アルミン「同じ時を過ごしてきたその手を」(71)

──兵站行進訓練

エレン「アルミン!先に行くぞ!?」タッタッタッタ

アルミン「大丈夫……っ!僕も絶対に……ハァッ……追いつくから!」タッタッタッタ…

アルミン(くそ!……足がもつれる……)ハァ…ハァ…

教官「貴様だけ遅れているぞアルレルト!いつまで殿をつとめるつもりだ!?」

アルミン「は……はい……っ!すぐに……っ!」

──…

アルミン(また今日もビリだった……)ハァ

エレン「アルミン、次だ次!また頑張ろうぜ!」

アルミン「う、うん……そうだね!次は一つでも二つでも順位が上がるように頑張るよ」

ミカサ「アルミン、本当にそう思うのなら少しでも食べないと。最近は残す量が多い」

アルミン「!ははは……ミカサの世話焼きは僕にまで及ぶようになってしまったね」

・・・・・

アルミン(入団してしばらく経つけど……もう女子にもだいぶ追い抜かれちゃったなぁ)

アルミン(幸い座学は得意だけど、やっぱり体力の無さが……)

エレン「……ン、……ルミン!聞いてるか!?」

アルミン「あ、ごめん、ぼーっとしてた。どうしたの?」

エレン「さっきの座学で分からないところがあってさ、聞いてもいいか?」

アルミン「勿論!僕に分かることならなんでも聞いてよ」ニコッ

エレン「助かるよ。俺はどうにも一度の講義で理解出来るほど頭が良くなくて……いつもありがとな」

アルミン「エレンの役に立てるならいくらでも。友達だろ?気にしないでよ」

ジャン「おいおい、実技最下位を慰める為とはいえ、こんな簡単な事質問するか?」ゲラゲラ

アルミン「……え?」

エレン「お前、なんでそんな訳の分からない事を言ってんだ?俺はそんな回りくどいことしないぞ?」

ジャン「わかったわかった、そういう事にしておいてやるよ」

エレン「あいつ何がしたかったんだ?……アルミン?どうした?」

アルミン(まさか、エレンはそんなことしない……よね?)

アルミン(……でもよく考えたら、本当はジャンの言うことが正しいかも)

アルミン(完璧なミカサが近くにいるから目立たないけど、エレンは僕と違って立体機動も着々と上手くなっていっているし、対人格闘なんて更に上位でメキメキと上達してる)

アルミン(勉強だって全く出来ない訳じゃないんだ。エレンが集中しすぎている間に講義が進んでしまってわからなくなるだけで……もしかしていつも質問に来るのも沈みがちな僕を立てようとして……?)

アルミン(それにエレンは実技最下位の僕なんかを相手にしなくても教えてくれる人がいくらでも……)

エレン「アルミン!またボーっとして……体調でも悪いのか?」

アルミン「!あ……うん、実はそうなんだ。少し休みたいから質問は違う人にしてくれるかな?」

エレン「わかった。何かあったら呼んでくれよ。ちょっと面倒だが……ミカサに聞くか」ハァ…

アルミン(そうだよ……僕に聞かなくてもミカサだって十分成績はいいんだ。僕はまず……自分の体力の無さをどうにかしないと)

アルミン(自主練習でも……しようかな)

──…

エレン「なぁミカサ。アルミンが最近いない事が多いんだけど何か知ってるか?」

ミカサ「エレン、知らなかったの?アルミンは今時間がある時は営庭で走り込みをしている」

エレン「!そうだったのか。気づかなかった」

ミカサ「エレン、また座学で分からない所があるなら私が……」

エレン「いや、いい。ミカサは教え方が……ちょっとな」

ミカサ「?」

──…

アルミン「ハッ……ハッ……」タッタッタッタ…

エレン「アルミン!」

アルミン「あ……エレン」

エレン「自主練習だろ?俺も付き合うぜ?」

アルミン「……」

エレン「アルミン?」

アルミン「ごめんエレン。僕一人で走りたいんだ。その……君とじゃペースも合わないし、付き合わせる訳には……」

エレン「俺がアルミンに合わせるよ。ゆっくり目から始めて徐々にペースをあげていけば……」

アルミン「エレンにとってはゆっくりでも、僕にはついていけないんだよっ!!!わかってくれよ!」

エレン「!……あ、わ、悪い。そうだよな、邪魔して悪かった。俺は戻るから……アルミンも体冷やさないようにな」

アルミン「あ……う、うん」

アルミン(わざわざ僕を探して来てくれたのになんて事を……)

アルミン(いや、でも仕方ないじゃないか。本当の事だし。エレンには……後で勉強でも教えてあげて謝ればいい)

アルミン(エレンなら許してくれる。僕が体力や技術の事でどれだけ悩んでいるかもわからないくらい……鈍感なんだから)

──…

アルミン(エレンはどこだろう……部屋には居なかったし。せっかく早めに切り上げて勉強を教えようと思ったのに……)

アルミン(あ!エレンとミカサ……)

エレン「で、これは何でこうなる?」

ミカサ「応用編で習った数式を当てはめる。この問題は特徴を掴めばいいだけだから覚えればそれだけでも戦力になる──はず」

アルミン(なぁんだ……やっぱり僕じゃなくてもいいんじゃないか)

アルミン(走り込み続けておけば良かった……)

・・・・・

ライナー「ようエレン、ちょっといいか。……最近アルミンがピリピリしてるようなんだが何かあったのか?」

エレン「ライナー……俺にもはっきりとはわからないんだ。ただ体力面で心配があるらしいんだけど……」

ライナー「けど、なんだ?アルミンの事が分からないなんて珍しいな」

エレン「……俺、なんか最近避けられ気味でさ」

ライナー「!……そうか。お前とアルミン、ミカサは今まで三人一緒が当たり前みたいな所があったからな。これだけ環境が変わればそんな時もあるだろう」

エレン「ああ、でも俺も注意して見てはいるんだ。ありがとな」

アルミン「……大きなお世話だよ」

エレン「!あ、アルミンいたのか……」

アルミン「何が“注意して見てる”だよ!?エレンまで保護者気取りするのか!?」

エレン「ちょっと待てよアルミン、俺は保護者気取りなんて……」

アルミン「そりゃ僕は体力も無いし立体機動だって下手くそだよ!でも君に逐一監視されなくたって生きていけるんだ!バカにしないでくれ!」ダダッ

エレン「アルミン!」

ライナー「……すまん、余計な事をしたようだ」

エレン「……ライナーのせいじゃないさ。俺がきっといつの間にかアルミンの気に障る事をしちまったんだろう。俺が鈍いせいでいつもアイツにしわ寄せがいっちまう……」ショボン

ライナー(アルミンに加えてエレンまで悪化させてしまったか……)ムムム…

──食堂、朝

アルミン(うー寒い!冷え込むと思ったら今日は雪か……)パタパタ

アルミン(昨日の事があるから朝食は別々に食べようかな。どこか開いているテーブルは……あれ?)

アルミン「ミカサ、一人なの?エレンは先に食堂に行ったのに寄り道でも……」

ミカサ「……エレンはあっち。ライナー達と食べているから」ショボン

アルミン(僕に気をつかって?……まさかね。エレンは行動が派手だから敵も作りやすいけど勿論……友達だって作れるんだ。シガンシナとは環境も周囲の意識も違うんだから)

ミカサ「……アルミン?」

アルミン「!ぼ、僕ご飯とってくるね」

ミカサ「うん、早めに食べた方がいい。今日の訓練はかなりきつそうだから」

アルミン「え?でも今日はこんなに雪が降っているんだから流石に立体機動訓練は中止じゃ……」

──立体機動訓練

教官「揃ったか。今日は普段とは違い、道中の巨人討伐のない立体機動訓練を行う。また今日の訓練が成績を大きく左右するという事はないが……なめてかかれば間違いなく貴様らの生死を左右する結果にはなるだろう」

教官「巨人は天候を気にしてくれるほど甘くはない。今回はこの寒さ、そして雪という視界の悪さを乗り越え、決められた場所まで確実にたどり着く為の訓練となる」

アルミン(グローブをしていても上手く手が動かないんだ……気を抜いたら真っ逆さまだ。それに……)チラッ

アルミン(ついてない……こんな時にエレンと同じグループなんて)ハア…

エレン「お前、頭寒くないのか?」

コニー「冬になると大抵聞かれるんだけどよ、帽子が濡れたら即地獄だぜ」

アルミン(コニーだって立体機動は得意だし、ましてや狩猟で暮らしていたから山だって慣れてる)

アルミン(いくら成績に大きく響かないとはいえ二人の足を引っ張るのは目に見えてる……)

アルミン(いつもよりもスピードを上げていかないと……っ!)

コニー「アルミン、もうすぐ出発だぜ?ボケッとして大丈夫か?」

アルミン「!大丈……い、いけない、僕目的地の方向聞いてなかっ……」

コニー「北西だろ?」

エレン「は?北東だろ」

アルミン「ど、どっちなの?」

コニー「……そう言われると自信なくなってくるな」

エレン「俺は北東って聞こえたけど……」

アルミン「ダメだ!もう時間がない。僕は……コニーを信じる」

エレン「おい!遅れてでも確認してから行った方が……」

アルミン「ただでさえ僕は遅いんだ!二人の足を引っ張ったりしない!」パシュッ

エレン「!くそっ……アルミンらしくもねぇ!一人で行っちまったぞ!」パシュッ

コニー「おおお俺たちも行くぞ!」パシュッ

レスありがとうございます
夜にまた来ます

アルミン(寒い……風が身を切るようだ。真っ直ぐ進めているのかすら自信が無くなってくる)パシュッ ヒュンッ

アルミン(二人はもう僕を追い越して行ったのかな……せめて目的地付近で見つけられれば!)


アルミン(あ……あれ?)

アルミン(僕……何をしてるんだ!?)

アルミン「しまった!今日はスピードよりも大事なのは目的地到着までの正確さじゃないか!」

アルミン「三人で状況を確認しながら進まなきゃいけないのに……っ!!!」

パシュッ……

アルミン(!!!アンカーの刺さりが甘い!落ちる……っ!)







アルミン(一面……真っ白だ)

アルミン(──木はどこだ?地面も見えない……)

アルミン(──森を抜けた?)

アルミン「!!違う!崖だ……っ!!!」

アルミン(僕……死……)

エレン「アルミン!!!」


ガシッ ヒュンッ!
ドサッ ザザザッ…

アルミン「ぐっ……エレン?……エレン!」

アルミン(助かった!エレンは!?)

エレン「……アル……ミン」

アルミン「エレン!姿が見えないんだ!どこにいるの!?」

エレン「下だ……崖の……下にいる」

アルミン「そんな……エレン!?」ダダッ

エレン「大丈夫だ。ギリギリだがなんとか足場はあるし手を伸ばせば地面まで後少しってところだ……ハァッ……アルミン、無事か?」

アルミン「僕は大丈夫だ!……エレン、ほら、手を伸ばしてみて!僕の手が掴める?」

エレン「くっ……ダメだ、デカい木の根が邪魔して指先くらいしか触れねぇ……」

アルミン「エレン……エレン……っ!両手を上げてよ!君が少しでも根を掴んで体を持ち上げてくれれば……っ!」

エレン「悪い、アルミン……左腕は動きそうもないんだ。さっき痛めたみたいだ。アルミンの装置は動きそうか?」

アルミン「それがボンベが外れたみたいで見当たらないんだ……でもエレンのボンベが使えれば引き上げられると思うけど……」

エレン「そうか……とことんついてないな。俺の装置も崖にぶつかった衝撃で吹っ飛んでった……」

アルミン「そんな!じゃあどうやって君を引き上げればいいんだ……」

エレン「……アルミン、一人で目的地まで行ってくれ」

アルミン「!?君を置いて行けっていうのか!?」

エレン「置いて行くんじゃない……ハァ……助けを呼びにいくんだ。教官が許してくれりゃあいいんだがな」

アルミン「同じ事だよ!」

エレン「行ってくれ……頼むよ。このままじゃ二人ともお終いだ」

アルミン「そんな心許ない足場でどれだけ耐えられるっていうんだよ!?強い風ひと吹きだって危ないんだぞ!?」

エレン「アルミン……」

アルミン「なんで僕には力が無いんだ……っ!!!この指は君に触れているのに……っ!!!エレンを引き上げることも……出来ないなんて……っ!」グスッ

エレン「……この天候で、更に俺は片腕も使えない。素手で引き上げられるのなんてライナーでも難しいだろ。……アルミン、泣くなって。俺はここでアルミンを信じて待つから」

アルミン「僕が目的地にたどり着けるかどうかだって怪しいんだぞ!?なんで信じられるんだ!?僕が僕を信じることだって出来ないのに……っ!」

エレン「アルミンだからだ。俺の知ってるアルミンなら、出来る」

アルミン「僕……だから?」

エレン「ああ。出発前に見た地図にもえぐれた地形の崖があっただろ?きっとここらへんはその西北西あたりだ」

アルミン「そう言えば!……でも……」

エレン「アルミン、落ち着けば大丈夫だ。今日は最初からどうも冷静じゃなかっただろ?」

アルミン「そう……かもしれない」

エレン「でも今のアルミンなら大丈夫だ。……それでももしアルミンが自分を信じられないなら……“アルミンを信じている俺”を信じてくれ」

アルミン「!……エレンを信じる?」

エレン「ああ。今回は流石に雪もあってか訓練自体の距離は短い。あれだけ走り込んでたアルミンなら必ず目的地までたどり着ける」

エレン「俺なんかよりも方向感覚がいいアルミンだからこそ、必ず、だ」

アルミン「わかった……でもエレン!これを受け取って!」

エレン「?アンカーと……ジャケット!?このバカ!雪の中ジャケット無しでどうやって進むつもりだ!?」

アルミン「僕は大丈夫だ!だからエレンはそのジャケットとアンカーを腕と体に巻いて、頭の上に出っ張ってる木の根にアンカーを固定してくれ!」

アルミン「装置の方は木に固定したから、これなら風にも抵抗できるし、ジャケットを巻けば傷もつかないはずだ!」

アルミン「行ってくる!……必ず戻るから!」ダダッ

エレン「ああ、頼んだぞ!」

アルミン(時間はない!急げ!でも方向は間違えないように慎重に……まずは東北!エレンの言っていた方角へ進もう)

アルミン(木の根が張ってて姿はよく見えなかったし、エレンも左腕を見せないようにしていたけど……)

アルミン(……エレンに触れた僕の指先が血で汚れた。僕には擦り傷しかないんだからエレンは出血しているはず。おそらくは……上がらない左腕)

アルミン(……違う、エレンの傷の心配より目的地だ!考えろ!絶対に目的地まで行かなきゃいけないんだ……何か目印は?)

アルミン(……木の枝!)

アルミン(!この辺りは枝の雪が落ちてる木が多いし細かい枝も落ちてる)

アルミン(幹の砕けた跡はアンカーが刺さった証拠!……ここは人が通っているはずだ)

アルミン(道は合っている……もうすぐ……きっと……いや絶対に着く!)

アルミン(考えるのと同時に進め!足を止めちゃダメだ!)

アルミン(待ってるんだ!エレンがっ!)

アルミン(僕を信じて!!!)

──…

コニー「!アルミン!?なんで歩きで……ジャケットも無いじゃないか!?よくここまで来れたな……っていうかすまん、俺が方向を聞き間違えちまったから……」

アルミン「コニー!ハァ……ハァ……エレンが……っ!」

コニー「エレンがどうした!?一緒じゃないのか!?」

アルミン「エレンを……助けないと!!頼むから手を貸してくれ!!早くしないと……っ!」

──────
────
──

アルミン「ハッ!……エレン!」

エレン「お、アルミン!起きたか」

アルミン「あ、……え?医務室……いつの間に」

エレン「もう訓練から戻って二日目らしいぜ。アルミンは熱だしてたらしいな。今ミカサが夕食を持ってくるって言ってたし、ちょうど良いから軽く食おうぜ」

アルミン「エレン……その腕……」

エレン「ああ、両腕吊るのって格好つかないよな」ハハハ

アルミン「……見せてくれる?」

エレン「えー。これ包帯から抜くだけでも痛いんだぞ?左腕だって出血こそしたけど折れてはいないし別に……」

アルミン「お願い、エレン」

エレン「んー……仕方ないな」スルッ

アルミン「!あ……そんな、右腕……これはアンカーを巻いた跡が傷に?ジャケットじゃダメだったのか……僕のせいで……っ!」ポロポロ

エレン「おい、泣くなって!アルミンのせいじゃない、アルミンのおかげなんだ」

アルミン「?……僕のおかげ?」グスッ

エレン「アルミン達が戻ってきてた時に、俺は気絶しちまってたんだろ?」

アルミン「!そうだ、僕それを見て君が……エレンが死んでしまったんだと勘違いして……」

エレン「ああ、聞いた話じゃアルミンもそこで気を失ったらしいな。その時、俺はアンカーを巻いた腕だけで辛うじて足場に引っかかってた状態だったらしい」

アルミン「それでその傷になっちゃったのか……」

エレン「傷になっちゃったんじゃない、傷だけで済んだんだ。アルミンのおかげで」

アルミン「!」

エレン「アルミンがあの時、ジャケットとアンカーを渡してくれたから今俺が生きていられるんだ。本当に感謝してる」

アルミン「エレン……」

エレン「それに……たどり着いてくれただろ?目的地に。それがなきゃどの道俺は死んでたんだ」

エレン「ありがとな、アルミン」

アルミン「っ!エレン!!」ギュッ

エレン「いててててて!!手はやめろ手は!」

アルミン「あ、ごめん!……その、本当にごめん!僕は君に冷たくして……成績が思うように上がらない事を八つ当たりしてしまって……」

アルミン「それなのに意地を張って一人で飛び出した僕を追ってきてくれて……助けてくれて……本当に……っ!」ポロポロ

エレン「あーもー……」

ギュッ

アルミン「!エレン!手が痛いんじゃ……」グスッ

エレン「大切な親友なんだ、当たり前だろ?」

エレン「アルミンに……この手が届いて良かった」

アルミン「!うっ……くっ……」ポロポロ

エレン「お前って結構よく泣くんだな」

アルミン「!昔はエレンだって泣き虫だったじゃないかぁ……」ポロポロ

ミカサ「そう、エレンは泣き虫だった」

エレン「!」
アルミン「!」

エレン「いつからいたんだよ!は……恥ずかしいだろうが」ボソッ

ミカサ「実は結構前から医務室の前で待っていた」

エレン「」

アルミン「……///」カアァ

ミカサ「流石に私も気を使って終わるまでは待とうと思っていた。けど終わる気配がなく、且つこのままではせっかくの食事も冷めてしまうと思ったので、入るべきと判断した」

エレン「そ、そうか……まぁミカサならいいか。で、食事は二人分か。ミカサはもう食って来たのか?」

ミカサ「……とても言いにくいのだけど、ライナーがあと二人分の食事を持って医務室の外で泣いている」

ライナー「うぐっ……うぉぉぉん!!!」ボロボロ

エレン「」

・・・・・

エレン「そういえばライナーも俺達を待っててくれたんだろ?引き上げにも来てくれたみたいだし。ありがとな」モグモグ

ライナー「……いいんだ。二人の事が気になっちまってな」グスッ

エレン「いつまで泣いてんだよ……」

ライナー「いやもう……ケガを見たアルミンの反応とか……もう胸にきちまって……」グスッ

エレン「結構最初の方から聞いてたんだな……」

ミカサ「エレン、ライナーにはもう一つ借りがある。ちゃんと謝らないとダメ」

エレン「え?な、なんだよ」

ミカサ「私とライナーとコニーはあなた達の帰りを待った。けど教官からは到着後はすぐに下山の指示が出ていたからこれは命令違反」

エレン「!」

アルミン「あ……」

ミカサ「私はいい。私はエレンとアルミンがいない状態で下山する気は元々ない」

ミカサ「コニーも二人と同じ組だったから待たざるを得なかった。勿論二人がいないから採点は低かったけど。でもライナーは同じ組でもないのに残ってくれた」

ライナー「おいミカサ、俺は俺の考えで残ったんだぞ?」

ミカサ「勿論それはあなたの判断。でもそのせいであなたが罰則を受けて、雪が残る営庭をニ十周も走らされた事はエレン達も知っておくべき」

アルミン「そ、そんなに!?」

エレン「わ、悪かった……俺達のせいで罰則まで」シュン

ライナー「おいおい、本当に気にしないでくれ。俺はここで感動の話を聞けただけで満足だぜ」

エレン「恥ずかしいからその満足の仕方はやめろよ!」

ライナー「ハハハッ。冗談だ冗談。それにミカサは四十周してるからな。俺なんて軽い方だ」

エレン「え!?」

アルミン「ミカサだけなんでそんなに!?」

ライナー「助けに行くのを止めようとした上官を脅そうとしたからな」

ミカサ「……あの時の私に立ちはだかるのはとても愚かな事」

エレン「……それでも罰則増えるほど脅すなよな」ハァ…

ライナー「ふう……じゃあ俺は食い終わった食器でも片付けてくるかな」

ミカサ「私も行こう」

ライナー「片付けぐらい一人で出来るさ。お前もずっと心配していたんだ。ゆっくり話していくといい」

ミカサ「……ありがとう」

ライナー「そういやコニーも頻繁に様子を見に医務室まで来てたからな、後で会ったら礼でも言っておけよ?」

エレン「ああ、わかった。ありがとな」

アルミン「ありがとね」

数日後──

アルミン(やっと少し落ち着いたね)ヒソヒソ

エレン(だな。けど痛いなー……休んでた間の座学)ヒソヒソ

アルミン(ミカサがエレンに教えるのって……)ヒソヒソ

エレン(……毎回こんなもんだ)ハァ…

ミカサ「エレンはいつもこの数式の挿入をを間違える。注意してと言った事ほど間違えるのは子どもの頃から全然変わっていない。例えば川に落ちるのは決まって橋の上で遊んでいる時だったし、転ぶのは砂利道を走るからで……」クドクド

エレン(一問でも間違えると思い出話がクソ長いんだよコイツは)ヒソヒソ

アルミン(あはは……だから僕が良かったんだね)ヒソヒソ

エレン(アルミンに教わるのが一番わかりやすいからな)ヒソヒソ

エレン(なぁ……アルミン)チラッ

アルミン(うん……ミカサには悪いけど……)チラッ

ミカサ「……どうしたの?」

エレン「ちょっと俺達!」ガタッ

アルミン「走り込みに行ってくるね!」ガタッ

ミカサ「勉強は……?」

エレアル「「後で!!!」」ダダッ

エレアル((別の人に聞くっ!))ボソッ

エレン「ふう……ここまでくりゃ平気かな。このまま本当に走り込みに行っちまうか?……って悪い、また誘っちまった。アルミンは一人の方が走りやすいんだよな」

アルミン「!いや、一緒に走りに行こうよ……君が良ければ。腕のケガは?もう走っても大丈夫なの?」

エレン「ああ、きつかったら止めるし。休んでた分を取り返したいからな」

エレン「よし!……じゃあもうひとっ走りいくか!」スッ

アルミン「!……うん!行こう!」ギュッ

アルミン(エレンと手をつないで走るなんて何年ぶりだろう?)

アルミン(きっとエレンは無意識なんだろうけど)

アルミン(一度僕が振り払ってしまったその手……)

アルミン(そして一度僕が救えなかったその手を……)

アルミン(もう一度差し伸べてくれて……)

アルミン(ありがとう)





おまけ

ライナー「でなっ、言うんだよエレンが……『アルミンに……この手が届いて良かった』……くぅ~っ!たまらんだろう!?」ボロボロ

コニー「あああ……アルミン……エレン……」グスグス

ミーナ「うえぇぇぇん……感動……っ!」ポロポロ

ハンナ「ううっダメ……もう目がハレちゃう……私も皆に話そう!」グスッ

アニ(耐えろ私……耐えろ!)ウルッ

ジャン「なぁなぁ!さっきエレンとアルミンが手ぇつないで走ってたぜ!?気持ちわりーよなぁ全く……え?お前らなんで泣いて……」

ライナー「……っ!!!」ギラッ

ジャン「な……なんだよライナー……おい!なんか言えって!泣きながら睨むなよ!怖いって!おい、近づくな!おい!……おいーーーーっ!?」



おしまい

終わりです

進撃ss九作目になります
前作がアルミン「マナー講座が始まるよ」、
その前がアニ「この雨に秘密を隠さないか」でした
お付き合いありがとうございました

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