【FFT】もしもラムザが女の子なら【未プレイさんでもおいでませ】 (84)

ランベリーを発ってから8日が過ぎた。マンダリア平原の景色は無駄に大きな石灰岩がただ乱立して邪魔なばかりで、
その上人気も非常に少ない。だからこうしてその一角で流血沙汰が起こっていても、助けは望むべくもない。

骸旅団なる盗賊がいる。年々伸びるその勢力が約4千に達したところで、とうとう排除の運びとなった。指揮を採るのは
北天騎士団。しかしどうにも人手が足りない。それでこうして我が騎士団が支援に遥々来た訳である。しかし何分他人事ならず、
それゆえ騎士見習いたる俺まで駆り出されている訳なのである。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401978136

俺らは近衛騎士団だから、当然護衛対象がいる。我がランベリーの領主である。とはいえ彼とて名のある武人、
守ることなどほとんどない。実質的には部下、配下だが、それとて名誉なことである。こうして旅路を共にするのも誉れ以外の何ものでもない。

そんな英雄、侯爵様が骸旅団に攫われた。噂話か何かだったら笑い飛ばしていたところだが、
俺はこの目で見たのである。その場に居合わせたのである。仲間は全員殺された。俺は最後の生き残りだが、そう呼べるのはあと何秒か。

奴らは隊を2つに分けた。この場に残ったその片方が、俺に気付いてしまった訳だ。俺も決して馬鹿ではないから、
気付かれないよう必死に努めた。それでもこうして見付かったのは、恐らく呼吸の所為だと思う。激しく上下する背中。それを止められなかった所為だ。

腕も、指さえまともに動かず、瞼を開くことさえ辛い。それでも片目を開いているのは、奴らが今にも剣やナイフを
振り下ろさんとしているからだ。けれどもそれらは俺の身体を突き刺さなかった。切り裂かなかった。彼女がそこにいたからである。

顔は幼く愛らしい。だが今目付きは非常に険しく奴らを睨み付けている。ブロードソードの広い刃で
敵を次々斬り伏せていく。流れる金糸のポニーテールが光を弾いて輝いている。ああ綺麗だと俺は思った。

俺は彼女に救出された。正確には…彼女と彼に。

彼女はラムダ、彼はディリータ、いわゆる幼馴染である。ここ数年は実家を離れ、王立士官アカデミーにて
汗と笑顔のスクールライフを一緒に送っているらしい。彼女の実家はベオルブ家、泣く子も黙る名門である。彼の実家もそこだというのは
親を亡くしたからであるゆえ、同棲などでは断じてない。断じて、絶対、確実に。

「痛いところはまだありますか? 歩いて平気なのですか? 横になられるべきなのでは? ポーション、もっといかがです?」

彼女は優しい。その上可愛い。天使だ、天使が舞い降りたのだ。

「ははは、心配しすぎだよ。痛いとことか、もうねえからさ」

「そう…ですか? 本当に?」

「ほんとに。マジで。めちゃくちゃ元気。元気すぎて困ってる」

おどけて見せると彼女は笑った。花かそれとも太陽か、可憐で眩しいその表情に、心拍数が上昇していく。さっきの彼女は
勇ましかった。今は普通の少女に過ぎない。そんなギャップに頭が眩む。他には何も考えられない。

しかし考えなければならない。助けるのである、候爵様を。だが行き先すら分からず仕舞いで
追い掛けようにもどうにもならない。それなら一緒に参りませんかと例の笑顔で彼女が言えば、
断る理由がなぜあるだろうか。当然二つ返事である。

λλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλ

どもっす>>1っす!ご覧頂き感謝どす!
早速書き溜めなくなったんで続き出来たらまた来ます!

ラムダの名前は汎用キャラから取ってるよ!
ID毎回違ってるけどauスマホだからです!
あと…三点リーダが2つじゃないのは好みっす

なんか他にもあったら聞いてね!

ではまた次回ー!乞うご期待!

λλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλλ

れっれれレスが!レスが付いてる!六つも…!

ありがとうございます!嬉しくて嬉しくて震えてます!
お祝いに買ってしまったコンビニのミルクレープ美味しいです!幸せです!

では以下、続きを投下しまっす!

そして翌日。連れて来られて訪ねたその地はイグーロス。春もたけなわ3月下旬、なのにどうして寒いのか。この地に面した海峡からの
風が非常に冷たい所為だ。ランベリーとて臨海都市だがここより遥かに暖かかった。それゆえ俺は震えが止まらず、
けれども2人は歩みを止めず、さも平然と振舞っている。ここの出身なのである。しかし実家へ行く訳ではない。この地の城へと向かうのだ。

「待っておったぞ私の子羊!」

門でラムダを抱き締めたのは、彼女の長兄ダイスダーグ氏。ここの主の軍師であるから、
出迎えられても不自然ではない。けれども決して当然ではない。多忙な軍師がなにゆえここに。仕事はいいのか、配下が泣くぞ。

「相も変わらずなんと可憐な! だが一段と綺麗になって! 複雑である、心配である!
 けれども嬉しい限りであ──誰だ貴様は! ラムダの何だ!」

突き付けられる抜き身の剣。黙れオッサン、シスコン野郎、んなこと言ったら首が飛ぼう。俺もラムダも慌てるばかりで、
だがディリータは苦しんでいる。笑いを堪えているからである。衛兵諸兄も同様である。早く助けて、ボク死んじゃう。

さてなぜ城を訪れたのか。ラムダの次兄に会うためである。彼は北天騎士団団長、だから助力を要請するのだ。ところがどっこい謁見叶わず、
応対したのはオッサンである。頼みたくない、帰らせてくれ。だけど頑張れ、耐えろ俺。けれどその実出る幕あらず、全てラムダが話してしまう。

「ふむ、なるほど…。それについては全てこちらで解決しよう」

「お待ちください、ベオルブ閣下! 仲間が全員殺されたのです! どうかこの手で仇討ちを!」

嘆願虚しく突っ撥ねられて、為すすべもない。だがそんな時。

「せーの、ハッピーバースデー!」

ここは中庭、水門付近。駆けてくるのは2人の少女。そして抱き付く、ラムダの胸に。

「え、何、何これ、え、どういうこと」

俺は非常に狼狽えている。

「言わなかったか、誕生日だよ。今日で16歳なんだ」

だがディリータは落ち着いている。

「言ってねーだろ! 言うの遅えよ!」

「教えようとは思ったさ、ラムダがいない所でな。だけど昨日は時間がなくて」

なぜなら俺が寝ていたからだ。宿に着くなり、飯すら食べず。

「つーか起こせよ、腹減ってたのに!」

「そりゃ起こしたさ、ラムダと僕で。だが無理だった、どうしても」

「な、おま、ラムダもいたのかよ! 涎垂れたりしてなかったか!?」

「腹も出してて尻も掻いてた。目も半開き」

「うわあああ!!! うわあああああ!!!!!」

「楽しそうだな、友達か?」

登場したのは1人の男、歳は大体30くらい。美男イケメン男前、そんな言葉がよく似合う。

「いやいやまさか。違います」

否定したのはディリータである。酷くないすか、ボク泣きますよ。

「ではこれからか、青春だなあ。君、ディリータをどうぞ宜しく」

「あれ、もしかしてお兄さんすか。俺はアルガス・サダルファスです。弟さんには世話になってて」

頭を下げると2人は笑う。爆笑である。なんだこいつら。

「いやあすまんな、紛らわしくて! 兄は兄だがラムダのだ!」

ラムダの兄は2人だけ。だから彼こそ団長である。俺は再び頭を下げた、そして感謝の意を述べた。かつて戦時下
我がランベリーを奪還したのがこの方なのだ。ゆえに彼こそ英雄であり、誰もが憧れ尊敬している。俺も当然
その1人ゆえ、なぜ平然としていられよう。言うまでもなく号泣である。

「え、やだ、大変! どうしたのです!?」

「い゙や゙嬉じぐで…! がんげぎで…! つーがそれ゙よりおめ゙でどう」

「ふふ、ありがとうございます」

そして目元を拭ってくれる。水玉柄のハンカチからは甘い香りが漂ってきて、何だろうこの素敵な気持ち。幸せである。あと興奮する。

「いやあ、全く参っちゃうなあ! というか先を越されたな。可愛いラムダ、おめでとう」

「えー、では諸君。名残惜しいが、凄くとっても名残惜しいが、行かねばならん。ラムダ、すまない。プレゼントだが、
お前の部屋に置いてあるから後で見てくれ」

「まあ、何でしょう。楽しみですわ」

「今年は凄いぞ。4つ合わせて一揃いでな!
 帰ってきたら手合わせしよう。アルガス君も一緒にな」

「あびがどうございばず…!」

そうして彼は歩き始めた。しかし数歩で不意に止まった。

「侯爵殿の一件だがな。身代金の要求が来た」

「何だって!? 本当ですか!?」

「ああ、でも腑に落ちなくてさー」

曰く、奴らは義賊であると、誘拐なんてするはずないと。けれどスパイが帰らないため真偽のほどが定かではなく、だからお前ら見に行けと。
再び歩く後ろ姿は凛々しく見えてかっこよかった。すげー人だな、俺も将来ああなりてえな。なれっかな。

「ねえお姉様、行っちゃうの? さっき帰ったばっかりなのに?」

「ごめんね、アルマ。すぐ戻るから」

「お風呂一緒に入ってくれる? それと一緒に寝てくれる?」

「ええ、勿論よ。必ずね」

「ティータ、すまない。いい子でな」

「ううん、いいのよ。気を付けて」

愛とは斯くも美しきかな。再度涙で頬濡らしつつ、甘い香りに興奮しつつ、こうして俺らは旅路に着いた。

投下終了!また来るねー!
次回は、「アルガス、深夜にラムダを訪ねる」編から始まる予定です!



こんな世界に豆スープは似合わねぇぜ

>>6
ラムダ半分くらいに横幅抑えて
2chmateでAA判定で縮小表示されるから解除しないと読み辛い

改行が足りない場所が多い
単純な改行と空白行を入れるべき場所の両方
ひとかたまりがちょっと長い

>>13
反応がちょっとウザい

誤字に注意
誤字に限らず投下前に読む側のつもりで推敲した方がいい

FFTスレは完結しないというジンクスが俺の中にあるので頑張ってほしい

さて、濃厚な百合はまだですか?

>>27
ご意見ありがとうございます

何分初めてのss、初めての創作で、ついテンションが上がってしまいまして…
以後は普通に大人しく投稿していきますので、
温かく見守って頂けましたら幸いです

ただ長さ、改行につきましては、
その一つ一つがそれなりに意味を持ったものであり
ご指摘の通りには致しかねます

何卒ご理解頂けますと有難い限りです

ちなみにそれらはかの昼寝士氏の書き方を参考にしています


けれど台本形式でもなく旬のキャラが出る訳でもなくアルガスがクズらしくもない、そんなこのssを読み
そっ閉じでもなくつまんねと書き込むでもなく手間と時間をわざわざ掛けて
その上完結を期待してくださるなんて、

床に額を擦りつけてお礼申し上げたいくらい幸せなことです
本当に本当にありがとうございます

そのジンクスは私も常々悲しく思っていますので、
完結だけは何があろうと必ず果たす所存です
至らぬ点は多々ありますが、今後も宜しくお願いします

何かあったらまたご意見を頂けますと幸いです

>>28
百合についてはもうちょい待ってね!
百合担当はラファだから!

では以下投下!

月天高く、11時半。俺はラムダの部屋を訪ねた。しかし扉を叩けないのはまだ16の子供だからで、
それゆえ女に不慣れだからだ。指が震える。手汗が凄い。そして扉は勝手に開いた。否、正しくはラムダが開けた。

「どなたです! …あら、アルガスさん。こんばんは」

「あ、ご、ごめん。起こしたか?」

「いえ平気です、まだ寝ませんよ。それより何のご用です?」

ラムダの夜着は宿の備品だ。だから言いたい、ナイススタッフ。淡い水色ワンピースから
覗く脚、肌、身体の曲線。何たる魅力、何たる威力。特に胸元、その膨らみに俺の視線は奪われる。しかし瞬間
目を逸らすのは、ああ情けなき我が性よ。

「えと、誕生日おめでとう。大したもんじゃないんだけどさ」

差し出したのは俺の愛剣。有り合わせにもほどがあるとは俺が一番よく知っている。

「まあ、ありがとうございます。あの、でもこんな大事なものは…。明日困ってしまうでしょうし」

「弓もあるから心配ねえぜ。実は剣より得意でさ」

「接近戦で不利でしょう、やっぱり剣も必要ですよ。交換するのはいかがです?」

斯くして彼女の剣を得た。部屋に帰って抱き締めて寝る。柄の香りは何とも言えず、心安らぎ身体は火照る。

そしてあくる日、寝坊する俺。起こしに来たのはディリータである。

「なんでお前がラムダの剣を!」

「いえあのこれは」

「問答無用ッ!」

「ねえ、どうし──きゃーっ! フェニックスの尾ーっ! フェニックスの尾はどこーっ!!」

「…つまりラムダは部屋に男を入れた訳だな」

ここは食堂、朝食の席。他の奴らの視線が痛い。修羅場修羅場と小声が聞こえる。しかしラムダは落ち着いている。

「入れてなくてよ? そうでしたよね?」

「は、はい、断じて。1歩たりとも」

「剣をあげたと」

「交換したの。あなた、心配しすぎじゃなくて? もう16よ、子供じゃないの」

「だから心配してるんだろう!」

しかしラムダは首を傾げる。男2人は言葉に詰まる。

それから2日。ここはドーター。スラム街にて剣を交えて、骸旅団の捕虜を得る。

「侯爵様はどこにいるッ! どこに監禁しやがったッ!」

だが吐かないから蹴り飛ばす。ラムダはやめてと声を荒らげる。外で待たせておくんだったか。

監禁場所は砂漠の廃墟。誘拐犯もそこにいる。これだけ聞けばまあ十分か。貰った剣で
胸を突き刺す。ラムダはやはり大声を出す。そして怯えた顔をする。

そして次の日、砂漠にて。骸旅団のトップ2人が仲間割れして剣を向け合う。死んだ男は副団長で、
殺した男は団長である。両方死ねば良かったものを、そしたら手間が減っただろうに。

団長の名はウィーグラフ。平民出だが騎士である。

「侯爵殿はお返ししよう。私を逃がしてくれるのならな」

「ふざけやがって! この下衆野郎!」

「やめとけ、彼は本気だぞ!」

剣を抜く俺、止めるディリータ。姿を消したウィーグラフ。どいつもこいつも情けない口叩きやがって。反吐が出る。

投下終了!
どうしてID同一なんだろう…?

ではまた来ます。早ければ今夜にでも

アルガスのせいで一瞬ドーターがドーテーに見えた

FFT知らないけど支援

>>38
家の中の別のパソコンとかスマホからwifi使って書き込んでも出口は同じだからIDは変わらない
という話かな?

寝ちゃって起きたら日付変わってたけど
一応夜は夜だから有言実行してるよね(震え声)

>>39
アルガス「どどど童貞ちゃうわしししし失礼な」

>>40
知らない方にも見て貰えたらいいなと思ってたので嬉しいです
ありがとうございます
分かりにくいとことかあったら言って貰えると嬉しいっす

>>41
凄まじく分かりにくい発言にレスありがとうございます…!
スマホの3G回線で、いつもは投稿する度にID変わっちゃうんですよね
それでなんでかなーと思った次第です…

では投下!

5日が過ぎて、またイグーロス。

「お前それでもラムダの兄か! 何かあったらどうしてくれる! 顔に傷でも付こうものなら!」

「兄上! それは私情でしょう! それでも軍師なのですか!」

侯爵様を無事奪還して帰還してきた俺たちは、この壮絶な兄弟喧嘩にただ辟易して立ち尽くす。

「誕生祝いの食事の席を楽しみにしていたのだぞ! 家も私が飾り付けして料理も全て私が決めた! …そうか妬まし
 かったのだろう! 盗賊狩りが入ったゆえに! 参加出来ない腹いせだろう!」

そして一同言葉をなくす。それを一体どう取ったのか、ダイスダーグは高笑いしてさも得意げにふんぞり返る。

「もう良かろうぞ、恥ずかしい」

苦笑しながら入ってきたのはキノコ頭の奇妙な男。この地の領主、ラーグ公爵。ダイスダーグの幼馴染だ。幼馴染歴約40年、つくづく凄い人だと思う。

「いやあすまんねラムダちゃん。年頃だからやめてやれって、常々注意しているのだが」

「いえいえそんな、慣れてますので」

「しかしおじちゃん嬉しいなあ、前より更に可愛くなって」

「我が妹に色目など…! 閣下といえども許しませぬぞ!」

「それで結構。なあラムダちゃん? 今度2人でどこか行こうか」

ロリコンである。シスコン野郎の幼馴染はロリコンである。

そんなこんなで2日経ち。俺たちは今砦に来ている。骸旅団の一部の者がここに篭っているからである。侯爵様を
無事救出してこれでようやく帰れるはずが、なぜにこうしているかと言えば無論手柄の為である。

サダルファス家は没落貴族、ランベリーではそう呼ばれており、ゆえ辛酸を嘗め続けてきた。だからこうして手柄を稼ぎ
家を再興させるのである。しかるのちにはラムダと結ばれ、かのベオルブの血筋を受け継ぐ子を設ければ

言うことはなし。泣く子も黙る名家となるのだ。尤も、俺はただ純粋にラムダと結ばれたいのであって、
そんなものなどどうでもいいとか考えちゃってもいるのだが。

敵のかしらは女剣士で、その顔立ちは美しい。もしも貴族に生まれていれば引く手数多でさぞモテただろう。しかしこいつは

平民であり、血筋卑しき下賤の生まれ。良くてお妾程度であるが、それも所詮は叶わぬ夢だ。なぜならここで死ぬからである。

「ひもじい思いをしたことがある? 豆のスープで暮らしたことは?」

鍔迫り合いのさなかにて、彼女はそんなことを言う。下賤の血とは貴族の家畜、奪われるのは必然である。天が定めし

運命である。不平等だと彼女は言うが、家畜に神などいないのであり、貴族のために神はいる。それがこの世の理なのだ。

そうして敵は1人になった。

「どうせ家畜よ、殺すがいいわ!」

気丈な姿はなお美しい。そして非常に悩ましい。弄びたいところであるが、是非そうしたいところであるが、
ラムダがいては致し方ない。当のラムダは女の前で剣を手に取り躊躇っている。

「さっさと殺せ! そいつは敵だ!」

「僕は敵とは思えない…」

「ディリータ! 気でも狂ったか!」

「彼女は家畜なんかじゃない。僕らと同じ人間だ…」

「敵に情けを掛けられるとは、私も随分嘗められたわね」

そして女は立ち去っていく。伸ばした腕は届かなかった。その原因はディリータだった。

イグーロスまで帰還した時街は非常に騒がしかった。骸旅団の一隊によりベオルブ邸が襲われたのだ。ザルバッグ氏が偶然居合わせ
幸いそれは未遂に済んだ。だがディリータの妹であるティータを奴らは人質に取り、そしてそのまま攫ってしまう。

ベオルブ邸にて通されたのはダイスダーグの寝室である。負傷し休むその表情はやや苦しげでしかし嬉しげ、
それは大方どうせ絶対ラムダが心配する所為である。

「貴殿は残れ。話がしたい」

退室しようとしていた俺はダイスダーグに呼び止められた。聞いた話は衝撃的で、驚かずにはいられない。
ディリータ、ティータは貴族じゃなくて、ラムダの母は平民出。ラムダの父は変わった人で、そのためそんなことになったと。

ラムダの中に平民の血が。それはショックなことではあるが、しかし今更諦められない。どうかしてると
自分で思う。けれどそれでも止めようがない。俺はラムダを愛しているのだ。心の底から欲しているのだ。

ラムダを追って外に出る。不意に聞こえた彼女の声は切羽詰ったそれである。

「待ってディリータ! 落ち着いて!」

「たった1人の肉親なんだ! 落ち着いてなどいられるかッ!」

骸旅団はほぼ壊滅で、じきに残りも方が付く。ティータの身柄を取り戻すまで総攻撃などするはずがない。ダイスダーグは
そう話したが、平民風情を助ける為にテロに屈するはずがない。そう話したら殴られる。ああ、これだから平民は。

「ラムダ、そろそろ目を覚ませ。そいつは違う、平民だ。一緒に暮らすべきじゃない」

「あなたは何を言うのです! 彼は私の家族です!」

「所詮そんなのごっこ遊びだ! 一緒にいるなら俺にしろ! 俺にしとけばいいじゃねーかよ! 貴族の俺に! 平民じゃなく!」

ロマンチックなはずだった。どこか2人でいられる場所で、ラムダは笑っているはずで。
こんな形じゃ絶対なくて、こんな怒った顔でもなくて。

「消えてください! 私の前に二度と姿を現さないでッ!!」

「…ひでえな。俺たち仲間だろ?」

「行ってちょうだい! 今すぐ! 早く!」

「そうかよ、じゃあな。馬鹿女」

歩き続けて海に着く。虚勢はそこで剥がれて落ちた。4月の海に人気はない。波の音色はさも優しげで、
洩れる嗚咽を奪ってくれる。海峡からの冷たい風が火照った身体に心地良い。いずれ最期を迎えるのなら、
こんな所がいいかもしれない。今がその時かもしれない。装備を固めた重い身体は、このまま真っ直ぐ進んでいけばいずれ必ず沈むだろう。

しかしその時声がした。俺の名を呼ぶ男のそれはザルバッグ氏のものだった。

「やはりここだと思ったよ。失恋したら海だよなあ」

「…どうしてここに。今大変な時期のはずじゃあないんすか」

「君にチャンスを与える為さ。未来の弟候補にな」

投下完了!
アルガス退場につき、次回から語り手は多分ディリータに変わります

>>26
こんな世界でもやっぱり豆スープは健在だったよ!

本文中に3月とか4月とか出てますが
アルガスと知り合った日が3月22日で、決別した日が4月6日です
従って、ラムダは3月23日生まれの牡羊座という設定です

少し待ってほしい
ハイレグ天使ラムダちゃんになれば家畜神も改宗するのではなかろうか

日付必要かなとか思ってわざわざ1レス使ってみたけどよく考えたら要らねえな…
やっぱり起き抜けは駄目ですの

さてでは続き投下します!

>>57
さあ、そのネタでssを書く作業に入るんだ!
そしてその暁にはここにURLを貼ってくれ!

夕日は今日も美しい。ティータが誘拐されたのに、世界は何も変わらない。平民1人がどうなったって、知ったことではないんだろう。

「綺麗だな。ティータもどこかで見てるかな…」

歩みを止めてその場に座る。

「ティータは無事よ。大丈夫」

ラムダは隣に腰を下ろして、僕の片手にそれを重ねる。

「どんなに努力したってさ。駄目なものってあるんだな」

当然みたいに思ってた。ラムダとティータが側にいる。それは永遠なんだって。
ティータはいずれ誰かのところに行ってしまうかもしれないけれど。ラムダにとっての誰かは僕と疑いもせず信じてた。

「この手じゃ何も出来やしない。僕は持たざる者なんだ…」

ラムダは僕を抱き締めた。膝立ちしているその胸元に、押し付けられて思考が止まる。

「あなたは持たざる者じゃない。だって、私がいるでしょう?」

僕の鼓動は早まっている。彼女のそれは落ち着いている。彼女は僕を家族と言った。小さな苦笑が思わず洩れた。

ラムダの親は優しくて、僕に色々教えてくれた。例えば剣の使い方。武具の良し悪し、貴族の作法、草を楽器にする方法。

2つの音が辺りに響く。懐かしいわと彼女は笑う。そして2人で歩き出す。ラムダは僕の
手を取った。絡んだ指は宿に着くまでそのままずっと離れなかった。

私と彼は、北へ向かって急ぎ足で進んでいます。先日出会った女性剣士を昨日2人で討ちました。説得するも聞き入れられず
斬り合わざるを得なかったのです。そのあと彼は悩んでいます。僕は一体何者なんだと、歪めた顔でそう言って。

彼は私の幼馴染で、家族で、そして兄でした。いつでも彼は側にいて、常に私は守られて。だから今度は姉になりたい。私は
そう考えるのですが、掛ける言葉を見付けられずにただただ側にいるだけです。彼を元気付けられるのは、今私しかいないのに。

草地に風車が並ぶ地で、待っていたのはウィーグラフ。敵討ちだと彼は言います。女性剣士とウィーグラフ、彼らは兄妹だったのです。

殺し合いなど無意味です。必要なのは話し合い。けれども彼は聞き入れず、こちらに
剣を向けました。殺さなければ殺される。だから私も戦いました。

「手強い! すまぬ妹よ! 私はここで死ねぬのだ!」

そしてどこかへ逃げました。去り際彼は告げたのです。侯爵殿の誘拐事件はダイスダーグが仕組んだと。その手は血により汚れていると。

次の日、天気は雪でした。ティータは射殺されました。
私の兄の命令で。アルガスの手の、あの弓で。

だから私は討ったのです。彼と2人で、アルガスを。あの日貰ったこの剣で…。

ティータの側に彼はいます。身体をそっと抱き起こし、彼女の顔を静かに見つめ、何も喋らず佇んで。そこに向かって駆け出した時、
私は吹き飛ばされました。砦が爆発したのです。骸旅団がまだ生きていて、火薬に点火したのでしょう。

私は動けませんでした。彼は動きませんでした。腕の力を強めるばかりで微動だに
さえしないのです。火の手はすぐに迫り来て、彼は見えなくなりました。

気を失って目が覚めた時、私は全てを棄てました。そしてここから逃げたのです。

投下終了!ではまた次回!

これでchapter1終了です
いやー長かった!
とか言いたかったのに1週間足らずで終わってしまったでござる

そして続きも今日のうちに出来てしまったでござる…

>>64から丁度1年経ってからの話です
では投下ッ!

私の名前はアグリアス。近衛騎士の一員にして王女の護衛隊長である。昨今我が国イヴァリースでは王亡き後の覇権を巡り非常に
緊張状態にあり、それゆえ我が姫オヴェリア殿下は極めて危険な立場に置かれ、長年過ごした修道院をとうとう去らねばならなくなった。

「そろそろ出発致しましょう」

「ごめんなさい、もうちょっと…」

殿下は非常に信心深く今も祈りを捧げておいでだ。目を閉じ手を組み俯く姿はまるで聖女のようである。ゆえに
私は平時であれば何時間でも側で待つ。だが本日は護衛部隊が既に外にて待機しており、
それは生憎出来かねるのだ。けれども殿下が可憐な声で待ってと私に仰るのなら、いえ良いのですお好きなままにと思わず申してしまうのである。

そんな穏やか極まりない場に突然姿を現したのは黒の鎧にその身を包んだ何とも無礼で下品な男。名を
ガフ・ガフガリオンという。まだか早くと汚い声で騒ぐ姿は下劣なそれで、だから男はああ嫌だわと思考せずにはいられない。

「ガフガリオン殿! 不敬であ──」

振り向き様に告げたところでしかして私の動きは止まる。

「王女様の御前だよ!? お辞儀しないと駄目じゃない!」

そこに少女がいたからである。そして美少女だったのだ。

少女の短いヘアスタイルは一見男のそれである。声や面立ち、その身長は確かに少女のものではあるがまだ年若き少年なのだと
言われてしまえば信じただろう。だがその髪の蝶の飾りは男が使うものではない。ゆえに彼女は美少女である。紛うことなき美少女である。

「ンだよ、ラムダは細けえな…。へーへー、これでいいすかね」

「駄目です! 何その言葉遣い! も、申し訳ありません…。先ほど練習させたのですが」

少女はラムダという名のようだ。折り目正しくだが愛らしく、溢れる魅力を振り撒く様は殿下と一二を争うほどで、
つまり私は左右どちらに首を向けても美少女というかつてないほど素晴らしくだが非常に異常で稀なる事態にこの身を晒している訳なのだ。

「仲睦まじくてよいことですね。お待たせしちゃってごめんなさい」

さもおかしげな殿下の声は鈴、いやそれより可愛らしい。そんな殿下に仕えし私はかなりの幸せ者である。日がな一日朝晩
問わずお側に侍り見守り続け眠れぬ夜は添い寝をねだられ腕枕をして差し上げる。斯様な者は世界のどこを探し

回ってもいなかろう。仕事は私の生きがいでありなくてはならないものなのであり、何なら殿下の嫁ぎ先にもご同行する所存なのだが、
尤もここは修道院で男性などは滅多におらず、ご年配たる神父ばかりでその上殿下は16歳ゆえ
先の話に違いない。いいえ、絶対そうである。そうに決まっているだろう。

「そんな、とんでもありません。ガフガリオンたらせっかちで…。遅れてないのに遅いと言ったり、
 小言ばっかり申すのです。ね、そうだよねえ、ガフガリオン」

「うるせえ、後で覚えとけ」

「あれー、何だったっけかなあ」

そして空気はなお和やかに。道中楽しくなりそうである。聞けばラムダは17歳で、殿下と1歳違いだそうだ。ご身分ゆえに友人少なく
嘆いておられた殿下であるが、もしこの少女と親しくなれば喜ばしいことこの上ない。2人並んだその光景はさぞ素晴らしいものだろう。

けれどもそんな時である。

「アグリアス様! 敵襲です…!」

駆け込んできた私の部下はそれだけ告げて倒れ込む。赤く染まった衣装を見れば傷の深さは予想が付いた。手当てを
したいところであるがけれども今はその時ではない。その場の者に彼女を任せて私は外へ躍り出る。

敵は高々5人に過ぎず数なら大したことはない。しかしかなりの手練のようで残り2人の私の部下は今にも
倒れそうである。敵は全員紋章入りの服を纏って戦っており、それは殿下の後見人たるゴルターナ家の
ものだった。なぜと彼らに聞いたところでどうせ答えは得られぬだろう。

投下終了! ではまた次回!

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