貴虎「何? 世界で唯一ISが使える男?」 (489)

鎧武の呉島貴虎とISのクロス
不定期更新

一夏は出ない
ついでに白式も出ない

IS側、呉島主任ともにキャラ崩壊注意
メロニキはオリISに乗るので注意

ISは原作読んでアニメ見てたけど、ぶっちゃけアニメの印象が強い
だから重要シーン以外はごっそりカットするかも知れん

貴虎バッタの一人称は、人前では私
身内には俺


昨日しくったんで立て直した
更新はまた夜に

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403151591

『プロローグ』


貴虎「いいか! 葛葉紘汰と共に……お前が人類を救うんだ!!」

光実「…」

貴虎「頼んだぞ! 光実!!」

光実「……」

シド「オラァッ!」ドカッ

貴虎「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

……
…………

『第一話 入学試験』


ピピピピ
ピピピピ

貴虎「……ぅわあぁぁぁああああああ!!!」

ピピピピ
ピピピピ

貴虎「はぁ……はぁ……」

ピピピピ
ピピピピ

貴虎「……俺は、一体……」

ピピピピ
ピピピピ

貴虎「確か、シドに……」

ピピピピ
ピピピピ

貴虎「……傷が塞がっている……」

ピピピピ
ピピピピ

貴虎「夢を見ているのか……?」

ピピピピ
ピピピピ

貴虎(それにしても、さっきから鳴っている音は何だ……)

つ『目覚まし時計』

貴虎「……」

ピピピピ
カチッ

貴虎「……やはり、夢なのか……?」

コンコン
ガチャ

光実「兄さん、目覚まし鳴ってるよ」

貴虎「み、光実ぇぇぇぇええええええええ!!!!」 ガタッ

光実「わっ! どうしたの、兄さん?」

貴虎「み、光実……お前……!」

貴虎(間違いない! あれは正に、5歳のときの光実!!)

貴虎(どうして光実が幼く……やはり、夢なのか……)

光実「兄さん?」

貴虎「……光実、聞きたいことがある。」

光実「何?」

貴虎「今、いくつだ?」

光実「5歳だよ」

貴虎「じゃあ、俺は?」

光実「えーっと……15歳!」

貴虎「……15……だと……」

貴虎(だが体は……間違いなく26のままだ……)

貴虎「光実、もしかして俺は、急に大きくなったりしてないか?」

光実「何言ってるの、兄さん」

貴虎「……いや、何でもない」

貴虎(よく分からないが……体は26のまま15になっているということか?)

光実「それより、早く着替えなよ。今日は大事な受験なんでしょ?」

貴虎「……受験?」

貴虎(15歳……確かに、高校受験の歳か)

光実「うん。確か……藍越学園ってところ」

貴虎(一体どこだ、それは……インターネットで調べればいいか)

貴虎(それより、さっさと着替えてしまおう) ガタッ

光実「あれ? 兄さん、何持ってるの?」

貴虎「何?」

貴虎(そう言えば、さっきから右手に何か感触があるな……何だこれは?)

つ『ヘルヘイムの果実』

貴虎「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

貴虎(ど、どうしてこれがここに!? まさか崖から落ちたとき、無我夢中で掴んだしまったというのか!?)

光実「あ! 美味しそう!!」

貴虎「ダメだ光実! これはダメだ!!」

光実「どうして?」

貴虎「これは……その……そう、大事な研究材料だからだ!」

光実「けんきゅうざいりょう?」

貴虎「そうだ。俺にとって大事なものだ。だから、食べちゃダメだ」

光実「うん……じゃあ、分かった」

貴虎(よし、一先ず光実のインベス化は回避した。これは誰かが誤って食べないように、ケースに入れて持ち歩こう)

つ『透明で頑丈な手頃のケース』

貴虎(これで大丈夫だ。とりあえず今は、その藍越学園とやらを受験してこよう。いろいろ調べるのは、それからでも遅くない)

光実「あ! 忘れてた!!」

貴虎「どうした?」

光実「兄さん、母さんがカンカンに怒ってたよ。早く起きてこないから」

貴虎「分かった。今からいくと伝えてきてくれ」

光実「うん。後でね」

ガチャ
バタン

貴虎(この世界は何なのか……夢にしては現実味があり過ぎる)

貴虎(ここは、いろいろと調べてみる必要がありそうだ)

それからしばらく経って


貴虎(私立藍越学園……本当にここでいいのか?)

貴虎「……誰もいないな……」

貴虎(全く、教師の一人でもいれば、すぐに聞けるが……)

貴虎「……ん?」

貴虎(何だ、この部屋は……っ!)

貴虎「これは……パワードスーツ……?」 ピト

ピピッ
グオーン……

貴虎「まずい! 動いてしまった!!」

教師「あっ! ちょっと、誰!? そこで勝手にISを起動してるのは!?」

貴虎(IS!? ISとは何だ!?)

教師「君、それは……っ! 男!?」

教師「嘘!? 君がこのISを起動させたって言うの!?」

貴虎「あぁ、まぁ……」

教師「そんな……どういうこと……」

貴虎(こっちが聞きたい……)

それからいろいろあって


貴虎(なるほど。つまりISというこのパワードスーツのようなものは、本来は女にしか動かせないのか……)

貴虎(まぁ、俺はこの世界ではイレギュラーのようだし、当然と言えば当然かも知れん)

貴虎「……で、何で俺は入学試験を受けることになっている……」

貴虎(いや、理屈は分かる。世界で唯一であろう、男でISが動かせる俺を、このIS学園という場所は手放したくないはずだ)

貴虎(それに俺としても、ここに入学した方が、今後の調査で有利になる)

教師1「それでは、試験を始めます」

貴虎「待て……ゴホン、待ってください。少し動作に慣れる時間をいただけますか?」

教師2「はい、構いませんよ」

貴虎「……」

グーパグーパ
ガシャンガシャン

キックパンチ
ズバッズバッ

貴虎(基本的には、アーマードライダーと同じ感覚で動かせるようだ)

貴虎(この打鉄というISには、『葵』というブレードが装備されているのか)

貴虎(和風というのが、俺の使っていたアーマードライダーを彷彿とさせていいな)

貴虎「大丈夫です」

教師1「それでは改めて、呉島貴虎さんの試験を始めます」

貴虎「……」

教師1「……」

教師2「……開始!」

教師1「はっ!」 ビューン

貴虎「っ!」 スッ

教師1「っ、はぁっ!」 バシッ

貴虎「たあっ!」 バキッ

教師1「はっ!」 バキュン

貴虎(何!? 銃も装備されていたのか!?)

貴虎「くっ……」ヒュン

貴虎(だが甘い。一体どこを狙っている?)

貴虎「ふん!」 ズバッ

教師1「嘘!?」

貴虎「うぉお!」 バシュッ

教師1「いっ!」

教師2「すごい……」

貴虎「はっ!」 ザシュッ

教師1「きゃっ!」

貴虎「終わりだ……はぁっ!!」 ドガッ

教師1「きゃぁああ!!」 ドーン

教師2「試験終了!」

貴虎「……ふん」

貴虎(ビートライダーズに毛が生えた程度ではないか……これが教師の実力だと?)

貴虎(それとも俺を無理やり合格させるために、わざと負けたのか……)

貴虎(真意は分からないが、別にどうだっていい。兎にも角にも、これで入学は間違いなしだろう)

教師2「それでは、合否の結果は改めて、入学資料と共に送ります。多分、合格だと思うけどね」

貴虎「分かりました。それでは、私はこれで失礼します」

貴虎(ようやく事態が動き出した、という感じだ)

貴虎(IS、この世界、その全てを俺は知ってみせる)

貴虎(そして元の世界に戻り……人類をヘルヘイムの侵略から救ってみせる!)

今回はここまで
次回は『第二話 クラス代表決定戦』

書き上がったら投下する
貴兄がISの世界にいる理由と、話のエンドはちゃんと考えてある

それじゃ続き投下してく
アニメ見てるか原作読んでるかしてないと、展開早くて分かりにくいかも知れん

『第二話 クラス代表決定戦』


貴虎(……分かっていたことだ。たじろぐ必要はない)

ジー
ヒソヒソ

貴虎(だがこれは……想像以上に辛い何かがあるな)

真耶「皆さん、入学おめでとう! 私は副担任の、山田真耶です」

シーン……

真耶「あ、あれ?」

貴虎(自分以外全てが女。本来ISは女にしか使えないらしいから、当たり前だ。しかし……)

真耶「今日から皆さんは、このIS学園の生徒です。この学校は全寮制。学校でも、放課後も一緒です」

真耶「仲良く助けあって、楽しい3年間にしましょうね」

シーン……

真耶「……じ、じゃあ、自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

貴虎(思えば学生時代は、呉島家の後を継ぐものとして、勉学に励んでいた)

真耶「じゃあ、次は呉島くん……呉島くん?」

貴虎(恋愛や女などもってのほかで、友人すらそこまでいなかった)

真耶「呉島くん。呉島くーん」

貴虎(そのツケが、こんなところで回ってくるとは……!)

真耶「呉島くーん!」

貴虎「っ! 何だ!?」

クスクス

真耶「あ、あのー、大声出しちゃってごめんなさい。でも、『あ』から始まって、今『く』なんだよね」

真耶「自己紹介してくれるかな? ダメかな?」

貴虎「……」 ガタッ

貴虎「……呉島貴虎だ。よろしく頼む」

ジー

真耶「……あ、あれ? それだけかな?」

貴虎「あぁ」

貴虎(普通は趣味などを言うんだろうが、あいにく持ち合わせていない)

貴虎(プロジェクトアークが始動してからは、ずっと働き詰めだったからな。趣味を見つける時間など……っ!) ガシッ

千冬「ほう。今のを防ぐとは、中々だ」

貴虎「まさか初対面の相手に、いきなり殴りかかられるとはな」

千冬「初対面……確かに、教師と生徒という立場でなら、初対面か」

貴虎(何だと……俺はこの世界では、過去にこの女と出会っているのか?)

貴虎(そうなると、俺の知らないところで、知り合いが多数存在する可能性が出てくる)

貴虎(その辺りも含めて、詳しく調査する必要がありそうだ)

真耶「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

千冬「あぁ、山田くん。クラスへの挨拶を押し付けて、すまなかったな」

キタ━(゚∀゚)━!

千冬「諸君、私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を1年で使い物にするのが仕事だ」

キャー!
ワイワイ

千冬「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる」

千冬「それとも何か? 私のクラスにだけ集中させてるのか?」

ワイワイ
キャー!

貴虎(この女が担任だと……他人をいきなり殴ろうとする、この非常識がか?)

貴虎(しかもこの熱烈な人気……この女、一体何者だ……)

千冬「静かに。諸君らには、これからISの知識を半年で覚えてもらう」

千冬「その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ」

千冬「いいか? いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ」

ハイ!

貴虎(先が思いやられる……)

それからISについて、なんやかんや真耶が説明する


貴虎(兵器をスポーツにか。どう考えても、他国への牽制のためだろう)

貴虎(何体のISとその操縦者を確保しているか、それがそのまま、その国の力を示すパラメータの一つになる)

貴虎(まぁ、割り振られた数しか保有出来ないのなら、国力のランクが変わることもなさそうだが)

真耶「では、今日から三年間、しっかり勉強しましょうね!」

ハイ!

授業中


貴虎(……なるほど。ISの基礎については全て理解した。問題は実践だが)

真耶「呉島くん、分からないとことかありますか?」

貴虎「いや」

真耶「そうですか、なら良かった」

そして休み時間


ワイワイ
ガヤガヤ

貴虎(うるさい……)

貴虎(まぁ、仕方のないことか。俺はこの学園で唯一の男なのだから、無闇に珍しがられて当然だ)

貴虎(しばらくはこの状態が続くのか……何と言うことだ……)

セシリア「ちょっと、よろしくて?」

貴虎(いっそ寝たふりをして、無視する方が楽だろうか……)

セシリア「訊いてます? お返事は?」

貴虎「……私に何の用だ?」

セシリア「まぁ! 何ですの、そのお返事。」

セシリア「わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

貴虎「……何者だ?」

セシリア「っ! わたくしを知らない!? このセシリア・オルコットを!?」

セシリア「イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

貴虎「知らん」

セシリア「なっ……ま、まぁいいですわ」

貴虎(いいのか)

セシリア「貴方、世界で唯一男でISを操縦出来ると言っても、動かしたのはつい最近なのでしょう?」

貴虎「それが何だ?」

セシリア「やっぱり。ふふっ、貴方はまだ素人。どんなに理解力が高くても、必ず他より劣る部分が出てきますわ」

セシリア「ですから、今のような大きな態度は、早めに直しておいた方がいいですわよ」

貴虎(俺の態度は、傍からだと大きく見えるのか……)

セシリア「まぁでも、わたくしは優秀ですから、貴方のような素人も優しくサポートしてあげますわ」

セシリア「分からないことがあれば、泣いて頼まれたら教えてさしあげてもよくってよ」

セシリア「何せわたくし、入試で唯一、教官を倒したエリート中のエリートですから!」

貴虎「そうか」

セシリア「……その反応、馬鹿にしていますの?」

貴虎「教官など、私も撃破したからな」

セシリア「はぁっ!?」 バンッ

貴虎「あの程度、当然だ」

セシリア「わ、わたくしだけと聞きましたが……」

貴虎「そんなことは知らん」

セシリア「貴方! 貴方も教官を倒したって言うの!?」

キーンコーンカーンコーン

セシリア「っ! 話の続きは、また改めて! いいですわね!?」

貴虎(面倒なおきゃんだ……勝手にしろ)

放課後


貴虎「そう言えば、ここは全寮制だったか……光実に会えない……」

貴虎「1025……ここか」 ガチャ

貴虎(ベッドが2つある……っ! まさか、女と相部屋か!?)

貴虎(っ! シャワーの音! どうやらもう、先に来ていたらしい!!)

箒「誰かいるのか?」

貴虎(これはまずい! とりあえず、シャワールームの方に背を向けておかなければ!!) サッ

箒「あぁ、同室になった者か。これから1年、よろしく頼む」 ガチャ

箒「こんな格好ですまな……」

貴虎「待て!」

箒「!」

貴虎「私だ。呉島貴虎だ。男だ。」

注 : ちゃんと背中を向けています
ついでに目も閉じてます

貴虎「どんな格好かは知らないが……まずは『こんな格好』以外の格好をしてきてくれ」

箒「……あぁ、すまない……」

ガチャ

貴虎「……はぁぁぁ……」

貴虎(危なかった……本当に危なかった……)

ガチャ

箒「ま、待たせた……」

貴虎「いや、大丈夫だ……」

箒「……」

貴虎「……」

それから少し経って


箒「申し遅れた。私は篠ノ之箒という。これから1年、よろしく頼む」

貴虎「呉島貴虎だ。よろしく頼む」

貴虎(1年もこの世界にいる気はないがな)

箒「とりあえず、男女が同じ部屋で過ごすからには、色々と決めておかなければならないことがある」

貴虎「運悪く男である私と同室になってしまったのだから、そちらの条件を優先しよう」

箒「すまない。それじゃあ、まずシャワーの使用時間だが、私は7時から8時、呉島は8時から9時だ」

貴虎「構わん」

箒「ベッドは私が奥を使わせてもらう」

貴虎「構わん」

箒「それから……」

翌朝


貴虎(昨夜は、あれからは何もなかった。篠ノ之とは同室のよしみで、隣の席で朝食をとっている)

貴虎(それに特定の女が1人だけ隣にいると、それだけで他の連中の抑止力になるからな……)

「呉島くん、隣いいかな?」

貴虎(……と思ったが、それほど効果はなかったようだ)

貴虎「構わん」

ヨシ!

「ほわぁ、呉島くんって朝すっごい食べるんだぁ」

「男の子だね」

貴虎「食事は夜に多くとるよりも、朝にとった方がいい。その方が頭も回りやすく、体作りにも効果的だ」

「へぇー、そうなんだぁ」

「さすが呉島くんだ!」

貴虎「私は食べ終わったから先にいくぞ」

「早っ!」

貴虎(ヘルヘイムの森で何が起こるか分からなかったから、素早く食べる癖がついてしまった、とは言えん)

それからしばらく経って


千冬「これより、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める」

千冬「クラス代表者とは、対抗戦だけでなく、生徒会の会議や委員会への出席など……まぁ、クラス長と考えてもらっていい」

千冬「自薦他薦は問わない。誰かいないか?」

「はい! 呉島くんを推薦します」

「私もそれがいいと思います」

貴虎(まぁ、くると思っていた。面白半分だろうが、それでも構わん)

貴虎(クラス代表者……調査にあたって、いろいろと立ち回りやすいかも知れん)

千冬「他にはいないのか? いないなら無投票当選……」

セシリア「待ってください! 納得がいきませんわ!!」 ガタッ

貴虎(何だ?……あぁ、昨日のおきゃんか)

貴虎(何を言う気か知らんが、ここでクラス代表になれないとなると、今後の調査に大なり小なり支障をきたす恐れがあるぞ……)

セシリア「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんて、いい恥晒しですわ!!」

セシリア「わたくしに、このセシリア・オルコットに、そのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!?」

セシリア「実力でいけば、わたくしがクラス代表になるのは必然」

セシリア「それを物珍しいからという理由で、極東の猿にされては困ります!」

セシリア「わたくしはこのような島国までISの技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

セシリア「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき。そしてそれはわたくしですわ!」

貴虎「……」 カチン

今日はここまで
明日も投下できたら、するかも知れない


貴虎兄さんだいたい「構わん」で返しててワロタ

それじゃ投下してく
今日中に第二話は終わらせるつもり

セシリア「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で……」

貴虎「話はそれで終わりか?」

セシリア「っ! 貴方……」

貴虎「貴様が何をどう感じようと知ったことではないが、私も代表の座を譲るわけにはいかない」

貴虎「特に貴様のような、ビートライダーズ共と同じクズにはな」

ビートライダーズ?
ヒソヒソ

セシリア「ク……クズ!?」

セシリア「もう許しません! 決闘ですわ!!」

貴虎「いいだろう。貴様が私に勝てるとは思えないが、四の五の言うより分かりやすい」

セシリア「わざと負けたりしたら、わたくしの小間使い……いえ、奴隷にしますわよ!」

千冬「話は纏まったな。それでは勝負は次の月曜の放課後、第3アリーナで行う」

千冬「呉島とオルコットは、それぞれ準備をしておくように」

それからしばらく経って


千冬「呉島。お前のISだが、準備まで時間がかかるぞ」

貴虎「どういう意味だ?」

千冬「予備の機体がない。だから、学園で専用機を用意するそうだ」

エー!
センヨウキ!?

ワイワイ
ガヤガヤ

貴虎(専用機か……別に打鉄でも十分だと思うが。和風で結構気に入ったしな)

セシリア「それを聞いて安心しましたわ!」 ビシッ

セシリア「まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

貴虎「……」

セシリア「クラス代表の決定戦、わたくしと貴方では勝負は見えてますけど、流石にわたくしが専用機、貴方は訓練機では、フェアではありませんものね!」

千冬「本来ならIS専用機は、国家、あるいは企業に所属する人間しか与えられない」

貴虎(企業……そう言えば、この世界にユグドラシルはあるのか? あるとすれば、俺はそこに所属していないことになっているのか?)

千冬「が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意される」

貴虎(つまり、戦極ドライバーのトライアルと同じか)

千冬「理解出来たか?」

貴虎「問題ない」

しばらく経って昼食


箒「……おい」

貴虎「何だ?」

箒「何故、私と同じ席に座る?」

貴虎「虫除けだ」

箒「は?」

「ねぇ、君って噂の子でしょ?」

貴虎「……効果は完璧ではないがな」

「代表候補生の子と勝負するって聞いたけど……でも君、素人だよね? IS稼働時間、いくつくらい?」

貴虎「知らん。稼働させたのは入試のときだけだ」

「それじゃ無理よ。ISって稼働時間がものを言うの。代表候補生だったら、軽く300時間はやってるわよ」

貴虎「そうか。それで、具体的に用は何だ?」

「私が教えてあげようか? ISについて」

貴虎「必要ない。篠ノ之に教わることになってる」

箒「はぁっ!?」

「篠ノ之さんって、あなた? でも、あなたも1年でしょ? 私、3年生。私の方が、上手く教えられると思うな」

箒「いえ、私は……っ! 呉島! 虫除けとはこういうことか!!」

貴虎「私は食べ終わったから、もう行くぞ」

箒「おい待て! 呉島!!」

「え、ちょっと……あれ?」

それからしばらく経って


箒「……呉島」

貴虎「何だ?」

箒「ISの訓練はしなくていいのか?」

貴虎「少しはしておくのもいいかも知れんが、打鉄を借りることが出来る時間は限られているからな」

箒「……今さらだが、お前のその自信はどこからきてる?」

貴虎「どういう意味だ?」

箒「まるで練習などしなくても、勝利を確信しているようじゃないか。相手は代表候補生だというのに……」

貴虎「篠ノ之、ISとは何だ?」

箒「は?」

貴虎「ISとは何だと聞いたんだ」

箒「……篠ノ之束が作った……」

貴虎「違う。そんなことを聞いているのではない。誰が、いつ、何のために、などどうでもいい」

貴虎「ISとはつまり、何だ?」

箒「……兵器だ」

貴虎「そうだ。俺はこの学園に来てまだ日が浅いが、それでも分かったことがある」

貴虎「オルコットを含め、この学園の連中は、ISを兵器だと『知って』いても『理解』していない」

貴虎「相手の命を奪う、生きるか死ぬかを決めることが出来る力を持つと、本気で理解していない」

貴虎「そして軽々しくその力を振るい、自らの優位性を誇る。そんなクズばかりだ」

貴虎「私は、そんなやつには絶対に負けん」

箒(……呉島、お前は何者なのだ……お前の過去に、一体何があったと言うのだ……)

そして月曜日、ピット


箒「呉島! 大変だ!!」

貴虎「どうした、篠ノ之」

箒「お前の専用IS、まだ届いてないようだぞ!」

貴虎「ならば、教師から打鉄が支給されるだろう」

箒「相手は専用機だぞ? 打鉄のような量産機では……」

貴虎「量産機だろうと専用機だろうと、ISであることに変わりはない。生身ならいざ知らず、IS同士ならば……」

真耶『呉島くん! 呉島くん、呉島くん!!』

貴虎(何故3回も呼ぶ)

真耶『来ました! 呉島くんの専用IS!!』

貴虎「……きたのか」

千冬『呉島、すぐに準備をしろ。アリーナを使用出来る時間は、限られているからな』

千冬『ぶっつけ本番でものにしろ』

箒「ぶっつけ本番、だと……」

貴虎「構わん。最初からそのつもりだ」

グオーン
ゴゴゴゴゴ……

真耶『これが、呉島くんの専用IS……「斬月」です!』

貴虎(斬月……白くて和風な感触が、とてもいい)

貴虎(ところどころ無骨なのは、まだ一次移行(ファーストシフト)が完了していないからだろう)

千冬『体を動かせ。すぐに装着しろ』

千冬『時間がないから、初期化(フォーマット)と最適化処理(フィッティング)は実践でやれ』

貴虎「あぁ」

ガシャン
ガチャガチャ

千冬『背中を預けるように……そうだ、座る感じでいい。後はシステムが最適化をする』

ピピッ

斬月『アクセス……』

斬月『システム、スタート……』

斬月『コネクティング……』

斬月『皮膜装甲展開(スキンバリアーオープン)……』

斬月『推進機(スラスター)、スタンバイ……』

斬月『ハイパーセンサー、ブート……』

斬月『ネットワーク、オンライン…』

ゴォォォ……

真耶『セシリアさんの機体は、「ブルー・ティアーズ」。遠距離射撃型のISです』

真耶『ISには絶対防御という機能があって、どんな攻撃を受けても、最低限、操縦者の命は守られるようになっています』

真耶『ただその場合、シールドエネルギーは極端に消耗します。分かってますよね?』

貴虎「言われるまでもない」

千冬『呉島、気分は悪くないか?』

貴虎「問題ない。体調はいつでも万全にしておくよう、心がけている」

千冬『そうか』

貴虎「さて……」

ギュイーン……
バシュゥゥゥゥ……!

箒「……呉島……」

アリーナ上空


セシリア「あら、逃げずに来ましたのね」

貴虎「……」

セシリア「最後のチャンスをあげますわ」

貴虎「……」

セシリア「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理」

セシリア「惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」

貴虎「……」

セシリア「あら、どうしましたの?」

貴虎「いい加減黙ったらどうだ? それとも、シドのように軽口を叩きながらでしか戦えないのか?」

セシリア「っ! なるほど、よく分かりましたわ。それなら……」 ガシャン

セシリア「お別れですわね!」 バシュン!

貴虎「……」 サッ

セシリア「踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」 バシュン! バシュン!

貴虎「ふん……」 サッ サッ

貴虎(そう言えば、装備を確認していなかったな) ピッ

つ『近接ブレード』

貴虎(ブレードか、最高だ。盾もあれば、より良かったが) ビューン

セシリア「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で挑もうだなんて、笑止ですわ!」 バシュン!

貴虎「……」サッ ビューン

それから少し経って


セシリア「このブルー・ティアーズを前にして、初見でこうまで避けたのは、貴方が始めてですわね」

セシリア「褒めてさしあげますわ」

貴虎「……」

セシリア「ですが、そろそろ閉幕(フィナーレ)と参りましょう!」 ガチャン

貴虎(遠隔操作のビットか……)

バシュッ!
バシュッ!

バシュッ!
バシュッ!

貴虎(だがこの程度の数……!」 ヒュン!

ザシュッ
ザシュッ

ジャキン!
ザクッ!

ドカーン!

セシリア「なっ……!」

セシリア(そんな……一瞬で4機のブルー・ティアーズを!?)

貴虎「……」

教師陣


真耶「すごいですね、呉島くん。ISの起動が、2回目とは思えません」

千冬「……」

真耶「……織斑先生?」

千冬(あいつの目、モニター越しでも分かるほど殺気に溢れている……本気でオルコットを殺しにいっているのか)

千冬(それにあいつ、一体どこであれだけの戦闘技術を……)

真耶「……心配なんですか? 確か……幼馴染、なんですよね」

千冬「……貴虎……」

今日はここまで
第二話、完結させられなくてすまんかった

出来たら明日で完結させる
ちなみにISの斬月、まだメロンアームズ装着してない

それじゃ投下してく

アリーナ


貴虎(そろそろ仕掛けるか) ビューン

セシリア「……かかりましたわね」 ガチャン

貴虎(っ! 何!?)

セシリア「お生憎様、ブルー・ティアーズは6機あってよ!」

ドンッ
ドンッ

貴虎(弾道型(ミサイル)か……避けきれない!)

貴虎(いや……)

貴虎「その程度が、ちょうどいい!」 ドウッ

ドガーン!

セシリア「なっ! くっ……」 ヒューン

貴虎「っ……」 ヒューン

教師陣


真耶「!? 今、一体何が!?」

千冬「ミサイルをギリギリまで引きつけ、相殺させたのか……」

真耶「で、でも、そんなに素早く反応できるなんて……」

千冬(そうだ。普通、ISは反応できても、人間がそれについていけない)

千冬(だがあいつは……確かにミサイルのタイミングを計り、その上で反応して見せた)

千冬(特殊な訓練でも受けない限り、あれだけの反応速度を人間が身につけるのは不可能だ……)

千冬「貴虎……お前は一体……」

アリーナ


セシリア「はっ!」

ドンッ
ドンッ

貴虎(今のは不意打ちで上手く対処できなかったが、次からは問題ない)

貴虎「はっ」 ビューン

ザシュッ
ジャキン!

ドカーン

セシリア「そんな……わたくしのブルー・ティアーズが、全て……」

貴虎(どうやら、あれ以上はビットを装備していないらしいな)

貴虎(そろそろ……決着をつけるとしよう) ビューン

セシリア「くっ……!」 バシュン! バシュン!

貴虎「……」 サッ サッ

貴虎「はっ!」 ズバッ

セシリア「がっ!」

貴虎「ふん!」 ジャキン!

セシリア「っ!!」

貴虎「はぁっ!」 ザクッ

セシリア「あぁぁ!」

セシリア(そんな……ありえませんわ……)

セシリア(わたくしが……こんな男に敗れるなんて……!)

貴虎「……」 ギロッ

セシリア(っ!……あぁ、そんな……わたくしが、愚かだったというのですか……)

セシリア(どうして、今の今まで気づかなかったのかしら……)

セシリア(この男は、最初から……本気で、わたくしを……)

貴虎「終わりだ……」

セシリア(わたくしを……殺しに……!)

貴虎「はぁっ!!」 ザシュンッ!

セシリア「あぁぁああああ!!」 ドーン

ブーッ

『試合終了。勝者、呉島貴虎』

貴虎「……ふん」

ピット


真耶「お疲れさまでした。すごかったですよ、呉島くん!」

貴虎「……」

千冬「……呉島、お前には色々と聞きたいことがある。お前は……」

貴虎「……篠ノ之、すまないが、今日は先にシャワーを借りていいか?」

箒「えっ……いや、構わないが……」

貴虎「礼を言う」 スタスタ

箒「っ! おい待て、呉島!!」

真耶「呉島くーん!」

千冬(……貴虎……)

シャワー室


セシリア(……理解していたつもりでしたわ……ISが兵器など、常識中の常識……)

セシリア(それなのに、わたくしは……あの方の目を見たとき、体が動かなくなってしまった……)

セシリア(脚は竦み、腕は震え、恐怖で何も出来なくなってしまいました……)

セシリア(ISには、絶対防御がある。そもそも模擬戦で、死ぬことなど絶対にあり得ない……)

セシリア(そんなこと、当たり前ですわ……考える必要もないほど……)

セシリア(でも、それでも……わたくしはあのとき、命の危険を感ぜずにはいられませんでした……)

セシリア(呉島貴虎……わたくしは、あの男に……殺されかけた……)

次の日


真耶「では、1年1組代表は呉島貴虎くんに決定です」

イェーイ
キャーキャー

貴虎(クラス代表の立ち位置につくことは出来た。専用のISも手に入れた)

貴虎「待機状態は錠前か……」

貴虎(だが依然、謎は1つも解けていない。それどころか、ますます増えるばかりだ)

貴虎(この世界のこと、ISのこと、俺と織斑千冬との関係、そして……この世界における、俺のこと)

貴虎(その全てを知り、元の世界に戻ってみせる)

貴虎(待っていろ。光実、オーバーロード、そして葛葉紘汰!)

今回はここまで
次回は『第三話 クラス対抗戦』

しばらくバトライドウォーやるんで、投下まで少し間が空くかも
それでも完結はさせるつもり

斬月、再登場おめでとう
というわけでバトライドウォーは一旦休みにして、三話投下してく

ファーストシフト云々に関しては、今回言及するから大丈夫
あとリブート版キカイダーのネタ混じるけど、特に意味はないんで気にしないでくれ

『第三話 クラス対抗戦』


千冬「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。呉島、オルコット、試しに飛んでみせろ」

貴虎「……」 ピカーン

セシリア「分かりましたわ」 ピカーン

千冬「よし、飛べ」

セシリア「はい!」 ビューン

貴虎「……おっと……」 ビューン

千冬『遅い。スペック上の出力では、斬月の方が上だぞ』

貴虎(飛行だけは、まだ苦手だ……アーマードライダーは、スイカのロックシード以外では飛ばなかったからな)

千冬『呉島、オルコット、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10センチだ』

セシリア「了解です……では、お先に」 ヒューン

ピタッ

貴虎(代表決定戦以来、オルコットとは普通に会話するようになった。尤も、どこか俺を恐れているようにも感じるが……)

貴虎「急下降と完全停止か……よし」 ヒューン

ピタッ

千冬「よし。呉島、武装を展開しろ」

貴虎「……」 ピカーン

ガシッ

貴虎(こちらは飛行よりも数倍簡単だ。アームズウェポンが装備されるときと、同じ感覚で出来るからな)

千冬「よし。オルコット、武装を展開しろ」

セシリア「はい」 サッ

ピカーン
ガシッ

千冬「流石だな、代表候補生。ただし、そのポーズはやめろ」

千冬「横に向かって銃身を展開させて、誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」

セシリア「で、ですがこれは、わたくしのイメージを纏めるために必要な……」

千冬「直せ、いいな?」

セシリア「……はい」

千冬「よし。近接用の武装を展開しろ」

セシリア「えっ……あ、はっ、はい!」

セシリア「……くっ……」

千冬「……まだか?」

セシリア「す、すぐです。……ああ、もうっ、『インターセプター』!」 ピカーン

ガシッ

千冬「何秒かかっている。お前は実践でも、相手に待ってもらうのか?」

セシリア「じ、実践では近接の間合いに入られません! ですから、問題ありませんわ!!」

千冬「ほう。呉島との対戦で、初心者に簡単に懐を許していたように見えたが?」

セシリア「っ!」 ビクッ

セシリア「あ、あれは、その……」 チラッ

貴虎「……」

セシリア「っ! な、何でもありません……」

貴虎「……はぁ……」

千冬「……時間だな、今日の授業はここまでだ。それと、呉島」

貴虎「何だ?」

千冬「斬月を一旦こちらに渡せ。未だに一次移行[ファーストシフト]が完了していないのは、明らかにおかしい」

千冬「少し学園の方で調べるから、しばらくお前は訓練機を使え」

貴虎「……」

千冬「どうした?」

貴虎「……いや、分かった」 パシッ




鈴「ここがIS学園……」

鈴「えーと、受付ってどこにあるんだっけ?」 ピラッ

鈴「本校舎一階総合事務受付……って、だからそれ、どこにあんのよ」

鈴「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

鈴(誰かいないかな……生徒とか、先生とか、案内できそうな人……)

鈴「あーもー、面倒くさいなー。空飛んで探そうかなー」

鈴(ふっふーん、まぁでも、あたしは重要人物だもんねー。自重しないとねー)

「だから……でだな……」

鈴(ん? あ、誰かいる。ちょうどいいや、場所聞こっと)

「あぁ、私もどうにかしなければとは思っている」

鈴(っ! この声……間違いない!!)

鈴「貴虎……っ!」

箒「あれはやり過ぎだ。セシリアは、明らかにお前のことを怖がっているぞ」

貴虎「まさか、あそこまでになるとは……私も思わなかった」

箒「あれだけ本気の殺気を向けておいてか」

貴虎「葛葉紘汰……前にある男に同じことをしたときは、すぐに立ち直ったからな……」

箒「前!? 前にも、誰かにあんなことをしたのか!?」

鈴(……誰? あの女。なんで親しそうなの? なんで貴虎と一緒にいるの? なんで? なんで?)

それからしばらく経って


「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、凰鈴音さん」

鈴「……呉島貴虎って、何組ですか?」

「あぁ、噂の子? 1組よ。凰さんは2組だから、お隣ね。そうそう、あの子、1組のクラス代表になったんですって」

鈴「……2組のクラス代表って、もう決まってますか?」

「決まってるわよ」

鈴「名前は?」

「え? ええと……聞いて、どうするの?」

鈴「別に、お願いしようかと思って。代表、あたしに譲ってって……」

そのころ、ところ変わって食堂


「というわけで! 呉島くん、クラス代表決定おめでとう!!」

パーン!
パパーン!

貴虎(……まずい。高校時代、文化祭の打ち上げなどをパスしてきた俺に、この状況はどう対応したらいいのか分からない……!)

貴虎(とりあえず、発言を求められない限り、黙っていよう……)

箒「……大丈夫か、呉島。冷汗が流れてるぞ」

貴虎「……大丈夫だ……」

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」

「ほんとほんと」

「ラッキーだったよねー、同じクラスになれて」

「ほんとほんと」

貴虎(さっきからあの女、ほんとほんとしか言ってないぞ。しかもこのクラスに、あんな顔のやつはいなかったはずだ……)

貴虎(人数を確かめてみるか……ひぃ、ふぅ、みぃ……)

貴虎(……おかしい、絶対におかしい。なぜ30人以上もいる……)

箒「……本当に大丈夫か? 辛かったら、保健室に……」

貴虎「……大丈夫だ……」

貴虎(そうだ……呉島家の嫡男として、この状況も乗り越えて見せる……!)

パシャ

貴虎「!」

薫子「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、呉島貴虎くんに特別インタビューをしに来ましたー!」

オォォ……!

薫子「あ、私は2年の黛薫子。よろしくね。新聞部部長やってまーす。はいこれ、名刺」

貴虎「……そうか」

薫子「ではでは、ズバリ呉島くん! クラス代表になった感想を、どうぞ!!」

貴虎「ようやくスタートラインに立ったという感じだ。これから目的のために、精一杯努力していく」

貴虎(元の世界に帰るためにな)

薫子「おぉー、かっこいい! その目的とは?」

貴虎「それは言えん」

薫子「残念。じゃあ、適当に捏造しておくからいいとして」

貴虎「……」

薫子「それじゃあ、セシリアちゃんも一緒に、写真いいかな?」

セシリア「え……2人で、ですの?」

薫子「注目の専用機持ちだからねー。あはっ、握手とかしてると、いいかもねー」

セシリア「握手……」 チラッ

貴虎「……はぁ……オルコット」

セシリア「は、はい!」 ビクッ

貴虎「その、なんだ……この前は、すまなかった」

セシリア「……え?」

貴虎「あれは、どうしてもクラス代表になりたかっただけで……お前を本気で殺す気など、もちろんなかった」

セシリア「……」

貴虎「だが、それでお前が心の傷を負ったというのなら、それは私の責任だ。すまん」

セシリア「……いえ、わたくしも大人げなく怒ってしまって、申し訳ありませんでしたわ」

貴虎「これからは、そう恐れずともいい。別に私は、お前が嫌いというわけではないからな」

セシリア「はい、ありがとうございます」

セシリア「……あの、それで……これからは、貴虎さんとお呼びしても、よろしいですか?」

貴虎「構わん。別に私をどう呼ぼうと、お前の勝手だ」

セシリア「それでは。貴虎さんも、セシリアとお呼びくださって構いませんのよ?」

貴虎「いや、オルコットでいい」

セシリア「……そうですか……」

箒「呉島……」

薫子「話は終わったかなー? じゃ、撮るよー」

セシリア「あの、撮った写真は、当然いただけますわよね?」

薫子「そりゃもちろーん。じゃ、立って立って! そして握手してもらえるかなー」

セシリア「はい」 スッ

貴虎「……」 スッ

薫子「はーい、緊張しないでー。それじゃ、撮るよー! はーいっ!」

パシャ

セシリア「……何故、全員入ってますの!? あ、あなたたちねぇっ!」

「まーまーまー」

「セシリアだけ抜け駆けはないでしょー」

「クラスの思い出になっていいじゃん」

「ねー」

セシリア「うっ……ぐぅ……」

それからしばらく経って


貴虎(……疲れた……)

箒「よかったな、セシリアと仲直り出来て。これで……」

貴虎「Zzz……」

箒「……もう眠ったのか……」

貴虎「Zzz……」

箒「……」

貴虎「Zzz……」

箒「……おやすみ……呉島」

貴虎「Zzz……」

そのころ、教師陣


真耶「……っ! 織斑先生、これを」

千冬「どうした……なるほど、これは……」

真耶「一体、どうして……」

千冬「何か考えがあるんだろう。そのままにしておいてくれ」

真耶「はい。それと……問題は、こっちなんです」

千冬「これは…………どういうことだ、これは……」

次の日


「もうすぐクラス対抗戦だね」

「そうだ。2組のクラス代表が、変更になったって聞いてる?」

「あぁ、何とかって転校生に変わったのよね」

「そう。なんでも、中国の代表候補生なんだってさ」

セシリア「あら、わたくしの存在を今さらながらに危ぶんでの転入かしら?」

箒「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」

「それに、今のところ専用機を持ってるのって、1組と4組だけだから余裕だよ」

貴虎(4組にも専用機持ちがいたのか……初耳だ)

「ていうか、呉島くんなら余裕だよ」

「さすが呉島くんだ!」

鈴「……その情報、古いよ」 シュタッ

エッ
ザワッ

鈴「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

箒「お前は……まさか……」

鈴「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ!」 ビシッ

ザワッ
ザワザワ

「あれが2組の転校生……」

「中国の代表候補生……」

ガンッ

鈴「痛っ! 何すんの!?……あっ……」

千冬「もうSHRの時間だぞ? さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

鈴「お、織斑先生……すみません」

鈴「また後で来るからね! 逃げないでよ、貴虎!! ふんっ」

貴虎(っ! 俺の名前を……まさか、あの女も織斑千冬と同じパターンか!?)

貴虎(そうなると、あいつとの会話では、迂闊に受け答え出来ないぞ……)

箒「……呉島、今のは誰だ? 知り合いか? えらく親しそうだったが」

セシリア「た、貴虎さん!? あの方とはどういう関係ですの!?」

貴虎(こっちが聞きたい……)

今日はここまで
出来たら、また明日

それじゃ、投下してく

しばらく経って、休み時間


千冬「呉島、斬月の解析が終わったぞ」

貴虎「そうか」 パシッ

千冬「それを踏まえた上で、話がある。来い」

貴虎「……」 ガタッ

廊下


千冬「まず一次移行に関してだが……これはお前自身が一番よく分かっているだろうから、何も言わん」

貴虎「あぁ」

千冬「問題は次だ。調べて分かったことだが、お前の斬月は、拡張領域[バススロット]が埋まっている」

貴虎「どういうことだ?」

千冬「初期状態にも拘らず、既に後付武装[イコライザ]が量子変換[インストール]されていた」

千冬「しかも何らかの方法でロックされていて、装備することも外すことも出来ない」

千冬「はっきり言って、おかしな機体だ。一次移行が済んだら、また調べさせてもらうぞ」

貴虎「……そうか、分かった」

貴虎(これを調べれば、何か新しい情報が掴めるかと思ったが……反対に謎が増えてしまったか……)

千冬「話は以上だ。教室に戻って、次の授業に備えろ」

しばらく経って、食堂


鈴「アンタ、なにIS使ってるのよ。ニュースで見たとき、びっくりしたじゃない」

貴虎「……あぁ」

鈴「入試のときにISを動かしちゃったんだって? なんでそんなことになっちゃったのよ?」

貴虎「知らん。触ったら勝手に動いてしまった、それだけだ」

鈴「ふーん、変な話ね」

箒「……呉島、そろそろ説明して欲しいのだが」

セシリア「そうですわ、貴虎さん! まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるの!?」

貴虎(俺がこの女と!? いや、まさか……)

鈴「べ、べべ、別にあたしは付き合ってるわけじゃ……」

貴虎(だろうな。たとえ正体不明の異世界だろうと、俺がこんなうるさい女と付き合うとは思えん)

箒「では、一体どういう……」

鈴「幼馴染よ、幼馴染。ね、貴虎」

貴虎(ね、と言われてもな……とりあえず、ここは……)

貴虎「…………あぁ」

鈴「何よ、今の間」

貴虎「何でもない」

箒「なるほど、幼馴染だったか。私は篠ノ之箒だ」

鈴「凰鈴音よ。初めまして、これからよろしくね」

箒「あぁ、こちらこそ」

セシリア「ンンンッ! わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰鈴音さん?」

鈴「誰?」

セシリア「なっ!? わ、わたくしはイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存知ないの!?」

鈴「うん。あたし、他の国とか興味ないし」

セシリア「な、な、なっ……! い、い、言っておきますけど、わたくし、貴方のような方には負けませんわ!!」

鈴「そ。でも戦ったら、あたしが勝つよ。悪いけど、強いもん」

セシリア「い、言ってくれますわね……」

鈴「そんなことよりさ、貴虎。アンタ、クラス代表なんだって?」

貴虎「それがどうした?」

鈴「ふーん……あ、あのさぁ……」

貴虎「何だ?」

鈴「ISの操縦……あたしが、見てあげてもいいけど?」

貴虎「……いや、いい」

鈴「はぁ!? 何でよ!?」

箒「まぁ、呉島には必要ないだろう」

セシリア「えぇ、全く必要ありませんわね」

鈴「アンタたちは黙っててよ! 何? アンタそんなに上手いの?」

貴虎「……さぁな」 ガタッ

鈴「あ、ちょっと! 待ちなさいよ、貴虎!!」

しばらく経って、休み時間


セシリア「あの、貴虎さん」

貴虎「何だ、オルコット?」

セシリア「お時間があればでいいのですが……放課後、ISの特訓に付き合っていただけませんか?」

貴虎「構わん」

セシリア「ほ、本当ですね!? 約束ですわよ!?」

貴虎「あぁ、やることも特にないからな」

貴虎(本当は色々と調べたいが、如何せん情報が少な過ぎて、何も調べることが出来ん)

貴虎(それに、オルコットの特訓に付き合うのも、俺自身のスキルアップに繋がるかも知れないしな)

箒「……」

しばらく経って、放課後


セシリア「……篠ノ之さん、どういうことですの? これは」

箒「訓練機の使用許可が下りたのだ。私も、これで特訓に参加する」

セシリア「打鉄……日本の量産型ですわね。まさか、こんなにあっさりと使用許可が下りるなんて……」

貴虎(打鉄……やはり和風はいい。量産型の和風と言うと、黒影トルーパーのようだな)

箒「では呉島、始めるとしよう」 シャキン

セシリア「お待ちなさい! 貴虎さんにお相手していただくのは、このわたくしでしてよ!!」 ガシャン

貴虎「どちらでも構わん。何なら、2人同時にかかって来い」 ジャキッ

それから少し経って


貴虎「どうした? その程度か?」

セシリア「……はぁ……はぁ……」

箒「……はぁ……はぁ……」

貴虎「……ふん」

セシリア「そんな……1回も攻撃が当たらないなんて……」

貴虎「オルコット、お前はワンパターン過ぎる。代表決定戦のときに敗北していながら、何故同じ戦法を取った?」

貴虎「インターセプターと言ったか……あの近接ブレードを上手く使え」

貴虎「今回のように間合いに入られたときでも、トラップとして活用できるだろう」

セシリア「はい……」

貴虎「篠ノ之、お前は真っ直ぐ過ぎる。それはいいことだが、同時に攻撃が予想されやすい」

貴虎「打鉄には確か、ブレード以外にもライフルが装備されていたはずだ。あれをもっと活用しろ」

箒「……」

貴虎「特訓は以上だ。私は先に部屋に戻る」

セシリア「ありがとうございました、貴虎さん。では、また明日」

箒「私も、もう少し休んでから行く。今日は先にシャワーを使っててくれ」

貴虎「あぁ、分かった」 スタスタ

アリーナ更衣室


貴虎「さてと……ん?」

鈴「お疲れ、貴虎。飲み物はスポーツドリンクでいいよね? はい」

つ『タオル』

貴虎「……待っていたのか」

鈴「まぁね……やっと、2人きりだね」

貴虎「……」

鈴「貴虎さ……やっぱ、あたしがいないと寂しかった?」

貴虎(どう答えればいい……)

貴虎「…………まぁ、それなりにはな」

鈴「だから何よ、その間は」

貴虎「何でもない。私はもう戻る。篠ノ之にも、先にシャワーを使っておけと言われたからな」

鈴「シャワー? 篠ノ之って、さっきの子よね? アンタ、あの子とどういう関係なの!?」

貴虎「篠ノ之とは同室だ」

鈴「はぁっ!? そ、それって、あの子と寝食を共にしてるってこと!?」

貴虎「何度も言わせるな。じゃあな」 スタスタ

鈴「……」

そして夜、部屋


鈴「というわけだから、部屋替わって?」

箒「ふざけるな! 何故私が!?」

鈴「いやー、篠ノ之さんも男と同室なんて嫌でしょ?」

箒「別に嫌ではない。それに、これは私と呉島の問題だ」

鈴「大丈夫、あたしは幼馴染だから。ねー?」

貴虎(だから、ね、と言われても分からん)

箒「とにかく部屋は替わらない。自分の部屋に戻れ!」

鈴「……ところでさ、貴虎。約束、覚えてる?」

貴虎「約束……だと?」

鈴「そう、小学校のときに……」

箒「む、無視するな! こうなったら……はぁっ!!」 ブンッ

鈴「!」 ピカーン

ガシッ

箒「っ! 何!?」

鈴「今の、生身の人間なら本気で危ないよ」

箒「……」

鈴「ま、いいけどね。それでさ、貴虎。約束、覚えてる……よね?」

貴虎「…………いや、全くだ」

鈴「え……」

貴虎「すまないが、小さい頃の記憶が無いに等しくてな。実は何も思い出せない」

鈴「っ……」 ブンッ

貴虎「……」 ガシッ

鈴「っ! 何で受け止めるのよ!? 大人しくぶたれなさいよ!!」

鈴「最っっっ低! 女の子との約束を覚えてないなんて、男の風上にも置けないヤツ!!犬に噛まれて死ね!」

貴虎「なら、今教えろ。一体、私と何を約束したんだ?」

鈴「そ、そんなの、言えるわけないでしょうが……」

貴虎「何だと……」

鈴「……じゃあ、こうしましょ? 来週のクラス対抗戦、そこで勝った方が、負けた方に何でも1つ言うことを聞かせられる」

貴虎(手がかりになりそうなものは、そう簡単には手に入らないということか……)

貴虎「構わん、いいだろう」

鈴「覚悟してなさいよ!」 スタスタ

ガチャン

箒(凰……終わったな……)

箒「呉島」

貴虎「何だ?」

箒「オルコットのときのように、あまりやり過ぎるなよ」

貴虎「……ふん」

そして、クラス対抗戦当日

ピット


貴虎(1回戦目から当たるとは……まぁ、何回戦目に当たろうと変わりはないが)

真耶『あちらのISは甲龍(シェンロン)、呉島くんの斬月と同じ、近接格闘型です』

セシリア「わたくしの時とは勝手が違いますが……貴虎さんなら大丈夫ですわね」

箒「何度も言うが、やり過ぎるんじゃないぞ」

『それでは両者、規定の位置まで移動してください』

貴虎「ISを兵器だと『理解』していれば、何も問題ないはずだ。もしもオルコットのようにトラウマになるとしたら……」

セシリア「……貴虎さん……」

貴虎「……それは、あいつ自身の問題だ」

ガシャン
ビューン

箒「……兵器、か……」

アリーナ


鈴「来たわね、貴虎」

鈴「今謝るなら、少し痛めつけるレベルを下げてあげるわよ?」

貴虎「……」

鈴「言っておくけど、絶対防御も完璧じゃないのよ」

鈴「シールドを突破する攻撃力があれば、殺さない程度に痛ぶることは可能なの」

貴虎「……」

鈴「……ちょっと、何無視してんのよ!」

貴虎「お前もシドと同じか。軽口を叩きながらでしか戦えないのか?」

鈴「なっ……」

貴虎「オルコットといい、お前といい……無駄口を叩くのは構わんが、せめて独り言に留めておけ」

貴虎「はっきり言って、耳障りだ」

鈴「っ! 言ってくれるじゃない……いいわ、ぶっ潰してあげる!!」

『それでは両者、試合を開始してください』

鈴「はっ!」 ビューン

貴虎「……」 ビューン

鈴「だぁっ!」 ブンッ!

貴虎「ふん……」 ガキンッ

鈴「初撃を防ぐなんて、やるじゃない。けど……」 ピカーン

ガシッ

貴虎(二刀流か……?)

鈴「はっ」 ガチャン

貴虎(違う、ブレードを連結させたのか。まるでナギナタモードだな)

鈴「はぁっ!」 ブンッブンッ

貴虎「……」 サッ

鈴「おらぁっ!」 ブンッブンッ ブンッブンッ

貴虎「……」 サッ サッ

今日はここまで
出来たら、また明日

それじゃ、投下してく

鈴「やるじゃない……けど、甘い!」 バシュン

貴虎「……っ!」 サッ

ドカーン

鈴「はっ!」 バシュン バシュン

貴虎(弾丸が見えない……だが、見えなければ対処できないとでも思っているのか?) サッ サッ

ドカーン!
ドカーン!

鈴「よく躱すじゃない。この龍咆は砲身も砲弾も目に見えないのが特徴なのに」

貴虎(殺気で発射のタイミングが丸分かりだ。それともワザと出して、俺に隙を作らせようとしているのか……)

貴虎(龍咆……龍砲といい、中華とい、こいつは光実のアーマードライダーと似ている気が……)

貴虎(……いや、似ていないな。比べるまでもなく、光実の方が圧倒的に可愛い)

ところ変わって


箒「何だ、あの攻撃は?」

真耶「衝撃砲ですね。空間自体に圧力をかけて、砲弾を撃ち出す武器です」

セシリア「わたくしのブルー・ティアーズと同じ、第3世代兵器ですわね」

真耶「しかもあの衝撃砲は、砲身の射角がほぼ制限なしで撃てるようです」

セシリア「つまり、死角がないということですの?」

真耶「そういうことになりますね」

箒「だがそのわりには……一撃も当たっていないぞ……」

真耶「当たってませんね……」

セシリア「さすが貴虎さんですわ!」

アリーナ


鈴(あぁ、もう! 何で当たんないのよ!!) バシュン バシュン

貴虎(焦りか、苛立ちか、疲労か、狙いが雑になってきたな) サッ サッ

貴虎(そろそろ……仕掛けるとしよう) ドウッ

鈴「っ!」 バシュン バシュン

貴虎「……」 サッ サッ

貴虎「はぁっ!」 ブンッ

鈴「くっ……!」 ブンッ

バリーン!
ドーン!!

貴虎「!」

鈴「っ! 何…?」

ところ変わって


セシリア「何!? 何が起きましたの!?」

真耶「システム破損! 何かがアリーナの遮断シールドを、貫通してきたみたいです!!」

千冬「試合中止! 呉島、凰、直ちに退避しろ!!」

アリーナ


貴虎(何だ、今のは。一体何が起きている?)

鈴「貴虎、試合は中止よ! すぐピットに戻って!!」

斬月『ステージ中央に熱源』

斬月『所属不明のISと断定』

斬月『ロックされています』

貴虎(所属不明のISだと? 面倒な……)

貴虎(……いや、むしろこれは絶好の機会だ。新たな手がかりを、掴めるかも知れん)

鈴「貴虎、早くピットに……え?」

貴虎「……」 ガシッ

鈴「え、ちょっ……」

貴虎「……」 ポイッ

鈴「きゃっ! ちょっと、何すんのよ!?」

貴虎「どけ、邪魔だ」

鈴「はぁっ!? アンタ何言って……」

ゴーレム「……」 バキュゥゥゥ……!

貴虎(ビーム兵器か……) サッ

鈴「っ!」 ドカーン

鈴「きゃぁああ!」 ドーン!

貴虎「ッ……だから邪魔だと言ったんだ!」

ゴーレム「……」

貴虎(見たこともないISだな……操縦者が見えないタイプは、確か全身装甲[フル・スキン]と言うのだったか)

真耶『呉島くん、凰さん! 今すぐアリーナから脱出してください!!』

真耶『すぐに先生たちが、ISで制圧に行きます!』

貴虎(何だと……そんなことをされたら、掴めるかも知れない情報すら逃すことになるぞ……!)

真耶『聞こえましたか!? 聞こえたら返事を……』

貴虎「断る」

真耶『…………へ?』

貴虎「あいつは私が倒す。手を出すな」

真耶『何言ってるんですか!? 呉島くん! 呉島くん!?』

貴虎(うるさい……) ピッ

真耶『呉島く……』 ブチッ

貴虎「さて、と……そろそろ、切札を投入する頃合いか」 ジャキッ

ところ変わって


真耶「呉島くん! 呉島くーん!!」

千冬「あいつがやると言っているのだから、やらせてみてもいいだろう」

真耶「お、織斑先生……何を呑気なこと言ってるんですか!」

千冬「落ち着け、大丈夫だ」

真耶「どうして断言できるんですか……」

千冬「分からないのか? 何故なら、あいつは呉島だぞ?」

セシリア「そうですわ、先生。あの貴虎さんですのよ?」

箒「まぁ、あいつは呉島ですから」

真耶「えぇ……何ですか、その根拠のない信頼は……」

アリーナ


ゴーレム「……」 バキュゥゥゥ……!

貴虎(オルコットとの勝負のときから、既に使えるようにはなっていたが……) サッ

貴虎(まさかこんなことが起きるとはな……あのときの俺の判断は、間違っていなかったようだ) ピッ

斬月『初期化[フォーマット]と最適化処理[フィッティング]が完了しました』

斬月『確認[リブート]ボタンを押してください』

貴虎「待たせたな、斬月……」 ピッ

キィィィィィン……
ピカーン

鈴「何、それ……もしかして、一次移行!? まさかアンタ、今まで初期設定だけで戦ってたってこと!?」

貴虎(斬月のシルエットが変わった……細身でシンプルな、まるで人型アンドロイドをそのまま大型化したようだ)

貴虎(翼やブースターは見当たらないが、浮いているということは、何か推進力を与える装置がついているのだろう)

貴虎(白いカラーはそのまま、所々に金色のアクセント。腕や腿の装甲には、黒い和風の模様が入っている)

貴虎(そして何よりも……新たに腰に現れた、このベルト)

貴虎(ドライブベイにカッティングブレード……どう見ても戦極ドライバーだ。それに、武器も……)

つ『近接ブレード[無双セイバー]』

貴虎(アーマードライダーの無双セイバーを、そのままISサイズまで大型化させたようなブレードに変化した)

貴虎(もう、偶然では片付けられない。このISには……)

貴虎(俺が元の世界に帰るための手がかりが、必ず隠されている……!)

ゴーレム「……」 バシュ! バシュ!

貴虎(今すぐにでも調べ抜きたいが、まずは……) ブンッ

ガキィィッ!
ドカーン!

貴虎(あれを破壊するのが先だ)

鈴「嘘……ビーム弾をはじき返すなんて……」

貴虎(間違いない、あのISは無人機だ。動きの感覚が、感情に左右される人間とは大きく違う)

貴虎(人間はどれだけ経験を積もうとも、感情を全く表に出さずに動くことは出来ない)

貴虎(だからこそ、あの完全に無駄のない動きは、間違いなくプログラムによるものだ。なら……)

ゴーレム「……」 バキュゥゥゥ……! バシュ!

貴虎「ふん……」 サッ ブンッ

ガキィィッ!
ドカーン!

貴虎(無人機ならば、今までとは比べものにならないほど楽だ。何故なら機械は、殺気を読むことが出来ないからな)

貴虎「本気でいくぞ……」 ドゥッ

ゴーレム「……!」

貴虎(そう言えば、織斑が言っていた後付武装のロックはどうなっているだろうか) ピッ

貴虎(ロックされたままか……一次移行が完了したことで、連動してアンロックされたかと少し思ったが……)

貴虎(だが、初期装備[プリセット]だけでも十分だ) ジャキッ

貴虎(これがもし、本当に無双セイバーと同じものだと言うのなら……!)

貴虎「瞬時加速[イグニッション・ブースト]……」

貴虎「はっ!」 ザシュッ

ゴーレム「!」

貴虎「無反動旋回[ゼロリアクト・ターン]……」

貴虎「ふんっ!」 ザクッ

ゴーレム「!!」

貴虎(終わりだ……) ジャキッ

貴虎「はぁっ!!」 ズバッ!

ゴーレム「……」

ギギギギギ……
ドガーン!

ところ変わって


真耶「あれは……あの強さは…….」

千冬「1撃目でシールドに亀裂を入れ、それが塞がる前に2撃目で本体に攻撃を加える……」

千冬「そうやってシステムの一部を破壊したところへ、本気の一撃を放ったということだろう」

真耶「そんな、本当にそんなことが……」

セシリア「さすが貴虎さんですわ!」

箒「呉島……」

千冬(貴虎……お前は……)

アリーナ


貴虎「ふん……」

ピー、ピー、ピー

貴虎「……ん?」

貴虎(っ! もうエネルギーが!? どういうことだ……)

ピカーン
スタッ

貴虎(おかしい……一次移行をした直後は、まだ十分に残っていたはず)

貴虎(それが、こんな短時間で消費されるとは……何という燃費の悪さだ)

貴虎(やはり、この斬月には不明な点が多過ぎる。もう一度、学園に調べてもらうとするか……)

それからしばらく経って


真耶「……やはり無人機ですね。登録されていないコアでした」 カタカタ

千冬「そうか」

真耶「ISのコアは、世界に467しかありません。でもこのISには、そのどれでもないコアが使用されていました」

真耶「一体……」

千冬「……」

そして、貴虎の部屋


貴虎「……」 ガチャガチャ

箒「その錠前は、斬月か?」

貴虎「あぁ」

貴虎(そうだ。斬月の待機状態が錠前なのも、偶然などではなかったのか)

箒「そう言えば、クラス対抗戦は中止になったそうだ。例外的にらしい」

貴虎「また正体不明のISが襲ってきては、まずいからか」

箒「それに、他のクラスのモチベーションが下がってしまった」

貴虎「モチベーションだと?」

箒「呉島がノーダメージで凰をあしらったのを見て、誰も勝てないことを悟ったんだろう」

貴虎「……私のせいか?」

箒「呉島のせいだ」

貴虎「……まぁ、いい」

貴虎(とにかく、今日は大きな収穫があった。この斬月を調べれば、何か分かるかも知れない)

貴虎(もしも新しい情報が手に入れば、それは大きな進歩だ)

貴虎(待っていろ、光実、葛葉紘汰、オーバーロード、そして凌馬)

貴虎(必ず、お前たちの元へ帰ってみせる!)

箒「……そう言えば、結局、凰との約束とは何だったんだ?」

貴虎「……あっ……」

今回はここまで
次回は『第四話 学年別トーナメント』

上手い切れ目が見つからなかったから、アニメ8話まで一気に書くことにした
なので、また少し時間が空くと思う

長らく待たせてすまなかった
ようやく書き上がったんで、投下していく

今回は長いんで、貴虎(原作では一夏)が登場しないシーンは結構省いてある
分からないところがあれば、アニメや小説で補完してくれ

『第四話 学年別トーナメント』


真耶「お引っ越しです!」

箒「……はい?」

真耶「部屋の調整がついたんです。篠ノ之さんは、別の部屋に移動です」

箒「そうなんですか……分かりました」

真耶「それでは、準備が終わったら声をかけてください」

バタン

箒「引っ越し、か……」

貴虎「良かったな。男である私が同室では、今まで窮屈だったろう」

箒「いや、そんなことはないぞ。むしろ慣れてきた頃だったから、少し寂しいくらいだ」

貴虎「まぁ、達者でな」

箒「あぁ……また、教室で会おう」

バタン

次の日、ホームルーム


真耶「今日は何と、転校生を紹介します!」

エェッ!
ザワザワ……

シャル「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします」

貴虎(っ! 何だと……!)

「お、男……?」

シャル「はい。こちらに、僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国より転入を……」

キャー!
ワイワイ!

シャル「え……」

「男子! 2人目の男子!!」

「しかもウチのクラス!」

「美形! 守ってあげたくなる系の!!」

千冬「騒ぐな、静かにしろ」

千冬「今日は2組と合同で、IS実習を行う。各人はすぐに着替えて、第2グラウンドに集合」

千冬「それから、呉島。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ」

千冬「解散!」

貴虎(男子だと……ISは、異世界の人間である俺を除いて、女にしか使えないはず……)

貴虎(それはつまり……このデュノアもまた、俺と同じ世界の人間である可能性があるということか!)

貴虎(無論、この世界の人間である可能性もあるが……それは追い追い確かめていこう)

貴虎(とにかく、これは大きなステップとなるかも知れない……何ということだ!)

シャル「君が呉島くん? 初めまして。僕は、シャルル・デュノアだよ」

貴虎「呉島貴虎だ。とりあえず、まずは更衣室まで案内しよう」

シャル「うん、よろしくね」

更衣室


貴虎「さてと……時間がない。さっさと着替えるぞ」 バサッ

シャル「……うわっ!」 バッ

貴虎「どうした? 着替えないのか?」 ヌギヌギ

シャル「き、着替えるよ。でも、その……あっち向いてて、ね?」

貴虎「恥ずかしいのか? なら、私は向こうで着替えよう。終わったら来てくれ」

シャル「う、うん、ありがとう」

テクテク

貴虎(男同士でも着替えを恥ずかしがるのか……繊細なやつだ)

シャル「終わったよ」

貴虎「……速いな。私はまだだ」

シャル「そんなに速くないよ。むしろ、貴虎の方が遅いんじゃない?」

貴虎「まだ慣れてなくてな。以前はスーツなど着替えずとも、そのまま変身していたから……」

シャル「変身?」

貴虎(っ! しまった、口が滑った!!)

シャル「そっか、貴虎も専用機を持ってるんだったね。でもスーツも一緒に展開するのって、少しエネルギー使っちゃうよ?」

貴虎(……そうだった。各専用ISはパーソナライズを行うことで、スーツごと『変身』できるのだったな)

貴虎「そう言えば、そうだったな。ただでさえ燃費が悪いのだから、あまりしないようにしよう」

シャル「燃費……貴虎のISは、燃費が悪いの?」

貴虎「あぁ。実は私の斬月は、エネルギー消費スピードが異様に速くてな。原因は、まだ分かっていないが……」

シャル「そうなんだ……斬月は燃費が悪い。うん、分かった。ありがとう」

貴虎「何がだ?」

シャル「っ! な、何でもないよ!! こっちの話!」

貴虎「?」

グラウンド


千冬「本日から、実習を開始する」

ハイ!

千冬「まずは戦闘を実演してもらおう。凰、オルコット!」

鈴「はい!」

セシリア「はい!」

千冬「専用機持ちなら、すぐに始められるだろう。前に出ろ」

鈴「めんどいなぁ、何であたしが……」

セシリア「はぁ……何か、こういうのは見世物のようで気が進みませんわね……」

千冬「お前ら、少しはやる気を出せ。あいつにいいところを見せられるぞ?」

セシリア「!」

鈴「!」

セシリア「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」

鈴「実力の違いを見せるいい機会よね、専用機持ちの!」

セシリア「それで、お相手は……鈴さんとの勝負でも構いませんが?」

鈴「こっちの台詞、返り討ちよ」

千冬「慌てるな、馬鹿共。対戦相手は……」

ヒューン

真耶「わぁぁぁぁああああああああ!!!!」

キャー!

真耶「ど、どいてくださーい!」

シャル「っ! 貴虎、危ない!!」

貴虎「……変身」 ピカーン

ドゥッ
ガシッ

真耶「……呉島くん……」

貴虎「全く……教師にしては、世話が焼ける……」 ピカーン

シャル「すごい……あの一瞬で、正確に受け止めるなんて……」

箒「グラウンドに穴が空かなくて良かった……」

セシリア「さすが貴虎さんですわ!」

貴虎(そう言えば、エネルギーの残りは……88.7%か。展開と加速だけで、ここまで消費するとは……)

千冬「さて、小娘共。さっさと始めるぞ」

セシリア「え……あの、2対1で?」

鈴「いや、さすがにそれは……」

千冬「安心しろ。今のお前たちなら、すぐ負ける」

セシリア「……」

鈴「……」

千冬「では、始め!」

ゴォォォ……

セシリア「手加減はしませんわ!」

鈴「本気でいくから」

真耶「い……いきます!」

バンバン!
ガキンガキン!

千冬「デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」

シャル「は、はい。山田先生の使用されているISは……」

……シャル、ラファール・リヴァイヴについて説明する……

シャル「……装備によって、格闘、射撃、防御といった全タイプに……」

千冬「あぁ、一旦そこまででいい。終わるぞ」

ドカーン!

セシリア、鈴「「きゃぁぁぁぁああああああああ!!!!」」 ドーン!

セシリア「くっ……まさか、このわたくしが……」

鈴「アンタねぇ……何、面白いように回避先よまれてんのよ!」

セシリア「鈴さんこそ、無駄にバカスカと撃つからいけないのですわ!」

千冬「これで諸君にも、教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

千冬「続いて……呉島、前に出ろ」

貴虎「まさか、私も戦うのか?」

千冬「言ったはずだ。お前の斬月は、データ収集を目的とした機体だと」

千冬「様々な相手と戦闘を行うことで、より効率よくデータがとれる。さぁ、やってみろ」

貴虎「……変身」 ピカーン

貴虎(エネルギーの残りは……87.4%か。いけるとは思うが、微妙な量だな……) ジャキッ

千冬「よし、始め」

ゴォォォ……

真耶「お手柔らかにお願いしますね」 ガチャ

貴虎「容赦はしない……」 ドゥッ

真耶「いきます!」 バシュン!

貴虎「……」 サッ

真耶「はぁっ!」 バシュン! バシュン!

貴虎「……」 サッ サッ

真耶「……」 ピカーン

ガシッ
ガチャン

真耶「はっ!」 バババババ……

貴虎「!」 ヒュンッ

貴虎(ビームライフルからマシンガンに換装したか……この弾幕を避けて近づくことは出来そうにないな)

貴虎(ブレードしか持たない俺に対して、最も有効な手段ということか。このまま避け続けても、こちらのエネルギーが尽きて終わりだ)

貴虎(エネルギーの残りは……85.6%を切った辺りか。まだ大丈夫だとは思うが、早めに対処した方がいい)

貴虎(よし……斬月、無双セイバーをガンモードへ移行しろ)

ガシャッ
キュイーン……

貴虎「はぁっ!」 バキュン!

真耶「っ! エネルギー弾!?」 サッ

貴虎(今だ! 不意打ちを避けた直後の、一瞬の隙を突く)

貴虎(エネルギー残量、約83.2%……いくぞ、瞬時加速[イグニッション・ブースト]!) ドゥッ

貴虎「はっ!」 ザシュッ

真耶「くっ……」

貴虎(残り75.9%……無反動旋回[ゼロリアクト・ターン]!)

貴虎「ふんっ!」 ザクッ

真耶「っ!」

貴虎(66.5%……終わりだ!) ジャキッ

貴虎「はぁっ!」 ブンッ

真耶「今です!」 ピカーン

ガキィィィ……!

貴虎「っ! 何!?」

真耶「ふっふっふっ……甘いですね、呉島くん!」

貴虎(シールドを瞬時に装備しただと……いや、俺が仕掛けるのに気づき、スタンバイしていたのか!)

真耶「呉島くんが決めるタイミングは、既にバッチリ把握してます! この前のIS襲撃のとき、しっかり見てましたからね!!」

貴虎(よし……斬月、無双セイバーをガンモードへ移行しろ)

ガシャッ
キュイーン……

貴虎「はぁっ!」 バキュン!

真耶「っ! エネルギー弾!?」 サッ

貴虎(今だ! 不意打ちを避けた直後の、一瞬の隙を突く)

貴虎(エネルギー残量、約83.2%……いくぞ、瞬時加速[イグニッション・ブースト]!) ドゥッ

貴虎「はっ!」 ザシュッ

真耶「くっ……」

貴虎(残り75.9%……無反動旋回[ゼロリアクト・ターン]!)

貴虎「ふんっ!」 ザクッ

真耶「っ!」

貴虎(66.5%……終わりだ!) ジャキッ

貴虎「はぁっ!」 ブンッ

真耶「今です!」 ピカーン

ガキィィィ……!

貴虎「っ! 何!?」

真耶「ふっふっふっ……甘いですね、呉島くん!」

貴虎(シールドを瞬時に装備しただと……いや、俺が仕掛けるのに気づき、スタンバイしていたのか!)

真耶「呉島くんが決めるタイミングは、既にバッチリ把握してます! この前のIS襲撃のとき、しっかり見てましたからね!!」

貴虎(エネルギー残量が半分を切った……このままでは、押し切られてお終いだ……!)

真耶「どうですか、これが私の実力……」

バキュン!

真耶「きゃっ!?」

貴虎「なら、これも覚えておけ。無双セイバーは、1回のリロードで4発撃てると」 バキュバキュン!

真耶「うぅっ!」

貴虎(残り43.2%……今度こそ終わりだ!) ジャキッ

貴虎「はぁっ!!」 ズバッ!

真耶「きゃぁぁぁぁああああああああ!!!!」 ドーン!

千冬「そこまで」

真耶「あぁ……負けちゃいましたね」 ピカーン

貴虎(19.9%……やはり、一撃に力を込めれば、それだけ一気に消費されてしまうな……) ピカーン

鈴「何、あの強さ……」

セシリア「さすが貴虎さんですわ!」

箒「あいつの技を受け止めた先生もすごいぞ……」

シャル(あの鬼気迫る戦い方……想像以上に恐いね……)

千冬「それでは、グループになって実習を行う。リーダーは、専用機持ちがやること。では、分かれろ」

「呉島くん、一緒に頑張ろう!」

「分かんないところ、教えてー」

「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」

「ねぇねぇ、私もいいよね?」

ワイワイ
ガヤガヤ

貴虎(女に囲まれて質問攻め……ダメだ、腹痛が……)

箒(呉島……見るからに脂汗が流れているが、大丈夫か……?)

真耶「ええと、いいですか、皆さん。これから、訓練機を1班1人取りに来てください」

真耶「数は『打鉄』が3機、『リヴァイヴ』が2機です。好きな方を班で決めてくださいね」

貴虎(打鉄以外、あり得ん) バッ

箒(急に素早く!? そんなに打鉄の方がいいのか……)

シャル(何だろう……よく分からないけど、何となく負けた気がする……)

鈴「勝手にあちこち触っちゃダメよ。怪我しても知らないからね」 チラッ

セシリア「まずは、順番に装着してみてくださいな」 チラッ

貴虎「……」

鈴(あたしも、あっちに行きたかった……)

セシリア(こういうときは、エリートである我が身が恨めしいですわ……)

貴虎(打鉄……やはり、シンプルなこの機体はいい)

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ投下してく

貴虎「では、出席番号順に、ISの装着と起動、歩行まで行う。最初は……」

清香「はいはいはーい! 出席番号1番、相川清香!! ハンドボール部!」

清香「趣味はスポーツ観戦と、ジョギングだよ! よろしくお願いします!!」 スッ

貴虎「……そうか」

「あぁっ、ずるい!」

「私も!」

「私も!」

「「「第一印象から決めてました!」」」

貴虎(……何がしたいんだ……何をしているんだ……)

貴虎(……女は……分からん……)

箒「……」

貴虎「……まぁいい、とりあえず始めるぞ」

貴虎「相川、装着して起動までしろ。それが出来たら、歩行だ」

清香「オッケー!」

ガチャン
ガシャッ

清香「よっとと……」

ウィーンガシャ
ウィーンガシャ

貴虎「よし、止まれ」

ウィーンガシャ
ガチャン

貴虎「それでは、次のやつに交代だ」

清香「はぁー、緊張したー」 ピョンッ

貴虎「次は誰だ?」

箒「私だ。しかし……これではコックピットに届かないのだが」

真耶「あー、最初のうち、よくある失敗ですね。呉島くん、乗せてあげてください」

貴虎「何だと?」

真耶「斬月を出してください」

貴虎「……いや、その必要はない」

真耶「え?」

貴虎「……」 ピョンッ

ガシッ

貴虎「はっ」 タンッ

「すごーい!」

「立ったままのISに、登って乗り込むなんて!」

ウィーンガシャ

貴虎「しゃがませたぞ。この高さなら、問題なく乗れるはずだ」

真耶「うーん、そうですけど……でも危険ですから、今度からは、ちゃんと斬月で運んでくださいね」

箒「……」

貴虎「……何だ?」

箒「何でもない」

貴虎「……そうか」

それからしばらく経って


千冬「では、午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各人格納庫に班別で集合すること」

千冬「専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では、解散」

貴虎(ようやく終わった……いつも以上に疲れた)

千冬「そうだ、呉島。この前襲撃してきたISの解析が終わったから、斬月を調べられるようになったぞ」

千冬「確か、燃費が悪いと言っていたな。学園で調査するから、斬月を渡せ」

貴虎「あぁ、頼む」 パシッ

千冬「ちなみに、今はどれくらい残っている?」

貴虎「最後に確認したときは、19.9%だった。今はもう少し減っていると思われる」

千冬「なるほど、確かに酷いようだな。分かった、なるべく早めに調べよう」

それから昼、屋上


貴虎「……おい」

セシリア「何ですか、貴虎さん」

貴虎「何故、お前たちまでここにいる?」

鈴「いいじゃない、別に。てか、アンタ最近食堂で見ないと思ったら、こんなところにいたんだ」

セシリア「本当ですわ。一声かけてくださればよかったのに」

貴虎(食堂でいつも注目されるのが嫌で、ここに逃げてきた……とは言えん)

箒(大方、食堂でいつも注目されるのが嫌で、ここに逃げてきたんだろうな……)

シャル「えっと……本当に僕が同席してよかったのかな?」

貴虎「もちろんだ。むしろ、お前がいなければ始まらない。今日から、同室でもあるしな」

貴虎(頼む。この場にいる男を、俺一人にしないでくれ)

シャル「ありがとう。貴虎って、優しいね」

貴虎(……すまん、デュノア)

シャル「あれ、どうしたの?」

貴虎「いや、何でもない」

そして夜、部屋


貴虎「では、今日からよろしく頼む」

シャル「うん。よろしく、貴虎」

貴虎「ベッドは奥を使ってくれ」

シャル「うん。……そう言えばさ、貴虎は、いつも放課後にISの特訓してるって聞いたけど、そうなの?」

貴虎「オルコットに頼まれてな。篠ノ之や凰共々、相手をしている」

シャル「僕も加わっていいかな? 貴虎の強さの秘密、もっと知りたいから」

貴虎「構わんが、明日はやるかどうか、まだ分からないぞ。斬月を解析に回しているからな」

シャル「そっか。確か、燃費が悪いんだったね」

貴虎「原因が分かればいいが、あれには不明な点しかないからな。あまり期待はしていない」

シャル「分かるといいね……斬月について」

次の日


真耶「ええと……き、今日も嬉しいお知らせがあります。また1人、クラスにお友達が増えました」

貴虎(何!? いくら何でもおかしいだろう!?)

貴虎(いや……もしかしたら、今度もデュノアのように男かも知れん。なら、また手がかりになりそうなものが……!)

真耶「ドイツから来た転校生の、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです」

貴虎(女か……なら、興味はない)

「どういうこと?」

「2日連続で転校生だなんて……」

「いくらなんでも変じゃない?」

ヒソヒソ…

真耶「み、皆さんお静かに! まだ自己紹介が終わってませんから」

千冬「挨拶をしろ、ラウラ」

ラウラ「はい、教官。……ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

真耶「……あ、あの……以上、ですか?」

ラウラ「以上だ」 チラッ

貴虎「……」

ラウラ「っ! 貴様が……」 トコトコ

貴虎「……何だ?」

ラウラ「……」 ブンッ

貴虎「……」 ガシッ

ラウラ「……ほう……」

貴虎「貴様といい、織斑といい……この世界では、初対面の相手を叩くのが礼儀なのか?」

ラウラ「……私は認めない。貴様があの人の幼馴染であるなど、認めるものか」

貴虎「……は?」

ラウラ「……」

貴虎「おい……今、何と言った?」

ラウラ「私は認め……」

貴虎「そこじゃない、その後だ」

ラウラ「貴様があの人の幼馴染であるなど……」

貴虎「っ!! そんな……嘘だ……」

箒(貴虎……さすがに今は、いつものあいつらしくはいられないか……)

セシリア(何ですの、あの人は!? いきなり貴虎さんを叩こうとして、あんなことまで言うなんて!)

シャル(初対面でここまで言われたら……やっぱり、ショックだよね……)

貴虎「俺が……織斑の幼馴染だと……」

箒、セシリア、シャル(……え? そっち?)

シャル(いや、確かに貴虎と織斑先生が幼馴染だったっていうのは衝撃だけど)

セシリア(今、それよりもっとショックを受けるべきことを言われた気が……)

箒(呉島、一人称が俺になってるぞ)

貴虎「そんな……バカな……」

貴虎(俺が……相手を普通に殴る、あの暴力女の幼馴染だと……)

貴虎「嘘だ……嘘だ、そんなこと……」

昼休み


千冬「呉島、斬月の解析が終わったぞ」

貴虎「……」

千冬「……呉島」

貴虎「……」

千冬「……」 スパーン!

貴虎「がっ!」 バタッ

千冬(いつものように受け止めないとは、重症だな……そんなにあいつの言葉が突き刺ったのか?)

千冬「いい加減、正気に戻れ」

貴虎「……はっ! ……ここは……何処だ……?」

千冬「……」 スパーン!

貴虎「がはっ!」 バタッ

廊下


千冬「斬月について、また新たな事実が明らかになった」

千冬「まず、お前が言っていた燃費に関してだが、どうやら斬月の唯一仕様特殊才能[ワンオフ・アビリティー]が原因らしい」

貴虎「唯一仕様特殊才能……確か、ISが操縦者と最高状態の相性に達したとき、勝手に発現する能力だったか?」

千冬「そうだ。普通は第二形態[セカンド・フォーム]から発現するものだが、斬月は第一形態でありながら発現している」

千冬「それだけでも前例が全くない特異なケースだが、さらに異常なのは、その発現条件だ」

貴虎「どういうことだ?」

千冬「お前が言ったように、唯一仕様特殊才能の発現条件は、普通はISと操縦者との相性だ」

千冬「だが斬月は……にわかには信じがたいことだが……」

貴虎「何だ?」

千冬「……常時発現し続けている。相性など関係なく、IS展開中ずっとだ」

貴虎「……まさか、あり得ん」

千冬「あぁ、普通ならあり得ない話だ。だが、事実そのせいで、斬月のエネルギーは異様なスピードで減っていくだろう?」

貴虎「確かにそうだ……では、斬月の唯一仕様特殊才能とは、一体どんな機能なんだ?」

千冬「それは……ISのエネルギーを人体に無害な状態へと変換し、ISスーツを通して操縦者へ供給する、というものだ」

貴虎(っ! 何だと……それではまるで、戦極ドライバーと同じではないか……)

千冬「つまり斬月を展開しているとき、お前は常に万全な状態で戦うことが出来る。その代わり、斬月のエネルギーは急速に消耗する」

千冬「『コンバート』……それが斬月の唯一仕様特殊才能であり、最悪な燃費の原因だ」

千冬「エネルギー消費量に関しては、斬月は一撃一撃が重く、普通に燃費が悪いという理由もあるがな」

貴虎「では、元のエネルギー量を増やすことで、それに対処できないか?」

千冬「無理だ。ISにチャージ出来るエネルギー量の上限を上げる後付武装[イコライザ]は確かに存在するが……」

貴虎「そうか……斬月は拡張領域[バススロット]が埋まっていて、空きがないんだったな」

千冬「だが、対処のしようがないわけじゃない。これを」 パシッ

貴虎「これは?」

千冬「緊急時用の携帯型エネルギーポッドだ。ISのエネルギーを、一回分フルチャージ出来る」

千冬「学園にいくつか支給されているものだが、その内の1つをお前に貸し出す」

千冬「この前のように学園が襲撃された際、お前の力が必要になる可能性もあるからな」

貴虎「なるほど……ありがたく受け取っておこう」

放課後


シャル「貴虎、ちょっと相手してくれる? 斬月と戦ってみたいんだ」

貴虎「構わん。斬月のエネルギーも、まだ十分にあるからな」

シャル「ありがとう、それじゃあ……」 ピカーン

貴虎「……変身」 ピカーン

ゴォォォ……

「見て見て! 呉島くんとデュノアくんがやるみたいよ」

「うわぁー!」

「デュノアくんの専用機って、ラファール・リヴァイヴよね!?」

「フランスの第2世代型IS!」

「さすがデュノアくんだ!」

ザワザワ

シャル「いくよ、貴虎」 ビューン

貴虎「……」 ビューン

シャル「はっ!」 ピカーン

貴虎(アサルトライフルか……昨日の山田といい、斬月の弱点を上手く突いてくる)

シャル「いくよ」 ジャキッ

ダダダダダ……

貴虎(この弾幕を抜けて近づくことは出来そうにない。が、かと言って逃げ続けても、持久戦に持ち込まれてお終いだ) ビューン

貴虎(考えている時間はない。隙を作り、一気に飛び込む……斬月、無双セイバーをガンモードへ)

ガシャッ
キュイーン……

貴虎「……」 バキュン!

シャル「おっと……」 サッ

貴虎(瞬時加速!) ドゥッ

貴虎「はっ!」 ブンッ

シャル「シールド!」 ブンッ

ガキィィィ……!

シャル「やっぱりすごいね、貴虎は。あの距離から、あそこまで正確にエネルギーを撃てるなんて」 ググッ

貴虎「……」 グググ……

シャル「でも……僕だって、それを予測してなかったわけじゃないんだ!」 ガシャン!

貴虎(っ! 盾の内側から、パイルバンカーだと!?)

シャル「はぁっ!」 ブンッ

貴虎「……」 ドガッ

シャル「っ! 嘘!?」

貴虎「はっ!」 ザクッ!

シャル「くっ……」

貴虎(ISというのは、意外と使いやすいものだ。特に、空中でも蹴りが出せるところがな……無反動旋回!) ザシュッ

シャル「あっ!」

貴虎「終わりだ……はぁっ!」 ズバァッ!

シャル「うわぁぁぁああああああ!!!」 ドーン!

貴虎「ふん……」 ピカーン

シャル「あはは、負けちゃった」 ピカーン

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ投下してく

貴虎「アサルトライフルにパイルバンカー内蔵シールド……他にもありそうだな。装備はいくつくらいある?」

シャル「僕のは20種類くらいかな。専用機だから、量産型リヴァイヴよりかなりいじってあるよ」

シャル「基本装備[プリセット]をいくつか外して、拡張領域を倍にしてあるんだ」

貴虎「20……なるほど、敵に回すと厄介そうだ。……ん?」

シャル「どうしたの? ……あっ!」

ザワザワ

「ねぇ! ちょっと、アレ!!」

「嘘!? ドイツの第3世代じゃない!」

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いていたけど……」

ラウラ「……」

貴虎「……」

ラウラ「呉島貴虎……」

貴虎「……私に何か用か?」

ラウラ「貴様も専用機持ちだそうだな……ならば話が早い。私と戦え」

貴虎(斬月のエネルギーは……32.7%か。ポッド内のエネルギーも合わせれば、132.7%……)

貴虎(あいつの誘いに乗り、今すぐ戦ってもいい。が、機体の性能が全く不明の今、迂闊に交戦するのは危険か……?)

貴虎「もし、断ると言ったら?」

ラウラ「ならば……」 バシュン!

シャル「っ! 貴虎!!」

貴虎「……変身」 ピカーン

ガキン!
ドガーン!

貴虎「問答無用というわけか……いいだろう、相手をしてや……」

『そこの生徒! 何をやっている!! 学年とクラス、出席番号を言え!』

ラウラ「……ふん、今日のところは引いてやろう」 ピカーン

スタッ
スタスタ……

貴虎「……何だったんだ、一体」 ピカーン

それからしばらく経って


貴虎(あのボーデヴィッヒという女……織斑や凰と同じく、俺の知らない過去に因縁があるタイプか……)

貴虎(凰は幼馴染、織斑も幼馴染だった……なら、あいつも幼馴染か?)

貴虎(いや……だとしたら、あそこまで敵視される理由が分からん。本当に、俺と一体どんな関係が……)

「答えてください、教官! 何故こんなところで……」

貴虎(ん? この声は……ボーデヴィッヒか?)

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

貴虎(こっちの声は……織斑か。会話しているのか? だとしたら……新たな情報を得られる、またとないチャンスではないか!) ササッ

貴虎(これは盗み聞きではない、調査だ。断じて盗み聞きなどではない) コソッ

ラウラ「こんな極東の地で、何の役目があるというのですか!? お願いです、教官。我がドイツで、再びご指導を」

ラウラ「ここでは貴方の能力は、半分も活かされません! 大体、この学園の生徒など、教官が教えるに足る人間ではありません」

ラウラ「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている。そのような者たちに、教官が時間を割かれるなど……」

千冬「そこまでにしておけよ、小娘」

ラウラ「っ!」

千冬「少し見ない間に、偉くなったな。15歳でもう選ばれた人間気取りとは、恐れ入る」

ラウラ「わ、私は……」

千冬「寮に戻れ、私は忙しい」

ラウラ「くっ……」 スタスタ

千冬「……そこの男子、盗み聞きか? 異常性癖は感心しないぞ」

貴虎「盗み聞きではない、調査だ」

千冬「やっていることは、盗み聞きと変わらん。まぁ、どうでもいい。お前もさっさと寮に戻れ」 スタスタ

貴虎「……」 スタスタ

貴虎(あまり情報と呼べるものは手に入らなかったが……どうやら因縁があるのは俺ではなく、織斑の方だったらしい)

貴虎(俺とボーデヴィッヒは、間接的にしか関係はないということだ。あいつとの関係を調べる、余計な手間が省けて良かった)

貴虎(しかし……そうすると、何故俺が敵視されるのかが不明なままだ。どちらにせよ調査を続けなければならないとは、面倒な……)

それから少し経って、部屋


貴虎「デュノア、戻ったぞ」 ガチャ

貴虎「……シャワーか」 バタン

貴虎(シャワーといえば、ボディソープが切れていた気がする。届けてやろう……) ガサガサ

貴虎(……いや、待て) ピタッ

貴虎(あいつは、男同士である俺との着替えも避けるほど恥ずかしがり屋だ)

貴虎(普通に届けたら、怒られるかも知れん……よし) コンコン

シャル『っ! 何!? 貴虎!?』

貴虎「ボディソープが切れていただろう? 替えをここに置いておくぞ」

シャル『う、うん! ありがと!!』

貴虎(少し驚かせてしまったか……)

貴虎(さて、これから何をするか……ん?)

貴虎(デュノアのバッグに何か……っ! あれは……まさか……) ガサッ

貴虎(やはり、間違いない……どうして、これがデュノアのバッグに……)

貴虎(まさか、あいつ……)

それから少し経って


シャル「貴虎、お待たせ」 ガチャ

貴虎「デュノア……」

シャル「どうしたの? そんな顔して」 バタン

貴虎「そこに座れ」

シャル「へ?」

貴虎「そこに座れ」

シャル「う、うん」

貴虎「さて……デュノア」

シャル「な、何かな?」

貴虎「……」

つ『ブラジャー』

シャル「……うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

シャル(ぼ、僕の……どうして貴虎が!?)

貴虎「デュノア……お前……」

シャル「……そっか、バレちゃったんだね……そうだよ、実は……」

貴虎「どうして下着など盗んだんだ……!」

シャル「僕は女……え?」

シャル「……え? ちょっと待って、え?」

貴虎「確かにこの学園には、私とデュノアを除けば女しかいない。そういう欲望をコントロールするのも難しいだろう」

シャル「えっと……貴虎?」

貴虎「だがそれでも……やっていいことと悪いことがある!」

シャル「いや、その……」

貴虎「言い訳など必要ない! 今ならまだ間に合う。ちゃんと本人に謝罪し……」

シャル「話を聞いて!」

それから少し経って


……シャル、女であることを説明する……

貴虎「何……だと……」

シャル「ごめんね、貴虎。今まで騙してて」

貴虎「デュノアが女……そんな……そんな……」

シャル「貴虎……本当に、ごめ……」

貴虎「新たに最高の手がかりが出てきたと、ずっと信じていたんだぞ!」 ガシッ

シャル「ひゃっ!? え、何!? 手がかりって!?」

貴虎「お前を希望と信じて疑わなかった私の気持ちを、どうしてくれる!!」 ブンブン

シャル「うわわわわ! 何!? 僕が貴虎の希望だったの!?」 ガクガク

貴虎「うわぁぁぁああああああ!!!」 ブンブン

シャル「やめて! 揺らさないでぇぇぇ!!」 ガクガク

貴虎「はぁ……はぁ……」

シャル「お、落ち着いて……」

貴虎「……すまん、取り乱した……」

シャル「……お茶でも、飲む?」

貴虎「……あぁ、もらおう……」

それから少し経って


貴虎「では、話してもらおうか。何故、わざわざ男だと偽っていたのか」

シャル「うん、それはね……」

……シャル、自分の過去について話す……

シャル「……というわけなんだ」

貴虎「……」

シャル「はぁ……本当のこと話したら、楽になったよ。聞いてくれて、ありがとう」

シャル「それと、今まで嘘をついていて、ごめん」

貴虎「……それで、これからどうする?」

シャル「どうって……女だってことがバレたから、きっと本国に呼び戻されるだろうね」

シャル「後のことは分からない。良くて牢屋行きかな」

貴虎「お前は諦めるのか? 希望を、未来を」

シャル「僕には選ぶ権利なんてないから、仕方ないよ」

貴虎「そうか」

シャル「うん……」

貴虎「……これは私の話だが、昔、私もあることに諦めていた」

シャル「貴虎?」

貴虎「まぁ聞け。そのとき、私はある問題に取り組んでいたのだが……それを解決するために、犠牲はやむなしと考えていた」

貴虎「どんな決断にも、犠牲は付き物だと。犠牲の上に、希望を得る。希望の対価に、犠牲を要求する。それがこの世界のルールだと」

貴虎「そう自分に言い聞かせた。……私は、いつの間にか諦めていたのだ。本当の希望を……犠牲を払わずとも済む、別の方法を」

シャル「……」

貴虎「だがそんなとき、ある男が、私の目の前に現れた。そいつは犠牲による希望を、ただの絶望だと切り捨てた」

貴虎「そのときは、とても目障りに思えた。社会を知らないガキ、何も考えずに戯言を吐くクズだと」

貴虎「私は、何度もそいつとぶつかった。現実を見せ、絶望させ、戦う意味を見失わせた」

貴虎「だがそいつは、何度でも立ち上がってきた。どんなに絶望しようと、決して希望を諦めようとはしなかった」

貴虎「そして遂に、そいつは新たな希望を打ち出して見せた。犠牲を必要としない、本当の希望を」

シャル「希望……」

貴虎「私は、その男から学んだのだ。どんなに絶望しか見えなくとも、決して希望を捨ててはいけないと」

貴虎「デュノア。もしもお前が諦めるのなら、お前の未来には絶望しかない」

貴虎「だが、もしも決して諦めないのなら……必ず、希望は生まれる。私は、そう信じている」

シャル「……本当に……本当に、あるのかな……希望なんて……」

貴虎「ある。お前が現状に抗い、探し求め続けるのなら……本当の希望は、必ず現れる」

シャル「……僕は……」

シャル「……僕は、信じたい、希望を。でも……やっぱり、どうしても不安なんだ」

シャル「希望なんて、ないんじゃないかなって……」

貴虎「焦る必要はない。お前が卒業するまで、まだ3年もある」

貴虎「お前を女だと知っているのは私だけなのだから、上手くやれば、卒業まで学園を騙し続けることも可能だろう」

貴虎「それまでの間、本気で探し続けろ。決して諦めず、求め続けろ。最後まで……希望を、信じ続けろ」

シャル「……ありがとう、貴虎」

貴虎「……泣きたいときは泣くといい。恥ずかしいなら、耳を塞いで後ろを向いている」 クルッ

シャル「うん……そうさせてもらうね」 コツン

貴虎(……背中程度なら、貸してやるか)

シャル「っ……うぅ……」

貴虎「……」

それからしばらく経って


シャル「大分落ち着いたよ。ありがとう、貴虎」

貴虎「なら、食堂に行くとしよう。早くしないと、食いっぱぐれることになる」

シャル「うん。じゃあ、一緒に行こ?」 ガタッ

貴虎「あぁ」 ガタッ

貴虎「そう言えば……デュノアが女となると、あの下着は、本当にお前のだったわけか」

シャル「う、うん、まぁ……」

貴虎「つまり……私は同室の女の下着を勝手に掴み、あろうことか、それを本人の目の前に差し出したことに……」

シャル「……貴虎?」

貴虎「……うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」 バタッ

シャル「貴虎!? しっかりして! 貴虎、貴虎ぁっ!!」

次の日、放課後


シャル「貴虎、今日も特訓するよね?」

貴虎「私はどちらでも構わないが、オルコットや凰に頼まれているからな」

ダダダッ

「第3アリーナで代表候補生3人が、模擬戦やってるって!」

シャル「え……!?」

貴虎「何だと……?」

アリーナ


シャル「っ! 凰さんとオルコットさんだ!!」

箒「ラウラ・ボーデヴィッヒも……」

貴虎(篠ノ之……いつの間に)

鈴『喰らえ!』 バシュン

ラウラ『無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな!』 ピタッ

鈴『なっ……!』

シャル「AICだ……」

箒「そうか……あれを装備していたから、龍咆を避けようともしなかったんだ」

貴虎(AIC……聞いたこともないが、似たような単語はあったな。確か、PICだったか)

貴虎(記憶が正しければ、あれはパッシブ・イナーシャル・キャンセラーの略称だったはずだ。ならAICは……)

貴虎「……アクティブ・イナーシャル・キャンセラーの略称か?」

シャル「そう。シュヴァルツェア・レーゲンの第3世代型兵器、慣性停止能力」

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ投下してく

貴虎「……」

シャル「……貴虎?」

貴虎「……あの停止結界」

箒「AICが、どうした?」

貴虎「たった今、4機のブルー・ティアーズを止めた。が、オルコットの操る本体と凰は止まっていない」

シャル「もしかして、AICの弱点を調べてるの?」

貴虎「あいつとは、少なくとも学年別トーナメントで戦うことになるだろう」

貴虎「オルコットたちには悪いが、これはボーデヴィッヒの機体を観察する絶好の機会だ」

箒「呉島……」

貴虎(武装は、あのリボルバーカノンと、凰を捕らえているワイヤーブレード。あれは先ほど見た限り、4本はあるようだ)

貴虎(そして最も厄介なのが、停止結界。だが、あれには欠点や限界がある可能性が高い)

貴虎(その法則さえ見極めることが出来れば……っ!)

箒「っ! ボーデヴィッヒのやつ、ワイヤーでセシリアと鈴の首を締め上げ始めたぞ!!」

シャル「あんなに殴って……酷い! あれじゃシールドエネルギーが保たないよ!!」

箒「もしダメージが蓄積し、ISが強制解除されたら、2人の命に関わるぞ!」

貴虎「……よし。篠ノ之、織斑を呼んで来てくれ。ボーデヴィッヒには、あいつが最も効くだろう」

箒「あぁ、分かった」 タタタッ

シャル「貴虎、僕たちは?」

貴虎「デュノア。お前が来る前、この学園が正体不明のISに襲撃されたことを知っているか?」

シャル「もちろん。でも、それが一体……」

貴虎「あのとき、あれはアリーナの遮断シールド、バリアーを破って侵入してきた。つまり……」

シャル「っ! 攻撃力の高い一撃を放てば、このバリアーを壊して、オルコットさんたちのところへ行けるってこと!?」

貴虎「今日、昼休みにチャージ出来たのが幸いだった。斬月のエネルギーは、まだ100%残っている」

貴虎「この全てを一気に叩きつけ、バリアーを破壊する。その瞬間、デュノアが中へ飛び込み、ワイヤーブレードを切断する」

貴虎「私はその間にポッドを使い、斬月のエネルギーをフルチャージする。そして、あの2人を避難させる」

シャル「考えてる暇はなさそうだね……分かった、それでいこう」 ピカーン

貴虎「……変身」 ピカーン

貴虎「はぁぁぁ……!」 ジャキッ

貴虎「はぁっ!!」 ズバァッ!

バリーン!

貴虎「行け、デュノア!」

シャル「ブレード!」 ピカーン

ガシッ
ジャキッ

シャル「たぁっ!」 ブンッ

ズバッ!
ジャキン!

鈴「はぁ……はぁ……」 バタッ

セシリア「うっ……っ……」 バタッ

ラウラ「……」 サッ

シャル(っ! けど……作戦成功!!) ピタッ

貴虎(瞬時加速!) ドゥッ

ラウラ「っ!」 サッ

シャル「させないよ!」 ガキン!

ラウラ「貴様……!」

貴虎「来い。オルコット、凰」ガシッ

ビューン
スタッ

貴虎「大丈夫か?」

鈴「貴虎……」 ピカーン

セシリア「無様な姿を……お見せしましたわね……」 ピカーン

貴虎「ここにいろ。教師が来るまで、無理に身体を動かすな」 ビューン

ラウラ「ふっ……」 ググッ

シャル「くっ……」 グググ……

シャル(ダメだ、力じゃワイヤーに勝てない……だったら!) ピカーン

ガシッ
ガチャン

シャル「はぁっ!」ダダダダダ……

ラウラ「……」 サッ

ピタッ

シャル(やっぱり、銃弾も全部止められちゃう……けど)

ラウラ「面白い、世代差というものを見せつけてやろう」 ヴォン!

ラウラ「いくぞ!」 ブンッ

シャル(果たしてボーデヴィッヒさんのAICは……死角から迫る攻撃も止められるのかな?) チラッ

貴虎「……」 ガシャッ

キュイーン……
バキュン!

ラウラ「っ! 何だと!?」

貴虎(残り63.6%……もう一度、瞬時加速!) ドゥッ

ラウラ「勝てるものか!」 サッ

貴虎「っ……」 ピタッ

ラウラ「やはり敵ではないな。この私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では、有象無象の1つでしか……」

シャル「こっちがガラ空きだよ!」 ドンッ

ラウラ「っ……雑魚が!」

シャル「貴虎、今だ!」

貴虎「あぁ……よくやった、デュノア!」 ドゥッ

ラウラ「っ!」

貴虎「はぁっ!」 ブンッ

ガキィィィ……!

千冬「……」 ジャキッ

貴虎「っ! 何!?」

ラウラ「っ! 教官!!」

シャル「っ! 織斑先生!!」

千冬「やれやれ……これだからガキの相手は疲れる」

千冬「模擬戦をやるのは構わん。だが、アリーナのバリアーまで破壊する事態になられては、教師として黙認しかねる」

千冬「この戦いの決着は、学年別トーナメントでつけてもらおうか」

ラウラ「教官がそう仰るなら」 ピカーン

千冬「呉島、デュノア、お前たちもそれでいいな?」

貴虎「あぁ。私は、別にいつでも構わん」 ピカーン

シャル「僕もそれで構いません」 ピカーン

千冬「では、学年別トーナメントまで、私闘の一切を禁止する! 解散!!」 スタスタ

ラウラ「……」 スタスタ

貴虎「……帰るか、デュノア」

シャル「うん……そうだね」

ラウラ「っ!」

貴虎「はぁっ!」 ブンッ

ガキィィィ……!

千冬「……」 ジャキッ

貴虎「っ! 何!?」

ラウラ「っ! 教官!!」

シャル「っ! 織斑先生!!」

千冬「やれやれ……これだからガキの相手は疲れる」

千冬「模擬戦をやるのは構わん。だが、アリーナのバリアーまで破壊する事態になられては、教師として黙認しかねる」

千冬「この戦いの決着は、学年別トーナメントでつけてもらおうか」

ラウラ「教官がそう仰るなら」 ピカーン

千冬「呉島、デュノア、お前たちもそれでいいな?」

貴虎「あぁ。私は、別にいつでも構わん」 ピカーン

シャル「僕もそれで構いません」 ピカーン

千冬「では、学年別トーナメントまで、私闘の一切を禁止する! 解散!!」 スタスタ

ラウラ「……」 スタスタ

貴虎「……戻るか、デュノア」

シャル「うん……そうだね」

すまん、間違えた

箒「呉島!」

貴虎「篠ノ之、礼を言う」

箒「セシリアと鈴は?」

貴虎「命に別条はない。今はもう、保健室に送られただろう。後で見舞いに行く」

箒「そうか……良かった」

それから少し経って、保健室


鈴「別に助けてくれなくて良かったのに」

セシリア「あのまま続けていれば、勝ってましたわ」

貴虎「何を言っている。あの状態で戦闘を続けたところで、敗北するのは確実だ」

セシリア、鈴「「そんなこと……」」

貴虎「文句なら、1度でも模擬戦で私に勝ってから聞こうか」

セシリア、鈴「「うっ……」」

シャル「2人共、無理しちゃって。好きな人にカッコ悪いとこ見せたから、恥ずかしいんだよね」

鈴「っ! ななな何を言ってるのか、全っ然っ分かんないわね!!」

セシリア「べべっ、別に! わたくし、無理なんかしてませんわ!!」

貴虎「そもそも、何故ボーデヴィッヒと戦っていた? お前たち2人がペアで勝利を収めたことなど、1度もないだろう」

鈴「え、いや、それは……」

セシリア「ま、まぁ、何と言いますか……女のプライドを侮辱されたから、ですわ」

貴虎「プライド……まぁ、深い事情は聞かん」

ドドドドド……

貴虎「ん? ……何だ、この地響きは……!」

ドーン!

「「「呉島くん!」」」

「「「デュノアくん!」」」

貴虎(女がなだれ込んできた……)

シャル「ど、どうしたの、皆」

「「「これ!」」」

シャル「え、何これ?」

シャル「えーっと……今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、ふたり組での参加を必須とする」

シャル「なお、ペアが出来なかった者は、抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは……」

「あぁ、そこまででいいから! とにかく!!」

「私と組もう、呉島くん!」

「私と組んで、デュノアくん!」

シャル「え、えっと……」

貴虎「断る。よく知りもしない相手に、背中を任せるつもりはない」

「「「えぇーっ!」」」

貴虎「だから、そうだな……デュノア、頼めるか?」

シャル「あ、うん! もちろん」

「まぁ、そういうことなら……」

「他の女子と組まれるよりはいいし……」

「男同士っていうのも絵になるし……」

ゾロゾロ

貴虎(やっと帰っていった……本当に、何だったんだ……)

シャル「あ……あの、貴虎……」

鈴「貴虎、あたしと組みなさいよ! 幼馴染でしょうが!!」

セシリア「いえ! クラスメイトとして、ここはわたくしと!!」

真耶「ダメですよ」

貴虎(いつの間に)

真耶「おふたりのIS、ダメージレベルがCを超えています。トーナメント参加は、許可できません」

鈴「そんな! あたし、十分に戦えます!!」

セシリア「わたくしも納得できませんわ!」

真耶「ダメと言ったらダメです。当分は修復に専念しないと、後々、重大な欠陥が生じますよ」

貴虎「そういうことだ、大人しくしていろ。それに、お前たちはつい先程、ペアで大敗を喫したばかりだろう」

貴虎「見ることも、また経験だ。ゆっくり身体を休ませ、トーナメントは観戦に徹しろ。いいな?」

鈴「分かったわよ……」

セシリア「貴虎さんが、そう仰るなら……」

それからしばらく経って、部屋


シャル「あ、あのね、貴虎」

貴虎「どうした?」

シャル「その、遅くなっちゃったけど……助けてくれて、ありがとう」

貴虎「……何の話だ?」

シャル「ほら、保健室で。トーナメントのペアを、言い出してくれたよね」

シャル「僕、すごく嬉しかったんだ」

貴虎「……あ、あぁ、あれか」

貴虎(言えない。押し迫る女たちを何とか追い返そうと、つい咄嗟にデュノアを利用しただけとは……)

貴虎「それは……あれだ。お前が他の人物に女とバレれば、厄介なことになるのは目に見えていたからな……」

シャル「優しいね、貴虎は」

貴虎(デュノア……すまん)

そして学年別トーナメント当日、更衣室


貴虎「政府、研究所、企業……様々な顔ぶれが集まっているな」

シャル「あんまり驚いてないんだね」

貴虎(元の世界では、顔を合わせる機会もあったからな)

シャル「3年生にはスカウト、2年生には1年間の成果の確認に、それぞれ人が来ているからね」

シャル「けど貴虎は、ボーデヴィッヒさんとの対戦だけが気になるみたいだね」

貴虎「いや、そこまでは気にならん」

シャル「え?」

貴虎「この間の一件で、あいつの武装と戦闘能力、そして停止結界の効果と欠点も大概把握した」

貴虎「問題はあいつのペアだが、それさえ攻略できれば、後は何も問題ない」

シャル「……オルコットさんが『さすが貴虎さん』って言ってた理由が、何となく分かった気がするよ……」

ピコン

シャル「あっ、対戦相手が決まったみたいだね……え!?」

貴虎(1回戦目からボーデヴィッヒと……しかも、そのペアが篠ノ之だと?)

貴虎(随分と出来過ぎているようにも感じるが……ただの偶然という気もする)

貴虎(どちらが正しいか、勝利すれば分かるかも知れないな)

貴虎(とにかくだ……この学年別トーナメント、私は必ず優勝する。この世界をより深く知るためには、それが最も近道のはずだ)

貴虎(元の世界に戻るため、私は絶対に負けられない!)

貴虎「デュノア、耳を貸せ。作戦がある」

それからしばらく経って、アリーナ


ラウラ「1戦目で当たるとはな……待つ手間が省けたというものだ」

貴虎「……」

ラウラ「叩きのめす……」

『試合開始!』

今日はここまで
明日は更新できるか分からんから、続きはまた今度

それじゃ投下してく

貴虎「……」 ドゥッ

ラウラ「開幕直後の先制攻撃か……分かり易……」 サッ

ドンッ

ラウラ「っ! 何!?」

シャル「ごめんね。悪いけど……君の相手をするのは僕なんだ」 ガチャ

ラウラ「貴様……」 サッ

シャル(おっと……けど、貴虎の言った通りだ。今しかないよ!) ピタッ

貴虎(篠ノ之……お前には、最初に潰れてもらうぞ) ジャキッ

箒「っ! はぁっ!!」 ブンッ

貴虎「……」 サッ

貴虎「はぁっ!」 ズバッ

箒「くっ……たぁっ!」 ジャキッ

貴虎「……」 グルリ

貴虎「はっ!」 ザクッ

箒「ぐっ……!」

貴虎「はぁっ!!」 ズバァッ!

箒「がぁっ!!」 バタッ

貴虎「お前には、少し大人しくしていてもらうぞ」 ビューン

箒「くっ……」

そのころ、教師陣


真耶「先に篠ノ之さんを倒しましたね……ダメージも受けず、一方的に」

千冬「賢明だな。ボーデヴィッヒは、自分側が複数の状態での戦いを想定していない。パートナーのことは、端から数に入れていない」

真耶「それに比べて、呉島くんとデュノアくんの連携は、素晴らしいの一言ですね」

千冬「このくらいは、出来て当然だ」

アリーナ


シャル「たぁっ!」 ダダダダダ……

ラウラ「 ……」 サッ

ピタッ

ラウラ「ふっ……」 ガチャン

ヒューン!

シャル(っ! ワイヤーが!!)

貴虎「はっ!」 ビューン

ジャキッ
ズバッ

ズバッ
ジャキン!

貴虎「待たせた」

シャル「貴虎、篠ノ之さんは?」

貴虎「見ての通りだ。さぁ、いくぞ」 ジャキッ

シャル「オッケー」 ガチャッ

ラウラ「いいだろう、纏めてかかってこい!」

貴虎「いくぞ……」 ビューン

ラウラ「……」 サッ

シャル「させないよ!」 バシュン!

ラウラ「!」

貴虎(作戦通りだ) ザシュッ

ラウラ「がっ!」

貴虎「貴様の停止結界は、この間の戦闘で攻略した。もう、我々には効かん」

ラウラ「っ……ならば……」 ヴォン!

貴虎(右手にブレード……いや、プラズマ手刀か)

ラウラ「はぁっ!」 ブンッ

貴虎「……」 ブンッ

ガキィィィ……!

ラウラ「ふっ……馬鹿め」 ヴォン!

貴虎(っ! 左手にもだと!?)

ラウラ「近接の間合いに入れば……そう思ったか!」 ブンッ

貴虎「……」 ドガッ

ラウラ「っ! 蹴りだと!?」

貴虎「はっ!」 ズバッ

ラウラ「くっ……」

貴虎「二刀流なら……そう思ったか?」 ジャキッ

貴虎「悪いが、近接では絶対に負けん」 ブンッ

ラウラ「小癪な!」 サッ

ピタッ

ラウラ「ふん。でかい口を叩いたところで、結局は……」

シャル「僕のこと、忘れてない?」 ガチャッ

バシュン!

ラウラ「なっ……!」

貴虎「はぁっ!」 ザシュッ

ラウラ「がぁっ!」

貴虎「……」 ガチャッ

キュイーン……
バキュバキュバキュバキュン!

ラウラ「くそっ!」

シャル「今だ!」 ドゥッ

ラウラ「っ!」

シャル「これで、間合いに入ることが出来た」

ラウラ「それがどうした! 第2世代型の攻撃力では、このシュヴァルツェア・レーゲンを堕とすことなど……」

シャル「それはどうかな?」 ガシャン!

ラウラ「っ! 盾殺し[シールド・ピアーズ]……!!」

シャル「この距離なら、外さない!」 ドンッ

ラウラ「ぐぅ……! だが、この程度では……」

シャル「それにね、これで堕とす必要もないんだ……貴虎、エネルギーは!?」

貴虎「たった今、チャージし終わった。いくぞ……」 ドゥッ

ラウラ「っ! 貴様ぁっ!!」

シャル「ごめんね、もう一発!」 ドンッ

ラウラ「がはっ!」

シャル「今しかないよ、貴虎!」

貴虎「あぁ。よくやった、デュノア!」 ゴォォォ……

貴虎(受けてみろ。アリーナのバリアーすら破壊する、エネルギー100%の斬撃を) ジャキッ

貴虎「終わりだ……はぁっ!!」 ズバァッ!

ラウラ「がぁぁぁぁああああああああ!!!!」 ドーン!

シャル「やった!」

貴虎「ふん……」

ラウラ「くそっ……こんな……!」

ラウラ(こんな……こんなところで負けるのか、私は……!)

ラウラ(私は、負けられない……負けるわけにはいかない!)

ラウラの精神世界、記憶と思い出の中


ラウラ「教官。貴方はどうして、そこまで強いのですか? どうすれば、強くなれますか?」

千冬「……」

ラウラ「……」

千冬「……私には、幼馴染がいる」

ラウラ「幼馴染……ですか」

千冬「あいつを見てると、分かるときがある。強さとはどういうものなのか、その先に何があるのかをな」

千冬「最も、あいつ自身が強いのではないが。むしろ、反面教師と言った方がいい」

千冬「何かを、誰かを護るために、全てを抱え込もうとする。自分を抑えつけ、ただ目的のためだけに尽力しようとする」

千冬「絶望に目を背けてまで、希望を実現しようとする。それが悪いことだとは思わん。が、正しいとも言えん」

千冬「本当に、危なっかしいやつだ。その心意気だけは、賞賛に値するだろうがな」 フッ

ラウラ(っ! 違う……どうして、そんなに優しい顔をするのですか?)

ラウラ(私が憧れる貴方は、強く、凛々しく、堂々としているのに……)

ラウラ(……そうだ……だから、許せない。教官をそんな風に変える人間など、絶対に認めない……!)

ラウラ(敗北させると決めたのだ。あれを、あの男を、私の力で、完膚なきまでに叩き伏せると……!)

ラウラ(力が、欲しい……!)

『願うか? 汝、自らの変革を望むか? より強い力を欲するか?』

ラウラ(寄越せ、力を……比類なき、最強を……唯一無二の、絶対を……私に、寄越せ……!)

『Damage Level……D.』

『Mind Condition……Uplift.』

『Certification……Clear.』

『Valkyrie Trace System……Boot.』

アリーナ


ラウラ「ぐっ……ぐぁぁぁぁああああああああ!!!!」 ビリビリ

ラウラ「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」 グチャグチャ

シャル「っ! 何……?」

貴虎「っ! 何だ、一体……」

ビー……ビー……ビー……

『非常事態発令。トーナメントの全試合は中止』

『状況をレベルDと認定。鎮圧のため、教師部隊を送り込む』

『来賓、生徒は、すぐに避難してください』

ラウラ「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」 ピカーン

シャル「何、あれ……」

貴虎「何だ、あの姿は……」

全身装甲「……」 ゴゥッ

貴虎「っ!」

全身装甲「……」 ジャキン!

貴虎「だぁっ!」 ドガーン!

シャル「貴虎……」

貴虎「しまった……」

箒「呉島、大丈夫か!?」

貴虎「いや……もう、エネルギーが……」

シャル「そっか……さっき、あの攻撃で全部……」

貴虎(ポッドに残ったエネルギーを空になるまでチャージしたが、それでも27.6%……何とかしなければ……っ!)

全身装甲「……」 ドゥッ

シャル「っ! 来た!!」

貴虎「っ! 篠ノ之!!」

バッ
ズバァッ!

貴虎「がぁっ!」 ドガーン!

シャル「っ! 貴虎!!」

箒「っ! 呉島!!」

箒(私のせいで、呉島が……何故だ、何故、私には専用機がないのだ……!)

貴虎「がはっ……!」 バタッ

ポロッ

貴虎(まずい……このままでは……) ググッ

貴虎(何か……何か方法はないのか……!) ガシャン

パキン!

貴虎(ん? 今、何か踏んだような……)

つ『割れた透明で頑丈な手頃のケース』

貴虎「……うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

貴虎(どうして、これが足元に……まさか、叩き飛ばされた衝撃で、ポケットから落ちてしまったのか!?)

貴虎(だが幸い、ケースが頑丈だったお陰か、中身のヘルヘイムの果実は無事だ……)

貴虎(……幸いなわけがあるか! せめて、これも潰れてくれれば良かったものを!!)

貴虎(とにかく、このままでは本当にまずい。誰かが口にしてインベスになってしまう前に、回収しなければ……) ヒョイッ

ピカーン
ギュオンギュオン……

貴虎「っ! 何だと……」

貴虎(果実が、ロックシードに……一体、どうして……)

貴虎(まさか……斬月か? コンバートといい、やはりこれが、戦極ドライバーと同じ役割を……)

シャル「うわぁっ!」 ドガーン!

貴虎「デュノア! 大丈夫か!?」

シャル「ダメだよ……あれ、強過ぎる……」

貴虎(……どうやら、迷っている暇はないようだな。不明な点を探るよりもまず、今は目の前の問題だ……)

貴虎「……それにしても、俺も随分と悪運が強いらしい」 ボソッ

貴虎(まさか、無我夢中でたまたま掴んだこれが、このロックシードに変化するとは……)

貴虎「……よし」 ザッ

貴虎(いくぞ。もしも斬月が、本当に戦極ドライバーと同じ機能を持っているのなら……!)

貴虎「斬月、力を貸せ」 カチャ

ガチャッ
キュイン

『メロン』

ジジジジジ……
ヒュゥゥゥ……

箒「っ!? 何だ……あれは……」

シャル「空中に……メロン……?」

貴虎「……」

ガコン
ギュオォォォン……

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

箒「今度は……法螺貝か、この音は……?」

シャル「和風……? でも、それにしては何か……」

貴虎「……」

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

箒「……うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

シャル「メロンが……メロンが、メロンが……!」

貴虎「……」

ガシャッ
キュイィィィン……

『メロンアームズ! 天・下・御・免!!』

ガシャン!
テレレン

箒「メロンが……割れて……」

シャル「メロンが……鎧に……」

貴虎「……」

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ投下してく

貴虎(ISサイズにまで巨大化したメロンアームズが、斬月の上部に突き刺さり、展開した)

貴虎(鎧の形は全く同じだが、唯一の違いは、俺に仮面も兜も装備されていないことだ)

貴虎(なるほど……斬月に翼がなく、シルエットも妙に人型だったのは、全てこのためだったというわけか)

貴虎(そして、何よりも重要な変化が2つ。1つは、エネルギーが完全に回復したこと。もう1つは……)

つ『メロンディフェンダー』

貴虎(これが装備されたことだ。ISサイズにまで大型化した、これが……)

シャル「貴虎……それは……」

貴虎「……見ていろ、デュノア」 ジャキッ

貴虎「いくぞ……!」 ドゥッ

全身装甲「……」 ブンッ

貴虎「……」 ザンッ

ガキィィィ……!

貴虎「はっ!」 ズバッ

全身装甲「!」

貴虎「ふんっ!」 ドガッ

全身装甲「!!」

貴虎「はぁっ!」 ザシュッ

全身装甲「……」

ヒューン……
ドガーン!

貴虎「今度こそ、終わりだ……」

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

『メロンスカッシュ!!』

ギュオギュオギュオギュオ……
キィィィン……!

貴虎「はぁぁぁ……!」 ジャキッ

貴虎「はぁっ!!」 ズバァッ!

全身装甲「……」 グチャグチャ

ピカーン
ズルッ

ラウラ「……」 バタッ

貴虎「……ふん」 ピカーン

箒「呉島……今のは……」

シャル「……今のは、何……?」

貴虎「……」

ラウラの精神世界?


ラウラ「強さとは……何だ?」

『私は知らん。強さとは何か、それは状況によって異なるだろう』

『だが、あえて言うのであれば……どんなに絶望的な状況であろうと、決して希望を諦めない心。それが本当の強さだと、私は思う』

ラウラ「では、お前は……お前は何故、強くあろうとする? どうして、強い?」

『私は強くなどない。絶望に屈し、それを正当化し、自分に無理やり言い聞かせ、納得させようとした』

『私は、どうしようもなく間違っていた。だが……だからこそ、今度こそ、私は本気で希望を掴むと決めたのだ』

『もう二度と、どんなに絶望的な状況であろうと、希望を諦めたりはしない。希望を実現するまで、決して絶望に屈したりなどしない』

ラウラ「希望……では、お前の希望とは……何だ?」

『そうだな……とりあえず目下の希望は、元の世界に……』

……
…………

保健室


ラウラ「うっ、ぁ……」

千冬「気がついたか」

ラウラ「私……は……?」

千冬「全身に無理な負荷がかかったことで、筋肉疲労と打撲がある。しばらくは動けないだろう、無理をするな」

ラウラ「何が……起きたのですか……?」

千冬「一応、重要案件である上に、機密事項なのだがな……VTシステムは知っているな?」

ラウラ「ヴァルキリー・トレース・システム……」

千冬「そう。IS条約で、その研究はおろか、開発、使用、全てが禁止されている。それがお前のISに積まれていた」

千冬「精神状態や、蓄積ダメージ。そして何より、操縦者の意思……いや、願望か。それらが揃うと、発動するようになっていたらしい」

ラウラ「……私が、望んだからですね……」

千冬「……ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

ラウラ「っ! は、はい!!」

千冬「お前は誰だ?」

ラウラ「私は…………」

千冬「誰でもないのなら、ちょうどいい。お前はこれから、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」 ガタッ

ラウラ「え……?」

千冬「それから、お前は私にはなれないぞ」 スタスタ

ラウラ「教官……」

そのころ、食堂


シャル「結局、トーナメントは中止だって。ただ、個人データは取りたいから、1回戦は全部やるそうだよ」

貴虎「私たちも、またやるのか?」

シャル「うーん、それは聞いてみないと分からないね」

真耶「呉島くん、デュノアくん! 朗報ですよ!!」

シャル「わっ!? 山田先生!」

貴虎(いつから、そこにいた……)

真耶「今日は大変でしたね。でも、2人の労を労い労る素晴らしい場所が、今日から解禁になったのです!」

シャル「場所?」

真耶「男子の……大浴場なんです!」

シャル「……えぇぇぇぇええええええええ!?!?」

貴虎「……」

大浴場


貴虎(言われてみれば、こうして湯船に浸かるのは久しぶりだ……)

シャル「お、お邪魔します……」 ガラッ

貴虎「やはり来たか……」

シャル「驚かないんだね……あらかじめ、後ろも向いてるし……」

貴虎「片方だけ入っては不自然だからな。お前も入ってくることは予想していた」

シャル「……ふーん……」

貴虎(……今、何となく声が低くなった気が……まぁ、気のせいか)

シャル「……話があるんだ。大事なことだから、貴虎にも聞いて欲しい」

貴虎「……何だ?」

シャル「その……前に言ってたことなんだけど。僕ね、ここにいようと思う」

シャル「もう一度、希望を探すことにしたんだ。絶対に諦めないで、絶対に絶望しないで」

貴虎「そうか」

シャル「それと、お願いがあるんだけど……僕のことはこれから、シャルロットって呼んでくれる? お母さんがくれた、大事な名前」

貴虎「……名字では駄目なのか、デュノア?」

シャル「お願い、2人きりのときだけでいいから」

貴虎「……覚えていたらな。…………シャルロット」

シャル「ふふっ……ありがとう、貴虎」

そして、次の日


真耶「……ええと……今日は皆さんに、転校生を紹介します……」

エェッ!?
ザワザワ……

シャル「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

貴虎(……それが、お前の決意表明か)

真耶「えっと……デュノアくんは、デュノアさん、ということでした……」

箒「……は?」

「え? つまり……デュノアくんって、女?」

「おかしいと思った。美少年じゃなくて、美少女だったわけね」

「って、呉島くん! 同室だから知らないってことは……」

「ちょっと待って! 昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」

ザワザワ……

ドガーン!
ウワァッ

鈴「貴虎ぁっ!」 バシュン!

貴虎「っ!」

ピタッ

鈴「なっ!」

貴虎「……?」

ラウラ「……」 サッ

貴虎「ボーデヴィッヒ……」

鈴「アンタ、どうして……!」

ラウラ「勝手に貴虎を攻撃されては困る。何故なら……」

ラウラ「こいつは、私が倒すと決めているからだ!」

鈴「っ!? 何よ、それ……」

貴虎「どういう意味だ……?」

ラウラ「私は昨日、お前に敗北した。それは、認めざるを得ない事実だ。だが……それでも、諦めたわけではない」

ラウラ「お前は言ったな。本当の強さとは、決して希望を諦めない心だと」

ラウラ「お前を倒し、お前を超え、お前よりも教官に認められる……それが私の希望だ!」

ラウラ「お前を目の前で屈服させるまで、私は絶対に諦めないぞ!!」

貴虎「……言い忘れたが、ボーデヴィッヒ。ときには諦めも肝心だぞ?」

シャル「貴虎!?」

貴虎「絶望に屈し、犠牲を払って別の道を見出すのも、また1つの……」

ラウラ「御託はいい。とにかく、私は必ず、この手でお前を倒す。さぁ、グラウンドへ出ろ!」

貴虎「……はぁ、全く……いいだろう。変身」 ピカーン

貴虎「1限の開始までに終わらせてやる……」 ジャキッ

ラウラ「今度こそ、叩き潰してやる……!」 ヴォン!

ゴォォォ……

貴虎(斬月には、戦極ドライバーと酷似した機能があることが判明した。だが結局、この世界については、未だ何も分からないままだ)

貴虎(俺は、本当に元の世界に戻れるのだろうか……)

貴虎(……いや、違うな。どんな手を使ってでも、戻ってみせる)

貴虎(デュノアは全てを振り切り、希望を探し続けると決めた。それにより、失うものがあろうともだ)

貴虎(ボーデヴィッヒも……よく分からんが、あいつなりの希望を見つけたらしい。内容は、迷惑極まりないものだがな)

貴虎(私も、諦めずに希望を追い続ける。元の世界へと帰る、そのときまで!)

今回はここまで
次回は『最終話 臨海学校の天辺星』

ここまで読んでくれて、本当にありがとう
出来たら、最後までよろしく

長らく待たせて、本当にすまなかった
ようやく書き上がったんで、投下していく

今回は、いつもより少し長くなってしまった
読みずらいところもあるかも知れないけど、その辺は許して欲しい

『最終話 臨海学校の天辺星』


束「あーあ……」 ピッピッピッ

束「本当、邪魔だなー。何なんだよ、アレは」 カタカタ

テンテレテンテン……

束「っ! こ、この着信音は……!!」 ピョコッ

パシッ
ピッ

束「もすもすひねもすー? はーい! みんなのアイドル、篠ノ之束だよ!!」

箒『……』 イラッ

束「って、待って待って! 切らないで、箒ちゃん!!」

箒『姉さん……』

束「やぁやぁやぁ、我が妹よ。うんうん、用件は分かっているよ。欲しいんだよね、君だけの専用機が!」

束「もちろん用意してあるよー! 最高性能にして規格外、その機体の名前は……紅椿!!」

日付変わって、貴虎の部屋


貴虎(日曜の朝……陽の光が差し込み、気持ちがいい)

貴虎(デュノアが学園に真実を公表したことで、俺は一人部屋となった)

貴虎(女と同室ではなく、何かと注意しなければならないこともない……それがまさか、ここまで楽だとは)

貴虎(後は、あいつさえ来なければ……)

ドンドンッ

貴虎(……と思ったが、やはり今朝も来たか……)

ガチャ

ラウラ「起きたな、宿敵[とも]よ。さぁ、グラウンドへ行くぞ!」

貴虎「寮内でISを展開するな。それと、私はお前と友になった覚えはない」

ラウラ「何を言っている。日本ではライバルのことを、宿敵[とも]と呼ぶのだろう?」

貴虎「……よく分からんが、お前の日本語に関する知識が間違っているのは確かだ」

貴虎「それに、今朝は無理だ。デュノアと買い物に行く約束をしているからな」

ラウラ「決闘をサボって買い物だと!? この腑抜けめ!」

貴虎「何とでも言え。とにかく、今日はやらん。お前も教師がくる前に、ISを解除しておいた方が身のためだぞ」

バタン

ラウラ「……シャルロットと買い物か……」

それから少し経って、駅


貴虎「さて、いくか」

シャル「うん。……ねぇ、貴虎」

貴虎「何だ?」

シャル「あ、あのさ……手、繋ご?」

貴虎「構わん」 パシッ

シャル「……前から思ってたんだけど……貴虎ってさ、僕のこと、弟か妹みたいに思ってない?」

貴虎「何を言っている、そんなことは……」

貴虎(……いや、言われてみれば……デュノアはどことなく、光実に似ているところがあるのか?)

貴虎(具体的にどこがとは言えないが……雰囲気というか……)

シャル「……貴虎?」

貴虎「……いや、そんなことはないな。さぁ、いくぞ」 テクテク

シャル「……まぁ、別にいいけどさ……」

同時刻、物陰


鈴「……ねぇ」

セシリア「……何ですの?」

鈴「……あれって、手ぇ握ってない?」

セシリア「握ってますわね……」

鈴「そっか。見間違いでも白昼夢でもなく、やっぱりそっか……」

鈴「よし、殺そう!」 ピカーン

ラウラ「ほう、楽しそうだな」

セシリア「っ! ラウラさん!!」

ラウラ「そう警戒するな。今のところ、お前たちに危害を加えるつもりはない」

セシリア「信じられるものですか!」

ラウラ「……そうか」 テクテク

鈴「ちょっ、待ちなさいよ!」

セシリア「どうするつもりですの!?」

ラウラ「決まっているだろう、あの2人に交ざる。友と宿敵[とも]なのだから、不都合はなかろう」

鈴「み、未知数の敵と戦うには、まず情報収集が先決でしょ!」

セシリア「そうですわ! ここは追跡の後、2人の関係がどのような状態にあるのかを見極めるべきですわ!!」

ラウラ「なるほど。一理あるな……いや、あるのか?」

鈴「あるわよ! もしも自分の敵と友達が……だったら、大変じゃない!!」

ラウラ「……それもそうか……そうか?」

そのころ、貴虎


貴虎(水着か……そう言えば、久しく海になど行っていなかったな……)

貴虎(どういうデザインがいいのか、まるで見当がつかん。どれにすれば……どれが最も無難か……)

タタタッ
パシッ

シャル「貴虎、ちょっと来て!」 ダダダッ

貴虎「っ! デュノア!? 何だ、何事だ!?」 ダダダッ

シャッ

貴虎「ちょっと待て、ここは試着室……むぐっ」

シャル「ごめん、ちょっと静かにして」 チラッ

鈴『あいつら、どこに消えたの……』

セシリア『まさか、わたくしたちの尾行に気づいた……?』

シャル(見つかったら絶対邪魔される……)

貴虎「一体、何をするつもりだ? 外に誰かいるのか?」

シャル「誰もいないよ! その……選んだ水着が似合うか、見てもらいたくて」

貴虎「だとしても、私までここに入る必要はないだろう」 シャッ

シャル「あっ!」

鈴「あっ!!」

セシリア「あぁっ!」

貴虎「ん? 何だ、オルコットに凰か。お前たちも、水着を買いにきたのか?」

鈴「ま、まぁね……」 チラッ

セシリア「そ、そんなところですわね……」 チラッ

鈴(シャルロット……後で覚えておきなさいよ……) ギロッ

セシリア(逃げようなんて思わないことですわね……) ギロッ

シャル(うぅ……貴虎のバカ……)

貴虎「……ん? しかもあそこにいるのは……」

真耶「あっ、皆さん! 奇遇ですね」

千冬「まさか、生徒に出くわすとはな……」

貴虎(織斑に山田か……最初は2人だけだったのに、何故いつも、こう騒がしくなるんだ……)

そのころ、ラウラ


ラウラ「これが全て水着か……この世には、こんなに様々な水着があったのか……ん?」

「しっかり気合い入れて選ばなくっちゃね」

「似合わない水着きてったら、彼氏に一発で嫌われちゃうもん」

「他のこと全部100点でも、水着がカッコ悪かったら、致命的だもんねー」

ラウラ「っ! 何、だと……」

ラウラ(水着が格好悪いと、致命的なのか……他のことが満点でも、水着がダメでは……)

ラウラ(それは、つまり……)

……以下、ラウラの妄想……

貴虎「ボーデヴィッヒ……何だ、そのダサい水着は……」

貴虎「はっ、なるほど。所詮、貴様はその程度の女でしかなかったということか」

貴虎「そんな水着しか選べない貴様など、私の敵ではない。少しは出来るやつだと思っていたが、どうやら思い違いだったようだ」

貴虎「失望したぞ、ボーデヴィッヒ。やはり貴様が織斑に認められるなど、夢のまた夢だな」

……ラウラの妄想、ここまで……

ラウラ(ということに……)

ラウラ「まずい……これは、まずいぞ……!」 ピッ

プルルルル、プルルルル……
ガチャ

ラウラ「クラリッサ、私だ。緊急事態発生」

そのころ、ドイツの黒ウサギ隊


クラリッサ「ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長、何か問題が起きたのですか?」

ラウラ『う、うむ。例の、呉島貴虎のことなのだが……』

クラリッサ「あぁ。織斑教官の幼馴染で、隊長のライバルという、彼ですか」

ラウラ『そうだ。お前が教えてくれたところの、いわゆる私の宿敵[とも]だ』

ラウラ『実は今度、臨海学校というものに行くことになったのだが……舐められないためにも、格好いい水着が必要になった』

ラウラ『だが、どのような水着を選べばよいのか、選択基準が分からん。そちらの指示を仰ぎたいのだが……』

クラリッサ「了解しました。この黒ウサギ部隊は、常に隊長と共にあります。ちなみに、現在隊長が所有しておられる装備は?」

ラウラ『学校指定の水着が1着のみだ』

クラリッサ「っ! 何をバカなことを!!」

ラウラ『!』 ビクッ

クラリッサ「確か、IS学園は旧型スクール水着でしたね。それも悪くはないでしょう」

クラリッサ「だが……しかし、それでは……」

ラウラ『それでは……?』

クラリッサ「色物の域を出ない!」

オォ……

「さすがは黒ウサギ部隊の副隊長!」

「伊達に日本の漫画やアニメを愛好してはおられない!」

ラウラ『ならば、どうする……?』

クラリッサ「ふっ……私に秘策があります」 キラーン

そして、臨海学校当日


真耶「今、11時でーす! 夕方までは自由行動、夕食に遅れないように旅館に戻ること。いいですねー!?」

ハーイ!

「ねーねー、くれしー」

貴虎(何だ、その気の抜けるような渾名は……)

「私たちと一緒に遊ぼー」

「ビーチバレーしようよ」

貴虎「構わん」

鈴「貴虎ー!」 ピョンッ

貴虎「……」 サッ

鈴「おわっ!? ちょっと! 何でよけんのよ!?」

貴虎「何故、よけられないと思った?」

鈴「……まぁ、いいわ。それより貴虎、向こうのブイまで競争ね! 負けたらカキ氷、奢んなさいよ!!」 ザブン!

貴虎「競争か……まぁ、泳ぎの感覚を取り戻すにも、ちょうどいいか」 ザンブッ

バシャバシャ

鈴(みんなには悪いけど、今回は譲ってもらうわよ。セシリアやシャルロットに負けてられないんだから……)

鈴(貴虎は……まだ近づいてきてないわね。このまま引き離して……っ!) ビクッ

鈴(足が……!)

鈴「足が……つって……!!」

貴虎「っ! 凰!!」 バシャッ

鈴(息が……) ブクブク……

貴虎「凰、掴まれ!」 ガシッ

鈴(あっ……これ、貴虎……)

鈴(そうだ……貴虎の腕だ、これ……)

ザバン!

貴虎「大丈夫か、凰」

鈴「けほっ、けほっ……大丈夫……」

貴虎「準備運動もせず、海に入るからだ。そこでしばらく休んでいろ」

鈴「うん、ありがと……」 ボソッ

貴虎「全く……」

シャル「貴虎、ここにいたんだ」

貴虎「今度はデュノアか……ん?」

ラウラ「……」

貴虎「……おい。何だ、そのボーデヴィッヒの格好は?」

ラウラ「っ! な、何故、私だと分かった!?」

貴虎「私の知り合いにいる、銀髪で眼帯を着けている女は、お前だけだ」

貴虎(というか、そのバスタオルの上からした眼帯には、何か意味があるのか……?)

シャル「ほら、貴虎に見せたら? 大丈夫だよ」

ラウラ「だ、大丈夫かどうかは、私が決める……」

貴虎(まさか……恥ずかしがっているのか? あのボーデヴィッヒが?)

貴虎(いや……だが、あいつも一応は女だからな……しかし、恥ずかしがっているというような感じでもないような……)

シャル「せっかく水着に着替えたんだから、貴虎に見てもらわないと」

ラウラ「ま、待て! 私にも、心の準備というものがあって……」

貴虎(あのボーデヴィッヒが心の準備だと!? 一体、あの下にはどんな水着が……)

シャル「もう、面倒くさいなぁ……えいっ!」 バサッ

ラウラ「あっ!」

貴虎(……どんな水着かと思えば……普通じゃないか。それなのに、何でそんなに不安そうな顔をしているんだ?)

ラウラ「わ、笑いたければ、笑うがいい……」

貴虎「笑う? 何故だ、別に普通だろう。むしろ、何をそこまで震えている?」

ラウラ「っ! 本当か!? 格好悪くはないか?」

貴虎「いや、私は似合っていると思うが……本当に、何があった?」

シャル「僕も分からないんだけど、水着が格好悪いと、貴虎に笑われると思ってたみたいなんだ」

貴虎「私を何だと思っているんだ……」

「呉島くーん!」

「さっきの約束! ビーチバレーしようよー!!」

「わー、くれしーと対戦! バキュンバキューン!!」

貴虎「……はぁ、全く……今日はいつも以上に騒がしいな」

シャル「それにしては、満更でもないって顔してるよ」

貴虎「……そうか?」

シャル「うん」

貴虎「……そうか……」

貴虎(満更でもない、か……いつもの俺なら、ただうるさいと思うだけだろう。が……)

貴虎(この世界にきてから、俺は少し変わったのか? 果たして、それはいい変化なのか、それとも悪い変化なのか……)

真耶「ビーチバレーですか、楽しそうですね」

貴虎(……それに関しては、後でゆっくり考えるとしよう)

シャル「先生も、一緒にやりますか?」

真耶「えぇ。いかがですか、織斑先生」

千冬「そうだな……」

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ投下してく

オォォォ……

「織斑先生、モデルみたい!」

「カッコいい……」

千冬「では、やるか」

真耶「はい、頑張りましょう!」

貴虎「ちょうどいい……織斑、お前とは一度、戦ってみたいと思っていた」

千冬「ふっ……いいぞ。実力の違いというやつを思い知らせてやろう、呉島」

ゴォォォ……

シャル「何か……先生と貴虎の後ろに、龍と虎が見えるんだけど……」

千冬「いくぞ……」

貴虎「こい……!」

ドゥッ
ダン!

それからしばらく経って、旅館


貴虎「……」

千冬「そう落ち込むな。たかが遊びだろう」

貴虎「別に落ち込んでいるわけではない……」

千冬「……全く」

貴虎(それにしても……まさか、織斑と同じ部屋とは……)

貴虎(だが、俺たちの関係を聞くには、ちょうどいい機会かも知れん。よし……)

貴虎「……織斑、昔の話をしないか?」

千冬「何だ? 藪から棒に」

貴虎「こういうことを言うのは何だが……実は、あまり昔のことを覚えていなくてな」

貴虎(あまりどころか、全く知らんが)

貴虎「お前とは、幼馴染だったはずだ。その頃の話を聞けば、少しは思い出せるかも知れん」

千冬「特にどうと言うことはないさ。同じ道場に通っていた、それだけだ」

貴虎(道場だと……この世界では、俺はそんなものに通っていたのか……)

千冬「ん……すまんが、私も細かいことは思い出せない。昔の話だからか、記憶に靄がかかっている感じがするな……」

貴虎「……そうか、なら仕方がない」

貴虎(結局、曖昧な記憶しかないということか……まぁ織斑は、この世界の俺より歳上らしいから、当たり前と言えばそれまでだ)

千冬「…………」

次の日、朝


貴虎(旅館で迎える朝……久しく味わっていなかったが、中々よいものだ……ん?)

箒「……」

貴虎「どうした、篠ノ之。そんなことろで、何をして……」

つ『ひっぱってください』

貴虎「……何だ、この看板は……それに、ウサギの耳のようなこれは……」

箒「知らん」 スタスタ

貴虎「おい……まぁ、放っておくか」 スタスタ

ゴゴゴゴゴ……

貴虎(っ! 何だ、この地響きは……っ!!)

ヒューン……
ドカーン!

貴虎「がっ!」 バタッ

プシュゥゥゥ……
ガシャン

束「もう、箒ちゃんってば酷い! せっかくお姉ちゃんが書いた看板を無視するなんて!!」

束「それに、何処いっちゃったのかな? まぁ私が開発した、この『箒ちゃん探知機』で、すぐ見つかるけど。さて、何処かなぁ……」 スタスタ

貴虎(……何だったんだ、今のは……一体何なんだ、あの女は……)

それからしばらく経って


千冬「よし、専用機持ちは全員揃ったな」

鈴「ちょっと待ってください。箒は専用機を持ってないでしょ」

箒「そ、それは……」

千冬「私から説明しよう。実はだな……」

ヤッホー……
ドドドドド……

束「ちーちゃーーん!!」 ピョーン

千冬「……」 ガシッ

束「やぁやぁ、会いたかったよ、ちーちゃん! さぁ、ハグハグしよう!! 愛を確かめ……」

千冬「うるさいぞ、束」

束「相変わらず、容赦のないアイアンクローだね!」 バッ

束「じゃじゃーん!」 バッ

箒「っ!」

束「やぁ!」

箒「……どうも」

束「えっへへー……久しぶりだねー。こうして会うのは、何年ぶりかな?」

束「大きくなったね、箒ちゃん! 特におっぱいが……ぶっ!!」 ドガッ

箒「殴りますよ?」

束「殴ってから言ったー! 箒ちゃん、ひどーい!!」

千冬「おい、自己紹介くらいしろ」

束「えぇー、面倒くさいなぁ……」

束「私が天才の束さんだよ、ハロー。終わり!」

鈴「っ! 束って……!!」

シャル「ISの開発者にして、天才科学者の!?」

ラウラ「篠ノ之束……」

貴虎「……」

束「やぁ、初めましてだね。世界で唯一ISが使える男、呉島貴虎くん」

貴虎「……あぁ、そうだな」

貴虎(この女……こいつが、あの篠ノ之束だったのか……何処となく、あいつに似た雰囲気を感じる……)

……君は、私の理解者ではなかった……

貴虎「……」

束「ふっふっふっ……さぁ、大空をご覧あれ!」

貴虎「……っ!」

ヒューン……
ドガーン!

束「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと、紅椿!! 全スペックが現行ISを上回る、束さんお手製だよ!」

束「何たって紅椿は、天才束さんが作った、第4世代型ISなんだよー!!」

ラウラ「第4世代……」

セシリア「各国で、やっと第3世代型の試験機が出来た段階ですわよ……」

シャル「なのに、もう……」

貴虎「……」

束「そこはほれ、天才束さんだから。さぁ箒ちゃん、今から最適化処理[フィッティング]とパーソナライズを始めようか!」

千冬「……さ、篠ノ之」

箒「……」 ガシャン

束「箒ちゃんのデータは、ある程度先行して入れてあるから、後は最新データに更新するだけだね」 ピッピッピッ

鈴「すごい……信じられないスピードだわ……」

ピコーン

束「オッケー、最適化処理終了! チョー早いね、さすが私!!」

束「そんじゃ、試運転も兼ねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ!」

箒「えぇ……それでは、試してみます」

ゴォォォ……
ドゥッ

鈴「何これ、速い!」

シャル「これが、第4世代の加速……ということ……」

貴虎「……」

束「どうどう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」

箒『えぇ、まぁ……』

束「じゃあ刀、使ってみてよ。右のが『雨月』で、左のが『空裂』ね! 武器特性データ、送るよー!!」 ピッピッピッ

箒『雨月、いくぞ……はぁっ!』 ブンッ

バシュバシュバシュバシュッ
ドーン!

箒『おぉ……』

束「いいねいいねー。次はこれ、撃ち落としてみてね!」 ピカーン

ドドドドドッ
バシュゥゥゥ……

箒『はっ!』 ブンッ

バキィッ……
ドガーン!

ラウラ「やるな……」

束「うんうん、いいねいいねー。あはははは、ははははははは」

千冬「……」

箒(やれる……この紅椿なら!)

貴虎「……」

シャル(貴虎、さっきからずっと黙ったままだけど、どうしたんだろう……)

シャル(篠ノ之博士を見て、何とも言えない表情してるし……もしかして、貴虎と篠ノ之博士って、過去に何かあったのかな……)

シャル(けど、さっき『初めまして』って言ってたし……でも、貴虎の表情を見ると……)

ダダダッ

真耶「大変です! 織斑先生、これを!!」 パシッ

千冬「……特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……っ!」 ピッ

千冬「テスト稼働は中止だ! お前たちに、やってもらいたいことがある」

それから少し経って、旅館


千冬「2時間前、ハワイ沖で試験稼働にあった、アメリカ、イスラエル共同開発の第3世代型IS、銀の福音[シルバリオ・ゴスペル]、通称『福音』が、制御下を離れて暴走」

千冬「監視空域より離脱したとの連絡があった。情報によれば、無人のISということだ」

千冬「その後、衛生による追跡の結果、福音はここから2キロ先の空域を通過することが分かった」

千冬「時間にして50分後、学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することになった」

千冬「教員は学園の訓練機を使用して、空域、及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は、専用機持ちに担当してもらう」

貴虎「……」

貴虎(おかしい、どう考えてもおかしい。確かに、我々は全員、強力な専用機を有している)

貴虎(だが同時に、全員が学生だ。たとえ緊急事態だろうと、各国の代表候補生を預かる学園が、そう簡単に我々を危険な任務に駆り出すとは思えんが……)

千冬「それでは、作戦会議を始める。意見がある者は、挙手するように」

セシリア「はい。目標ISの、詳細なスペックデータを要求します」

千冬「……よし。だが、決して口外するな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と、最低でも2年の監視がつけられる」 ピッ

セシリア「了解しました……広域殲滅を目的とした、特殊射撃型……わたくしのISと同じ、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」

鈴「攻撃と機動の両方を特化した機体ね……厄介だわ」

シャル「この特殊武装が曲者、って感じはするね。連続しての防御は、難しい気がするよ」

ラウラ「このデータでは、格闘性能が未知数だ。偵察は行えないのですか?」

千冬「それは無理だな。この機体は、現在も超音速飛行を続けている。アプローチは、1回が限界だ」

真耶「1回きりのチャンス……ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」

鈴「じゃあ、この中で最も一撃が重い、貴虎の斬月が最適ね」

セシリア「それしかありませんわね。ただ、問題は……」

シャル「どうやって、貴虎をそこまで運ぶか……」

シャル「交換ポッドのエネルギーを全部攻撃に使うとしたら、斬月に最初から蓄えてあるエネルギーを使うしかないけど……」

ラウラ「ただでさえ燃費の悪い斬月では、それだけのエネルギーで目的地まで飛ぶのは、まず不可能だろうな」

セシリア「では、移動をどうするか、ですわね。貴虎さんを運び、目的地まで飛べる機体……」

ラウラ「それに、目標に追いつける速度が出せるISでなければいけないな……超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」

貴虎「……」

シャル「……貴虎?」

貴虎「……織斑、1ついいか?」

千冬「何だ?」

貴虎「この作戦、私は参加しない」

鈴「っ! はぁ!? アンタ、何言ってんの!?」

貴虎「この話、我々が解決しなければならない責任など一切ない」

貴虎「アメリカとイスラエルが共同開発していたISが暴走したのだから、その2ヶ国が責任を持って対処すべきだ」

セシリア「ですが、暴走したISが、わたくしたちの方に来て、ここを襲撃する危険性もありますわ」

貴虎「もしそうなったときは、我々は自衛だけすればいい。積極的に対処する必要など、何処にある?」

ラウラ「宿敵[とも]よ、私たちには専用機があり、それだけの『力』を持っている」

ラウラ「その私たちが、このような重大な問題に対処するのは、当然ではないか?」

貴虎「2つの国が負うべき問題を、たった6人の学生に押し付けるという判断が、当然だと?」

シャル「貴虎が言いたいことは分かるよ。けど……どうして、そこまで頑なに拒否するの?」

貴虎「逆に聞くが、何故デュノアは、そこまですんなりと受け入れられている?」

貴虎「これが一体、私たちにとってどれだけ理不尽な話か、理解していないわけではないだろう?」

千冬「……お前が言っていることは正しい。これは訓練ではなく、実践だ。もし覚悟がないなら、無理強いはしない」

貴虎「実践など、クラス対抗戦でも、学年別トーナメントでも行なってきた。兵器であるISを扱っている時点で、覚悟など出来ている」

貴虎「だが……どうしても納得できない点がある。今回は、今まで以上にな。それは、織斑も同じじゃないのか?」

千冬「……」

貴虎「……」

千冬「……私は……」

千冬「…………」

貴虎「……はぁ……」

貴虎「……だが、私一人が駄々をこねていても仕方ないのも事実だ」

千冬「……貴虎……」

貴虎「納得は出来ないが……それでも、参加はすることにしよう」

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ投下してく

貴虎(この奇妙な作戦を乗り越えてこそ、元の世界へと戻れる手がかりが掴める……そう、自分に言い聞かせてな)

千冬「……本当に、悔いはないか?」

貴虎「聞かれるまでもない」

千冬「……よし。それでは現在、専用機持ちの中で最高速度が出せる機体は……」

束「ちょっと待ったー!」 ガタン!

真耶「きゃっ!?」

束「その作戦は、ちょっと待ったなんだよー。とうっ!」 ピョン

束「ちーちゃん、ちーちゃん。もっといい作戦が、私の頭の中にナウプリンティング!」

千冬「出ていけ」

束「聞いて、聞いて! ここは断然、紅椿の出番なんだよ!!」

千冬「……何?」

貴虎(やはりか……)

束「何てったって、紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてあるんだからね! ブイブイ!!」 ビシッ

千冬「……では、紅椿の調整には、どれぐらいの時間が……」

セシリア「織斑先生」

千冬「何だ?」

セシリア「わたくしとブルー・ティアーズなら、必ず成功して見せますわ」

セシリア「高機動換装装備[パッケージ]、『ストライク・ガンナー』が送られてきております」

千冬「その換装装備は、量子変換してあるのか?」

セシリア「それは……まだ、ですが……」

束「ちなみに紅椿の調整時間は、7分あれば余裕だね!」

千冬「……よし。本作戦は、呉島、篠ノ之の両名による目標の追跡、及び撃墜を目的とする!」

千冬「作戦開始は30分後。各員、直ちに準備にかかれ!」 パンッ

束「それじゃ、とっとと紅椿の調整、やっつけちゃお!」

箒「紅椿……私の、専用機か……」

貴虎「……」

それから少し経って、海岸


千冬『それでは、只今より作戦を開始する』

貴虎「……変身」 ピカーン

箒「いくぞ、紅椿」 ピカーン

貴虎「では、始めるとしよう」

箒「あぁ……そう言えば、呉島」

貴虎「何だ?」

箒「あれは着けなくていいのか? その……メロンのような、あれは」

貴虎「……必要になれば、そのときに出す」

貴虎(今回のこれは、不可解な点が多過ぎる。要らぬ心配だとは思うが、あまり積極的にロックシードを使うのはやめておこう……)

箒「そうか、ならいい。それでは、こっちに来い」

箒「本来なら、女の上に男が乗るなど、私のプライドが許さないが……今回だけは、特別だぞ」

貴虎(篠ノ之……随分と楽しそうな表情をしている。専用機を貰い、浮かれているのか……)

貴虎「……篠ノ之、くれぐれも気をつけろ。相手は正体不明のISで……」

箒「分かっているとも。ISという兵器を扱い、また相手にするのだから、それだけの覚悟をしろと言いたいのだろう?」

箒「無論、分かっているさ。心配するな」

箒「お前はちゃんと、私が運んでやる。大船に乗ったつもりでいればいい」

貴虎「……」

千冬『呉島、篠ノ之。今回の作戦の要は、一撃必殺[ワンアプローチ・ワンダウン]だ。短時間での決着を心がけろ』

千冬『討つべきは、銀の福音。以降、福音と呼称する』

箒「了解」

貴虎「あぁ、分かった」

箒「織斑先生。私は状況に応じて、呉島のサポートをすればよろしいですか?」

千冬『……そうだな。だが、無理はするな』

千冬『お前は、紅椿での実践経験は皆無だ。突然、何かしらの問題が出るとも限らない』

箒「分かりました。ですが、出来る範囲で支援をします」

千冬『……貴虎、聞こえるか?』

貴虎「個人間秘匿通信[プライベート・チャネル]に切り替えたのか……何だ?」

千冬『どうも篠ノ之は浮かれているな。あんな状態では、何かを仕損じるやも知れん』

千冬『いざというときは、サポートしてやれ』

貴虎「あぁ、分かっている……全く、ただでさえ不可解な作戦だと言うのに、心配すべきことが次々と……」

千冬『頼むぞ、貴虎……それでは、作戦開始!』

箒「いくぞ」

貴虎「……あぁ」

ゴォォォ……
ドゥッ

箒「暫時衛星リンク確立……情報照合完了。目標の現在位置を確認」

箒「呉島、一気にいくぞ」

貴虎「私は、いつでも大丈夫だ」

キィィィン……
ドビューン!

福音「……」 ゴォォォ……

箒「っ! 見えたぞ、呉島」

貴虎「あぁ、確認した」

箒「加速するぞ。目標に接触するのは、10秒後だ」

福音「……」 ゴォォォ……

貴虎(無双セイバー……) ピカーン

ガシッ
ジャキッ

貴虎「はぁぁぁ……!」 キィィィン……!

福音「!」

貴虎「はぁっ!」 ブンッ

福音「……」 サッ

貴虎「っ、躱されたか……」

箒「呉島、エネルギーは?」

貴虎「たった今、ポッドから補給が完了した……っ!」

福音「……」 バババババ……

貴虎「……」 サッ

箒「くっ……」 サッ

貴虎(速い……この弾幕を縫って進むのは、さすがに難しそうだ……やはり、使うしかないのか……)

貴虎「……篠ノ之、時間を稼げるか?」

箒「あぁ、分かった!」

貴虎「無茶はするな……」 カチャ

ガチャッ
キュイン

『メロン』

ジジジジジ……
ヒュゥゥゥ……

福音「!」

ガコン
ギュオォォォン……

貴虎(っ! 今……反応しなかったか……?)

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

ヒューン……
ズボッ

福音「!!」

ガシャッ
キュイィィィン……

『メロンアームズ! 天・下・御・免!!』

ガシャン!
テレレン

貴虎(やはり、反応した……いや、だがそんなはずは……)

福音「……」 ドガッ

箒「ぐっ……」

貴虎(あれは……本当に、無人機なのか……?)

福音「……」 ドゥッ

箒「っ! 呉島、そっちに!!」

貴虎「……あぁ、大丈夫だ」 ジャキン

『ソイヤッ!』

ギュオギュオギュオギュオ……
キィィィン……!

『メロンスカッシュ!!』

貴虎「はぁぁぁ……!」 ジャキッ

福音「!」

貴虎「はぁっ!!」 ブンッ

福音「……」 サッ

貴虎「っ! 何!?」

福音「……」 バシュッ

貴虎「がっ!」

福音「……」 グルリ

貴虎(っ! この動きは……)

福音「……」 ドガッ

貴虎「っ……だが、やはり……!」

福音「……」 バシュン!

貴虎(メロンディフェンダー!) ブンッ

ガキィィィン!
ドガーン!

貴虎「そうか……やはり、そうだったのか……」 サッ

貴虎(無人機による学園襲撃……第4世代型IS、『紅椿』の登場……実験中だったISの暴走……今の攻撃で、全て繋がった)

貴虎(先ほどの福音の動き……クラス対抗戦で、無人機がアリーナを襲撃したとき、俺が放った攻撃パターンと全く同じだ……)

貴虎(あのときは思いもしなかったが、今なら確信を持って断言できる。あのISは……)

貴虎(俺と、この斬月を調査するために、送りこまれたものだったに違いない)

貴虎(そして、この福音の暴走が、我々『IS学園の専用機持ち』に……いや、『斬月』と『紅椿』に任された理由……)

貴虎(一撃が重いから、最高速度が出せるから……我々は、そう認識していた)

貴虎(実際、あの織斑でさえ、そうとしか理解していないだろう。だが、本当の理由は……『あいつ』の目的は、別にあった……)

貴虎(1つは、第4世代型ISである紅椿の性能を、学園や世界に知らしめること……)

貴虎(そして、もう1つは……斬月を……この世界のイレギュラーである、俺を殺すこと……)

貴虎(結局、こちらで判断していたように見えて、全てあいつの思惑通りに動いていたに過ぎなかったのだな……)

貴虎(もっと早く考えるべきだった……ISは、『女』にしか使えない。それにより、この世界は女尊男卑社会へ変わったと聞いた)

貴虎(では、もしもそこに、ISが使える『男』が現れたとしたら……ISの開発者は、それをどう考えるか……)

貴虎(研究対象として、興味を持つか……それとも……)

貴虎(邪魔者として、排除するか……)

箒「呉島!……呉島?」

貴虎「……」

箒「呉島!!」

貴虎「!」

箒「一体、どうしたと言うのだ? ぼうっとしている暇は……」

貴虎「……私が……」

箒「……呉島?」

貴虎「こいつは、私が独りで倒す。篠ノ之、お前は手を出すな」 ドゥッ

箒「は!? おい、何を言ってるんだ!」

貴虎(もしもこの戦いで、紅椿の性能が学園に、世界に発信されれば……この技術を求め、国家間で争いが起こるは必至だ)

貴虎(そうなれば、篠ノ之は……だから、俺が倒さなければ……俺が!)

貴虎「はっ!」 ブンッ

福音「……」 ガシッ バシュン!

貴虎「っ……はぁっ!」 ジャキッ

福音「……」 ガキン! ドガッ

貴虎「がっ!」

福音「……」 キィィィ……!

貴虎(っ! まずい……!)

箒「呉島!」 バシュッ

福音「!」 サッ

貴虎「篠ノ之……」

箒「何なんだ、先ほどから! こいつに独りで勝つなど……」

貴虎「手を出すなと言ったはずだ!」

箒「っ! 何故だ!! 私の、紅椿の力が信じられないのか!?」

貴虎「お前は分かっていない! それが、その紅椿の性能が、世界にどれほどの影響を及ぼすか……」

箒「私に紅椿での実践経験がないからか!? そんなに私が信頼できないか!?」

貴虎「違う! そういう理由ではなく……」

箒「何が違うというのだ! 結局、お前は……」

箒「誰かを信じることを、拒んでいるだけじゃないか!!」

貴虎「っ! そんなことはない!俺は……」

……君は、私の理解者ではなかった……

貴虎「っ! 違う!! 俺は、篠ノ之のために……!」

貴虎「俺は……信じているはずだ……! 仲間を……篠ノ之を……!」

……君は、私の理解者ではなかった……

貴虎「っ!! ……がぁっ……!」

箒「っ! 呉島!!」

……君は、私の理解者ではなかった……

貴虎「っ……ぁあ……!!」

箒「呉島! しっかりしろ、呉島!!」

福音「……」 キィィィ……!

貴虎「……っ! 篠ノ之!!」

福音「……」 バシュゥゥゥ……!

箒「っ!」

貴虎「篠ノ之、どけ!」 ドガッ

ドガーン!

貴虎「がぁぁぁぁああああああああ!!!!」

箒「っ! 呉島!!」

貴虎(まだだ……まだ、俺は……)

貴虎(まさか……こんな、ところで……)

貴虎(くそっ、意識が……)

箒「呉島! 呉島ぁぁぁああああああ!!!」

それからしばらく経って、旅館にて


ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……

貴虎「……」

箒「……何故だ……何故、お前は……」

鈴「入るわよ」 ガラッ

箒「……」

鈴「どうしたのよ、何があったの?」

箒「……何故、呉島は……呉島は、私を信じてくれない……」

鈴「……アンタ、専用機もらったばっかで、浮かれてたじゃない。それが理由じゃないの?」

セシリア「きっと、貴虎さんにも理由があったのだと思いますわ。篠ノ之さんを、戦わせたくない理由が……」

シャル「それもそうかも知れないけど……僕は、他にも理由があると思うな」

箒「シャルロット……」

シャル「学年別トーナメントのとき、貴虎と組んだけど……実は、あのとき僕も感じたんだ」

シャル「貴虎は、心の何処かで、僕たちを本当には信頼してないって」

鈴「何よそれ、どういうこと?」

シャル「貴虎は……きっと、僕たちのことを信じようとしてるんだと思う」

シャル「けど、貴虎自身も無意識に、心の何処かで拒否してるんだ。僕たちを、心から信じることを」

箒「……分かっている……私も、全く同じように感じた……」

箒「だが、だからこそ……何故、信じてくれないのか……何故だか、とても不安になるのだ……」

ラウラ「……それは、どんなに考えても、私たちには分からないことだろう」

シャル「そうだね。僕たちに出来ることは……」

セシリア「貴虎さんを信じること、それだけでしょう」

シャル「僕たちが本気で信じていれば、きっと貴虎も、その想いに応えてくれるはずだよ」

ラウラ「なるほど……私も同感だ」

箒「……信じる、こと……」

鈴「……そうね。あいつを変えることなんて、結局は、あいつ自身にしか出来ないわけだし」

鈴「それに……今のあたしたちに出来ることは、それだけじゃないわ」

箒「……何?」

セシリア「負けたまま終わって、いいはずがないでしょう?」

箒「っ!……そういうことか」

鈴「ラウラ、福音は?」

ラウラ「確認済みだ。ここから30km離れた沖合上空に、目標を確認した」

ラウラ「ステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩は持っていないようだ。衛星による目視で発見した」

鈴「さっすがドイツ軍の特殊部隊、やるわね」

ラウラ「お前たちの方は、どうなんだ? 準備は出来ているのか?」

鈴「当然。甲龍の攻撃特化換装装備はインストール済み」

セシリア「こちらも完了していますわ」

シャル「僕も準備オーケーだよ。いつでもいける」

箒「……そうか……よし」

ラウラ「お前はどうする?」

箒「決まっている。戦って、勝つ。今度こそ、負けはしない!」

鈴「そう……じゃあ、行きましょ。今度こそ、確実に堕とすわ」

今日はここまで
明日から少し更新できないから、続きはまた今度

ただいま
今まで更新出来なくて、本当に申し訳ない

理由は別スレの方に書いておいたから、そっちを見てもらえると助かる
もう読んでる人なんていないかも知れないけど、一応最後まで書いておいたやつを投下して終わらせる

そのころ、貴虎の精神世界?


貴虎「……ここは……何処だ……?」

???「……」

貴虎「……っ! 誰だ、お前は……」

貴虎(白い衣に、茶色のブーツ……黒いベルトに、ネックレス……金髪に、オッドアイ……)

???「……恐い?」

貴虎「……お前がか?」

???「仲間を、誰かを信じることが」

貴虎「……分からん。俺は、今までずっと、あいつらを信じているつもりだった」

貴虎「だが、先ほど篠ノ之に指摘され……全く、分からなくなってしまった」

貴虎「俺は、あいつらを本当に信じているのか……」

???「貴方は、信じていない。誰かを、信じられていない」

貴虎「……何故だ……何故、俺は……」

???「裏切りが、貴方の心に影を落としている。貴方の心を、拘束してしまっている」

貴虎「……凌馬に裏切られたことが、トラウマになっていると言うのか……」

???「……」

貴虎「……では、どうすればいい? 俺は、どうすれば……」

???「それを変えられるのは、貴方だけ。貴方にしか、それは出来ない」

貴虎「……」

???「貴方は、どうしたい?」

貴虎「……何?」

???「貴方は、どうしたいの?」

貴虎「……言うまでもない。俺は、あいつらを信じたい」

貴虎「篠ノ之を、オルコットを、凰を、デュノアを、ボーデヴィッヒを」

貴虎「あいつらを……もう一度、誰かを……信じたい」

???「なら、信じればいい」

貴虎「だが、俺は……」

???「大丈夫。今の貴方なら、何も心配することはない。貴方はもう、きっかけを得たから」

貴虎「きっかけ……?」

???「貴方の傷は、もう癒えている。他でもない、彼女たちのお陰で」

???「もう、貴方が苦しむことなんてない。貴方は、貴方の望むように行動することが出来る」

スー……

貴虎「っ! 待て!!」

???「今の貴方なら、あれを使える。私からの、プレゼント」

貴虎「待て……お前は、一体……」

???「私の名前は、斬……」

パッ

貴虎「……消えてしまった……」

貴虎「……今のは、一体……」

パッ

サガラ「いよっ、調子はどうだ?」

貴虎「っ! サガラ!!」

貴虎「そうか……俺をこの世界に送り込んだのは、貴様だったのだな」

サガラ「どうだ、呉島貴虎。青春してるか?」

貴虎「言え! 何故、俺をこの世界に……」

サガラ「いいから、俺の質問に答えろよ。話はそれから、ゆっくりしてやる」

貴虎「……」

サガラ「青春してるか?」

貴虎「……どうだろうな。少なくとも、元の世界で過ごした高校生時代とは、全く違う生活をしているのは確かだ」

サガラ「なら、それなりに青春してるんだろ。どうだ、楽しいか?」

貴虎「……悪くはない」

サガラ「結構、楽しんでるってことか」

貴虎「質問には答えた。さぁ、さっさと……」

サガラ「待て待て、そう焦んなよ。順を追って話してやるから」

サガラ「まず、俺がお前をこの世界に送り込んだ理由だが、お前を助けるためだ」

貴虎「助ける、だと……」

サガラ「あぁ、そうだ。お前はあのとき、シドに崖から落とされて死ぬはずだった」

サガラ「だが俺としては、あのまま戦極凌馬の思い通りに運ぶのは、あんまり面白くない」

サガラ「だから、崖から落ちて死んだと思われてるお前を生還させ、少しサプライズを与えようと考えたのさ」

サガラ「体の方の傷は、オーバーロードの王の力もあって、すぐに一命をとりとめられる状態まで回復した。だが問題は、心の傷だった」

貴虎「オーバーロードの王だと……!? いや……それより、心の傷か……」

サガラ「お前が思っている以上に、お前自身の心の傷は深かった。その原因は、戦極凌馬に裏切られたことだけじゃない」

サガラ「お前は今まで、人類を救うために全力をかけてきた。それこそ、自分の楽しみや人生などを、全て捨ててな」

サガラ「だが戦極凌馬に裏切られたことで、それまでの全てが無駄になった」

サガラ「それが心の傷を、ただでは修復不可能なまでに広げちまってたんだ」

サガラ「その心の傷を癒すために、俺はある方法を思いついた。それが、これだ」

サガラ「お前が味わうことの出来なかった青春……つまり、お前自身が決めて進む人生を送らせることだ」

貴虎「俺自身が、決めて……」

サガラ「そこで俺は、お前の精神をこの世界に送り込むことを決めた」

サガラ「だがここで、1つ問題が起きちまった。この世界には、お前が存在していなかったんだ」

サガラ「つまり、お前という存在を、この世界に無理矢理ねじ込むことになった」

サガラ「そのとき、いろんなバグが起きちまったのさ。すなわち、女にしか使えないISを、お前も使えるようになったり……」

サガラ「ちゃんとした15歳の身体を持つはずが、26歳のままになっちまったり」

サガラ「両親が家にいたり、織斑千冬や凰鈴音と幼馴染になっていたりな」

貴虎「私のISが特殊なのも、それが原因か……」

サガラ「いや、あれは俺がやった。お前が使いやすいように、カスタマイズしてやったのさ」

サガラ「だがそれらの問題も、全て結果オーライだった。自分以外は女しかいないIS学園で、お前はかつてないほどの青春を体験できた」

貴虎「……そういうことだったのか……では、どうしてお前は、俺の前に現れた?」

サガラ「お前の心の傷が、完全な状態にまで癒えたからだ。さぁ、元の世界に帰ろうぜ」

貴虎「……待て。まだ銀の福音を撃破していない。このままでは、今度は篠ノ之たちが……」

サガラ「ほっとけよ。どうせ元の世界に戻れば、あいつらはお前のことなんて綺麗さっぱり忘れちまうんだ」

貴虎「っ! 何だと……」

サガラ「それだけじゃない。お前が存在したという痕跡も、この世界から全て消える」

サガラ「織斑千冬や凰鈴音とも、全く関係なくなるんだ。だからあいつらを見捨てたところで、お前には何ともないんだぜ」

貴虎「……いや、それでも駄目だ」

サガラ「ほう、どうしてだ?」

貴虎「俺は呉島家の長男、呉島貴虎だ。人類を救うために、今までどんな努力もしてきた」

貴虎「私は人類を救う。それは元の世界だろうと、この世界だろうと変わらん」

貴虎「篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

貴虎「あいつらを救うのも、俺の義務だ!」

サガラ「……はははっ、そうか。まぁ、お前ならそう言うと思ってたぜ」

サガラ「ところで、貴虎。ISってのは、元々何のために作られた技術だ?」

貴虎「何だ、急に……確か、宇宙空間で活動するための技術だったはずだ」

サガラ「そうだ。ISの本当の力を引き出すもの、それは宇宙だ」

サガラ「呉島貴虎。その手で、宇宙を掴め」

スー……

貴虎「消えた……」

貴虎「……よし」

貴虎(いくぞ……今度こそ、銀の福音を倒す。あいつらを……仲間を、信じて!)

貴虎(待っていろ……篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ!!)

そして、沖合上空


福音「……」

福音「……っ!」

ドガーン!

ラウラ「初弾命中! 続けて砲撃を行う!!」

福音「……」 ドゥッ

ラウラ「予想よりも速い……っ!」

シャル「たぁっ!」 ブンッ

福音「……」 ビューン

セシリア「はっ!」 バシュン! バシュン!

福音「……」 サッ サッ

シャル「かかった!」 ガチャッ

バシュン!
バババババ……

福音「!」 キィィィ……!

福音「……」 バババババ……

シャル「っ! けど、僕はこのぐらいじゃ墜とせないよ!!」

福音「……」 ビューン

鈴「はぁ!」 バシュン!

福音「!」

ドガーン!

セシリア「やりましたの!?」

鈴「まだよ!」

福音「……」 ドゥッ

箒「逃がすか!」 ブンッ

福音「……」 ガシッ

箒「くっ……」 ググッ

福音「……」 グググ……

ラウラ「箒、武器を捨てて離脱しろ!」

シャル「箒!」

セシリア「箒さん!」

箒「っ……はぁっ!!」 ズバァッ!

福音「!」

ヒューン……
バシャーン!

ラウラ「箒、無事か?」

箒「あぁ、私は大丈夫だ」

福音「っ……!!」 ピカーン

ギギギギギ……
ゴォォォ……!

ラウラ「っ! まずい、第二形態移行[セカンド・シフト]だ!!」

福音「……」 バシュゥゥゥ……!

箒「っ! がぁっ!!」 ドガーン!

ヒューン……

セシリア「っ! 箒さん!!」

箒「……ぁ……」

箒(私は……このまま……)

箒(……呉島……貴虎……)

箒(私は……お前に……)

箒(……お前に、信じて……もらい……)

「大丈夫か、篠ノ之」

箒(っ! まさか……そんなわけ……)

箒(いや、聞き間違えるはずがない……この声は……)

箒「貴虎……?」

貴虎「あぁ、私だ」

箒「そんな……傷は?」

貴虎「まだ痛む。が、今のお前ほどではない」

箒「……ふふっ、そうか。確かに、その調子なら大丈夫そうだな」

貴虎「お前も、軽口を叩けるほどには無事らしい」

箒「あぁ……お前のお陰で、元気が出てきた」

貴虎「……すまなかった」

箒「……」

貴虎「あのとき、私は篠ノ之を護るために、独りで戦うつもりだったのだが……」

貴虎「結局私は、お前が言った通り、誰かを信じることが出来ていなかった」

箒「……過ぎたことだ、忘れよう。それに……今は、違うのだろう?」

貴虎「そうでなければ、ここにはいない」

箒「なら、それで十分だ」

セシリア「貴虎さん!」

ラウラ「貴虎……」

鈴「アンタ、もう大丈夫なの?」

シャル「まだ、休んでた方が……」

貴虎「……オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ。そして……篠ノ之」

貴虎「私は、お前たちを信じる」

鈴「……やっと、ね」

シャル「僕たちも、貴虎のことを信じてるよ。ね?」

ラウラ「当然だ……さぁ、いくぞ」

セシリア「えぇ……反撃のお時間ですわよ」

貴虎「ふっ……ん?」

貴虎(後付装備[イコライザ]が解放されている……っ! これは……)

貴虎(なるほど、これだったのか……斬月からの、プレゼントというのは……)

貴虎「よし……変身」 カチャ

ガチャッ
キュイン

『フォーゼ』

ジジジジジ……
ヒュゥゥゥ……

鈴「……は? 何、あれ……」

シャル「フルーツじゃ……どう見ても、違うよね……」

ラウラ「ロケット……いや、顔か……?」

ガコン
ギュオォォォン……

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

セシリア「和風の音楽……ですわね……」

箒「……おい、ちょっと待て……」

シャル「ということは……今度は、あれが……?」

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

ヒューン……
ズボッ

鈴「……ぎゃぁぁぁぁああああああああ!!!!」

ラウラ「ロケットが……いや、顔が……頭に……!」

シャル「あぁ、やっぱり……」

ガシャッ
キュイィィィン……

『フォーゼアームズ! 青・春・スイッチ・オン!!』

ガシャン!
キュワーン

セシリア「何か……何かが、割れて……」

シャル「何だろう……もう、慣れちゃった自分がいるよ……」

箒「……奇遇だな、私もだ」

貴虎(……そう言えば、これを装着したら、言わなければいけないことがあったな……仕方ない)

貴虎「宇宙キ……タと言っておいて……」

貴虎「……いや、違うな。今の私には、こんな格好つけは似合わない」

箒「……貴虎?」

貴虎「いくぞ……」 グッ……

貴虎「宇宙……キターーッ!!」

5人『貴虎(さん)!?』

貴虎「斬月……タイマン張らせてもらうぞ!」

箒「……どうしたと言うのだ、貴虎……」

セシリア「貴虎さん、大丈夫ですか……?」

貴虎「……私は、至って正常だ」

シャル「……いや、今のは普通じゃないよ、貴虎……」

鈴「やっぱ、大人しく休んでた方がいいんじゃないの……?」

貴虎「……」

ラウラ「宿敵[とも]よ……」 ポンッ

貴虎「やめろ……肩を優しく叩くな……」

福音「……」 キィィィ……!

貴虎「っ! くるぞ!」

5人「!」

福音「……」 バシュゥゥゥ……!

貴虎「ふん……」 ジャキジャキジャキン

『ソイヤッ!』

キュイン
ガシャッ

『ロケット・オン!!』

貴虎「はっ!」 ゴォォォ……

福音「!」

貴虎「はぁっ!」 ドゴッ

福音「!!」 ドーン!

鈴「あいつ……右手にロケット付いてるわよ……」

セシリア「しかも、それで殴り飛ばしましたわ……」

貴虎「次は、これだ」 ジャキジャキン

『ソイヤッ!』

キュイン
ガシャッ

『ドリル・オン!!』

ラウラ「今度は、足にドリルか……」

シャル「僕、もう何が起きても驚かない自信があるよ……」

貴虎「はぁっ!」 ドゥッ

キュイィィィン……!
ドドドドド……

福音「!」 サッ

貴虎「っ、外したか……」

福音「……」 キィィィ……!

貴虎「!」

箒「貴虎!」 バキィ!

福音「!」 ヒューン

貴虎「助かった、篠ノ之」

箒「何、どうということはない」

福音「……」 ドゥッ

箒「貴虎、お前は一撃必殺の準備をしておけ。私が隙を作る!」ドゥッ

貴虎「頼むぞ、篠ノ之!」

箒「あぁ、任せておけ!」 ブンッ

福音「……」 ガキン!

箒「はっ!」 ブンッ ブンッ

福音「……」 ガキン! ガキン!

箒「っ、ラウラ!」

ラウラ「任せろ!」 バシュン!

福音「!」 サッ

箒「たぁっ!」 ジャキッ

福音「……」 バババババ……

箒「っ! くっ……」

ラウラ「箒! がぁっ!!」

福音「……」 キィィィ……!

セシリア「わたくしが、ここにおりましてよ!」 バシュバシュ!

福音「!」 サッ

鈴「アタシだって、忘れてもらっちゃ困るわよ!」 バシュン!

福音「っ……」

シャル「今しかないよ、貴虎!」 ダン!

福音「っ!!」

貴虎「あぁ……今度こそ、決める!」 ジャキン

『ソイヤッ!』

キュイン
ガシャッ

『リミットブレイク!!』

貴虎「はぁぁぁ……!」

ゴォォォ……
キュイィィィン……!

貴虎「終わりだ……ISロケットドリルキック!!」 ドゥッ

福音「!」

貴虎「はぁぁぁああああああ!!!」 ゴォッ!

ドドドドド……
バキィッン!

福音「!!……」

ヒューン……
ドガーン!

シャル「っ! やった!!」

セシリア「えぇ、わたくしたちの勝利ですわ!」

ラウラ「ふっ……任務完了、だな」

鈴「ま、アタシたちを相手にしたのが運の尽きってことね!!」

貴虎「……終わった、な」

箒「あぁ……っ! 貴虎!!」

貴虎「どうした……っ!」

貴虎(体が……光りながら、粒子状に……)

貴虎「……なるほど」

貴虎(そうか……ようやく、戻るのだな……)

貴虎(元の、世界に……)

箒「何を落ち着いているんだ! 一体、何が起きて…」

貴虎「篠ノ之……いや、箒」

箒「!」

貴虎「感謝する。私に、誰かを信じる心を、取り戻してくれたことを」 スー……

箒「っ! 待ってくれ、貴虎!!」

パッ

箒「!」

鈴「……あれ?」

シャル「鈴、どうかした?」

鈴「いや……今、何かが頭を過った気がしたんだけど……」

セシリア「奇遇ですわね……実は、わたくしも……」

ラウラ「……なぁ、こんなことを聞くのも何だが……福音に最後の一撃を当てたのは、誰だ?」

シャル「何言ってるのさ、ラウラ。たった今、目の前で……」

鈴「……あれ? そう言われると、何かはっきり思い出せないわね……」

セシリア「確か……箒さんではありませんでした?」

シャル「……うーん、そうだった気もするね……うん、そんな気がしてきたよ」

ラウラ「一応、本人に聞いてみるか。箒!」

箒「……」

セシリア「……箒さん?」

箒「っ! あ、あぁ、すまない。何の話だ?」

鈴「ちょっと、大丈夫? 福音を倒したのって、アンタだったわよねって話」

箒「……いや、私ではないぞ」

セシリア「え……では、一体誰が……」

箒「……何か……何か、大事なことを、忘れてしまった気がする……」

ラウラ「……疲れているのだろう。休めば、きっと思い出す。今は、旅館に戻ることが先だ」

箒「……そうだな」

箒「…………」

箒「……貴、虎……?」

箒(一体、何だろうか……誰かの名前だろうか……ただ……)

箒(ただ、とても心地よい響きだ……)

シャル「おーい、箒!」

箒「……あぁ、今いく!」

『エピローグ』


貴虎「……」 ピクッ

貴虎「……ここは……」

貴虎(痛い……そうか、戻ってきたのだな……)

「生きながらえたようだな、運のいい奴だ」

貴虎「!」 バッ

ロシュオ「……」

貴虎「……お前たちは……何者なんだ……?」

ロシュオ「我らはフェムシンム。かつてこの世界に栄えた、民の末裔だ」

……
…………

これにて完結
最近の鎧武を見れてないから、サガラの設定とかおかしいかも知れないけど、どうか許して欲しい

最後に、本当に申し訳なかった
それから、本当にありがとう

一夏がグランドに穴を開けている頃(アニメ3話序盤)

2組担任「はぁい、今日は転入生を紹介するわ。なんと、可愛い女の子♪」


「えー残念」


「2組男子にワンチャンあるかもって思ったのになー」


2組担任「そんなこと言わないの。それに転入生ちゃんは…」


「ためないでよ先生!気になるから!めっちゃくちゃ気になるから!」


2組担任「うふふ、本当可愛いわねあなたたち。この後は、直接本人に聞けばいいわ。さあ、入ってらっしゃい」


ガララ


「あっ、本当に可愛い」


「ちっちゃ」


鈴「今日からみなさんと一緒に勉強する。中国の代表!候補生!の凰鈴音です!ヨロシクオネガイシマス…特にちっちゃいって言ったヤツ」ギロッ


「火野先生が言ってましたー」


映司「ええ!?」

すみません
誤爆してしまいました
本当に申し訳ありません

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