海未「惨劇の館」 (1000)

バァン!

花陽「た、大変です!!」

穂乃果「花陽ちゃん?」

凛「そんなに慌ててどうしたの?」

花陽「え、えっと……その……と、とにかくこれを見てください!!」

希「携帯電話がどうかしたん?」

花陽「け、携帯ではなく……これです!」

真姫「メール……?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402154204

From:Unknown
Subject:なし
本文
アルパカは死ぬ


真姫「…………」

にこ「…………」

絵里「…………」

凛「た、大変だにゃ!」

花陽「一体どうしたらいいんでしょうか……」

真姫「他っておきなさい」

花陽「ええ!? でもこのままじゃアルパカが死んじゃいます!」

にこ「あんたねぇ……こんなのどうみたって悪戯に決まってるでしょ!」

花陽「で、でもぉ……」

にこ「でもも何もないわよ。無視しなさい無視」

穂乃果「ううん、これは一大事だよ!」

ことり「そうだよ! アルパカさんが死んじゃったら悲しいもん!」

にこ「だからそれが嘘だって言ってんのよ!」

凛「にこちゃんの言うことは当てにならないにゃー」

にこ「なんですって!?」

海未「……ですが、アルパカの件は冗談だとしても、花陽にこのメールが届いたことは問題ですね」

絵里「そうね、悪戯にしては笑えないもの。悪質な嫌がらせかもしれないわ」

希「最近はストーカー被害も増えとるし……気をつけないとね」

花陽「す、ストーカー!?」

希「あくまでも例えや。怖がる必要はないよ」

絵里「でも用心に越したことはないわ。なるべく一人で帰らないようにしなさい」

凛「花陽ちんは凛と帰るから大丈夫にゃー」ギュ

花陽「り、凛ちゃん……」

真姫「……私も一緒に帰ってあげるから安心しなさい」

花陽「真姫ちゃんも……」

花陽「……二人とも、ありがとう」

にこ「全く……あんな悪戯メールだけで大騒ぎしすぎよ」

絵里「そう言わないの。何かあってからじゃ遅いでしょ?」

にこ「そりゃそうだけど……」

希「まあまあ、三人で仲良く帰るだけなんやしええことやん」

絵里「それとも、にこもあの中に交ざりたかった?」

にこ「なっ、なんでそうなるのよ!」

絵里「冗談よ、冗談」

穂乃果「ねえねえ、海未ちゃん」

ことり「ちょっと相談があるんだけど……」

海未「却下です」

穂乃果「ええ!? なんで!?」

海未「どうせ、夜に学校に来てアルパカを守ろう、なんて言い出すつもりでしょう?」

穂乃果「う……」

ことり「あはは……」

海未「いいですか、あのメールはにこが言っているようにほぼ確実に悪戯メールです。行っても徒労に終わるだけとすよ」

海未「それに私達は生徒会役員です」

海未「その三人が夜の学校に忍び込んだなんてばれたら他の生徒への示しがつきません」

海未「また、もし仮に本当に犯人がアルパカを殺しにやってきたとしましょう」

海未「その時どうするつもりですか? 凶器を持った犯人と戦うつもりですか?」

穂乃果「う……」

ことり「無理……かな……」

海未「解ったのであれば、おとなしく帰りますよ」

穂乃果「……海未ちゃんの意地悪」

海未「……何か言いましたか?」ニコッ

穂乃果「な、なんにも言ってないよ?」

絵里「ほら、暗くならないうちに帰るわよ」

凛「花陽ちん、真姫ちゃん! ラーメン食べに行こう!」

花陽「い、今からは……ちょっと……」

真姫「無理に決まってるでしょ!」

希「ふふ、楽しそうやなぁ」

にこ「お子様なだけよ」

真姫「にこちゃんに言われたくないわ」

にこ「なんですって!?」

穂乃果「ねえねえ、穂乃果達もどこかーー」

海未「却下です。太りますよ」

ことり「海未ちゃん……駄目……なの?」ウルウル

海未「うっ……」

穂乃果「いいでしょ? 海未ちゃん!」

ことり「海未ちゃん!」

海未「…………き、今日だけですからね」

穂乃果「やったー!」

ことり「やったね、穂乃果ちゃん!」

海未「……食べたらすぐに帰りますからね?」

穂乃果・ことり「「はーい」」

ーーーー次の日

穂乃果「いやー、美味しかったね、昨日のパフェ」

ことり「うん、チョコレートがとっても甘くてふわふわしちゃった」

海未「……すぐに帰ると言ったのに、なんだかんだで二時間以上いましたね」

ことり「……ごめんね、海未ちゃん……嫌だった……?」

海未「い、いえ、嫌というわけではありませんが……」

穂乃果「そうだよね! 海未ちゃんも顔を真っ赤にして楽しそうだったもん!」

海未「わ、忘れてください///」

ガヤガヤ

穂乃果「うん……?なんだか学校の方が騒がしくない?」

ことり「本当だ、何かあったのかな?」

海未「行ってみましょう」

タッタッタッ

穂乃果「……あそこだ、人が沢山いるよ」

海未「……アルパカ小屋?」

ことり「も、もしかして……!」

絵里「皆、教室に戻りなさい!」

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「穂乃果?」

穂乃果「一体何があったの?」

絵里「それは……」

チラッ

穂乃果「っ!?」

ことり「ひっ!?」

海未「……っ」

絵里「アルパカが……殺されたわ」

穂乃果「そ、そんな……」

絵里「話は後よ。今は、皆を教室に誘導して」

穂乃果「う、うん……」

ことり「な、なんで……こんな酷いこと」ポロポロ

海未「悪質すぎます……!」



ーーー
ーー

ーーーー部室

絵里「……皆も聞いてると思うけど、アルパカが殺されたわ」

花陽「そんな……」

穂乃果「やっぱり、夜に来るべきだったんだ……」

絵里「いいえ、昨日海未も言ってたと思うけれど、そんなことをしたら穂乃果まで殺されていたわよ」

ことり「どうして……こんなことができるの……?」

花陽「ことりちゃん……」

ことり「アルパカさんには、なんの罪もないのに」

ことり「それなのに……どうして……」ポロポロ

海未「…………」

凛「…………」

絵里「…………」

にこ「あーもう、やめやめ!」

にこ「確かにアルパカのことは可哀想だけど、悲しんでいる暇なんてないわよ!」

にこ「次のラブライブ予選に向けて、にこ達は練習しないと」

花陽「なんで……そんな……」

希「……にこっちも、本当は辛いんや」

花陽「え……?」

希「でも、誰かが言わなければいけないこと。そうしないと、皆が先に進めないから」

絵里「……にこの言うとおりよ。皆、辛いと思うけど、気持ちを切り替えましょう」

絵里「今週末から真姫の別荘に行って、トレーニングや新曲の調整をするわ」

絵里「真姫、いつもありがとう」

真姫「……別に、たいしたことじゃないわ」

穂乃果「そうだ、その合宿のことなんだけど」

海未「どうかしたのですか?」

穂乃果「うん、雪穂もくるって」

海未「……え?」

海未「ど、どうしてですか?」

穂乃果「来たいって言うから?」

海未「あ、貴女という人は……!」

絵里「えっと……言いにくいんだけど、亜里沙も……」

海未「絵里まで!?」

絵里「どうしても断れなくって……」

にこ「あんた達ねぇ……遊びに行くんじゃないのよ!?」

ことり「あはは……」

花陽「えっと、ということは11人で……?」

凛「賑やかで楽しそうだね!」

穂乃果「バーベキューやろうよ! バーベキュー!」

希「ええな、お肉たくさん持ってこか!」

真姫「ちゃんと片付けなさいよ?」

ことり「じゃあ、ことりもチーズケーキを……」

にこ「却下」

海未「却下です」

凛「却下にゃー」

ことり「酷い!?」

絵里「まあ、ずっと練習ばかりじゃ息も詰まっちゃうし、適度に息抜きしながら楽しみましょう」

穂乃果「そうだね、今からワクワクが止まらないよ!」



ーーー
ーー

ーーーー夜

プルルルルルル

ガチャ

海未「こんばんは、絵里」

絵里『こんばんは。どうかしたの?』

海未「いえ……その、大丈夫かなと」

絵里『心配してくれたの? 大丈夫よ、ありがとう』

絵里『……皆明るく振舞ってたけど、やっぱり簡単には事件のことは忘れられないわよね』

海未「はい……今度の合宿が、いい気分転換になればいいのですが」

絵里『そうね、こんな調子でラブライブにでても、絶対に勝ち残れないもの』

絵里『そうだ、亜里沙が合宿をとっても楽しみにしていたわ』

海未「亜里沙が……ですか?」

絵里『ええ、海未さんに会える、なんてはしゃいじゃって』

絵里『モテモテで羨ましいわね』

海未「え、絵里……? ちょっと怒っていませんか?」

絵里『別に? 可愛い妹が後輩に懐いてるからって怒ったりしないわよ』

海未「あはは……」

絵里『あら、亜里沙が呼んでるみたい。それじゃあ切るわ。お休みなさい、海未』

海未「はい、お休みなさい」

プツン

プープー

今回はここまで。死にネタ注意

ーーーー合宿一日目

穂乃果「待ち合わせ場所が港だったからおかしいなって思ってたけど……」

ことり「もしかして……船に乗っていくの?」

真姫「当たり前じゃない、無人島に行くのに歩いていけるわけないでしょ?」

花陽「む、無人島……?」

真姫「ええ、こないだは山だったから、今回は島にしようと思ってね」

にこ「ぐぬぬぬ……」

凛「スケールが違いすぎるにゃ……」

海未「真姫にはお世話になりっぱなしですね」

穂乃果「海未ちゃんは驚かないの?」

海未「はい、事前に真姫から無人島で合宿をするということは聞いていましたので」

穂乃果「ええー!? ずるい!」

海未「ずるくありません。一体誰が合宿の予定や練習メニューを作っていると思っているんですか!」

穂乃果「そ、それは……えへへ」

真姫「ちなみに、絵里と希も知ってるわよ」

にこ「なんですって!?」

凛「なんだかずるいよ!」

花陽「で、でも、それで予定とかを立ててくれるから、私たちが慌てずに練習できるんだし……」

穂乃果「それはそうだけど……」

ことり「……あれ? 穂乃果ちゃん、雪穂ちゃんは?」

穂乃果「ああ、そうだった! 聞いてよ! 雪穂ったら酷いんだよ!?」

凛「何かあったの?」

穂乃果「それがねーー」

「海未さーん!」タタタタ

海未「え?」

ギュッ

亜里沙「えへへ、おはようございます、海未さん」

海未「あ、亜里沙!?」

雪穂「ちょっ、待ってよ亜里沙!」

穂乃果「あー! 雪穂、なんで穂乃果と一緒に来なかったの!?」

雪穂「えー、お姉ちゃん起きるの遅かったし、絶対道に迷うじゃん」

穂乃果「う……き、今日は迷わなかったもん」

雪穂「それは海未さんとことりさんが迎えに来てくれたからでしょ?」

穂乃果「そ、そうだけど……」

雪穂「いつも二人に頼ってばっかりじゃ駄目だよ」

穂乃果「……はい」

凛「穂乃果ちゃん、お姉ちゃんなのに叱られてるね」

にこ「全く、だらしないったらありゃしないわ」

絵里「皆、お待たせ」

希「まさかウチらが最後とはね」

穂乃果「あー! 絵里ちゃんと希ちゃんおそーい!」

真姫「いつも遅れて来る人が何言ってんのよ」

雪穂「……姉がご迷惑をおかけしています」

ことり「べ、別にそんなことないよ?」

絵里「ねえ海未、その荷物は?」

海未「はぁ、普通ですが」

絵里「……今から行くのは島よ?」

海未「もちろん解っていますよ。無人島にある未開の山。ワクワクが止まりませんね!」

凛「凛はもう行かないからね」

海未「何を言っているんですか、練習メニューの一つですよ! そんな甘えた発言は許されません!」

凛「そんな!? もうあんな目にあうのは嫌だにゃ!」

にこ「あんたらいつまでも漫才やってんじゃないわ!揃ったならさっさと行くわよ!」

絵里「そうね。ほら、皆、船に乗り込んで」

絵里「楽しい合宿の始まりよ!」

ーーーー別荘

花陽「わぁ……」

ことり「凄い……」

絵里「ハラショー……」

真姫「何驚いてんのよ、さっさと中に入るわよ」

穂乃果「いやいや、だってこんなに大きいんだよ!?」

穂乃果「真姫ちゃんは驚かないの!?」

真姫「いや、私の家の別荘だし……」

真姫「さっさと入るわよ」

ギィィィィィ

凛「扉から変な音が!」

穂乃果「なんだか古いお屋敷みたい!」

亜里沙「中もすっごく大きいですね、海未さん」

海未「そうですね、まさかここまで凄いとは想像していませんでした」

にこ「……ふん、なによ、少し大きいからって」

希「まあまあ、そう言わんの。部屋の場所はもう決まっとるん?」

真姫「まだよ。適当に部屋の鍵渡すから、皆こっちに集まって」

穂乃果「ねぇねぇ真姫ちゃん! あれないの、あれ! ジャラジャラしてる奴!」

真姫「ジャラジャラ……? ああ、もしかして鍵束のこと? 今はないわよ」

穂乃果「えー、なんでー!」

凛「そうだよ! 一度は見てみたかったのに!」

真姫「しょうがないでしょ、予備の鍵もマスターキーも今は修理に出してるんだから」

真姫「もし部屋の鍵を失くしたら、廊下で寝てもらうからね」

凛「ま、真姫ちゃんが怖いにゃ……」

絵里「鍵を貰ったら、一度部屋に行って荷物を置いてきて。その後ラウンジに集まりましょう」

真姫「そうね……にこちゃん」

にこ「なによ」

真姫「はい、部屋の鍵」

にこ「……ふん」パシッ

花陽「にこちゃん、機嫌悪いのかな?」

凛「ただ嫉妬してるだけにゃー」

にこ「そこ! 聞こえてるわよ!」

真姫「……全く。はい、次の人、早く取りにきなさいよ」

バタン

穂乃果「うわー! 見て見て雪穂、凄く広いよ! ホテルみたい!」

雪穂「もー……お姉ちゃん、恥ずかしいからあんまりはしゃがない」

穂乃果「むぅ、なんで雪穂はそんなに落ち着いていられるの?」

雪穂「いや、十分驚いてるけど。真姫さんて凄いお金持ちなんだね」

穂乃果「うん、そうなんだよ。どこにでも別荘持ってるし」

雪穂「……ていうか、お姉ちゃんの部屋隣でしょ、何くつろごうとしてんのよ」

穂乃果「あれ、そうだったっけ、あはは」

凛「花陽ちん、凄いよ! この部屋ベランダがあるよ!」

花陽「り、凛ちゃん、そんなに身を乗り出したら危ないよ」

凛「平気平気! 全部の部屋にベランダがあるから、これなら違う部屋にいても花陽ちんとお話できるね!」

花陽「うん……そうだね。えへへ、こういうのも楽しそう」

凛「……でもベランダは距離がありすぎて飛び移れそうにないね」

凛「これじゃあ花陽ちんの部屋に忍び込めないにゃー」

花陽「……危ないことはしないでね?」

凛「解ってるよー」

凛「というか、なんでこんな崖の上にお家を立てたんだろ?」

花陽「うーん……真姫ちゃんに聞いてみるとか?」

凛「そうだね、後で真姫ちゃんに聞こっと」

ことり「……海未ちゃん、その鞄には何が入ってるの?」

海未「鞄の中身ですか?水、食事、ウェットティッシュ、ごみ袋、ロープ、耳栓、アイマスク、筆記具、マスク、地図、保険証、ナイフ、帽子、服、着替え、防寒具、雨具、タオル、ヘッドランプ、軍手、携帯酸素ーー」

ことり「す、ストップ! もう解ったから!」

ことり「海未ちゃんは本当に山が好きなんだね……」

海未「はい、大好きです! 今回の山も楽しみで仕方ありません!」

ことり「え……登る……の?」

海未「もちろんです! ちゃんとスケジュールも組んであるので安心してくださいね」

ことり「あ、あはは……」

希「なあ、えりち、本当に大丈夫?」

絵里「? なんのこと?」

希「……あの事件や。皆の手前、平気そうにしとるけど、本当はかなりショックなんやろ?」

絵里「……ありがとう、でも私なら大丈夫よ」

絵里「私たちには、立ち止まってる時間なんてないんだから」

希「…………」

絵里「ほら、湿っぽい話はなしよ。今は合宿を楽しみましょう」

希「……そうやな。せっかくやし、おもいっきり羽目を外すとしよか」

絵里「その調子よ。さあ、準備も終わったし、ラウンジに向かうわよ」

絵里「……あれ?亜里沙の姿が見えないんだけど?」

希「ああ、亜里沙ちゃんならさっき、海未ちゃんの部屋に行ってきます、って出てったよ」

絵里「…………そう」

希「げ、元気だしてや」

ーーーーラウンジ

絵里「それじゃあ皆集まったみたいだし、今日の練習メニューを発表する……って言いたい所なんだけど」

穂乃果「? どうかしたの?」

絵里「今日は練習を無しにして、皆好きなだけ遊びましょう」

穂乃果「本当!?」

絵里「ええ、本当よ。ただし、明日からはハードスケジュールになるからちゃんと覚悟しておくのよ」

絵里「そういうことで、皆もいい?」

にこ「……ま、いいんじゃない」

希「たまには羽のばさんといかんしなぁ」

穂乃果「そうと決まったら泳ごう!」

穂乃果「真姫ちゃん、海にいこうよ海に!」

真姫「……今は冬よ。外で泳いだら風邪ひくに決まってるわ」

穂乃果「そ、そういえばそうだった……」

にこ「季節くらい覚えておきなさいよ!」

穂乃果「あはは、ごめんね……でも、それならなにしよう」

にこ「しょうがないわねぇ、それならにこと一緒にアイドルの極意の研究を……」

穂乃果「それはいいや」

真姫「意味わかんない」

にこ「なんでよ!?」

ことり「凛ちゃんは何をするの?」

凛「うーん、凛はねー」

海未「ことり、凛、ちょっとよろしいですか?」

ことり「よくないかなぁ」

凛「絶対に嫌だにゃ」

海未「な、何故ですか!?」

ことり「だって……ねぇ?」

凛「山登りしようって言うに決まってるもん」

海未「それの何が悪いんですか!」

凛「凛は前回それで酷い目にあってるんだよ!絶対に行かないにゃ!」

ことり「こ、ことりも……遠慮しておきたい……かな、あはは」

海未「そ、そんな……」

海未「私は……一体なんのために……」

亜里沙「海未さん」

海未「亜里沙……」

亜里沙「元気だしてください、私が一緒に登りますから!」

海未「本当ですか……?」

亜里沙「はい! 雪穂も一緒に!」

雪穂「わ、私も!?」

雪穂「待ってよ亜里沙、どうして私まで」

亜里沙「特に予定もないし、いいでしょ?」

雪穂「いや、確かに予定はないけどさ……」

海未「……亜里沙、雪穂。あなた達の熱い思い、確かに受け取りました」

雪穂「えー……勝手に受け取られても……」

海未「さあ、行きますよ! 山頂アタックです!」

亜里沙「はい!」

雪穂「そんなぁ」



絵里「……海未、ちょっといいかしら?」ニコニコ

穂乃果「あれ、ことりちゃん、海未ちゃんは?」

ことり「えーと、絵里ちゃんにどっかに連れていかれちゃった」

花陽「絵里ちゃん、笑顔だったけどとっても怖かったね……」

凛「自業自得だにゃ!」

希「それより、何をするのか決まったの?」

穂乃果「それなんだけどさ、せっかく無人島に来たんだから探検しようよ!」

真姫「探検って、道もほとんど舗装されてないし、危ないわよ」

穂乃果「少しだけだから大丈夫だって! それとも真姫ちゃん、怖いの?」

真姫「はぁ!? 怖いわけないでしょ!」

穂乃果「それじゃあ決まりだね!皆行くよ!」

真姫「うぇっ!?」

凛「面白そうだにゃー! 花陽ちんも行こう!」

花陽「あ、危ないことは駄目だよ……」

凛「大丈夫だよ、ほら、立って!」

花陽「だ、誰か助けてー!」

穂乃果「ほら、雪穂も」

雪穂「わ、私はいいよ」

希「じゃあうちもついていこうかな。にこっちはどうするん?」

にこ「あんた達だけじゃ不安だし、にこもいくわよ。下手に怪我されちゃあ困るからね」

ドタドタドタ

亜里沙「皆さん、とっても元気ですね」

ことり「そうだねぇ」

雪穂「ことりさんは皆と一緒に行かないんですか?」

ことり「うーん……ちょっとゆっくりしたかったし、海未ちゃんを一人にしちゃったら可哀想かなって」

亜里沙「私がいるから大丈夫です」

ことり「……えーと」

雪穂「亜里沙……今のはちょっと」

亜里沙「え? あ、そういう意味じゃないんです。ただ、疲れているのなら海未さんのことは心配しないでってことで……」

ことり「あはは、別にいいよ」

ことり「亜里沙ちゃんは本当に海未ちゃんのことが好きなんだね」

亜里沙「そ、それは……///」

ガチャ

海未 フラッ

ことり「う、海未ちゃん?」

亜里沙「どうかしたんですか?」

海未「……絵里にたくさん怒られました」

海未「私はただ山頂アタックがしたかっただけなのに……」

絵里「そんな危険なことに亜里沙を巻き込まないの」

ことり「絵里ちゃん」

絵里「全く、鞄の中にあんなに詰め込んでたなんて……ってあら、皆は?」

亜里沙「皆なら探検に行くってでて行ったよ」

絵里「そう……それじゃあ皆も遊んできなさい」

亜里沙「お姉ちゃんはどうするの?」

絵里「ちょっとやることがあるから……一緒に遊べなくてごめんね?」

亜里沙「はーい。じゃあ海未さん、行きましょう」

海未「すいません、私も少しやることがありますので」

亜里沙「むぅ……」

雪穂「じゃあ私たちも遊びに行ってきますね。亜里沙、行こう」

亜里沙「はーい、それじゃあ海未さん、また後で」

海未「はい、二人とも、気をつけてくださいね」

バタン

絵里「さて……海未、ことり、あなた達も遊んできていいのよ?」

海未「……そうやって一人でなんでもしようとするのは、絵里の悪い癖ですよ」

ことり「そうだよ、一人でやるより、皆でやった方が楽しいし、早いよ?」

絵里「……二人とも、ありがとう」

絵里「それじゃあお手伝い頼むわね」

絵里「皆が帰ってくるまでに、頑張らないと」



ーーー
ーー

穂乃果「いやー、楽しかったね!」

真姫「……あれだけ走り回ってどうして元気でいられるのよ」

にこ「あれ~? もしかして真姫ちゃんバテちゃったの~?」

真姫「はしゃぎすぎて途中で倒れた人が何言ってんのよ」

にこ「あ、あれはちょっとつまずいて転んだだけよ!」

希「にこっちもまだまだ子供やからね」

にこ「あんただってノリノリに走り回ってたじゃないの!」

凛「……ん? なんだかいい匂いがしてきたにゃ!」

花陽「本当だ……それに、お米の匂いも……!」

ジュゥゥゥゥ

海未「おや、いいタイミングですね」

ことり「ちょっと待っててね、皆の分のご飯つけちゃうから」

希「ふふ、やっぱり皆集まったらバーベキューが一番やな」

穂乃果「あれ、でもこの準備って……」

花陽「私たちがいない間に、やってくれてたんですか?」

絵里「そんなことは気にしなくていいわよ」

穂乃果「で、でも!」

絵里「皆いつも頑張ってるんだから、そのご褒美よ」

絵里「それに、あんまり気にされるよりも、皆が笑顔で食べてくれたほうが嬉しいわ」

にこ「絵里……」

絵里「さ、焦げないうちに食べるわよ。早くしないと誰かさんに全部食べられちゃうかもね」チラッ

希「ちょ、なんでうちの方見るんや!」

絵里「なんでもないわよ、ふふ」

凛「ねぇねぇ、このお肉美味しいよ! 」モグモグ

花陽「り、凛ちゃん、あんまり早く食べすぎるのは……」

凛「大丈夫だよ、ほら花陽ちんちんももっと……あふっ!?」

花陽「り、凛ちゃん!?」

凛「ふぁ、ふぁふぅいほぉぅ」モゴモゴ

花陽「の、飲み物……飲み物を……!」

海未「凛、これを」

凛 ゴクゴク

凛「……ふはぁ……熱かったにゃぁ……」

海未「全く……いくら美味しいからといって、調子に乗っていると火傷しますよ」

凛「うう、ごめんなさい……」

海未「次からは気をつけてくださいね。はい、花陽にも飲み物を」

花陽「あ、ありがとうございます」

ことり「あれ、真姫ちゃんどうしたの?」

真姫「……別に、ちょっと休憩よ」

にこ「とかなんとかいって、本当は輪の中に入りにくいんでしょ?」

真姫「なにしに来たのよ」

にこ「可愛い後輩の様子が気になって見に来てあげたのよ」

真姫「…………」

にこ「ほら、あんたの分よ」

真姫「え?」

にこ「せっかくの皆での食事なんだから、そんなしかめっ面してんじゃないわよ」

真姫「……ありがとう」

にこ「ふふっ」

真姫「な、なによ!」

にこ「素直にお礼言うなんて、可愛い所もあるじゃない」

真姫「…………意味わかんない」ボソッ

絵里「…………」

希「何黄昏とるん?」

絵里「……こうやって皆で楽しく過ごすなんて、μ'sに入る前には考えられなかった、なんてね」

希「今日のえりち、なんだか感慨に耽ってばっかりとちゃう?」

絵里「……そうね。あんまりにも楽しいから、この時間が終わって欲しくないって思っちゃうの」

絵里「皆で過ごせる時間は、もうそんなに長くないんだから……」

希「…………」

ガシッ

絵里「えっ?」

希「そ~れわしわしわしぃ!」

絵里「なっ!? ちょ、やめっ!」

希「楽しいバーベキュー中に悲しい顔をしてる悪い子はお仕置きやで!」

絵里「……やっ……っぁ……はぁ……はぁ……」

絵里「……もう、いきなりやられたらびっくりするでしょ」

希「あはは、堪忍な」

希「でも、ちょっとは元気でたやろ?」

絵里「……ええ、そうね。いつもありがとう」

穂乃果「いやー、食べた食べた、ことりちゃん、デザート!」

雪穂「お姉ちゃんまだ食べる気なの?」

穂乃果「デザートは別腹っていうからね」

ことり「はーい、今用意するね」コトン

花陽「これは……ショートケーキ?」

ことり「うん……皆がチーズケーキは却下っていうから……」

海未「…………」

真姫「…………」

絵里「…………」

亜里沙「????」

花陽「で、でも、ことりちゃんのケーキは美味しいから、とっても楽しみです」

ことり「……えへへ、ありがとう、花陽ちゃん」

ことり「美味しく食べてね?」

花陽「はい!」


トメーラレナイコドークナヘブン


花陽「あ、すみません、メールが……」パカッ



花陽「…………え?」

From:Unknown
Subject:一人目
本文
小泉花陽は死ぬ

今回はここまで

花陽「ひっ……!?」

ことり「花陽ちゃん? どうしたの?」

花陽「あ……あ……」

希「メールがどうかしたん?」

花陽「ど、どうして……」

にこ「あーもう焦れったいわね! 見せなさいよ!」

バシッ

にこ「どうせ新種のお米が出たとかそんなんーー」

にこ「…………なによ、これ」

海未「にこ? 何が書いてあったのですか?」

にこ「…………これよ」

コトッ

絵里「これは……!」

ことり「…………っ」

穂乃果「あの時の……」

希「予告メール……やな」

凛「大変だよ……花陽ちんが死んじゃう!」

花陽「ひっ!?」

にこ「落ち着きなさい! こんなの悪戯に決まってるでしょ!」

凛「どうしてこれが悪戯だって思うの!? 花陽ちんが危ないんだよ!?」

にこ「どうみたって悪戯じゃない! 殺人予告? 馬鹿馬鹿しい」

凛「あの時もそんなこと言ってたけど、実際に起きたよね!?」

雪穂「あの……海未さん」

海未「どうかしましたか?」

雪穂「えっと、皆さんどうしてこんなに重たい表情をしているんですか?」

雪穂「その、内容は確かに危ないですけど、ありきたりな嫌がらせメールだと思うんですが」

海未「……この間、音ノ木坂でアルパカが死んだという事件は知っていますか?」

雪穂「はい……お姉ちゃんもそのせいで落ち込んでいましたし」

海未「その時、同じように花陽の携帯にアルパカの殺害予告が届いたんですよ」

雪穂「そうだったんですか……」

凛「いつもそうだよ! にこちゃんは自分勝手で!」

にこ「何が自分勝手よ! つまらないことに構ってる暇はにこ達にはないって言ってるだけでしょ!」

絵里「にこ、凛、二人ともやめなさい」

希「そうそう、ここで二人が喧嘩したら、このメールを送った犯人の思う壺やで」

穂乃果「思う壺……って、どういうこと?」

絵里「このメールは、花陽、もしくはμ's全員に対する嫌がらせだと思うわ」

絵里「皆を暗い気持ちにさせて、練習意欲を削ぐ……みたいなね」

凛「で、でも、アルパカは本当に死んじゃったんだよ?」

絵里「……アルパカと人を[ピーーー]のには、大きな壁があるわ。そう簡単に人なんて殺せるものじゃない」

凛「それは……そうだけど」

凛「けど、おかしいよ! どうして皆そんなに平気そうな顔をしていられるの!?」

花陽「…………っ」ブルブル

絵里「このメールは、花陽、もしくはμ's全員に対する嫌がらせだと思うわ」

絵里「皆を暗い気持ちにさせて、練習意欲を削ぐ……みたいなね」

凛「で、でも、アルパカは本当に死んじゃったんだよ?」

絵里「……アルパカと人を殺すのには、大きな壁があるわ。そう簡単に人なんて殺せるものじゃない」

凛「それは……そうだけど」

凛「けど、おかしいよ! どうして皆そんなに平気そうな顔をしていられるの!?」

花陽「…………っ」ブルブル

穂乃果「そうだよ、皆で花陽ちゃんを守らないと!」

海未「……やめなさい、穂乃果」

穂乃果「海未ちゃん?」

海未「いいですか、これが悪戯メールだっていう確証があるんですよ」

穂乃果「え?」

ことり「そうなの……?」

海未「はい。穂乃果、貴女は今何処にいるんですか?」

穂乃果「えっと……真姫ちゃんの別荘かな」

海未「真姫の別荘は何処にあるんですか?」

穂乃果「無人島……だけど、それがどうかしたの?」

海未「いいですか、無人島ということは、この島にいるのは私たちだけということです」

海未「そうですよね、真姫」

真姫「そうね、管理人さんも、お手伝いさんも、整備士の人も、今はこの島にはいないわ」

海未「ありがとうございます、真姫」

海未「いいですか、つまり、このメールを送った人はこの島にはいないということになるんですよ」

亜里沙「なるほど……」

ことり「そっかぁ……それなら安心だね」

穂乃果「でも……もし、もしも私ーー」

海未「穂乃果ッ!」

穂乃果「っ!?」

海未「……犯人はここにはいません、解りましたか?」

穂乃果「…………うん」

海未「今日の所は、もうお開きにしましょう。明日は朝から練習がありますから、早目に休んでください」

凛「待ってよ! まだ話は!」

花陽「凛ちゃん……大丈夫だから」

凛「でもっ!」

花陽「凛ちゃん」

凛「っ……」

絵里「……皆を送っていくわ。海未、片付けお願いね」

海未「了解です」

穂乃果「穂乃果も手伝うよ」

ことり「ことりもやるね」

亜里沙「亜里沙もやーー」

絵里「行くわよ、亜里沙」ギュッ

亜里沙「ああっ~」ズルズル

スタスタスタ

海未「……穂乃果、先程は怒鳴りつけて申し訳ありませんでした」

穂乃果「……どうかしたの?」

海未「……穂乃果は、私たちの誰かが犯人なら、って言おうとしたんですよね?」

穂乃果「うん……あのメールを送ったのが私たちの誰かなら……」

海未「アルパカと同じように、花陽を殺すと?」

穂乃果「っ……!」

穂乃果「そ、それは……」

ことり「…………」

海未「……少し、意地悪でしたね。皆、誰かが花陽を殺すなんて考えてはいませんよ」

海未「問題なのは、メールを送ったのが私たちの誰かだとすると、μ's内の関係がとても悪くなることです」

海未「もちろん、私はμ'sの誰かが花陽にそんなメールを送ったとは思っていません。皆もそうでしょう」

海未「ですが、それを口に出してしまうと、花陽の不安が増幅します」

ことり「だからあの時怒鳴ったの?」

海未「……はい。皆を不安にさせないためとはいえ、申し訳ありませんでした」

穂乃果「ううん、穂乃果こそ、なんにも考えてなかったんだね……止めてくれてありがとう、海未ちゃん」

穂乃果「さあ、それじゃあ早く片付けて皆でトランプやろうよ!」

海未「駄目です! 明日は朝から練習だと言ったでしょう!」

穂乃果「えー、せっかく別荘に来てるのにただ寝るだけなんてつまんないよ!」

ことり「そうだよ、皆で遊んだらとっても楽しいと思うな」

海未「…………夜間登山というものがありましてね」

穂乃果「ことりちゃん、明日は練習だから早く寝ないと!」

ことり「そうだね、穂乃果ちゃん! 練習が一番大事だもんね!」

海未「…………はぁ」

ガチャ

凛「……花陽ちん、本当に大丈夫なの?」

花陽「へ、平気だよ……このメールを送った人は、この島にいないんだもん」

凛「…………」

花陽「えへへ、だから安心して? 明日は頑張って一緒に練習しよ?」

凛「……うん! 絶対、絶対だからね!」

花陽「うん、絶対だよ……お休み、凛ちゃん」ニコッ

パタン

ーーーー絵里の部屋
コンコン

絵里「……? 誰?」

穂乃果『絵里ちゃーん、開けてー!』

絵里「穂乃果……待ってて、今開けるわ」

ガチャ

穂乃果「えへへ、お邪魔しまーす!」

海未「失礼します、絵里」

ことり「あれ、希ちゃんもいるの?」

希「いろいろ打ち合わせがあってなぁ」

絵里「どうかしたの?」

海未「明日の練習のことで少しだけ確認をしようと思いまして」

絵里「わかったわ、話してもらえるかしら?」

海未「はい、まず、走り込みについてなんですが……」

穂乃果「ねぇねぇ、希ちゃん、これなーに?」

希「ん? ああ、これは皆の部屋の配置図や」

穂乃果「……見てもいい?」

希「ええよ、あんまり汚さないようにな」

部屋配置図

3F
|希|絵里|亜里沙|真姫|にこ|

2F
|花陽|凛|ことり|海未|穂乃果|雪穂|

穂乃果「希ちゃん達、途中でいなくなったと思ってたら三階にいたんだ!」

希「なんで気づかなかったんや……」

ことり「穂乃果ちゃん……建物の中楽しそうに見てたもんね」

海未「お待たせしてすいません。穂乃果、ことり、行きますよ」

穂乃果「あ、はーい」

穂乃果「絵里ちゃん、希ちゃん、また明日ね!」

ことり「お休みなさーい」

絵里「お休みなさい」

希「気をつけて戻るんやでー」

ビュォォォォォォ

真姫「…………っ」ブルブル

真姫「…………全く、なにしてんよ」ボソッ

ガチャン

真姫「!」

にこ「ふぅ……いいお湯だったわ」

にこ「あれ、真姫ちゃんも夜風にあたってるの?」

真姫「……そうよ、何か文句あるの?」

にこ「文句なんてないわよ」

にこ「それにしても、違う部屋からテラスで会話できるなんて、やっぱりお金持ちは凄いわね」

真姫「……嫌味?」

にこ「違うわよ、ただそう思っただけ」

真姫「…………」

にこ「花陽のことが心配なの?」

真姫「……別に、あんなの、誰がどう見ても悪戯じゃない」

にこ「解ってるけど、納得できてないって感じね」

真姫「っ……」

にこ「はぁ……いいわよ、無理しなくて」

にこ「あんたはまだ一年生なんだから、感情のコントロールなんてそう簡単にできるものじゃないわ。そういうのはにこたちに任せて、思う存分心配してあげなさい」

真姫「なによ……大人ぶって。にこちゃんだって子供じゃない」

にこ「それでも年上にはかわりないわよ」

真姫「…………」

にこ「全く……もう少し素直になったほうがいいんじゃないの?」

にこ「そういう生き方、疲れるでしょ」

真姫「……余計なお世話よ」

にこ「ま、そうね。でも、もし困ったり、不安になったりした時にはちゃんと言いなさいよ」

にこ「そういう時は、にこが助けてあげるから」

真姫「……意味わかんない」

にこ「あーやめやめ、こんなの皆のアイドルにこにーのキャラじゃないわ」

にこ「真姫ちゃんもおねむのようだし、にこもそろそろ寝るわ」

真姫「わ、私は別に……こんな時間に寝るなんて子供じゃないんだから」

にこ「夜更かしはお肌の敵よ、あんたも早く寝なさいよね」

にこ「それじゃあお休み、真姫ちゃん」

ガチャン

真姫「…………」

真姫「……ありがとう」

真姫「お休みなさい、にこちゃん」

花陽(怖くない……怖くない……だって犯人はここにはいないんだもん)

花陽(メールは絶対に悪戯だよ……有名なスクールアイドルにはそういうことだってあるらしいし)

花陽(でも、それなら……アルパカは……)

花陽(違う、駄目なのに……悪戯だって解ってるのに……怖い、怖いよ)

花陽(どうして……どうしてこんなことに……嫌だよ……)

花陽(震えが止まらない……全然眠れないよ……)

花陽(誰か……誰か助けて……!)


ーーー
ーー

ーーーー朝

コンコン

海未「穂乃果、早く起きないと練習に遅れますよ」

ことり「ふわぁ……海未ちゃん、まだ練習まで一時間もあるよ」

海未「駄目です、そんなことを言っていたら、練習時間になっても起きられません」

ガチャ

雪穂「まだお姉ちゃん起きてないんですか? 怠惰な姉ですいません……」

海未「…………」

ことり「…………」

雪穂「あ、あれ……? あ、そういえば挨拶していませんでしたね、おはようございます」

海未「……はい、おはようございます」

ことり「お、おはよう……」

雪穂「あの……二人とも、どうかしたんですか?」

海未「えーと……雪穂」

雪穂「は、はい」

海未「服が裏表逆ですよ」

雪穂「え……?」

雪穂「うわ!? し、失礼します!」

パタン

海未「…………ふふ、似たもの同士ですね」

ことり「そうだね、正反対に見えるけど、やっぱり姉妹なんだね」

ガチャ

穂乃果「おはよう、二人とも!」

海未「おはようございます、穂乃果」

ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」

穂乃果「全く、こんな早く起こすなんて海未ちゃんの意地悪」

海未「起きていて当然の時間ですよ」

海未「おや、凛と花陽もまだ起きてきていないようですね、起こすとしましゃうか」スタスタスタ

ことり「もう少しくらい寝かせてあげてもいいんじゃないかな?」

海未「駄目です」

穂乃果「海未ちゃんが厳しいよぅ……」

コンコン

海未「凛、起きていますか?」

凛『……うーん、まだ眠いにゃー』

海未「もうすぐ練習が始まりますよ、早く起きてください」

凛『……まだ一時間もあるにゃ、もう一度寝ーー』

海未「二度寝したら練習メニューを倍にしますよ」

凛『す、すぐに起きるね!』

ガタゴト

穂乃果「うわぁ……」

ことり「凛ちゃん……可哀想」

海未「馬鹿なこと言っていないで、花陽を起こしますよ」

海未「花陽は真面目ですから、きっともう起きていると思います」

コンコン

海未「花陽、起きていますか?」

海未「…………」

穂乃果「返事……ないね」

ことり「まだ寝てるのかな?」

海未「ふむ……」ガチャ

海未「え……?」

穂乃果「開い……た?」

ことり「鍵、かけ忘れちゃったのかな?」

海未「…………」

キィ

海未「花陽、入りますよ」

穂乃果「花陽ちゃんおはよう!」

ことり「お邪魔しまーす」

海未「暗いですね……電気をつけましよう」パチッ

穂乃果「ん? あそこで寝てるのって花陽ちゃ……え?」

ことり「ひっ!?」

海未「そんな……!?」

そこにあったのは、身体中を血塗れにして横たわる、見るも無惨な花陽の姿であった。

今回はここまで

ことり「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

穂乃果「な、なんで……」

ドタドタドタ

絵里「どうしたの!?」

希「凄い悲鳴やったけど、大丈夫?」

海未「絵里……希……」

穂乃果「あ、あれ……」

絵里「……っ!?」

希「……嘘やろ」

真姫「朝からあんまり騒がないでよ」

にこ「あれ~? もしかして真姫ちゃん、まだおねむなの?」

真姫「べ、別にそんなんじゃないわよ!」

亜里沙「お姉ちゃん、何かあったの?」

絵里「来ちゃ駄目!」

希「皆、すぐに部屋に戻るんや!」

にこ「はぁ? なにいってんのよ。もしかして花陽がおねしょでもしちゃったの? 全く、仕方ないわ……え?」

亜里沙「あ、あれって……」

真姫「か……よ……?」

雪穂「あ……あ……」

絵里「皆すぐに部屋からでなさい!」

海未「っ……穂乃果、ことり、外へ」

ことり「…………」フラッ

海未「ことり!」ダキッ

穂乃果「……嘘、だよ」

絵里「三人とも早くーー」

コトン

凛「かよ……ちん?」

絵里「……凛」

凛「あ、あはは……かよちんってば、そんなところで寝たら風邪ひいちゃうよ」

凛「全く、かよちんはドジっこなんだから……」フラフラ

凛「ほら、早く起きて。皆待ってるよ」ユサユサ

凛「…………ねぇ」

凛「早く……目を開けてよ……かよちん」ポロポロ

凛「……冬なのに、こんなところで、寝るから……体もこんなに……っ……冷たく……なって……」

凛「床も……真っ赤にしちゃって……こんなに汚したら……真姫ちゃんに怒られちゃうよ……」

凛「早く……起きてよ……今なら……っ……冗談でと……許してあげるから……」

凛「昨日……一緒に練習するって……約束したのに……こんな……こんなのっ……」

海未「……凛」

凛「ねぇ、海未ちゃん……どうしてかよちんは死んじゃったの?」

海未「え……?」

凛「海未ちゃん……言ったよね……これは悪戯だって……犯人はいないって……」

海未「…………っ」

凛「かよちんは……それを……っ……信じて……皆に、心配かけないように……無理やり笑って……」

凛「凛が……もっとしっかりしてたら……こんな……ことには……っ」

凛「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん」ボロボロ


ーーー
ーー

ーーーー食堂

絵里「凛の様子はどうだった?」

希「凄い落ち込んどる。まあ、当然といえば当然やけどな……」

希「今、にこっちが頑張って励ましとるわ」

絵里「…………そう」

絵里「海未、辛かったら貴女も休んでいいのよ」

海未「……大丈夫です」

絵里「……解ったわ」

絵里「それじゃ、この後どうするのか話しましょう」

穂乃果「絵里ちゃん……花陽ちゃんが……ああなったばかりなんだよ……? どうしてそんなに冷静でいられるの……?」

穂乃果「それに、こういうのは4人だけじゃなくて、皆で話した方が……」

絵里「……私だって好きでこんな話をしているんじゃないわよ」

海未「次の犯行の可能性……ですよね」

絵里「ええ、そうよ」

穂乃果「……どういうこと?」

海未「……あのメールの予告通り、花陽は殺されました」

海未「つまり、この無人島には、まだ明確な殺意を持った殺人者がいるということなんです」

穂乃果「……っ!」

希「メールの要件には『一人目』って書いてあったし……な」

穂乃果「そんな……」

絵里「……だから、私たちは悲しんでる場合じゃないの」

絵里「なんとしてでも、皆を守らないと」

海未「……穂乃果」

穂乃果「……何?」

海未「すいませんが、ことりや雪穂の側にいてあげてくれませんか?」

海未「あの子達も……とても落ち込んでいるでしょうから」

穂乃果「で、でも……」

海未「こちらは大丈夫ですから、安心してください」

穂乃果「……うん」

穂乃果「それじゃあ、また後でね」

バタン

海未「…………」

海未「絵里、希」

絵里「何?」

希「どうしたん?」

海未「単刀直入に聞きます」



海未「犯人は、私たちの中にいると思いますか?」

絵里「…………」

希「…………」

海未「真姫の言葉通りなら、ここには私たち以外誰もいませんから」

絵里「……そうね、私もそう考えてるわ」

希「信じたくないけど……ね」

絵里「でも、犯人探しは後よ。これ以上被害を出さないためにも、どうするか考えないと」

希「さっきから考えとるけど、どうにもなぁ……海未ちゃんは何かある?」

海未「……私は迎えが来るまでは、自室でおとなしくしていた方がいいと思います」

海未「不用意に廊下を出歩かず、鍵をかけておけば安全ではないかと」

希「でも、それだとご飯はどうするの?」

海未「……ご飯は時間を決めておいて、皆でその時刻に廊下に出ることにすればいいかんじゃないでしょうか」

海未「もしそれが怖いのであれば、私が全員を迎えに行きます」

絵里「そこまでする必要はないわ。その時は私たちが迎えに行くから」

海未「ですがーー」

絵里「海未、花陽が死んだのは貴女のせいじゃないわよ」

海未「……っ!」

絵里「少し気負いすぎよ、休んだ方がいいわ」

海未「……申し訳ありません」

絵里「別にいいわよ、海未がしっかりしてくれているおかげで、私たちも助かってるんだし」

希「そうそう、たまには三年生にもええ格好させてもらわへんと」

海未「……それでは、お二人に任せるのは心苦しいですが、私も一度ーー」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


海未「っ! 今のは!?」

絵里「悲鳴……?」

希「二人とも、行くよ!」

ーーーー少し前

凛「えぐっ……かよちん……なんで……」

にこ「……凛、辛いのはわかるけど、元気だしなさい」

凛「……無理だよ……凛には……かよちんがいないと……」

真姫「…………」

にこ「…………」

凛「一緒にやりたいこと……いっぱいあったのに……どうして……」

凛「凛が……凛があの時、もっと頑張ってたら……」

凛「皆を、説得できていたら……」

凛「ごめん……ごめんね……かよちん」

凛「凛が……不甲斐ないせいで……」

凛「皆なんて無視して、凛がずっと側にいてあげればよかったんだよ……」

凛「そうすれば……かよちんは……」


チイサーナシーグナルリンリンリンガベール


凛「……誰?」パカッ

凛「ひっ!?」

From:Unknown
Subject:二人目
本文
星空凛は死ぬ

凛「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

にこ「っ!? どうしたの!?」

凛「あっ……あっ……!」

真姫「携帯……? まさか!?」

にこ「見せなさい!」バシッ

にこ「……そんな」

真姫「……まだ、続くの?」

凛「出てって……」

真姫「凛……?」

凛「早く出てってよ……」

真姫「り、凛、落ち着きなさーー」

凛「もう無理なの! 凛には誰も信用できないの!」

凛「お願いだから早くどっかに行ってよ!」

真姫「…………っ」

凛「早く!」グイッ

にこ「や、やめなさっ」

真姫「っ……お願い、凛、話をーー」

凛「出てって!!」

バタン

ガチャン

真姫「……凛」

にこ「…………」

タタタタタタタタタタ

海未「にこ! 真姫!」

真姫「……海未」

絵里「一体何があったの?」

にこ「………凛に、予告メールが届いたわ」

希「なっ!?」

真姫「……そして、もう誰も信用できないって、追い出されたわ」

海未「…………っ」

海未「凛! 開けてください!」ドンドンドン

絵里「海未、やめなさい」

海未「で、ですが!」

絵里「今は……そっとしておきましょう」

絵里「時間が必要だわ」

海未「で、ですが……」

絵里「海未も言っていた通り、ずっと部屋の中にいれば殺されないはずよ」

海未「…………」

絵里「凛、聞こえてるわね」

絵里「お昼の時間に迎えに来るから、それまでは絶対に外に出ちゃ駄目よ」

絵里「例え、誰が来たとしても」

希「えりち……」

絵里「……それじゃあ、皆は部屋で休んでてもらえる?」

絵里「これ以上、凛を刺激するのはよくないわ」

にこ「……そうね、行くわよ、真姫ちゃん」

真姫「……うん」

海未「……それでは、私も失礼します」ペコッ

絵里「ええ、ゆっくり休みなさいよ」

希「さっきの話を、うちらが皆にしとくから安心しといてや」

スタスタスタ

絵里「…………」

絵里「希、この後、付き合ってもらってもいいかしら?」

希「……ええよ、えりちの部屋でええんか?」

絵里「うん」

凛(どうして……こんなことになっちゃったの……)

凛(今まで、かよちんと……皆と一緒にいられて、楽しかったのに……)

凛(やっぱり、μ'sになんて……入るべきじゃなかったんだよ……そうしておけば、かよちんは死ななくてすんだんだもん……)

凛(ごめんね、かよちん……全部凛が悪いの)

凛(反省……してるから……もう一度……凛の前で……)


ーーー
ーー

ーーーー絵里の部屋

希「それで、要件はなんなん?」

絵里「……花陽の事件についてよ」

希「……犯人が、解ったと?」

絵里「そこまでじゃないわ。ただ、怪しい人物がいるの」

希「……誰?」

絵里「海未よ」

絵里「あの部屋は鍵が開いていたけど、寝る前に花陽が鍵を掛け忘れることなんてあり得ない」

絵里「しかも、あの部屋は荒らされた様子もなく、綺麗なままだった」

絵里「つまり、扉を無理やり壊したという線はない」

絵里「それじゃあ犯人はどこから侵入したのか、それは窓よ」

絵里「でも、ベランダは距離がありすぎて渡ることは不可能。それならどうするか」

絵里「私が海未の説教をした時、鞄の中を見せてもらったの」

絵里「その時、海未の鞄の中に見つけたのよ」

絵里「 長い長い……ロープをね」

希「つまり、海未ちゃんがロープを使ってベランダに行き、花陽ちゃんの部屋に侵入した……と?」

絵里「……恐らくは」

希「……えりち、少し休んだ方がええで」

絵里「え……?」

希「えりちも、花陽ちゃんの死で動揺しとるんや。いつものえりちなら、こんなことは言わへん」

絵里「ど、どういうことよ?」

希「ロープなんて向こう側に引っ掛けんと伝うことなんてできん」

希「つまり、相手の部屋にいって最初からベランダを繋げておく必要があるんや」

希「しかも、そんなの誰かがベランダに出た時点で気づかれる。こんなのまず不可能や」

希「まあ、もしも方法があるとしたら、ロープを垂らして、下の階に行くことや」

希「ただ、部屋の配置図見ればわかるように、そんなのできるのは、うちしかおらん」

絵里「の、希は!」

希「ああ、もちろん解っとる。別にうちのこと疑ってるわけやないんやろ」

希「それに、このトリックにはまだ欠点があるしね」

絵里「欠点……?」

希「自分で言ったやん、部屋は綺麗なままやったって」

希「ベランダなんて渡っても、窓を壊さないと部屋の中に入れないんとちゃうか?」

絵里「……っ」

希「探偵の真似事もええけどな、疑われる子の気持ちも忘れたらんといて」

希「うちらが一番年上なんや。うちらがしっかりしとらんと、取り返しのつかへんことになるよ」

絵里「ごめん……」

希「謝るなら海未ちゃんに……やで。お昼までまだ三時間くらいあるし、ゆっくり休もう」

絵里「そうね……ありがとう、希」

ーーーー海未の部屋

海未「…………」

コンコン

海未「……? どなたですか?」

亜里沙『亜里沙です、海未さん。今大丈夫ですか?』

海未「亜里沙っ!?」

ガチャン

キィ

亜里沙「あ、海未さん、こんにちは」

海未「こんにちはではありません! 不用意に外を歩かないように、絵里に言われませんでしたか!?」

亜里沙「えーと……ごめんなさい」

海未「……全く……貴女という人は」

海未「とりあえず、中に入ってください」

亜里沙「えへへ、お邪魔しまーす」

パタン

亜里沙「あれ、結構散らかってますけど、何かしてたんですか?」

海未「……落ち着かなかったので、荷物の整理をしていたんです」

亜里沙「そうだったんですか……見たことないものが沢山ありますね」

亜里沙「このポーチみたいなのはなんですか?」

海未「それはポーチではなく、コンパクトナイフですよ」

亜里沙「ハラショー。珍しい形をしてますね」キラキラ

海未「……ふふ、よければ差し上げますよ」

亜里沙「本当ですか!?」

海未「はい、本当ですよ。ただ、危ないから使うときは注意してくださいね」

亜里沙「ありがとうございます! 大切にしますね!」

海未「はい、そうしていただけると嬉しいです」

亜里沙「それにしても以外です」

海未「……? 何がですか?」

亜里沙「えっと、海未さんは、穂乃果さんやことりさんのところに行ってるんじゃないかなって思って」

海未「……正解ですよ、私は二人のところに行きました」

海未「ただ、穂乃果は雪穂を慰めていて、ことりは一人になりたいと言っていたので、戻ってきたのです」

海未「大切な幼馴染の力にもなれないなんて……正直、自分が情けないですよ」

亜里沙「そんなことはありません!」

亜里沙「海未さんはいつも皆のことを考えていて、頼りになります!」

海未「……亜里沙は、怖くないのですか?」

亜里沙「何がですか?」

海未「殺人事件が実際に起きているような状況で、私に会ったりして」

海未「ナイフにロープ……殺人に使えそうな道具を持っているんですよ?」

海未「ことりが一人になりたがったのだって、私が犯人だと思ったからかもしれません」

海未「それなのに、どうして貴女は……」

亜里沙「うーん……そんなこと言われても……」

亜里沙「亜里沙は、海未さんのことを信じていますから」ニコッ

海未「私のことを……?」

亜里沙「はい、例え皆が海未さんを疑っても、亜里沙だけは海未さんの味方です」

亜里沙「だから、そんなに悲しい顔をしないでください」

海未「……ありがとうございます、亜里沙」

海未「おかげで、少し元気がでてきました」

亜里沙「えへへ、海未さんの役に立てたのなら嬉しいです」

亜里沙「あの、お昼までここにいてもいいですか?」

海未「……ええ、もちろん」

亜里沙「ありがとうございます!」

亜里沙「そうだ、最近ちょっとミステリー系の本を読んでるんですけど、そこに面白い暗号が出てきたんですよ」

海未「へぇ、どんなものですか?」

亜里沙「それはですね……」


ーーー
ーー

コンコンコン

絵里『海未、いるかしら?』

海未「絵里……? どうかしましたか?」

絵里『お昼の時間だから呼びにきたのよ』

海未「もうそんな時間でしたか、すぐに行きます」

海未「亜里沙」

亜里沙「はい、海未さん」

ガチャン

キィ

海未「お待たせしました……おや、皆もいたのですね」

亜里沙「亜里沙たちが最後みたいですね」

絵里「……やっぱり海未のところにいたのね、亜里沙」

亜里沙「えへへ」

絵里「えへへ、じゃないわよ……全く」

ことり「……あの、海未ちゃん」

海未「ことり……」

ことり「えと……さっきはごめんね、せっかく海未ちゃんが励まそうとしてくれたのに……」

海未「いえ、いいんですよ。あの時は、私も冷静ではいられませんでしたから」

絵里「はいはい、お喋りはそこまで」

絵里「凛を迎えに行くわよ」

穂乃果「そうだね、凛ちゃんもきっとお腹を空かせてるよ」

穂乃果「ほら、皆早く!」

海未「(穂乃果、少し無理をしていますね)」

ことり「(うん……きっと、皆を心配させないために、元気に振舞ってるんだよ)」

コンコンコン

穂乃果「おーい!凛ちゃーん、ご飯だよー!」

穂乃果「いないのー?」

穂乃果「…………うーん」グググ

穂乃果「あれ、鍵はかかってないみたい……? でも、なんだかノブが固くて開かない……」

真姫「壊れてはいないはずよ」

穂乃果「ふんっ!」ガチャ

穂乃果「あ、やっと開いた!」キィ

彼女達の目に飛び込んできたのは、ベランダでもがく凛の姿だった。

次の瞬間、凛の頭部が宙を舞い、紅い飛沫が迸る。

地に落ちた頭部の両目は見開かれ、その表情は恐怖に歪んでいた。

両腕で柵に縛られた胴体は、脳の支配からの解放を悦ぶかのようにビクビクと痙攣していた。

今回はここまで。更新遅くてすまん

パシャパシャ

穂乃果「…………」

海未「…………」

絵里「…………」

にこ「…………」

真姫「…………」

ことり「…………ひっ」

ことり「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

雪穂「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

穂乃果「あ……あ……」

にこ「な……によ……これ……」

亜里沙「…………っ」

海未「嘘……です……」

ことり「…………ぁ」フラッ

海未「ことり!」ダキッ

絵里「…………」

希「え、えりち、はよ皆をここから……」

希「……えりち?」

絵里「もう……駄目よ……」

希「え?」

絵里「私たち……全員……!」

希「えりち!!」

絵里「っ!?」

希「穂乃果ちゃん、扉を閉めて!」

穂乃果「ぁ……」

希「くっ……」

ガチャン

希「皆、すぐに自分の部屋に戻るんや!」

希「絶対に一人にならないで、誰かと一緒にいるように!」

真姫「…………」ブルッ

にこ「真姫ちゃん……行くわよ」

真姫「…………」コクン

海未「ことり、しっかりしてください!」

ことり「…………」

雪穂「お姉ちゃん……」ギュッ

穂乃果「っ……!」

穂乃果「雪穂……」

希「えりち、うちらも行くで」

絵里「のぞ……み」

希「…………」ギュゥ

絵里「!」

希「今は手だけで堪忍な……」

絵里「……うん」

希「それじゃあ皆、後で様子を見に行くから、部屋からでないように」

ーーーーにこの部屋

パタン

にこ「…………」

真姫「……ねぇ、にこちゃん」

にこ「……どうしたの?」

真姫「…………」ギュッ

にこ「ま、真姫ちゃん!?」

にこ「いきなりどうしーー」

真姫「…………」ブルブル

にこ「…………」ナデナデ

真姫「んっ……」

にこ「辛かった……わよね」

にこ「友達が二人もあんなことになって……あんなもの見せられて」

真姫「……うん」

真姫「私たち……皆殺されちゃうのかな……」

にこ「…………」

真姫「怖いの……」

真姫「次殺されるのは……私なんじゃないかって」

真姫「私も、皆の前で……あんな……風に……っ」

にこ「……大丈夫よ」

真姫「え?」

にこ「にこが……絶対に守ってあげるから」

真姫「……本当?」

にこ「ええ、本当よ。だから安心して休みなさい」

にこ「なんなら、よく寝られるように子守唄でもいる?」

真姫「……いらない」

真姫「それよりも……手を、握って」

にこ「そのくらい、お安いご用よ」ギュゥ

ーーーー海未の部屋

穂乃果「ごめんね、海未ちゃん。私と雪穂までお邪魔して」

海未「構いませんよ。こんな時ですから、皆でいた方が安全ですし」

穂乃果「……ありがとう」

穂乃果「ねぇ、海未ちゃん」

海未「なんですか?」

穂乃果「どうして、こんなことになっちゃったんだろうね」

穂乃果「昨日までは皆で楽しく過ごせてたのに……」

穂乃果「花陽ちゃんも……凛ちゃんも……あんな風になって……」

穂乃果「穂乃果たち……何か悪いことしたのかな?」

海未「……穂乃果」

穂乃果「ごめんね、こんなこと言って……でも、こんなの……」

ガチャ

亜里沙「海未さん、シャワー終わりました」

雪穂「…………」

穂乃果「えっと……二人とも大丈夫?」

亜里沙「亜里沙はなんとか……ただ雪穂が」

雪穂「…………っ」

穂乃果「雪穂……」

雪穂「お姉ちゃん……私……」

ギュッ

雪穂「ぁ……」

穂乃果「辛かったら、泣いていいんだよ」

穂乃果「穂乃果はお姉ちゃんなんだから……もっと甘えて」

雪穂「っ……」ポロポロ

雪穂「ぅぁ……ぐすっ……」

穂乃果「…………」ナデナデ

海未「亜里沙も、辛かったら我慢せずに言ってくださいね」

亜里沙「……はい」

亜里沙「あの……それなら私もーー」

ことり「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ガバッ

海未「ことり、目が覚めましたか」

ことり「はぁ……はぁ……」

亜里沙「魘されていましたけど、大丈夫ですか?」

ことり「ぃゃ……」

ことり「凛ちゃんの……首が……あああああああ!!」

海未「こ、ことり?」

ことり「あ……海未ちゃん……」

海未「大丈夫ですか、ことーー」

ギュッ

海未「えっ?」

ことり「怖い……怖いよ……」

ことり「助けて……海未ちゃん」

ことり「このままいったら、ことりも殺されちゃう」

ことり「嫌だ……ことりは死にたくない!」

ことり「お願い、ことりのことを守って!」

ことり「ずっとことりの側にいてよ!」

海未「ことり……」

亜里沙「…………」

海未「……安心してください、私が絶対に貴女を守りますから」

ことり「絶対だよ……?」

海未「はい、絶対に……です」

ことり「……ありがとう」

ことり「海未ちゃん……海未ちゃん……」スリスリ

海未「…………」

亜里沙「…………っ」

ことり「すぅ……すぅ……」

亜里沙「安心して、眠っちゃったみたいですね」

海未「はい……これで落ち着いてもらえたらいいんですが」

亜里沙「あの、少し気になったことがあるんですけれど」

海未「なんですか?」

亜里沙「えと……警察に連絡とかはしないんですか?」

穂乃果「あ……」

海未「そういえば……」

海未「気が動転してそんなことにも気がつかなかったとは……」

海未「一度、絵里と希に話をしてきます」

亜里沙「亜里沙も行きます!」

海未「……わかりました。穂乃果、ことりと雪穂をお願いします」

穂乃果「うん、了解だよ」

海未「解っているとは思いますが、なるべく外にでないようにしてください」

穂乃果「大丈夫、ずっと部屋の中にいるから」

海未「……すいません、ことり、約束を破ってしまって」

海未「では、行きますよ、亜里沙」

キィ

ーーーー絵里の部屋

コンコンコン

絵里「……誰?」

海未『絵里、いませんか? 海未です』

亜里沙『お姉ちゃん、開けて!』

絵里「海未と亜里沙……?」

ガチャ

絵里「どうしたの? 部屋から出ないように言ってあったはずだけど」

海未「突然すいません、絵里。少し話がありまして」

絵里「解ったわ、中に入って」

パタン

にこ「絵里、誰がきたの?」ヒョコ

海未「にこ? どうして貴女がここに?」

にこ「なによ、にこがここにいちゃいけないの?」

海未「そうではなく、真姫はどうしたんですか?」

にこ「真姫ちゃんなら部屋で寝てるわ」

海未「一人にするのは危険です」

にこ「大丈夫よ、ちゃんと鍵はかけてきたから」

にこ「それより、あんたはどうしたのよ?」

海未「……すぐに、警察に連絡をしましょう」

海未「全員殺される前にすぐにでも迎えをーー」

絵里「無理よ」

海未「え?」

希「……にこっちがさっき知らせてくれて、うちらも気づいたんや」

希「それで、さっき別荘の電話使おうとて……繋がらんかった」

希「おそらく、犯人が電話線を切ったんだと思う」

海未「…………っ」

海未「いえ、まだ諦めるには早いです。携帯電話で外部と連絡をとればいいのでは」

希「……海未ちゃん、自分の携帯見てみ」

海未「はい」カパッ

海未「え……?」

海未「圏……外……?」

亜里沙「そんな!?」

にこ「解ったでしょ、にこ達は生き残る方法を考えなくちゃならないの」

海未「待ってください! それなら、あの予告メールはどうやって!?」

絵里「……解らない」

にこ「今はそんなことはどうでもいいのよ」

にこ「大切なのは、これから私たちが生き残るためにどうするか……」

希「何か考えがあるの?」

にこ「……絵里、亜里沙を皆がいる部屋に送ってあげて」

絵里「え?」

にこ「こっからは大人の話だから、亜里沙ちゃんには退場してもらうわ」

にこ「あんたはついでに皆の所に顔を出してきなさい。皆を安心させるのも、重要な仕事よ」

絵里「……解ったわ」

絵里「亜里沙、行くわよ」

亜里沙「……はーい」

キィ

にこ「さて……と、それじゃあ始めるわよ」

海未「何をですか?」

にこ「何って、犯人探しに決まってんでしょ」

海未「犯人って……それは」

希「にこっち、それはあかん」

にこ「何が駄目なのよ、このままいったら、皆殺されるわよ」

にこ「こっちも反撃にでないと……手遅れになるわ」

海未「ですが……」

希「ちょい待ってや」

希「にこっちの言うことも解るで」

希「でもな、情報も全くないのにどうやって推理するんや?」

にこ「それは……」

希「……推測だけで犯人語るなんて、絶対にしたらあかん」

希「それは、にこっちも解ってるやろ?」

にこ「…………」

希「それよりも、この後どうしたらいいのか考えよ」

希「三人寄れば文殊の知恵、って言うし何かいい案が思いつくかもしれん」

にこ「……そうね」

海未「あの、でしたらこういうのは……」

ーーー
ーー

ーーーー海未の部屋

絵里「そう……そんなことがあったの」

穂乃果「うん、今は落ち着いて寝てるんだけど、ことりちゃんも限界みたい……」

亜里沙「あんなのずるい」ボソッ

絵里「亜里沙?」

亜里沙「……なんでもないよ、お姉ちゃん」

絵里「……そう」

絵里「それにしても、皆がまだ冷静でいてくれた助かったわ」

絵里「今冷静さを欠いたら、とても危険なことになるもの」

ことり「ん……」

絵里「ことり? 起きたの?」

ことり「…………海未……ちゃん」

絵里「え?」

ことり「ああ……いや……いやっ!」

絵里「こ、ことり!? 落ち着いて!」

ことり「ひっ!? 来ないでっ!」

絵里「っ!?」

ことり「ぁ……ぁぁぁぁ……」

絵里「……どうなってるのよ」

穂乃果「ことりちゃん、落ち着いて」

ことり「ぁ……穂乃果ちゃん……」

穂乃果「うん、穂乃果だよ。一体どうしたの?」

ことり「う、海未ちゃんが……いないの」

ことり「側にいてくれるって……言ってたのに……」

ことり「穂乃果ちゃん……海未ちゃんはどこ?」

穂乃果「絵里ちゃんの部屋で、皆を助けるために頑張ってるよ」

ことり「そう……海未ちゃん……」フラッ

絵里「何処に行く気よ!?」

ことり「海未ちゃんの所に行かないと……」

絵里「駄目よ、今は大事な話をしているんだから、ここでおとなしくしてなさい」

ことり「いや! そんなこと言ってことりのことを殺そうとしてるんでしょ!?」

絵里「なっ!? そんなことするわけないでしょ!?」

ことり「わかんないよ! 誰が犯人じゃないかなんて証明できないもん!」

絵里「貴女は……っ!」

穂乃果「ことりちゃん、絵里ちゃん、喧嘩は止めて!」

穂乃果「今はそんなことしてる場合じゃないよ!」

絵里「…………ごめんなさい、穂乃果の言うとおりね」

絵里「解ったわ、海未の所へ連れて行ってあげる」

絵里「何度も悪いけど、雪穂と亜里沙のことを頼めるかしら、穂乃果」

穂乃果「いいけど……本当にいいの?」

絵里「……このままことりをここに留めていると、他の皆に不安が宿るわ」

絵里「海未には悪いけど、ことりの相手を頼みましょう」

キィ

スタスタスタ

絵里「…………」

ことり「…………」ブルブル

絵里「ん……? あれは……真姫?」

絵里「部屋に戻る所かしら……でも、どうして一人で外に……?」

ことり「手に……何か持ってる……」

絵里「……本当ね、病院で貰う薬の入った袋みたいに見えたけど……」

絵里「…………」

絵里「ことり、今見たことは誰にも話さないで」

絵里「少し、考えがあるわ」

ことり「…………」

ガチャ

にこ「お疲れ様、あんたもしっかり休むのよ」

海未「失礼します。絵里によろしくお願いします」

ことり「海未ちゃん!」ギュッ

海未「っ!? ことり!? どうしてここに……」

ことり「なんで黙ってどっかにいっちゃうの? 一人にしないでよ……」

海未「……申し訳ありません」

ことり「許して欲しかったら……ずっと側にいて」

海未「……はい、解りました」

にこ「あーあ、お熱いこと」

にこ「にこは先に帰るわよ、真姫ちゃんが寂しがるといけないからね」

にこ「話の内容は希に聞きなさい、絵里」

絵里「ええ……真姫のこと、頼んだわよ」

にこ「まかせなさい、スーパーアイドルにこにーが、真姫ちゃんを笑顔にしてあげるから」

にこ「それじゃあ、また後で会いましょう」

ーーーーにこの部屋

にこ「ただいま、帰ったわよ」

にこ「……あら、真姫ちゃん起きてたの? ごめんね、一人ぼっちにして」

にこ「寂しかったでしょ、ほら、にこにたっぷり甘えていいわよ」

真姫「…………」

にこ「……真姫ちゃん?」

にこ「どうしたの? さっきから携帯ばっかり……」

にこ「え……? 携……帯?」

にこ「まさか!? ちょっと見せなさい!」バシッ

にこ「…………っ!?」

From:Unknown
Subject:三人目
本文
西木野真姫は死ぬ

今回はここまで

ーーーー食堂

穂乃果「絵里ちゃん、急に集まってなんてどうしたの?」

海未「皆まだ疲れていますし、もう少し休んだ方がいいのでは」

ことり「…………」

希「それが、のんびりしてられんくなってな」

海未「何かあったんですか?」

絵里「……落ち着いて聞いてちょうだい」

絵里「真姫に、死亡予告が届いたわ」

穂乃果「そんな!?」

雪穂「今度は真姫さんが……?」

真姫「…………」

にこ「死なないわ」

にこ「真姫ちゃんは、死なない」

絵里「……そうよ、これ以上、絶対に死者は出さない」

絵里「だから、皆で作戦会議をしましょう」

亜里沙「作戦会議?」

絵里「ええ、これからどうするか、とか」

絵里「犯人はどうやって二人を殺したのか、とか」

ことり 「っ」

希「えりち!」

絵里「……希、正直、このままじゃ拉致が空かないわ」

絵里「生き残るためにも、前に進まなくちゃいけないのよ」

希「でも、だからって……まだ事件のショックから抜け出せてない子らもおるんよ?」

絵里「……そうね。でも、犯人は立ち直るのを待ってはくれないわ」

希「……っ」

絵里「それじゃあ、会議を始めるわよ」

絵里「まずは花陽の事件から」

絵里「鍵がかかっていたはずの花陽の部屋に、どうやって侵入したのか」

亜里沙「あの、お姉ちゃん」

絵里「何?」

亜里沙「犯人は、花陽さんの鍵を盗んでおいたんじゃないかな?」

亜里沙「そうすれば、寝てる間に気づかれずに入れるよ」

海未「……それでは、花陽は自分の部屋に入れませんよ」

亜里沙「あ……」

海未「それに、状況としては凛も似ています」

海未「犯人は、どうやって凛の部屋に入ったんでしょうか」

希「あれだけ警戒しとったら、誰が行っても開けてはくれんやろうしな」

穂乃果「……部屋の中に抜け道があったりとか?」

真姫「……あるわけないでしょ」

穂乃果「そう……だよね」

海未「やっぱり、情報が少なすぎます」

雪穂「あの、すいません」

絵里「どうしたの?」

雪穂「その……犯人は、どうやってメールを送っているんですか?」

雪穂「ここ、無人島ですよね? それならメールなんて届くはずが……」

穂乃果「そういえば……」

雪穂「もしかして……この犯人って、何かの呪いなんじゃ……」

真姫「……そんなこと、あるわけないじゃない」

絵里「真姫?」

真姫「電波が届くのは当たり前よ。この島には携帯の基地局が置いてあるんだから」

海未「そうなんですか?」

真姫「前に説明したでしょ。パパが不便だからって作ってもらったのよ」

穂乃果「でも、それっぽい設備はなかったよね」

真姫「景観を損なう、って違う場所に作ったからね」

真姫「だから、呪いなんかじゃないわ」

雪穂「それなら、どうして私たちの携帯は圏外なんですか?」

海未「確かに……私や絵里の携帯も圏外でしたし」

海未「何か問題でもあったんですか?」

真姫「……知らないわよ」

にこ「そんなの電波の調子が悪いだけでしょ」

にこ「それよりも今話してて解ったのは、私たちは何も犯人の手がかりを掴めていないってこと」

にこ「このままだと、本当に全員死ぬわよ」

絵里「……何か事件で思いついたことがあったら、私に教えて頂戴」

絵里「どんな小さなことでもいいわ」

海未「絵里……」

希「それじゃ、今後の予定について話そうか」

亜里沙「予定って、ご飯を食べて寝るんですよね?」

希「そうや。それでさっき話し合ったんやけど、寝る時にグループに別れへんか?」

穂乃果「グループに?」

海未「はい。一人になるのは鍵をかけていても危険だ、という結論になったので複数人でいようと」

亜里沙「グループ分けはどうするんですか?」

絵里「……にこ、真姫、私とことり、海未、亜里沙と希、穂乃果、雪穂ちゃん、って結論になったわ」

絵里「解ってると思うけど夜中に部屋から出たら駄目よ」

絵里「朝に迎えが行くまでは必ず待機。解ったわね?」

亜里沙「はい!」

海未「解りました」

絵里「それじゃあご飯にしましょう」

希「なるべく離れないように、皆で作ろうか」

にこ「その必要はないわ」

にこ「にこが腕によりをかけて美味しい物を作ってあげるから、あんたらは食器でも並べてなさい」

海未「で、ですが」

にこ「なによ、にこの腕を疑うの?」

海未「いえ、そういうわけではありません……」

にこ「それじゃあ決まりね。お腹空かせて待ってなさい」


ーーー
ーー

「「「「「ご馳走様でした」」」」」

穂乃果「美味しかったね、にこちゃんの料理」

にこ「当たり前でしょ、にこを誰だと思ってんのよ」

穂乃果「えへへ、ごめんごめん」

にこ「真姫ちゃんはどうだった?」

真姫「……まあまあよ」

にこ「そう、ならよかった」

絵里「それじゃあ、皆、自分の部屋から荷物を持って移動しましょう」

絵里「にこと真姫は私の部屋。亜里沙とことりは海未の部屋。雪穂ちゃんと希は穂乃果の部屋に」

海未「解りました。ことり、亜里沙、行きますよ」

ことり「うん♪」ギュッ

亜里沙「……はい」

スタスタスタ

絵里「…………」

絵里「ねぇ、希」

希「ことりちゃんのこと、やな」

絵里「……そうよ。どう思う?」

希「……きっと、生存本能やろうなぁ」

絵里「どういうこと?」

希「妹みたいに可愛がってた花陽ちゃんが殺されて、その上凛ちゃんが死ぬ所を目撃したからね」

希「心が耐えられんくなったんやろ」

希「そして、死にたくないという気持ちが抑えきれなくなった」

希「海未ちゃんは頼りになるからなぁ」

希「甘えることで、自分を守ってもらおうとしとるんやろ」

絵里「……っ、そんなの」

希「えりちの言いたいことはよく解るよ」

希「皆辛いのに、一人だけそんなことしとるのが許せやんのやろ?」

希「だけどな、今はそんなこと言っとる場合じゃない。もし誰かがパニックになったら、それが伝染する危険性があるのはえりちも知っとるやろ?」

絵里「そう……ね」

希「ほな、うちもそろそろ行くで」

希「また明日、な」

絵里「ええ、また明日」

スタスタスタ

絵里「にこ、真姫、お待たせ」

絵里「それじゃあ私たちも行くわよ」

にこ「やっとね」

真姫「…………」


ーーー
ーー

スタスタスタ

亜里沙「お姉ちゃん!」

海未「おや? 絵里一人ですか?」

絵里「海未? 亜里沙? それに皆も」

絵里「一体どうしてここに?」

海未「穂乃果がどうしてもお休みなさいを言いたいって」

穂乃果「えへへ、さっきいい忘れちゃったから。ごめんね?」

絵里「全く……」

海未「あれ、にこと真姫はどうしたんですか?」

絵里「あの二人なら、少し二人きりになりたいって言って、部屋に閉じこもったわ」

海未「ああ、だから絵里はにこの部屋の前で待ちぼうけを……」

穂乃果「うーん、二人きりになりたい、かぁ……これはもしかして!」ピトッ

海未「ほ、穂乃果!? 扉に耳を押し当てるなんてはしたないですよ!」

穂乃果「いいからいいから、海未ちゃんもやろうよ!」

海未「い、いえ、私は……」

穂乃果「遠慮しないで」グイグイ

海未「わ、解りました……」ピトッ

ことり「ことりもやるー♪」ピトッ

希「ふふ、面白そうやな」ピトッ

絵里「貴女たち……」

希「まぁまぁ、えりちもやろ?」

絵里「私はいいわよ」

希「全く、頑固やなぁ」

穂乃果「しっ! 何か聞こえてきたよ」

海未「本当ですね、これは一体……」

ツメタイヤケドヲオシエテアゲルー

穂乃果「え?」

海未「なっ!?」

ことり「っ!」

希「今のは……!」

海未「にこ! 何があったんですか!?」ドンドン

絵里「え、どうしたの?」

希「真姫ちゃんの携帯に予告メールが届いたんや!」

絵里「でも、もうメールは届いてるはずじゃ……」

希「解らん! だから本人に聞くしかないんや!」

海未「反応がありません……」

希「こうなったら、無理やりにでも入るしかないみたいやね」

海未「解りました。皆さんは下がっていてください」

希「行くで……いっせーのっーー」

ガチャ

真姫「何かよう?」

穂乃果「真姫ちゃん!」

雪穂「良かった、無事だったんですね」

真姫「何の話し?」

絵里「皆が、真姫の携帯にもう一通予告メールが届いたって言い出して……」

真姫「そんなの届いてないわよ」

真姫「聞き間違いじゃないの?」

穂乃果「確かに聞こえた気がしたんだけどなぁ」

希「うちも聞こえたよ」

絵里「それよりも、にこはどうしたの?」

真姫「にこちゃんなら奥にいるわ。皆こそ集まってどうしたのよ」

穂乃果「あ、えっと、真姫ちゃんにお休みを言いに……」

真姫「そう……ありがとう。お休みなさい」

穂乃果「う、うん。お休み……」

亜里沙「(ねぇねぇ雪穂、なんだが真姫さん冷たくないかな?)」

雪穂「(……次に狙われるのが自分なんだもん。仕方ないよ)」

にこ「……皆集まって、どうしたのよ」

希「にこっち!」

海未「にこにお休みの挨拶を言いにきたんですよ」

にこ「…………そう」

絵里「にこ?」

にこ「…………っ」

希「にこっち、どうかしたんか?」

にこ「うるさいッ!」

希「っ!?」

にこ「……先に行くわよ」

絵里「にこ、待ちなさい!」

絵里「全く……皆、お休みなさい。真姫、行くわよ」

真姫「…………」

スタスタスタ

希「にこっち……何があったんや」

亜里沙「なんだか、怖かったです」

海未「おそらく真姫と何かあったのでしょう」

穂乃果「何かって?」

海未「そこまでは……」

希「まあ、きっとえりちが宥めてくれるやろ」

希「うちらも部屋に戻るとしよ」

海未「そうですね……と、その前に」

希「どないしたん?」

海未「(穂乃果の様子が、少しおかしいです)」

希「(!? どういうことや?)」

海未「(解りません。ただ、いつもと何かが違います)」

希「(……解った。ちょっと気を配ってみるわ)」

海未「(ありがとうございます。穂乃果と雪穂を、お願いします)」

希「(了解。そっちも気をつけてな)」

海未「それでは希、お休みなさい」

希「ああ、お休み、海未ちゃん」

カチャ

亜里沙「海未さん、あったかいものどうぞ」

海未「あったかいものどうも」

海未「申し訳ありません、飲み物を入れて頂いて」

亜里沙「いえ、このくらいは……」

亜里沙「ことりさんもどうぞ」

ことり「……ありがとう、亜里沙ちゃん」

亜里沙「…………」

亜里沙「海未さん、一つだけ聞いてもいいですか?」

海未「はい、どうしました?」

亜里沙「海未さんは誰が犯人だと思ってるんですか?」

亜里沙「ごめんなさい、あんまり聞かない方がいいとは思うんですが……気になってしまって」

海未「……いいですよ。ただ、私の考えは外れていました」

亜里沙「どういうことですか?」

海未「私は、真姫が犯人なら犯行が可能だと思っていたんですよ」

亜里沙「どうしてですか?」

海未「真姫なら、マスターキーを使って全部の部屋に入ることが可能だからです」

海未「マスターキーが壊れたかどうかなんて、誰にもわかりませんからね」

亜里沙「なるほど。でも、真姫さんはメールが……」

海未「はい。ですから、外れていると」

海未「正直なところ、皆同様何もわかっていません」

亜里沙「そうですか……」

海未「……犯人探しは明日にして、今日はもう寝ましょう」

亜里沙「はーい」

ことり「ことりは海未ちゃんの隣がいいな♪」

亜里沙「亜里沙も海未さんの隣がいいです!」

海未「二人とも、暴れないでくださいよ」

海未「いくら大きいとはいえ、一人用のベッドで三人寝るのですから」

ことり「じゃあ落ちないように海未ちゃんにひっついちゃお♪」ギュッ

亜里沙「あ、亜里沙もひっつきます!」ギュッ

海未「…………はたして寝られるのでしょうか」


ーーー
ーー

ピピピピピピピピピピピピ

カチッ

海未「遅いですね、絵里」

亜里沙「そうですね……もう約束の時間から20分も経ってます」

海未「……なんだか嫌な予感がしますね」

ことり「どうかしたの?」

海未「……なんでもありませんよ」ナデナデ

ことり「んっ……」

コンコンコン

海未「! 絵里ですか?」

希『海未ちゃん? うちや』

海未「希?」

ガチャ

キィ

海未「どうしたんですか、希」

希「……えりちが来ないのが心配になってな」

海未「そちらにも行っていませんでしたか」

希「ということは、海未ちゃんところにも……か」

海未「……希、もしかすると」

希「ああ……何か起きたのかもしれへんな」

海未「皆を連れて、すぐに向かいましょう」

コンコンコン

希「えりち、起きとるか?」

シーン

穂乃果「返事がない……ね」

亜里沙「お姉ちゃん……」

コンコンコン

希「えりち!」

シーン

海未「これは……」

希「っ……!」

ドンドンドン

希「えりち!!!」

絵里『ん……なによ……』

穂乃果「絵里ちゃん!」

希「なんや、大丈夫やったんか」

にこ『全く……うるさいわねぇ』

にこ『ほら、真姫ちゃんも早く起きなさい』

雪穂「ただの寝坊……だったんでしょうか?」

海未「みたいですね。全く、人騒がせな……」

にこ『ち、ちょっと……真姫……っ』

にこ『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』

海未「!?」

希「なんや今のは!?」

絵里『にこ、どうし……っ!?』

絵里『あ……あ……!』

希「あかん! えりち!しっかりしてや!」

海未「希!」

希「わかっとる! いっせーのせっ!」

ドカッ ドカッ ドカッ ガタン!

海未「っ……なんとか開けましたね」

希「せやね……皆はここから入らんように!」

希「えりち! にこっち! 一体何がーー」

視界に飛び込んできたのは、茫然自失と立ち尽くす絵里と、泣きながら肩を震わせるにこ。

そして、その二人に見守られて、眠るように横たわる真姫。

可愛らしいネグリジェと相反するように、彼女の首には痛々しい条痕が浮かび上がっていた。

今回はここまで

海未「そんな……」

希「嘘……やろ?」

絵里「こんな……あり得ない……」

希「えりち! 一体何があったんや!」

絵里「の……ぞみ、ま、真姫が……!」

希「そんなことは解っとるんや! どうしてこうなったんや!」

絵里「わ、解らない……」

海未「希……絵里は混乱しています。一度、この部屋から出ましょう」

希「っ……そうやな。にこっちも……行くで」

にこ「…………ぃゃ」ガタガタ

海未「にこ……?」

にこ「あああああああああああああああ!!!」ドンッ

海未「っ!? に、にこ?」

にこ「はぁ……はぁ……」

希「ど、どうしたん、にこっち。落ち着いてや」

にこ「っ!」ダッ

海未「にこ!?」

穂乃果「海未ちゃん、一体どうしたの……わっ!?」

亜里沙「にこさん……?」

タタタタタタ

キィ

バタン

雪穂「な、何かあったのかな?」

ことり「…………」

希「皆、今にこっちが来んかった?」

穂乃果「えっと、にこちゃんなら自分の部屋に行ったけど……」

希「自分の部屋に……?」

タタタタタタ

ドンドンドンドン

希「にこっち! にこっち!!」

海未「希! にこの様子はどうなってるんですか!?」

希「わからん……部屋から出てきてくれへん……」

にこ『ぅ、あっ、おげぇぇぇぇっ、がっ、ぁぁぁぁぁぁ!』

海未「にこ……」

希「……っ」

海未「今は、そっとしておいた方がいいみたいですね……」

海未「一度絵里に話を聞きましょう」

希「ま、待ってや! にこっちをこのまま一人にしとくわけには!」

海未「……このままここにいても、慰めるどころか、逆効果になると思います」

希「それは……」

希「…………せやな。ごめん、少し熱くなってしもうた」

希「にこっち、何があったのかまだわからんけど、真姫ちゃんが死んだのはにこっちのせいじゃない」

希「だから、そんなに自分を責めんといて」

海未「希……」

希「情けないなぁ……目の前で悲しんどる友人を助けることもできないなんて」

海未「希は情けなくなんかありません。頼りにる先輩ですよ」

希「……ありがとうな、海未ちゃん」

ーーーー海未の部屋

海未「落ち着きましたか、絵里」

絵里「ええ……なんとか」

希「一体何があったんや?」

希「あの状況で真姫ちゃんだけを殺すなんて、不可能やろ」

絵里「それが……」

穂乃果「……どうしたの?」

絵里「何も、わからないの」

海未「どういうことですか?」

絵里「……昨日は二人と一緒に話をしていて、眠くなったから寝たのよ」

絵里「そして、起きたら真姫が……」

希「つまり、えりちは何も知らんていうことか」

絵里「……ごめんなさい」

海未「何か、おかしいことはありませんでしたか? 物音を聞いた、とか」

絵里「何も……なかったわ」

希「手がかりは無し……か」

亜里沙「犯人は、一体どうやって……」

ことり「何を聞いても無駄だよ」

海未「ことり?」

ことり「だって、犯人は絵里ちゃんなんだもん」

絵里「なっ!?」

ことり「だって部屋には鍵が掛かっていたんでしょ? それなら同じ部屋の人にしか殺せないよ」

ことり「にこちゃんはあんな風になってるんだし、犯人は絵里ちゃんしかいないじゃん」

ことり「最低だよ、絵里ちゃん」

絵里「違う……私じゃない……」

希「ことりちゃん、もうその辺に……」

ことり「なんで庇うの? 状況的には絵里ちゃんが犯人なんだよ?」

ことり「それなのに疑わないなんて絶対おかしいよ」

ことり「もしかして希ちゃんも共犯なの?」

希「なっ!?」

ことり「そうだよ、いつもこそこそ二人で何か話してたもん」

ことり「それが皆を殺す相談だったんだね」

希「ことりちゃん……いい加減にせえよ」

ことり「どうするの? ことりのことも殺すの? 皆みたいに?」

希「っ!」グッ

雪穂「もうやめてください!」

ことり「!?」

希「!?」

雪穂「お願い……です、喧嘩しないでください……」ポロポロ

雪穂「楽しい合宿だったのに……花陽さんも……凛さんも……真姫さんも……死んじゃって」

雪穂「にこさんはあんな風になって……その上皆がお互いを疑いあって……」

雪穂「もう……嫌なんです……」

雪穂「なんでこんなことになっちゃったんですか……」

穂乃果「雪穂……」

海未「穂乃果、雪穂と亜里沙を連れて部屋に」

穂乃果「……うん、わかった」

穂乃果「いくよ、二人とも」

雪穂「……うん」

亜里沙「亜里沙は……」

海未「亜里沙、今は部屋で休んでいてください」

亜里沙「……解りました」

ガチャ

パタン

海未「さて……と」

海未「ことり」

ことり「どうしたの? 海未ちゃん」

海未「これからは、他の人を犯人扱いするのは禁止です」

ことり「どうして? だって、どうみたって犯人はーー」

パァンッ!

ことり「あ……あ……」

海未「目は、覚めましたか?」

ことり「痛いよ……海未ちゃん……なんで……」

海未「今私たちが疑いあい、仲たがいをすればどうなるかくらい貴女にもわかるでしょう」

海未「もしこれ以上絵里のことを犯人だというつもりなら、部屋に一人でいてもらいます」

ことり「ひっ!?」

ことり「う、嘘……だよね?」

ことり「そんなことされたら……ことり……」

海未「…………」

ことり「あ……ごめんなさい……ごめんなさい……」

ことり「もう余計なこと言わないから……なんでも言うこと聞くから……」

ことり「お願い……見捨てないで……」ポロポロ

海未「…………」

海未「解ってくれればいいんですよ」

海未「すいません、叩いてしまって……痛かったですよね?」

ことり「ううん……ことりが悪かったから……」

海未 ナデナデ

海未「さて……すいません、絵里、希」

希「ええんや……うちもカッとなってしもうてごめんな」

海未「仕方ありませんよ、犯人と疑われたのですから」

海未「そうだ、絵里に一つ聞いておきたいことがありました」

絵里「……何?」

海未「どうして、泊まる階を全員同じにしなかったんですか?」

ーーーー穂乃果の部屋

雪穂「ぐすっ、えぐっ」

穂乃果「雪穂……」

雪穂「お姉ちゃん……私たち……死んじゃうの?」

穂乃果「……大丈夫だよ、海未ちゃん達が絶対になんとかしてくれる」

穂乃果「だから、雪穂もーー」

ガタンッ

穂乃果「!?」

亜里沙「っ……」

穂乃果「亜里沙ちゃん!?」

亜里沙「大丈夫……です……」ブルブル

穂乃果「大丈夫じゃないよ! こんなに震えて……顔も真っ青……」

穂乃果「待ってて、すぐに海未ちゃんをーー」

亜里沙「止めてださい!!」

穂乃果「っ!?」

亜里沙「……はぁ……はぁ……大丈夫、ですから」

穂乃果「で、でも……」

亜里沙「お願いします……海未さんに、こんな所を見られたくはないんです……」

穂乃果「亜里沙ちゃん……」

穂乃果「…………」

ギュッ

雪穂「え?」

亜里沙「!?」

穂乃果「二人とも、辛かったよね……」

穂乃果「ここには私たちしかいないから……いっぱい泣いていいんだよ」

雪穂「お姉ちゃん……ぐすっ」

亜里沙「ぅぁ……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

ーーーー海未の部屋

希「泊まる……階?」

海未「はい。私たちは2階、絵里たちは3階に泊まりました」

海未「何かあった時のためにも、全員同じ階にいた方がよかったんじゃないんですか?」

絵里「…………」

希「海未ちゃん、それは」

海未「安心してください、絵里を疑っているというわけではありません」

海未「部屋が遠くなれば、犯人が人に見つかる可能性は増え、少しばかりの抑止力にはなる」

海未「発案者は絵里ですが、そうやって最終的な決定を下したのは私たちです」

海未「ただ、それだけではありませんよね?」

海未「隠し事は無しですよ、絵里」

海未「一体、三人で何を話したんですか?」

絵里「…………別に、隠すようなことは話していないわ」

絵里「ちょっと、真姫に聞きたいことがあってね」

海未「何をですか?」

絵里「メールについてよ」

海未「あの予告メールですか」

絵里「ええ。犯人は自由にメールを遅れて、私たちは送れない」

絵里「だから、もしかすると犯人は基地局の位置を知っているんじゃないかって」

海未「それで、場所を聞いていた……と」

絵里「ええ。近くに小さな小屋もあるって聞いたから、そこに犯人いるんじゃないかって思ったんだけど、小屋の作りが特殊らしくて住めたものじゃないそうよ」

希「特殊って……どういうことや?」

絵里「さぁ……悪い子が入れられるってことしか教えてくれなかったわ」

海未「でも、それだけなら階をわざわざ分ける理由にはならないと思うのですが」

絵里「…………真姫を、問い詰めたのよ」

海未「え?」

絵里「本当はマスターキーを持ってるんじゃないかって」

希「えりち……それは」

絵里「解ってる……自分がおかしいことをしてたって」

絵里「でも、今までの犯行には絶対にマスターキーが必要だった……だから、あの時は真姫が犯人だって……!」

絵里「そう……思って……っ」

絵里「ごめんなさい……真姫……最低なっ……先輩で……」ポロポロ

海未「……過去を悔やんでも仕方ありません。今は、未来のことについて話しましょう」

希「何か考えがあるん?」

海未「……はい。今までの事件の現場検証をしましょう」

絵里「なっ!?」

希「海未ちゃん、探偵気取りはよくないで」

海未「解っています。ですが、私たちには手がかりが必要なんです」

海未「例えそれが、死んだ皆への冒涜になるとしても」

希「…………トリックが解ったとしても、犯人が解るとは限らんよ?」

海未「このままじっとしているよりはマシですよ」

希「……了解や。一度、調べてみようか」

海未「ありがとうございます、希」

希「じゃあ皆に報告して……にこっちの様子も見なあかんな」

希「……そうや、海未ちゃん」

海未「なんですか?」

希「穂乃果ちゃんについてなんやけど」

海未「! 何か解ったんですか!?」

希「いや……解ったわけではないんやけど、携帯を気にしてるように見えたんや」

海未「携帯を……?」

希「うん。何しとるかまではわからんけどね」

海未「そう……ですか。ありがとうございます」

希「このくらいどうってことないで。さあ、行こうか」

ーーーー穂乃果の部屋

海未「私から一つ提案があります」

亜里沙「なんですか?」

海未「寝るのは、皆同じ部屋にしませんか?」

絵里「それって……」

海未「はい。こうなったら、全員で寝たほうが安全だと思います」

海未「机と椅子をどかせば、リビングで寝られそうですし」

希「……そうやな。うちは賛成や」

穂乃果「うん……皆でいたほうが、安全だもんね」

海未「……反対意見は、ないようですね」

海未「それじゃあ、荷物を持ってリビングに集まってください」

海未「絵里、後のことはお任せできますか?」

絵里「いいけど……その、私も行った方がいいんじゃ」

海未「大丈夫ですよ。絵里は、皆を安心させてあげてください」

絵里「……解ったわ」

ことり「あ、あの……海未ちゃん……」

海未「ことりも、皆と一緒にリビングにいてください」

ことり「で、でも……」

海未「ことり」

ことり「…………っ」

ことり「わかり……ました……」

亜里沙「あ、あの! 海未さん!」

海未「どうしました?」

亜里沙「亜里沙にもお手伝いさせてください」

亜里沙「海未さんの役に立ちたいんです」

海未「…………駄目です」

海未「今からすることは、人としての倫理に反することです」

海未「亜里沙にそんなことをさせたくはありません」

海未「解ってくれますね?」

亜里沙「……はい」

海未「もう、そんな悲しそうな顔をしないでください」

海未「そうだ、もしよかったら、私の荷物をリビングまで持って行ってくれませんか?」

亜里沙「!」

海未「忙しいので、やってもらえるととても助かります」

亜里沙「解りました!」


ーーー
ーー

ーーーー海未の部屋

亜里沙「えっと……これで全部ですね」

ことり「…………」

亜里沙「ことりさん、他に何か持っていくものはありますか?」

ことり「……っ……ない……よ」

亜里沙「……そうですか」

亜里沙「はぁ……」ガサッ

亜里沙「ん? なんですかこれは?」

亜里沙「…………」フム

ことり「どう……したの?」

亜里沙「なんでもありません。行きましょう」

ーーーー花陽の部屋前

海未「……結局、にこは出てきてくれませんでしたね」

希「ああ……何をいっても『関わらないで』の一点張り」

希「どうすればええんやろうな」

希「っと、ごめんな、さあ、部屋に入ろうか」

海未「……そうですね」

希「辛かったら、うちが一人でやってもええんよ?」

海未「……希だけに背負わせるわけにはいきませんよ」

海未「行きますよ」

キィ

海未「…………え?」

希「そんな……あほな」

海未「死体が……失くなってる?」

希「ど、どういうことや……なんで死体が」

海未「解りません……私にも……」

希「……海未ちゃん、一旦出るで、嫌な予感がする」

海未「そうですね、一度報告をーー」


『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』


海未「っ!? 今のは!」

希「にこっち!?」

タタタタタタ

ドンドンドン

希「にこっち! どうしたんや!」

にこ『なんで……なんでよ!』

希「にこっち……?

にこ『こんなの、嘘よ……』

海未「にこ! どうしたんですか!?」

にこ『…………』

海未「にこ……」

タタタタタタタタタタ

絵里「海未! どうしたの!?」

海未「解りません……ただ、何かあったみたいです」

希「…………どうしたんや、にこっち」

希「にこっちは皆を笑顔にするんやなかったんか……」

絵里「希……」

希「……ごめん、海未ちゃん。調査はお終いや」

希「うちは、ここに残るよ」

海未「……いいんですよ」

絵里「駄目よ! 一人でなんて危険すぎる!」

希「多分大丈夫や」

絵里「何を根拠にそんなこと……」

希「うちにはまだ予告メールは来てないからな」

海未「……そうですね。殺される人の前には、必ずあのメールが来ています」

絵里「だからって次も来るとは限らないじゃない!」

希「まあそうなんやけど……多分メールはにこっちの所に行ったんやろうな」

絵里「……さっきの、悲鳴?」

希「おそらくは……ね」

希「だから、うちはここを離れるわけにはいかん」

希「皆のこと、頼むで」

絵里「……解ったわ」

海未「……それでは、失礼します」

絵里「何度か様子を見に来るからね」

スタスタスタ

ーーーーリビング

絵里「皆、戻ったわよ」

穂乃果「お帰り、絵里ちゃん」

雪穂 スゥスゥ

ことり スゥスゥ

穂乃果「にこちゃん……大丈夫だった?」

絵里「……ええ、大丈夫よ」

絵里「希もついてるし、平気よ」

絵里「後で様子を見にいきましょう」

穂乃果「……うん」

絵里「あれ、そういえば亜里沙は?」

穂乃果「亜里沙ちゃんなら、『手伝ってきます』って言って出て行ったけど」

絵里「……海未の所ね」

絵里「まあ、それなら大丈夫でしょう」

絵里「穂乃果、貴女も疲れてるなら休んでもいいのよ」

穂乃果「絵里ちゃんこそ、ちゃんと休まなきゃ駄目だよ」

絵里「私は大丈夫よ」

穂乃果「じゃあ、穂乃果も大丈夫」

絵里「全く、頑固なんだから」

穂乃果「ふふ、絵里ちゃんこそ」


ーーー
ーー

穂乃果「絵里ちゃん、もうお昼の時間だよ」

絵里「そうね……海未と希はまだ頑張ってるのよね……」

穂乃果「絵里ちゃん……」

『…………ち!』

穂乃果「……え?」

『……や! ……………して!』

絵里「希の声……!?」

絵里「くっ!」ガタッ

穂乃果「絵里ちゃん!?」

タタタタタタタタタ

絵里「希!」

希「えりち……」

絵里「今度はどうしたの?」

希「わからんのや……急に何か言い出して……」

絵里「何か……?」

希「ああ……今もまだ……」

にこ『こんなの……おかしいじゃない!』

にこ『一体にこが何をしたの!?』

絵里「ちょっとにこ! 何があったの!?」

にこ『こんなの……できるわけ……!』

にこ『でも、そうしないと……』

にこ『こんな……こんなのって……!』

にこ『嫌よ……絶対に嫌!』

にこ『ああああああああああああ!!!』

希「あかん……はよなんとかしないと!」

海未「絵里! 希!」

希「海未ちゃん」

海未「何かあったんですか?」

希「解らへんけど……なんとかしないとかなりやばいっちゅうことや」

にこ『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

海未「!?」

にこ『ちが、違うのっ! あ、あれは……』

にこ『に、にこは……こんなの……駄目で……』

にこ『にこが……守らないと……』

にこ『ごめん……ごめん……』

にこ『そう……だね、そうしないと、駄目だよね』

にこ『全部、にこのせいなんだから……』

希「っ……こうなったら! 海未ちゃん!」

海未「はい!」

希「せーのっ!」

ドカッ ドカッ ドカッ ガタンッ

希「にこっち!!」

ヒュォォォォォォォ

海未「風……?」

希「にこっち……なにしとんのや」

にこ「…………」

希「そんな手摺の上に乗ったら危ないやろ……おまけに包丁なんてだして」

希「ほら、早くこっちに……」

にこ「…………」スッ

にこ「ごめんね……真姫ちゃん」

ぐずり、と肉を抉るような音が聞こえた気がした。

辺りに血が飛び散り、にこの胸が真っ赤に染まっていく。

その表情は恐怖と苦痛に歪んでおり、まるで助けを求めているかのようで。

ひゅぅ、と風に煽られるように揺れた体は、ゆっくりと手摺の上から崩れ落ちて行くのであった。

今回はここまで

ズルッ

バシャァァン

希「にこっち!」ダッ

海未「希!?」

希「今助けにーー」

海未「駄目です! 下は海なんですよ!? 死ぬ気ですか!?」

希「で、でも……!」

海未「貴女まで死んでしまったら他の皆はどうなるんですか!」

希「っ!」

海未「お願いします……冷静になってください」

海未「希までおかしくなってしまったら、私は……」

希「……ごめん」

希「……落ち着かんと、いかんのやね」

希「…………」

希「必ず、迎えにくるから」

希「少しだけ冷たいの我慢してな、にこっち」

絵里「なんで……自殺なんかっ……」

海未「…………っ」

希「何か、理由があったんやろ」

海未「自殺する程の……理由ですか?」

希「…………」

絵里「……一度、リビングに戻りましょう」

絵里「皆が心配しているわ」

ーーーーリビング

穂乃果「自……殺……?」

雪穂「そ、そんな……」

ことり「…………」ブルブル

絵里「……信じられないと思うけど本当よ」

海未「一体何があったのかは、解りませんけどね」

希「……『ごめんね……真姫ちゃん』か」

穂乃果「え?」

希「にこっちが最後に言った言葉や」

海未「……にこは、自分が許せなかったのでしょうか」

海未「真姫を守れなかった、自分が」

絵里「……よく喧嘩してたけど、にこは真姫のことを本物の妹みたいに可愛がってたしね」

穂乃果「……っ。そんなの……」

希「酷い……話やな」

絵里「…………海未」

海未「どうしました、絵里?」

絵里「一つ聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

海未「はい……構いませんが」

希「えりち、何を……?」

絵里「希は少し黙ってて」

絵里「海未、貴女は今まで何をしていたの?」

海未「え……?」

海未「何をって、調査ですけど」

絵里「そう、それじゃあ希が扉を叩き出した時、貴女はどこにいたの?」

海未「それは……凛の部屋に」

絵里「凛の部屋? 本当に?」

絵里「にこの部屋で別れてからずっと凛の部屋にいたっていうの?」

海未「…………っ」

絵里「希、別れてから一度でも海未の姿を見た?」

希「……見てないよ」

絵里「ありがとう。つまり、海未は一度も真姫の部屋に訪れていないわけ」

絵里「さあ、それじゃあ教えてもらいましょうか、ずっと凛の部屋にいた理由を」

海未「…………」

絵里「……決まりね」

雪穂「何が、ですか?」

絵里「犯人は海未よ」

穂乃果「え?」

穂乃果「う、海未ちゃん……本当にに……?」

海未「違い……ます、私じゃ……」

絵里「じゃあ何をしていたのか話してみなさい」

海未「それは……」

希「ちょいまってや、えりち! 今回の事件にアリバイは関係ないやろ!? それだけで海未ちゃんを犯人に決めつけるのはあかん!」

絵里「そうね。でも、隠し事をするのはやましいことがあるからでしょ?」

絵里「もしも自分が犯人じゃないっていうなら、何をしていたのか答えてみなさい、海未!」

海未「…………っ」

海未「凛の……部屋に行けば……わかります」

穂乃果「う、海未ちゃん……本当に……?」

海未「違い……ます、私じゃ……」

絵里「じゃあ何をしていたのか話してみなさい」

海未「それは……」

希「ちょいまってや、えりち! 今回の事件にアリバイは関係ないやろ!? それだけで海未ちゃんを犯人に決めつけるのはあかん!」

絵里「そうね。でも、隠し事をするのはやましいことがあるからでしょ?」

絵里「もしも自分が犯人じゃないっていうなら、何をしていたのか答えてみなさい、海未!」

海未「…………っ」

海未「凛の……部屋に行けば……わかります」

希「凛ちゃんの部屋?」

絵里「そう……皆、行くわよ」

海未「っ!? 絶対に駄目です! 」

絵里「確認しないと、海未の容疑は晴れないのよ?」

海未「そんなことは解っています! でも、行くなら絵里だけで行ってください!」

海未「皆に見せるわけには行きません!」

絵里「……いいわ。それじゃあ部屋の前まで皆で行きましょう」

絵里「ほら、早く行くわよ」

ーーーー凛の部屋前

絵里「さて、行けば解るって言ってたけど、本当に部屋を見ただけで海未が何をしていたのか解るの?」

海未「……ええ、解りますよ」

絵里「そう……」

希「三人は下がってて」

キィ

絵里「こんなもので、証明できるわけーーうぐっ!?」

希「な、なんや……これは!?」

バタン!

絵里「あぐっ……げっ……おぷっ」

希「……海未ちゃん、あれはなんなんや!?」

海未「…………凛、ですよ」

希「あれが……凛ちゃんやと?」

海未「はい……ベランダに放置されていたせいで、海鳥が群がっていたんです」

海未「なんとか追い払って……凛を部屋に入れましたが……め、目も……食べられ……っ」

海未「体っ……も……皮膚っ……っぁ……」

希「もういい、それ以上喋らんとき」

希「凛ちゃんを守ってくれてありがとな……辛かったやろ」

希「えりち、もう解ったやろ、海未ちゃんは犯人じゃない」

希「凛ちゃんを助けるために頑張ってくれとったんや」

絵里「じゃあ、にこの時は……」

希「……自室におったんやろ?」

海未「……はい、気分が悪くなってしまって。情けない限りです……」

希「情けなくなんかないよ。あんな姿の凛ちゃんに直に触れたんや、気分が悪くならんほうがおかしいて」

絵里「でも、それじゃあ……なんで隠して……」

希「この惨状をうちらに見せたくなかったからやろ!」

希「どうしてそんなことも解らんのや!?」

絵里「っ!」

海未「希、もうそのくらいにしてください」

海未「私は大丈夫ですから」

希「……そうやな。えりち、海未ちゃんに謝ろう」

絵里「…………っ」

絵里「ごめん、なさい」

絵里「ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロポロ

絵里「私……っ……また間違えて……っ」

絵里「こんな……最低な先輩で……ごめんなさい……」

海未「絵里、もういいですから」

絵里「っ……海未……」

海未「誰にでも間違いはあります。今は、冷静さを失わないようにしましょう」ナデナデ

絵里「……うん」

ことり「…………っ」ギリッ

希「これで一件落ちゃーー」

雪穂「あ、あの!」

希「ん? どうしたん、雪穂ちゃん」

雪穂「……亜里沙は何処ですか?」

絵里「え……?」

雪穂「さっきから、亜里沙の姿が見えないような気がするんですけど……」

絵里「亜里沙なら……海未と一緒に調査を……」

海未「え?」

海未「私はずっと一人でしたけど……」

海未「絵里たちと一緒にいたんじゃないんですか?」

絵里「……それじゃあ、亜里沙は何処に……?」

絵里「っ!」ダッ

海未「絵里!?」

希「ここはうちに任せといて」

希「海未ちゃんは、皆で亜里沙ちゃんを探しといてくれる?」

海未「わかりました」

希「……それとな」

海未「?」

希「(えりちは……もう駄目や)」

海未「!?」

希「(冷静そうに振舞おうとしとるけど、もう限界っぽい)」

希「(堪忍したってな)」

海未「(……しょうがないですよ。絵里の心の負担は相当なものだったでしょうし)」

希「(……ありがとう)」

希「それじゃあ、皆を頼むで」

海未「はい」

ーーーー亜里沙の部屋

キィ

絵里「亜里沙!!」

絵里「何処……? 何処にいるの!?」

絵里「嘘よ……こんなの……」

絵里「早く……見つけないと……」ヨタヨタ

絵里「……ん?」

絵里「机の上に……何か……」ガサッ

絵里「……これは!」

希「えりち、なんなんそれ?」

絵里「っ!?」

希「なんや変な文章が書いてあったようにーー」

絵里「なんでもない!」

希「っ!」

希「え、えりち……?」

絵里「……ごめん、一人にしてもらえる?」

希「で、でも」

絵里「大丈夫、私には予告メールは来てないから」

絵里「亜里沙を探さないといけないしね」

希「それなら皆で探せばええやん、どうして……」

絵里「少し、落ち着きたいのよ」

絵里「……ごめんなさい」

希「……えりち」

希「落ち着いたら、ちゃんと戻ってきてな」

絵里「……ええ」

ガチャ

バタン

希「……どうしてしまったんや、えりち」

海未「希!」

希「海未ちゃん……ことりちゃんも」

海未「絵里の様子は……?」

希「……一人になりたいって、閉じこもってしもうた」

海未「そんな!?」

海未「それじゃあ、前の時と同じでは……」

海未「希、今すぐ絵里を部屋から出しましょう!」

希「……いや、そのままにしとこ」

海未「え?」

海未「どうして……?」

希「それについては、後で説明する。穂乃果ちゃんと雪穂ちゃんはどこにおる?」

海未「もしかすると亜里沙が帰ってくるかもしれないので、リビングで待ってもらっています」

希「了解、じゃあ一度リビングに戻ろう」

ーーーーリビング

海未「それで、どうして絵里を一人にしたんですか?」

希「えりちには、落ち着く時間が必要や。流石にショックが大きいやろうしな」

海未「で、ですが……!」

希「……もう一つ、理由がある」

海未「え?」

希「えりちが手紙みたいなものを読んどった」

穂乃果「手紙?」

希「そうや。今内容を紙に書くから、ちょいまってな」サラサラ

π
つはのきひもいふおげきう。
あいまへぬをづりふけの。

穂乃果「なに……これ?」

雪穂「なんだかおかしな文章ですね……」

ことり「…………」

海未「希……これは、もしかして」

希「うん」

希「暗号……やろうな」

海未「これを書いたのは……亜里沙なんでしょうか?」

希「多分な。差出人は見えなかったけど、『お姉ちゃんへ』って書いてあるのが見えたし」

穂乃果「どういう意味なの?」

海未「……解りません。余り、こういったものは得意ではないので」

海未「希はどうですか?」

希「……うちも解らん。ちょっと考えてみんとな」

雪穂「あの……これって絵里さん宛なんですよね?」

雪穂「それなら、絵里さんに聞いた方がいいんじゃないですか?」

ことり「……答えてくれないよ」

雪穂「え?」

海未「私もそう思います。もし皆に見せる気があるのなら、この部屋にきているでしょう」

希「そうやろうな……隠したってことは、きっとうちらにばれたくなかったんやろ」

希「だから、ここで話したことはえりちにはないしょやで」

希「きっと、何か解れば教えてくれるはずや」

雪穂「それまでは、我慢ですか」

穂乃果「絵里ちゃん……どうしちゃったんだろう」

希「落ち込んでる場合やないよ」

穂乃果「え?」

希「実は、ちょっと気になることを発見したんや」

海未「なんですか?」

希「にこっちと真姫ちゃんが同じ部屋にいる時、うちらで壁に耳当てとったやろ?」

穂乃果「うん」

希「その時、確かに皆聞いたはずや、真姫ちゃんの予告メールの音を」

ことり「…………」ギュッ

希「それでな……よっと」ゴソッ

海未「それは……真姫の携帯?」

希「そうや。それで、ちょっと見てみてくれる?」

雪穂「これは……?」

受信BOX
From:Unknown
From:ママ
From:にこちゃん
From:にこちゃん
From:ママ
From:ママ

穂乃果「これがどうかしたの?」

海未「……そういうことですか」

ことり「どういうことなの、海未ちゃん」

海未「メールが足りないんですよ」

雪穂「足りない……ですか?」

海未「はい。真姫は、予告で一度『Unknown』からメールを貰っています。もしあの時真姫の所にメールが来ていたのなら、もう一通『Unknown』からのメールがあるはずです」

海未「それがない、ということは……」

希「誰かが……メールを消した?」

海未「……恐らくは」

雪穂「で、でも、それなら消すよりも携帯を持っていけばいいんじゃ……」

希「……確かに」

海未「それも謎……ですね」

海未「そうだ、希、一つお聞きしたいのですが」

希「どうしたん?」

海未「……真姫の遺体はありましたか?」

穂乃果「っ!?」

希「……あったで」

海未「……そうですか」

希「犯人は……どうして花陽ちゃんの遺体だけ消したのか……やろ?」

海未「……はい。それにどうやって密室の中で真姫を殺せたのか……も」

希「全く……考えることが多いなぁ」

希「……こんな時に、えりちがいてくれたら……」

ガチャ

希「!?」

絵里「……ごめんなさい、遅れたわ」

海未「絵里!」

海未「もう大丈夫なんですか?」

絵里「ええ、大丈夫よ。心配をかけてごめんね」

希「良かった……無事やったな」

希「それで、亜里沙ちゃんは見つかったんか?」

絵里「……どこにもいなかったわ」

希「それなら皆で探しに行ったほうが……」

絵里「いえ、それよりも、この部屋からでないようにしましょう」

絵里「もしかすると、亜里沙がひょっこり帰ってくるかもしれないしね」

希「…………」

絵里「皆、気が滅入ってると思うし、少し気分転換でもしましょう」

絵里「そうね……最近あったこととかについて話すとかどうかしら?」

ことり「…………」

穂乃果「……最近っていうと、穂乃果、全校集会で生徒会長として話させられたんだっけ」

雪穂「え……お姉ちゃんが皆の前で?」

穂乃果「な、なんでそんなに不安そうな顔するの」

雪穂「いや、だってお姉ちゃんだし……」

穂乃果「あー! 雪穂酷い!」

絵里「まあまあ、穂乃果はちゃんとできてたわよ」

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「でもまあ……その後が駄目だったけどね」

穂乃果「……え?」

海未「……校長先生のお話の時に寝ていたでしょう」

希「それがばれて、先生にめっちゃ怒られとったもんな」

雪穂「お姉ちゃん……」ハァ

穂乃果「う……ごめんなさい」

穂乃果「で、でも、あの時は疲れてたし……」

海未「でも、じゃありません! 疲れているのは皆同じなんですよ」

穂乃果「はい……」シュン

穂乃果「……あ、ちなみにどんなお話してたの?」

絵里「そうね……音楽の先生が結婚するとか、町でお祭りがあるとか、猫の暴行事件が増えてるとか」

希「もしかして全部寝とったん?」

穂乃果「あ、あはは……」

海未「全く……貴女という人は……」


ーーー
ーー

絵里「それじゃあ、電気消すわよ」

穂乃果「はーい」

パチン

希「(海未ちゃん)」

海未「(どうしました、希)」

ことり「(海未ちゃんに何かようなの?)」

希「(あはは、ちょいと堪忍してな、ことりちゃん)」

希「(なあ海未ちゃん、えりちは、どうして亜里沙ちゃんのことを放置しとくんやろうな)」

海未「(そうですね。それに、手紙についても話しませんでしたし……)」

海未「(おそらく、あの手紙に何か書いてあったんだと思います)」

希「(うちらの知らん情報……か。それなら明日、無理やりにでも問い詰めてみたほうがええんやろか)」

海未「(……そうですね。こうなった以上、あまり長く待てませんしね)」

希「(よし、じゃあ決まりやな。そうと決まれば早くねんとな。お休み、海未ちゃん)」

海未「(はい、お休みなさい、希)」


ーーー
ーー

ユサユサユサ

「…………み」

希「…………んっ」

「…………ぞみ」

希「……後五分」

「………さい、希」

希「むぅ……誰や」

海未「起きてください、希」

希「……海未ちゃん?」

海未「……やっと起きてくれましたか」

希「あ、うん……おはよう」

希「ってまだ真っ暗やん……一体どないしたん?」

海未「……いないんです」

希「……いない? どういうことや?」

海未「……落ち着いて聞いてください」



海未「絵里が……いなくなりました」

今回はここまで。
来週は休む、すまん。

希「どういうことや……?」

海未「解りません。目が覚めたら、絵里の姿が見当たらず……」

希「そんなはず……!」ガバッ

希「……いない」

海未「絵里は何処に行ったのでしょうか……」

希「…………布団が冷たい」サワッ

希「えりちが出てってから、結構時間が経っとるね」

海未「……探しにいきますか?」

希「そうやな。できれば三人が起きるまでに見つけたいところや」

海未「解りました、行きましょう」

希「ちょいまち、誰も入れないように鍵をかけとかんと」

希「……机の上やな」ガサッ

希「それじゃあ、行こうか」

海未「はい」

カチャッ

キィ

希「どこを探そう?」

海未「……まずは、皆の部屋からあたってみましょう」

パタン

カチャッ


ーーー
ーー

希「……何処にもおらへんな」

海未「そうですね……皆の部屋、空き部屋、厨房……鍵のかかってるところ以外は全て調べましたけど」

希「何処行ってしもうたんやえりち」

希「せめて、何か一言くらいあってもええやん……」

海未「……希」

海未「一度、リビングに戻りましょう」

希「……そうやな。三人が心配やし」

スタスタスタ

希「……無事でいてな、えりち」ボソッ

カチャッ

キィ

海未「少し疲れましたね……」

穂乃果「…………」

海未「穂乃果? 起きていたんですか?」

希「穂乃果ちゃんが早起きするなんて珍しいなぁ」

穂乃果「…………ねぇ」

穂乃果「何処、行ってたの?」

海未「え?」

穂乃果「こんな夜中に……部屋を抜け出して……」

希「穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「何処行ってたの!?」ガッ

海未「ぐっ……!?」

穂乃果「黙ってないで答えてよ!」グググ

海未「ほ、穂乃果……苦しっ……!」

希「っ! 落ち着くんや!」グイッ

穂乃果「っ!」バッ

海未「……はぁ……はぁ」

希「いきなりどうしたん?」

穂乃果「…………っ」ハァハァ

海未「……黙って出かけたことについては謝ります」

海未「きちんと理由をお話ししますから、聞いて頂けませんか?」

穂乃果「……ごめん」

希「…………」

雪穂「ん……どうしたんですか?」

ことり「海未ちゃん……?」

海未「……皆を起こしてしまいましたね」

海未「希」

希「解っとる。隠し事はなしや」

希「三人とも、落ち着いて聞いて欲しい」

希「えりちがいなくなった」

穂乃果「え……?」

雪穂「そんな……」

ことり「…………」

海未「夜中に目が覚めたら、布団から姿が消えていました」

海未「それで希と一緒に館の中を捜索したのですが、見つからず……」

穂乃果「それじゃあ、もしかして海に……」

海未「……まだそうと決まったわけではありません」

海未「館の外に出て行った、ということもありますし」

希「手がかりは、あの手紙……やな」

海未「はい」

海未「ですが、この暗号はどうにも……」

希「…………『π』か」

海未「え?」

希「海未ちゃん、円周率ってどのくらいまで言える?」

海未「えっと、30桁目くらいまでなら……」

希「ちょっと書いてくれへんか、23番目まででええから」

海未「はい」サラサラ

『3.1415926535897932384626』

海未「これでいいですか?」

希「ああ、ありがとうな」

雪穂「円周率がどうかしたんですか?」

希「暗号を解くのに必要なんや」

海未「……どういうことですか」

希「ずっと考えてたんやけど、おそらくこれはシーザー暗号なんやと思う」

海未「シーザー暗号?」

希「そう。数字の分だけ文字を前や後ろに動かして作る……例えば、『か』と『3』なら、前に三つ動かして『う』になる」

希「今回の場合、円周率がその動かす数を表してるはず」

希「暗号の『つはのきひもいふおげきう。あいまへぬをづりふけの。』の文字を円周率と照らし合わせていくと……」

つはのきひもいふおげきう。
314159265358

あいまへぬをづりふけの。
97932384626

希「こうなるね」

希「一文字目が『つ』と『3』で『そ』」

希「二文字目が『は』と『1』で『の』」

希「三文字目が『の』と『4』で『な』」

希「これを順番にやっていくと……」

希「『そ』『の』『な』『か』『に』『は』『ん』『に』『ん』『が』『い』『る』」

希「『そのなかにはんにんがいる』……?」

穂乃果「え?」

雪穂「……!」

ことり「ひっ!?」

海未「そんな……!」

穂乃果「その中って……それって……!」

雪穂「私たちの……中ってことですか?」

ことり「ぁ……いやっ……!」

海未「み、皆落ち着いてください!」

希「…………」

希「まさか、こんなことが書いてあったなんて」

希「……この後の文章は、読むのをやめたほうがよさそうやな」

希「『その中に犯人がいる』……これは一体だれのことを……」

希「…………?」

希「どうしたん、皆、黙ってうちのことを見て……?」

希「…………!」

希「ま、まさかうちが犯人やって疑っとるん?」

希「うちが……皆の幼馴染じゃないから?」

穂乃果「…………」

希「違う! うちは犯人じゃない!」

雪穂「……にこさんが死んだ時、希さんはずっと部屋の前にいましたよね」

希「……それが、どうしたん」

雪穂「本当は心配するふりをして、にこさんを自殺に追いやったんじゃないですか?」

希「自殺に追いやるって……そんなの簡単にできるわけないやろ!」

希「なんで冷静に考えてくれんのや!?」

雪穂「それだけじゃあまりません!」

雪穂「希さんは真姫さんの携帯をいつ手に入れたんですか?」

希「それは……」

雪穂「にこさんの部屋の前にいた時ですよね?」

希「…………」

雪穂「説得するふりをして、真姫さんを殺した時の証拠を隠滅してたんですね」

希「違う! うちはただ、事件解決の手がかりになればと……」

雪穂「じゃあどうして真姫さんの携帯の履歴は消えていたんですか!」

希「そんなん知らんよ! だいたい犯人なら何も言わずに携帯を捨ててしまうやろ!」

雪穂「そうやって皆の信頼を勝ち取ろうとしたんじゃないんですか!?」

希「そんなことするわけないやろ!」

希「なんでや……なんで……皆……」

雪穂「現状では、希さんが一番怪しいんです」

穂乃果「……そうだよ、雪穂や海未ちゃんやことりちゃんが……こんなことするはずないもん」

希「……うちなら、やるっていうの?」

穂乃果「…………」

雪穂「決まり……ですね」

希「何が……決まりなんや……」

雪穂「犯人はのぞーー」



海未「いい加減にしてください!!」

雪穂「っ!?」

海未「どうして貴女たちはすぐに誰かを犯人にしようとするのですか!」

海未「希は今まで私たちのことを守ろうと必死になって頑張ってきてたんですよ!?」

海未「それなのにどうして犯人と思えるんですか!」

海未「ちょっと怪しい、なんて皆同じでしょう!」

穂乃果「…………」

海未「お願いですから……もっと仲間を信じてください」

海未「私たちは、お互いにいがみ合っている場合ではないんです」

希「海未ちゃん……」

雪穂「で、でも……亜里沙が……」

海未「『その中』が指しているものが違うのかもしれません」

海未「もしくは、亜里沙が勘違いしている可能性だってあります」

海未「どちらにしろ、希を犯人と決めつけるのは間違いですよ」

雪穂「……っ」

海未「解ってくれましたか?」

雪穂「…………はい」

雪穂「ただ、一つだけ言わせてください」

雪穂「お姉ちゃんに危害を加えようとする人は、絶対に許しません」

穂乃果「雪穂……」

雪穂「お姉ちゃんは、絶対に私が守るから」

穂乃果「……それは違うよ」

雪穂「え?」

穂乃果「穂乃果が、雪穂を守るの」

雪穂「……そんなことしなくていいよ」

穂乃果「ううん、しないと駄目なの」

穂乃果「だって、穂乃果は雪穂のお姉ちゃんなんだから」

雪穂「…………」

穂乃果「そりゃあ、海未ちゃんと比べるとちょっと頼りないかもしれないけど、穂乃果だってやるときはやるんだよ?」

穂乃果「だから……さ。そんなに、強がらなくてもいいんだよ」

雪穂「…………っ」

穂乃果「さっきはごめんね、海未ちゃん、希ちゃん」

穂乃果「穂乃果もちょっとナーバスになってたみたい」

海未「……構いませんよ。この状況では仕方ありません」

希「うちも怒鳴ってしもうてごめんな」

穂乃果「ううん、穂乃果のほうも犯人って決めつけちゃってごめんね」

穂乃果「ほら、雪穂も」

雪穂「…………ごめんなさい」

希「解ってくれたんならええよ」

海未「一件落着……ですね」

ことり「……海未ちゃぁん」

海未「どうしました、ことり?」

ことり「ことり、まだ眠いから添い寝して欲しいなぁ」

海未「……今の会話で、何か思うところは無いんです?」

ことり「ことりは難しいお話わからないもん」

ことり「えへへ、早く寝ようよぅ」ギュゥ

海未「……全く、貴女という人は」クスッ

希「まるで赤ちゃんみたいやね」

雪穂「ことりさんに失礼ですよ」フフッ

穂乃果「ふふ、でもよかった。皆が仲直りーー」

ナキタイトキーモアルヨー

海未「っ!?」

ことり「ひっ!?」

希「これって……穂乃果ちゃんの……!?」

穂乃果「……違う、穂乃果じゃない」

穂乃果「だって……これって……」

雪穂「…………」カチッ

From:Unknown
Subject:五人目
本文
高坂雪穂は死ぬ

雪穂「……私、ですか」

穂乃果「そんな……!」

海未「っ……何人殺せば……気が済むんですか……!」

雪穂「…………っ」ブルブル

穂乃果「雪穂……」ギュッ

雪穂「お姉……ちゃん……」

穂乃果「大丈夫……大丈夫だよ……」

雪穂「っ……ぁ……」ポロポロ

希「…………皆、今から言うことをよく聞いて欲しい」

海未「希?」

希「今からは個人行動はなしや」

希「ずっと皆で団体行動をしよう」

雪穂「……でも」

希「でも、はなしや」

希「一人になったら確実に殺されてしまう」

希「もう、絶対に犠牲者は出さへん」

海未「希」

希「……解っとる」

希「三人には辛いかもしれへんけど、推理の話とかも皆がおるところでさせてほしい」

希「……許してくれる?」

穂乃果「……もちろんだよ」

穂乃果「今まで、ずっと希ちゃんと海未ちゃんにばかり頼ってきちゃったし」

穂乃果「穂乃果たちも、ずっと逃げてばっかりじゃいられない」

雪穂「……もう、そんなことは言っていられませんからね」

ことり「…………」

希「ありがとうな、皆」

希「本当は、全部うち一人で考えられればええんやけどね」

海未「……あまり気負いすぎないでください」

海未「希は十分頑張ってくれています」

希「……うん」

希「それじゃあ、早速始めさせてもらうで」

希「まず今回のメールやけど、ちょっと気づいたことがない?」

穂乃果「気づいたこと?」

雪穂「……人数、ですか?」

希「そうや。五人目ってことはつまり……」

海未「絵里と亜里沙は生きている……?」

希「うん、恐らくは……ね」

ことり「どういうこと?」

海未「……今までに死んだのは『花陽』、『凛』、『真姫』、『にこ』です」

海未「もしも絵里と亜里沙が殺されているのなら、雪穂が受け取るメールは『七人目』になるはず」

海未「つまり、絵里と亜里沙はまだ生きているということです」

雪穂「でも……犯人が嘘をついてる可能性もありますよね」

海未「そうですね……けど、その可能性は低いと思います」

雪穂「どうしてですか?」

希「手紙……かな」

海未「はい」

海未「絵里は亜里沙の手紙を見て自分から出て行きました」

海未「何処に行ったのかはわかりませんが、なんらかの確証があっての行動でしょう」

海未「夜中に出て行った絵里を偶然見つけて殺すのは難しいはずです」

雪穂「そして、手紙を置ける立場にあった亜里沙も無事……ってことですか?」

海未「はい、そういうことです」

希「あくまでも多分……やけどね」

海未「……そうですね。ですが、もし生きているのなら、何かを知っているはずです」

雪穂「そうですね……犯人が解っているみたいな書き方でしたし」

希「だとしたら、皆を殺した方法も解ってるんやろか」

海未「にこ以外の……三人ですよね」

穂乃果「…………」

雪穂「やっぱり、マスターキーでもないと無理ですよ」

海未「ですが……マスターキーを持っている可能性があったのは真姫だけです」

海未「その真姫は……犯人に殺されています」

雪穂「それは……」

希「……共犯」ボソッ

海未「え?」

海未「希……それは」

希「……真姫ちゃんが誰かの共犯なら、可能性はある」

穂乃果「で、でも、真姫ちゃんは……」

希「仲間に裏切られたかもしれへん」

海未「……確かに、その可能性はありますね」

海未「ですが、それには一つ疑問があります」

希「なんや?」

海未「犯人の狙いが皆を殺すことなら、どうして真姫だけを殺したんですか?」

希「……確かに、えりちとにこっちも一緒に殺せたはずや」

海未「それに、共犯なら真姫のことを殺す理由もありません」

希「……そうやな」

希「やっぱり、何処まで行っても想像からはでられへんか」

希「手がかりがもう少しあれば……」

希「ああもう、犯人は一体何が目的なんや!」

海未「…………」

雪穂「…………」

ことり「…………」

グゥゥゥゥゥ

海未「…………」チラッ

穂乃果「……あ、あはは」

海未「穂乃果といい、ことりといい、貴女たちは……」

雪穂「……姉がご迷惑をかけます」

ことり「こ、ことりは悪くないもん」

希「……ふふっ、まあまあ」

希「あんまりうんうん考えてもいいアイディアなんてでんよ」

希「気分転換に、朝ごはんでも食べようや」

穂乃果「うん……でも、大丈夫かな?」

希「皆で行動する分には大丈夫や」

希「それに、どっちにしろここにずっと篭るなんてできへんしな」

海未「そうですね……念のため、ご飯も皆で作りましょう」

希「そうやな……雪穂ちゃんも、皆と一緒におってな?」

雪穂「……はい」

希「そうと決まれば、皆、移動するで」

スタスタスタ

希「(なぁ、海未ちゃん)」

海未「(……なんですか?)」

希「(海未ちゃんは……うちのことを軽蔑した?)」

海未「(…………貴女の行動は、間違ってないと思いますよ)」

希「(そっか……ありがとうな)」


ーーー
ーー

ーーーー食堂前

ガラガラガラ

穂乃果「それにしても、まさかガラガラするやつがあるなんて……凄いよね」

雪穂「お姉ちゃん……恥ずかしいから配膳台って言って」

穂乃果「あはは、ごめんね」

海未「というか、今までにも見たことあるでしょう」

穂乃果「そ、そうだっけ」

希「…………」

希(料理の最中は誰も怪しい行動をしてなかった)

希(だから、あの料理に毒が仕込まれていることはない)

希(食器も全部洗い直したし……ね)

希(……全く、うちも最低な人間やな)

希(あんな話をした後に、皆のことを疑っとるなんて)

希(あの手紙の暗号の続き……同じように訳すと『よるにはなれごやにきて』になる)

希(おそらく、亜里沙ちゃんはえりちに何かを伝えようとしてる)

希(そして、もしこれが犯人に伝われば、二人の居場所がばれてしまう)

希(だからうちは、手紙の後半部分については話さなかった)

希(亜里沙ちゃんの話を聞いたえりちが、きっと何か手をうってくれるはず)

希(そしてうちが今するべきは、雪穂ちゃんを……皆を守ること)

希(疑ってる皆を守るなんて……自分でも矛盾しとると思う)

希(でも、うちにはこうすることしかできない)

希(もう……誰かが死ぬのは嫌なんや)

ガチャ

海未「それじゃあ、各自自分の料理を持っていってください」

穂乃果「雪穂の料理持ってあげようか?」

雪穂「そんなこと言って、お姉ちゃん落としちゃうじゃん」

雪穂「自分でやるからいいよ」

穂乃果「そんなぁ……」

ことり「……海未ちゃんの料理」

海未「自分で運ぶから大丈夫ですよ」

ことり「……むぅ」

希「ふふ、皆楽しそうやな」

希(怖いはずなのに、皆を不安にさせないために皆が頑張っとる)

希(本当にええ子たちや)

穂乃果「それにしても……なんで食堂に人形が飾ってあるんだろうね?」

雪穂「お金持ちの間では、そういうのが流行りなんじゃないの?」

希(人形……か。確かにフランス人形みたいなのがたくさん……)

希(あれ、なんや、あの黒い線みたいなの……人形の中から……)

希(どんどん……伸びて……!)

雪穂「それにしても、やっぱり美味しそうですね」カチャン

海未「皆で一緒に作ったんです、美味しいに決まってますよ」

希「っ!? 雪穂ちゃん! 椅子を引いたらあかん!」ダッ

雪穂「えっ?」スッ

ピン

ヒュッ




グヂュ

ピチャッ

雪穂「ぁ……ぁ……」

穂乃果「え……?」

海未「なっ!?」

ことり「…………っ」

雪穂「どう……して……」

雪穂「どうして……庇ったんですか……」

雪穂「希さん……!」

希 ポタポタ

希「ふふ……予告が狂ったな……ざまぁみろや……」

雪穂「希さん……なんで……」

雪穂「私は……希さんのことを……犯人扱いして……」

雪穂「それなのに……!」

希「……嫌やったんや」

雪穂「え……?」

希「自分の周りで、人が死ぬのが」

希「誰も助けることができない……無力な自分が」

海未「……まさかボウガンの矢が飛んでくるなんて」

海未「希、直ぐに止血を!」

希「……もうええよ、助からんのは自分が一番解っとる」

海未「ですがっ!」

希「……ごめんな、海未ちゃん。うちは……ここまで……みたいや」

海未「…………っ」

希「皆のこと……頼む……で……」

皆に看取られながら、希は眠るように息を引き取った。

胸にはボウガンの矢が突き刺さり、赤い薔薇を咲かしている。

しかし、雪穂を守れたからか、はたまた犯人の予告を狂わせられたからか、彼女の口元は少しだけ綻んでいた。

今回はここまで

海未「希……」

ことり「…………っ」ギュゥ

雪穂「私の……せいで……」

雪穂「私がもっとしっかりしていたら……希さんは……っ」

雪穂「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

雪穂「ごめんなさい、ごめんなさい!」ポロポロ

穂乃果「雪穂……」

雪穂「お姉……ぐすっ……ちゃん……」

雪穂「私……私……っ」

穂乃果「……ごめんね」ギュッ

雪穂「…………ぁ」グスッ

海未「…………」

海未「移動、しましょう」

穂乃果「でもーー」

海未「ここは危険です」

海未「……希の死を無駄にしてはいけません」

海未「解りますね?」

穂乃果「…………うん」

穂乃果「雪穂……立てる?」

雪穂「ひぐっ……うん……っ」

穂乃果「ほら、穂乃果に掴まって」

雪穂 ギュッ

穂乃果「リビングに戻るの?」

海未「……いえ、罠が仕掛けられていた以上、あそこは安全とは言えません」

海未「私の部屋に行きましょう」

穂乃果「……そうだね」

海未「……その前に」

スタスタスタ

海未 スッ

海未「ごめんなさい、希」

海未「何かの手掛かりになるかもしれないので……真姫の携帯、お借りします」


ーーー
ーー

ーーーー海未の部屋

カチャリ

キィ

海未「……飲み物を用意しますので、皆は先にくつろいでいてください」

穂乃果「うん……ありがとう」

穂乃果「ほら、雪穂」

雪穂「……ぐすっ」

ことり「……………」

コトン

海未「お茶しかありませんでしたが、大丈夫ですよね」

海未「落ち着きましたか、雪穂?」

雪穂「はい……ありがとうございます」

穂乃果「本当に大丈夫なの? 無理しなくても……」

雪穂「ううん、本当にもう大丈夫だよ」

雪穂「ずっと泣いてても……希さんは返って来ないんだから」

穂乃果「雪穂……」

雪穂「それに……今回の事件で、犯人が解ったしね」

穂乃果「え?」

海未「なっ!?」

ことり「…………」

穂乃果「犯人が……解ったの?」

雪穂「……うん」

海未「誰なんですか?」

雪穂「……解らないんですか?」

海未「え?」

雪穂「……すいません、少し八つ当たりしてしまいました」

雪穂「……私は、希さんを……皆を殺した犯人を許しません」

雪穂「それが例え……大切な友達であっても」

雪穂「絶対に許さないからね……亜里沙!」

穂乃果「雪穂、一体何を……?」

海未「そうですよ、亜里沙が犯人なはずありません」

雪穂「……それがあるんです」

海未「どういう、根拠ですか?」

雪穂「……私を殺すため罠ですよ」

穂乃果「どういうこと?」

雪穂「私たちは、希さんの提案で皆で行動をしていました」

雪穂「最後にご飯を食べたのは、絵里さんがいた時」

雪穂「それから朝ご飯を食べる時までに、食堂に罠を仕掛けるなんて、この中の誰にもできませんよ」

雪穂「つまり、亜里沙の残したメッセージは嘘だったということです」

海未「で、ですが、それだけで亜里沙を犯人にするのは……」

雪穂「しっかりしてください海未さん!」

雪穂「本当はもう解ってるんじゃないんですか!?」

雪穂「それとも信じたくないだけじゃないんですか!?」

雪穂「この島には私たち以外いないんですよ!?」

雪穂「花陽さん、凛さん、真姫さん、にこさん……そして希さんは死んでしまいました」

雪穂「そして犯人は私たちじゃない」

雪穂「それならもう、亜里沙と絵里さんしかいないじゃないですか!」

雪穂「そうですよ……絵里さんが共犯なら、真姫さんが殺されたのも納得できます」

雪穂「犯人が部屋の中にいたのなら、密室でもなんでもありせんもんね」

海未「……確かにそれなら納得できます。ですが……」

雪穂「ですが、なんですか?」

雪穂「『亜里沙はそんなことができる子じゃない』なんて台詞はいりませんよ?」

雪穂「もし違うというのなら、説明してみてくださいよ」

雪穂「犯人が誰なのか、どうやって皆を殺したのか」

海未「…………っ」

雪穂「亜里沙がもし襲いかかってきたら、私は刺し違えてでも亜里沙を殺します」

雪穂「お姉ちゃんを守るために……皆の仇をとるために」

穂乃果「雪穂……」

雪穂「海未さん、貴女はどうなんですか?」

雪穂「もしも亜里沙に襲いかかられたら、躊躇いなく殺せますか?」

雪穂「人殺しになれますか?」

海未「…………わ、私は……」

ことり「できるよ」

海未「え?」

ことり「海未ちゃんは亜里沙ちゃんを殺せるよ」

ことり「だって、海未ちゃんはことりのことを守ってくれるんだもん」

ことり「そのためだったら、懐いてくれてた女の子の一人、簡単に殺せるよね?」

海未「こ、ことり……」

ことり「ねぇ、海未ちゃん……おねがぁい」

海未「っ!?」

海未「ず、ずるい……ですよ……ことりは……」

海未「私は……亜里沙を……」

海未「…………」

ことり「……安心して、海未ちゃん」

海未「……え?」

ことり「海未ちゃんは優しいもんね。だからさ……」

ことり「もし海未ちゃんができなかったら、ことりが亜里沙ちゃんを殺してあげる」

ことり「殺しちゃった罪悪感で、ことりがおかしくなっちゃうかもしれないけどね」

海未「ことり……貴女は……!」

ことり「ふふっ」

ことり「海未ちゃん……海未ちゃん……」ギュッ

穂乃果「……こんなの、おかしいよ」

穂乃果「私たち……皆仲良しだったじゃん」

穂乃果「それなのに……殺すなんて……」

雪穂「……それなら、おとなしく殺されるの?」

穂乃果「それは……」

雪穂「……安心して、お姉ちゃんは私が守ってあげるから」

雪穂「何も心配しなくていいよ」

穂乃果「…………っ」

穂乃果「ごめん……ちょっとトイレ……」

スタスタスタ

パタン

雪穂「……なんとかしてあの二人の居場所をつきとめないといけませんね」

雪穂「海未さんは心当たりはありますか?」

海未「……ありません」

雪穂「そうですよね、手がかりがありませんから」

雪穂「だけど、きっと館の何処かに潜んでいるんだと思います」

海未「……ですが、私と希が絵里を探した時は、誰もいませんでしたよ?」

雪穂「きっと鍵の掛かってる部屋にいたんですよ」

雪穂「先に鍵を持ち出しておけばいいだけですし」

海未「そう……ですね」

海未「…………」

海未「雪穂、貴女は平気なんですか?」

雪穂「何がですか?」

海未「亜里沙を……その……」

雪穂「…………」

雪穂「……平気なわけ、ないじゃないですか」

雪穂「人を殺すのだって怖いのに……それが大切だった友達……なんて……」

海未「…………」

雪穂「でも、私がやらないと……お姉ちゃんが……!」

雪穂「それだけは絶対に嫌なんです!」

海未「雪穂……貴女はそこまで穂乃果のことを……」

雪穂「……喧嘩だってしますけど、一人しかいない、私のお姉ちゃんですから」

雪穂「だから……何をしてでも守ーー」

穂乃果『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!??!』

ドコドコ

バタン

雪穂「お姉ちゃん!?」

海未「ほ、穂乃果!? どうしたんですか、そんなに慌ててでてきて……」

穂乃果「あ……あ……!」

海未「穂乃果?」

穂乃果「嫌っ!」バシッ

海未「っ!?」

穂乃果「はぁ……はぁ……」

カチャリ

キィ

タタタタタタタタタタタタタタ

雪穂「お姉ちゃん!? 何処にいくの!?」

海未「待ってください! 穂乃果!」

タタタタタタタタタ

バタン

カチャリ

雪穂「部屋の中に!?」

海未「くっ……穂乃果! どうしたんですか!」ドンドンドン

雪穂「お姉ちゃん、出て来てよ!」

穂乃果『嫌!』

海未「そうやって何人も死んでしまっているんですよ!?」

雪穂「そうだよ、皆でいた方が安全だよ!」

穂乃果『そんなこと言って、穂乃果を安心させて殺すつもりなんでしょ!?』

雪穂「違う! 私はそんなことしない!」

雪穂「どうして解ってくれないの!?」

穂乃果『うるさい! 早く向こうに行ってよ!!』

雪穂「お姉ちゃん……」

海未「…………」

海未「雪穂、一度部屋に戻りますよ」

雪穂「嫌です! そんなことしたら、お姉ちゃんが!」

海未「このままここにいたら、逆に穂乃果を追い詰めるだけです」

雪穂「で、でも!」

海未「追い詰められた人がどんな行動をとるか……忘れたんですか?」

雪穂「っ!?」

雪穂「……解り、ました」

海未「……ありがとうございます」

海未「穂乃果……解ってると思いますが、私たち以外の人が来ても絶対に開けないようにしてください」

海未「それと、これだけは覚えておいてください」

海未「私も……雪穂もことりも……皆、貴女のことを大切に思っています」

海未「ですからーー」

穂乃果『私に関わらないで!!』

海未「穂乃果……」

海未「…………」

海未「……部屋に戻りましょう」

雪穂「……はい」

スタスタスタ

ーーーー海未の部屋

海未「…………」

雪穂「…………」

ことり「…………」

海未「……あんなことを言ってしまいましたが、本当に正しいんでしょうか」

海未「このままずっと穂乃果が部屋の中にいるのなら……きっと危害は加えられないはず」

海未「ですが……そうやって死んでしまった人も……」

海未「かと言って、無理やり踏み込むわけにも行きませんし……」

雪穂「…………」

雪穂「海未さん」

海未「どうしました?」

雪穂「やっぱり私、お姉ちゃんの所に行きます」

海未「ですが……」

雪穂「解ってます、私の言葉は多分お姉ちゃんには届きません」

雪穂「もしかすると、逆効果になってしまうかもしれません」

雪穂「でも、それでも、お姉ちゃんを一人にしたくないんです」

雪穂「側にいてあげたいんです」

海未「雪穂……」

海未「……解りました」

海未「穂乃果のことを……お願いします」

雪穂「……はい」

海未「私はもう一度、館の中を探索してみようと思います」

海未「ことりは……」

ことり「ことりは海未ちゃんと一緒だよ」

海未「……了解です」

海未「雪穂、これを持っていってください」

雪穂「これは……ナイフですか?」

海未「はい」

海未「本当は……こんな物を持って欲しくはないのですが……」

雪穂「…………ありがとうございます」

海未「穂乃果のこと……お願いします」

海未「気をつけて」

雪穂「……はい」

雪穂「海未さんとことりさんも気をつけてください」

雪穂「それじゃあ、お姉ちゃんが心配なので先に行かせてもらいます」

海未「はい、私たちも準備ができたらすぐに行きます」

スタスタスタ

カチャリ

キィ

パタン

海未「……ことり、準備はいいですか?」

ことり「うん、大丈夫だよ」

海未「それじゃあーー」

トードーケーマホウーエガオノマホウー

海未「え!?」

ことり「ひっ!?」

ことり「う、うう海未ちゃんの携帯がっ!?」

海未「……違います、これは……」

海未「真姫の……携帯」

海未「…………」カチリ

From:ママ
Subject:調子はどう?
本文
皆と仲良く過ごせてるか心配になっちゃってメールしちゃいました♪

海未「……これは、真姫のお母さんからのメールみたいですね」

ことり「うん……なんで届いたんだろう」

海未「わかりません。ですが、嫌な予感がします」

ことり「うん……」

海未「……いえ、考えても仕方ありませんか」

海未「ことり、外にーー」

雪穂『あああああああああああああああ!??!?!?』

海未「っ!?」

海未「今の……声……」

ことり「雪穂……ちゃん」

海未「……ことり、私の後ろに」

ことり「……うん」

スタスタスタ

海未「…………」

グチュグチュ

『……! ……!』

海未「何の……音ですか」

ことり「…………」

海未「開けますよ」

キィ

扉の先にあったのは凄惨な風景。

『姉』を守ると誓った『妹』に馬乗りになって刃物を執拗に振り下ろす『姉』。

赤いちゃんこを羽織り、呪いの言葉を吐きながら、永遠にその作業を繰り返す。

まるで百年来の怨みを晴らすかのように。

今回はここまで

花陽 着信:孤独なヘブン 鍵開 無残に血塗れで横たわり 死体消失

凛  リンリンリンガベー 鍵開 ベランダ柵縛り&首/胴(ドア連動か) 放置(海鳥被害)

真姫 着信音は未記(後に冷火傷の着信音) 処方箋袋所持を目撃される 密室
   首に条痕 絵里・にこと同室だった メールが一件消される

にこ 明確な殺害予告は無し(?) 包丁で胸を刺し海へ 自殺か 直前に発狂

亜里沙 コンパクトナイフを所持 何かを拾い、直後姿をくらます

    海未に頼まれ部屋からリビングへ荷物を運んだ(?)
    自室に置いていった暗号の宛先は「お姉ちゃんへ」

絵里 夜中に姿を消す 別荘内の鍵部屋以外の所には姿無し 外か?

希  暗号の後半を安全面から秘匿 庇いのため予告なし

雪穂 ナキタイトキーモ 姉妹で守り合うと固めてのこれである。予告上では五人目
   亜里沙犯人説を唱える ナイフを持ち穂乃果のもとへ

穂乃果 携帯を気にする様子を見せる
海未と希が絵里探索に行った後帰った海未の首を絞める
    トイレと言って席を外した後急変 雪穂を殺害か

つはのきひもいふおげきう。→そのなかにはんにんがいる。
3.1 4 1 5 9 2 6 5 3 5 8 
あいまへぬをづりふけの。→よるにはなれごやにきて。
9 7 9 3 2 3 8 4 6 2 6 

別荘(無人島):冬 固定電話は不通 近くに住みづらい小屋(懲罰房?)
携帯は圏外(基地局は見えづらい場所に設置)
真姫の携帯に真姫母からのメールが届く

部屋配置図
3F
|希|絵里●|亜里沙|真姫|にこ|
2F
|花陽|凛|ことり|海未☆|穂乃果★|雪穂|

●・・・絵里にこ真姫 (にこ真姫はにこ部屋で二人会談有)
   この部屋のグループのみ翌朝に20分は寝坊
☆・・・海未ことり亜里沙 ★・・・希穂乃果雪穂


見にくいだろうし見落としあるし
こんなの自己満で迷惑だろうけどスマン

穂乃果「死ね!死ね!」グチュグチュ

海未「穂乃果……何を……して……」

ことり「ひっ……!?」

穂乃果「死ね!」グチュリ

海未「っ……穂乃果! 止めなさい!」ガシッ

穂乃果「離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

穂乃果「こいつが! こいつが!!」

海未「っ……はっ!」グイッ

カランカラン

穂乃果「……はぁ……はぁ」

海未「……落ち着いてください、何があったんですか」

穂乃果「……ふふっ」

穂乃果「あはははははははははははははははははははははははははは!!!」

海未「っ!?」

穂乃果「やったよ海未ちゃん!」

海未「何を……ですか?」

穂乃果「殺したんだよ! 犯人を!」

穂乃果「皆の仇をとったんだよ!!」

海未「犯人って……まさか……」

穂乃果「うん、こいつだよ」ニコッ

穂乃果「すっかり騙されてたよ、全然疑ってなかったもん」

穂乃果「穂乃果を守るなんて調子のいいこと言って……ざまあみろ、ははっ」

ことり「海未……ちゃ……ん」ブルッ

海未「……本当に、雪穂が犯人だったんですか?」

穂乃果「うん、そうだよ。だから安心して、二人とも」

穂乃果「もうこれで殺される心配はないからさ」

穂乃果「あははははは!」

ことり「…………」


…………ギ

海未「……ことり、お風呂の用意をしてあげてください」

海未「穂乃果をこのままにしておくわけにはいきません」

ことり「うん……海未ちゃんは?」

海未「私はリビングに行って着替えを持ってきます」

ことり「で、でも……罠は?」

海未「雪穂が犯人であるなら、罠なんて仕掛ける暇はありません」

海未「……安心してください、直ぐに戻りますから」

海未「少しの間、穂乃果をお願いしますね?」

ことり「……うん」

海未「……ついでに、この刃物も没収ですよ」スチャ

スタスタスタ

スタスタスタ

海未「……確か、こちらのほうから……」

海未「…………」

海未「っ!?」

海未「貴女は……!」

ことり「……穂乃果ちゃん、一度お部屋に戻ろう?」

穂乃果「あはは……ははっ」

ことり「…………っ」

ことり「ことり、お風呂入れてくるね……」

スタスタスタ

ザァァァァァァ

ことり「……どうして穂乃果ちゃんはあんなことに?」

ことり「真姫ちゃんの携帯にメールが来たのと同じタイミングで、だよね……」

ことり「…………」

ことり「そういえば、真姫ちゃんの着信音ってにこちゃんの曲だったよね」

ことり「それじゃあ、あの時聞こえた真姫ちゃんの曲って……にこちゃんの着信音だったってこと?」

ことり「……海未ちゃんに教えないと」

ことり「……あれ?」

ことり「それじゃあ……どうしてあの時ーー」

ワンデーインザレーインワンデーインザシャイン

ことり「っ!?」

ことり「い、今のって……」

タタタタタ

ことり「穂乃果ちゃん!?」

穂乃果「…………」

ことり「大丈夫? 何があった……の?」

穂乃果「…………」

ことり「穂乃果……ちゃん?」

穂乃果「…………あはっ」カチャリ

ことり「それ……雪穂ちゃんの……ナイフ……」ブルッ

ことり「まさか……!?」

穂乃果「……死ね」ヒュッ

ことり「きゃっ!?」サッ

穂乃果「死ね! 死ね!」ヒュヒュッ

ことり「いや……いや!」サッ

ことり「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ダッ

タタタタタタタタタ

ことり「なんで!? なんでことりは追われてるの!?」

ことり「犯人は雪穂ちゃんじゃないの!? もう殺される心配はないんじゃないの!?」

穂乃果「止まれ!! 殺してやる!!」

ことり「ひっ!?」

ことり「捕まったら……殺され……」

ガッ

ことり「……え?」

バタン

ことり「ぅっ!?」

ことり「し、しまっーー」

穂乃果「つーかまーえた」

ことり「ぁ……ぁぁ……!?」

穂乃果「あはははは! 相変わらず間抜けだね!」ガシッ

ことり「っ……離して……!」

穂乃果「離すわけないでしょ! ことりちゃんが全部悪いんだから!」

ことり「違う……ことりは何も……」

穂乃果「あっそう、言い訳はどうでもいいよ」

ことり「助けて……」

穂乃果「死ね!」ヒュッ

ことり「海未ちゃん!!!」



海未「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ドカッ

穂乃果「あぐっ!?」ドサッ

ことり「海未ちゃん!」

海未「逃げますよ! ことり!」

ことり「うん!」

穂乃果「っ……待て! 待てぇぇぇぇぇぇ!!!」

タタタタタタタタタタ

海未「っ……凄い勢いで追ってきますね」

ことり「……はぁっ……はぁっ」

海未「……ことり! あの部屋に!」

ことり「うん!」

キィ

バタン

カチャリ

海未 ハァハァ

ことり ハァハァ

海未「……大丈夫ですか、ことーー」

ことり「海未ちゃん!」ギュッ

ことり「何処いってたの!? ことり殺されちゃいそうだったんだよ!?」

ことり「守ってくれるって……言ってたのに……」グスッ

海未「……申し訳ありません」

ことり「本当に……ぐすっ……怖かったんだからぁ……」ギュゥゥ

海未「っ!」

ことり「え……?」

海未「すいません……少し痛みました……」

ことり「どうしたの……海未ちゃ……」

ことり「…………」

ことり「……血?」ペチャ

ことり「海未ちゃん……腕、怪我してるの?」

海未「……はい」

ことり「な、なんで? 罠があったの?」

海未「……違います」

ことり「それじゃあ……どうして……」

海未「……いたんです」

ことり「え?」

海未「生きて、いたんです」

ことり「誰……が?」






海未「…………花陽が」

ことり「嘘……」

海未「……嘘ではありません。さっき、私は花陽に会いました」

海未「最初は見間違いかと思いましたが……どこをどうみても花陽で」

海未「私が近づくと、突然刃物で切りかかってきて……」

ことり「そんな……」

ことり「それじゃあ、私たちが見た花陽ちゃんの死体はなんだったの……?」

海未「……恐らくですが、死んだふりだったんだと思います」

ことり「でも、そんなので……」

海未「はい……ただ死んだふりするだけでは、おそらくばれてしまうでしょう」

海未「ですから、花陽は共犯者を使ったんですよ」

ことり「……誰を?」

海未「凛です」

ことり「凛ちゃん?」

海未「はい。凛が花陽が死んだと皆に思わせるように演技をしたんです」

海未「あの時……花陽に触れて、直に死んだのを確かめたのは凛だけですからね」

海未「そして、花陽が犯人なら全て説明がつくのです」

海未「凛が共犯なら、仲間である花陽には扉を開きます」

海未「真姫も死んだはずの花陽から連絡が来れば、内緒で部屋の中に招きいれるかもしれない」

海未「雪穂の時のボウガンも、彼女になら仕掛ける時間があります」

ことり「それじゃあ……亜里沙ちゃんの手紙はどういうことなの?」

ことり「『その中に犯人がいる』っていうのは?」

海未「おそらくですが、『その中』……つまり、『館』の中にいる、ということだと思います」

海未「きっと、亜里沙は見たんですよ……館の中にいた花陽を」

ことり「そっか……それだから花陽ちゃんの遺体は失くなって……」

ことり「…………」

ことり「どうしてこんなことしたんだろう」

海未「……解りません」

ことり「そう……だよね」

ことり「…………」クンクン

ことり「ねぇ……なんだか、煙くない?」

海未「え?」

海未「言われてみれば、なんだか煙が……」

海未「それに、変な音も……」

パチッ

海未「ま、まさか……!」

ことり「海未ちゃん! 窓を見てみて!」

海未「…………」スッ

海未「そんな……館が……燃えてる?」

海未「ことり、早くここから逃げーー」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!

海未「っ!?」

ことり「ひっ!?」

穂乃果『あはははははは!見つけた!!』

ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!

穂乃果『開けて! 開けてよ!! 開けろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』

ことり「ぁ……ぁ……」ブルブル

海未「……ことり、私の後ろに来てください」

ことり「…………っ」ギュゥ

海未「……穂乃果」

ドンドン!! ドンドン!!

ガタッ ドゴン

バタン!

穂乃果「ははっ……追い詰めた!」

海未「穂乃果……犯人は花陽です。一度落ち着いて話し合いましょう」

穂乃果「違う! 犯人は二人のうちのどっちかだよ!」

穂乃果「もしかすると共犯かもしれない!」

穂乃果「それなら……二人とも殺すしかないよね!?」

穂乃果「ははっ!」チャキ

海未「……っ、お願いです、穂乃果、目を覚ましてください……」

ことり「……海未……ちゃん」

海未「……解ってます。逃げ道はありませんからね」チャキ

穂乃果「ほら、やっぱり穂乃果を殺そうとしてる!」

海未「そんなつもりはありません。お願いです、話を……」

穂乃果「聞くことなんてない!!」

穂乃果「お前のせいで! 皆死んだんだ!」

穂乃果「殺してやる! 殺してやる!!」

ゴォォォォォォォ

ことり「海未ちゃん……火が!」

海未「くっ……もうここまで……!」

ガタン

ボオッ

海未「なんとか隙をついて……逃げますよ」

ことり「……うん」

穂乃果「あああああああああああああああ!!!」

穂乃果「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぁぇぇ!!!!」

タタタタタタタタタタ

海未「っ!?」

ことり「!」

ガラガラ

ギギギギギ

グラッ

穂乃果「っ!?」

グシャァァァァァァァ

パリィィィィィィィィィン!

穂乃果「かはっ!?」

海未「穂乃果!?」

ことり「穂乃果ちゃん!?」

海未「シャンデリアが落下するなんて……もう館中に火が……!」

ことり「……は、早く……助けないと……!」

海未「…………もう、無理です」

ことり「そんな……」

穂乃果「…………っ」パクパク

海未「……穂乃果?」

穂乃果「ごほっ、げほっ、えぐっ」

穂乃果「…………ね」

海未「え?」

穂乃果「死…………ね…………」ガクッ

海未「…………」

ことり「海未……ちゃん」

海未「逃げましょう、ことり」

海未「早くしないと……私たちも死んでしまいます」

ことり「……うん」

タタタタタタタタタタ


ーーー
ーー

タタタタタ

ギィィィィ

海未「ことり! 早く!」

ことり「うん!」

タタタタタ

ことり「はぁ……はぁ……」

海未「はぁ……はぁ……」

ことり「っ……海未ちゃん、館が!」

海未「そんな……」

ごうごうと大きな音を立てながら、炎はその勢いを増す。

僅かに作られた思い出、皆の遺体、全てを飲み込んだ炎は衰えることを知らない。

やがて館は原型を失い、全てを埋めるかのようにガラガラと崩れていくのであった。

今回はここまで

ゴォォォォォォ

ことり「館が崩れてく……」

海未「皆燃えてしまいましたね……」

ことり「……ねぇ、海未ちゃん、私たちどうなるの?」

ことり「穂乃果ちゃんも……雪穂ちゃんも……皆死んじゃって……」

ことり「私たちもこのまま殺されちゃうのかな……?」

海未「……そんなことにはさせません」

海未「ことりは、絶対に私が守ってみせます」

ことり「海未ちゃん……」

ことり「うん……そうだよね」

ことり「海未ちゃんがいれば、ことりは死なないもん……」

ことり「海未ちゃんさえいれば……」ギュッ

海未「ことり……」

ことり「えへへ、それで今からどうするの?」

海未「そうですね……花陽に遭遇しないように何処かに隠れましょう」

海未「迎えが来るまで生き残ることができたら……私たちの勝ちです」

海未「……絶対、生きて帰りますよ」

ことり「……うん」


ーーー
ーー

ババババババ

ことり「……? 何の音?」

海未「この音は……もしかして!?」

タタタタタ

海未「! ことり! 見てください!」

ことり「あれって……ヘリコプター?」

海未「そうです……恐らく警察の」

海未「館が燃えているのを見て他の島の人が通報してくれたんでしょう」

海未「私たちは助かったんですよ、ことり!」

ことり「ほん……とう?」

海未「はい! 行きますよ!」

タタタタタ

その後、二人は様子を見に来た警察のヘリに救助された。

中で軽い事情聴取を受け、念のために病院へと搬送される。

海未は腕に怪我をしていること以外に目立った怪我は無し。

しかし、ことりは違った。

外傷は無いものの、死と隣合わせだったストレス、親友に殺されそうになった恐怖、それらが原因となり精神を病んでしまう。

対人恐怖症ーー彼女はもう、誰かと楽しくお喋りすることはできなくなっていた……園田海未を除いて。

ーーーー病室

シュリシュリ

海未「ことり、林檎が剥けましたよ」

ことり「ありがとう、海未ちゃん」

ことり「あ、兎さんの形になってる!」

ことり「えへへ、流石海未ちゃん」

海未「たいしたことはありませんよ」

海未「ですが、喜んで貰えたのなら嬉しいです」

ことり「あーんして食べさせて欲しいなぁ」

海未「……もう、仕方ないですね」スッ

コンコン

ことり「っ!?」

ガチャ

看護婦「南さん、調子はどうですか?」

ことり「ぁ……ぁ……」ギュッ

海未「……少しですが落ち着いてきています」

看護婦「……そうですか」

看護婦「そうだ! 体温だけ測っちゃいましょう!」

看護婦「はい、体温計でーー」スッ

ことり「いやっ!!」バシッ

看護婦「っ!?」

カランカラン

ことり「来ないで……来ないで!」ブルブル

海未「……すいません、後程お知らせしますので……」

看護婦「……ええ、それではお願いします」

コツコツコツ

パタン

ことり「はぁ……はぁ……」

海未「ことり……大丈夫ですか?」

ことり「……海未ちゃん」

海未「どうしました?」

ことり「ことり達、本当に助かったの?」

海未「……もちろんですよ」

ことり「でも……ニュースでは無人島て見つかった遺体は7つって言ってたよね……」

ことり「館から6つ……小屋から1つ、亜里沙ちゃんが……」

ことり「にこちゃんは海の中……じゃあ、ことりと海未ちゃんを足したら……?」

ことり「全部で……10人」

ことり「1人……足りないよ……」

海未「……気にしすぎですよ」

ことり「そんなことない!」

ことり「だって、生きてると思ってた亜里沙ちゃんまで殺されちゃってるんだよ!?」

ことり「きっと……花陽ちゃんは何処かで隙を伺ってるんだ……」

ことり「ことりを……殺す……ための……」

ことり「嫌……死にたくない!」

ことり「死にたく……ないよぅ……」ポロポロ

海未「…………」

ギュッ

ことり「え……?」

海未「落ち着いてください、ことり」

海未「例え花陽がまだ私たちを狙っていたとしても、島から出る方法がありません」

海未「ですから、警察に捕まるの時間の問題です」

海未「解りますね?」

ことり「……うん」

海未「……今日はもう寝ましょう」

海未「そうすれば……落ち着きますよ」

ことり「……ことりが眠るまで、手を繋いで」

海未「……解りました」ギュッ

海未「お休みなさい、ことり」


ーーー
ーー

ことり「ん……」パチッ

ことり「ここは……そうだ……ことり入院してて……」

ことり「……海未ちゃん?」

ことり「海未ちゃん……どこ?」

ことり「真っ暗で……よく見えない……」

ことり「そこにいるの?」

シーン

ことり「…………」

コンコン

ことり「っ!?」

ことり「だ、誰……?」

コンコン

ことり「誰? 誰なの……?」

『……ちゃん』

ことり「え?」

ことり「この……声って……」

ことり「そんな……まさか……」



ことり「穂乃果……ちゃん?」

穂乃果『ことりちゃん……開けて?』コンコン

ことり「……嘘、穂乃果ちゃんは……ことりの前で……死んだはず……」

穂乃果『何言ってるの? 早く開けて……』コンコン

ことり「……じゃあ、今そこにいるのは……?」

穂乃果『ねぇ……開けてよ』

ことり「いや……帰って!」ブルブル

穂乃果『なんで? なんでそんなこ言うの?』

穂乃果『私たち友達でしょ? それなら開けてよ』

穂乃果『早く開けてよ……開けてよ!!』ドンドンドン

穂乃果『開けろ!! 早く開けろ!!!』ドンドンドンドン

ことり「ひっ!?」

穂乃果『ねぇ、なんで? なんでなの!?』



穂乃果『なんでことりちゃんだけ生き残ってるの!?』

ことり「っ……ぁ……」

花陽『そうですよ……本当に不思議ですよね』

ことり「花陽……ちゃん……」

花陽『貴女みたいに鈍臭い人が生き残ってるなんて』

凛『本当だよ……凛なんて』

ボトッ

凛『首が落ちちゃってるのにね』

ことり「あ……あ……」ガタガタ

真姫『だから、貴女もこっちに連れていってあげる』

にこ『皆と一緒になれるなんて、嬉しいでしょ?』

ことり「いや……いやだ……助けて……海未ちゃん……!」

ガシッ

ことり「ひっ!?」

亜里沙『困ったらすぐに海未さんに頼って……本当に情けない人ですね』

亜里沙『貴女がもっとしっかりしていたら、亜里沙は死なずにすんだかもしれないのに』

ことり「っ……」

希『ほら、ことりちゃんを入れて10人や』

雪穂『大丈夫、寂しくありませんよ』

絵里『皆……ずっと一緒だからね』

穂乃果『さぁ、ことりちゃんもおいでよ』

ことり「いや……」

ことり「いや……っ!」

ことり「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ガバッ

ことり「はぁ……はぁ……」

ことり「ゆ……め……?」

ことり「ぁ……ぁ……」ブルブル

海未「ことり……大丈夫ですか? 魘されていたようですが……」

ことり「っ……海未ちゃん」ギュッ

ことり「駄目……やっぱり怖いよ……」

ことり「お願い……ことりから離れないで……」

ことり「ずっと側にいてよ……!」

海未「ことり……」

海未「……解りました、ずっとことりの側にいますよ」

ことり「……本当? 本当に?」

海未「はい、本当です」

ことり「えへへ、ありがとう」

ことり「…………」

ことり「あのね、海未ちゃん」

海未「はい、なんですか?」

ことり「ことりね……ずっと海未ちゃんのことが好きだったの」

海未「え……?」

ことり「気づいてなかったでしょ?」

海未「……はい」

ことり「ふふ、海未ちゃんはにぶちんさんだもんね」

ことり「でも……そんなところも好きなの」

海未「…………」

ことり「……お返事は?」

海未「えっ?」

ことり「ことり、今告白したんだよ?」

ことり「お返事が欲しいなぁ」

海未「……言わなくてはいけませんか?」

ことり「うん……ちゃんと言葉で聞きたいから」

海未「もう、仕方ありませんね」

海未「私も……ことりのことが好きですよ」

ことり「海未ちゃん……」

ことり「嬉しい……ことり達、両想いだったんだね」

海未「はい……そうですね」

海未「…………」トサッ

ことり「ふぇっ?」

ギシッ

ことり「う、海未ちゃん!?」

海未「すいません……ことり。その……もう……我慢が……」

ことり「……海未ちゃんのえっち」

海未「駄目……ですか?」

ことり「……ううん、いいよ」

ことり「ことりの初めて……もらって?」

海未「ありがとうございます……それでは、目を瞑ってください」

ことり「……うん」ギュッ

海未「…………可愛いですよ、ことり」



















海未「殺してしまいたいくらい」

グチュ

ことり「ぁっっづぃぃぃぃぃっっあぁぁぁぁぁぁっつ!?」

海未「…………」

ことり「う、海未……ちゃ……ナイフ……ことりの……腕に……」

ピッ

ことり「ぎっ!?」

ことり「ぁ……痛い……」

ことり「痛い……痛い痛い痛い痛い痛い!」

ことり「なんで!? なんでこんなこと……」

海未「…………あはっ」

海未「なんで? 鈍いのですね」

海未「私が犯人だからに決まってるじゃないですか」

ことり「う……そ……」

海未「嘘ではありませんよ」

海未「私が皆を殺しました」

ことり「……あ、あはは、面白い冗談だね……」

ことり「でも、冗談なら……こんなに痛くしないで欲しかったな……」

海未「……ふふ」

ヒュッ

ことり「いぐっ!?」

海未「面白いですね、ことりは」

海未「腕を抉られて、体に切り傷を残されてもまだそれを現実として認めようとしない」

海未「必死に目をそらして自分を騙そうとしている」

海未「やっぱり……貴女は最高です!」

海未「貴女を最後まで残して本当に良かった!」

ことり「違う……」

海未「何が違うんですか?」

ことり「海未ちゃんは……犯人じゃない……」

海未「ふふ、どうしてそう思うんですか?」

ことり「だって……犯人は花陽ちゃんじゃ……」

海未「っ……くくっ……」

海未「あっはははははっはははははははははっはははっはははははは!!!」

海未「あんな推理を信じていたんですか!?」

海未「あんなものはデタラメですよ!」

ことり「じゃあ……花陽ちゃんは?」

海未「ことりも死んでいるところを見たでしょう?」

ことり「違う……無理だよ……だって、花陽ちゃんの部屋に……海未ちゃんは入れないはず……」

海未「入れますよ」

海未「だって、花陽に入れてもらったんですから」

ことり「え?」

ことり「どう……やって?」

海未「どうやっても何も、普通に部屋を訪ねただけですよ」

海未「『貴女を守りにきました』なんて台詞と一緒にね」

ことり「そんなので……開けるはずがない!」

ことり「だって……命を狙われて……」

海未「ええ、皆そう考えていたんでしょうね」

海未「花陽の気持ちも知らないで」

ことり「え?」

海未「花陽は不安だった……自分が殺されるんじゃないかと」

海未「花陽は助けて欲しかった……誰かに守ってもらいたかった」

海未「可哀想な花陽。誰かに気づいてもらえていれば……誰かが側にいてくれていたら……」

海未「殺人犯を……部屋の中に招くことはなかったでしょうに」

ことり「で、でも……花陽ちゃんが寝てたら……」

海未「不安に押しつぶされそうになってる花陽が簡単に寝られるわけないでしょう」

海未「それに……ちょっとだけ細工もしましたね」

ことり「え……?」

海未「花陽に不眠剤の入った飲み物を渡しておいたんですよ」

海未「市販のものですから効果は薄いですが……恐怖と合間って上手くいってくれました」

海未「貴女にも見せてあげたかった……ナイフを突き立てた時の花陽の表情を」ウットリ

ことり「じゃあ……凛ちゃんは?」

ことり「部屋に閉じこもってた凛ちゃんはどうやって殺したの!?」

海未「簡単な話ですよ、出てきてもらったんです」

海未「ちょっと挑発して……ね」

海未「ああ、少し嘘がありましたね」

海未「正確に言えば、凛を殺したのは私ではありません」

海未「穂乃果ですよ」

ことり「え……?」

海未「貴女も見たでしょう? 凛の首が飛ぶ瞬間を」

海未「あれは扉を開けると作動するように仕掛けておいたんですよ」

海未「だから、凛を殺したのは穂乃果です」

ピッ

ことり「ぎっ!?」

海未「これで納得できましたか?」

ことり「ぁ……真姫……ちゃん」

海未「真姫がどうかしましたか?」

ことり「真姫ちゃんなら……皆を殺せる……」

ことり「ずっと……死んだふりして……皆を騙して……」

ことり「そうだよ……合鍵も持ってるもん……やっぱり海未ちゃんは犯人じゃーー」

グチュ

ことり「ぎぃぃぃぃぁっっっっづっっつうぅぅぅっつづうぅぅぅぅ!?」

海未「まだ目が覚めないんですか?」

ことり「ぁ……ぁっ……だ、だって、海未ちゃんには真姫ちゃんが殺せなかったはず……」

海未「ええ、確かに私は真姫を殺してはいません」

海未「だって、真姫を殺したのはにこなんですから」

ことり「え……?」

海未「正確に言えば殺させた……になるんでしょうかね」

海未「私たちがにこの部屋の前で聞いた着信音……あれはにこの携帯から鳴っていたんですよ」

海未「真姫を殺すように指示したメールで……ね」

海未「全く、可愛い後輩を手にかけるなんて……最低な先輩です」

ことり「じゃあ……にこちゃんの手によって真姫ちゃんは何もわからないままーー」

海未「んっんっんー、ちょーっと違いますねぇ」

海未「突然襲われてほいほい殺されてくれれば誰も苦労はしませんよ」

海未「完全犯罪し放題です」

ことり「なら、どうやって真姫ちゃんを……」

海未「愛、ですよ」

ことり「え……?」

海未「気付いていませんでしたか? 真姫のにこに対する想いに」

海未「最高に狂った愛情に!」

ことり「なに……それ……」

海未「本当はですね、にこに真姫が殺せるとは思っていなかったんですよ」

海未「殺そうとして抵抗され、皆に犯人として突き出される」

海未「そういうものを期待していたんです」

海未「しかし、どうやら真姫は無抵抗のまま死んでいったようですね」

海未「絵里に気づかれないようにお膳立てまでして」

ことり「じ、じゃあ……にこちゃんが死んだのは?」

海未「ああ、あれも想定外ですよ」

海未「本当は真姫を殺したことを詰っていろいろしたかったのに……ちょっと脅しただけで自殺してしまいましたからね」

海未「まあ、涙を流しながら自殺する……なんて貴重な死に方を見せてもらいましたしよしとしてあげましょう」

海未「ああそれと、真姫が犯人だなんてこともありえませんよ」

海未「もしも真姫が犯人なら、花陽の遺体と一緒に姿をくらましているでしょうからね」

海未「死体の振りなんて、誰かが部屋に入って来たらどうするつもりですか」

海未「少しでも調べられたら簡単にばれますよ?」

海未「それが血塗れならともかく、外傷が少ない遺体ならなおさらです」

海未「実際、希が部屋に入って調べたようですしね……」

ことり「っ……ぁ……」ガタガタ

海未「もういいですか?」

ことり「亜里沙……ちゃん……」

海未「? 亜里沙がどうかしましたか?」

ことり「亜里沙ちゃんは……いつ殺したの?」

ことり「暗号を読んで……解読して……ずっとことりは海未ちゃんと……一緒だったよね?」

海未「……ああ、あの暗号ですか」

海未「あの暗号は私が書いたんですよ」

ことり「え……?」

海未「はぁ……少し考えれば解ることでしょう」

海未「亜里沙は離れ小屋の存在を知らなかったんですよ?」

海未「それなのに手紙に書けるわけないでしょう」

海未「もしも何かを調べていて見つけたとしても、その頃には希がにこの部屋の前にいるので見つかりますよ」

海未「っと、貴女は暗号の内容を最後まで知りませんでしたか」

海未「まあ、あれは私が絵里を誘き寄せるために書いたものだと思ってください」

海未「だいたい、本当に他の人に知られたくないならロシア語で書けばいいだけの話じゃないですか」

海未「ああ、ちなみに殺したのは夜ですよ」

海未「離れ小屋に行く絵里について行って……ね」

海未「目の前で亜里沙が殺された時の絵里の表情……思い出すだけでもゾクゾクしてしまいます」

ことり「亜里沙ちゃんは……どうやって……」

海未「呼び出したのか、ですか?」

海未「それは貴女なら解るんじゃないのですか?」

ことり「え?」

海未「荷物を取りに行った時、何か亜里沙に変わったことはありませんでしか?」

ことり「…………!」

ことり「何か……見つけて……」

海未「正解です。あれで亜里沙を離れ小屋まで誘導したんですよ」

海未「後は貴女の見たままです」

ことり「違う! 絶対違う! 海未ちゃんは犯人じゃない!」

ことり「死体だって一人足りてない! それに海未ちゃんは犯人に怪我をさせられてる……」

ことり「犯人は……絶対……花陽ちゃんだよぉ……」ポロポロ

海未「…………」スッ

ゴスッ

ことり「うっ!?」

ことり「ぁ……ぅぁ……」

海未「柔らかいお腹ですね」サスサス

海未「表情も……悲鳴も……やっぱり貴女が最高です」

ことり「ひっ……」

海未「それで、なんでしたっけ? 死体が足りてないんでしたか」

海未「凛を殺す時に花陽の遺体を使いましたからね」

海未「今頃魚と泳いでるんじゃないですか?」

海未「それと、腕に傷を付けてくれたのは絵里ですよ」

海未「ロープで縛って監禁してきたというのに……一体どうやって抜け出したんだか」

ことり「それじゃあ……どうしてことりに……花陽ちゃんって……」

海未「だって、そっちのほうがことりのショックが大きいでしょう?」

ことり「っ!?」

海未「これでもまだ、私が犯人じゃないといいますか?」

ことり「幽霊……」

海未「え?」

ことり「全部幽霊の仕業だよ……だって、携帯電話は繋がらなかったもん……」

ことり「そうだよ……海未ちゃんがおかしくなってるのもーー」

バシッ

ことり「いっ!?」

ことり「……痛い……よぅ……」

ことり「……許して……」

ことり「ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロポロ

海未「…………」

海未「皆の携帯電話が通じなかったのは、妨害電波を使ったからですよ」

海未「割と簡単に手に入るようだったので、つい買ってしまいました」

海未「助けを呼ばれたらせっかくの楽しい時間が終わってしまいますから」

海未「まあ、それだけなら基地局を破壊すればよかっただけのことなんですが」

ことり「それなら……なんで……」

海未「皆の恐怖を煽るために決まってるじゃないですか」

海未「もう質問はありませんね?」

海未「それではーー」

ことり「穂乃果……ちゃん」

海未「…………」

ことり「穂乃果ちゃんは……どうしておかしくなったの?」

ことり「そんな様子……どこにも……」

海未「感じられなかったんですか?」

ことり「え?」

海未「穂乃果はずっと一人で戦っていたんですよ」

海未「心の重圧に耐えながら」

海未「まあでも、結局耐えきれませんでしたけどね」

海未「実の妹を殺して、親友を襲ってしまうまでに狂ってしまった」

ことり「そんな……どうして……」

海未「……どうして?」

グチュッ

ことり「あっっっづぃぃぃっぎぎぃぃぃぃっっっづづっっつ!??!?」

海未「どうして!? 貴女達のせいに決まってるじゃないですか!」

海未「悲しい……苦しい……」

海未「そんな心の悲鳴に耳を傾けてあげることができない! 貴女達の!」

海未「貴女には解らないでしょう!? すぐに誰かに泣きついてしまう貴女には!」

海未「誰にも打ち明けられない人の悲しみが!」

海未「はぁ……はぁ……」

ことり「ひっ……ぐすっ……」

海未「……穂乃果には犯人として何度もメールを送っていたんですよ」

海未「不安を煽るように……一人で抱え込むように……」

海未「そして……雪穂を殺させました」

海未「まあ、本当は拒絶されて泣き崩れる雪穂が見たかっただけなんですけど」

海未「自分の妹を信じられなくなるくらい追い詰められていたんでしょうね」

海未「誰かさん達のせいで」

海未「証明終了ですよ、ことり」

海未「もう反論はありませんね?」

ことり「どう……して」

海未「? まだ何かあるんですか?」

ことり「どうして……こんな話をするの?」

ことり「どうして……こんなことをするの?」

ことり「酷い……酷すぎるよ……」ポロポロ

ことり「最低……だよ……」

海未「…………」

海未「ことり、人が最も素晴らしい表情をするのは何時だと思いますか?」

ことり「え……?」

海未「悲しい時……怖い時……死ぬ時……」

海未「どれも素晴らしいですが、これにスパイスを加えるとさらにいい表情をするんですよ」

海未「花陽を殺した時に、それに気付くことができました」

ことり「それって……」

海未「ええ、そうですよ」

海未「幸福が絶望に変わる瞬間」

海未「質問に答えましょうか、ことり」

海未「貴女の質問に答えていたのは、貴女の心の逃げ場を無くすため」

海未「どうしてこんなことをするか?」

海未「それは、貴女の絶望する表情が見たかったから」

海未「涙で顔をくしゃくしゃにして、恐怖に体を震わせる」

海未「今の貴女……すっごくいい表情をしていますよ」

海未「ねぇ、ことり、今どんな気持ちですか?」

海未「ずっと信じてきた人に裏切られた気持ちは?」

ことり「……いや」

海未「え?」

ことり「こんなの……絶対にいや!」

ことり「やっと海未ちゃんと恋人になれるって……ずっと待ってた恋が実るって……そのはずだったのに」

ことり「昔の海未ちゃんに戻ってよぅ……もう……痛いのはいや……」ポロポロ

海未「…………はぁ」

海未「この後に及んで自分の気持ちすら理解していないのですか?」

ことり「え……?」

海未「貴女が私を好きになったのは事件が始まってから」

海未「それも、自分を守ってもらうための生存本能として……ね」

海未「昔から好きだなんて、よくもまあ平気で嘘が吐けますね」

ことり「違う! ことりは本当に海未ちゃんのことがーー」

海未「貴女は事件の前に嫉妬したことがありましたか?」

ことり「っ!?」

海未「ありませんよね? 亜里沙が私にじゃれあってきても、貴女は何も感じなかったでしょう」

海未「さっさと目を覚ましたらどうですか」

ことり「いや……止めて……もう止めてよ!」

ことり「これ以上ことりの心を踏み荒らさないで!」

海未「踏み荒らしてなどいませんよ。ただ現実を教えてあげているだけです」

ことり「そんなのいらない!」

海未「入りますよ……一枚一枚、貴女の心の殻を剥いでいって」

海未「剥き出しになった柔らかい部分に……刃物を突き立てたいんです」

海未「こんな風にね!」

グチュ

ことり「がっ!?」

海未「ことりが悪いんですよ? 本当はことりが退院してから殺すつもりだったんですから」

海未「でも、少しの物音でも怯えることりのために防音の部屋が用意されて」

海未「ことりの世話が私にしかできないという理由で私まで同じ病室に入れられて」

海未「こんなにお膳立てされてしまったら……頂かないわけにはいかないじゃないですか!」

グチュグチュ

ことり「っ……あっ……!」

海未「さあ、次の手はまだですか?」

海未「足掻くのを止めたら死んでしまいますよ、ふふっ」

ことり「…………っ」

ペロッ

海未「っ!?」

ペロペロ

ジュプ

ことり「んっ……」

海未「……人の指を舐めて、何の真似ですか?」

ことり「奴隷に……なります」

ことり「海未ちゃんが気に入らなかったら……殴ってもいいから」

ことり「性奴隷にして……弄んでもいいから」

ことり「だから……殺さないでください」

ことり「海未ちゃん……お願い」

海未「お断りします」ニコッ

ことり「え……」

ことり「なん……で」

海未「一度断わってみたかったんですよね、貴女のお願い」

海未「ふふっ、こんな表情になるんですね、すっごくそそりますよ」

海未「それで、必殺のお願いが聞かなかったことりはどうするんですか?」

ことり「…………ぁ」ガタガタ

海未「……万策尽きたようですね」

海未「それじゃあ、死ぬまで鳴き続けてくださいね」チャキ

グチュ ズシャ

ことり「ぎっ! っぅあっ!?」

海未「その調子ですよ、ことり!」

ことり(痛い……痛い痛い痛い……!)


ゴスッ ドゴッ

ことり「ぐっ……あっ……」

海未「ほら、元気が無くなってきましたよ! もっと鳴いてください!」

ことり(ことり……このまま……殺されちゃうの?)


ズチュ ズチュ

ことり「づぁ! あっ……いっ!?」

海未「ぁぁ……なんて素敵な悲鳴なんでしょうか」

海未「声を聞いてるだけで達してしまいそうです……!」

ことり(嫌……そんなの絶対に嫌!)

ことり(ことりは……死にたくない!)

ことり(死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないし!!!)

海未「ふふ、それじゃあ今度は大事な部分をーー」

ことり「あああああああああああああああああああああ!!!」

バシッ!

海未「あぐっ!?」

カランカラン

ことり「はぁ……はぁ……」

ことり「海未ちゃん……すぐにことりからーー」

ドゴッ

ことり「かっ……あっ……」

海未「調子に乗るな」

ガッ ゴスッ ドカッ

ことり「ぁっ……かはっ!」

ことり「ぅ……ぁ……」グタッ

海未「全く、とんだ興醒めですよ」

海未「ナイフを拾わないと……」ギシッ

ことり(体が……重い……)

ことり(今が……チャンスなのに……)

ことり(何か……ないの?)

ことり(この状況を……どうにかできる……)

ことり(…………!)

ことり(あれ……は)スッ

ことり(お願い……届いて……!)

海未「……ああ、ここにありましたか」チャキ

海未「はぁ……面倒なことをさせてくれましたね」

海未「まあいいです、私は心が広いですから」ギシッ

海未「もう一度いい声で鳴いてくださいね?」

ことり「…………」

海未「黙っていては何も伝わりませんよ?」

海未「私が口を開けさせてーー」



グチャッ

パシャッ

海未「あ……かはっ……」

海未「どうして……貴女が……ナイフを……」

ことり「……っぁ」

海未「……その形……果物……ナイフ……」

海未「……ははっ、なんてつまらない幕切れ……」

ことり「ごめんなさい……ごめんなさい……」

ことり「ごめんなさい……海未ちゃん……」ポロポロ

海未(なんだか……だんだん体の力が抜けて……)

海未(これが……死ぬ……ということですか)

海未(聞いていたのとは違って、恐怖はありませんね……)

海未(どちらかといえば……安らぎが……)

海未(……なんだ、簡単なことだったんですね)

海未(私が本当に求めていたのは……)

ことり「ごめんなさい……ごめんなさい」

ことり「海未ちゃん……ぐすっ……ごめんなさい」

海未(先に殺そうとしたのは私なのに……どうして謝っているんでしょうか)

海未(……安心してください、ことり)

海未「ことりを……一人にはしませんから」

ことり「……え?」



グチャッ

ことり「あ……か……」

海未「ふふ……これで……おあいこですね」

ことり「い……や……」

ことり「死にたく……な……い」

海未(ああ……)

海未(ことりの罪悪感と死の恐怖に歪んだ表情……)

海未(凄く……愛おしい)

ことり「海未……ちゃ……」

海未「……不安に、ならないで……ください……」

海未「私が……ずっと側にいてあげますから」

海未「大好きですよ……ことり」

チュッ

次の日、病院内で二つの遺体が発見された。

抱き合うように重ねられた体。

その二人の体には痛々しくナイフが突き立てられている。

お互いに殺しあった……現場の状況からそう判断されたが、原因が解明されることはない。

館での出来事を知る人は誰もいなくなったーー警察の捜査は進まず、真相は藪の中。

こうして、人気スクールアイドル『μ's』を巻き込んだ殺人事件は幕を降ろした。

後に得体の知れないこの事件は、畏怖の念からこう呼ばれることになる。

『惨劇の館』

これで一旦終わり。こんな駄文に付き合って頂きどもでした。
次から未回収や死亡シーン書いてくから注意で。
来週は多分休む。

絵里と真姫の処方箋が気になるな
面白いし何度も見返してしまう
もしよければ、七不思議以外の過去作あったら教えて欲しい

Episode1:芽生え


海未「1,2,3,4……」パンパンパン

海未「…………」

海未「花陽、調子が悪いのですか?」

花陽「え?」ハァハァ

海未「今日はいつもよりテンポが遅れていますし、息が上がるのが早いですよ」

花陽「ご、ごめんなさい!」

海未「怒っているわけではありません。失礼します」ピトッ

海未「……少し熱がありますね」

海未「凛、申し訳ありませんが花陽を保健室に連れて行ってもらえますか?」

凛「うん、いいよ!」

凛「かよちん、行こ」

花陽「う、うん……」

スタスタスタ

絵里「よく気づいたわね、海未」

海未「いえ、このくらい当然ですよ」

海未「いつも皆の練習を見ていますので」

穂乃果「凄いよ海未ちゃん!」

真姫「私は全く気づかなかったわ。流石は海未ね」

希「海未ちゃんは謙虚やねぇ」

にこ「……ふん、自分の体調管理もできないなんて弛んでるわ」

真姫「何言ってんのよ、にこちゃんだってこないだ意地張って倒れそうになってたじゃない」

真姫「海未が気づかなかったら大変なことになってたわよ?」

にこ「あ、あれは別に……」

希「にこっちも意地っ張りやからなぁ……皆に恥ずかしい姿を見せんように頑張ってしまうんや」

希「しかもそんな時に限って頑張って隠そうとするからタチが悪い」

希「海未ちゃんはよく皆のこと見とるね」

絵里「そうね……海未、いつもありがとう」

海未「そんなに褒められると、少し照れくさいですね」

ことり「ねぇ、海未ちゃん」

海未「なんですか?」

ことり「どうして凛ちゃんを付き添いにしたの?」

海未「そうですね、この時間なら保健室に先生がいるので、治療の心得がなくても大丈夫だと思ったからです」

海未「その場合、病気の時には心細くなってしまうので、いつも一緒にいて元気付けてくれる凛が最適だと思いました」

絵里「……そこまで考えてたなんて、やっぱり凄いわね」

穂乃果「うんうん、海未ちゃんは気配りができて凄いんだよ」

希「お嫁さんに欲しくなってきたわ」

海未「はいはい、お喋りはここまでです」

海未「大会も近いんですし、七人で練習を続けますよ」

「「「「はーい」」」」


ーーー
ーー

ーーーー下校中

穂乃果「今日も練習疲れたねー」

ことり「うん、ことりももうへとへとだよぉ」

海未「二人とも弛んでいますよ」

海未「ラブライブの予選も近いのです、このくらいで弱音を吐いていてどうするんですか」

穂乃果「うう……海未ちゃんが厳しい」

海未「厳しくありません! ラブライブで優勝するのはそんなに簡単なことではないんですから」

穂乃果「それは解ってるよぅ……」

海未「それと穂乃果、明日提出の宿題はちゃんとやってあるのですか?」

穂乃果「うっ……」

海未「……やっていないようですね」

海未「いいですか、生徒会長たるもの、生徒の模範とならなくてはなりません」

海未「それが宿題をやってきませんでした、なんてことになっては、皆に示しがつきません」

穂乃果「そ、そうだけど……ちゃんと出してるからさ?」

海未「私の物を写してるだけでしょう!」

穂乃果「う、海未ちゃん、さっきから怒りすぎだよ」

海未「誰のせいですか……」

穂乃果「いいもん、明日はことりちゃんに写させてもらうから」

海未「少しは自分でやりなさい!」

ことり「まあまあ、海未ちゃん落ち着いて」

海未「ことりは穂乃果に甘すぎます!」

ことり「うーん、でもほら、生徒会長としてのお仕事もあるし……」

海未「それはことりも同じでしょう」

ことり「そうなんだけど……たまにはね?」

穂乃果「うう、ありがとうことりちゃん」ギュッ

ことり「えへへ~」

海未「全く貴女たちは……」

ーーーー園田家

園田母「それでは、今日はここまでです」

海未「ありがとうございました」

園田母「海未さん、最近動きが鈍っていますよ」

園田母「貴女は園田家の跡取りなんですから、もっとしっかりしてください」

海未「はい……申し訳ありません」

園田母「私は先に行くので、いつものように片付けをしてください」

海未「はい、解りました」

ーーーー海未の部屋

カキカキカキ

海未「……やっと少しずつ形になってきました」

海未「でもまだ完璧とは言えません……歌詞がおかしいと、皆に迷惑をかけてしまいますから」

海未「時間は……3時を過ぎたところですか」

海未「今日は夜遅くまで稽古がありましたからね」

海未「明日も朝早くから稽古とダンスの練習があるというのに……」

海未「はぁ……」

海未(辛い……)

海未(毎日毎日稽古と練習……弓道部にも顔を出さなくてはいけません)

海未(皆の健康管理もして、練習メニューも考えて……)

海未(最近は睡眠時間も少なくなっていますし……なんだか少しやつれた気がします)

海未(…………でも)

海未(誰も……気がついてはくれません)

海未(穂乃果も、ことりも、μ'sの皆も……家族も)

海未(いっそ泣いてみたら……気がついてもらえるのでしょうか?)

海未 ハッ

海未「何を……考えているのですか私は」

海未「今はラブライブも近い大切な時期」

海未「それなのにこんな弱音を吐いていてはいけません」

海未「全く……夜だから思考が鈍っているのでしょうか」

海未「今日はもう寝てしまいましょう……明日も早いですからね」

海未「…………」

海未「私は……平気です」

海未(だって、私は園田海未なのですから)

ーーーー次の日 弓道部

海未「…………」ヒュッ

スパン

「また命中しました!」

「やっぱり園田先輩って凄い」

海未「……はぁ……はぁ」

海未(息切れが早い……)

海未(今日は雨だから弓道部に顔を出しましたが……失敗だったのでしょうか)

海未(……いえ、私が部員の手本とならなくてはいけませんし、あまりサボってばかりでは迷惑をかけてしまいますから)

海未(頑張らないと……)

ーーーー帰り道

ザァァァァァ

海未「…………はぁ」

海未(今日も一日、いつも通りに終わりました)

海未(いえ……まだ終わってはいませんか)

海未(家に帰って、稽古と歌詞作りと学校の予習復習をしないと……)

海未(それから生徒会の案件もまとめて……)

海未(……皆は、今頃何処かで遊んでいるのでしょうか)

海未(……どうして、私だけ)ポロッ

海未「…………っ」

海未(何を考えているのですか、私は)

海未(最近弱気になりすぎです……一体どうしたというのですか)

海未(これは私が選んだ道だというのに……)

海未(……もっと己を律しなくては)

海未(誰も、『弱い園田海未』なんて求めていないのだから……)

海未「…………はぁ」

グチャッ

海未「っ!?」

海未「い、今の感触は……?」

海未(何か……踏んだ?)

海未(…………赤い)

海未(靴の周りが……赤く……)

海未(じゃあ……私が踏んだのは……)

海未「…………!」

海未「かえ……る……?」

ザァァァァァ

海未「……考え事をしていたせいで、気づかなかったんですか」

海未「……ごめんなさい、大切な命を奪ってしまって」

ザァァァァァ

海未(ですが……なんだか……)

海未(少しだけ……ほんの少しだけ……妙な高揚感が……?)

海未(なんですか……これは)

海未(解らない……)

スッ

海未(確かめたい……さっきの感触を……)

海未(もう一度……もう一度だけ……!)

グチャッ

海未「っぅぅぅぅっ!?」ゾクゾクッ

海未(な、なんですか、今のは)

海未(体に電流が流れたような……)

海未(…………)ゴクッ

海未(もっと……もっと感じたい)

グチャッ ベチャッ

海未「ああっ!」ゾクゾクッ

海未(気持ちいい! なんですかこれ!)

海未(こんなこと、してはいけないのに!)

海未(やめられません……!)

パシャパシャ

ザァァァァァ

海未「はぁ……はぁ……」

海未「ふふっ……あははははは!」

海未「一匹残らず踏み潰してしまいました」

海未「靴も真っ赤になって……あはっ」

海未「知りませんでした……こんなに気持ちいいことがあるなんて」

海未「でも、別にいいんですよね……誰にも迷惑かけていませんし」

海未「…………」

海未「帰って……靴を洗わないと」

ーーーー園田家

園田母「それでは、今日の稽古はこれまでです」

海未「ありがとうございました」

園田母「今日はとても良くできていました」

園田母「それでこそ園田家の跡取りです」

園田母「このままの調子で精進してください」

海未「はい」

園田母「それでは、後片付けをお願いしますね」

海未「畏まりました」

サッサッ

海未「ふふっ、褒められれてしまいましたね」

海未(なんだか心が晴れたみたいに……凄く気分がいいです)

海未(…………)

海未「いえ……本当は、こんなことをしてはいけないんですよね」

海未「何の罪もない蛙を……私は……」

海未「……これっきりにしないと」

タタタタ

海未「えっ?」

海未「鼠……?」

海未「退治しなくては……」

海未「ですが、道具が何も……」

海未「取りに行ってる間に逃げられたくもありませんし……」

海未「こうなったら……はっ!」

ガシッ

チチッ

海未「ぅ……素手で触るのはやはり気持ち悪いですね……」

海未「さて……可哀想ですし、何処かに逃がしてあげましょうか……」

チチッ チチッ

海未「…………」グッ

ヂッ!

海未(な、何を……しているんですか?)ググッ

海未(こんなことしたら、鼠が死んでしまいますよ?)

ヂッ……ギ……

海未(だ、駄目……手の力を……弱めないと……いけないのに……)

海未(逆に強まって……)

グギッ ゴキッ

海未「っ!?」パッ

ボトン

海未「はぁ……はぁ……」

海未「私は……なんてことを……」

海未「でも……確かに……」

海未(気持ち……よかった……)

海未「っ!」

海未「違う……こんなの本当の私ではありません……」

海未「疲れて……いるんですよ。そうです……それだけです……」

海未「きっと、明日になれば……」

ーーーー数日後

海未「すっかり遅くなってしまいましたね……」

海未(部活の後に弓道部に顔を出して……私はいつも一人)

海未「いえ……これは仕方のないことですから」

海未「……悲しんではいけせん」

グチャッ

海未「…………」

海未「はぁ……」

海未(最近は、虫や蛙を殺しても何も感じなくなってしまいましたね……)

海未(あの時の快感がもう一度欲しい……)

海未「いえ……これで良かったのかもしれません」

海未「無益な殺生が……無くなるのなら」

海未「…………」

ミャア

海未「…………?」

海未「今の声は……」

海未「確か……こちらの方から……」ガサッ

海未「…………!」

海未「『拾ってください』……捨て猫……ですか?」

海未「なんて可哀想な……」ゴクッ

海未「…………」スッ

ボキッ

ミャギィィ!

海未「っ……!」ゾクゾクッ

海未「これです……この感覚です!」

海未「足を一本ずつ折ったらどうなるんでしょうか!?」ボキッ

ミグッ

海未「ああ! いいです! 凄くいいです!」

海未「もっと! もっと鳴いてください!」

海未「ほら!」バキッ

ギッ

海未「きゃはっ」

ドサッ

海未「あれ……もう動かなくなってしまったんですか?」

海未「残念です……まだまたま遊び足りなかったのに……」

海未「ふふ……楽しいです。こんなに楽しいのはいつ以来でしょうか」

海未「……でもこんな姿を皆に見られたら、幻滅されてましうのでしょうね」

海未「園田海未は最低な人間だ、と」

海未「もしかすると停学になってしまうかもしれません」

海未「でも……いいですよね?」

海未「だって、誰も気がつかないんですから」


ーーー
ーー

ーーーー数日後

海未「それでは、行って参ります」

園田母「今日も夜のお散歩ですか?」

園田母「最近物騒らしいので、気をつけてくださいよ」

海未「大丈夫ですよ」

園田母「危険なことはしないでくださいね?」

海未「もちろんです」

海未「ふふっ」

ズチュズチュ

海未「不思議ー♪ 熱くなるー♪」ズチュズチュ

海未「あはっ♪」ズチャァ

海未「やっぱりナイフで斬りつけた方が楽しいですね」

海未「血が噴き出る瞬間が……すっごくゾクゾクしちゃいます」

海未「……でも、なんだか最近飽きてきましたね」

海未「前ほどの高揚感が得られなくなってきましたし」

海未「何か面白いことはありませんかねぇ」コトッ

海未「ん……? これは……」

海未「携帯電話?」

海未「誰かの忘れ物でしょうか?」パカッ

海未「……メールも電話を全く使ってない……というか完全に持ってるだけみたいですね」

海未「可哀想な人です」

海未「…………」

海未「そうだ、いいことを思いつきました」

海未「これで皆を驚かせましょう」

海未「ふふ、皆がびっくりしている姿、楽しそうですね」

海未「ふむ……内容はどうしましょうか」

海未「アルパカの殺害予告でいいですかね、そちらのほうがインパクトもありますし」ポチポチ

海未「宛先は……皆に相談してくれそうな花陽にしておきましょう」

海未「ふふ、完成です。後はこれを部活が始まる少し前に送るだけ……ふふっ、楽しみです」


ーーー
ーー

ーーーー次の日 園田家

海未「ふふ、今日は久しぶりに穂乃果とことりと一緒に寄り道をしてしまいました」

海未「やっぱり、二人と一緒にお話するのはとても楽しいです」

海未「まあ、あーん、をすると言い出した時は恥ずかしくはありましたが」

海未「…………ああ、でも」

海未「今日一番楽しかったのは、犯行予告を見た時の皆でしたね」

海未「心配そうな皆の表情……怯える表情……凄くいいです」

海未「ですが……やっぱりというか、薄いですね」

海未「まあ、流石に悪戯だと思われますからね……特に三年生の皆からは」

海未「…………ふふっ」

海未「それなら……もしもアルパカが本当に殺されたら、皆はどんな表情をするんでしょうね?」

海未「余裕な表情で偉そうに説教していた人達は、悲痛な表情になるんでしょうか?」

海未「それは……ぜひ見てみたいですね」スッ

海未「それに……元々心配そうにしていた……特にアルパカと仲のいい、ことりと花陽は」

海未「一体、どうなるのでしょうね」

海未「それでは今日も出かけるとしましょうか……」

海未「お散歩に……ね」

ーーーー次の日

海未「全く……にこは余計なことをしてくれますね」

海未「せっかく皆が暗い表情をしていたというのに」

海未「はぁ……アルパカを殺してしまったせいで、猫では満足できなくなってしまいましたし……」

海未「…………」

海未(ああ、でも……)

海未「ことりの泣き顔は……最高でしたね」

海未「あんな動物が一匹死んだくらいであんなに悲しめるなんて……凄いですよ」

海未「それなら、もし大切な人が死んだらどんな表情をするんでしょうね?」

海未(はぁ……もっと見たい、あの表情を)

海未(それと……他の皆がどんな表情をするのかも)

海未(悲痛にまみれた、表情を)

海未(それに……何かを殺したいというこの衝動の捌け口も見つけないといけません)

海未(はぁ……どうすればいいのでしょうか……)









海未「…………あ」

海未「なんだ、簡単なことじゃないですか」











海未「皆を殺せばいいんですよ」

海未「そうですよ……そうすれば皆のいろんな表情が見られるじゃないですか」

海未「でも……そうするならちょっと工夫したほうがいいですよね」

海未「ドラマみたいに殺人事件風になんてして」

海未「一人ずつ死んでいくたびに恐怖が押し寄せて……誰も信じられなくなって……」

海未「無関係な人を犯人扱いする人もでてくるてしょうね」

海未「ただ殺すだけよりも……とても楽しそうです」

海未「ふふ、皆は私を怒ったりしませんよね?」

海未「だって、誰も気がつかないんですから」

海未「……いえ、それは違いますか」

海未「殺す時には、ちゃんと気がつかせてあげないと」

海未「私を恨んで死んでいけるように」

海未「ああ、そうだ、今回は悲鳴も聞きたいですね」

海未「動物はワンパターンですから」

海未「皆がどんな声で鳴くのか……どんな醜い表情になるのか……とても楽しみです」

海未「そうと決まれば、計画を練らないといけませんね」

海未「ちょうど……逃げられない孤島に行く予定なんですから」

海未「……おっと、その前に」

プルルルルルルル

ガチャ

海未「こんばんは、絵里」

海未(いつも通りの『私』を演じないと)

Episode2:孤独な少女


花陽(怖くない……怖くない……だって犯人はここにはいないんだもん)

花陽(メールは絶対に悪戯だよ……有名なスクールアイドルにはそういうことだってあるらしいし)

花陽(でも、それなら……アルパカは……)

花陽(違う、駄目なのに……悪戯だって解ってるのに……怖い、怖いよ)

花陽(どうして……どうしてこんなことに……嫌だよ……)

花陽(震えが止まらない……全然眠れないよ……)

花陽(誰か……誰か助けて……!)

ガタガタッ

花陽「ひっ!?」

花陽「…………」

花陽「風……だよね……?」

花陽「ぅぅ……早く寝ないといけないのに……」

花陽「明日……凛ちゃんと練習するって約束したんだもん……」

花陽「それなのに……なんで……」

コンコン

花陽「ひっ!?」

花陽「だ、誰……?」

花陽(こんな……時間に……)

花陽「まさか……本当に……私を……?」

花陽「いや……そんなの……」

花陽「誰か……」

『花陽……起きてますか?』

花陽「え……?」

花陽「その声……海未ちゃん?」

スタスタスタ

花陽「あの……海未ちゃん?」

海未『はい、海未ですよ』

花陽「なんで、こんな時間に?」

海未『……花陽が心配だったんです』

花陽「えっ……?」

海未『あの時は皆を不安にさせないために会話を打ち切ってしまいました』

海未『ですが、どうしても花陽の悲しそうな表情が頭から離れてくれないのです』

花陽「海未ちゃん……」

海未『花陽には……寂しい思いをさせて本当に申し訳ないと思っています』

海未『だから……私に花陽を守らせて頂けませんか?』

花陽「え……?」

海未『私では頼りないかもしれません』

海未『ですが、私だって花陽を守りたいんです』

海未『駄目……でしょうか?』

花陽「…………っ」

カチャッ

キィ

海未「花陽……開けてーー」

花陽「っ!」ギュッ

海未「!?」

花陽「うっ……ぁっ……」ポロポロ

花陽「怖かった……です……」

花陽「本当に……怖くて……」

海未「花陽……」

ギュゥ

花陽「!」

海未「もう大丈夫ですよ……安心してください」ナデナデ

花陽「……っ……ぁっ」

花陽「ありがとう……ございます……」ギュゥゥ

海未「そんなに抱きつかれると少し痛いですね……」

花陽「……! ご、ごめんなさい!」

海未「ふふ、いいんですよ」

海未「ここではなんですので、中に入れてもらってもよろしいですか?」

花陽「は、はい!」

パタン

スタスタスタ

花陽「あの……海未ちゃん」

海未「なんですか?」

花陽「ありがとうございます」

花陽「私……不安で眠れなくて」

花陽「海未ちゃんが来てくれて……本当に嬉しかったんです」

海未「ふふ、いいんですよ別に」

海未「今から楽しませてもらうんですから」

花陽「えっ?」

海未「はっ!」ゴスッ

花陽「がっ!?」

ドサッ

花陽「っ……むぐっ!?」

海未「楽しいパーティーが駄目になるといけないので、口は塞がせてもらいますよ」

海未「…………あれ? 抵抗しないんですか?」

花陽「ん…………ん…………!」ガタガタ

海未「ああ……恐怖で体が動かなくなってしまったのですか?」

海未「それとも現状が解っていないのか」

海未「物分りの悪い花陽に教えてあげないといけませんね」

海未「ほら、見てください、これがなんだかわかりますか?」

海未「ナイフですよ、ナイフ」

花陽「んんっ!?」

海未「これで今から貴女の胸を抉ります」

海未「ふふ、とても痛いでしょうね」

海未「ああ……花陽がどんな表情をするのか楽しみです」

花陽(嘘……です……海未ちゃんが……こんな……)

海未「……ねぇ、花陽、貴女は可哀想な人ですね」

花陽(え……?)

海未「誰も貴女のことを心配してくれなかった」

海未「こんなに不安を抱え込んでも、誰も気がついてくれなかった」

海未「解りますか? 誰も貴女のことなんて見てはいないんですよ」

海未「所詮、貴女は孤独な少女なんです」

花陽(違う……違う……!)

花陽(私は……一人じゃ……ない)

花陽(だって……凛ちゃんは……私のこと……)

海未「……違う、と言いたげですね」

海未「ですが、現実は非情なものなんです」

海未「ふふ、目を逸らさずに見てくださいよ、花陽」

海未「だって、現に今、貴女は一人ぼっちなんですから」

花陽(!?)

海未「仲の良かった凛も、貴女のことなんて忘れてぐっすり寝ています」

海未「本当に貴女のことが心配なら、一緒に寝ればいいのに」

海未「本当は嫌いだったんじゃないんですか? 貴女のことが」

花陽(違う……そんな……はず……)

花陽(嫌……もう止めて……ください……)ポロポロ

海未「ふふっ、とてもいい表情ですよ、花陽」

海未「ねぇ、今どんな気持ちですか?」

海未「悔しいですか? 悲しいですか?」

海未「皆に見捨てられて、守ると言った人に裏切られて」

海未「ほら、そんな怯えてないで何か喋ってみてくださいよ」

海未「最後の言葉くらい、聞いてあげますから」パッ

花陽「……ぷはっ……あっ……あっ……」










花陽「……たす……け……て」












海未「つまらない言葉ですね」

ヒュッ

ズチャァ

花陽「……! っ……ぁ……」

花陽「…………」パタッ

海未「…………っ!」ゾクゾクゾクッ

海未「これが……人を殺すということですか」

海未「なんて快感なんでしょうか……アルパカなんて比べものにならない……!」

海未「ふっ」

ズシャア

ピチャッ

海未「血の色も……とても綺麗です」

海未「安心してください、花陽」

海未「孤独な少女、なんて言いましたけど、それは少しの間だけです」

海未「直ぐに他の皆もそっちに送ってあげますから……ね」

海未「さて……写真を撮って……っと」パシャ

海未「次は凛の番です」

海未「良かったですね、花陽」

海未「一番最初に会えるのが、一番の友達で……ね」

海未「ふふっ」

今回はここまで

>>647
真姫「なにが『ほのうみ』よ!」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1394818393

Episode3:友達


凛(どうして……こんなことになっちゃったの……)

凛(今まで、かよちんと……皆と一緒にいられて、楽しかったのに……)

凛(やっぱり、μ'sになんて……入るべきじゃなかったんだよ……そうしておけば、かよちんは死ななくてすんだんだもん……)

凛(ごめんね、かよちん……全部凛が悪いの)

凛(反省……してるから……もう一度……凛の前で……)

凛「……そうだよ、悪いのはμ'sだよ」

凛「この島には凛たちしかいないはず……それならかよちんを殺したのだって」

凛「……許さない」

凛「凛は、犯人を絶対に許さない!」

チイサーナシーグナルリンリンリンガベール

凛「…………」パカッ

凛「っ!?」

From:Unknown
Subject:なし
本文
花陽の解体ショーの始まりです
これが何かわかりますか?
【画像】

凛「うぐっ!?」

凛「か、かよちんの体に刃物を……!」

ドンッ

凛 ビクッ

凛「隣の部屋にいる……」

凛「怖い……でも」

凛「今度こそ凛がかよちんを守らなきゃ……」フラッ

凛「今行くからね、かよちんッ!」

カチャ

バンッ!

タッタッタッタッ

バンッ!

凛「かよちんから手を……」

凛「え?」

バキッ

凛「がっ!?」

ドサッ

ズルズルズル

海未「まったく……救いようがないくらいの馬鹿ですね」

海未「犯人が中にいると解っているのに武器も持たずにのこのこやってくるなんて」

海未「まぁ、おかけでこちらもやりやすいのですけどね」

海未「さて……それでは今の間に準備をしてしまいますか」

海未「まずは凛を屋上に運んで……っと」ズルズル

海未「両手足を柵に固定……」シュルシュル

海未「よし、これで逃げられませんね」

海未「おっと、騒がれると困るので口をガムテープで塞いでおきましょう」ペタッ

海未「さあ……楽しい仕掛けの始まりですよ」

海未「まずは花陽を柵の上に置いてっと……」ドサッ

海未「ピアノ線を花陽の体と凛の首に巻きつけて……」

海未「ああ、弛ませておかないといけませんね」

海未「次に重りをロープで花陽に結びつける」

海未「これも弛ませておかないと」

海未「そしてワイヤーを重りにつけて……よし」

海未「これで下準備は完了しました」

海未「後はこれをドアの空錠にひっかければ……ふふっ」

海未「凛の首がすぱーんですね」

海未「嬉しいですか、凛?」

海未「貴女は花陽に殺されるんですよ」

海未「貴女が守ろうとした花陽に……ね」

海未「きっと花陽は恨んでいたんですよ……自分を見捨てた貴女のことを」

海未「だから、私にこうやって貴女を殺させている」

海未「……ふふ、本当にそうだったら凄くロマンチックですね」

海未「さて、それじゃあそろそろ部屋に戻るとしますか」

海未「ワイヤーを持って重りをベランダの外に出してっと」グッ

スタスタスタ

海未「さようなら、凛」

海未「残りの命……有意義に使ってくださいね」ニコッ

海未「ワイヤーの輪っかが空錠に引っかかるように……扉を閉める」パタン

海未「ふぅ、ちょっと手が痛かったですね」

海未「部屋に戻って片付けでもしましょうか」

スタスタスタ

バタン

カチャ

海未「ふむ……結構散らかっていますね」

海未「面倒ですが片付けることにしましょう」

海未「ふふ……それにしても、目が覚めたらどうなるんでしょうね」

海未「慌ててもがく姿が目に浮かびます」

海未「その状態を見られないのは凄く残念です……ビデオでも残してこれば良かったのでしょうか」

海未「まあ想像しながら片付けをしましょう」

海未「…………」ゴソゴソ

コンコン

海未「……? どなたですか?」

亜里沙『亜里沙です、海未さん。今大丈夫ですか?』

海未「亜里沙っ!?」

海未(何故亜里沙がここに……)

海未(もしかして遊びに来たのですか?)

海未(追い返すのも怪しいですし……通すしかありませんね)


ーーー
ーー

凛「ん……」パチッ

凛(あれ……ここは……? 凛、何してたんだっけ……)

凛(とりあえず起きないと……)グッ

凛(あれ、動かない……? なんで……)

凛(え……?)

凛(縛られ……てる?)

凛(思い出した……! 確か、かよちんの部屋に入ったら犯人に襲われて……)

凛(っ! 早くかよちんの所にいかないと!)

凛「んっ! んんっ!」

凛(駄目だ……外れない!)

凛(何か……何か使えそうなものは)キョロキョロ

凛(…………え?)

凛(上にいるのって……かよちん?)

凛(な、なんでかよちんがベランダに乗せられて……)

凛(は、犯人は何を考えていんだろう……?)

凛(……あれ、よくみるとかよちんの体に何か黒い線みたいなのが)

凛(……向かっているのは凛の……く……び?)

凛(嘘……これって……もしかして……)

凛(凛を殺すため……?)ゾクッ

凛「ん! んんんんんっ!!」

凛(誰か! 誰か助けて!)

凛(このままじゃ絶対に殺されちゃう!)

凛(嫌だ……そんなの嫌だよ!)

凛(誰でもいいから……助けて……)

凛(…………?)

凛(扉からもこっちに何かが伸びて……)

凛(……これって……まさか……)

凛(扉が開いたら、凛は死ぬってこと?)

凛(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!)

凛(こ、このままじゃ誰かが来たら死んじゃう!)

凛(…………いや)

凛(……違う、そんなはず……ない)

凛(……きっと、大丈夫だよ。皆、凛には近づかないようにしてるはずだし)

凛(誰かがベランダに出てくれたらきっと気づいてくれるはずだから……)

凛(そうだよ……凛は助かるんだよ)

凛(あはは、心配して損しちゃった……それならおとなしく待ってーー)

コンコンコン

凛(え……?)

穂乃果『おーい!凛ちゃーん、ご飯だよー!」』

凛( え? 穂乃果ちゃん?)

穂乃果『いないのー?』

穂乃果『…………うーん』グググ

凛(っ!? な、何してるの!? やめて! やめてよっ!!)

凛(その扉が開いた凛は死んじゃうんだよ!?)

穂乃果『あれ、鍵はかかってないみたい……? でも、なんだかノブが固くて開かない……』

真姫『壊れてはいないはずよ』

凛「んんんっ!! んん!」ムグムグ

凛(嘘……こんなの嘘だよ……)

凛(だって凛は皆と楽しい合宿に来てた……だけで……)ポロポロ

凛(死にたくない! 死にたくない!!)

凛(お願いやめて! こんなの絶対に嫌!)

穂乃果『ふんっ!』ガチャ

凛(…………ぁ)

穂乃果『あ、やっと開いた!』キィ

凛(これは……きっと罰なんだ)

凛(かよちんを守りきれなかった凛への)

凛(それならしょうがないよ……凛もすぐに側にいくから)

凛(ごめんね、かよちん)

スパッ

Episode4:歪んだ花

にこちゃんが欲しかった、例えどんなことをしてでも


ーーーー部室

真姫「にこちゃん……遅いわね」

真姫「今日は部活が休みだから二人っきりになれると思ったのに……」

真姫「全く、どこほっつき歩いてるのよ」

真姫「…………」

真姫「にこちゃん……か」

真姫「子供っぽくて、いじっぱりで、うるさくて、見た目はちんちくりん」

真姫「そしていつもケチをつけて絡んできてうっとおしい」

真姫「いい所なんて全然ないのに……ないはずなのに」

真姫「どうして好きになっちゃったんだろう……」

真姫「はぁ……」

ガチャ

にこ「にっこにっこにー☆」

にこ「ってうわ!? あんたなんでこんな所にいんのよ!」

真姫「いたら悪い?」

にこ「べつにー?」スタスタスタ

ストン

にこ「あんたも暇ね、部活が休みなのに部室に来るなんて」

真姫「そんなの私の勝手でしょ」

にこ「はいはい、まあ別にいいけどさ」

真姫「にこちゃんはなんでここにいるのよ」

にこ「にこは~可愛い真姫ちゃんと一緒に過ごしたいなって思って~」キュルルン

真姫「っ……なにそれ、意味わかんない」

真姫(私と二人になりたいから……)

にこ「あれー? 真姫ちゃん照れちゃってるー?」ニヤニヤ

にこ「もしかして真姫ちゃん、今日はにこに会いに来てくれたのー?」

真姫「て、照れてないわよ! それに別ににこちゃんに会いに来たわけじゃないわ!」

にこ「そっか~残念にこ~。それじゃあ真姫ちゃんはどうして部室に来たの?」

真姫「それは……落ち着いて本を読みたかったからよ」

にこ「ふーん」

真姫(いきなりぶりっ子になったと思ったら素に戻ったり)

真姫(にこちゃんが何を考えてるのか全くわかんない)

にこ「あんたさぁ……もう少し愛想よくできないの?」

真姫「……なんでしなきゃいけないのよ」

にこ「そんなこと言って、本当はにこのことが好きで好きでしょうがないくせに~」

真姫「は、はぁ!? 何適当なこと言ってんのよ!」

にこ「ま、そういうことにしといてあげる」

真姫「なによそれ! 捏造しないで!」

真姫(こうやってからかわれるのも嬉しいだなんて……本当に意味わかんないわ)

真姫(にこちゃんはからかってるだけだけど、本当に私が好きってわかったらどうするのかしらね)

真姫(……ううん、考えちゃ駄目)

真姫(にこちゃんは私のことを同じ部活の仲間としか見ていないんだから)

真姫(だから……もしも好きだなんてばれたら軽蔑されちゃう)

真姫(この気持ちは……私一人の隠し事にしないとね)

トードーケーマホウーエガオノマホウー

真姫「え?」

真姫「なん……で……」

真姫(着信音……そのままにしてた……)

にこ「この曲……あんた……」

真姫「ち、違うの……これは……」

真姫(誤魔化さないと……いけないのに……)

真姫「違う……の……」

真姫(このままじゃ嫌われちゃうのに……)

真姫「ぅ……ぁ……」ポロポロ

真姫(そんなの……嫌よ……)

にこ「…………」

パカッ カチカチカチ

にこ「真姫ちゃん」

真姫「嫌……ちがっ……」

にこ「にこの携帯にメール送ってみて」

真姫「え……?」グスッ

にこ「ほら」

真姫「…………」ポチポチ ピッ

ツメタイヤケドヲオシエテアゲルー

真姫「っ……! これ……」

にこ「にしし、これで真姫ちゃんとお揃いにこっ☆」

真姫「にこ……ちゃん……」

にこ「…………」ギュッ

真姫「ぁ……」

にこ「ほら、泣き止んで?」

にこ「大丈夫……こんなことでにこは真姫ちゃんを嫌いになったりはしないから」

真姫「…………ぅぅ」

真姫(暖かい……)

真姫(……ありがとう、にこちゃん)

真姫(やっぱり私、にこちゃんのこと……)


ーーー
ーー

ーーーー真姫の部屋

真姫「はぁ……」

真姫「合宿……かぁ」

真姫「にこちゃんと思い出作り……できるかな」

prrrr

ガチャ

真姫「……はい、もしもし」

海未『もしもし、真姫ですか?』

真姫「ええ、そうよ。どうしたの?」

海未『今度の合宿のことで話したいことがありまして』

海未『今大丈夫ですか?』

真姫「ええ、大丈夫よ」

真姫「それで、何が聞きたいの?」

海未『…………』

真姫「海未……?」

海未『ああ、すいません。少し考え事をしていました』

真姫「人と会話してるのに考え事なんて失礼ね」

海未『すいません……真姫に関係があることでしたから』

真姫「私に?」

海未『はい』

真姫「……何?」

海未『真姫って、にこのことが好きですよね?』

真姫「っ!?」

真姫「な、何を急にーー」

海未『お手伝い……しましょうか?』

真姫「え……?」

海未『真姫とにこが仲良くなれるように……お手伝いしましょうか?』

真姫「…………」

海未『私は二人の恋を応援したいと思っているんですよ』

海未『幸いにも私は皆のスケジュールを管理していますから、お手伝いできますよ?』

海未『二人っきりの時間、欲しくありませんか?』

真姫「…………っ」ゴクッ

真姫「どうして……そんなことを?」

海未『さっき言ったとおり、二人の恋を応援したいからですよ』

真姫「アイドルは恋をしちゃいけないんじゃないの?」

海未『アイドルである前に、一人の女の子ですよ』

真姫「…………」

真姫「具体的には、どうするの?」

海未『まずは真姫とにこの部屋を隣にしましょう』

海未『そうすればきっかけは増えますよね?』

真姫「ええ……」

海未『他にも考えたいのですが、そこからは真姫の力が必要です』

真姫「私の? どういうこと?」

海未『無人島について詳しく教えて欲しいんですよ』

海未『屋敷の見取り図から全て……ね』

真姫「……解ったわ」

真姫「ちょっと長くなりそうだけど大丈夫?」

海未『はい、もちろんですよ』

カクカクシカジカ

海未『へぇ……懲罰房とは面白いものがありますね』

真姫「面白くなんてないわよ。外側からしか鍵をかけられないのよ?」

真姫「昔悪いことをして閉じ込められたことがあったけど……最悪だったわ」

真姫「まあ、窓もあるから完全な密室じゃないけど……下は海だから同じことね」

海未『鍵は真姫が持っていますか?』

真姫「ええ……持ってるけど」

海未『そうですか。それではわたしに貸してください』

真姫「え……?」

真姫「どうするつもりなの?」

海未『真姫とにこを一緒に閉じ込めます』

真姫「!」

海未『密室の部屋に二人きり……不安で揺らぐ心……ふふ、にこが怖がって抱きついてきますよ』

真姫「にこちゃんが……」

真姫「解ったわ。海未に預ける」

海未『ありがとうこざいます。それと、無人島に関しては皆に詳しい説明をしないでください』

海未『皆の興味本位で計画が崩れてしまうかもしれませんので……ね』

真姫「……ええ」

海未『ふふ、それではお休みなさい、真姫』

海未『いい夢を……』


ーーー
ーー

ーーーー凛が殺されて

真姫「ん……んんっ」パチッ

真姫「そっか……私あの後寝ちゃってたんだ……」

真姫「……にこちゃん?」

真姫「いない……か」

真姫「…………」ギュッ

真姫「にこちゃんは守ってくれるって言ったけど……きっと私は殺される」

真姫「そして……にこちゃんも」

真姫「そんなの……絶対に駄目」

真姫「だって……私はまだ、にこちゃんと何もできていないんだから」

真姫「このまま……犯人に殺されるくらいなら……」

真姫「…………」スッ

スタスタスタ

カチャ

キィ

パタン

スタスタスタ

カチャ

キィ

真姫「確かここに……」ガサガサ

真姫「……あった」

真姫「パパが使っていた睡眠薬」

真姫「……本当は、こんなことはしたくないんだけど」

真姫「でも、しかたないわ。どちらにしろ殺されてしまうんだから」

真姫「最低なのは解ってる。でも……」

真姫「心が手に入らないなら……せめて体だけでも欲しいの」

真姫「待っててね、にこちゃん」


ーーー
ーー

ーーーー絵里の部屋

絵里「ちょっとにこ、どうしたのよ」

にこ「なんでもないわよ」

絵里「なんでもないわけないでしょ!」

にこ「……シャワー浴びてくるわ」

スタスタスタ

絵里「ちょっと、にこ!」

真姫(にこちゃんの様子がおかしい)

真姫(さっき二人きりだった時に来たメールが原因?)

真姫(皆が無理にでも入ってこようとしたから慌てて誤魔化したけど……)

真姫(……一体、何があったの?)

絵里「……仕方ない、か」

絵里「真姫、聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」

真姫「ええ、何かしら?」

絵里「基地局って何処にあるの?」

真姫「……基地局? それが何だっていうの?」

絵里「知ってるの? 知らないの?」

真姫「……知ってるわよ。地図で示すなら……この辺よ」ガサッ

絵里「……へぇ」

絵里「基地局付近に建物はあるの?」

真姫「ええ、あるわよ。普通じゃないけど」

絵里「どういうこと?」

真姫「……悪い子が入れられる所よ」

絵里「?」

真姫「ごめんなさい、これ以上は話したくないわ」

絵里「……ええ」

真姫「もういいかしら?」

絵里「いいえ、もう一つ聞きたいことがあるの」

真姫「……何?」

絵里「マスターキーはどこ?」

真姫「……修理に出してるって言わなかった?」

絵里「ええ、言ったわね。貴女が」

真姫「私が嘘をついてるとでも言いたいの?」

絵里「ええ、そうよ。今回の二つの事件はマスターキーがないとできないもの」

絵里「それなら、真姫が嘘をついているとしか考えられない」

真姫「……推測だけで人を犯人扱いしないでくれる?」

絵里「へぇ、真姫は犯人じゃないの?」

真姫「当たり前でしょ」

絵里「それじゃあ、さっき持ち歩いてた袋は何?」

真姫「!」

真姫(……見られてたの?)

絵里「犯人が何処かに潜んでいるかもしれないのに一人で出歩いて……おまけに怪しい物まで持ってる」

絵里「もし真姫が犯人じゃないっていうなら、説明してもらおうじゃない、その薬のこと」

真姫「……精神安定剤よ」

真姫「こんな状況なんだもの、薬にでも縋りたくなるわ」

絵里「そう……それなら早く使ったほうがいいんじゃないの?」

真姫「……そうね。飲み物とってくるわ」

絵里「そうね。薬はここに置いていきなさいよ」

真姫「解ってるわよ」

スタスタスタ

真姫「お待たせ。絵里も喉が渇いたでしょ?」

真姫「水差しも持ってきたから飲むといいわ」

絵里「…………」

真姫「はいはい、それじゃあ飲むわよ」

プチッ

ゴクン ゴクゴク

真姫「……ふぅ」

真姫「ちょっと落ち着いた気がするわね」

真姫「絵里もどう?」

絵里「……私には必要ないわ。それに、コップは自分のがあるからそっちを使う」ガサッ

トクトクトク

ゴクゴク

絵里「……それでも、まだおかしいことがあるわ」

絵里「どうして真姫は一人で出歩いていたの?」

真姫「にこちゃんがいなかったんだもの。一人でいくしかないじゃない」

絵里「それは……そう……だけ……ど……」クラッ

真姫「絵里、眠そうね」

真姫「ベッドに行った方がいいんじゃないの?」

絵里「そんな……こ……と……」カクン

絵里 スースー

真姫「はぁ……甘いわね、絵里」

真姫「薬が怪しいっていうのは正解」

真姫「でも、私が飲んだのはただの風邪薬」

真姫「見られるとまずいものをいつまでも目の付きやすい所に置いておくわけないでしょう」

真姫「本物はポケットの中よ」

真姫「そして、水差しの中にこっそりと混ぜておいたの」

真姫「いつもの絵里なら、こんな手には引っかからないでしょうね」

真姫「さあ、邪魔物は消えたわ」

真姫「後はこれをにこちゃんに飲ませて……」

真姫「…………」

真姫「そういえば、にこちゃんが貰ったメールはなんだったのかしら」

真姫「今の内に見ればいいだけね」パカッ

真姫「……っ!?」

From:Unknown
Subject:なし
本文
西木野真姫を殺せ
殺せなければ、お前とお前の妹の命は無い物と思え
【画像】

真姫「これ……こころちゃん?」

真姫「縛られて、監禁されてるってこと?」

真姫「……だからにこちゃん、あんな態度を……」

真姫「…………そっかぁ」

真姫「私……にこちゃんに殺されるんだ」

真姫「…………」

真姫「あはっ」

真姫「最高じゃない……それ!」

真姫「そうよ、もしもにこちゃんが私を殺したら、ずっと罪悪感に苛まれるはず」

真姫「つまり、ずっと私のことを考えてくれるってことじゃない」

真姫「体なんていらない……こうすれば、にこちゃんの心が手に入るんだから」

真姫「そうと決まったら用意しないと」

真姫「刃物は返り血でばれるといけないし……ロープがいいかしら」ガサッ

真姫「これをにこちゃんの鞄の近くに置いて……証拠隠滅しやすいように窓を開けておく」

真姫「混乱して変なことしないように水を組んで置きましょう」トクトクトク

真姫「後は……にこちゃん次第ね」

ガチャ

にこ フラッ

真姫「あら、遅かったわね、にこちゃん」

にこ「…………っ」

真姫(辛そう……すっごく悩んでたのね)

真姫(いいわ、私が解放してあげる)

真姫(だから、私のことだけ考えて)

にこ「真姫……ちゃん、ちょっといいかな?」

真姫「ええ、いいわよ」

にこ「……目を、瞑ってくれる?」

真姫「……うん」スッ

ゴソッ

……ハァ……ハァ

…………っ!

グッ

真姫「っ!」

にこ「はぁっ……はぁっ……」ギュゥ

グググ

真姫「あっ……かっ……」

にこ「ごめん……ごめんね……」グスッ

にこ「でもっ……にこには……こうするしかないの……」ポロポロ

にこ「ごめん……なさい……」

真姫「…………っ」

にこ「なん……で」

にこ「なんで……抵抗しないの……」

にこ「このままじゃ……ぐすっ……真姫ちゃん……本当に……!」

真姫「あ……は……」

真姫(殺そうとしてる相手の心配なんて……意味わかんない)

真姫(抵抗されて、失敗して、自分は脅された可哀想な悲劇のヒロイン、なんてことはさせてあげない)

グググッ

真姫(意識が……だんだん遠退いて……)

にこ「ぐすっ……なんで、こんなっ……」

真姫(……そんなに泣いたら、可愛い顔が台無し)

真姫(それでも……十分可愛いんだけどね)

真姫(最後に細やかな抵抗をしてあげる……)スゥ

真姫(一生私のことしか考えられなくなる、呪いを……)ググッ

チュッ

にこ「っ!?」

真姫(にこちゃん……大好き……)

ドサッ

今回はここまで

Episode5:守りたい物


にこ「はぁ……はぁ……」

にこ「なんで……キスなんか……」

にこ「こんな……最低な先輩なんかに……」ポロポロ

にこ「……だ、駄目……考えちゃ……凶器を……捨てないと……」ガタガタ

ヨロヨロ ポイッ ガチャ

にこ「これで密室よ……ばれない……絶対に……っ」

にこ「これでにこは助かったはずなのに……なんで震えが止まらないの?」ガタガタ

にこ「み、水……」ゴクゴクッ

にこ「……っ、後は……知らん顔して……ベッドに寝ていれば……」ギシッ

にこ(まきちゃん……ごめんなさい……)

にこ(本当に……ごめ……)

パタン zzz


ーーー
ーー

にこ「ぅ、あっ、おげぇぇぇぇっ、がっ、ぁぁぁぁぁぁ!」

にこ(思い出した……全部……)ガタガタ

希『にこっち、何があったのかまだわからんけど、真姫ちゃんが死んだのはにこっちのせいじゃない』

希『だから、そんなに自分を責めんといて』

にこ(違う、にこのせいだ……だってにこが真姫ちゃんを殺したんだから……)

にこ(この……手で……)

にこ「ぅっ!? ごぼっ、げぇぇぇぇぇぇぇ!?」

にこ「……なんで、にこがこんな目に」

にこ「人質をとって……人を殺させるなんて……最低すぎる……わよ」

にこ「それをやる……にこも……」

にこ「…………」

にこ「考えちゃ駄目……にこは……殺されないんだから」

にこ「後はこの部屋から出なければ……いいだけ……」

にこ「そうしたら……また家族皆で……」

にこ「…………」

にこ「…………」ハッ

にこ「……いつの間にか寝てたみたい」グゥ

にこ「……はぁ、こんな時でもお腹が空くなんて」

にこ「鞄の中にお菓子持って来ておいてよかったわ」

にこ「とりあえず飴でも舐めておこうかしら」スッ

にこ「…………っ」

にこ「にこの……この手……」

にこ「…………」

ツメタイヤケドヲオシエテアゲルー

にこ「っ!?」

にこ「こ、今度は……何よ……」

にこ「なっ!?」

From:Unknown
Subject:四人目
本文
矢澤にこは死ぬ

にこ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

にこ(なんで!? なんでにこに殺人予告メールが来るの!?)

タタタタタタ

ドンドンドン

希『にこっち! どうしたんや!』

にこ「なんで……なんでよ!」

希『にこっち……?』

にこ「こんなの、嘘よ……」

にこ(だったら、にこのしたことは……)

海未『にこ! どうしたんですか!?』

にこ「…………」

にこ「…………っ!」ガバッ

にこ(嫌だ嫌だ嫌だ!!)

にこ「こんなの……絶対おかしいじゃない……」

にこ「だって……真姫ちゃん……したら……助けてくれるって……」

にこ「そう言われたから……にこは……」

にこ「…………大丈夫」

にこ「部屋から……出なければいいだけ」

にこ「こうやって布団を被ってたら……いつか助けがくるんだから」

にこ「絶対に……生き残って……みせる」


ーーー
ーー

にこ(……全然眠れない)

にこ(今にも犯人が私を殺しに来るんじゃないかって……)

にこ(希が部屋の前にいるようだけど……もしかすると私を殺すスキを伺ってるのかもしれない)

にこ(信じられるのは自分だけ)

にこ(他の誰も……信用なんてしちゃいけない)

ツメタイヤケドヲオシエテアゲルー

にこ「……っ……また」

にこ「見たく……ない……けど」

にこ(…………こころ)

にこ「…………」カチッ

にこ「え……?」

From:Unknown
Subject:なし
本文
お前が死ななければ妹を殺す

にこ「嘘……でしょ?」

にこ「こ、こんなの、だって、どうしたら……」

にこ「あ……ああああっ!」

にこ「うあああああああああああ!??!!」

希『にこっち!』

希『どうしたんや! しっかりして!』

ドンドンドン

にこ「ひっ!?」

にこ「殺される……このままじゃ……」

にこ「嫌だ……でもにこが死なないと……」

にこ「なんで……助けてくれるって……言ってたのに……」

にこ「こんなの……おかしいじゃない!」

にこ「一体にこが何をしたの!?」

にこ(どうしてにこだけ……こんな目に合わないといけないの……?)

にこ「このメール……にこに死ねって言ってるのよね……」

にこ「こんなの……できるわけ……!」

にこ「でも、そうしないと……」

にこ(こころが……殺されちゃう)

にこ「こんな……こんなのって……!」

にこ「嫌よ……絶対に嫌!」

にこ「ああああああああああああ!!!」

にこ「はぁ……はぁ……にこは……どうすれば」

ツメタイヤケドヲオシエテアゲルー

にこ「…………っ」カチッ

From:真姫ちゃん
Subject:なんで?
本文
にこちゃん、どうして私を殺したの?
私、にこちゃんのこと信じてたのよ。
それなのに……にこちゃんは私を裏切った。
自分が生き残るために私を殺した。
好きだったのに……憧れていたのに……。
人殺し。
殺人鬼のくせに何が宇宙No.1アイドルよ。
にこちゃんに殺される時、とっても痛かった。
苦しかった。
絶対に許さない。
お前も私と同じ苦痛を味わえ。
[ピーーー][ピーーー][ピーーー][ピーーー]
絶対にお前を殺してやる

From:真姫ちゃん
Subject:なんで?
本文
にこちゃん、どうして私を殺したの?
私、にこちゃんのこと信じてたのよ。
それなのに……にこちゃんは私を裏切った。
自分が生き残るために私を殺した。
好きだったのに……憧れていたのに……。
人殺し。
殺人鬼のくせに何が宇宙No.1アイドルよ。
にこちゃんに殺される時、とっても痛かった。
苦しかった。
絶対に許さない。
お前も私と同じ苦痛を味わえ。
殺す殺す殺す殺す
絶対にお前を殺してやる

にこ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

にこ(真姫……ちゃん……からっ)ヒクッ

にこ「ちが、違うのっ! あ、あれは……」

にこ(にこが……真姫ちゃんを……殺した……)

にこ「に、にこは……こんなの……駄目で……」

にこ(守るって……言ってたのに……)

にこ「にこが……守らないと……」

にこ(誰を……? にこは誰を守ってるの?)

にこ「ごめん……ごめん……」

にこ(真姫ちゃんを殺したのは……こころのため)

にこ(でも、にこが死なないとこころは……)

にこ「そう……だね、そうしないと、駄目だよね」

にこ「全部、にこのせいなんだから……」

にこ「……護身用にくすねて置いた包丁を、こんな風に使うとは思ってもみなかったわ」ゴソッ

にこ「でも……仕方ないじゃない。こんな人殺しの手じゃ、もう誰かに触ることなんてできないんだから」スタスタスタ

にこ「ましてや、誰かを笑顔にするなんて……」

にこ「ははっ、こんなの刺されたらすっごく痛そうよね」

にこ「でも……真姫ちゃんはもっと痛くて、苦しんで……」

にこ「大丈夫……にこもすぐそっちに行くから」

ドカッ ドカッ ドカッ ガタンッ

希「にこっち!!」



にこ「…………」スッ

にこ「ごめんね……真姫ちゃん」

守ってあげられなくて

ズチュ

Episode6:傷んだ愛


亜里沙へ
亜里沙にお願いがあります。
まずは亜里沙の部屋に行って、下の封筒を置いてきてください。
絵里宛てなので、『お姉ちゃんへ』と記入しておいてもらえると助かります。
それと、亜里沙の部屋の鍵は開けたままで。
その後、地図の赤丸の所に行って調査をしてください。
他の人に見られてしまうかもしれないので、理由はお話できません。
私も後で行きますから、その時に詳しく
お話します。
不躾かとは思いますが、こんなことを頼めるのは亜里沙だけです。
よろしくお願いします。

亜里沙「…………」フム

亜里沙(海未さんが……亜里沙を頼りにしてくれている)

亜里沙(頑張らないと)

ことり「どう……したの?」

亜里沙「なんでもありません。行きましょう」

亜里沙(そう……ことりさんには関係のないことです)

亜里沙(荷物を置いたらすぐにでかけないと)


ーーー
ーー

希「え、えりち……?」

絵里「……ごめん、一人にしてもらえる?」

希「で、でも」

絵里「大丈夫、私には予告メールは来てないから」

絵里「亜里沙を探さないといけないしね」

希「それなら皆で探せばええやん、どうして……」

絵里「少し、落ち着きたいのよ」

絵里「……ごめんなさい」

希「……えりち」

希「落ち着いたら、ちゃんと戻ってきてな」

絵里「……ええ」

ガチャ

バタン

絵里「……この手紙の暗号、見覚えがある」

絵里「前に亜里沙がミステリー小説に出てきたって話してくれたものよね」

絵里「ということは、解き方も同じなはず……」

絵里「円周率で置き換えて……文字を解読すると……」

絵里「『そのなかにはんにんがいる。よるにはなれごやにきて。』」

絵里「……その中に……犯人が……!?」

絵里「亜里沙は犯人を知っているってこと!?」

絵里「……もしかして、それで犯人に命を狙われている?」

絵里「だからこうして私にだけ解る暗号で連絡を……」

絵里「…………」

絵里「離れ小屋というのは、おそらく真姫が言っていた小屋のことね」

絵里「夜に会って……そこで説明するってことかしら」

絵里「それなら、私が今するべきことは……」

絵里「皆と一緒にいて、犯人を亜里沙に近づけないようにすること」

絵里「そして、夜に亜里沙と合流する」

絵里「決まりね」

絵里「……皆の所に行きましょう」


ーーー
ーー

ギィィィィ

絵里「上手く抜け出せたわね」

絵里「急いで亜里沙の所にーー」

海未「何処に行く気ですか、絵里」

絵里「っ……海未!?」

海未「こんな夜更けに勝手に抜け出して」

絵里「……海未には関係ないわ」

海未「……夜に一人で部屋を抜け出す……これがどういうことか解っているのですか?」

海未「皆に犯人だと疑われるかもしれないんですよ!?」

絵里「……それでも私は行かなくちゃならないの」

海未「亜里沙の所に……ですか?」

絵里「っ!? 何故それを!?」

海未「希に教えてもらったんですよ。あの暗号を」

絵里「希が……」

絵里(見られていたってことね)

絵里「海未」

海未「大丈夫です、誰にも言ってはいません」

海未「犯人にばれるといけませんからね」

絵里「そう……ありがとう」

絵里「解ったから、海未は早く部屋に行って休みなさい」

海未「……お断りします」

絵里「……何故?」

海未「絵里を一人にしたくないからです」

絵里「……どういうこと?」

海未「あの手紙を犯人が知った以上、犯人が暗号を解読して口封じに絵里と亜里沙を殺そうとする可能性は0ではありません」

絵里「……私なら大丈夫よ」

海未「絵里、私はそんなに頼りになりませんか?」

絵里「え?」

海未「絵里は一人で頑張りすぎなんですよ」

海未「皆のことを考えて、一人で抱え込んで……」

海未「今だって私を巻き込まないようにしている」

海未「絵里が私のことを思ってくれているのは解ります」

海未「でも……私は絵里がボロボロになっていく姿をこれ以上見たくないんです」ポロポロ

絵里「海未……」

海未「確かに……私は未熟者ですからそんなに役に立たないかもしれません」

海未「でも……それでも……絵里の力になりたいんです」

絵里「…………」

絵里(私は……海未を犯人扱いしたのよ……?)

絵里(それなのに……こんなに私のことを心配して……)

絵里 ギュッ

海未「え……?」

絵里「ごめんなさい……海未」

絵里「私のことをこんなに心配してくれる人がいるなんて……考えてもみなかったわ」

絵里「だから、ありがとう」

海未「絵里……」

絵里「それでね、今から私は亜里沙の所に行かなきゃいけないの」

絵里「でも、夜の道はちょっと怖いのよね」

絵里「だから……一緒に来てくれる?」

海未「……!はい!」

絵里「…………ありがとう、海未」ボソッ

スタスタスタ

絵里「亜里沙は一体何を発見したのかしら」

海未「解りません……ですが、きっと犯人に繋がる手掛かりを見つけたのでしょう」

海未「亜里沙に話を聞いて……寝ている犯人を皆で捕まえましょう」

絵里「そうね……それでこの事件もお終いだわ」

絵里「……! ここが小屋ね」

絵里「亜里沙、何処?」

シーン

絵里「…………」

海未「小屋の中……でしょうか?」

絵里「そうかもね……亜里沙!」ガチャガチャ

絵里「鍵が掛かってる……」

海未「鍵ならここにあります。ちゃんと来る時に確認しておいてください」スッ

絵里「ありがとう……全く、用意周到ね」カチャッ

キィ

絵里「亜里沙、いるかし……え?」

絵里「な、なんで、亜里沙が縛られーー」

ゴスッ

絵里「ぅ……っ……」

バタッ

海未「……救いようがありませんね」

ズリズリ

亜里沙「…………」

海未「おっと、喋れなくて辛かったでしょう?」

海未「今外してあげますからね」パサッ

亜里沙「…………ぷはっ」

亜里沙「海未さん、もうこんなことはやめましょう」

亜里沙「今ならまだ間に合います……」

海未「何を言ってるんですか、亜里沙」

海未「これからが楽しいパーティーだというのに」

スルスル

海未「これでよしっと」

海未「ほら、絵里、起きてください」バチンバチン

絵里「ぅ……」パチッ

海未「おはようございます、絵里」

海未「ほんの少しの間でしたが、いい夢は見られましたか?」

絵里「……っ! 海未ぃ!」

海未「どうしたんですか、そんなに怖い顔をして」

絵里「貴女が……貴女が皆を殺したの!?」

海未「全員ではありませんよ。真姫を殺したのはにこですし、にこは自殺したんですから」

絵里「それも貴女が仕組んだんでしょう!?」

海未「うーん、ちょっと予想外でしたけど、まあそうなるんですかね?」

絵里「人殺し! 早く私たちを解放しなさい!」

海未「……はぁ、元気なのはいいんですけどね」

ゴスッ

絵里「かはっ……!?」

海未「立場を弁えてください」

海未「私が何時でも二人を殺せるということを忘れてはいけませんよ」

絵里「っ……」

海未「はは、それにしても可哀想ですね、絵里は」

海未「亜里沙が私に暗号の話をしたせいで、こんな罠に引っかかることになったんですから」

亜里沙「…………っ」

海未「絵里が死ぬのは貴女のせいですよ、亜里沙」

絵里「違う! 亜里沙のせいじゃない!」

ゴスッ

絵里「ぐっ!?」

海未「黙りなさい」

海未「まあでも、確かに絵里にも非がありますからね」

海未「くだらない演技に騙されて、私を信じたんですから」

海未「そのせいで私をここまで同行させて、簡単に捕まった」

海未「貴女がちゃんと見抜いていれば、私を倒せたかもしれないのに」

絵里「…………っ」

海未「さて、それでは罰ゲームといきましょうか」

海未「私に向かって絵里が口答えをしたので、その分を亜里沙に償ってもらいましょう」

絵里「なっ!?」

海未「ふふ、可愛い顔がぐちゃぐちゃに歪む姿……楽しみです」

絵里「待って! 亜里沙は関係ないでしょ!?」

絵里「やるなら私にやりなさい!」

海未「嫌ですよ、貴女は目の前で妹が泣き叫ぶ姿でも見ていてください」

絵里「そんなの駄目!」

絵里「私にだったらなんでもしていいから! だから亜里沙にだけは止めて!!」

海未「……なんでもですか?」

絵里「……ええ」

海未「それなら私の足を舐めなさい」

絵里「っ!?」

海未「私に敗北した証ですよ」

海未「役に立たない先輩にはお似合いでしょう?」

絵里「…………っ」

海未「それとも、亜里沙の可愛い声の方が聞きたいですか?」

絵里「! す、するから! それだけーー」

ガッ

絵里「っ!?」

海未「させてください、でしょう」

海未「躾がなっていませんね」

絵里「……っ。海未の足を……舐めさせてください」

海未「……ふん、まあいいでしょう」スルッ

海未「ほら、舐めなさい」

絵里「……あむっ」

絵里「……っ」ジュプ

海未「ふふ、見ていますか、亜里沙」

海未「貴女のお姉さんの、無様な姿を」

亜里沙「…………っ」

海未「ふふっ、絵里、私の足を舐められて嬉しいですか?」

絵里(嬉しい……ないでしょ)

絵里(でも、ここで海未には逆らうわけには……っ)

絵里「嬉しい……です……」ギリッ

海未「あははははは! 足を舐めて喜ぶなんて変態すぎでしょう!」

海未「生きてて恥ずかしくないんですか?」

絵里「っ…………!」

ペロペロ

海未「もういいです」パッ

絵里「ぷはっ……」

海未「よくできました」

絵里「……もう、気は済んだ?」

海未「……? 何を言ってるんですか?」

絵里「私と亜里沙を解放して……ください」

海未「するわけないでしょう」

海未「今からこれを使って遊ぶんですから」スッ

絵里「それは……」

海未「ええ、一般的にバイブと呼ばれるものですよ」

絵里「……凄く太いわね……私たちをおもちゃにするつもり?」

海未「いえいえ、そんなことしませんよ」

海未「ただ、気持ちいいことをしてあげようという思いやりからですよ」

絵里「どの口が……そんなこと」

海未「おや、絵里はこれを亜里沙に付けて欲しいんですか?」

絵里「っ……くずが……!」

海未「ふふ、賢い絵里なら、どうすればいいか解りますよね?」

亜里沙「お姉ちゃん! 駄目!」

絵里「…………」

絵里「私の大事な部分に……極太バイブを入れてください……」

海未「へぇ、絵里はこれを入れてほしいんですか?」

絵里「はい……欲しいです」

海未「自分が淫乱な変態だと認めるんですね?」

絵里「……っはい……私は……淫乱です……」

絵里「だから……私に……ください」

海未「ふふ、いいでしょう」

海未「そんなにおねだりされたらあげないわけにはいきませんもんね」

海未「それじゃあ……準備をしましょう」スルスル

海未「ふふ、綺麗なピンク色ですね」

絵里「っ……褒められても嬉しくないわ」

亜里沙「お姉ちゃん……」

絵里「大丈夫よ、亜里沙」

絵里「私が絶対に守ってあげるから」

海未「美しい姉妹愛ですね」

海未「反吐がでます」

絵里「…………」キッ

海未「そうやって睨んでいられるのもあと少しですよ」

海未「……今から絵里を女にしてあげるんですから」

絵里「え……?」

海未「奥まで入れたら……破れるに決まっているでしょう?」

海未「いい声で鳴いてくださいね」

絵里「まっーー」

ズボッ

絵里「ぎっぅぅぇぇぇぇぇっっっ!?」

海未「おやおや、やはり前戯無しでは進みが悪いですね」

絵里「痛い……や、やめて……抜い……」

海未「まだまだ入ったばかりじゃないですか」グイグイ

絵里「本当に……痛い……の……」

海未「お、この感触はもしかして……」

絵里「え……? ま、まさか!? 止めーー」

ブチッ

絵里「いづぅぅゔぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!!?!?」

海未「処女膜開通おめでとうございます、絵里」

絵里「あ……かっ……」

海未「ふふ、嬉しすぎて声もでませんか?」

海未「もっと奥まで入れてあけますからね」ググッ

絵里「や……めっ……」

海未「え? なんですって?」

絵里「お願い……もう許して……」

絵里「こんなの……酷すぎる……」ポロポロ

海未「寝言は寝てから言ってください」ググッ

絵里「あっ、ぎっ……止め……づぅ!?」

絵里「いや……こんなの……!」

ジョロロロ

海未「え……?」

絵里「あ……ああ……」

海未「っあはははははは!」

海未「痛みのあまり失禁ですか!? 妹の前で!?」

海未「絵里、貴女は最高です!」

絵里「見ないで……亜里沙……」

亜里沙「…………っ」

海未「ふふ、良い物を見せてもらいました」

海未「ご褒美に抜いてあげるとしましょう」ズボッ

絵里「かっ……はぁ……はぁ……」グテッ

海未「今ので随分おとなしくなりましたね」

海未「それでは、絵里は休憩させてあげましょう」

海未「次は亜里沙の番ですよ」

絵里「やめて……亜里沙には……」

海未「やめるわけないでしょう」

海未「絵里は目の前で妹がズタズタにされるシーンでも見ていてください」

海未「さあ、お待たせしました亜里沙」

海未「今の気分はどうですか?」

亜里沙「…………あの」

海未「はい、なんでしょう」

亜里沙「暗号には……どんな内容が書かれていたんですか?」

海未「…………」

海未「はぁ……姉がこんな目にあっているのに、まだ探偵ごっこをやってるんですか」

海未「そんなもの知ったところで何も変わらないというのに」

亜里沙「…………」

海未「まあいいでしょう。自分が説明した暗号がどうやって使われたのかくらい教えてあげましょう」

海未「絵里、説明してあげてください」

絵里「……円周率のシーザー暗号よ」

亜里沙「その……内容は?」

絵里「……『そのなかにはんにんがいる。よるにはなれごやにきて。』」

海未「本当に絵里だけに伝えたいならロシア語使えばいいだけなのに、そんなことにも気づかないなんて」

海未「妹が妹なら姉も姉ですね」

海未「さあ、これで謎はスッキリしましたか?」

海未「今から絵里に変わって亜里沙が酷い目に合う番です」

海未「とりあえず指を一本ずつ折ってみましょうか? きっと楽しいですよ」

亜里沙「……海未さん」

海未「はい、どうしました?」

亜里沙「ごめん……なさい」

海未「ふふ、謝る必要なんてないんですよ」

海未「亜里沙は別に悪いことなんてーー」













亜里沙「気づいてあげられなくて、ごめんなさい」

海未「…………え?」

海未「何を……言って」

亜里沙「『その中に犯人がいる』」

亜里沙「普通なら、自分を容疑者の一人にしようなんて思いません」

亜里沙「今はいない人……例えば、花陽さんの死体を隠して、犯人に仕立てあげればいいじゃないですか」

海未「……つまらない妄想ですね」

亜里沙「妄想じゃありません」

亜里沙「だって、海未さんはお姉ちゃんとここまで来たんですよね?」

海未「だったらなんだというんですか」

亜里沙「お姉ちゃんを監禁したいだけなら、ここで待ち伏せしていればよかっただけです」

亜里沙「犯人だと疑われているのに、わざわざお姉ちゃんと来る必要なんてありません」

亜里沙「本当は……気づいて欲しかったんですよね?」

亜里沙「自分が犯人だって」

海未「……違う」

亜里沙「海未さんがこうなった原因は……誰も気づいてくれなかったから、ですか?」

亜里沙「海未さんの気持ちも、悩みも、何も考えずに負担ばかりかけて」

亜里沙「何時の間にか……心が壊れてしまった……」

海未「違いますっ!」

海未「私は殺すのが楽しいからやっているんです!」

海未「何も知らないくせに、知ったような口をたたかないでください!」

亜里沙「はい……亜里沙は何も知りません」

亜里沙「だから、知りたいんです」

亜里沙「海未さんが何を抱えていたのか……どうしてこうなってしまったのか……」

亜里沙「私は……気づいてあげることができませんでしたから」

海未「黙れッ!」

ゴスッ

亜里沙「っ……!」

海未「自分の立場を忘れているんじゃないでしょうね?」

海未「爪を一枚一枚剥がしてあげましょうか?」

亜里沙「いいですよ……」

海未「……え?」

亜里沙「それで海未さんの気持ちが収まるなら……亜里沙の体は好きに使ってください」

海未「何故……」

亜里沙「……海未さんなら、もう解っているでしょう?」

亜里沙「海未さんのことが……大好きだからです」

海未「っ!」

バキッ

亜里沙「っ!」

海未「嘘を……言わないでくださいッ!」

海未「目の前で姉を酷い目に合わせて、今自分にも暴力を振るって」

海未「そんな人間を、好きでいられるわけがないでしょう!?」

亜里沙「……海未さんには、嘘に見えますか?」

海未「……っこの!」グッ

海未「黙らないと、指を本当に折りますよ!?」

亜里沙「あは……海未さんと手を繋いじゃいました」

亜里沙「嬉しい……です」

海未「…………っ!」

ボキッ

亜里沙「っっっっっ!」

海未「黙れと言ったはずですよ」

海未「いいですか、貴女に今必要なのは憎悪です」

海未「憧れていた人に裏切られた、憎しみの心です」

亜里沙「無理……ですよ」

海未「…………何故」

亜里沙「だって……海未さんのことが大好きなせいで、そんな気持ちが入る余地なんてないんですから」ニコッ

海未「……だったら」スッ

海未「二度とそんなことが言えないようにしてあげます!」

ボキボキベキッ

亜里沙「っ~~~~!!」

海未「あはははは! 右手の指が全て折れてしまいましたね!」

海未「少しは悲鳴でもあげてみたらどうですか?」

亜里沙「……嫌、です」

亜里沙「だって……好きな人にみっともない姿なんて、見せたくありませんから」

海未「まだ……そんなことを!」

亜里沙「海未さん……何をそんなに怯えてるんですか?」

亜里沙「大丈夫ですよ……亜里沙は、ずっと海未さんの味方ですから」

海未「黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ズチュッ

亜里沙「んっ!」

ポタ……ポタ……

海未「ふふ、いい切れ味でしょう、このナイフ」

絵里「海未……もう止めて……」

絵里「やるなら私を……」

海未「負け犬は黙っていなさい!」ドカッ

絵里「っ……!」

海未「ふん……どうですか、亜里沙、切り裂かれる痛みは?」

亜里沙「こんなの……どうってことありませんよ」

亜里沙「今まで海未さんが受けていた苦しみに比べれば……軽いものです」

海未「亜里沙……貴女は……」

亜里沙「えへへ、亜里沙は海未さんが思ってるよりも強情なんですよ?」

亜里沙「知りませんでしたよね? だって、人の心なんて、誰にも解らないはずなんですから」

海未「っ…………」

亜里沙「言い訳……だなんて思っていません。海未さんを追い詰めてしまったのは、事実なんですから」

亜里沙「海未さんも……いつもとは違う自分を出せば、変われていたんだと思います」

亜里沙「でも、そんな自分をさらけ出すのは難しいことです。そういう時こそ、友達を頼るべきなんですよ」

亜里沙「海未さんにだって、いたはずですよね?」

亜里沙「困った時に……助けてくれる人が」

海未「……いません」

海未「いるのは……自分で抱え込むことしかできない人と……誰かに縋ることしかできない人です」

亜里沙「それなら、亜里沙がなります」

亜里沙「海未さんが困ってたら助けてあげて、寂しくなったら抱きしめてあげます」

海未「……黙れ」

亜里沙「亜里沙は絶対に海未さんの側を離れません。だからーー」

海未「黙れ黙れ黙れッ!」

海未「今さら何を言っても遅いんですよ!」

海未「それに助けるですって!? 都合のいいことを言わないでください!」

海未「何も背負わず生きてきた貴女が、私を助けられるわけないでしょう!」

グチュグチュグチュッ!

亜里沙「っ……ぎっ……ぃっ……!」

海未「違う自分を出せば変われる!?」

海未「出したら何もかも終わりじゃないですか!」

海未「今まで積み上げたものが全て崩れて、皆から見放されて、必要とされなくなって!」

海未「私にそんな世界に行けと言うんですかっ!」

グリグリグリッ!

亜里沙「っ~~っっっっ!!」

海未「……できもしないことを口に出さないでください」

海未「気休めなんて、いりません」

亜里沙「……それでも……亜里沙は……」

亜里沙「ずっと……海未さんから……離れて……あげません……」ニコッ

海未「…………っ」

海未「なんなんですか……貴女は!」

亜里沙「大丈夫……です」

海未「やめて……ください!」

亜里沙「怖くない……」

海未「見るな……!」

亜里沙「勇気を出して……変わってみてください」

亜里沙「亜里沙を……信じて……」

海未「そんな目で私を見るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ズチャァァァァァ!

亜里沙「あっ……ぃぃ……!」

ボタボタボタ

海未「はぁっ……はぁっ……」

海未「っ…………はははは!」

海未「可愛い目が台無しになってしまいましたね」

亜里沙「……ふふっ」

海未「何が……おかしいんですか!」

亜里沙「海未……さんに……可愛いって……言われちゃいましたね」

海未「……減らず口をっ!」

海未「貴女が言うべきなのは恨みの言葉でしょう!」

海未「指を折られて! 体を抉られて! 目を潰されて!」

海未「それなのにどうしてそんなことが言えるんですか!?」

亜里沙「…………」

海未「……そうだ、いいことを思いつきました」

海未「亜里沙、貴女もこんなことされて本当は苦しいんでしょう?」

海未「『この世界に救いは無い』と言いなさい」

海未「そうしたら……命は助けてあげますよ」

亜里沙「……そう……ですか」

亜里沙「やっぱり……亜里沙じゃ駄目なんですね……」

海未「何を言って……」

亜里沙「……亜里沙では……海未さんを救えなかった……」

亜里沙「ごめんなさい……海未さん……」ポロポロ

海未「違う! 貴女が言うべきなのは!」

亜里沙「……えへへ……やっぱり亜里沙は……悪い子みたいです」

亜里沙「海未さんの言うこと……全く聞かないんですから……」

海未「何を……するつもりですか?」

亜里沙「でも……海未さんに嫌われても……この想いは絶対に消えないから」

海未「……黙りなさい!」

亜里沙「だから……もう一度だけ言わせてください」

海未「やめなさい!! やめないと殺しますよ!?」グッ

亜里沙「海未さん……」

海未「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


















「大好きです」

グチャ

ドサッ

今回はここまで

Episode7:無力


海未「はぁ……はぁ……」

絵里「う……そ……」

絵里「亜里……沙……」

絵里「っ……あああああああああああああああああああああああ!!!!」

絵里「海未ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

絵里「殺す! 殺してやる!」

絵里「貴女だけは絶対に私が殺してやる!」

ゴスッ

絵里「かっ……!」

海未「全く……とんだ異常者でしたね、絵里の妹は」

海未「頭のネジを二、三本落っことして来たんじゃないですか?」

絵里「っ……海未……っ!」キッ

海未「そうです! それです! その目つきですよ!」

海未「大切な人が目の前で傷つけられたら怒りますよね? 恨みますよね!?」

海未「それならさっさと呪いの言葉を吐いてくださいよ!!」

ドコッ

絵里「っ!」

海未「何も知らないくせに最後まで笑っていて……吐き気がします」

絵里「……殺す」

海未「え?」

絵里「絶対に……貴女を殺す」ギリッ

海未「……あはっ」

海未「絵里は何時から馬鹿になったんですか?」

海未「今の状況解ってます? できるわけないじゃないですか」

海未「それに、亜里沙が死んだのは貴女のせいですよ、絵里」

海未「貴女が亜里沙をこの合宿に連れてこなければ、亜里沙は死ななかったんですからね」

絵里「…………!」

海未「しかも絶対に守るなんて偉そうなことを言っておいてこのざまとは」

海未「所詮、貴女は誰も守ることができない無力な人間だったということですよ」

絵里「っ……黙りなさい!」

絵里「亜里沙を殺して……よくもぬけぬけと!」

絵里「貴女にも同じ苦痛を味わわせてやる!」

海未「反抗すれば殺されると解っているのに……」

海未「これも美しい姉妹愛がさせているのでしょうか、泣かせますねぇ」

海未「……ああ、いいことを考えました」

海未「絵里、ファーストキスはもうしましたか?」

絵里「え?」

海未「していませんよね、なんだかんだで純情ですし」

絵里「だったら何!? 貴女なんか絶対にお断りよ!」

海未「あはは、嫌われてますねぇ。ですが安心してください」

海未「絵里だって、ファーストキスは大切な人としたいでしょう?」

絵里「何を言って……」ハッ

絵里「ま、まさか……」

海未「ええ、させてあげますよ」

海未「愛しの亜里沙と……ね」ニタァ

絵里「や、やめ……」

グッ

絵里「っ……」

海未「遠慮しなくていいんですよ、絵里」

海未「ほら、見てください、この亜里沙の綺麗な顔を」

海未「片目が潰れて血を流していますけどね、あはははは!」

絵里「許さない……」

絵里「絶対に……殺してやる……!」

海未「その威勢……いつまで持ちますかね」

海未「それでは、姉妹の美しいキスの時間と行きましょう」

絵里「やめ……むぐんんんん!?」

チュゥ

絵里「んんんんんんん!」

海未「ふふ、良かったですね、絵里」

海未「大好きな亜里沙とキスができて」

海未「感想はどうですか?」グイッ

絵里「ぷはっ……はぁ……っ」

絵里「……許さ……ない……」

海未「そんなに嬉しいんですか、それならもう一度させてあげましょう」

絵里「ひっ!?」

チュゥ

絵里「んっ! んん!」

海未「死人とキスして嬉しいだなんて絵里も狂ってますね」

絵里「んんん!」

海未「はは、何を言ってるのか全くわかりません」グイッ

絵里「っは……はぁ……はぁ……」

絵里「お願い……もう止めて……」ポロポロ

絵里「こんなの……酷すぎる……」ポロポロ

グイッ

絵里「んぐっ!」

海未「何寝ぼけたことを言ってるんですか、私は亜里沙を殺した犯人ですよ?」

海未「屈伏するには早すぎます。もっと頑張りましょう」

グイッ

絵里「ぷはっ……」

海未「まだ行けますよね、絵里?」

絵里「あ……あ……」

絵里「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぃ!!!」

絵里「こんなの嫌!! もう止めて!!!」

海未「…………」

グイッ

絵里「ん!」

海未「…………」

絵里「ぷはっ……むぐっ!」

海未「…………」

絵里「ぁ……やめ……ん!」

海未「…………」

絵里「っ……許して……んぐ!」

海未「…………」

絵里「ひぐっ……いやぁ……あっ!」ポロポロ

海未「…………」

絵里「ひくっ……ひぐっ……」

海未「はぁ……大人ぶっていても所詮は高校生ですか」

海未「もう少し楽しめるかと思ったんですけど……ね」

海未「こんな状態では殺してもあまり楽しくはなさそうですし……」

海未「ああそうだ、絵里にはこの小屋の中にいてもらいましょう」

海未「貴女の守りたかった皆を殺してあげます」

海未「その後じっくり殺しましょう」

海未「それまでずっとここで自分の無力を嘆いていていてください」

海未「亜里沙と一緒だから寂しくありませんよね、ははは!」

パタン

ガチャ

絵里「亜里……沙……」

絵里「ごめん……ね……情けない……お姉ちゃんで……」

絵里「私がもっとしっかりしていれば……ちゃんと守ってあげられたのに……」

絵里「ごめんなさい……ぐすっ……ごめんなさい……」

絵里「それに……皆も……」

絵里「私は……誰も守れない……」

絵里「皆が……危ないのに……」

絵里「もうやだ……死にたい……」ポロポロ

絵里「誰か……助けて……」

スタスタスタ

海未「さて……今から館に戻って雪穂を殺す用意をしないといけませんね」

海未「雪穂の座っていた席にボウガンを仕掛けて……希を起こしますか」

海未「館の中を探す時に希が罠に掛からないようにしないといけませんね」

海未「ああでも……もしも罠に他の人が掛かってしまったら……」

海未「まあ、その時はその時で面白いですか」

海未「ああ……楽しみです」

海未「皆どんな顔で死んでしまうのでしょうか……ふふっ」


ーーー
ーー

絵里「……んっ」パチッ

絵里「ここは……」

絵里「そうだ……海未に捕まって……」

絵里「……亜里沙」

絵里「……大丈夫、寂しくないわ」

絵里「私も直ぐにそっちに行くから……」

絵里「だから……もう少しだけ我慢してて」

絵里「ふふ、亜里沙は寂しがり屋さんだからね」

絵里「私がいないと何もできないんだもの」

絵里「だから私が側にいてあげないと」ピトッ

絵里「もう、亜里沙、ひっつきすぎよ」

絵里「……あれ? 何か硬い物が当たってるような……」

絵里「はぁ、またポケットに物を詰めてるの?」

絵里「この格好だと取りにくいけど……よいしょっと」

絵里「よし、取れたわ。いい、これからはポケットに物を……」

絵里「え……?」

絵里「ナイフ……?」

絵里「なんで……こんなものが……」

絵里「もしかして……まだ頑張れって言うの?」

絵里「嫌よ……私はもう十分頑張った……」

絵里「それでも……亜里沙を殺されて……酷い目にあって……」

絵里「でも……私がやらないと……皆が……」

絵里「もう……こんなこと嫌なのに……」

絵里「…………っ!」スッ

キリキリ スルッ

パサッ

絵里「……やってやろうじゃない」

絵里「これが、与えられたチャンスだというのなら」

絵里「はあっ!」ドコッ

絵里「っ……やっぱりドアからは出られないみたいね」

絵里「とすると……窓からしか出られないか」

絵里「はあっ!」

パリン!

絵里「……掴まるところも足場もなし。出たら海に落下……か」

絵里「全く……なんでこんな所に建てたんだか」

絵里「…………岩場にぶつからなければ、きっと大丈夫」

絵里「亜里沙、必ず迎えに来るから」

絵里「少しだけ寂しいの……我慢してね」

ヒュッ

ザバン!

パシャパシャ

絵里(っ……服が重い)

絵里(水は冷たいし……はは、冬なのすっかり忘れてたわ)

絵里「っ……ぷはっ」

絵里(苦しい……力を抜いたら直ぐにでも沈んでしまいそう)

絵里(でも……私がここで倒れるわけにはいかない)

絵里(私が……皆を守るんだから!)

ザバッ

絵里「っ……はぁ……はぁ……」

絵里「なんとか……陸に上がれたわね」

絵里「体が……重い……」

絵里「少しだけ……休憩……」

絵里「っ……駄目」

絵里「その間にも……誰か殺されてしまうかもしれない」

絵里「急がないと……」

ズルズル


ーーー
ーー

スタスタスタ

海未「……確か、こちらのほうから……」

海未(微かにですが、扉を開ける音が聞こえました)

海未(この島には私たちしかいないはず……それなら、誰が?)

海未「…………」

海未「っ!?」

海未「貴女は……!」

海未「絵里……!?」

絵里「…………」

絵里「おはよう、海未。昨日はよく眠れたかしら?」

絵里「私はぐっすり眠れたわ……貴女のおかげでね」

海未「……どうやってあの小屋から」ハッ

海未「びしょびしょに濡れた服……まさか窓から飛び降りたんですか……?」

絵里「ええ、そうよ。朝から海水浴なんて二度とごめんだわ」

海未「ですが……絵里はロープで縛られていたはず」

海未「どうやって抜け出したんですか?」

絵里「……これよ」スッ

海未「それは……私が亜里沙にあげたコンパクトナイフ……!」

海未「……亜里沙……貴女は何処まで私を苛立たせてくれるのですか……!」

絵里「怒りっぽくなってるわね、ちょっと寝不足なんじゃないの?」

絵里「安心しなさい、ぐっすり眠らせてあげるわ」

絵里「二度と目が覚めることもないくらい……ね」キッ

海未「……ふふ、威勢がいいですね」

海未「このくらいで勝った気にならないでください」

海未「そんなに疲れていて私に勝てるとでも思っているんですか?」

海未「今度はちゃんと殺してあげますね」スッ

海未「それにしても、貴女達三年生は本当に私の予想を裏切ってくれます」

海未「にこは本当にメンタルが弱いですね」

海未「妹を殺すぞって脅したり、真姫の振りしてメールを送っただけで死んでしまうのですから」

海未「画像が適当に合成した偽物とも気づかないで……ね」

絵里「……にこがおかしくなったのはそういうことだったのね」

海未「ええそうです。それと希の死に方を教えてあげましょうか?」

海未「雪穂を庇って死んだんですよ」

絵里「っ……希……」

海未「ふふ、滑稽ですよね。結局はその守った雪穂も穂乃果に殺されてしまったんですから」

海未「ああいうのをなんと言うか知っていますか? 無駄死にって言うんですよ、ははっ!」

絵里「……命を燃やして大切なものを守り抜くことを、貴女は無駄とせせら笑うの!?」

海未「ええ、そうですよ。だったらどうします?」

絵里「ここで死になさい!」

ヒュッ

海未「おっと」サッ

海未「ふふ、危ないですね、避けなければ死んでーー」

海未「っ!?」サッ

絵里「呑気にお喋りしている暇なんてないわよ!」ヒュッ

海未「っ……鬱陶しい!」ドコッ

絵里「ぐっ!?」ヨロッ

海未「…………」スッ カチッ

絵里「……携帯なんて出して……余裕のつもり?」

海未「いえ、楽しいゲームを始めただけですよ」

絵里「ゲーム……?」

海未「ええ……ことりの生死を賭けた……ね」

絵里「っ……!?」

絵里「どういう……こと?」

海未「簡単な話です。この戦いが長引けばことりは穂乃果に殺されるでしょう」

絵里「そんな……!」

海未「まあ、ことりが本当に殺されてしまっては楽しみが無くなってしまいますから、守ってあげないといけませんけど」

海未「貴女を殺して……ね」

絵里「やれるものなら……やってみなさい!」

絵里「はぁっ!」ヒュッ

グチュッ

海未「っ……!」

絵里「なっ!? 腕で受け止め……」

海未「甘いんですよ、貴女は」

ズチュ

絵里「かっ……はっ……」

ボタボタッ

海未「呆気ないですね、絵里」

海未「結局貴女は誰も守れない無力な人間だったってことですよ」

海未「……と、急いでことりの所に向かわないといけません」

海未「その傷ではもう助からないでしょう、絵里」

海未「せいぜい……死ぬまで後悔し続けてください」

海未「さようなら」

タタタタ

絵里「っ……ぁ……」コポッ

絵里(嫌……こんなところで……終わりたく……ない)

ヨロッ

絵里(皆が死んで終わりなんて……そんなの……)

ヨロヨロ

絵里(何か……何かないの……?)

絵里(私に……できること……)

絵里「…………!」

絵里(厨房……?)

ズルズル

グッ

パシャパシャ

絵里「っ……ぅ……」

絵里(このまま行けば、誰も助からない)

絵里(それなら……何かきっかけとなる出来事が起きて、1人でも助かる可能性を作る……)

絵里(例えば……火事……とかね)

カチッ

ボオッ

絵里「…………」ドサッ

絵里(これでやっと……私も解放される)

絵里(結局……私は何も出来なかったわね)

絵里(ごめんね、亜里沙。ごめんね、皆)

絵里(私もすぐ……そっちに行くわ)

絵里(……守ってあげられなくて、ごめんなさい)

ゴウッ

今回はここまで。終わりまで間に合わなかった。

Episode8:一人


ーーーー凛がメールを受け取ってからの部屋待機

雪穂「…………」スヤスヤ

穂乃果「はぁ……」

穂乃果(花陽ちゃんが殺されるなんて……)

穂乃果(こんなの……絶対おかしいよ……)グスッ

穂乃果(っ……泣いちゃ駄目)

穂乃果(穂乃果はお姉ちゃんなんだから)

穂乃果(穂乃果がしっかりしていないと)

ワンデーインザレーインワンデーインザシャイン

穂乃果(……メール? 誰からだろう?)カチッ

穂乃果「っ!?」

From:Unknown
Subject:なし
本文
私が小泉花陽を殺しました。
ですが、まだ終わりではありません。
μ'sのリーダー高坂穂乃果。
貴女にチャンスを与えましょう。
次の殺し方のヒントです。
もし私の犯行を未然に防ぐことが出来たなら、貴女方に一切の危害を加えないことを約束します。
ただし、それを知ることが許されるのは貴女だけ。
他言すれば、その時点で皆殺しです。
それでは、ヒントをお教えしましょう。
『血飛沫の小夜曲』
健闘を祈ります。

穂乃果「なに……これ」

穂乃果「犯人からの……メール?」

穂乃果「これからも皆を殺すって……っ」

穂乃果「……穂乃果が、犯行を防げたら……皆は助かる」

穂乃果「やらないと……」

穂乃果「穂乃果が、皆を助けるんだ」

穂乃果「……今予告をもらってるのは凛ちゃん」

穂乃果「だから、このヒントにはその殺し方が書いてあるはず……」

穂乃果「『小夜曲』……って何?」

穂乃果「…………っ」

穂乃果「っ……駄目だよ……解かないと皆が危ないのに」

穂乃果「……皆に聞くこともできないし」

穂乃果「どうしたら……」

穂乃果「……そうだ」

穂乃果「穂乃果がずっと凛ちゃんの側にいればいいんだ」

穂乃果「それなら何が来るか解らなくても、凛ちゃんを守ってあげられるしね」

穂乃果「……今すぐにでも行きたいけど、凛ちゃんは部屋に閉じこもっちゃってるしお昼を待つしかないか」

穂乃果「安心して凛ちゃん。穂乃果が守ってあげるから」

穂乃果「……大丈夫。きっと大丈夫だから」

穂乃果「皆にばれないようにしないとね……」


ーーー
ーー

>>230から

穂乃果(凛ちゃんが死んで……真姫ちゃんに予告が届いて……)

穂乃果(穂乃果のせいだ……)

穂乃果(穂乃果が……凛ちゃんを助けられなかったから……)

穂乃果(このままじゃ……皆が殺されちゃう……)

穂乃果(っ……そんなの、嫌だ)

穂乃果(こんな……こんなメールさえ……来なければ……)カチッ

穂乃果「……え?」

穂乃果(新着メール……?)



穂乃果「っ!」カチッ

穂乃果(希ちゃんと雪穂は……良かった、気づかれてない)

穂乃果(今度は……何を)カチッ

From:Unknown
Subject:なし
本文
後輩を守ることができなくて残念でしたね。
貴女のせいで、大切な仲間がどんどん死んでいくことになります。
そうそう、次は西木野真姫の番でしたね。
彼女にも相応しい死に方を用意してあげましょう。
『断罪の十三階段』
頑張ってくださいね。

穂乃果(新しい……ヒント……)ゴクッ

穂乃果(これを解けば……真姫ちゃんを……)

希「穂乃果ちゃん? どうかしたん?」

穂乃果「っ!? の、希ちゃん!? なんでもないよ!」サッ

希「そう? なんやずっと後ろ向いとったけど」

希(今隠したのは……携帯?)

希(圏外で電波も通じないはずだけど……)

穂乃果「あはは、ちょっとぼーっとしてただけだよ」

希「……ならええけど。何かあったら相談するんやで?」

穂乃果「うん……ありがとう」

穂乃果「ねぇ、希ちゃん」

希「ん? どうしたん?」

穂乃果「真姫ちゃん……大丈夫かな?」

希「…………」

穂乃果「花陽ちゃんも……凛ちゃんも殺されて……もしかしたらーー」

希「大丈夫や」

穂乃果「…………っ」

希「あそこには、えりちもにこっちもおる」

希「あの二人が一緒なら、絶対に大丈夫や」

穂乃果「……そうだよね」

希「それじゃあ、そろそろ寝よっか?」

穂乃果「うん……ほら、雪穂もおいで」

雪穂「……うん」

希「元気がない子は……ぎゅーっとしちゃうで!」ギュー

雪穂「っきゃ!?」

穂乃果「! 穂乃果もする!」ギュー

雪穂「え? あの……」

穂乃果「大丈夫だよ、雪穂」

希「そそ、何かあったらうちが守ったるから」

雪穂「お姉ちゃん……希さん……」

雪穂「……ありがとう」ボソッ

希「それじゃあ電気消すよ」

穂乃果「うん、お休み、二人とも」

パチッ

穂乃果(今回のヒントは、前に比べて解りやすい)

穂乃果(十三階段)

穂乃果(……聞いたことがある。十三階段は昔の処刑台の段数)

穂乃果(そこで死刑囚の人が首を吊られて殺されたんだって……)

穂乃果(つまり……次の殺し方は首吊り)

穂乃果(ロープとか……何か首をしめそうなものから真姫ちゃんを遠ざければ……)

穂乃果(……大丈夫。今度こそ、大丈夫だから)


ーーー
ーー

>>264から

穂乃果(当然……だよね)

穂乃果(楽しいはずの合宿で殺人事件が起きたんだもん……)

穂乃果(穂乃果が止められなかったせいで)

穂乃果(穂乃果がいけないんだ……あの時無理にでも絵里ちゃん達の部屋に行ってたら……)

穂乃果(真姫ちゃんは……死なずにすんだかもしれないのに)

穂乃果(ごめんなさい……)ポロッ

穂乃果(っ……泣いちゃ駄目……)

穂乃果(雪穂と亜里沙ちゃんが不安になっちゃう)

穂乃果(穂乃果が、守らないと……いけないから)

>>379の後

ワンデーインザレーインワンデーインザシャイン

穂乃果「んっ……」

穂乃果「何……? こんな夜に……」

穂乃果「……っ! メール!?」

穂乃果「犯人から……だよね」

穂乃果「…………」カチッ

穂乃果「!」

From:Unknown
Subject:なし
本文
貴女は無能な人間ですね。
二回もチャンスを与えてあげたというのにむざむざと仲間を見殺しにしてしまったのですから。
そして、そのせいで矢澤にこは自殺した。
全て、貴女のせいですよ。
貴女のせいで、大切な仲間がどんどん死んでいくのです。
それでは、そろそろ貴女の『大切な人』を殺してあげましょうか。
『足元注意』
それでは、せいぜい頑張ってくださいね?

穂乃果「っ……」

穂乃果「穂乃果の……せい……」

穂乃果「皆が……死んだのは……」

穂乃果「……でも、殺したのは、あなたでしょ?」

穂乃果「……見つけないと。もう、誰も殺させたりしない……!」

穂乃果「……あれ?」

穂乃果「海未ちゃん達が……いない」

穂乃果「なん……で? 穂乃果達に黙って……何をしてるの?」

穂乃果「まさか……誰かを殺そうとして……?」

穂乃果「許さない……そんなの、絶対……!」

>>381

>>454から

カチャッ

穂乃果「……なんで」

穂乃果「なんで……こんなことに……」

穂乃果「ヒントを貰ってないのに……希ちゃんは気づいた……」

穂乃果「本当は、穂乃果が気づかないといけなかったはずなのに……!」

穂乃果「……そのせいで希ちゃんは死んじゃって……雪穂がおかしくなって……」

穂乃果「嫌だ……もう嫌だよ……」

穂乃果「こんなの……もう……」

ワンデーインザレーインワンデーインザシャイン

穂乃果「ひっ!?」

穂乃果「犯人……?」

穂乃果「……大丈夫……犯人は亜里沙ちゃんだから……」

穂乃果「この部屋にいれば……安全なはず……」カチッ

From:Unknown
Subject:なし
本文
貴女には失望しました。
まさか自分の妹への危険すら察知できないとは。
本来あそこで高坂雪穂を庇うのは貴女の役目だったはず。
妹を守ると言っておきながら、結局貴女は何もできていないじゃないですか。
東條希が死んだのは貴女のせいです。
ああ、それと良いことを教えてあげましょう。



星空凛を殺したのは、貴女ですよ。



扉を開くと彼女の首が飛ぶように仕掛けておいたんです。
つまり、貴女が扉を開けなければ、彼女は死ぬことは無かったんですよ。
人殺し。
星空凛も、東條希も、貴女が殺したのです。
自分が馬鹿だからとミスを棚にあげて、助けられる仲間を助けなかった。
そんな人として最低な貴女は、早々に殺しておくべきでしたね。

そうだ、最後に一つだけ。
面白い写真が撮れたので、是非見てください。
私からの細やかなプレゼントですよ。
【画像】

穂乃果「あ……あ……」

穂乃果「穂乃果が……殺した?」

穂乃果「そうだ……あの時……扉が重くて……それで……」

穂乃果「皆……穂乃果が……気づいていれば……」

穂乃果「っ……ごめん……なさい……こめん……」ポロポロ

穂乃果「もう……やだよ……許して……」ポロポロ

穂乃果「……駄目……涙を流したら……でも……」

穂乃果「……これからのこと……考えないと……いけないのに……」グスッ

穂乃果「……画像」

穂乃果「……良いものではないだろうけど……見るしかないよね」カチッ

穂乃果「……っ!」

穂乃果「亜里沙ちゃんと……絵里ちゃん……!?」

穂乃果「そんな……二人とも犯人に捕まって……」

穂乃果「…………え?」

穂乃果「ちょっと……待って」

穂乃果「犯人は……亜里沙ちゃんじゃない?」

穂乃果「そんな、だって、後生きてるのって……」

穂乃果「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!??!」

ドコドコ

バタン

雪穂「お姉ちゃん!?」

海未「ほ、穂乃果!? どうしたんですか、そんなに慌ててでてきて……」

穂乃果「あ……あ……!」

穂乃果(この中に、犯人がいる!?)

穂乃果(逃げないと……殺される……!)

海未「穂乃果?」

穂乃果「嫌っ!」バシッ

海未「っ!?」

穂乃果「はぁ……はぁ……」

カチャリ

キィ

タタタタタタタタタタタタタタ

雪穂「お姉ちゃん!? 何処にいくの!?」

海未「待ってください! 穂乃果!」

タタタタタタタタタ

バタン

カチャリ

雪穂『部屋の中に!?』

海未『くっ……穂乃果! どうしたんですか!』ドンドンドン

穂乃果(嫌だ……怖い……)ブルブル

穂乃果(お願い……早くどっかいって!)

雪穂『お姉ちゃん、出て来てよ!』

穂乃果「嫌!」

海未『そうやって何人も死んでしまっているんですよ!?』

雪穂『そうだよ、皆でいた方が安全だよ!』

穂乃果「そんなこと言って、穂乃果を安心させて殺すつもりなんでしょ!?」

雪穂『違う! 私はそんなことしない!』

雪穂『どうして解ってくれないの!?』

穂乃果「うるさい! 早く向こうに行ってよ!!」

穂乃果(殺す気なんだ……穂乃果を)

穂乃果(だから必死に……扉を開けさせようとしてる)

穂乃果(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)

穂乃果(死にたくない!)

海未『穂乃果……解ってると思いますが、私たち以外の人が来ても絶対に開けないようにしてください』

海未『それと、これだけは覚えておいてください』

海未『私も……雪穂もことりも……皆、貴女のことを大切に思っています』

海未『ですからーー』

穂乃果「私に関わらないで!!」

海未『穂乃果……』

スタスタスタ

穂乃果(諦め……た?)

穂乃果(……油断したら駄目。すぐにでも、また殺しにくるかもしれない)

穂乃果(何か……武器になるものは……)ガサガサ

穂乃果(……! ナイフ!)

穂乃果(これさえ……あれば……)ゴクッ

穂乃果(でも……本当にあの三人の中に犯人がいるの?)

穂乃果(雪穂は大切な妹で……海未ちゃんとことりちゃんは大切な幼馴染……)

穂乃果(犯人なんて……いないはず……なのに……)

穂乃果(なんで……皆を拒絶してるの……)ポロポロ

ワンデーインザレーインワンデーインザシャイン

穂乃果「…………っ」カチッ

穂乃果「え……?」

From:Unknown
Subject:なし
本文
ふぅ……もう飽きちゃったな。
そろそろ終わりにしよっか。
そうだ、最後にいいこと教えてあげる。
あの矢、何もしなくても当たらないようになってたんだよ。
それなのにわざわざ当たりに来て死んじゃうなんて、希さんも間抜けだよねー。
そう思わない?




















お・ね・え・ち・ゃ・ん?

穂乃果「う……そ……」

穂乃果「雪穂が……犯人?」

穂乃果「なんで……そんなの……ありえない……」

穂乃果「だって雪穂は……穂乃果の妹で……」

穂乃果「はは……嘘だよ」

穂乃果「嘘に決まってるよ……」

コンコン

雪穂『お姉ちゃん……』

穂乃果「ひっ!?」

雪穂『ごめんね……一人にしてあげたかったんだけど、どうしてもお姉ちゃんのことが心配で』

雪穂『お姉ちゃんがどうしてそんな風になっちゃったのかはわかんないけど、お姉ちゃんの力になりたいの』

穂乃果「っ……」

雪穂『だからお願い……私を信じて』

雪穂『お姉ちゃん……』

穂乃果(……そう、だよ)

穂乃果(雪穂が……人殺しなはずがない……)ソロッ

穂乃果(今もこうやって……穂乃果の側にいようとしてくれてる……)

穂乃果(だから…穂乃果も歩みよらないと……)

穂乃果(だって……大事な家族だもん……)スッ

穂乃果「……え?」

穂乃果「なん……で?」

穂乃果「どうして……雪穂がナイフを持ってるの?」

穂乃果「穂乃果を慰めに来たんじゃ……ないの?」

穂乃果「……は、はは」

穂乃果「そういう、ことだったんだ」

穂乃果「雪穂は……穂乃果を……殺しに……来たんだ……」ポロッ

穂乃果「…………」

穂乃果「…………嘘つき」

穂乃果「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき」

穂乃果「よくも今まで……穂乃果を騙して……!」

穂乃果「殺して……やる……」

カチャリ

キィ

雪穂「あ、お姉ちゃーー」

穂乃果「死ねっ!」

雪穂「え?」

ズチュ

雪穂「あああああああああああああああ!??!?!?」

穂乃果「嘘つき……信じてたのに……!」

雪穂「お姉ちゃん……なんで……」

穂乃果「死ね!」

グチュッ

雪穂「かっ……」

雪穂「っ……ねぇ……ちゃ……」

ズチャァ

ドサッ


ーーー
ーー

>>496の後

ザァァァァァァ

ことり「……どうして穂乃果ちゃんはあんなことに?」

ことり「真姫ちゃんの携帯にメールが来たのと同じタイミングで、だよね……」

ことり「…………」

ことり「そういえば、真姫ちゃんの着信音ってにこちゃんの曲だったよね」

ことり「それじゃあ、あの時聞こえた真姫ちゃんの曲って……にこちゃんの着信音だったってこと?」

ことり「……海未ちゃんに教えないと」

ことり「……あれ?」

ことり「それじゃあ……どうしてあの時ーー」
ことり(海未ちゃんは、にこちゃんの名前を呼んだの?)

穂乃果「あはは……はは……」

穂乃果(終わったんだ……これで……)

穂乃果(皆……助かるんだ……)

穂乃果(……皆?)

穂乃果(皆って誰?)

穂乃果(生きてるのは三人だけ……)

穂乃果(違う……犯人は殺したから大丈夫なんだよ……)

穂乃果(穂乃果は守ることができ……あれ?)

穂乃果(誰を……守って……)

穂乃果(だって……犯人は雪穂で……穂乃果が……)

ワンデーインザレーインワンデーインザシャイン

穂乃果「…………え?」

カチッ

From:Unknown
Subject:なし
本文
実の妹を手にかけるとは、やはり貴女は最高です。
訳も解らず突然姉に襲われた雪穂の表情、堪能していただけましたか?
最後まで貴女を信じていたのに裏切られて、さぞ無念だったことでしょう。
それでは、そろそろ本当に終わりにしましょうか。
邪魔者もいなくなったことですしね。

穂乃果「なん……で?」

穂乃果「だって……犯人は……雪穂の……はずじゃ……」

穂乃果「そんな……」

穂乃果「雪……穂……」

穂乃果「っ…………」ギリッ

穂乃果「許さない……」

穂乃果「絶対に……殺してやる……」

タタタタタ

ことり「穂乃果ちゃん!?」

穂乃果「…………」

穂乃果(こいつが……犯人?)

ことり「大丈夫? 何があった……の?」

穂乃果「…………」

穂乃果(解らない……どっちが犯人なのか)

ことり「穂乃果……ちゃん?」

穂乃果「…………あはっ」カチャリ

穂乃果(ううん、別に犯人がどっちかなんて関係ないか)

ことり「それ……雪穂ちゃんの……ナイフ……」ブルッ

ことり「まさか……!?」

穂乃果「……死ね」ヒュッ

穂乃果(二人とも殺しちゃえばいいんだから)

>>516

穂乃果「かはっ!?」

穂乃果(なんで……こんなところで……)

海未「穂乃果!?」

ことり「穂乃果ちゃん!?」

穂乃果(目の前に……雪穂を……皆を殺した犯人がいるのに)

海未「シャンデリアが落下するなんて……もう館中に火が……!」

ことり「……は、早く……助けないと……!」

海未「…………もう、無理です」

ことり「そんな……」

穂乃果「…………っ」パクパク

穂乃果(このまま終わるなんて……嫌だ……)

海未「……穂乃果?」

穂乃果「ごほっ、げほっ、えぐっ」

穂乃果(駄目だ……もう意識が……)

穂乃果「…………ね」

穂乃果(でも……お前だけは……)

海未「え?」

穂乃果「死…………ね…………」ガクッ

穂乃果(絶対に……許さない)

Episode9:想い


皆に気付いて欲しかった。

平気じゃない、大丈夫じゃない。全部強がりなんだって。

でも、駄目だった。

幼い頃から自分を殺して生きてきた私の本音は、誰も気づくことができない。

だから皆が羨ましかった。誰かに心配してもらえて、甘やかしてもらえる。

それなら私も、泣いて、いつもと違う自分を出せば変われたんだろうか?

いや、無理だろう。

だって、そんなもの、園田海未じゃないんだから。

解ってる。本当は怖かったんだ。

違う自分を出して、皆が離れてしまうのが。

私には、勇気が無かった。

だから、私は今日も弱いまま。

ああ、もしも願いが叶うのなら、私に理由をください。



勇気を出すための理由を。

本当に終わり、読んでくれてどもでした。
レスくれた人もありがとう。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月16日 (水) 13:09:16   ID: ESd9VQ1H

主犯真姫ちゃん,共犯にこちゃんかな・・・?
2人だけの世界でも作るのか・・・

2 :  SS好きの774さん   2014年07月23日 (水) 15:40:27   ID: PJ-um9v4

犯人真姫ちゃんっぽい

3 :  SS好きの774さん   2014年07月30日 (水) 06:10:00   ID: q1Orw4LP

ありさと思わせてのことり

4 :  SS好きの774さん   2014年07月30日 (水) 22:31:11   ID: Ivqp6Ej5

これは期待大ですね

5 :  SS好きの774さん   2014年07月30日 (水) 22:51:26   ID: 4FJQlD4x

モバP 「SEEDS of THE @%#$?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406714439/
集まれー^^

6 :  SS好きの774さん   2014年08月04日 (月) 01:56:37   ID: -tSN4Gz_

今週更新ないのか

7 :  SS好きの774さん   2014年08月07日 (木) 13:23:06   ID: cjKH3E02

続き楽しみにしています。

8 :  SS好きの774さん   2014年08月09日 (土) 01:20:44   ID: DTgDD6rO

楽しみにしてます

9 :  SS好きの774さん   2014年08月10日 (日) 00:13:56   ID: Giz7eqnD

犯人ことりっぽいかも

10 :  SS好きの774さん   2014年08月10日 (日) 21:03:28   ID: Uv23EXhY

続き気になるな

11 :  SS好きの774さん   2014年08月14日 (木) 05:26:14   ID: QgmlJVZ_

夜布団に潜り込んでこれを読むのが毎日楽しみだ…
続き期待してる!

12 :  SS好きの774さん   2014年08月15日 (金) 00:13:20   ID: lgQ7J-VS

はなよ生きてるな

13 :  SS好きの774さん   2014年08月15日 (金) 13:15:13   ID: 6KWa9jI0

のんたん…

14 :  SS好きの774さん   2014年08月16日 (土) 00:24:21   ID: s6FmKfxq

続き期待していますよ

15 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 07:31:58   ID: qlR_XVKN

雪穂が

16 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 08:24:56   ID: SV5d4tl0

続き気になってしょうがない

17 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 09:55:34   ID: KiK7RLwN

あんた最高だよ

18 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 23:45:27   ID: HCjefBqz

続きが気になるな
引き込まれる。

19 :  SS好きの774さん   2014年08月23日 (土) 12:53:19   ID: 37pwKcFH

「その中に犯人がいる」……穂乃果達の中に犯人がいると言いたいなら「この中に」と言えばいいはず。
わざわざ「その中」としたのは?

20 :  SS好きの774さん   2014年08月24日 (日) 22:44:14   ID: a3y26Vm_

いよいよクライマックスだな、ただ>>140の凛の心理描写で明らかに花陽の死を確信してる描写があるから凛が花陽の死を捏造したってのは矛盾してる……そこをスッキリさせてくれるトリックであることを楽しみにしてる

21 :  SS好きの774さん   2014年08月27日 (水) 08:25:58   ID: ndO3a0bQ

これ見てると、ことうみのCPが好きになってきた

22 :  SS好きの774さん   2014年08月27日 (水) 15:21:42   ID: D7gYr5Nj

あんた最高だ

23 :  SS好きの774さん   2014年08月28日 (木) 20:04:25   ID: n9HZ05fP

続き早よ早よ

24 :  SS好きの774さん   2014年08月29日 (金) 19:33:54   ID: Q10tUk3b

犯人は松岡修造か

25 :  SS好きの774さん   2014年08月29日 (金) 23:06:06   ID: o9k8bes2

花陽が生きていた?!

26 :  SS好きの774さん   2014年08月31日 (日) 04:18:28   ID: zqYqVdnM

海未ちゃんが犯人だったなんて…

27 :  SS好きの774さん   2014年08月31日 (日) 10:37:38   ID: xgFkSzP1

スピリチュアルやった
スッキリ

28 :  SS好きの774さん   2014年09月02日 (火) 02:01:14   ID: wKqzi_J2

最後の最後で駄作決定

29 :  SS好きの774さん   2014年09月02日 (火) 18:40:18   ID: es90j1PH

やっぱり海未ちゃんはヘタレでもサイコパスでもいいなぁ

狂ってるにしろことうみは最高

30 :  SS好きの774さん   2014年09月03日 (水) 06:14:52   ID: W8zkVAjm

なぜにこはまきをやっちゃったのか

31 :  SS好きの774さん   2014年09月03日 (水) 09:24:34   ID: YXb7n5bI

犯人ことりたそだと思ってた……
こーゆーSS好きよ

32 :  SS好きの774さん   2014年09月03日 (水) 13:06:35   ID: 9uKcS9Uu

まだよく分からんところがあるな…
解説とかしてくれんかね

33 :  SS好きの774さん   2014年09月07日 (日) 02:45:26   ID: nb1ILTmL

のんたんの死に方が、のんたんらしいな。
勘が良くて仲間思いなところがよく表現されてた。
にしても犯人は海未か....
流石に妹殺された絵里でも武道やってて鬼教官な海未には抗えないのかな

34 :  SS好きの774さん   2014年09月14日 (日) 11:41:30   ID: NN-_Lt6Q

うみまきのssも見たけど面白かった
あんたには期待してるで

35 :  SS好きの774さん   2014年09月15日 (月) 12:47:48   ID: ZgXYUXOn

遅筆すぎる…

36 :  SS好きの774さん   2014年09月18日 (木) 07:10:17   ID: EQPG_uQm

よくみたら、タイトルがさりげなくネタバレだったのか

37 :  SS好きの774さん   2014年09月28日 (日) 17:05:08   ID: Fgi5d0wy

≫806でサイドストーリー的なのも完結したの?

38 :  SS好きの774さん   2014年09月29日 (月) 23:19:38   ID: syNxD25u

勇気のreasonの歌詞に沿ってるんだなぁ

39 :  SS好きの774さん   2014年10月09日 (木) 06:39:31   ID: k7Va7X4K

海未ちゃん強キャラやん

40 :  SS好きの774さん   2014年10月09日 (木) 20:30:38   ID: UiYc3BiN

作者に感心したわ

41 :  SS好きの774さん   2014年10月11日 (土) 04:04:28   ID: xJXpLhdK

勇気のReason聞きながら見たらぞっとしてきたわ…ホントこの曲が違って聞こえるなーこえぇ!
それにしても最初のとこでひょっとしたきっかけで海未ちゃんの企画が破れてみんなと分かち合える別ルートも欲しいな…

42 :  SS好きの774さん   2014年10月12日 (日) 02:28:19   ID: bgVIUiZF

乙!凄く長かったけどじっくり読める文だったわ。
キチンと完結してくれて嬉しい。

43 :  SS好きの774さん   2014年10月13日 (月) 20:35:56   ID: lEKE8lFl

乙です。
最後の方できちんと補完してくれてよかった。
勇気のreasonの歌詞に合わせてたんやねー

次の作品楽しみにしてるー

44 :  SS好きの774さん   2014年10月13日 (月) 21:03:33   ID: cnB9UAtO

面白かった!

海未ちゃん犯人…

45 :  SS好きの774さん   2014年10月14日 (火) 06:56:02   ID: SRUel_HH

4ヶ月の長期に渡る大作お疲れさま

46 :  SS好きの774さん   2014年10月14日 (火) 15:26:33   ID: jsKztYBi

乙です!
それにしても終わる1日前に発見とは奇遇でしたw
次の作品も楽しみにしてます!

47 :  SS好きの774さん   2015年01月23日 (金) 20:34:49   ID: TroeECrf

個別の方で、穂乃果が死ぬ時のやつ凄く良かった。あの恨み節はシンプルながらゾクゾクきたw

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