モバP「クールな花屋の忠犬と」 (61)



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事務所・夕方


凛P(以下P)「……」カタカタ

凛「…………」ジー

P「……」カタタ

凛「…………」ジー

P「……凛、どうかしたか?」

凛「ううん、ただプロデューサーを見てただけ。気にしなくて良いよ」

P「そうか? まぁいいけれども……」カタン




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P「……」カタタタッ

凛「ねぇ、プロデューサー。仕事、いつ頃終わりそう?」

P「ん……ああ、もうちょっとで終わるよ。今日は処理する案件が少なくてなー」

凛「そっか。……それなら、私はソファに座って待ってるね」ポフン

P「えっ、おいおい、待たずに帰っちゃって大丈夫だぞ? もしかしたら、結構遅くなるかも知れないからさ」

凛「へぇ、もうちょっとで終わるはずなのに時間掛かるんだ?」

P「あっ。あー、それは……」

凛「……プロデューサー。本当はやること、残ってるんでしょ?」




P「ぐ……そ、そういうわけでは……」

凛「もう、分かってるよ。仕事が終わった私に、変に気を掛けさせないように言ってくれたことくらい、ね」

P「ぬぅ……も、もしそうだとしても、俺を待たなくて良いからな? 折角撮影が早めに終わったんだ。帰って好きなことして良いんだぞ?」

凛「うん、だから好きなことしてるよ」

P「うん?」

凛「プロデューサーの仕事が終わるの、こうやって待つこと」

P「なっ、おまっ……」

凛「私、こうして見ながらプロデューサーを待つの好きみたい。ふふっ、なんでだろうね?」

P「……お、俺が分かるわけ無いだろうに」

凛「……たぶん、一緒に帰る事が出来るからだと思うんだ。一緒に居ると……幸せだし」

P「結論出てるのかよ!? ってか、よくもまぁそんな事恥ずかしがらずに言えるな……」




凛「これ、そんなに恥ずかしい? 嬉しいと思えることだし、口にしても良いと思うけど」

P「……凛、前と比べると本当に柔らかくなったよなぁ。なんというか、素直になったというか……」

凛「そう? いつの『前』なのかは分からないけど……私は、前からひとつも性格変えてないよ」

P「そ、そうなのか?」

凛「うん、本当。ただ……」

P「ただ?」

凛「プロデューサーが信頼できる人だから、本当の自分を曝け出せてるんだと思う。そうじゃなきゃ、一緒に居たいなんて絶対思わないし……」

P「…………ッ!」キューン




凛「あれ? プロデューサー……どうしたの?」

P「いやっ、あの、なんでもないぞ。別になんでも……」

凛「嘘。急に胸を押さえるとか、なんでも無いわけないよ。胸痛いの? 平気?」テテテッ

P「や、本当に大丈夫だから! ちょっと射貫かれたというか、な?」

凛「! 射貫かれたと思うくらい痛いんだ……大変だよそれ……!」

P「えっ」

凛「どうしよう、薬箱で間に合うかな……」ナデリナデリ

P「り、凛? そんな背中撫でなくても……」

凛「大丈夫だよプロデューサー、私がずっと傍に居るから。先に救急車を呼んで……」スッ

P「へ!? ああ違う違うそんな大事じゃない、病気でも何でも無いから! 凛の言うこと可愛くてときめいただけだから!」

凛「えっ」

P「……あっ」




凛「……」

P「……」

凛「そ、そっか。私の言うこと、そんなに嬉しかったんだ」

P「あー……その、凛、変に誤解させてごめんな?」

凛「……ううん、思えば私も早とちりだったかも。プロデューサーが病気なのかもしれないって……馬鹿みたいだね」

P「……んなわけないだろ」ワシッ

凛「あっ、ん……」ピクン

P「少なくとも、凛に心配されて嬉しくない訳がないからな? というか今、心配してくれたのが嬉しすぎて病気になりそうだ」ナデリナデリ

凛「ふふっ、なにそれ。心配したら病気になるって、私どうすればいいの?」

P「だから、心配しなくて良いって事だ。凛は俺を気にせず、今を楽しんでくれれば良い」ワシワシ




凛「……」

P「……凛?」ワシ…

凛「あ、撫でるのは止めないで欲しいかな」

P「お、おう」ワシワシ

凛「んー……」モゾモゾ

P(……眼を細めてる凛可愛いなぁ。なんつーか、犬っぽい……?)




凛「ん…………ふぅ。残念だけど、プロデューサーのその提案は頷けないかな」

P「ほぁ!? 黙ってるからてっきり認めてくれたのかと……な、なんで!?」ワショ

凛「撫でるの、続けて」

P「あ、はい。……えっと、り、理由は?」ワシワシ

凛「簡単だよ。プロデューサーは、自分の事を気にせず、私に今を楽しんで欲しいんでしょ?」

P「あ、ああ。凛はまだ15歳だし、やりたいことたくさんあるだろ?」ナデナデ

凛「うん、やりたいことはあるよ。ただね……」

P「ただ……?」ワシワシ

凛「プロデューサーが居ないと私、今を楽しめないから。一緒に居たいって、さっき言ったばかりじゃん…………ばか」

P「…………!!!!!」キュキューン




凛「あっプロデューサー、また胸を……え、まさか、また嬉しかったの?」

P「……ごめん凛、もう無理。ちょっと1分だけ、時間くれやしませんか……」

凛「えっ、いいけど……」

P「……凛っ!!」ガバチョ

凛「わっ!?」

P「あーもう、この子はもー!」ギュー

凛「え、な、なに!? 急に抱きつくとか……!」

P「あーそんな反応も可愛いな凛は! なんだ天然か、天然Pキラーかお前さんは!」ギュー

凛「えっ、なにそれ、私そんなつもりじゃ……ちょ、ちょっと! そ、そんなに抱きしめられると……」

P「……られると?」

凛「……なんか、凄く嬉しくなってくるから……どんな顔すればいいか分かんないよ……!」

P「可愛すぎてつらい!」ギュー




P「よーしよし、可愛いなぁ凛は。あー……可愛いな凛は」ナデナデ

凛「んっ、そんなに抱きしめながら撫でちゃ……あ、ちょっとっ……」ピクピク

P「ん、止めた方がいいか?」ピタッ

凛「あっ、止めちゃ……狡いよプロデューサー。ダメってわけじゃないから……続けて?」

P「っっ! ……あー、やっぱ無理だ。もう、気が済むまで止めないからな?」ユラァ

凛「えっ」

P「あー、凛は本当に可愛いなぁ! よーし愛でるぞ、今日はいつも以上にめっちゃ愛でるぞー!」ナデワシ モフギュー

凛「あぅ、ちょっとプロデューサッ、そんなに撫でちゃダ、ぅんっ、ぎゅってするの駄目だって……あ、あっ」

凛「――っ」ビクン



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次の日・事務所


凛「ねぇ、プロデューサー」

P「ん、どうした凛?」

凛「そろそろ定時の時刻になるけど、仕事は終わりそう?」

P「あー、悪いけど今日は残業確定っぽいから……一緒には帰れなさそうだ」

凛「……そっか。それじゃあ今日は、奈緒と加蓮が帰って来るまで待とうかな」

P「ああ、そういえば今日、2人の収録の日だもんな」

凛「うん、どんな番組なるか楽しみなんだ。2人が帰ってきたら色々聞きたいこともあるし、丁度良かったかも」

P「……ごめん」

凛「プロデューサーが謝る理由、私にはさっぱり分からないよ。……頑張ってね」スタスタ

P「……おう、ありがとな」




テコテコ

凛(プロデューサーは仕事だから邪魔しちゃいけないし……何して時間潰そう)テコテコ

凛(ソファ近くのテーブルに何か雑誌でもあれば良いんだけど……あれ? ソファの上に何か……)テテテ

スッ

凛(あ、これ……プロデューサーの背広だ。さっきまでソファで休んでたのかな)

凛(こんなところに放って、皺になったらどうするんだろ、もう。……畳んでおこっか)バサッ

凛(……あ、そういえば昨日――)




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昨日・夜 凛の家


凛『ハナコ、そろそろ小屋に戻る時間だよ。ハナコー?』テコテコ

ハナコ『ワフッ クゥン…』モゾモゾ

凛『……? 私の上着に潜って何してるんだろ……ハナコ?』バサッ

ハナコ『クゥン…』グデーン

凛『!? ……ハナコが脱力しきってる? ど、どうしたのハナコ?』

ハナコ『ワフッ ワフフ』クンクン

ハナコ『ワフゥン…』グデーン

凛『わ、私の上着を嗅いでこうなってる? えっ、別に今日は何も変な匂い付けてなんて……あっ』


『P「よーし愛でるぞ、今日はいつも以上にめっちゃ愛でるぞー!」ナデワシ モフギュー』


凛『……もしかして、プロデューサーの匂いが付いてるの? だからこうなっちゃったの?』

ハナコ『ワフゥ』クンクン

ハナコ『ワフェフェ…』グデェ…

凛『そういえばハナコ、プロデューサーの匂い大好きだったね……匂い、付いてるんだ』クン

凛『……うーん、やっぱり人の嗅覚じゃ分かんないか。まぁ、ハナコには良いお土産になったって事でいいのかな……ふふ』ナデナデ

ハナコ『ワフォゥ…』ビクンビクン

凛『それにしても……骨抜きにされすぎ。今度プロデューサーがうちに来るのに、どうなっちゃうんだろハナコ……』


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凛「……」

凛(ハナコが骨抜きになった、プロデューサーの匂い)

凛(それがきっと沢山付いてる、プロデューサーの背広……)

凛(……)チラ

P「……あ、間違えた。違う違う、えーと……」カタカタカタン

凛(丁度今、この事務所にはプロデューサーと私だけしか居ない。他の子は仕事だし、ちひろさんは茶葉とかの買い出し)

凛(……)

凛(今まで真剣に考えたこと無かったけど、プロデューサーの匂い、か)

凛(……どんな匂いなんだろ。ちょっとくらい嗅いでみても……いい、かな?)スッ




凛(…………)

凛(な、なんでドキドキしてるんだろ私。そう、これはただ嗅ぐだけ。……すでに前提からしておかしいけどさ)

凛(別に悪いことじゃないし、法律で罰せられるわけでもない。しかも、誰も周りにいないんだから関係もない)

凛(……そうこうしている内に誰か来たら意味ないよ。大丈夫、直ぐに終わることだし……よし)

……クン

凛(………………………………あ)ピクッ




クン…クン

凛(……どうしよ……この匂い)

スンスン……

凛(……なんだか、頭に残る匂いで……プロデューサーが傍に居るみたいで)

凛(……………安心、しちゃう、かも)

スー……

凛「ん、っ……!」ピクン

バッ




凛(こ、これ、危険だ。よくわからないけど、危険だよ)ブンブン

凛(匂いが鼻を伝わる度に、頭が、クラクラして……ふわふわしちゃってた)

凛(勝手に体の力が抜けて……ハナコの気持ち、分かったかもしれない)

凛(しかもハナコはこの匂いの中に居たとか……ああなったのも頷けるね。もしも私なら……)

凛「……」

凛(……私なら、どうなっちゃうんだろう?)

凛「…………」

凛(……1度だけ、1度だけなら……うん。直ぐにその後畳めばいいから)スッ

凛「ちょっと広げて…………えいっ」バフッ

……スンッ

凛(…………あ…………ぅっ!?)ビクッ




モフモフ

凛(あ……だめ、これ、だめだよ)スンスン

凛(どこを嗅いでも、どう動いても……あの匂いが、鼻に入って……)クンクン

凛(プロデューサーの匂いが……私好みな、匂いが)スンスンスン

凛(まるで、プロデューサーに……包まれてるみたいで……)モゾモゾ

凛(あ……あ、あっ、これ、すごい)スー

凛(……幸せ、かも)ボー

フラッ




凛(あ、どうしよう……体が安心したからか…………眠たく……)スン スン

凛(こんなとこで寝ちゃ駄目なのに……ぼーっと、し、ちゃう)クンクン

凛(……動きたくない。もっと匂いを……ぷろでゅーさーと居たいって気持ちが、大きくなって……)

凛(体の力、抜けて……これが、骨抜きにされるって……こと……?)

凛(これ……だめ、もう…………しあわせすぎる……よ……)

凛(……あ…………ぷろでゅ……)

コテンッ


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――数十分後






奈緒「……」

加蓮「……」

凛「……私、知らないよ」

奈緒「へぇー、凛は全く覚えてないんだ。ふーん、ほほー?」

加蓮「凛、もう正直になって良いと思うよ? ほら、証拠の写真だってあるし」

凛「……っ!」バッ

加蓮「ひゃっ!? もう凛っ、急に携帯奪おうとするとか、肯定してるようなものでしょ?」

凛「ち、違うの! そんな精巧なコラ画像、他の人に渡ったら誤解広まるでしょ!?」

奈緒「だから、コラでもなんでもないって。アタシ達が実際に現場に出くわして、何枚も写真撮ったんだから。ほら、これとか!」スッ




凛「うわ……わ、私、そんな風になってないから!」

奈緒「強情だなぁ。まぁ確かに認めたくない気持ちも分かるぞ? アタシだって、自分のこんな姿見られちゃったら……」

凛「こんなとか言わないでよ! というかっ、それは私じゃないってば!」

加蓮「でも驚いたよねー。あのクールな凛がまさかー……って思ったよ、私」

奈緒「だからって写真撮りまくるから、凛が起きちゃったんだからな? もっと静かにすれば色々見られたかも知れないのにさぁ」

加蓮「それは奈緒も一緒じゃん。凛を見ながら『うっわ、凛めっちゃくちゃ可愛い……!』とか興奮するから……」

奈緒「そ、そりゃしょうがないだろ! だって凛が――凛Pさんの背広を抱きしめて寝てたんだぞ?」

凛「はぅっ!?」グサッ

加蓮「しかも、今まで見たことの無い蕩けた顔だったんだもんね。何て言うのかな……ヘブン状態ってやつ?」

凛「あぐっ!?」グササッ




凛「ち、違うの! なりたくてそうなったわけじゃなくて! というか、それ私じゃないからぁ!」

奈緒「それじゃあ、さっき目覚めて現状把握して凛Pさんの背広速攻で畳んだのは誰だったんだよ?」

凛「……奈緒の、見間違いじゃないかな」

奈緒「……はぁ、全く。……加蓮」

加蓮「りょーかい。じゃあ凛……これは、どうかな?」スッ

凛「……携帯の画面だけど、これって?」

ポチッ

凛『はふ……ぷろでゅーさー……ふふ……』モゾ

凛「!!??」




凛「えっ……な、なっ……!?」

加蓮「あと……これかな」

ポチ

凛『ん……ぷろでゅーさー……? あれ、なおとかれん……? なんだ、ぷろでゅーさーじゃないんだ……』

凛「なっ、なにこの映像!? なにこれ!?」

加蓮「うん。カメラもだけど、携帯で録画もしてたの。証拠は画像だけじゃないんだよ、凛?」

奈緒「ちなみに私は、今のと同じ音声を録音しておいたからなー」

凛「抜け目なさ過ぎない!? ちょ、ちょっと加蓮っ、その動画は本当にダメ! ダメだよ!」




奈緒「これはもう、言い逃れ出来ないよな? しかし、本当に凛は凛Pさんにデレッデレというか……」

加蓮「本当に仲良いよねぇ2人とも。見てるこっちがお腹いっぱいって言うか……」

凛「……き、急に褒めてもダメだよ。音声はともかく、その動画と画像は絶対に消して貰うからね?」

奈緒「り、凛にとって今のは褒めに値するのかよ……って、ん?」

加蓮「あれ、奈緒の録音した音声は良いの? 思いっきり凛Pさんの事を言ってるけど……?」




凛「え? うん、それは別に良いよ。プロデューサーの事考えてるのはいつものことだし」

奈緒「お、おう、そうなのか。さらっと惚気たよこの子……」

加蓮「全く照れない辺り、マジでいつも考えてるんだね……」

凛「でも、私が映ってるのは……その……」

奈緒「その……?」

凛「だらしない私なんか見たら、プロデューサー幻滅しちゃうかもしれないし…………そんなの、やだもん」

奈緒「……」

加蓮「……」

凛「……ど、どうしたの2人とも? 急に黙って……」

奈緒・加蓮「「…………かわいい!」」

凛「えっ」




奈緒「何だよ凛、何なんだよその可愛さは! これでアイドルでスペックも高いとか、神様ちょっと二物与えすぎだと思うぞ!」ムギュー

凛「ちょ、ちょっと奈緒!? 何言ってるのか良く分からないんだけど……!」

加蓮「あー、ごめんね凛。なんかこう、良く分かんないけど……きゅんって来た。これが、萌えって言うのかな……?」ナデナデ

凛「なんで悟ったような顔なの加蓮!? 加蓮Pさんが見たら救急車呼ぶレベルの儚い顔になってるよ!?」

奈緒「あー、凛Pさんが羨ましいな。こんな可愛い凛にしょっちゅう想って貰ってるとかさー」ギュー

加蓮「ホント、凛Pさんは幸せ者だね。親友としては、ちょっと焼き餅かも……」ナデナデ

凛「ちょ、ちょっと2人ともくっつきすぎ! ……というか、幸せ者は私の方だからね?」

奈緒「おお?」

凛「2人とこうなれたのも、私がここまで来られたのも、全部プロデューサーのおかげ。だから幸せ者は私だし……今も、凄く幸せだよ」




加蓮「……!」キューン!

奈緒「くっはぁ……ダメだ。アタシの親友が愛おしすぎる……りぃん!」グワバッ

凛「わっ!? ちょっと奈緒、また抱きつくとか……」

加蓮「元から可愛かったけど、まさかこんな可愛い面もあるなんて……もー、凛はずるいなぁ」ナデナデ

凛「も、もう、加蓮もそんなに撫でないでって! 髪、くしゃくしゃになっちゃうから……!」

加蓮「……もしもこれが凛Pさんだったとしたら?」

凛「え? ずっと撫でて欲しいけど……どうしたの?」

奈緒「す、素直クールだ……!」

加蓮「なんだかこっちが照れるね……ふふ、もっと撫でちゃおうか、奈緒」

奈緒「ああ、もちろん。普段やられっぱなしだから、ここぞとばかりに愛でてやるからな、凛っ!」

凛「えっ!? ちょ、動画とかの消去はどうなって、わっ、ちょっと2人とも! 私の話聞いてってば――!」




キャイキャイ キャッキャウフフ


P「……」カタカタ

P(会話、丸聞こえなんだが……凛、聞こえていないと思ってるんだろうか)カタタ

P(正直、今すぐにでも凛を愛でに行きたくて体が震えてるけど……まずは目の前の仕事をどうにかすべきだよな)カタッタタ

P(……これが終わったら、明日にでも今日の事で目一杯凛を愛でよう、絶対愛でよう。とろとろになるまで愛でよう……うむ)カタカタ

P(よし、残りも頑張るぞ俺。うおおおお……!)カタカタカタカタカタカタ…ッターン!



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数日後 夕方・事務所



ガチャッ


P「ただいま戻りましたー」

凛「おかえりプロデューサー。外回り、お疲れ様」

P「ああ、ただいま凛。……あれ、今事務所に居るのって凛1人なのか?」

凛「ちひろさんと2人だったけど……ちょっと前に、コンビニに行くって言って出て行ったよ。会わなかった?」

P「うーむ、会わなかったなぁ。もしかしたら、お目当ての物が近くのコンビニに無かったのかもしれないな」




凛「ふふ、かもしれないね。……あ、そうだ。今、何か飲もうと思っていたんだけど……プロデューサーも飲む?」

P「お、助かる。じゃあお願いするよ」

凛「ん、分かった、それじゃあコーヒーかな。砂糖とミルクは半分ずつ……だよね?」

P「ああ、半分ずつだ。……こういうのって、覚えて貰ってるとなんだか嬉しいな」

凛「ふーん、そうなんだ。まぁ、いいからプロデューサーは荷物とか着替えとか済ませておいて。直ぐに煎れるから」

P「おう、ありがとなー、凛ー」スタスタ

凛「…………」

凛「……嬉しい、か。ふふ、そっか、そっか……」テコテコ




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凛「それで、今日は小梅とスタジオで偶然会ってさ。そうしたら――」

P「なるほど、聖靴学園の番宣か、あれ興行収入凄いらしいよなぁ。ああ、もしかして――」

凛「うん、そうだと思う。私も負けてられないよ、もっと頑張らないといけないって――」

P「凛は頑張りすぎてると思うんだがなぁ。そういえば、今度のイベントのスケジュールが――」

凛「へぇ、別の事務所の子と一緒なんだ。765プロライブ劇場……うん、聞いたことあるね。確か――」



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P「――うん、流石凛、完璧だな。凛が担当アイドルで俺も鼻が高いよ」ナデナデ

凛「わっ……撫でるのなら撫でるって言ってよ……もう」

P「止めるか?」

凛「……いじわる」

P「はは、ごめんごめん。凛がいじらしくてついなー……じゃあ、もっと撫でるぞ?」ワシワシ

凛「んん……もうちょっと前あたりが良いかな」

P「……ここ、か?」ワショッ

凛「あ……うん、完璧。さすがだねプロデューサー」

P「これ、褒められることなのか? ……いや、嬉しいけどさ」ワシワシワシワシ

凛「……♪」




凛「ん……撫でてくれてありがと、もう大丈夫。やっぱり、褒めて貰うのって悪い気はしないね」

P「けれど、普通に撫でてる間はあんまり照れたり動じたりしないよな。そこら辺は、さすがクールアイドルって感じだよなぁ」

凛「そう? あ、これでもちゃんと喜んでるからね?」

P「ああ、そりゃ勿論分かってるよ。凛の感情くらいなら、見ずとも声でなんとなく分かるからさ」

凛「……へぇ、そうなんだ」

P「……今、めっちゃ嬉しいと思ってるよな?」

凛「……正解。ホントなんだね」

P「あ、もっと嬉しくなっ」

凛「も、もう、そういうの言わなくて良いから!」




P「あー、本当に凛は可愛いなぁ……前に背広の件で愛でまくったのに、まだ足りないくらいだぞ」

凛「……あの愛で方はもう良いからね? あれ、本当にちょっと意識失いかけたんだから」

P「えっ……凛、凄く嬉しそうだったのに……何がダメだったんだ?」

凛「ダメというか……その…………良すぎたの。う、嬉しさに対して頭が追いつかなくて……」

P「……ほほぉ?」ユラァ




凛「……あっ。ダメだよプロデューサー、あれは本当にダメ。本当に、どうにかなっちゃいそうだったんだよ?」

P「ぬ……そこまで拒絶されたら流石に出来ないな。じゃあ、どれくらいが良いんだ?」

凛「どれくらいって言われても……言ったらしてくれる?」

P「凛が喜んでくれるなら、いくらでも」

凛「……ふぅん。それじゃあ、私の言う通りにして欲しいんだけど」

P「おう、任せろ。で、俺は何を……?」

凛「じゃあまずは……首、撫でて欲しいかな。それから、背中から腰までと、それと――」




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ちひろ「フンフンフフーン ちひでりか~♪」テコテコ

ちひろ(コンビニ限定のご当地シンデレラガールズストラップ……ようやく箱買い出来たわー)スタスタ

ちひろ(ホント、見つかって良かったなぁ。隣町のコンビニまで行った甲斐はあったわね!)ステステ

ちひろ(これで事務所の一角にあるアイドルグッズ達がまた1つ……ふふっ、事務所のアイドルグッズは集め甲斐があってイイ、実にいい……!)カツカツ

ちひろ(あ、そうだ。凛ちゃんは凛Pさん待ちしてたし、きっとまだ残ってるわよね。グッズと買ったお菓子を一緒に食べましょっか)テココッ

ガチャッ

ちひろ「すみません、ただいま戻りま――」

凛「ぷ、プロデューサー……もっと、もっと……」スリスリ

ちひろ「……へぁっ!?」

P「あっ」




ちひろ「あ……な、なっ……!」プルプル

P「……ちひろさん、お、お帰りなさい。随分と時間掛かってたみたいですね?」ナデモフギュー

ちひろ「そ、そうなんですよ、ちょっと隣町まで行ってて……ってそれどころじゃないですよプロデューサーさん!? 凛ちゃんになにしてるんですかぁ!?」

P「ま、待って下さいちひろさん誤解ですっ! これ、いつもの『愛で』ですから、いつもの事ですからっ!」

ちひろ「……いつもの? これが? へぇ……プロデューサーさん?」

P「……は、はい?」




凛「ふぁ……ちひろ、さん……?」ボー

ちひろ「こ、こんなになるまで凛ちゃんを蕩けさせて!」

P「うっ」

ちひろ「し、しかもお互い正面から抱き合ってソファに座っちゃって!」

P「あぐっ」

ちひろ「あ、あっ、あまつさえ、凛ちゃんの服を半脱ぎにさせて!」

P「えっなにそれ……ってうわ凛!? なんで上はだけてんの!?」

凛「え、だって……脱がないと背中、ちゃんと撫でてもらえないでしょ……?」ポケー

ちひろ「これのどこが『いつもの』ですか! いつものぉ!」

P「いや、ちひろさん一部誤解が……って一部じゃダメだ全体的に誤解が! 今回はするに当たって凛からリクエストがあって……!」




凛「あふ……んぁ……プロデューサー……」スリスリ

P「あっそうだ、り、凛! 今やってるコレ、別に危ない事じゃないって説明をだな……!」ナデナデ

凛「んんっ……そんなのどうでもいいから……もっと、もっと撫でて。その……もう、どうなっちゃっても、いいからぁ……」トローン

ちひろ「わわ……!」

P「あっ、この前よりも凄いことになっちゃってる……?」

凛「私をこんな風にしたの、っ……プロデューサー、なんだからね? だから……もっと色々愛でてよ、ね……ね?」スリスリ




ちひろ「うわ……り、凛ちゃんがちっちゃい子には見せられないくらい艶やかなことになってるんですけど!?」

P「い、いや、大丈夫……のはずです! なんか箍外れちゃってる気がしますけど、撫でてるだけですからっ!」モフモフ

凛「ぷろでゅーさー……んっ、んんー……いいにおい……」ムギュー

ちひろ「大丈夫じゃないですよねこれ!? さ、流石にアウトですよ、プロデューサーさん!」グイッ

P「おわっ!? ちひろさん、そんなに引っ張ったら凛を支えられなっ……っとと!」ギュギュッ

凛「っ!? そ、そんな強くしちゃ……ぁ、もう、だ、だめ……んっ……!」ビクンッ

凛「あ、ふぁ……」クテッ

ちひろ「わ、エロ……ゴホン! と、とにかく今回は流石にアウトです! ちょっとお話がありますので来て下さいっ!」




P「ちょ、そんなに引っ張ら……ち、ちひろさん、お話ってなんですか!? 俺としては嫌な予感しかしないんですけど!」

ちひろ「大丈夫です。仮眠室でお説教の後、凛ちゃんへの接し方を事務所の方々に直して貰うだけですから!」

P「か、方々って?」

ちひろ「……主に愛海ちゃん担当の方とか?」

P「命の危機ですよねそれ!?」

ちひろ「凛ちゃんをそんな風にさせて何言ってるんですか! ほら、凛ちゃん抱えたままでいいので、つべこべ言わず来て下さいっ」グイー




P「ちひろさん誤解ですってば! ど、どうすれば……とりあえず、凛はこのまま持ち上げて……」グイッ

凛「ん……ふぁ、ぷろでゅーさー……?」ボー

P「り、凛? すまん、ちょいとちひろさんを説得してくれると嬉しいんだが……」

凛「……ん、それより、ぎゅって……してほしいんだけど……」ポケー

P「うっわ可愛い……いや、今それどころじゃなくてだな?」

凛「……だめ?」スリスリ

P「うぐっ、スリスリしてる場合でもなくてっ…………可愛い…………あーもう、蕩けた凛くっそ可愛いなぁもう……!」ギュー

凛「あ、ぎゅって…………ふふっ、しあわせ……んー」ハグハグ




ちひろ「にゃっ!? も、もうっ、プロデューサーさんまた凛ちゃんを懐柔してるんですか!?」

P「ほぁ!? ち、違いますって、これはその、不可抗力といいますか……!」ムギュー

凛「……♪」モフモフ

ちひろ「呼べば良いんですね? 仕事も終わられてると思うので、もう先に事務所に他の方も呼べば良いんですね!?」ポチポチポポポポ

P「他の方!? 待って下さい、その手止め……打つの早っ!?」

ちひろ「もうプロデューサーさんの言葉じゃ信じませんからねっ。凛ちゃんからしっかりと言質取らないと、また同じ事起きそうですし!」ポポポチッ




P「同じ事って……いやだから誤解なんです! そ、そうだよな、凛っ?」ギュー

凛「……?」ポケー

P「あっ、その首傾げすっごいかわいい……」ギュー

ちひろ「……あ、どうもちひろですー。実は今から、事務所に戻って来て頂きたくて……」チラッ

P「おわ、ちひろさんストップ、ストップ! お、起きてくれ凛っ、りーん!?」ワシワシ

凛「ん……そこ、きもちいい……もっと……」ムギュ

P「うっわぁ、凛めっちゃ可愛い……」

ちひろ「はい、凛Pさんが凛ちゃんにちょっとその……アレなことを……」






P「ま、待って下さいちひろさん! ああ、でも凛くっそ可愛い……ああもう、しょうがないな凛は、しょうがないなぁもー!」ナデナデナデナデ

凛「ふふ……ぷろでゅーさぁ……♪」ムギュー







お わ る




凛の正妻力は実際凄いと思ったので、つい
時間が経ってしまいましたが、総選挙1位おめでとうございました!

犬は飼い主に愛でられて喜ぶイメージがあったため、今回の凛は基本受けっぽくしました
前に書いた猫で攻め攻めな話と比べると動物成分が弱めになりましたが、楽しんで頂けましたら幸いです


ここまで読んで頂き、ありがとうございました
また機会がありましたら、その時はよろしくお願い致します



前作:モバP「クールな銀のシャム猫と」   次:Coなあの子


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