凛「アイドルだって。すごいねハナコ」 (35)

『100人以上の女の子から〜、選んでっ!』

『よろしくお願いしますぅ!』

『うぅ〜んっ、選んでっ!』

『ワンッ!』

『君だけのアイドルをプロデュース!アイドルマスター、シンデレラガールズ!』

『モバゲーで検索!』

凛「ふーん。ゲームのCMにも出てるんだ」

ハナコ「わふっ」

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凛「(私は渋谷凛、15歳。実家は花屋)」

凛「(家の手伝いをしていたある日、その人は私の前に現れた)」

凛「(彼は一言『アイドルをやらないか?』と私に尋ねてきた)」

凛「(私が答えに迷っていると『大丈夫、彼女なら間違いなく売れる』と後押ししてきた)」



凛「(その彼女は今、私に抱かれながら事務所に入ろうとしている)」

凛「(通学のついでに彼女の送り迎えをするのが、私の仕事)」

凛「(………どうしてこうなったのか、正直私にもよく分からない)」

ガチャッ

凛「おはようございます」

P「渋谷さん、お待ちしてましたよ」

凛「ほら、着いたよハナコ」

ハナコ「ワンワンッ!」ペロペロ

ちひろ「はい、おはようハナコちゃん」

P「ハハハ、おはようハナコ。今日も元気だな」

凛「(……どうもプロデューサーさん達には、ハナコが何を言っているのか分かるらしい)」

凛「(飼い主の私には全然分からないのに。不思議なこともあるものだ)」

凛「じゃあ私はこれで」

P「あぁ渋谷さん、ちょっと」

凛「?」

P「今度、彼女の初ライブをやる予定なんですよ」

凛「ライブですか?」

P「えぇ。ですからこのチケットをどうぞ」スッ

ちひろ「最前席なんですよ。是非見にいらして下さいね」

凛「(飼い主の特権だろうか、タダでライブチケットをもらえた)」

凛「(ライブのある日は丁度学校も休みなので、私はハナコの晴れ姿を見にいく事にした)」

〜ライブ当日〜


ガヤガヤ ザワザワ


凛「(初ライブとはいえ、周りは満席状態に近い)」

凛「(それだけハナコに人気があるって事なのかな)」

P「よーし、行くぞハナコ!」

ハナコ「ワンッ!」

凛「(あ、ハナコだ)」



みく「ふっふっふ……カモがネギしょってきたとは、この事にゃ〜♪」

P「前川みく、君にLIVEバトルを申し込む!」

みく「ここはみくのホームにゃ。アウェーでLIVEバトルを仕掛けるその愚かさ……」

みく「存分に思い知らせてやるにゃ〜!」クワッ

ハナコ「ウウウ〜……!」

みく「フシャー!!」



凛「(ハナコと前川みくと呼ばれたアイドルは、互いに威嚇し合っている)」

凛「(……確か私はライブを見に来たはず……なのだが)」

P「……足だ!特訓の成果を見せろ、ハナコ!」

ハナコ「ワンッ!」

みく「にゃっ!?」


チョロロロロロロロロロロロロロ…


みく「」ビチャビチャビチャ

ハナコ「………わふっ」ブルルッ

P「決まった……!」

凛「えっ」

「前川みく、戦意喪失によりライブ続行不可能と見なし、勝者渋谷ハナコ!」


ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!


凛「(ハナコが彼女の足にマーキング……と言うか、粗相をした)」

凛「(周囲で歓声が上がる……え?勝ち?……一体何に勝ったのこれ?)」

P「よくやったな、ハナコ!」

ハナコ「ワンッ!」

みく「よ、汚された……みくが、みくが汚されちゃったにゃあ……」ヘナヘナ

凛「(——ハナコの初ライブから半月程経ったが、私の近況は特に何も変わっていない)」

凛「(あれからハナコは順調に仕事をこなしているらしく、TVでの露出も徐々に増えてきた)」

凛「(先程見たCMも、きっとその一つなのだろう)」

凛「(……ライブの内容はともかくとして、ハナコの活躍は飼い主の私としては誇らしい限りだ)」


ガチャッ

凛「おはようございます」

奈緒「おう、おはよっす……ってあんた、見ない顔だな」

奈緒「もしかして、渋谷ハナコ?」

凛「いえ、違いますけど。ハナコはこの子です」

奈緒「そ、そっか。ならいいんだ……えっ?」

ハナコ「ワンッ!」


ガチャッ

加蓮「ねぇ、ちょっと!本気で言ってるの?」

P「あぁ、本気も本気だ。今日からは、彼女達と一緒にユニットを組んでもらう」

加蓮「彼女達って……」

奈緒「よぉ、加蓮」モフモフ

ハナコ「ワンッ!」

凛「おはようございます、プロデューサーさん」

P「あぁ、おはようございます渋谷さん。丁度今彼女に説明をしていたところでね」

加蓮「……ふーん」マジマジ

凛「……私に、何か?」

加蓮「奈緒はともかく、この子と会うのは初めてなんだけど」

P「そりゃそうだ、今週まで活動時間が違ったんだからな」

奈緒「お、おいバカッどこ舐めて……や、やめあはははははははっ!」モフモフ

P「さっきも言った通り、加蓮、奈緒……そしてハナコの三人で活動していくからな」

P「ユニット名は……」

ハナコ「ワンッ!」

P「あぁ、そうだ」

奈緒「へぇ、いい名前じゃん」モフモフ



凛「え?……い、今何て?」

加蓮「トライアドプリムス。ちゃんと人の話くらい聞いときなよ」

凛「(人の話と言うか、犬の話と言うか……)」

加蓮「……って言うか、想像してたのと全然違ったなぁ。結構普通なんだね」

凛「えっ?」

加蓮「アンタが渋谷ハナコなんでしょ?噂は聞いてるよ」

凛「……噂?」

加蓮「なんでも初ライブで、前川みくを立ちションで退けたアイドルだとか……」

凛「いや、全然まったく違いますけど」

加蓮「えっ?」

奈緒「ハナコはこっちだよ、加蓮」モフモフ

ハナコ「ワンッ!」

加蓮「!?じゃ、じゃあアンタは……?」

凛「私はハナコの飼い主です」





加蓮「冗談でしょ?正気?」

P「さっきから何度も言ってるだろう、本気だと」

http://i.imgur.com/FWXxLLY.jpg
http://i.imgur.com/gopelBr.jpg
渋谷凛(15)

http://i.imgur.com/zf4FMrn.jpg
http://i.imgur.com/Y4Hihtv.jpg
前川みく(15)

http://i.imgur.com/aWgbro6.jpg
http://i.imgur.com/CQL8CEV.jpg
神谷奈緒(17)

http://i.imgur.com/op7KzVz.jpg
http://i.imgur.com/QYBzjSK.jpg
北条加蓮(16)

加蓮「犬と組めって言うの!?」

P「彼女の実力は本物だ。俺が保証する」

加蓮「いや、実力以前の問題だと思うんだけど」

奈緒「なんだよ加蓮、コイツじゃ不満だってのか?」

加蓮「いやいやいや、奈緒まで何言ってんの?普通にダメだよねこれ?」



凛「(……何だろう、ようやくまともな人に出会えた気がする)」

ハナコ「クゥーン」

加蓮「あ、アンタがそんな事言ったってね、ダメなものは、ダメ……」


クラッ


加蓮「っ!」フラッ

P「!大丈夫か、加蓮?」

加蓮「こ、これ位、全然平気……何でもない、から……」


パタリ


奈緒「お、おい加蓮!?」

凛「すごい熱……!」

P「道理で顔が赤かった訳だ……どうしてこんなになるまで黙ってたんだ?」

加蓮「……言える訳、ないでしょ……?」

加蓮「最初は、適当だったのにさ……いつの間にか、アイドル……続けたいって思って……」

加蓮「でもやっぱり、ダメだね……アタシ、身体弱いし……体力ないし……」

加蓮「すぐ病気、かかっちゃうし……ユニットなんか、組めないよ」

加蓮「こんなんじゃ……絶対皆の足、引っ張っちゃうから……」グスッ

奈緒「加蓮、お前……」

ハナコ「ワンッ!ワンッ!」グイグイ

凛「な、何?」

P「そこのスタドリを取ってほしいそうだ」

凛「……スタドリって、これ?」

ハナコ「ワンッ!」ガシッ


グビグビグビ


凛「あ、ちょっと……ハナコ!?」

奈緒「スタドリ飲んで何する気だコイツ……!?」

ハナコ「ワンッ!」ダッ

加蓮「……えっ?」

ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ

加蓮「あっ、え……ち、ちょっと何すんっ……ひゃあぅっ!?」

ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ

加蓮「し、しょんなとこ舐めひゃ……ひ、ゃめへぇっ……ぁ、やぁっ!」

ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ



奈緒「お、おい!プロデューサー!」

P「あ、あぁ。これは……」

凛「(ハナコが物凄い勢いで全身を舐め回してる……)」

ちひろ「どうやらスタドリによるヒーリングを試みているようですね」

凛「(突然現れて何を言い出すんだろう、この人は)」

ちひろ「単なる経口摂取では、効果が出るまで時間がかかりますから」

ちひろ「彼女の全身に、口に含んだスタドリを一生懸命染み込ませようとしているんですよ」

奈緒「……し、舌で?」

ちひろ「はい。舌で」

凛「(んなアホな……)」

P「そんなやり方があったとは……ハナコ!後は俺に任せろー!」バリバリ

P「」ズタボロ

ちひろ「……どうやら、終わったみたいですね」

ハナコ「ワンッ!」

加蓮「グスッ……よ、よくも、ひゃってくれたね……この、バカ犬ぅ……っ!」

奈緒「……おい加蓮、もう大丈夫なのか?」

加蓮「もう大丈夫かって?そんなの……」



加蓮「あ、あれ……全然苦しくない」

凛「えぇっ!?」

加蓮「むしろ今までより、身体が軽くなって……ど、どういうこと?」

ちひろ「彼女が効率的にスタドリを使ったおかげですよ」

ハナコ「クゥーン」

加蓮「あ、アンタ……」

奈緒「なぁ、これでもまだハナコを認めないってのか?」

加蓮「………」



P「トライアドプリムス……良いユニットになりそうだな」

凛「(……ほ、ホントにこれで良かったのかな……?)」

凛「(トライアドプリムスのリーダーには、なんとハナコが選ばれた)」

凛「(プロデューサーさんの指名ではなく、奈緒さんと加蓮さんの推薦だ)」

凛「(その後はテレビCMのみならず、グラビア撮影、全国ツアー等でファンを増やしていき……)」

凛「(聞けば誰もが名前を知っている、そんなアイドルユニットに成長していった)」



凛「(ハナコの目覚ましい活躍は、確かに私も嬉しいのだけれど……)」

凛「(何故だろう。ものすごい不条理、理不尽さを感じる)」

凛「(アルティメット・クール……通称UCと呼ばれる、アイドル達のトーナメント)」

凛「(私は今、ハナコの飼い主としてプロデューサーさんの付き添いをしている)」

凛「(大事なLIVEバトルの決勝戦を前にして、身近な場所でハナコの応援をしてほしいらしい)」



P「渋谷さんがいれば、ハナコもいざという時に緊張しないでしょう」

凛「はぁ」

P「今回ばかりは、より万全の態勢で臨みたいんです……何しろ、相手が相手でね」

P「ここまできたら、負けられないよな!」

加蓮「そんなの当たり前でしょ!」

奈緒「優勝するのはアタシ達だって事、皆に教えてやろうじゃねーか!」

ハナコ「ワンッ!」

P「よし!行ってこい!」



凛「(舞台に上がっていく彼女達を見送る私)」

凛「(二人と一匹の私の犬が、ステージに……)」

幸子「フフン、決勝の相手はやっぱりトライアドプリムスですか……」

幸子「愚かですね。結局はボクのプロデュースする『ザ・勝ち組ーズ』が、一番クールだと言うのに」

幸子「ま、一番カワイイのはもちろんボクに決まってるんですけどね」ドヤァ



幸子「さぁ皆!全国のお茶の間に、誰が一番クールなのか……」

幸子「それを、分からせてあげましょう!」ビシッ

アナスタシア「ダー。報酬の肉じゃが、忘れないでね」

蘭子「悪姫たる私が、このような匹夫に使役されるなどと……!」

楓「よろしくピース」

奈緒「加蓮!ロシア人はアタシに任せろ!」ババッ

加蓮「ハナコ!あの25歳は、あなたが!」ダッ

ハナコ「ワンッ!」シュタッ





楓「……ふふふ」ゴゴゴゴゴ

ハナコ「ウウウ〜……!」

凛「(これだけは言える。私の知ってるLIVEバトルと違う……うん、全然違う)」

P「ハナコ、最初から全力全開で行け!アレをやるんだ!!」

ハナコ「ワンッ!」


ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ


凛「(また物凄い勢いで全身を舐め回して……って言うかあれ、特技にしたんだ)」

P「やったか!?」

幸子「おやおや、もう使ってきたんですか?まるで節操がありませんね」ヤレヤレ

P「……何っ?」

幸子「幾人ものアイドルを舐め回し、戦意喪失させてきたその技……」

幸子「一番カワイイこのボクが、対策を取っていないとでも?」ドヤァ


ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ


楓「……こいかぜ」ペチッ

ハナコ「キャインッ」

凛「あっ」

P「ハナコ!!」

楓「その舌の動き……まさに舌(ぜつ)妙、ですね」

楓「が、効きません」フンス

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