モバP「時を越えて君を愛せるか」 (120)

P「……………………」

P「……………………」

P「……………………」

P「……………………」

P「……………………ん…」

P「………………こ、こは」

P「…どこ…?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402159537

看護師「あれ?」

P「………病…院?」

看護師「え、嘘」

P「あ、の…」

看護師「あ、すぐ先生呼んできますので」

P「あ、………」

P「………………」

P「……………」

医師「……………でして」

P「…………?」

医師「10年ほど植物状態でこちらで眠っていたのですが」

P「10年…?」

医師「はい」

P「はぁ…10年…ですか」

医師「信じられませんか?」

P「はぁ…なんと言いますか…しっくり来ないんです」

医師「そうでしょう、こう言うことを自分の中で納得させるには時間が必要ですから」

P「はぁ…そう言うものでしょうか…」

医師「ではいきなりで色々お疲れでしょうし今日はゆっくりしてください、TVやラジオはご自由にお使いください」

P「はい」

医師「では、また何かありましたら看護師の方へ言っていただければ対応いたしますので」

P「10年……」

P「…………………………」

P「…………………………」

P「…………………………」

P「…………………………」

P「10年か」

P「ゆっくりと言っても10年も寝っぱなしじゃな………」

P「腕は……動くな…」

P「足は……」

P「ははは…………」

P「動くけどこれじゃ………歩ける気がしないな……………」

P「…仕事ばかりしてたせいかな……」

P「こういうとき何すればいいのかも分からないや…」

P「そういや仕事ってどうなったんだろ……」

P「クビって事は流石にないにせよ…扱いはほぼ変わらないだろうな…」

P「今更ボクが戻ったって何が出来るわけでも…」

P「…………ダメだ、」

P「こう暗くなっちゃうと相変わらず涙が出る」

P「幸い10年経とうがボクは変わってないしな」

P「TVでも見てここ10年で何が変わったのか少しでもつかんでおこう」

P「……………………………」

P「…………?」

P「TVの操作がわからないよ…」

P「とほほ…」

P「あ、ありがとうございました」

看護師「いえ、また何かございましたらお声かけくださいね」

P「いい人だなぁ…」

P「はぁ…にしても日本の景気の悪さは相変わらずだなぁ」

P「政治はこれといって劇的に変わったなぁとは思えないな…」

P「………………え?」

P「『タレント政治家 安部菜々、国会大暴れ!?』」

P「菜々は一体どこを目指していたんだあの娘は…」


《菜々『えっ?本当は何歳なのかって?』》

《菜々『菜々は17歳ですから!永遠の17歳!』》

《菜々『17歳じゃ政治参加はできない?』》

《菜々『あーもう!!ウサミン星人は17歳でも政治参加が認められてるんですー!』》

《菜々『あ、なんで引いてるんですか?ヒステリックじゃないですから!』》

《菜々『そう言うの傷付くので止めてください!』》

P「それにしてもあの娘は外見的にもそんなに変わってないなぁ…ははは」

P「そっか、政治家になったのか」

P「タレント政治家か…そう言う道もあるよな…うん」

P「『三浦あずさ、第一子出産』か」

P「765さんとこの三浦さんもいつの間にか結婚してたのかぁ…出産とはおめでたいなぁ…」

P「『島村卯月、現役続行を宣言』」

P「ハハハ!」

P「あの娘らしいなぁ………」

P「というかこの煽り失礼だなぁ」

P「そうか…もう卯月も27なのか…」

P「うちは30過ぎようが40過ぎようが関係ないよ」

P「女性はいくつになっても美しいものだからなぁ」

《卯月『まだまだ若い子達には負けられませんから!頑張ります!』》

《卯月『ね、凛ちゃん』》

《凛『いや、あの、こっちにカメラ向けないでください』》

《凛『卯月!こう言う公的な場所ではプロデューサーって呼んでもらえない?』》

《凛『あ、いや、カメラ回さないで』》

《卯月『凛ちゃんも次のライブには参加しますから!』》

《ざわざわざわざわ》

《凛『卯月!?』》

P「………」

P「凛が………」

P「そうか…あの娘がいてくれるなら尚更だなぁ」

P「うん、安心だ」

P「そうか、アイドルは引退したんだろうとは思ってはいたけどなぁ」

P「プロデューサー、か」

P「本当に10年もたってしまったんだなぁ……」

P「………」

P「居場所はもうない」

P「…………」

P「…………」

P「いや、昔はそうだったな」

P「必死にやって認められて初めて居場所ができるんだから」

P「…………」

P「…………」

P「今できることをやろう」

P「必死に、精一杯」

P「…………」

P「とりあえずはリハビリかな?」

P「あはは…」

《そして》


P「退院……ですか?」

医師「はい、こちらも驚きました。たった3ヶ月で普段と変わらないだろう生活を送れるまで回復されて」

P「確かに動きに違和感はないですがいいのでしょうか?」

医師「とりあえず退院という形にしますが暫くは様子を見させていただきたいので月に何回かは通院していただく事にはなりますよ」

P「それなら分かりました」

P「結局最後まで誰も見舞いには来なかったな」

P「きっと顔を合わせ辛かったんだろうな」

P「取り敢えず家に戻って見るか……」

P「………」

P「病院にはお世話になったなぁ……」

P「さて」

P「さて」

P「さて?」

P「えぇ?」

P「いや、いや」

P「えええ」

P「住んでたアパートが空き地になってるんだけど」

P「いやいやいや」

P「じゃあボクは今日からどうすれば」

P「あ、そう言えば先生から地図もらってたな」

P「流石に自分の家は覚えてるからと思ってみなかったけど確認しないとね」

P「……やっぱりか」

P「『CGプロ職員宿舎…か』」

P「なんというかもう10年もいなかった人間をこう言う風に扱ってくれるなんて義理堅い人達でよかったなぁ」

P「へぇ……こんな大きなビルが建ってる…凄いなぁ…どこの会社だよこれ」

P「……………………………?」

P「『CINDERELLA GIRLS production』?」

P「はぁ…」

P「はぁ?」

P「そりゃあ迎えにも来ないわけだ」

P「忙しいんだろうなぁ…」

P「何階建てなんだろこれ…へぇ……」

P「むしろこんだけ大きけりゃ一人くらい来てくれてもよかったのになぁと思うほどボクも腐ってはいないけどなぁ」

P「そっか、知らないうちに皆やっぱり成長してるんだなぁ…人も会社も」

P「宿舎は…まだ10分ほど歩いた先か」

P「会社から近い宿舎って凄いなぁ」

P「この辺も変わったなぁ……」

P「それにしてもこの辺の女の子のレベル高いなぁ」

P「おっと、あまりじろじろ見ると警察でも呼ばれたら大変だ」

P「ボクもすっかり親父だからなぁ…あはは」

P「………着いた」

P「徒歩10分って書いた奴は誰なんだ…」

P「先生の字じゃなかった!」

P「地図の途中が大幅に略されてたしね!」

P「ビックリした!」

P「40分歩かされるって!」

P「全然近くなかった!」

P「…出迎えもなしか…………」

P「あ、ヤバい泣きそう」

P「あー」

P「うん、頑張ろう」

P「ビッグになろう」

P「いや、ビッグになる必要はないか」

P「入っていいのかな」

P「ていうか鍵空いて…………」

P「…………るね」

P「不用心にもほどがあるよ…………」

P「お邪魔しますー…」

P「あ、違う」

P「ただいま…かな」

P「はは…」

P「ただいま!」

P「…………」

P「……………」

P「…ふぅ」

P「大丈夫、こう言う事態には慣れてる」

P「例え玄関で誰か倒れててもボクは冷静に対処可能だ」

P「有難う早苗さん、あなたのお陰でボクは今冷静だ」

P「そしてこの目の前で倒れてる女性は誰だ」

女性「んあ…?」

P「大丈夫ですか?」

女性「あー…たぶん?」

P「多分って自分の事でしょう?」

女性「んー…」

P「取り敢えず起きてくれません?」

女性「んー…」

P「あっ、待って!服整えてぇ!!」

女性「んー?」

女性「あー」

P「ふぅ…取り敢えず支えますから奥いきましょう」

女性「あー、どもども」

P「取り敢えずこっちのソファにかけてください、水持ってきますから」

女性「水ー?キッチンはむこうー」

P「はいはい」

P「!?」

P「これは…」


そこにあったのはいくつもの屍

まるで戦場にて儚く散っていった戦士達のように息絶え転がっている女たちの姿

そしてPは気づく、目の前に吊り下げられた文字に

そして全てを察した!

 





『プロデューサー退院おめでとう前夜祭』





 

 





Pは泣いた





 

 





別の意味で泣いた






 

 





P「迎えにも来ないと思ったらこう言うことかちくしょおおおおおおおおおお」







 

P「皆起きろ!!」

P「水ぶっかけんぞオラァ!」

P「このクソアマ共がぁ!」



皆はこの時思い出していた

自分の事を『ボク』と言うせいで温厚に見えるが

実は怒らせると恐い

鬼の姿を

P「立てオラァ!」

P「取り敢えず一人づつ」

ルキトレ「青木慶!29歳です!彼氏募集中です!」

P「よし、頑張れ」

トレーナー「青木明…33歳…2児の母です」

P「取り敢えず帰ろう?子供も心配してるよ?」

ベテトレ「青木聖、36歳、独身だ」

P「はい」

ベテトレ「なにか?」

P「いえ」

P「………」

マストレ「……………」

P「……………」

マストレ「酒に飲まれて何が悪い」

P「………えぇ……」

マストレ「飲まないとやってられない………」

P「えぇぇ……………」

ルキトレ「姉さん、呑みましょう?」

マストレ「私は良い妹を持った……」

P「呑むなよ!?」

トレーナー「美味しい…」

P「呑んでんじゃねーよ!?」

女性「水はー?」

P「お前だれだよ!!」

女性「ひっどいな!?」

女性「よく見てよ!」

P「いや、プロダクション職員に貴女のような人は」

女性「10年前は、ね」

P「あぁ、そうか」

女性「10年前はアイドルでした!」

P「えっ?」

女性「自分がデビューさせたアイドル忘れるなんてプロデューサーもはっくじょうだなぁ?」

P「…………え」

P「…………未央……か?」

未央「えへへ、せっいかーい!本田未央25歳!うむうむ、思い出したかな?」

P「……ハハハ」

未央「いや、どしたのプロデューサー」

P「いや、大人っぽくなったと思ってな」

未央「あ、分かる?この未央ちゃんの魅力?」

P「あぁ大人っぽくなったよ」

P「外見的は」

未央「なんだと!?」

P「一つ聞きたいんだが」

未央「なにかな」

P「地図書いたのは?」

未央「私だね?」

P「じゃあ徒歩10分って書いたのは…」

未央「勘の良いプロデュ、痛いィィイ」

P「お前という娘は身体が大きくなっても変わっていないじゃないか」

ベテトレ「正確に言えば本田は胸がさらに成長したなぁ…」

ルキトレ「羨ましい羨ましい」

未央「あー…すっかり酔いも覚めちゃったよ」

P「良いことじゃないか」

未央「あ、そだそだ!プロデューサー」

P「なんだい?」

未央「えへへ、おかえり☆」

P「あぁ」

P「………」Zzz…

未央「……………」

P「………」Zzz…

未央「…………」

P「………」Zzz…

未央「ごめんね…プロデューサー…」

未央「…ごめんね……」

トントントントン

P「………」Zzz…

トントントントン

P「………ん…」

ジャー…

P「…朝か…?」

ジュージュー

P「6時か…」

P「…うん、疲れてもいないし至って健康だな」

P「それにしても良い匂いだ…」

P「誰かが朝飯でも準備してるのかな…」

P「取り合えず顔を洗ってから飯でも貰いに行くかな」

P(おや?)

P「おはようございます」

凛「!?」

P「あぁ、凛か?お早う」

凛「うん、お早う。プロデューサー、体調は平気?」

P「ありがとう、ボクはもう大丈夫。本当に長い間心配かけて済まなかったね」

凛「そうだよ」

P「あら?」

凛「プロデューサーがいなくなって本当に大変だったんだよ?」

P「あー…ごめんなさい?」

凛「ふふ、少し意地悪したくなっただけだから平気だよ」

P「ははは」

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