堕天使「脱引きこもりしたら友人と婚約者が出来た」(92)

 


青年「断る前提でお見合いに行ったら友人と婚約者が出来た」








勇者「なんだろう、この胸の高鳴り」
魔王「ど、どうやら勇者は私の事が好きらしい」の続編。

 

 人間領。
 某国。勇者協会本部前。


勇者「…………」

相棒「勇者協会滞在時間まさかの1分未満」

勇者「久しぶりに会った相手に開口一番『帰れ』だぜ?酷いよな」

相棒「機嫌悪かったねー」

勇者「ま、俺達が悠長に話出来るような相手じゃないからだろうけど」

相棒「そうだね。公式上死んでるわけだし」

勇者「仕方ないよなー」ウンウン

相棒「でもほら鍵、渡されたちゃったし。縁切りはまだみたい」

勇者「数少ない俺達の友人が関係続行okって言うなら、のるしかないな」

勇者「市場寄って適当に買って……鍵、使わせてもらいますか」

相棒「賛成ー」


 人間領。
 某国。とある家、玄関。

 ガチャ
勇者協会受付の女性「…………、」

略受付(……良い匂いがする、)

相棒「あ、おかえり受付ー」

勇者「おかえり。残業か?協会は定時に帰れるのが基本なんだろ?」

受付(……一人暮らしがまさかお玉持った勇者とお皿もった相棒どう見ても夕御飯の準備中な二人に出迎えられるか、)

相棒「ご飯もうすぐ出来るよ。--あ、両手に袋。買い物してたんだ、だから帰り遅かったんだね」

受付「…………」

相棒「……………」
勇者「……………」


相棒「どうしよう勇者。受付まだ機嫌悪い」コソコソ
勇者「困ったな。勝手に夕飯の支度したから怒ってんのかな」コソコソ


受付「…………」

勇者「あー、悪い、勝手に作った。……駄目だった?」

 
受付「聞こえる声で内緒話してんじゃないわよ。勝手に作ったとか何よ美味しそうな匂いさせてくれちゃって大歓迎よ畜生」

勇者「お、おう。それなら良かった」

受付「それにわざわざ玄関まで出迎えにくるとか何?おまけに二人そろって。あんたらは帰宅した旦那迎える新妻かっての。私の財力なら養えるわよくそっ。ただいま」


相棒「受付は今日もピリピリモードだねー。荷物持つ?」

勇者「やべ、鍋ふきこぼれてるかも。相棒任せた」


受付「任されなくていい自分でやる。あんたはとっととその皿どうにかしなさいよ」

相棒「りょーかーい」

受付(あああああ、鍵渡したのは私よ!協会で会話するわけにいかなかったんだから間違ってないわ!だから少しほっこりしちゃっても不可抗力よ不可抗力!)

受付(そもそもデザインが気に入ったから色違いで買ってそれぞれ一度は着たけどやっぱりエプロンわざわざ着るの面倒とか思ってそこらに放置してたエプロン勝手に着てるんじゃないわよ!似合ってるのよ馬鹿コンビ!)

 

勇者「……受付荒れてるなー」

相棒「玄関でバタバタ暴れてる気配するもんねー」






 数十分後。


受付「--で、」

勇者「?」
相棒「?」

受付「何時までそんな汚らしい見た目してるの」

勇者「え、俺汚い?お風呂入ったのになぁ」
相棒「ちゃんと角や翼まで洗ったつもりなのに……」

受付「違うわよ」

勇者「?」
相棒「?」

受付「何時までその髪と目を汚らしい色にしてるの?変装のつもりなわけ?」

 
勇者「ああこれ?金髪と白髪コンビって知れてるから適当に変えてみた」

相棒「赤目とか、そう多くは見ないしこれも適当に」

受付「ふざけないでよ。ここには私しかいないのに何変えたままにしてるのよ。何度も言うけど汚いのよ」

相棒「そこまで?」

受付「そもそもあんた達の髪は最高ランクの織物に使われる生糸に勝ると劣らない色なの。艶やかで触れたくなるそんな色をしてるくせに何なのそのくすんだ色は。茶色と灰色?ふざけんじゃないわよ」ペラペラ

受付「それにね、目だってやたら光は無いけど最高級の紅玉と同じ深みのある綺麗な赤でしょ。真紅よ真紅、わかってる?なのにそんなありふれた目で見ないでよご飯が不味くなる」ペラペラ

勇者「え、不味い?料理上手いヒトに出会ったから味付け模倣したのに、まだまだだな俺ー」

受付「美味しいわよ美味しいに決まってるじゃない。二人そろって嫁入りスキルあげてんじゃないわよ」

勇者「わかったわかった。色戻すから怒るなよー」バシュン

相棒「私達が気に入らない色してたから怒ってたのかー。ごめんごめん」バシュン

 
受付「……それでいいのよ。……どうせここなら私以外誰にも見られないし、私だけ見れるし……あんた達もその方が楽でしょ……」

勇者「まー楽っちゃ楽だよな」
相棒「だねー」

受付「…………キツく言い過ぎた。ごめん」

勇者「んー?いいって慣れてるし。死んだ方がいい、とか、まだ言ってないし」
相棒「そうそう、慣れたよ。平気」

受付「………………」
受付(……私だって穏やかに接したいわよ。ああもう、むかつく、私が、一番、)

受付(確かに、言った。……死んだ方がいいとか……戻って来ないことを願ってるだとか)

受付(……だって、二人が、相手が強くなかったと……悲しそうに笑うから、)

受付「…………」ゴンゴンゴン

勇者「あー、受付。食卓に頭ぶつけるのは止めた方が……」
相棒「そ、そうだよ。落ち着いて、ね?」

受付「うるさいわね、日課よ」

勇者「そ、そっか……」
相棒「まぁ日課なら、うん……」

受付「……で、何しに戻ってきたの?あんた達協会大嫌いじゃない。……あんな不当な扱い受けたら当然だろうけど」

 
勇者「受付さ、話、聞いてない?俺達がどこにいたか」

受付「耳には入ってる。魔族領にいたんでしょ?--あの、旧政権時の魔王の姪が治める国」

相棒「相変わらず怖い情報網。私達がその関係を知ったの最近なのに」

受付「……この国にあんた達の居場所は無いわ。だから、あんた達の好きな所にずっといときゃいいのよ。例えそれが、魔族領の国でも」

勇者「……そうだな。ここに俺達の居場所なんてなかった」

受付(本当に……なんで戻って来ちゃうのよ。こんな汚い場所にいたら、あんた達がまた汚くなっちゃうじゃない)ゴンッ

受付(あのお人好しばっかの国なら、この二人も少しずつマトモに……完全に更正とまでいかなくても)ゴンゴン

受付(ちゃんと生きてくれるまでに、してくれると)ゴンゴン

受付(ったく、何で止めないのよ何やってるのよあの魔王も竜族も周りの連中も!なんなの馬鹿なの?いやこの二人も馬鹿だけど)ゴンゴン


相棒「ゆ、勇者、受付止めなくていいのかな。いくら日課っていっても打ち付けすぎだよ」コソッ

勇者「そ、そうだな、止めないと。いくらなんでもやりすぎだよな」コソッ

 
受付(魔王も竜族も、惚れた弱みって事で何でも出来るんだから。--いっそのこと、)ゴンッ


勇者「あー、受付、」


受付「首輪でもつけて一生自分に繋げてときゃいいのよ」ボソッ


勇者(首輪!?)ビクッ
相棒(繋げる!?)ビクッ

受付「……なによ」

勇者「イ、イヤ、」
相棒「ナンデモ、アリマセン」

受付「--で?戻って来たのは魔族領のあんた達の国と関係あるわけ?」

勇者「……あんた達の国、ね」クスッ

受付「間違っては無いでしょ」ムスッ

相棒「私達、受付のそういう所が好きだから、例え受付が私達の事嫌いでも、離れなかったんだね」クスクスッ

受付「……ふんっ。つい最近やっと好きとか考えられるようになったくせに、意味わかんない事言ってんじゃないわよ」

受付(それに、嫌いってわけじゃ、ないのに、畜生、)

ごめん。凄くごめん。保守ありがとう。
申し訳なさすぎる。まだ始まったばかりだけど完結させる気はある。
ちょっとだけ投下。もし似た流れに覚えがあったら、一応それは自分なりに削った結果。
こっちは削る必要ないから好き勝手に喋らせて少し改変してる。

 
勇者「実際に見て来たような口振り、」ケラケラ

受付「……なわけないでしょ」

勇者「わかってるよ。用も無いのに、受付が人間領から出るわけないもんな」

受付「…………」

勇者「--俺達、調べに来たんだ。協会が馬鹿な事考えてないか」

相棒「調べる事は人間領に出入り出来る私達にしか出来ない。少しでも役にたちたくて、」

受付「一応訊くけど、方法は」

勇者「不法侵入」
相棒「あと盗聴」

受付「そ、バレなきゃ何したっていいけど」

受付「確かに、自衛のために協会側がどこまで知ってるのかを知っておいて損は無い。私の情報網以上の物があんた達に拾えるかもしれないし」

受付(でも、調べる事は勇者の過去を少なからず知る事になる、)

受付(決め手の情報は流石に広まってない、勇者はもう一人の方とされてるし。その一人が決定打みたいなものだけど)

勇者「そうそう、受付。俺対魔族用戦闘奴隷だったらしいよ。知ってた?」

受付(……ああ、あのくそ剣士ね)チッ


受付「……知ってた。あんたは元戦闘奴隷。でも今のあんたは勇者よ。誰もあんたに手出し出来ないわ。勇者になってから顔が割れたのが幸いしたわね」

勇者「困るよな、なんせ俺覚えてないわけだし」

受付「今欲しがられても裏から手出しされる程あんたは弱くないし、相棒、あんたもさせないでしょ」

相棒「そうだねー」

勇者「受付の情報網本当に凄いよなぁ、」

受付「ふんっ、いくら凄くてもあんた達の詳しい過去なんてもんは知らないから。訊くじゃないわよ」

相棒「訊かないよー。だって受付、俺達に言っていい事しか言わないじゃないか」

受付「わかってるじゃない」

受付「--で、話を戻すけど。協会に関わる間の拠点はここを使いなさい。鍵は返さなくていいから」

勇者「それは……いつもの取引?」
相棒「いつものギブアンドテイクだね?」

受付「……そうよ。何が紛れてるかわからないこの都市の宿より私の家の方が安全だし、あんた達も魔法で姿を変えなくていいし金銭的にも、いやあんた達金はあったか、やたら強いし」

受付「とにかく、この家を利用した方があんた達に利があるはずよ。違う?」


相棒「違わない。やっぱり楽だからね、慣れたとこの方が」
勇者「じゃあさ、受付の利は?俺達ばかり得ってのはないだろ?」

受付「私の目の届かない所であんた達にうろつかれない、これが私の利」

勇者「それだけ?」
相棒「それじゃあ釣り合わなくない?」

受付「……釣り合うわよ。私が釣り合うって言ってるから釣り合うの」

受付(そもそも私の方が得してるのよ短期間とは二人を手元に置いておけるししかもどうせ滞在期間は今日みたいに!)ガタッ

 スタスタスタ

勇者(突然席を立って)
相棒(受付、部屋から出ちゃった)

 スタスタスタ

相棒(そしてすぐ戻って来た)
勇者(あの紙袋、確か……帰宅時に受付が持ってた)

受付「あんた達が釣り合わないと思うならまたご飯作って。--これは、今日の夕食のお礼よ」トスッ カサッ

饅頭:ドウモ!

勇者「!この饅頭は……!」
相棒「お店無くなっちゃったと思ったのに……!!」


受付「あんた達があの店の常連だったのは知ってたしあんた達がいない間に店が移転したのも知ってた」カタッ ストン

受付「どうせこの町に来て真っ先に行って店が無くなってるの見てちょっとショック受けたりとかしたんでしょ?だから--」

勇者「ありがとう受付!俺達もう食べられないんだと思って!」
相棒「ありがとう受付!ちょっとシュンとしちゃってたんだよ、私達!」

受付「……別に私も食べたかったしこれはあんた達との取引に使えるって思って……そんな嬉しそうな顔しないでよあんた達の顔見てまだ勤務時間だったのに即手配して勤務終了と同時に協会から飛び出して受け取りに行った事心から良かったと思うじゃない」ブツブツ

受取「勘違いしないでよね、これは取引の延長線上で、あんた達の利に色をつけただけなんだから。こんなの好意だと思わないでよね」

勇者「ははっ、わかってるって。最初に受付が言った事じゃんか」

勇者「俺達と受付は、期間限定の友人関係。受付が俺達を利用出来ると判断したからこんなに良くしてくれる」

相棒「友人関係で利害関係。一緒にいて損害が大きくなると判断したらすっぱり縁切り、でしょ?」


相棒「でも今日みたいに受付すっごいサービスしてくれるからなぁ、なんか申し訳ないよね」

勇者「そうそう。なんかこっちが得ばっかして受付側に損害いってないか心配になるんだよな。俺達としては受付には利用されても良いと思--ああ、そうか」

勇者「相棒。俺達ってさ、受付のことかなり好きだったみたいだな。受付は迷惑かもだけど」

相棒「あ、そうだね。自覚なかっただけで大真面目に好きだったから--」

受付「」ゴンッ!

勇者相棒「!!?」ビクッ

受付(どうして私は最初に期間限定とか利害関係とか言った!どうして私は素直にあんた達は友達だって言わなかった!)グリグリグリ ミシミシミシ

勇者「てっ……テーブルがみしみし言ってる!」
相棒「怒ったんだ!私達が気安く好きとか言ったから!」

受付「勘違いしないで別件よ気にするんじゃないわよ過去の私が引き起こした事案について考えているのよ」ミシミシミシ

勇者相棒「……は、はい」

受付(この二人だけ!どうしてこの二人を相手にするとこうも上手くいかない!数ある取引をこなして来た私が!豪商の一人娘である私が!!どうして、何でよ!!)ミシミシミシミシミシミシ


受付(わかってる、悪いのは私!全面的に私!!私情挟みまくった私がこんな結果を生んだ!!)ミシミシミシミシミシミシ

受付(もう駄目今更私が素直になるとかそもそも『私もあんた達が好きだから利害関係抜きに友人関係でありたい』とかさらっと言えるならこんなことになってないし!!なによりこいつ等!!)ミシミシミシミシミシミシ

勇者「大丈夫かな受付……」ハラハラ
相棒「痛くないのかな受付……」ハラハラ

勇者「いざとなったら治癒魔法かけるしかないな」コソコソ
相棒「そうだね練習の成果を見せる時が来たんだ」コソコソ

受付(あほの子だからあああ……!!もう好きよばかあ……!気に食わない所はもちろんあるけど大好きなのよこの馬鹿コンビぃ……!!)ユラリ

勇者「あ、あのさ受付」
相棒「おでこが赤いよ、血は出てないみたいだけど、痛みがあるなら」

受付「私の額が赤いのは無視しなさい。絶対に話題にしないで」

勇者相棒「は、はい!」

受付「…………」
勇者「…………」
相棒「…………」

受付「饅頭は、食べられるために存在する」

勇者「え、あ、うん。そうだね。な、相棒」
相棒「う、うん」


受付「食べるわよ。返事は?」

勇者「わ、わーい」
相棒「よ、喜んでー」










 魔族領。とある大国。
 魔王城。王の間。


大国の魔王「--お父さんは心配だ。お母さんも心配しているぞ」

青年「?父上や母上に心配されるような覚えは無いのですが」

大国の魔王「一つも?」

青年「はい。一つも」

大国の魔王「なわけあるか!!あるだろ!大きな問題!大問題があるだろ!!!」ガタッ


青年「いや、そんな荒ぶられても。本当に心当たりは無いのですが」

大国の魔王「お父さんは怒らないぞ、お母さんも、お父さんと同じく覚悟はしている。だから正直に言ってくれ息子よ……!!」

青年「………?いや、冗談抜きに心当たりが無いというか」

大国の魔王「……わかった。じゃあ、とーちゃんから訊くぞ」

大国の魔王「なぁ、息子。お前ガチホモなの?男が好きなの?」

青年「」ブッフォッ
青年「な、なななななな!!?いきなり何言って!?俺が、俺が……!?」

大国の魔王「男が恋愛対象なの?男にしか欲情しないのどうなの?とーちゃん怒らないから正直に言おうよ」

青年「全力で否定させてもらいます!誰がガチホモだって!?俺は女の子が心から好きだ!!」

大国の魔王「ほんとにほんと?」

青年「この世界に神なんていないが誓ってやりますよ!俺は女の子が好きだ!可愛い女の子が大好きだ!!」

大国の魔王「……その一点の曇り無き眼……嘘は言っていないようだな」

青年「嘘なわけありますか」


大国の魔王「いやぁー安心したわー。後でかーちゃんに『息子ホモじゃなかったぜー、賭けはどっちも負けだなー』って報告しないと」

青年(二人そろって息子がガチホモ説に賭けるなよ……)ハァ

大国の魔王「だってさー、心配するのも仕方ないじゃん。お前いい年して女遊びの一つもしないんだもん」

大国の魔王「へたれてるだけだと思ってせっかく部屋に美女忍びこませまくったのに、絶対手ぇ出しやがらないし。寧ろお前はズタボロ美女は無傷、時には暴言吐かれまくって、それでも優しく追い返してたって聞いたし」

青年「なっ……!!あれ父上の仕業かよ!!」

大国の魔王「ほら、お前若いしイケメンだしなによりこの国の魔王である私の息子じゃん?選んだ美女全員お前の子供産むつもりで挑んでたんだぞ」

青年「ふっ……ざけんな!夜中見知らぬ女性に全力で襲われるとか滅茶苦茶怖かったんだからな!!もう少しで俺女性恐怖症だぞ!もう少しで完全ノーマルを別の道に進ませようとしてたんだぞ!」

大国の魔王「だってお前入れ食い状態のくせに手ぇ出すとかしないじゃん。こっちから仕掛けるしかないじゃん」

青年「だからって……!」


大国の魔王「でも、ま、お前がガチホモじゃないって事がわかったし。話は決まりだな」

青年「決まりって……何の話ですか?」

大国の魔王「お見合いの話」

青年「……誰の?」

大国の魔王「お前の」

青年「……誰と?」

大国の魔王「魔族領唯一の若き女魔王。見た目お前の外見年齢よりちょっと下ぐらい。あとすごく可愛い。私がもうちょい若かったら攫って側室にしたレベル。現にこの娘の母親攫おうとした事あるし」

大国の魔王「まぁ旦那に邪魔されて失敗、諦めたんだけどさ」

青年「…………」ハァ

大国の魔王「私の若気の至りは置いといて、ママ似で可愛すぎる魔王ちゃんの映像がこちら」フォン

青年「映像魔法までして、って……マジで可愛い!!驚きの美女!!母親の生き写しじゃんか!!」

大国の魔王「とりあえずこの魔王とお見合いしてこい。あっちは小さい国だしもう邪魔者いないし、お前が気に入ったならとーちゃんごり押しでお前の嫁にしてやるから」

青年「それは遠慮します。こんなのはお互いの気持ちってものが、」

大国の魔王「私の息子なのに真面目なんだからな、お前。もっと奔放になっていいのよ?」


青年「……奔放なのは父上だけで充分です。お見合いも、いまいち乗り気になれないんですけど」

大国の魔王「拒否は許さんぞ。私は早く可愛い義理の娘に『お義父さん』って呼ばれたい。『嫁さんや、ちょっと肩を揉んでくれんか』とか頼みたい」

青年「……エロ親父。いい年なんだからもう落ち着いてくれよ……」

大国の魔王「とりあえず、明日にでも女魔王がいる国へ発ってもらうからな」ニコニコ ザワザワ

青年「……笑顔で魔力出して、脅すのか」ハァ

青年「わかりました。行きますよその国へ、してきますよお見合いを」

青年「でも、明日は早すぎです。適当に準備しますんで時間を下さい。お供は無し、俺一人で行って来ます。勝手にお見合い決めてきたんだから、それぐらい許してくれますよね」

大国の魔王「いいぞ。私は可愛い嫁が来てさえくれば無問題だ!!」

青年「……善処します」ハァ








 魔族領。とある国。
 魔王城。執務室。


魔王「…………」
側近「…………」

魔王「……側近、覚えてる?この男のこと」

側近「忘れてたまるか……奥方様を攫い側室にしようとした女好きの大馬鹿だろう……」

魔王「……お父様に殴られて懲りたと思ったら……今度は私に息子を寄越すって言うのね……」

側近「立場が無かったら変わりに俺が殴り込みに行く所だ……」

魔王「……脳筋キャラは止めるって決めたじゃない、私達」

側近「……そうだな……しかし、」

側近「無理だ。お前があの男の息子と結婚となってみろ、」

魔王「わかってるわよ。お父様がお墓から出て来るレベルで怒り狂うわ。私だって絶対嫌。……だって私……もう、」

側近「…………」

魔王「……とにかく、出来るだけ穏便に済ませましょう。お見合い自体はもう断れないわ」

魔王「あとは死力を尽くして血を見ないよう断りましょう。こんな馬鹿馬鹿しいことで戦争になったら皆に申し訳ないし」

魔王「これも経験よ。なんせ私は、若すぎる魔王。他国にナメられるのは慣れたくないけど」

魔王「糧にしてやるわ、経験全部。協力してよね、側近」


側近「当たり前だ」









 人間領。
 某国。勇者協会本部。


勇者男「やあ、今日も美しいな受付」

受付「こんにちは、勇者協会です。依頼のご登録でしょうか」

勇者男「ああ、頼もう。俺の目の前にいる美しい女性を夕食に誘いたいんだ。依頼を登録、尚且つ受けてもらえるだろうか」

受付「くたばれ」

勇者男「ははっ、皆を残してくたばるわけにはいかんよ」

受付「--で、何の用?」

勇者男「少しぐらい俺に美女と要件以外の事を話す喜びをくれてもいいじゃないか」

受付「馬鹿な友人と話すと疲れるのよ」


勇者男「そう言うな。そろそろ馬鹿な旦那に格上げしてもいいんだぞ?」

受付「無理。何度も言うけどあんたの全てが好みじゃない。ま、顔が良いのは認めるけどね」

勇者男「ふむ、君が素直に俺を褒めるか。どうやら最高に機嫌が良いようだ」

受付「どうだって良いでしょ」

勇者男「……安心した。後遺症はまったく無いんだな」

受付「心配症よね、あんたも。その言葉そっくり返すわ」

勇者男「それだけの魔法だろう。結局俺にすら目的を言わなかったしな」

受付「確かめたいことがあっただけよ」

勇者男「……無茶はするなよ。君は大事な……嫁候補だ」

受付「そこは大事な友人って言いなさいよ」ハァ

受付「そろそろ、要件。私だってここでにこにこ笑うだけが仕事じゃないの」

勇者男「魔族領へとある物を運ぶ安全で確実なルートの情報が欲しくてな。とても……とても大事な物なんだ」グッ

受付「……大事な物とやらはあえて訊かない。あんたも言うんじゃないわよ」

受付「で、魔族領の……どこよ、って訊かなくてもわかりきった事だけど」

勇者男「ああ。あの最強最悪の死にたがり二人がいた国だ」


勇者男「あの二人がいると知った協会の阿呆共の顔は見物だったぞ」ケラケラ

受付「本部のド真ん中なんだから口には気をつけなさいよ」

勇者男「ああ。そうだな、悪かった」ケラケラ

勇者男「今もあの国にいるんだろうな、奴らは良い抑止力になる。俺としてもあの国に協会が介入するのは良しとしない」

受付「そうね。美女がいっぱいだものね」

勇者男「ああ!美女がいっぱいだ!!百合もまた良し!!君には早く夢を叶えてほしいよ」

受付「ああ、魔族領との正規の貿易ルート開拓ね。残念だけど、当分は無理。あんたが言う協会の阿呆共さっさとくたばってくれないかしら」

勇者男「ヒトの事を言えない口だな」

受付「そうね、悪かったわ。私も」

受付「……ねぇ、男。あんたの情報網にもどうせ引っかかってるんでしょうけど。あの話、どう思う?」

勇者男「……ああ、あの噂か。今の所、信憑性は限りなく薄い」

受付「同じってことね。それ聞けて良かった。あんたの依頼は受けるから、任せて」

勇者男「今夜は最高のディナーにする!任せてくれ」

受付「配達ルートの方よ、馬鹿」ハァ

今日はここまで。またすぐ戻る

受付ちゃん超ツンデレ可愛いw
お見合い前からスタートか、詳細楽しみ

ご報告
>>26一箇所、受取ちゃんになってる
>>24「訊くじゃないわよ」も誤字かな?

帰ってきてくれて嬉しい乙乙

>>40 指摘ありがとう

相変わらずの誤字やらミスの多さ。これで投下前に確認して毎回かなりの数を直してるとか言えないよ……


 夜。

 人間領。
 某国。とある家。


相棒「受付さー、協会の仕事辞めた方が良いんじゃない?」

勇者「俺も同意見。長くはいない方がいいよ、ここは」

受付「うちの父親と同じ事言うんじゃないわよ」

相棒「だって危ないよ?協会の上の連中、変なこと考えてるみたいだし」

受付「……へぇ、そんな情報引っ張り出せたのね」

勇者「受付魔法使うの上手いに加え耐性も高い。定める基準値クリアしてる」

相棒「計画の話があるって段階みたいだけど……協会なんかと関わってたら受付いつか攫われちゃうよ」

受付「私を誰だと思ってるの。そんな話とっくに知ってる。それがまだ噂の域を出ないこともね、」

受付(噂の出所と目的を辿れない事が、ただの噂と捨て置けない理由なんだけど)

勇者「もう一つ、ちょっと気になる話があって。受付の意見がききたい」

勇者「旧政権……あのクソ魔王が生きてる、って噂。……どう思う?」

受付「与太話に近いわね。今の所その噂を裏付ける事実が全く無いから。なにより、あんた達が仕留めたと言ったんだから、」


受付「仕留め損ねるなんて、有り得ないでしょ?」

勇者「ありがとな、そう言ってもらえると安心する」

相棒「仕留めた事に自信はあるんだけどね、だって死んでたし」

勇者「そうそう、何でそんな噂出るのか不思議で」

受付「噂ってもんはそういうもんよ。勝手に生まれて勝手に消える。いちいち本当の事かもなんて調べてらんないし」

受付「とにかく、今の所は気にしなくていい、ただの噂よ」

相棒「そっか、わかったよ」

受付(これも今の所は、だけど)

勇者「あ、そうそう。受付に報告しようと思ってた事があったんだ、俺」

受付「……報告?何よ」

勇者「俺、勇者辞める」

受付「…………今、何て?」

勇者「俺、勇者辞めたいんだ。現勇者より元勇者の方がまだ怖がられないかなって思ってさ、魔族のヒト達に」

受付「……相棒はどう思ってるの?」

相棒「勇者に賛成。勇者が辞めたいなら辞めていいと思ってる。私、勇者が職業勇者だから一緒にいるわけじゃないし」


受付「……………」

受付「……勇者、あんた何で勇者になったの?傭兵でも充分やっていけたのに、特権階級とか、気にするような柄じゃないでしょ」

勇者「……確かに、強い奴と闘いたいのなら傭兵で充分。まぁ勇者の方が出会えそう、ってのはあるけど。その分行動が縛られるし」

勇者「自分でもよくわからない、俺には記憶が無いけれど、」

勇者「何故か『勇者』に対する憧れだけはあったんだ」

受付「…………」

受付「あんた達が辞めると納得しているなら、私は止めない」

受付「まず窓口に申請してどうにかなる問題じゃない……というか、あんた達公式上死んでるんだもの。辞める辞めないも結局気持ちの問題に近い、」

受付「いや、それだけじゃないか。協会の上の連中を適当に捕まえて辞めると宣言すれば、それは完全な決別に繋がる」

受付「あんた達は、もう協会側じゃない。--完全に敵ね、堂々と議会にあんた達を消す議案を出せる」

受付「まぁ、ただの例えだけど。それにあんた達がおとなしくどうこうされるなんて思えないし」

受付「でも、その宣言の後は確実に騒ぎになるわよ」


受付「ゆっくりお土産とか選べなくなるわよ」


勇者「そ……そうだった、」
相棒「なんてこった……!」


受付「ふん、先に私に言ってくれて良かったわ。あんた達の事だからどうせ沢山お土産買って帰ろうとしたんでしょ?騒ぎ起こして都市限定のお土産買い逃したらどうすんのよ」

勇者「ごもっともです」

受付「諜報活動も良いけどあんた達が帰るの待ってるヒトいるんだから、都市限定は……いや、そもそも相手は魔族、おまけに魔王……国のトップ」

受付「相手は庶民じゃない、良いもん食ってるのは確実か……下手な物は駄目ね、でもここ最近の土産物商戦は激化の一途、新商品の当たり外れが……昔からある無難な物でも……かぶるな。田舎じゃないんだから都市部の昔からあるような物なんて所詮外部に似たような物があるような物だし魔族領にある物持ってってどうするのよ……しかし無難、無難な物が最も大衆受けするのは事実。博打を打ちに来たわけじゃないのよ」ブツブツブツ

相棒「勇者、受付が」
勇者「うん、商人モードになりそう」

受付「--お土産メモ。見せて。個人向けは置いといて対多人数向けの物いくつか買う気でしょ?」


受付「あんた達の嗅覚は悪くないけど当たりの匂いがする外れは爆発的に増えたわ。魔族領に外れの品を持って行く事は私が許せない」

受付「まずは傾向。お土産メモが無いってんなら口頭で言いなさい。私は今見たい今聞きたい」

相棒「は、はい!メモあります!」
勇者「こちらです、どうぞ!」スッ

受付「ふん、これね……いける、これもいける、あれは新商品を試して--やはり魔族と人間の味覚に差違は無いのかしらいずれ詳し、く、」

受付「勇者、相棒」ザワッ

勇者相棒「はいっ!」ビクッ

受付「あんた達に三角木馬を頼んだ馬鹿野郎についてだけど、」ザワザワ

勇者「ち、違うんだ!そのヒトはただの変態で!」
相棒「確かにどうしようどうやって買う?とか思っちゃったりしたけど!」

受付「もし会う機会があれば全力でビンタしてやるけど止めるんじゃないわよ」ザワザワ

勇者相棒「」コクコク

勇者(でも喜んじゃうだろうな5さん……)
相棒(変態さんだもんなぁ……5さん)


 同時刻

 魔族領。とある国。
 魔王城。第三部隊執務室前。


第三5「!!」ビクン

第三6「おい5、一人遊びは流石に見ていてキツい物があるからやめろ」

第三5「いや、違うんだ。今とてもイイ心ときめくビンタが貰えるような予感がして」ハァハァ

第三6「国を揺るがす重大な事が起きた、って話で集合かけられたってのにお前って奴は……」ハァ








 同時刻
 人間領。
 某国。とある家。


受付「……おまけにお土産に吹き戻しを頼むって……魔族の認識を改める必要があるわね」

勇者(第二のみんなが頼んだあれ、吹き戻しっていうんだ……)


相棒(ぴゅーって吹いてクルクル戻るあれ……吹き戻しっていうんだ……)

受付「……大体の傾向は掴んだ、無難の中に攻めも混ぜて……分の悪い賭けはしないように」

受付「勇者、相棒。おすすめの店ピックアップするから明日食べてきなさい」

受付(本当は私が連れ回したい所だけど明日仕事を休むわけにはいかない。くそっ、くそっ!!)

受付「いい?返事は『はい』以外認めないから。ほら、返事は?」

勇者相棒「はいっ!」

受付「あと、明日、夜……あんたがまだ勇者である内に、とっておきの情報をあげる、」

受付「見返りはいらない。これは、勇者と勇者の連れを辞めるあんた達への餞別みたいなものだから」


受付(……なんえ言うけど。これは勝ちに行く賭け。汚いけど、あんたにはまだ勇者であってほしいから)


 魔族領。
 とある国。魔王城。
 第一部隊執務室。


第一副隊長「困るわよね、お見合いが決まっちゃったの」

第一「え、副隊長がですか確かにそろそろ嫁にいもががっ!!」グッ
第一C「やめなさいやめなさい!」コソコソウワァア
第一B「お前馬鹿ぶっちぎりで失言かまそうとしてんじゃねぇよ!!」コソコソッ

第一副隊長「……」ニッコリ

第一A「俺達は賛成ですしっかりサポートしますから副隊長のお見合い!そんな意味合いの事を言おうとしましたこいつは!!」ハラハラハラハラ

第一副隊長「今回は聞かなかった事にしてあげる、けど」

第一副隊長「何故かしら、あなた段々死んだうちの馬鹿隊長に似てきてる気がするのよね……気をつけて、ね」ニコニコニッコリ

第一「も、もがっ…」は、はい……

第一副隊長「--で、お見合いの話だけど。決まったのは魔王様の方よ。大国から無理やりねじ込まれる形でね」

第一ズ「!!!?」

第一弟「相手は女好きで有名な魔王……その子供。上の、兄の方ですね。下は双子で、そっちは外見俺より少し下と聞いています」

第一A「マジかよ……」


第一B「大国が相手か、面倒だな」
第一C「下手に断れないもんな……、くそ、」

第一「殴り込みなら何時でも大歓迎ですけど、」

第一「ねじ込まれた話をとりあえず受けるってことは、どうにか穏便にって考えた結果ですよね」

第一副隊長「そうよ。--それで、それぞれの部隊に仕事が振り分けられたの」

第一副隊長「ここは元々治安の良い国だけど、大国はうちみたいに穏やかな国民性ではないようだし。王族を狙う何者かが侵入する恐れがあるわ」

第一副隊長「それに、この前許可したっていう旅の劇団、お見合い相手が来る時期と被る可能性が出てきて」

第一副隊長「私達以外はほとんど治安維持に回される事になったの。表は第三部隊を主軸に、裏からは……第二部隊を主軸に」

第一「完全狩り行く型セコム……!」

第一C「私達以外、と言うと、俺達は治安維持以外の何かが回され--あ、」


第一A「うわ、ああ……だよな、可能性としてはあるんだよな……」

第一B「この件、アイツ等には」

第一弟「えっと……この件は勇者さんと相棒さんには伏せる事なってまして……。皆さんが伝えなければ知らないままというか……」

第一B「じゃあ、俺達に回される仕事は……」

第一「時期もろ被りで帰宅する可能性そして無理やりねじ込まれたお見合いの話を知ってしまった魔王様大好きっ子が大暴走する可能性それがどんぴっ!しゃ!で当たった場合の--歯止め役!!」

第一「よしっ!無理!!」キリッ

第一副隊長「無理言わないの」クスクスッ

第一A(いや、真面目な話、)
第一B(止められる気がしねぇ……)
第一C(こりゃ相棒さん味方につけないとキツい仕事になるな……)







 魔族領。
 とある大国。
 魔王城。廊下。


青年「……お見合いか、」ハァ

双子姫「兄様ー!」ズダダダダ!
双子王子「兄様ー!」ズダダダダ!

青年「……」ヒョイ

双子「」ビターン

ガバッ
双子姫「酷いですわ兄様!可愛い私達を壁に激突させるなんてっ!!」
ガバッ
双子王子「酷いよ兄様!ほら見て僕達のおでここんなに赤い!」

青年「ごめんごめん」
青年「でも兄ちゃんお前らにタックルされて倒れて頭割ったことあるからさ、とりあえず避けちゃうんだ」

双子姫「過ぎ去った過去を何時までも!カッコ悪いです!ああそんなことより!聞きましたわ兄様!!」
双子王子「他国の女魔王とお見合いするって本当ですか!?」

青年「まぁ、うん。父上がなー、」

青年「正直気がのらないんだけど、無理やりねじ込んだみたいだし、もう行くしかないんだよ」

双子姫「やだぁああああ!!やだやだやだやだあ!!嫌ですわ兄様行っちゃ嫌ですわ!!」ジタバタジタバタ

双子王子「兄様は僕達が可愛くないのですか!?こんなに慕っているのにお婿に行ってしまうなんてー!!」ジタバタジタバタ


青年「婿に行っても良いけど父上は嫁を連れ帰れって言ってたからなぁ、」

双子姫「連れ帰れ!?でしたら安心です!!兄様童貞だからお嫁さんを連れて帰るなんて無理無理!!」キャッキャ

双子王子「おまけにインポだからね!兄様をお婿さんにするなんて、相手の方からお断りだよ!!」キャッキャ

青年「…………」

青年「にいちゃんは耳がおかしくなったのかな。今妹と弟の口から聞き慣れない言葉が……、

青年「あのさ、にいちゃん怒らないから、ゆっくり、最初から言ってみなさい」

双子姫「兄様は童貞」
双子王子「おまけにインポ」

青年「ゆっくりどころかはっきり即答で該当箇所完全に抜き出してるじゃないか!!」

青年「つか子供がそんな言葉口にしちゃいけません!!それににいちゃんは……」

双子「童貞じゃないの?」

青年「……少なくともインポではないぞ、」

双子姫「兄様は童貞」キャッキャ
双子王子「兄様はやっぱり童貞」キャッキャ

青年「にいちゃんはその……そういうのは、本当に好きなヒトとやるものだと考えていてだな、」

双子姫「そんな事言ってー。兄様は未だに夢に出るっていう女のヒトの事が好きなんでしょ」


双子王子「そりゃ好きになりますよ、だって兄様の夢の中。その女性は、兄様の好みで形成されているんですから。いい加減現実を見て下さい」

青年「う……」

双子姫「それに、安心してよ!私達が兄様より強くなったら、兄様を私達のお嫁さんにしてあげる!」

双子王子「僕達男女の双子で良かったと思います!例え兄様がガチホモでも対応できますから!」

青年「だからにいちゃんはガチホモじゃないし、それに、兄妹で結婚は出来ないんだぞ」

双子姫「でも私達血は繋がってないじゃない」

双子王子「兄様は父様や母様から生まれたわけじゃないですもん」

青年「……なんだ、知ってたのか」

双子姫「最初はショックでしたけど……兄様と結婚出来ることに気付いて私達歓喜しました!」

双子王子「これで僕達がずっと一緒にいられると確定したわけです!」


青年「ったく」ワシャワシャ

双子姫「ふあっ!いきなり頭をわしゃわしゃ撫でないで下さい!」ニコニコ
双子王子「髪が乱れるじゃないですか!」ニコニコ

青年「どうせお前等にも、いつか本気で好きになるヒトが出来るんだよ」

青年「それまではブラコンでいさせてやるからさ」ケラケラ

双子姫「へたれ童貞のくせにむかつきます」ムゥ
双子王子「へたれ童貞のくせに調子にのってます」ムゥ

青年「ははっ!よく言うよな、お前等は」






 人間領。
 某国。勇者協会本部。
 地下牢前。


勇者「受付が餞別だって言う情報を元に侵入してみれば、」

相棒「あらあら不思議、扉の向こうに強者の気配」

勇者相棒「これは行くしかないですね!」ワクワク

ここまで。
……勇者組と天使一緒にするとツッコミがいないのが問題なんだよな、さくっと合流まで進めないと。頑張る


以前書いたのをより詳しく丁寧に書いてる感じ?

>>59
そんな感じ。

今回分は少ない


勇者「ということで、」

 --取っ手の無い扉だ。
 例え可能だとしても、力ずくで押し開けるつもりは無い。ただ、軽く手をあてがうだけ。

勇者(内側を封じるこの手の物は、外側からの力に弱いんだよな)バチッ

 反発は小さな物だった。
 八方に走る亀裂、破壊された封印は魔力の欠片となり数瞬も保たず消滅する。

勇者「開いた、」

 手を離せば、扉は内側に開いていった。

 扉の向こうは、下り階段になっていたようだ。石壁に挟まれたその幅は、ヒトが二人並んで歩ける程。
 一定間に存在する蝋燭の小さな炎が光源となっている。下った先には広い空間があるのか、確かに誰かがいる気配がする。

勇者相棒「お邪魔しまーす」

 二人揃って踏み込めば、背後で扉が閉まる音がした。

相棒「なんかさ、いかにも、って感じだね」

勇者「だよな。協会本部ど真ん中にこんなもったいぶった造りの場所があったなんて」

相棒「足音、やけに響くよね。声もだけど」

勇者「ここで内緒話なんかしたら中にいる誰かにモロバレだよな」


相棒「重要な話なんかもアウト。ここに来る誰かって、連れにどうでもいい話題を振ったりするのかな」

勇者「例えば?」

相棒「良い天気ですね、とか」

勇者「空見えないよ壁しか見えないよ」

相棒「ほら、ここに来る前は良い天気だったのかもしれないじゃないか。現に今日は良い天気だった」

勇者「確かに。……いや、待ってくれこの会話をしているまさに今雲行き変わって雨が振り出したりなんかしてたら……」

勇者「土砂降りで横殴りとかどう贔屓目で見ても良い天気じゃなくなってたとしたら……!」

相棒「そうだ……!確認出来ないから嘘を言うことになっちゃう……魔法を使っての確認はもうどうでもいい話題から外れちゃう感じがするし……」

勇者「……どうでもいい会話ってさ、案外難しいんだな」

相棒「そうだね……」

勇者「--とか、やってる間に階段を下りきり、」

相棒「扉の向こう階段を下ったその先はいかに、なんて、」

勇者「…………」
相棒「…………」

 --その空間は、狭くは無かった。が、広間と言うには物足りない。


 階段を挟む石壁と同様、一見内装に代わり映えなかった。
 光源も壁の蝋燭、小さな炎がその大きさに見合った範囲を照らしている。
 一つなら足りないであろうそれは、四方の壁に四つ。--それが一定間で上へ上へと複数存在していた。

 不自然に高い天井には理由があるのだろう。

勇者「おい、見てるか相棒」

相棒「見てる見てる。……まさか、勇者協会の地下にこんな部屋があって、」

勇者「おまけに綺麗な女のヒトが捕らわれてるなんて、」

 --その理由は、吊し捕らえておく事か。

「………………」

 天井から伸びた鎖は、古めかしいながらもなんらかを封じる力を持っていると判断出来た。繋がるのは、両手首の拘束具。

 吊された女性は、ぴくりとも動かない。


 死んではいないだろう。
 感じた気配は紛れもなく、彼女の物だからだ。

勇者「表情無いな。生きてるとは思うけど」

 目は虚ろ、顔色も悪い。首輪のような拘束具が抑えているのは魔力か。
 抑えきれていないそれがこの空間の魔力濃度を跳ね上げる要因となっている。

相棒「……首輪に手錠までして吊されてる。……一種のプレイかな」

勇者「お前どこでそんな言葉覚えたんだよ」

相棒「私だってもう子供じゃないんだから、そっち方面も学ぶようにしてるんだ」

勇者「マジか。--そうだよな、俺達もう子供じゃないもんなぁ」

相棒「でも一応冗談のつもりだからね。だって異常じゃないか、たった一人で吊されてるし」

勇者「わかってるよ。……沢山のヒトが吊されてたらそれはそれで怖いだろうけど」


「…………ふふっ、」


勇者「!!……笑った」
相棒「……うわぁ……綺麗なヒトだと思ったけど、笑うとさらに綺麗だね」


「綺麗、ね。裏の無い賞賛は嬉しいよ。ありがとう」

ごめん。SS自体を作らなくなった。
いつかどこかで別の形で完結はさせる。けどここはもう更新しない。本当に申し訳ない、落としてくれ

余計な事してから消える。最終話エピローグ直前までの簡略あらすじ

その前に出来なかった伏線回収
大きな物としては
・第一の魂を喰ったのは、黒竜族滅ぼした女竜族に化け物にされた竜族ロリの竜族男。
・第一は第一隊長と同一魂に加え、旧魔王、竜族滅ぼした女竜族と同一魂。
・魔王の母、第一隊長、旧魔王、竜族滅ぼした女竜族、シキ(人間)など、高すぎる魔力保持者は身体の方が病弱早死に傾向にある
・第一が元気に生存しているのは幼少期ABCにそれぞれの特性にあった魔力を分割分けたため
・シキはシキを一人にしない

・省略したため本筋に絡まないけど第一Cはショタの先輩(勇者殺そうとした男)、ロリの竜族女と同一魂。前者は勇者が、後者は相棒がそれぞれ手にかけた存在。一番になついたのは昔よくしてくれた相手にどこか似ていたから
・そこまで大きい伏線じゃないけど勇者が勇者になったのはショタの勇者の存在に憧れたため

以下最終話簡略あらすじ

相棒の身体が実質黒の竜族滅ぼした女竜族(旧魔王、第一隊長、第一と同一魂)に乗っ取られたり、それに関連して相棒
と側近が少年少女時代を思い出したりでそこそこピンチ。
復活した旧魔王に勇者の正体が魔法だと暴露されるわ勇者を構成する魔法陣を壊されるわでこちらもピンチに。
旧魔王はなんとか撃退したが記憶取り戻した勇者が消滅、
しそうになったがギリギリの所で魔王の前に現れた金髪の少年(勇者似➡勇者の魔法構成式に意識を紛れ込ませたシキ本人)(同化しているため勇者の意識が完全に無いと出現不可) の助けもあり、勇者の構成式の再構築に成功。
目覚めた勇者は完全〈〉喋りの魔法モード。ネガティブひねくれ。
植物(一応勇者と同じ、意思を持たないはずなのに意思持っちゃった存在)や出会った友人達、魔王からの壁ドンもありついに魔法として開き直る。
なんだかんだでネガティブモードだった相棒も開き直り乗っ取りを脱却。側近相棒それぞれシキに叱咤されたため存在を認知。
なんだかんだで旧魔王と女竜族を倒したが勇者と相棒は空間の亀裂世界の狭間に引きずり込まれる➡ちゃんと迎えに行くでエンディング




青年「そこは、小さな世界なんだ。見渡す限りで終わる、小さな世界」

堕天使「広がる草原、その中心に湖がある。……その世界は始終夜だ。月は双子で、夜空と湖に浮かぶ」

堕天使「狭間の世界……私達はそう呼んでいた」

青年「……俺達はもう行けないが、道案内ぐらいは出来る」

青年「行って来い」

堕天使「勇者君と相棒は、キミ達を待っている」



 狭間の世界


勇者〈綺麗な場所だな。風は気持ちいいし、夜空の月が湖に映って、双子みたいだ〉

相棒「うん。真っ暗で何もないだけだと思ってたけど、こんな世界が存在してたなんて」

勇者〈…………〉

相棒「…………」

勇者〈…………相棒、あのさ〉

相棒「なに?」

勇者〈ほら、最近の俺達って結構バタバタしてたから……二人だけでちゃんと話する機会が久しぶりに思えて〉

相棒「バタバタしてたって……あははっ!私達どころかみんな死にかけるしラスボス戦こなしてたんだから仕方ないよ」

勇者〈仕方ないけど、お前も普通に受け入れてるけど、俺、まだちゃんと話してないのに!〉

勇者〈相棒!俺ヒトじゃなかった!正体魔法だった!〉

相棒「うん。みたいだね。……でもなー、私勇者が何者であっても良かったからなぁ」

相棒「勇者って魔法なんだー、そっかー、って感じ」

勇者「相棒がわりと軽く俺の存在を肯定してる。不思議存在なのに、俺」

相棒「ふ、不思議だって思ってる!よっ!不思議存在勇者!」

勇者「そんな取って付けたような持て囃しはいらぬ」

相棒「ごめんごめんってー、ほら、会話パターンを複数持ってるのは珍しいよ」

勇者「ヒトモード!」〈魔法モード!〉

勇者「2パターン!」

相棒「あ、私竜化したら2パターンに……」

勇者「同じ!同じじゃん!珍しくもなんともない!」

相棒「……もういいんじゃないかな、珍しくもなんともなくても」

勇者「……ああ、そうだな……なんせ、」

勇者「俺が何であっても、それでいいと言ってくれる皆がいるから」

相棒「……もう、寂しくないよ」

勇者「うん、寂しくない」

勇者(……シキ、俺……)

勇者「…………」
相棒「…………」


勇者「……相棒、」

相棒「んー?」

勇者「何で君を好きにならなかったか、気付いたんだ」

相棒「わかるよ。お互いを掴んでられても、引っ張りあげることは出来ないから」

相棒「私には勇者を助けられないってわかってたから」

勇者「なんだ、相棒も同じかー……ほんっと、俺達って」

勇者相棒「「似た者同士」」

勇者「だよな」
相棒「だよね」

勇者「お、そろった」
相棒「何時ものことでしょ?」

勇者「ですよねー……あ、」

相棒「きた」


魔王「……綺麗な場所ね、ここ」

魔王「迎えに来たわよ、勇者、相棒」

側近「無事のようだな。安心した」

勇者「狭間とはいえ魔力がある場所なんだ、相棒は必ず守るって約束しただろ?」

側近「あの時はお前も、と言ったろ。二人ともだ、……口は回るようだから元気そうだな」

相棒「早かったねー、Aさんなんてギリギリまで私達追っかけてたし、ちょっと心配だなぁ」

魔王「大丈夫よ。みんな私の物なんだから、勝手に死ぬのは許してないし」

魔王「まぁ、早いってのは認めるわ。私達だけじゃもう少し時間がかかっていたかも」

魔王「青年さんと堕天使がこの世界を知っていたの、おかしな話だけど」

勇者「俺も大概だけどあの二人もよくわからない所あるんだよなー」

側近「……この世界は、」

側近「世界自体が魔力の塊のようだ」

相棒「うん、ここは私達がいる世界とは違う」

勇者「居心地の良い世界だけど、長居はしちゃ駄目かな」


魔王「そうね、そんな世界だからこそ」

魔王「出てこられるでしょう?」

勇者「え……?」

魔王「いえ……出てきなさい。そこにいるのはわかってるわ」

勇者「なんの話、」



〈お節介だね、君は〉



勇者〈!!〉

こんな感じでシキと勇者は再会する。大団円エンド

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