志希「運命の化学反応」 (16)

モバマス一ノ瀬志希のSSです。マジでショートです。
一人語りで進みます。


むにゃああ……最近は日が昇るのが早いねえ。
今は5月。
そろそろ、自分で作った香水『だけ』をつけ、寝るのが快適な季節になってきたよね♪
ブラ? パンツ? 窮屈でしょー。
往年の大女優を気取ってる? やだなー、芸能界に入る前からの習慣だってば。てゆーか、それ誰のこと?
タバスコたっぷり熱々のピザを頬張って目を覚ましてから、ちゃんと服を着て出勤。
向かうはラボ……じゃなくて、アイドルプロダクション。
ラボなら白衣オンリーでもいいのにね。

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海の向こうで実験をやり尽くし、いい加減飽きて帰国して、日本でフツーのJKをしようとしていた矢先。
プロデューサーのいい匂いにホイホイ釣られて、アタシはアイドルとかいう謎のお仕事を始めちゃったのだ♪
もちろん、飽きたらすぐにでもサヨナラするつもりだったんだけど。

アイドルのお仕事って、本当に先が読めない! 面白ーい!
人の前で歌うとか踊るとか、握手会とかサイン会とか、研究三昧の人生には縁もゆかりもなかったことばかり。
ただ、本番を成功させるために、念入りな下準備が必要ってことは理解できた。化学の実験と同じだねー♪
トレーナーの指示に従い、一緒に汗だくになってレッスン。
ハァハァ、他の娘達の、汗の匂いもたまらないねぇ。やりすぎると、清良さんに後ろを狙われるのもスリリング!
プロデューサーさんに連れられて、挨拶回り。デキる男のスーツの匂いもいいねぇ。
嗅覚は視覚よりも強し。ンッンー、名言だねこれは♪

まあ、すぐに大仕事が来る魔法なんてないよ、シンデレラの童話じゃないんだから。
最悪、夢が夢で終わることもあるっしょ。
そんな、のんきなアタシは知らなかった。アイドル達の運命を左右する一大イベントが、動き出していたなんて。

「総選挙……44位?」

う~ん。この数字、どう評価すればいいんだろう?
アイドルとして、まだほとんど何もしていないのに、この順位。
いい加減でヘンタイなアタシに、それだけ期待している人がいるってこと?
どこの誰が、どういう理屈で?
化学に例えれば、あるかどうかも実験で確かめられていない物質レベルだよ、アタシ?
さすがにヤバイと直感した。駆け出しアイドルには重すぎる仕事が来るー、きっと来るーってね。

『喜べ一ノ瀬! 今度のLIVEツアー、お前にも大役を取ってきたぞ』
運命の化学反応は、アタシの予想以上のスピードで起こっていた。
歌、芝居、アクション。それらすべてを、舞台のど真ん中でこなすんだって。
プロデューサーの、
『お前ならできる!』
って期待の眼差し。
あのさぁ……こういうお楽しみはもう少し後にならないかな?
面白いこともあんまり続くと、志希ちゃん燃料切れを起こすわけよー。
もう、一ノ瀬家伝統の戦法を発動するときかな♪
それは!(それは!)
<失踪(にげ)る>
ピアスに仕込んだ催涙ガスを噴射して、芸能界そのものから逃げることもできた。
でも。

事務所の中では、ゆきのんが、そらが、のあさんが、このLIVEツアーを心底楽しみにしている。
特にゆきのんやそらは、やっとつかんだチャンスだと真剣に言っていた。
それを横目に、同じ重みのチャンスをゴミ箱に捨てる?
「……ここで逃げたら、なんかカッコ悪いかもね~」
アタシはひとまず逃げるのをやめて、いつものように、みんなの輪の中に入っていった。
「さあみんな、西へ向かっていこう! 旅が始まるのさー♪」

ツアーは西部劇そのまんまで、歌や踊りの中心はゆきのんが担当する。
アタシは主にアクションとドラマを受け持つことになる。歌はオマケ程度。
銃かぁ。
撃ったことはないけど、好奇心でいろいろいじくったことはあるから、仕組みは分かる。

そういや某国にいたとき、銃改造の依頼を受けたこともあったっけ。
アタシは化学の人で、ガンスミスは本業じゃないってのに。
依頼人がやたらと無口で目付きが鋭くて、コミュニケーションに困るよねあーゆーのは。
でも受けた。その人からは、嫌な臭いがしなかったから。
用途は聞かなかったけど、アタシの知識と技術を、正しく使ってくれると信じて。

アクションは映画を参考にすれば、なんとかなるでしょ♪
セリフは……この量なら一度読めば覚えるでしょ。キャラもいつものアタシだし。
感情の出し方は……これまた見よう見まねってことで♪

いざ本番。
んほお……! なんだかんだ言って、火薬と革の匂いはアタシをハイにさせてくれるよぉ。
ニトロセルロースにデカンやウンデカン、それにヘキサノール!
イッツ・ショータイム!!

まずはガンスピンをご披露。
アタシの指を中心にして、ピースメイカーが軽やかに旋回する。
西部劇の象徴ともいうべき、このコルト社の拳銃は寸分の狂いもなく、腰のホルスターに収まった。
メイク・サム・ノイズ!!
うん、よく観察して、実践すれば、この程度はね。

ガンアクションのお相手は主にそらとのあさん、そして途中参加の伊集院さん。
そらと伊集院さんは、練習量の凄さがビシバシ伝わってくる。
そらからはJKの素朴な匂い、伊集院さんからは洗練された大人の匂いもね。ハスハス~♪

そしてのあさんの技量は圧倒的だった。

見た目もそうだけど、反射速度が人間離れしている。
本当に人間以外なのか、着ているサイバネティックな服に秘密があるのかね?
客席からは惜しみなく拍手されてたけど、のあさんがアタシをフォローしてたのは明らかだった。
それに、どんな香水をつけているんだろう。
クールさの中に、ひとつまみのチャーミングさを漂わせる、素敵な匂いが鼻先をかすめていた。
もしもだよ。もしも彼女がアタシと同じ科学者だったら。
やっぱり人並み外れた成果を出して、アタシの高い壁になっていたかもねー♪

そんな、ハードなアクションと同時に、セリフをしゃべるのはさすがに大変。
覚えるだけならまだしも、芝居になってたかというと……にゃはは。

激しくも楽しい公演の1日が終わった。
イミテーションの西部村に、本物の夕日が沈んでいく。

『流石は一ノ瀬だ。何もかもをあっという間に覚えてこなす。正直、激しいアクションは苦手だと思ってたのに』
プロデューサーは手放しで褒めてくれた。嬉しいこと言ってくれるじゃないのー。
それじゃとことん♪
アタシは
「ありがとう♪」
って抱きつきながら、彼の匂いを鼻の中いっぱいに堪能する。それが一番のご褒美。

でもね、やっぱりアイドル、奥が深いよ。よーくわかった。
観察と実験を繰り返して、みんなをあっと言わせるようになりたい。
逃げたりふざけたりするのも、これからはほどほどにしようかな。

さあ、公演は明日も続くのさ♪
プライベートではリラックスが一番。自室に入るなり、アタシはオンオフを切り替える。
マッパになって、お気に入りの香水つけて、ベッドにダイブ。
じゃね、お休み~♪

以上でーす。
相変わらずマイペースに見えて、少しずつ変化している志希にゃんは見てて楽しいですな。

>>1
最初モバマスーノに見えて???ってなった

>>13
なんというミステイク。モバマスーノ、マルメターノ。

一ノ瀬志希
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http://i.imgur.com/AQtn7GP.jpg

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