安価で東方物語 (15)


①安価で登場人物とお題を決定します。お題は主に3つ頂きます。

②申し訳ないが書籍キャラは詳しくないのでNG

③当スレはR-18要素を含みます。

④物語は「東方キャラのみ」「幻想入り」「現代入り」のいずれかで構築されます。


では早速……。

キャラクター>>2

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403530363

めーりん

ちなみに、作品の形式は短編です。

キャラクターは「紅美鈴」で。

お題を「下3つ」でお願いします。



美鈴「綺麗な花じゃないですか」



#1#

柔らかな日差しの午前11時30分。
その部屋はぶ厚いカーテンで閉め切って、薄暗いランタンが照らすのみだった。

ベッドに寝転ぶお嬢様が「ぱた」と漫画を閉じ、こちらに向き直る。
そして椅子に座っているチャイナ服に向って、ぽつりと呟いた。


レミリア「あのさぁ……門番としてどうなの?」

美鈴「ええと……」

レミリア「んにゃぁ。お前の警備能力は疑っていないよ。『気を使う程度の能力』……最高に門番向きだからね」

美鈴「では、どのように改善したらよろしいでしょうか」

レミリア「里よ」

美鈴「えっ」

レミリア「人間の里」


彼ら愚民どもに「絶対に逆らっちゃいけない妖怪」が居ることを思い知らせて頂戴。
そう――。


「紅魔館の素晴らしさを知らしめるのよ!!」




#2#


そして数十分後。
紅美鈴と十六夜咲夜は――人間の里に来ていた。

真上の太陽が、2人の肌を焦がしている。
まさに真夏日というヤツで――。

暑さからか、人通りが少ない。


咲夜「暑いわね……何か、気の利いた店はないの?」

美鈴「あっ……茶屋がありますよ」


――――――――――――――――――――――――――――――。


咲夜「水2つ。ところてん2つ」

茶屋の娘「かしこまりました」


茶屋は多くの人で賑わっていた。
今日は休日であるし、外で釣りをして暇を潰すには暑すぎるからだ。

茶屋の娘が離れたのを見計らい、美鈴が申し訳なさそうな顔を作って言った。


美鈴「いやぁ、わざわざすみません」

咲夜「気に負う必要はないわ。お嬢様の、いつも通りの無茶振りだもの」

美鈴「それが……無茶振りとも言えないようなんです」

咲夜「続けて」

美鈴「……紅魔館も、だいぶ幻想郷に馴染んできました。裏を返せば、目立たなくなったということです」

咲夜「落ち着いて来たのよ。私はこの空気を歓迎するわ」

美鈴「それはあまりにも危険です」


「幻想郷の中でも幻想になった存在は、どこに行くのか……考えたことがありますか?」


咲夜は、この暑さに見合わない寒気を感じた。
美鈴は更に持論を展開する。


「幻想郷では知名度がものを言います。我々が生き続けるためには、目立ち続けるしかない」


いいですか――?

――――今、紅魔館は、他の新興勢力に押されつつあります。



#3#


茶屋の娘「お客様、ところてんは『酢醤油』と『黒みつ』がございますが……」

美鈴「あっ、酢醤油で」

咲夜「黒みつを頂戴」

茶屋の娘「かしこまりました」


注文時に聞けばいいものを、何往復もして……。
美鈴は茶屋の娘を不審に思った。

私が妖怪だから監視されているのだ。
そのように思うことにして、続けた。


美鈴「ええと、つまり……お嬢様は紅魔館の今後を憂いて、『持続的に目立つ方法』を模索しているんだと思います」

咲夜「まず博麗神社とか潰しとく? デカい要石か何かで」

美鈴「物騒なこと言わないでください」

咲夜「冗談よ」


ゴンッ!

美鈴は即座に理解する。
今のは、頭がテーブルの角に打ち付けられた音だ。

振り返ると、うずくまる女に向って、刀を腰に差した男が怒鳴り散らしていた。

女のほうは露出の多い恰好だったが、何より目立つのが、陥没した右目だった。
眼球が飛び出して、床で崩れた豆腐のようになっている。

男が、静かな怒りを茶屋の娘に向ける。


士族の息子「……売女に餌を与えていたとは。この俺をそれと同列に扱う気か?」

茶屋の娘「申し訳ありませんお客様。この娼婦は私共で掃除させていただきます、ですから……」

士族の息子「考えてやるよ。……だが今日は失礼させてもらう。おい金太! 帰るぞ!!」


なんとこの男、子供連れだったのだ。
子供は茶屋の二階から降りてきて、倒れる女を足蹴にしながら男について行って店を出ていこうとする。


美鈴「……待ちなさい」

茶屋の娘「お客様……彼を行かせてあげてください」

美鈴「――ですがッ!」

咲夜「私たちは部外者よ。人間の問題は人間同士で……」


そして――。


士族の息子「――フンッ。金太、ほら、行くぞ」


……悔しいが、これ以上彼に詰め寄ることが出来なかった。



#4#


美鈴「大丈夫ですか!?」

女「う、うぅ……」

美鈴「ダメだ、脳震盪を起こしてる……咲夜さん、診療所まで一緒に……」

咲夜「私はここで事情を調べるわ」

美鈴「……誰か、見ていないで手伝ってください!!」


あんなに賑やかだった店内が、先程からしばらく静寂に包まれていた。
私が周囲に助けを求めてから、その空気がより鮮明になった。


冷やかな沈黙が胸に刺さる。


妖怪である私を警戒しているのだろうか。

さもなくば、今倒れているこの女か……。


――――――――――――――――――――――――――――――。


竹林の奥の診療所にて。


永琳「命に別状はありません。けれど右目はムリですね」

美鈴「そんな……何とかなりませんか……?」

永琳「その場合……1万円(※)程の出費は覚悟してください」

美鈴「……ずいぶん吹っ掛けますね」

永琳「地球で初めての技術を開発しながら提供するのです。むしろお買い得価格ですよ」



幻想郷の貨幣価値を明治時代と同一であると過程して――。
1円=2万円である。
つまり、1万円=2億円となる。


永琳「眼球をいちから作り直すとなれば……。高価な材料を湯水のように使い、トライアンドエラーを繰り返す必要があります」

美鈴「そんな本格的なものでなくても……」

永琳「眼球が丸ごと取れていて、神経も奥の方で切れています。負傷状況からみて、先程申し上げたプラン以外にありません」

美鈴「……考えさせてください」

永琳「ええ」

美鈴「今日はもう日が暮れるので……彼女、連れて帰ってもいいですか?」

永琳「いいえ。絶対安静です。脳震盪も深刻な問題ではありますから」



#5#


店のバックヤードまで咲夜を招くと、茶屋の娘はひそひそ語り始めた。


茶屋の娘「彼女は……この里で一番人気の売春婦なんです」

咲夜「へぇ……うちのツレは、困っている人は貴賤関わりなく助けたがる性質なの……気に障ったなら詫びるわ」

茶屋の娘「いえ……ですが正直、里の誰もが、あの売春婦を軽蔑しています」

咲夜「まあ……誇れる商売じゃないわね」

茶屋の娘「それだけではありません……彼女は病気をうつすのです」


「先程出ていった士族様の父親は『飛騨家』当主で、先月、病で亡くなりました。噂では彼女を買っていたとか……」


咲夜「噂でしょ? 実際はどうだか……」

茶屋の娘「噂に『実際』は必要ありません」

咲夜「待って……飛騨家って言ったら、代々稗田家の警護をしている家じゃない?」

茶屋の娘「え、ええ……それが何か……」

咲夜「ありがとう。迷惑料はこれくらいでいいかしら」


2円(4万円)ほど娘に包んでやると、咲夜は足早に店を出た。

お嬢様は美鈴に「人間に紅魔館の素晴らしさを宣伝しなさい」と命じた――。
――飛騨家に何らかの不祥事があれば、それは稗田家の弱みを握ったも同然なのだ。

稗田家は人間の里で最も高名な史学家だ。
紅魔館を宣伝させるには稗田家しかない。
稗田家に近づくチャンスだ。あの売春婦の情報を利用しない手はないだろう。


――――――――――――――――――――――――――――――。


情報屋「売春宿ですかァ?」

咲夜「つまり人間の里で売春婦を管理している場所を知りたいの。売春宿じゃなくても、遊郭みたいな……」

情報屋「んなもんありませんよ……」

咲夜「じゃあ売春婦は何処で春を売ってるのよ」

情報屋「どこって……そこらでヤるに決まってるじゃないですか。多分肥溜めの中でも喜んで腰を振るんでしょうね。不潔なんですよ、あいつら」

咲夜「売春婦と会って話がしたい。彼女たちは何処で寝泊まりしているの?」

情報屋「そこらへんの路地裏です。彼らには住宅の購入権がない。というか人間の里では、売春婦に人権はありません」


咲夜は困惑した。
ここ幻想郷は、文明開化に遅れ、明治の風を残したまま21世紀の壁を越えたのだ。
狭いコミュニティで、思想は歪みに歪んでいた。

性的に健全な社会をつくる為には、性産業従事者の安全を保障する必要がある。
すなわち、『売春のルール』を国家や自治体が制定し、違法な性産業を駆逐しなければならないのだ。

それどころか、人間の里の男たちは――。
内心では売春婦をバカにしつつ、売春婦に好き勝手暴力を振るう傍ら、影では剛直を打ち付けては白いものを吐き出しているのだ。
誰も管理しないから、性病が蔓延する。

その性病を「妖怪の仕業」だと誤認するから、それを治癒する巫女への信仰が高まる。
そして竹林の永遠亭は、あまりにも遠い。よって巫女の1人勝ちという現実――。
売春婦たちに家畜以下の暮らしを与えたのは、博麗の黒幕、八雲紫で間違いない。

――――考えすぎて頭が痛くなってきた。
日も暮れるし、紅魔館に戻ろう。



#6#


パチュリーの所有する図書館は――。
端に立てば、反対側が霧で隠れてしまうほどの面積とされる。

だが実際の面積は、子供が両手を広げて端から端に触れることが出来る程度だ。


この図書館は、重力の流れが緩やかなのだ。
だから、空間が拡散し――。
――そこに緩やかな時間が流れている気がするのも、決して勘違いではない。

――時間と空間は密接につながっている。
重力=空間。
重力=時間。
すなわち、『時間を操る程度の能力』は、空間を超越して作用する――――。

――――だが魔法も奇跡もある世界で、何を不思議に思うのか。


咲夜「パチュリー様……お茶でもいかがですか?」

パチュリー「ああ……ありがと。そこらへんに置いて」

咲夜「……『使い魔の術』と『ゴーレム』の魔導書ですか……両方、私も多少の心得があります」

パチュリー「あら……手伝ってくれるってこと?」

咲夜「ええ。時間に余裕が出来れば」

パチュリー「……良い紅茶ね。紅茶から、淹れる人間の人格や感情が分かると言うけれど……」


「何を焦っているの? 十六夜咲夜…………」


――――――――――――――――――――――――――――――。


稗田家の屋敷。


士族の息子「紅魔館が何やら嗅ぎまわっているようです」

阿求「はて……。ない懐を探られるのには慣れていますが……」

士族の息子「その懐が火薬庫に繋がっていても面倒です。紅魔館の者を尾行しましょうか?」

阿求「ええ。よろしくお願いします」


幻想の観測者、稗田阿求――。
人の持つ時間の流れの中で、短命を約束された少女が呟く。


「人はいつの時代も変わりませんね」


――と。

すみません。
都合により、1ヶ月ほど間を空けます。

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