海馬「この青眼が贋作だと!?」フジタ「ええ」 (69)

海馬「馬鹿な!この色彩!質感!本物だけが持つ圧倒的な存在感ッ!」

海馬「このカードはどうみても偽者のそれではないッ!」

フジタ「そう思うのならご購入されてみてはいかがです?」

海馬「…」

海馬「ふぅん、それもそうだな」

海馬「いいだろう、いくらだ?」

フジタ「…」スッ

海馬(指二本…)

海馬「フンッ、二百万か、その程度なら」

フジタ「いいえ、二億ですぜ、社長」

海馬「なんだと?」

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海馬「貴様、贋作というわりには随分とふっかけてくれるじゃないか」

フジタ「フェイクといっても、こいつには中々手がかかってるんでね」

海馬「このカードがフェイクだと!?バカめ!」

海馬「その辺の凡骨の目は欺けても、俺の目はごまかせんぞ!」

磯野「騙されてはいけません!海馬サマ!」

海馬「何?」

磯野「このフジタと言う男、表向きは贋作専門のギャラリーを運営しているなどと嘯いておりますが」

磯野「裏では美術館の横流し品・あるいは盗品など、いわくつきの美術品をブラックマーケットを通じて法外な値で売りさばいているという悪党です」

磯野「そのカードとて、一体どのような手段で手に入れたのやら」

フジタ「…」

磯野「それにオリジナルの『青眼の白龍』をお持ちなのは世界で海馬様ただお一人のはず!こんな所に4枚目のカードがあるはずがありません」

磯野「ですから、いかに精巧な出来であろうと、あのカードはやはり偽…」

海馬「くだらん、この俺がそんなつまらん詐欺に引っかかるとでも思うのか?」

磯野「い、いえ!滅相もございません」

海馬「ならば黙っていろ」

海馬(あれはコピーカードやイミテーションなどでは断じてない!)

海馬(間違ない、本物の『青眼の白龍』だ!)

海馬「貴様、フジタとか言ったな、答えろッ!!この青眼をどこで手に入れた!!」

フジタ「そいつは答えられませんな」フウー

フジタ「そこの磯野さんの言う通り、うちのギャラリーには多少後ろ暗いところもあるんでね」

海馬「話にならん、この店では出自も明かせん商品を売りに出すのか?」

フジタ「…社長、これは例え話として聞いて欲しいんですがね」

フジタ「制作工程の途中で偶然ラインから外れたカードがあったとしましょう」

海馬「?」

フジタ「そして、もしもその作りかけのカードを見つけた作業員が、それをこっそり隠し盗り、保管していたとして」

フジタ「そのカードが後に市場に出た時、どのように扱われると思いますか?」

海馬「…」

海馬「少なくともそのまま金にはできんだろうな」

海馬「カードを、完成させる必要がある」

フジタ「海馬社長、『青眼の白龍』は世界にたった四枚、いえ今や三枚しかないカードです」

フジタ「そう、青眼の価値の源泉は『貴重であること』そのものだといってもいいでしょう」

フジタ「どうです、これ以上そのオリジナルが増えることに、果たして意味があると思われますか?」

海馬「…」

海馬「なるほどな」

海馬「確かに、この青眼は偽者だったようだ」

海馬「いいだろう、貴様の言い値で買ってやる」

磯野「海馬サマ!?」

海馬「だが勘違いするなよ、俺はこのカードを完成させた職人に敬意を表し、金を払う気になっただけだ」

海馬「断じて貴様の口車に乗ったわけではない!」

フジタ「ふふふ、そいつはどうも」

海馬「金の支払いは明日だ、すぐに移送できるようにしておけ」

海馬「行くぞ、磯野」

磯野「は、はい」

―数日前―

フジタ「コイツはM&Wのカード、それも『青眼』(ブルーアイズ)ですね」

店長「ええ」

フジタ「M&W(マジック&ウィザーズ)、TCG(トレーディングカードゲーム)の先駆けにして王者」

フジタ「数千種類にも及ぶカードを組み合わせて戦うM&Wでは、詰まるところ現実の資産がモノを言う」

フジタ「このゲームのカードを集めるために家を売った人間がいるなんて噂もあるほどだ」

店長「よくご存じのようで」

フジタ「…なるほど、こいつは『青眼の白龍』(ブルーアイズホワイトドラゴン)のフェイクのようだが」

フジタ「しかし池田さん、こいつは出来がお粗末ですぜ」

フジタ「トランプニスのノリが雑だし、色合いも塗りが半端だ」

フジタ「これじゃまるで印刷の途中で機械からはじかれたような…」

フジタ「?いや、まさか」

店長「さすがはフジタさん、そのまさかですよ」

店長「そう、そいつは本物の『青眼』なんですよ」

店長「ただし、未完成のね」

フジタ「…」

店長「元はとあるルートから流れてきた珍品でね」

店長「そのままでも欲しがるマニアはいないこともありませんが、売値はたかが知れたものになってしまう」

店長「どうです?フジタさんなら、コイツの価値を最大まで生かせると思うのですが」

フジタ「…勘違いしてもらっちゃ困るんだが、うちはカードショップじゃない」

フジタ「トレーディングカードの扱いなんてのは専門外もいいところですぜ」

店長「でも、あなたなら可能だ、そうでしょう?」

フジタ「…」

すいませんちょっとパチンコ打ってきます

フジタ「邪帝ガイウスでダイレクトアタック」

サラ「あーん!また負けたヨ!!」

フジタ「当り前だ、ウィジャ盤デッキなんかで勝てるか」

サラ「でも、5枚揃えるだけで勝てるんダヨ?」

フジタ「その揃えるのが大変なんだろうに」

サラ「ね!モッカイやろ?フジタ!」

フジタ「もういい、お前の実力は知れた」

サラ「ぶー!!」

サラ「でもすごいネ!カード一枚で二億円なんて」

サラ「『青眼の白龍』ってそんなに強いの?」

フジタ「それが、実を言うとそうでもない」

サラ「え?」

フジタ「最初期のルールならともかく、生贄の概念が生まれてからは上級モンスターの召喚は難しくなったからな」

フジタ「『青眼』は通常モンスターの中では最強の攻撃力を持つんだが、逆にいえばそれだけのカードだ」

フジタ「サポートカードが発売されればまた別なんだろうが、そもそも世界に三枚しかないカードだ、それは無茶ってものだろう」

サラ「ふーん」

フジタ「だが鑑賞用としてなら話は別だ、『青眼』のイラストには初期カード独特の味わいがある」

フジタ「それに、あのKC(海馬コーポレーション)の高校生社長、海馬瀬戸が『青眼の白龍』に異常な執着を持ってることは有名な話だからな」

フジタ「あの実物を見せれば、そりゃ二億くらいはわけなく出すさ」

サラ「なんか、フジタがM&Wにこんなに詳しいなんて意外ネ」

フジタ「…昔、アメリカで文無しになったことがあってな」

フジタ「拾ったカードで賭けデュエルして、食いつないでた時期があったんだ」

サラ「ああ、ナットク」

サラ「あっ!」

フジタ「どうした?」

サラ「あの子また来てる」

少年「…」ジー

サラ「昨日もああやってズット『青眼』を見てたよ」

フジタ「へえ」

ツカツカ

フジタ「君、そんなにこのカードが気になるのかい?」

少年「!っ、あ、あの…すいません僕!」

フジタ「いやいや、何も怒ってるわけじゃない」

フジタ「随分熱心に見つめてるようだから、話を聞いてみたくなったんだ」

少年「そう、ですか」

フジタ「昨日も長いこと眺めてたそうだけど、そんなに『青眼』が好きなのかい?」

少年「その、昔父さんがこのカードを見せてくれたことがあって」

少年「あ、もちろんこんな立派なのじゃなくて、なんだか色も褪せたようなまがい物だったんですけど」

少年「お守り代わりにいつも身に着けていたそうです」

フジタ「!ほう…」

フジタ「その『青眼』は今もお父さんが?」

少年「父は、もういません、事故死だったと聞いています」

少年「カードもそのゴタゴタで、一緒にどこかへいってしまったそうです」

フジタ「…」

フジタ「それはすまない、悪いことを聞いたね」

少年「いえ、いいんです元々ほとんど家には帰ってこない人でしたし、あんまり思い出もないんです」

少年「ただ、このカードを見てると、あの時の父の面影がほんの少しだけど、感じられるようで」

フジタ「なるほどね」

フジタ「よくわかったよ、そういう事なら好きなだけ見ていくといい」

少年「あ、ありがとうございます」

サラ「グールズ?」

フジタ「ああ、そういうカード専門の国際的犯罪組織があるんだ」カチカチ

フジタ「あった、N県での交通事故、これだな」

フジタ「崖からの転落、爆発に炎上、運転手は即死か」

フジタ「この状況でカードだけが無事とは考えにくい」

フジタ「…」

サラ「フジタ?」

フジタ「こいつは、裏を取る必要があるな」

フジタ「困るんですよ、店長さん」

フジタ「確かにうちは盗品まがいの物品を売りさばくこともありますがねえ…」

ドン!

フジタ「こんな経緯で手に入れた代物を、客に出したりするつもりはないんだよ!」

店長「ひっ、す、すみません、知らなかったんです」

店長「まさかその『青眼』がグールズの盗品だったなんて」

フジタ「こっちはもう買い手もついちまってるっていうのに」

店長「…」

フジタ「とにかく、もうこんなことはこれっきりにしてもらいたい」

店長「は、はい、もちろんです」

フジタ「まったく」

フジタ(これからあの俺様社長をどうやって言いくるめるか)ハア

フジタ(カードに関しちゃ随分目が利くようだし、いまさらその辺のフェイクじゃ誤魔化しきれんだろうな)

フジタ「?カード」

フジタ「!そうだ、店長」

店長「はい?」

フジタ「お願いがあるんですがね」

フジタ「お詫びと思って、一つ聞いてもらえませんか」

店長「はあ」

翌日

海馬「フジタァ!!約束通り来てやったぞ!!」ドン☆

フジタ「お待ちしておりました、社長」

海馬「さあ、これがカードの代金だ」ドサッ

海馬「トランクにキャッシュで用意してやった、さっさと確認するがいい」

フジタ「はい、確かに」

海馬「では『青眼』を持ってこい!!今すぐにな!!」ウズウズ

フジタ「その前に海馬社長、お伝えしなければならないことがあります」

海馬「ああ?」

フジタ「この『青眼』を買い取りたいと仰るお客様がもう一方おられまして」

海馬「なんだと!?」

フジタ「どうもこの『青眼』、元を辿ればその方の御父上の所持品だったそうで」

フジタ「是非ともご自分の手で買い戻したい、と」

海馬「ふざけるな!そんなこと俺の知ったことではないッ!」

海馬「そいつを呼んで来い、俺が直接話をつけてやる」

少年「あ、あの…」

海馬「?なんだ、トイレなら突き当りを右だぞ」

少年「そ、そうじゃなくて」

海馬「お父さんとお母さんはどうした、はぐれたのか?」

少年「えと、違っ、その」アセアセ

フジタ「社長、彼がその『青眼』の買い手です」

海馬「なんだと!?この子供がか!!」

少年「…」ビクビク

海馬「こんな子供に『青眼』の価値がわかるはずなどっ…!」

少年「…」オドオド

海馬「…ふぅん」ジロジロ

少年「?」

海馬「…」

海馬(この少年…)

海馬(少し、モクバに似ている…!)

フジタ「本来は先に契約した海馬社長にお売りするのが筋でしょうが」

フジタ「なにぶんこの『青眼』、この子にとっては亡き父の形見なのだそうです」

海馬「そうなのか?」

少年「は、はい」

海馬「フン!」

海馬「なるほど理由は大体理解した」

海馬「だが、だからといって俺が素直にハイそうですかと引き下がると思うか?」

フジタ「ええ、それはごもっともです」

フジタ「なのでここは一つ、どうでしょう」

フジタ「決闘(デュエル)で決着をつける、というのは」

海馬「ほう」

海馬「貴様、この俺のデュエルの腕を知らんとみえる」

海馬「いいだろう、そんな条件ならいくらでも飲んでやる」

海馬「それで、相手は誰だ?」

海馬「フジタ、貴様のことだ!さぞかし強力な助っ人を用意しているのだろう?」

フジタ「いえいえ、これは当人同士の問題ですので、当然決闘も当人同士で行って頂きます」

海馬「馬鹿な!この子供とデュエルだと!?」

少年「…」

フジタ「海馬社長、彼もそれなりの覚悟を持ってこの場にいるのですよ」

海馬「本当に、いいんだな?」

少年「はい」

海馬「面白い、ならばデュエルディスクを構えろ」ジャキン

少年「…」ジャキン

海馬「さて…」

海馬「デュエル開始の宣言をしろォ!!磯野ッ!!」

磯野「は、はいィ!」ドキッ☆

磯野「決闘開始ィィィーーーー!!!!」

海馬LP4000
少年LP4000

海馬「M&Wのルールは知っているな?小僧」

海馬「お互いの開始ライフは4000、これが0ポイントになった時点でそいつは敗北、デュエルは終了だ」

海馬「先攻はくれてやる、さあ!カードをドローするがいい!」

磯野「海馬サマ、もう先攻ドローは廃止に…」

海馬「構わんッ!その程度はハンデとしてくれてやる」

磯野「そ、そうですか」

少年「僕のターン、ドロー!」

少年「…よし」

少年「手札から、『強欲な壺』を発動!」

海馬「ちょっと待て」

フジタ「おや、どうかしましたか?」

海馬「いきなり禁止カードを使っておいて、どうかしたか?だと」

フジタ「社長、これは公式戦じゃないんですぜ?」

フジタ「禁止カードを使っちゃいけないっていうんなら事前にそう確認を取るべきでしたね」

フジタ「そうだろう?ジャッジ(審判)」

磯野「…そ、それは」

フジタ「それとも海馬社長ともあろうものが、小学生を相手に、公平な条件でないと戦えないと?」

海馬「ぐ!」

海馬「いいだろう、デュエル続行だ!」

サラ「フジタ、禁止カードって?」

フジタ「M&Wにはな、あんまり強すぎるんで禁止になったり、デッキに入れられる枚数を制限されるカードがあるんだ」

サラ「へー、あの壺そんなにツヨイんだ」

海馬「フンッ、禁止カードを使った程度でこの俺のデッキに…」

少年「『終末の騎士』を召喚します、騎士の効果で『処刑人マキュラ』をデッキから墓地に」

海馬「待てェェーーー!!!」

海馬「手札から『エフェクトヴェーラー』を捨てる!その効果で『終末の騎士』の効果は無効だ!!」

海馬「フジタッ、貴様だなァ!!子供にこんな卑劣な入れ知恵をしたのは!!」

フジタ「さて、どうでしょうな」

サラ「フジタ、シャチョーさんなんで怒ってる?」

フジタ「『処刑人マキュラ』ってのも禁止カードでな、墓地に送られたターンに手札から罠カードを発動できる効果を持ってるんだ」

サラ「それでなんで怒る?」

フジタ「…さあな」

少年「なら、カードを五枚伏せてターンエンドです」

海馬(あの五枚、先の戦術からしてどうせドロー系のカードだろう)

海馬(理由は分からんが、フジタの奴どうしても俺にあの『青眼』を売りたくないらしい)

海馬(マキュラを使ってまで勝とうとするとは)

海馬(面白い!!)

海馬「完膚なきまでに叩き潰してやる!!覚悟しろ!!ドロー!!」

海馬「ワハハハハハ!!良いカードを引いたぞッ!!」

少年「…」

サラ(大人げない)

磯野(大人げないな)

海馬「俺は手札から魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!」

海馬「このカードは手札からモンスターを墓地へ送ることで、デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚することができる!!」

海馬「俺は『青眼の白龍』を墓地に送り、『青き眼の乙女』を特殊召喚する」

乙女「セトサマー」【攻0:守0】

フジタ「!?なんだあのカードは」

サラ「フジタも知らないの?」

海馬「フハハハハハ!!当たり前だ、このカードはまだ未発売のストラクチャーデッキ『青眼龍轟臨』の収録カードだからなァーー!!」

フジタ「!」

サラ(…やっぱり大人げない)

磯野(…大人げないです、海馬サマ)

海馬「『青眼龍轟臨』はその名の通り、『青眼の白龍』を切り札とするストラクチャーデッキだ!!」

海馬「光属性・ドラゴン族・通常モンスターが中心にラインナップされており、それらのサポートカードや蘇生・アドバンス召喚・墓地肥やしを補助するカードが多数収録されている!!」

海馬「上級者から初心者までおすすめできる充実の内容の上、絶版になっていた『青眼の白龍』もイラストを変えてもちろん再録だ!」

海馬「強靭にして無敵!降臨せよ!我が魂!!ブルーアイズ!!ホワイトドラゴン!!」

海馬「果てしなく続く戦いのロード、それが貴様の未来となるのだァーー!!」

海馬「…」

海馬「とまあ、宣伝はこの辺にしておくか」

磯野「お疲れ様です、海馬サマ」

海馬「続いて行くぞ!!俺は手札から永続魔法『ポジションチェンジ』を発動!!」

海馬「このカードは1ターンに一度自分フィールド上のモンスター1体の位置を、使用していない隣のモンスターカードゾーンに移動する事ができる」

海馬「『ポジションチェンジ』の効果で『青き眼の乙女』を隣のモンスターゾーンへ移動!」

乙女「ヨイショ」

フジタ「モンスターの位置を移動するだと?海馬社長は一体なぜそんな無駄なことを…!?」

海馬「いいリアクションだぞォフジタ!!その答えはこれだ!!」

フジタ「!」

青眼「キシャアアア!!」【攻3000:守2500】

フジタ「!い、いつの間にか『青眼の白龍』が召喚されているゥ!!?」

サラ「フジタ、もしかしてこういうノリ好き?」

フジタ「…ん、まあな」

海馬「そう、『青き眼の乙女』は1ターンに一度、他のカードの効果の対象になった時、手札・デッキ・墓地のどこからでも『青眼の白龍』を特殊召喚する効果を持っている」

サラ「そっか、だからポジションチェンジを使ったんダ」

海馬「まだ終わらんぞ!さらに俺は『正義の味方カイバーマン』を通常召喚」

カイバーマン「フンッ」【攻200:守700】

サラ「なんか弱そうなのが出てきたヨ」

海馬「カイバーマンの効果発動!カイバーマンをリリースすることで手札から『青眼の白龍』を特殊召喚する!!」

海馬「降臨せよ!!ブルーアイズホワイトドラゴン!!」

青眼「キシャアアア!!」【攻3000:守2500】

サラ「また青眼…」

海馬「まだだァーー!!」

海馬「魔法カード『死者蘇生』!!」

海馬「これで墓地からもう一体、『青眼の白龍』を特殊召喚する!!!」

青眼「キシャアアア!!」【攻3000:守2500】

海馬「ふははははは!!すごいぞー!かっこいいぞー!!」

サラ「ぶ、青眼が三体も」

少年「…」

海馬「貴様の場には貧弱な『終末の騎士』が一体、これで勝負はついたな」

海馬「ゆけっ!!『青眼の白龍』!!滅びのバーストストリーム!!」

青眼「ズゴオオオオオオ!!」【攻3000】

騎士「ぬわーーーーーーー!」【攻1400】破壊

少年「うわあああああ!!」LP4000→2400

海馬「思った通り、貴様のデッキはマキュラによってドローをブーストさせる、ターボデッキだ!!」

海馬「そして勝ち筋は、ずばりエクゾディア!!」

少年「!」

サラ「…?」

サラ「フジター」ウルウル

フジタ「はぁ…」

フジタ「要するにあの子はたくさんカードを引いて勝つタイプのデッキを使ってるってことだ」

フジタ「で、その勝ち方がエクゾディア」

フジタ「…エクゾディアくらいは知ってるな?」

サラ「テヘッ♪」ペロッ

フジタ「お前ホントはM&Wのこと全然知らないだろ」

フジタ「いいか、このゲームには大きく分けて三つの勝ち方がある」

フジタ「言って見ろ」

サラ「えっと、相手のライフをゼロにする」

フジタ「あと二つ」

サラ「あ、相手のデッキをゼロにする?」

フジタ「よく気づいたな、厳密には間違いだがまあいいだろう」

フジタ「あと一つ」

サラ「うーん?」

フジタ「…何故そこで悩む、お前が使ってたデッキもそうだろ」

サラ「あ!ウィジャ盤!」

フジタ「そう、前二つの条件とは異なる、特殊な条件を満たすことで発生する勝ち方だ」

フジタ「ウィジャ盤は、ウィジャ盤を含む五枚のカードを場に揃えることが勝利条件だったな」

サラ「ウンウン」

フジタ「対してエクゾディアはパーツとなるカードを五枚、手札に収めることで完成する特殊勝利条件をもつカードのことだ」

フジタ「正確には『封印されしエクゾディア』『封印されし者の右足』『封印されし者の左足』『封印されし者の右腕』『封印されし者の左腕』を揃えたとき、そのプレイヤーはゲームに勝利する」

サラ「ワカッタ、そのエクゾディアを揃えるために、あのデッキたくさんドローする効果のカードが入ってるネ」

フジタ「そういう事だ」

サラ「でも、それとマキュラになんの関係アル?」

フジタ「それは…」

海馬「どうせそこに伏せてあるのはドロー関係のカードばかりだろう?」

少年「…」

海馬「貴様は1ターン目でエクゾディアを揃えられなかった時点で、既に敗北していたのだァーー!!」

海馬「ワハハハハハハハ!!」

少年「…」

サラ「ホントに?フジタ、もうあの子に勝ち目ナイの?」

フジタ「いや…」

少年「まだだ」

海馬「なに…?」

少年「まだ終わってない」

海馬「ほう」

少年「僕は、諦めない」

海馬(この少年、いい目をしている)

海馬(そう、この俺を苦しめてきたのは)

海馬(いつだってこんな目をした連中だったな)

少年「トラップカード!『無謀な欲張り』を発動!!」

少年「ドローフェイズをこの後二回スキップすることを条件に、カードを二枚、ドローする!!」

海馬「なるほど、この俺のターンにエクゾディアを揃えるつもりか」

海馬「良かろう!せいぜいあがいてみせるがいい!!」

サラ「そっか、カードをドローする罠カードがあるんダネ!」

サラ「まだ四枚も伏せカードはあるモン!きっとエクゾディアは揃うよ!ね!フジタ」

フジタ「…それは、厳しいだろうな」

少年「トラップ発動!『強欲な瓶』!効果によりカードを一枚ドロー!!」

少年「くっ」

海馬「フハハハハハ!どうした?もう諦めたか」

少年「誰が諦めるもんか!!『八汰烏の骸』でカードを一枚ドロー!!」

少年「っ!」

フジタ(あの伏せカードだけでエクゾディアを揃えるのは、ほとんど不可能だ)

フジタ(もし可能性があるとしたら)

海馬「伏せカードは、あと二枚か」

少年「!もう一度『無謀な欲張り』を発動!!」

少年「カードを二枚、ドローする!!」

少年「ドロー!!」ズバッ

少年「き、来た!!」

海馬「なに!?」

少年「最後のリバースカードを発動します」

少年「速攻魔法『手札断殺』!!」

フジタ「!来たか」

サラ「え?」

海馬「『手札断殺』だとォ!?まさか!!」

少年「カードの効果によって僕はカードを二枚墓地に送り、その後カードを二枚ドローします」

少年「僕が捨てるカードは、さっき引いてきた二枚目の『終末の騎士』と」

少年「『処刑人マキュラ』!!」

海馬「な、なんだとォーー!!」チラ

磯野「!…」

サラ「あ!マキュラの効果」

少年「このターン!僕は手札からトラップを発動できます!」

少年「カメヨクバリヤタガラスカメコウフクコウフクドロードロードロー…」

サラ「ひ、引いた罠カード、そのまま使って何度もドローしてるヨ」

フジタ「これでマキュラの恐ろしさがわかったか?」

海馬「おのれ~」

少年「揃った!」

少年「揃いましたよ、エクゾディア!ほら!!」

磯野「確かに」

磯野「…このデュエル、海馬サマの敗北です」

海馬「ふん、くだらん」

海馬「実にくだらんデュエルだった」

少年「あ、あの…」

海馬「わかっている、あんな偽者の『青眼』なぞ、貴様にくれてやるわ」

少年「あ!ありがとうございます!!」

海馬「礼などいらん、勝者の特権だ」

サラ「ヤッタヤッタ!!キミすごいよー!カッコよかったヨー!!」ムギュ

少年「わわわ!」

海馬「帰るぞ、磯野」

磯野「はい」

フジタ「…」

数日後
KC本社社長室

海馬「それで、今さら何の用だ」

海馬「フジタ」

フジタ「今日は社長に是非買っていただきたい品をお持ちしましてね」

海馬「ふん、それもどうせ贋作なのだろう?」

フジタ「いえ、こちらは正真正銘、エジプトで出土した本物ですぜ」

海馬「エジプト?だと」

フジタ「ええ、実は私、トレジャーハンターに知り合いがいまして」

フジタ「こちらは、その友人から安く買い取った物なんですが」

バサッ

海馬「これは、石版か、それもこれは…!」

海馬「ブルーアイズ!!」

フジタ「そう、M&Wの生みの親、ペガサス・J・クロフォードがそのカードデザインのアイディアをあるエジプト王家の壁画から得たというのは有名な話です」

海馬「…」

フジタ「こちらの石版、これは明らかに『青眼の白龍』だ」

フジタ「ペガサスの魂を揺さぶった芸術品」

フジタ「どうせ社長室に飾るのなら、手のひらに収まるカードよりも、こちらの石版を置いてみてはいかがでしょう」

海馬「…いくらだ?」

フジタ「そうですね、今なら勉強させてもらって」

フジタ「二億でいかがでしょう」ニコ

海馬「く、くく」

海馬「ワハハハハハハハハハハ」

海馬「いいだろう、言い値で買ってやる」

海馬「磯野、金を用意しろ!今すぐだ」

磯野「は、はい」

フジタ「ところで社長、一つお聞きしたいことが」

海馬「なんだ」

フジタ「こないだのあのデュエル」

フジタ「あなた、わざと負けましたね?」

海馬「なんのことだ?」

フジタ「あの少年の最後の伏せカード『手札断札』は互いに二枚のカードを捨てることが発動条件の速攻魔法です」

海馬「…」

フジタ「あの時あなたは手札を既に使い切っていた」

フジタ「よって、あの少年の切り札は発動条件を満たさず、不発に終わっていたはず」

フジタ「あなたは磯野さんに目配せをしてまで、彼のミスに目をつぶった」

フジタ「なぜです?」

海馬「フジタ」

海馬「貴様があの時、何故『青眼の白龍』を売ることを拒んだか、もう俺にもおおよそ察しはついている」

フジタ「!」

海馬「今、グールズのクズ共は俺の部下たちが追っている」

フジタ「…なぜそこまで」

海馬「ふん、子供は我が海馬コーポレーションにとって最大の顧客だからな」

海馬「他に理由などない」

フジタ「…」

フジタ「なるほど」

磯野「海馬サマー!!用意が済みましたー!!」

フジタ「では私はこれで」

フジタ「今後とも当店をごひいきに」

海馬「フン、貴様の店になど二度といくか」

フジタ「それではまた」

海馬「…」

海馬「理由など、言えるか」

モクバ「兄サマー、そろそろ会議の時間だよー!!」

海馬「…」

モクバ「兄サマ?」

海馬「ああ」

海馬「今行くよ、モクバ」



おわり

デュエルしんど
読んでくれた人ありがとっす
ではでは

ああ、エフェクトヴェーラー捨てたの忘れてた
…ワンダーワンドでドローしたってことで補完オナシャス

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