女「それでも、だよ」 (142)


「あいつ、売りやってるらしいな」

「頼めばヤラしてくれたりして」

「金なきゃ無理なんじゃね?」

「顔も身体も最高なビッチか。へへっ、たまんねーな」


女「……」スタスタ


これは、私を気に入らない人達が流した噂。

私は人付き合いが苦手だ。うわべだけの関係なんて嫌だ。

器用だとか不器用だとか。

多分、そういうんじゃなくて、私はそういう風に出来てない。



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きっと疲れてしまう。

少なくとも、このクラスの女子みたいには出来ない。

さっきまで一緒に笑ってたのに、離れれば平気で悪口を言う。

悪口を言い合って盛り上がってる人も、その人が居なくなれば別の人と別の居場所で悪口を言う。


何を考えてるのか、何が本当なのかが分からない。

だったらいい。一人でいい。無理に付き合うこともない。

私は私だし、周りは周り。それぞれが好きにしてるんだから。


そう思っていたら、これだ。


『見た目が良いからって調子に乗んな』とか、先輩には『生意気』だとか色々言われた。

それからだ。

あんな根も葉もない噂が流れ始めたのは……


でも、みんなはその噂を信じた。

私を見る目は、あの男子達のような好奇の目。

女子は軽蔑の目で、私を見る。


私はそれが嫌で、あの目が怖くて、ここに逃げて来たんだと思う。

そこで、出逢った。


女「放課後に校舎裏の花壇に水やりする奴なんて、初めて見た」

男「あ、えーっと……」

女「あんた、同じクラスにいる奴の名前も分からないの?」


男「分かるけど何で?」

女「何でって、なに?」

男「女さんが何でこんな所に来るのかな、と思って」


女「意外?」

男「え、まあ、うん」


女「私の噂、知ってるんだ」

男「知ってるけど、そんな風には見えないね。なんか、寂しそうだし」

女「……」

男「水やり終わったし、帰るよ」スタスタ


女「待って。あんたは辛くないの?寂しくないの?」

男「……」ピタッ

女「あんた、いつも一人だし。色々、言われてるし」

男「寂しくも辛くもないよ。ただ、退屈なだけ」


女「退屈?」


男「うん。キモい、根暗、ぼっちだとか、ただ『それだけ』」

男「あんなのは、ただの言葉。誰かを見下したいだけなんだ」

男「きっと僕じゃなくてもいいんだ。誰かを見下して、安心したいんだよ」


女「……ねえ」

男「何?」

女「放課後、いつもここに来るの?」

男「うん。先生に頼まれたから」

女「そっか…」


男「もう帰るよ。女さん、さよなら」スタスタ

女「あっ…うん」


【女の自宅】


女「ただの言葉、か」


男は、他の誰とも違って見えた。

同じクラスで、何度も見た顔なのに、何かが違って見えた。

話したことのない人に話し掛けられて困ってるような、そんな目。


それが当たり前の反応なんだろうけど、私には嬉しかった。

あんな風に会話したのは、あの噂が流れてから初めてだと思う。

みんなは私を知ってる。私が何をしているのかを知ってる。


見ず知らずの男に身体を売って、お金を貰う私を知っている。

勿論、そんなことはしてない。

それは噂で作られた私。

だけど、みんなはそれを信じて、それが私だと思っている。

私のことなんて、何一つ知らないのに。


女「はぁ…」


若干目つき悪いし、性格もきつめに見られてるのも知ってる。

でも、そんなに気は強くない。寧ろ打たれ弱い。

何人かに囲まれて滅茶苦茶言われた時は、怖くて何も言い返せなかった。


睨んでると思ったらしくて退散したから良かったけど、悔しかった。

悔しいのに、何も出来ない。それが情けなくて、もっと悔しくなる。


『ただ、それだけ。ただ、退屈なだけ』






女「男は、悔しくないのかな……」






翌日 放課後


女「あ、いた。っていうか、草むしりもやるんだ」

男「あの、何しに来たの?」

女「あ、えっと……手伝いに来た」


男「手伝いって、ゴム手袋もないのに?」

女「それは大丈夫。私、ミミズも虫も平気だし」ニコッ

男「……」

女「ん、どうかした?」


男「見た目と違うんだなと思って、ちょっと面白かった」

女「え、微笑んですらないけど」

男「あははー、マジウケる。とか無理」

女「真顔でその台詞言う奴初めて見たよ。怖いわ」


男「素手で草むしりする女子も初めて見た。爪に土入ったり、嫌じゃないの?」

女「爪、伸ばしてないからね。ベキッって曲がる方が嫌だから」

男「……何で手伝いに来たの?」


女「邪魔だった?」


男「本当に手伝ってくれてるし、邪魔じゃないけど、何で急に」

女「根も葉もない噂立てられて、色々言われて、だけど何も言えなくて」

男「……」

女「それが、凄く悔しい」


女「昨日、あんたと話して思ったんだ。あんたは、悔しくないのかなって」

男「……」

女「ごめん。いきなり押し掛けて来て迷惑だと思うし、嫌な質問だと思う」

女「でも、どうしても聞きたくて」

男「どうして僕なの?」


女「それは…」


男「僕がからかわれたり、馬鹿にされたりしてるから?」

女「っ…それは」

男「自分と同じだと思った?」

女「違っ…わないよね。ごめん」


男「……中学の頃、僕は義父に虐待されてた」

男「腕にタバコ押し付けられたり、殴られたり蹴られたり」


女「……えっ?」


男「我慢したよ。怖くて怖くて仕方が無かったから。何度も殺されると思った」

男「いつか終わると思った。誰かが、助けてくれると思った」

女「……」



男「でもね、誰も助けてくれなかったよ」

女「!!」

男「そんな日々が数ヶ月続いた。長かったよ。数年に感じるくらいに…」

男「ある日、あいつは妹にまで手を出そうとした。その時、初めて人を殴った」


男「そしたら、あいつは呆気なく倒れたよ。でも僕は殴るのを止めなかった」

男「仕返し出来て嬉しかったのかもしれないし、興奮してたのかもしれない」

男「妹が止めてくれなかったら、本当に殺していたかもしれない」


女「……」

男「それからすぐ、母親はまた離婚したよ」


男「挙げ句、僕等を親戚に預けてどこかに行った」

男「引き取ってくれたのは、実父の両親だった。今は幸せだよ」

女「………」

男「どう?」


女「ど、どうって、いきなりそんな話し聞いたら

男「自分よりも不幸な人間の話しを聞いて、楽になった?」

女「ッ!!」


バチンッ…


女「……帰る」

男「そっか、さよなら」

女「さよなら」スタスタ


男「分かってたけど、やっぱり痛いな」ポツリ


女「……」ピタッ

男「?」

女「男っ!!」クルッ

男「あ、はい。何?」

女「また明日。んじゃ」スタスタ


男「えっ?」

ここまで。多分短い。

おつ


【女の自宅】

女「……最低だ」


きっと私は、男と自分を重ねてたんだ。

話したい理由。

それは、どこか似通っている部分があると感じたからだ。

もしかしたら、単なる好奇心から自分勝手に近付いたのかも。

ただ言えるのは、そんな理由で男に近付いた挙げ句、逃げたってこと。


『どう?自分より不幸な人間の話しを聞いて楽になった?』


女「きっついなぁ…」


私は男の話しを聞いた時、『可哀想』だと思った。

自分のことなんて全部忘れて、男が語った不幸に聞き入っていた。

頭の中には


『こんなに酷く悲しい話しがあるのか』『今はもう平気なんだろうか』『本当のお父さんは?』『妹さんは元気?』


こんな言葉ばかりが浮かんでた。

視線や陰口、纏わりつく噂。

男の語った不幸は、そんなものから私を解放してくれた。


本当に最低だ。


私は自分のことなんて忘れて、男を憐れんでいた。


あの時の私は被害者を見るような、ニュースで事件を見ている時のような。

そんな『目』をしていたに違いない。


『楽になった?』


私はきっと、その言葉を否定したくて叩いたんじゃない。

男の言う通りだった。

心を見透かされた気がして、それをごまかす為に、叩いたんだ。


頭の冷え今だから分かる。


私は暴力に逃げて、あの場所から、男の言葉から、逃げたんだ。


女「謝ろう」


許してくれなくても、なんて。また自分勝手なことを思ってる。

やっぱり、人って難しい。

自分のしたいこと。やりたいこと。

でもそれが、相手にとってはして欲しくないことがある。


謝ったって、私が男にしたことは変わらない。

だけど、私がやったことだから、私が謝らなきゃ駄目なんだ。

言葉を変えても、結局は、私がそうしたいだけ。


女「何やってんだろ、私……」


結局、私は慰めて欲しかったのかな。

それとも、男なら私が望む言葉を言ってくれると思ってたのかな。

気にしないで、大丈夫、僕はそんな風には見てないよ、とか?

馬鹿だ。そんな都合の良い話し、あるわけないのに。


『誰も、助けてくれなかったよ』


ああそうか、私は『誰かに』助けて欲しかったのか。

だけど、そんな優しくて強い、都合良く現れて助けてくれる『誰か』はいない。


例え私に友人がいたとしても、これは『私が』何とかしなきゃならない。


嫌なら、辛いなら。


『ただの言葉だよ』


私は、男みたいに、あんな風には到底考えられない。

ビッチだのヤリマンだの、金出すからやらせろだの……

お構いなしに好き勝手言ってくれるよ。思い出したら何だか腹が立ってきた。


一人でいい、なんて強がっておきながら。

結局は周りを気にして、視線を怖がってたら話しにならない。

今更『誰かに』嫌われたって、私には何もない。離れゆく友人も、恋人もいない。


何もしないまま終わりたくない。噂が消えるまで我慢するなんて、私には出来ない。

あんな風に言われるのは嫌だ。

もう知るか、そっちがそうなら、私だって好き勝手やってやる。


あんな悔しい思いをするのは、もう沢山だ。

ここまで。夜書く。

あと、ちょっと長くなる予感がしてきた。

舞ってる


翌日 放課後

男「あんなこと言ったんだ。来るわけない」

シーン…

そう言えば、そうだった。

本当は、元々は『こう』だったんだ。

薄暗くて気味悪くて、人が寄りつきそうにない、僕にお似合いの場所。


たった二日間。


それもちょっと話しただけなのに、随分と賑やかに感じた。

たった一人増えただけで、あんなにも変わるものだったんだ。


まるで、全く別の場所にいるような感じがする。

たった二日。

しかも、ちゃんと話したのは一日。そのはずなのに、やけに残ってる。


草むしりを手伝うと言った時の笑顔が、懐かしい。

真っ直ぐに目を見て話す彼女が、昨日は此処に、隣りにいたのか。


『人と話す時は目を見て話しなさい。でないと、何も伝わらない』


お父さんに怒られた時、よく言われたな。目を見て、伝える。

僕は、彼女の目から逃げたのかもしれない。


逃げ出したいから、あんなことを言ってしまったのかもしれない。

彼女の真っ直ぐな瞳が、僕には辛くて、怖かったんだ。


きっと、彼女は強い人なんだろう。


あんな風に噂されても屈せずに、学校に来るだけでも十分強い。

佇まい、あの瞳が、噂が噂でしかないと証明している。

大体、彼女にこんな場所は似合わない。あれで、良かったんだ。


もう帰ろう。もう少しだけ待とう。

何度も何度も、頭の中で繰り返される言葉。でも、もういい。


男「……帰ろう」


これでいい。

明日からは、今まで通り。何も変わらない退屈な毎日。

家族のことだけを考えればいい。大切にすべきなのは、この場所じゃない。


妹が、お爺ちゃんとお婆ちゃんが待ってる。僕の居場所は、あの家だ。

明るい家族。

それだけで、僕は幸せだ。他には何もいらない。


こんな退屈な毎日も、あいつと過ごした数ヶ月に比べれば大したことはない。


『辛くないの?寂しくないの?』


そんなことはない。耐えるまでもない。

周りで起こる色々、意味を持たない言葉、それを眺める毎日。


僕は、そうあるべきだ。






女「ごめん。遅れた」





また後で。今日中には終わる、はず。


男「えっ、あの、髪が凄いことになってるけど」

女「あんたと話したら、何か吹っ切れちゃって」

男「僕?」


女「そう、あんた。あんたと話してから、色々考えた」

女「結果。やられっぱなしも、甘えるのも駄目と思ったんだ」ニコッ

男「……それで?」


女「話し合いじゃあ収まりが付かなくて、ちょっと長引いた」

男「よく見たら顔とか腕にひっかき傷あるけど、喧嘩したの?」


女「あんな風に言われて、私は我慢なんて出来ない」

女「ただの言葉なんて風には思えない」

女「もう、何も出来ないまま悔しいのは、嫌だから」


男「その傷、相手は大人数だっだんだ」

女「えっ、うん」

女「五、六人かな。掛かってきたのは二、三人だけど」ウン

男「っ、全員で袋叩きにされたかもしれない」


女「え?」


男「ひっかき傷どころじゃない。大怪我したら、どうするつもりだったんだ!!」

女「!?」ビクッ

男「保健室に行こう。ちゃんと消毒しな


女「男」


男「何?」

女「昨日は本当にごめんなさい」

男「!!」


女「実はね、自分のことを終わらせてから謝ろうと思ってたんだ」


女「ずっと、待っててくれたんだね」

男「……待ってたよ」フイッ

女「……ありがと」


男「それより傷、痛まないの?」

女「あちこち痛いけど、何とか勝ったよ」ニコッ

男「はぁ、もういいよ。取り敢えず保健室に行こう」


女「あっ、ちょっと待って」

男「まだ何かあるの?」


女「違う違う。あ、あったあった」

男「なにを、うわ…ちょっと止め


ジョキンジョキン…パラパラ…


女「よし、行こう」スタスタ

男「あの、大丈夫?変な薬でも

女「至って正常。私は素直に生きることにした」ウン

男「……」


女「どうしたの?行こう?」スタスタ

男「園芸用の鋏で髪切る女の人なんて初めて見た」

女「私も初めて切った」

男「だろうね」


女「でも、気分は良いかな」ニコッ

男「(僕は、こんな風にはなれない。こんな風に笑えない)」


男「(彼女は、僕なんかと一緒にいちゃ駄目だ)」

また後で。


【ーーー】


男「何も欲しがっちゃ駄目だ。もう、十分に得た」


いつものように、あの時のように、何度も自分に言い聞かせても、ざわついたままだ。

これ以上は、望んじゃいけない。この平穏な生活こそが、僕の求めたもの。

なのに、頭から離れない。


あの笑顔が、声が、強い瞳が、焼き付いてる。

それを想う自分が、気持ち悪い。


彼女は、綺麗だ。

見た目も、きっと心も綺麗なんだろう。

だから、あんな風に堂々と歩ける。だから、あんな風に笑えるんだろう。


こんな気持ちは、知りたくなかった。

やっぱり、待つべきじゃなかったんだ。

すぐに帰っていれば、こんな思いをする必要もなかった。


男「僕は、もう何もいらない」


此処に来たばかりの頃、物音がするだけで、電話が鳴るだけで、僕は怯えていた。

妹は、泣いていた。

あの頃と同じように、小さな体を震わせて、泣いていたんだ。


困惑するお爺ちゃんとお婆ちゃんに理由を話すと、二人は優しく僕等を抱き締めてくれた。

それから、夜になると電話線を抜いてくれるようになった。


二人は何も言わずに、僕等の為に何かをしてくれる。

僕等は、守られている。今は守ってくれる人がいる。

家って、家族ってこんなにも幸せで、安心出来る場所だったのかと思う。


お父さんが死んでから滅茶苦茶になったけど、今は幸せだ。

妹も、笑うようになった。学校も楽しいみたいだ。


でも僕は抜け出せない。


妹だって、まだ完全に抜け出せたわけじゃない。

多分、一生消えない。


相変わらず夜が怖い、暗闇が怖い。


夜になると、思い出す。

きっと妹もそうだろう。今でも泣きながら布団に入って来る時がある。


忘れられないんだ。


あいつの怒鳴り声。

痛み、熱、狂った笑い声、見下す瞳、妹の涙。

目を閉じれば、あの時に戻ってしまいそうな気がする。


それから抜け出す方法。一時だけでも忘れられる方法を、僕は知ってる。

体に残った火傷の跡も、耳に残る笑い声も消す方法。


「ようやく見つけた。男ってのは、お前だな」

「……そうだけど、何の用?」


「病院にいるあいつの代わりに、俺がお前をやる」

「あいつって誰だか分からないけど、勝手だね」

「大体、みんな自分から仕掛けてくるのに」


「黙れ。ぶっ殺してやる」


それを消すのは、あいつが僕にしたことに他ならない。

それは『誰かを』傷付けること。早い話しが、暴力を振るうことだった。

今日中は無理かもしれない。


【女の自宅】

女「 変だ 」


おかしい、何かが引っ掛かる。

こういうのが胸騒ぎってやつなのかな。部屋にいるのに、落ち着かない。

自分のことも一段落付いたはずなのに、何でだろ。


本当は話し合いで解決したかったし、やりたいこととは違ったけど、何とかなった。

顔とか腕とかピリピリするけど、心はすっきりしてる。

なのに、妙にそわそわする。


男、保健室に入ってから急に口数減ったし、顔も暗かったな。


そういえば、怒鳴った声聞いたのも初めてだ。

話すようになってまだ二日。

知らないことがあって当たり前だけど、怒鳴った時の男は何か変だった。

目つきが違ってた。

なんかこう、睨むのとはちょっと違う感じ。


あんな顔、見たことない。正直、めちゃくちゃ怖かった。

学校でも睨み付けたりする人いるけど、ああいうのとは違う。

威嚇とかじゃなくて、本当に何かをするような、そんな危ない感じが……


いやまさか、男がそんなことするようには見えない。

ないない。


こう言っちゃ悪いけど、何かされても、何かする側じゃない。

あくまで見た目だけを判断しての話しだけど、そう見える。


背はそこそこ高いけど体は細いし、顔は大人しそうだし、優しそうだし。

それに、今日校舎裏で私を見た時の男は、少し微笑んだような気がした。


でもその後すぐに、あの目。暗いのに、ぎらぎらして見えた。


女「それを知りたいと思うのは、何でだろ」


まあいいや。また明日の放課後に話せばいいんだ。

謝ったけど、まだお礼を言ってない。

保健室に入ってから妙な雰囲気だったし、言い辛かった。


昨日の夜、あの女子達と話そうと決めた。真正面から行こうと決めた。

言いたいこと全部言って、後でどうにかなっても絶対に逃げないって決めた。


決めたのは私だけど、きっかけは男の言葉に違いない。

ぐさっと来たけど、あれがなかったら、私は動けなかっただろう。

だから、ありがとうって伝えたい。


女「早く、男に会いたいな」


あ、髪は一応整えておこう。このままじゃ流石にマズい。

その場の気分で何かをするのは、これきりにしよう。


お母さんにはちゃんと伝えたし、お父さんには上手く言ってくれるはずだ。

お母さん、泣いてたな。私も泣いたけど、心配かけちゃったな。

これからは気を付けよう。

休憩。また後で。

やはり、今日中に終わるのは無理そう。ちまちま書いてく。

おう待ってる


五日後 校舎裏


女「……男、学校休んで何してるんだろ。って言うか、何で私が水やりしてるんだろ」


あれから五日が経った。あの日の放課後から五日が経った。

男は、あれから学校を休んでる。

理由無く休むようには思えないし、風邪とかかもしれない。


教師は触れなかった。

男なんていないみたいに、時間が流れる。

本当に、教室にぽっかり穴が空いたような感じがした。

一番仲の良い友達が休んだ時の気持ちに似てる。


友達いないけど。


家庭の事情とかだったら悪いし、教師にも何だか聞き辛いんだよね。

そしたら、あっと言う間に五日が経った。そのうち来るだろうと思ってた。

でも、男は来なかった。


女「心配させんな。私には怒鳴ったくせに」


男がいないと暇で退屈で、急に学校がつまらくなった。

つまらくなったってことは、楽しかったってことだ。


男と校舎裏で出逢ってからは、学校が楽しかった。

学校っていうより、この場所に来るのが楽しみだったのかもしれない。


暗くてじめっとしてるけど、ちょっと落ち着く。

そんな、不思議な場所。


男は私がここに来るずっと前から、ここにいたんだよね。


どんな気持ちだったんだろう。

何を考えてこの場所に立っていたんだろう。

今は、どこにいるんだろう。


もしかして、違う居場所があるのかな。

男にとって居心地の良い場所が、どこかにあるのかな。

もしそうなら、ちょっと寂しい。


それから、こんなことを考える度に、決まって胸騒ぎがする。

背筋ぞわぞわして、鳥肌が立つ。


女「駄目だ、やっぱり気になる。担任に聞いてみよう。何か、嫌な感じがする」


私は職員室に走った。

迷っている所為か、やけに脚が重いけど、とにかく走った。


盛大に転けて、笑われて、また走る。

そんな私を指差して、また笑う。

だけど、もう誰の視線も怖くない。笑いたきゃ好きなだけ笑え。

好きでもない友達と、好きなだけ笑えばいい。


女「はぁっ、はぁっ」


こんな風になれたのは、男と出逢って、ぐさっとされたからだ。

ありがとうって言いたい。

また、あの場所で話したい。


何かあったのなら力になりたい。私は、男に救われた。

救ったなんて思ってないだろうけど、私はそう思ってる。


あの時、保健室で別れてから話してない。

今想えば、何かを決めたのかも。

何を決めたのかは分からない。でも、そんな気がしないでもない。

何を決めたって別にいいけどさ、せめて学校には来てよ。


女「はぁ、はぁっ…」


たった一日二日話した相手に、何でそこまでしようとするのか。

知るか、私にも分からない。


もしかしたら、単純に、男を好きなのかもしれない。

単なる好奇心で、男を知りたいだけなのかもしれない。

そんなのどうでもいい。どうせ、どっちも似たようなものだ。


心配、暇、退屈、怖い、知りたい、知りたくない。

行こう、やっぱり止めよう、きっと迷惑だ、嫌われる。

走りながら色々な言葉が浮かんできたけれど、本当の答えは出てる。



私は、男に会いたい。


もう少し書いたら、寝る。

待ってる
この文章すごい好き

まってる


【男の自宅前】


女「どうしよう。勢いに任せて来てしまった」


担任は、表情一つ変えずに男の住所を私に教えた。

目上の人間に言う台詞じゃないけど、正直気に食わなかった。

担任ならもう少し何かあるはずだ。心配じゃないのか。


あんな無気力な、まるで何も感じないような目。何だか気味が悪かった。

本当に生きてるのか疑いたくなるくらいだ。

大人になると、ああなっちゃうかな。

何か、嫌だな。


それはともかく、担任への怒りも手伝って、私は何も考えずに男の自宅へ来た。


その場の気分で何かするのは止めようと決めたばかりなのに。

だけど、ここまで来たんだ。

今更逃げるわけには行かない。

会いたくて来た。心配だから来た。理由なんて、そんなものだ。


女「……行こう」


呼び鈴を鳴らす手が震える。

どうやら、緊張とかではなく、怖じ気付いてるみたいだ。

何とか呼び鈴を押すと、可愛らしい女の子が。どうやら男の妹さんみたいだ。


妹「お兄ちゃんの友達ですか?」


女「……」

妹「えっと、あの」

女「あっ、ごめんね。私は同じクラスの女です」


女「友達なのか何なのかよく分からないけど、男が心配で会いに来ました」

妹「お兄ちゃんのこと、知ってるんですか?」

女「え?」


妹「あ、ごめんなさい。どうぞ、入って下さい」

女「う、うん。おじゃまします」


女「あの、男は大丈夫なの?」

妹「……お兄ちゃんは、部屋で寝てます」

女「こんな時間に?随分早いね」


妹「女さんは、お兄ちゃんに聞いたんですか?」

女「義理のお父さんの話しなら聞いたよ。どうしたのかも、聞いた」


妹「そっか。お兄ちゃん、自分から話したんだ」ポツリ

女「ねえ、男は何をしてるの?もう、五日も学校休んでる」


妹「お兄ちゃんは、多分、病気なんです」


女「病気って、そんな風には見えないけどな」

妹「風邪とか、そういうのじゃなくて、心が痛いやつです」

女「それは、あの…」


妹「あの人の所為で、お兄ちゃんは違う人になりました」


女「(あの人って、やっぱり義父のことだよね。それに、違う人って)」

妹「お兄ちゃんは毎日殴られたりして、私が殴ら…そうにな…た

女「無理しないで。それに、男はあなたを守ろうとしたんだよね?」


妹「大丈夫、です」


女「でも、顔色が

妹「違うんです。お兄ちゃんは、その後も、あの人を」

女「……その、後?」

妹「夜になると、今度はお兄ちゃんが、あの人を殴るようになったんです」


女「!?」


妹「何度も謝らせて、何度も殴りました。自分がやられたように、何度も」

女「で、でも離婚したんじゃ。今は幸せだって、そう言ってたよ?」


妹「お兄ちゃんは、夜遅くになるとお家を抜け出すんです」

妹「来たばかりの頃は、殆ど毎日抜け出してました」


妹「それで、いつも痣だらけで帰って来るの……」


女「そ、それって、わざわざ喧嘩しに行ってるってこと?」

妹「……」コクン

女「何で、そんな危ないことを」


妹「それをしないと、声が消えないって。そう言ってました」


女「声?」

妹「あの人の、声。お兄ちゃんを傷付ける、合図…」

女「(……酷い。体が震えてる。まだ怖いんだ。まだ、終わってないんだ)」


女「嫌な話しさせちゃって、ごめん。私、何も知らなかった」


妹「あっ、あの」ズイッ

女「うわっ、な、何かな?」

妹「えっと、女さんはお兄ちゃんが好きなの?お兄ちゃんが大事なの?」


女「うん、好きだよ。だから、男のことを知りたいんだと思う」


妹「……なんか、お父さんみたい」ポケー

女「えっ?」

妹「あっ、ごめんなさい」

女「お父さんは、その…」


妹「事故で、いなくなっちゃいました」

女「……そっか」


妹「すっごく強くて優しいお父さんなんだ」

妹「お兄ちゃんも私も、お父さん大好き」ニコッ

女「(凄く嬉しそう。今でも好きなんだろなぁ)」


妹「お姉ちゃん、あのね?」

女「お姉ちゃん?あ、私か。なに?」


妹「お兄ちゃんがお姉ちゃんに話したのは、お父さんに似てるからだと思うんだ」ニコッ

女「私、女なんだけど。喜んでいいのかな、それ」


妹「男の人みたいってことじゃないよ?雰囲気とか、うーん。色々、色々似てるの」


女「良かった。ほっとしたよ」

妹「へへっ、お姉ちゃんが来てくれて本当に良かった」

女「(何だか分からないけど、警戒解いてくれたみたい。随分とご機嫌だなぁ)」


女「(どう見てもまだ小学生。こっちの方が本当なんだろうけど、しっかりした子だ)」

妹「ねえねえ」クイクイ

女「どうしたの?」

妹「お兄ちゃんに、会いたい?」


女「そりゃあもう。その為に来たんだから」


妹「じゃあ、一緒に行こう?」ギュッ

女「うん、行こう」ギュッ

妹「お兄ちゃん、ずっと『夜』だったんだ……」

妹「最近、また抜け出し始めたの」


女「(なるほど、だから学校に来れなかったのか。五日間も、ずっと……)」


妹「お爺ちゃんお婆ちゃんも、心配してる」

妹「それで、お婆ちゃんが具合悪くなっちゃったんだ……」

女「(だから居なかったのか。男、そんなに酷いのか)」


妹「でもね?お兄ちゃんだって本当は心配かけたくないんだよ?」

妹「きっと痛くて泣いてる」

女「(……私に何が出来るのかは分からない。でも、会えば分かるはずだ)」



女「(私が会いたくて来たんだ。今度は何があっても、逃げない)」

遅くなってごめん。多分、多分そろそろ終わる。寝る。

おやすみ
続きをまってる


妹さんと手を握って、階段の前に立った時、突然足が動かなくなった。

膝が震える。

あの目を見たら、私は竦んでしまうだろう。


怖い、やっぱり駄目だ。行きたくない。

私がどうにか出来るような問題じゃない。


家族の問題。兄妹の痛み。私が入り込んじゃいけない場所。

これ以上、首を突っ込むのは止した方がいい。

例え好意があっても、何かをしたくても、男の心に踏み込んでいいのだろうか。


ほんの少しの間に、これだけの言葉が、全身に広がった。


今の私を立ち止まらせるには、十分すぎる言葉。

もっともな言葉だ。

きっと、それは正しい。


もし今、お爺さんお婆さんがいたなら、そっとして欲しいと言うだろう。

とても繊細で脆い、触れる場所を、触れる力を少しでも間違えれば、どうなる。

幸せを、男を、私が壊してしまうんじゃないだろうか。


一体、男に何があったんだろう。


妹さんには、最近までは落ち着いていたと聞いた。

なのに何故再び夜に走ったのか、暴力に身を委ねるのかが、分からない。


学校に来なくなって、五日。

あの日から、男は夜を居場所にした。消えない声を、掻き消す為に。


五日前に何かがあったのかな。そう言えば、怒鳴ったのもあの日だ。

あのぎらついた目を見たのも、あの日。私が、何かをしてしまったのかな。

触れてはならない場所に、触れてしまったのだろうか。


じっとして動かないままで階段の上を見つめる私を、妹さんは心配してた。

とっても不安そうな顔で、私に何か言ってる。


だけど、音が無い。何も聞こえない。

心臓がうるさくて、それだけが頭に響いてる。


やっぱり、私には無理なのかな。


我慢できなくなって階段から目を逸らした時、風が吹いた。

茶の間の対面。

廊下を挟んだ向こう側、階段のすぐ側にある和室からだった。

襖が開いている。どうやら向こうの窓から風が入ってきたみたいだ。


何の気なしに覗いみた。

その時、ちらりと見えた。


それは綺麗に手入れされた仏壇だった。男のお父さんがいる、仏壇。


私は妹さんに頼んで、線香を上げさせてもらうことしにした。

後押し、きっかけ。

上手く行くようにと、お願いしたかったのかも。


妹さんは、ちょっと困ったような、不思議そうな顔で私を見たけれど、喜んでくれた。

二人一緒に、線香を上げた。

遺影以外にも、写真が何枚かある。

豪快で晴れ晴れとした笑顔。二人をぎゅっと抱きしめて、笑ってる。


どの写真でも笑顔だ。男も妹さんも、笑ってる。


しばらく見入っていると、妹さん色々教えてくれた。

お父さんは、大工さん。

お弟子さんからも慕われてて、素直で真面目な人。

二十五歳で家を建てたとか、早くから親方になったとか、お酒が弱いとか、色々。


きっと尊敬していたんだろうと、大好きだったんだろうと思う。


でも、作業中の事故で亡くなってしまった。

それから、お母さんがおかしくなってしまったらしい。


支えがなくなって自暴自棄になったのか、そういう人だったのか、理由は分からない。

ただ、それから壊れていったのは確かだろう。


線香の香りは苦手だけど、今だけは、この香りが何だか落ち着く。

もう一度手を合わせて目を閉じると、風が吹いた。

応援してくれてるのかな、とか。

勝手にそんな風に思いながら。しばらく目を閉じた。


不思議だ。


さっきまでは怖くてたまらなかったのに、今は怖くない。

心の中で何度もお礼を言って、私は再び階段の前に立った。

妹さんと手を握って、一段一段、ゆっくりと進む。


さっきまで根が張ったみたいに動かなかった脚が、今なら動く。後は進むだけだ。

うだうだ考えて、悩んで、とても長かったけれど、やっと此処まで来れた。


人に会う。


それは、こんなにも勇気がいるものだったんだ。

人とは言っても、『好きな人』なわけだ。私にとっての、特別な人。

それなら、さっきみたいな事になっても仕方無い、のかな。


第一こんなの初めてだし、どうなるかなんて分かるわけないよ。

男の事情抜きにして、一人で此処まで、このドアの前まで来れたかどうか…


多分、いや絶対に無理だろう。


ちゃんと妹さんにお礼言わないとな。

こんな小さい子に勇気を貰った。沢山、助けてもらった。

さあ、行こう。腹は括った。


このドアの向こうに、男がいる。

寝てるか起きてるか分からないけど、上手く話せるかも分からないけど……


もしかしたら、二度と会えないかもしれない。それで、呆気なく終わっちゃうんだ。

突き放されて、終わるだけかもしれない。きっとそうだ。傷付くだけだ。

うん、有り得ない話しじゃない。そんなの、簡単に想像出来る。


そうだね。『もしかしたら』そうなるかもね。

確かにそうなる『かもしれない』よ。だけどさ、それでもいいと思ってる。


やれるだけ、やってみる。

また後で。思ってたより長くなってきた。読んでる人、ありがとう。

ちょっとくどいな。展開進むの遅くてすまん。

遅くてもいいよ
こういうのは好きだ

これはいいSSを見つけた

ゆっくり>>1のペースで進めていいよ。
楽しみにしてる。


これは夢だ。

こんな事が起きるわけがない。

こんな場所に、彼女がいるわけがない。


僕は君を忘れたかったのに、何故夢にまで現れるんだ。

さっさと消えてくれ。

その瞳で、僕を見ないでくれ。


もう何もいらない、何も欲しくなんかない、どうせ叶わない。

優しい家族がいる。

ご飯だって毎日食べられる。僕はそれだけで満足なんだ。


何かを望めば痛みを伴う。

そんな日々から、ようやく解放されたんだ。


大体、君は綺麗すぎる。

あの場所にいる誰よりも、君の存在は輝いてる。

眩しいんだよ、君は……


だから妬まれるんだ。

きっとそれは、憧れからくる嫉妬。

君が戦った女子も、噂を流したであろう人間も、きっとそうなんだ。


例え何もしなくても、君はそうなんだ。

だから、みんなが君を見る。


側にいる人間が霞んでしまうくらいの、強い光みたいなものを放ってる。

髪型を真似しても何を真似しても、誰も君のようにはなれない。


だからこそ気に入らない。君の存在が許せないんだろう。

どうやっても届かないんだ。だから妬む。


例え君が、どんなに気さくな人間でも、君の隣には誰も立てはしない。

同性なら尚更だ。必ず比較されるだろうから。

それに、あそこにいる人間は、誰もが自分を見て欲しいと思ってる。


みんな『特別』になりたいと思っている。誰もがそうさ。


だから馬鹿をやって気を惹こうするんだ。

だから誰かを見下して、誰かを笑って、自分は特別だと思いたいんだ。


それなのに、君は最初から特別なんだ。嫉妬もするさ。

誰もがなりたいものに、既になっているんだから。

だからもう少し、自分を大事にしなよ。


もう、喧嘩なんてしちゃ駄目だ。

傷が残ったら、どうする。

あれ、違う。言いたいのは、こんなことじゃない。

あぁ、そうだ。


君は、僕なんかといるべきじゃない。

僕は、君とは歩けない。

だから、もう消えてくれ。僕の中から、出て行ってくれ。


君と歩きたいなんて、君と一緒にいたいなんて……

そんな馬鹿げた願いが形を為す前に、僕の前から消えてくれ。


もうじき夜だ。

夜が来たら、行かないと。

君の声も君の笑顔も、あいつの声と同じように、消してやる。


あいつが僕にしたみたいに、分からせてやる。

どんなに謝っても終わらないって、どんなに願っても叶わないって、思い知らせてやる。


こんな馬鹿な願いを持った僕に、思い知らせてやるんだ。


「辛くないの」

辛くない。

これが僕なんだ。僕は、こうあるべきなんだ。


何で泣くの?

君なら何でも手に入れられる。好きなように生きられる。

それにあの時、素直に生きるって、そう言って笑ったじゃないか。


「待ってる」


もう止めてくれ。もう沢山だ。

こんなこと、あるわけない。

君が僕を待ってるなんて、あるわけがない。

君が、僕を望むような言葉を、言うわけがないんだ。


「……あの場所で、待ってるから」


突然、彼女がゆっくりと体を傾けた。

僕の体は思うように動かない。

彼女が、僕の馬鹿げた願いが、僕を見つめたまま、少しずつ近付いて来る。

僕は何とか目を逸らそうとしたけれど、彼女の瞳がそうさせない。


一瞬。ほんの一瞬だけ重なって、彼女は離れた。

僕は呆然として、何が起きたのか分からないまま、彼女を見る。


すると彼女は涙を流しながら笑って、優しく手を握った。

僕はその手を払うことも、握り返すことも出来ない。

何故だか分からないけど、強張っていた体から、力が抜けていく。


もう夜が来るのに、あいつの声は聞こえない。

彼女は長い間、僕のベッドに腰掛けて、僕の手を握っていた。



こんな夢を見ているうちに、僕はその夢の中で眠りについた。

また後で。あと少しだと思う。多分。

偶然良いものを見付けた


【女の自宅】


先に電話してて良かった。

結構遠いから、帰るのが随分遅くなっちゃったよ。

事情を話したら、お母さんも分かってくれた。勿論、全部話したわけじゃない。


それにしても、色んなことが起きた一日だったな。


帰る時、妹さんに私の番号教えた。何かあった時の為だ。

妹さんは携帯電話持ってないから、自宅の番号を教えてくれた。


何だか、凄く疲れた。

こんなに沢山走ったのは、中学校のマラソン大会以来だ。


男は熱でうなされてて、半分起きてて半分寝てるような感じだった。

上半身裸で寝てるから焦ったけど、それより衝撃的なものを見た。


顔やお腹にある幾つもの痣と火傷の跡。

擦り傷、切り傷まであった。

あんな傷、今まで一度も見たことない。


一体どれだけ殴られて、どれだけ殴ったんだろう。

手って言うか、拳が腫れてた。殴るのも痛いんだろうな。

しかも、いきなり『消えてくれ』なんて言われた時は、声出して泣くとこだった。


だから、妹さんに断って二人にしてもらった。泣くとこなんて、見られたくなかったから。

妹さんは何も言わなかったけど、了承してくれた。


本当に察しが良い子だと思う。

そこら辺は、とても小学生だとは思えない。

それから二人になって、男と話した。

ちゃんと話したって言えるのかは、分からないけど。


男って、私のことをあんな風に思ってたんだ。かなり意外だ。

私は、男が言うような綺麗な人間じゃない。私だって嫉妬とかするし。


あれは、男が作った私だ。

私も男のこと知らないけど、男だって私のこと知らない。

取り敢えず、男の中の私は置いとこう。


どんな風に想われてるのかは分かったし、素直に嬉しかった。

だけど、あんなに傷付いてるとは思わなかった。


虐待。

男の内側と外側にある傷跡。

言葉は勿論知っているけど、分かるかと言われたら、分からない。

理解した気でいた自分が、恥ずかしい。


男は言った。

望んだって叶わない、痛い思いをするだけだって。

優しい家族、毎日ご飯を食べられるだけで満足だって。


暴力を振るわれて、挙げ句、満足にご飯も食べれない日々。


そんな日々が、数ヶ月続いた。それが二人の体験したこと。

今でも忘れられない痛み、体に刻まれた傷跡、消したい記憶。


それを消す為に夜を歩いて、殴り合って、傷付いて……

ずっとあんなことを続けてたら冗談じゃなく、死んでしまう。


あの傷がもう少し深かったら?

それを考えるだけで、気が遠のく。

死ぬなんて嫌だ。もう止めて欲しい。

もう、あんな姿は見たくない。


それは妹さんも、お爺さんもお婆さんも、同じはずだ。

ちなみに、さっき電話が来た。

取り敢えず今日は大丈夫そうだと、妹さんは言っていた。


良く眠ってるらしく、顔付きも、いつものお兄ちゃんに戻ったらしい。

本当に良かった。

だけど、もしこの電話がもう一度鳴ったなら、それは悪い報せ。


出来れば鳴らないで欲しい。


それと帰り際、ちょうど病院から帰ってきたお爺さんお婆さんと話した。

挨拶と事情説明は、妹さんも手伝ってくれたお陰で助かった。

このお家に来たばかりの男の話しを聞いてる最中。


よく今まで警察沙汰にならなかったなと思って、恐る恐る聞いてみた。

そしたら妹さんが『そういう人』しか相手にしないんだって、と。

そういう人って何だろ、かなり怖い。深くは聞かなかった。


勿論、それを聞いて安心したわけじゃない。

刃物まで持ち出すなんて、喧嘩なんて言えるものじゃない。

そんなの、やらないのが一番良いんだ。


後、出過ぎた怒られるかと思ったら、何度もお礼を言われた。

お煎餅とか貰ったり、男とはどんな関係だとか聞かれたり。

妹さんも一緒に、四人で色んなお話しをした。

ちょっとくすぐったかったけど、とても楽しい時間だった。


女「……学校、来てくれるかな」


そう、問題はそこだ。

私の声が届いていたのか分からない。会話も成立してるか怪しかった。

聞こえてはいただろうけど、どうだろう。やっぱり不安だな。

最後の方は、私もボロボロ泣いちゃってたし。


何せよ、今の私に出来るのは待つことだけだ。言うべきことは、言えた。

だけど私には、まだ伝えてないことがある。

お礼と、私の気持ち。

伝える前に行動に移しちゃったけど、ちゃんと伝えたい。



あの場所で、男に伝えたい。


休憩。書けたらまた後で。

出過ぎた真似して怒られる、だった。誤字脱字すまん。

とりあえずおつです

続き楽しみ


あれから一週間が経つ。

僕は、まだ動けずにいる。

あの夢を見た翌日、妹から全て聞いた。


彼女がこの家に来たこと。

僕に会いに来たこと、この部屋に入ったこと。

あれは、夢じゃなかった。


妹は、随分と彼女を気に入っているようだった。

理由は、何となく分かる。


「僕は、どうする」


彼女は、確かに此処にいた。

このベッドに腰掛けて、僕の手を握っていたんだ。

まだ手が熱い。唇にも熱が残ってる。


僕の為、僕に会う為。

それを聞いた時、喜びよりも戸惑いの方が勝っていた。


戸惑いと言うより、怖れているのかもしれない。

もう何も欲しがらない、そう決めていた。あの時から今まで、ずっと。


それを破った時、何かが起こりそうな気がして、怖いんだ。

そのはずなのに、僕の心はこんなにも落ち着いていて、安らいでいる。


夜の震えは収まり、あいつの声は、聞こえなくなった。


人を殴って、降伏させて……

そうやってどうにか消していた声が、今は聞こえない。

相変わらず夜は怖いけれど、どうにか耐えられる。


何かが、変わってしまった。

たった一人、赤の他人。繋がりなんてない。

一度や二度会話しただけの存在なのに、何でこんなに大きく感じるんだろう。


僕が大切にすべきなのは、家族のはずだ。今でもそのはずだ。

なのに何で、こんなに辛いんだ。


僕は彼女に会いたいのか。彼女への想いを断ち切りたいのか。

彼女のことが好きなのか。

それとも、変わってしまうことが怖いのか。


答えは出ているのに、動けない。

分かってるさ、本当は会いたい。

僕は、彼女が好きなんだ。


知っている。もう、知ってしまった。

あの笑顔、優しさ、温もり……

僕に向けられた何もかもが、僕の中に溢れている。


でも、こんな僕が彼女と歩くことは許されるのだろうか。

僕は人を傷付けて自分を満たすような、あいつと何も変わらない、醜い人間だ。


そんな屑みたいな奴が、何かを得ようとするなんて、許されるはずがない。


「それでも、僕は」

何だ?

それでも、何だ。


卑屈になって、目を逸らして、痛みだけを頼って生きて行くのか。

いつまでもいつまでも、あいつのことを呪って『誰か』を傷付けるのか。


お父さんのように、なりたいんじゃなかったのか。

強くて優しい人に、憧れていたんじゃないのか。


だからこそ、彼女に惹かれたんじゃないのか?





『あの場所で、待ってるから』





「でも、僕は…」


『真っ直ぐに、人の目を見て話せる人間になれ』

『ははっ、大丈夫だ。間違わない奴なんて、失敗しない奴なんていないんだ』


もう、放課後。

本当に、僕を待っているんだろうか。

今も彼女は、あの場所にいるんだろうか。


それが知りたいのなら、行けばいい。


今からでも間に合うのかな。

こんな僕でも、まだ間に合うのかな。


考える暇があるなら動け。

ぐだぐだ考えるな。やりたいことを、やればいいんだ。


「……行こう。あの場所で、彼女が待ってる」



「はぁっ、はぁっ」

「全く、遅いよ」

「はぁっ、はぁっ…遅れて、ごめん」


「ねえ」

「な、なに?」

「ありがとう。あんたのお陰で、私は変われた」


「そんなこと

「それに、私はあんたが思うような綺麗な人間じゃない」

「!!」


「勝手に決め付けないで。って、私が言えた台詞じゃないけど……」


「あの、僕もありがとう。君に会えて嬉しい」

「う、うん。何だか、少し変わったね」

「これでも、精一杯」


「ははっ、そうなんだ。あのね……」

「うん」


「私は、あなたが好きだよ」


「でも僕は、人を傷付けて

「それは知ってる」


「でも今は関係ない」

「誰が悪いとか何が間違いだとか、私には言えないよ」


「また繰り返すかもしれない。僕は、それが怖い」

「しないよ」

「えっ?」


「だって、此処に来れたでしょ?」

「そんなの分からないよ。それでも僕は、繰り返すかもしれない」


「それでも、だよ」

「えっ?」


「私は、それでもあなたが好きだし、あなたを信じる」


「何で、そんなことが言えるの?」

「分かんない。目、逸らさないからかな?」


「そんな理由で

「男は強いよ。自分が思ってるより、ずっと強い」


「……っ、女さん!!」

「な、なにっ?」

「僕は…いや、違うな」

「?」






「僕も、君が好きだ」






終わり

乙!
いい読後感だ

見てくれてありがとう。

最後、手抜きに見えるかもしれないけど、手抜きじゃないよ。
考えた結果、これがいいかなと思った。

気に入らなかったら、すまん。

悪くない

前に書いたやつ。
男「童貞です」
古の力と四人の戦士

よければ暇な時にでも。

あと、レスありがとう。やっぱり嬉しい。

気に入った


すごい良かった

一気に読んだ
とても面白かったです



良かった!

感想ありがとう。あと、イケメン「童貞です」だった。
まとめのコメント欄って怖いと思った。

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女医さんの奴か

ーー「そうだ、オレの名は…」未完
吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」
青年「ああ、認めるよ……」
青年「俺の帰る場所」
少年「それが、僕の名前……」
少女『優しい世界』未完
鬼姫「早く来ないかしら」
勇者「共に歩み、共に生きる」
イケメン「童貞です」
男「男には色々あんだよ」

今まで書いたやつの一覧。多分これで全部。


たった一人の男が世界を変えた。

友人や仲間、部下、配下等、男を支援援助する者は誰一人としていなかった。


一切の助力なく、世界を我が物とした男。全てを思いのままに出来た男。

彼を知る者は、世界が彼を選んだと言う。或いは、彼を中心に世界が廻っているのだと。


しかしそんな絶対的、超人的な人物であっても終わりは訪れる。


彼を好いている人間はいない。彼を愛する人間もいない。

彼はそういう人物ではない。そういった対象にある人物ではないのだ。


憧れとも違う。

崇拝する者は少なからずいたようだが、彼はそれを良しとしなかった。

預かり知らぬ所で名を使われるのが気に入らないと、そう言った。


……らしい。


そんな彼は、誰もが一度は思い描く、夢や妄想を具現化したような存在だった。


しかし、彼は死んだ。


誰に知られることもなく、誰に送られることもなく、世界から消えた。

善悪関係なく、絶大な力への責任なども一切なく、ただただ、生きたいように生きた。

思いのままの人生を送り、生涯を終えたのだ。

彼の死を世界が知ったのは、数年が経ってからのこと。


皆は言った。


彼を殺せる者などいるはずがない、彼の命を奪える者などいるはずがない。

彼を奪える者など、この世界に存在するはずがない。

もし、もしそんな存在がいると言うのなら……






それはきっと、神以外に有り得ないだろうと





次はこんなのが書きたいと妄想してる。
地の文とかト書きとか未だに良く分からんが、書きたいように書こうと思いました。ssだし。
感想とか色々ありがとうございました。

(SSL)って付いた。この前までは末尾も違ってたんだが、ころころ変わるものなのか。


ーー「そうだ、オレの名は…」未完
吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」
青年「ああ、認めるよ……」
青年「俺の帰る場所」
少年「それが、僕の名前……」
少女『優しい世界』未完

鬼姫「早く来ないかしら」
勇者「共に歩み、共に生きる」
古の力と四人の戦士
古の力と四人の戦士 話伽/01未完
イケメン「童貞です」
男「男には色々あんだよ」

おつでした
次も期待してます

次は完結させてくれ、待ってるから

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月07日 (日) 20:48:50   ID: l3vCb7Ti

二重人格ネタ飽きたなぁ。

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