妹「ねえねえお兄ちゃん」男「どうした何か用か?」妹「本屋行こ?」 (156)

―どっかの本屋―

男「あ、おいこの漫画お前が揃えてる漫画じゃないか?」

妹「え? おーホントだ! 最近復刻版が出たことは知ってたけどまさかこんな小さな本屋に置いてあるとは!」

男「『これ面白いのにマイナーなんだよねー』って嘆いてた割には二作品同時に復刻されてるんだな。凄いじゃんか」

妹「2014年の冬アニメでこの作者の作品がアニメ化されたから、そのタイミングで過去作を復刻したんだよ」

男「へー、じゃあもうマイナー漫画じゃねえだろ」

妹「いやいやいや、お世辞にも有名漫画とは言えない現状だよ。ファンとしてはもっとみんなに知って欲しいくらいだね」

男「……で、どうすんの? お前この二つの漫画既に持ってるけどまた買っちゃうの?」

妹「そりゃ当然だよ! たとえ旧作を持ってたとしても復刻版が何種類も出たとしても全部揃えるのがファンだからね!」

男「あー……じゃあ俺の買い物ついでにこれも買ってやるか」

妹「わーい! お兄ちゃんありがとー! 大好き!」

男「現金な奴……」

超アナル全力爽快舐め野郎「ホントお前ら仲良いよなー」

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最後の誰かすごい気になる

これはギャグなのか?ガチなのか?

誰だよ

男「おお、超アナル全力爽快舐め野郎じゃんか。なんだお前もここの本屋よく来るのか?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……ちょっとこっちに用があってな、そのついででここに寄ったんだよ」

妹「こんにちは超アナル全力爽快舐め野郎さん! いつもお兄ちゃんがお世話になってます」

男「別に世話してもらってねえけど」

超アナル全力爽快舐め野郎「こんにちは妹ちゃん。相変わらず可愛いね、こいつとは大違いだ」

男「悪かったな似てなくて」

妹「えへへー、可愛いって言われちゃったー」

男「……ん? お前、その手に持ってる本はなんだ?」

超アナル全力爽快舐め野郎「え、あ、ああ、これか?」

男「『日本妖怪大全』? なんだ、妖怪の本か?」

妹「めっちゃ良い趣味してるっ!」

男「興奮すんなよ」

妹「しかも決定版!」

男「興奮すんなって」

超アナル全力爽快舐め野郎「別に趣味ってわけじゃないんだけどね……」

妹「……え、そうなんですか」

男「あからさまに残念がるなよ失礼だろ」

超アナル全力爽快舐め野郎「ちょっと調べ物っていうかなんていうか……」

男「? なんだなんだ……調べ物? 妖怪の本で調べ物?」

超アナル全力爽快舐め野郎「最近、俺の周りで変な事が起こっててさ……」

男「……変な事、ってどんな事だよ」

妹「なんですかなんですか!? 事件か何かですか!?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

男「えーっと……妹、お前はこれで好きな本好きなだけ買ってなさい」

妹「えー、私も」

男「頼むから」

妹「……わかったよぉ。ホントに好きなだけ買っちゃうからね!」

男「ごめんな」

―どっかの本屋の外―

男「で、変な事って具体的にはどういうことなんだよ。俺でよければ話聞くぞ?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……すまん、せっかく妹ちゃんと買い物してたっつうのに」

男「気にすんなって、友達の悩みくらい聞くのが当然だ」

超アナル全力爽快舐め野郎「ありがとう……」

男「話しを戻すけど、変な事ってどんな事なんだよ?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……最近さ、俺が身に覚えのない場所で俺を見たって言う人がいたんだよ」

男「……。……? ……え? ……! ……は?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

男「……ああ、ごめんごめん! いや、信じてないとか馬鹿にしてるわけじゃないんだ、単に言ってる意味がわからなくてさ」

超アナル全力爽快舐め野郎「そりゃあまあそうだよな……俺だって意味わかんねえよ」

男「超アナル全力爽快舐め野郎が行った覚えのない場所で、超アナル全力爽快舐め野郎を見たって言う人がいたってことだな?」

超アナル全力爽快舐め野郎「そうらしい……」

男「どういうことだそりゃ」

男「ホントにお前は、その場所にはいなかったんだよな?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……ああ」

男「……?」

超アナル全力爽快舐め野郎「いなかった……はずだ。その日俺はずっと屋敷にいたはずなのに、なのに」

男「屋敷って……そういやお前の家って金持ちだったんだっけ」

超アナル全力爽快舐め野郎「門から玄関まで馬鹿みてえに遠いってだけだよ」

男「それを金持ちっつうんだよ」

超アナル全力爽快舐め野郎「……はあ」

男「その、覚えのない場所でのお前を見たって言ってる人は一人じゃないのか?」

超アナル全力爽快舐め野郎「今までで三回、似たような話を聞かされた」

男「……言われてないだけでもっと目撃されてる可能性もあるのかもな」

超アナル全力爽快舐め野郎「怖いこと言うなよ……」

男「あくまでも可能性の一つとして考えただけだ」

超アナル全力爽快舐め野郎「正直、めちゃくちゃ怖くねえか?」

男「確かに不気味な話だな。自分の知らん所で自分を見たっつう人がいるんだもんな」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

男「……だからそれを本屋で買ってたのか、『日本妖怪大全』」

超アナル全力爽快舐め野郎「気休めにもならないだろうけどな」

男「水木しげるの本を気休めにもならないなんて言ったら俺の妹に怒られんぞ」

超アナル全力爽快舐め野郎「ははは、妹ちゃんがここにいなくて助かったよ」

男「ふーん、なるほど……」

超アナル全力爽快舐め野郎「悪いな、相談聞いてくれて……じゃあ、俺は帰るわ」

男「ちょっと待て」

超アナル全力爽快舐め野郎「……?」

男「俺の知り合いに、それこそ気休めにもならないかも知れんが俺よりもっと相談に乗れそうな奴が一人いる」

超アナル全力爽快舐め野郎「……マジか」

男「試しにそいつの所に行ってみよう」

男(……あいつの機嫌取るために手土産も持っていくか)

解離性同一性障害かな

この前vipで見た

―男と超アナル全力爽快舐め野郎の通う高校・技術棟にある誰も使わなくなった教室―

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

男「……と、いうわけなんだ」

銀髪娘「……で、私に縋りに来たのか」

男「お前なら何か心当たりあるかなと思ってさ」

超アナル全力爽快舐め野郎「学校に住む銀髪の女……噂には聞いてたがマジで住んでるんだな」

銀髪「あ゛ん? 住んでちゃ悪いのかよ? こちとら死に物狂いでここに居座ってんだぞコラ」

超アナル全力爽快舐め野郎「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい(顔に似合わずおっかねえ……)」

男「そうカッカすんなよ。別に無償で相談に乗ってくれとは言ってねえから」ガサゴソガサゴソ

銀髪「……ん? この匂い!?」くんくん

男「さっきコンビニで買ってきたんだよ、こいつの奢りでな」

銀髪「うおおおおおお! 餃子まんじゃん! 一昨日から何も食ってなかったからちょうど腹減ってたんだ! ナイス!」

超アナル全力爽快舐め野郎(……え? 一昨日から? ちょうど? ……え?)

>>11
読んでた人いたのかよ
前に書いたやつがちょっと気に入らなかったから少し手直ししたんだ

銀髪「ありがとー!」

男「銀髪は基本ガラの悪い不良女だけど、飯を与えればそれなりに手懐けることは出来るんだよ」ぼそぼそ

超アナル全力爽快舐め野郎「一応覚えとくわ……(出来てもそんなことする度胸なんて俺にはねえよ……)」ぼそぼそ

銀髪「……ん? 私と男のは餃子まんだけどあんたのだけ違うみたいだな」

超アナル全力爽快舐め野郎「え、っと……あ、ああ。俺は餡まん買ったんだよ。甘いのが好きだからさ」

銀髪「なーんだよー、私も甘いのが食いたかったなー」

男「どうせ腹空かしてるだろうと思って肉が入ってるこっちを買ってきてやったんだぞ文句言うなよ」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「えー餡まん食いたーい。なあ、私の餃子まんと交換しようぜー」

超アナル爽快舐め野郎「……ご、ごめん。俺餃子まん嫌いなんだよ」

男「ほら、超アナル全力爽快舐め野郎もこう言ってんだから我慢しろよ」

銀髪「っちぇー」

超アナル全力爽快舐め野郎「なんなら俺の分も食べて良いけど……」

銀髪「マジで!? やっりぃ! んじゃ遠慮なくいただきまーす!」もぐもぐもぐ

男(なんつう速さだ……)

アナル野郎が妖怪なんじゃ…?

銀髪「……にしても超アナル全力爽快舐め野郎くんはそんなに餃子まんが嫌いなのかよ」もぐもぐごくんっ

超アナル全力爽快舐め野郎「……いや、ただ今は別に腹減ってなかったってだけだよ」

男「腹空かしてるお前があまりにも不憫だったから気遣ってやったんだろ、察しろ」

銀髪「うるせえ」ドカッ

男「痛いっ」

銀髪「ま、いいや。餃子まんと餡まん両方食えたし!」

男「……いつも思うけどお前なんか軽いよな」

銀髪「んだよ私に重い女になって欲しいってのか?」

男「勘弁してくれ」

超アナル全力爽快舐め野郎「……ははは」

銀髪「さてと、腹ごしらえも済んだことだし……」

男「ようやっと本題に入れんのか」

銀髪「えへへ……で、何の話だったっけ?」

男・超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「あーはいはい。あんたが居るはずのない場所であんたを見たって噂が出てきてんのね」

男「数分前に話したばっかだけどな」

銀髪「超アナル全力爽快舐め野郎くんの耳に届いた目撃談は三つ。その三つの場所と時間は?」

超アナル全力爽快舐め野郎「三つとも夜中らしい、場所までは詳しく聞かなかった……怖くて」

男「……まあ気持ちはわかる。当事者のお前にとっちゃあんまり詮索もしたくないだろうし」

銀髪「どうして怖くなったんだ?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……もしその場所に行く機会があったとして、それでもし俺じゃない俺を……いるはずのない俺を見ちまったら」

銀髪「……」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎「こんな馬鹿らしい悩みなんて誰にでも相談出来るもんじゃないからさ……自分なりに調べてみたんだよ」

銀髪「それ以上は言わない方がいいかも」

男「……え?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……ど、『ドッペルゲンガー』って言うんだろ? それを見たら死ぬとか書かれてあってさ」

銀髪「それ以上言うなっつったろ」ドゴッ!

超アナル全力爽快舐め野郎「ぐふぅぉっ!?」

男「お、おい銀髪それはちょっといくらなんでも(……こいつにしちゃ珍しく本気で殴りやがったなおい)」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」ピクピク

男「だ、大丈夫か?」

超アナル全力爽快舐め野郎「なんとか……」

男「いくらなんでも殴る事はねえだろ!」

銀髪「仕方ないだろそれ以上言うなっつってんのに喋ってんだもんコイツ!」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

男「……はい」

超アナル全力爽快舐め野郎「……申し訳ありませんでした」

男「でもなんで……それ以上そのなんちゃらかんちゃらのこと喋っちゃダメなんだよ」

銀髪「……んーーー」ぼりぼり

男「……?」

銀髪「こういう言い方は好きじゃねえんだが……要は素人が迂闊に口出しすんなってことだよ」

超アナル全力爽快舐め野郎「……?」

男「……素人が口出しすんな? ってのは?」

銀髪「立ち入り禁止の場所に足を踏み入れちゃいけないように、呪いのグッズを気安く手にしちゃいけないように――」

銀髪「――見ちゃいけないものを見ちゃいけないように……それと一緒ってことだ」

男「……?(……?)」

銀髪「だーかーら、素人が大した知識も無い状態で迂闊にそういう事を口走ったら何か良からぬ事が起こる可能性があるっつってんの」

男「……なるほど、ってマジか!?」

銀髪「あくまでも可能性があるってだけだがな、それでも下手な事はしないに越した事はねえ。『噂をすれば影』ってのは馬鹿に出来ねえんだよ」

男「だから顎にピンポイントで本気で殴ってまで止めようとしたのか」

超アナル全力爽快舐め野郎「……ご、ごめん、軽率だった」

銀髪「これから気をつけてくれりゃいーよ。『ドッペルゲンガー』なんてそれこそまさしく『影』そのものなんだしな」

超アナル全力爽快舐め野郎「噂をすれば影、か……」

銀髪「今度からは迂闊に口に出さないようにな」

超アナル全力爽快舐め野郎「あ、はい」

男「……(なんか今日の銀髪はやけに優しいな)」

銀髪「取り敢えず……現状、私が超アナル全力爽快舐め野郎くんに出来るアドバイスは下手な行動は取るなってだけだ」

男「……現状?」

超アナル全力爽快舐め野郎「わ、わかった」

銀髪「たとえこれからも周りの奴らからそういったお前の目撃談を聞かされても、なるべく気にするな」

男「無理だろ」

銀髪「無理でも頑張って気にするな」

男「えー……」

超アナル全力爽快舐め野郎「……わかった」

銀髪「今考えられる最悪の展開は、あんたが下手にこの現象を調べたり解決したりと焦ることで起きうる二次被害なんだからな」

超アナル全力爽快舐め野郎「はい」

男「二次被害……その『噂をすれば影』、みたいなことか」

銀髪「だから超アナル全力爽快舐め野郎くんは出来る限り大人しくしててくれ!!!」

超アナル全力爽快舐め野郎「はいっ!!!」

銀髪「よし!!! わかったら帰れ!!!!」

超アナル全力爽快舐め野郎「はいっ!!! えっ!?」

男「……あいつのこと帰らしちゃったけど良かったのか?」

銀髪「こんな所にいつまでもいるよりさっさと帰ってくれた方が本人にとっちゃ安全だ」

男「……じゃあ俺も帰って――」

銀髪「ダメ」

男「……」

銀髪「私の助手が帰ってどうすんだよオイ?」

男「……助手ってお前、これはただの悩み相談であって」

銀髪「あいつのお家、確か相当なお金持ちだったんだっけなー」ニヤニヤニヤ

男「……」

銀髪「上手いこと大事みてえに思わせて出来るだけたくさん金ふんだくりてえな……」ニコニコニコ

男「……」

銀髪「ただの悩み相談ならさっきの餃子まんと餡まん食った時点で帰してますよ。うひひひひ」ニタァァァ

男「……」

銀髪「いいか男……これは仕事だ、たんまり稼ぐぞ。うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

男「……(帰りてええええええええええええええええ!)」

―男の自宅―

男「……ただいまー」

妹「おかえりお兄ちゃん! 遅かったねー、二人でどこ行ってたの?」

男「ちょっと学校に用事があってな」

妹「休日に学校? 超アナル全力爽快舐め野郎さんが言ってた周りで起こってる変な事に関して?」

男「んー、妹には関係無いから気にすんな」

妹「ってことは銀髪先輩の所に行ってたんでしょ!?」

男「ん、まあ、うん(勘の良い奴め)」

妹「お兄ちゃん銀髪先輩と仲良いよねー、お尻に敷かれてる感じだけど」

男「敷かれてるつもりはないんだが……」

妹「もう付き合っちゃえば良いのにー。あ、でもお兄ちゃんには幼馴染さんがいるか!」

男「あいつだけは絶対に嫌だ!」

妹「あー、っていうか今日帰って来る時にまた近所のニートさんにセクハラされたよ!」

男「お互い災難だな……」

妹「やめてって言っても聞かないんだもん! お兄ちゃんからも言ってよー!」

姉「おー、お帰りなさーい」

男「……ただいまー」

姉「ちょうどお母さんも晩ご飯作り終わったとこだから手洗ってきなー」

男「はい」

姉「手洗ったらご飯運ぶの手伝ってね!」

男「はい」

ジャバジャバジャバ。

男「……はー」

男「最初はただの悩み相談のつもりだったのに、まさか銀髪が本気出すとは思わなかった……」

男(なんて言ったっけ……? 『ドッペルゲンガー』……か。本人がいないはずの場所で起こった目撃談かぁ)

男「でもまあ……そんな面倒なことにはならんだろ。うん、大丈夫大丈夫!」

男「母ちゃん今日の晩飯は?」

母「豚の血よー」

男「いただきまーす」ゴクゴクゴク

妹「そういえば今日お兄ちゃんと本屋に行ったら、お兄ちゃんの同級生の超アナル全力爽快舐め野郎さんに会ったの」ゴクゴクゴク

母「あらあら、超アナル全力爽快舐め野郎くんってあのお金持ちの?」ゴクゴクゴク

妹「うん」ゴクゴクゴク

母「あの子のお家ってこっちの方だったっけ?」ゴクゴクゴク

男「いや、確か二駅くらい離れてたな」ゴクゴクゴク

妹「なんかこっちに用があるとか言ってたね」ゴクゴクゴク

母「へえー、それはつまりこっちに用があったってことねぇ」ゴクゴクゴク

男「そういや妹、お前俺が渡した金でちゃんと俺の欲しかった本も買ってくれたか?」ゴクゴクゴク

妹「うん買ったよ! ま、お言葉に甘えて私の欲しい漫画もいっぱい買っちゃったけどね」ゴクゴクゴク

男「別にいいよ。その代わり後で読ませてくれよ、その復刻版の漫画」ゴクゴクゴク

妹「おっけー!」ゴクゴクゴク

姉(どうでもいいけどなんで私たちの家の料理は毎晩豚の血なんだろう……)ゴクゴクゴク

姉「……んあ」

男「ん? どうした姉ちゃん」

姉「ああ、いや。ちょっとついさっきの事思い出しちゃって……ちょっと気分悪いことでさあ」

男「ついさっき?」

妹「なになにー?」

母「嫌な事があったなら遠慮なく話しなさいよ?」

姉「んーっと別にそんな大したことじゃないけど、夕方に家の近くにある公園の前通ったら……犬の死体見ちゃったんだよねー」

男「……なんだ? 車に轢かれでもしたのか?」

妹「お兄ちゃん食事中にやめてよー」ゴクゴクゴク

姉「多分死んだ犬が埋めてあったんだと思うけど、公園の隅っこの木の下に。それを子供たちが掘り返して遊んでたんだよ」

男「ふーん……誰かさんちのペットでも埋めてあったのかね」

姉「子供ってたまに惨いことするよねー」

母「なんでも遊びにしちゃうからねぇ」ゴクゴクゴク

…翌日…―男と超アナル全力爽快舐め野郎と銀髪の通う高校―

男「で、どうすんだ?」

銀髪「まずは超アナル全力爽快舐め野郎くんを夜中に見たっつう目撃者三人から話を聞こうと思う」

男「あいつが言ってた三人だな」

銀髪「昨日は休日で部活をやってる生徒以外は学校にいなかったからな」

男「聞くなら平日の今日ってことか」

銀髪「そーいうこと」

男「あーあ、これでまたお前と一緒にいる変な奴って噂が広まるんだろうなー」

銀髪「んだよお前、私と一緒なのが嫌なのか、あぁん?」

男「そんなわけじゃないけど、もう少し銀髪もそういう風に思われないような普通の女の子でいろよと思ってな……」

銀髪「中途半端に普通の生活してたらかえってそっちの方が浮いちまうんだよ。こんなどうしようもない髪だしな」

男「……」

銀髪「な、そうだろ?」

男「まあお前がクラスの女子と仲良くお喋りしてる姿も確かに想像出来ないけどさ……」

銀髪「わかってんじゃねえか。ほらさっさと目撃者んとこ行くぞ! 情報収集だ!」

―廊下―

銀髪「この子が一人目の目撃者か」

黒髪清楚系糞ビッチ「話ってなーにー?」

男「えーっと、黒髪清楚系糞ビッチさんがこの前の夜中に超アナル全力爽快舐め野郎を外で見たって聞いたんだけど」

黒髪清楚系糞ビッチ「あーうんうん見た見た!」

銀髪「それっていつの話だ?」

黒髪清楚系糞ビッチ「えー? あれは確か一週間くらい前だったかなー、あ、違うかも三日前かもぉ」

銀髪「どっちだよ」イライラ

男「抑えて抑えて」

黒髪清楚系糞ビッチ「多分三、四日前だった気がするー」

銀髪「よしメモ係!」

男「はいはい。黒髪清楚系糞ビッチさん三、四日前に目撃……と」

銀髪(ここ最近起き始めたことなのか……?)

銀髪「夜中っつうのは大体何時頃だった?」

黒髪清楚系糞ビッチ「えーっとぉ、あれはバイトの帰りだったからぁ、多分10時過ぎくらいだったかなー」

銀髪「確かに夜中だな」

男「高校生がそんな時間に外出歩いてて良いのかよ」

銀髪「いーんだよんなことは。こいつが規則守るような真面目な人間に見えっかよ」

黒髪清楚系糞ビッチ「バイトが9時半に終わってー、ちょっと裏でバイト仲間とお喋りしてー」

男「バイトは9時半に終わり……裏でちょっとバイト仲間と……」

銀髪「いらねえことまでメモんなくていいよ」

男「はい」

黒髪清楚系糞ビッチ「それでぇ、帰りにコンビニよって雑誌とか立ち読みしてたからぁ……」

男「してたから?」

黒髪清楚系糞ビッチ「……うん! やっぱり見たのは夜中の10時過ぎくらいだと思う!」ニコッ

銀髪「……」イラッ

男「こめかみに青筋立ってるぞ」

男「……それはどこらへんで目撃したのかな?」

黒髪清楚系糞ビッチ「バイト先の駅からあっちの方の駅まで電車に乗ってー、そこからいつも歩いて帰っててー」

男「あっちの方の駅って俺んちの近所じゃんか」

黒髪清楚系糞ビッチ「えーマジー!? ってことは――」

銀髪「いーからどこで見たかだけ教えろや!」

男「まあまあまあ銀髪さんそう怒らないで!」

黒髪清楚系糞ビッチ「あー、その超アナル全力爽快舐め野郎くんを見たのはー、どっかの公園通りかかった時だったなー」

男「どっかの公園も近所だ。黒髪清楚系糞ビッチさんってもしかして俺んちに結構近いのかな?」

黒髪清楚系糞ビッチ「そーかもしんなーい。じゃあさ男くん今度――」

銀髪「その時の超アナル全力爽快舐め野郎の様子とかは覚えてるか?」

黒髪清楚系糞ビッチ「えー? その時の様子ぅ? うーん、遠くの方にいてしかも暗かったからあんまりよくわからなかったー」

銀髪「近くにまでは行かなかったんだな?」

黒髪清楚系糞ビッチ「うん。公園の隅っこで暗くて顔くらいしかよく見えなかったー」

銀髪「メモ!」

男「はい!」

銀髪(顔くらいしか見えなかった、か。……夜中、公園の隅にいた奴の顔だけ……ふむ)

銀髪「話してくれてありがとう、時間取らせて悪かったな」

黒髪清楚系糞ビッチ「もういーのー?」

銀髪「おう」

黒髪清楚系糞ビッチ「あーそうだ! ねえねえ銀髪さん!」

銀髪「んだよ」

黒髪清楚系糞ビッチ「今、私のバイト先で可愛い女の子募集してるからよかったら働いてみなーい?」

銀髪「あー、いいわそういうのは」

黒髪清楚系糞ビッチ「えー? 銀髪さんならすぐに採用されると思うのになー」

銀髪「他の誰かと仕事するってのが性に合わなくてな」

黒髪清楚系糞ビッチ「そっかー、残念。あっ! そうだ男くん、せっかく家近いんだし今度――」

男「えっ!?」ドキッ

黒髪清楚系糞ビッチ「男くんち遊びに行って――」

銀髪「話は終わったんだからさっさと次行くぞ!」ズルズルズル

男「ああああ、ちょっと待ってまだ最後まで話しっ……なんかめっちゃ嬉しいこと言ってたよ!」ズルズルズル

銀髪「……」ズルズルズル

男「ちょっと銀髪引きずらないでぇ!」ズルズルズル

―体育館裏―

DQN「あー、何? ここは一般生徒立ち入り禁止なんですけどぉ?」

男「えっとですねー、そのー、あはは、ちょっとお話しを聞きたくてー(体育館裏でヤンキーが煙草吸ってるって本当なんだな)」

銀髪「夜中に超アナル全力爽快舐め野郎を目撃したっつう件を詳しく知りてえんだよ」

DQN「おお!? なにそっちの可愛い子!? いいよいいよ何でも話してあげるよー!」

男「……人によっては銀髪は可愛い子に見えるらしい」

銀髪「くだらねえこといちいちメモってんじゃねえよ!」

DQN「話してあげるからさー、今から野球部の部室に来ない? そしたら話してあげるー」ニヤニヤ

銀髪「……」ギロッ

DQN「……ごめんなさい調子に乗りましたすみません」

銀髪「さっさと覚えてること話してくれ、お前といちゃついてる暇なんざねえんだ」

DQN「……はい」

男「……」

DQN「……あいつを見たっつっても、本当は見たわけじゃねえんだよ」

男「見たわけじゃない?」

DQN「話したって誰も信じてくれねえし俺だって正直信じらんねえことだったから、今でも夢だったんじゃねえかと思ってるんだが」

銀髪「ほほう……続けて」

DQN「一週間前だったな、夜中にこの高校の近くをうろついてたら……超アナル全力爽快舐め野郎の声が聞こえてさ」

男「……声?」

DQN「笑い声だったんだけど」

銀髪「夜中に外で笑い声って随分気色悪いな」

DQN「そうなんだよ、それだけでもおっかねえのに……その声が空から聞こえてきたんだよ」

男「……」

銀髪「……」

DQN「お、お前ら馬鹿にしてんだろ!?」

男「いやいや馬鹿にしてないですよ! 未成年が飲酒で酔っぱらって幻聴聞くなんて世も末だなって思っただけですから!」

DQN「酒なんて飲んでねえよやっぱ馬鹿にしてんじゃねえか!」

銀髪(幻聴……か、なるほどな)

銀髪「空から笑い声が聞こえて……そんでお前はどうしたんだ?」

DQN「そりゃあ、なんだなんだって空を見上げたよ。でもどこにも誰もいなくてさ……」

銀髪「超アナル全力爽快舐め野郎くんの声だったのは確かなのか?」

DQN「……ああ、あいつとは結構仲良いし聞き間違えることはねえよ」

銀髪「聞き間違えはない、ねえ……」

男「あいついろんな奴と仲良く出来るタイプだからな」

DQN「で、まあ俺は怖くなってその場から逃げちまった」

銀髪「ふーん、空から聞こえてきた声……か。ありがとう」

DQN「もういいのか?」

銀髪「おう、一服の邪魔して悪かったな」

DQN「いや別に構わねえけど……」

銀髪「ほら行くぞ男」

男「お、おう。ありがとな話ししてくれて」

DQN「ああ、少しでも力になれたなら良いんだが……」

DQN「……」

DQN「なんだったんだ……あいつら」

―階段―

銀髪「……」

男「黒髪清楚系糞ビッチさんは超アナル全力爽快舐め野郎を俺んちの近所の公園で目撃か」

銀髪「……DQNは声、笑い声だけを耳にした……か」

男「しかも空から」

銀髪「うーん……」

男「黒髪清楚系糞ビッチさんの方はともかく、DQNの空から笑い声を聞いたって話は妙だな」

銀髪「……いや、むしろ引っかかるのは一人目の目撃談の方だ」

男「……? なんで?」

銀髪「聞き込みしながらある程度予測はしてたが、あの糞ビッチの話だと少し矛盾が出るんだよな」

男「……暗がりの公園で顔だけ見たっての? いやまあそりゃなんでそんな時間にそんな所にいるのかっておかしな話だけど」

銀髪「そもそもなんで顔だけ見えたんだよ、公園の隅なんて光一つ無い真っ暗闇だろ」

男「まあ、確かに。でもそんな気にすることじゃなくね?」

銀髪「……。取り敢えず次、最後の目撃者の所に行くぞ!」

男「はいはい。次は委員長さんだな、俺のクラスの子だから話し易くて良いや」

―男のクラス―

男「どうもー」

委員長「あ、男くん探したんだよ!」

男「え? なに、なんか俺に大事な用でもあるの!?」ドキッ

銀髪「キモいぞお前」

男「ちょっとくらい期待したって良いじゃないか!」

委員長「日誌! 今日男くんが日直でしょ!」

男「え、あ、え? ああ、そういやそうだった」

委員長「はいこれ、さっさと書いちゃってね! もうすぐ放課後なんだから」

男「わかりました……」

委員長「日誌は男くんに渡せたから良しとして……どうしたの? 銀髪さんと二人で」

男「ああ、ちょっと」

銀髪「委員長さんに夜中超アナル全力爽快舐め野郎くんを見た時の状況を詳しく話してもらいたくってな」

委員長「えっ……」

男「……ん?」

銀髪「夜中にあいつを見たらしいな、場所とその時の様子を詳しく話して欲しいんだ」

委員長「えっと……うぅ」

銀髪「? なんか話しづらいことでもあるのか?」

委員長「……いや、だってどうせ信じてもらえないだろうし」

男「委員長さんもか」

銀髪「信じるかどうかはこっちが決めることだ、あんたは話してくれればそれ良いんだよ」ジロッ

委員長「ひぃぃ……」ビクッ

男「おい銀髪、俺の委員長さんビビらせてんじゃねえよ!」

銀髪「なんにもしてねえだろ私は!」

男「お前のその三白眼が怖えんだよ!」

銀髪「んなっ!? 人が気にしてること言うんじゃねえよバカ!」

委員長「け、喧嘩はやめてぇー……」

委員長「……」

男「……」

銀髪「……で、信じてもらえないってのはつまりどういうことだ?」

委員長「……う、うん。順を追って話すね」

銀髪「助かる。メモ頼んだ」

男「はい」

委員長「あれは十日前だったと思うんだけど……」

男「十日前……と」

委員長「予備校の帰り、夜遅くに家に帰ってる途中の暗い道でね」

男「……予備校。さすが委員長さん真面目に勉強してるんだな」

銀髪「金持ってんだな」

男「……そこかよ」

委員長「ホントに……信じてもらえないだろうけど、見たの……超アナル全力爽快舐め野郎くんを」

銀髪「……。……どこにいる超アナル全力爽快舐め野郎くんを?」

委員長「……空にいる」

銀髪「……」

男「……」

委員長「……」

男「……よ、よくいるもんねあいつ。空に」

銀髪「いるわけねえだろ」

委員長「いるわけないでしょ!」

男「いるわけないよね!」

委員長「信じられないだろうけど……超アナル全力爽快舐め野郎くんの『頭』が空にあったの」

男「……え?(……え?)」

銀髪「……」

委員長「わ、私も未だに信じられないしそもそも視力低いからぼやぁっとしかわからなかったんだけどね!」

銀髪「そいつが超アナル全力爽快舐め野郎くんかどうかはともかく、空を飛ぶ『人の頭』を見た、と?」

委員長「……うん」

男「え、え? ……え?」

男「……おいおい、なんだよそりゃ(っていうか動揺すらせず普通に質問続ける銀髪さすがだな)」

銀髪「人の頭だけが空を飛んでたのか?」

委員長「いや、頭から下もビローンって長い何かが繋がってた」

男「……ビローンって?」

銀髪「ほほう、それはなんだ……そのビローンとした長い何かは例えば『伸びた首』みたいだったか?」

委員長「……うん、多分そんな感じだった」

男「伸びた首? なんかそれ聞いたことあるぞ」

銀髪「それが夜の空を飛んでた……ねえ」

委員長「凄く高い所にあったから、それが本当に長い首だったかはわからないけど……」

銀髪「飛んでる頭に何らかの長い物体が繋がってたんだな?」

委員長「うん、その首みたいな所だけ光ってたから変だなって思ったよ」

男「そもそも人の頭が飛んでること自体変だけどな」

銀髪(光ってた……? なんじゃそりゃ?)

委員長「ごめんね……私が見たのはこれくらいで、それ以上はもう」

銀髪「いいや、ありがとう。充分詳しく聞けたよ。悪かったな怖い思い出話させちゃって」

委員長「大丈夫だよぉ、こんなので力になれるといいけど……」

男「ありがとう委員長さん」

委員長「いえいえ」

銀髪「ちゃんとメモったか?」

男「はい、ちゃんとメモりました」

銀髪「よし、じゃあ戻ってミーティングだ!」

男「了解でーす」

委員長「あっ、そうだ男くん! ちゃんと日直の仕事してから下校してね!」

男「あーそうだ、いろいろやらなくちゃいけないんだ忘れてた……」

委員長「な、なんなら私が手伝ってあげ――」

銀髪「こいつの日直の仕事は私が見張ってるから委員長さんは気にしなくていいぞ。ほら行くぞ男!」ズルズルズル

男「だから引っ張るなよー!」銀髪「うるせえ!」ズルズルズル

委員長「……行っちゃった」しょんぼり

―技術棟にある誰も使わなくなった教室―

銀髪「さーてと……」モグモグモグ

男「何食ってんの?」

銀髪「乾燥芋」モグモグモグ

男「食い物あったのか」

銀髪「これが最後の食糧だ」モグモグモグ

男「よくそんなんで今まで生きてこれたよな」

銀髪「今までは生きてこれたがそろそろ金が尽きんだよ」

男「だから珍しくこの件に関して必死になってんのか……」

銀髪「当然だろこちとら自分の命かかってんだよ」

男「マジで金持ちのあいつの家から大金ふんだくる気なんだな」

銀髪「なーに言ってんだそれもそうだが一番は超アナル全力爽快舐め野郎くんを助けることが目的だ」

男「……」

銀髪「ホントはお金が欲しいからなんだけどね」

男「知ってるよ」

銀髪「……」モグモグ

男「……で、三人の話を聞いて何か手掛かりは掴めそうなのか?」

銀髪「……」モグモグ、ゴクン

男「……人間が起こした事件にしちゃあおかしな事ばっかだよな」

銀髪「私も警察で片付く程度ならと期待したが……どうにもこれはこっち側の問題みたいだ」

男「だよなー……」

銀髪「一人目の糞ビッチは暗くなった公園の隅っこで超アナル全力爽快舐め野郎くんらしき人物の顔を見た」

男「暗くて顔だけしか見えなかったって言ってたな」

銀髪「それが引っかかるんだよ。そんな真っ暗だろう公園の隅で、でも顔だけは見えた」

男「そういやさっきも矛盾があるって言ってたな」

銀髪「そこの公園は……隅っこにはもちろん公園を照らすような明かりはねえんだろ?」

男「おう。並木が壁に沿って生えてるだけだ」

銀髪「やっぱり真っ暗なんじゃねえか」

男「そうだなぁ、懐中電灯を持ってたとか?」

銀髪「その時に懐中電灯を持てる『手』があればの話だけどな」

男「……?」

銀髪「……まあいい。で、二人目のDQNは夜中に空から超アナル全力爽快舐め野郎くんの笑い声がしたと言っていた」

ちょっと怖いんだけど、ギャグ落ちである可能性も怖い

男「空から笑い声が聞こえてくるなんておかしな話だよな。どっかの家の二階から聞こえてきたとかならそう言うだろうし」

銀髪「階段で話した時に、男は糞ビッチの証言よりもDQNの証言の方が妙だと言ったな」

男「そりゃそうだろ、黒髪清楚系糞ビッチさんの場合はたまたまそこに居ただけかもしれないんだし」

銀髪「……」

男「……でも、最後の委員長さんの空で見たって話を聞いて妙どころか異常なことだってのは理解出来たよ」

銀髪「だな」

男「空で笑い声がしたり、『人の頭』が飛んでたりとか……」

銀髪「前に私が言ったことは覚えてるか?」

男「……人の幽霊や生霊の類は人間離れした行動は出来ない、だっけか」

銀髪「そうだ。この世に留まる霊は怨霊や悪霊でもない限り自分の死から目を背けてる奴らばかりだからな」

男「だから、いくら肉体を失くした浮遊体になろうと壁をすり抜けたり空を飛ぶなんてことは出来ないんだよな」

銀髪「幽霊になって空を飛ぶだの壁をすり抜けるだのするのは自分を幽霊だと認めることになるからな。だとしたら?」

男「これは超アナル全力爽快舐め野郎の生霊が起こした事件ではないってことか」

銀髪「……怪異」

男「……またか」

銀髪「空から聞こえる笑い声、空を飛ぶ人の頭とその下に伸びる長い首のようなもの」

銀髪「……男、『ろくろ首』って知ってるか?」

男「ろくろっ首?」

銀髪「『ろくろ首』」

男「ろくろっ首」

銀髪「『ろくろ首』」

男「知ってるよ、超メジャーな妖怪だろ? 首の長い妖怪」

銀髪「『妖怪』ってのはそれにまつわるいくつかの『怪異』の共通点をまとめて形にした存在だ」

男「共通点だけを抜き出すわけだから、当然妖怪の伝承とは違う事だって起きるんだよな怪異ってのは」

銀髪「そう、だから怪異」

男「怪異は妖怪を構成する材料なんだっけ?」

銀髪「ああ。妖怪が偶像なら怪異は現象とでも言うべきか」

男「三人の目撃談はその『ろくろ首』の怪異に当てはまってるのか?」

銀髪「大体な」

男「大体かよ」

銀髪「こんなもんは大体で考えるのがセオリーなんだよ」

男「……無理矢理納得しないといけないってことか」

銀髪「私が知る限り、妖怪『ろくろ首』を構成する当時の怪異の伝承が、今現在起こっている三人の目撃談と大体合致してるんだ」

男「なるほどな。だからお前はそう判断したのか」

銀髪「これが誰かの下らない悪戯なら私たちが出張る必要もなかっただろうけど、どう考えても異常な現象だしな」

男「ろくろっ首、ねえ……」

銀髪「先ずはその『ろくろ首』の成り立ちについて説明する必要があるな」

男「俺も首が長い妖怪ってくらいしか知らんからなぁ」

銀髪「なんでその昔、この国で『ろくろ首』なんて妖怪が作り出されたと思う?」

男「知らん」

銀髪「ちょっとは考えろや」

男「えーっと、えっと……当時じゃ理解し難い現象がいっぱいあったから、とか?」

銀髪「そうだ。じゃあ『ろくろ首』が生まれるに至ったその理解し難い現象っつうのはなんだと思う?」

男「知らん」

銀髪「……」

男「何も殴るこたねえだろ!」

銀髪「うるせえよお前が考える気もねえから腹立ったんだよ!」

男「……すみません」

銀髪「……『ろくろ首』を形作る理解し難い現象の一つとして、幻聴や幻覚があった」

男「幻聴や幻覚?」

銀髪「多分な」

男「多分なのか……」

銀髪「さっきお前がDQNに言ってたろ、『飲酒で酔っぱらって幻聴聞くなんて』ってな」

男「ああ、そういや言ったな」

銀髪「いつの時代も酔っ払いはいるし、メンタル病んでる奴だっているさ。そうするとどこからともなく聞こえてくる誰かの声」

男「……それが幻聴か」

銀髪「視界の端にちらっと映る、居るはずのない誰かの姿」

男「幻覚か」

銀髪「姿の場合、最も印象的な……そしてそいつが誰か判断しやすい『顔』が真っ先に目映るだろ?」

男「顔が真っ先に……どうにか顔だけが唯一まともに視界に映るのか」

銀髪「だから当時の奴らは噂するだろうよ。『誰もいないはずなのに誰それの声が聞こえた』とか」

銀髪「『いないはずなのに誰それの顔が見えた』っつってな」

男「今じゃそういうのは精神病んだ人の幻聴とか幻覚で片付けられちゃうけど、昔はそうもいかないもんな」

銀髪「そういう噂が広がって混ざると、『誰それの首がここら辺をうろついていた』に変わっていくんだよ」

男「いく……いくか?」

銀髪「噂の変容ってのは馬鹿に出来ねえぞ。そうして噂が移り変わっていく裏付けとして、もう一つ理由があった」

男「なんだもう一つの理由って?」

銀髪「この部屋のカーテンを閉めてくれ」

男「えっ!? い、いきなりなんだよ」ドキッ

銀髪「ドキッじゃねえよバカ! 何考えてんだお前!」

男「すまん!」

銀髪「いいからさっさとカーテンを閉めろ!」

男「わかりました!」

シャララシャカシャカ。

男「閉めたけど」

銀髪「よし、じゃあこの部屋の電気を消せ」

男「えっ!?」ドキッ

銀髪「……殴るぞ」

男「すいません! ……でもそしたら真っ暗になんだろ」

銀髪「それでいいんだよ」

男「わかった、んじゃ消すぞ」

パチッ。

男「……」

銀髪「……」

男「……真っ暗でなんにも見えないんだが」

銀髪「そうだ、真っ暗だと何も見えない。当たり前のことだ」

男「それがどうしたんだよ」

銀髪「今はコンビニの明かりや街灯なんかで夜中だってそれなりに明るいが、昔は月明かりくらしか夜中の光はなかった」

男「月が雲に隠れるともう完全に真っ暗だったんだろうな、想像出来ないけどさ」

銀髪「今がまさにそんな状況だろう……そこで」

カチッ。

男「ッ!? うわ!! お、お、お、驚かせんなよ! 何してんだ懐中電灯なんかで自分の顔照らして!?」

銀髪「そんな暗闇の中、心許ない明かりで顔だけ映されたらどう思う? 『頭が空中を飛んでる』ように見えないか?」

男「……その懐中電灯どっから持って来たんだよ」

銀髪「ここの備品だ」

男「……」

銀髪「思うだろ?」

男「まあ確かにな。照らされたお前の顔以外は真っ暗で何も見えないから暗闇の中に顔だけ浮いてるみたいだ」

銀髪「ビッチの話とDQNの話を聞いた時は『飛頭蛮』なんじゃねえかと思った」

男「……『飛頭蛮』?」

銀髪「夜中に体から切り離された頭だけが空を飛んで人を襲うっつう妖怪だ」スウィー、スウィー

男「人を襲うってそれ危険じゃねえか! っていうか懐中電灯で顔照らしたまま動き回んなよ怖いから!」

銀髪「どお? 頭だけが飛んでるように見える?」

男「見える! 見えるからもうやめろ不気味過ぎる!」

銀髪「えへへ」

男「……はあ、ったく」

銀髪「『飛頭蛮』は『ろくろ首』の仲間みてえなもんでな、だからこそ『ろくろ首』と共通する理解し難い現象がある」

男「……ろくろっ首と『飛頭蛮』を共に構成する怪異ってことか」

銀髪「そう、それがストーカーだ」

男「え、す、ストーカー?」

銀髪「ストーカー」

男「……は?」

銀髪「理解し難い現象、妖怪『ろくろ首』と『飛頭蛮』を構成する怪異の正体の一つがストーカーなんだよ」

男「どういうことなの?」

銀髪「あ、もうカーテン開けて部屋の電気点けて良いぞ」

男「わかった」

シャララシャカシャカ。パチッ。

銀髪「さっきのでわかったように、昔の夜は真っ暗闇だ」

男「おう」

銀髪「で、ストーカーっつうのはいつの時代にだっている」

男「そういうもんなんだろうな」

銀髪「ストーカーはその真っ暗な夜に好きな奴の家まで行くんだよ」

男「そりゃストーカーだもんな」

銀髪「そして、軒先の戸や障子窓なんかをこっそり開けて家屋の中に居る想いを寄せる相手を覗くんだ」

男「ストーカーだな」

銀髪「昔の時代はそのくらいしかすることもなかったんだろ」

男「今は電話とかカメラとかあるもんな」

銀髪「なんの明かりも無い真っ暗な夜、家の中だってせいぜい蝋燭や行燈程度の心許ない明かりだけだ」

男「……ああ、そっかなるほど」

銀髪「ここまで言ったらもうわかるだろ?」

男「外から覗くストーカーの顔がその小さな光に照らされて、顔だけ浮いてるように見えるってことか」

銀髪「そういうこと、さっき私がやったみたいにな」

男「それがその二つの妖怪にまつわる理解し難い現象ってことか」

銀髪「おう。『ろくろ首』も『飛頭蛮』もそういった噂に尾ひれが付いて形を成したものってこったな」

男「そういやろくろっ首って夜中に好きな人の寝てる所へ行く妖怪だってどっかで見たな。そこら辺の設定もストーカー由来なのかね」

銀髪「信憑性はあるんじゃねえか。私は興味ねえけど」

男「……」

銀髪「『首を長くして待つ』って言葉もあながちただの比喩じゃないってことだな」

男「……でもさ、それだとおかしくないか?」

銀髪「何がよ」

男「銀髪の説明だと今起きてる超アナル全力爽快舐め野郎の事件が全部説明付いちまうじゃないか」

男「それじゃ怪異や妖怪絡みの事件ってのを全否定することになるだろ」

銀髪「……ま、当時は理解し難い現象を妖怪という形にして畏れ敬ったのかも知れんが、その逆もまた然りってことだ」

男「……?」

銀髪「全てを理屈で片付けられちまう今の時代は、妖怪どもにとっちゃ都合の良い隠れ蓑なのかもな」

男「ふーん。……で、どうすんだこれから」

銀髪「この件を『ろくろ首』の仕業だと仮定して解決していくしかあるまい」

男「他に考えられる可能性ってのも無さそうだしな……」

銀髪「ちなみに、超アナル全力爽快舐め野郎くんに彼女がいたりとか好きな人がいるとかって話は聞いたことないのか?」

男「そういう話は聞いたことないな」

銀髪「ふむ……(『ろくろ首』は想いを寄せる相手のもとへ夜な夜な首が伸びて現れる妖怪のはずなんだがな……)」

男「もしかしたら俺が知らないだけで好きな人がいるのかも」

銀髪「そう考えるのが妥当か……そこらへんの事情は本人に聞くしかねえな」

男「この怪異に対しての解決法とかは何かあるのか?」

銀髪「……私は知らん」

男「……そうなのか。えええええええ!?」

銀髪「『ろくろ首』を昨今の都市伝説みたいなのと一緒にすんなよ。昔の怪談は妖怪が登場して終わりっつうパターンも少なくねえんだ」

男「じゃ、じゃあどうすんだよ!? それじゃ超アナル全力爽快舐め野郎を助けられねえじゃねえか!」

銀髪「だから、仕方ねえから私考案のオリジナル解決法でいくしかねえんだよ。まあ大丈夫だろ」

銀髪「用務員小屋から斧、鋸、あとは……枝切り挟。とにかく目に付いた刃物片っ端からかっぱらってくるぞ」ニヤァ……

男(なんつう禍々しいスマイルするんだこの女は……)

―用務員小屋―

ガサゴソ、ガサゴソ。

男「よくもまあこうも都合良く小屋の鍵が開いてて用務員さんもいない現場に来れたな」

銀髪「そりゃお前の日頃の行いが良かったんだろー」

男「お前じゃなくて俺なんだな」

銀髪「その為の助手だからな男は」

男「褒められてる気がしねえ」

銀髪「少し考えりゃあ私が毎日こういう時に良い事起こるような慈善活動なんざしてねえことくらいわかるだろ」

男「自分で言うなよそういうこと」

銀髪「私のマイナスと男のプラスで結果プラスになったから、こうして支障無く用務員小屋漁れてるんだよ」

男「お前の負荷分をプラスにするほど日頃良い行いしてる自覚ねえんだけど俺」

銀髪「私と一緒に居てくれてるってだけでどんな聖人君主でも裸足で逃げ出すレベルの生き方してんだよお前は」

男「そーですか……(やっぱ嬉しくねえ)」

銀髪「おっ、あったあった鋸発見!」

ガラガラガラ。

男「ふぅ……。小屋の中隅々まで探して見つかったのは斧と鋸二つと枝切り挟と鉈、か」

銀髪「まあ上々の収穫だろ。私考案の解決法を試すには充分な道具が揃ったよ」

男「それなら良いんだが、この捉えようによっちゃ凶器とも思われかねない危ない刃物類をどうやって持ち歩くんだ?」

銀髪「……あ」

男「裸のままこれ持って街中歩いてたら即通報だぞ」

銀髪「そこまで考えてなかった……」

男「いっつも肝心な所は抜けてるよなお前!」

銀髪「あ、ははは、あはははは……」

男「笑って誤魔化すなよ」

銀髪「だ、大丈夫だって! 要はこいつらを隠して収納出来る何かを見つけりゃ良いんだから!」

男「見つけりゃ良いっつったってそんな都合良く……」

リア充軽音楽部男子生徒「~♪」すたすた

銀髪「よし見つけた!」

男「ええええええええええええ!?」

銀髪「良いタイミングで軽音楽部の野郎が校舎の周り歩いてて助かったぜ」

男「お前まさか……」

銀髪「囲むぞ」すたすた

男「もうヤダ……」すたすた

リア充軽音楽部男子生徒「な、なんですかあなたたちはっ!?」

銀髪「あのー、突然すみませーん」にこにこ

リア充軽音楽部男子生徒「あ、はい(うわこの子可愛い)」

男(すげえ警戒されてる……)

銀髪「本当に勝手なお願いで申し訳ないんですけどー、一日だけあなたの背負ってるギターケース貸してくれませんかぁ?」にこにこ

男(似合わねえ……銀髪のかまとと姿全然似合わねえ……)

リア充軽音楽部男子生徒「えっ!? ギターケースだけ?」

銀髪「はぁーい! ケースだけで良いんですぅ!」

リア充軽音楽部男子生徒「え……でもそうしたらギターの持ち運びが……」

銀髪「おねがぁい……」ギロッ

リア充軽音楽部男子生徒「ひぃぃっ!!」ビクッ!

銀髪「よっしゃあ調度良く隠して収納出来る入れ物ゲットー!」

男「本当にすみません……す、すぐにちゃんと返しますんで、本当にすみません」

リア充軽音楽部男子生徒「い、いいですよ……好きに使って下さい。それじゃ僕はこれで……」すたすたすた

銀髪「ありがとうございまーす!」にこにこ

男「さっきからすんなり手に入り過ぎだろいろいろと!」

銀髪「いやぁー、別に自分のこと可愛いとか思ってねえけどぉ? まさかここまで私の上目遣いが効果的だとはなー! あひゃひゃひゃひゃ!」

男「あれは上目遣いじゃねえ……ガン飛ばしてただけだ」

銀髪「そういやこの鋸試し切りしねえとなぁ……いざって時に使い物にならなかったら困るし?」

男「ごめんなさいすみませんそれだけは勘弁して下さい」

銀髪「ま、なんにしたって結果オーライだ! さっさと『ろくろ首』の事件を解決しちまおう!」

男「そういや銀髪。そのお前考案のオリジナル解決法ってのはどういうのなんだよ……刃物なんて何に使うんだ?」

銀髪「この道具どもを使って『ろくろ首』の首を切り落とす!」

男「ふぅーん……えっ?」

銀髪「夜中に『ろくろ首』となって伸び切った超アナル全力爽快舐め野郎くんの首だけを切り落とすんだよ」

男「ええええええええええええええええ!?!?!?」

銀髪「うるせえなデカイ声出すなよ」

男「それって殺人じゃねえか! 殺人? いやいややっぱ殺人じゃねえか!」

銀髪「安心しろ、あくまでも私たちが切るのは超アナル全力爽快舐め野郎くんの『ろくろ首』の部分だけだ」

男「ろくろっ首の部分だけ、って?」

銀髪「怪異として『ろくろ首』が現れる体の部位は伸び縮みする首の部分だけ」

男「……」

銀髪「つまり、その部分だけを切り落とせば超アナル全力爽快舐め野郎くんから『ろくろ首』という怪異を切り落とせるってことだ!」

男「……でもそれってお前のオリジナルなんだろ?」

銀髪「私考案のオリジナル解決法だ! するがモンキーにもあったけどな」

男「失敗したらどうすんだよ!?」

銀髪「大丈夫だぁってー! 人間ならともかく妖怪に片足突っ込んでる奴が相手なら早々死んだりなんかしねえよ」

男「そんな物理的な解決法じゃ不安しかねえよ!」

銀髪「怪異や妖怪に対抗するのにお経やお札みてえな小難しい小道具は二の次なんだよ」

男「昨今流行りの洒落怖話からしちゃ前代未聞だぞ……」

銀髪「飯を食えばその分長く生きられる。そんな具合にシンプルに考えりゃ良いんだ、この世の全てはな」

―学校の廊下―

銀髪「超アナル全力爽快舐め野郎くんってここのクラスだよね?」

超アナル全力爽快舐め野郎のクラスメイト「そうだよー」

銀髪「彼もう帰っちゃった?」

超アナル全力爽快舐め野郎のクラスメイト「うん、今日は気分が悪いって言って早引きしてたよ」

銀髪「そっかありがとう」

超アナル全力爽快舐め野郎のクラスメイト「何か用でもあったの? なんなら私が明日伝えるけど」

銀髪「いやいいんだ。ありがとうね」すたすた

男「ありがとうございましたー」すたすた

超アナル全力爽快舐め野郎のクラスメイト「いいえー」

男「帰っちゃってたんだな」

銀髪「やることは決まったんだし関係ねえ、私たちはこのまま屋敷に向かうだけだ」

男「それにしても早退してたのかあいつ」

銀髪「うーむ超アナル全力爽快舐め野郎くんの体調が心配だな」

男(今から首切りに行く奴の言う事かよ……)

―電車の中―

ガタンゴトン、ガタンゴトン。

男「超アナル全力爽快舐め野郎の家は確か次の駅を降りるんだったな」

銀髪「毎日電車に乗って学校に通うなんざ金がいくらあっても足りねえなぁ」

男「お前はそうだろうな」

銀髪「金も通学の時間もかからねえしやっぱ高校に住むのが一番だわ」

男「簡単に言うなよ」

銀髪「そこらへんの根回しには苦労したんだぞ」

男「俺の口添えのお陰だろ」

アナウンス『次は~、○○駅ぃ~、○○駅ぃ~』

男「んじゃ降りるか」

銀髪「切符代は必要経費としてこの仕事の報酬から男に返すからな」

男「変なとこ律儀だよな。別にお前一人の切符代くらい俺が払ってやるのに」

銀髪「さーてどのくらいせしめられっかねー今回の仕事は……ぐひひひひ」

男「……なんという清々しいまでのゲス顔だ」

…夜…―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷が近くにある所の駅―

銀髪「着いた!」

男「もう外は暗くなっちゃってるな」

銀髪「暗いっつったってまだ高校生がうろついててもおかしくねえ時間だよ」

男「でもそのろくろっ首をどうにかするのは夜中なんだろ?」

銀髪「だろうな。目撃者の話を聞く限りじゃ」

男「結局高校生がうろついてたらおかしい時間になっちまうんじゃねえか」

銀髪「そんなの毎度のことだろ」

男「確かに」

銀髪「本当に男には感謝してるよ、こんなことにいつも付き合ってくれてさ」

男「似合わないこと言うのやめろよ気持ち悪い」

銀髪「あ゛あん!? 似合わねえとは何事だ! 私が素直になっちゃいけねえのかよ!?」

男「普段からそんな感じだから似合わねえんだろ! だからそれで良いんだよお前は!」

銀髪「……。……わかったよ、じゃあほら、さっさと私を屋敷まで案内しろ!」

男「はいはい」

銀髪「……ここら辺は閑静な住宅街って感じだなー」てくてく

男「えーっと、コンビニがあるからこの道を右に曲がって……」てくてく

チリンチリーン。

銀髪「ん?」

警官「君たちー、高校生だよね? 今帰りなの?」

男(うっわ警察だよ……)

銀髪「はぁーい。部活帰りなんですぅー」

警官「ふぅーん……見た感じ音楽関係の部活動なのかな?」

銀髪「そうなんですよー、ほらこれギターケースでーっす!」にこにこ

警官「大変だねこんな時間まで部活なんて」

銀髪「えへへー、お巡りさんに心配されないようになるべく早く帰りまーす」にこにこ

男(なんか慣れてんなー……銀髪のやつ)

警官「そうだねー、特に最近この辺りは物騒なことが立て続けに起こっているから、あまり暗い時間に外を出歩かないで欲しいんだよね」

銀髪「……物騒? ですか?」ピクッ

警官「ん? ああ、いやちょっとね……」

銀髪「それは殺人事件とか? 強盗とか?」

警官「いやいや、そんな大事件ではないよ。ただちょっと最近犬や猫の死骸が街中で頻繁に確認されててね」

男「……市街?」

銀髪「……。それってそこまで物騒なことですか? 別に動物の死骸なんてそこら辺に転がっててもおかしくないと思いますけど」

男「おまえの基準で考えるなよ」

警官「んー……確かにそうかも知れないけど、いかんせんその死骸の量が多くて、それに……」

銀髪「……それに?」

警官「交通事故や人間による犯行にしては不可解な死に方をしていてね……死骸の全てが血が抜かれて死んでいるんだよ」

銀髪「なんだそりゃ」

警官「えっ?」

銀髪「あーいやいや、なんですかそれは!? 怖い事件ですねー、私ちょぉ怖いー!」

男「……」

警官「……ま、まあ、だから私たちも近隣住民にもし危害が加わったとしてもいつでも対処出来るように、こうして見回りをしているんだ」

銀髪「なるほどー、お勤め御苦労様です!」

警官「だから君たちも、外が暗い間はあまり街中をうろつかないようにね。被害に遭う以前に犯人だと思われたら嫌でしょ?」

銀髪「はーい!」

警官「じゃあ気を付けてお帰り」

チリンチリーン。

男「……」

銀髪「……」

男「なんなんだろうな犬とか猫の血ィ抜かれた死骸って……確かに物騒だな」

銀髪「危ねえ、ギターケースの中身見られないでマジで助かった……」

男「そっちかよ!? いやそれもそうだけど!」

銀髪「なんだよそっちって、じゃあどっちだと思ったんだよ」

男「あの警官が言ってた最近起きてる物騒な事件! 犬や猫の変な死骸のことだよ!」

銀髪「ああ、そのことか。どーせ弱い者いじめに快感覚えた厨二病の誰かさんの仕業だろ」

男「そんなんで片付けるのかよ……もしかしたらってこともあるじゃねえか」

銀髪「なんにしろ私たちの件とは関係ねえだろ。こっちは『ろくろ首』だぜ?」

銀髪「伸びた首だけで犬猫が殺せるかよ。しかも血を抜くなんて出来るワケねえって話だ」

男「えー、でも……」

銀髪「んだよ文句あんのかー?」ジトッ

男「……」

銀髪「『ろくろ首』が犬や猫を殺せると思うか?」

男「……思わない」

銀髪「ましてや血を抜くなんて出来ると思うか?」

男「……思わない」

銀髪「だったら私たちの問題には関係無いだろ」

男「じゃあ、この超アナル全力爽快舐め野郎の件がろくろっ首じゃないって可能性もあるかもしれないんじゃないか?」

銀髪「委員長さんが言ってただろ夜中に空を『飛ぶ頭』とそこに繋がってる『長い物』を見たって!」

男「……はい」

銀髪「そんなの十中八九も九分九厘も『ろくろ首』で間違いねえよ」

男「……」

銀髪「男は私の助手なんだ! 私が決めたことに黙って従ってくれりゃそれでいいんだよ!」

男「……はいはい」

銀髪「よしさっさと目的地に行くぞ! レッツゴー!」

男「へいへい」

―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の門前―

銀髪「うわぁ……おっきぃ……」

男「口開いてんぞ銀髪」

銀髪「高校の校門よりでけえじゃねえかどんだけ金持ってんだ超アナル全力爽快舐め野郎くん家は!」キラキラ

男「顔を輝かせるな!」

銀髪「よーし、こりゃ本格的に真面目に全力で解決しなきゃな!」

男「どうせその後のお礼金が目当てなんだろお前は!」

銀髪「当然よ!」

男(友達の悩みくらい無償で解決してやりたかったんだけどなぁ……)

銀髪「家の奴との話し合いは私に任せろ」

男「……そのつもりだよ。俺はいつも通り相槌打ってりゃいいんだろ?」

銀髪「頼んだぜー。んじゃ、行きますか」

ピンポーン。

???『……はい、どちら様でしょうか?』

銀髪「夜分遅く申し訳ありません。私たち、超アナル全力爽快舐め野郎くんの友人の銀髪と男です」

???『ああ! 坊ちゃまのお友達でしたか! お話は坊ちゃまから聞いております。門を開けるので少々お待ち下さい』

銀髪「はーい」

男「よかったー、あいつ俺たちのこと家の人に話してくれてたのか」

銀髪「おい聞いたか『坊ちゃま』だってよ。爺屋忠左衛門かよ」

男「金持ちだとは聞いてたけどまさかここまでとはな……あいつ学校じゃ全然そんな素振り見せないのに」

銀髪「庶民の感覚も持ち合わせてる金持ちとか嫉妬の仕様もねえじゃねえかちくしょう」

男「だからあいつのこと嫌う奴もいなくていろんな奴らと仲良く出来てるんだろうな」

銀髪「ま、私たちはそんなの関係無く金貰うだけなんだがな」

男「しっかりしてんなー……」

ガチャン、ギギィィ……。

銀髪「お、開いた開いた」

執事「申し訳ありません、お待たせいたしました。ささ、中へお入りください」

銀髪「お邪魔しまーす!」

男「すげえ……執事って初めて見た」

執事「坊ちゃまが幼い頃よりずっとこの屋敷の執事としてお仕えしております」

―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷・庭先―

男「すっげー庭広いなー」

執事「専属の庭師が三人おり、毎日庭を綺麗にしております」

銀髪「……(ふーむ広い庭、敷地は周りを高い塀で囲まれてるのか)」

男「何黙りこくってんだ銀髪」

銀髪「執事さん」

執事「はい、何か?」

銀髪「私たちがなんでここに来たか、その理由はもちろんご存知ですよね?」

男「お、おい、いきなりそれ言うのかよ」

銀髪「こういうのはさっさと本題に入るもんだ。別に茶ぁ飲みに来たワケじゃねえんだからな」

男「それもそうか……」

執事「……ええ、存じ上げております。あなたたちが信頼の置けるお友達だと、坊ちゃま自身がそう仰られていました」

銀髪「それなら話が早い、私たちもなるべく事を長引かせるつもりはありません。早急に屋敷の主と話をさせて下さい」

執事「かしこまりました、では……屋敷の中へお入りください」

ガチャン、ギギィィ……。

―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の中・応接室―

メイド「ロイヤルミルクティーでございます」コトッ

男「あ、ありがとうございます」

銀髪「このケーキ美味しいな。いやケーキは全部美味いもんだけどさ、このケーキは特に美味しい」もぐもぐもぐ

男「……」

メイド「あ、あのー……おかわりがありましたらいつでも御申しつけ下さい」

銀髪「あ、じゃあ今食べたケーキもっと下さい」

メイド「かしこまりました!」すたすたすた

男「……」

銀髪「いやあ、やっぱ金持ちの家の出す茶菓子はレベルが違うねえ……」ゴクゴクゴク

男「……」

銀髪「うまっ! ろい……えっと、ろいあるみるくてぃー、美味い!」

男「完全に寛いでるじゃねえか! さっきの言葉はどこ行った!」

銀髪「美味しいんだから仕方ねえだろ! 出される物は有難く食うのが礼儀ってもんだ!」

メイド「茶菓子お持ちしましたー」すたすた

銀髪「それにしても美味いなこのケーキ」もぐもぐ

メイド「私が作ったんです!」

銀髪「へえー凄いですねー! 店とか出せば良いのに」

メイド「私の仕事はこの屋敷にお仕えする事ですので」

銀髪「しっかりしてるんですねー」きょろきょろ

男「おい、なにさっきからそこら辺見回してんだ」ぼそぼそ

銀髪「この屋敷のグレードの高さ計ってんだよ。このくらいの屋敷ならどのくらいの金せしめられるかってな」

男「……ほんと金のことしか考えねえんだなお前」

銀髪「ったりめえだろしっかり内装確認して絶妙な値段要求しねえとな。任せろ相手が払えるギリギリの値段設定付けるのには自信があんだ」

男「そんなので得意気になんなよ……」

銀髪「えーっと、応接室がこの広さでこのテーブルにソファ……ケーキ美味い」きょろきょろ

男「ったく、これから首切り落とすってことを伝えなきゃいけねえのにすげえ余裕だな」

すたすたすた。

銀髪「……んお」もぐもぐ

男「……来たっぽいな、超アナル全力爽快舐め野郎もいる」もぐもぐ

超アナル全力爽快舐め野郎「おーっす、昨日の今日なのにもう来てくれたのか」

男「早退したって聞いたけど大丈夫なのか?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……ああ、少し気分が悪くなっちまってな」

男「……そっか」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「ってことは、そちらの人が?」

執事「申し遅れました、この屋敷の主であり坊ちゃまのお父様でございます」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「初めまして、話は息子から聞いています……」

銀髪「こんばんは」

男「こんばんは」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「息子から……あなたたちなら息子の異常をどうにか出来るとお聞きしました」

銀髪「安心して下さい、私たちも仕事としてここに来ましたから」

男「俺は友達を助けようとして、だけどな」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……」

銀髪「……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「なるほど、御二人の言葉を聞いて信頼に足ると確信しました。よろしくお願いします」

銀髪「へえ……こう言っちゃなんですけど、随分と見ず知らずの私たちのことを買ってくれるんですね」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……。以前に依頼した者たちは、先ず最初に『私が必ず解決します』や『信じて下さい』などと言って――」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「己の信頼を得ようと必死に綺麗な言葉を並べるばかりでした」

銀髪「私が一番嫌いなタイプの文言だ」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「しかしあなたは違った、『仕事』と割り切ってここまで来たと私に言いました」

銀髪「それ以上でも以下でもありませんから」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「『仕事』と言うからにはそれ相応のプライドと責任を自覚して言ったはず、私はそう判断したのです」

銀髪「さすがここまでの豪邸を所有するだけはありますね。やり手ビジネスマンの鑑識眼は伊達じゃないってことですか」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「所詮は親父の勘ですよ」

男「……以前に依頼した者たちっていうのは?」

執事「あなた方の前にも霊媒師や神社の神主を呼んではいたのですが……どれも上手くいかず……」

男「ああ、そういうことか」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「事が事ですからねえ、インチキ連中が張りぼての儀式で誤魔化せる範囲を越えていますし仕方ありませんよ」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「よくわからない呪いやら祈祷やらをしても、息子の異常は変わりませんでした……」

銀髪「そんなんでこの手の怪異が一件落着するんなら、私なんて今頃さっさと餓死してますわ」

男「マジでそうなってるんだろうな」

超アナル全力爽快舐め野郎「苦労してるのか……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「お願いします、金はいくらでも払います!」

銀髪「……100万円、でどうですか?」

男「んなっ!? ひゃ、ひゃ……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「わかりました」

男「いいんですか!?」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「息子が救われるならむしろ安いくらいです。……これ以上、息子が化物に変わるのを見たくないっ!」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

執事「……坊ちゃま」グスンッ

超アナル全力爽快舐め野郎の父「息子を……殺して下さい」

男「はあ。殺す。殺し……っぅええええっ!?」

銀髪「……」

男「ちょっと待って下さいよ、殺すってなんですか!? おいお前はそれで良いのかよ!?」

超アナル全力爽快舐め野郎「すまん男……もう、限界なんだよ」

男「な……おい、嘘だろ」

執事「いつも明るく元気な坊ちゃまですが……異常が出てからも気丈に振舞ってはいたものの……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「昔から傍に居た私たちにはわかる……もう息子は精神的に限界なんです」

銀髪「……」

男「おいおい、学校じゃ全然そんな風には見えなかったのに……」

超アナル全力爽快舐め野郎「へへっ、上手いだろ? 元気を取り繕うの」ニコッ

男「笑ってんじゃ……ねえよ……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「だから、それならいっそあなたたちの手で息子を楽に――」

銀髪「出来ませんね、そんな依頼じゃ金は受け取れない」

男「……銀髪」

銀髪「私たちは超アナル全力爽快舐め野郎くんを殺しに来たんじゃない、助けに来たんです」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……助かるんですか? 息子は」

銀髪「最善は尽くすとだけ言っときましょうか」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「何でもいい、息子を……苦しみから解放してあげてください」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「わかりました、約束します。私もお金は欲しいですからね、金額に見合った働きは必ずしてみせましょう」

執事「……申し訳ありませんが、一つ聞いてもよろしいでしょうか」

銀髪「どうしました?」

執事「専門のお方のすることですので、もしかするとさっぱりわからないかも知れませんが……一応」

執事「どのような方法で解決するおつもりなのでしょうか?」

男(あ、ヤバい)

銀髪「超アナル全力爽快舐め野郎くんのを首を切り落とします」

執事「……はあ、えっ?」

超アナル全力爽快舐め野郎「えっ?」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……えー、えええええええええ!?」

銀髪「ま、なんとかなりますよ。あっはっはっはっは!」

男(助けるっつっときながらこれだもんな、そりゃ驚かれるわ……)

――

――――

超アナル全力爽快舐め野郎の父「はあ……息子は『ろくろ首』、なんですか?」

銀髪「実物を見ない事には断定出来ませんが、目撃者たちの話を聞く限りそれに絞られました」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……あれが、『ろくろ首』?」

男「……?」

執事「しかし……『ろくろ首』だなんて、てっきり架空の化物かと思っていましたが……」

銀髪「妖怪や化物の中には、人里から姿を隠すために自らを架空の存在だとでっち上げる連中もいますからね、そう思うのも無理ありません」

執事「……なるほど」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「で、その『ろくろ首』となった息子の伸びた首の部分だけを切り落とす、と?」

銀髪「そういうことです。まあそれをする為にはあなたたちとご本人の了承が必要なんですけど」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎「俺は構わないよ。どうせもうこれ以上苦しまなくて良いのなら、いっそ死んだ方が楽だしな」

銀髪「そりゃこっちにとっても都合の良い話だ。百パー死なないとも言い切れねえし」

男「おいおい」

執事「旦那様……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「息子がそう言うのなら、私からもお願いします」

銀髪「よろしいんですね?」

超アナル全力爽快舐め野郎「頼む」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……お願いします」

銀髪「……執事さんは?」

執事「私はこの屋敷にお仕えする身ですので、旦那様と坊ちゃまがそう言うのならそれに従うだけです」

銀髪「わかりました……ああ、そうそう」

超アナル全力爽快舐め野郎「?」

銀髪「超アナル全力爽快舐め野郎くんって、今好きな子とかいたりすんの?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……いや、今はいない。前に告って盛大にフラれたっきり怖くて好きな人出来なくなってる」

男「……ドンマイ、きっともっと良い人が見つかるよ」

超アナル全力爽快舐め野郎「どうだかね、もう恋なんてしないって言っちゃいそう」

銀髪「……マジか、好きな人いないのか」

男「前にろくろっ首は好きな人の所へ行くって言ってたよな」

銀髪「伝承ではな。まあ妖怪『ろくろ首』がそうなだけであって怪異『ろくろ首』もそうだとは限らねえし」

男「そこまで気にする事ではないのか?」

銀髪「そう思いたい」

男「……ホントに好きな人いないんだよな?」

超アナル全力爽快舐め野郎「俺自身はいないと思ってるんだがなー、芸能人とかは無しだろ?」

男「……そっかー」

超アナル全力爽快舐め野郎「っていうか親父の前で自分の恋愛事情語るのクソ恥ずかしいんだが」

男「申し訳無い我慢してくれ」

銀髪「……じゃあまあ、こんな所か。私たちがこれからすることも説明したし了承も得た」

銀髪「それでは決行は超アナル全力爽快舐め野郎くんが寝た後になるので、それまでは普通に過ごしていて下さい。私たちにはお構いなく」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「わかりました」

超アナル全力爽快舐め野郎「男、お前らが相談に乗ってくれて助かったよ。お前が友達で本当に良かった」

男「なにこれで最後みてえに言ってんだよ。銀髪と俺でなんとかしてやるからお前は安心して寝てろ」

執事「では、時間になったら連絡いたしますのでそれまではこちらでお寛ぎ下さい」

…21:30…―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の中・応接室―

柱時計「ボーン」

銀髪「……うめえうめえ」もぐもぐもぐ

男「……」

銀髪「? なんだ男、メイドさんがせっかく用意してくれた料理食わないのか?」

男「……まさか、俺たちに殺してくれって頼んでくるとは思わなかった」

銀髪「……」もぐもぐもぐ

男「そこまでヤバかったってことなのか?」

銀髪「……」ごくんっ

銀髪「だろうな。あの親父さんはクズではねえよ……自分たちで悩んで考えてやることやって辿り着いた先があの答えだったんだ」

男「……これ以上息子が苦しむ姿を見るくらいなら、殺してくれ、か」

銀髪「その言葉を言うのには尋常じゃない覚悟が必要だったと思うぜ、握りしめた拳が血で滴ってた」

男「……助けるんだろ、俺たちが」

銀髪「当たり前だ。それが私たちの仕事なんだからな」

男「……」

銀髪「飯食わないなら男の分も食っていいか?」

…22:00…―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の中・応接室―

柱時計「ボーン×10」

銀髪「……もう10時か」もぐもぐもぐ

男「お前ずっと食ってばっかだな」

銀髪「だって美味いんだもんここの飯。食べ終わったら何も言わなくてもおかわり持ってきてくれるし」

コンコンッ。

銀髪「お、またメイドさんが飯持ってきてくれたのかな!?」

ガチャッ。

執事「坊ちゃまが就寝しました……恐らくもう直現れるかと」

銀髪「来たか」

男「い、いよいよか……」ドキドキドキ

銀髪「うっし! 男は鋸と鉈を持て。私が斧と枝切り鋏を使う」

男「お、俺はどこに行けば良いんだ?」

銀髪「男は超アナル全力爽快舐め野郎くんの傍で首の根本を切るんだ。私は屋敷の外で飛んでる頭の方を切り落とす」

男「わ、わかった!」

―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の中・超アナル全力爽快舐め野郎の寝室―

男【鋸・鉈装備】「……い、いざこうなってみると死ぬ程緊張するな」ドキドキドキ

超アナル全力爽快舐め野郎「……zzz」

男「超アナル全力爽快舐め野郎はぐっすり眠ってやがる」

執事「異変が始まってからというもの、眠っている間に私たちが何度起こそうとしても坊ちゃまは朝まで眠り続けるようになってしまいました」

男「……なるほど、なんでだろ」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……」

男「だ、おじさん、ここに居て大丈夫ですか? これから首を切るってのに……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「私は父親です、この場に居る責任がある。見届けなくてはいけません」

男「そ、そっすか……(うっわー、親父さんの前で首切ることになるのかよ……緊張して失敗したらどうしよう……)」

超アナル全力爽快舐め野郎「……zzz」

執事「ここ最近は、本当に辛そうにしていました。精神的に追い詰められていて見るに堪えないほど元気が無くて……」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……実は、息子は何度も自殺未遂をしているんです」

男「……え」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「化物になってしまった自分が恐ろしくて何度も死のうとしたんですよ」

男「……マジかよ」

執事「……旦那様」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「私にとっては化物になろうとどうなろうとかけがいのない一人息子です、その息子が……そんなことを」

執事「……」

男「……そこまで、追い込まれてたなんて」

超アナル全力爽快舐め野郎「……zzz」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「しかし、何度自殺を試みても息子は死ねないんです」

男「……は? え? しねっ、し、死ねない?」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「血を流そうが首を吊ろうが薬を飲もうが……次の日には後遺症も無く健康的な状態に戻っているんです」

男「……なんだそれ。ろくろっ首ってそんな設定あったっけ?」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「不死身という常軌を逸した体になってしまい、いよいよ自分のことを本物の化物だと……」

男「……不死身、って(おいおい聞いてねえぞそんなこと。不死身ってなんだよ、首切り落とすだけでどうにかなんのかそれ)」

超アナル全力爽快舐め野郎の父「お願いします。私たちにはもうどうすることも出来ない……息子を、救って下さい!」

男「ま、任せて下さい……多分」

男(これって銀髪に伝えなきゃヤバくね?)

―外・超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の庭・塀の上―

銀髪【斧・枝切り鋏装備】「……二階の明かりがついてるあそこの部屋が超アナル全力爽快舐め野郎くんの寝室だな」

銀髪「うーし、取り敢えず時間になって伸びた首が外に飛び出してきたら、枝切り鋏で挟んで捕まえて……」

銀髪「伸び切った所を斧で一刀両断すりゃ大丈夫だろ」

銀髪「簡単な仕事で助かったぜ、これで100万貰えんだから金持ち相手の商売はたまんねえ」

銀髪「……家の人らが部屋を板やらなんやらで封鎖しなくてよかった」

銀髪「たとえ『ろくろ首』でも下手な事すると危険だからな」

銀髪「……」

銀髪「男のやつはしっかりやれんのかな……」

銀髪「……」

銀髪「心配ねえか」

銀髪「だから助手として引っ張り回してんだもんな」

―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の中・超アナル全力爽快舐め野郎の寝室―

執事「一度だけ、部屋を板金で固定して就寝中は坊ちゃまを寝室に閉じ込めようかと考えたんですが……」

男「実行したんですか?」

執事「結局やりませんでした。何かあると思うと恐ろしくて……」

男「それで良いと思いますよ。何にしたって下手なことをすると碌な目に遭わないらしいですから、銀髪曰く」

超アナル全力爽快舐め野郎「……zzz」……ずる、ずる

男「……? なんだこの音」

執事「……うっ、とうとう出てきます」

男「うっそマジか。もう少し三人でお喋りしてたかったのに……」

……ずる、ずる。

男「……あ、うわ、うっわ本当だ、首が伸びて……いや、首が離れて、る?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……zzz」ずる、ずる、ずるずる

超アナル全力爽快舐め野郎の父「……こ、こんな、息子がこんな化物になるなんて」

ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる!

男「え? ……え。え? ちょっと何これ、えっ? これがろくろっ首なの?」

ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる!

男「いや、絶対違うでしょ。……なんで、なんで内臓が出てきてんだよ!?」

―外・超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷の庭・塀の上―

ワーワー! ギャーギャー!

銀髪「二階の寝室が騒がしいな、始まったか?」

ガチャッ、スゥゥー……。

銀髪「自分で窓を開けて外に出るたあ賢い『ろくろ首』だ……な? ん? お゛ぉんっ!?」

スゥゥー……。

銀髪「なんだありゃ!? 『ろくろ首』じゃねえ……ッ! うっそだろおいマジかよ」

銀髪「そうだったのか、ちくしょうっ! んなマイナーどこまで考えられるワケねえだろクソがぁ!」

銀髪「DQNが言った空から聞こえる笑い声……」

銀髪「糞ビッチが言ってた夜中の公園の隅、真っ暗な場所で唯一見える顔。委員長さんが見た飛ぶ頭の下に繋がる長い物体」

銀髪「んでもって警官の言ってた犬猫の不審な死骸ッ!」

銀髪「全部繋がった……くっそ私の馬鹿、なんで気付かなかったんだ! 男の言う通りじゃねえか!」

タッタッタッタッタ!

男「おい! はあはあ、なんだよ……あれ!? あれがろくろっ首なのか!? ……ハア、グロ過ぎるだろ!?」タッタッタッタ!

銀髪「『ろくろ首』なんてちゃちなもんじゃねえよ……あいつは東南アジアの吸血鬼、『ペナンガラン』だ!!」

『ペナンガラン』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%83%B3

吸血鬼と聞くと妹様しか思い浮かばない
俺って異端?

ペナンガランは知らんけどガスゥーは知ってる俺って異端?

男「きゅ、きゅっきゅ吸血鬼ィ!?」

スゥゥー……。

銀髪「追うぞ!」タッタッタ!

男「お、おう!」タッタッタ!

銀髪「警官が言ってたろ最近犬猫の血抜かれてる死骸がたくさん目撃されてるって」

男「言ってた!」

銀髪「『ろくろ首』だって断定してここに来た私はその事件をスルーしちまったが、結局それも超アナル全力爽快舐め野郎くんの仕業だったんだ!」

男「やっぱり俺が言ったことが正しかったんじゃねえか!」

銀髪「この国に南方妖怪が現れるだなんて誰も予想出来ねえよ!」

男「超アナル全力爽快舐め野郎の正体はろくろっ首じゃなくて、そのペナルティだかガルダンディみたいな名前の妖怪だったっつうのか!?」

銀髪「あんなコミカルな見た目の妖怪なんざ他にいねえ! 伝承の絵と完全に一致してやがる!」

男「コミカルっつうかグロイだけだろ見た目!」

銀髪「親父さんと執事さんは何か言ってなかったか!?」

男「……あっ、そういやあいつ自殺未遂何度もしてんのに次の日には何事もなかったように普通に戻ってるとか言ってた!」

銀髪「吸血鬼は不死身なんだよ」

男「だから、死ねないのか……」

銀髪「犬猫だからまだ良いが、あいつが人を襲うようになるのも時間の問題だ! 急いでとっ捕まえるぞ!」

――姉『多分死んだ犬が埋めてあったんだと思うけど、公園の隅っこの木の下に。それを子供たちが掘り返して遊んでたんだよ』

――黒髪清楚系糞ビッチ『あー、その超アナル全力爽快舐め野郎くんを見たのはー、どっかの公園通りかかった時だったなー』

男「俺んちの近所の公園……」

――男『おお、超アナル全力爽快舐め野郎じゃんか。なんだお前もここの本屋よく来るのか?』

――超アナル全力爽快舐め野郎『……ちょっとこっちに用があってな、そのついででここに寄ったんだよ』

男「まさか……犬の死骸を埋めたのって、あいつだったのか?」

銀髪「何にしろ今は『ペナンガラン』を見失わないようにするのが先だ! 全力で追っかけるぞ!」

スゥゥー……。

男「ちょ、ちょっと待って。屋敷の中走って外まで来たから疲れた……」

銀髪「んな呑気なこと言ってられねえだろ!」

男「はや、銀髪速い! 足速い待って!」

銀髪「ついてこい! 早くしねえと見失っちまう!」タッタッタッタッタ!

男「くっそ足速過ぎるだろおおおおおお!」タッタッタッタッタ!

銀髪「『ペナンガラン』っつうのは首から下にぶら下げた内臓を発光させながら空を飛ぶ妖怪だ」

男「はあ、はあ……た、確かにぼんやり光ってるな!」

銀髪「おかしいと思ったんだ、黒髪清楚系糞ビッチがなんで真っ暗な中で顔だけ目撃出来たのか」

男「あの内臓の発光に顔が映ってたのか!?」

銀髪「目の悪い委員長さんが内臓……消化管を首に見間違えるのも無理ねえ話だ」

男「芋虫みたいに動いて空飛んでるなあいつ!」

銀髪「だけど、東南アジアの吸血鬼がなんでこの国に……」

男「……なんだっけ?」

銀髪「『ペナンガラン』だ」

男「そうそう『ペナンガラン』! そりゃ夜中にあんな姿になって空を飛び回ってたら本人も死にたくなるかもな!」

銀髪「元々の伝承では、悪魔と契約した助産婦が契約を破ってしまい呪いによって変えられた姿なんだがな」

男「それがあの妖怪の言い伝えなのか」

銀髪「妖怪とは相違点がある、要するに妖怪ではなく怪異ってことだな」

男「じゃ、じゃあ超アナル全力爽快舐め野郎は元から『ペナンガラン』なんじゃなくて、『ペナンガラン』になっちゃったってことで良いのか!?」

銀髪「そういうことだ(っていうかそうであって欲しい。そうすりゃ、解決法は考えられる!)」

―閑静な住宅街―

男「はあ、はあ……はあ、おえっ、ハア」タッタッタ

銀髪「くっそ! こう周りが家で囲まれてるとすぐに見失いそうになっちまう!」タッタッタッタッタ!

男「はあ、はあ、はあ……おえっ」タッタッタ

銀髪「悪いが先に行かせてもらうぞ!」

男「はあ、はあ、ハアッ……ぺ、『ペナンガラン』は吸血鬼で不死身なんだろ!?」

銀髪「だろうな」

男「お、お前一人で、しかも、はあ、斧と枝切り挟って装備だけでなんとかなるのかよ!?」

銀髪「そんなんでどうにか出来たらこの世に吸血鬼なんて存在してねえよ。叩けば死ぬハエと一緒にするな」

男「じゃ、じゃあ、一人で行ったら危険だろ!?」

銀髪「お前が遅いからこのままじゃ見失っちまうんだよ! 私は先に行くからな!」

男「……わかったよ。絶対に無理だけはするなよ!」

銀髪「すぐに追いついてこいよ!」タッタッタッタッタ!

男「頑張ります……」

銀髪「おら待てコラアアアアアアアアアアアア!!!」ダダダダダダダッ!!

男「はやっ……もう行っちまった」

男「……」

男「……ちょっと休憩するか」

―閑静な住宅街・路上―

スゥゥー……。

野良犬「ワンワンワン!」

……。

スィィー……。

野良犬「ッ!」ビクッ!

スゥゥー……。

野良犬「ガルルルルゥ! ワンワン!」

ガブッ!

野良犬「きゃうんっ!」

……ジュルジュルジュルジュル。

野良犬「ガァ……カフッ、カフッ……がぅ」ドサッ

???「見つけたぞ『ペナンガラン』!」

ペナンガラン『……誰だ?』

銀髪「お前を金に換えに来てやったぜ」

ペナンガラン『……』

銀髪「……フッ、決まった」ドヤッ

決め台詞言ってドヤ顔になっちゃう銀髪ちゃん可愛いなおい

ペナンガラン『食事の邪魔ァしやがって……』

銀髪「人がせっかく美味しく飯食ってるとこ邪魔されたらブッ殺したくなるよな、むかつくよな。わかるぜその気持ち」

ペナンガラン『覚悟は出来てんだろうな?』

銀髪「だったらどうすんだ?(『ペナンガラン』になったら人格も変わっちまうのか、話し合いでどうこうは出来ねえんだな。するつもりもねえが)」

ペナンガラン『お前、美味そうだなぁ……』ニタァ……

銀髪「自分で言うのもなんだが見た目の割にクソ不味いと思うぜ、私」

ペナンガラン『そろそろ獣の血にも飽きてきた所だ……大事にすると俺の居場所も危うくなるがたまには良いだろう』

銀髪(……来るか!)

ペナンガラン『……小娘、お前の血を吸わせろォォォォ!!!』

銀髪「来いよオラアアアアア!!! こちとら斧装備してんだ真正面から顔面真っ二つにしてやるぜ!」

ブオンッ!

スカッ!

銀髪「……あら?」

ペナンガラン『俺をハエ叩きと一緒にするんじゃねえよ』

シュルシュルシュルシュル……ギュゥゥゥッ!

銀髪「ぐああっ!(くっそ、ナリの割にちょこまか動きやがる!)」

ペナンガラン『消化管で縛られる気分はどうだぁ?』ニヤニヤ

銀髪「……生憎SMプレイは大っ嫌いなんだけどな。ぐぅっ……しかもM役だなんて反吐が出らぁ」

ペナンガラン『結構似合ってんじゃねえか、ヒヒヒ』ニヤニヤ

ギュウゥッ!

銀髪「あっ……うぅ……! ぬるぬるして気持ち悪ぃ(身動きが、取れねえ……)」

ポロッ、ガランッ!

ペナンガラン『重くて使い物にならない斧も無くなった、これでお前は完全に丸腰だぞ』

銀髪「……ちくしょう、ぐぎぎ、ダメだ全然動けねえ……」

ペナンガラン『ヒヒヒ……血を吸う前に少し楽しませて貰うかねえ』ニヤニヤ

シュルシュルシュルシュル、ギュッ!

銀髪「っ! んなっ、や、やめろ、そこは!」

ペナンガラン『ぎゃははははは! 良いね良いねぇ! ちゃっかり女の顔になってきてんじゃねえか!』

銀髪「うぅ、くぅ……///」

ペナンガラン『このまま縛り上げてやるよ……』ニタァ……

???「……お、いたいた。ってうわああああああああなんだあれ!? なんで銀髪お前縛られてんだよ!?」

銀髪「お、遅えぞ男! さっさと来いよバカ!うぐっ///」

ペナンガラン『ッチ、仲間がいやがったのか……』

男「『ペナンガラン』が自分の内臓で縛ってんのか……なんつうマニアックな緊縛プレイだ」

銀髪「感心してる場合か! 早く……んっ/// こいつを何とかしろ!」

男「お! おう! ごめんマジで新たなジャンルの誕生に感動しちまってた!」ダダッ!

ペナンガラン『おーっとそれ以上動くんじゃねえよ、こいつがどうなっても良いのか?』

男「っ!?」ピタッ

銀髪「な、何してんだ……そんな脅しどうでも良いからさっさと、ぁうっ/// こいつをぶった切れ!」

男「内臓で縛られてる銀髪、意外とエロいな」

銀髪「ハア!?/// んなことどうでも良いだろなにしみじみ見てんだ馬鹿野郎!」

男「あ、ごめん! だって普段全然そんな感じしないんだもん!」

銀髪「普段の私はエロくないってか!? どうせ色気の欠片もねえよごめんなさいねバーカ!」

ペナンガラン(……こいつらホントに仲間なのか?)

シュルシュルシュル!

銀髪「あぅぅっ!///」ビクッ!

男「どうした銀髪!?」

ペナンガラン『ギャハハハハ! いっちょまえに感じてやがんなぁ』

男「な、なんだってー!?」

銀髪「この野郎……盲腸の部分で私の股間ゴリゴリしてやがる……んぁっ///」

男「なんだそれはどういうことだ!」

ペナンガラン『そーれこのままイケよ銀髪女ァ!!!』

シュルシュルシュルシュルシュル!

銀髪「はあ……はあ、んっ。くっそ、やめ、ろっ! うあぁっ、やめろ! くっ、ぐぅ……///」

男「え、エロい!」

シュルシュルシュルシュルシュル!

銀髪「んぅぐっ……!///」ビクッビクンッ! ビクンッ! ガクガクガク……

ペナンガラン『ギャーッハハハハハハハハハ! 良いね最高だなぁ!』

男「え、まさかお前……イッたのか?」

銀髪「……はあ、はあ、んくっ」ビクッ、ビクッ

ペナンガラン『どうだお仲間さん目の前でイカされた気分は? さぞ興奮しただろう?』ニヤニヤ

銀髪「……さ、さっさと、こいつを、どうにかしてくれ」

男「わかった!」

ペナンガラン『残念だったな、もう遅えよ!』

ガブッ!

銀髪「ッ!? ぐああああっ!」

男「銀髪! あの野郎、噛み付きやがった!」

ジュルジュルジュルジュルジュルジュル!

銀髪「う、うぅ……やっべ、意識が……」

男「まさか……血を吸ってるのか!?」

ペナンガラン『……ッ!? おえええええええ!!!』ビチャビチャビチャ!

男「吐いた?(いやいや驚いてる暇はない! やるなら今しかねえ!)」ダダダッ!

ペナンガラン『な、なんだお前は!? クッソ不味い血ィしやがって! おえええええ! こんな血飲めるワケねえよ!』

銀髪「はあ……はあ……だ、だから言っただろバーカ。私はクソ不味いぞ、ってな」

ペナンガラン『お、お前……本当に人間か!?』

銀髪「教えてやんねえよ、化物ごときに」

ブチュッ!

ペナンガラン『~~ッ!?!?!?!? うっぎゃああああああああああああああ!!!』

男「ぎゃあああああああああああ!!! 痛そおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

シュルシュルシュルシュル!

銀髪「ぐっ……」フラッ

男「おっと、だ、大丈夫か銀髪?」

銀髪「お前のお陰で気持ち良くなっちまった上に血まで無駄に抜かれちまった……この落し前はきっちり付けて貰うからな」

男「ああ……銀髪のエロい姿見れたし俺も満足だ」

銀髪「殴るぞ」

男「ごめんなさい」

ペナンガラン『ぐあああああああ! ……はあっ、はあっ、つ、潰された……ちっくしょう……』

銀髪「お前、あいつに何やったんだ?」

男「内臓ぶら下げてんだろ? だから、ずっと内臓の下の方探してたんだよ。んでやっと見つけて潰したんだ……あいつの睾丸を」

銀髪「よくもまあ野郎が野郎の玉潰そうと思ったな」

男「そうでもしねえとお前のこと助けらんねえと思ってな」

銀髪「時間切れだアホ、血吸われちまったじゃねえか」

男「だ、大丈夫なのか? お前も吸血鬼になったりしないのか?」

銀髪「吸血鬼が自分の眷属を作る為には吸った血を自らの糧にしねえといけねえ、そこまでが手順なんだ」

男「あいつは全部吐き出したな、クソ不味いっつって……」

銀髪「だから大丈夫だろ」

男「……」

銀髪「……それに」

男「……?」

銀髪「既に私の中は大渋滞だからな、吸血鬼程度が入る隙間なんざとっくにねえよ」

男「……お前」

ペナンガラン『クソがぁ! そこの野郎覚えてろよ! いてててて……』スゥゥー……

男「あ、待て!」ダッ!

銀髪「待て、追わんでいい! 下手に追ってお前が返り討ちにあったら私が困る」

スゥゥー……。

男「……逃がしちまったけど良いのか?」

銀髪「私はまともに動けねえし、お前一人じゃどうすることも出来ないだろ?」

男「ああ」

銀髪「私だから良かったものの、お前があいつに吸血されたら面倒だからな」

男「俺もいくら吸血鬼だからっつって夜中に内蔵ぶら下げて空を飛ぶ吸血鬼にはなりたくないしな」

銀髪「だからあのまま逃がして良い……恐らくはもう大人しく部屋に戻るだろう」

男「そりゃホントか」

銀髪「お前が玉潰してくれたんだ。空を飛ぶより体に戻って一晩かけて寝ながら再生する方を選ぶだろ」

男「じゃあ地味に良い働きしたんだな、俺」

銀髪「落し前はちゃんとつけてもらうからな」

男「わかりました」

銀髪「……それに」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」すたすた

銀髪「『ペナンガラン』を祓う方法はしっかり考えてあるから大丈夫だ」ニヤァ……

男「あれ? なんか今、遠くの方で誰か歩いてなかった?」

銀髪「気のせい気のせい、気にすんな」

男「気のせいなら良いんだけど……っていうかどうすんだこれから。祓う方法ってどうするんだ?」

銀髪「……殺す」

男「えっ」

銀髪「いや殺さない」

男「どっちだよ!?」

銀髪「くくく……あの変態化物野郎、私を辱めた上に血まで吸おうとしやがって……」

男「……」

銀髪「ぜってえ殺してやんねえ。未来永劫地獄の苦しみを味わわせてやる」

男「……」

銀髪「地獄の苦しみだ、泣き叫ぶことも出来ないほどの苦痛をあの糞妖怪に……ヒヒヒ、あはははははは!」

男「相当ブチ切れていらっしゃいますね銀髪さん」

銀髪「当たり前だ花も恥じらうJK乙女が野郎の前で無理矢理イカされたんだぞ!?」

男「俺は目の保養になった」

銀髪「……」むすっ

男「涙目で顔真っ赤にしながらぶって来るなよ! 不覚にも可愛らしいと思っちまったじゃねえか!」

銀髪「私はストリップの趣味なんてねえんだよ! 男の変態!」

男「ごめんなさい」

銀髪「……別に、もういいよ」

男「じゃ、じゃあ……気を取り直して今後どうするか考えるか?」

銀髪「……。超アナル全力爽快舐め野郎くんの正体が『ペナンガラン』だとわかった以上、あとはその対策を練るだけだ」

男「大丈夫なのか?」

銀髪「安心しろ。『ろくろ首』なんかよりも確実に『ペナンガラン』を本人から綺麗さっぱり落とす方法はもう考えてある」

男「すげえな。戦うのか?」

銀髪「その必要はない。ここまで来たらあとは罠を張って待つだけだ」

男「……まあ、俺は今まで通りお前の言う事に従えば良いってことか」

銀髪「そういうこと! わかったら今日は屋敷に報告してさっさと帰るぞ。勝負は明日だ」

男「今日はもう良いのか?」

銀髪「この時間じゃスーパーもホームセンターも閉まってるだろうしな」

男「……? ま、まあ、じゃあ帰るか」

銀髪「おう。夜遅くまでつき合わせて悪かったな……お疲れさん」

男「へいへい」

なんだろう
銀髪ちゃんみたいな感じのキャラすげえ好きだわ

…翌日・朝…―男の部屋―

妹「おっ兄ちゃああああん! 朝だよ起きっろー!」

男「うるっせえなそんな大声出さなくても起きるわ!」

妹「だってお兄ちゃんってばいっつもお寝坊さんなんだもん!」

男「最も爽やかに起きられるタイミングがあるんだよ」

妹「そんなこと言ってたらずっと寝てるじゃん!」

男「そりゃ眠いんだから仕方ないだろ!」

妹「ダメ兄貴」

男「悪かったな」

妹「そんなことより珍しいねー」

男「? 何がだよ」

妹「銀髪先輩が外で待ってるんだよ?」

男「……んー、えっ? 銀髪が?」

妹「うん、待たせちゃ悪いから、だから今日は全力で起こしたの」

男「……」

―男の家の外―

男「……」

銀髪「おはよう男くんっ!」ニコニコ

男「お前は幼馴染か!」

銀髪「朝家の前で待って一緒に学校へ行く幼馴染プレイの気分はどうだよ」

男「幼馴染はこうでなくっちゃなと思う」

銀髪「お前の所の幼馴染はあれだからな」

男「やめろ……」

銀髪「っつってもまあ、今日は申し訳ねえが学校へは行かねえんだ」

男「え? そうなの?」

銀髪「悪いが今日は学校を休んで一日お前らに動いて貰う」

男「……お前ら、って?」

超アナル全力爽快舐め野郎「おはよーう」

銀髪「超アナル全力爽快舐め野郎くんにも休んで貰った」

男「……本気じゃねえか」

男「えーっと、体の方は大丈夫か?」

超アナル全力爽快舐め野郎「? 何かあったのか?」

銀髪「男があんたの玉を潰したんだが」

超アナル全力爽快舐め野郎「えっ……た、玉!? いや、朝起きた時には何ともなかったわ」

男「……すげえな。やっぱり不死身なのか」

超アナル全力爽快舐め野郎「……どうやっても死ねないんだ」

銀髪「吸血鬼の再生能力は伊達じゃねえな」

超アナル全力爽快舐め野郎「吸血鬼? 再生能力?」

銀髪「ああ……超アナル全力爽快舐め野郎くん。あんたは『ろくろ首』じゃなくて『ペナンガラン』だったんだよ」

男「昨日あの後親父さんと執事さんには報告したんだけどな一応」

銀髪「超アナル全力爽快舐め野郎くんの正体に関しては私たちが直接本人に言うからって口止めしといたんだ」

超アナル全力爽快舐め野郎「『ペナンガラン』……聞いたこともない名前だな。そいつも化物なのか?」

男「夜中に内蔵をぶら下げて空を飛ぶ東南アジアの吸血鬼らしい」

超アナル全力爽快舐め野郎「吸血鬼……」

銀髪「私も昨晩あんたに血を吸われかけたんだ」

超アナル全力爽快舐め野郎「……マジかよ。す、すまん」

男「……お前が謝ることねえと思うが」

銀髪「『ペナンガラン』になっちまったら本人の意思なんざ関係無いみたいだし仕方ねえよ」

超アナル全力爽快舐め野郎「そんなこと言ったって……」

銀髪「ただ、近頃ここら辺で起きてる犬猫の大量の死骸は間違いなくあんたの仕業だ」

超アナル全力爽快舐め野郎「俺が……吸血鬼になった俺が、血を吸って……うぅっ、おええ!」ビチャビチャビチャ!

男「お、おい大丈夫か!?」

超アナル全力爽快舐め野郎「あ、ああ……ちょっと気分が悪くなっただけだ」

男「……無理するなよ」

超アナル全力爽快舐め野郎「わりぃ、心配かけちまって」

銀髪「しかし、どうなんだ? 意思はなくても意識はあるのか? 夜中に『ペナンガラン』になった時の記憶とか」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「……」

男「思い出したくないなら別に――」

超アナル全力爽快舐め野郎「夢を見るんだ」

銀髪「……夢、ねえ」

超アナル全力爽快舐め野郎「ここ最近、似たような夢ばかり見る……」

薄らぼんやりとした夜の街中を飛んでるんだ。

視界は薄暗くて、でも自分の見ている景色が自分の住んでる街だっていうのはわかった。

最初は空を飛んでるのが気持ち良くて、そしたら笑い声が聞こえて来た。

一瞬誰の声だ? と思ったんだがすぐにそれが自分が笑ってる声だと気付く。

空を気持ちよく飛んでて最高の気分だった……けど。

すぐにその夢は悪夢へと変わっちまった。

街をうろつく野良犬や野良猫を襲い始めたんだ、俺自身が。

自分じゃどうすることも出来なくて、噛み付いて血を吸い続ける自分をただただ見ていることしか出来なかった。

何度も……毎晩、何度同じ夢を見たか覚えてない。

一回、公園で犬の血を吸ってる時に女の人と目があったのは覚えてる。

その時、人間の血を吸いたい……そんな感情が芽生えた。

犬や猫の血を吸うことさえどうにも出来ない自分に、さらにどうにも出来ない感情が芽生えちまったんだ。

銀髪「……」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎「……それが、怖くて、恐ろしくて……何度も死のうとした」

銀髪「なるほどな」

超アナル全力爽快舐め野郎「化物になろうが俺は俺だ。俺が……人を襲うなんて、そんなことがあってたまるか」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎「だから何度も死のうとしたのに……結局俺は今ものうのうと生きてる……」ガタガタガタ

男「やめろよー、お前は生きてて良いんだぞ」

超アナル全力爽快舐め野郎「……誰も俺を元には戻せなかった、霊媒師も神社の人も」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎「……だから、もう」

銀髪「安心しろ」ぽんっ

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「その悪夢も今日で終わる。私たちが終わらせてやる」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

男「……」

銀髪「だからお前ら、働け」

…昼…―スーパーマーケット―

店員「いらっしゃいませー」

男「『街中のスーパーと八百屋からありったけのニンニク集めてこい』……だなんてとんでもねえ命令しやがって……」

店員「いらっしゃ……ハア!?」

男「お陰でどこ行っても頭のおかしい人扱いされてんじゃねえかよ!」

店員「……お客様、えーっと、その……いえ何でもありません」

男「……」

店員「……」

男「あ、ニンニクチューブも買わないとな」

店員「それならあちらにございます」

男「ありがとうございます」

その日の夜、この街の家庭では晩御飯にニンニク料理が一切出なかったという。

―ホームセンター―

店員「いらっしゃいませー」

銀髪「すいませーん」

店員「はい。どうなさいました?」

銀髪「丈夫なロープってどこにありますか?」

店員「麻紐やナイロンロープ等がございますが」

銀髪「あー、麻紐の方が良いです。出来るだけ汁……じゃねえや水分を吸収出来るような素材の」

店員「? かしこまりましたー、少々お待ち下さい」

超アナル全力爽快舐め野郎「ロープを買って何に使うんだ?」

銀髪「あんたを縛る。これ以上ないくらいに縛り上げる」

店員「っ!?」

超アナル全力爽快舐め野郎「え゛っ!?」

銀髪「私は昨日の夜あんたのぬるぬるな内臓で縛られたんだ……あんたのせいじゃないのはわかってるがそのくらいは我慢してくれよ、なあ?」ニヤァ……

超アナル全力爽快舐め野郎「は、はい」

店員(昼間からなんて過激な会話をしてるのかしらこの二人は!?)

…昼過ぎ…―超アナル全力爽快舐め野郎の屋敷のある住宅街付近の公園―

男「はあ、はあ……はあ。落し前はつけるっつったが……いくらなんでも人使い粗すぎるだろ!」ドサッ!

すたすたすた。

男「ん?」

銀髪「よー、手筈はどうだ? 順調か?」すたすたすた

男「街中端から端まで走り回ってかき集めてきたよ! ニンニクとニンニクチューブ!」

超アナル全力爽快舐め野郎「すっげえ量だな……うっ、ニンニク臭い……」

銀髪「どのくらい集まった?」

男「50kg越えたわ! よくもまあそんなに集めたよ俺! よく頑張った俺!」

銀髪「んだよどうせなら100kgくらい集めて来いよ」

男「……褒めてくれないのかよ」

銀髪「昨日私の恥ずかしいとこを眺めてたお返しだ」

男「そんなぁ……」

銀髪「ぜってえ褒めてあげない!」

男「酷え!」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

男「どうした? なんでそんなに距離置いてんだ?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……すまん、ちょっとニンニク臭過ぎて」

銀髪「……」

男「……そういや前に餃子まん嫌いとか言ってたな。でもそんなに距離置くほど嫌いなのか?」

銀髪「これも恐らく、超アナル全力爽快舐め野郎くんが吸血鬼だからなんだろうな」

男「……ああ、吸血鬼ってニンニク苦手なんだっけか」

銀髪「あの時頑なに私の餃子まんと餡まんを交換したがらなかったのは、こういうことだったんだよ」

男「単純に嫌いだからだと思ってた……」

超アナル全力爽快舐め野郎「俺も、そんなことがまさか化物に関係するとは思ってもなかった……」

銀髪「ま、こうして大量のニンニクと丈夫なロープが集まったんだ。後はもう解決するのも時間の問題だよ」

男「えーっと、このニンニクとロープとすり鉢とこし器とビニールプールを使って何をするんだ?」

銀髪「今から大急ぎでこの50kg越えのニンニク全てを摩り下ろす!」

男・超アナル全力爽快舐め野郎「……え゛っ」

銀髪「世にも綺麗な銀髪ちゃんのビューティー三時間クッキングの始まりだ」ニヤァ……

銀髪「はぁーい♪ 今日は対『ペナンガラン』用の究極レシピのご紹介でーす♪」

男「……」

銀髪「まず用意するのは大量のニンニクとすり鉢♪」

男「……はい」ドサドサッ!

銀髪「これをぜ・ん・ぶ、摩り下ろしていきまーす♪」

男「……」ゴリゴリゴリゴリ

銀髪「摩り終ったニンニクは~、こし器に入れて少量の水と合わせてビニールプールへ綺麗にこしていきま~す♪」

男「ニンニクくせえ……」バシャバシャバシャ

銀髪「我慢しろ」

男「はい」

銀髪「これを延々とニンニクが無くなるまで続ければ、対『ペナンガラン』用究極兵器の完成でーす♪」

超アナル全力爽快舐め野郎「いつになくテンションが高いな……」ゴリゴリゴリゴリ

男「……昨晩受けた辱めを根に持ってるんだろ、ありゃただの私怨だ」ゴリゴリゴリゴリ

銀髪「ね、簡単でしょ? ひゃはははははははははははははははは!!!」

…夕方…

カラス「カー、カー、カー」

男「……やっっっと終わったああああああああああ!!!」

超アナル全力爽快舐め野郎「……いろんな意味でキツかった」

男「だ、大丈夫か? 吸血鬼はニンニク苦手なんだろ? よくもまあ三時間クッキング手伝えたな」

超アナル全力爽快舐め野郎「自分のことだし少しは我慢しねえとな……」

銀髪「おう、二人ともご苦労さん」

男「摩り下ろした50kgのニンニクと50lの水を入れたビニールプールなんか用意してどうする気だ?」

銀髪「先ずはホームセンターで買ってきたロープを中にブチ込む」

ドボンッ!

超アナル全力爽快舐め野郎「……ま、まさか」

ヒョイッ、ビチャビチャビチャ。

銀髪「んでもってこのニンニクエキスで浸したロープを使って超アナル全力爽快舐め野郎くんを縛り上げる!」ビチャビチャビチャ

超アナル全力爽快舐め野郎「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!?!?!?」

男「まあ途中からそうだろうなぁーとは思ってたよ」

ぎゅっ、ぎゅぎゅっ!

超アナル全力爽快舐め野郎「ぐぁぁっ……!」

男「すっげー雁字搦め。これじゃ身動き取れない以前にグルグル巻きで碌に歩くことも出来ないな」

超アナル全力爽快舐め野郎「うぐぐ……くっ……」

銀髪「縛られて痛いのか?」

超アナル全力爽快舐め野郎「それも、ある、けど……それ以上になんか、すっげー痛い」

男「……それって」

銀髪「ニンニクエキスの成分が吸血鬼の身体に効果を及ぼしてんだろうな」

男「大丈夫か?」

超アナル全力爽快舐め野郎「今にも叫び出しそうな痛さだけど……どうにか我慢してる」

銀髪「大した根性だ。男にゃ無理だな」

男「ああ」

銀髪「あんまり超アナル全力爽快舐め野郎くんに痛い思いをさせたくねえし、なるべく早く『奴』が来る事を祈らねえと」

男「『奴』? 縛っただけじゃ『ペナンガラン』を本人から祓うことは出来ねえのか?」

銀髪「今は夕暮れ……良い具合に『影』が大きくなる時間帯だ」

超アナル全力爽快舐め野郎(物凄く体に染みる……肌が焼け爛れるみたいだ……)

男「『影』……?」

銀髪「前に超アナル全力爽快舐め野郎くん本人がその名前を出して、私が殴って止めたのは覚えてるか?」

男「ああ、えーっと……『噂をすれば影』は馬鹿に出来ない、だっけ?」

銀髪「そう。本来ならば『そいつ』は影の世界の住人、この世のありとあらゆる存在に結び付いている『影』だ」

男「……でも、あの時お前はあまり口に出さない方が良いって」

銀髪「事情が変わった。今は必要なんだよ」

男「……どういうことだ?」

銀髪「説明が面倒臭い」

男「おい」

銀髪「とにかく……その影の世界の住人に対して『噂をすれば影』っつう呼び出し方は物凄く効果的なんだ」

男「そ、そうなのか……」

銀髪「まさかここまで都合良く行くとは思わなかったが……どうやらあの時の『噂』の時点で『影』はこの世に興味を持ってたみたいだ」ニヤァ

超アナル全力爽快舐め野郎?「……」すた、すた、すた

男「……? え? え、あれ? な、なんで? あの、公園の入口の方にいるのって……なんで、なんで」

銀髪「最ッ高にナイスなタイミングってやつだ! あちらさんからいらしてくれたぜ、超アナル全力爽快舐め野郎くんの『ドッペルゲンガー』!」

男「『ドッペル……」

超アナル全力爽快舐め野郎「……ゲンガー』?」

銀髪「そうだよ! 前に超アナル全力爽快舐め野郎くんが言ってただろ! 呼んでただろその名を!」

超アナル全力爽快舐め野郎?「……」てく……てく……

超アナル全力爽快舐め野郎「まさか……ちょっと口に出しただけだったのに……本当に来るなんて」

銀髪「だから言ったろ? 『噂をすれば影』は馬鹿に出来ねえってよ」

男「姿形、完全にお前と一緒じゃねえか」

銀髪「自分の『ドッペルゲンガー』を見てしまった奴は死ぬ」

超アナル全力爽快舐め野郎「えっ!?」

男「おいおいそれじゃ」

銀髪「安心しろ。その真意は単に見た本人と『影』が入れ替わって、本人が影の世界の住人になっちまうってだけだ」

男「いやいやそれでも!」

銀髪「それを利用して、超アナル全力爽快舐め野郎くんに憑いてる『ペナンガラン』を取るんだよ」

超アナル全力爽快舐め野郎?「……」てく……てく……

超アナル全力爽快舐め野郎「え、ええ、えっと、じゃ……じゃあ俺はどうすれば」

銀髪「『ドッペルゲンガー』と目を合わせろ! 『ペナンガラン』の憑いてる自分の身体と本来の自分の身体を持つ『影』の身体を交換するんだ!」

>銀髪「大した根性だ。男にゃ無理だな」

>男「ああ」


ああ、じゃねえよwwwww

超アナル全力爽快舐め野郎?「……」ジロッ

超アナル全力爽快舐め野郎「目……って、あっ!」

ばちっ。

超アナル全力爽快舐め野郎「……」ガクッ

男「お、おい大丈夫か!? おい、しっかりしろ!」

銀髪「『影』が消えた……この世に留まるコツを知らずに影の世界に戻されたんだな」

男「……ってことは?」

銀髪「今までここに居た超アナル全力爽快舐め野郎くんが『影』の方になったんだ」

男「……つ、つまり?」

超アナル全力爽快舐め野郎「……」

銀髪「そこにいる超アナル全力爽快舐め野郎くんが、さっきまでの『ドッペルゲンガー』だってことだ」

男「……お、おい、超アナル全力爽快舐め野郎?」

超アナル全力爽快舐め野郎「ぎゃはははははははははははははははははははははは!!!」

男「っどぇ!?」

銀髪「本性現したな『ドッペルゲンガー』、陽と対になる陰だけあってやかましくなりやがって」

超アナル全力爽快舐め野郎「なれた! なれた! やっと俺もこの体になれた! これで俺も辛気くせえ陰の世界とおさらばだぁ!」

男「全然性格違うんだな」

銀髪「前に歪んだ鏡の依頼を受けた時と一緒だ」

男「ああ、あの時の……」

銀髪「姿形は同じでも、中身は全くの対象になっちまうんだよ。この手の怪異は」

超アナル全力爽快舐め野郎「これでやっと日のある世界に! ……っておい! な、なんだこれは!? なんで俺縛られてるんだ!?」

男「……」

銀髪「そりゃ交換される前に縛ってたからなあ」

超アナル全力爽快舐め野郎「っつうか痛えええええええ!!! 痛え! すげえ痛えええ!!!」

銀髪「うるせえなお前……」

男「こいつバカだな」

超アナル全力爽快舐め野郎「おい、おいおいおいおい、しかもなんだこれ! なんだこの体ぁ!?」

銀髪「影の世界の住人は陽の世界に憧れはするもこっちの事情は全く知らねえんだな」

超アナル全力爽快舐め野郎「こいつ……この体、他に誰か居やがるのか!?」

銀髪「ようこそ~♪ 欠陥物件のお・か・ら・だ・へ♪ 『ドッペルゲンガー』さんっ!」ニタァ……

超アナル全力爽快舐め野郎「お、お前ら、お前らがやったのか!?」

男「……あ、アイディアと実行の総意は全てこの女の人の責任です。僕は命令されただけです!」

銀髪「お前そういうとこ狡いよな!」

超アナル全力爽快舐め野郎「いてえ、痛えええ! ど、どうでも良いからこの紐解いてくれぇ! 体が焼けるように痛いんだ!」

銀髪「ったくうるせえやっちゃなー。私らが縛ったのに私らが解くはずねえだろ……どれ」ジャラッ

男「それ……って」

超アナル全力爽快舐め野郎「ッ!? もがもが、もごぉっ! んー、んー! んー!」ジタバタジタバタ!

銀髪「こんなこともあろうかと用意したギャグボールだ」

男「よくもまあそんなの準備したな」

銀髪「備えあれば嬉しいな、ってな」

超アナル全力爽快舐め野郎「んー! んー! んー!」ジタバタジタバタ!

男「どこから調達してきたんだよ……」

銀髪「お前の幼馴染から借りた」

男「あいつなんてもん銀髪に貸してんだ!」

超アナル全力爽快舐め野郎「んー! んー! んー! んー!」ジタバタジタバタ!

銀髪「それにしてもうるせえな、ギャグボール付けてるっつうのに」

男「そりゃあ吸血鬼の身体をニンニクエキスに浸したロープで縛り上げられてるんだからな……」

銀髪「ひゃひゃひゃひゃひゃ良い気味だ!」

男「……」

銀髪「昨日の夜、私を好き放題してくれたお礼だよぉ」ニヤァ……

男(鬼畜だ……)

銀髪「おりゃっ」バシャッ!

超アナル全力爽快舐め野郎「~~ッ!?!?!? んんんんんんんんんんんーーーーーー!!!」ゴロゴロゴロ!

男「何してんだお前!?」

銀髪「見りゃわかんだろ、プールに溜めたニンニクエキスをこいつにぶっかけてるんだよ」

超アナル全力爽快舐め野郎「んんんんんんんんんんんんんんんーーーーーーー!!!」ゴロゴロゴロ!

銀髪「あはははは待ちやがれー! 転がって逃げたってすぐにまたぶっかけてやるからなー!」アハハハハ

男(鬼畜だ……っていうか『ドッペルゲンガー』ただのとばっちりじゃねえか……)

銀髪「あぐっ!」ズキンッ

男「どうした!?」

銀髪「……っつぅ、いててて」ぴくっ

男「……ああ、大丈夫かよ? 昨日噛まれた首筋」

銀髪「自分じゃ見えねえからどうなってるかわからねえ、悪いけどちょっと見てくれねえか」

男「どれどれ……うっわぁ、結構深く抉られてる」

銀髪「マジかよ、くっそーまた腹立ってきた」

男「お前……おい」

銀髪「あいつプールに突き落としてやる!」

男「おいってば」

銀髪「んだよ……どうした?」

男「お前、女の子なんだからあんまり無理するなよ」

銀髪「えっ!? ……あ、ああ」

男「あの時だって、一人で突っ走って一人で突っ込んで返り討ちにあったんだろ?」

銀髪「……」

男「俺がいるんだから、もう少し俺の事も頼ってくれ」

銀髪「……う、ご、ごめんなさい」

男「うなじなんて目立つような所怪我したら大変じゃねえか」

銀髪「なんだよ男、お前私のうなじ好きだったのか?」ニヤニヤ

男「そういうの関係無く女の子が自分から傷付くようなことすんなって言いたいんだよ」

銀髪「うぐっ……」

男「お前一人で無理し過ぎなんだよ、見てるこっちが寿命縮むだろ」

銀髪「……」

男「警官の時だってそうだ、俺がろくろっ首以外の怪異の可能性を考えたのにお前はスルーしただろ」

銀髪「……うぅ」

男「俺の意見に耳貸してればお前が噛み付かれるよりも前にいろいろ対策出来たかもしれないだろ」

銀髪「ごめんなさい」

男「一人で危険な目に合おうとしてる女の子に必死で付いて行くことしか出来ない俺の身にもなってくれ」

銀髪「……お前がとろいから」ごにょごにょ

男「それは否定しない」

銀髪「じゃ、じゃあ――」

男「だからって銀髪が一人で無理して良い理由にはならねえよ! 少なくとも俺の中じゃな!」

銀髪「う、うう、うるせーよ! お前、お、お前っ! 男のくせに生意気だぞコラ!」

男「人が心配してやってんのになんだその言い方は!」

銀髪「大体お前がもっと使える奴になりゃ良いんだよ!」

男「お前こそもっと協調性持って行動しろよ!」

銀髪「うるさいバーカバーカ!」……ポロッ

男「……っ、な、なんで泣いてんだお前」

銀髪「えっ? え、えっと、ええっ? な、なんで私……な、泣いて」ゴシゴシゴシ

男「……」

銀髪「……な、泣いてなんかねえよ! 何言ってんだお前!」

男「完全にポロッって言ってたじゃねえか!」

銀髪「うるさいうるさい! 私が泣いてないって言ったら泣いてないんだよ!」

男「なんだそりゃ……」

銀髪・男「……」

銀髪・男「……はあ」

銀髪「……ありがとな、お前がいてくれていろいろと助かってる」

男「わかってる。これ以上ないくらいにわかってるわそのくらい」

銀髪「……夕焼け空、綺麗だな」

男「似合わねえこと言うなよ笑っちゃうだろ」

わお、頑張れ

超アナル全力爽快舐め野郎「んー! んー! んー!」ジタバタジタバタ!

男「で……つまりは、『ペナンガラン』の憑いた身体を『ドッペルゲンガー』になすり付けたってことで良いのか?」

銀髪「ああ。ナイスアイディアだよな私」

男「そして、『ペナンガラン』という怪異が憑いていない本来の身体を持つ『ドッペルゲンガー』の方に本人を移したってことか」

銀髪「そういうことだ」

男「……じゃあ、影の世界に行っちまった超アナル全力爽快舐め野郎はどうなるんだよ?」

銀髪「それなんだが……まあ、クッッッソ不本意ではあるが第三者の協力を仰ぐことにした」

男「……第三者?」

銀髪「これ以上は私じゃどうすることも出来ねえ、だから助っ人を……私の依頼料から半額支払って雇ったんだよ」

男「……え」

???「うっわー、すっげー! ホントに『ペナンガラン』と『ドッペルゲンガー』が一緒になってんじゃん!」

男「……って、あ。あんた」

銀髪「……そっかそっか。そういやお前、男と知り合いだったんだよな」

男「俺の家の近所に住んでるニートじゃんか!」

ニート「どーもー、銀髪ちゃん! ……と、まさか男君がここにいるなんて」

男「ニートのあんたがどうしてここに!?」

ニート「そりゃあ銀髪ちゃんに雇われたのがボクだからさ」

すまん
あと少しなんだけど残りは22時過ぎに投下するわ
手直ししたって言ったけどその部分は最後の方だけだからあんまり気にしないでくれ

待つ
過去作品も教えて欲しい

歪な鏡の方も気になるな

対象は対照のような…

いやすまん

>>133>>134
ほんとに申し訳ないんだがVIPで暇潰し気分で書いてたからスレタイ全く思い出せないんだ
歪んだ鏡に映る自分を見たら自分も歪んでいるように見えちゃってそれが本当の自分だと思い込んで性格がガラッと変わるとか
デブでブスなデリヘル嬢の幽霊に男が逆レイプされて童貞喪失するとか、書いた内容は覚えてるんだけどスレタイが思い出せない
唯一覚えてるのが 貧乳妹「巨乳とか年取ったら垂れ乳だしwwwwww」巨乳姉「うん」 っていうここでちょろっと出てきた姉と妹のレズss
男はほとんど出てこないし銀髪は全く出ない、マジで申し訳ない
少し前にこれとは全然関係無い勇者物のss書いたけどそれでもよければスレタイ晒すわ

>>135
ありがとう全然気付かなかった
言ってくれて助かったわ

男「ニートのくせに!?」

ニート「うぐっ……それは世を忍ぶ仮の姿だよ」

銀髪「いやこいつは正真正銘のニートだ」

ニート「ひどいっ!」

銀髪「事実だろ」

ニート「まあそうだけど」

男「……」

超アナル全力爽快舐め野郎「んー! んー! んー! んー!」ジタバタジタバタ!

ニート「それにしても凄いねえ、二つの怪異を同一軸に重ね合わせるだなんて」

男「……? どう? ドイツ?」

銀髪「偶然が重なってこうなっただけだ。別に凄くも何ともねえだろ」

ニート「こりゃあ良いサンプルになるなぁ……楽しみだ」ニヤァ……

超アナル全力爽快舐め野郎「ッ!? んーーーーー!!!」ガクガクブルブル

銀髪「私からの要求はこの『ペナンガラン』に地獄の苦しみを永遠に与え続けることと……」

男(それ完全に私怨じゃねえか……)

銀髪「影の世界に行っちまった超アナル全力爽快舐め野郎くん本人をこっちの世界に戻して欲しい。それが私の要求だ」

ニート「うんうん。オッケーオッケー! この状態にまでしてくれれば後はボクの方でなんとか出来るよ」

銀髪「本当か?」

ニート「こちとら銀髪ちゃんから大金貰って雇われてるんだ。明日のこの時間くらいにはこの場所に『本物』が現れるはずだよ」

銀髪「相変わらず仕事の早い無職だな」

ニート「なんてったって銀髪ちゃんの依頼だからね」

男「なんだそりゃ、マジかよ。あんたホントに俺んちの近所に住んでるニートか?」

ニート「そうだよー」

銀髪「わかった。明日のこの時間、この場所だな」

ニート「光の無い所に影は出来ないからね。ボクの方で現在『陽』の存在であるコイツらをいじくっちゃえば、自然と『影』がこちらに流れてくる」

銀髪「なるほどな」

男「……ってことは、また新しい『影』がその、影の世界って所に生まれるっつうワケか?」

ニート「そういうことになるね、光があれば影は生まれるんだから。影の世界はあくまでもこっちの世界ありきってこと」

超アナル全力爽快舐め野郎「んー! んー! んー! んー!」ジタバタジタバタ!

男「じゃ、じゃあこいつらは……?」

ニート「その頃には『ペナンガラン』や『ドッペルゲンガー』という概念の無いぐちゃぐちゃドロドロの何かになってるだろうね」

男「うっわー……」

銀髪「さーて、んじゃあ私たちは超アナル全力爽快舐め野郎くんの親父さんに報告して帰るとしますか」

男「……今回は、これで終わりなのか?」

銀髪「おう! 明日になるまでは完全に一件落着とは言えないが、一先ず一段落ついたよ」

男「……そっかー、あーあ疲れた!」

銀髪「ご苦労さん」

ニート「ちょいちょい、ねえねえ男君」

男「あ、はいはい。なに?」

ニート「ボクがこういうことしてるの、妹ちゃんには言わないでね」

男「……どうすっかなー」

ニート「お願いします! この通り!」

男「じゃあ妹にもうセクハラしないって誓ったら言わないでおいてやるわ」

ニート「……。じゃあバラしちゃってもいいや」

男「セクハラの方取るのかよ!」

ニート「当たり前だろ! 妹ちゃんにセクハラ出来なかったら生きてる意味なんて無いもん!」

銀髪「……」

ニート「とまあ冗談はさておいて。わかったよ、セクハラは週一で我慢する」

男「一生我慢してくれ」

ニート「じゃあボクはこの同一軸融合体の回収と、ここのニンニク臭いビニールプールの後片付けをするから」

銀髪「おう頼んだぜー」

男「良いのか? ニート一人に片付けさせて」

銀髪「それを含めたあいつへの依頼料だからな」

男「そ、そうなのか」

銀髪「んじゃさっさと帰るぞ」

男「わっかりましたー」

ニート「あ、ごめんごめん銀髪ちゃんちょっとちょっとー!」

銀髪「……? 先に屋敷に向かっててくれ、すぐ追い付くから」

男「はいはい」すたすたすた

男(……それにしてもニートが銀髪と知り合いだなんて驚いたなー)すたすたすた

ニート氏のビジュアルが河合荘のシロさんで固定されてしまった。

ニート「……よくもまあ、男君は君に付いて来てくれるよね」

銀髪「私も何度か、嫌気がさしたら見限ってくれて良いとは言ったんだけどな」

ニート「でも男君は今も君の助手をしている」

銀髪「こんだけ私の好き勝手引っ張り回してんのに、『別に俺嫌気さしてねえし』って言うんだぜ? 馬鹿だろあいつ」

ニート「でも君はそんな男君に安心してるんでしょ?」

銀髪「……」

ニート「良いコンビだと思うよ、ボクはね」

銀髪「なんかさ」

ニート「?」

銀髪「なんか、あいつと一緒に居るときらきらするんだよ。私の世界が輝いて見えるんだ」

ニート「君にしちゃあ随分と可愛い表現じゃんか。あ、もしかして笑い所だった?」

銀髪「比喩でもポエムでもロマンチック気取るわけでもねえよ……本当にきらきらしてるんだ」

ニート「……良いことじゃないか」

銀髪「暗い世界にずっといた私にとっちゃ、あんなに眩しい光はどこを探しても見つからねえわ」

ニート「……」

結局、この一連の事件、本人が居ないはずの所でその人物を目撃するという騒動は、

東南アジアの吸血妖怪『ペナンガラン』という内臓をぶら下げた首による怪異の仕業だとわかった。

銀髪と俺の奔走の末、どうにかこうにか『ドッペルゲンガー』の特性を利用し、

『ドッペルゲンガー』に『ペナンガラン』憑きの身体をなすり付ける、というトリッキーな作戦によって解決した、らしい。

知り合いのニート曰く、次の日になれば超アナル全力爽快舐め野郎は元の場所に戻っているとのことなので、まあ一応一件落着なのか。

どうなるかはその時になってみないとわからんが、取り敢えずはそのことを超アナル全力爽快舐め野郎の親父さんに報告した。

超アナル全力爽快舐め野郎の親父さんは一先ず安心してくれたようで、約束通り依頼料の100万円を渡そうとしていたのだが、

本人の無事を確認するまでは受け取れない、と銀髪自身が断っていた。

変な所で律儀な奴である。

そして俺は、昨日今日といろいろあり過ぎて疲れた体を引きずりながら我が家へと帰宅した。

ちなみに今日用意した大量のニンニクやロープ代は依頼料から引くらしい。

…夜…―男の家―

男「ただいまー」

男「……? 誰もいないのか?」

男「……いや、誰かいるな」

……ギシギシ……アンアン。

男「? 姉ちゃんの部屋から聞こえるけど」

……ギシギシ……アンアン。

男「なんだこの卑猥な音と声は……」

男「……」

……ギシギシ……アンアン。

男「……」

男「いやマジでなんだこの卑猥な音と声は!?」

妹『勝てるわけねえよこんなエロお姉ちゃんになんてさああああああああああ!!!』

姉『い、い、いきなりどうしたの!? なにをそんなに大声で勝手に負け宣言してるのかな!?』

妹『こんなおっぱいデカイ上に感度最高で感じ方もめちゃくちゃエロいとか勝てるわけねえだろクソがああああああああああああ!!!』

姉『なにそれ!? なにそれえ!?』

妹『なんだよこれなんだよこれ! 貧乳で可愛げもないガサツでずぼらな私じゃ実のお姉ちゃんにいつになっても勝てねえじゃねえかよおおおおお!!!』

姉『……いや妹ちゃんは可愛いでしょ、お姉ちゃんが言うのもなんだけど』

妹『……』

姉『……妹ちゃん?』おろおろ

妹『……ぐすんっ、ひっぐ、うえええん』

姉『な、なんで泣いてるの!?』

妹『私だって……お姉ちゃんみたいにもっといい女になりたかったよぉ……』グスンッ

姉『……妹ちゃぁん』ウルウルウル

妹『……ひっぐ、えっぐ』

姉『カントリーマアム食べる?』ウルウルウル

妹『……うん』もぐもぐもぐ

男「……部屋の中で何やってんだ俺の姉妹は」

―姉の部屋―

妹「……おいしい」

姉「でしょ!」

妹「……私、もっとお姉ちゃんみたいに優しい女の子になってみる」

男「その必要は無い」ガチャッ!

妹「ッ!? お兄ちゃん!?」

姉「男!?」

男「妹よ……お前は今のままで十分魅力的だよ」

妹「で、でも私おっぱい小さいし……こんな感じだし……」

男「それが良いんだろうが!」

妹「ふえっ!」

男「妹は貧乳であるべきだ! 巨乳妹なんていう脂っこい野菜炒めのようなもの愛せるかボケ!」

妹「? ? ? !?」

男「だから自信を持て妹よ……お前は誰よりも可愛いくて魅力的だ。それはもちろん、貧乳も含めて……な」ニコッ

妹「……お兄ちゃん/// 大好きっ!」姉「ミルキーのいちご大福味おいしー」もぐもぐもぐ

―男の部屋―

ガチャッ。

男「……はあ、それにしても何だったんだあいつら」

男「っつうか……すげえ、物凄く……」

男「疲れたあああああああ!」ドサッ!

男「今日一日、ずっと大量のニンニク運んで体中バキバキに凝っちまった……」

男「誰かマッサージしてく……れるワケねえか」

???「その願い、私が聞き受けよう!」

男「……おーマジか、じゃあよろしハアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」

幼馴染「ん? どうしたそんなに驚いて?」

男「どうしたもこうしたもなんでお前がここにいるんだよ!?」

幼馴染「おばさんに聞いたら『今男いないから良かったら部屋で休んでてー』と言われたんだ!」

男「母ちゃん……」

幼馴染「そんなことより見ろ! 今日来たのは他でもない! メイド淫私特製男用スペシャルオナホを持ってきたんだ!」

男「……」

幼馴染「男の性器の型を取って私の膣の形と組み合わせ試行錯誤を繰り返し、より男が快感を得られるようにと作成したんだ!」

男「……」

幼馴染「どうだ凄いだろう! これ以上男に合ったオナホはこの世に無いぞ!」

男「お前がどうやって個人でそこまでクオリティの高いオナホを作れたかには突っ込まねえよ」

幼馴染「突っ込むだなんて……卑猥だな///」

男「どうやって俺のちんこの型を取ったんだよ!?」

幼馴染「? そんなの、早朝にここへ来て寝ている男の朝立ち性器から型を取ったに決まっているだろ?」

男「ここまでどこから突っ込めば良いのかわからんセリフ初めてだよ」

幼馴染「どの穴も男の為に初めてはとってあるぞ!」

男「うるせえ!」

幼馴染「さあさあ、男! 疲れているんだろ!? まあゆっくり、リラックスするんだ!」

男「おい、ちょっと待て、幼馴染待て、待つんだ!」

幼馴染「私が気持ち良くさせてやる!」

男「ちょ、まっ、あ、いやああああああああああああああああああああああああああ!!!」

…そして数日後…―街中―

男「いやー、しっかしお前が無事に戻って来れて本当良かった!」

超アナル全力爽快舐め野郎「『ドッペルゲンガー』と目が合った後、気が付いたら誰もいない公園に寝てたんだが……」

超アナル全力爽快舐め野郎「まさか丸一日経ってたとはな……ビックリだ」

男「俺と銀髪が駆け付けた時にはまだ気絶してたけどなー」

超アナル全力爽快舐め野郎「……いや、マジでビックリしたよ。目が覚めたら体がすげえ軽くなってんだもん」

男「もうその後は眠っても何も起こらないんだよな?」

超アナル全力爽快舐め野郎「お陰様であれ以来全く悪夢を見る事もなくなった」

男「お陰様、ねえ。確かにお陰様のお陰様だな。そっかそっか……良かった良かった」

超アナル全力爽快舐め野郎「俺が寝てる横でメイドさんが一晩中見守ってくれてたが、首が抜けることなんて一度も無いってさ」

男「……そっか。……ってハア!? メイドさんって、あの可愛いメイドさん!? あのメイドさんの横で寝てるの!?」

超アナル全力爽快舐め野郎「可愛いメイドなら屋敷にはたくさんいるけど、それは多分お前が言ってるメイドさんで合ってると思うぜ」

男「あれだろ!? あの美味しいケーキ作る小柄で巨乳なメイドさん!?」

超アナル全力爽快舐め野郎「そうそう」

男「くっそがぁ! 別に金持ちに対して嫉妬とかなかったけど初めてお坊ちゃまうぜえと思ったわちくしょう!」

超アナル全力爽快舐め野郎「だから……今日はここに来たんだろ?」ニヤニヤ

男「まあそうだけどさ……」

―街中・にあるメイド喫茶―

ワイワイガヤガヤ。ワイワイガヤガヤ。

メイドちゃん「ご主人様とぉ~、いっぱい楽しい時間過ごしたいですぅ~♪」

ご主人様「フヒヒッ、んぼっ、僕もメイドちゃんと楽しい時間過ごしたいお!」ハアハアハア

男「賑わってんなー」

超アナル全力爽快舐め野郎「ここらで一番人気の喫茶店だからな……」

男「メイド喫茶なんて初めて来たわ。メイド服可愛いなぁ~」

超アナル全力爽快舐め野郎「ぶっちゃけただのコスプレだけどな……お、早速お出迎えだぞ」

銀髪【メイド服】「おかえりなさいませご主人さま゛っ!? ……えっ?」

男「……」

銀髪【メイド服】「……」

黒髪清楚系糞ビッチ【メイド服】「あー! 男くんじゃん! 遊びに来てくれたんだぁ!」

超アナル全力爽快舐め野郎「……うっわー、何これすっげえ面白えー」ニヤニヤ

黒髪清楚系糞ビッチ【メイド服】「見て見てぇ! 銀髪ちゃんすっごく可愛いでしょ!? 最近入ったツンデレ系新人メイドで超人気者なんだよ!」

男・銀髪【メイド服】「なんでお前がここにいるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

http://www.youtube.com/watch?v=YZPJH1uWzuQ

ひとまずおしまい

さあーて!wwwwwww次回の駄文gdgdssはぁー!?wwwwwwwwwwwwwww

突然謎の銀髪の女の子にギターケースだけを持って行かれたリア充軽音楽部男子生徒です。

あの後、二日後にちゃんと銀髪の子本人からギターケースを返して貰えました。

ケースだけを何に使っていたのか気になりましたが、なんか聞くのが恐かったので無駄な詮索はしないことにしました。

あの銀髪の女の子はとても可愛い顔をしていましたが目つきが悪いのかなんなのか、どうにも近寄り難い雰囲気があります。

可愛いといえば僕の所属する部活にもたくさん可愛い女の子がいます。

個性溢れる軽音楽部の女の子たちがいろんな騒動を起こすので毎日てんやわんやです。

今度はどんな事件が僕を待ち受けているのやら……。

さて、次回は。

銀髪「男、仕事だ!」

男「依頼人は?」

銀髪「国だ!」


ニート「ボクはね、この世の全てのニートが頂点に立つ世界を創りたいんだよ」

国家転覆計るは、男の近所に住むニート。

相対するは鬼畜守銭奴銀髪乙女、尻に敷かれる甲斐性男。

天神妖魔、悪鬼羅刹、畜生外道揃いも揃って乱痴気騒ぎ。日本列島北の先から南の端まで埋め尽くす。

さあ宴の準備は整った。島国総出、血みどろ祭りの幕開けか。

銀髪「あいつ……何を……し、式神!?」

ニートは式神を呼び、その式神が更なる式神を呼び、呼び出された式神がこれまた更なる式神を呼び出す。

式神と式神と式神と式神と式神と式神と式神と式神と式神と式神と式神と式神、

十二柱の式神はその身を織り合わせ見るも鮮やかな羽衣へと姿を変えてゆく。

ニート「これがボクの研究の成果、禁術・多重霊装『式神十二単』だよ」

式神衣装に身を包み、時代錯誤の貴族を演じる近所のニート。その背中には『全身全霊』の文字。

男「な、なんだあれ……背中に『全身全霊之事』って書いてあるぞ」

銀髪「あんだそりゃ!? 私の大好きな神漫画のパクリかあ゛ぁん!?」

十二柱の式神を身に纏い、巨大な霊力を我が物にするニート。

ニート「君たちは西洋の人造儀式、『ゴーレム』を知ってるかい?」

海内無双、霊力の大塊となったニートはその力で巨大な土人形を創り出す、がしかし。

ニート「日本が誇る大妖怪『がしゃどくろ』を骨格とし、99999体の『泥田坊』を肉とし……」

ニート「霊脈渦巻くこの国で創った『ゴーレム』が……一体何になるかわかるかい?」

現れ出でるは異形の風体、顕現されし神代の巨人。

銀髪「……マジかよ、あいつ、まさか、『ダイダラボッチ』を創るつもりか!?」

日本の大骨妖怪『がしゃどくろ』、日本の大地が化身『泥田坊』、異国の儀式で創り上げる土人形『ゴーレム』。

三つの怪異が同一軸に合わさる時、『ダイダラボッチ』が目を覚ます。

ニート「あはははは! これぞまさしく引き篭もりでニートのボクに相応しい!」

男「ボッチだからか」

巨大極まる神代の巨人、富士に腰掛け琵琶湖に浸かる。

地響き鳴らし竜巻起こし、一歩歩けば大地が沈む。

可愛いあの子も屋敷の坊ちゃまも、巻き込まれれば仲良く一緒にズタ袋。

果たしてニートの国盗り一揆、二人は無事に鎮めることが出来るのか。

銀髪乙女と甲斐性男の運命やいかに。

ニート「男君、君の隣りに居るその子……銀髪ちゃんがどんな子供時代を過ごしてきたか知ってるかい?」

そして明かされる、銀髪乙女の暗い過去。

それは世にも恐ろしいこの世での地獄の体現だった。

ニート「この世に生を受けた瞬間からね、真っ暗な地下牢にずーっと閉じ込められていたんだ」

人の手により人を鬼へと変える、残酷極まる『鬼作り』。

ニート「そこで何をしていたと思う? 産声を上げることも無く、目を開けることも無く、母親に抱かれることも無く……生まれてすぐに何をしていたと思う?」

男「……」

ニート「間引きだよ。銀髪ちゃんは生まれてすぐに、暗闇の地下牢で他の望まれずに生まれた赤子たちを殺し続けていたんだ」

男「……そん、な」

ニート「それだけじゃないよ。銀髪ちゃんは母親の母乳の味を覚えることも無く、ずっと血肉を啜って生きてきたんだ」

銀髪「……」

男「……おいおい、それってまさか」

ニート「殺した赤子の肉を食らって生きてきたんだよ」

銀髪「生まれたばっかのガキでも、人を殺すことの胸糞悪さはわかるみてえだな。少なくとも私に最初に芽生えた感情は『不快』、だったよ」

銀髪の真実を知った時、一体男はどうするのか。

次回、妹「ねえお兄ちゃん」男「なんか用か?」妹「セックスしよ」です。

どこで書くかはわからない。書くかどうかもわからない。

もし機会があったら暇があったら次回もまた見て下さい。じゃんけんぽん!!!!!!!! うふふふふふふ!!!!!!!

ここまで読んでくれた人ありがとう駄文に付き合わせて申し訳ない
いろいろと残念なのはスルーしてくれ、>>1で書いた漫画ステマするのが目的でそれ以外は蛇足みたいなもんだから
最後にこれだけ言わせて
久正人の漫画クッソ面白い

おやすみなさい


銀髪ちゃんのメイド服姿ってなんだよおい
超気になるだろおい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月08日 (月) 16:25:41   ID: hBdxovZ7

悪くない

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