纏流子「…え、凪田ってホントに居たの?」(128)


真っ白だ。
吹雪いている…のか?
寒いはずなのに、あまり感じない。ただ、眠い。

……ここは、どこだったっけ。

「―――――!」

流子(今、なんか聞こえた気がした…)

「―――――――ん!!」

流子(・・・落ち着け、マコ。まだ朝の五時だぞ――

凪田「――纏くんんんんんん!!!!」


流子「…う?」

凪田「纏君!しっかりするんだ纏君!」バチィインッ!

流子「あだっ!?」

凪田「しっかりしろォオオオ!!!」ビビビビビッ

流子「あだだだだっ!……っ痛ぇって、この、・・・ビンタを止めろっ!」

凪田「よかった!気が付いたか!!」

流子「…ったく」

流子「…皐月ぃ、あと五分……」ムニャ

凪田「やっぱダメじゃないか纏くんんん!」

流子「…ああ、鮮血……お前生きてたのか…」

凪田「しっかりしてください!!!」


流子「…鮮血、疲れたろう…?…なんだかとっても眠いんだ…」

凪田「寝ちゃダメだ!寝ないでください!!寝るなァー!!!」

流子「……んあ?…ってお前…針目縫っ!?――って、」ガクンッ

凪田「無理しないでくれ!ちなみに僕はッ、本能字学園元新聞部、『凪田信二郎』だ!」

流子「……ん?」ボーッ


凪田「…知らないのは当たり前だ…!僕は、君が転校してきた直後からずっと、無期限の登校禁止処分だった!」

凪田「…しかも、ようやく登校できるようになったと思ったら、学校が全く違うものに変わっていた…!極制服が無くなり、部活も普通になっていた!何が何だか訳が分からない!!」

凪田「でも、そんな中で、きっと君だけは変わらないでいてくれるだろうと…ってそんなことはどうでもいい!!…だから、君が僕のことを知らないのは当然なんだ纏君!」

流子「……」ウトウト

凪田「つまり、一言でいえば…僕は君のファンだ纏君んん!!!」

流子「…すー」

凪田「ってうおおお起きろ纏君んんん!!」ユサユサッ!


―山小屋(避難小屋)―

・・・あれ?
何だろ…なんか、この、服を脱がされているような感覚は…

流子「……ん」パチッ

凪田「…おおっ!纏君気が付いたか!」

流子「…っ!」///

凪田「?」

流子「―――なっにしてくれてんだこの変態やろー!!!」

 どこーんっ

凪田「げふぅッ!?」

流子「……この『関東無宿の流子』もとい『鬼龍院皐月の妹』もとい『服であり人である』纏流子様に手を出そうなんざぁふてェ野郎じゃねぇかぁ…ああん?」


凪田「お、落ち着け!落ち着くんだッ!別に僕は君に乱暴を働こうとしたわけではないッ!」

凪田「――ただ、素肌と素肌で温めあおうと思っただけであって他意は無いんだッ!!」

流子「十分じゃねーかこの変態!んな真っ暗なとこに連れ込みやがって!」

凪田「仕方がないだろう!この避難小屋には電気は通ってないんだ明かりは点かないッ!」

流子「……そうなのか?…た、ただ、温めあうのはごめんだっ!」

凪田「しかし纏君!このままでは、二人とも凍死してしまうんじゃないだろうかッ!?」

流子「…ん?……そういや寒っ!!」ブルッ

凪田「ぼ、僕だって好きでこんなことをしようとしている訳ではないッ!これは不可抗力だっ!やむを得ないんだ!」

流子「……というか、お前誰だ?」

凪田「本能寺学園新聞部部員、凪田信二郎だッ!」

流子「…嘘つけ。針目縫だろ」ハサミ ジャキンッ


凪田「ま、ままま待ってくれ!落ち着くんだッ!」

流子「………」前髪すっ

凪田「……っ?」

流子「…眼帯が無い」

凪田「なんのことだ…ッ!?」

流子「……」ほっぺ ギューッ

凪田「いだだだ何するんですかっ!?」

流子「…変装、じゃないのか…?」

凪田「さっきから何の話をしているんだ君はッ!?」

流子「……凪田」

凪田「そうだ!」

流子「…信二郎…」

凪田「そうだ!!」

流子「…実在、したのか…!?」

凪田「今ッ、君の目の前にッ!」


流子「…くそ、針目の奴…!勝手に、関係ない奴の見た目をパクってやがったのか…!」

凪田「…ところで纏君!」

流子「なんだ?…凪田」

凪田「……僕達は早急に温まる方法を探さなければならないと思うのだが…!!」

流子「…た、確かに…」ブルッ

凪田「温めあおう纏君!!」

流子「…断る」

凪田「……わかったそれなら仕方ないッ!気合で乗り切ろう纏君ッ!」ゴォオオオ

流子「すげぇ、キャラの暑苦しさで気温が上がった気がする…!」


凪田「…だめだ!疲れたッ!」シュゥ・・・

流子「ありがと、ちょっと助かった…。…なぁ、ところでさ」

凪田「なんだ?」

流子「…私は、なんだってこんなとこに居るんだ?」

凪田「覚えていないのか」

流子「さっぱり」

凪田「…どこから説明すれば…。『スキー研修』が開催されたことは覚えているか?」

流子「ああ…あの、『雪中行軍』改めって奴か。皐月曰く、『戦いも終わったし、羽を伸ばせ』と」

凪田「そうだ!そのスキーの最中、君が行方不明になった…」

流子「えっ」


凪田「風紀部と情報部が中心となり、捜索隊が組織された。その際、志願者が多すぎて抽選になり、僕は捜索隊に入れなかった…!」

流子「…え、じゃぁなんでお前はここに居るんだよ」

凪田「勝手に探しに出た!」

流子「だめだろ…」

凪田「居ても立ってもいられなかった…!僕は、君のおかげで人生を取り戻したんだ!遭難覚悟で吹雪に分け入り、そして君を見つけた…!」

流子「…あ、ありがとう」

凪田「どういたしまして!…しかし、一つ問題がある…」

流子「問題?」

凪田「僕は捜索隊じゃないから連絡機器を持っていない!しかも帰り道もわからなくなった!!」

流子「ちょっと待てお前、それって」

凪田「つまり、二人とも遭難だ!!!」


流子「…どーすんだよ!このままじゃ食うもんも…あ、あった」

凪田「…それは…チョコレート?」

流子「マコにもらってたんだ。忘れてた…。食べる?」

凪田「…いや、それは纏君が満艦飾くんから貰ったもの…僕が頂くわけには」

ぐぅ~…

凪田「……」

流子「ふふっ。…やせ我慢してんじゃねェよ。ほら、半分こだ」パキッ

凪田「…すまない」

流子「…うん、おいしい。マコに感謝だなぁこれは」もぐもぐ

凪田「……」


流子「……」ブルッ

凪田「…さ、寒いな纏君…」

流子「…ああ……」

凪田「……」ブルブル

流子「………」ずいっ

凪田「…纏君?」

流子「…いや、素肌とまではいかなくても…近くに居た方が温かいんじゃないかと思ってだな…」

凪田「…そうだな!多分君の言うとおりだ!」ずいっ!

流子「……っ!近すぎ…」

凪田「確かに暖かい気がするぞ纏君!」

流子「……///」

流子(…なんか、急に動悸が……)ドキドキ


凪田「……ところで纏君」

流子「――なっ、なんだ!?」

凪田「神衣は、着ていないのか?」

流子「……」

凪田「…纏君?」

流子「…ほんとに、何にも知らないんだな、お前は…」

凪田「?」

流子「……私は、もう、神衣は着ないよ」

凪田「――なぜだ!?纏君っ!!」

流子「必要ないからさ。私の、――私たちの戦いは、もう終わったんだ」

凪田「……終わった?」


流子「ああ。私はもう普通の高校せ」

凪田「み……」

流子「ん?」

凪田「――見損なったぞ纏君んんんッ!!!」ドンッ!!

流子「おわっ!?」

凪田「君は…ッ、戦うことを止めてしまったというのか纏君ッ!!」

流子「え、いや、止めたんじゃなくって、終わったんだって」

凪田「――君までッ、君まで!鬼龍院皐月の軍門に下ってしまったというのか纏君!!!」

流子「いや、だからだな」

凪田「あの、輝いていた君はどこにいってしまったんだァアアー!!!」

流子「いや、だからだな」


凪田「…わかった、君がもう戦いを望まないというのならそれでいい…だが!!覚えておいてくれ…。君のおかげで、戦う勇気を持つことができた人が、ここに一人居たと!!!うおおおおおおおお!!!」新聞バラバラバラッ!!

流子「いや、だから」

凪田「僕はッ、屈しない!屈しないぞォ!良いのか諸君!鬼龍院の暴政をこのままにしていていいのかァアア!!!」

流子「……」イラッ

凪田「おかしいと思わないのかァ!こんなシステムに疑問を持つことも許されずにただ組み込まれ続けているそれでいいのk」

流子「…うるっせぇ!!!」ばこんっ!

凪田「―――ぐっはぁあああ!!!」ばたんっ


凪田「なぜ殴るんだ纏君!」

流子「だぁから、皐月は私の姉さんだったんだって言っただろうが!」

凪田「それは鬼龍院の横暴を許す理由にはならないぞ纏君!」

流子「あ、確かに…」

凪田「君はッ、こんなシステムを容認するというのかッ!?」

流子「でもなぁ…。これまでも理由があってのことだし…。戦いが終わったからって、すぐに変えられる訳でもないだろうし…」

凪田「本当にそうかッ!?それでいいのかッ!?もう一度よく考えてみるんだッ!!」

流子「うーん…、あー、でも、・・・階級を無くして、それでも秩序を保つっつーのは、さすがに……」

流子「…あ、皐月ならできるな」

凪田「そうだ…そして!君もだ!!」

流子「は?私?」


凪田「…今まで誰一人として、鬼龍院皐月に逆らおうとする者は居なかった…。そんな中で!君はッ!貧血を起こしながらも、たった一人で部長を薙ぎ倒し、鬼龍院皐月に立ち向かった!!!」

流子「…お前、そうとう昔に停学処分くらってたんだな……」

凪田「変えよう纏君!この学園を!」

流子「やだよ。めんどくさい」

凪田「僕も戦えるッ!!君とならッ!!!」

流子「一人でやってくれ…」

凪田「――君の戦いをッ!僕にも、手伝わせてくれぇッ!!!」

流子「えっ」

凪田「!?」

流子「…前の凪田は、そんなこと言わなかった…」

凪田「前の?」


流子「『神衣を着てくれ戦ってくれ』って…それしか言ってなかった」

凪田「…その方が良かったのか!?」

流子「いや…。ちょっと、びっくりしただけだ」

凪田「…僕と君がこうやって話すのは、初めてだと思ったんだが…」

流子「え、ああ。…お前の変装をして、私に近づいてきた奴が居たんだよ」

凪田「僕の変装!?一体誰が!?」

流子「針目縫っていう女。…私の父さんを、殺した相手だ」

凪田「……」

流子「まぁ、そいつはもう居ないんだけどさ…」


流子(…こいつは、針目じゃねぇ、んだよな…?)


凪田「…纏君…」


流子(…違うって、わかっちゃいるんだが……)


『…可愛すぎますよ、流子さん……』

『ふふふふh……あっははははぁ♪』


流子(どうしても、針目の顔が浮かぶんだよ…!)


凪田「……」


凪田「――いい加減にしてくれッ!!!」手 ギュッ!

流子「ふぇっ!?」


凪田「もう我慢できないッ!!纏君――」

流子「えっ、いきなり何を…?」

凪田「――纏君、僕は僕なんだ!!」

流子「…」

凪田「君が転校してきたときから…ずっと君だけを見ていた!あの鬼龍院に果敢に立ち向かう君の姿を見ていた!できることなら力になりたかった!」

凪田「あなたが僕に与えてくれた勇気に、希望に比べたら、全然大したことないだろうけど!…でも、僕はあなたの力になりたい!あなたと戦いたい!!守りたい!!!」

凪田「…だから、そんな辛そうな顔はしないでくれ…ッ!!!」

流子「…凪田……」

凪田「…纏君…っ!」


流子「…真っ暗で、顔なんて見えねーだろうが」

凪田「なんとなく、そんな気がしたんだッ!」

流子「……そうか」手 ギュッ

凪田「!?」

流子「お前、手ェ冷えてるぞ…」

凪田「す、すまない!すぐに離すから…。?」ギューッ

流子「…じっとしてろよ。私の手の方が、まだあったかいだろ。温めてやるよ」

凪田「あ、ありがとう!」

流子「…こっちこそ、ありがとな」

凪田「へ?」

流子「…何でもねェよ」フイッ


流子「…これで、大分マシになったんじゃないか?」手 ぱっ

凪田「……なぁ纏君」

流子「ん?」

凪田「聞き間違いだったとしたらすまない。さっき、『鬼龍院皐月の妹』と言っていたような気がしたんだが!」

流子「おう。言ったぞ」

凪田「……」

流子「……」

凪田「…新聞部の名折れだな…!!何も知らなかったッ!!!」

流子「まぁ、私も最近まで知らなかったし…」

凪田「ということで、」

流子「?」


凪田「……纏君ッ!僕も一緒に戦わせてくr」

流子「だからもう終わってるっての!…それに、お前なんかに助けてもらうほど、やわじゃねーんだ。お前も、そんな活動してないで、普通に高校生活満喫すりゃいいんだよ」

凪田「纏君!この学園を変えようッ!僕と君とでッ!!」

流子「人の話を聞けっての!……それにしても」

凪田「どうした纏君?」

流子「……いつ来るんだろうな、救助…」


―30分後―

流子「…機織り機」

凪田「き、か!そうだな……金閣寺!」

流子「じ?…磁気」

凪田「き、か!そうだな…北畠親房!」

流子「さ?…皐月」

凪田「き、か!そうだな…鬼界ヶ島!」

流子「ま?…薪」

凪田「き、か!そうだな…って、纏君ッ!」

流子「なんだよ」

凪田「なんだこの『き』責めは!?」

流子「えー…じゃぁ、次は違うのにするよ」


凪田「…キール」

流子「ルノワール」

凪田「…瑠璃!」

流子「リベラル」

凪田「ルール!」

流子「ルクソル」

凪田「……」

流子「…ん?どした?」


―1時間後―

凪田「そもそも、生徒全員に目的を隠すという、その姿勢が気に入らなかったんだッ!!」

流子「ああ…。私もだ」ブルブル

凪田「僕たちには、知る権利があったはずだ!」

流子「おう…。全くもってその通りだ」ブルブル

凪田「よって僕は!鬼龍院皐月に、今まで生徒に隠してきたすべてのことを公表するよう要求するべきだと思う!!!」

流子「すべてっていうのは無理かもしれないが、・・・確かにまだ何か隠してそうではあるんだよなぁ…へくちっ!」


凪田「大丈夫か纏君?」

流子「あ、ああ大丈夫…くしゅんっ!」

凪田「…やっぱり、温めあったほうがッ!」

流子「――ぜってぇーやだっ!!…へくしゅっ!」

凪田「…大丈夫か!?」

流子「うっせぇ!平気だっ!」ブルッ


―5時間後―

凪田「――生徒全員に平等に選挙権が与えられ、言論の自由も、校則の範囲では自由とされている…。この、『校則の範囲内』という物の、明確な規定が存在しないんだ!こんなものは、風紀部や生徒会の決定で、いくらでも操作できる…!!」

流子「…うん…」

凪田「規範を破ったものは退学ないしは停学処分、登校禁止、その他、などで学校内から排除される…!結社の自由も、集会の自由も、全て無いに等しい!これでは、声を上げる者など出てくるはずもない!現に、君が現れるまで僕もそうだった!!」

流子「…うん…」

凪田「つまり!この学園の言論は、徹底的に統制されていたんだ…!――ここまではいいかな?」

流子「……」

凪田「纏君?」


流子「…あ、わりぃ。ちょっとぼーっとしてた…」

凪田「…それでだ!その校則の穴を探そうとして僕は」

 ・・・ばたっ!

凪田「……ま、纏君?」

流子「………」グタッ

凪田「寝るな纏君ッ!しっかりしろ!!」

流子「……あー、なんか逆にあったかくなってきた…」

凪田「それはマズイぞ纏君ッ!」

流子「……あれ、父さんが手招きしてる…」

凪田「それもマズイそ纏君ッ!」

流子「待って…今行くから……」

凪田「行くな纏君ッ!そっちに行っちゃダメだッ!纏君んんんんッ!!!」ユサユサッ


―4時間後―

凪田「…吹雪は、止んだみたいだな…!」

凪田「………」チラッ

流子「……うーん…」グッタリ

凪田「…僕だけでも下山して、助けを呼ぶべきだろうか…!?」

凪田「それともこのまま、二人で救助を待つ方が安全だろうか!?」

凪田「…いや、そんなことを言っている場合じゃないな!!とにかく、助けを…!!」

流子「…凪田…、待て…」

凪田「纏君!もう少しの辛抱だ、すぐに助けを」

流子「……道、わかんねぇんだろ。…無理に下りると危ない…」

凪田「そんなことは百も承知だっ!でも、このままでは君が」

流子「…私は大丈夫だ…」


凪田「大丈夫じゃないっ!!!」

流子「……」

凪田「…僕は行くぞ纏君っ!!」

流子「待て、無理すんな…」

凪田「…言っただろう!僕は、君となら戦えるとっ!!うおおおおー!」

 ドア→ 」 バンッ!

熊「グルルル・・・」

凪田「」

 」ッバタン!


凪田「……」

流子「……」

凪田「…………」

 」 ギィ…

熊「グルルルルル・・・!!」

流子「………熊?」

凪田「……」

熊「フシューッ・・・!」

凪田「――しまったぁあ熊だァアアア!!!」

熊「ガルルルルル!!!」

 」 バンッ!

凪田「しまった中に入られたァアアア!!!」


熊「…グルルル」

流子「……くそ、・・・動けねぇ…」グググ・・・

凪田「くっ…!」

流子「…凪田、逃げろ!危ないぞ…」

――ザッ!

熊「ガルルル…」

凪田「ま、纏君に、手は出させないッ!!!」

流子「…ばか逃げろ!普通じゃ勝ち目なんて」

凪田「――纏君!君は僕が守る!!!」

流子「…っ!」


凪田「安心してくれ!君には、僕が、僕がついて」

熊「ガウッ」ばしっ

凪田「――ぐっはぁああああ!!!」ドシャァーッ!

流子「凪田…!」

凪田「くっ…痛い…痛いぞ!」

流子「だぁから逃げろって!」

凪田「…僕は逃げないっ!逃げないぞ纏君…!!僕はもう、絶対に逃げないー!!!」ダッ

熊「ゴウッ!」ばきっ

凪田「うわああああー!!!」

――キラーンッ


流子「――凪田ぁー!」

熊「ガウウウウウウウ!!!」ドドドッ

流子「……ま、待てっ!…」ググ・・・

熊「ガウ…!?」

流子(だめだ動けねぇ…っ)

熊「……」クルッ、ドドドドッ!!

流子「この、熊…!…凪田を追うんじゃねぇ…!!…っ」

流子「………」カクンッ

今日は終わり。気が向いたら続く

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パチ、パチ、パチ・・・
・・・暖かい。
この音…何か、燃えてるのか?…暖炉?

流子「………」パチ

マコ「流子ちゃん?」

流子「…マコ?」

マコ「うわぁよかったぁっ!…あっ、父ちゃーん!流子ちゃんが流子ちゃんが流子ちゃんが起きたよー!!」

薔薇蔵「おう、りゅーこちゃん、具合はどうだ?」

流子「おじさんまで…っつーか、ここ、どこだ?」

美木杉「宿泊先のホテルの、談話室だよ。今日は、このホテル全体が本能字学園の貸切だからねぇ自由に使える」

流子「……談話室…」


でかい暖炉、床にはふかふかのカーペット、今私が寝てんのは、大きめのソファーベッド。
・・・んでもって、その横の椅子で寝ている、鬼龍院皐月。

マコ「みんな心配してたんだよー!」

流子「…あ、そうだ熊がっ!」

美木杉「熊?」

流子「…よし、動けるっ!――マコ、私、ちょっと出てくる」

美木杉「え、ちょ、流子くん」

流子「すぐ戻るから!」ダッ!

流子(…凪田が…熊に食べられてなきゃいいんだけど…!)


―廊下―

流子「…ここか?…違うな…。ちっくしょ、どうやったら外に出れんだ…!?」

凪田「あー!纏君ッ!!!」

流子「凪田!?無事だったのか!」

凪田「生徒会率いる救助隊が来てくれたんだ…!纏君も、元気そうでよかった!」

マコ「…あれー!?凪田さん!」

流子「マコ!付いてきてたのか」

凪田「……君は…満艦飾マコ君だね」

マコ「そうですけど…?」

凪田「――ああーッといけないッ!僕は、単独行動の罰則で雪かきの途中だったんだッ!!」

流子「えっ。…わ、わりぃな、なんか」

凪田「君が気にすることは無い…!!ということで纏君ッ、お大事に!!じゃぁ!!」ビューンッ


流子「……//」

マコ「…流子ちゃん?」

流子「んっ!?な、なんだ、マコ?」

マコ「……あれあれあれぇ~!?流子ちゃん、もーしーかーしーてぇーっ!?」ツンツンツンッ!

流子「わっ、なっ、何の話だよっ!?///」

マコ「親友の目はごまかせないよぉー!」

流子「違うっ!違うって!!///」

皐月「――流子っ!」

流子「ま、マコの方だっていろいろあんだろ!?」

皐月「元気そうでよかった…。しかし、大事を取ってもうしばらく安静に」

マコ「なっ、無いよ無いよ!マコは何にも無いよー!」

流子「嘘つけぇー!ホントはあるくせにぃ…?」ニヤニヤ

皐月「これからはくれぐれも、皆とはぐれることの無いように気を付けて」

マコ「――うわっ、大変だよ流子ちゃんっ!!あと四十分でお風呂閉まっちゃうよっ!大ピンチっ!」


流子「マジかっ!?…急ぐぞマコ」
木刀シャキンッ!

流子「!」

皐月「――纏流子…貴様、人の話を聞けっ!」

流子「あ、姉さん。悪かったな心配かけて…あと、なんか付き添ってくれてたみたいだな。ありがとう!」

皐月「…ふん。礼には及ばん」

マコ「皐月様もですよーっ!お風呂お風呂入れなくなっちゃうー!」

皐月「むっ」

流子「よしっ、風呂場まで歩競争っ!」

マコ「走ると危ないもんねっ!」


皐月「流子貴様っ、病み上がりは病み上がりらしく大人しく」

流子「姉さん置いてくぞー!」テクテクテク

マコ「流子ちゃん速いよぉーっ!」トタトタトタトタッ!

皐月「……」

皐月「ふん…。くだらんっ!」カツカツカツカツカツカツカツカツッ!!


―大浴場―

マコ「次は流子ちゃんの番だよーっ!」背中ゴシゴシ

流子「――あーっ、姉さん、ちゃんと洗ってから入れよ!」

皐月「私は、満艦飾が居眠りしている間に、すでに乃音と入っている。軽く流すだけで十分だ」チャポンッ

マコ「えー、じゃぁ皐月様、お風呂二回目なんですかー?」

流子「風呂が好きなんだなぁ」

皐月「…そういう訳では、ないが…」…ポッ


カポーンッ・・・

流子「いやー、極楽極楽…」

マコ「いっい湯っだっな♪らららんっ♪」

皐月「…沁みるな…」

マコ「らららーらーっ♪」

「――――っ!」

流子「…ん?今なんか聞こえなかったか?」

皐月「?特に何も…」

マコ「あっ、流子ちゃん、あっち露天風呂だってぇー!」

流子「へぇー!どれどれどんなもんかな…」ガラッ、

流子「」――ピシャンッ!!!!!

皐月「どうした流子」


流子「…い、いやぁ。これは…。これは、行かないほうがいいんじゃないかなぁ、うん」

マコ「えー!?マコにも見せてー!」

流子「ダメだっ!見るなマコ!」

マコ「ええー!?」

皐月「流子?…そこに、なにかあったのか?」

流子「無いっ!無い、無いからっ!誰も居ないからっ!」

皐月「誰か居るのか!?」

流子「居ねぇよっ!?」


流子「いいか…私が出るまで、絶対に誰も入るんじゃねェぞ!!」

マコ「わかったよ流子ちゃん!」

皐月「……?」

流子「いいか!?絶対に入るなよ!」

マコ「わかったよ流子ちゃん!」

がらっ…ピシャンッ!


凪田(ま、纏君…ッ!会えてよかった!)ヒソヒソ
↑スキーウェア着てる

流子(てっめぇ、何でこんなとこに居んだよっ!皐月に見つかったら殺されるぞっ!!)ヒソヒソ
↑タオル巻いてる

凪田(雪かきしているうちに、迷ったんだッ!君の声が聞こえた方に来たんだが…ここはどこだッ!?)

流子(女湯だぞ、ここ…!)

凪田(…そうだ!君に伝えたいことがあったんだ!今夜、消灯後に、5階のエレベーター前に来てくれないか!?)

流子(…?いいけど)

――ガラッ、


ザバーンッ!

皐月「…さっき、乃音と見たとおり。普通の露天風呂ではないか」

流子「――さっ、皐月てめぇ勝手に入ってくんじゃねェー!!」

凪田(…ま、纏君、息が…!)ブクブク

流子(我慢しろ!今出てったら殺されるぞ…!)

皐月「ふむ、やはりいい湯だな」チャポンッ

流子「何で入るんだよっ!」

皐月「いけないのか」

流子「…いけなくねーよ!」

凪田(くっ…息が…!)ムギュッ!

流子「――ひゃっ!///」

皐月「どうした流子」


流子「なんでも、ねぇよっ!」ぼかっ!

凪田(ぐはっ!)

流子(どっこ触ってんだてめぇーは!///)

皐月「…大丈夫か?まさか、まだどこか…」

流子「ちっ、違う違うっ!元気!元気だから!」

皐月「…?」すいー

流子「わっ、こ、こっち来んな姉さんっ!」

皐月「…何を隠している…?」

流子(こ、…これ以上は隠せねぇ…!)


凪田(ま、纏君もう息が限界――)

流子(…凪田、これで貸し借り無しだぞ)

凪田(?)

流子「…鬼龍院皐月ぃっ、喰らえ水鉄砲ー!!!」びしゅっ!

皐月「ぐっ!?…しまった目がっ」バシャッ!

流子(――おりゃぁああっ!)ゲシィッ!!!

凪田(うわぁああああー!!!)キラーンッ!


マコ「…もう待ちきれないよぉ!流子ちゃーん!」ガラッ

皐月「……お湯のかけっこがしたいならしたいと初めからそう言えばいい物を…」

流子「そ、そーなんだよ。お湯のかけっこがしたかったんだよ」

マコ「?」

皐月「――受けて見ろ、この鬼龍院皐月の水鉄砲!」ビシュッ!!

流子「ぎゃぁっ!」

マコ「マコもマコもー!!」バシャバシャバシャッ!

流子「……」グショッ

流子「…やったなこのやろー!」バシャーッ!

マコ「キャーっ!お返しだよー!」バチャバチャ

皐月「まだまだまだぁっ!」ビシュツ!

――ガラッ、


清掃員「…もう、お風呂閉めるとこなんですけどねぇ」

皐月「…すみませんすぐ上がります」

流子「…す、すみませーん」

マコ「ごめんなさーい」


―客室―
二年女子:スズメ班

蟇郡「――見回りであぁーるっ!!!」ガラッ、

枕 ぼすっ!!

蟇郡「……」

流子「……やっべ、顔面命中…」

マコ「あっ、蟇郡せんぱーい!」

大暮「ひぃっ、蟇郡様…!」

蟇郡「……貴様っ、大暮ぇええ!!」

大暮「纏ですっ!纏流子が投げたんですっ!」

流子「そうだ私が投げた枕だっ!」

マコ「誰のかわかりませんっ!みんなで投げ合ってましたっ!」

流子「うわぁ言うんじゃねぇマコ!」


蟇郡「……本来ならば、生徒会“鷹班”の部屋に連れて行き、二時間正座をさせるところだが…」

流子・大暮・マコ「「「!!!」」」

蟇郡「…纏、貴様は今朝方死にかけていた。満艦飾も、昨日はあまり寝ていないだろう。体調を崩されても困る」

蟇郡「従って、代わりに今すぐ消灯し寝ることを命令する」

マコ「ええー!?まだ消灯まで一時間もあるよーっ!」

蟇郡「満艦飾、貴様には休息が必要だ」

流子「そういや、昼間に寝てたから、私今全然眠くねーんだ…どうしよう」

蟇郡「…各部屋備え付けの聖書でも読んでいろ!」

マコ「ほんとだー!すごいよ流子ちゃん、テレビの下に聖書があるなんてマコ知らなかっ…」パラッ、


マコ「ぐー……」zzz

流子「あっ、ほらマコ、ちゃんと布団に入んねーと風邪ひくぞ」

大暮「入れてあげれば?」

流子「おお、そうだな」布団めくりっ、

 ビックリ箱「ケケケケケケケケッ!!」

流子「うおっ!!?」

大暮「ひゃぁーはっはっは!やーいやーい引っかかった引っかかったー!!」

蟇郡「……」イライライラ

流子「こっのやろ大ぐr」

蟇郡「―― 纏 流 子 っ ! ! !」ぐおっ!

流子「はいっ!?」


蟇郡「…歯は磨いたか」

流子「お、おう」

蟇郡「…では布団に入れ。今すぐにだ」

流子「は、はい」

蟇郡「大暮貴様もだぁっ!!」

大暮「ひぃっ!」

蟇郡「…では消灯する」

流子「えー…」

蟇郡「貴様そのまま大人しく寝ていろぉっ!!!皐月様が心配なさるだろうが!」

流子「!」

-------------------- 

大暮(…行ったようね、蟇郡の奴……)

流子(……あの鬼龍院皐月が、人の心配なんてするんだな…)

大暮(さぁー♪いーまこそ、この大暮麻衣子の復讐を完遂するチャァーンス!)

流子(…妹だとわかったとたんこれだ…今までさんざん利用しといて……)

大暮(ふっふっふ…この、纏流子の布団の絶妙な位置に仕込んでおいた“時限式色水風船”を、夜中に破裂させれば…っ!…後は、説明しなくてもわかるよね♪)

流子(……姉妹、かぁ…)

大暮(朝になって、大恥かくがいいさぁっ!ひゃぁーっはっはっはぁ!)

マコ「すぴー…」

流子(…やっぱ、寝つけねぇなぁ…)


流子(…あ、そろそろ1時間経つな)

――凪田『消灯後に、5階のエレベーター前に――』――

流子「……」ムクッ

マコ「すやすや…」

大暮「…ぐー…」

流子(蟇郡と皐月には悪いけど…待たせたままって訳にはいかねぇからな…)コソコソッ

 」パタンッ

マコ「……ん、流子ちゃん…?」ムクッ

今日はここまで
誰得だろうな…


―5階:エレベーター前―

凪田「纏君!来てくれたのか!」

流子「…で?こんな時間に呼び出して、何の用なんだ?」

凪田「見せたいものがある!来てくれッ!」ギュッ

流子「ちょっ、」

流子(勝手に、手ぇつないでんじゃねぇっ!)

凪田「見回りの風紀部に見つかるとマズいッ!急ごうッ!」

流子「……///」


―廊下―

マコ「流子ちゃぁーん…どこ行っちゃったのー?」トコトコ

美木杉「あれ?満艦飾くん」

マコ「あっ、美木杉先生」

美木杉「正確に言うと、もう先生じゃぁないんだがねぇ」

マコ「ええー!?じゃぁ、どうして研修に呼ばれたんですか!?」

美木杉「どうしてだろうねぇ……僕にも、不思議だねぇ」

マコ「どうしたんですか?こんな時間に、廊下で」

美木杉「それはこっちのセリフだよ満艦飾くん。消灯時間はとっくに過ぎてるよ?」

マコ「だって流子ちゃんが…あっ」

美木杉「流子くんが、どうかしたのか?」

マコ「何でもありませんっ!」


美木杉「……怒らないから、教えてくれないかなぁ?」

マコ「い、言いませんっ!マコは言いませんっ!」

美木杉「…まぁ、特に問題がないならそれでいいよ。ただ、早めに部屋に戻ったほうがいいと思うけどねぇ。風紀部委員長さんがまだ見回りしてると思うから…」

>「――キャァアアアーッ!!!」

美木杉「っ!!」針シャキッ、

マコ「この声…麻衣子ちゃん!?」

美木杉「部屋はこっちか…!」ダッ


―展望室―

流子「……きれいだ…」

凪田「気にいってもらえたようでよかった!」

流子「星って、こんなに一杯あったんだな…知らなかった」

凪田「本能町は、本能字学園が眩しすぎて、なかなか星が見えない。…今は冬だし、ここは山で空気が澄んでいるから。星はよく見えるんだッ!」

流子「…特に、あそこの…すごい光ってるな、あの星…」

凪田「あれはシリウスだ!」

流子「へぇ…」

凪田「大犬座のα星で、天空に一番明るく輝く星だ…!昔は、ナイル川の氾濫を予期する星とも言われていた!…日本のこの季節では、大体この時間に南中するんだ」

流子「それで、こんな時間に呼び出したのか」

凪田「纏君に見せたかったんだ!なんだか似ていたから…」

流子「……似てる?」

凪田「君に!」

流子(どういう意味だよ…)


―客室―

二年女子:スズメ班

美木杉「――どうした!?」ガラッ!

大暮「あっ…あ、あそこに…っ!く、熊がっ!!さっきまで、そこに、でかいのが…!」

美木杉「熊…?」

 パンッ・・・

大暮(…はっ!しまった水風船が爆発して…!これじゃまるで私がっ)

マコ「麻衣子ちゃん大丈っ……」

美木杉「……そんなに怖かった?」

大暮「ちっ、違うっ!違うんです!これは…!」

美木杉「誰にも言わないよ…ここだけの秘密だ」

マコ「マコも言わないよ!」

大暮(…くっそぉ、纏流子よくもぉお……!!!)


蟇郡「―――大丈夫か満艦飾ぅうう!!!」ガラッ!

大暮「…ひぃっ!!?」

美木杉「そんなに驚かなくても…」

大暮「違うっ!あそこに、また同じ熊がっ!!」

蟇郡「む!?…展望台の方向だな」ダッ、

マコ「蟇郡せんぱいっ!」

蟇郡「案ずるな満艦飾。熊ごとき、この俺の敵ではない」

マコ「わかりましたっ!」

美木杉「この地域には、人を襲うような熊は生息していないはずだが…。もしかしたら、例の熊かもしれない。気を付けてくれ」

蟇郡「無論!」


―外―

蟇郡「――待てぇい!」

熊「……」ピタ

蟇郡「……貴様、今朝方も纏の側に居た熊だな。この時期、熊は冬眠しているはずだ…。起こしてしまったか」

熊「……」ジッ

蟇郡「……?」

熊「………」ノソ、ノソ、ノソ・・・

蟇郡「…大人しく山に帰るか…。英断である」

ピピピピッ♪

蟇郡「む」ピ、

犬牟田『…ちょっといいか、蟇郡!』


蟇郡「なんだ」

犬牟田『その熊から生命繊維の反応を感知した。なんとか生け捕りにできないか?』

蟇郡「なにっ!?」

 雪 ヒュゥーウ・・・

蟇郡「……すまん、見失った。…この蟇郡苛っ、一生の不覚っ!!」

犬牟田『あー、ならいい。今すぐホテルに戻ってくれ。皐月様直々にご召集だ』

蟇郡「熊への対策を立てるのか」

犬牟田『それはもう立て終わったよ。今からやるのはUNO』

蟇郡「……平和だな」

犬牟田『いや修羅場だよ。早くしてくれ、もう伊織がカード配り終わった』

蟇郡「…了解した」


―客室―
二年女子:スズメ班

マコ「…………」

美木杉「満艦飾くん、彼のことが心配かい?」

マコ「…すぴー…」zzz

美木杉「寝てるっ…!?」ガン

大暮「…ちゃんと布団に入れっての…!」ゴソゴソ!
↑入れてあげてる


―展望台―

流子「……もし生命繊維が勝ってたら、地球も周りの星も、みんな爆発させられてた。…この星空もみんな、でっかい風呂敷に覆われちまってたんだろうな…」

凪田「だが、そうなってはいない…!君のおかげで!」

流子「い、いやぁ…なんか照れるな」

凪田「君は人類を救ったんだッ!」

流子「あはは、よせって…」

――ガラッ、

流子「――隠れろっ!」

凪田「うわッ、」


風紀部×2「「誰か居るのかァー!」」バーンッ

流子(…!)

凪田(…纏君は、あっち側に逃げろ…!僕が囮になるッ!)

流子(えっ、凪田そしたらお前が)

凪田「――しまったァアア見つかったァアア!!!」ドピューンッ!

風紀部「居たぞコラァ!」

風紀部「待て待てこのヤロォー!」

凪田「うわああァァァ!!!」


流子(凪田…お前の犠牲、無駄にはしねぇっ!)ダッ、

がしっ!

流子「うわっ!?」

美木杉「…おおっとぉ、ようやく見つけたよ流子くん」バーンッ

流子「げっ、先公……っ!」

美木杉「正確に言うと、もう先公じゃぁないんだが…」

流子「……あっ、そうか。じゃぁ、」

美木杉「でも、元担任としてはぁ、君が消灯時間後に宿泊施設内をうろついていたことを黙認するわけにはいかないねぇ流子くん」

流子「」


―教員用の部屋―

美木杉「さぁて流子くん…どこに行っていたのか聞かせてもらおうか」

流子「星を見に行ってた」

美木杉「君がそんなロマンチストだったとは知らなかったよ」

流子「うるせーホントのことなんだから仕方ねーだろ」

美木杉「…まぁ、正直言うとそんなことはどうでもいいんだ」

流子「?」

美木杉「大暮麻衣子の証言によると…君が居ない間に、部屋に熊がやってきたそうだ。…蟇郡苛が追い払ってくれたが、おそらく、君がスキー中に襲われた熊と同じ個体だと思われる…」

流子「ちょ、ちょっと待て!遭難中には襲われたが、スキー中って…?」

美木杉「あれ、覚えてない?ちょっとコースから外れてるなと思ったら、君が熊に襲われているのが見えてねぇ。慌てて助けに行ったんだが、時すでに遅し。君の行方もわからないまま、山の天気も荒れて来てね…」


流子「そうか…だから私には罰則が無かったんだな」

美木杉「…そこらへんはよくわからないが、とにかく、その熊から、微弱な生命繊維反応があった」

流子「なに…!?」

美木杉「捕獲して調べられれば良かったんだけど、あいにく逃がしてしまってね。…採れたデータは少ないが、元々融合していたにしては、反応が小さすぎる。僕たちの見解では、生命繊維を何らかの形で体内に摂取したんじゃないだろうか、と…」

流子「…食べた、ってことか」

美木杉「多分ね。それがCOVERSの一部なのか、はたまたREVOCSとは違う生命繊維なのかはわからないけど」


流子「……」

美木杉「気を付けるにこしたことはない。君なら、熊の一頭や二頭、軽く倒せるだろうけど…くれぐれも、油断はしないでくれ」

流子「…忠告どうも」

美木杉「それと流子くん」

流子「なんだよ」

美木杉「あんまり、無茶はしないでね。皐月様や満艦飾くんが心配するから」

流子「…わあった」

今日はここまで…


―朝:廊下―

マコ「―――ちーこーくーだぁーっ!朝ごはん食べそびれちゃうよぉー!」トタトタッ

流子「大暮の奴…!起こしてくれりゃいいのに一人だけ先に行きやがってぇ…!」ダダダッ

マコ「あっ、凪田さんっ!」

流子「!」キキィーッ

凪田「あッ!おはよう!纏君!!」

流子「凪田、お前昨日大丈夫だったか!?」

凪田「…僕は、君が無事ならそれでいいッ!」

流子(大丈夫じゃなかったみてぇだな…)

マコ「凪田さん、食堂あっちですよ?」

凪田「…僕は、朝食抜きだったりするッ!!」

流子「うわぁホントすまねぇ…」

凪田「というか纏君ッ!」ずいっ


流子「な、なんだ?」

凪田「昨日話を聞かせてもらって、戦いが終わったことはわかった!…ただ、だからこそ…!」

流子「な、なんだ?」

凪田「我々はッ!真実を知るために行動を起こすべきだッ!!!」

流子「いや、真実も何も…」

凪田「このままうやむやにしていいはずがないッ!どんな理由があったにせよ、このまま情報を隠されたままでは、正しい判断を下すことも進むべき道を選択することもできないッ!真実を白日の下にさらし、その上で、本能字学園を新しく生まれ変わらせることそれ自体が大切なのであってそうそれが僕たちジャーナリストの使命であるんだッ!!そうだろう纏く」

流子「すまん途中から何言ってるかわからねぇ!」

凪田「――詳しくはッ、これを読んでくれェエエエー!!!」バンッ!!

流子「新聞っ…!?」

凪田「じゃ、またッ!!」ピューンッ


流子「あっ、ちょっと待て――」

凪田「ああーッと忘れてたァアア!!!」キキーッ!

流子「…!?」

凪田「纏君ッ!君はッ!ジャージじゃなく、もっと可愛い服が似合うと思うッ!!」

流子「なっ!?人の服とやかく言うんじゃねーよ!」

凪田「なぜなら君が可愛いからだッ!!!」

流子「…っ!!///////」ボッ!

凪田「…ん?」

流子「……どっ、////」

凪田「顔が赤いぞ纏君!大丈夫か!!?」

流子「どーでもいいだろ!こっちは急いでんだっ!!じゃーな!!!」ドピュンッ!

マコ「うぇえっ!?流子ちゃん速いよー!待ってよ流子ちゃーんっ!!」トテテテテッッ!


―食堂―

皐月「――遅いぞ流子っ!もう食べ終わるところだっっ!」

マコ「どうしよう流子ちゃん一人前ずつだよぉー!マコ足りないかも…って、えっ?多いからくれるの?えっ、みんな余っちゃってるの?うわぁい!流子ちゃん、皆がマコにくれるよー!」

流子「……私のもあげる…」

マコ「ありがとう流子ちゃんっ!……って、ええーっ!?」

皐月「どうした流子、ほとんど手つかずだが…。食欲がないのか?」

流子「……」ポー

マコ「流子ちゃん具合でも悪いのっ!?…流子ちゃん?」

皐月「……流子ー。おーい、流子ー」手ヒラヒラ

流子(マジかよ…どういう意味で言ってんだよあいつは……)


ぴとっ、

流子「…ん?」

皐月「……熱は無いようだが…」

流子「いや、ねぇけど…」

皐月「…顔が赤いぞ」

流子「…いや、元気だって。額から手ェどけてよ」

皐月「今日のスキーは止めて、休んだ方が…」

流子「元気だから!」

皐月「しかし…昨日も凍死寸前だったし…」

猿投山「…平気ですよ皐月様。纏は脈が乱れまくっているのを除けば、全くの健康体だ」

皐月「猿投山…。貴様まだ食べ終わっていなかったのか」


猿投山「…猫舌でね……。味噌汁が冷めるのを待ってるんすよ…」

流子「…勝手に読むんじゃねぇよ心眼通っ!」

猿投山「おい、また脈が速くなったぞ。…何に興奮してんだよ」

流子「……なっ、何って…」

――凪田『纏君ッ!』――

流子「…////////////」ドキドキ

猿投山(…こいつ、まさか……俺のことが?)

流子「……ま、マコ!食べ終わったか!?」

マコ「まだだよ!デザートのチョコアイスが残ってるよっ!」パクパクパク

流子(チョコレート…)

猿投山(ちょっと近づいてみるか…)すっ

―――流子『うん、おいしい』

凪田『……』――


流子(……/////)キュンッ

猿投山「…!……やはりな…」

皐月「…何がだ?」

猿投山「…ふっ…なんでもありませんよ、皐月様…」ドヤァ

マコ「食べ終わったよ流子ちゃんっ!ごちそーさまでしたっ!」

流子「よし食い終ったな!行くぞマコ!」

皐月「待て流子っ!今日こそ勝手な行動は許さ」

――ピピピピピp

皐月「…こんな時に…っ!」ピ、


犬牟田『――皐月様、』

皐月「何の用だ犬牟田」

犬牟田『熊が再びスキー場付近に出没しました』

皐月「…わかった。例の作戦を始めてくれ。私もすぐに向かう」

犬牟田『了解』ピッ、

皐月「――流子っ、」


皐月「……ちぃっ!逃がしたか…!」


―スキー場―
リフト付近

マコ「流子ちゃんスキーが取れちゃうよぉー!」

流子「あー、だからだなマコ。ちゃんとカチって言うまでスキー靴を板にはめねぇと・・・って、あれ?はまらねぇ」グイグイ

蟇郡「…満艦飾。スキー靴の靴底に、雪が詰まっている。まずそれを落としてからはめろ」

流子「あ、蟇郡」

マコ「蟇郡せんぱい!…マコ、うまくできませんっ!」

蟇郡「…貸せ。手伝ってやろう」

蛇崩「あーら、お熱いわねお二人さん」

蟇郡「そんなんではない」


犬牟田「警戒は怠らないでくれよ。あの熊のデータは無いに等しいんだ。罠がうまく効くかどうかわからない」

猿投山「平気だ犬牟田。俺の心眼通があれば熊の居場所なんざすぐにわかる」

蛇崩「どうだかね」

流子「熊?」

マコ「ありがとうございます先輩っ!マコ、滑ってきていいですか!?」

蟇郡「しばし待て。…熊がうろついていては、危ない」

犬牟田「君も大人しくしておいた方がいいよ纏流子。こないだ、君はあの熊に敵わなかったようだから」

流子「え、私が敵わないって…相当やばいんじゃないか?」

猿投山「ふっ…俺の心眼通があれば熊なんぞ」

流子「…おりゃっ」

雪玉 ぐしゃっ!


猿投山「つめったっ!!?」

流子「おいおい、雪玉も避けれねーで何が心眼通だよ」

猿投山「このっ…ふざけるなよ纏っ!くそぅっ、冷たすぎて…心眼通がっ!!」

犬牟田「どうやら、ショックで一時的に心眼通が効かなくなったようだね」

蛇崩「どんだけデリケートなのよ、使えないわねー」

>「ガオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

犬牟田「あ、熊が来たね」

蛇崩「もう少しひきつけて…そ、今よ」

蟇郡「うむ。――発射ぁあああああ!!!」ぽちっ

――パシュパシュパシュッ!!!

熊「」ズズゥーンッ…


流子「…なんだ今の?銃?」

犬牟田「麻酔銃だ。生け捕りにせよとの指令だからね」

熊「」ムクッ・・・

猿投山「…おい、効いてないぞ!」

犬牟田「おっかしいなぁ、計算では効くはずだった。耐性でもあったのか、はたまた体内の生命繊維が作用しているのか…」

熊「……!」ピクッ

流子「…ん?」

熊「――ガウウウウウウウッ!!!!」ドドドドドッ

蛇崩「あの熊、急に走り出したけど」

蟇郡「…攻撃目標でも見つけたのか?」

犬牟田「ちょうどよくトラップのある方に走ってくれた。このまま行けば、ボタン一つで捕まえられる」

マコ「あれ?流子ちゃん、あれって…」


熊「ウウウウウウウッ…!!」

凪田「うわァアアアアアアアアア!!!」ダダダダダッ

流子「――凪田っ!!」ズシャッ!

――カツンッ!

皐月「―――待て流子っ!」

蛇崩「皐月様!」

犬牟田「皐月様!」

蟇郡「皐月様!」

猿投山「皐月様!」

皐月「流子、そっちは(トラップあるから)立ち入り禁止だぞっ!」

流子(――凪田っ、凪田ぁ……!)ズシャァーッ!

皐月「この…、待たんかぁっ!」

蛇崩「皐月ちゃんダメよ!危ないわ!」


皐月「しかし、」

犬牟田「纏ならこの程度のトラップは平気だろう」

皐月「犬牟田貴様っ、まさかボタンを押す気か!?」

猿投山「それより、何だっていきなりあんな必死になってんだよ。誰だ凪田って」

凪田「――うわァアアアアア助けてくれ纏君んんんんッ!!!」

熊「ガウウウウウウウウウウ!!!」ドドドドドッ

流子「待ってろ、今行く!」シャシャーッ!

蟇郡「あそこの、熊に追われている者のことか?…本校の生徒ではないな」

蛇崩「うわ、何アイツ。なんか暑苦しそうなメガネ」

犬牟田「俺は暑苦しくない」

蛇崩「犬くんじゃないわよ」


熊「……ガウ・・・」

流子「…こんの、熊野郎ー!!!」グオッ、

熊「…」ヒョイッ、

流子「くっ…!」クルッ、すたんっ!

凪田「はぁーッ!纏君んんん!!」

流子「…しょっぱい声を出すんじゃないよ。見殺しにはできねぇだろうが」

熊「…グルル…!」

流子「……」拳グッ・・・

凪田「――危ない纏君んんんんッ!!!」

流子「へっ!?」

どーんっ

流子「どわっ!」


熊「フシューッ!!!!!!!」ダッ

流子「なっ、何すんだ凪田っ!」

凪田「危なかった…ッ!」

流子「お前のせいでな!」

熊「ガウウウウウッ!」ブンッ!

流子「――凪田、そっちに逃げ」

ボコッ・・・

流子「え」

熊「ガウッ!?」

流子(足元の雪が崩れて…!?)

凪田「纏君ッ!僕の手に捕まるんだァアアッ!!!」さっ!

流子「っ!」がしっ!

 手袋 すぽっ…


流子「うわああああぁぁぁ……」ヒューン

凪田「しまったァアア!!纏君んんんッ!!!」

熊「ガルルルルッ!!!」ダッ、

犬牟田「…今だっ!」ぽち、

 網 ビッビッビッビッビィインッ!!

熊「っ!!?」ギシィ・・・!

猿投山「…なるほど。あれじゃぁ、熊はもう動けまい」

犬牟田「君の位置からは画面が見えないはずだけど…。心眼通、戻ってきたの?」

猿投山「ああ…もうだいぶ見える」

皐月「流子っ!流子はどうなった!?」

蛇崩「皐月ちゃん落ち着いて」

マコ「流子ちゃーんっ!!」

蟇郡「大丈夫だ満艦飾。纏はあれくらいでは死なん」


猿投山「……っ!!!なんだ、これは…っ!!!?」

蟇郡「どうした猿投山。何が見えた」

猿投山「……くっ…そんなバカなっ!」

犬牟田「何が見えたんだ」

猿投山「……纏っ…!」ダッ

蟇郡「?どこに行く気だ猿投山っ!」

犬牟田「…あ、纏が自力で登ってきたようだね…。って、・・・これは…」

皐月「…っ!流子!?」

マコ「りゅ、流子ちゃん…!」


凪田「纏君ッ!!」

流子「…はぁっ…。だ、大丈夫だ…」

凪田「……」サー

流子「ど、どうした凪田?」

凪田「…ま、ま、纏君、君…ッ!」

流子「…ん?」

 血ポタ、ポタ、ポタ・・・

流子「……あ」

凪田「だっ、大丈夫だ纏君ッ!今、医者を呼んで」

流子「…呼ばなくていい」ズブッ、

凪田「……ッ!」

流子「…抜いたら、ほら、すぐ治る」


凪田「…き、君は…」

流子「……」

流子「…そう、だよな…。お前は、知らなかったもんな…」

凪田「どういうことなんだ纏君ッ!これは一体…!?」

流子「……私はさ、化け物なんだ」

凪田「…纏、君…?」

流子「……じゃぁな」クルッ、

凪田「待ってくれ纏く」がしっ、


流子「………」

凪田「……泣いてるのか?」

流子「……っ、」ジワッ、

凪田「……まッ、纏君」

流子「……」手 パシッ、

凪田「あ、」

流子「…」タタタタタッ


凪田「……纏君ッ、」

猿投山「――待てぇいっ!!!」

凪田「ッ!?」

猿投山「き、貴様やはり…!!?」

凪田「――ああっとしまったぁあああ!!!」

ばしゃぁああんっ!

猿投山「――ああっち熱あちあちああちぃいいいい!!!!」ジタバタ

凪田「くそっ、どうして熱々のお茶を入れた水筒の蓋がゆるんでいたんだ…!危ないじゃないか!」

猿投山「くっ、心眼通が――オレの心眼通がぁあああ!!!」


犬牟田「ショックで一時的に心眼通が効かなくなったんだね、猿投山は」カタカタ

蛇崩「よかったわ。皐月ちゃんが先に行かなくて」

蟇郡「猿投山が盾になったおかげで、皐月様は無事だ。本来なら俺が盾になるべきだったのだがな」

皐月「…貴様、何者だ?」

凪田「本能字学園二年、新聞部部員、凪田信二郎だ!」

皐月「…記憶にあるか、蟇郡」

蟇郡「……うーむ…」

凪田「――ああーッとしまったァアア!!!僕は纏君を追わなければァアー!!!」ダッシュ!


猿投山「ま、待て…っ!」

熊「グオオオオオオッ!!!」ジタバタッ!

蟇郡「暴れるな!熊っ!」

マコ「うわぁん流子ちゃぁーん!マコも今行くーっ!」ノタノタノタ・・・

マコ「……スキー靴が重くて走れないよぉおー!!」

皐月「―――っ!」

蛇崩「皐月ちゃん、どうかしたの!?」

皐月「…蛇崩、今、声が聞こえなかったか…?」

蛇崩「……私は、聞こえなかったわ」

皐月「…?…?」キョロキョロ


流子「……」ダダダッ

凪田「――纏君ッ!」雪ボスッボスッボスッ

流子「………」ダダッ

凪田「纏君ッ、待ってくれ纏君!」ボスッボスッボスッ

流子「…ついてくんじゃねぇ」

凪田「纏く、って、うあっ!?」ツルッ…コケッ!

流子「……」タタッ

凪田「……纏君ーッ!…」

流子「……」タッ・・・

凪田「…………纏君…」

流子「…」ピタッ

凪田「…!?」


流子「……無理しなくていいよ、凪田」

凪田「どういう意味だ纏君ッ!」

流子「…あんなの見たら、誰だって引くだろ。私だって、最初は引いたさ」

凪田「纏く」

流子「私は、化け物なんだよ。…赤ん坊のころに、生命繊維と融合させられてる。…人間じゃないんだ」

凪田「まと」

流子「お前と、話したり、星見たり、すごい楽しかった…。でもさ、もう、私に近づかないでくんないかな…」

凪田「……」

流子「…」グスッ


凪田「…纏君ッ!!!」


流子「…」

凪田「僕は、そんなことは気にしないッ!」

流子「……っ、」

凪田「生命繊維がなんだ!それだって君の一部だッ!それを僕が知ったからといって、君に対する気持ちが変わる訳じゃないッ!君が君でなくなる訳じゃないッ!」

流子「…でも、」

凪田「君が自分のことを化け物だと言うんならッ、僕だって化け物だッ!!」

流子「いやそれは違うだろ…」

凪田「だから僕はッ……!」

流子「……」

凪田「ぼ、僕は…」

流子「…凪田…」

凪田「…き、君が…ッ!」

流子「……」手 そっ、

凪田「ッ!」


流子「…手袋、返すよ」

凪田「あ、ああッ!どうもッ!…そ、それでだな…ッ!」

流子「なぁ、」

凪田「!?」

流子「しりとりしよう」

凪田「なぜいきなりしりとりなんだ纏君ッ!」

流子「…スキ」

凪田「……」


流子「……さっさと、答えろよ…」

凪田「…また『き』責めか纏君ッ!」

流子「ん」

凪田「し、仕方ない…ッ!……き、聞き違いでは無いなッ!?」

流子「何だよ寝ぼけたこと言ってんじゃねーよ」

凪田「よければ僕とッ!……僕と交際してくれッ!!」

流子「…恋愛とか、正直私、わかんねーんだけど…」

凪田「…どうでもいいんだそんな事はッ!!!」

流子「……初めてなんだ、こういうの…」

凪田「……だからなんだッ!?僕だってそうだッ!」

流子「…しりとりだって」

凪田「あ」

流子「……」クスッ

凪田「ッ!!!////」

流子「……/////」


―リフトの上―

美木杉「……」双眼鏡

美木杉「……あれは、針目縫のはずだが…」


>「ほら、マフラー直してやるよ…」

>「す、すまない纏君ッ!」

>「……////」

イチャイチャイチャ・・・


美木杉「どういうことなんだ…?」脱ぎっ…

美木杉「…寒っ!」

ドロドロの愛憎劇を書けるかどうか不安だが
とりあえずここまで

ちゃんとキルラキルらしい雰囲気。期待。


―流子のとこ―

マコ「――流子ちゃーんっ!」ピューンッ!

流子「あ、マコ――」タッ、

糸ぴぃんっ!

流子(――足に、なんか引っかかった!?)コケッ

 ――がしっ!

凪田「……ま、纏君」

流子「あ…//////」

流子(な、凪田に抱きついちまった…っ!)

凪田「……」抱きっ

流子(ちょっ、ちょっと…っ!!///)


マコ「あーーーーっ!!」雪ぼすっ!!!

蟇郡「大丈夫か満艦飾ぅううー!!!」ドドドドッ

流子「マコっ、……ちょっと、離してくれ凪田っ!」

凪田「すッ、すまないッ!」ぱっ

流子「わりぃマコ!こけちまって…」

マコ「……わーっ!」抱きっ

流子「わっ、」

マコ「流子ちゃん怪我大丈夫っ!?」

流子「あ、ああもう治ってるよ」

マコ「服に血が付いちゃってるよー!ホテルで着替えないと!」

流子「ちょ、待ってマコ、凪田が――」


流子「……居ない…?」

マコ「流子ちゃん早く早くー!」

流子「あ、ああ!今行く!」


―熊付近―

画面『わぁー転んじゃうよぉー!』

  『スキー靴で走るな、満艦飾!!!』

  『…そーだ!どうせなら、蟇郡が肩に乗せてやりゃいいんだ』

  『なっ!!?/////』

犬牟田「…皐月様、追わなくていいんですか?…皐月様?」

蛇崩「皐月ちゃん?」

皐月「…何も言うな」

蛇崩「?」

皐月「…今対策を考えている所だ…。…仮に本校の生徒全員でかかったとしても、敵うかどうか…。やはり極制服が無くては…」

蛇崩「なんかすっごい物騒な感じがするんだけど」


―その頃リフト降り場―

美木杉「……何か、用かな?」

猿投山「そっちこそ何の用だ」

美木杉「…心眼通、だったっけ?」

猿投山「ああ。そっちは…。まぁ、良く知らんが、気になるひとり言が、聞こえたんでな」

美木杉「…あの、凪田とかいう男子生徒…。針目縫だよね?」

猿投山「間違いない。ありゃぁ、あの女だ」

美木杉「また、纏くんは騙されちゃったのかねぇ」

猿投山「知るか。ただ、・・・纏は本気だ」

美木杉「…厄介だね」

猿投山「ああ。下手に手を出せば…消されるのは俺たちということ…」

美木杉「いやぁ、でも、纏くんに告白させるとは…。なかなかにえぐいことをする」


猿投山「まさか、纏があんなのが好みとは思わなかった」

美木杉「鬼龍院皐月や、他の四天王はこのことを知っているのか?」

猿投山「皐月“様”だ“様”をつけやがれ!…あの場で言えば、纏の耳にも入ったからな。言い出せなかった…。つまり、気付いているのは俺たちだけだ.
多分」

美木杉「…え、それって、状況としてマズくない?」

猿投山「あ?」

美木杉「あー、だからだね。敵の都合の悪い情報を知ってる人物が、同じところに固まってるってことは、相手側からすればそこを叩けば」

猿投山「!伏せr――」

  「―――裸のサルにぃ、戻りなよ♪」

――ザシュンッ!!!


ドサドサッ・・・

  「あれれー♪そういや、最初っから裸だったね」

美木杉「」

猿投山「」

  「極制服もないゴミカス共がぁ♪ボクに敵うはずないじゃない?」

クルリンッ♥

  「待っててね、流子ちゃん♪ もうすぐ、めちゃくちゃにしてあげるからぁ♥」


―客室―
高2女子:スズメ班

大暮「ふふ……ふふふふふ…ひゃぁーはっはh」コソコソ

 」 がらっ、

マコ「あれ?麻衣子ちゃん居たんだ!」

大暮(ひゃぁあああトラップ仕掛けてるとこだったのにぃいい!)ガサゴソ

流子「……」ぼーっ

大暮(くっ…ばれてしまってはしょうがないっ!!かくなるうえは…!)

流子「…あ、居たのか大暮麻衣子。…滑んなくていいのか?」

大暮「――えっ!…あ、きょ、興味ないもの、スキーなんて」

流子「ふーん…。って、マコ、なんだその服」

マコ「皐月様と、この間選んだんです!――ほら、これでマコとペアルックだよー!皐月様とで、トリプルルック!」フリフリッ

大暮(…ばっ、バレてないですってぇえ!?)


流子「いや、でも、それは…可愛すぎないか?」

マコ「これで凪田さんもイチコロだよっ!」

流子「えっ!?ま、マコさっきの聞いてたの…!?///」

マコ「やだなぁただの女の勘だよぉー!」

大暮「ん?」ピクッ

流子「そ、そっか」

マコ「ほらほら脱いじゃえ脱いじゃえー!」脱がせっ!

流子「ひゃっ!?」

大暮(『凪田』…今、良いこと聞いたかもしれない…っ!!)メモメモ

――ぱさっ

マコ「あれ?何か落ちたよ?」

流子「…新聞…。凪田からもらった奴だ」ヒョイ


マコ「…の…の…か?訳のわからないことが書いてあるね!」

流子「マコ、漢字も読んでやろうな。…えーと、なになに…」メクリッ

流子「…『決死の生徒会室侵入レポ!』…おいおい、あいつは何をやってんだよ」ペラッ

流子「『鬼龍院皐月の私物か?謎の物体の謎に迫る』…」

マコ「あれーっ!?すごいよ流子ちゃんっ!このホテル、地下にスケート場があるんだって!行こうよ行こうよー!」

流子「はっ?す、スケートは私、ちょっと…」

マコ「今度はマコ負けないよーっ!競争競争っ!」トテトテトテッ!

流子「あー、マコ待って!」

マコ「早く早くーっ!」ピューンッ!

流子「…行くしかないかぁ…」トボトボ

大暮(……まさか、スケート苦手…?…次の嫌がらせは決まりねっ!)メモメモッ!


―談話室―

皐月「犬牟田、解析結果は?」

犬牟田「ビンゴです皐月様。あの『凪田信二郎』とかいう生徒…。針目縫に間違いあるません」

蛇崩「さすが皐月様。あんな遠くから見てもわかるなんて…」

皐月「…いや、私は熊に教わった」

蟇郡(……熊?…そうか、流石皐月様…。熊とも意思の疎通が可能ということか)

犬牟田「…ただ、針目本人ではないですね」

蟇郡「どういうことだ?」

犬牟田「この『凪田信二郎』自体は人形なんだよ。本体は別の場所に居て、それを操っているようだね」

蛇崩「人形って…。気づきなさいよ、転校生」

皐月「…参ったな」


犬牟田「纏流子に、この事実をそのまま伝えれば済む話では?」

蛇崩「ほんっとにデリカシー無いわねー。『あなたの想い人は、あなたの父親の仇の変装ですよ』なんて言ったって、信じる訳ないでしょーが」

皐月「仮に信じてくれたとしても、流子が傷つくことは避けられないだろうしな…。かといって、このまま何もしなければ流子が何をされるか…」

蟇郡「皐月様、異性間の不純な交際は校則で禁止されています。それを纏に教えれば、あるいは」

皐月「…蟇郡。あの流子が、校則を守ると思うか?」

蟇郡「…むぅ」

――ブルルルルーンッ…

犬牟田「?エンジン音?」


黄長瀬「……」バンッ

蛇崩「うわ、モヒカン!?なんでここに」

皐月「私が呼んだ」

蛇崩「!?」

黄長瀬「…何の用だ、鬼龍院皐月」

皐月「……失礼ですが、彼女は居ますか?」

黄長瀬「?…いや」

皐月「では…彼氏は?」

黄長瀬「ふざけてるのか…?」

皐月「ふむ、そうか…。やはりな、思ったとおりだ」

黄長瀬(…呼ばれたから来てやったのに、何でこんなこと言われなきゃならん)

蛇崩「…さ、皐月ちゃんまさか」

皐月「ああ。さすが蛇崩、理解が早いな」


蛇崩「だめよ皐月ちゃん!そーいうのは、・・・だって、」

皐月「……他に方法が無い。こうするしか…」

犬牟田「いやいやいや!お言葉ですが、二人の相性からいって、それは無いでしょう!?」

蟇郡「?」

皐月「『凪田信二郎』の容姿は、どちらかと言えば『ひ弱なもやしっ子系』…。そこへ、あえて正反対の男性を引き合わせることによって、何か変化があるといいな。とか思ったり」

黄長瀬「…さっきから何の話だ!?」

皐月「できる限り、内々に事を済ませたい…。もちろん、四天王や私も出動することになるかもしれないが…」

蛇崩「そんなっ…!このモヒカンの前に、男なんていくらでも居るでしょ!?サルくんとか…変態教師とか…っ」

犬牟田「…残念。二人とも行方不明だ。……捜索隊出します?」カタカタ

黄長瀬「?行方不明?」


皐月「たとえ、どんな輩だろうと…。針目縫よりはマシだっっ!!!」

蟇郡「なるほど…。一時的にでも、『凪田信二郎』から纏の心を離れさせその隙に、一気に倒してしおうと…そういう事か」

犬牟田「……まぁ、でもさ。ぶっちゃけ使える人材限られてるよね…。恋愛フラグ無かったのって、猿投山と美木杉愛九郎と黄長瀬紬くらいだし」

皐月「私も無かった」

犬牟田「戦力にカウントして良いんですか皐月様?」

蛇崩「犬くん有ったっけ?」

犬牟田「君が有るんなら、有ったよ」カタカタ

黄長瀬「…二つ、良いことを教えてやろう。一つ、俺は待たされるのが嫌いだ。二つ、用があるならさっさと言え」

蛇崩「もうすぐ終わるわよ。ちょっと待ってなさい」

皐月「犬牟田、流子は今どこに?」

犬牟田「……スケート場ですね」パソコン画面 パッ

皐月「…ふっ。丁度いい。――黄長瀬さん、」

黄長瀬「?」

皐月「流子に、スケートを教えてやってくれませんか?」

>>112 
こっから全員キャラ崩壊だよ・・・

書くの遅れてすまんな  そしてこれからも多分遅れるわ
読んでくれてる奴ありがとな

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