ハルヒ「この中に宇宙人(略」悟飯「!?」 (215)

父親をいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが、
それでも僕がいつまで父親という橙胴着おとうさんを信じていたかと言うとこれは確信をもって言えるが最初から信じていた。

サイヤ人襲来後に現れたピッコロさんは偽父親だと理解していたし、
記憶をたどるとピッコロさんも本物だとは思わせない様にしつつ、父親の様に接していたように思う。

そんなこんなでお母さんがお父さんにキスしているところを目撃したわけでもないのに仕事をしないお父さんの存在を疑いもしなかった僕なの
だが、宇宙人や未来人や魔導士や悪の組織やそれらと戦うヒーローがお父さんだということに気付いたのはピッコロさんと過ごした頃だった。

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いや、本当は気付いていなかったのだろう。ただ気付いてしまったのだ。
僕は心の底から宇宙人や未来人や魔導士や悪の組織が目の前にふらりと出てきてくれることを望んではいなかった。

僕が朝目覚めて夜眠るまでのこの異常な世界に比べて、フツーな世界の、なんと魅力的なことだろう。

俺もこんな世界に生まれたかった!

宇宙人にさらわれて小さな丸型宇宙船に入れられたり、
良く切れる剣を片手に歴史の改変を計る未来人と協力したり、
フリーザ程度なら一撃で倒せたり、
秘密組織の人造人間とバトルを繰り広げたり、つまりそんなことはしたくなかった!

いや待て冷静になれ、仮に宇宙人や(以下略)が襲撃してきたとしても僕自身には何の特殊能力もなく太刀打ちできなかったとしたら…。
ってことで僕は考えたね。

ある日突然お父さんが瞬間移動してやって来て、お父さんが実は宇宙人とかまあそんな感じで得体の知れない力なんかを持っていたりして、
でもって悪い奴らなんかと戦っていたりして、僕もその闘いに巻き込まれたりすることになっちゃたじゃん。
メインで戦うのはお父さん。僕は基本的にフォロー役。おおあんまり変わらない、強いのになー僕。

か、あるいはこうだ。やっぱりある日突然僕は老界王神によってに目覚めるのだ。宇宙史上最強とかそんなんだ。
実は他にも強い人はけっこういて、そういうZ戦士ばかりが集められているような惑星もあって、僕もその一員となり宇宙崩壊を狙う悪い魔導士と戦った。

しかし現実ってのは意外と厳しい。

実際のところ、僕は宇宙史上最強だし、セルだって倒したし、
ドラゴンボールを探しにナメック星に行ってもフリーザには何もできなかったし、目の前の敵を凝視してたら吹っ飛ばせるし、
ピッコロさんの思考は読める。

実は凄そうで決定的に頑張ったのはセル戦だけで後は空気と自嘲しつつ、いつしか僕はそう熱心に修行をしなくなっていた。
敵なんているワケねー……でもちょっとは活躍したい、みたいなヤムチャさん的なことを考えるくらいにまで僕も成長したのさ。

中学校を卒業する頃には、俺はお父さんを夢を見ることからも卒業して、この世の普通さにも慣れていた。
一縷の期待をかけていたフリーザの残党に何かを起こすわけでもなかったしな。
その頃になっても人類はまだ旧ナメック星に到達できるエンジン開発してねーし、
僕が生きている間に新ナメック星まで日帰りで往復できることもこのぶんじゃなさそうだ。

そんな支離滅裂なことを頭の片隅でぼんやり考えながら、
僕はブウ戦後の感慨にひたる訳でもなく天下一武闘会に出た事を知らない高校に普通の高校生になる為に転校し----、涼宮ハルヒと出会った。

どうせなら新学年として1年生として皆と一緒に入学した方が目立たないというブルマさんや他都市の学校なら学費を全部負担するというサタン
さんの勧めでこの高校へと無難に入学した僕が最初に後悔したのはこの学校にはビーデルさんが居ないことであった。
これから三年間もビーデルさんと別の学校に行かなきゃならんのかと思うと暗澹たる気分になった。

そんなわけで、入学式がおこなわれている間、
僕は新しい学び舎での希望と不安に満ちた学園生活に思いをはせている新入生特有の顔つきとは関係なく、
ただ暗い顔をしていた。


入学式がつつがなく終了し、僕は配属された一年五組の教室へ入った。

担任の岡部なる若い青年教師が
「みんなに自己紹介をしてもらおう」
と言い出した。

出席番号順に男女交互で並んでいる左端から一人一人立ち上がり、氏名、出身中学プラスα(趣味とか好きな食べ物とか)を紹介しながら、
だんだんと僕の番が近づいてきた。緊張の一瞬である。

ついに前の奴が立ち上がり----
「東中学出身、涼宮ハルヒ」
ここまでは普通だった。どんな自己紹介をしようと考えて前を向いたまま、その涼やかな声を聞いた。

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
 さすがに流石に驚いたね。

ハルヒは喧嘩でも売るような目つきでゆっくりと教室中を見渡し、最後に焦っている僕をじろりと睨むと、にこりともせずに着席した。

これって鎌をかけられてるの?

どうリアクションをとればいいのか、逡巡していた。「また、転校?」

結果から言うと、それは鎌をかけている訳ではなかった。涼宮ハルヒは、大マジなのだ。

のちに身をもってそのことを知った僕が言うんだから間違いはない。

こうして僕の新しい高校生活は始まった。

自己紹介から数日後、忘れもしない、朝のホームルームが始まる前だ。
鎌をかけられてるのか気になって、涼宮ハルヒに話しかけるという愚の骨頂なことを僕はしでかしてしまった。


もちろん話題はあのことしかあるまい。

悟飯「あの…自己紹介のアレ、どのへんまで本気だったんです?」

涼宮ハルヒ「自己紹介のアレって何」

悟飯「いや、だから宇宙人がどうとか」

涼宮ハルヒ「あんた、宇宙人なの?」

悟飯「え!いやいや!違いますよ!ちゃんと地球で生まれて地球で育ってますって!!」

涼宮ハルヒ「だったら話かけないで。時間の無駄だから」

悟飯(ホッ…良かった~ バレてない)

どうやら鎌をかけられている訳ではなく、疑惑はなかったようだ。

ゴールデンウィークが明けた一日目。

突然ハルヒが話しかけてきた。
「あたし、あんたとどこかで会ったことがある? ずっと前に」

悟飯「え!とんでもない!僕は遠い田舎育ちなんであり得ないですよ!(まさか…ビーデルさんと同じでセル戦の映像のこと?)」
と、僕は答え、岡部担任教師が軽快に入ってきて、追及のないまま会話は終わった。

以来、ホームルーム前のわずかな時間にハルヒと話すのは日課になりつつあった。
悟飯「あのー クラブとか入ってるんですか?(この子は勘が鋭いみたいだから、同じ部活だけは避けておかないと…)」

ハルヒ「全部のクラブに入ってみたけど、全然駄目ね」

ハルヒ「高校に入れば少しはマシかと思ったけど、これじゃ義務教育時代と何も変わんないわね。入る学校間違えたかしら」

ハルヒ「運動系も文化系も本当にもうまったく普通。これだけあれば少しは変なクラブがあってもよさそうなのに」
とりあえず、どの部活に入っても大丈夫なようだった。

この日の会話、終了。

また別の日は、
悟飯「あのー なんで宇宙人とかに拘ってるのですか?」

ハルヒ「宇宙人、もしくはそれに準じる何かね。付き合ったりするには、そっちのほうが面白いじゃないの!」
それは……お母さんやブルマさんを見る限り違うかもしれない。

僕が実は宇宙人と地球人のハーフであるとは知られたくない。泣く泣くビーデルさんと別の高校に通ってるのが台無しになると思う。

だが、気を付けないといけない。僕の周りには宇宙人や未来人や超能力者が居るし、ホイホイ前に登場して、何の関係もない人の前にやってきて

「サイヤ人の王子、ベジータ様だ」と自己紹介してしまう。

そんな事を考えていたら、ホームルームが始まっていた。ハルヒが立って熱弁をしようとしていたようだが気のせいだろう。


毎日ホームルームをする日常。僕がとうにあきらめてしまった日常との邂逅を今果たしている。

そんな憧れだった日常は突然崩壊した。
ハルヒ「気がついた!どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのかしら!」

悟飯「ど、どうしたんですか?(まさか…バレた?)」

ハルヒ「ないんだったら自分で作ればいいのよ!」

悟飯「何をです?」

ハルヒ「部活よ!」
そんな授業中の出来事はよからぬ予感を告げていた。








実はハルヒをちゃんと読んだり、視た事が無いので、読みながら続きを書きます。
2章がまとまったら投稿します。

結果から言おう。そのまさかだった、と。

その後の休み時間、僕はハルヒに連れられて屋上へ出るドアの前に来た。

ハルヒ「協力しなさい」

悟飯「えっと…何をでしょう?」

ハルヒ「あたしの新クラブ作りよ」

ハルヒ「あたしは部室と部員を確保するから、あんたは学校に提出する書類を揃えなさい」

ハルヒ「いい? 今日の放課後までに調べておいて。あたしもそれまでに部室を探しておくから。いいわね」

僕が返答する前ににハルヒは身を翻して軽妙な足取りでさっさかと階段を降りていった。

悟飯「……あの子と居ると正体がバレそうでヒヤヒヤするんだけどなぁ……」

「同好会」の新設に伴う規定は生徒手帳の後ろのほうに書いてあった。なんとかなりそうな内容だった。

終業のチャイムが鳴るや否やハルヒは僕を教室から引きずり出してたったかと早足で歩き出した。

悟飯「どこに行くんでしょう?」

ハルヒ「部室っ」

たどり着いた場所は、

文芸部。

そのように書かれたプレートが斜めに傾いで貼り付けられている。

ハルヒ「ここ」

ハルヒはドアを引き、遠慮も何もなく入っていった。仕方なく僕も。

意外に広い。長テーブルとパイプ椅子、それにスチール製の本棚くらいしかないせいだろうか。

そしてこの部屋のオマケのように、一人のナメック星人が空中に浮かびながら座禅を組んでを瞑想をしていた。

ハルヒ「これからこの部室が我々の部室よ!」

悟飯「あの…ここは文芸部じゃないんですか?」

ハルヒ「今年の春に部員ゼロ、新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのよ。で、このコが一年生の新入部員」

悟飯「入部してるじゃないですか
(一年生って言ってるから、ナメック星人じゃないんだぁ…最近ピッコロさんに会ってなくてピッコロさんが成分不足してるから幻覚かな?)」

ハルヒ「似たようなもんよ。一人しかいないんだから」

僕は舞空術をしながら瞑想にふけるナメック星人らしきその文芸部一年生に視線を振った。

一見するとマントを付けたナメック星人である。

ハルヒが大騒ぎしないということはナメック星人ではないのであろう。
たまに動くのは風にたなびく触覚だけで残りの部分は微動だにせず、完璧に集中している。これはこれで変な人だった。っていうより、絶対ピッコロさんだった。
ただでさえ正体がバレそうでビクビクしながら生活をしているの付きまとわれてはかなわない。

僕は声をひそめてハルヒに囁いた。

悟飯「あ…ああ…あの人ちょっとおかしくない…」

ハルヒ「…そ、そうよね………そういえば顔色もよくないし………でも本人は別にいいって言ってたわよ」

悟飯「本当?その良いってどっちの意味?」

ハルヒ「昼休みに会ったときに。部室貸してっていったら、どうぞって。
学校に居られればいいらしいわ。変わっていると言えば変わっているわね」

僕はあらためてその変わり者の文芸部員を観察した。

緑色の肌に感情の欠落した顔、4本しかない指。髪はなく触覚が二本に整った頭の形をしている。
どこか神様めいた雰囲気が存在感を神々しいものにしていた。身も蓋もない言い方をすれば、早い話がいわゆるピッコロさん。

しげしげと眺める僕の視線をどう思ったのか、ピッコロさんは急に赤面した。

突然目を見開き僕を見つめる。その目には照れと何かショックな事を言われたかのような絶望が混じっていた。

「マジュニア」

とピッコロさんは言った。その名前で通すらしい。聞いた三秒後にはピッコロさんと呼ぶであろうが。

ピッコロさんは僕を注視すると、恥ずかしさに耐えられなくなったのか瞑想に戻った。

悟飯「ピッコロさん」

悟飯「ここは部室で神殿じゃないんですよ、それでもいいのですか?」

ピッコロ「いい」

ピッコロさんは目を開かずに答える。

悟飯「いや、しかし、多分ものすごく迷惑をかけると思います(僕に)」

ピッコロ「別に」

悟飯「そのうち追い出されるかもしれませんよ?(僕に)」

ピッコロ「どうぞ」

即答してくるのはいいが、実際やられたら自殺しそうな声色だな。心の底から一緒に居たいと思っている様子である。

ハルヒ「ま、そういうことだから」

ハルヒ「これから放課後、この部室に集合ね。絶対来なさいよ。来なかったら死刑だから」

僕はピッコロさんの件もあり不承不承ながらうなずいた。













2章が長かったので続きはアルコールが抜けた後で…

ハルヒ「まずは部員よね。5人になる為には最低後二人はいるわね」

ってことはなんだ、ピッコロさんも頭数に入れてしまっているのか?
ピッコロさんを生徒か何かと勘違いしているんじゃないか?

ハルヒ「安心して。すぐに集めるから。適材な人間の心当たりはあるの」

次の日、僕は、ピッコロさんの様子を見にしょうがなく、部室へと足を運んだ。

ハルヒはおそらく新しい部員を確保しに行ったのだろう。とうとう未来人の知り合いでも出来たんだろうか。

部室にはすでにピッコロさんがいて(ここに住んでいる様だから当然と言えば当然なのだが)、昨日とまったく同じ姿勢で瞑想をしておりデジャブを感じさせた。僕が入ってきたらピクリと耳を動かすのも昨日と同じ。よく知らないのだが、文芸部ってのは瞑想をするクラブなのか?


悟飯「……何しに来てるんです?」

我慢に耐えかねて僕はそう訊いてみた。

ピッコロ「……」

沈黙。

殴ってっていいかな、僕。

頭を残して吹き飛ばそうとしたとき、蹴飛ばされたようにドアが開いた。

ハルヒ「やあごめんごめん! 遅れちゃった! 捕まえるのに手間取っちゃって!」

ハルヒが登場した。後ろに回された手が別の人間の腕をつかんでいて、
どう見ても無理矢理連れてこられたと思しきその人物共々、ハルヒはズカズカ部室に入ってなぜかドアに錠を施した。
ガチャリ、というその音に、不安げに震えた大柄な身体の持ち主は、またしても見覚えがあった。

これのどこが「適材な人間」なんだろうか。

???「なんなんだ?」

その釣られてきた奴も言った。気の毒なことに半泣き状態だ。

???「ここはどこだ、なんで俺は連れてこられたんだ、何で、かか鍵を閉めるんだ? いったい何を、」

ハルヒ「黙りなさい」

ハルヒの押し殺した声に奴はビクッとして固まった。

ハルヒ「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ」

それだけ言ったきり、ハルヒは黙り込んだ。もう紹介終わりかよ。

名状しがたき気詰まりな沈黙が部屋を支配した。
ハルヒはすでに自分の役割を果たしたみたいな顔で立ってるし、
ピッコロさんは何一つ反応することなく瞑想を続けてるし、
朝比奈みくると名づけられた奴はいまにも泣きそうな顔でおどおどしてるし、
誰かなんか言えよと思いながら僕はやむを得ず口を開いた。

悟飯「どこから拉致して来たんです?」

ハルヒ「拉致じゃなくて任意同行よ」

ハルヒ「道路でぼんやりしているところを捕まえたの。あたし、休み時間には町内をすみずみまで歩くようにしてるから、何回か見かけて覚えていたわけ」

休み時間に学校にいないと思ったらそんなことをしていたのか。いや、そんなことより、

悟飯「じゃ、この人は生徒じゃないじゃないか!」

ハルヒ「それがどうかしたの?」

不思議そうな顔をしやがる。本当に何とも思っていないらしい。

悟飯「まあいいでしょう……。それはそれとして、ええと、朝比奈みくるさんか。なんでまたこの人なんです?」

ハルヒ「まあ見てごらんなさいよ」

ハルヒは指を朝比奈みくる(?)の鼻先に突きつけ奴の大きな肩をすくませて、

ハルヒ「めちゃくちゃデカいでしょ」

ハルヒ「わたしね、迫力ってけっこう重要なことだと思うのよ」

思わず僕は朝比奈みくる(?)を見た。大柄である。ついでに色んな気が混じってる。なるほど、下手をすればお父さんと間違ってしまいそうでもあった。
微妙にウェーブした尻尾がうねっており、こちらを見下げる瞳が隙あれば吸収してやる光線を発しつつ、人造人間でも与えたらたちどころに完全体にでも変身しそうな、ってどう見てもセルだよね?

ハルヒ「それだけじゃないのよ!」

ハルヒは自慢げに微笑みながらセルの背後に回り、後ろからいきなり抱きついた。

セル「何をする!」

お構いなしにハルヒはセルの尻尾を抱え込む。

ハルヒ「あー、本当におっきいなー」

ハルヒ「なんか腹立ってきたわ。こんな立派な体格をして、デカイ尻尾まであるなんて!」

悟飯「あのー…危ないから離れた方が良いですよ?」

ハルヒ「でも、めちゃデカイのよ。マジよ。あんたも触ってみる?」

悟飯「遠慮しときます」

それからふと気付いて、

悟飯「すると何でしょう、この…セル…朝比奈さんは大柄で尻尾があったからという理由でここに?」

ハルヒ「そうよ」

ハルヒ「こういうマスコット的なキャラも必要だと思って」

毎日放課後ここに集合ね、とハルヒが全員に言い渡して、この日は解散となった。

なんでセルがここに居るのか気になったので

悟飯「セル」

セル「何だ」

悟飯「なんでここに居る?」

セル「貴様が倒したセルとは別の未来から完全体になる為にきたに決まってるだろう?」

悟飯「それならここで倒す!」

セル「待て!この世界に着た早々に孫悟空から警告を受けている!」

悟飯「なに?」

セル「大丈夫だ。私が完全体になっても敵わない相手が何人も居るようだし、実際この世界では一人も殺していない。」

セル「おそらく、一人でも殺したら孫悟空が瞬間移動で飛んでくるんだろうな……」

セル「それにピッコロがいるのも気になるし……」

悟飯「気になる?」

セル「今の私はピッコロにすら敵わない。監視の為にここにいるんだろう?」

セル「だから大人しく付いてきたし、行くあてもないから、よろしくな」

悟飯「まあ、別に悪い事をしないんだったら……」

セル「それから私のことは、みくるとでも呼ぶがいい」

にっこり微笑む。

うーん。ムリ。

ある日のハルヒと俺の会話。

ハルヒ「コンピュータが欲しいわ」

一応メンバーは揃っていた。ピッコロさんは定位置で瞑想しており、
来なくてもいいのに暇なのかちゃんとやって来たセルは所在なげにパイプ椅子に腰掛けている。

ハルヒ「と言うわけで、調達に行くわよ」

僕とセルを引き連れてハルヒが向かった先は、二軒隣のコンピューター研究部だった。

ハルヒは平気な顔でコンピュータ研究部のドアをノックもなしに開いた。
「こんちわー! パソコン一式、いただきに来ましたー!」

四人の男子生徒は何事かと身を乗り出して入り口に立ちふさがるハルヒを凝視した。

ハルヒ「部長は誰?」

部長「僕だけど、何の用?」

ハルヒ「用ならさっき言ったでしょ。一台でいいから、パソコンちょうだい」

部長「ダメに決まってるでしょ。何言ってんですか?」

ハルヒ「断るのならのならこっちにも考えがあるわよ」

ぼんやり立っていたセルが部長へと歩み寄り、
いきなりそいつの襟首を握りしめたかと思うと、軽々と持ち上げた。

部長「うわっ!」

部長「よく見たら10年前にミスターサタンに退治されたセルじゃないかぁ!」

恐怖に震えたその顔面の前で、ハルヒは優雅に指を振るった。

ハルヒ「ちちち。セルなんて化け物じゃないわよ。朝比奈みくるちゃんよ」

部長「そんなバカな!」

セルじゃないことに対してなのか、
セルがここにいる事に対してなのかわからないがとりあえず否定する部長。

恐怖のあまりに固まっていた三人のコンピュータ研部員たちが、我に返ったように叫んだ。

「セルだぁーーーーーーーーー!!!」

「い、命だけは助けてください」

ハルヒ「どうなの、よこすの、よこさないの!」

部長「た…助けて……僕らは学校一のパソコン持ちだからお礼に好きなのを持って行っていいから…」

そうやってパソコンが手に入った。もちろん口止め要求とともに…

パソコンって何をするものなのか僕は知らない。

まあ、ほどなくハルヒがネットに繋がらないと怒っていたのだが。

ハルヒはそれがしたかったようだ。で、ネットってなんだ? また手に入れるつもりなのかそのネットやらを。

誰もパソコンがわからなかったので流石のハルヒも諦めたようだった。

セルもわからなかったのは意外だったが生体コンピューターの方が優秀だから触ったこともないという話だった。

待望の転校生がやって来た。

朝のホームルーム前のわずかな時間に僕はそれをハルヒから聞かされた。
いったいどこで聞きつけてきたのか知らないが、その転校生は今日から一年九組に転入するのだと言う。

ハルヒ「またとないチャンスね。同じクラスじゃないのは残念だけど謎の転校生よ。間違いない」

一限が終了すると同時にハルヒはすっ飛んで行った。転校生にお目通りしに九組へと向かったのだろう。

果たしてチャイムギリギリ、ハルヒは何やら複雑な顔つきで戻ってきた。

悟飯「どうでした?」

ハルヒ「うーん……あんまり謎な感じはしなかったなあ」

よかった。知り合いではないみたいだ。

「ちょっと話してみたけど、でもまだ情報不足ね。同性愛者の仮面をかぶっているだけかもしれないし、
どっちかって言うとその可能性のほうが高いわ。転校初日から正体を現す転校生もいないだろうし。次の休み時間にも尋問してみる」

気になる単語があったがふと思いつく。

悟飯「男女どちらでしょう?」

ハルヒ「変装している可能性もあるけど、一応、男に見えたわね」

セル「…遅いな」

セルがポツリと漏らした。

悟飯「今日、転校生が来たらからな。多分そいつの勧誘に行っているんだろう」

セル「転校生……?」

小鳥のように首を傾げるセル。

悟飯「お前には関係ないだろう」

悟飯「それよりセル、なんで部室にくるんだ」

セル「ああ……ちょっと悩んだが、暇だから」

この性格は誰の影響なんだ?

調べようかとなったとき、新たな生贄が現れた。

「へい、お待ち!」

涼宮ハルヒが的はずれな挨拶をよこした。

ハルヒ「一年九組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も、」

言葉を句切り、顔で後は自分で言えとうながす。

グルド「グルドだ。……よろしく」

運動が苦手な少年のような雰囲気を持つ小さく太った男(?)だった。
狡猾な笑み、四つの目。
適当なポーズをとらせてギニュー特選隊として採用したらコアなファンが付きそうなルックス。
これで強かったならけっこうな人気者になれただろう。

ハルヒ「みんな、仲良くやりましょう!」

事前の情報と全然違うぞ。男に見えるかも疑問じゃないか。

グルド「クラブの勧誘という話だが…入るのは別にいいが、何をするクラブなんだ?」

ハルヒ「教えるわ。クラブの活動内容、それは、」

大きく息を吸い、演出効果のつもりかセリフを溜めに溜めて、そしてハルヒは驚くべき真相を吐いた。

ハルヒ「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」

僕は単に「もう揃っている」と思っただけだった。残りの三人はちょっと違うようだ。

暇を公言しているセルは完全に嬉しそうだ。
ピッコロさんは、何故か僕の方を見て照れくさそうにしている。

最後にグルドだが、判断しにくい表情で突っ立っていた。

グルド「ふん、なるほど」

グルド「いいだろう。入ってやる。」

微笑んだようにみえた。

そういえば、ギニュー特選隊は遊ぶのが好きそうだからな。
他のメンバーがいなくてこいつも暇なのか?

僕の目の前に、ぬっと手が差し出された。

「グルドだ。一目見てわかった。あの時のガキだろう?大きくなったな、よろしく」

殺されたことを気にしていない様子のグルドの手を握りかえす。

悟飯「えっと、僕は……」

ハルヒ「そいつはソン」

ハルヒが勝手に僕を紹介し、
次いで「あっちの尻尾があるのがみくるちゃんで、
そっちの瞑想をしているのがマジュニア」と二人を指して、
すべてを終えた顔をした。

学校を案内してあげると言ってハルヒがグルドを連れ出し、
セルも用事があるだろうと帰らせたので、
部室には僕とピッコロさんだけが残った。

悟飯「あの…ピッコロさんは何しにここへ?」

ピッコロ「午後七時。神殿で待つ」

悟飯「え…今日はビーデルさんとデートなんですが」

ピッコロ「……」

ピッコロ「明日でいい」

悟飯「……解りました」

僕が応えるとピッコロさんはまた瞑想に戻った。

そして翌日僕は、闇の中を必死で空を飛んでいた。

約束の日に自宅に戻った僕は、晩飯食ったりしてダラダラしたのち、
ビーデルさんと長電話をしてしまった。


『午後七時。神殿で待つ』


ピッコロさんとの約束を忘れてた訳じゃない。

話が盛り上がり時計を見ると午後七時十五分をちょっと過ぎている。軽く飛んでも二分はかからない。

その後もビーデルさんと盛り上がったおかげで、僕が神殿に到着したのは十一時十分頃。

月明かりに照らされてピッコロさんのシルエットがぼんやり浮かんでいた。

ピッコロさんはいつもの恰好である。

悟飯「ごめんなさい。遅れちゃいました」

ピッコロ「こっちにこい」

久しぶりに神殿の中に案内された。
しかしまあ、生活臭のある神殿だな。
いまさらながらの感想をもって入殿した。

悟飯「あー……デンデは?」

ピッコロ「寝てる」

悟飯「あ、あはは…ちょっと遅くなっちゃいましたしね」

悟飯「それで何の用でしょう?」

ピッコロ「ああ……」

ピッコロ「涼宮ハルヒのことだ」

ピッコロ「それと、俺のこと」

ピッコロ「お前にも教えておいた方がいいだろう」

悟飯「涼宮さんとピッコロさんがどうしました?」

ピッコロ「涼宮ハルヒと俺は普通の人間じゃない」

いきなり妙なことを言い出した。

悟飯「ピッコロさんは人間じゃないと思いますが」

ピッコロ「そうじゃない」

ピッコロ「地球人ではないという意味ではなく、宇宙人を含めた大多数の人間と同じは言えない」

ピッコロ「この地球を統括する神。それが、俺の前職」

悟飯(ピッコロさんがベースなら魔王じゃ…)

ピッコロ「今の仕事は涼宮ハルヒを観察して、入手した情報をデンデに報告すること」

悟飯「……」

ピッコロ「ここ一年間、俺はずっとそうやって過ごしてきた。
この一年間は特別な不確定要素がなく、いたって平穏だった。
だが、最近になって無視出来ないイレギュラー因子が涼宮ハルヒの周囲に現れた」

悟飯「……」

ピッコロ「それが、お前だ」

ピッコロ「一年前。ドラゴンボール使ったかのような反応があった。その中心にいたのが涼宮ハルヒ」

効果は何一つ解らなかった。
原因はブウが地球を破壊した時か、
急いで地球を再生した時か、ブウの記憶を人々から消した時に、
何らかの形でドラゴンボールの力が流れ込んだか、同様の力が宿ったと考えられる。

重要なのは、涼宮ハルヒからドラゴンボールの様な力が発生したことだ。

涼宮ハルヒから発せられる反応はそれからも間歇的に継続し、
またまったくのランダムにそれはおこなわれる。
そして涼宮ハルヒ本人はそのことを意識していない。

この一年間、あらゆる角度から涼宮ハルヒを調べたが、今もって原因は不明である。
しかしデンデは、彼女は、ドラゴンボールの進化のきっかけを与える存在として涼宮ハルヒの観察をおこなっている……。

ピッコロ「神であるデンデは長期間神殿を留守にはできない。
だからデンデは俺のような元神を使って調べさせている」

ピッコロ「おそらく涼宮ハルヒは自分の都合の良いように周囲の環境を操作している。
それが、俺が部室に住む理由。悟飯があそこに通学してる理由」

悟飯「ま、待ってくださいよ」

冷静に考えて僕は言う。

悟飯「ドラゴンボールは作った人の力を越えた願いは叶えられないはずです。
それなら僕とかピッコロさんを環境に取り込むなんて無理じゃないですか?」

ピッコロ「別に強制的に通っている訳ではないだろう?
悟飯ならブルマやミスターサタン、俺ならデンデ、そこら辺の勧めや依頼で環境に参加している。
もっとも、只の女子高生がサタンやデンデの意思に干渉できるとは思えないから、デンデのドラゴンボールの力を疑っているのだがな」

悟飯「それで僕はどうしたらいいんでしょう?」

ピッコロ「お前は涼宮ハルヒが選んだ鍵だ。何か影響があるかも知れんから注意だけはしとこうと思ってな…」

悟飯「はぁ…気を付けます…」

僕はそろそろおいとまさせていただくことにした。

ピッコロさんは未練がましそうだった。

休みの日に朝九時集合だと、ふざけんな。
ビーデルさんとのデートが流れてしまったじゃないか。
ハルヒの思い付きでいきなり朝九時に北口駅前に集合することになってしまった。

北口駅はこの市内の中心に位置する私鉄のターミナルジャンクションらしい。
たしかに駅前は人でごった返していた。

僕が到着したのが九時五分前。すでに全員が雁首を揃えていた。

ハルヒ「遅い。罰金」

顔をあわせるやハルヒは言った。

悟飯「えっと、遅刻はしてないはずですけど…」

ハルヒ「たとえ遅れなくとも一番最後に来た奴は罰金なの。それがわたしたちのルール」

悟飯「聞いてませんよ!」

ハルヒ「今決めたからね」

裾がやたらに長いロゴTシャツとニー丈デニムスカートのハルヒは晴れやかな表情で、

ハルヒ「だから全員にお茶おごること」

うやむやのうちに僕はうなずかされてしまい、
とりあえず今日の行動予定を決めましょうというハルヒの言葉に従って喫茶店へと向かった。

なにも着ていないセルは後ろに尻尾があり、
歩くたびに尻尾がひょこひょこ揺れるのがとてつもなくセルだ。

グルドは例のフリーザたちの恰好をしている。背は僕の方が圧倒的に高くなった。

一同の最後尾には見慣れた服を着たピッコロさんがついてくる。
しかし何で何時も同じ服装なんだろう。

ロータリーに面した喫茶店の奥まった席に腰を下ろす謎の五人組だった。
注文を取りに来たウェイターにおのおのオーダーを言うものの、
ピッコロさんだけがメニューをためつすがめつしながら
不可解なまでの真剣さ----でも無表情----で、なかなか決まらない。
インスタントラーメンなら食べ頃になっている時間をかけて、

「水」と告げる。

ナメック星人だからね。

ハルヒの提案はこうだった。

これから二手に分かれて市内をうろつく。
不思議な現状を発見したら携帯電話で連絡を取り合いつつ状況を継続する。
のちに落ち合って反省点と今後に向けての展望を語り合う。

以上。
ハルヒ
「じゃあクジ引きね」

ハルヒは卓上の容器から爪楊枝を五本取り出し、
店から借りたボールペンでそのうちの二本に印をつけて握り込んだ。
頭が飛び出た爪楊枝を僕たちに引かせる。
僕は印入り。同じくセルも印入り。後の三人が無印。

ハルヒ「ふむ、この組み合わせね……」

なぜかハルヒは俺とセルを交互に眺めて鼻を鳴らし、

ハルヒ「ソン、解ってる? これデートじゃないのよ。真面目にやるのよ。いい?」

セルとデートなんて冗談じゃない!

我ながら顔に出ていたんじゃないだろうか。
ピッコロさんは片手を当てて爪楊枝の先を見つめている。なんか、ショックを受けている?

グルド「具体的に何を探す気なんだ?」

ハルヒ「とにかく不可解なもの、疑問に思えること、謎っぽい人間、
そうね、時空が歪んでいる場所とか、
地球人のフリしたエイリアンとかを発見出来たら上出来」

思わず口の中のミントティーを吹きそうになった。

グルド「ようするに宇宙人とか未来人とか超能力者本人や、
そいつらが地上に残した痕跡などを探せばいいんだな。」

ハルヒ「そう! グルドくん、あんた見所がある奴だわね。その通りよ。
ソンも少しは彼の物わかりの良さを見習いなさい」

僕に向かってグルドは得意気な顔をした。

ハルヒ「ではそろそろ出発しましょ」

マジ、デートじゃないのよ、遊んでたら後で殺すわよ、
と言い残してハルヒはグルドとピッコロさんとともに立ち去った。
駅を中心にしてハルヒチームは東、僕とセルが西を探索することになっていた。
何が探索だ。


セル「どうするんだ?」

このまま帰りたい。

悟飯「うーん。帰る前にお前に聞きたいことがある、どっか座れる場所に行くぞ」

セル「…ああ」

素直についてくる。ためらいがちに俺と並び、
なにかの拍子に尻尾を刺そうとするがバレると慌てて離す仕草が白々しい。


僕たちは近くを流れている川の河川敷を北上しながら歩いていた。

散策にうってつけの川沿いなので、家族連れやカップルとところどころですれ違う。
俺たち二人は知らない人が見れば変な二人組みに見えるはずである。

セル「私はこんなふうに出歩くの初めてなんだ」

護岸工事された浅い川のせせらぎを眺めながらセルが呟くように言った。

悟飯「こんなふうにとは?」

セル「……二人で……」

悟飯「…ああそうだろうな」

俺だって好き好んでセルと二人で散歩をしている訳じゃない

セル「強くなること、完全体になることしかなかったからな」

悟飯「人を吸収して強くなったり、18号さん達を吸収して完全体になるのは諦めたのか?」

セル「ああ……」

恥ずかしそうにうつむいて、

セル「ダメなんだ。私は誰も吸収できないんだ。
少なくともお前を吸収してパワーアップしてもベジットとやらに倒されるのが明らかなうちは…」

言いかけて黙る。明らかにさっき吸収しようとしてたが?

セル「孫悟飯」

セル「話したいことがある」

桜の下のベンチに俺たちは並んで座る。

手始めにこう言われた。

セル「私はこの時代の人間ではない。もっと、未来から来た」

最初から解ってる。具体的には十年以上未来だろ?

セル「私がこの時代に来た理由はな……」

セル「エラーが出て、今から一年以上前の過去に遡ることが出来なかったからだ」

セル「この時代に来て原因らしきものはわかった」

悟飯「……何だったんだ?」

セル「涼宮ハルヒ」

セル「時間の歪みの真ん中に彼女がいたようだ。
どうしてそれが解ったのかは、一番に出会った孫悟空の紹介でブルマに協力してもらったからだ。
過去への道を閉ざしたのは涼宮ハルヒのようだ」

悟飯「……涼宮さんにそんなことが出来るとは思えないが……」

セル「俺たちだって思えない。ブルマによれば謎のようだ。
涼宮ハルヒも自分がそんなことしてるなんて全然自覚してない。
自分が時間を歪曲させているだなんて考えてもいない。
俺は涼宮ハルヒの近くで新しい時間の異変が起きれば完全体になれたり、
別の時代に行けるのではないかと思いあの町にいたんだ」

悟飯「…………」

セル「この時代で何かをする気は無いというのは少しは信じてもらえたかな?」

悟飯「いや……でも何で僕に尻尾を刺そうとしたんだ?」

セル「お前を試したかったのと、普段隙だらけだから鍛えて欲しいと孫悟空に頼まれたからな」

セル「信じなくてもいい。ただ殺さないで欲しいんだ。」

ドクターゲロのコンピューターに作られた人造人間をどうやったら信じられるんだ?

悟飯「全部、保留しておく。信じるとか信じないとかは全部脇に置いておいて何か妙な動きをみせたら倒させてもらう」

セル「ああ」

セルは微笑んだ。いい笑顔だ。

セル「それでいい。今は暇なんだ。今後は私とも普通に遊んでくれ。頼む」

悟飯「もう一個だけ訊いておこう」

セル「何だ」

悟飯「なんで朝比奈みくるなんだ?」

セル「禁則事項だ」

セルはイタズラっぽく笑った。

その後、僕はサタンシティに飛んでいきビーデルさんとひたすらに街をブラついて過ごした。ハルヒにはデートじゃないんだからと釘を刺されていたが、元々デートの予定だったんだ。僕とビーデルさんはコジャレ系のブティックをウィンドーショッピングして回ったり、ソフトクリームを買って食いながら歩いたり、バッタモノのアクセサリーを往来に広げている露天商を冷やかしたり……つまり普通のカップルのようなことをして時間を潰した。

セル?不思議なものでも探してたんじゃないのか?

携帯電話が鳴った。発信元はハルヒ。

『十二時にいったん集合。さっきの駅前のとこ』

切れた。ビーデルさんとのデートを切り上げるはずがない。

家に帰って切っておいた携帯電話の着信を確認したら凄いことになっていた。
その後のフォローが大変だったが、ビーデルさんとのデートには代えられないものなので仕方がないことであった。

週明け、そろそろ梅雨を感じさせる湿気を感じながら登校する。

ハルヒは二日前に途中で帰ったのが不満だったのか仏頂面で唇を突き出していた。
最近マシな顔になったと思っていたのに、また元に戻っちまった。

ハルヒは不機嫌だったようなので、終業のチャイムが鳴ると共に、
僕は部室棟へとピッコロさんの様子を見に行く。

部室でピッコロさんが瞑想する姿は今やデフォルトの風景であり、
もはやこの部屋と切り離せない固定の置物のようでもあった。

グルドが一足先に部室に来ていたので以前から疑問に思っていたことを聞いてみた。

悟飯「グルドさんは随分と昔に死んだはずなのにどうやって生き返ったんですか?」

この場には三人しかいない。ハルヒは今週が掃除当番だしセルはまだ来ていない。

グルド「…そうか俺は死んでいたのか」

グルドは、ピッコロさんを一瞥する。

グルド「場所を変えるぞ。涼宮に出くわすとマズイからな」

グルドが僕を伴って訪れた先は食堂の屋外テーブルだった。

グルド「俺が死ぬまでのどこまでを知っているんだ?」

悟飯「たしか…僕とクリリンさんで瞬間移動みたいのを繰り返して逃げるグルドさんを追い詰めたと思ったら、
金縛り攻撃をしてきて…隙だらけになってたグルドさんをベジータさんが倒したような?」

グルド「そうか…俺とお前ら二人のゲームだったのにベジータの野郎は卑怯だな。
俺の記憶はこれ以上お前らが追いかけてくるというなら、金縛りで倒そうと思っていた所で途切れているんだ」

これは何かの冗談なのか?

グルド「そして気が付いたら、息を我慢しすぎて失神してたのかと思っていたのだが、
実は一年前のここ…地球っていう星にいたのさ」

殺されたことを気にしていないのかと思ったが、どうやら殺されていなかったらしい。

悟飯「実はそれも涼宮さん絡みって言うんじゃないでしょうね」

グルド「先に言われたな」

グルド「地球に放り出されて途方に暮れていた所を『機関』に拾われたんだ」

悟飯「その『機関』ってなんです?」

グルド「『機関』は一年前の発足以来、涼宮ハルヒの監視を最重要事項にして存在している。
涼宮を監視するためだけに発生した組織だ。この学校にいる『機関』の手の者は俺だけじゃない。
何人もがすでに潜入している。俺は追加要員としてここに来た」

グルド「今から一年前に何があったかは知らん。
俺に解るのは、一年前のあの日の地球に、突然俺は呼び出されたってことだ。最初は混乱したな。
こんな星くらい滅ぼしてやろうと思ったが、
お前やベジータ達が参加したセルゲームの再放送を見て怖くなって隠れ回っていた。
すぐに『機関』から迎えが来て救われたが、あのままでは頭がおかしくなったり飢え死にしていたかもな」

グルド「おまえは、世界がいつから存在していると思う?」

悟飯「考えたことがないですね」

グルド「俺たちは一つの可能性として、世界が一年前から始まったという仮説を捨てきれていない」

悟飯「え…いやー流石にそれは……」

グルド「もし、おまえを含める全人類が、それまでの記憶を持ったまま、ある日突然世界に生まれてきたのではないということを、
どうやって否定するんだ? 一年前にこだわることもない。
今からたった五分前に全宇宙があるべき姿をあらかじめ用意されて世界が生まれ、
そしてすべてがそこから始まったのではない、と否定出来る論拠などこの世のどこにもない。
それどころか、俺は突然1年前に生まれた感じすらするしな」

悟飯「……その考え方と涼宮さんはどう繋がるんですか?」

グルド「『機関』のお偉方は、この世界をある存在が見ている夢のようなものだと考えている。
俺たちは、いやこの世界そのものがその存在にとっての夢にすぎないのではないのかとね。
なにぶん夢だから、
その存在にとって俺たちが現実と呼ぶ世界を創造したり改変したりすることなどは児戯にも等しいはずだ。
そして俺たちはそんなことの出来る存在を定義している」

グルド「世界を自らの意思で創ったり壊したり出来る存在
----そのような存在のことを、神と定義している」

……おい、デンデ。お前は神様じゃなかったみたいだぞ。どうすんだ。

グルド「涼宮は自分がそのような存在であることには無自覚だ。奴はまだ本来の能力に気付いていない。
俺たちは出来れば生涯気付かないまま平穏無事な人生を送ってもらいたいと考えている」

グルド「言うなれば奴は未完成の神だ。自在に世界を操るまでになっていない。
ただし未発達ながら、片鱗を見せるようにはなっている」

悟飯「なんでです?」

グルド「おまえは何故セルやピッコロ大魔王のような存在がここにいると思ってるんだ?
涼宮が人類の崩壊を願ったからだ」

グルド「奴はまだ自覚的に神のごとき力を発揮出来はしない。
無意識のうちに偶然その力を行使しているにすぎない。
だから直接的には人類への危害は発生していない。
涼宮が人類の滅亡を願うのは自然の敵と感じたからだと『機関』は分析している。その結果は、もう言うまでもないな。
自然を象徴する緑色のセルと出会い、ピッコロに出会い、そして俺を奴のクラブに加えてしまった」

グルド「お前が一番の謎なんだ。なんでお前だけ緑色じゃないんだ?」

グルド「もしかしたらお前が世界の命運を握っているということも考えられるな。
これは俺たちからの願いだ。どうか涼宮がこの世界に絶望してしまわないように注意してくれ」

喋り疲れたからもう帰る、と言って、グルドは離れた。

部室に戻るとセルが下着姿で立っていた。

「……」

セルは女性物の下着を履きフリフリのブラジャーを手に持っていた。

悟飯「妙な動きをみせたら倒すと言ったよな?」

セル「ま、待て!コンピュータはこういったぞ!」

セル「女性キャラにしておけば想像を絶するような生存率になるとな!!!」

悟飯「……だから女性物の下着を付けていると?」

セル「あ、ああ…涼宮ハルヒにはテレビにも出たことがある女性タレント『朝比奈みくる』と納得してもらえたようだが、
肝心のお前が私を女性扱いしていない様だったからな…朴念仁のお前にも解るように女性物の下着を付けようと思ってな」

僕はドアを閉めた。幸いなことに悲鳴は聞かれずにすみそうだ。

セルが反応できない速度で接近し、声が出せない程の威力のあるパンチをセルの腹にお見舞いしておいた。

回復が終わっていないセルを正座させた。

セル「すみません でも信じなくてもいい、知っておいてください。完全体になったら出産も出来るんです……」

悟飯「次にその気持ち悪い恰好をしてたら細胞一つ残さずに消滅させるからな」

結局その日、ハルヒは部室に姿を現さなかった。

悟飯「昨日はどうして来なかったんですか。反省会の予定だったんじゃ?」

例によって例のごとし。朝のホームルーム前に後ろの席に話しかける俺である。

机に顎をつけて突っ伏していたハルヒは面倒くさそうに口を開いた。

ハルヒ「うるさいわね。途中で居なくなったあんたが反省会とか言ってるんじゃないわよ!」

実はハルヒに話しかけながら、僕は一つの懸案事項を抱えていた。
その懸案は朝、俺の下駄箱に入っていたノートの切れ端。

そこには、

『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』

と、明らかな女の字で書いてあった。

なんの用事だろうと考えながら、放課後人が居なくなったのを見計らいつつ一年五組の教室に向かった。

時計は五時半あたりを指している。教室に残っている生徒など一人としていまい。

僕はことさら何でもなく一年五組の引き戸を開けた。

朝倉「遅いよ」

そこにいたのは同じクラスの朝倉涼子だった。

朝倉「入ったら?」

引き戸に手をかけた状態で止まっていた僕は、誘われるままに教室に入った。

悟飯「えっと…なんの用でしょう?」

朝倉「用があることは確かなんだけどね。ちょっと訊きたいことがあるの」

朝倉「人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』って言うよね。これ、どう思う?」

悟飯「調子にのって相手に塩を送ったのを後悔するけど、反省をしないのか度々繰り返す人なら知り合いにいますけど…」

朝倉「じゃあさあ、たとえ話なんだけど、現状を維持するままではジリ貧になることは解ってるんだけど、
どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき。あなたならどうする?」

悟飯「限界まで鍛えてみるかなぁ?」

俺の回答を朝倉は変わらない笑顔で無視した。

朝倉「とりあえず何でもいいから変えてみようと思うんじゃない。どうせ今のままでは何も変わらないんだし」

悟飯「まあ、僕はどっちかっていうとそれで乗り越えてきたし…そうかもしれませんね」

朝倉「でしょ?」

手を後ろで組んで、朝倉は身体をわずかに傾けた。

朝倉「でもね、上の方にいる人は頭が固くて、急な変化にはついていけないの。
でも現場はそうもしてられない。手をつかねていたらどんどん良くないことになりそうだから。
だったらもう現場の独断で強硬に変革を進めちゃってもいいわよね?」

朝倉「何も変化しない観察対象に、あたしはもう飽き飽きしてるのね。だから……」

朝倉「あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見る」

惚けているヒマはあった。後ろ手に隠されていた朝倉の右手が一閃、さっきまで僕の首があった空間を鈍い金属光が薙いだ。

以前の僕でも余裕で避けられたが、最近はセルの尻尾が狙っている所為か感覚が鋭敏になっており、油断はなかった。

もっともあんな刃物で僕を傷つけられるとは思えない。
それはそれで異常っぽいから、僕の平凡な日常に影響を与えそうなので避けるのが正解なんだろう。

それ以前にこの子は何で僕を攻撃してきているんだろう?

悟飯「えっと…僕なにかしちゃいました?」

朝倉「軽々と避けるのね。
もっとも邪魔したであろうメインは一年前から涼宮ハルヒに付きまとってる有機生命体に問答無用で消滅させられたから、時間は私の味方よ」

朝倉「まぁ、不意打ちとはいえ有機生命体に消滅させられるような出来損ないが私の邪魔をできたとは思えないけど」

何を言っているのか全く理解が出来ない。キの字じゃなければ、かなり錯乱しているようだ。
もうまったくワケが解らない。解る奴がいたらここに来い。そして僕に説明しろ。
ただ、軽々と避けすぎているようだ。もう少しギリギリな感じで避けた方が良さそうだ。

その後数回に及ぶ朝倉の斬撃を0.01ミリ単位で、出来るだけ不恰好に避け続けた。

朝倉「ふーん」

朝倉はナイフの背で肩を叩いた。

朝倉「死ぬのっていや? 殺されたくない? わたしには有機生命体の死の概念がよく理解出来ないけど」

僕はそろそろと立ち上がる。避け方には納得してくれたようだが、どうしたものだろう?

悟飯「あの…いい加減にやめません?」

朝倉「うん、それ無理」

無邪気そのもので朝倉は微笑んだ。

朝倉「だって、わたしは本当にあなたに死んで欲しいんだもの」

きっと彼女は錯乱しているんだ。とりあえず外に逃げてみて、無差別に攻撃をするようなら気絶させよう。
僕は不自然じゃない速度でドアの辺り移動した。
????
ドアがない。窓もない。廊下側に面した教室の壁は、まったくの塗り壁さながらにネズミ色一色に染まっていた。

朝倉「無駄なの」

背後から近づいてくる声。

朝倉「この空間は、わたしの情報制御下にある。脱出路は封鎖した。簡単なこと。
この惑星の建造物なんて、ちょっと分子の結合情報をいじってやればすぐに改変出来る。
今のこの教室は密室。出ることも入ることも出来ない」

振り返る。夕日すら消えている。校庭側の窓もすべてコンクリートの壁に置き換わっていた。
知らないうちに点灯していた蛍光灯が寒々しく並んだ机の表面を照らしている。
彼女の錯乱の原因はおそらくこれだろう。
そしてこれの原因はハルヒであろうことが容易に想像ができた。

薄い影を床に落としながら朝倉がゆっくりと歩いてくる。

朝倉「ねえ、あきらめてよ。結果はどうせ同じことになるんだしさあ」

悟飯「……あの、落ち着いてください。問題なくここから脱出できますし」

コンクリートの壁なら軽く殴るだけで破壊ができる。

朝倉「無駄。言ったでしょう。今のこの教室はすべてあたしの意のままに動くって」

朝倉「最初からこうしておけばよかった」

その言葉で僕は身体を動かせなくなっているのを知る。
流石に不便なので軽く気を入れてみる。
問題なく動けたが、とりあえず動けないふりをしてみた。

朝倉「あなたが死ねば、必ず涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こす。
多分、大きな情報爆発が観測できるはず。またとない機会だわ」

情報爆発ってなに?

朝倉「じゃあ死んで」

朝倉がナイフを構える気配。どこを狙ってるんだろう。頚動脈か、心臓か。
他の手段はないな。僕は軽く後ろのコンクリート壁を叩く。
脆くも壁は崩れ去り、密室ではなくなった。

朝倉「え…」

空気が固まる。ナイフの動きが止まった。

悟飯「あ、い、いえ…ま、まぐれですよ まぐれ…!」

朝倉「な、なーーんだまぐれかあ」

気が付けば壁が再構築されていた

その時。

天井をぶち破るような音とともに瓦礫の山が降ってきた。
コンクリートの破片が朝倉に当たっては怪我をしてしまう!
僕は目にもとまらぬ早業で大きめのコンクリート片を破壊して再び元の位置に戻った。
降り注ぐ白い石の雨が朝倉を粉まみれにしてしまうだろう、……女の子なのに可哀想に。

その時、粉塵に紛れて天井があった方向から気弾が放たれた。
斜め下方向に放たれているが、
おそらく床に当たる前に水平方向になり、今は人が居ないプールに面した壁を突き抜けて行くだろう。
普通なら怪我人が出ない弾道だが、今は水平移動後の弾道上に朝倉がいる!

近づいて手で弾くか?
いや弾いた先に人が居たら困るし、建物も大きく傷ついてしまう。

僕の気弾をぶつける?
天津飯さんのように器用に気弾だけ消せればいいが、おそらくそうはならずに、被害が拡大してしまうだろう。

弾道の前に立ちふさがり気合で吹き飛ばす?
粉塵も吹き飛ばすから朝倉の目には奇異に映るだろう。それに朝倉にもダメージが出る可能性がある。

朝倉を抱えて避ける?
穏当に見えるけど、女の子を抱えて教室の端から端に一気に移動するのは異常に思われてしまうだろう。

今の平凡な日常を守るためには、何もしない方法がベストだと思い至った。

そう考え、僕は朝倉の前に立ちふさがり両手を広げた。

ドゴーーーン

気弾は僕の体に当たり爆発した。

ラッキー ラッキー
何もしなくても危機を脱出できた!
めだってない!めだってない!

誰が気弾を放ったのかも気になるが、先に解決しておかないといけない問題があった。
僕はやおらに朝倉の方を向いて言った。

悟飯「それで用事ってなんでしょう?」

朝倉が返事をする前に上に気配を感じた。

顔を上げた僕は見た。何を?

ターバンに大きな肩当にマントを付けて上からゆっくりと降りてくる----ピッコロさんのいつもの姿だった。

ピッコロ「チッ!悟飯が邪魔をしたか」

苦々しい声で、

ピッコロ「もっとも貴様は前に俺が倒した奴よりかなり劣るな。空間の甘さで解る」

朝倉「邪魔する気?」

対する朝倉も平然たるものだった。

朝倉「この人間が殺されたら、間違いなく涼宮ハルヒは動く。これ以上の情報を得るにはそれしかないのよ」

ピッコロ「貴様には無理だ。」

朝倉「あなたが先に私を倒すから?」

ピッコロ「フン」

朝倉「やってみる?私はバックアップだけど、この教室はわたしの情報制御空間。
ここだとはあなたが倒したのインターフェイスより私の方が強いわよ。」

ピッコロ「前の奴は確かに中々だったな。
何故か奴が周りの人払いをしなかったら、俺は全力を出せなかったし、逃げるくらいはできただろう」

折角落ち着いたであろうにピッコロさんの登場でまた錯乱してしまったらしい。
なんとか落ち着かせようと小声で朝倉に話しかけた。

悟飯「あの人ちょっとおかしいんだよ……顔色もよくないし……制服も着てないでしょ?気にしちゃダメだよ」

朝倉「うふふ。忠実だから涼宮ハルヒへの影響が最小限になるように周りの人を避難させたのかもね。
どう?善良な少女の形をしたインターフェイスを消滅させた気分は?」

無視ですか?そうですか。

5章は終わったのですが、文章が荒れているのでアルコールが抜けるまでアップ休みます。

ピッコロ「貴様らのようなのがここ(地球)でウロチョロしてるのは気に入らんし、
その目的が涼宮ハルヒというのは看過できん。
魂の無い貴様らを消滅させることに躊躇もない」

朝倉「ふーん。相容れられないようね。敵討ちをする気はないけど…いいわ、あなたから先に殺してあげる。」

朝倉はいきなり五メートルくらい後ろにジャンプした。
それを見て僕は、ああ、ピッコロさんのことを疫病持ちと勘違いしている?とか悠長なことを思った。

朝倉は教室の後ろにふわりと着地。微笑みは変わりない。

ピッコロさんの前に槍状のエネルギー体が出来て襲い掛かっていく。
もちろん難なく迎撃している。手伝う必要はなさそうだ。
これはハルヒがやっているのか?

間髪置かず、ピッコロさんの周囲に槍状のエネルギー体が出来て、次々と襲い掛かる。
ピッコロさんはすべてを迎撃している。

あんなの迎撃しなくてもいいんじゃないか?
と思っていたら、僕の前にもできた。

避けたりするのも不自然なので、気にせず、めだたないように微動だにせずに受けておいた。

受けて解ったことだが、エネルギーを帯びてるが、槍自体は純粋な物理攻撃だった。

朝倉「離れた相手も庇えるんだ?そいつを守りながら、いつまで持つかしら。」

僕とピッコロさんに対して次々と槍が繰り出される。

ピッコロさんは何を思ったのか朝倉に対してエネルギー波を放った。
結構大きい。ヤムチャさん辺りでも耐えられないだろう。
相手は一般人ですよ?高校生ですよ?女の子ですよ?

堪らず僕はそれに気合砲を飛ばし破壊した。

悟飯「ピッコロさん何を考えてるんですか!!」

相手がピッコロさんと言えども僕の堪忍袋の緒が切れてしまった。

悟飯「さっきだって梅雨で湿っぽいからか知らないけど、校舎に穴を開けようと気弾を撃ったでしょ!
あの気弾はその子に当たりそうだったんですよ!」

ピッコロ「え、いや…」

悟飯「だいたい、涼宮さんの件があるから部室に住んでるのは我慢してるのに、なんで教室にまで来るんですか!
僕の平穏な日常の邪魔をしないでください!!」

ピッコロ「ま、待て!悟飯!お前は勘違いをしている!」

悟飯「何が勘違いですか!!実際に女子高生を殺しそうになったり、僕の教室を破壊してるじゃないですか!」

悟飯「しかも、『ここでウロチョロしてるのは気に入らん』って、学生が校舎をウロチョロしてもいいでしょ!
ピッコロさんこそ教室とかをウロチョロしないでください!」

ピッコロ「悟飯!落ち着け!話を聞くんだ!」

悟飯「目の前で同級生が殺されそうになったんだ!!これが落ち着いてられますか!!!」

朝倉「うふふ。お喋りが盛り上がっているところ申し訳ないんだけど…ちょっといいかしら?」

しまった!興奮のあまりに朝倉を前にして殺されそうだったとか言ってしまった。
なんとか誤魔化さないと
悟飯「あ、殺されそうとかいうのは、比喩で実際にはそんなことはないから大丈夫ですよ。落ち着いてください」

僕の言葉を意に介さずに朝倉は微笑んでいる

朝倉「あなたのことを有機生命体だと思ってたけど、構成が水だけで驚いたわ。
水だけでどうしてそうなっているのかしら?」

表情を変えずに朝倉は続ける

朝倉「あなたは私たちに近い存在だったのかもね。でも、さようなら。じゃあね」

朝倉は勝ちを確信したかのような口調でつぶやいた

朝倉「情報連結解除、開始」

ピッコロさんの両腕が結晶化していく

ピッコロ「!?」

何が起きたのか理解ができず、僕もピッコロさんも暫し経過を眺めてしまった。

事態の深刻さに気が付いた時には、ピッコロさんの胸から足はすでに光る結晶に覆われていた。

ピッコロ「悟飯ーーー!!俺の首を刎ねろ!!」

ピッコロさんが叫んだ時には、僕はピッコロさんの首を刎ね終っていた。

この行動には流石の朝倉も表情を変えた
まあ、同級生が手刀一閃で人の首を刎ねたらそうなるな

驚愕の表情を浮かべながら朝倉は何かつぶやいている
朝倉「刃物は持っていなかったはず……
それに持ってたとしても首を刎ねられるような刃物の熟練者でもないはず……」

女子高生が目の前で人が結晶化したり、首が飛ぶのをみたら普通にPTSDものだ。
僕だって大好きなピッコロさんの首を刎ねなきゃいけなかった。結構ショックだ。

朝倉はまだつぶやいている。よほどショックだったのだろう。

朝倉「そもそも首を刎ねることに何の意味があるの?
……いえ、それ以上にあの動きに対して情報処理が追いつかなかった?」

悟飯「あのー朝倉さん?」

声をかけたら、朝倉は一瞬ビクッっとして、教室の対極側にジャンプした。

朝倉は教室の後ろにふわりと着地。ショックと警戒感全開の表情だ。

そりゃ、ピッコロさんのことを知らない人が見たら殺人者だからな。

悟飯「さっきの人は死んでないんで……そんなにショックを受けたり警戒しなくても大丈夫ですよ」

我ながら白々しい。人の首を刎ねた男がこんなことを言ったら余計に警戒するに決まってる。
ピッコロさん早く再生してよ。

悟飯「あれは……そう!トリック!トリックなんですよ!!
さっきの人はすぐにピンピンして出てきますって」

朝倉は小さく何かをつぶやいた
朝倉「情報連結解除、開始」

今度は僕の手足が結晶化しはじめた。
ピッコロさんのを見て僕にもあり得ると心積りが出来ていたので、すぐに反応できた。

悟飯「はあっ!!!!」

全力で気合を入れるのはブウ戦以来だけど無事にできた。
思った通り結晶化も吹き飛ばすことができた。

悟飯「ね?結晶化もトリックなんで落ち着いてください」

とは言ったものの彼女が結晶化したらどうしよう?

朝倉「……エネルギー関するだけで対処な不能な情報量……さらには自身の構成変換
……辺りの情報も吹き飛ばしてしまうようね」

朝倉「この教室の情報制御も解かれちゃった」

朝倉は観念したように言葉を吐いた。

朝倉「わたしの負け。しょせんわたしはバックアップだったかあ。」

ピッコロ「だから貴様には無理だといったろう」

朝倉「あら?やっぱり生きてたの?体も服も再構築してるし、やっぱりこっち側の存在だったみたいね」

あの人たちは何を喋っているんだろう?
まだピッコロさんが攻撃するようなら殴ってでも止めないと…

朝倉「消滅させていいわよ。抵抗するだけ無駄だしね」

ピッコロ「フン…そうしたいが悟飯が許さんだろう…」

朝倉「あら?消滅させないの?どのみち役割なくなっちゃったし、廃棄されるんでしょうけど」

ピッコロ「……今までと同様に遠巻きに観測しているだけなら許してやろう」

朝倉「あなたが許可してるのは変な感じだけど、ありがと。遠慮なくお目こぼしを貰うわ」

ピッコロ「教室を戻しておけよ…」

朝倉「ええ、教室を再構成するわ」

二人の会話が一段落したように見えた途端、何時もの見慣れた教室に戻った。
そういえば、ピッコロさんは僕に服を出してくれたりしてたし、こんなのはお手の物なんだろう。

ピッコロさんが変なことをするはずはないし、僕が誤解して怒ってたに違いない。
謝っておかないと

「あの、ピッコロさん…」

ピッコロ「フッ、いい。気にするな」

軽く僕の頭をなでると窓から飛んでいった。
いや、だから目立つことは止めてって…

悟飯「そういえば、朝倉さんの用事ってなんなんです?」

朝倉は一瞬逡巡したような顔をした後に、何時もと変わらない微笑みをした。

朝倉「あなたたちと同じトリックの演習。教室が変わったりしてビックリしたでしょ?
あの人がさっき飛んでいったのもトリックなのはわかってるわ。付き合ってくれてありがとう。じゃあね」

そういうと朝倉は何事も無かったかのように教室から出て行った。

「ぶるぁぁぁぁ」

ガサツに戸を開けて誰かが入ってきた。

「俺に吸収されたい奴はどいつだあぁぁ!!」

果たせない欲望を叫びながらやって来たそいつは、セルだった。

まさかセルもこんな時間に教室に誰かがいるとは思わなかっただろう。
僕がいるのに気づいてギクリと立ち止まり、しかるのちに口をアホみたいにパカンと開けた。

セル「え、あ、あ、、、、」

聞いたこともない怯えたような声でセルは言うとザリガニのように後ろへ下がり、

「巡回の途中で誰かいると思わなかったんだーーーー!!!」と叫びながら

戸も閉めないで走り去った。

セルは暇だからって普段あんなことをしてるのか?
僕は盛大なため息をついた。
後で厳重に注意をしておこう。

翌日、当たり前と言えば当たり前のことだが、クラスに朝倉涼子の姿があった。
ちらっとこちらを見て微笑んだ気がしたが気のせいだろう。

その懸案事項は封筒の形をして昨日に引き続き僕の下駄箱に入っていた。
なんだろう、下駄箱に手紙を入れるのが最近の流行なのか?

しかし今度のブツは一味違うぞ。二つに折ったノートの切れ端の名無しではない。
少女マンガのオマケみたいな封筒の裏にちゃんと名前が記入されている。
几帳面なその文字は、僕の目がどうにかしているのでもない限り、

朝比奈みくる

と、読めた。

封筒を一動作でブレザーのポケットに収めた僕が男子トイレの個室に飛び込んで封を切ったところ、
印刷された少女キャラのイラストが微笑む便箋の真ん中に、

『昼休み、部室で待ってます みくる』

昨日のことについて厳重注意をしに探す手間が省けた。このふざけた手紙の分も上乗せして注意をしておこう。

この手紙の主がセルであると断言する根拠はないが、僕はさっぱり疑わなかった。
セルゲームのような回りくどいことをした奴だし、
可愛らしいレターセットにいそいそとペンを走らせている光景はまさしく最近のセルじゃないか。

コンピュータが言ったのは、
女性キャラにしておけば想像を絶するような---低い---生存率になるってことじゃないのか?

三分とかからず、俺は文芸部の部室前に立つ。なんとなくノック。

「笑えよ」

確かにセルの声だった。何時もこんな対応をしているのか?
っていうか、生徒でもないのに勝手に入って対応してるのか?
めまいを覚えながら中に入った。

ピッコロさんは瞑想していた。

校庭に面した窓にはもたれるようにして、一人の人造人間が立っていた。
羽の長いシルエット。足許は来客用のスリッパ。

そいつは僕を見ると、軽く微笑んだ。

「孫悟飯……久しぶりだな」

セルじゃなかった。いやセルといえばセルなんだが…

でも考えていたセルではなかった。ここのセルはこんなに羽が長くない。
こんなに人っぽい顔をしていない。肩や胸が黒になったりはしていない。

僕の顔を見て微笑んでいる人造人間は、どうみても尻尾がないだろう。成長途中のようなセルとは雰囲気が違う。
しかしそれでもなお、この人造人間はセルとウリ二つだった。何もかもが。


「完全体……」

僕はとっさに思いつく。

「18号さん達を吸収したな…」

セルは可笑しそうに目を細めて肩を震わせた。

悟飯「なるほど、それで呼び出したということか……完全体になったら勝てるとでも思ったのか?」

セル「待て!18号達は吸収してないし、他の誰も吸収していない!私はここの未来から来た朝比奈みくるだ。」

こいつ何を言っているんだ?

セル「ぬ、信用してないのか?」

悟飯「当たり前だ!お前のいう事なんか信用できるか!」

セル「なんならクリリンにでも電話をしてみるんだな」

悟飯「ふん!貴様が未来から来たセルだというのなら、今じゃないどこかの時点で吸収して完全体になったのだろう?」

セル「吸収しなくても完全体になれるのだよ。もちろん協力してもらったがな」

悟飯「協力?何をやらせた!」

セル「ま、ま、待て!とりあえず心臓に悪いからその気を抑えてくれ!
協力って言っても若干の謝礼も包んだ完全に任意のものだ!負担もほとんどなかったはずだぞ!」

セル「証拠を見せてやる」

やにわに右腕を差し出した。僕に向けて上腕を見せつけ、

セル「ほら、ここに星形の黒い模様があるだろう? 付け模様じゃないぞ。触ってみるか?」

黒いぼちぼちだらけでよくわからん。そもそも探す気が起きん。

セル「これで信じたか?」

何をだ?

セル「不満か?」
セル「こっちはどうだ?ハート型だぞ?」
セル「これなんてよく見れば戦車にみえるだろう?」

僕がイラッっとした感じでセルを睨むと

セル「す、すまん!暇なときに見つけた模様自慢をついしたくなったんだ」

空気を読んだのかセルは咳払いを一つした。

セル「開発に影響があるといけないから詳しくは言えないが、重要なのは情報なんだ。
……だから、この世界の初めてのセルは18号を吐き出しても、一から再生したら完全体だったろう?」

セルは一枚の写真を差し出した。
セル「実際こういう風に仲が良いんだ。」

写真は今より少し年を取ったミスターサタンが、
散々に痛めつけられて地面に伏せてるセルの上に片足を乗せてVサインをしているのだった。

悟飯「……ミスターサタンに負けたのか?」

セル「え……あれ、無い……どっ、どこだ。あれ……うわっ、ぶるるぁぁぁ」

セルは素肌のそこらじゅうをまさぐった後にうなだれた。

セル「……その写真は忘れてくれ。
見せたかった写真は、誕生日がなかった私に一年前のあの日を誕生日と決めてくれて、
その日にベジータがお好み焼きパーティーを開いてくれた私のお宝だったのだよ」

悟飯「……サタンさんにぶちのめされたのは悪いことをしたからじゃないのか?」

セル「完全体にして貰った日に調子に乗って、完全体を倒したことがあるというミスターサタンに挑んだのだ。
結果としては、……一番弟子にさえ全くダメージを与えることが出来ずにその様になった。
世界の違いを知って妙な事をする気は完全になくなったな。」

悟飯「それで何しに来たんだ?」

セル「お前に一つだけ言いたいことがあって、無理を言ってこの時間に来させてもらったんだ。」

セル「この時代のセルは昨日の出来事に対する折檻を恐れて暫く失踪する。
もっとも、ほとぼりが冷めたと思って出てきたら、手ひどい折檻を受けるのだがな。」

セル「かなり痛かったから私にとって、それは困ることなんだ」

セルはちょっと泣きが入っている顔をした。

それなら、妙なことをしなければいいだろうに…
とりあえず、手紙の件もあるし、昨日のセルの分も含めて肉体言語で注意をしておいた。

スリッパをペタペタ鳴らしながらセルは俺の目の前に立つと、妙に潤んだ目とまだ少し泣きはらした顔で、

「じゃあ、もう行きます」

「最後にもう一つだけ。私とも少しは仲良くして」

入り口に全力で走っるセルに、僕は声をかけた。

「二度と来るな!」

学校が終わり自宅に戻ると、家の前でグルドが僕を待っていた。

グルド「よう」

グルド「少し見せたいものがあったから待たせてもらったぞ」

悟飯「涼宮さんがらみで?」

グルド「涼宮がらみで」

僕はちょうど奥から出てきた弟に、ちょっと遅くなるかもしれないことを告げ、またグルドのところへ取って返した。

グルドはホイポイカプセルを一つ取り出すとそれを投げて、ジェットフライヤーを出現させた。
コイツ一年で随分と地球に馴染んでやがる。

グルド「乗れ」

僕らはジェットフライヤーに乗り込んだ。
グルドは運転までするようだ。どこまで馴染んでるんだ!?

グルド「ところで、どうやってギニュー隊長やフリーザ様から逃げられたんだ?」

悟飯「え!?そりゃフリーザはお父さんが…」

グルド「はぁ?なんでそこでお前の親父が出てくるんだ?
『機関』の調べではお前の親父は天下一武闘会で優勝してるけど、
ミスターサタンが登場する前のレベルが低い大会だったはずだぜ?」

悟飯「……スーパーサイヤ人になって……」

グルド「おいおい。スーパーサイヤ人なんておとぎ話だろう?
よしんば実在したって、サイヤ人はベジータ以外はいないんだ。お前の親父がなれる訳がないだろう。」

流石に頭にきたので、そこからは僕は口を開かなかったし、グルドの話も聞き流した。
人間原理だの願望がどうしただの熱弁を奮ってたようだが僕の知ったことではなかった。
ピッコロさんがハルヒを調べていなければ、軽く小突いて帰っていただろう。

ジェットフライヤーが着陸した。

「ここだ」

ジェットフライヤーから降り、暫し歩いて街中到達した。雑踏の中でグルドが僕の手を握った。何のマネだ、気持ち悪い。

グルド「ちょっと目を閉じろ。すぐすむ。」

いいだろう。これで何もなかったり、妙なことをしてきたら、さっきの言動分を含めてぶん殴ってやる。
俺は素直に目をつむった。大量の靴音、車のエンジン音、一時も途絶えることのない人声、喧噪。

グルドに手を引かれて、一歩、二歩、三歩。ストップ。

「もういいぞ」

僕は目を開いた。

世界が灰色に染まっていた。

暗い。思わず空を見上げる。あれほど目映い橙色を放っていた太陽はどこにもなく、空は暗灰色の雲に閉ざされている。雲なのだろうか? どこにも切れ目のない平面的な空間がどこまでも広がり、周囲を陰で覆っている。太陽がない代わりに灰色の空は薄ボンヤリとした燐光を放って世界を暗黒から救っている。

誰もいない。

交差点の真ん中に立ちつくす僕とグルド以外、横断歩道を埋め尽くすまでだった人の群れは、存在の名残もなく消え失せていた。薄闇の中で、信号機だけがむなしく点滅し、今、赤になった。車道側の信号が青に変わる。しかし走り出す車も一台もなかった。精神と時の部屋程ではないがそれなりに静寂である。

グルド「次元断層の隙間、俺たちの世界とは隔絶された、閉鎖空間だ」

グルドの声が静まりかえった大気の中でやけに響いた。

グルド「ちょうどこの横断歩道の真ん中が、この閉鎖空間の <壁> だ。ほら、こういう風に」

伸ばしたグルドの手が抵抗を受けたように止まった。手が短いだけじゃないのか?
僕も真似してみる。冷たい寒天のような手触り。弾力のある見えない壁はわずかに僕の手を受け入れたが、
十センチも進まないうちにビクともしなくなった。ただ、軽く力を入れて押せば何とかなる気も少しした。

グルド「半径はおよそ五キロメートル。通常、物理的な手段では出入り出来ない。
俺の持つ力の一つが、この空間に侵入することだ」

グルド「涼宮の精神が不安定になると、この空間が生まれる」

グルド「閉鎖空間の現出を俺は察知することが出来る。俺の仲間も。なぜそれを知ってしまうのかは謎だがな。
なぜだか出る場所と時間が解ってしまう。同時にここへの入り方もな。」

フライヤーでの言動からムカッっとしてた僕は、劣化版精神と時の部屋に連れられてきて口ぶりが荒くなっていた。
悟飯「こんなものを見せるために、わざわざ連れてきたのか? 」

グルド「いや、核心はこれからだ。もう間もなく始まる」

グルド「始まったな。後ろを見ろ」

見た。

遠くの高層ビルの隙間から、青く光る巨人の姿が見えた。

三十階建ての商業ビルよりも頭一つ高い。くすんだコバルトブルーの痩身は発光物質ででも出来ているのか、内部から光を放っているようだ。
輪郭もはっきりしない。目鼻立ちといえるものもない。目と口があるらしき部分がそこだけ暗くなっている他はただののっぺらぼうだ。

かたわらのビルの屋上から半ばまで叩き割り、腕を振る。
コンクリートと鉄筋の瓦礫がスローモーションで落下、轟音とともにアスファルトに降り注ぐ。

グルド「涼宮のストレスが具現化したものだ。
心のわだかまりが限界に達するとあの巨人が出てくるようだ。
ああやって周りをぶち壊すことでストレスを発散させているんだろうな。
かと言って、現実世界で暴れさせるわけにもいかない。大惨事になるからな。
だからこうして閉鎖空間を生み出し、その内部のみで破壊行動をする。
惑星を破壊するフリーザ様と違いなかなか理性的だ。」

グルド「あれくらいの巨大な人型になると、物理的には自重で立つことも出来ないはずだ。
それをあの巨人はまるで重力がないかのように振る舞うんだ。
破壊出来るということは質量を持っているはずなんだが、いかなる理屈もあれには通用しない。」

非常識なフリーザ達の中でも突出した非常識集団であるギニュー特選隊だったお前がそれをいうのか?

悟飯「この空間だけならいいだろう?好きに壊させてやればいいじゃないか」

グルド「活動を放置しておくわけには行かない。
なぜなら、あの青い怪物----俺たちは <神人> と呼んでいるが----が破壊すればするほど、閉鎖空間も拡大していくからだ。
放っておけばどんどん広がっていって、そのうち全世界を覆い尽くすだろう。
そうなれば最後、あちらの灰色の空間が、俺たちのこの世界と入れ替わってしまう」

帰りたくなっていた僕は <神人> とやらに軽くエネルギー波を撃った。

上半身が消滅し、続いて残りの部分も消滅した。

グルド「あ…仲間が…」

亀裂が発生し、亀裂は世界を覆い尽くしていた。まるで金属製の巨大なザルをすっぱりかぶせられた気分だ。
網の目が細かくなっていき、ほぼ黒い湾曲としか思えなくなったその直後、

パリン。

音はしなかった。
ドーム球場の開閉式の屋根が数秒もしないで全開にされたように明るくなった。

元の世界に帰ってきたようだ。

悟飯「それじゃあ、僕は帰るから」

グルドを一瞥したら、目に涙を浮かべてた気もするが気のせいだろう。

雑踏から離れ、人が少ない所から、悟天に譲ったきんとん雲を拝借して家に帰った。

緑色の連中がハルヒの周りをうようよするのは、グルドいわくハルヒがそう望んだからだと言う。

では、僕は?

なんだって僕は巻き込まれているんだ?五十パーセントとはいえ地球人だぞ。
突然老界王神に限界を超えた力に目覚めさせられたりしているが普遍的な男子高校生だぞ。
強いて違うところをあげるとすれば、父親が働かないことくらいか。

そんな事を考えていたある初夏の暑い日のことだった。

ハルヒ「ソン、暑いわ」

そうかな?修行が足りないんじゃないだろうか。

ハルヒ「扇いでくんない?」

涼しい風をプレゼントしたくなったが、吹き飛ばしたら吹き飛ばしたで問題になりそうだったから無視をした。

ハルヒ「明日のクラブ活動は市民プールで不思議探し!これで決定ね!」

明日も暑いとは限らないだろうと言おうと思ったが、ハルヒが思った以上は明日も暑いのだろう。

ハルヒ「美少女達に囲まれてプールなんて良かったわね!代わりに全部あんたの驕りね」

悟飯「え!?僕も行くんですか?」

ハルヒ 「当り前よ!部活動なんだから!」

生徒が3人だけだから同好会ですらないけどな

ハルヒ「グルドくんも居るから…そうね!やっぱり、あんたは入場料と昼食代だけでいいわよ!」

晩飯を要求されないだけ良心的なのだろうか?
もっとも、僕には僕の都合がある。

悟飯「僕は明日は海に行く予定があるんで……その、すみません」

ハルヒ「ハァ!?あんた部活をさぼろうっていうの?部活動と海で遊ぶののどっちが大事だと思ってるのよ」

海に決まってる。部活っていってもハルヒ以外は人外だし、それもピッコロさん以外は敵だったし。
っていうか、セルは失踪中だぞ?

ハルヒ「……そうね、海も悪くないわね。いいわ!あんたの予定に免じて海に予定変更!代わりに旅費は全部あんたが負担しなさいよ!」

冗談じゃない。飛んでいくから日帰りできるが、
まともに行ったら、ジェットフライヤーでも片道だけで半日かかる場所----パパイヤ島----だぞ。
しかもビーデルさんとのデートなのに、ゾロゾロと連れて行けるか。

悟飯「いや、デートなんで流石に遠慮してもらえると嬉しいのですが……」

突然ハルヒは仏頂面になり、不機嫌そうに言ってきた。

ハルヒ「…あんたねぇ……下らない見栄なんて張らなくてもいいのよ。
あんたがモテるはずないんだし、冗談にしても笑えないわよ?」

僕はムッっとしながら答えた。

悟飯「そりゃ、僕には勿体無いくらいの彼女ですけど……
とにかく、明日はそういう訳で涼宮さんとは遊べません。」

ハルヒ「あんたね!神聖な部活動を遊びとか言ってるんじゃないわよ!」

宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶ部活じゃなかったのか?

ハルヒ「……いいわ!あんたのそのくだらない幻想を打ち砕いてやるから、その空想彼女の特徴を言ってみなさい!」

空想って失礼なと思いつつ、ビーデルさんの自慢もしたかったので、言ってみることにした。

悟飯「ビーデルさんって言うんだ。実は凄いお嬢様なんだけど、それを鼻にかけてる訳じゃなく、むしろお転婆なくらい?でもね…中略…スポー

ツも万能で武術の心得もあるから警察の代わりに凶悪犯を捕まえたりもするんだ。僕としては辞めてほしいんだけど…中略…でもって意外と可愛

らしくって…中略…いやホント可愛くって…中略…僕にはもったないくらいなんですよ」

そう言ってビーデルさんが設定したスマホの壁紙----ビーデルさんと腕を組んでる写真----を見せた。

悟飯「ね?本当に可愛いでしょ?実はこのスマホもビーデルさんが買ってくれたんですよ。使い方が良く解らないんですが……タハハ……」

そう言ってハルヒの方を見たら、怒りとも絶望とも悔しさとも悲しみとも何とでもとれる表情をしながら、目を潤ませていた。
空想彼女じゃなかったのがよっぽど納得がいかなかったらしい。

ハルヒ「もういい!帰る!朝十時に水着を持って北口駅に集合だからね!絶対にきなさいよ!!」

そう言って机を叩いて立ち上がると、戸を叩きつけるかのように開けて、閉めずに帰ってしまった。

ふと気が付くと、朝倉が興味深そうにこちらを見ていた。

ハルヒが居なくても授業は問題なく進んだ。欠席者が出てても世の中は周っているんだなぁ。
お父さんとかが欠けると世界が崩壊するようなのを目にしてきていたから、
こういう平凡な生活は新鮮だった。

部活を休むとうるさいハルヒは居ないし、明日の準備もしたかったから、終業のベルと共にそそくさと家に帰った。

イベントの前というのはどうしてワクワクするんだろう。
夕ご飯を早々に済まし、準備も万端。
明日はビーデルさんはどんな水着を着てくるんだろう?

……ハルヒは明日北口駅に来いって言ってたけど……
まぁ、仕方がないよな。
ハルヒも本気では待ってないだろう。
週明け不機嫌なようだったら……その時はその時で考えよう。

明日のことやハルヒのことを考えると中々眠れなかったが、それでも何時しか眠りに落ちていた。

頬を誰かが叩いている。

「……ソン」

特別危険な気は感じない。無視していいだろう。

「起きてよ」

無理に起きなくても良さそうな雰囲気だ。

「起きろってんでしょうが!」

揺り動かされたため、仕方なく起きる。

目の前にはハルヒの顔があった。

ハルヒ「起きてよ」

僕の横で膝立ちになっているセーラー服のハルヒが、白い顔に不安を滲ませていた。

ハルヒ「ここ、どこだか解る?」

悟飯「……学校ですね」

ただし、この感じはグルドの言う----閉鎖空間----のだが

僕はゆっくりと立ち上がった。何故かブレザーの制服を着ていた。

ハルヒ「目が覚めたと思ったら、いつの間にかこんな所にいて、隣りであんたが伸びていたのよ。
どういうこと? どうしてあたしたち学校なんかにいるの?」

ハルヒが珍しくか細い声で訊いている。

閉鎖空間なら脱出は容易だろう。
<神人>を倒せば確実に脱出できるようだが、戦ってるところはハルヒには見せたくない。
それならば、壁を見つけて強引に破って脱出して、後はグルド達に任せるのが良いだろう。

悟飯「とりあえず学校を出ましょう。」

ハルヒ「あんた、あんまり驚かないのね」

驚いてはいるが、平常心を失っていたら戦えない。
何かに気を取られてたら吸収されて敵の戦力になってたなんて言うのは二度と御免だ。
ハルヒと付かず離れず並んで門扉から足を踏み出そうとした僕の鼻先が見えない壁に押された。
ねっとりした感触には記憶がある。ある程度進むと、固い壁にぶち当たる。
透明な壁が校門のすぐ外に立ちはだかっていた。

さて破ってみるか。

ハルヒ「……何、これ」

ハルヒが両手を盛んに突き出しながら、目を見開いている。

しまった!!ハルヒに気が付かれてしまった。
これで壁を破ったら、ハルヒに普通じゃない人と思われてしまう。
壁を壊すのは保留して、暫く様子を見ることにした。

僕は学校の敷地ぞいに歩いて確認する。
不可視の壁は歩いた範囲内では途切れることなく続いていた。

そういえば、ピッコロさんは部室に住んでいたはずだ。
部室に行けばピッコロさんが手伝ってくれるかもしれない。

悟飯「とりあえず部室に行きませんか?もしかしたらピッコ……マジュニアさんが居るかもしれませんし」

ハルヒ「あんた、マジュニアを部室の備品か何かと勘違いしてない?」

お前がそれを言うか?

ハルヒ「それより、どこかと連絡が取れない? 電話でもあればいいんだけど、携帯は持ってないし」

僕たちはいったん校舎へ入ることにした。職員室に行けば電話くらいあるだろう。
それでハルヒが納得するならしめたものだ。

ピッコロさんが居るならどうせまた部室で瞑想してるだろうし。

電気のついていない、暗い校舎も僕にはあんまり関係がないが、
ハルヒが不安そうなので一階の教室のスイッチを入れてやると瞬きながら蛍光灯がついた。

味も素っ気もない人工の光だが、ハルヒは、ほっとした顔をした。

僕たちはまず宿直室へと向かい、誰もいないことを確認してから職員室へ、
鍵がかかっていたが、かかってなかったかのようなそぶりで強引に、
かつ、何事もなかったかのように普通に戸を開けた。

ハルヒ「……通じてないみたい」

ハルヒが差し出す受話器を耳に当てる。何の音もしない。元々期待していなかった。

職員室を後にした僕たちは、教室の電気を次々点灯させながら上を目差した。
われらが一年五組の教室は最上階にある。
そこから下界を覗けば、周囲がどうなってんのか解るかもしれない、とハルヒが言ったからだ。


校舎を歩いている間、ハルヒは僕のブレザーの裾をつまんでいた。
こんなところビーデルさんに見られてしまってはことだ。
腕にすがりつかれていない分マシと言えばましだが。

一年五組の教室に変わるところは何もない。出てきたときのままだ。
黒板の消し跡も、画鋲の刺さったモルタルの壁も。

ハルヒ「……ソン、見て……」

窓に駆け寄ったハルヒはそう言ったきり絶句した。その隣で、僕もまた眼下の世界を見下ろした。

見渡す限りダークグレーの世界が広がっていた。人間の生活を思わせる光はどこにもない。
すべての家々は闇に閉ざされ、この世から人間が残らず消えてしまったかのように。

ハルヒ「どこなの、ここ……」

この様子だと部室に行ってもピッコロさんは居ないだろうな。

ハルヒ「気味が悪い」

ハルヒは自分の肩を抱くようにして呟いた。

本当はどうやって不自然なく壁に穴を開けようか思案していたのだか、行く当てもないそんな雰囲気だった。
そんなわけで僕たちは夕方に後にしたばかりの部室にやって来た。ピッコロさんはやっぱり居なかった。

蛍光灯の下、ハルヒは見慣れた根城に戻った安心感から安堵の息を漏らした。

ハルヒ「どうなってんのよ、何なのよ、さっぱり解らない。ここはどこで、なぜあたしはこんな場所に来ているの?」

ハルヒは窓の前に立ったまま振り返らずに言った。

ハルヒ「おまけに、どうしてあんたと二人だけなのよ?」

ハルヒはスカートと髪を翻し、俺を怒ったような顔で見ると、

「探検してくる」と言って、部室を出ようとする。

このチャンスに壁に穴を開けようと腰をあげかけた僕に、

ハルヒ「あんたはここにいて。すぐ戻るから」

言い残してさっさと出て行った。

さっさと穴を開けて帰りたいんだけどなぁ。

暇だったので見慣れた部室を見渡す。

何時もはピッコロさんが瞑想していたので、意外と観察していなかったことに気が付く。

ふと、パソコンが目に入る。

そういえば、セルとハルヒが強奪していたな…と思いつつ、当時はチンプンカンプンだったが、
今はビーデルさんに言われてスマホとかを触っているうちネットくらいは解るようになっていた。

たぶん、ここが電源だよな?ちょっと動かしてみよう。

パソコンのスイッチ(?)を押してみた。

モニタは真っ黒のまま、白いカーソルだけが左端で点滅していた。

ん、間違ったかな?

そのカーソルが音もなく動き、そっけなく文字を紡ぐ。

RYOK.A > みえてる?

次に変なボタンを押して爆発されては敵わない。

間違えたかの様なヒヤヒヤ感はもう御免だ。

そもそも返事の仕方がわからなかった。

素直に見て見ぬふりをしておいた。

パソコンから目を離し、見たくない物から目をそらすように窓を見た。

青い光が窓の枠内を埋め尽くしていた。

中庭に直立する光の巨人。間近で見るそれはほとんど青い壁だった。

ハルヒが飛び込んできた。

ハルヒ「ソン! なにか出た!」

ハルヒが戻ってくる前に倒そうとしていた僕の背中にぶつかるようにして止まったハルヒは隣に並んで、

ハルヒ「なにアレ? やたらでかいけど、怪物? 蜃気楼じゃないわよね」

興奮した口調だった。先ほどまでの悄然とした様子が嘘のよう。不安など感じていないように目を輝かせている。

ハルヒ「宇宙人かも、それか古代人類が開発した超兵器が現代に蘇ったとか! 学校から出られないのはあいつのせい?」

青い壁が身じろぎする。
ビルを壊してたし、ハルヒには危ないと判断し、僕はとっさにハルヒの手を取ると部屋から飛び出した。

ハルヒ「な、ちょっ! ちょっと、何?」

廊下に出る、と同時に轟音が大気を震動させた。音と振動からして向いの校舎とわかった。

以前にみた単純な動きからすると、こっちはまだ安全だろう。

ただ、振動で物が古びた部室棟が崩れないとは限らない。

ハルヒを連れてグラウンドへ出た。横目でうかがったハルヒの顔は、なぜか少し嬉しがっているように思える。
まるでクリスマスの朝、枕元に事前に希望していた通りのプレゼントが置かれていることを発見した子供のように。

破片で怪我をさせる訳にはいかないので、そこからさらに離れた。

一通り距離を取ったので安心してる僕の耳にハルヒの早口が届いた。

ハルヒ「あれさ、襲ってくると思う? あたしには邪悪なもんだとは思えないんだけど。そんな気がするのね」

たしかに邪悪な気は感じない。

ただ、グルドのは説明によれば <神人> をほったらかしにしていれば、やがて世界が置き換わってしまうらしい。

グルド達は来ないし、倒した方が早そうだが、ハルヒも居るしどうしたものだろう?

一通り距離を取ったので安心してると、僕の耳にハルヒの早口が届いた。

ハルヒ「あれさ、襲ってくると思う? あたしには邪悪なもんだとは思えないんだけど。そんな気がするのね」

たしかに邪悪な気は感じない。

ただ、グルドのは説明によれば <神人> をほったらかしにしていれば、やがて世界が置き換わってしまうらしい。

グルド達は来ないし、倒した方が早そうだが、ハルヒも居るしどうしたものだろう?

こうしよう、とりあえず壁まで行って多少不自然でも強引に壁を開けて脱出しよう。
感覚は掴んだから、行って以来閉鎖空間の場所はわかるようになった。
だからここに戻ってこれる自信はある。
脱出後に戻ってきて <神人> 倒して終わりなはずだ。

考え込む俺の耳元でハルヒの朗らかな声が、

ハルヒ「何なんだろ、ホント。この変な世界もあの巨人も」

悟飯「そろそろ元の世界に戻りません?校門の壁のどこかに穴があると思うんです。」

ハルヒ「え?」

輝いていたハルヒの目が曇ったように見えた。

ハルヒ「んー、なんかね。不思議なんだけど、自分でも納得出来ない、でもどうしてだろ、今ちょっと楽しいな」

悟飯「でも……ほら!ここから出ないと明日プールにも行けませんよ?」

ハルヒ「いいのよ、どうせあんたは海に行くんでしょ?あんたはここから出たら明日は彼女と海…行けなくて残念ね。」

嬉しそうなのか哀しそうなのか判断に困る表情をしている。

ハルヒ「そんなにあたしといるのが嫌?実際のあんたは明日になったら彼女と海に行くんでしょ!
夢の中でくらいもうちょっと一緒にいてくれもいいじゃない!彼女よりも尊重してくれてもいいじゃない!」

悟飯「……」

ハルヒ「そんなに彼女がいいなら、そんなにあたしが嫌いなら、とっとと一人で出て行けばいいじゃない!」

悟飯「え、いや…でも」

気が付いたらハルヒは号泣していた。

ハルヒ「あんたも……キョンも大嫌い!!」

キョン?この場面で噛んだ?

ハルヒ「あたしのことを受け入れてくれて、あたしの話を真剣に聞いてくれて、あたしと遊んでくれたのに!!
土壇場になって他の女に色目を使ったり、彼女とデートとか言って裏切る!
そんなのなら初めから受け入れなきゃいいじゃない!」

ハルヒは言いたいことを言ったのか随分とスッキリした顔になっていた。

ハルヒ「でも、もういいんだ。辛い思いをするのも今日が最後なんだと思うんだ。
この不思議な夢が明けたら、世界は不思議にあふれてて、皆があたしを受け入れる。
……そんな世界になってる気がするの。」

ハルヒ「あんたは、辛くてつまんない世界にうんざりしてないの? 
特別なことが何も起こらない、普通の世界なんて、もっと面白いことが起きて欲しいと思わなかったの?」

悟飯「……特別なことなんてない方がいいですよ
……普通の世界を守る為に、受け入れられないものを特別なこととして排除しちゃうんです。
その守られるべき普通の世界が最高だし、もっとも面白いことだと僕は思います。
もちろん武力的な話だけじゃなく、価値観も……タイムマシーンだって普通と思えば普通ですよ」

ハルヒ「……明日になったら、そんな世界になってるかもね」

ハルヒの頭越しに、別の方角にも青い壁が立ち上がってくるのが見えた。一つ、二つ、三つ……。まだまだ出てくる感じだ。

光の巨人たちは、灰色の世界を好きなように破壊し始めし続けていた。
奴らが手足を振り上げるたびに空間が削り取られるように、そこに見えていた風景が消え去っていく。

グルドが言ってたことが本当かどうかわからないが、万が一を考えるとこれ以上は看過できない。

悟飯「涼宮さん……ごめん!」

僕はそう言い残すと校舎の方にゆっくりと走り出した。
ハルヒから見えなくなったら全力で走ったが……

ハルヒ「……ソンもあたしを置いてどっかに行っちゃうのね」

校舎の跡形は半分も残っていない。

それでも僕は校舎に入った。

そして、屋上まで一気に駆け上がった。
ところどころ廊下が渡れなかったり、階段が壊れていたために舞空術を使ったのは内緒だ。

無駄なこだわりを持って屋上に出た。
こういうのは気分が大事だね。

悟飯「へんしーん!!」

僕は腕時計の赤いスイッチを押した。

すると、深緑色のインナーウェアに緑色の服。赤いマントにヘルメットの姿に変身した。

悟飯「とおっ!!久しぶりにグレートサイヤマン参上!!!
……折角のポーズを見せる相手が居ないのは寂しいけど」

とりあえず、状況確認の為に浮いてみた。

ハルヒがグランドにきていた。危ないなぁ。
とりあえず、手を振っておこう。

ハルヒ「なにあの緑の!浮いてるわ!!!」

見渡すと、そこらじゅうに光の巨人がいた。
ハルヒが居なければ、全部まとめて吹き飛ばして終了なんだが…そうもいかないだろう。

とりあえず、ハルヒに破片が飛んで危ないので目の前の巨人を遥か彼方に蹴り飛ばした。

ハルヒ「すごい!飛んだわ!!!」

なんか凄い喜んでくれてる。
ヒーロー冥利に尽きるなぁ。

次は、ここまで爆風が飛ばない程度のエネルギー波を四方八方に飛ばした。

ハルヒ「なんか!飛ばしてる!!緑色の戦士だわ!!!」

随分と興奮してる。結構ノリが良い子なのかもしれない。

ハルヒ「このままキョンもソンも世界も全部壊しちゃえー!」

ストレスが貯まっているようだ。
お土産は奮発した方が良さそうだな。









当初は余裕と考えていたのだが、少々困ったことになった。
彼是30分ほど巨人を退治しているのだが、一向に減らない。

正確には、出現した瞬間には退治しているので、
最低限の数だし、一切破壊活動はないのだが、
出現し続けているので減らないのだ。

このまま朝になったら、どうなるんだろう?

???「ここどこだぁ?」

悟飯「えっ!?」

突然後ろから声振り返る。

悟飯「おとうさん!!!」

悟空「よっ!変な場所で戦ってるなぁ」

悟飯「どうしてここへ?」

悟空「おめぇ、夕飯の時からごそごそして落ち着いてなかっただろ?
それでチチ心配になって部屋を覗いたら居ないってんでさぁ~。
悟飯ちゃんが不良になったとか、家出したとか大変だったぞ~」

おかあさんにバレルと色々うるさそうだったから、ビーデルさんと海に行くのは内緒にしていた。
……そんなにソワソワしてたのか

悟飯「あはは……すみません」

悟空「それでおめぇの気を探そうと思ったら、探すまでもなく戦ってるかの様な気を感じて、瞬間移動したんだ」

悟空「ところで何と戦ってるんだ?」

悟飯「あ、あの光る巨人です」

悟空「ふーん……強そうにみえねぇけど、おめぇが戦うほど強いのか?」

悟飯「いえ、とても弱いのですが、無尽蔵に湧くんです。」

喋ってる間も湧き続けていたので、退治を続ける。
お父さんも手伝ってくれた。

ハルヒ「なに!?あの橙色の?あれも変なのを出してるわ!」

悟飯「あ、お父さんもう少し威力を落としてください」

悟空「?」

悟飯「下に同級生がいるので、小石とかが飛んで怪我しちゃいますから」

悟空「ああ、それで辺りを吹き飛ばしてねぇんだな。わかったオラがどこかに避難させておく。
後は任せたぞ。……チチへのフォローも」

なんか最後にとんでもない事を言われた気がした。…明日海に行けるのかなぁ?

お父さんは緩やかに下降していきハルヒの前に静かに降り立った。

悟空「オッス!オラ悟空」

ハルヒ「えっ、あ、あたしは涼宮ハルヒ…です」

悟空「涼宮…ハルヒ…?なんか聞いたことある名前だなぁ」

ハルヒ「ね、ね!どうやって飛んだの!あと、手から光りをだすのもどうやるの!……ですか?」

暇だから、巨人を退治しながら下の様子をみていた。
ハルヒも年上には敬語を使うんだな。
もっとも興奮しすぎて、敬語を使おうとしてるレベルだが

悟空「うん?ああ、気をコントロールしてるんだ」

ハルヒ「木?やっぱり自然の力って偉大よ…ですよね!不思議の次は自然!これで決定ね!」

悟空「不思議?ああ、おめぇが悟飯がよく言ってた、宇宙人とか未来人とか超能力者が好きな子か~」

ハルヒ「え?ソン…悟飯君のお兄さんか何かなんですか?」

悟空「いや、悟飯はオラの息子だ。オラは孫悟空。おめぇの大好きな宇宙人、サイヤ人だ。」

ちょっと!おとうさん何を言ってるんですか!僕のこれまでの苦労が台無しじゃないですか!

ハルヒ「え?じゃあ、ソン、悟飯君も宇宙人?」

悟空「ああ!もっともチチが地球人だから、世間だとハーフって言う奴らしいんだ。」

ハルヒ「あなたは宇宙人でお父さん、チチは地球人?」

悟空「ああ!」

ハルヒ「悟飯君は大人っぽいと思ってたら、なんか苦労してたっぽい話ですね」

悟空「どひゃー!おめぇよくわかったな!あいつは小せぇ頃から、すげぇ苦労してるぞ!」

もうおとうさんもハルヒもまとめて吹き飛ばしていいですか?

悟空「そういえば、おめぇの名前、涼宮ハルヒったか?ピッコロだったかブルマだったかも言ってた気がするなぁ」

ハルヒ「ピッコロにブルマ…ですか?いったいなんて?」

悟空「ピッコロとブルマはオラの友達だ!なんて言ってたか忘れちまったけど、まぁいいか!どうでもよさそうだし」

いや、立場的にお父さん絶対に内容聞いてるでしょ!どうでもよくないから!そこ重要!

悟空「フヒヒ…いいこと思いついちゃった~ 悟飯の同級生だし、オラ、サービスしちゃうもんね~」

ハルヒ「サービス……ですか?」

こっちは延々と湧き続ける巨人と戦ってるんですけど!戦いにはなってないけど…

悟空「おめぇは……宇宙人、未来人、異世界人、超能力者だっけ?そんなのに会いてえんだよな?」

ハルヒ「え、ええ、あなたのおかげで宇宙人には会えましたけど……」

悟空「ぬひひ。未来人って訳にはいかないけど、
超長生きな一種の古代人で、宇宙人で、異世界人で、超能力者な知り合いがいるんだけど、会いてえか?」

ハルヒ「会いたい!!」

あれ?巨人の出現率が随分と減った?

悟空「それじゃ、オラに掴まれ」

ハルヒ「……こうですか?」

悟空「ああ、それでいい。……界王神様……界王神様っと…見つけた!」

ようやく二人は消えた。しかし……ここからの退避先にそのチョイスはおかしいでしょ?

今日中に終わらせようと思ったのですが、酔って面倒になったので、残りは明日投稿します。

ノシ

若界王神「このところしょっちゅう、水晶玉で熱心に下界を覗いていますが、何を見ているんですか?」

老界王神「ふむ……その原因がご到着じゃぞ」

若界王神「?」

悟空「オッス!久しぶり~ 界王神様たちは元気にしてたか?」

老界王神「わしゃ、もう死んでるわ!」

若界王神「あ!悟空さんお久しぶりです」

老界王神「……一応ここは、神聖ことになっておって、界王ですら足を踏み入れたことはないんじゃぞ?」

悟空「そう固い事は言わないって!ピッチピチの女子高生なんだよ~」

若界王神「あの~ 後ろのご婦人は?」

ハルヒ「え、あ!涼宮ハルヒって言います!」

悟空「悟飯の同級生で、不思議なのが大好きなんだって、昔話でも聞かせてあげてくれねぇかなぁ?」

若界王神「え!?界王神界は神聖なので……」

悟空「これでブウ戦時の約束をチャラにしてくれよ。じゃあ後は任せた!」

若界王神「普通の地球人とかを連れてこられると……」

悟空「うんっと…悟飯…見っけ。じゃあな、界王神様達、またな!」

若界王神「ちょっと!地球人も連れて帰ってくださいよ!」

おとうさんたちが移動した直後に発生した一匹を倒したら閉鎖空間が崩壊した。

拍子抜けも甚だしかった。散々じらされて大暴れできなかった感じである。

悟空「お?もう終わったんか?」

悟飯「あ、おかえりなさい。……あれ?涼宮さんは?」

悟空「ああ……界王神様達の所に預けてきた」

悟飯「なにやってるんですか!!」

悟空「いや~…でもよ、ブウの時に約束したエッチな生写真の約束を果たしてねぇだろ?ちょっとは気になっててよ~」

悟飯「そんな問題じゃないでしょ!」

悟空「それじゃ、おめえの彼女の写真を渡すのか?」

悟飯「え…そ、そんな訳には……」

悟空「だろ?本人も界王神様の所暫く滞在するのが本望だろうしさ、
あの人達なら変なことをしないし、困ったら助けてあげるって!」

悟飯「言われてみればそうですね……」

悟空「ああ!別にオラはおめぇの彼女から、
ちょっかいをかけてくる女を遠ざけたら小遣いをもらうとか、そんな約束はしてねぇからな」

悟飯「えっ!?」

悟空「そんなことより、元の高校に戻らねえか?学費はおめえの彼女が出すらしいぞ?」

悟飯「でも天下一武闘会……」

悟空「そんなもん、必要ならドラゴンボールで記憶を消しちまえばいい!」

悟飯「!?」

悟空「復学扱いらしいから、悟飯も秋から高校3年生!オラも受験生の子を持つ親かぁ~…オラワクワクしてきたぞ!」

悟飯「えっ?」

まぁ、ビーデルさんの同級生に戻れるんだし、ちょっとは頑張ろう。

今回の件もおとうさんが来なければ終わらなかったんだし、
やっぱり、僕はフォローでメインはおとうさん。

おとうさんはヒーローだなぁ。








後は蛇足

若界王神「あの~ 今すぐ送り返しましょうか?」

老界王神「その必要はないじゃろて」

若界王神「女子高校生だからですか?」

老界王神「ふん!送り返すとはどこに送り返すつもりじゃったんじゃ?」

若界王神「え…それは地球……」

老界王神「どこの地球じゃ?」

若界王神「?」

老界王神「よっぽど、悟空の方が察しがよく神に向いとるわい」

若界王神「女の子を拉致してきて、神聖な界王神界に放置していく人と比べられても……」

老界王神「そこの娘を眠らせてる間に説明してやるわ。座れ。」

若界王神「はぁ……」

老界王神「その娘はな、簡単に言えば願望を実現する能力があるんじゃ」

若界王神「じゃあ、悟空さんが帰った途端に崩れるように眠ったのも眠いという願望の実現ですか?」

老界王神「……それはワシがやったんじゃ。ついでに心に対して安静も働きかけた」

若界王神「あの~…あんまり、その……お、おっぱいとかをツンツンしない方が…」

老界王神「バカもん!ちゃんと寝ておるか確認しただけじゃ!」

若界王神「はぁ……それで願望を実現する能力って、例のドラゴンボールみたいなものですか?」

老界王神「まぁ……そんなもんじゃろうな。ドラゴンボールと違い能力の発動や枷が個人の願望や認識によっておるがの」

若界王神「一種の生きてるドラゴンボールですか……」

老界王神「そんなものをあのブウが居る地球に置いとく訳にはいくまいて
……まして、ブウと仲が良いあのサタンとやらの娘に敵愾心をもってしまっておるしの」

若界王神「それは……確かに怖いですね。
……でもこの子にも家族や友達等の環境がありますし、何時までもここに置いておくという訳には…」

老界王神「ふん!だから悟空よりも察しが悪いと言っておろう」

若界王神「え!?ブウの時に約束した生写真代わりに置いて行ったんじゃ?」

老界王神「いかに悟空と言えども、それだけの理由で娘をここに置いていかんじゃろう。
地球の元神から娘の能力を教えてもらっておったようじゃし、とぼけておったが、
この娘に能力を教えないようにしつつ、これ以上息子に苦労をかけまいと隔離したんじゃろう。」

若界王神「いや、それでも……」

老界王神「その娘は別世界の地球からきたんじゃ、届けるならそちらにせんとな。
……おぬしなら届けられると思って連れてきたんじゃろう。
もっとも自分の意思で別世界に来たんじゃ。得心せん限り、送り届けたところで何度でも自分自身を飛ばすじゃろうがな」

若界王神「……ところで、自分自身を飛ばす……なんの為にそんなことを?」

老界王神「思春期の娘じゃ。大方、自分が好きな相手が他の女に興味を持ったとか、いい雰囲気にみえたとか、
アイドルを褒めたとか、エロ本を持ってたとか、そんな他愛の無い事じゃろう。
一方で世界を作り替えるほどその男も世界のことも嫌いじゃないから……まぁ現実逃避、一種の家出じゃな」

若界王神「例のドラゴンボール的な力が発動したらと思うと、随分と迷惑な家出娘になりそうですね」

老界王神「度々発動しておったが可愛いものじゃったよ。最後は大暴れしたようじゃったが、
あのショックが別世界の本来の本命から与えられておったのならあんな程度では済まなかったじゃろうなぁ」

若界王神「はぁ……なんのことか知りませんが……」

老界王神「憧れのアイドルに付き合ってる相手が居たショックは、
実際の本命が他の女に興味を持ってたのに満たないという話じゃよ。
実際に発動していた力は、
自分の極近くの環境を以前に自分が居た環境に近寄らせて違和感なく過ごせるようにしたりとか…そんな程度じゃな」

若界王神「……界王神の出す比喩表現では無いとは思いますが…」

老界王神「……これを見るがええ。こちらが本来の娘が通っていた高校。
こちらが改変される前のこちらの地球の高校。どう思う?」

若界王神「本来の学校は山の中腹だったのに対して、こちら側の高校は平地の街中にありますね。
建物も本来の世界は木造家屋が中心で、こちら側は高層建築物や半円球に加工した合成素材が中心みたいですね。
一言でいえば、緑豊かな田園都市と都会って感じの違いでしょうか?」

老界王神「うむ……この娘もそう感じたんじゃろう。
この娘の住んでいた町は特別田舎ではなかった為に本人も別に自然は意識していなかったのようじゃ。
ただ、こちらの高校に通ってなんとなく感じた違和感が『緑が足りない』だった為に、
次々と『緑』に関連する者を呼び寄せてしまったようじゃ」

若界王神「はぁ……『緑』…ですか……」

老界王神「この娘が開いたルート辿って、向こうの情報生命体がその接続体を送ってもいたようじゃの。
この連中は、この娘の『緑』や『超能力者』を望む気持ちが集めた様々な情報を基に疑似生命体も作っていた様じゃ。
もっともそれは、色々な情報が混濁したので、妙に地球に馴染んでいたり、
思考が地球人だったりとベースになった情報とは似て非なるものじゃったようじゃがな。
そういう意味では、この娘よりも、付いてきた連中の方が地球への影響は大きかったじゃろう。
その連中もこの娘を見失って引き上げたようじゃな」

若界王神「ここはその情報生命体に観測されなかったのですか?」

老界王神「ここは数次高度な世界だから、解るはずがあるまい。
……認識できるのは精々が界王界くらいまでじゃろうて」

若界王神「それで……この子をいつまで置いておけばいいんですか?」

老界王神「界王神界では、この娘の能力も外部に対して発動できんし、すぐに退屈するじゃろう。
そうなったら、元の世界や好いた男が恋しくなって、家出に飽きて勝手に帰るじゃろうて」

老界王神「上手に帰れんようじゃったら、おぬしが届けてやればええ」

若界王神「別世界でも行けるとは思いますが……それって色々不味くありません?」

老界王神「この娘は常識的じゃ。ありえないと判断して、全部夢と思うじゃろう」

若界王神「……それで…お尻をツンツンしてるのは?」

老界王神「やさしく起こしてやろうと思ってな」

























岡部「(´・ω・`)」



チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

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