貴音「愛しのらあめん……くんくん」 (56)

   765プロ いつもの事務所にて

P「いやー、あずささん。今日の仕事は長丁場でしたね」

あずさ「そうですね~。私、お腹がペコペコになっちゃいました~」

P「俺も同じですよ。さーて、事務所に何か食べ物は、っと」ゴソゴソ

あずさ「うーん。冷蔵庫の中は、ほとんど空っぽみたいです」ゴソゴソ

P「マジですか? まいったな……」ゴソゴソ

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あずさ「私、コンビニで何か買ってきましょうか?」

P「いやいやいや! それなら俺が行きますよ!」

あずさ「でもプロデューサーさん、車の運転でお疲れでしょう?」

P「大丈夫ですって! それにもし、あずささんが一人で行ったら――」

あずさ「迷子になって、迷惑をかけちゃいますよね……しゅん」

P「い、いやいやいや! お、俺は、そんなつもりで言ったんじゃ……」

あずさ「うふふ、冗談ですよ。……あら?」

P「ん? 何か見つかりましたか?」

あずさ「プロデューサーさん、コレなんてどうですか?」スッ

P「お! カップラーメンですね」

あずさ「私、たまに無性にカップラーメンが食べたくなるんですよ~」

P「ははは。その気持ち、俺もよーくわかりますよ」

あずさ「ですよね~? うふふ!」

P「名前は『究極の醤油!』と『至高の味噌!』か。食欲をそそられる名前だな」

あずさ「私、いただいちゃおうかしら?」

P「俺も、コイツを今日の夕飯に決めました! あずささん、どっちにします?」

あずさ「私はどっちでも大丈夫です。プロデューサーさん、選んでいいですよ?」

P「うーむ……。それじゃあ俺は、味噌にしようかな?」

あずさ「それでは、私は醤油をいただきますね~」

P「了解です。それじゃあずささん、早速作りましょうか」

あずさ「は~い! えーっと、まずはフタを少ーしはがして――」

   15分後……

P「ふぅ……食った食った」

あずさ「とっても美味しかったです~」

P「ええ。至高の味噌の名は、伊達じゃなかったですね」

あずさ「私の醤油も、まったりしたスープが絶妙な味わいを醸し出してましたね~」

P「お、見事なコメントですね。グルメリポーターのお仕事とか、どうですか?」

あずさ「か、からかわないでください、プロデューサーさん」

P「いやいや、人気が出ると思いますよ? 来週あたり、営業に行ってみようかな」

あずさ「もう、プロデューサーさんったら……」

P「さて、と! 腹も膨れたし、事務処理をもう一頑張りしようかな?」

あずさ「それでは私、今日はこれで失礼しますね~」

P「お疲れ様でした、あずささん。明日もよろしくお願いします」

あずさ「こちらこそ~。プロデューサーさんも、あんまり無理をしないでくださ――」

   ガチャ

P「ん?」

あずさ「あら?」

貴音「た、ただ今戻りました……」ヨロヨロ

P「お、貴音か! お帰り!」

あずさ「貴音ちゃんも、今日は一日中お仕事だったのよね~」

P「今日はゆっくり休んで……って」

貴音「ああ……ああ……」ヨロヨロ

あずさ「プロデューサーさん、貴音ちゃんの様子が……」

P「ええ……。何かあったんでしょうか?」

貴音「うう、うううぅ……うう」ヘロヘロ

あずさ「貴音ちゃん!」

P「お、おい! 貴音!」

貴音「うあ……あ? あずさに、プロデューサー……」

あずさ「貴音ちゃん、大丈夫? 顔が青白いわよ?」

P「どうしたんだ貴音! 具合でも悪いのか!」

貴音「し、心配をかけて申し訳ございません……実は少々……」

P「少々……どうした!?」

貴音「少々、空腹が限界にきておりまして」

P「何だと! 空腹が限界に……って……?」

あずさ「あら~?」

貴音「このままではわたくしは……」

P「……おい」

貴音「わたくしは、気が狂ってしまいます!」

P「おいおいおいおいおいおい!」

あずさ「きゃっ!?」

P「脅かすなよ、貴音! 活動不能になるぐらいの体調不良かと思ったぞ!」

貴音「し、しかしこれは、今のわたくしにとっては死活問題なのです!」

P「だからって、アイドルが気が狂うとか口にしないでくれ!」

貴音「ですが! ですが!」

P「放送コードに引っかかるぞ、ソレ! 色々面倒なことになったらどーすんだ!」

あずさ「ま、まあまあプロデューサーさん……」

あずさ「少し落ち着きましょう?」

P「……は」

あずさ「ね?」

P「す、すみませんでした、あずささん。つい、我を忘れて……」

あずさ「ところで貴音ちゃん、お夕飯は買ってあるのかしら?」

P「お。そういや、見た感じ手ぶらみたいだが」

貴音「だ、大丈夫です。事務所までたどり着いたからには、あとは……」

P「あとは?」

貴音「かっぷらあめん『究極の醤油!』と『至高の味噌!』さえ口にすれば……」

P「それなら、早くそのラーメンを食べて……って、え?」

あずさ「あ……?」

貴音「昨日、買っておいたのです。仕事の後、至福のらあめんたいむを迎えるために」

あずさ「プ、プロデューサーさん……」ヒソヒソ

P「な、何でしょうか、あずささん」ヒソヒソ

あずさ「今、貴音ちゃんが言ったカップラーメン、もしかして……」ヒソヒソ

P「ええ……。もしかしなくても、確実に……」ヒソヒソ

貴音「わたくしは今夜のらあめんたいむを楽しみに、仕事に精を出したのです!」

P「あー、っと……」

貴音「うふ、うふふふ、うふふふらあめんうふふふらあめん」ヨロヨロ

あずさ「えー、っと……」

貴音「……おや?」

P「う!?」ギクッ

あずさ「ど、どうしたのかしら、貴音ちゃん?」

貴音「いえ。少々、面妖なこともあるものだ、と思いまして」

P「め、面妖? 何がだ?」

貴音「わたくしが、今から食べようと思ったらあめんと同じ物が」チロッ

あずさ「あ……!」

貴音「空っぽの状態で、そちらの机の上に」

P「!!」

貴音「プロデューサー……あずさ」チロッ

P「ひゃ、ひゃい!」

あずさ「な、なななな、何かしら~?」

貴音「奇遇ですね」ニッコリ

あずさ「き、奇遇……?」

貴音「まさかわたくしとあずさ達の夕食のめにゅうが、同じ物になるとは……」

P「え?」

貴音「わたくし今日この日ほど、運命を感じたことはありません!」

あずさ「ち、違うの貴音ちゃん! これは!」

貴音「? これは?」

あずさ「あ、あの、その……」

貴音「??」

貴音「ところで、味の方はいかがでしたか?」

P「は、は、そ、そうだな……」

あずさ「と、と、と、とっても、美味しかったわ……」

貴音「やはり! これを選択したわたくしの目に、狂いはなかったようですね」

P「あ、ああ……。それは多分、間違いないよ……」

貴音「ふふ……。ますます楽しみが膨らんでまいりました」

あずさ「あ、あの、貴音ちゃん……!」

貴音「それでは早速、わたくしもいただくことにしましょう」

P「お、おい貴音……」

貴音「確か、向こうに置いてあったはずですが……」フラフラ

あずさ「……あ、あの……貴音ちゃん」

貴音「うふふふらあめんうふふふらあめんうふふふふふふふ」ヨロヨロ

P「……どうしましょう、あずささん」

あずさ「……食べちゃったものは仕方がないです。一緒に謝りましょう?」

P「うーん……。貴音、許してくれるかなぁ……?」

あずさ「それはわかりません。でも……」

P「いずれ……というか、数分後には確実にバレますもんね」

あずさ「でも正直に話せば、きっと……」

P「……わかりました。あずささん、心の準備は大丈夫ですか?」

あずさ「ちょっとだけ、待ってくださいね? すぅー、はぁー……」

P「…………」

あずさ「はい、大丈夫です……」

貴音「らあめんらあめんああらあめん。らあめんらあめんああらあめん――」

P「待ってくれ、貴音!」

貴音「?」ピタッ

あずさ「ごめんなさい……。そこにある空っぽのラーメン、貴音ちゃんのなの……」

貴音「……え?」

あずさ「私とプロデューサーさんで食べちゃったの!」

貴音「な……何と……!」

P「すまん! 悪気はなかったんだ!」

P「俺、コレが貴音のだって知らなくて!」

あずさ「私が見つけて……私が食べようって言いだして……」

貴音「そ……そんな……」

あずさ「貴音ちゃん、本当にごめんなさい! 許してちょうだい!」

貴音「では、わたくしは今から……らあめんを食べることが……できない……?」

P「だ、大丈夫だ貴音! 俺が今すぐ、コンビニで同じものを買って――」

貴音「う、うふ、うふふふふふ……」

P「!?」ビクッ

あずさ「ひっ!?」ビクッ

貴音「ふふふふふ、ふふふふふふふふふふふふ」

あずさ「た、貴音ちゃん……?」

貴音「うふふふふふふ、なあんだ……」

P「ど、どうしたんだ……?」

貴音「美味しそうならあめん、そこにもあるではないですか……」

あずさ「え?」

貴音「うふふ、うふふふふふ……」チロリ

P「お、おい貴音……一体何を言って――」

貴音「うふふふふふ……いただきまぁす!」ダッ

P「うおっ!? 危ない、あずささん!」

あずさ「え、きゃっ!?」

貴音「ふふふふふふふふふふ!」ガシッ

あずさ「きゃ、きゃあっ!?」

P「ああっ!?」

P「あ、あずささんが、貴音に後ろから羽交い締めにされた!?」

貴音「捕まえました……。もう絶対に離しませんよ……うふふふふふふ」

あずさ「た、貴音ちゃん!?」

貴音「愛しのらあめん……くんくん」

あずさ「ひうっ!」ピクッ

P「おうっ!?」

貴音「ああ……」クンクン

あずさ「あ、あんっ!」ピクン

P「あ、あずささん、どうしたんですか! 急に変な声を出して!」

あずさ「プ、プロデューサーさん! へ、変な声とか言わないでください!」

P「す、すみません! でも一体、何が起こったんですか!?」

あずさ「た、貴音ちゃんが! 貴音ちゃんが、私の髪をぉ!」

P「へ?」

P「髪……って?」

貴音「まこと、良い香りです……」スンスン

あずさ「わ、私の髪の匂いを嗅いでるんです~!」

P「髪の……匂いを!?」

貴音「ああ、何という素晴らしき匂い……!」クンクン

あずさ「ぅんっ!?」ビク

貴音「素晴らしきらあめんとは、やはりこうあるべきもの……」

あずさ「プ、プロデューサーさん! 貴音ちゃんに、一体何が!?」

P「い、いや……。俺にも、何が何だかサッパリで――」

貴音「くんくんくんくん」

あずさ「う、ううっ!」ピクッ

P「んほっ!?」

あずさ「は、恥ずかしい……」プルプル

P「これは……エロいな」

あずさ「プロデューサーさんっ!」

P「はっ!? す、すいません! つい煩悩が顔を出して! これは男のサガで!」

貴音「この様な極上らあめんを味わえるとは、わたくしは何という幸せ者……」

あずさ「ラー、メン?」

P「もしや……そうか! そういうことか!」

あずさ「何かわかったんですか、プロデューサーさん!?」

P「おそらく貴音は、空腹のあまり……」

あずさ「く、空腹のあまり……?」

P「あずささんがラーメンに見えてしまってるんです!」

あずさ「え、ええっ!?」

P「間違いありません! 俺には全てわかりました!」

あずさ「そんな、そんなことって……?」

P「何をバカな、と思うかもしれません! しかし! 貴音にならあり得る話です!」

あずさ「ど、どうして!?」

P「男のカンです!」

あずさ「え?」

P「もう一度言いましょう! 男のカンです!」

あずさ「あ、あの……? お、男の――」

貴音「くんくんくんくんくん」

あずさ「ひぃあぁ!?」

P「あ、あずささん! だから、そんなエロい声を上げないでください!」

あずさ「だ、出してくて出してるわけじゃ……」

貴音「ふむ……。少々、らあめんの温度が上がってきておりますね」

あずさ「た、貴音ちゃん、しっかりしてちょうだい! 私はラーメンじゃないのよ?」

P「気を確かに持て、貴音! じゃないと俺が、気を確かに持てなくなりそうだ!」

貴音「これは少しふうふうして、冷ます必要がありそうですね」

あずさ「さ、冷ますって――」

貴音「ふーっ」

あずさ「うっ!」ビクッ

P「んおわっ!」

貴音「ふーふー」

あずさ「あんっ……ああっ!」ビクッ

P「こ、これは……」

貴音「ふーふーふー」

あずさ「やめてっ……貴音、ちゃんっ!」ビクンビクン

P「何という……」

貴音「ふーふーふーふー」

あずさ「んひゃうん! み、耳に……!」ビクッ

貴音「ふーふーふーふーふー」

あずさ「耳に息を吹き込まないでぇ!」ピクピクッ

P「素晴らしい光景だ……!」

貴音「ふぅふぅ」

あずさ「あっ、ダメぇ!」ピクンッ

P「おお……!」

貴音「ふぅふぅふぅ」

あずさ「く、くすぐったい! くすぐったいわ、貴音ちゃん!」ガクガク

P「おおお……!」

貴音「ふぅふぅふぅふぅ」

あずさ「は、はひゃひゃ、ひゃめへ、はひゃ!」プルプル

P「おおおお!」

貴音「ふぅふぅふぅふぅふぅ」

あずさ「は、ひゃひゃひゃふひゃへはへ、ひぃ!」ジタバタ

P「おおおおお!」

貴音「ふーふぅふーふぅふーふぅ」

あずさ「いやぁぁ! プ、プロリューシャーしゃん!」

P「おおおおおお……え、あ?」

あずさ「み、見てないで何とかしてぇ!」

P「す、すみませんすみませんすみません! つい! ついうっかり!」

あずさ「うっかりじゃないですよぉ! ちょ、ダメっ――」

貴音「ふふふふふーふーふふふふふぅふぅ」

あずさ「んくぅっ! ああんっ! は、早くぅ!」ブルンブルン

P「わ、わかりました! 今すぐ……むうっ!」

あずさ「え?」

P「す、すみませんあずささん! 今助けるのは、ちょっと不可能です!」

あずさ「え、え?」

P「体の一部分が硬直して……動きを妨げるんです!」

あずさ「え、え、え?」

あずさ「プロデューサーさん、何を言って……?」

P「あずささん! 俺の一部分の暴れが収まるまで、どうにか耐えて!」

あずさ「む、無理ですぅ! こ、このままじゃ私――」

貴音「ふむ……面妖な事もあるものですね」

あずさ「ひっ!」ビクッ

貴音「このらあめんはふーふーしても、一向に冷める気配がありません」

あずさ「お願いよぉ……正気に戻ってぇ……貴音ちゃん……」

貴音「むしろ、温度が上昇しているような気もいたしますが……はて」

P「ま、そりゃそうだろうね。あれだけ激しく責められたら仕方がないよ」

あずさ「プ、プロデューサーさん!」

P「ひゃい!」

あずさ「まだですか!? まだ動けないんですか!?」

P「た、ただ今鎮静中です! 理性で抑え込んでます!」

貴音「仕方がありません。このまま麺をすすることにしましょうか」

あずさ「え、え、え? 啜る?」

P「まさか――」

貴音「ちゅっ」

あずさ「ひぃあ!?」ビクゥンッ

P「んぐおおっ!?」ブバッ

貴音「ちゅうちゅう」

あずさ「んああああっ、ダメ!」ガクガク

P「……何てこった。ついに決壊しちまった……」ダラダラ

貴音「ちゅうちゅうちゅう」

あずさ「た、貴音ちゃんダメ! それはダメよぉ!」フルフル

P「は、鼻血が……止まらん」ダラダラダラダラ

貴音「ちゅうちゅうちゅうちゅう」

あずさ「く、首筋に……吸い付かないでぇ!」ビクンッ

貴音「ちゅうちゅうちゅうちゅうちゅう」

あずさ「そこは……ダメっ! 私、そこ、弱いからっ……!」プルプル

P「ダメだっ……強力すぎるっ!」ダラダラダラダラダラダラ

貴音「ちゅるちゅる」

あずさ「あうっ……はう……あうんっ……」ビクンビクン

P「それにしても……。これは、あずささんの迂闊だな……」

貴音「ちゅるちゅるちゅる」

あずさ「あひ……ひぃあ……」ガクガク

P「昔みたいなロングヘアなら、こんな目に遭う事はなかったってのに……」

貴音「じゅるじゅる」

あずさ「んひゃあ! く、くすぐったい! 舐めちゃイヤぁ!」ガクガクガク

P「後悔しても後の祭り、か……」

貴音「じゅるりじゅるりじゅるり」

あずさ「も、もう限界! ああ、ああああああっ!」ジタバタ

貴音「じゅるりじゅるりじゅるりじゅるり」

あずさ「た、助けて! 助けてぇプロレウサーしゃぁん!」ジタバタ

P「無茶を言わないでください! 俺は男なんです!」

あずさ「ど、どうして性別が関係あるんですかぁ!?」

P「だって! だってしょうがないじゃない!」

貴音「じゅるりじゅるりじゅるりじゅるりじゅるり」

あずさ「いやああああ! 誰かぁ! 誰か助けてええええぇ!」ガクガク

P「くそっ……一体どうすりゃいいんだ!」

貴音「れろれろれろんれろん」

あずさ「はひゃひゃひゃ! はうあうあう……っ!」ドタンバタン

あずさ「貴音ちゃんやめてぇ! やめてちょうだいぃ!」ジタバタ

P「この状況を打開するには、第三者に介入してもらうしか――」

   ガチャ

律子「ただ今帰りましたよー……って」

貴音「れろれろれろれろ」

あずさ「ああん! ああ! ああ! あはああああんっ!」ブルブルブル

律子「何……これ……?」

P「おお! 神様、仏様……いや、律子か! 助かった!」

律子「プロデューサー!? これは一体、どういうことなんですか?」

P「詳しい事情は後で話す! 貴音を止めてくれ!」

律子「止める!?」

P「何でもいい! 貴音の口に、食べ物を放り込むんだ!」

律子「はあ!?」

P「頼む! このままだと、この場にいる三人とも、理性がヤバいんだ!」

律子「状況はサッパリですけど、非常事態のようですね!」

P「ああ! 特にマズイのは俺だ! どうにかなっちまいそうなんだ!」

律子「…………。あずささん、今助けます!」ダッ

P「え? その、あの、俺は」

律子「しっかりしなさい、貴音!」

貴音「ぺろぺろぺろぺろぺろ」

あずさ「んひゃあ! はううっ!」ガクンガクン

律子「確かに、コレは普通じゃないわね……」

律子「……なら!」サッ

P「おお! 律子が胸からナニかを出したぞ! 胸からナニかを!」

律子「変な言い方しない! さっき買ってきたお煎餅ですよ! それっ!」ポイッ

貴音「んむっ!?」モグッ

P「よし、やったぞ!」

貴音「むぐむぐもぐもぐ……」

あずさ「はひひひひ……あ?」

貴音「……おや? ここは……」

P「正気に戻ったか、貴音!」

貴音「わたくしは一体……? む、あずさ!?」

あずさ「ひぃはぁ……た、たしゅかったわ……」ガクリ

貴音「あ、あずさ! 気を確かに!」

あずさ「は、はふはへはへ……」ガクガク

P「ふぅ、どうにかなったか……。助かったよ、律子」

律子「さて、プロデューサー。どういうことなのか、説明してもらいますからね」

P「あ、ああ。もちろんだ。もちろんだとも」

律子「プロデューサーが大量に鼻血を出している理由も含めて、ですよ?」

P「スルーしたいんですが」

律子「無理な相談ですね」

P「りっちゃんのいけず」

律子「りっちゃん言うな!」

   5分後……

P「……というわけなんだ」

律子「なるほど。大体の事情はわかりました」

貴音「申し訳ありませんでした……。わたくし、あずさに酷いことを……」

あずさ「いいのよ、貴音ちゃん。それに、謝らないといけないのは私の方だわ」

貴音「え?」

あずさ「貴音ちゃんの楽しみを台無しにして、本当にごめんなさい」

貴音「あずさ……ですが――」

P「あずささんの言う通りだ。貴音が謝る必要なんて、これっぽっちもないさ」

律子「むしろ、プロデューサーはあずささんに謝るべきです」

P「お、俺が!?」

P「ど、どどどどうして!?」

律子「どうして!? じゃありません! どう考えても、私が来る前に助けられましたよね?」

P「だって俺、男の子だもん! しょうがないもん!」

律子「しょうがなくありません! 全く、煩悩丸出しなんだから……」

P「なら律子、俺からも言わせてもらうがな!」

律子「何をですか?」

P「さっきのあずささんと貴音の立場が、俺と社長に置き換わったらどうだ!?」

律子「は?」

P「お前は俺と社長の濃厚な絡みを前に、理性を保てるとでも言うのか!?」

律子「……保てないとでもお思いですか?」

P「……ごめんなさい」

律子「わかれば結構です」

P「あずささん、申し訳ありません……」ペコリ

あずさ「い、いえいえ~」

P「大変すみませんでした……」ペコペコ

あずさ「い、いいんですよ! あ、でも……」

P「でも?」

あずさ「さっきの姿、なるべく早く忘れてくださいね……?」

P「善処します。無理だったらごめんなさい」

あずさ「あ、あらあら~」

律子「はぁ……。ウソでもいいから断言してくださいよ、全く……」

あずさ「ところで、貴音ちゃん。今夜、これから時間はあるかしら?」

貴音「ええ……。今宵は特に予定はありませんが……何か?」

あずさ「よかったら、これからお店にラーメンを食べに行かない?」

貴音「何と! まことですか!」

あずさ「もちろんよ~。貴音ちゃんの好きなお店なら、どこでもお供しちゃうわ~」

貴音「しかしあずさは先ほど、その……。も、もう済ませているのでは?」

あずさ「私は貴音ちゃんの注文したラーメンを、ちょっとだけもらえれば大丈夫よ~」

貴音「あずさ……」

あずさ「ね? 一緒に行きましょ?」

貴音「……はい! わたくしでよければ、喜んで!」

あずさ「うふふ! あ、律子さんも一緒にどうですか?」

律子「あら、いいですねー。もちろん、プロデューサーも来ますよね?」

P「え、俺も!?」

律子「当然です。運転係がいないと、困るじゃないですか」

P「もしかして、俺アッシー役!?」

律子「もちろんお財布係も担当なんで、そのつもりで」

P「しかも俺が奢るの!?」

律子「さっき、どれだけイイ思いしたと思ってるんです? 鼻血までダラダラ流して」

P「ぐ……」

律子「それに比べれば、ラーメン代ぐらい安いものじゃありませんか?」

P「ぐむむ……」

律子「私は自腹を切るんでご安心を。でも、貴音の分は払ってあげてくださいね?」

P「け、けど俺、これからもう少し仕事しようと思ってる――」

貴音「あなた様……共に来てはいただけないのですか?」

あずさ「あらあら、どうしましょう~?」

P「た、貴音? あずささん?」

貴音「わたくしのらあめん、食べてしまわれたというのに……くすん」

P「うっ!?」

あずさ「私の恥ずかしい姿、見られちゃったんですよね……ぐすん」

P「わわわわ! わかった! わかりましたよ!」

あずさ「あらあら、本当ですか~?」

P「ホントですホント! 行きます! 行きますって!」

貴音「ふふ……! お心遣い、痛み入ります」

律子「あはははは! どうやら、プロデューサー殿の負けみたいですね!」

P「ええい、こうなりゃヤケだ! 貴音!」

貴音「は、はい!」

P「今夜は好きなだけ食え! 全額、俺が出してやるからな!」

貴音「そ、それはまことですか!?」

P「おう! 俺に任せとけって!」

貴音「あなた様……。ありがたき幸せ……!」

あずさ「うふふ! よかったわね、貴音ちゃん!」

律子「……あーあ、言っちゃった。知ーらない、っと」



   数時間後……

とあるラーメン屋には、レジの前で滂沱の涙を流す、一人の男の姿があったという……。



   おしまい

以上になります。

OFAで念願の年長組トリオを組めるようになった記念に、書いてみました。

年長組って素晴らしいよね?

最後まで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。

最後にりっちゃん、誕生日おめでとう!

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