モバマス方丈記 (67)

・このSSは、鴨長明(かもの ちょうめい)の「方丈記」をベースとしています。

・作者独自の解釈や、脚色が含まれます。ご了承下さい。

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鴨長明(白菊ほたる)「ああ、どうして人生はこうも、上手くいかないんだろう……」

ほたる「家族を失い、家を失い、財産もありません。いつもそうです。
    私の身の回りでは、どうしてこんなに不幸なことが続くのでしょうか?」

ほたる「もういい……
    私がいても皆に迷惑かけるだけだろうし、ひっそりと山奥で隠棲しようかな」

~日野(ひの)~


ほたる「よいしょ、よいしょ……ふう、こんな感じで良いかな?
    大きな家は建てられなかったけど、一人で住むんだからこれで良いよね」

ほたる「新しい隠居生活の始まりだし、この庵に名前をつけてみようかな?
    う~ん、そうだ! 庵の四方の大きさがちょうど一丈だから、
    『方丈庵』って名づけよう!」

~数日後~


ほたる「あこがれの隠居生活を始めてみたものの、やっぱり暇だなぁ。
    どうしようかな、里に下りてみようか?
    いやいや、いま世間は物騒って言うし。
    私が里に下りたら、とたんに山賊とかに襲われたりして……」

ほたる「仕方ない。暇つぶしに何か書こう。題名は……『方丈記』
    これでいいや。この方丈庵で書いてるんだから」


 『行く河の流れは絶えずして』


川というものは、常に流れています。
前にいた水が、後ろからやってきた水に押し流されて、同じ位置にとどまることはありません。


そして、その流れに浮かんでくる泡にも注目してみましょう。
泡は現れたと思ったら、一瞬で消えてしまいます。
やはり、同じ位置にとどまることはありません。


これが『無常』というものなのです。

大金をつぎ込んで手に入れたアイドルの、
月日とともに価値が下落していく様と、よく似ているように思います。


18コスを手に入れたと喜んでいたら、19コスが登場したり……
そういえば最近、ついに20コスも出現したとか。


逆に、ボイス化などで、価値が上がったりすることもありますよね。


 『玉敷の都のうちに』


都会には、美しく立派な建物が多く並んでいます。


しかし数十年経てば、どうなるでしょう。
その頃には、多くの建物が消えてなくなっているはずです。
または、新しい建物が建ったりもするでしょう。


これは建物だけの話ではありません。人もそうです。
数十年も経てば、その町に住む人の顔ぶれは、
大きく様変わりしているのではないでしょうか。


あなたの周りにもいませんか?


毎日ログインしていたのに、それが数日に一回になり、
やがてはログインしなくなったプロデューサーさん。

または、いつの間にか解散していたプロダクションなど。


 『知らず、生まれ死ぬる人』


いつかモバマスはサービスを終了し、
そしてプロデューサーさんやアイドルたちの命にも、終わりがくるのです。

なのにどうして、課金をしてまで新アイドルを手に入れたがるのでしょう?


 『予、ものの心を知れしより』


私が物心つくようになった頃からでしょうか?
なぜか世間では、ありない事件や災害が起こりました。


本当に不幸です……


 『去安元三年四月廿八日かとよ』


あれは、4月28日のことでした。


その夜は強い風が吹いていて、どうにも眠れなかったんです。

そしたら午後8時頃、京の東南の方角から出火して、北西へと燃え広がっていきました。
ついには皇居の朱雀門や大極殿、大学寮、民部省にまで延焼して、
一晩で全て灰になってしまったんです。


 『火元は、樋口富の小路とかや』


出火は、樋口富小路とのことでした。
旅芸人さんが宿泊していた旅館から、失火したらしいです。


折りしも強風が吹き荒れ、四方八方に飛び火していきます。
現場から離れた家は、煙に巻かれるだけでしたが、近くの家々は炎に覆われました。


その時、風がものすごい勢いで、炎を地面に叩きつけました。

灰が空に吹き上げられ、それが炎に照らされて、空が燃えているように見えます。
しかも、舞い上がった火の粉が風に飛ばされ、数百メートル先まで飛び火しました。
近くの住人は、生きた心地もしなかったでしょう。


ある人は煙に咽び、気を失って倒れました。

ある人は炎に目がくらみ、逃げ場を失って焼死しました。

ある人は逃げおおせたものの、財産の全てを失ってしまいました。



この火災で、京の三分の一が焼けたと聞きました。
死者は数十名、または数百名といわれていますが、
どれだけの被害がでたのか、詳しいことは分かっていないそうです。


 『人のいとなみ』


人間のやることなすことは、実に愚かなものです。
豪勢な屋敷を建てたところで、災害が起これば一晩でなくなってしまうのに。


 『また、治承四年卯月のころ』


あれも4月のことでしたか。
中御門京極付近で竜巻が発生して、六条大路まで吹き抜けたことがありました。


 『三、四町吹きまくる間に』


3、400メートルを竜巻が吹き抜ける間、襲われた家屋は全て破壊されてしまいました。
押しつぶされてしまったものや、柱しか残っていない家もあります。


さらに竜巻は、門をそのまま吹き飛ばし、数百メートル離れたところに落下させました。
ある家は粉々になり、さながら隣り合った二軒が一軒になってしまったり、
隣家との境界である垣根が吹き飛ばされたりしたのです。


言うまでもありませんが、建物でさえこの調子なので、
家財道具などは木の葉のように吹き上げられています。
まったく視界がききません。
それに轟音が鳴り響いているので、人の声も聞こえません。


地獄の風とは、この様なものかと思いました。


 『辻風は常に吹くものなれど』


竜巻自体は珍しくありませんが、これほどの被害が出たことはあったでしょうか?
神様が怒ってるのでは、と思わず考えてしまいました。


 『また、治承四年水無月のころ』


まだまだありますよ。6月です。


いきなり首都が遷都されてしまいました。福原(ふくはら)に遷すのだとか。
これは、平清盛(たいらの きよもり)とかいう成り上がりの武士の独断専行です。



首都を遷すということは、何か重大な理由があってこそなのに……
これだから私は、平家が大っ嫌いなんです!


 『されど、とかく言ふかひなくて』


とは言うものの、お上が決めたことですから仕方ありません。
帝はもちろん、公家のみなさんも、ぞろぞろと京を出て行きました。


出世を望む人は、すぐに京からいなくなり、
時流に乗り遅れて希望を失った人は、そのまま京に居残りました。


日に日に京は荒廃していきます。
家々は取り壊され、筏や船に載せられて福原まで運ばれて行きましたし、
一方更地になった場所は、耕地として耕されることになりました。


 『その時、おのづからことの便りありて』


しばらくして、私も福原に行ってみることにしました。

あれだけ家を壊し、木材を運び込んだのだから、
さぞかし多くの家々が立ち並んでいると思いきや……


全く何もありません。
ところどころに、家や屋敷が建っているだけです。
さすがに皇族や公家の屋敷はありましたが
町人たちは、粗末な小屋に身を寄せ合っているにすぎないのです。


京は寂びれ、福原は何も無い。
旧都にも新都にも、人々の居場所はありませんでした。


 『伝え聞く、いにしへの賢き御世には』


これは人から聞いた話なのですが、名君が国を治めるとき、
国民には愛情を持って接したとか。


宮殿は質素な造りにし、決して豪奢な暮らしはせず、
町の炊煙が乏しいときは、できるだけ減税したといいます。


これは社会保障制度の充実を図ったものですが、
このように人民のための国づくりを行った昔と比べれば、いまの政治がどれだけひどいものか、
おのずと分かるというものです。


 『また、養和のころとか』


これは随分昔のことなので、あまり良く覚えていませんが、
二年間も大規模な飢饉が続いたことがありました。


その年は春と夏に雨が降らず、翌年は秋に台風・洪水が発生するなど、
次々と災害にみまわれたのです。

いくら畑を耕そうが、全く実りはありませんでした。


 『これによりて、国々の民』


この飢饉が原因となり、耕地を放棄し、流民となる人々が後を絶ちませんでした。


もちろん、朝廷も座視していたわけではありません。
馬鹿馬鹿しい話ですが、各地の寺で祈祷が行われました。

全く効果が無かったのは、言うに及ばずです。


そもそも京は消費型都市であるため、物資の供給を地方に頼っています。
その地方の生産力が落ちているとなれば、いくら公家でさえも、
食べ物が無くなるのは必然です。


公家の中には、家宝を売ったりする人もいたようですが、
食べられないものを買う人はいません。

もし売れたとしても、買い叩かれたのだと聞きました。


 『前の年、かくのごとく』


それでもなんとか、その年はしのぎました。
誰もがこれで良くなると思っていたのですが……


今度は疫病でした。
公家の人々も町を練り歩き、乞食同然に食べ物を恵んでもらっていたのです。
市中のあちらこちらで餓死者の遺体が放置され、
誰も処理しようとしなかったために、京は腐臭で溢れかえりました。


どんな災害がおきても、貧乏生活には強い人たち―農民の方たち―も、
力尽きて倒れる人が大勢出たのです。

薪が無いので、自分の家を取り壊して薪にする人もいました。


極めつけは、寺や神社が荒らされたことでしょうか。
仏像・仏具は勿論、赤い丹が塗られた柱までも、薪として使われる始末でした。



私はこんな世の中に生まれ、人間の最も醜い姿を見ることになったのです。


 『また、いとあはれなることも侍りき』


こんな中、人間の愛の深さを知ることもできました。


仲の良い夫婦は、必ず愛情の深いほうが先に死にました。
相手に食べ物を優先したからです。

親は子供に優先して食べ物を与えたため、親が先に死ぬことが多く、
赤ん坊にお乳をあげたまま、死んでしまう母親もいました。


 『仁和寺に隆暁法印という人』


仁和寺(にんなじ)の隆暁(りゅうぎょう)法印は京を巡り、
遺体の額に梵字の阿(あ)を書き、成仏できるように祈りを捧げました。


死者の数を調べたところ、全部で4万人を越えていたそうです。
もちろんこれは、京だけの話ですから、全国では数えきれないほど人が死んだのでしょう。


 『崇徳院の御位の時』


崇徳院(すとくいん)が在位していた時も、空前絶後の飢饉が発生したと聞きました。
その当時の様子はわかりませんが、おそらく今回の飢饉と同じような状況だったのでしょう。


 『また、同じころかとよ』


ええと、これを読んでいる人は「一体どれだけ災害が続いたんだよ」
と思うかもしれません。

ですが、まだあるんです。
今度は地震でした。


この地震は、この世のものとは思えませんでした。
大地が割れ、津波が押し寄せ、土砂が流れて河は堰き止められ、
海岸の船は砕け、歩いている人も馬も棒立ちになったのです。


都では、無傷は建物は一つもありませんでした。
家の中にいると圧死する危険がある。
かと言って外に出れば、地割れに巻き込まれます。


災害のなかで一番恐ろしいのは、地震だと思いました。


 『その中に、ある武者のひとり子の』


被災者の中に、ある武士の6、7歳ほどになる男の子がいました。
その子は崩れてきた土塀に押しつぶされ、
掘り起こしたとき、両眼が飛び出していたのです。


勇猛な武士といえども、人間です。
両親は号泣しながら、いつまでも男の子の亡骸を抱きしめていました。


その様子を見ていた私は、胸を抉られる気分になったものです。


『かく、おびただしく震ることは』


巨大な揺れは短時間で収まりましたが、大きな余震は続きました。
初めは日に何度も揺れていたのが、
一日一回になり、数日に一回になり、徐々に減っていったのです。


およそ三ヶ月ほど、余震が続きました。


 『四大種の中に』


仏教では、万物を生み出す要素として『地・水・風・火』の四つを挙げています。


水・風・火は、それぞれ洪水・台風・火事の種であるとして、
人々から嫌われてきました。

一方、地はどっしりと構えているように見える。
だから災害を起こすことはないとして、地震を警戒することはなかったのです。


ある時、地震で奈良の大仏の首が落下するという事件もありました。
人々は当初、地震の怖さを語りあっていましたが、数ヶ月も経てば、そんな話をする人もいなくなりました。
人間とは、年月とともに恐怖を忘れてしまう生き物のようです。


ちなみに、蘭子ちゃんに仏教の四元素の話をしたら、目を輝かせながら


「ほう、なかなかやるではないか。しかし我は現世にて、光と闇を操るぞ」

(私はステージでは、白い衣装や黒い衣装を中心に着ます。もっとバリエーションが欲しいな)


と言っていました。何を言っていたのかは、わかりません。

熊本弁って難しいですね。


 『すべて、世の中のありにくく』


いままで長々と災害の例を挙げてきましたが、
要するに、生きていくということは大変なことなのです。


災害だけではありません。
身分・境遇によって、人生とは煩雑な苦労にまみれているものです。


アイドルの育成・親愛度上げ、イベント攻略、フリートレード、関連アイテムの収集、そしてガチャ。

プロデューサーの皆さんも、随分苦労をなさっているようです。


 『もし、おのれが身、数ならずして』


たとえば、自分は取るに足らないプロデューサーなのに、
有力なプロダクションに所属しているとしましょう。

もしイベント上位に食い込み、プロダクションのランキング報酬を受け取ったとしても、
あまり素直には喜べないはずです。

もしかしたらポイントが少なすぎて、報酬の質が下がってしまうかもしれません。
下手をすると、貰えないのかもしれませんね。


それに、プロメンさんが人気アイドルの肩書きをいくつも持っており、
自分は、フリトレ相場の安いアイドルの肩書きしか持っていないとすれば、どうでしょう?
周りの目を気にして、恥ずかしい思いをしたりしませんか?


人間は生きている限り、どうでも良いことにがんじがらめにされているのです。

誰との交流も断ち、一人で生きていく場所はないのか。
残念ながら、この世にそんな場所はありません。


 『我が身、父方の祖母の家を伝へて』


ここで私の身の上について、話をします。

私は、とあるプロデューサーさんの下でアイドルをしていました。
フリートレードで売られていたところを、引き取ってもらったんです。

しかし、プロデューサーさんは、同じプロダクションの人たちと仲たがいをし、
独立して新しいプロダクションを創設しました。


その新しいプロダクションは、所謂ぼっちプロというもので、
プロメンはプロデューサーさん一人だけです。

トレーニングルームを始め、各種施設もそろっていないプロダクションで、
これでは以前のような活躍はできません。


プロデューサーさんは寂しく、「気楽で良いさ」とつぶやいていました。


 『すべて、あられぬ世を念じ過ぐしつつ』


ある日、プロデューサーさんから別れを切り出されました。
あれから気丈に振舞っていましたが、とうとう耐え切れなくなったのでしょう。
引退する、とのことでした。


プロデューサーさんは、私にこれからどうしたいのかと尋ねましたが、
私は答えることができませんでした。


最終的に、またフリートレードに出されるのかと思いきや、
プロデューサーは何も言わずにログインしなくなったのです。


寂れたプロダクションに一人残された私は、出家することに決めました。


その後、大原山(おおはらやま)に庵を結んだものの、
とくに悟りを開けるわけでもなく、ただ月日を重ねるだけでした。


 『ここに、六十の露消えがたきに及びて』


大原山から日野に移ってきた私は、ここを終の棲家とすることに決めました。


庵も改良したんですよ。
柱や梁などの部材の継ぎ目には掛け金をつけて、その土地で土台を組み、
屋根を葺けば簡単に組み立てられるようにしました。
これなら、もし何かあれば、すぐに引越しできますよね。


この「庵セット」を荷車に積んでも、たった二台分にかなりません。
引越し費用は、運送代だけで事足ります。


 『いま、日野山の奥に』


では次に、この庵の間取りをご紹介します。


まず庵の東側に小屋を作り、炊事場としました。
ここでお料理をするわけです。
庵の南側には、縁側を作りました。

部屋の中ですが、北西の端に神棚を設置。
その上には、NG三人組のフィギュアを安置しています。

神棚の側に、選抜されたキュートアイドルのタペストリー(私のものはありません)を掛け、
その前には文机を置きました。


文机の上には、各種データの書類の束が置いてあります。

その他、南西の隅には、夏樹さんから頂いたギターが立てかけてあり、
暇なときは練習をしたりもするんです。


だいたい、こんなところでしょうか。


 『その所のさまをいはば』


では次に、庵の周囲の様子です。


まず南側には、樋を渡しており、岩の囲いの中に水が溜まるようになっています。
庵のすぐそばに林があるので、薪には不自由しません。


庵の西は開けているので、四季折々の風景が楽しめます。
春には藤の花を見ることができ、そして夏にはホトトギスと会話し、
もし私が死ぬことになったら、冥土の道案内をして欲しいとお願いします。


そして、秋にはヒグラシの鳴き声を楽しみ、冬には雪景色を楽しんだりしますね。


 『また、ふもとにひとつの柴の庵あり』


こんな生活をしていても、友達がいないというわけではありません。
山の麓には番小屋があり、その家の男の子が、
よく私の庵に遊びに来てくれます。

彼はプロデューサーを目指しているので、私はできる範囲で、
アドバイスをしてあげるのです。


MMアイドルのほうが強いけど、まったりプレイするなら別にこだわらなくても良いんだよ、とか。

ガチャはやめ時が肝心だけど、当たるまで回せばそれは爆死じゃないんだよ、とか。

デバフスキルは、相手に嫌がられるから考えものだよ、とか。



そんな初歩的なことです。


 『おほかた、この所に住みはじめし時は』


この庵には短期間だけ住むんだと思っていたら、結構な月日が流れてしまいました。
あるとき、旅人さんから世間の様子を聞くことがあったのですが、
なかなか大変なことになっているようです。


増えるイベントの種類。
同じイベントでも、回数を重ねるにつれて上昇する、上位ボーダー。
第三回総選挙も開催されたそうですが、新登場のアイドルが圏内に入ってきたのに、
声付きでも圏外になったアイドルがいたり……


それにくらべて、この庵はなんと平和なことでしょう。


皆さんは、ヤドカリという生物をご存知でしょうか?

ヤドカリは自分の体にぴったり合う殻を棲家とします。
これは、ひとり分しか場所がない家であれば、他人の干渉を許さず、
自分の身を守りやすいためである、と聞きました。


ですから、悩めるプロデューサーさんも、
ぼっちプロを立ち上げてみてはいかがでしょう?

イベントやプロメンさんたちにも気を使わず、優雅に過ごせると思いますよ。


 『それ、人の友あるものは』


友達というものは、困ったときには協力してくれて、嘘をつかず、
思いやりのある人を選ぶべきだと思います。しかし、現実にはそんな人はいません。

ではどうすれば良いのか。
あらゆることを、自分でこなせば良いのです。


たとえば、給料を払って誰かを部下として雇っても、
怠けるかもしれないし、裏切るかもしれません。

ならば、自分でやるとどうなるのか。
怠けるかもしれませんが、それは心身の管理ができているということですから、
自分に負担をかけるということはありません。

もちろん、自分を裏切るということもありませんね。


食物や衣服も自分で作りましょう。
粗末なものでも、他人と関わらないので、他人の目を気にする必要がありません。
食物は手に入りにくくなるので、かえって美味しく感じます。
衣食は粗末なものに限りますね。


別に「贅沢は悪だ」、と言っているわけではありません。
世間で暮らしていたときの私と、俗世から離れて暮らしている私を、
比較してみただけのことです。


 『おほかた、世を逃れ』


俗世を離れてからというもの、私は誰かを恨んだり、
恐れたりすることがなくなったと思います。
それに、将来のことも考えてはいないので、ありのままの自分でいられるんです。


私の人生の楽しみといえば、好きなときに寝て、自由を謳歌することでしょうか。


 『それ、三界は、ただ心ひとつなり』


人間の世界は、心の持ち方一つでどうにでもなります。


この前、町へ遊びに行ったとき、世間の人々はなぜ、
こんなにしがらみに惑わされているのだろうと、気の毒になりました。


まあ、お金持ちの人から見れば、私の言っていることは負け惜しみに聞こえるかもしれません。
ですから、私の考えが理解できない人は、次の様に考えてみて下さい。


魚は、水の中で満足に暮らしていますが、
それは、水の中で生活してみないと良さはわかりません。

また、鳥は森の中で暮らしていますが、
それは、森の中で暮らしてみないと良さは分かりません。


どうでしょうか?


 『そもそも、一期の月影傾きて』


私は最近こう思います。
「執着心を捨てよう」と。


人間はいつか死ぬんです。
ですから、過去の失敗を悔やんだところでどうにもなりません。


「ああ、あのアイドルを自引きできなかった」とか、

「上位報酬取れなかった」とか、



そんなことを考えるのは、もうやめませんか?


 『静かなる暁』


ある日、明け方にうとうととしながら、こんなことを考えました。


「俗世から離れて、ものに執着心を持たなくしたのに、どうして悟りを開けないのだろう?
 もしかしたら、私の頭がおかしいからかな?」


そうすると口が勝手に、



『南無阿弥陀仏』

(あぁ・・・あぁ・・ この画像を保存すれば良い話・・のはず)



と唱えていたんです。
それを二、三回唱えると、眠りにつきました。


『時に、建暦の二年、弥生のつごもりごろ、桑門の蓮胤、外山の庵にして、これを記す』

(1212年の三月下旬、蓮胤が、外山の庵にて、これを書きました)


※蓮胤(れんいん)…鴨長明の法名。




おわり

・読んで下さった方、ありがとうございます。

・方丈記は全体の文章量が少ないので、古典をあまり読まない人や、
 古典初心者にもとっつき易いと思います。
 そんなに難しいことも書いてませんから。

・ちなみに、作者はぼっちプロです。


以下は作者の過去作です。
歴史ものですが、興味のある方はどうぞ。


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