅莉栖がちゃーんと記録してくれてるよ。」




 「じゃ、行くよ? 準備はいい?」

 『あぁ』

 相変わらず声は出ない。

 頷き、意思を表示する。

 「〜〜〜んん やっぱだめだ
 これはおじさんが押すべきだよ。」

 ……やっぱりそうだよな

 最後は、俺が押さないと

 エンターキーに手を沿え、覚悟を決める。

 ダル……それに、紅莉栖

 二人は、死ぬべきじゃない。

 そんな世界は認めない。

 そんな世界は、俺が許さない!

 カチッ

 途端、世界が白黒に歪み、吐き気を催すような頭痛が頭の奥底からはい上がってくる。

 ぐ、

 うおおおおおおおおおおお

 『ねぇ、岡部』

 『あなたは、失った20年よりも長い時間を旅したのかもしれない。』

 『でも、わたし達にとっては、それは夢や幻みたいなもの。』

 『私は、あなたと一緒に20年を過ごしたい。』

 『あなたを横でただ見守る20年じゃなくて』

 『あなたと共に先を見据える20年を』

 『だから、私は待ってる。』

 『20年前で』

 『だから、さよならは言わない。』


 『………いってらっしゃい 岡部』


 頭痛の中に声が聞こえた……

 なんだか、聞き覚えのある声が……

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紅莉栖「〜♪」

岡部「………お前は何をしとるんだ。」

紅莉栖「あ、起きた?」

岡部「『あ、起きた?』ではないっ! なぜ人の頭にキンッキンに冷えたアイスを押し付けてるのだ!」

紅莉栖「いや……濡れタオルの代わりになるかなぁと」

岡部「代わりになんかなるかっ! 冷えすぎて頭痛がするわ!」

紅莉栖「それだけ元気なら、もう大丈夫そうね。」

岡部「そ、それはそうだが」

紅莉栖「アイス食べる?」

岡部「そんなものラボの冷蔵庫にあったか?」

紅莉栖「買ってきたのよ。」

岡部「そ、そうか ありがたく頂こう。」

紅莉栖「はい♪」

岡部「ありがとう……ただいま。紅莉栖」

紅莉栖「?」



-fin-

一応設定としては

地の文が書かれているところは、夢の世界という設定で書きました。

もし、オカリンが他世界線を夢で見たら

みたいな感じです

でも、結局実際にタイムリープしたのか
それともただの夢なのかは、投げっぱなしです

倒れた直接的原因は熱中症です

自分の死を予見した
というよりも
もし、自分が死んだあとに目覚めた時のためにビデオを残した

という感じです

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