シンゲキロンパ CHAPTER 02 (1000)

過去スレ


シンゲキロンパ

シンゲキロンパ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385881950/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401577227

???(その日 僕たちは思い知る)




パリーン




???(“それ”はいつだって…)

???(突然やってくるということを)

???「ア……ァ……」

???「おい! どうしたんだよ!!」




???(そして歯車は回り出す)

???(誰も予想できなかった、誰も望むことのなかった…)









???(絶望的な結末へと)















CHAPTER 02

君は希望という名の絶望に微笑む

(非)日常編







アルミン(まずはオーソドックスに自己紹介から始めたいと思う。
     僕の名前はアルミン・アルレルトだ)

アルミン(外見は、ご覧の通り、どうしようもないほど平均的な普通の男子…)

アルミン(中身の方も同じ…いや、普通の子よりも弱虫で、
     いつも親友に助けられてばかりいる)

アルミン(そんな弱虫の僕は、今…)

アルミン(兵団の訓練所という似つかわしくない場所に立っている訳だけど…
     これには理由があるんだ)

アルミン(今から2年前、超大型巨人と鎧の巨人の出現によって、
     僕たちは故郷を失った)

アルミン(親友の母親は巨人に食われ…
     僕の家族も、壁内の口減らしのために殺された)




???『駆逐してやる!!』

???『この世から…一匹残らず!!』




アルミン(かつて親友がそう誓ったように…)

アルミン(僕も強い意志を持って、訓練兵団への入団を決めた)

アルミン(そして…)

???「ただいまより、第104期訓練兵団の入団式を行う!」




アルミン(そう…今日この日こそ、待ち望んでいた兵士への第一歩なのだ)

アルミン(正直不安はある。軟弱な僕が、
     生き地獄とよばれる過酷な訓練に耐えられるのかどうか…)




???「私が運悪く貴様らを監督することになった…」




アルミン(でも、もう決めたんだ。自分の心で決めたんだ)

アルミン(僕は親友の…)









アルミン(親友…の…)







CHAPTER 02 

DAY 05




アルミン「………………」




アルミン(…またこの夢だ)




アルミン「………………」




アルミン(身体が重い)

アルミン(頭がうまく働かない)





モノクマ『オマエラが“気を失った”のだってそうだよ。
     入団式の最中に体験したという例のめまい…』

モノクマ『要はね、あそこは“記憶の結合点”だったんだ』

モノクマ『オマエラはあそこからの記憶がすっぽり抜け落ち、
     そして今に至るという訳なのです』




アルミン(…もし、あの話が本当だとしたら)

アルミン(さっきまで見ていた夢がまさに、
     “記憶の結合点”という事になる)

アルミン(僕たちは気を失った訳ではなくて、
     “本物の入団式”からの記憶を無くして…)

アルミン(数年間…無くして…)





ユミル『見ろよ、あれ』




ミーナ『なんでこんな残酷な事させるのよ!!』ポロポロ




モノクマ『クズだよ“オマエ”は!!』




ミーナ『みんな…信じてよ!』

ミーナ『私は人類の為に!!みんなの代わりに!!』




モノクマ『まぁいいや、じゃあまた作ってあげるよ!
     ちょうど“新鮮な食材”もできたばかりだし…』




モノクマ『“カロライナさんが話した内容自体”はホンモノなの!!』











アルミン「うわああああああああああああああああああああああ!!」







一旦中断します

― 食堂 ―




クリスタ「本当にいいのかな? 訓練をサボっちゃって…」




11 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
  訓練への参加は強制ではありません。




ユミル「訓練は自由参加だったはずだ。
    サボったからってペナルティはねえよ」

クリスタ「で、でも…全員はさすがに…」

ユミル「全員でサボるからこそ意味があるんだよ。
    これなら【裏切り者】に出し抜かれる心配もないしな」

サシャ「どういう意味ですか?【裏切り者】に出し抜かれるって」

ライナー「…おいおい、忘れたのか?」




12 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
  “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。




ライナー「“ファイナルデッドルーム”での命がけのゲームに勝てば、
     どんな願いでも叶えられる…モノクマがそう言ってただろ?」

サシャ「言ってましたっけ?」

ベルトルト「…言ってたよ」





モノクマ『成績1位の人に与えられるのはそのゲームへの挑戦権だよ。
     それに勝つことができたら、【願いを一つだけ叶えられる】の』




サシャ「…あー、確かにそんな事言ってましたね。それで?」

ジャン「“それで?”じゃねーよ。そこまで言えばわかるだろ」

サシャ「?」

ジャン「…だーっ!! つまりだな!」





モノクマ『サボるのは別に構わないよ?でもさ、オマエラに
     訓練を任された人が【裏切り者】だったらどうすんの?』




モノクマ『そして仮にその【裏切り者】が1位を勝ち取った場合…』

モノクマ『【自分だけここから出たい】とか【自分以外を処刑してほしい】とか、
     そんな事言うかもしれないよねー!』




ジャン「オレたちの中に【裏切り者】がいるとすれば、
    モノクマが言っていた事も起こりかねない」

ジャン「だが、こうやって全員で休んじまえば、
    成績で差をつけられる心配も無くなる…そういう事だよ!」

サシャ「あ、あー…なるほどー」

サシャ「そういう事ですかー…」チラッ





コニー「………………」




サシャ「で、でも、信じられませんよねー」

サシャ「調査兵団が全滅したとか、私たちが記憶喪失とか…」

サシャ「私たち全員の記憶を奪うなんて、
    モノクマさんも大それた事しますよねー、ははは」





コニー「………………」




サシャ「そ、そうだ!きっとモノクマは魔法使いなんですよ!」

サシャ「それなら記憶を消すのも簡単ですし、
    この施設に巨人が寄り付かないのだって説明がつきます!」

サシャ「それにほら!初日に私の芋が串刺しにされましたよね?
    あれこそ魔法と言わずに何と呼べば…」





コニー「………………」




サシャ「ちょ、ちょっとコニー!一体どうしちゃったんですか!」

サシャ「こういうオトボケ担当はコニーだったじゃないですか!
    私の仕事増やさないでくださいよ!」

コニー「……母ちゃん」

サシャ「…!!」

コニー「何だよこれ…ふざけんなよ…」

コニー「なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ…
    俺の村は…家族はどうなったんだよ…」

コニー「帰らせてくれよ…会わせてくれよ…」

コニー「父ちゃん…母ちゃん…サニー…マーティン…」




モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が死滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








コニー「あんな話ウソだって…確かめさせてくれよ…!」

今日はここまで

ペシッ




コニー「ッ…!?」

アニ「いい加減にしな」

コニー「ア、アニ…」

アニ「不安なのはあんただけじゃない」

アニ「苦しいのはあんただけじゃない」




アニ「家族がいるのは…あんただけじゃない」

コニー「…!」




ミカサ『家族がいるのはあなただけじゃない…!』




ライナー「…そういえば、ミカサはどうした?」

クリスタ「それが…部屋に行っても返事が無くて」

ベルトルト「ミカサだけじゃないよ。アルミンも来てない」

ジャン「…無理もねえだろ。今はそっとしといてやろうぜ」

ユミル「ダメだ」

ジャン「あ?」

ユミル「全員集まらなきゃ意味がない。
    1人でも欠ければそいつが訓練に参加するかもしれないからな」

クリスタ「ユミル!」

ジャン「て、てめぇ…あいつらはエレンの幼馴染で…」

ユミル「だから何だ。【裏切り者】かどうかはまた別の話だろ」

ジャン「あいつらは今人前に出られるような状態じゃねえ!
    てめぇには情ってもんがないのかよ!」

ユミル「情…?“誰よりも現実を見てる”ヤツが何言ってんだ。
    幼馴染って理由だけで特別扱いされてたまるかよ」

ライナー「もうよせ」

ジャン「…!」

ライナー「ここで仲間割れしても状況が悪化するだけだ。
     怒る気持ちはわからんでもないが、少し頭を冷やせ」

ジャン「…っ」

ユミル「………………」

サシャ「…で、どうするんです?」

ライナー「ジャンには悪いが、俺はユミルの考えに賛成だ」

ジャン「…! おいライナー!」

ライナー「確かにあの2人はエレンの幼馴染だ。
     昨日の兵団裁判後の状態から察するに、きっと誰よりも苦しんでるだろう」

ライナー「だが、苦しい状況に置かれているのはあいつらだけじゃない。
     さっきアニも言ったが…ここにいる全員が同じ目に遭っているんだ」

コニ―「………………」

ライナー「それに…こんな異常事態だからこそ、1人にさせておくのはまずい。
     よからぬ考えを起こす可能性もあるからな」

クリスタ「よ、よからぬ考えって…」

ライナー「そうならない為にも、今ここで全員が集まっておく必要があるんだ。
     あの2人には悪いが…引っ張ってでも連れてくるべきだろう」

アニ「…引っ張ってでも?」

ライナー「?」

アニ「アルミンはともかく…もう1人の方は勝算があるの?
   あんたですら軽々と投げ飛ばされたのに」




ライナー『ミカサ!落ち着け!』




ドゴッ




ライナー『オゥ…ッ!?』

ベルトルト『ライナー!』



ライナー「………………」

アニ「あんな役目、私はもうごめんだよ」

ベルトルト「アニ、まだ痛むの?」

アニ「…まあね」




アルミン『…アニ? それは…』

アニ『ミカサにやられた』

アルミン『…!』

アニ『まったく、とんでもないバケモノだよ…あいつは。
   私とミーナの二人がかりでやっと縛り付けたんだから』



サシャ「じゃ、じゃあ、どうするんですか…?
    ミカサを連れてこられないんだったら、逆にミカサの部屋に集まります?」

クリスタ「あの個室に10人は狭すぎるよ。そもそも鍵がかかって返事も無いんだし」

サシャ「ならドアをぶち破りましょう!そして全員で取り押さえるんです!」

ベルトルト「全員で…確かにそれならいけるかもしれないけど…」

ユミル「…下手すりゃ皆殺しにされるな」









モノクマ「その心配はありませーん!」







サシャ「ひいいいいぃぃぃぃいい!?」

モノクマ「なぜなら、それは兵団規則に反するからです!
     “同一のクロが殺せるのは2人まで”だからです!」

ジャン「あ、相変わらず何の前触れもなく…」

ライナー「…ちょっと待て、初耳だぞ。そんな規則はなかったはずだ」

モノクマ「当たり前じゃん。だって今初めて言ったんだから」

アニ「………………」

モノクマ「という訳で、例のごとく各自メモを取るよーに!」

■ 兵団規則 ■


1 訓練兵達はこの施設内だけで共同生活を行いましょう。
  共同生活の期限はありません。

2 夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。
  夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。
  他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。

4 この施設について調べるのは自由です。
  特に行動に制限は課せられません。

5 監督教官ことモノクマへの暴力を禁じます。
 
6 “物体X”の破壊を禁じます。

7 仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
  自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。

8 訓練兵内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、
  訓練兵全員参加が義務付けられる兵団裁判が行われます。

9 兵団裁判で正しいクロを指摘した場合は、
  クロだけが処刑されます。

10 兵団裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、
  クロだけが卒業となり、残りの訓練兵は全員処刑です。

11 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
  訓練への参加は強制ではありません。

12 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
  “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。

13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。

14 コロシアイ兵団生活で同一のクロが殺せるのは2人までとします。

15 なお、兵団規則は順次増えていく場合があります。

今日はここまで

ベルトルト「…どうしてそんなルールを?」

モノクマ「だって、1人でたくさん殺しちゃうと、
     楽しい兵団生活がすぐに終わっちゃうでしょ?」

クリスタ「…だったら、なぜ1人までじゃないの?」

モノクマ「だってミステリー的には、
     “連続殺人事件勃発”って響きも捨てがたいでしょ?」

モノクマ「にょほほほ~! 1人じゃ連続にならないしね!」

ユミル「…ますますわからねえな」

モノクマ「へ?」

ユミル「お前の目的は何なんだ。
    訓練をさせたいのか? 殺し合いをさせたいのか?」
    
ユミル「もし単に殺し合わせたいのなら、人数制限なんて必要ないだろ」

モノクマ「必要あるよ。だってコロシアイは手段であって目的ではないから」

ユミル「は…?」

アニ「随分と意味深なことを言うんだね」

モノクマ「うぷぷ…」

アニ「…まあ何にせよ、そんな人間がいるとは思えないけど」

モノクマ「はい?」

アニ「殺す人数が増えればそれだけ手がかりも多く残る…」

アニ「卒業できる条件が同じなら1人殺せば間に合うはず。
   わざわざリスクを冒して2人も殺そうとは思わないよ」

ライナー「…それ以前に、俺たちはもう殺し合いなんてしない」

モノクマ「は?」

ライナー「昨日の一件で全員が痛感したはずだ。
     それがどんなに悲惨な結果を生むか…」








ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』







ジャン「そうだ…その通りだっ…!」

ジャン「オレたちは二度とあんな真似はしねえ!
    いつまでもテメェの思い通りにさせてたまるかよ!」

サシャ「そ、そうですよ!
    私たちは絶対に全員でここを出るんです!」

サシャ「ねっ、コニー!」

コニー「………………」

サシャ「ほ、ほら!コニーだってそう言ってますよ!だから…」









モノクマ「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」







サシャ「…!!」

モノクマ「あーもう、朝っぱらから笑わせないでよ…ぶひょひょ」

モノクマ「全員でここを出る?
     外に出たら死ぬだけだって、あんなに言って聞かされたのに?」

モノクマ「ボクはオススメしないけど…もしそれが望みなら、
     頑張って1位を目指さないとねえ、ブラウスさん」

サシャ「…っ!?」

モノクマ「ブラウンくん」

ライナー「…な、何だ」




ライナー『昨日の一件で全員が痛感したはずだ。
     それがどんなに悲惨な結果を生むか…』




モノクマ「キミはさっきこう言ったけど、そうじゃないでしょ?
     オマエラが本当に痛感したのは…」









モノクマ「“こんなにも簡単にコロシアイが起きる”…そういう事でしょ?」







今日はここまで

ライナー「…!!」

モノクマ「オマエラだって見たよね?
     あのカロライナさんの豹変っぷりを」




ミーナ『クズだよあんたらは!!』




ミーナ『認める訳ねーだろ!真っ白なんだよ私は!』




ミーナ『いい加減にしろよこのもやしが!!』



モノクマ「いやぁ、アレにはさすがのボクも驚きましたよ」

モノクマ「【巨人に関する重大なヒミツ】…
     これをエサにすれば、オマエラは絶対に喰いつくと思ったんだけど…」

モノクマ「まさかあんな子が、たったの3日足らずで、壮大な作り話をしてまで、
     他のみんなを出し抜こうとするなんて…」

モノクマ「思いのほか引きがよかったね!竿ごと持っていかれるかと思ったよ!」

ジャン「何が作り話だ!てめぇがミーナに殺人を唆したんだろうが!」

モノクマ「もう! だから何度言えばわかるのさ!
     ボクはあの夜、カロライナさんに会ってすらいないってば!」

ユミル「…あくまでしらを切り通すのかよ」

モノクマ「はぁ…やっぱり信じてくれないんだね。
     でもまあ、オマエラがボクを疑いたくなる気持ちもわかるよ」

モノクマ「まさか、カロライナさんがでっち上げた話と
     ボクの知っている真実が“たまたま”同じだったなんて…」

モノクマ「そりゃ疑いたくもなるよね…うん…」

アニ「…これ以上は問い詰めても無駄みたいだね」

モノクマ「うん、無駄だね。どこにも証拠なんて無いし…」

モノクマ「第一、ボク本当にやってないもん」

ジャン「…っ!」

モノクマ「ていうか、何の話してたんだっけ? えーっと…」

モノクマ「あっ、そうそう!
     『アッカ―マンさんに皆殺しにされる心配はない』って話だったね!」

モノクマ「でもさ、本当に心配ないと思うよ?」

クリスタ「…?」

モノクマ「だって今の彼女…」




モノクマ「とてもそんな事できる状態じゃないから」

ベルトルト「…え?」

モノクマ「………………」

サシャ「そ、それってどういう…」

モノクマ「………………」




モノクマ「………うぷぷ」

ジャン「!!」




ガタッ




ライナー「おいジャン!どこに行く気だ!」

ジャン「決まってんだろ!ミカサのところだ!」

ライナー「落ち着け!まだそうと決まったわけじゃない!」

ジャン「だからじっとしてろってのか!? 
    こんな状態でミカサにまで何かあったら…!」

アルミン「…ジャン?」




ジャン「…!」

サシャ「ア、アルミン!? アルミンじゃないですか!」

アルミン「ごめん、遅くなって…」

ジャン「そんな事よりミカサは!?」

アルミン「えっ…」

ジャン「ミカサはどうしたんだ!一緒じゃないのか!?」

アルミン「ミ、ミカサならここに…」




バッ




ジャン「ミカサ!?」

ジャン「よかった!無事だったん…」









ミカサ「………………………………」







ジャン「…!?」

モノクマ「おやおや、ようやく現れたようですね」

モノクマ「ほら、ちゃんと謝らないと。みんなすごく心配してたんだよ?」

ミカサ「…………どこ」

モノクマ「へ?」




ミカサ「エレンを……どこにやったの……」



今日はここまで

モノクマ「エレン…?」




アルミン(本当に忘れたと言わんばかりに首を傾げた後…)

アルミン(何を合点したのか、モノクマはポンと手を打った)




モノクマ「…ああ、あの“ジャマな死体”のこと?」

アルミン「…っ!!」

モノクマ「もちろんキレイに掃除しといたよ」

モノクマ「だって、腐っちゃったりしたら目も当てられないし、
     健全な生活にも支障をきたすでしょ?」

アルミン「…っ! ……ッ!!」

モノクマ「ああ、いいのいいの…お礼はいいの…
     ボクはオマエラの喜ぶ顔が見たいだけだから!!」

アルミン(僕は必死に拳を抑えていた)

アルミン(だけどミカサは…)




ミカサ「…………そう」

ミカサ「エレンは……もう……」




アルミン(何かに納得したように、そう呟くと…)

アルミン(そのまま再び…)









ミカサ「………………………………」







アルミン(ミカサだって人間だ)

アルミン(あらゆる物事を完璧にこなす。
     女の子なのに、笑うこともなければ泣くこともない…)

アルミン(『何を考えているのかわからない』『からくり人形みたい』
     そう言った人たちもいたけれど…)

アルミン(幼馴染の僕にはわかる。ミカサにだって、たくさんの表情があるんだ)

アルミン(だけど、今のミカサからは表情が読み取れない)

アルミン(色彩を欠いた真っ黒な瞳。
     まるで、感情という感情を全て削ぎ落としたような…)

アルミン(“からくり人形”? そんなんじゃない)

アルミン(これはまるで…)









アルミン(“抜け殻”…)







モノクマ「…オマエラはさ、大切な人を亡くしたことはある?」

クリスタ「え…?」

モノクマ「もしないなら想像してごらん」

モノクマ「大切な人が誰かのせいで死んだり、殺された時のことを」

モノクマ「最初はね、何が起こったのか理解できないんだ」

モノクマ「それまで当然のように隣にいた人がいなくなる。
     この世界のどこに行っても、もうその人には会えない」

モノクマ「頭ではわかってるんだけど、それでも“理解”できない。
     まるで他人事のような、夢の中の話のような…」

モノクマ「これがいわゆる“レベル1”」

モノクマ「しばらくすると“レベル2”になる」

モノクマ「現実をある程度受け入れた状態。
     その人に会えなくて、どうしようもないほど悲しい状態…」

モノクマ「でも、そんな状態はそれほど続かない。
     次第にある感情が心を埋め尽くして…」

モノクマ「長い長い“レベル3”に突入する」

モノクマ「体中の臓物がうねり出す。強烈な吐き気を覚える。
     目が血走る。何を食べても鉛の味がする」

モノクマ「大切な人よりも、死に追いやった人間を思うことの方が多くなる」

ライナー「………………」

モノクマ「ここからは本当に人それぞれだよ」

モノクマ「憎しみを抱えたまま一生を終える人もいれば、
     復讐を誓ってそれを成し遂げたり、失敗する人もいる」

モノクマ「でもね…その人たちのほとんどが気付いていないんだ」




モノクマ「“レベル4”があることに」

モノクマ「仇討ちを果たすとね、そこには意外と何もないんだよ」

モノクマ「あんなに毎日思い描いていたのに。
     これで心に空いた穴が塞がると思ったのに」

モノクマ「あるいは賢い人なら、
     復讐なんて考える前に気付いちゃうのかもしれないね」

モノクマ「そいつを殺したとしても、大切な人は戻ってこないって」

モノクマ「すると一気に空しくなる」

モノクマ「心の穴が塞がるどころか、穴だらけになって…」

モノクマ「やがて心が穴そのものになる」

サシャ「…!?」

モノクマ「何を言っているのかわからないって?」

モノクマ「でもそれは…今のアッカ―マンさんを見れば一目瞭然でしょ?」









ミカサ「………………………………」







モノクマ「ユミルさんはさっきこう聞いたよね?」




ユミル『お前の目的は何なんだ。
    訓練をさせたいのか? 殺し合いをさせたいのか?』




モノクマ「あの質問に一言で答えるとすれば…」

モノクマ「ずばり、“レベル4”だよ」

ユミル「は…?」

モノクマ「“レベル1”から“レベル3”なんてどうでもいい。
     手段はそこまで重要じゃないんだ」

モノクマ「ボクがオマエラにさせたいのはね…」









モノクマ「絶望…それだけだよ……」







モノクマ「うぷぷ…それにしても、見れば見るほどいい顔してるよね」

モノクマ「ボクって自分以外の顔はあんまり見惚れないんだけど、
     ここまで絶望しきった表情を見るとボクの真っ白な絹綿が」

アルミン「…黙れ」

モノクマ「はにゃ?」

アルミン「絶望だか何だか知らないけど…これ以上好きにはさせない…」

アルミン「エレンの仇は僕が必ず…!」

モノクマ「あーはいはい。“レベル3”が何か言ってるよ」

モノクマ「仇討ちをしても良い事無いって、今教えたばっかりなのにねー」




アルミン(僕はそのままモノクマを睨み付けていたけど…)

アルミン(ふとそこで、ある人の視線に気付いた)

アニ「………………」




アルミン(アニはこちらを見ながら、クイクイと首を動かしている)

アルミン(相変わらずの鉄仮面。
     それでも、その表情は読み取ることができた)

アルミン(『早く座って』…きっとそう言いたいんだろう)

アルミン「…行こう、ミカサ」




アルミン(僕が背中を促すと、ミカサは何の抵抗もせずに従った)

アルミン(みんなの視線を一身に浴びながら、アニに示された席へと向かう)




アニ「全員揃ったみたいだね」

アニ「…じゃあ、始めようか」

今日はここまで

続きは 06/15(日) に投下する予定です

そこからは毎週日曜日の更新になると思います

アルミン(僕とミカサが席に着くのを見届けると、ライナーは咳ばらいをした)




ライナー「…コホン」




アルミン(静まり返る食堂)

アルミン(ライナーは一人一人の顔を見た後、言葉を選ぶように話し始める)




ライナー「今日集まってもらったのは他でもない。俺たちの今後を話し合う為だ」

アルミン(年長者ということもあって、
     いつの間にかライナーが僕らのまとめ役になっていた)

アルミン(もっとも僕は…それに若干の抵抗を感じていたんだけど)




ライナー「知っての通り、今の俺たちがいるのは異常空間だ」

ライナー「屋外をそのまま鉄板で囲ったような巨大な施設。
     衣食住が完璧なまでに行き届いた環境…」

ライナー「だが、異常なのはそれだけじゃない。
     俺たちはそこで訓練をさせられ、殺し合いを強いられ…」

ライナー「そして実際に… 俺たちの間で殺人が起きた」









アルミン『エレン!!!!』








ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』








ライナー「エレンはミーナに殺され…」

ライナー「ミーナは俺たちの前で処刑された」

ライナー「ミーナがやった事は決して許されない」

ライナー「だが俺は…ミーナだけを責めようとは思わない」

ミカサ「………………」

ライナー「今の俺たちに必要なのは“団結力”だ」

ライナー「全員が団結して、不確かな情報に惑わされることなく、
     かかる脅威に立ち向かわなければならない」

ライナー「全ての元凶である黒幕に…立ち向かわなければならない」

ライナー「だから今日はみんなに訓練を休んでもらった」

ライナー「【裏切り者】の存在ももちろんあるが…
     何より今はそんな事ができる状態じゃないだろう?」

コニ―「………………」

ライナー「黒幕に立ち向かう為には戦略や方向性が必要なんだ。
     でも、今の俺たちには知らない事が多すぎる」

ライナー「今日は一日話し合おう。
     疑問点を明らかにして、これからの行動について意見を…」

ユミル「…待てよ」

ライナー「?」

ユミル「その前に…お前らには説明すべき事があるだろう」

ライナー「何の話だ」

ユミル「とぼけるなよ。忘れたとは言わせないぞ」





アルミン『え…?』

ライナー『俺とベルトルトには、
     この施設に連れて来られるまでの記憶が一切なかった』

ライナー『自分の出身はもちろん、家族の名前や
     小さい頃の思い出なんかが全部…抜け落ちてしまっているんだ』

アルミン『き、記憶が…ない?』

ベルトルト『唯一覚えていたのは自分の名前と、
      日常生活や壁の中についての知識…』

ベルトルト『それと、“自分は兵士にならなきゃいけない”っていう…
      異様な使命感だけなんだよ』



ベルトルト「…!!」

ユミル「それにミカサの話だと…
    アルミンに口止めまでしてたらしいじゃねえか」




アルミン『そうなんだ…僕はてっきり、
     二人は古くからの友人だと思っていたんだけど』

ライナー『…信じられねえのはわかる。
     だから俺たちも言い出せなかった』

ライナー『特に【裏切り者】の存在が示唆された今…
     真っ先に怪しまれるのは俺たちだろうからな』




ベルトルト『…ねえアルミン、
      虫のいい頼みだっていうのは承知してる。だけど…』

アルミン『…わかってる。この件は誰にも言わないよ』

ライナー『…すまねえな』



ライナー「………………」

ユミル「別にお前らが【裏切り者】だって決め打ってるわけじゃない」

ユミル「まして、今お前が言った事に異論があるわけでもない。
    こういう話し合いの場は必要だと私も思ってたからな」

ユミル「ただな、私たちを仕切る以上は
    そこら辺をハッキリさせてもらわねえと…わかるだろ?」

ライナー「…ああ、もっともな意見だ」

ベルトルト「ラ、ライナー…」

ライナー「………………」




アルミン(ベルトルトがライナーを見る)

アルミン(ライナーはそれを目線で返した後、一つ呼吸をして話し始めた)

今日はここまで

ライナー「改めて説明させてもらうと、こういう事だ」

ライナー「みんなには入団式直前までの記憶があるようだが、
     俺たち2人に限ってはそうじゃなかった」

ライナー「自分の名前と必要最低限の知識…それしか残されていなかった」

ライナー「話を聞いてるうちに思い出してきた部分もあるが、
     それでもぼんやりとしかわからない」

ライナー「ミーナは家族の為に殺人を犯したと言っていた。
     だが俺たちは…家族の名前すら思い出せない」

アルミン(全員が黙って聞いていた)

アルミン(静まり返った食堂に、ライナーの声だけが響き渡る)




ライナー「本当にそれだけなんだ」

ライナー「アルミンに口止めをした理由も、あの時に言った通り…
     あの状況では俺たちが真っ先に疑われると思ったからだ」

ライナー「…まあ、そのせいで逆に疑われるとは思わなかったけどな」

ベルトルト「………………」

アルミン(ライナーが頭を下げる)




ライナー「信じてくれとは言わん。だが、これが俺の嘘偽りない答えだ」

ライナー「疑われるような事をしてしまって…すまなかった」




アルミン(ベルトルトも立ち上がって、僕たちに向かって頭を下げた)

アルミン(巨漢2人が礼をし、椅子に座った男女がそれを見つめ続ける
     なんともシュールな光景…)

アルミン(食堂に満ちた静寂は、みんなの息をする音が聞こえるほどだ)

アルミン(時が止まったような空間)

アルミン(その重苦しい空気に割って入ったのは…ユミルだった)




ユミル「…妙な話だな」

ライナー「………………」

ユミル「ざっと見て100人以上いた訓練兵のうち12人だけが閉じ込められ、
    どっかのキチガイに殺し合うよう言われ…」

ユミル「おまけに私たちの中に【裏切り者】がいて、
    12人のうち2人の人間が“たまたま”記憶喪失だったなんて…」

ユミル「なんとも奇妙な話だよな」

ベルトルト「………………」

アルミン(ライナーとベルトルトはバツが悪そうに黙り込む)

アルミン(そんな2人をじっと見つめていたユミルだったが…)




ユミル「………………」




アルミン(やがて大きなため息を吐いた後、独り言のように呟いた)




ユミル「…って思っただろうな。昨日までの私なら」

ベルトルト「…………え?」

ユミル「言っただろ」




ユミル『別にお前らが【裏切り者】だって決め打ってるわけじゃない』




ライナー「…!」

ユミル「つーか、誰も疑ってねえよ。ここにいる全員が思ってるはずだ」




ユミル「“記憶が無いのはあの2人だけじゃない”…ってな」



アルミン(ギクリとした)




ミーナ『じゃあ聞くけど!あんたには心当たりがないの!?』

ミーナ『“自分の記憶が抜け落ちているかもしれない”…
    そう思える心当たりが、あんたにはないっていうの!?』




ミーナ『私にはあった!』

ミーナ『自分の身長が伸びてる、見覚えのないホクロがある、
    気を失う前よりも身体がガッシリしてる…』

ミーナ『絶対におかしいと思った!でも考えないようにしてた!
    考えるのが怖かったから!』

ミーナ『私はずっと…見て見ないフリをしてたんだよ!!』



ユミル「お前だってそうなんだろ、芋女」

サシャ「…確かに私も、ライナーとベルトルトを疑ってる訳じゃありません」

サシャ「でも、それはつまり…」




モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が死滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








サシャ「あのモノクマの言葉を…信じるってことでして…」

アニ「私は信じるよ」

サシャ「…!?」

アニ「調査兵団や壁の件はともかく…
   私たちが記憶喪失だっていうのは本当だと思う」

コニ―「…!!」

クリスタ「ほ、本気なの、アニ…?」

アニ「………………」

ユミル「…そういえば、兵団裁判の時にも言ってたな」




アニ『やっぱりみんな気付いてないんだね』




ユミル「お前はあの時点で気付いてたんだろ?その可能性に」

アニ「…まあね」

ジャン「おいおい… だったら、なんでその時に言わなかったんだよ」

アニ「言ったところで混乱するだけでしょ。
   それに、あの時はエレンの裁判中だったし」




アルミン(僕たちは数年間の記憶を失っている…)

アルミン(なんとも現実味のない話だ。
     12人の訓練兵が揃って記憶喪失だなんて…)

アルミン(でも… その現実味のない話がリアルになりつつある。
     全員の中で確信に変わりつつある)

アルミン(その事が…とてつもなく恐ろしかった)

サシャ「それにしても…ユミルも人が悪いですよね」

ユミル「あ?」

サシャ「だ、だってそうじゃないですか!」

サシャ「最初から疑う気がないのに、
    まるでライナーとベルトルトを責めるような…」

ユミル「だから責めてないって言ってんだろ。
    私はただ、本人の口からハッキリと聞きたかっただけだ」

サシャ「そ、それにしたって…」

ユミル「それにな、私が気になってるのはそんなところじゃない」

クリスタ「え?」

ユミル「というかお前ら…変だとは思わないのかよ」








ユミル「なんであの2人だけ、ほとんどの記憶がないんだ?」







アニ「………………」

サシャ「…えっ?」

ユミル「だってそうだろ」




ライナー『みんなには入団式直前までの記憶があるようだが、
     俺たち2人に限ってはそうじゃなかった』

ライナー『自分の名前と必要最低限の知識…それしか残されていなかった』




ユミル「私たちが失っているのは【入団式直後からの記憶】だ。
    でも、あの2人には【ほぼ全ての記憶】がない」

ユミル「どうして私たちとあいつらで…“失った記憶に差がある”んだ?」

今日はここまで

申し訳ありませんが 06/29(日) はお休みします

その分 07/06(日) は長めに投下します

アルミン(再び時間が止まる)

アルミン(モノクマの言う事を信じたときに生じる、一つの疑問)

アルミン(おそらく本当に気が付かなかったのだろう。
     ライナーとベルトルトはハッとしたように顔を見合わせていた)




ベルトルト「…そうだ…確かにその通りだ…」

ベルトルト「もしモノクマの言う通り…
      僕ら全員が記憶喪失なら、説明がつく事もたくさんある」

ベルトルト「でも、それならどうして…僕とライナーだけ…」

アルミン(ライナーが食堂の端にいた“そいつ”を睨み付ける)




ライナー「…おい、どういうことだモノクマ。
     どうして俺とベルトルトの記憶だけ多く奪ったんだ?」

モノクマ「………………」

サシャ「ていうかモノクマいたんですか!?」

ジャン「今更かよ!」

サシャ「だ、だって… 黒幕に対抗するための話し合いをしてるのに、
    本人がいたら意味ないじゃないですか!」

アニ「…関係ないよ。どうせ私たちの行動は筒抜けなんだろうし」

アルミン(モノクマは微動だにしない)

アルミン(それでもライナーは追及の手を緩めず、なおも言葉を浴びせかけた)




ライナー「俺とベルトルトには入団式までの記憶すら無い」

ライナー「これは偶然か? そうじゃないだろ」

ライナー「お前が奪ったんだ。この施設に監禁する際に俺たち全員の記憶を奪った」

モノクマ「………………」

ライナー「だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?」

ライナー「もしかして俺たち2人の記憶には何か…
     【お前にとって不都合なもの】があったんじゃないのか?」

モノクマ「………………」

ライナー「どうなんだモノクマ。黙ってないで何とか言え」

アルミン(ライナーの言葉は静かだった)

アルミン(静かでありながら…有無を言わせぬ迫力があった)

アルミン(聞いている者すべてがゴクリと息を呑むほどに)




モノクマ「………………」




アルミン(だけど、モノクマは怯まなかった)

アルミン(怯むどころか…)

モノクマ「…………はぁ」

クリスタ「…?」

モノクマ「オマエラってさ…」




モノクマ「カロライナさんとそんなに変わらないよね」

ジャン「…は?」

モノクマ「裁判であんなに責め立ててたけどさ、
     あんまり人の事言えないんじゃないの?」

モノクマ「オマエラだって同類だよ」

ユミル「…どういう意味だよ」

モノクマ「さっきの質問…」




ライナー『だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?』




モノクマ「答えるのは別に構わないよ?
     どうせいつかは言わなきゃいけないと思ってたし」

モノクマ「でもその前に…ちょっと探検してきたら?」

クリスタ「探検…?」




アルミン(クリスタが怪訝そうな顔をする)

アルミン(するとモノクマは、蔑むようなトーンから一転して
     明るい調子で話し始めた)




モノクマ「えー、コホン…」

モノクマ「この施設では、兵団裁判を一つ乗り越えるたびに
     新しい世界が広がるようになっております!」

ベルトルト「新しい世界だって…?」

モノクマ「ほら、この施設に何ヶ所か、鍵のかかった場所があったでしょ?」





ライナー『他には何かあったか?』

アニ『鍵がかかっていて開かない場所がいくつか。それと…』




ジャン「…あれのことか。1日目に調査したときアニが言ってた…」

モノクマ「そうそう。全部じゃないけど、そこの鍵をいくつか開けておいたの」

サシャ「な、なんでわざわざそんな事を…?
    もしかしてまた何か企んでるんじゃ…」

モノクマ「むむっ、失礼なサルだね。これは監督教官としての粋な計らいだよ」

モノクマ「こうやって刺激を与えてやらないと、
     オマエラみたいなシラケ世代はすぐにブーたれるでしょ?」

アニ「…とにかく、鍵のかかった場所に入れるようになったんだね?」

モノクマ「うん。全部じゃないけど」

アニ「ふーん… じゃあ行ってみようか」

サシャ「え!? 今からですか!?」

アニ「気分転換にもなるし良いんじゃない?
   話し合いはそれからでも遅くないでしょ」

ライナー「ちょっと待て、危険すぎる。罠だったらどうするんだ」

アニ「罠?」

ライナー「モノクマのことだ…
     俺たちを誘い出して、監禁や始末なんてこともあり得るだろ」

アニ「…それはないと思うよ」




4 この施設について調べるのは自由です。
  特に行動に制限は課せられません。




アニ「兵団規則にはこう記されているし…」





モノクマ『規則違反をされない限りは、
     ボクは自ら手を下したりしません』

モノクマ『この訓練兵生活の趣旨に反するような事は
     決してしませんッ!』




アニ「モノクマだってああ言ってたじゃない」

ライナー「………………」

アニ「あいつのやる事はいろいろと理不尽だけど、
   ルールだけは遵守してる」

アニ「…その点においては、信頼してもいいと思うけど?」

モノクマ「うんうん、よくわかってるじゃん」

モノクマ「ボクって、クマ1倍ルールにはうるさいって
     サファリパークでも有名だったんだから」

アニ「それに…」




ライナー『だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?』




アニ「“探検”したら答えてくれるんでしょ? さっきの質問に」

モノクマ「もちろん。クマに二言はありません」

アニ「それなら尚更… 行かない手はないと思わない?」

ライナー「………………」

ユミル「…じゃあ、さっさと行くか」

クリスタ「ユ、ユミル…」

ユミル「これからこの施設で過ごすのに変わりはないんだ。
    生活空間が拡がったっていうなら、見ておいた方がいいだろ」

サシャ「そうですね…もしかしたら新しい食料」

ジャン「………………」

サシャ「…じゃなかった。脱出につながる手がかりもあるかもしれませんしね」

ライナー「…決まりだな。なら話し合いは一旦中断だ」

コニ―「………………」

ライナー「1日目と同じように何人かに別れよう。
     全員で固まって行くよりも効率的だろ?」

ベルトルト「そうだね。鍵のかかった場所って結構あったし、
      どこの鍵が開いたのかもわからないからね」

ライナー「鍵のかかった場所についてはアニがまとめてくれてる。
     今から人数を分けるから、自分たちの担当区域を調べてきてくれ」

一旦中断します

― 林 ―




ユミル「待たせたな」

クリスタ「ごめんね、遅くなって」

ライナー「おい遅刻だぞ…と思ったら天使だったか、許す」

アニ「面白くないよライナー」

ライナー「とにかく、これで全員集まったみたいだな。
     じゃあ早速報告していってくれ」

サシャ「みなさん落ち着いて聞いてください!牛!牛!」

ジャン「お前が落ち着けよ」

サシャ「だから牛がいたんですよ!飼育小屋に!」

ベルトルト「飼育小屋…?」

サシャ「コニーと行ってみたんですけど、
    食肉用や生乳用の牛が何頭か飼育されていたんです!」

サシャ「ねっ、コニー!」

コニー「………………」

クリスタ「飼育って…誰が? その小屋って施錠されてたんじゃ…」

ユミル「何わかり切った事聞いてんだよ。モノクマに決まってんだろ」

モノクマ「なんと斬新な解釈!クマが牛を育てるとなっ!?」

モノクマ「…いや、案外ウケるかも?」

サシャ「それだけじゃありませんよ!
    豚や羊やニワトリ、さらには乗馬用の馬なんかも…」

サシャ「とにかくいろんな家畜が所狭しと飼われていたんですよ!!」

ジャン「わかったから鼻息を整えろ」

クリスタ「じゃあ次は私たちから。ライナーに言われた通り、
     ユミルと2人で担当のエリアを調べたんだけど…」

ユミル「ああ、なかなか面白い場所が解放されてたぜ。ライブハウスってやつだ」

ライナー「ライブ…なんだって?」

クリスタ「ライブハウスだよ。
     演奏用のステージがある宴会向けの建物ってところかな」

ユミル「楽器からパーティ用の小道具まで色んな物が揃ってたが、
    中でも一番目を引いたのが…」

ジャン「…何だよ、ニヤニヤしやがって」

ユミル「…まあ、これは自分で確かめてみた方がいいんじゃないか?
    少なくとも悪い物ではなさそうだからよ」

ライナー「アニとジャンはどうだった?」

アニ「こっちも1つ解放されてたよ。
   本棚がたくさんあって、色んな書物がズラリと並んでた」

サシャ「それってもしかして…」

ジャン「ああ、書庫ってところだろうな」

ジャン「それと、その中にもう1つ扉があったんだが、
    そっちは閉鎖されてたぜ」

アルミン「僕とミカサの方は…何も無かったかな。
     施錠されたままだったよ」

ミカサ「………………」

ライナー「…そうか。なら、これで一通りの報告は出揃ったようだな」

ベルトルト「そうだね。じゃあ、前回までの情報と合わせてまとめてみようか」

  施設の特徴


・ 地下3メートルに巨大な鉄板?

・ 屋外をそのまま建物で囲った構造




  施設内の場所


・ 訓練所
 
・ 食堂・調理場(食糧が充実)

・ 寄宿舎(大浴場、各々の個室がある)

・ 倉庫(訓練道具、生活用品、薬品類などが充実)

・ 飼育小屋(牛、豚、羊、ニワトリ、馬などを飼育)

・ ライブハウス(演奏用のステージがある)

・ 書庫(鍵のかかった扉がある)

・ 林

・ 赤い扉(裁判場に続く昇降機への入り口)

・ 裁判場

・ その他、鍵のかかっている箇所

ユミル「相変わらず見やすいな、ベルトルさん」

ベルトルト「あはは、ありがとね」

サシャ「うーん。これを見る限りだと、新しく発見されたのは…」

クリスタ「飼育小屋、ライブハウス、書庫…この3つかな」

アルミン「いや、4つじゃない?」

クリスタ「えっ…」

アルミン「ライナーとベルトルトはこの林周辺を調べてたんだよね?
     そして調査の終わった僕たちを、わざわざここに集合させたのは…」

アルミン「僕たちに見せたい何かが見つかったから…違うかな」

ライナー「さすがだなアルミン。話が早くて助かる」

ジャン「何だよ。オレたちに見せたい何かって」

ライナー「もう少し奥にある。ついてきてくれ」

ユミル「…ていうか、普通に報告すりゃあいいじゃねえか。
    何をそんなにもったいぶってんだよ」

ライナー「すまんな、こればっかりは見てもらった方が早いんだ」

ライナー「なにせ…俺たちの記憶に関わる事かもしれないからな」

サシャ「えっ…?」

アニ「………………」

今日はここまで

― 林(深部) ―




ジャン「…なあ、まだ着かないのかよ」

ライナー「もう少しだ」

ジャン「お前の言う“もう少し”はどれくらいなんだよ…」
    
ジャン「もう結構歩いたぞ…」

ベルトルト「………………」

アニ「情けないね。ちょっとはサシャを見習ったらどうなの」

サシャ「そうですよ!こんなので音を上げてたら狩猟生活なんて務まりませんよ!」

サシャ「ねっ、コニー!」

コニー「………………」

ジャン「別に狩猟生活なんてやんねーっつーの…」

ジャン「なあ、コニー」

コニー「………………」

クリスタ「それにしても… 本当に広いよね、ここ」

ユミル「ああ… バカでかい天井と壁がなかったら、
    ここが屋内だってことを忘れちまいそうだ」




アルミン(ユミルはそう言って頭上を振り仰ぐ)

アルミン(そこには緑の葉が青々と生い茂り、
     ゆらゆらと揺れる隙間からは光が差し込んでいた)

アルミン(この施設にも昼と夜がある)

アルミン(数十メートル上にある天井の照明で光量を調整し、
     外の時間帯をリアルに再現する…)

アルミン(…というのがモノクマの説明だった)




コニー『よくわかんねーけど… そんなめんどくせー事するくらいなら、
    天井なんて取っ払っちまえばいいんじゃねーか?』

モノクマ『そんな事したらオマエラ、立体機動で逃げちゃうじゃん!』

ジャン『…まだ誰も立体機動なんてできないけどな』

ミーナ『っていうか…ここって林あるんだよね?
    天井があったら雨降らないじゃん。木が枯れちゃうんじゃないの?』

モノクマ『キミねえ、木の生命力を舐めちゃいかんよ?』

モノクマ『あいつらってさ、ギャンブルで無一文になっても、
     自分の腎臓を売ってまたギャンブルするほどしぶといんだから』

アニ『何の話をしてるの…』



アルミン(あの頃はまだ良かった)

アルミン(2、3日前の僕らはまだ正常だった。
     不自然なものを不自然と言える感覚があった)

アルミン(でも今は…)




ユミル「…なんだよ、芋女」

サシャ「いや、何と言いますか…
    この施設の天井と壁を見てて思うんですけど…」









サシャ「ウォール・シーナ全体にフタを被せれば、こんな感じになりません?」







アニ「………………」

ユミル「…お前、ウォール・シーナの面積どれくらいあると思ってんだよ。
    いくらこの施設がでかいからって、さすがにそこまで広くはないぞ」

サシャ「も、ものの例えですよ…
    でもほら、トロスト区やカラネス区くらいの壁に囲まれた都市なら…」

ユミル「あのなぁ… 仮にそうだとしても、
    照明付きの巨大なフタなんてどうやって用意して被せるんだ?」

サシャ「そ、それは…」

ライナー「…着いたぞ」

サシャ「えっ…」

ライナー「あれだ」








アルミン「…………!!」









――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

            栄誉ある戦士 ここに眠る                

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


           席次5位 エレン・イェーガー


           席次不明 ミーナ・カロライナ

















アルミン(それは石碑だった)

アルミン(今は亡き仲間の名が刻まれた…巨大な石碑だった)




クリスタ「…っ!?」

ユミル「これは…」

ジャン「な…なんだこりゃ…!?」

アニ「………………」

今日はここまで

申し訳ありませんが、明日に投下します

ライナー「墓…だろうな、おそらく」




アルミン(ライナーが石碑を見上げながら呟いた)




クリスタ「おそらくっていうか…
     どう見てもお墓だよね、これ…」




アルミン(大理石だろうか)

アルミン(なめらかに光る表面は唐草模様で縁どられ、
     見る者にどこか神秘的な印象を与えている)

ジャン「は、墓って…こんなにでかい墓見たことねえぞ!?」

クリスタ「でも、これはどう見たってお墓だよ。
     『栄誉ある戦士 ここに眠る』なんてよくある文句だし…」

クリスタ「それに…あの2人の名前が記されてる」




アルミン(クリスタが石碑の上方にある文字を指す)

アルミン(石碑の文字は上部4分の1程度の区画に刻まれており、
     4分の3の下部には光沢のある面が広がっているだけだった)

ユミル「…1日目にここを探索したのはアニだったよな?」

アニ「そうだけど」

ユミル「その時にはあったのか?この石碑は」

アニ「…さあね。この林広いし、隅々まで調べたわけじゃないから」

ユミル「………………」

アルミン「…多分、アニが調べた時にはまだ無かったんじゃないかな」

ユミル「…なんでそう思うんだ?」

アルミン「だって、綺麗すぎるよ。
     こんなに木が生い茂ってるのに、埃や葉っぱの一つも被ってない」

アルミン「それに、1日目にエレンとミーナはまだ生きていたから…
     その時点でこの石碑があったっていうのはおかしいでしょ?」

ユミル「………………」

ジャン「…じゃあ何か? この石碑はあの2人が死んだ後…
    つまり【昨日の夜から今にかけての時間】に建てられたものだと?」

アルミン「うん、そうなるんじゃないかな」

ジャン「…こんなにでかくて重いものを、
    わざわざ林のど真ん中に持ってきたのか?」

アルミン「目的は僕にもわからないけど…
     でも、モノクマならそのくらいやりそうじゃない?」

アルミン(僕はモノクマに目をやった)




モノクマ「………………」




アルミン(モノクマは一言も発さずに、少し離れたところから僕らを見ていた)

アルミン(一体何を考えているのか…
     両手を口に当ててくねくねと身をよじらせている)

コニー「………………」

ミカサ「………………」




アルミン(あの2人も相変わらず喋らない)

アルミン(コニーはともかく…
     ミカサの方は、エレンの名前を見て何か反応を示すかと思ったんだけど…)




ミカサ「………………」

サシャ「あ、あのぅ…」

ユミル「…今度は何だよ」

サシャ「いや、その…」

サシャ「あれって…どういう意味なんでしょうか?」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

            栄誉ある戦士 ここに眠る                

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――


           席次5位 エレン・イェーガー


           席次不明 ミーナ・カロライナ

















ライナー「…やっぱり気になるか?
     エレンとミーナの名前の前に刻まれた表記…」

ライナー「“席次5位”と“席次不明”…」




アルミン(改めて石碑の文字を見る)

アルミン(するとそこには確かに、名前よりも小さな文字で
     そのような言葉が記されていた)

今日はここまで

ジャン「席次…? 何のことだ?」

クリスタ「普通に考えれば“成績の順位”って意味だろうけど…」

ジャン「成績って…何の成績だよ」

クリスタ「うーん…やっぱり訓練の成績じゃないかな。
     それくらいしか思いつかないし…」

ユミル「…だとしたら妙だな」

名前          PT

ミカサ・アッカーマン  10
ミーナ・カロライナ   10
アニ・レオンハート   09
ライナー・ブラウン   09
ベルトルト・フーバー  09
ユミル         09
ジャン・キルシュタイン 08
コニー・スプリンガー  08
サシャ・ブラウス    07
クリスタ・レンズ    07
アルミン・アルレルト  06
エレン・イェーガー   00

ユミル「昨日の裁判で見た訓練成績表によると、エレンの順位は…」

ライナー「ああ、ダントツの最下位だった。得点すら入ってない」

ライナー「なのに、この石碑には
     “席次5位 エレン・イェーガー”…確かにこうある」

アニ「………………」

サシャ「同着5位って意味じゃないですか?
    同じ得点の人って結構いましたし…」

ユミル「アホか。その考えだと1位がミカサとミーナ、
    2位がライナー、ベルトルト、アニ、私…」

ユミル「3位がジャンとコニ―、4位がサシャとクリスタ…
    5位がアルミンで、エレンは席次6位になるはずだろ」

サシャ「あ…そっか」

ユミル「それに、ミーナの“席次不明”ってのもよくわからない。
    あいつの成績はミカサと一緒でトップだったはずだが…」

アルミン「………………」

クリスタ「…? どうかしたの、アルミン」

アルミン「いや…その“席次不明”についてなんだけどさ。
     僕らは一度目にしてるよね」

クリスタ「えっ…」









ま  る  か  じ  り




席次不明

ミーナ・カロライナ 処刑執行







ユミル「…まさか、あれのことか?」

アルミン「うん、ミーナの処刑の時のね」

サシャ「よ、よくそんなの憶えてますね…」

アルミン「今もそうだけど、あの時は50日間の訓練の途中で、
     最終的な順位が決まる前…」

アルミン「つまり、順位が決まる前に死亡って意味で
     “席次不明”なのかと思ったんだ」

アルミン「でもそれだと…エレンの“席次5位”の説明がつかない」

ライナー「…俺は思うんだがな」

サシャ「…?」

ライナー「その“席次5位”っていう順位…」








ライナー「俺たちが記憶を失う前の成績なんじゃないか?」







サシャ「…!?」

アニ「………………」

ユミル「記憶を失う前…? どういう意味だよ」

ライナー「モノクマの話によると、俺たちは数年間の記憶を失っている」

ライナー「その“数年間”がどれくらいのものかはわからないが…」

ライナー「もし3年以上経っているなら、
     俺たちは訓練兵団を卒業していることになるよな」

クリスタ「…つまり、ここじゃなくて
     “本物の訓練兵団での成績”ってこと?」

ライナー「ああ。エレンはそこを5位で卒業した…
     そう考えれば辻褄も合ってくるだろ」

サシャ「5位って…本物の訓練兵団なら100人以上いるんですよね?
    12人の中でさえ最下位だったのに…」

ジャン「…あいつが最下位だったのは金具の不備のせいだ。
    本当はそれくらいの実力があった…のかもしれないだろ」

アルミン「ちょっと待って。
     それなら、ミーナの“席次不明”はどう説明するの?」

ライナー「…それはわからん。
     単にモノクマがミーナの順位を把握していなかったのかもしれない」

ライナー「そもそも、これはあくまで俺の想像だからな」

アニ「………………」

ライナー「だが、もしこの想像が本当だとしたら…」

ライナー「俺たちが記憶喪失だということ…
     つまりモノクマが俺たちの記憶を奪ったということが現実味を帯びてくる」

アルミン(ライナーがモノクマに向き直る)




ライナー「…これで“探検”は終わりだ。約束通り答えてもらおうか」




ライナー『だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?』




ライナー「あの質問に…答えてもらおうか」

アルミン(いつの間にか、モノクマはくねくねとした動きを止め、
     ポツンと立ったままこちらを見ていた)




モノクマ「………………」




アルミン(相変わらず何を考えているのかわからない)

アルミン(ミカサやコニーとはまた違う、気味の悪い沈黙)

モノクマ「…ハァ」

サシャ「…?」

モノクマ「オマエラって本当にカロライナさんと変わらないね」

モノクマ「都合がいい時だけ全部ボクのせいにして…
     自分たちのやった事を省みることもしないでさ」

モノクマ「なんというか…実に滑稽だよね」

ライナー「…おい、話を逸らすな。さっさとあの質問に答えろ」

モノクマ「答えられないよ」

ライナー「…は?」

モノクマ「いや、だってさ…」








モノクマ「オマエラの記憶を奪ったのはボクじゃないもん」







ライナー「………………」

サシャ「…えーっと、今なんて?」

モノクマ「『記憶を奪ったのはボクじゃありません。
      なので、質問にも答えられません』」

モノクマ「それがブラウンくんの質問に対する答えだよ」

クリスタ「…え?」

モノクマ「大体さぁ… ボクがいつ、どこで、
     オマエラの記憶を“奪った”なんて言ったの?」

モノクマ「カッチカチの脳みそが生み出した固定観念だって、
     誰一人思わなかったわけ?」

ジャン「な…何言ってんだ…?」

モノクマ「いいかい? 何度でも言うけどね、
     ボクはオマエラの記憶を奪ってないんだ」

モノクマ「それどころか…」









モノクマ「ボクはオマエラの記憶を戻してあげたんだよ?」







今日はここまで

アルミン(一瞬、何を言っているのかわからなかった)




サシャ「…えーっと、すみません」

モノクマ「はい?」

サシャ「意味がわからないんですが」

モノクマ「え、なんで?」

サシャ「だって… あなたの話では、今の私たちって記憶が無いんですよね?」

モノクマ「そうだけど」

サシャ「だ、だったらおかしいじゃないですか!
    私たちは記憶喪失なのに、私たちの記憶を戻したなんて…」

モノクマ「いやいや、何もおかしくないでしょ」

サシャ「は、はい…?」

モノクマ「オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?」

モノクマ「それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ」

モノクマ「つまり、オマエラの記憶を奪ったのは【別の誰か】で、
     ボクはそんなオマエラを助けてあげたの。アンダスタン?」

ユミル「…は?」

ジャン「…なあ、コニーじゃねえけどよ…俺はバカなのか?
    お前の言ってることが全く理解できないんだが」

モノクマ「じゃあバカなんじゃない?これ以上説明のしようがないもの」




アルミン(全員が押し黙った)

アルミン(まったく予想していなかったモノクマの回答。
     考えるのを止めたくなるほどの混乱)

アルミン(まるで心の乱れを感じ取ったように、
     周りの木々がざわざわと音を立てる)

ベルトルト「…えっと…じゃあ、つまり…」

ベルトルト「僕とライナーの記憶だけが欠落してるのは、
      僕とライナーの記憶だけを奪ったんじゃなくて…」

モノクマ「うん。オマエラの記憶だけ戻さなかったの」

ライナー「…ちょ、ちょっと待て。
     それならなぜ、俺たち2人の記憶だけ戻さなかったんだ?」

モノクマ「えっ、だってそこまでやっちゃったら…」

モノクマ「おっと危ない危ない!これ以上は言わない約束だったね!」

モノクマ「あ、でもね、全く戻さなかった訳じゃないよ」

モノクマ「なにしろ発見当時のオマエラは、
     記憶どころか人格すら無い存在だったんだから」

モノクマ「それを普通の人間に戻してあげたんだから、
     ボクにちゃんと感謝したまえよ?」




アルミン(理解が追い付かない)

アルミン(意味を咀嚼して飲み込もうとしても、体が拒絶して吐き出してしまう)




モノクマ「見て見て、その時のオマエラの真似」

モノクマ「あー…うあー…」




アルミン(だらしなく涎を垂らしてぐったりとするモノクマ)

アルミン(僕らはその光景を…ただ唖然として見ていた)

ジャン「ウソだろ…!?」

モノクマ「ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!」

モノクマ「というかねえ…ボクは今まで、
     【一度もオマエラにウソは言ってない】よ?」

ジャン「それがすでにウソなんだろうが!」

モノクマ「あーうんうん、わかるよわかる。
     認めたくないんでしょ?信じたくないんでしょ?」

モノクマ「でもね、うだうだ言ったって真実は変わらないんだよ?
     駄々をこねて変わると思ってるのは世間知らずのガキだけだよ?」

アルミン(…モノクマはいつだっていきなりだ)

アルミン(何も今に始まったことじゃない。
     いきなりとんでもない事を言って、僕らの心をかき乱す)

アルミン(それがこいつのやり方なんだ。だけど…)




クリスタ「……!!」

ジャン「……ッ!!」




アルミン(誰も…何も言い返せない)

モノクマ「うぷぷ…それにしてもさぁ、ボクって我ながらいいクマじゃない?」

モノクマ「廃人同然だったオマエラを匿って、奪われた記憶を戻してあげて…」

モノクマ「巨人の脅威から遠ざけた上に、衣食住まで完備してあげるなんて…」

モノクマ「ボクってかなりのお人よしじゃなぁ~い?」

アルミン「何がお人よしだっ!!」

モノクマ「はにゃ…?」

アルミン「本当にお人よしなら…僕らに殺人を強要する訳ないだろっ!」

アルミン「助けた人間を死に追いやるような真似をする訳ないだろッ!」

モノクマ「そりゃあ旦那、ギブ&テイクってやつでさぁ」

モノクマ「オマエラをここまで助けてやったんだから、
     少しくらいボクのわがままを聞いてくれたっていいでしょ?」

モノクマ「ボクの道楽に付き合ってくれたっていいでしょ?」

アルミン「道楽ッ…!?」




アルミン(モノクマに掴みかかろうとする自分自身を必死に抑え込む)

アルミン(だけど、どんなに抑え込んでも…)




アルミン「…………ッ!!」




アルミン(エレンの無残な死に様が… 脳裏に浮かんできて…)









アニ「アルミン」








アルミン(気が付くと、アニが僕の手を握っていた)




アルミン「…!」

アニ「………………」




アルミン(彼女の静かな瞳が僕を見つめる)

アルミン(まっすぐと、僕に語りかけるように…)

ユミル「…なあ、一つだけ教えろ」

モノクマ「うん?」

ユミル「もし今言ったことが本当なら…」








ユミル「私たちの記憶を奪ったのは…誰なんだ?」







モノクマ「良い質問だね」

モノクマ「だけど残念ながら、その質問には答えられないんだ」

ジャン「都合が悪くなったらすぐそれかよ…!」

モノクマ「いやいや、これはあくまで
     オマエラのためを思っての事だよ」

モノクマ「だって、もしその質問に答えちゃったら、
     オマエラはますますパンクするだろうからね…」

アニ「…いちいち言い方が回りくどいね」

モノクマ「うぷぷ、ごめんね。ボクの悪い癖でさ」

モノクマ「でも本当だよ。その質問の答えを聞くのは
     色んな意味でやめた方がいいよ」

アニ「………………」

モノクマ「さてと、そんな訳だから、ボクはもう行くね。
     あとはオマエラで好きにやっちゃって」

ライナー「待て!お前にはまだ聞きたいことが…」

モノクマ「ダメダメ。“一つだけ”って約束だったでしょ?」

ライナー「どうして俺とベルトルトの記憶だけ戻さなかったんだ!?
     どうして他のやつらの記憶は戻したんだ!?」

ライナー「どうして俺たちが廃人だったんだ!?
     どうしてお前は俺たちを保護したんだ!?」

ライナー「ここは一体どこなんだ!?
     ミーナの処刑の時にいたエレンとアルミンは何だ!?」

モノクマ「あーあー聞こえなーい。それじゃーねー」




ポヨヨーン

今日はここまで

ライナー「おい、待て!」




アルミン(ライナーの呼び止める声も空しく、モノクマは忽然と姿を消した)




ライナー「くそっ!」




アルミン(吐き捨てるように言いながら、ライナーが目を逸らす)

アルミン(後ろ姿だけでも、ギリリと奥歯を噛みしめる様子が伝わってくる)

クリスタ「…ねえ」

ユミル「あ?」

クリスタ「今の話って…どういう事なのかな…」




アルミン(誰に問うでもなく、クリスタが独り言のように漏らした)




ライナー「…ッ」




アルミン(それはこの場の全員が抱いていた疑問であり…)

アルミン(どうしようもないほど大きな不安だった)

ユミル「…どうもこうもねえだろ」

コニー「………………」

ユミル「今の私たちには、訓練兵団に入ってからの数年間の記憶が無い」
    
ユミル「だがそれはモノクマの仕業じゃなくて、【別の誰か】ってのが
    私たちの記憶を人格が無くなるほど奪ったから」

ユミル「それを見つけたモノクマが私たちを保護し、少しだけ記憶を戻した」

ユミル「それが今の私たち…っていうのがモノクマの説明だ」

クリスタ「そんな…」

サシャ「【別の誰か】って…誰なんですかね…?」

ユミル「…知るかよ。今見ただろ。
    私が聞こうとしてもはぐらかされちまった」

ミカサ「………………」

ユミル「クソッ…何が“探検”だ」

ユミル「結局、訳のわからない事が増えただけじゃねえか…!」

アルミン(再び全員が黙り込む)

アルミン(【記憶】、【廃人】、【別の誰か】…
     それらの単語が頭の中でグルグルととぐろを巻く)

アルミン(いくら考えても答えは出ない。
     むしろ考えれば考えるほど混乱の渦に呑み込まれる)

アルミン(まるで呪いのように…僕らの脳を絡め取る)

ジャン「…っ」

ミカサ「………………」




アルミン(ある人は表情を張りつめ、己の思考と戦っているようだった)

アルミン(ある人は感情を失った目で虚空を見つめていた)

アルミン(そしてある人は…)

アニ「…ねえ」

ユミル「あ?」

アニ「まさかとは思うけど…」




アニ「今の話、本気で信じるつもり?」

ユミル「…なに?」

アニ「今の話を本気で信じるのかって…そう聞いたんだよ」




アルミン(そしてある人は…)

アルミン(全く動じることなく、目の前の状況と向き合っていた)

一旦中断します

ユミル「…何言ってんだ」




アニ『私は信じるよ』

サシャ『…!?』

アニ『調査兵団や壁の件はともかく…
   私たちが記憶喪失だっていうのは本当だと思う』




ユミル「お前は自分で言ってたじゃねえか。
    私たちが記憶喪失なのは本当だって…」

アニ「ああそうさ。自分の体の違和感を考えれば、
   私たちに記憶が無いのは本当だと思うよ」

アニ「でもだからって…私たちが廃人だったとか、
   モノクマの他に記憶を奪ったやつがいるとか…」

アニ「それらを信じるのはどうなんだろうね」

ユミル「お前は信じないっていうのかよ」

アニ「少なくとも鵜呑みにはしないね」

アニ「記憶喪失の件に関しては、
   “体の違和感”っていう根拠があるから信じられるけど…」

アニ「モノクマが記憶を戻したとか、調査兵団が全滅したとか、
   人類の大半が死滅したとか、壁が全部破られたとか…」

アニ「それらは何の証拠も無い、モノクマから与えられた情報なんだよ」

ユミル「………………」

アルミン(ユミルは何かを言いかけたが、すぐに口を閉ざした)

アルミン(アニは淡々とした様子で続ける)




アニ「結局、私たちは箱の中の猫なのさ」

アニ「猫が生きているのか死んでいるのか…
   それは箱を開けてみなければわからない」

アニ「逆に猫にとっては、箱を出なければ外の世界を知ることはできない」

ユミル「………………」

アニ「事実と根拠を1つだけ見せつけ、他のウソごと信じ込ませる」

アニ「それがあいつのやり方なんだよ」

アニ「現にミーナは…その方法でまんまと騙されてたじゃないか」

アルミン(その時だった)




ビリッ…




アルミン(ミーナの名前が出た瞬間…)

アルミン(僕らの中に何かが走った)




ジャン「………………」

コニー「………………」




アルミン(みんなの表情がわずかに動いたのも、僕は見逃さなかった)

ライナー「…もういいだろ」

アニ「?」

ライナー「今日はいろんな事がありすぎた…
     ここらで解散にしよう」

アニ「…話し合いはどうするの?」

ライナー「また今度だ。この状態でやっても良い考えは出ない」

アニ「………………」

ライナー「ともかく今日は解散だ。
     各自食事と入浴を済ませて、部屋でゆっくり休んでくれ」

ライナー「いいか…くれぐれも変な考えは起こすなよ」

今日はここまで

アルミン(こうしてまた一日が終わった)

アルミン(すっかり疲れ切った僕らは、食事や入浴もそこそこに…)

アルミン(それぞれの個室へ入っていった)




アルミン「………………」




アルミン(ベッドに体を預けながら目を閉じる)

アルミン(まるで鉛がこびり付いたように、頭の中が重かった)

アルミン(先の見えない不安、黒幕への怒り…)

アルミン(でも、それだけじゃない気がする)

アルミン(僕らの中には確実に、“新たな感情”が芽生えていた)




アルミン「………………」




アルミン(それは一体どんな感情なのか)

アルミン(重みを増した僕の脳は、そんな疑問から逃れるように…)

アルミン(深い眠りへと落ちていった)

◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「夢は記憶整理の副産物なんだって」

モノクマ「普段の生活で起こった出来事を整理するときに、
     既存の記憶が呼び起こされて…」

モノクマ「それがぐちゃぐちゃに混ざり合っちゃうらしいんだ。
     まさに記憶のスクランブルエッグだね」

モノクマ「ここだけの話、朝食でスクランブルエッグを食べるという習慣も、
     これに由来しているみたいだよ。どうりで美味しいわけだね」

モノクマ「…え? ボク?」


モノクマ「ボクは夢なんて見ないよ。だってクマだもの」





アルミン『エレン! ここにいたんだ!!』

エレン『どうしたよアルミン』

アルミン『これ…じいちゃんが隠し持っていたんだ!
     外の世界が書かれてる本だよ!』

エレン『外の世界の本だって!? それっていけない物なんだろ!?
    憲兵団に捕まっちまうぞ!?』

アルミン『そんなこと言ってる場合じゃないんだ!!』

アルミン『この本によると、この世界の大半は
     「海」っていう水で覆われているんだって!!』







アルミン『しかも「海」は全部塩水なんだって!!』

エレン『…!! 塩だって!?』

エレン『うっ…嘘つけ!! 塩なんて宝の山じゃねぇか!
    きっと商人がすぐに取り尽くしちまうよ!!』

アルミン『いいや! 取り尽くせないほど「海」は広いんだ!』

エレン『……んなわけ…』

アルミン『………………』キラキラ

エレン『…!!』

アルミン『塩が山ほどあるだけじゃない!!』

アルミン『炎の水!』

アルミン『氷の大地!』

アルミン『砂の雪原!』

アルミン『きっと外の世界はこの壁の中の何倍も広いんだ!』







エレン『外の世界…』

アルミン『エレン!』








アルミン『いつか…外の世界を』

アルミン『探検できるといいね…』















「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』







CHAPTER 02 

DAY 06




アルミン「………………」




アルミン(不思議と気分は爽やかだった)

アルミン(なんだかすごく…懐かしい夢を見た気がする)




アルミン「………………」




アルミン(……本か…)

今日はここまで

― 書庫 ―




アルミン「ア、アニ!?」

アニ「…何をそんなに驚いてるの」

アルミン「い、いや…」

アニ「…私が本を読んでるのがそんなに意外?」

アルミン「そ、そうじゃなくて…
     てっきり誰もいないと思ってたから…」

アルミン(お目当ての場所には先客がいた)

アルミン(アニが薄暗い空間にひっそりと佇み、本を読みふけっていたのだ)




アニ「そういうあんたはどうしてここに?」

アルミン「えっ…」




アルミン(昔の思い出を夢に見て…なんて言えないよな)

アルミン(僕が答えに窮していると、アニがそのまま続けた)




アニ「…ま、正直来るんじゃないかと思ったけどね」

アニ「あんたってこういうの好きそうだし」

アニ「私の事は気にしなくていいから、何冊か持ってったら?」

アルミン「えっ…」

アニ「午後からは昨日の話し合いの続きがあるし、
   ゆっくり読むなら今のうちだよ」

アルミン「あっ…うん」




アルミン(アニに促されるように、慌てて本棚に目を走らせる)

アルミン(あの時の本がここにあるとは思わなかったが、
     他に面白そうなものがあれば持って行こうと思っていた)

アルミン(…それにしても、すごい数だ)

アルミン(医療、兵法、科学、法律、言語…
     それらの専門書がジャンル毎に分けられ、所狭しと並んでいる)

アルミン(専門書の他にも、大衆小説や
     子ども向けのおとぎ話まで揃えてあるようだ)




アルミン「でも、汚いな…」




アルミン(それらの本は例外無く、びっしりと埃を被っていた)

アルミン(ちゃんと手入れをしていなかったんだろうか)

アニ「…アルミン」

アルミン「………………」

アニ「…アルミンってば」

アルミン「えっ、呼んだ?」

アニ「…何をボーッとしてるの」

アルミン「ご、ごめん…本を探すのに夢中でさ…」

アルミン(慌ててアニに視線を戻す)

アルミン(すると、僕はそこで初めて、
     彼女の手に何かが握られているのに気付いた)




アルミン「アニ、それは…?」

アニ「ん? ああ、ペンだけど」

アルミン「まさか本に書き込んでるのっ!?」

アニ「…そうだけど。悪い?」

アルミン「悪いに決まってるって!
     そんなの…本に対する冒涜だよ!」

アニ「…………別にいいじゃない。こんなの誰も読まないだろうし」

アニ「そんな事より…」

アルミン「そんな事!?」

アニ「……そんな事より、ちょっと気になってる事があるんだけど」




アルミン(僕の剣幕にやや引き気味のアニだったが…)

アルミン(気を取り直すように咳払いをすると、
     色を落としたトーンでこう続けた)









アニ「どうしてこの施設には、出口が無いんだろうね?」







アルミン「……えっ?」

アニ「モノクマの話だと、私たちは
   この施設に保護されたって事になってるよね?」

アルミン「保護っていうか…監禁だよね」

アニ「どちらにしても、モノクマは私たちを
   外部からこの施設内に運び入れる必要があったはずだよ」

アニ「それなのに、この施設には…
   私たちを運び入れたと思われる【入口】すら存在しない」

アルミン(アニの言いたい事がわかってきた)




ライナー『どこを掘っても同じだった。おそらく、
     地下3メートル付近に【巨大な鉄板】か何かが敷かれているんだろうな』




アニ『そう…それがこの施設の特徴なんだよ。
   言ってみれば、【屋外をそのまま建物で囲った構造】をしているんだ』




アルミン(この施設は、言ってみれば“フタの無い箱”だ)

アルミン(四方八方を囲われ、扉らしきものも付いていない)

アルミン(唯一、出口と思われた赤い扉も、
     結局は裁判場へと続く昇降機の入口だった)

アルミン(つまり、この施設には外部へと繋がるルートが無い)

アルミン(すると、『黒幕はどこから僕たちをここに閉じ込めたのか』
     という問題が生じてくる)




アルミン「でも逆に言えば、そのルートさえ判明すれば
     ここから出られるかもしれない」

アルミン「アニが言いたいのはそういう事だよね?」

アニ「………………」

アルミン「やっぱり見落としてるんじゃないかな?
     地面だって全部掘ったわけじゃないし、隠し扉がある可能性もあるよ」

アニ「……そうかな」

アルミン「何にせよ、脱出する手段があるのは確実だと思うよ」

アルミン「“卒業”っていうルールがある以上、
     モノクマはクロを外に出さなきゃいけないはずだから」

アニ「………………」

アルミン「それにアニも言ってたけど、
     モノクマの話が全部本当だって決まったわけじゃない」

アルミン「外の世界が壊滅したなんて…
     僕たちに殺し合いを促すためのでっち上げに決まってるよ」

アニ「………………」

アルミン「外の世界がどうなってるのか確かめる為にも…
     みんなで協力して脱出する手段を探すんだ」

アルミン「そうすればきっと…」

アニ「…………本当に」

アルミン「?」

アニ「本当にそれで見つかるかな」

アルミン「えっ…」

アニ「私、思うんだけどさ…」




アニ「出口はもう…とっくに見つかってたりして」

アルミン「…………えっ」

アニ「………………」

アルミン「それって…」

アニ「………………」

アルミン「それってどういう…」

バンッ




サシャ「アルミン!アニ!」

サシャ「ここにいたんですか!!」

アルミン「…! サ、サシャ…?」

サシャ「大変なんです!大変なんです!」

アニ「…落ち着きなよ。一体どうしたの」

サシャ「ク…クリ…クリクリ…」








サシャ「クリスタが死んじゃいます!!」







今日はここまで

― ライブハウス 前 ―




アルミン(サシャに連れてこられたのはライブハウスだった)




サシャ「●△※◎◆○▽~!!」




アルミン(目前の建物を指さしながら、サシャが何かを叫んでいる)

アルミン(相当パニックに陥っているのか、もはや言語を成していない)

アルミン「ここに…クリスタがいるんだね!?」




アルミン(僕の問いかけに、頭が千切れんばかりに頷くサシャ)

アルミン(どうやら間違いないようだ)




アルミン「急ごう! 早く中に!」

アニ「………………」

― ライブハウス ―




クリスタ「ごぶっ…!? ごぼぼ…ごはっ…!」

ユミル「あんだよクリスタぁ~、遠慮すんなってぇ~」

クリスタ「うっ…げほっ、げほっ、げほっ!!」

ユミル「ん~? それとも何かぁ~」

ユミル「私の酒はぁ… 呑めねえってのかぁ~!?」

クリスタ「んんっ! んんん~っ!!」

アルミン(僕がそこで見たのは…)

アルミン(地獄絵図だった)




ジャン「んあ…? おー、アッルミーン!」

ジャン「おいこらベルトルトぉ! アルミン様がお見えだぁ!」

ベルトルト「………………」ダラー

ジャン「もしもーし? ベルトルトさぁん?
    アルミンだぜアルミン、サシャとアニもいるぞぉ」

ベルトルト「………………」ダラー

ジャン「んー? あれー? エレンとミーナもいるぞぉ!?」

ジャン「お前ら死んだんじゃなかったのかよー、ぎゃははははは!!」

アニ「…サシャ、これはどういう事?」

サシャ「え、えーっとですね…
    話せば長くなるんですが…」




クリスタ『ライブハウスだよ。
     演奏用のステージがある宴会向けの建物ってところかな』

ユミル『楽器からパーティ用の小道具まで色んな物が揃ってたが、
    中でも一番目を引いたのが…』

ジャン『…何だよ、ニヤニヤしやがって』

ユミル『…まあ、これは自分で確かめてみた方がいいんじゃないか?
    少なくとも悪い物ではなさそうだからよ』




サシャ「私、昨日のユミルの言葉が気になって…
    それでユミルにしつこく聞いてみたんです」

サシャ「最初は鬱陶しそうにしてたんですけど、
    だんだんと諦めたようになってきて…」

サシャ「それで、『じゃあ見せてやる』って言われて…
    クリスタと一緒に連れてきてもらって…」

アルミン(このライブハウスにはバーが併設されている)

アルミン(内装はかなり洒落ていて、お酒を嗜みながら
     ステージを鑑賞できるようになっているらしい)

アルミン(ユミルの言っていた“一番目を引いたもの”とは、
     まさにそれだったのだ)




サシャ「それで…ユミルがそのままお酒を飲み始めて…」

サシャ「わ、私は止めたんですよ!? こういうのは大人が飲むものだし、
    午後からは話し合いの続きもあるからって!」




アルミン(クリスタもユミルを止めようとしたが、
     ユミルに強引にお酒を飲まされ…)

アルミン(そのうち、騒ぎを聞きつけた他の連中もやってきたが、
     そのほとんどがミイラ取りがミイラ状態…)

アルミン(サシャの話をまとめると、こういう事だった)

今日はここまで

サシャ「と、とにかくみんなを止めてください!
    私一人じゃどうにもならないんです!」

アルミン「止めてって言われても…」




アルミン(僕は改めて目の前の光景を見る)

アルミン(クリスタにお酒を流し込むユミル、
     必死にそれを拒絶するクリスタ…)

アルミン(高笑いを続けるジャン、
     バーカウンターに突っ伏すベルトルト…)

アルミン(一人豪快に酒瓶をあおるライナー…)




ライナー「んごッ!?」

アニ「………………」




アルミン(…を無言で締め上げるアニ)

アルミン(そ、そうだ… 困惑してる場合じゃない)




ユミル「色っぽいぞ~!クリスタぁ~!」

クリスタ「んぐっ…んんん~っ!!」




アルミン(あのままでは本当にクリスタが死んでしまう)

アルミン(せめて…ユミルだけでも止めないと!)

アルミン「ユミル!」




アルミン(僕がユミルに駆け寄ろうとした時だった)




パリーン




アルミン(“それ”は…)

アルミン(突如として始まった)

ジャン「…ッ!?」




アルミン(騒然としていたハウス内は一瞬にして静まり返った)

アルミン(一体何が起こったのか…
     それを理解するまで、全員が数秒を要した)

アルミン(そしてそれを理解したとき…)

アルミン(誰もが目を疑った)




コニー「………………」




アルミン(コニーが酒瓶で…)

アルミン(ジャンに殴りかかったのだ)

今日はここまで


次は長めに投稿します

ポタッ




コニー「なん…で…だよ…」

コニー「なんで…酒なんて飲んでいられるんだよ…」




ポタポタ




コニー「なんで…この状況で…」

コニー「笑っていられるんだよッ…!」

アルミン(溜りに溜まった鬱憤を吐き出すように、
     どす黒い何かをぶちまけるように…)

アルミン(ずっと無言だったコニーの口から、
     一気に言葉が溢れ出した)




コニー「お前ら今の状況わかってんのかよ!?」

コニー「わけわかんねー場所に閉じ込められてんだぞ!?
    その中で殺し合いをさせられてるんだぞ!?」

コニー「調査兵団が全滅したとか、人類が死滅したとか、
    そんな話聞かされて…」

コニー「つい一昨日も…仲間が2人死んだんだぞ!!」

コニー「午後から話し合いやるんじゃねーのかよ!?
    黒幕に立ち向かうんじゃねーのかよ!?」

コニー「『今の俺たちに必要なのは“団結力”』だって!?
    そんな状態で…」

ジャン「…あー」

コニ―「!」

ジャン「オレ殴られたのか…?
    んー、でもあんま痛くねーな」

ジャン「逆になんかいい気分だわ…ぶははははは!!」

コニー「な、何がいい気分だ… 能天気なこと言いやがって…」

ジャン「お前には言われたくねーよ」

コニー「あ…?」

ジャン「モノクマの話を聞いただけで落ち込んでよ」

ジャン「エレンを亡くしたミカサはともかく…
    お前は他の奴らと同じ状況にあるのによぉ」

ジャン「一人で勝手に塞ぎ込んで、ろくに発言も探索もせずに
    周りの足を引っ張り続ける」

ジャン「能天気なのは果たしてどっちなんだろうな」

アルミン(ジャンはもう笑っていなかった)

アルミン(頭部から流れ出した血が顔面を垂れ、
     その表情を真紅に染め上げる)

アルミン(その様子はまるで…エレンのようだった)




ジャン「久しぶりに口を開いたと思ったら、
    わかり切った事ばっかり言いやがって…」

ジャン「ギャーギャー喚く暇があったら現状を打開する努力をしろよ」

ジャン「酒の力に頼りたくなるくらい、現実と向き合ってみろよ」

ジャン「何が母ちゃんだ… 情けねー。
    まだ乳離れできてねーのか」

プチン




アルミン(何かが切れる音がした)




コニー「…お前…今…なんつった」

ジャン「んー? 聞こえなかったのか?」

ジャン「コニーとかいうマルコメくんは
    どうしようもねーマザコン野郎だって言ったんだよ」

ジャン「いや待てよ…親父や兄弟の事も恋しがってたから、
    単なるマザコンじゃねーな」

ジャン「ファミリーコンプレックスだからファミコンか?
    ぎゃはははははははは!!」

アニ「やめときな」

ジャン「あん? 何だよアニ、止めるんじゃ…」

アニ「あんただよコニー」

ジャン「あ…?」

アニ「そんなので斬りつけたら…
   いくらなんでもジャンが死ぬよ」

アルミン(僕はコニーを見た)

アルミン(その目は飛び出しそうなほど見開かれ、
     まっすぐにジャンを捉えていた)

アルミン(額には血管が浮かび、歯はギチギチと噛み合され…)

アルミン(わなわなと震える手元には、割れた酒瓶が握られている)

すみませんが、今日はここで中断します


続きは 09/17(水) に投下します

アニ「…どいつもこいつも情けないね」




アルミン(アニが表情を変えずに言う)




アニ「コニー、昨日言った事をもう忘れたの?」

アニ「不安なのも苦しいのもあんただけじゃない。
   家族に会えないのはみんなも同じ」

アニ「塞ぎ込む気持ちはわからなくもないけど…
   みんな必死に耐えてるんだよ」

コニー「…ッッ!!」

アニ「ジャン、あんたも言い過ぎだよ」

アニ「いくら現実と向き合っても酒に頼ったら無意味さ。
   逃げ以外の何でもない」

アニ「それで結果が良くなるどころか…
   あんたは最悪の結末を引き起こそうとしてる」

ジャン「………………」

アニ「他の奴らも同じだよ。揃いも揃って…」

ユミル「…何なんだよ」

アニ「?」

ユミル「前から気に入らなかったんだ…
    一人だけ澄ました顔しやがって」

アニ「…私の事?」

ユミル「そうだよ。この際だから言ってやろうか」









ユミル「【裏切り者】ってのは… お前なんじゃないのか?」







アルミン「…!?」

ユミル「思わせぶりな言動、一人だけ先を行ってるような態度…」

ユミル「記憶喪失の件だってそうだ。
    こいつはモノクマの話を聞く前から、誰よりも早く気付いてた」

アニ「………………」

ユミル「なあ、アニさんよ… 本当はどうなんだ?」

ユミル「お前は“気付いた”んじゃなくて…
    “最初から知ってた”んじゃないのか?」

アルミン「ユミル、何言って…!?」




アルミン(僕は思わずアニを見た)




アニ「………………」




アルミン(アニは全く表情を変えない)

アルミン(ユミルの言葉を肯定するわけでもなく、
     かといって否定するわけでもなく…)

アルミン(ただまっすぐに、ユミルの目を見つめ返している)

アルミン(その時、僕は気付いた)

アルミン(僕を含めた全員の視線が、
     いつの間にかアニに向けられていたことに)




アニ「………………」




アルミン(そして同時に… 僕は理解してしまった)

アルミン(僕らの中に芽生えた“新たな感情”を…)

アルミン(そうだ…)

アルミン(僕たちは怖いんだ…)




モノクマ『…あのねえ、アルレルトくん。
     何度も同じ事言わせないでくれる?』

モノクマ『仮にそうだとしても、
     イェーガーくんを殺したのはカロライナさんでしょ?』

モノクマ『ボクに唆されたからって、
     踏みとどまらずに実行しちゃったのはあの女でしょ?』



アルミン(殺人なんて起きるわけないと思っていた)

アルミン(同じ志を持った訓練兵として、
     同じ境遇に陥った仲間として…)




モノクマ『互いの素性を何も知らないクセに』




アルミン(先の見えない生活でも、僕らは協力し合えると…
     何とかなるはずだと思い込んでいた)

アルミン(でも、現実は甘くなかった)




ミーナ『みんな…信じてよ!』

ミーナ『私は人類の為に!!みんなの代わりに!!』




アルミン(僕らを出し抜いて…
     1人だけ助かろうとした人間がいた)




モノクマ『なぜならオマエラはそういう生き物であり…
     これからボクが提示する“あるモノ”に、必ず喰いつくはずだから!』



アルミン(そうだ…)

アルミン(僕らはあの時…思い知ったんだ…)




モノクマ『キミはさっきこう言ったけど、そうじゃないでしょ?
     オマエラが本当に痛感したのは…』




アルミン(仲間を亡くした悲しみじゃない。黒幕に対する怒りでもない)

アルミン(僕らが本当に痛感したのは…)









モノクマ『“こんなにも簡単にコロシアイが起きる”…そういう事でしょ?』







今日はここまで

アルミン(“恐怖”…それが正解だった)

アルミン(僕たち全員を支配していた感情は、死への怯えだった)




ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!




アルミン(ミーナが泣きながら石を振り下ろす)

アルミン(自分の行為を理解できないまま、何度も何度も振り下ろす)

アルミン(すると、悲痛な叫びは変わっていく)

アルミン(狂気の笑い声に変わっていく)

アルミン(ゲラゲラと笑いながら… 僕の親友を肉塊にしていく)




モノクマ『そう、それでいいんだよ』

モノクマ『言ったでしょ。オマエラはそういう生き物だって』




アルミン(次は自分の番かもしれない)

アルミン(隣のヤツが自分を狙っているかもしれない)

アルミン(仲間とか言っておきながら、本当は自分が助かりたいだけ)

アルミン(何を考えているかわかったもんじゃない)

アルミン(負のイメージが駆け巡る)

アルミン(いくら頭を振っても…ミーナは笑うのを止めてくれない)




『我慢なんてしなくていいよ』

『みんなも一緒にどう?』

『私と一緒に楽になろうよ』



アルミン(コニーの右手にはまだ酒瓶が握られていた)

アルミン(ナイフのように尖った先端からは、赤い液体が滴り落ちている)

アルミン(果実酒とジャンの血が混ざりあったドロドロの水溜り…)




ジャン「………………」




アルミン(真っ赤な顔面にジャンの目が光る)

アルミン(それは狂気の寸前の…ひどく怯えた眼差しだった)

アルミン(そして気が付くと…)

アルミン(みんなが同じ目をしていた)




コニー「………………」

ユミル「………………」

ライナー「………………」

クリスタ「………………」




アルミン(張り詰めた空気)

アルミン(誰も何も話さない)

アルミン(僕は悟った)

アルミン(これからここで…取り返しのつかない事が起きる)

アルミン(膨れ上がった恐怖が、この場所で惨劇を生む)




『怖がらなくていいんだよ』

『きっと良い気持ちになれるから』



アルミン(もう後戻りはできない)

アルミン(誰かが少しでも動けば、そこで狂気が爆発する)




アニ「………………」




アルミン(そして唐突に…)

アルミン(“それ”は始まった)









サシャ「パーティーを開きましょう!!」







今日はここまで

ここからしばらくは不定期になります

CHAPTER 02 

DAY 08




ジャン「よう」

アルミン「ジャン! 寝てなくていいの!?」

ジャン「あー、正直ちょっとズキズキするけどよ。
    だいぶ良くなったぜ」

ジャン「看病してくれたクリスタに感謝しねえとな」

アルミン(ジャンの頭には包帯が何重にも巻かれていた)

アルミン(ここ2日だけでも、だいぶ痩せたように見える)




アルミン「やっぱりまだ安静にしてた方が…」

ジャン「バカ野郎。みんな準備してんのに1人だけサボれっかよ」

ジャン「明日なんだろ? 例のパーティーは」

アルミン「うん…」

CHAPTER 02 

DAY 06




ジャン『………………』

ジャン『…は?』

サシャ『パーティーです! パーティーを開きましょう!』

コニー『…パーティー?』

サシャ『そうです! 美味しい料理をたくさん並べて、
    みんなでパーッとやりましょう!』








ユミル『…何言ってんだ。こんな時に…』

サシャ『こんな時だからこそですよ!』

サシャ『ズバリ! 最近のみんなの気持ちがブルーなのは、
    楽しいイベントが無かったせいです!』

サシャ『訓練やサバイバルなんてもうこりごり!
    さあ、こんな真っ暗な生活なんて抜け出しましょう!』

アルミン『サ、サシャ…?』







サシャ『うーん、どうせやるなら早い方がいいですよね。
    でも準備とかもあるでしょうし…』
    
サシャ『じゃあ3日後!3日後にしましょう!場所はここで!』

ライナー『お、おい、何勝手に…』

サシャ『準備する物については私が独断でまとめました!
    今から人数を分けますから、自分たちの担当をこなしてきてください!』




今日はここまで

ジャン「サシャの奴、急におかしな事言いやがって…」




アルミン(ジャンはそう毒づきながら、僕のところへ近付いてくる)




ジャン「【会場設営係】でいいんだよな。オレたちは」

アルミン「うん…」

アルミン(ジャンは箒を手に取ると、僕と正反対の方向から床を掃き始めた)




ジャン「………………」




アルミン(箒で掃いた床を雑巾で拭き、客席やバーカウンターもきれいにする)

アルミン(掃除が一段落すると、今度は
     あらかじめ作っておいた装飾品を天井や壁に貼り付けていく)




アルミン「………………」




アルミン(慣れない作業だったけど、淡々とこなしていった)

アルミン(ただ黙々と…ライブハウス内を飾り付けていった)

ジャン「…全然パーティーなんて雰囲気じゃねえよな」

アルミン「え?」

ジャン「パーティーってのは普通、何かを祝うときにするもんだろ?」

ジャン「誕生祝いとか、卒業祝いとか、
    出世祝いとか、結婚祝いとか…」

ジャン「…この状況で一体何を祝えっていうんだよ」

アルミン「…仲直り祝い、とか」

ジャン「あ?」

アルミン「仲直り祝いとかどう?
     ジャンとコニー…ううん、僕たち全員のさ」

ジャン「………………」

アルミン「サシャも多分…
     その為にパーティーなんて考えたんじゃないかな」

アルミン「みんなだってきっと、仲直りしたいって思ってるはずだよ」

アルミン「だってさ… サシャのパーティーに反対した人、
     結局一人もいなかったでしょ?」

アルミン「きっとコニーだって…」

ジャン「やめろよ」

アルミン「え?」

ジャン「オレはまだ…あいつを許した訳じゃねえぞ」

今日はここまで

アルミン(ジャンがギリリと歯を噛んだ)

アルミン(頭部の痛みか、コニーへの恨みか…
     その表情はとても歪んでいる)




ジャン「なあアルミン…お前だって見ただろ?」

ジャン「俺は酒を飲んでただけなんだぜ?」

ジャン「そんな状況で…急に殴りかかるヤツがあるかよ」

アルミン「…僕だって、あれはさすがにやり過ぎだと思う」

アルミン「でも、コニーだけが悪い訳でもないよ。
     ジャンにだって非はあるでしょ?」

ジャン「………………」

アルミン「家族をあんな風に言われたら…誰だって怒るよ」

アルミン(ジャンの表情は歪んだままだ)




アルミン「…やっぱり僕らはどうかしてるんだ」

アルミン「ミーナの裁判からみんなおかしくなってる。
     仲間が2人殺されて、変な事を色々言われて…」

アルミン「みんな…すごく怯えてるんだよ」

ジャン「………………」

アルミン「でも、それもこれも…悪いのは全部黒幕なんだ」

アルミン「きっとあいつは狙ってたんだ。
     僕たちが疑心暗鬼になって、互いを貶め合っていくのを…」

アルミン「そして… 次のコロシアイが起こるのを」

ジャン「………………」

アルミン「だからさ、ジャン…」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『えー、施設内放送でーす』

モノクマ『えまーじぇんしー、えまーじぇんしー!』

モノクマ『オマエラ訓練兵諸君は、至急、
     訓練所にお集まりくださーい!』

モノクマ『ほら、急げっ! いち早く来た訓練兵には、
     特製スープを振舞っちゃうよ!』

モノクマ『やれ急げっ!』







今日はここまで

― 訓練所 ―




アルミン(訓練所には、すでにみんなが集まっていた)




ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ユミル「………………」

クリスタ「………………」




アルミン(どことなくぎこちない空気…)

アルミン(やっぱりみんな…引きずってるんだ…)

サシャ「ひゃっほう!私が一番でしたよ!スープは私のものですからね!」




アルミン(…いつも通りの人もいるけど)




アニ「…ねえ、いつまで待たせるつもり?こっちも暇じゃないんだけど」

ジャン「モノクマ、いるんだろ!さっさと出てきやがれ!」

~♪
~♪


~~♪
~~♪


~~~~♪
~~~~♪




ポヨヨーン




モノクマ「はいはーい、お待たせしました!ミラクルお待たせしました!」



サシャ「モノクマ!一番乗りは私でしたよ!つまり、スープの所有権は私にあります!」

モノクマ「慌てない、慌てない。モノクマ特製のモノクマスープなら、
     明日のパーティーにちゃんと振舞うからさ」

ベルトルト「モノクマスープ…?」

モノクマ「正体不明の肉と萎れた野菜と謎のブイヨンベースで作った、
     超デリシャスなスープ!」

ライナー「その素材からデリシャスって言葉を全く感じないんだが…」

クリスタ「ていうか…パーティーのこと知ってたの?」

モノクマ「もちろん!オマエラのことなら何でもお見通しやで!」

モノクマ「オマエラがこぞって訓練をボイコットしていることも…」

モノクマ「浮気が発覚した熟年夫婦ばりの冷戦状態にあることも…」

モノクマ「監督教官のボクを差し置いて、
     酒地肉林の乱交パーティーを開こうとしていることも…」

モノクマ「なんとうらやまけしからん!」

アニ「用件は何?」

モノクマ「あ、なんか怒ってる。
     もしかして下ネタ耐性ゼロだった?乱交って言葉に…」

アニ「用件は何?」

モノクマ「……あーもうわかったよ。言えばいいんでしょ言えば」

モノクマ「でも何だかショックだなあ…
     軽いジョークにも付き合ってもらえないなんて…」

モノクマ「せっかく、とっておきのプレゼントを用意したのに…」

アルミン「…プレゼント?」

モノクマ「おっ、食いついてくれましたね? お腹を空かせた赤ん坊が
     お乳にむしゃぶりつくように、案の定食いついてくれましたね?」

モノクマ「そーなんです!クマ一倍心の優しいボクは、
     可愛い教え子であるオマエラの為に…」

モノクマ「とっておきのプレゼントをご用意したのです!」

サシャ「…なんか、イヤな予感しかしないんですけど…」

ジャン「…プレゼントとか言って、どうせまたロクでもない物だろ」

モノクマ「失敬な!せっかくの楽しいパーティーをぶち壊すような物を
     このボクが送るとでも!?」

クリスタ「むしろ他にどんな可能性が…」

モノクマ「違うよ!だってこれは、オマエラがずっと欲しがっていた物だもん!」

アルミン(…僕らがずっと欲しがっていた物?)



ユミル「…で、そのプレゼントってのは何なんだよ」

ライナー「見たところ、お前は何も持っていないようだが…」

モノクマ「あーうん、それなんだけどさ」

モノクマ「実はもうあげちゃったんだよね」

クリスタ「…え?」









モノクマ「オマエラの残りの記憶」







今日はここまで

アルミン「………………」

アルミン「…は?」

モノクマ「ほら、この前に言ったじゃない」




モノクマ『オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?』

モノクマ『それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ』




モノクマ「オマエラは言わば、“記憶を途中まで取り戻した状態”だった訳だけど…」

モノクマ「暗黒魔道士の異名を持つボクが全魔翌力を開放した結果…」

モノクマ「なんと!全ての記憶を戻すことに成功したのです!」

コニー「…!?」

モノクマ「うぷぷ…どう? 完全体になった感想は?」

モノクマ「青空のマントを広げて大草原を歩くような気分でしょう?
     生き別れの母親と再会したような満ち足りた気持ちでしょう?」

モノクマ「やっぱりパーティーといえばサプライズだもんね!
     これ以上ない最高の贈り物だったでしょ?」

アニ「全ての記憶を…戻した…?」




アルミン(意味がわからなかった)

アルミン(僕らの“ほとんど”がこの状況を呑み込めていなかった)

アルミン(だって…)




アルミン「ちょ、ちょっと待てよ!」

モノクマ「はい?」

アルミン「お前の言ってる事はおかしい! だって…」

アルミン「だって僕は… 記憶が戻ってない!」

アルミン(当然の反論だった)

アルミン(僕は記憶を戻された憶えもないし、何も思い出していない)

アルミン(いや…“何も変わっていない”が正解だろうか)




モノクマ「うぷぷ…何それ? 演技?」

アルミン「は…?」

モノクマ「演技上手いねえ、アルレルトくん。俳優目指したら?」

モノクマ「でもそれくらいやんなきゃダメかー。
     記憶を戻されたのが自分だってバレたら色々とまずいもんね」

アルミン「な、何言ってるんだよ…? 僕は演技なんて…」

サシャ「て、ていうか…さっきから全然話が見えないんですけど…」

モノクマ「んもう!本当にニブチンだなあ!」

モノクマ「いーい?要するにね…」








モノクマ「“オマエラの中の1人”の記憶を全部戻したの!」







今日はここまで

アニ「…!!」

モノクマ「つまり、オマエラの中の1人はもう全て思い出してるんだよ」

モノクマ「“本当の訓練生活”で学んだ立体機動のやり方も、
     そこで過ごした青春の日々も…」

モノクマ「失われた数年間の出来事も、そこで起こった
     “人類史上最大最悪の絶望的事件”のことも…」

モノクマ「そして、その人はちゃんと理解してるはずだよ」

モノクマ「ボクが言ってた事はウソじゃなかったって」





モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が死滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








サシャ「う、ウソです!そんなのウソに決まってますっ!」

モノクマ「ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!」
     
サシャ「だ、大体おかしいじゃないですか!
    記憶を消すだの戻すだの、簡単に言いますけど…」

サシャ「そんな事…一体どうやって実行したっていうんですか!?」

モノクマ「どうやって…?」

モノクマ「いやいやいや!
     そんな事はどうだっていいんだよ!」

モノクマ「催眠術って言えばリアリティーがあるの!?
     開頭手術で脳をいじったって言えば納得するの?」

モノクマ「そうじゃないでしょ!?
     問題は“そこ”じゃないはずだよ!!」

ユミル「問題は…私たちのどんな記憶を、どんな理由で戻したかってことか」

モノクマ「うんうん。どんな記憶かはさておき…」

モノクマ「どんな理由かは…もう察しがついてるんじゃない?」

クリスタ「…まさか」

モノクマ「うぷぷ、その通り」








モノクマ「それこそが… 次なるコロシアイの動機だからでーす!!」







コニー「な、何だよ…それ…」

コニー「なんで…記憶を戻したことが殺人の動機になるんだよ…」

モノクマ「スプリンガーくんも良い演技するねえ。
     そんな事は本人が一番よくわかってるクセに」

コニー「なっ…!?」

モノクマ「もちろん、みんなを欺いたクロには
     【巨人に関する重大なヒミツ】だってプレゼントするよ!」

モノクマ「記憶を取り戻した上に【重大なヒミツ】まで得られるなんて…
     お得感満載だよね~!」

アルミン(前回の殺人のきっかけは【重大なヒミツ】だった)

アルミン(ミーナは家族を助ける為に、
     【重大なヒミツ】を携えてこの施設から出ていこうとした)

アルミン(今回はそれに加えて…)

アルミン(記憶を取り戻したことが…動機に…?)




モノクマ「あれれ? そういえば…
     今気付いたけど、アッカ―マンさんが来てないね」

モノクマ「彼女はまだ塞ぎ込んでいるのかなあ。それとも…」

モノクマ「記憶を取り戻してコロシアイの準備をしているのかなあ!?」

アルミン「な、何言って…!?」

モノクマ「という訳で! ボクからのお話は以上です」

モノクマ「記憶が戻って良かったねえ。
     ウッキウキな気持ちで明日を迎えられるよね」

モノクマ「ん? ああ、心配しなくていいよ。
     ボクはパーティーに参加しないし、邪魔するようなこともしないから」

モノクマ「せいぜい楽しんできてね…
     パーティーの成功を祈ってるよ」

モノクマ「うぷぷぷぷ…」

モノクマ「アーッハッハッハッハッハ!!」




ポヨヨーン

今日はここまで

アルミン(そうしてモノクマは姿を消した)

アルミン(困惑する僕らと、不気味な高笑いを残して…)




ジャン「…ッ」

ユミル「………………」




アルミン(…さっきよりも空気の重みが増した気がした)

アルミン(2日前のライブハウスのような重苦しさ…)

サシャ「…あのう」

ユミル「あ?」

サシャ「もしかしてこれって…チャンスなんじゃないですか?」




アルミン(そんな空気に割って入ったのは、またしてもサシャだった)




クリスタ「…チャンス?」

サシャ「もし、モノクマの言っていた事が本当ならですよ?」

サシャ「もし本当に、私たちの1人が記憶を完全に取り戻していたら…」

サシャ「それってつまり…
    私たちの知り得なかった情報を手に入れたってことですよね?」





モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が死滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








サシャ「本当に調査兵団が全滅したのか」

サシャ「本当に人類が死滅したのか」

サシャ「本当に壁が破られたのか」

サシャ「私たちが記憶を失っている間に何があったのか…
    それが全部わかるってことですよね!?」

コニー「…そうだ…」

コニー「確かに…その通りだ…」

アニ「………………」

コニー「サシャの言うとおりだ!
    俺たちは記憶を取り戻したヤツに聞けばいいんだ!」

コニー「モノクマが言ってた事だけじゃない!
    俺たちが誘拐された理由やその犯人…」

コニー「記憶を完全に取り戻したのなら、全部知ってるはずだよな!?」

コニー「ははは…モノクマもよくわかんねー事するよな」

コニー「わざわざ自分が不利になるような情報を与えるなんてよ… すげーバカだよな」

ベルトルト「………………」

コニー「さあ、誰なんだ!? 教えてくれよ!」

コニー「どうして俺たちはこんな事に巻き込まれてんだ!?
    このだだっ広い施設は何なんだ!?」

コニー「モノクマの言ってた事は本当なのか!? もし本当だとしたら…」

コニー「俺の村は…俺の家族は無事なのか!?」

アルミン(僕らは待った)

アルミン(誰かが名乗り出てくれるのを待った)




コニー「だ、誰なんだ!? 早くしてくれよ!」





アルミン(だけど…)

アルミン(しばらく待っても…)

アルミン(どんなに待っても…)

アルミン(“記憶を取り戻した人間”が現れることはなかった)




コニー「な…」

コニー「なん…で…だよ…」

コニー「なんで…誰も何も言わねーんだよ!!」

今日はここまで

ユミル「…それも演技か?」

コニー「は…!?」

ユミル「さっきモノクマが言ってただろ」




モノクマ『でもそれくらいやんなきゃダメかー。
     記憶を戻されたのが自分だってバレたら色々とまずいもんね』




ユミル「あの言い草…」

ユミル「“記憶が戻った人間はその事を言う訳がない”
    …そう確信しているようだった」

ユミル「演技をしてでも隠し通す必要があると…」

コニー「な…何言ってんだ! 俺は演技なんてしてねーぞ!」

ユミル「だったら証明できるか?」

コニー「しょ、証明…!?」

ユミル「できないだろ? できる訳ないよな?」

ユミル「お前だけじゃない。私を含めたここにいる全員が、
    自分の記憶が戻っていないことを証明できない」

ユミル「そしてさっき誰も名乗り出なかったのを見ると…わかるだろ?」

コニー「…っ!」

ユミル「不毛なんだよ。そういう議論自体がな」

サシャ「え、えっと…」

サシャ「つまりこれって… 
    誰かの記憶は戻ったけど、本人はそれを隠してるってことですよね?」

ユミル「そうだよ。それを確かめる術がないから不毛だって言ってるんだ」

ライナー「…いや、そうとも限らんぞ」

ユミル「あ?」

ライナー「まだ1人いるだろ。この場にいない人間が…」





モノクマ『彼女はまだ塞ぎ込んでいるのかなあ。それとも…』

モノクマ『記憶を取り戻してコロシアイの準備をしているのかなあ!?』




ジャン「…!! まさかミカサを疑ってんのか!?」

ライナー「落ち着けジャン。あくまで可能性の話だ」

ジャン「て、てめえ…!」

ベルトルト「…だけど、いずれにしてもユミルの言うとおりだね」

ユミル「………………」

ベルトルト「もしかすると、こうやって疑い合わせること自体が
      モノクマの目的なのかもしれないよ」

ベルトルト「本当は記憶を取り戻した人間なんていなかった…
      そういうオチだってあり得るんだし」

アニ「…ねえ、サシャ」

サシャ「はい?」

アニ「明日のパーティー止めにしない?」

サシャ「え!?」

アニ「…どうにも嫌な予感がするんだよ」




モノクマ『記憶が戻って良かったねえ。
     ウッキウキな気持ちで明日を迎えられるよね」

モノクマ『ん? ああ、心配しなくていいよ。
     ボクはパーティーに参加しないし、邪魔するようなこともしないから』

モノクマ『せいぜい楽しんできてね…
     パーティーの成功を祈ってるよ』



サシャ「か、考え過ぎですよ! いくらなんでも…」

アニ「何かが起こってからじゃ遅いんだ。
   不吉の芽は早いうちから摘み取った方がいい」

サシャ「だって…あんなに一生懸命準備したのに…」

アニ「パーティーならまたいつでもできるさ。
   今の状態でやったって良い結果は出ないよ」

アニ「それよりも今は…」





サシャ「ほ…本当にそれでいいんですかっ!」




アニ「えっ…」

サシャ「いつからアニはあのヌイグルミに屈したんですか!」

サシャ「モノクマの言う事ばかりに振り回されて…
    楽しい行事の1つもできなくて…」

サシャ「それで本当に…人生を楽しんでるって言えるんですか!?」

ライナー「じ、人生…!?」

サシャ「他のみんなだってそうですよ!」




エレン『なぁ…諦めて良いことあるのか?』

エレン『あえて希望を捨ててまで現実逃避する方が良いのか?』




サシャ「エレンだって言ってたじゃないですか!」

サシャ「私たちは今の状況から逃げてるだけですよ!
    何もできないと思い込んで現実逃避してるだけです!」

サシャ「互いが互いを疑って…」

サシャ「仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…」








サシャ「それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!」







サシャ「とにかく!パーティーは断固として開催しますから!
    たとえみんなが来なくても1人でやりますから!」

ジャン「…1人でどうやってパーティーするんだよ」

サシャ「あー、でも残念ですねー!
    モノクマスープもみんなに分けてあげようと思ってたんですけどねー!」

サシャ「どうしても来ないって言うなら仕方ありませんねー!
    私が独り占めしちゃいましょうかねー!」

クリスタ「サシャ…」

サシャ「あっ、ていうかそろそろ夕食の時間じゃないですか!」

サシャ「もうお腹ペコペコですよ! 私は一足先に行ってますからね!」




タッタッタッタッ

今日はここまで

アルミン(サシャは一方的にまくし立てると、逃げるように去って行った)




ジャン「何だよあいつ… 急に大声出しやがって」

コニー「………………」

ジャン「あ? 何だよコニー、文句でもあんのか?」

コニー「…何でもねーよ」

ジャン「ならそんな目で睨むんじゃねーよ。
    こっちだってな、お前の顔を見るだけで腸が煮えくり返るんだ」

ライナー「よせ、2人とも」

コニー「………………」

ジャン「………………」

ライナー「…とりあえず、今日はここで解散にするか」

ライナー「各自思うところはあるだろうが…
     決してモノクマの言う事に惑わされるなよ」

アニ「………………」

ライナー「あいつは俺たちの“敵”なんだ。
     早まった行動はあいつの思うツボ…その事を忘れるな」

アルミン(その後、僕たちは夕食と入浴を済ませ…)

アルミン(ほとんど会話も無いまま、それぞれの部屋へと戻っていった)




アルミン「………………」




アルミン(ベッドに倒れ込んで天井を見上げる)

アルミン(目を閉じると、あの時のサシャの言葉が脳裏に浮かんできた)





サシャ『互いが互いを疑って…』

サシャ『仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…』








サシャ『それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!』








アルミン(何かの本で読んだことがある)

アルミン(巨人が現れる前… 僕たちの祖先は、
     人種や理念の違う者同士で果てしない殺し合いをしていたらしい)

アルミン(その時に誰かが言ったという。
     “もし人類以外の強大な敵が現れたら人類は争いをやめるだろう”と)

アルミン(あの話…)

アルミン(エレンが聞いたら何て言うかな)

アルミン(“呑気な話であくびが出る”…そんな風に言うんじゃないかな)




アルミン「………………」




アルミン(今の僕らを見たら…)

アルミン(エレンは…どんな顔をするのかな)

◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「苦手な食べ物は、ずばりカニだね」

モノクマ「次に苦手なのは、
     エビとかリンゴとかトマトとかめんたいこかな」

モノクマ「赤い食べ物は苦手だね」

モノクマ「赤い食べ物って、
     カニの成分が含まれてるから赤いんだ」

モノクマ「つまり、ボクにカニを克服させようとしている、
     カニ業界の陰謀なんだよ!」

モノクマ「その手には乗るかって!
     ボクは断固として赤い食べ物は食べないぞ!」

モノクマ「というように、ボクらの社会には、
     身近なところにも様々な陰謀が潜んでいるんだ」


モノクマ「みんなもせいぜい気を付けてくれたまえよ」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』







CHAPTER 02 

DAY 09




アルミン(朝か…)

アルミン(パーティー当日の朝…)




アルミン「………………」




アルミン(ジャンも言ってたけど、正直パーティーなんて気分じゃない)

アルミン(だけど…)





サシャ『とにかく!パーティーは断固として開催しますから!
    たとえみんなが来なくても1人でやりますから!』




アルミン(サシャ…)

アルミン(本当に1人でやる気なのかな)




アルミン「………………」




アルミン(…とりあえず行ってみよう)

今日はここまで

― 食堂 ―




アルミン(僕はまず、食堂にやって来た)

アルミン(パーティーの開催時刻は正午…
     今は7時半前だから、様子を見に行くにしても早すぎる)

アルミン(いつもなら、食事のトレイを持ったみんなが、
     思い思いの朝食をとっているはずなのだが…)




アルミン「………………」

サシャ「おはようございます…」

アルミン「おはよう、サシャ。アニも」

アニ「ん…」




アルミン(今朝の食堂はひどく閑散としていた)

アルミン(いつになく少量の食事を手にしたサシャと、
     いつになく眠そうなアニ…)

アルミン(広々とした空間には、僕らの他に誰もいなかった)

アルミン「他のみんなは?」

サシャ「まだ来てないみたいです…」

アルミン「…珍しいね。普段ならもう揃ってるのに」

アニ「………………」




アルミン(他愛のない会話をしながら、トレイに食器を載せて調理場へと向かう)

アルミン(パンとバターとサラダとベーコン…
     いつものメニューを盛りつけると、すぐに食堂へと戻った)

アルミン「…ねえ、サシャ」

サシャ「?」

アルミン「パーティー… 本当に1人でやるつもりなの?」

サシャ「………………」

アルミン「あんまりこんな事言いたくないけどさ…」

アルミン「今日はきっと誰も…」

サシャ「はぁぁぁぁ~っ…」

アルミン「…?」

サシャ「私…」

サシャ「どうしてあんな事言っちゃったんでしょうか…」

アルミン「えっ…」





サシャ『互いが互いを疑って…』

サシャ『仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…』








サシャ『それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!』








サシャ「自分でも不思議だったんです。
    なんであんなに熱くなっちゃったのか…」

サシャ「あんなの私のキャラじゃないのに…
    私はどっちかっていうと流されるタイプなのに…」

ガバッ




サシャ「ど、どうしましょう! 私とんでもない事しちゃいました!」

サシャ「1人でパーティーとか言ってはしゃいで…
    去り際にあんな捨てゼリフ吐いて…」

サシャ「かえって空気悪化させちゃいましたよぉぉぉぉ!!」ガシガシガシ

アルミン「ちょっ…落ち着いてよサシャ!」

サシャ「は…恥ずかしいっ…!自分で自分が恥ずかしいっ!!」ガシガシガシ

アルミン「だ、だから離しっ… ああっ!僕のベーコンが!!」

アニ「…何も恥ずかしくないよ」

サシャ「…?」

アニ「あんたは何も間違ってない」

アニ「キャラじゃないとか、流されるタイプとか…
   そんなのは関係ない」

アニ「みんなだってちゃんとわかってるはず」

アニ「…わかってるはずなんだ」

アルミン(トレイに目を落としたままアニが呟く)

アルミン(その様子はまるで… 自分に言い聞かせているようだった)




アニ「でもね、サシャ… 1つだけ言っておくけど」

アニ「私は… “あいつ”には屈しないから」

サシャ「えっ…」

アニ「たとえこの身が滅びたとしても…」

アニ「“あいつ”にだけは…絶対に屈しない」

アルミン(“あいつ”って…)




アニ「それにしても遅いね」

サシャ「?」

アニ「いい加減、そろそろ来てもいい頃だと思うけど」




アルミン(アニは食堂の出入り口に目をやった)

アルミン(薄い暗闇の中に佇む扉は、絵に描いたようにピクリともしない)

アルミン「本当にどうしたんだろう…? そろそろ8時なのに」

サシャ「き、きっとみんな寝坊してるんですよ!連日の疲れで…」

アニ「…だといいけど」

サシャ「え…?」

アニ「ねえ…」




アニ「もしかして…何かあったんじゃない?」

アルミン「…!!」

サシャ「な…何かって…」




アルミン(アニはそれ以上何も言わなかった)

アルミン(何も言わなくても…僕たちはその意味を理解していた)




アニ「…行くよ、2人とも」

今日はここまで

― 訓練所 ―




アルミン「どうだった?」

サシャ「だ、ダメです…! どこにもいません!」ハアハア

アニ「こっちもだよ。部屋に行っても誰も出ないし、
   大浴場にもいなかった」

アルミン「この訓練所も探したけど、隠れられるような場所も少ないし…」

サシャ「それなら一体…」

アニ「見てない場所はまだある」




アルミン(彼女はそう言うと、懐から1枚の紙を取り出した)

アルミン(この施設の地図だ。おそらくアニの手作りだろう)




アニ「倉庫、飼育小屋、ライブハウス、書庫、林…」

サシャ「こうして見るとたくさんありますね…
    もう一度手分けして探しましょうか?」

アルミン「いや、やっぱり単独行動は控えよう。
     何が起こるかわからないから」

アニ「…そうだね。このまま3人で虱潰しに当たっていこう」

アルミン(僕らは地図を手に走り出した)

アルミン(地道な作業だけど… それでもやるしかない)




アルミン「………………」ハアハア




アルミン(ゴーストタウンのように静まり返った施設内…)

アルミン(聞こえるのは、慌ただしい足音と切れ切れの吐息だけだ)

ダッダッダッダッ

ハァ ハァ




アルミン(嫌な予感ばかりが募る)




ハァ ハァ








アルミン『エレン!!!!』








アルミン(最悪のイメージ)

アルミン(こみ上げてきた吐き気を押し戻すと、地を蹴る足に力を込めた)

今日はここまで









アルミン(そして“彼女”を見つけるまで…)

アルミン(それほど時間はかからなかった)







― 飼育小屋 前 ―




アルミン「ユミル!?」

ユミル「よう」

サシャ「ど、どこ行ってたんですか! 散々探したんですよ!?」

ユミル「それはこっちのセリフだよ。ヒヤヒヤさせやがって…」

アルミン(ユミルを見つけたのは飼育小屋の前だった)

アルミン(腕組みをして扉にもたれかかるユミルに、
     僕らは一斉に駆け寄ったのだ)




アニ「どういう事? ここで何してるの?」

ユミル「私もお前らを探してたんだよ。
    食堂に行ってもいないから、かなり焦ったんだぞ」




アルミン(どうやら、僕らとユミルは
     どこかで入れ違いになっていたらしい)

アルミン(ユミルは平静を装っていたが、
     よく見ると肩が小さく上下していた)

サシャ「あれ…? ていうかユミル、1人ですか?」

ユミル「ああ」

アルミン「他のみんなは?」

ユミル「ここにはいない。“お使い”として来たのは私だけだからな」




アルミン(“お使い”…?)




ユミル「ついて来いよ、3人とも」

一旦中断します

― 施設内 某所 ―




サシャ「あのう… どこまで行くんですか?」

ユミル「何回目だよその質問。来ればわかるって言ってんだろ」

サシャ「ちょ、ちょっと休憩しましょうよ。
    私たちはさっき走ってきたばかりで…」

ユミル「『こんなので音を上げてたら狩猟生活なんて務まらない』
    そう言ってたのはどこの誰だった?」

サシャ「………………」

アルミン「…ねえ、ユミル」

ユミル「あん?」

アルミン「何か怒ってる?」

ユミル「…は?」

アルミン「い、いや、気のせいならいいんだ。
     なんとなくそんな感じがしたから…」

ユミル「………………」

ユミル「…怒ってねえよ」

アルミン「え?」

ユミル「私は怒ってない。むしろ…」




アルミン(ユミルはそこで歩を止める)

アルミン(そして首だけを少しこちらに向けると、
     ボソリとした声でこう言った)




ユミル「…悪かったな、アニ」

アニ「…え?」

ユミル「この間は… ずいぶん酷い事言っちまった」








ユミル『【裏切り者】ってのは… お前なんじゃないのか?』








アニ「…ああ、別にいいよ。気にしてないから」

ユミル「…そうか」

アルミン(ユミルは再び歩き出した)

アルミン(後ろ姿からは、その表情を読み取ることができない)




アルミン「………………」

アニ「………………」

サシャ「………………」




アルミン(僕らはひたすらユミルを追った)

アルミン(ただ黙々と…)

ユミル「ウソも100回言えば本当になる」




アルミン「…え?」

ユミル「大きなウソを繰り返されると、人はそれを信じてしまう」

ユミル「…人間ってのは実にテキトーに出来てるよな」

サシャ「…?」

ユミル「無理矢理にでも声に出して笑えば、最後には本当の笑いになる」

ユミル「たとえ絶望のどん底にいたとしても…」

ユミル「今の私たちに足りないのは信じる心だ」

ユミル「疑うことすら忘れるほどに、バカみたいに信じ抜くこと…
    そうは思わないか?」

アニ「…何の話をしてるの?」




アルミン(ユミルは何も答えなかった)

アルミン(淡々と歩を進める彼女に、僕らは黙って従うしかない)

― ライブハウス 前 ―




アルミン(そうして僕たちが辿り着いたのは…)




アニ「…ライブハウス?」

ユミル「ここが目的地だ」

サシャ「…? ここに何かあるんですか?」

ユミル「まあな」

アルミン(ユミルはそう言うと、ライブハウスの扉に近付いていった)




コン コン コン




アルミン(3回のノック)

アルミン(すると、それに応えるように…)




コン コン コン コン




アルミン(中から4回のノックが返ってきた)

ユミル「開けてみろよ、サシャ」

サシャ「えっ…」




アルミン(言われるがままに、ドアの取っ手に手をかけるサシャ)

アルミン(力を入れ、ゆっくりと木製の扉を開いていく)

アルミン(すると…)

パーン!

パパン! パンパーン!








「ハッピーバースデー! サシャ!」







今日はここまで

― ライブハウス ―




アルミン(僕らの目に飛び込んできたのは…)

アルミン(華やかな装飾が施されたパーティー会場だった)




アニ「…!?」




アルミン(そしてそこには…)

アルミン(パーティー帽を被り、
     クラッカーをこちらに向けたみんなの姿があった)

サシャ「…え、えーっと…」

サシャ「…何ですかこれは」

ユミル「パーティーに決まってんだろ」

サシャ「パ… パーティー…?」

ユミル「おいおい… なに呆けた顔してんだ。
    パーティー開くって言ったのはお前だろうが」

アルミン(サシャが唖然とするのも無理はない)

アルミン(実際僕も… 夢でも見てるんじゃないかと思ったほどだ)




ユミル「ま、どうせ開くんなら口実があった方がいいと思ってよ」

ユミル「今日はお前の誕生日会ってことにしたんだ」

サシャ「あの… 誕生日どころか…」

サシャ「今日が何日かすらわからないんですけど…」

ユミル「細けぇ事はいいんだよ。何日か経てばいつかは誕生日だろ」

サシャ「そんなザックリとした誕生日会聞いたことありませんよ!?」

ユミル「あーもう、うるせえ!主賓は大人しく向こう行ってろ!」




アルミン(ユミルはうんざりしたように怒鳴りつけると、
     サシャを奥へと押し込めた)

アルミン(みんなが待つ会場の奥へと…)




ライナー「よく来たな、サシャ」

ライナー「それと… アニとアルミンも」

アルミン「…!」

ライナー「さあ… 楽しいパーティーの始まりだ」

今日はここまで

アルミン(こうしてパーティーが始まった)

アルミン(唖然とする間もないまま、僕とアニもみんなの元へ導かれていく)




アルミン「…!!」




アルミン(僕は目を見張った)

アルミン(彩り鮮やかなサラダに、バカみたいに大きな骨付き肉…)

アルミン(山のように盛られたバターロールに、
     巨大なケーキやフルーツポンチ…)

アルミン(普段の食事とは比べ物にならないごちそうが、
     ずらりとテーブルに並べられている)

アルミン「こ…これ…どうしたの!?」

ライナー「へへっ、圧巻だろ? 【調理係】である
     ユミルとクリスタが作ってくれたんだぜ?」

ユミル「くっくっ… クリスタって意外と不器用なのな。
    砂糖と塩を間違えてケーキの生地にドバーッと入れてやんの」

クリスタ「なっ…! あ、あれはユミルが変な事言うから…」

ユミル「でもまあ、サシャじゃなかっただけマシか。
    もしあいつが【調理係】だったら…」

ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ…




サシャ「…!!」

ユミル「…あんな風につまみ食いされそうだからな」




アルミン(つまみ食いってレベルじゃない…)




ジャン「おいサシャ! お前1人で全部食うなよ!?」

サシャ「………………」

ジャン「オ、オイッ! 人の話を…」

ポロッ…




サシャ「うぅ…」

サシャ「うわぁぁん…」ポロポロ

ジャン「!?」

サシャ「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁ…」ポロポロ

ジャン「な…なんだ!? なんで急に泣き出した!?
    オレ何か悪い事したか!?」

サシャ「ちっ…違うんです…」

サシャ「私…」

サシャ「嬉しくて…」

ジャン「は…!?」

サシャ「た、誕生日もっ…そうですけど…」

サシャ「みんなが仲直りしてくれてるのが…嬉しくて…」

アルミン(辺りがしんと静まり返る)

アルミン(でもそれは… いつもの押し潰されそうな沈黙ではなかった)




ジャン「………………」




アルミン(決まりが悪そうに頬を掻くジャン)

アルミン(彼がチラリと目を上げた先には、
     同じように頬を掻くコニーの姿があった)

今日はここまで

ジャン「…正直言って、オレはまだ割り切れてねえよ」

ジャン「コニーを憎む気持ちは消えてねえし、
    ここの生活のストレスだって残ったままだ」

ジャン「それはきっと…あいつだって同じはずだぜ」

コニー「………………」

ジャン「でもよ、昨日サシャに言われて…
    考えちまったんだよな」





サシャ『互いが互いを疑って…』

サシャ『仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…』








サシャ『それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!』








ジャン「あの言葉がずっと引っかかっててよ」

ジャン「体はクタクタなのに、頭は妙に冴えていて…
    昨日の晩はなかなか寝付けなかった」

ジャン「それでオレは、気晴らしに散歩でもしようと
    外に出てみたら…」

ジャン「…部屋の前にこいつらが集まってたんだ」

アルミン(ジャンはそう言ってみんなの方に目を向ける)

アルミン(ライナー、ベルトルト、ユミル、クリスタ、
     そしてコニー…)




ジャン「どうやら寝付けなかったのはオレだけじゃなかったらしい」

ジャン「みんながサシャに言われた事を考えていて…
    色々と迷ってるみたいだった」

ジャン「自然とオレたちは口を開いて、それぞれの気持ちを吐露していって…」

ジャン「…サシャの為にサプライズパーティーを開こうって誰かが言ったのも、
    その時だったっけな」

アルミン(辺りがしんと静まり返る)




ライナー「…腑に落ちないって顔だな、アニ」

アニ「………………」

ライナー「まあ無理もないか。昨日までいがみ合ってた俺たちが、
     急に仲良くパーティーやってるんだもんな」

ライナー「そりゃ不自然に思って当然だ」

アニ「………………」

ライナー「…実のところ、それは俺たちだって同じなんだ」

ライナー「仲間が2人もいなくなって、
     訳のわからない事を散々言われて…」

ライナー「そんな状況で気持ちに整理をつけられる人間なんて…
     この中には1人もいない」

ベルトルト「………………」

ライナー「だからまあ…なんだ」

ライナー「いくら考えても無駄だっていうなら、
     いっそそのまま突っ走ろうと思ってな」

ライナー「気持ちに折り合いをつけないままで…
     それでもいいって思ったんだ」

ライナー「要はやけくそだな」

クリスタ「………………」

ライナー「それで俺たちは…」

アニ「…別に」

ライナー「?」

アニ「不自然だなんて思ってないよ」

アニ「ただちょっと…驚いただけ」




アルミン(アニはそう言って髪をかき上げた)

アルミン(ちらりと見えた耳が赤みがかっていたのは、気のせいだろうか)

今日はここまで

アニ「…やっぱり正解だったかな」

ライナー「…? 何の話だ?」

アニ「何でもないよ。それより…」




アルミン(アニが山盛りの料理が載せられたテーブルを指す)




アニ「あれ全部食べていいの?」

ライナー「は…!?」

アニ「空腹なんだよ。朝ご飯もあんまり食べられなかったから」

サシャ「だ、ダメですよアニ!これは全部私のものです!」

ジャン「いつからお前のものになったんだよ」

サシャ「主賓ですから!!」

ジャン「………………」

アニ「じゃあ勝負でもする?どっちが多く食べられるか」

サシャ「いいですとも!負けませんよ!」

ユミル「おっと待ちな」

サシャ「?」

ユミル「勝負するのは構わないが、あのケーキだけは食べるなよ?」

ユミル「あれはクリスタ特製の塩まみれケーキだからな。卒倒するぞ」

クリスタ「うぅ…」

コニー「つ、つーか、本当に全部食うなよ?
    こっちだって早朝から準備してて腹ペコなんだからよ…」

アニ「わかってるって。じゃあ始めるよ」

アルミン(それからしばらくの間…)

アルミン(サシャとアニの壮絶な早食いバトルが繰り広げられた)




サシャ「………………」ガツガツガツガツ

アニ「………………」ガツガツガツガツ

コニー「お、おい!こいつら本気で全部食う気だぞ!
    俺たちの分がなくなっちまう!」




アルミン(いつの間にか2人を観戦していたギャラリーも参加し…)

アルミン(気が付くと、パーティー会場は
     散乱した料理と笑い声で溢れかえっていた)

アルミン(アニ… 一体どうしたんだろう?)

アルミン(朝食はそれなりに取っていたはずなんだけど…)




アニ「…ふふっ」




アルミン(また笑った…)




アニ『…いいね』

アニ『それでこそアルミンだ』




アルミン(あの時の笑顔)

アルミン(アニってあんなに笑う人だったっけ?)

アルミン(そもそも早食い競争だなんて…
     サシャならまだしも、アニはそんな事するタイプじゃ…)

アルミン(…タイプ?)




アニ『キャラじゃないとか、流されるタイプとか…
   そんなのは関係ない』

アニ『みんなだってちゃんとわかってるはず』

アニ『…わかってるはずなんだ』




アルミン(もしかしてアニは… 変わろうとしてるのかな)

アルミン(以前の自分から…)

アルミン「………………」




アルミン(…“以前の自分”?)

アルミン(何だよ“以前の自分”って)

アルミン(一体どうして…そんな考えが浮かぶんだ?)

ライナー「あ~、それでは! パーティーも盛り上がってきたところで!」

ライナー「【出し物係】である俺とベルトルトが用意した、
     とっておきのレクリエーションをやろうと思う!」




ヒュー ヒュー

パチパチパチパチ




ライナー「じゃあベルトルト、みんなに例の物を」

アルミン(ライナーの指示を受けて、ベルトルトが何かを配っていく)

アルミン(受け取ってみると… それは白い皮袋のようだった)




コニー「なんだこれ?」

ライナー「絞り袋だ。クリームなんかを入れてデコレーションする道具さ」

ジャン「…? そんな物どうするんだよ」

ライナー「まあ見てろって。よしベルトルト、アレを頼む」

アルミン(絞り袋を配り終えたベルトルトは、バーカウンターの裏側に回った)

アルミン(ごそごそと取り出したそれは…)




サシャ「…!! す、すごい! 何ですかその美味しそうな物体!?」

ライナー「いい匂いだろ? 女神(クリスタ)特製の肉のパイ包みだ」

ユミル「へえ、私の事か? 女神とは嬉しいね」

ライナー「さて、今からみんなには、
     このパイ包みのデコレーションをやってもらう」

ライナー「詳しいルールを説明するから、よーく聞くんだぞ?」

アルミン(ライナーの説明によると、どうやらこの絞り袋には
     クリーム状のソースが入っているらしい)

アルミン(パイはすでに10等分に切り分けられており、
     1人が1つを好きなようにデコレーションする…というものだった)




ライナー「いいか、使うのはあくまで自分の絞り袋だけだ。
     他人のを借りるのは無しだぞ」

ライナー「他人のパイ切れをデコレーションするのも禁止。
     それと、全員が作業を終えるまで食べるのもダメだからな」

コニー「なんだかよくわかんねーけど、面白そうだな」

今日はここまで

アルミン(僕らは言われた通りに、
     各々のパイ切れをデコレーションしていった)




ベルトルト「…コニー、そのスペル間違ってるよ」

コニー「え?」

ユミル「お前は文字も書けないのかよ…
    それとサシャ、そのぐちゃぐちゃのモンスターは何だ」

サシャ「ケニーです」

ユミル「ケニー?」

サシャ「飼育小屋で見つけた『私の』肉牛です!」

ユミル「………………」

アルミン(可愛らしい絵を描く人、メッセージを書く人…)

アルミン(それぞれが思い思いに、個性的な飾り付けを施していった)




ライナー「…よし、みんなデコレーションは終わったようだな」

サシャ「食べていいですか!? 食べていいですよね!?」

ライナー「ああ、いいぞ。ただし…」

サシャ「?」

ライナー「気をつけろよ。その中の1つには【当たり】があるからな」

ジャン「は? 何だよ【当たり】って」

ライナー「それは食べてからのお楽しみだ」

ジャン「またそのパターンかよ。もったいぶりやがって…」

クリスタ「…まさか、毒とかじゃないよね?」

ライナー「安心しろ。死ぬような代物じゃない」

コニー「な、なんか言い回しがすっげー不安なんだが…」

サシャ「大丈夫です!きっと1つだけベラボーに美味しいんですよ!
    だから心配いりませんって!」

ユミル「…お前早く食べたいだけだろ」

ライナー「じゃあみんな、自分以外のパイ切れを1つ取ってくれ。
     自分がデコレーションしたもの以外だぞ」




アルミン(ライナーに言われ、
     僕らはパイ切れを1つ選んで手に取った)

アルミン(僕が選んだパイには文字が書かれていたが、
     潰れているせいで判読できない)

ユミル「なあ、ライナー」

ライナー「なんだ?」

ユミル「どうせやるならよ、食べさせ合わないか?
    その方が盛り上がるだろ」

ライナー「ん? …なるほど、それもそうだな」

ユミル「じゃあベルトルさん、あーん」

ベルトルト「えっ… あ、あーん」

アニ「アルミン」

アルミン「え?」

アニ「あーん」

アルミン「!?」

アニ「…どうしたの。早く」

アルミン「あっ… う、うん!」

ライナー「じゃあいくぞ… せーのっ」




パリッ




アルミン(ライナーの合図と同時に、
     僕らは一斉にパイにかぶり付いた)

アルミン「…!」




アルミン(その瞬間に香りが広がる)

アルミン(パリパリの皮。やわらかい肉から溢れ出る濃厚な肉汁。
     それらがデコレーションしたソースと絶妙に絡み合う)




アニ「………………」モグモグ




アルミン(…そして恥ずかしさも相まって、
     僕は何とも言えない高揚感に…)

ジャン「ガハッ…!?」




ドサッ




アルミン「…え?」

ジャン「~~っ! ~~~~っ!!」

クリスタ「ジャ、ジャン?」

ジャン「~~~~ッ!!」

コニー「お、おい! 大丈夫かよ!?」

ジャン「辛ーーーーーーーーッ!!」




サシャ「!?」

ジャン「な、なんだこりゃ!?
    メチャクチャ辛… げほっ、ごほっ!!」

ライナー「おっと、【当たり】はジャンだったみたいだな」

ジャン「げほっ…!?」

ライナー「実は絞り袋の1つに激辛スパイスが混ざってたんだ。
     災難だったな、ジャン」

ジャン「て…てんめ… がはっ!!」




だははははははは

アルミン(顔を真っ赤にして悶え苦しむジャン)

アルミン(その様子が可笑しくてたまらないというように、
     みんなが腹を抱えて笑っている)




アルミン「………………」




アルミン(その時だった)

アルミン(僕の脳裏に突然… 一筋の光が走った)









アルミン(そうだ…)

アルミン(僕はこの光景を… 見たことがある)











バキ




???『うおおぉぉ!』

???『また始まったぜ!!』




ドオ




ジャン『オラ! エレン!どうした!
    人間に手間取ってるようじゃ…』

ジャン『巨人の相手なんか務まんねぇぞ!!』







エレン『あたりめーだッ!!』

ジャン『!!』




ドス




ジャン『ぐ…っ!!』

エレン『フッ!!』




ドコッ




ジャン『グッ……!! ……!!』







???『オエッ…』

ライナー『オーイ! その辺にしとけ!』

ライナー『忘れたのかジャン!?
     エレンの対人格闘成績は…』




ライナー『今期のトップだぞ!』




ドオッ







ドン


ヒュ




エレン『!!?』




ヒョイ




エレン『……!? ミカサ!!』

ライナー『いや… ミカサに次いでだったっけ?』

エレン『お… 降ろせよ!!』




だははははははは







???『ジャン これ以上騒いだら教官が来ちゃうよ!』

ジャン『オイ… フランツ…!!』

ジャン『これは送別会の出し物だろ? 止めんなよ!!』

フランツ『イ…イヤぁ… もう十分堪能したよ』

???『やめてよ! 人同士で争うのは…』




エレン『オイ!』

エレン『降ろせよミカサ…!』




だははは



アルミン(唐突なフラッシュバック)

アルミン(我に返ると、一切れだけ残されたパイ包みが目に留まった)




アルミン「………………」




アルミン(…そうだ、ミカサは?)

アルミン(ミカサは今どこに?)




だははははははは




アルミン(…いや、ミカサだけじゃない)

アルミン(“みんな”は?)





ユミル『わからないのか?今来た2人を含めてもたったの12人なんだぞ?
    他の連中はどこに行ったんだよ』

ベルトルト『…確かに。入団式には,ざっと見ても100人以上いたはずだよね』




アルミン(ここでの生活が始まった時に感じていた疑問)

アルミン(考えることを早々に放棄していた疑問)

アルミン(その疑問が今になって、心の中にムクムクと現れる)




だははははははは




アルミン(他のみんなは?)

アルミン(どうして僕たちしかいないんだ?)

モノクマ「“どうして”?」

アルミン「…!!?」

モノクマ「当たり前じゃない。だって…」








モノクマ「だってここは… 異常空間なんだよ?」















アルミン(僕らはすっかり忘れていた)

アルミン(ここが常識の通じない異常空間であることに)

アルミン(そして僕らは気付けなかった)

アルミン(“あの人”の底なしの悪意に…)







アルミン(その日 僕たちは思い知る)




パリーン




アルミン(“それ”はいつだって…)

アルミン(突然やってくるということを)

ユミル「うぐっ…!?」




ドサッ




サシャ「?」

ベルトルト「…え?」




ユミル「…! …ッ!!」




クリスタ「ユミル…?」

ユミル「……ウ……ァ……」




クリスタ「ユミル!?」




ユミル「グッ……アァ……」




アニ「…!!」

ライナー「な…なんだ!?」

ユミル「ア……ァ……」

ジャン「おい! どうしたんだよ!!」




アルミン(そして歯車は回り出す)

アルミン(誰も予想できなかった、誰も望むことのなかった…)









アルミン(絶望的な結末へと)















ユミル「ヒ……スト……リ……」








ユミル「ァ……」















CHAPTER 02

君は希望という名の絶望に微笑む

非日常編















「ピンポンパンポーン…!」




モノクマ『死体が発見されました!』

モノクマ『一定の自由時間の後、『兵団裁判』を開きまーす!』







今日はここまで

アルミン(10秒足らずの出来事だった)

アルミン(何が起こったのか理解できないまま、
     全員がその場から動けずにいた)




アルミン「………………」




アルミン(…死体?)

アルミン(今、死体って…)

ライナー「全員パイ切れを捨てろ!!」




アルミン(ライナーの一言で、僕らは現実に引き戻された)

アルミン(止まっていた時間が再び動き出す)




ライナー「毒だ! パイの中に毒が入ってる!」

アルミン(自らの奥に押し込めていた恐怖)

アルミン(見て見ぬフリをしていた猜疑心)

アルミン(それらが心の扉をぶち破り、
     激しいパニックとなって僕らの中を逆流する)




ベルトルト「うわああああああああああああああああ!!」




パリーン

クリスタ「な…なんで… なんで…?」

ジャン「お、おいライナー!! 話が違うぞ!
    お前さっき毒は入ってねーって言ったじゃねーか!!」

ライナー「…っ!!」

サシャ「ど、どうしましょう… 私もう食べちゃいましたよ!!」

コニー「は… 吐き出せ! 全部吐き出すんだ!
    こうやって喉に手突っ込んで…うぶっ」

モノクマ「いやっほうっ!!」

モノクマ「アドレナリンがぁーーー染み渡るーーーッ!!」




アルミン(いつの間にか姿を現したモノクマ)

アルミン(しかし、その登場に反応を示す人は誰もいなかった)

アルミン(それどころではなかった)




モノクマ「さてと、さっそうと登場したところで、
     まずは…」

モノクマ「ヌルいよ、ヌル過ぎだよ!
     ヌルヌルだよっ!」

モノクマ「…えっ!? ヌルヌルなの!?」

サシャ「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

コニー「く、くそっ… なんでだ…
    うまく吐けねえ… うっぷ」

サシャ「しっかりしてくださいコニー! 死にたいんですか!!」

コニー「死にたくねえ… 死にたくねえよ…」

コニー「家族に会うまでは… 死にたくねえよっ!!」









モノクマ「うっるさーいっ!」







サシャ「…!!」

モノクマ「何がオエーだ… 吐きたいのはこっちだっつーの」

モノクマ「ボクは怒ってるんだよ…
     オマエラのヌルいムードに吐き気マックスなんだ」

モノクマ「おいっ! 何が『ハッピーバースデー』だよ!」

モノクマ「退屈だよ! 絶望的に退屈過ぎるんだって!」

モノクマ「お陰で、全然盛り上がってないじゃないか!
     茶番はいい加減にしろって!」

モノクマ「もっと、こう…世間のニーズに応えろよ」

モノクマ「平和で穏やかな訓練兵達の日常生活なんて、
     誰も望んじゃいないんだって」

モノクマ「みんなが見たいのは…」




モノクマ「ズバリ“これ”でしょ?」

アルミン(モノクマはそう言ってユミルが倒れている方向を指す)

アルミン(するとそこには…)





ベルトルト「なっ…!?」

クリスタ「きゃああああああああああああ!!」

アルミン(僕らは目を疑った)

アルミン(そこに倒れていたのは、ユミルではなかった)

アルミン(そこに倒れていたのは…)




アルミン「…!!」




アルミン(皮膚がぶよぶよに膨れ、青黒く変色した…)

アルミン(モンスターのような死骸だった)

今日はここまで

コニー「ぎゃああああああああ!? な、なんだこりゃああああ!!」

モノクマ「うぷぷ…酷いもんだね」

モノクマ「元々ブサイクなやつだったけど、これはもはや人とは呼べないね」

モノクマ「仮にも女の子なのにこんな死に方…」

モノクマ「まさしく絶望的ィィィィ!!」

ジャン「てめえ! ユミルに何しやがった!」

モノクマ「ボクは何もしてないけど?」

ジャン「じゃあなんでユミルがこんな事になってるんだよ!!」

モノクマ「さあね。それはボクじゃなくて本人に聞いたら?」

ジャン「ふ、ふざけてんのか! ユミルはもう死んでるんだぞ!」

モノクマ「いやいや、ユミルさんじゃなくてさ…」




モノクマ「ユミルさんを殺した犯人にだよ」

ジャン「…は?」

ジャン「な…なんだよ… 犯人って…」

モノクマ「ハァ? 今さら何言ってるの?」




7 仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
  自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。




モノクマ「今まで散々言ってきたじゃん」

モノクマ「イェーガーくんの一件と同じだよ。要するに…」




モノクマ「オマエラの中の誰かがユミルさんを殺したんだよ!!」

今日はここまで

ドクン




アルミン(心臓が大きく脈打つ)




ドクン




アルミン(それは今の僕らにとって、絶対に考えたくなかった可能性…)

アルミン(絶対にあってはならない事だった)

サシャ「…何を…言ってるんですか…」

サシャ「だって私たちは… 今の今までパーティーしてて」

サシャ「みんなで仲直りしたくて… それで一生懸命準備して」

サシャ「さっきまで… あんなに楽しく笑ってて」

サシャ「あんなに…楽しくて…」

モノクマ「簡単な事だよ」

モノクマ「『そう思わなかった人間もいる』…ただそれだけの事でしょ?」

モノクマ「みんなで仲直り? あんなに楽しく?」

モノクマ「そんなもの知るかよ。考えただけで虫酸が走る」

モノクマ「…そう考えてた人間もいたって事でしょ?」

コニー「何だよ…それ…」

コニー「つ、つーか… 一体何が起こってるんだよ…」

ジャン「…ッ」

コニー「そ、そうか! きっとこれはドッキリなんだな!」

コニー「これも出し物の一部なんだろ!? そうなんだろ!?」

コニー「きっとユミルは俺たちを驚かそうとしたんだな!
    だからあんな死んだフリを…」

アニ「コニー」

コニー「…!」

アニ「あれが…」




アニ「あれが…死んだフリに見える?」

アルミン(醜く肥大化したユミルの体…)

アルミン(血の気のないドス黒い肌…)

アルミン(誰の目にも明らかだった。
     さっきまで仲間だったユミルは……)

アルミン(死んだ。殺された。絶命した)

アルミン(こんなにも、あっさりと…)

アルミン(これが……人間の死……)

モノクマ「驚く事ないんだよ」

モノクマ「死んだだけ…
     ただ、死んだだけだよ」

モノクマ「いつか人類が滅びるくらいに、
     メチャ当たり前の事で…」

モノクマ「いつか世界が終わるくらいに
     ムチャ自然な事なんだよ」

モノクマ「おとぎ話じゃないんだし、
     死んでも死なないなんて事はないんだ」

モノクマ「これが現実なんだよ!!」

アルミン(僕らは言葉に詰まってしまった)

アルミン(誰もモノクマの言う事に反論しない)

アルミン(その様子が可笑しくてたまらないというように、
     モノクマが腹を抱えて笑っている)




アルミン「…っ」




アルミン(僕は改めてユミルの亡骸を見る)

アルミン(その体は本来の倍以上に膨れ上がっており、
     訓練兵団の制服がはち切れんばかりになっている)

アルミン(肉に埋もれた眼球は半分以上も飛び出し、
     この世のものとは思えない形相を作り出していた)

アルミン(…これが当たり前?)

アルミン(これが… 自然な事だって?)




モノクマ「さてと、そういう訳ですので…」

モノクマ「クロ捜しの捜査にあたって、
     オマエラにこれを配っておかないとね!」

モノクマ「毎度おなじみ、ボクがまとめた死体に関するファイル。
     その名も…」

モノクマ「…ザ・モノクマファイル2!!」

サシャ「そんな…」

サシャ「また…“あれ”が始まるんですか…?」




8 訓練兵内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、
  訓練兵全員参加が義務付けられる兵団裁判が行われます。

9 兵団裁判で正しいクロを指摘した場合は、
  クロだけが処刑されます。

10 兵団裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、
  クロだけが卒業となり、残りの訓練兵は全員処刑です。




モノクマ「もちろんですとも!」

モノクマ「ワックワクでドッキドキの…」

モノクマ「命がけの兵団裁判ーー!!」

アルミン(見覚えのある冊子)

アルミン(聞き覚えのあるフレーズ)

アルミン(僕らは既に感じていた)

アルミン(自分たちは今… 取り返しのつかない場所まで来ている)




モノクマ「じゃあ、ボクはこれで退散するね」

モノクマ「最悪の手段で最良の結果を導けるよう、せいぜい努力してください」

モノクマ「後ほど裁判場でお会いしましょう… うぷぷぷぷ」








モノクマ「アーッハッハッハッハッハ!!」







ポヨヨーン




アルミン(こうしてモノクマは去っていった)

アルミン(混乱した状況と…)

アルミン(困惑した僕らと…)

アルミン(変わり果てたユミルを残して……)

今日はここまで

アルミン(しばらくの間…)

アルミン(僕らは、口を利こうともしなかった)

アルミン(ユミルの死が、とてつもなくショックなのは当然だけど…)

アルミン(でも、それだけじゃなかった…)

アルミン(この中にいる誰かが…
     “仲間を殺した”という事実…)

アルミン(それは決して…今回が初めてではなかった)




ミーナ『クズだよあんたらは!!』




ミーナ『認める訳ねーだろ!真っ白なんだよ私は!』




ミーナ『いい加減にしろよこのもやしが!!』







アルミン(だけど、初めてではなかったからこそ…)

アルミン(僕らは余計にショックだった)








ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』







アルミン(“あれ”を経験してもなお…
     僕らを出し抜こうとする人間がいる)

アルミン(僕らを裏切って…
     自分だけ助かろうとしている人間がいる)

アルミン(怒り、悲しみ、恐怖、呆れ…
     それらの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合って…)

アルミン(心の中で… 大きなとぐろを巻いていた)

今日はここまで

アニ「…私のせいだ」

アルミン「…えっ?」

アニ「そのまま終わる訳なかったんだ…」

アニ「あの状態を“あいつ”が放っておくとは思えない…」

アニ「そんな事…私が一番わかっていたはずなのに」

アニ「私がもっとしっかりすべきだった…」

アニ「私が…」

ライナー「…落ち込んでる場合じゃないぞ」

アニ「………………」

ライナー「今は、誰が犯人なのかを
     突き止めるのが先だ」

ライナー「そうでなければ、全員まとめて処刑されるだけ…」

ライナー「…それが現実だ」

ベルトルト「…そうだね。早く犯人捜しを始めよう」

コニー「ちょ、ちょっと待てよ!」

コニー「お前らドライ過ぎるだろ!
    もっとユミルの死を悲しむとか無いのかよ!」

ライナー「悲しめばユミルが戻ってくるのか?」

コニー「…っ!」

ライナー「いいかコニー。どのみち、俺たちは逃げられない…
     やるしかないんだ」

ライナー「やりたくなくても、
     やるしかないんだ」

ライナー「それが、生き残る唯一の術なら、
     やるしかないんだ…!」









ミカサ「その通り」








アルミン「…!!」

ミカサ「勝てなきゃ死ぬ」

ミカサ「勝てば生きる」




ミカサ「戦わなければ…勝てない」

アルミン「ミ…ミカサ…!?」

ミカサ「事情は大体聞いた。私も犯人捜しの捜査に加わる」

アルミン「ミカサ… 一体…」

ミカサ「私はもう大丈夫」

アルミン「でも…」

ミカサ「アルミン」

アルミン「え…?」




ミカサ「今は感傷的になってる場合じゃない」











―  捜 査 開 始  ―







今日はここまで

アルミン(突然姿を現したミカサ)

アルミン(他のみんなも彼女の登場に気付き、一斉に駆け寄っていった)




コニー「ミ、ミカサ!?」

ベルトルト「ミカサ!」

ジャン「ミカサじゃねえか!」

サシャ「心配したんですよ!もう大丈夫なんですか!?」

ミカサ「だから大丈夫だと言っている。それよりも…」

アルミン(ミカサは表情を変えずに何かを取り出す)

アルミン(それは先ほど配られた黒い冊子…)

アルミン(モノクマファイルだった)




ミカサ「まずはこれを見よう」

サシャ「えっ…」

ミカサ「前回の裁判でもこれが起点になった」

ミカサ「だから捜査を始める前に、
    ここに書かれている情報に目を通すことは重要」

ミカサ「違わない?」

サシャ「…ま、まあ、そうですけど…」

アルミン(確かにミカサの言う通りだけど…)




アルミン「………………」




アルミン(…いや、今はやめておこう)

アルミン(ライナーが言っていた通り…
     まずはこの事件の捜査に集中するんだ)

アルミン(誰がユミルを殺したのか)

アルミン(どうしてユミルが死ななければならなかったのか)

アルミン(それらを明らかにする為にも…)

■ モノクマファイル 2 ■


被害者はユミル。
死亡時刻は午前12時頃。

死体発見現場はライブハウス。
そこで行われたパーティーの最中に死亡した。

死因は服毒による多臓器不全。
毒の副作用による肉体の膨張や変色が見られる。

その他、身体にはいかなる外傷も見られない。

アニ「…死亡時刻については疑いようがないね」




アルミン(僕は壁に掛けられた時計を見た)

アルミン(時刻は午後12時20分…
     逆算すれば、ユミルに異変が起こった時間と一致する)




アルミン「………………」




アルミン(…確かに疑いようがない)

アルミン(だってユミルは…)





ユミル『うぐっ…!?』




ドサッ




アルミン(だってユミルは…
     僕らの目の前で死んだんだ)

アルミン(僕らが見ている中で… 殺されたんだ)

アルミン(ミーナと同じように…)









ガキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ !!!!




ギャアァァァァァァアアアアァァァァアアア!!








アルミン(だけど、今回はミーナの一件とは違う)

アルミン(僕らの中に犯人がいる)

アルミン(僕らの中に、仲間を殺した人間が…)




【モノクマファイル 2】



今日はここまで

今日はここまで

コニー「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

サシャ「やった!ちゃんと吐けましたねコニー!」

コニー「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

サシャ「あっ…なんだか私も気持ち悪…」

コニー「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

サシャ「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

ライナー「…何やってるんだお前ら」

サシャ「決まってるじゃないですか!毒を吐き出してるんですよ!」

コニー「ゲホッ、ゲホッ…!」




ライナー『毒だ! パイの中に毒が入ってる!』




サシャ「ライナーだって言ってたじゃないですか!」

サシャ「あのパイは私たちだって食べたんですよ!?
    だったら早く吐き出さないとマズイですって!」

アニ「…無駄だよ」

サシャ「えっ!?」

アニ「ユミルはあのパイを食べた直後に倒れたんだ。
   今ごろ毒を吐き出そうとしても手遅れさ」

サシャ「そ、そんな…」

サシャ「じゃあ、私たちも死んじゃうんですか…!?」

アニ「死なないよ」

サシャ「は…!?」

アニ「だってそうでしょ。もし私たちのパイにも毒が入っていたら、
   ユミルと一緒に苦しんでたはずだよ」

アルミン(…確かにアニの言う通りだ)








ライナー『じゃあいくぞ… せーのっ』




パリッ








アルミン(あのパイは全員が同時に口にしていた)

アルミン(もし、全てのパイ切れに毒が入っていたとしたら、
     僕たちもユミルのように死んでいたはずだ)

アルミン(だけど僕たちは生きている)

アルミン(つまり、毒が仕込まれていたのはユミルのパイだけ…)

アルミン(毒にあたったのはユミルだけということになる)

アルミン(だけど…)




サシャ「そ、そんなのおかしいですよ!」

ライナー「?」

サシャ「だってあのパイは適当に選んだものなんですよ!?」

サシャ「もしユミルが殺されたっていうなら…
    どうやって犯人は、毒入りのパイをユミルに取らせたんですか!?」

アルミン(問題はそこだ…)




ライナー『じゃあみんな、自分以外のパイ切れを1つ取ってくれ。
     自分がデコレーションしたもの以外だぞ』




アルミン(あの時、僕たちは
     適当に選んだパイ切れを手にしていた)

アルミン(『自分がデコレーションしたもの以外』…
     それ以外には何の指定も無かった)

アルミン(サシャの言う通り、
     誰かがユミルを毒殺しようとしていたのなら…)

アルミン(犯人はどうやって…
     毒が仕込まれたパイをユミルに選ばせたんだ?)




【肉のパイ包み】



今日はここまで

コニー「なっ… 何だそりゃ…」

コニー「それじゃあ… 毒殺じゃねーって事かよ…」

ベルトルト「………………」

アルミン「…? どうしたの、ベルトルト?
     そんなに難しい顔して」

ベルトルト「いや、ずっと気になってたんだけど…」

ベルトルト「あれは何だったのかなって思ってさ」









ユミル『ヒ……スト……リ……』








ユミル『ァ……』








アルミン「…もしかして、ユミルが死に際に遺した言葉のこと?」

ベルトルト「うん…」

ベルトルト「『ヒ…スト…リ…ア』って、確かに言ってたよね」

アルミン「やっぱりベルトルトにも心当たりが無いんだ?」

ベルトルト「全然…」

ガタッ




クリスタ「…!!」

アルミン「…クリスタ?」

クリスタ「ごめん…私…」

クリスタ「ちょっと気分が…」




ダッダッダッダッ

アルミン「ちょ、ちょっとクリスタ!?」

ライナー「…そっとしておいてやれ」

アルミン「えっ…」

ライナー「無理もないだろ。一番仲の良かったユミルが
     こんな最期を遂げたんだ」

ライナー「俺たちもショックだったが…
     あいつの心情は計り知れない」

アニ「…あんたってクリスタには随分と甘いんだね」




ライナー『ジャンには悪いが、俺はユミルの考えに賛成だ』

ジャン『…! おいライナー!』

ライナー『確かにあの2人はエレンの幼馴染だ。
     昨日の兵団裁判後の状態から察するに、きっと誰よりも苦しんでるだろう』

ライナー『だが、苦しい状況に置かれているのはあいつらだけじゃない。
     さっきアニも言ったが…ここにいる全員が同じ目に遭っているんだ』




アニ「アルミンとミカサにはああ言ってたクセに…」

アニ「『引っ張ってでも連れてくるべき』…
   そんな事も言ってなかった?」

ライナー「…ああ、言ったさ」

ライナー「だがな、エレンを亡くしたお前達だからこそ…
     あいつの気持ちはよくわかるんじゃないのか?」

アルミン「………………」




【ヒストリア】



今日はここまで

アルミン(モノクマファイル、肥大化した死体…)

アルミン(肉のパイ包み、ユミルが遺した言葉…)




アルミン「………………」




アルミン(…駄目だ。全然見えてこない)

アルミン(決定的に手がかりが足りない)

アルミン(やっぱり、ここだけの捜査では限界がある…)

アニ「…とにかく、次に行く場所は決まったみたいだね」

サシャ「えっ?」

ジャン「次の場所だと…? 現場はここだろ?」

アニ「ここだけ調べていても埒が明かないよ。
   見るべき場所は他にもある」

サシャ「…と、言いますと?」

アニ「今回の事件でユミルは毒殺された…」

アニ「そして毒と言ったら…あそこしかないでしょ?」

アルミン「…決まりだね。早速行こう」

ライナー「現場の見張り役は任せておけ。
     俺とベルトルトがここに残る」

アニ「…わかった。頼んだよ」

アルミン「ミカサはどうする? 一緒に来る?」

ミカサ「…私もここに残る。
    パーティーでの出来事についてもう少し知りたい」

アルミン「…そっか。じゃあまた後でね」

今日はここまで

― 倉庫 前 ―




アルミン(ここだ…)




エレン『ああ、本当に何でも揃ってたぜ。訓練道具はもちろん、
    生活用品、衣類、工具、お菓子、それに…』

アルミン『薬品類…医療用のものから毒薬まで』

クリスタ『ど、毒薬…!?』




アルミン(初日にこの倉庫を調べた時…
     確かにそこには毒薬があった)

アルミン(もしユミルが毒殺されたのなら、
     ここの薬品が使われた可能性が高い)




アニ「中に入ろう、アルミン」




アルミン(僕が倉庫の扉に手をかけようとした…その時)

ガチャッ




アルミン(扉が… ひとりでに開いた)




アルミン「えっ…」

クリスタ「!」ビクッ

アルミン「…クリスタ?」

クリスタ「………………」

アルミン「驚いたよ。急に出てくるから…」

クリスタ「………………」

アルミン「こんな所で何を…」

クリスタ「…ごめん」

アルミン「えっ?」

クリスタ「ごめんなさい…」




ダッダッダッダッ

今日はここまで

続きは 01/11(日) に投下します

アルミン「…?」

アルミン「どうしたんだろう、クリスタ…」

アニ「…さあね」

アルミン「………………」

アニ「とりあえず、中に入ろうか」

― 倉庫 ―




アルミン(倉庫の中は、相変わらず物で溢れかえっていた)

アルミン(薄い暗がりの中に並ぶ無数の物品…)




アニ「…改めて見ると気味が悪いね」

アルミン「うん…」




アルミン(ここに足を踏み入れたのは前回の捜査以来だ)

アルミン(まさか、また別の捜査で訪れることになるなんて…)

アニ「…早速調べよう」




アルミン(アニはそう言って、物品棚に目を走らせていく)

アルミン(ほどなくして薬品の棚に到達すると、
     陳列されたビンを1つずつ手に取っていった)




アニ「…へえ、随分と細かく書いてあるんだね」

アニ「ラベル1枚に、用法やら用量やら効能まで…」

アニ「あんたは見ないの?」

アルミン「後で見るよ。初日の調査で大体チェックしてるから」

アニ「そう」




アルミン(素っ気なく応えるアニ)

アルミン(その後はこちらに目もくれず、
     薬品ラベルの精読に集中していった)

アルミン(…僕には他に気になることがある)




13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




アルミン(兵団規則の13条目の項目…)

アルミン(物品を倉庫の外に持ち出す場合は、
     氏名、物品名、時間を記入しなければならない…)

アルミン(もし、僕の予想した通り、
     今回の殺人でここの毒薬が使われたとしたら…)

アルミン(あの物品管理表には、重要な手掛かりが記されているはずだ)




アルミン「………………」




アルミン(そう考えた僕は、入り口の周辺に目を移す)

アルミン(扉の脇に掛けられた、ヒモで綴じられた紙の束…)

アルミン(僕はそれを手に取ると、
     ゆっくりと表紙をめくっていった)

物品 救命セット

名前 ライナー・ブラウン

持出 DAY 06 11:44
返却 DAY 08 15:21   


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 07 00:16
返却 DAY 07 02:30


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 08 00:12
返却 DAY 08 02:55


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 09 00:21
返却 DAY 09 02:57

アルミン(そこには4つの項目が記されていた)

アルミン(ライナーが借りた【救命セット】に、
     3回にわたるサシャの【詰め合わせスペシャル】…)




アルミン「…あれ?」




アルミン(僕は何度も書かれている項目を見直す)

アルミン(さらには全てのページをめくり、
     他に何らかの記述がないか確かめたのだが…)




アルミン「…無い」




アルミン(管理表に記載されていたのは、本当にその4つだけで…)

アルミン(肝心の毒薬は、どこにも記されていなかった)

アルミン(おかしい…)




ユミル『ちなみに聞いておくが…
    この表に虚偽の記載をした場合はどうなるんだ?』

モノクマ『そんなの決まってんじゃん!
     規則違反でおしおきだよ!』

モノクマ『ウソを書いた場合も、何も書かなかった場合も…』

モノクマ『初日のお芋さんと同じ運命を辿る事になりまーす!』




アルミン(管理表のウソはルール違反…)

アルミン(前回の兵団裁判でモノクマはそう言っていた)

アルミン(もし、毒薬が持ち出されていたのなら、
     犯人は管理表に記入をしなければならなかったはずだ)

アルミン(だけど、それが無い…)

アルミン(つまり、倉庫の薬品は使用されていない…?)




アルミン「………………」




アルミン(ここの毒薬じゃないって事か?)

アルミン(…いや、他に毒薬がある場所なんて無かったはず)

アルミン(そもそも殺人に毒は使われなかった?)

アルミン(…いや、モノクマファイルには
     『服毒による多臓器不全』と明記されている)

アルミン(だとしたら、どうやって…)




アルミン「………………」




アルミン(いや、それよりも…)

アルミン(この管理表…)




【倉庫の物品管理表】



今日はここまで

アニ「アルミン、ちょっと来て」

アルミン「?」




アルミン(言われた通りに行くと、アニが何かを差し出してきた)




アルミン「これって…薬品のビン?」

アニ「そうだよ。他の薬品と一緒に並んでいたんだ」




アルミン(僕はそのままビンを観察する)

アルミン(するとすぐに…ある異変に気付いた)

アルミン「ラベルが無い…?」

アニ「そうなんだよ」

アニ「他のビンにはラベルが貼られているのに、
   そのビンには何も無いんだ」

アルミン「ラベルが無かったのはこれだけ?」

アニ「いや…あと2つほどあったよ」

アルミン(残り2つのビンをアニから受け取る)

アルミン(アニの言う通り、確かにその2つのビンにも
     ラベルが貼られていなかった)

アルミン(それだけじゃない…)




アルミン「この3つのビン…何も入ってないんじゃない?」

アニ「え?」




アルミン(アニはビンを手にかざすと、その中に目を凝らした)

アルミン(フタを開け、片目をつむって中を覗き込むアニ…)

アルミン(最後にはビンを床に向けて振ってみせたが、
     中からは何も出てこなかった)

アニ「…本当だ。空っぽだね」

アルミン「だけど、妙だね…」

アルミン「僕は初日に全ての薬品をチェックしたけど、
     ラベルの貼られていないビンなんて無かったよ」

アニ「中身もあったの?」

アルミン「うん、全てのビンに液体や粉末が入ってた」

アニ「だとすると…」

アニ「これらのビンは他から持ち込まれたか、
   元々あったビンのラベルが剥がされたか…」

アルミン「うーん、後者は無いんじゃないかな」

アニ「どうして?」

アルミン「【倉庫の物品管理表】だよ。さっき調べたんだけど、
     薬品が持ち出された記録が見当たらないんだ」

アルミン(僕はアニに管理表を見せた)




アニ「…なるほどね」

アニ「これらのビンには中身が無い。もし元からある薬品なら、
   それが誰かに持ち出された事になる」

アニ「だけど、管理表に記述が見られない以上、
   その可能性は考えられない…」

アニ「…あんたが言いたいのはそういう事?」

アルミン「うん…」




【空のビン】



今日はここまで

アルミン「でもさ、もしかしたら…」

アニ「………………」

アルミン「…アニ?」




アルミン(アニは何かを考え込んでいるようだった)

アルミン(顎に指を当て、虚空を睨むアニ…)

アニ「………………」




アルミン(やがてアニは静かに目を上げ…)

アルミン(どこへともなく呼びかけた)




アニ「…ねえ、モノクマ」

モノクマ「はいは~い、何でしょう?」

アニ「ちょっと聞きたい事があるんだけど」

モノクマ「えっ、ボクの好物?」

モノクマ「うーん、鮭も捨てがたいけど、
     やっぱり人肉かなあ」

モノクマ「人間って何気に高カロリーだからさ、
     一度味を知ってしまうともう戻れないよね」

モノクマ「あっ、それとも好みのタイプ?」

モノクマ「特に思い付かないけど、バストは最低Cカップ欲しいね。
     男の胸とか興味無いんで」

モノクマ「それとも好きな音楽? 好きな小説?
     よく妄想するエッチなシチュエーション?」

モノクマ「言ってみなさい!おじさん今日は機嫌がいいから、
     何でも答えちゃうぞ!」

アニ「兵団規則の13条目の項目なんだけど…」




13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




アニ「倉庫の物品を持ち出す場合は、
   持ち出した人の名前、物品名、時間を書かなければならない」

アニ「…これで間違いないよね?」

モノクマ「はい、そうですね」

モノクマ「倉庫の物品を持ち出す場合は、どんな物であっても
     その旨を記入しなければなりません」

アニ「じゃあ、本人に持ち出す意思が無かったら?」

モノクマ「え?」

アニ「本人にそのつもりは無かったのに、
   誤って物品を持ち出した場合はどうなるの?」

アニ「例えば、お菓子の袋にペンが紛れ込んでいるのに気付かず、
   物品管理表に『菓子袋』としか書かなかった場合…」

アニ「『ペン』と記入しなかったからといって…
   その人は罰せられるの?」





13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




モノクマ「倉庫の物品を持ち出す場合は、【どんな物であっても】
     その旨を記入しなければなりません」

モノクマ「ボクから言えるのはそれだけだよ」

アニ「答えになってないんだけど…」

モノクマ「あのねえ、レオンハートさん。
     ここでの共同生活は兵団規則が全てなの」

モノクマ「兵団規則さえちゃんと読めば、
     何一つ不自由しないの」

モノクマ「つまり、そういう質問が出てくるのは、
     キミが兵団規則を読み込めていない証拠なの、OK?」

モノクマ「ていうかさぁ…
     少しは答えるボクの身にもなってよね」

モノクマ「その質問、今回で3回目なんだからさ…」

アルミン「…え?」

モノクマ「という訳で、そんな基本的な質問を
     何回も繰り返さないように…」

モノクマ「オマエラは、これを機会に
     規則の各条文をよく読み直すこと! 以上!」




ポヨヨーン

今日はここまで

アニ「………………」

アルミン「…アニ、どうしてあんな質問を?」

アニ「…いや」

アニ「穴があると思ったんだよね」

アルミン「…?」





アルミン『【倉庫の物品管理表】だよ。さっき調べたんだけど、
     薬品が持ち出された記録が見当たらないんだ』




アニ「確かに、あの物品管理表には毒薬の記載が無かった」

アニ「管理表の無記入は規則違反だから、
   犯人は倉庫から毒薬を持ち出していない…」

アニ「…あんたが考えていたのはそういう事だよね?」

アルミン「う、うん…」

アニ「じゃあ、もし管理表に記入をせずに
   持ち出せる方法があるとしたら?」

アルミン「…え?」




アニ『本人にそのつもりは無かったのに、
   誤って物品を持ち出した場合はどうなるの?』

アニ『例えば、お菓子の袋にペンが紛れ込んでいるのに気付かず、
   物品管理表に『菓子袋』としか書かなかった場合…』

アニ『『ペン』と記入しなかったからといって…
   その人は罰せられるの?』




アニ「もし、さっき私の言ったケースが許されるのであれば…」

アニ「毒薬を別の物品に紛れ込ませて、
   それを誰かに持ち出させる事も可能なんじゃない?」

アルミン「…!」

アニ「あの3つの空きビン… もし、あれらが
   元々倉庫にあった毒薬のビンだったのだとしたら…」

アニ「例えば、他の液体状の物品に移し変えて、
   それを気付かれないように誰かに持ち出させれば…」

アニ「管理表に記入をすることなく、
   倉庫から毒薬を手にすることができるんじゃない?」

アルミン(…アニの言いたい事は理解できた)

アルミン(確かに、その方法が可能であるなら、
     管理表に記入をする必要はないのかもしれない…)

アルミン(それが、アニの言う兵団規則の穴…)




モノクマ『倉庫の物品を持ち出す場合は、【どんな物であっても】
     その旨を記入しなければなりません』




アルミン(だけど、あの言い草…)

アルミン(何か引っかかる…)

アルミン(それに…)




モノクマ『ていうかさぁ…
     少しは答えるボクの身にもなってよね』

モノクマ『その質問、今回で3回目なんだからさ…』




アルミン(あれって、アニの前にも
     同じ質問をした人が2人いたって事か…?)

アルミン(誰が…?)

アルミン(いつ…?)

アルミン(何の為に…?)




【モノクマの証言】



今日はここまで

アニ「それと、アルミン…」

アルミン「?」

アニ「こんな物を見つけたんだけど」




アルミン(次にアニが差し出してきた物…)

アルミン(それは…)




アルミン「…羽根?」

アニ「うん。薬品棚付近の床に落ちてたんだ」

アルミン(受け取ってみると、確かにそれは
     鳥の羽根のようだった)

アルミン(1本の筋から、白い羽毛が無数に伸びている)




アニ「見なよ、ほら」




アルミン(アニが薬品棚の下を指し示す)

アルミン(するとそこには、他にも
     数枚の羽根が落ちているようだった)

アニ「あんたが前に見たときはあった?」

アルミン「いや、無かったと思うけど…」

アニ「そう…」

アニ「だとしたら、これは…
   重要な手がかりかもしれないね」




【鳥の羽根】



アルミン(鳥の羽根…)

アルミン(この倉庫の備品の一部ってことも考えられるけど…)




アルミン「………………」




アルミン(もし、そうじゃないとしたら…)

アルミン(それって…)

バンッ




サシャ「アルミン!アニ!」

サシャ「ここにいたんですか!!」

アルミン「…! サ、サシャ…?」

サシャ「大変なんです!大変なんです!」

アニ「…どこかで見た展開だけど。一体どうしたの」

サシャ「ヶ……コ……コケッ…」

アルミン「…コケ?」








サシャ「コニーが殺されました!!」







今日はここまで

― 施設内 某所 ―




ダッダッダッダッ

ハァ ハァ




アルミン(迂闊だった…!)




14 コロシアイ兵団生活で同一のクロが殺せるのは2人までとします。




アルミン(同一のクロが殺せるのは2人まで…)

アルミン(逆に言えば、もう1人殺される可能性があるって事だ…!)

サシャ「●△※◎◆○▽~!!」




アルミン(サシャは相変わらず、何を言っているのかわからない)

アルミン(だけど、その表情は…
     事態が深刻である事を物語っていた)




アルミン「…ッ!」




アルミン(急げ…!)









コニー「どうしたんだ、お前ら?」








アルミン「…!?」

コニー「なんだ? この世の終わりみたいな顔して…」

アルミン「コ、コニー! どうして!?
     無事だったの!?」

コニー「は? それってどういう…」

ガシッ




サシャ「コニー!!」

コニー「…!」ビクッ

サシャ「大変なんです!大変なんです!」

コニー「な、何だよお前まで…」




サシャ「今すぐ飼育小屋に来てください!!」

今日はここまで

― 飼育小屋 ―




サシャ「コニーーーーーー!!!コニーーーーーー!!!」

サシャ「うわあああああああああああああああああ!!!」




アルミン(飼育小屋に着くなり、サシャは
     『コニー』と呼ばれる“何か”に駆け寄っていった)

アルミン(彼女は“それ”を抱きしめ、
     人目もはばからずに泣き叫ぶ)

アルミン(その光景はあまりにも異様だった)




コニー「なっ…」

コニー「なんだ…こりゃあ…!?」




アルミン(サシャが力いっぱい抱きしめている“それ”は死んでいた)

アルミン(ユミルのように死んでいた)

アルミン(ユミルのように…青黒い肉塊になっていた)

今日はここまで

アニ「どういう事…?」




アルミン(アニが怪訝そうな顔をする)

アルミン(サシャが泣きながら肉塊を抱いている光景も
     気味が悪かったけど…)

アルミン(それよりも…)




アニ「どうして…“あの死体”がこんなにあるの?」

アルミン(死んでいるのは『コニー』だけではなかった)




サシャ『それだけじゃありませんよ!
    豚や羊やニワトリ、さらには乗馬用の馬なんかも…』

サシャ『とにかくいろんな家畜が所狭しと飼われていたんですよ!!』




アルミン(飼育小屋には、区画ごとに
     色々な動物が飼われていたのだが…)

アルミン(よく見ると、そのあちこちに
     “不自然な何か”が点在していた)

アルミン(それらは大きさが違うけど、
     今サシャが抱いている物とそっくりで…)

アルミン(ユミルの死体に…よく似ていた)

今日はここまで

サシャ「コニーーーーーー!!!コニーーーーーー!!!」

コニー「俺ならここに…」

サシャ「『コニー』じゃありません!『コニー』です!!」

コニー「どう違うんだよそれは… つーか」





サシャ『ケニーです』

ユミル『ケニー?』

サシャ『飼育小屋で見つけた『私の』肉牛です!』




コニー「お前が飼ってたのって『ケニー』じゃなかったか?」

サシャ「ケニーは無事ですよ!勝手に殺さないでください!ほら!」

コニー「知らねーよ!ややこしい名前付けるんじゃねーって!」

アルミン「…もしかして、ここにいる動物全部に名前を?」

サシャ「…はい」

サシャ「ナック、ミリウス、トーマス、アルミン…
    みんな死んじゃいました…」




アルミン(なんか僕の名前が聞こえた気がするけど…)




アニ「それらは何の動物なの?」

サシャ「ナックが豚で、ミリウスが羊で…」

サシャ「トーマスがニワトリで、アルミンが馬で…」

サシャ「コニーが…乳牛です…」

サシャ「中でもコニーとケニーは大のお気に入りで…」

サシャ「それなのに… それなのに…!」

アルミン「…ていうか、動物の顔なんて見分けられるの?」

サシャ「見分けられますよ!!」

コニー「ああ、それは問題ないな」




アルミン(問題ないんだ…)




サシャ「…でも、それだけじゃないんです」

アルミン「えっ?」

サシャ「エレンが…どこにもいないんです…」

アルミン「エレンって…あのエレンじゃないよね?」

サシャ「ニワトリのエレンです…
    あの子がどこにもいなくって…」

アニ「…ニワトリ?」

サシャ「きっとあの子も…」

サシャ「どこかで殺され…」ブワッ




【飼育小屋の動物】



今日はここまで

アルミン(ニワトリが1羽だけ行方不明…?)

アルミン(それって…)




アニ「…そういえば、サシャ」

サシャ「…?」

アニ「あんたに聞きたい事があるんだけど」

物品 救命セット

名前 ライナー・ブラウン

持出 DAY 06 11:44
返却 DAY 08 15:21   


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 07 00:16
返却 DAY 07 02:30


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 08 00:12
返却 DAY 08 02:55


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 09 00:21
返却 DAY 09 02:57

アニ「さっき倉庫で物品管理表を見たんだけど…」

アニ「あんた、ずいぶん頻繁に
   【詰め合わせスペシャル】を持ち出してたよね」

サシャ「は、はい… それが何か…?」

アニ「どうして何回も持ち出したの?」

サシャ「えっ…?」

アニ「一度持ち出したら部屋に置いておけばいいじゃない。
   それなのにどうして、いちいち返しに行ったの?」

サシャ「それは…保存がきくからですよ」

アニ「保存…?」




モノクマ『ドングリしか食べないブタの薫製肉とか、
     メタボリックなガチョウの肝臓で作ったソースとか…』

モノクマ『これはそういう珍味の詰め合わせなの!!』




サシャ「【詰め合わせスペシャル】には
    色々な食料品が入ってるんですけど…」

サシャ「その中には、ちょっとした環境変化で
    味が変わっちゃうような…」

サシャ「すごくデリケートな代物もあるんです」





物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 04 00:20
返却 DAY 04 13:48




サシャ「エレンの事件のときに一度返却して、
    今回改めて持ち出してみたら風味が違ってて…」

サシャ「それで、モノクマを問い詰めたんですけど…」




モノクマ『あー、そりゃダメだよ。半日以上も経ってるじゃん』

モノクマ『あのねえ、この【詰め合わせスペシャル】は
     作りたてのような新鮮さと繊細さが売りなの』

モノクマ『こんなに放置したら味が落ちるに決まってるよ。
     ちゃんと保存環境の整った倉庫に戻しておかないと』



アニ「…あの倉庫ってそんなに環境がいいの?」

サシャ「は、はい… 物品のエリアに応じて
    温度や湿度が細かく調整せれてるとか何とか…」

サシャ「とにかく保存環境がいい事がわかったんで、
    作りかけのパーティー料理もあそこにしまうようにしてたんです」




アルミン(…え?)




アルミン「そ、それって本当なの?」

サシャ「はい… 【調理係】は
    ユミルとクリスタの2人だけでしたし…」

サシャ「1日であの量を作るのは無理ですから、
    作り切れなかったときは倉庫に運んで置いておいたんです」





アルミン『こ…これ…どうしたの!?』

ライナー『へへっ、圧巻だろ? 【調理係】である
     ユミルとクリスタが作ってくれたんだぜ?』




アルミン(…確かにあの量は尋常じゃなかった)

アルミン(あの中にはサラダやフルーツポンチもあったけど、
     彩りや瑞々しさはまさに作りたてのそれだった)

アルミン(考えてみればその通りだ…
     あの量を短時間で作るのは不可能だろう)

アルミン(それに加えて、あの新鮮さは…
     どこかに保存されていたとしか考えられない)




【倉庫の保存環境】



今日はここまで

アニ「…なるほどね」

アニ「食料の味落ちを防ぐ為に、
   わざわざ毎回倉庫に戻していたと…」

サシャ「は、はい…」

コニー「つーかよ、それだったら
    倉庫で食えばよかったんじゃねーか?」

サシャ「え?」

コニー「いや、だってよ… 部屋と倉庫を
    行ったり来たりするの大変だろ?」

コニー「だったら、倉庫から持ち出さずに
    その場で食った方がいいと思うんだが…」

コニー「そうすれば、運ぶ手間も省けるし、
    味落ちの心配もせずに楽しめるだろ?」

サシャ「……その発想はありませんでした」




アルミン(なかったんだ…)




サシャ「まさかコニーからそんな指摘を受けるなんて…」

コニー「…どういう意味だよ。
    つーか、なんでどれも夜中に持ち出してるんだ?」

サシャ「だって…食い意地張ってるとか思われたくないですし…」

コニー「まだ言ってんのかよ… お前はもう
    大喰い女のイメージ定着してるんだから諦めろって」

サシャ「ひ、酷い!それがレディーに対する言葉ですか!?」

アニ「………………」

アルミン「…アニ? どうしたの?
     怖い顔して…」

アニ「…ねえ、アルミン。
   あんた達が倉庫を調べたとき…」

アニ「…確かこう言ってたよね?」




エレン『ああ、本当に何でも揃ってたぜ。訓練道具はもちろん、
    生活用品、衣類、工具、お菓子、それに…』

アルミン『薬品類…医療用のものから毒薬まで』

クリスタ『ど、毒薬…!?』

アルミン『種類もいろいろあったよ。即効性のあるものから
     遅延性のあるもの、さらには混ぜ合わせるタイプとかね』

ユミル『…そいつはまた物騒だな』



アルミン「う、うん。確かに言ったけど…」

アニ「薬品の種類、もっと詳しく憶えてない?
   銘柄とか、細かい効能や注意書きとか…」

アルミン「…ごめん、さすがにそこまでは憶えてないよ。
     薬品類だけでもすごい数だったし、他の物品も見てたから…」

アニ「…そう」

タッ タッ タッ




アルミン「えっ… アニ、どこ行くの?」

アニ「ちょっと調べ物」

アルミン「調べ物?」

アニ「すぐ戻るよ。じゃあね」

バタン




コニー「ん? アニのやつ、どこ行ったんだ?」

アルミン「なんか調べ物だって…」

サシャ「調べ物? こんな時にですか?」

アルミン「うん…」





アニ『薬品の種類、もっと詳しく憶えてない?
   銘柄とか、細かい効能や注意書きとか…』




アルミン(薬品の種類か…)

アルミン(僕はよく憶えてないけど…)




アルミン「………………」




アルミン(“あの人”なら、もしかして…)

今日はここまで

― ライブハウス ―




アルミン(現場に戻ると、何人かが僕を出迎えた)




ジャン「よう、戻ったか」

ミカサ「おかえり」

クリスタ「………………」




アルミン(どうやらクリスタも戻ってきていたようだ)

アルミン(相変わらず顔色は優れないみたいだけど…)

ベルトルト「あれ? アニは一緒じゃないの?」

アルミン「うん…」

ライナー「そういえば、サシャとコニーを見なかったか?
     2人とも途中で出て行ったんだが…」

アルミン「えっと、その事なんだけど…」




アルミン(僕はみんなに、それまでの経緯を説明した)




ジャン「なっ…!? 飼育小屋にユミルと似た変死体が…!?」

ミカサ「しかも複数…?」

ライナー「ラベルの無いビンってのも気になるな…
     俺も倉庫内の薬品が使われたと睨んでいたんだが…」

ベルトルト「だけど… 管理表には毒薬の記載が無かったんだよね?
      だとしたら、持ち出すのは不可能じゃないかな…」

アルミン「…ねえ、ミカサ」

ミカサ「?」

アルミン「最初の日にエレンと3人で倉庫を調べたよね?」

アルミン「だったら憶えてないかな?
     あの時に見た薬品の銘柄や詳しい説明とか…」

ミカサ「…悪いけど、そこまでは憶えていない」

ミカサ「そもそも、薬品類を一番見ていたのはアルミンだった。
    あなたが憶えていないのなら、私が憶えているはずがない」




アルミン(確かに…)



ミカサ「だけど、今の話で…
    ちょっと気になる事ができた」

アルミン「…え?」




タッ タッ タッ




アルミン「ミ、ミカサ? どこに行くの?」

ミカサ「私も調べ物に行ってくる」

アルミン「調べ物って…」

ミカサ「すぐに戻れる…と思う。多分」

バタン




アルミン(行っちゃった…)

アルミン(何だよ、みんなして…)




ジャン「…お前は聞かないのか?」

アルミン「…え?」

ジャン「こっちの捜査状況だよ」

アルミン「捜査状況…?」

ジャン「オイオイ…捜査してたのは
    お前らだけじゃないんだぜ?」

ジャン「こっちだってな、この現場を調べて
    色々気付いた事があるんだ」

今日はここまで

アルミン「何か見つかったの?」

ジャン「うーん、見つかったっていうか…」

ジャン「ミカサに当時の状況を説明してるときに
    思い出したんだけどよ…」

アルミン「…?」




アニ『ユミルはあのパイを食べた直後に倒れたんだ。
   今ごろ毒を吐き出そうとしても手遅れさ』




ジャン「アニが言っていた通り…
    ユミルはあのパイを食べてから倒れたんだよな?」

ジャン「だから、ユミルの取ったパイ切れに
    毒が仕込んであったと…」

アルミン「う、うん…」

ジャン「それにしてはよ…時間差がなかったか?」

アルミン「時間差…?」




ジャン『ガハッ…!?』




ドサッ




アルミン『…え?』

ジャン『~~っ! ~~~~っ!!』

クリスタ『ジャ、ジャン?』

ジャン『~~~~ッ!!』

コニー『お、おい! 大丈夫かよ!?』



ジャン「オレのパイには激辛スパイスが入ってて、
    食った直後に悶絶した訳だが…」

ジャン「ユミルが倒れたのは…
    それからしばらく後じゃなかったか?」

アルミン「…え?」




アニ『だってそうでしょ。もし私たちのパイにも毒が入っていたら、
   ユミルと一緒に苦しんでたはずだよ』




ジャン「アニはああ言ってたけどよ…」

ジャン「それだったら、ユミルだって
    【当たり】を引いたオレと同時に苦しんでたはずじゃねえか?」

アルミン「…!!」

ジャン「だってそうだろ?
    あのパイは全員が同時に口にしたんだぜ?」

ジャン「だから、アニの言うような
    “直後”ではない気がするんだよな…」




【時間差】



今日はここまで

アルミン「………………」

アルミン「…そういえば、話は変わるけどさ」

ジャン「ん?」

アルミン「サシャの誕生日パーティーについては
     僕やアニも知らなかったんだけど…」

アルミン「どうして僕たちには声をかけてくれなかったの?
     言ってくれれば手伝ったのに…」

ジャン「お前には一応声かけたぞ?」

アルミン「え?」

ジャン「つっても、部屋のドア越しだけどな」

ジャン「返事が無かったから諦めたんだよ。
    よっぽどグッスリ眠ってたんじゃねーか?」





ジャン『体はクタクタなのに、頭は妙に冴えていて…
    昨日の晩はなかなか寝付けなかった』

ジャン『それでオレは、気晴らしに散歩でもしようと
    外に出てみたら…』

ジャン『…部屋の前にこいつらが集まってたんだ』




ジャン『どうやら寝付けなかったのはオレだけじゃなかったらしい」

ジャン『みんながサシャに言われた事を考えていて…
    色々と迷ってるみたいだった』

ジャン『自然とオレたちは口を開いて、それぞれの気持ちを吐露していって…』

ジャン『…サシャの為にサプライズパーティーを開こうって誰かが言ったのも、
    その時だったっけな』




アルミン「…全然気づかなかった。
     あの晩に声をかけてくれてたんだね」

ジャン「まあな… 羨ましかったぜ。
    あんな状況で寝付けるなんてよ」




アルミン(なんだか凄く嫌味に聞こえる…)



アルミン「じゃあ、アニにも声をかけたの?」

ジャン「いや、アニは…」

アルミン「…?」

ジャン「…まあいいか。本人は死んじまったし、
    今はアニもいないみたいだしな…」

アルミン「何の話…?」

ジャン「いや、実はな…」

ジャン「アニにだけは声をかけなかったんだ」

アルミン「え?」

ジャン「まあ、正確には、
    声をかけようとはしたんだけどな…」

ジャン「…止められたんだ」

アルミン「止められたって…誰に?」

ジャン「ユミルだよ」

アルミン「ユミル…?」

ジャン「あいつがオレたちに言ったんだ。
    『アニだけは絶対に呼ぶな』ってな」

アルミン「えっ… どうして?」

ジャン「ユミル本人曰く、
    『あいつはパーティーに反対してたから無駄だ』とよ…」

ジャン「それで結局… あいつの強い反対があったから、
    やむなく呼ばない事になったんだ」

ジャン「だけどオレは…
    本当は別の理由があったんじゃないかと思ってる」

アルミン「別の理由…?」

ジャン「ほら、ユミルはアニの事を敵対視してただろ?」




ユミル『前から気に入らなかったんだ…
    一人だけ澄ました顔しやがって』

アニ『…私の事?』

ユミル『そうだよ。この際だから言ってやろうか』




ジャン「だからまあ…呼び辛かったんじゃねえか?」

ジャン「仲直り目的のパーティーだって言っても、
    色々と割り切れなかったんだろ」

ジャン「あいつって結構気難しいところあったしな…」




【ジャンの証言】











「キーン、コーン… カーン、コーン」








モノクマ『えー、ボクも待ち疲れたんで…
     思い切って始めちゃいますか?』

モノクマ『お待ちかねの兵団裁判をっ!!』















モノクマ『ではでは、いつもの場所に集合お願いしまーす!』

モノクマ『施設のフロア末端にある、
     赤い扉にお入りください』

モノクマ『うぷぷ、じゃあ後でね~!!』







今日はここまで

― 赤い扉 ―




アルミン(前回と同じように、
     僕らは赤い扉を開けて中に入った)




ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ジャン「………………」

クリスタ「………………」




アルミン(みんなかなり疲れているようだった)

アルミン(瞳からは半ば生気が失われ、
     心なしか肌も荒れているように見える)

アルミン(それはきっと…僕も同じだったろう)

アルミン(無理もない…)








ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』








アルミン(あれからまだ…5日しか経ってないんだ)

アルミン(5日…たったの5日だ…)

アルミン(それなのに…)









ユミル『グッ……アァ……』








アルミン(僕らの仲間が…また1人死んだ…)

アルミン(僕らの目の前で…肉塊になって…)

サシャ「…どうしてこんな事になっちゃったんでしょうか」

ジャン「………………」

サシャ「…一体何を間違えたんでしょうか」

サシャ「私はこのままじゃダメだと思って…
    パーティーとか言い出しましたけど…」

サシャ「…やっぱり止めるべきだったんでしょうか」

ベルトルト「………………」

サシャ「私がパーティーなんて言ったから…」

サシャ「私のせいでユミルは…」

ライナー「…今はそんな事言っても仕方ないだろ」

サシャ「………………」

ライナー「俺たちの中に殺人犯がいることに変わりはないんだ」

ライナー「そいつは今も… 俺たちを騙し続けてる」

クリスタ「………………」

ライナー「…必ず見つけ出す」

ライナー「こんなところで死ぬ訳にはいかないんだ」

ライナー「俺は…」

コニー「………………」ガタガタガタ

アルミン「…どうしたの、コニー? 寒いの?」

コニー「…なあ、アルミン」

コニー「俺、わかっちまったぞ…」

アルミン「えっ…?」

コニー「これって…呪いなんじゃねえのか?」

コニー「あいつの…ミーナの呪いなんじゃねえのか…?」

アルミン「…コニー?」

コニー「消えねーんだよ…あいつの笑い声が…」

コニー「心の中でずっと…」




『アッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』




コニー「あいつの本性は俺たちの本性だ…」

コニー「俺は怖かったんだ…ずっと目を逸らしてた…」

コニー「結局無駄だったんだよ…
    みんなで乗り越えようと…前に進もうとしても…」

コニー「あいつは俺たちをあざ笑って…!」

モノクマ「エクストリーーーーーーーム!」

モノクマ「いやあ、みんないい子いい子。
     ちゃんとお集まりいただきましたね」

ジャン「………………」

サシャ「………………」

モノクマ「…ってあれ? 何これ?
     絶望的に暗くね?」

モノクマ「楽しい裁判が始まる割に、お通夜的な雰囲気じゃね?」

モノクマ「つって、お通夜なんか出た事ねーんだけどなぁ!
     イエス!!」

ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

モノクマ「…ん? あれあれ?
     全員揃ってると思ったけど…」

モノクマ「よく見るといねーじゃん!
     コワモテマッチョの女子2人が見えないじゃーん?」

モノクマ「んもう!遅刻とは感心しませんなぁ!
     こうなったら実力行使で…」

アニ「…誰がコワモテマッチョだって?」

モノクマ「!」

ミカサ「…おまたせ。遅くなった」

モノクマ「本当だよもう!マイペースすぎ!
     普段のボクなら堪忍袋が破裂しとりましたぞ!」

クリスタ「………………」

モノクマ「うぷぷ…だけどまあ、今回は許してあげる」

モノクマ「だって楽しみなんですもん…この裁判の行方」

アルミン「…どういう意味?」

モノクマ「それはオマエラが突き止めてくださいな。
     この先の裁判場でね」

アニ「………………」

モノクマ「それでは、昇降機にお乗りくださーい!!」

今日はここまで

アルミン(モノクマに促され、
     僕らは金網の扉へと足を向けた)




アニ「…行こう、アルミン」

アニ「おそらく今回は…
   かなり気を引き締める必要があると思うよ」




アルミン(アニの言葉を受けながら歩を進める)

アルミン(1歩1歩進むごとに、
     心臓の鼓動も徐々にその速度をあげていく)

アルミン(すでに全員が乗り込んだ昇降機…
     最後の僕が乗り込んだところで…)

アルミン(扉は閉じ…
     昇降機は動き始めた)

ガコン




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




ウィィィィィィィィン




アルミン(僕たちが入った小部屋は、そのままゆっくりと上昇していった)

アルミン(ゴウン、ゴウンと耳障りな音を響かせながら…)

アルミン(言葉を発する者は誰もいない)

アルミン(みんなが思い思いの表情で、運命の時を待っていた)




ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ジャン「………………」

コニー「………………」

サシャ「………………」

クリスタ「………………」




アルミン(疲れ切った様子を見せる人)

アルミン(動揺の色を隠しきれない人)

アルミン(そして…)




ミカサ「………………」




アルミン(しっかりと前を見据えた人)

アルミン(ミカサ… 一体どうしたんだろう)




ミカサ『…………そう』

ミカサ『エレンは……もう……』




アルミン(あの時とは明らかに様子が違う)

アルミン(前回の裁判のように
     無理をしている感じでもない)

アルミン(色彩を欠いていた瞳には、
     しっかりと光が戻っている)

アルミン(…吹っ切れたのか?)

アルミン(エレンの死を?)

アルミン(あのミカサが? どうやって?)




アルミン「………………」




アルミン(それとも何か…)

アルミン(別の理由が…?)

ウィィィィィィィィン




アルミン(様々な思惑が渦巻く空間)

アルミン(僕らの不安な気持ちをよそに、
     小部屋はどんどん上へと昇っていった…)




ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ジャン「………………」

コニー「………………」

サシャ「………………」

クリスタ「………………」

アニ「………………」

ミカサ「………………」




アルミン(そして…)

― 裁判場 ―




モノクマ「はーい! いらっしゃーい!」

モノクマ「ねぇどう? 今回は2回目の裁判って事で、
     ちょっと会場をリニューアルしてみたの」

モノクマ「ねぇねぇどうどう?
     ボクの天才的なセンスに失禁寸前?」

ライナー「くだらん前置きはいい。さっさと始めろ」

モノクマ「はいはい、そんなに急かさなくても
     始めますよったら…」

モノクマ「ていうか、早く始めたいなら
     とっとと自分の名前が書かれた席につきやがれー!」

アルミン(僕たちは、モノクマに命じられた通りに、
     指定された“自分の席”へと向かった)

アルミン(これから僕たちは…
     ユミルを殺した犯人を見つけ出さなければならない)








ユミル『どうして私たちとあいつらで…“失った記憶に差がある”んだ?』




ユミル『この間は… ずいぶん酷い事言っちまった』




ユミル『ま、どうせ開くんなら口実があった方がいいと思ってよ』

ユミル『今日はお前の誕生日会ってことにしたんだ』








アルミン(ユミル…)

アルミン(少し口が悪くて、神経質なところもあって…)

アルミン(だけど、冷静に物事を見ることができて…)

アルミン(すごく仲間思いな人だった)

アルミン(そんな…ユミルが…)

アルミン(…殺された)

アルミン(それをやった人間が…この中にいる?)

アルミン(信じられない…
     そんなの信じられる訳がない…)

アルミン(だけど…もし本当だとしたら…)

アルミン(何がなんでも突き止めなくちゃならない…)

アルミン(だって…それしか方法はないんだ)

アルミン(ここで“犯人”を犠牲にする以外に、
     僕たちに生き延びる方法はないんだ…)









アルミン(そして、再び幕は開く…)




アルミン(命がけの裁判…)

アルミン(命がけの騙し合い…)

アルミン(命がけの裏切り…)

アルミン(命がけの謎解き…命がけの言い訳…命がけの信頼…)




アルミン(命がけの…兵団裁判……)















兵団裁判 開廷!







今日はここまで

モノクマ「まずは、兵団裁判の簡単な説明から始めましょう!」

モノクマ「兵団裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます」

モノクマ「正しいクロを指摘出来れば、クロだけがおしおき。
     だけど…もし間違った人物をクロとした場合は…」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが
     晴れて卒業となりまーす!」

クリスタ「本当に…この中に犯人がいるの?」

モノクマ「当然です」

ジャン「事故とかじゃ…ねえよな?」

モノクマ「というか、事故だって突き詰めれば
     【誰かの行動に起因した死】になるよね?」

モノクマ「それはそれでさ…
     れっきとした【殺人】だよね?」

ジャン「な、何だよそれ…」

モノクマ「普段はうやむやになって終わっちゃうけど、
     この兵団生活では白黒はっきりさせて貰います…」

モノクマ「この施設ではね、殺人以外の死なんて
     病死くらいしか存在しないんだよ」

モノクマ「ま、病死なんてほとんど心配しなくていいけどね。
     面倒見のいいボクがいるしね」

モノクマ「では、くだらない前置きはこれくらいにして、
     とっとと始めちゃってくださいな!」

サシャ「え、えーっと、それじゃあ…
    何から話し合えばいいんでしょうか?」

アニ「そうだね…
   まずは、一番気になる部分から議論しようか」

ベルトルト「一番気になる部分…?」

アニ「ユミルの死因だよ」

アニ「だって、気にならない?
   どうしてユミルがあんな最期を遂げたのか…」

ライナー「ユミルの死因って…
     そんなのはわかり切ってるだろ」








ユミル『うぐっ…!?』




ドサッ








ライナー「ユミルはあのパーティーで、
     肉のパイ包みを食べた直後に倒れたんだ」

ライナー「おそらく、パイ切れに毒が仕込んであったんだろう。
     それに当たってユミルは…」

コニー「…ちげーよ」

ライナー「?」

コニー「あれは毒殺なんかじゃない…」

コニー「あれは…」








コニー「ミーナの呪いだ…!」















―  議 論 開 始  ―




▶【モノクマファイル 2】
【肥大化した死体】
【肉のパイ包み】







コニー「あれは毒殺なんかじゃない…」

コニー「あれは…【ミーナの呪い】なんだ…」

ジャン「…は?」

ミカサ「…何を言ってるの、コニー」

ミカサ「ユミルは間違いなく【毒で死んだ】はず」

コニー「毒で体があんな風になる訳ねーだろ!」

コニー「きっとこれは呪いなんだ…」

コニー「俺たち全員に貶められたミーナの呪いなんだよ…!!」




アルミン(…呪いで人間が死ぬはずない)

アルミン(それは、あの根拠をぶつければ
     わかってくれるはずだ)

コニー「あれは毒殺なんかじゃない…」

コニー「あれは…【ミーナの呪い】








それは違うよ!







今日はここまで

アルミン「いや、ユミルは確かに毒で死んだはずだよ」

コニー「な、何言ってんだよ…
    毒で体があんなに変形するかよ!?」

アルミン「コニーがそう言う気持ちもわかるけど…
     でもこれには、ちゃんとした根拠があるんだ」

コニー「こ、根拠…?」

アルミン「モノクマファイルだよ」

■ モノクマファイル 2 ■


被害者はユミル。
死亡時刻は午前12時頃。

死体発見現場はライブハウス。
そこで行われたパーティーの最中に死亡した。

死因は服毒による多臓器不全。
毒の副作用による肉体の膨張や変色が見られる。

その他、身体にはいかなる外傷も見られない。

アルミン「あのファイルには死因が
     【死因は服毒による多臓器不全】と明記されている…」

アルミン「だから、ユミルは間違いなく
     毒で死んでるはずなんだよ」

コニー「だ…だって、それはモノクマが書いたものだろ!?
    本当かどうか怪しいじゃねーか!」

ミカサ「…少なくとも、前回のエレンのファイルに
    ウソは書かれていなかった」

ミカサ「だから今回も、それほど疑う必要はないと思う」

アニ「ミカサの言う通りだよ。前も言ったけど、
   この段階で疑ってたら議論が進まないしね」

ジャン「…ま、『呪いで死んだ』なんてよりは
    よっぽど信じられると思うがな」

コニー「…っ」

ジャン「つーか、マジでいい加減にしろよな。
    突発的にヒステリックになりやがって」

コニー「な…なんだと…?」

ジャン「これ以上オレたちの足を引っ張るなって言ってんだ。
    おかげで貴重な議論の時間が減っちまった」

コニー「て…てめっ…!」

ライナー「やめろ。今は仲間割れをしてる場合じゃないだろ」

コニー「…っ」

ジャン「………………」

ベルトルト「…じゃあ、話を戻そうか」

サシャ「えっと… まずは、
    ユミルの死因は100%毒だったって事ですよね?」

アニ「そうだね。ついでに言うと、
   【身体にはいかなる外傷も見られない】って記述があるから…」

アニ「例えば、毒を仕込ませた吹き矢なんかで
   殺された可能性も無いね」

ベルトルト「という事は… やっぱりユミルは、
      毒入りの料理を食べて死んだのかな?」

ライナー「そう考えるのが自然だろうな。
     他に毒を摂取する方法も無さそうだし…」

ジャン「…へえ。なら、犯人は自ずと絞れてくるじゃねえか」

サシャ「えっ?」

ジャン「毒は料理に仕込まれてたんだろ?
    という事はつまり…」

ジャン「一番怪しいのは…【調理係】のクリスタだろうが」

クリスタ「…!!」









―  議 論 開 始  ―




【倉庫の物品管理表】
【飼育小屋の動物】
▶【倉庫の保存環境】







ジャン「【調理係】はユミルとクリスタの2人だけ…」

ジャン「つまりクリスタなら…」

ジャン「【いつでも料理に毒を仕込ませることができた】はずだ」

クリスタ「ちょ…ちょっと待ってよ!」

クリスタ「私はそんな事やってない!」

ジャン「口だけなら何とでも言えるさ」

ジャン「だがな、ユミルが死んだ今となっては…」

ジャン「【毒を仕込むチャンスがあったのはお前だけ】なんだよ」

クリスタ「ち、違う!私はユミルを殺してない!」




アルミン(確かに【調理係】は、今やクリスタ1人だけど…)

アルミン(だからって、クリスタだけが疑われていいのだろうか)

アルミン(だって、あのパーティーの料理は…)

ジャン「【調理係】はユミルとクリスタの2人だけ…」

ジャン「つまりクリスタなら…」

ジャン「【いつでも料理に毒を仕込ませることができた】はずだ」

クリスタ「ちょ…ちょっと待ってよ!」

クリスタ「私はそんな事やってない!」

ジャン「口だけなら何とでも言えるさ」

ジャン「だがな、ユミルが死んだ今となっては…」

ジャン「【毒を仕込むチャンスがあったのはお前だけ】








それは違うよ!







今日はここまで

アルミン「毒を仕込むチャンスがあったのはクリスタだけ…
     本当にそうなのかな?」

ジャン「当たり前だろ。料理に毒が入っていたのなら、
    疑われるべきは【調理係】だろうが」

サシャ「で、でも… いくらなんでも、あからさま過ぎません?」

ジャン「あからさまもクソもねえよ。
    だって、料理はずっと調理場で作ってたんだろ?」

ジャン「日中は【調理係】がずっと調理場にいるし、
    夜時間になると食堂がロックされて入れなくなる…」

ジャン「つまり、料理に近付いて細工ができたのは
    【調理係】以外ありえないんだよ」

アルミン「ジャン… 実は、あのパーティー料理は
     ずっと調理場にあった訳じゃないんだ」

ジャン「なに…?」

アルミン「調理してる時以外は倉庫に置いてあったんだよ。
     作りかけのものを日持ちさせる為に…」

アルミン「…そうだったよね、サシャ」

サシャ「は、はい…」





アニ『…あの倉庫ってそんなに環境がいいの?』

サシャ『は、はい… 物品のエリアに応じて
    温度や湿度が細かく調整せれてるとか何とか…』

サシャ『とにかく保存環境がいい事がわかったんで、
    作りかけのパーティー料理もあそこにしまうようにしてたんです』




アルミン『そ、それって本当なの?』

サシャ『はい… 【調理係】は
    ユミルとクリスタの2人だけでしたし…』

サシャ『1日であの量を作るのは無理ですから、
    作り切れなかったときは倉庫に運んで置いておいたんです』




ジャン「何だそれ… 初めて聞いたぞ」

アルミン「無理もないよ。途中までジャンは寝込んでたし、
     その後もほとんどライブハウスで作業してたから…」

アルミン「実際、僕もサシャに聞くまで知らなかったんだ」

ベルトルト「…えっと、つまりこういう事?」

ベルトルト「食堂とは違って、倉庫は夜時間になっても
      閉鎖されないから…」

ベルトルト「夜中にこっそり忍び込めば、
      誰でも料理に毒を盛れたと…」

アルミン「うん。だから、【調理係】であるクリスタ以外にも
     犯行は可能だったんだよ」

ライナー「なるほどな。確かにその通りだ」

クリスタ「………………」

ライナー「つまり、誰でも犯行が可能だったのなら…」

ライナー「パーティーやその準備に参加していない人間にも、
     ユミルが殺せたって事になるよな?」




ミカサ「………………」

今日はここまで

ライナー「…なあ、今までどこにいたんだ?」

ミカサ「………………」

ライナー「この数日間… 食事や入浴の時でさえ、
     誰もお前の姿を見ていない」

ライナー「そしてユミルが死んだ途端に顔を出し、
     何食わぬ顔で捜査に加わった」

ライナー「以前の落ち込みっぷりがウソのように…だ」

ミカサ「………………」

ライナー「お前… 一体どこで何をしてた?」

ミカサ「…私を疑ってるの?」

ライナー「端的に言えばそうだ」

ライナー「お前が立ち直ったのは、
     ユミルを殺してスッキリしたからだろう?」

ミカサ「私にはユミルを殺す動機が無い。
    エレンは死んだし、ミーナへの仇討ちももうできない」

ライナー「動機なんて無くても人は殺せる。
     要は自暴自棄になったんだ…違うか?」

アルミン「ライナー!!」

ライナー「………………」

ミカサ「………………」




アルミン(何だよこれ…)

アルミン(ジャンといいライナーといい…)

アルミン(こんなのただの罵り合いじゃないか…)

今日はここまで









―  議 論 開 始  ―




▶【倉庫の物品管理表】
【飼育小屋の動物】
【倉庫の保存環境】







ミカサ「…そもそも、今の主張だって完全とは言えない」

ライナー「何だと?」

ミカサ「あなたは【倉庫に置いていた料理に毒が仕込まれた】と
    言い張るけど…」

ミカサ「本当にそう言えるの?」

ベルトルト「…どういう意味?」

ミカサ「朝昼晩の食事を摂るとき、みんなは調理場に
    足を踏み入れていたはず」

ミカサ「そしてそこには【作りかけの料理もあった】」

ミカサ「つまり、食事をトレイに盛りつける振りをして
    【調理係】の隙を突けば…」

ミカサ「【調理場で毒を盛ることも可能】になる」

クリスタ「…確かに、私たちだってずっと料理を見張ってた訳じゃないから」

クリスタ「その線もあり得るかもね…」




アルミン(…いや、それはあり得ないはずだ)

アルミン(もし調理場で毒が盛られていたのなら、
     説明がつかない事がある)

ミカサ「…そもそも、今の主張だって完全とは言えない」

ライナー「何だと?」

ミカサ「あなたは【倉庫に置いていた料理に毒が仕込まれた】と
    言い張るけど…」

ミカサ「本当にそう言えるの?」

ベルトルト「…どういう意味?」

ミカサ「朝昼晩の食事を摂るとき、みんなは調理場に
    足を踏み入れていたはず」

ミカサ「そしてそこには【作りかけの料理もあった】」

ミカサ「つまり、食事をトレイに盛りつける振りをして
    【調理係】の隙を突けば…」

ミカサ「【調理場で毒を盛ることも可能】








それは違うよ!







今日はここまで

アルミン「いくら隙があっても、
     調理場で毒が盛られたとは考えられないよ」

ミカサ「なぜ?」

アルミン「そもそも、調理場で毒を仕込むためには、
     倉庫から毒薬を持ち出さなきゃいけない訳だけど…」

アルミン「…ちょっとこれを見てくれるかな」

物品 救命セット

名前 ライナー・ブラウン

持出 DAY 06 11:44
返却 DAY 08 15:21   


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 07 00:16
返却 DAY 07 02:30


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 08 00:12
返却 DAY 08 02:55


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 09 00:21
返却 DAY 09 02:57

アルミン「倉庫から物品を持ち出す場合は、
     物品管理表に物品名とかを記入する必要があったよね?」




13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




アルミン「見ればわかると思うけど…」

アルミン「この管理表には、どこにも毒薬の記載が見られないんだ」





ユミル『ちなみに聞いておくが…
    この表に虚偽の記載をした場合はどうなるんだ?』

モノクマ『そんなの決まってんじゃん!
     規則違反でおしおきだよ!』

モノクマ『ウソを書いた場合も、何も書かなかった場合も…』

モノクマ『初日のお芋さんと同じ運命を辿る事になりまーす!』




アルミン「この表でウソを吐くことは許されていないから…」

アルミン「毒を持ち出したのなら、犯人は必ず、
     そういった旨を記していたはずなんだ」

アルミン「その記述が見当たらないことから、【倉庫から毒薬は持ち出されていない】








それはどうかな







アニ「あんたの意見はもっともだと思う」

アニ「でもだからって、毒薬が持ち出されなかったと言い切れると思う?」

アルミン「えっ…」

アニ「アルミンの言うとおり、倉庫から何かを持ち出す際は
   管理表への記入が義務付けられているけど…」

アニ「もし、記入をせずに済む裏ワザがあったとしたら?」

ライナー「裏ワザだと…?」









―  反 論 シ ョ ー ダ ウ ン 開 始  ―




▶【モノクマの証言】
【ジャンの証言】







今日はここまで

アニ「物品の持ち出しには/
             /裏技がある」

アニ「もっと正確に言えば/
             /管理表に関する抜け穴…」

アニ「例えば、お菓子の袋に/
              /ペンが紛れ込んでいるのに気付かず…」

アニ「物品管理表に『菓子袋』としか/
                  /記入しなかった場合…」

アニ「本当にその人は/
           /罰せられると思う?」

アニ「もし罰せられる/
           /としたら…」

アニ「それってあまりにも/
             /理不尽な事じゃない?」









―  発 展  ―




アルミン「アニの主張は理解できるよ」

アルミン「でも、ルールを破っている事に変わりはないよね?」







アニ「モノクマならその位の/
              /抜け道は用意するさ」

アニ「あんたには一度/
           /言ったと思うけど…」

アニ「毒薬を別の物品に/
            /紛れ込ませて…」

アニ「それを気付かれないように/
                /持ち出させれば…」

アニ「【管理表に記入をすることなく毒薬を持ち出せる】んじゃない?」




アルミン(…アニが倉庫で言ってた推理だ)

アルミン(確かに、その方法が可能であるなら、
     管理表に記入をする必要はないのかもしれない)

アルミン(だけど、あの時のあいつの言い草…)

アルミン(色々と引っかかるんだよな…)

アニ「モノクマならその位の/
              /抜け道は用意するさ」

アニ「あんたには一度/
           /言ったと思うけど…」

アニ「毒薬を別の物品に/
            /紛れ込ませて…」

アニ「それを気付かれないように/
                /持ち出させれば…」

アニ「【管理表に記入をすることなく/
                  /毒薬を持ち出せる】








その言葉、斬らせてもらう!







今日はここまで

アルミン「いや、やっぱり倉庫から毒薬が持ち出されたとは思えないよ」

アニ「へえ… そこまで言うなら、根拠は?」

アルミン「モノクマの言葉だよ」

アルミン「憶えてるかな?
     倉庫であいつが言ってた内容…」





モノクマ『倉庫の物品を持ち出す場合は、【どんな物であっても】
     その旨を記入しなければなりません』




アルミン「あの時のモノクマは、やけに
     【どんな物であっても】っていう部分を強調してたよね?」

アルミン「結局、これは捉え方の違いなんだろうけど…」

アルミン「【どんな物であっても】っていうのは
     誰かに紛れ込ませられた物品も例外じゃないと思うんだ」

アルミン「つまり、今アニが言った方法でも
     許されないって事なんじゃないかな?」

コニー「…えーっと、すまん。
    さっきからほとんど話についていけてねーんだけど…」

サシャ「同じく!噛み砕いてゼリー状にしてお願いします!」

アルミン「要するに、アニは『物品表に記入することなく
     物品を持ち出せる方法がある』って事を主張していて…」

アルミン「僕は逆に、『そんな方法は無い』って言ってるんだ」

コニー「んー… よくわかんねーんだけど、
    物品表への記入の有無がそんなに大事なのか?」

ジャン「当たり前だろ。もし管理表に
    『毒薬を持ち出しました』なんて書かれてあったらどうなる?」

ジャン「誰かがその記載に気付いて、全員大騒ぎ…
    下手すりゃ殺害計画そのものが台無しになっちまう」

ジャン「そもそも、管理表には名前を書かなきゃいけねーんだ。
    素直に書いてたら一発で犯人だってバレちまうだろーが」

ライナー「…ほう。まるで犯人のような事を言うんだな」

ジャン「…!!」

ライナー「…まあいい。
     で、その辺はどうなんだ、モノクマ?」

モノクマ「では、この際にはっきりさせておきましょう」





13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




モノクマ「兵団規則で述べられている通り…」

モノクマ「倉庫の物品を持ち出す場合は、【どんな物であっても】
     その旨を記入しなければなりません」

モノクマ「すなわち、誰かに物品を紛れ込ませられたとしても、
     記載の無い物品を持ち出した時点で…」

モノクマ「その人はアウトー!
     初日のお芋さんと同じ運命を辿る事になりまーす!」

今日はここまで

コニー「な、何だそりゃあ… そんな事でも殺されちまうのか!?」

モノクマ「当たり前でしょ。そもそも、
     この管理表のルールは物品紛失防止の為にあるんだから…」

モノクマ「そんな事まで許してたら意味無いでしょーが!」

サシャ「て、ていうか、そういう大事な話は早めにしてくださいよ!」

サシャ「さっきアニも言ってましたけど…
    自分に非が無いのに殺されるなんて、あんまりですって!」

モノクマ「まあまあ、落ち着きなさいな。そう言うと思って…」

モノクマ「実際にそういう事態が起こりそうになったら、
     ちゃんと警告するようにしてるからさ!」

アニ「警告…ね」

アニ「だったら、あの時のセリフはそういう意味だったの?」

モノクマ「へ?」




モノクマ『ていうかさぁ…
     少しは答えるボクの身にもなってよね』

モノクマ『その質問、今回で3回目なんだからさ…』




アニ「あれはつまり、私が聞く前に2度
   “そういう事態”が起こりそうになって…」

アニ「その都度、あんたがその人たちに対応してたって事?」

モノクマ「…さあ? 何の事かわからないね。
     ま、キミがそう思いたければそれでいいんじゃない?」

アニ「……………」




アルミン(…アニの言う通りだ)

アルミン(あれは過去に2回
     “そういう事態”があったという事…)
     
アルミン(すなわち、『誰かがアニの言った方法で物品を持ち出そうとした』
     という事を意味している)

アルミン(…きっとこれは、かなり重要な手がかりになるはず)

アルミン(それだけじゃない…)

アルミン(その話を聞いてなお、誰も名乗り出ないのは…)

アルミン(…意図的に隠してるって事だ)




コニー「え、えっーと、何だかよくわかんねーけど…」

コニー「話をまとめると、やっぱりアニの言ってた方法は
    不可能だった…って事でいいのか?」

ベルトルト「そういう事になるね。管理表に記入をせずに
      物品を外には持ち出せないと…」

クリスタ「言い換えれば、管理表に記入のない物品以外は
     持ち出されていないって事だよね?」

ジャン「そこなんだよな… 毒薬が持ち出されていないのなら、
    一体犯人はどうやって…」

アニ「…1つだけあるじゃない」

ジャン「…? 何がだよ」

アニ「私の言っていた裏ワザが否定された今…」

アニ「残された可能性は、1つに限られてくると思うけど」

クリスタ「えっ…?」

アニ「アルミン、あんたならわかるんじゃない?」

アルミン(一体犯人はどうやって毒を盛ったのか)

アルミン(アニの言う残された可能性…)

アルミン(それは…)




【調理場で毒を盛った】
▶【倉庫で毒を盛った】
【そもそも毒は盛られなかった】








これだ!







今日はここまで

アルミン「やっぱり犯人は… 倉庫で毒を盛ったんだ」

サシャ「倉庫で…ですか?」

ライナー「それしか考えられんだろう。
     毒薬の持ち出しが完全否定されたんだからな」

クリスタ「そっか… さっきの議論でもあったように、
     元々倉庫には料理が置いてあったから…」

ベルトルト「加えて、倉庫への出入りは深夜でも自由だったからね。
      毒を盛るには絶好の条件だったと思うよ」

コニー「んー… でもよ、本当にそれでいいのか?」

コニー「倉庫の毒薬が使われた事に変わりはねーんだろ?
    だったら、犯人はどのみち管理表に書かなきゃいけないと思うんだが…」




13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




アルミン「いや、禁止されていたのはあくまで
     記入をせずに『持ち出す』ことだったから…」

アルミン「『その場で使う』場合は
     問題無いって事なんじゃないかな」

モノクマ「にょほほ~! ご明察~!」

ジャン「…物品紛失防止とか言って、結局ガバガバなルールじゃねえか」

アルミン「それに、ちゃんとした根拠もあるんだ」

コニー「根拠…? 何のだ?」

アルミン「犯人が倉庫で毒薬を使ったと思われる根拠だよ。
     現場にしっかり残されていたんだ」

ミカサ「…聞かせて欲しい」




アルミン(犯人が倉庫で毒薬を使ったと思われる根拠…)

アルミン(それは…)




▶【空のビン】
【鳥の羽根】
【飼育小屋の動物】








これだ!







アルミン「空のビンだよ」

アルミン「みんなには1度話したと思うけど…
     倉庫の薬品棚に、ラベルの貼られていない空ビンが3つあったんだ」

サシャ「…? どうしてそれが根拠になるんですか?」

アルミン「結論から言うと、あれらは毒薬の容器だったんだよ」

アルミン「ここでの生活の最初の日に、
     僕とミカサとエレンで倉庫をチェックしたんだけど…」

アルミン「あの時には、ラベルの貼られていないビンなんて無かったし、
     全ての薬品のビンに中身があったんだ」

アルミン「おそらく犯人は… 倉庫内の料理に毒を混ぜた後、
     空になったビンを薬品棚に戻したんだと思う」

アルミン「ビンだって物品の一部だからね。持ち出して処分しようとすれば、
     管理表に記入をしなければいけなくなる」

アルミン「だから犯人は、あえて使い終わったビンを残しておいたんだ」

アルミン「わざわざラベルを剥がしたのも、
     それが毒薬のビンであった事を隠したかったからじゃないかな」

ミカサ「…なるほど。アルミンの考えは理解できた」

ミカサ「理解できたけど… 少々納得できない部分がある」

アルミン「えっ…」

ミカサ「第一に、倉庫内で料理に毒を混入させたとして…」

ミカサ「その料理を持ち出した人は…
    罰を受けてしまうのではないの?」

クリスタ「…? どうして?
     さっきの話では、その場で使うのはOKだって…」

ミカサ「私には疑問。それはさっき否定されたアニの方法と何が違うの?」

ミカサ「さっきアニは、『目的の物品を他の物品に紛れさせることで
    記入をせずに持ち出せる』と主張していた」

ミカサ「そして、今のあなたの主張は要するに、
    『毒薬を料理に混入させることで料理ごと毒薬を持ち出させる』という事」

ミカサ「…私には、どちらも同じ事のように思える」

アルミン「…!」

ベルトルト「た、確かに… 見方を変えればそういう事だよね」

ミカサ「それだけじゃない。空きビンに毒が入っていたのなら、
    どうしてそれが3つもあったの?」

ミカサ「犯人が3つも毒薬を使ったという事? 何の為に?」

ミカサ「そもそも、以前調べたときに
    全てのビンの中身があったという記憶は確かなの?」

ミカサ「空きビンは元々倉庫にあって、
    それを見逃していたという可能性は無いの?」

今日はここまで

アルミン「それは…」

ミカサ「………………」

ベルトルト「と、というか、ちょっと待って… あの料理なら、
      一部の人間で手分けしてライブハウスに運んだよね…?」

ライナー「それどころか… 準備期間中は、
     毎日のように調理場に運び入れていたはずだ…」

ライナー「つまり… 俺たちは結果的に、
     毒薬を外に持ち出してたって事になるのか…?」

コニー「あれ? でもそれって、今の話だとルール違反…」

モノクマ「………………」

コニー「って、はああああああ!?
    まさか俺たち殺されちまうのか!?」

クリスタ「…!!」

サシャ「そ、そんなああああ!? 
    私何回か調理場まで持っていきましたよ!?」

ジャン「オレは寝込んでる時以外はずっと
    会場設営してたからな… 一応セーフって事か」

サシャ「何涼しい顔してるんですかああああ!
    この裏切りもんがああああ!!」

アルミン「…少なくとも、パーティーの準備期間中に
     毒が入れられたって事は無いんじゃないかな?」

アルミン「調理中に味見とかするだろうし…
     そうしたらその場で【調理係】が死んじゃうよ」

アルミン「だから、毒が入れられたのはパーティーの直前…
     ライブハウスに料理が運び込まれるすぐ前だと思うけど…」

サシャ「あ、なるほど。じゃあ私は関係ありませんね」

コニー「お前さっきのセリフはどこ行ったんだよ!?」

アニ「落ち着きなよ」

コニー「落ち着いていられっかぁ!
    このままじゃ俺たち殺されちまうんだぞ!」

アニ「だから落ち着きなって。
   そんな事で殺されるなんてあり得ないから」

コニー「へ…?」

アニ「第一に… さっきの説明によると、“そういう事態”が
   起こりそうになったらモノクマから警告が入るって話だったよね?」

アニ「だけどこの中に、そういう警告を受けた人はいた?」

ベルトルト「いや…」

クリスタ「ううん…」

ライナー「…そういえば、何も言われてないな」

アニ「警告されなかったという事は、
   料理の運び出しは“そういう事態”ではなかったという事…」

アニ「要するに、ルールには違反していなかったって事だよ」

ミカサ「…わからない。どうしてその行為が
    ルールに違反していないと言えるの?」

ミカサ「さっきと同じ話になる…けれど、
    あなたが主張し否定された方法と変わらないように思える」

アニ「あんたの言いたい事はわかるよ」

アニ「『毒薬を持ち出させる為に料理に紛れ込ませる』
   という見方をすれば、確かにルール違反にはなるだろうね」

アニ「だけど… その毒薬がもし、
   元々倉庫にあったものではなかったとしたら?」

ミカサ「…? 倉庫の毒薬ではなかったと言うの?」

アニ「いや、毒薬自体は倉庫にあったはずだよ。
   他に薬品類が置いてある建物なんて無かったしね」

コニー「…??」

サシャ「…えーっと、言ってる意味がわからないんですが」

アニ「まあそうだろうね。という訳で…」

アニ「ここで2つ、新しい証拠を提出させてもらうよ」

ライナー「新しい証拠だと…!?」

アニ「そう。私が後半の捜査で手に入れた2つの手がかり…」




アルミン『えっ… アニ、どこ行くの?』

アニ『ちょっと調べ物』

アルミン『調べ物?』

アニ『すぐ戻るよ。じゃあね』




アルミン「…ちなみに、それはどこで手に入れたの?」

アニ「1つは倉庫、そしてもう1つは書庫でね」

ベルトルト「え? 書庫?」

アニ「これらの証拠で全て説明できるんだ」

アニ「料理の持ち出しが規則違反にならなかった理由も、
   使われた薬品のビンが3つあった理由も…」

アニ「そして、この2つの手がかりこそが、
   今回の事件の重要な鍵になるはずだよ」

ジャン「な、何だ? その手がかりって何なんだ!?」

サシャ「もったいぶらずに教えてくださいよ!」

アニ「まあ慌てないで。順番通りに説明するから」

アニ「まずは…そうだね。
   書庫で見つけたこの冊子から見てもらおうか」

今日はここまで

薬品 NO.22~24

モノクマ特製魔法の粉(A~C粉)


この“魔法の粉”は非常に強力なので、取扱いにはご注意ください。
粉は全部で3種類あり、単体では滋養強壮剤として機能します。

しかし、それぞれに特定の処置を施し、かつ適切に組み合わせることで、
様々な特性を備えた毒物へと変化させることができます。

なお、これらはニンゲンをはじめ、あらゆる生物に作用します。


A粉

純度50%以上のエタノールに溶かすことによって、物質A-2へと変化します。
A-2自体は毒にも薬にもなりませんが、C粉を摂取した状態で服用すれば
強力な毒薬として機能します。

B粉

5分間ビンのまま加熱することによって、B-2粉へと変化します。
B-2粉自体は毒にも薬にもなりませんが、C粉を摂取した状態で服用すれば
強力な毒薬として機能します。

C粉

服用することによって、体内での合成を経て物質C-2へと変化します。
C-2は身体のあらゆる細胞に染み渡り、その機能を活性化させます。

ただし、活性化した状態(服用後1時間~24時間)で
絶対にA-2やB-2粉を摂取しないでください。

摂取した場合、以下のような症状に襲われます。

A-2 を摂取した場合:摂取直後に多臓器不全に陥ります。
B-2粉を摂取した場合:摂取後10~30分で多臓器不全に陥ります。

いずれの場合も、副作用として身体組織の肥大化や変色が生じます。

コニー「…何だこれ?」

アニ「『倉庫の薬品図鑑』ってやつさ。
   倉庫にある薬品類についての細かい説明が載ってる」

クリスタ「そ、そんな物が書庫にあったの…?」

アニ「まあね。あの本の山から探し出すのには苦労したけど」




【倉庫の薬品図鑑】



ベルトルト「えーっと、なになに…
      モノクマ特製…魔法の粉?」

ライナー「3種類あり…毒物へと変化?」

アニ「かなりややこしい用法だよね。
   理解するのにも一苦労さ」

ミカサ「…これが一体何だと言うの?」

アニ「要するに、これらがビンの中身だったんだよ。
   薬品棚にあった3つの空きビンのね」

ミカサ「なぜそんな事がわかるの?」

アニ「第一に、この冊子には倉庫にある全ての
   薬品について記載がある」

アニ「実はこれを見つけた後、ここにある内容を元に
   倉庫の薬品を1つずつチェックしたんだけど…」

アニ「NO.22からNO.24…
   この3つの粉だけ見当たらなかったんだ」

アニ「それ以外の薬品は全部揃っていたにも関わらずね」

アニ「つまり、あの空きビンに薬品が入っていたと考えると…
   それはこの3つの粉以外にはあり得ないって訳さ」

アニ「そして第二に…」

アニ「気が付かない? ここの文章」




A-2 を摂取した場合:摂取直後に多臓器不全に陥ります。
B-2粉を摂取した場合:摂取後10~30分で多臓器不全に陥ります。

いずれの場合も、副作用として身体組織の肥大化や変色が生じます。




アルミン「…!! これって…!」

アニ「そう、あまりに似てるんだよ」




死因は服毒による多臓器不全。
毒の副作用による肉体の膨張や変色が見られる。




アニ「…ユミルが死んだ状況とね」

今日はここまで

ベルトルト「…!! た、確かにその通りだ…」

ベルトルト「『多臓器不全』って言葉は
      モノクマファイルにもあったし…」

ベルトルト「それに、身体組織の肥大化や変色って…」








アルミン⦅皮膚がぶよぶよに膨れ、青黒く変色した…⦆

アルミン⦅モンスターのような死骸だった⦆




アルミン⦅僕は改めてユミルの亡骸を見る⦆

アルミン⦅その体は本来の倍以上に膨れ上がっており、
     訓練兵団の制服がはち切れんばかりになっている⦆

アルミン⦅肉に埋もれた眼球は半分以上も飛び出し、
     この世のものとは思えない形相を作り出していた⦆








ジャン「ユミルに起こった事のまんまじゃねーか!」

アルミン「そうか…! 確かにそうかもしれない」

アルミン「もしこの情報が本物なら、
     空のビンが3つあった事も説明できる」

アルミン「それだけじゃない…
     【料理の運び出しが規則違反ではない事の証明にもなる】








そうはさせない!







ミカサ「どうしてそうなるの…?」

アルミン「…!」

ミカサ「空きビンが3つあった事を説明できる…
    それは私にもわかった」

ミカサ「だけど、どうしてそれが…
    規則違反ではない事の証明にもなると言うの?」









―  反 論 シ ョ ー ダ ウ ン 開 始  ―




【倉庫の物品管理表】
【倉庫の保存環境】
▶【倉庫の薬品図鑑】







今日はここまで

ミカサ「空きビンが3つあった理由は/
                  /理解できた」

ミカサ「それは、図鑑に載っていた/
                 /3つの薬品だけが無くなっているから」

ミカサ「だけど、それだけでは/
               /決定的に足りない」

ミカサ「そもそも、どうして/
              /それらの薬品が空になっているの?」

ミカサ「まさか、それらが料理に/
                /仕込まれたとでも言うつもり?」









―  発 展  ―




アルミン「うん、そうだよ」

アルミン「この薬品が倉庫の料理に仕込まれたんだ」







ミカサ「さっきの話を/
           /もう忘れたの?」

ミカサ「倉庫の物品を持ち出す場合は【どんな物であっても】記入が必要」

ミカサ「だけど、管理表には/
              /そういった記載は無かった」

ミカサ「アニの言うような、他の物品に/
                   /紛れ込ませる方法も使えないのなら」

ミカサ「毒を料理に混入させた場合、持ち出した人が/
                         /罰を受ける事になってしまう」

ミカサ「それは【その薬品だって例外ではない】はず」

ミカサ「だから、今のアルミンの/
                /考えは成立しない」




アルミン(…確かに、管理表への記入をせずに
     混入させた毒を持ち出したらルール違反になる)

アルミン(だけど、図鑑に記されている薬品の特性を使えば…)

アルミン(ルールをかいくぐる事ができるかもしれない)

ミカサ「さっきの話を/
           /もう忘れたの?」

ミカサ「倉庫の物品を持ち出す場合は【どんな物であっても】記入が必要」

ミカサ「だけど、管理表には/
              /そういった記載は無かった」

ミカサ「アニの言うような、他の物品に/
                   /紛れ込ませる方法も使えないのなら」

ミカサ「毒を料理に混入させた場合、持ち出した人が/
                         /罰を受ける事になってしまう」

ミカサ「それは【その薬品だって/
                /例外ではない】








その言葉、斬らせてもらう!







今日はここまで

アルミン「違うよミカサ。この薬品は例外なんだ」

ミカサ「どういう事…?」

アルミン「モノクマの言葉を思い出してみて」




モノクマ『倉庫の物品を持ち出す場合は、【どんな物であっても】
     その旨を記入しなければなりません』




アルミン「あそこで言及されていたのは
     “倉庫の物品”だったよね?」

アルミン「“倉庫の物品”を記入せずに持ち出す事はできない…」

アルミン「逆に言えば、“倉庫の物品”でなくなってしまえば、
     物品管理表に書かなくても持ち出す事ができるんだよ」





アニ『だけど… その毒薬がもし、
   元々倉庫にあったものではなかったとしたら?』




ミカサ「…意味がわからない。さっきアニも似たような事を言っていたけど」

アルミン「図鑑のページをもう一度よく見て」





A粉

純度50%以上のエタノールに溶かすことによって、物質A-2へと変化します。
A-2自体は毒にも薬にもなりませんが、C粉を摂取した状態で服用すれば
強力な毒薬として機能します。

B粉

5分間ビンのまま加熱することによって、B-2粉へと変化します。
B-2粉自体は毒にも薬にもなりませんが、C粉を摂取した状態で服用すれば
強力な毒薬として機能します。

C粉

服用することによって、体内での合成を経て物質C-2へと変化します。
C-2は身体のあらゆる細胞に染み渡り、その機能を活性化させます。




アルミン「この薬品は、特定の処置を施すと
     それぞれ物質A-2、B-2、C-2へと変わる…」

アルミン「つまり、A粉、B粉、C粉とは
     “全く別の物質”に変わってしまうという事…」

アルミン「それらは“元々倉庫にあったもの”では
     なくなってしまう訳だから…」

アルミン「記入をせずに倉庫から持ち出したとしても、
     何の問題も無いって事だよ」

モノクマ「はい、その通りでございます!」

モノクマ「物品管理表に記入をしない場合、
     倉庫の毒薬が入った料理を持ち出す事は規則違反ですが…」

モノクマ「倉庫の毒薬を『その場で使って』
     “元々存在しない物品”に変えてしまえば…」

モノクマ「オールクリアー!ノープロブレムでーす!」

ジャン「何だよそれ… ほとんど屁理屈じゃねーか」

モノクマ「屁理屈だろうが何だろうが、
     ルールはルールなのです」

モノクマ「そしてルールを制する者こそが、
     世界を制する事ができるのです」

モノクマ「それはいつの時代でも同じ事…」

モノクマ「揺るぎない普遍の真理なのでーす!」

アニ「…まあ、何はともあれ、これではっきりしたね」

ミカサ「………………」

アニ「行方不明の薬品と同じ数の空きビン」

アニ「ユミルと同じ症状・副作用」

アニ「そして、ルールをかいくぐる薬品の特性」

アニ「これらが意味する事実はただ1つ…」




アニ「ユミルの毒殺にはこの薬品が使われたって事だよ」

今日はここまで

クリスタ「………………」

アニ「…そして、この事実がわかったことで、
   別の謎についても説明できるんだ」

コニー「別の謎…?」

アニ「アルミン、何だと思う?」




アルミン(アニの言う別の謎…)

アルミン(それは…)




【空のビン】
【鳥の羽根】
▶【飼育小屋の動物】








これだ!







アルミン「飼育小屋の動物…だよね?」

ライナー「…もしかして、あの話か?
     飼育小屋で見つかったっていう多数の変死体…」

ジャン「ああ、そういえばアルミンに聞いたな。
    ユミルと同じように膨れ上がってたんだろ?」

ベルトルト「えっ、ちょっと待って。その変死体って、
      元々は飼育小屋にいた動物たちだったんだよね?」

ベルトルト「という事は…」




▶【毒殺された】
【呪殺された】
【流行り病にかかった】








これだ!







アルミン「その動物たちもユミルと同じ毒を飲んだんだ」

アルミン「そして、多分それも…
     犯人が意図的に仕組んだ事だと思う」

サシャ「なななっ…!? 犯人はユミルだけじゃなくて、
    私の家族にまで手をかけたっていうんですか!?」

コニー「か、家族…?」

ミカサ「だけど、それならなぜ…
    犯人はそんな事をする必要があったの?」

アルミン(…変死体の状況から見て、
     動物たちがユミルと同じ毒を飲んだのは間違いない)

アルミン(そしてそれは、絶対に自然には起こり得ない)

アルミン(誰かが意図的に仕組まない限り…)




アルミン「………………」




アルミン(だとすれば、なぜその人…おそらく犯人は、
     わざわざそんな事をする必要があったのか)

アルミン(飼育小屋は出入りが自由だから、
     誰かに見つかる危険性が高い)

アルミン(なぜそんなリスクを冒してまで、
     動物たちに毒を盛る必要があったのか)

アルミン(一体なぜ…)









―  閃 き ア ナ グ ラ ム 開 始  ―









  じ  ぶ  ん  っ  つ  け  う  ど


  ど  う  ん  っ  け  じ  ぶ  つ


  ど  う  ぶ  け  ん  じ  っ  つ








  ど  う  ぶ  つ  じ  っ  け  ん








そうか わかったぞ!







今日はここまで

アルミン「そうか… 犯人は動物実験をしたんだ」

ベルトルト「えっ…!?」




なお、これらはニンゲンをはじめ、あらゆる生物に作用します。




アルミン「あの毒薬は人間だけじゃなくて、
     他の生物にも利き目がある…」

アルミン「だから犯人は、本番で使う前に…
     飼育小屋の動物たちで試そうと思ったんじゃないかな?」





14 コロシアイ兵団生活で同一のクロが殺せるのは2人までとします。




ライナー「…なるほどな。人は駄目でも家畜は殺し放題って訳か」

モノクマ「うぷぷ、その通り。使えるものは最大限活用しないとね」

サシャ「ひ、酷い…」

サシャ「許せない… あの子たちを、そんな…」

アニ「どう? これで見えてきたでしょ?」

アニ「この事件の性質…
   前回の事件とは明らかに違う点が…」




アルミン(前回の…
     エレンの事件とは明らかに異なる点)

アルミン(それは…)




【突発性】
▶【計画性】
【残虐性】








これだ!







今日はここまで

アルミン「この事件はきっと…
     綿密な計画によって行われたものなんだ」




モノクマ『ちょっと重いだろうけど大丈夫!
     イェーガーくんの頭は地面にあるから、適当に振り下ろせば死ぬよ!』

ミーナ『ちょ、ちょっと待って…!』

モノクマ『ほらほら、早くしないと目を覚ましちゃうって!』




アルミン「前回の事件では… 犯行の直前まで、
     ミーナにエレンを殺す気は無かった」

アルミン「言ってみれば“突発的犯行”だったんだ」

アルミン「だけど、今回の事件は違う。
     ユミルの殺人は、犯人が前々から考えていた…」

アルミン「“計画的犯行”だったんだよ」

ジャン「ず、ずっと狙ってたっていうのか…!?
    こうなる事を…」

ライナー「…少なくとも、“毒殺”という殺し方をしている時点で
     突発的な犯行ではないだろう」

アルミン「うん。それに加えて、
     使用された薬品は用途が複雑すぎるからね」
     
アルミン「だからこそ、犯人はわざわざ【動物実験】








ちょっと待ってください!








サシャ「い、いやいや… やっぱり不可能ですって!」

ベルトルト「…? 何が?」

サシャ「動物実験ですよ!」

サシャ「アルミンは、犯人が例の毒薬を
    あの子たちに試したって言いますけど…」

サシャ「それなら、コニーの件は一体どう説明するんですか!?」









―  反 論 シ ョ ー ダ ウ ン 開 始  ―




【空のビン】
▶【鳥の羽根】
▶【飼育小屋の動物】







今日はここまで

サシャ「さっきまでの/
           /議論では、えーっと…」

サシャ「そうそう!毒薬に/
             /特定の処置を施して…」
                 
サシャ「別の薬品に変えればいいって/
                  /話をしてましたよね?」

サシャ「そうすれば、物品管理表に/
                 /記入をする必要が無いって…」

サシャ「だけど、あの薬品の特性を/
                 /思い出してください!」

サシャ「確かに、A粉とB粉はその場で/
                   /作り替えられるかもしれませんけど」

サシャ「C粉だけは体内に取り込む/
                 /必要があったはずです!」

サシャ「私はそこが問題だって/
               /言ってるんですよ!」









―  発 展  ―




アルミン「もしかして、サシャが言いたいのは…」

アルミン「“彼ら”を倉庫に連れてくるのは難しいっていう事?」







サシャ「そうです!/
          /その通りですよ!」

サシャ「A粉にしろB粉にしろ、/
                /あの毒薬を作用させるには…」

サシャ「【C粉を倉庫内で服用しなければならない】はずです!」

サシャ「仮に、あの子たちを使って/
                 /実験をするのなら…」

サシャ「【全員を倉庫に連れてくる必要があります!】」

サシャ「だけど、それは/
            /どう考えても大変ですよね!?」

サシャ「特にコニーとアルミンは【図体がでかい】んですから!」




アルミン(…確かに、“彼ら”全員を連れてくるのは現実的とは言えない)

アルミン(だけど、僕の考えが正しければ…)

アルミン(あの方法でいけるんじゃないかな)

サシャ「そうです!/
          /その通りですよ!」

サシャ「A粉にしろB粉にしろ、/
                /あの毒薬を作用させるには…」

サシャ「【C粉を倉庫内で服用しなければならない】はずです!」

サシャ「仮に、あの子たちを使って/
                 /実験するのなら…」

サシャ「【全員を倉庫に連れてくる/
                 /必要があります!】








その言葉、斬らせてもらう!







アルミン「いや… 多分、全員を倉庫に
     連れてくる必要は無いんじゃないかな」

サシャ「は、はい? それなら一体どうやって…」

アルミン「エレンを使ったんだよ」

サシャ「は…?」

アルミン「サシャは捜査のときに言っていたよね?
     エレンの姿が見えないって」

アルミン「実は倉庫を調べたときに、薬品棚の周りに
     羽根が数枚落ちているのを見つけたんだ」

アルミン「これは僕の予想だけど…
     あれってエレンの羽根だったんじゃないかな?」

アルミン「犯人はエレンだけを倉庫に連れてきて、
     薬品棚付近でC粉を服用させ…」

アルミン「そして、その肉を使って…
     飼育小屋にいた他のみんなに試したんじゃないかな?」

クリスタ「ね、ねえ… さっきから一体何の話をしてるの?」

コニー「俺とアルミンはむしろ小柄な方だろ。
    図体がでかいのはライナーとかベルトルトだろうが」

ミカサ「エ、エレンは生きていたというの…?
    羽って…まさか天使になって…!?」

アルミン「え? …あっ、ご、ごめん! そうじゃなくって…」

アニ「…動物たちの名前でしょ? サシャが名付けた」









アルミン『…もしかして、ここにいる動物全部に名前を?』

サシャ『…はい』

サシャ『ナック、ミリウス、トーマス、アルミン…
    みんな死んじゃいました…』




アルミン⦅なんか僕の名前が聞こえた気がするけど…⦆




アニ『それらは何の動物なの?』

サシャ『ナックが豚で、ミリウスが羊で…』

サシャ『トーマスがニワトリで、アルミンが馬で…』

サシャ『コニーが…乳牛です…』








アルミン『エレンって…あのエレンじゃないよね?』

サシャ『ニワトリのエレンです…
    あの子がどこにもいなくって…』

アニ『…ニワトリ?』

サシャ『きっとあの子も…』

サシャ『どこかで殺され…』ブワッ







ライナー「…要するに、図体のでかいコニーとアルミンは乳牛と馬で、
     行方不明のエレンがニワトリって訳か」

ベルトルト「ビックリしたよ… アルミンから変死体の話は聞いてたけど、
      そんな名前が付けられていたとは思わなかったから…」

ジャン「…つーか、普通、家畜に仲間の名前付けるか?」

アルミン「ま、まあ… 何はともあれ、
     これでサシャが言いたかった事はわかったでしょ?」





C粉

服用することによって、体内での合成を経て物質C-2へと変化します。
C-2は身体のあらゆる細胞に染み渡り、その機能を活性化させます。

ただし、活性化した状態(服用後1時間~24時間)で
絶対にA-2やB-2粉を摂取しないでください。

摂取した場合、以下のような症状に襲われます。

A-2 を摂取した場合:摂取直後に多臓器不全に陥ります。
B-2粉を摂取した場合:摂取後10~30分で多臓器不全に陥ります。

いずれの場合も、副作用として身体組織の肥大化や変色が生じます。




アルミン「あの薬品を毒薬として作用させる場合、
     C粉を服用して体内でC-2を作り出しておく事が前提になるんだ」

アルミン「だけど、C粉のままでは倉庫から持ち出せないから、
     被験体を倉庫に連れてきてその場で飲ませる必要がある」

アルミン「だけど、乳牛や馬のような大きな動物を
     倉庫に連れてくるのは、とても現実的とは言えない…」

アルミン「…これがサシャの主張だったんだ。そうだよね?」

サシャ「え、ええ…」

ジャン「…まあ、そりゃあな。そんな人目に付くような事を
    わざわざやるバカはいねーよ」

コニー「ん? でもよ、結局は
    その乳牛や馬だって毒で死んでたんだろ?」

コニー「だったら、犯人はどうやって
    そいつらに毒を飲ませたんだ?」

アニ「…さっきアルミンが説明してたじゃない。
   『エレンを使った』って」








アルミン『サシャは捜査のときに言っていたよね?
     エレンの姿が見えないって』

アルミン『実は倉庫を調べたときに、薬品棚の周りに
     羽根が数枚落ちているのを見つけたんだ』

アルミン『これは僕の予想だけど…
     あれってエレンの羽根だったんじゃないかな?』

アルミン『犯人はエレンだけを倉庫に連れてきて、
     薬品棚付近でC粉を服用させ…』

アルミン『そして、その肉を使って…
     飼育小屋にいた他のみんなに試したんじゃないかな?』







今日はここまで

アニ「アルミンの言うように… まず犯人は、
   ニワトリのエレンだけを倉庫に連れてきたんだ」

アニ「そして、その場でC粉を呑ませることで、
   エレンの体内でC-2が生成される」

アニ「その状態でエレンを殺し、精肉機にでもかければ…」

アニ「C-2入りのミンチ肉ができるって訳さ」

ベルトルト「つまり、そのミンチ肉を持ち出して、
      飼育小屋の動物たちに食べさせた…?」

アルミン「うん。エサに混ぜるような形でね」

ライナー「そうすればC-2はそのまま取り込まれ、
     特性を維持し…」

ライナー「その上でA-2やB-2粉を服用させれば…」

モノクマ「ブサイクな変死体の出来上がりー!」

ジャン「で、でもよ、そんなのアリか?」

ジャン「なんつーか… それって間接的なやり方だろ?
    そんな方法でC-2は効能を維持できるのかよ?」

アルミン「それも含めての実験だったんだろうね。
     どちらにしろ、そうでもしないとC粉は持ち出せないから」

ベルトルト「…で、結果は成功だったと」

モノクマ「うぷぷ、その通り。
     やっぱり色々試してみるのって大事だよね」

今日はここまで

サシャ「そ、そんな… あの子をミンチに…?」

サシャ「酷すぎる… そんなのって…」

ライナー「だが、確かに… その方法が可能なら、
     わざわざ体の大きな動物を倉庫に連れてくる必要が無い」

ミカサ「精肉機なら見かけた気がする…
    確か、エレンとアルミンとで倉庫を調べた時に」

ジャン「それもその場で使ったって事か…
    それなら物品管理表に記入が無いのも頷けるな」

アニ「そして、ここまで来て… ようやく重要な事がわかったね」

コニー「重要な事?」

アニ「そもそも、この薬品を使ってユミルを毒殺しようとした場合…」

アニ「1つ大きな壁が立ちはだかる事になるんだけど…わかる?」




アルミン(この毒薬を使う際の大きな壁…)

アルミン(それは…)




【A粉の加工】
【B粉の加工】
▶【C粉の服用】








これだ!







アルミン「それって… C粉をユミルに
     呑ませなくちゃいけないって事だよね?」

アニ「そう。さっきの議論にもあった通り、
   A-2を使うにしろ、B-2粉を使うにしろ…」

アニ「対象者にC粉を服用させておく事が絶対条件なんだ」

アニ「しかも、物品管理表に記入をしない場合は…
   倉庫にユミルを呼び出して倉庫内で呑ませる必要がある」

アニ「…ニワトリのエレンを連れてきた時と同じようにね」

コニー「え…? でもよ、それって難しくねえか?」

コニー「だって、あのユミルだぞ?」

ベルトルト「確かに… 人一倍警戒心が強くて、
      常に慎重だったユミルが…」

ベルトルト「倉庫への呼び出しを受けて、
      犯人に渡された物を呑んだりするかな?」

クリスタ「絶対にあり得ないよ、そんなの…
     まず倉庫にすら行かないと思う」

今日はここまで

アニ「そう、それが難しいからこそ…
   犯人は動物たちを使って実験したんだ」

コニー「…?? えーっと…」

アニ「要するに… 犯人は、C-2入りのエレンの肉を
   パーティーの料理に仕込んだんだよ」

アニ「A-2やB-2粉と一緒にね」

ベルトルト「そうか…! 犯人がわざわざニワトリを使って、
      飼育小屋の動物たちに毒を試したのは…」

ベルトルト「【ユミルを倉庫に連れてこなくても毒殺できる】ことを
      確かめたかったからか…!」

ライナー「なるほどな… 乳牛や馬と同じように、
     ユミルを倉庫に呼び出す必要が無くなれば…」

ライナー「たとえ、ユミルにC粉を呑ませなくても…」

ライナー「パーティー中にエレンの肉を食べさせることで
     C-2を摂取させれば…」

ライナー「あとはA-2かB-2粉を摂らせることで
     ユミルを殺すことができる…って訳か」

アルミン「………………」

ミカサ「それなら、次の問題は…」

ミカサ「どの料理にA-2かB-2粉、
    そしてエレ…ニワトリの肉が混入していたか…」

アニ「そうなるね。料理は色々あったけど…」

アニ「中でも一番疑わしいのは…」




【サラダ】
【骨付き肉】
▶【肉のパイ包み】








これだ!







今日はここまで

アルミン「もしかして…【肉のパイ包み】?」

アニ「おそらくね」

クリスタ「ど、どうして? 料理なら他にもたくさんあったのに…」

アニ「第一に、ユミルはあれを食べたすぐ後に死んでいるから」

アニ「食べた直後に苦しみ出したんだから、
   あれに毒が入っていたと考えるのは普通だと思うけど?」

ベルトルト「まあ、確かに…」

アニ「第二に、あの料理には
   【他の料理と決定的に違う点】があったから」

サシャ「えっ?」

アニ「アルミン、何だと思う?」

アルミン(あの料理… 【肉のパイ包み】は特別だった)

アルミン(他の料理と明らかに異なる点)

アルミン(それは…)




【パーティーのオードブル】
【パーティーのデザート】
▶【パーティーのレクリエーション】








これだ!







アルミン「あの料理だけは、パーティーのレクリエーション…
     つまり、出し物として使われているって事だよね?」

アニ「そう。各自がソースでデコレーションをして、
   他人に食べさせるっていうものだったね」




ライナー『いいか、使うのはあくまで自分の絞り袋だけだ。
     他人のを借りるのは無しだぞ』

ライナー『他人のパイ切れをデコレーションするのも禁止。
     それと、全員が作業を終えるまで食べるのもダメだからな』

コニー『なんだかよくわかんねーけど、面白そうだな』



コニー「確かにあれは面白い企画だったけどよ…
    あれが出し物として使われているからって、何の根拠になるんだ?」

アニ「ここで、さっきまでの話に戻るよ」

アニ「犯人はニワトリのエレンを倉庫に連れてきて、
   その場でC粉を呑ませてC-2を作り出し…」

アニ「その後エレンをミンチにして、作成しておいた
   A-2やB-2粉と一緒に倉庫内のパーティー料理に混ぜた」

アニ「…ここまではいいよね?」

ライナー「ああ… そうする事で物品管理表への記入を免れ、
     ユミルを倉庫に連れてくる必要も無くなるんだったな」

アニ「うん。後はその料理を
   ユミルに食べさせればいいだけなんだけど…」

アニ「…何か引っかからない?」

サシャ「…?? 別に何も…」

アニ「毒を混入できたのはいいとして、
   どうやって毒入りの料理をユミルに食べさせるのさ」

アニ「当日ユミルがどの料理を食べるかなんてわからないし…」

アニ「予め『○○○を食べて』なんて指示を出しておいたとしたら、
   余計に怪しまれるだけじゃない」

ジャン「確かにな… 百歩譲って指示が通ったとしても、
    別の人間がその料理を食べる可能性だってあるもんな」

ベルトルト「そんな事になったらその人まで死んでしまうよ。
      そう考えると、ユミルだけを殺そうとするのって…」

アニ「至難の業だよね」

アニ「だからこそ犯人は… 
   【肉のパイ包み】を使ったレクリエーションを利用したのさ」

今日はここまで









ライナー『さて、今からみんなには、
     このパイ包みのデコレーションをやってもらう』

ライナー『詳しいルールを説明するから、よーく聞くんだぞ?』




ライナー『いいか、使うのはあくまで自分の絞り袋だけだ。
     他人のを借りるのは無しだぞ』

ライナー『他人のパイ切れをデコレーションするのも禁止。
     それと、全員が作業を終えるまで食べるのもダメだからな』




ライナー『じゃあみんな、自分以外のパイ切れを1つ取ってくれ。
     自分がデコレーションしたもの以外だぞ』







アニ「あの時… 私たちは、
   人数分に切り分けられたパイ切れを手に取って…」

アニ「それぞれに渡された革袋を使って、
   ソースのデコレーションを施していったね」

コニー「あ、ああ… それから
    他人がデコレーションした物を手に取って…」

コニー「それをまた別の奴に食べさせたんだったよな?」

アニ「そう。ここまで言えばわかると思うけど…」

アニ「この料理には、【デコレーション】と【食べさせる】という
   他の料理に無い要素があったんだ」

アニ「これらのどちらか、あるいは両方を利用すれば…
   ユミルだけに毒入りのパイを食べさせる事は可能なんじゃない?」

ベルトルト「た、確かに…」

ベルトルト「他の料理はパーティー中にずっと放置されていたから、
      『誰がいつ何を食べるか』を把握できないけど…」

ベルトルト「このイベントを利用して、
      何かしらのトリックを使えば…」

サシャ「ユ、ユミルだけを狙い撃ちにできる…?」

ジャン「なるほどな… それなら後は、
    そのトリックとやらを暴けばいいんだな?」

ジャン「つーか、もしかして…
    それについても何か浮かんでんのか、アニ?」

アニ「………………」

ジャン「…アニ?」

アニ「…さあ?」

ジャン「…は?」

アニ「残念だけど、私の推理はここまでだよ」

アニ「【肉のパイ包み】のレクリエーションを
   利用するのはいいとして…」

アニ「その中で犯人がどうやってユミルを狙い撃ちにしたか…
   正直言って、全然浮かんでこないね」

ジャン「お、おいおい…」

ジャン「そりゃねーだろ!? 散々期待させといて…」

アニ「悪かったね。というより、
   他人に期待する暇があるなら自分の頭で考えたら?」

ジャン「考えてもわかんねーから言ってんだろ!」

ベルトルト「ま、まあまあ…
      ようやく事件の中身も見えてきそうなんだし…」

ベルトルト「ここは一度落ち着いて…」

ミカサ「何を悩んでいるの?」

ベルトルト「…え?」

ミカサ「犯人は【肉のパイ包み】のレクリエーションを利用して
    ユミルに毒を呑ませた」

ミカサ「この事さえわかっていれば、
    誰を怪しむべきかは明白」

ミカサ「違わない?」




ミカサ「【出し物係】の… ライナーとベルトルト」

今日はここまで

ベルトルト「なっ…!?」

ライナー「………………」

ミカサ「だってそうでしょう。このレクリエーションは元々、
    あの2人が用意したもの」

ミカサ「レクリエーションを利用したトリックを使うなら、
    企画した人間を疑うのは当然」

サシャ「で、でも… それも何だかあからさま過ぎるような…」

ジャン「…いや、無いとは言えんぞ」









ライナー『あ~、それでは! パーティーも盛り上がってきたところで!』

ライナー『【出し物係】である俺とベルトルトが用意した、
     とっておきのレクリエーションをやろうと思う!』








ジャン「ミカサの言うように… あの企画は終始、
    その2人が取り仕切っていたし…」









クリスタ『…まさか、毒とかじゃないよね?』

ライナー『安心しろ。死ぬような代物じゃない』








ライナー『毒だ! パイの中に毒が入ってる!』








ジャン「食べる前には『毒は入っていない』と言っておきながら、
    いざユミルが倒れると、いち早く『毒だ!』と叫んだ…」

ジャン「…疑うには十分過ぎねえか?」

ベルトルト「ちょ、ちょっと待っ…」

ライナー「…なるほどな。ここでその話が出てくるのか」

ベルトルト「…! ラ、ライナー!」

ライナー「そうやって疑いの矛先を俺たちに向けることで、
     自分への追及を免れようとしているのか?」

ライナー「…ふん、いかにも犯人がやりそうな手法だな」

ライナー「特にミカサは、『自分はパーティーに参加していないから
     レクリエーションを使ったトリックは不可能』とでも言いたげだ」

ミカサ「…話をすり替えないで。反論があれば聞く」

ライナー「第一に、俺たちが犯人なら
     殺人にレクリエーションを使おうとは思わない」

ライナー「ちょうど今のように、真っ先に疑われるからな。
     サシャの言葉を借りれば… あからさま過ぎる」

ミカサ「………………」

ライナー「第二に、お前たちはこの企画を
     俺たちが考え出したものだと思っているようだが…」

ライナー「いいか、そもそもこのイベントはな…」

モノクマ「ねえねえ」

ライナー「…何だ、人が話している最中に」

モノクマ「オマエラさ、重要な事忘れてない?」

クリスタ「…何の話?」

モノクマ「今回のクロについてだよ」

モノクマ「【肉のパイ包み】に
     毒が混入されていたのはいいとして…」

モノクマ「この事件って、本当に毒を料理に混ぜた人が
     クロになるのかなあ」

サシャ「…え?」

モノクマ「それとも…」









モノクマ「パイ切れを直接食べさせた
     フーバーくんがクロなのかなあ!?」







今日はここまで

ベルトルト「…!!?」

ライナー「なっ…!?」

モノクマ「およよ? 何を驚いてんの?」

モノクマ「あの時、ユミルさんと食べさせ合ってたじゃん。
     新婚バカップルみたいにイチャイチャしちゃってさあ」





ユミル『なあ、ライナー』

ライナー『なんだ?』

ユミル『どうせやるならよ、食べさせ合わないか?
    その方が盛り上がるだろ』

ライナー『ん? …なるほど、それもそうだな』

ユミル『じゃあベルトルさん、あーん』

ベルトルト『えっ… あ、あーん』



モノクマ「でも災難だったねー。
     まさかあのパイ切れに毒が入ってたなんて」

モノクマ「毒を仕込んだのが誰であれ…」

モノクマ「これじゃあまるで、フーバーくんが
     ユミルさんの息の根を止めたみたいになっちゃうね」

ベルトルト「な…何を言って…」

モノクマ「まあ正直なところ、あの楽しそうな光景を見せられた時は
     『あーこのまま誰か死なねーかな』なんて思ったりもしたけど…」

モノクマ「まさか本当に死んじゃうなんてねー!
     飯がウマくて仕方ないよ…ぶっひゃっひゃっひゃ!!」

ジャン「お、おいおい… それじゃあ…」

ジャン「毒を入れた人物に関係なく、
    今回のクロはベルトルトって事になるのか…?」

モノクマ「さあねー。でも、それを考えるのが兵団裁判でしょ?」

アニ「…ねえ、今更どういうつもり?」

アニ「今までずっと『毒を入れた人間=クロ』で
   話を進めてきたじゃない」

モノクマ「それはオマエラが勝手にそうしただけじゃん」

モノクマ「毒を入れた人間がクロか、
     直接食べさせた人間がクロか…」

モノクマ「重大な議論をすっ飛ばしちゃってるから、
     ボクがテコ入れしてやってんじゃーん?」

サシャ「そ、そんなぁ!
    また議論しなくちゃいけない事が増えるんですかぁ!?」

ジャン「つ、つーか… 
    そんなのどうやって話し合えばいいんだ!?」

ジャン「『何をやった奴がクロなのか』なんて…
    そんな概念的な事どうやって!?」

クリスタ「で、でも… ベルトルトって一応、
     レクリエーションを準備した側なんでしょう?」

クリスタ「だったら、もし毒を仕込んだのもベルトルトなら
     全部解決するんじゃ…」

ベルトルト「さ、さっきから何を言っているんだ!」

ベルトルト「僕は毒なんか仕込んでない!
      それはライナーだって同じだ!」

ガヤガヤ ガヤガヤ…
ザワザワザワザワ…




アルミン「………………」




アルミン(…何だろう、この違和感)

アルミン(モノクマがいきなり
     こんな事を言い出したのもそうだけど…)

アルミン(それだけじゃない…)

ガヤガヤ ガヤガヤ…
ザワザワザワザワ…




アルミン(さっきからずっとだ…)

アルミン(議論はかなり進んでいるように見える)

アルミン(だけど、その一方で… 
     ただ堂々巡りをしているだけのようにも思える)

アルミン(このモヤモヤした感じ)

アルミン(うまく言えないけど…)









アルミン(誰かに議論を誘導されているような…)







アルミン「………………」

アルミン「…ねえ、みんな」

コニー「…ん? どうしたんだ、アルミン」

アルミン「もう1度さ… 事件をよく見直してみない?」

ジャン「だから、それを今やろうとしてるんじゃねーか!
    毒を盛った奴がクロか、食べさせた奴がクロか…」

アルミン「そうじゃなくて…
     もっと根本的な部分からだよ」

ライナー「根本的な部分…だと?」

アルミン「さっきから引っかかってるんだ」

アルミン「何て言うか… すごく大事なところを
     見落としてる気がするんだよ」

モノクマ「ほらね、だから言ってるじゃない。
     クロの定義をちゃんと話し合って…」

アルミン「モノクマは黙ってて」

モノクマ「………………」

ミカサ「…好きにすればいい」

アルミン「…! ミカサ…」

ミカサ「アルミンは正解を導く力がある」

ミカサ「私もエレンも
    以前はその力に命を救われた」

アルミン「そんなことが…? ……?」

アルミン「いつ?」

ミカサ「多分、まだ…」

ミカサ「自覚が無いだけ…」





アルミン『…エレン』

アルミン『どうして僕にそんな決断を託すの?』

エレン『お前ってやばい時ほど
    どの行動が正解か当てることができるだろ?』

エレン『それに頼りたいと思ったからだ』

アルミン『いつそんなことが?』

エレン『色々あっただろ?』

エレン『5年前なんか』



アルミン「…!!」

ミカサ「…アルミン?」

アルミン「…! あ、ああ… 何でもないよ」

アニ「………………」









アルミン(落ち着け…)

アルミン(この事件を根本から見直すんだ)

アルミン(あらゆる先入観を取り払って、
     自分の中に意識を集中させて…)

アルミン(推理を一から組み立てるんだ…)















―  ロ ジ カ ル ダ イ ブ 開 始  ―







今日はここまで

今日はここまで

続きは 06/14(日) に投下します

アルミン「…ライナー」

ライナー「…ん?」

アルミン「さっきの続きを聞かせてくれるかな」




ライナー『第二に、お前たちはこの企画を
     俺たちが考え出したものだと思っているようだが…』

ライナー『いいか、そもそもこのイベントはな…』




アルミン「あれって要するに…」

アルミン「【肉のパイ包み】を使ったレクリエーションは
     ライナー達が考案したものじゃないって事だよね?」

ライナー「…ああ、その通りだ」

ジャン「は…? じゃあ誰が考え出したって言うんだよ」

ライナー「ユミルだよ」

コニー「ユミル…?」

ライナー「【出し物係】は俺とベルトルトだったが…
     中々良いアイデアが思い浮かばなくてな」

ライナー「2人で考えあぐねていた時にユミルがやってきて、
     今回の企画を提案してきたんだ」

ライナー「【料理係】ならではの発想というか…
     とにかく面白そうだったんで、その案を採用したのさ」

アルミン「…なるほどね。やっぱり」

ミカサ「…何かわかったの?」

アルミン「みんな、ちょっといいかな」

ベルトルト「…?」

アルミン「これから僕は『ある推理』を話そうと思う」

アルミン「はじめに断っておくけど、
     これは何の証拠も無いただの推論だ」

アルミン「かなり奇抜な内容だから混乱するかもしれない。
     でも、1つの考えとして… 参考にしてほしい」

ジャン「な、何だよ… 急に改まって…」

アルミン「結論から言うよ」

アルミン「僕は、この殺人…」








アルミン「全てユミルが考え出した事だと思う」







ライナー「………………」

ライナー「…何だって?」

クリスタ「…!!」

ベルトルト「…!?」

コニー「…は?」

アニ「………………」

サシャ「…えっと、すみません」

サシャ「今までで一番意味不明なんですが…」

アルミン「………………」

ジャン「い、いや… いやいや…」

ジャン「奇抜っていうか… 訳がわからん…」

ジャン「いや、本当にわかんねーぞ!?
    だって、ユミルは死んでるじゃねーか!」

アルミン「そうなるように仕組んだんだよ。ユミル自身がね」

ジャン「なんだそりゃ!? 自殺って言いたいのか!?」

アルミン「とりあえず最後まで聞いてほしい」

アルミン「確かにおかしな話だとは思う。
     殺されたのはユミルなのに、それを考えたのがユミルだなんて…」

アルミン「だけど… そう考えると、
     色々と繋がってくる部分もあるんだ」

一旦中断します

アルミン「さっきまでの議論の通り、
     ユミルは間違いなく毒で死んでいる」

アルミン「そして使用された毒は
     “モノクマ特製魔法の粉”…」

アルミン「だけど、その毒を使う場合、
     どうしても避けられない問題がある」

アルミン「…そうだったよね?」





C粉

服用することによって、体内での合成を経て物質C-2へと変化します。
C-2は身体のあらゆる細胞に染み渡り、その機能を活性化させます。




ミカサ「A-2やB-2粉は自分で作れるけど、
    C-2は対象者に服用させる事でしか作れない…」

ミカサ「つまり、ユミルに呑ませなければならない。
    だけど、あのユミルが簡単に毒薬を口にするとは思えない」









コニー『え…? でもよ、それって難しくねえか?』

コニー『だって、あのユミルだぞ?』

ベルトルト『確かに… 人一倍警戒心が強くて、
      常に慎重だったユミルが…』

ベルトルト『倉庫への呼び出しを受けて、
      犯人に渡された物を呑んだりするかな?』

クリスタ『絶対にあり得ないよ、そんなの…
     まず倉庫にすら行かないと思う』








ライナー「ああ… だからニワトリに呑ませてC-2を作り、
     それをパーティーの料理に混ぜて間接的に摂取させた…」

アルミン「そう、そこなんだよ」

サシャ「…? 何がです?」

アルミン「“警戒心の強いユミルにはC粉を呑ませられない”…
     僕たちは勝手にそう思い込んでいた」

アルミン「そういう前提の下で議論を進めてきたんだ」

アルミン「だけど、もし…
     ユミルが“自らの意志でC粉を呑んだ”のなら…」

アルミン「その前提条件は一気に崩れるよね?」

ジャン「そ、そりゃあ… そうだろうけどよ…」

アルミン「それだけじゃない」

アルミン「今思えば、少し変だったんだよ。
     事件発生までのユミルの言動…」

コニー「え?」




アルミン(ユミルの言動のおかしな点)

アルミン(最初に心当たりがあるのは…)




【巨大な石碑を発見したとき】
【みんながお酒を飲んでいたとき】
▶【朝食に来ないみんなを探したとき】








これだ!







今日はここまで

アルミン「アニとサシャは憶えてるかな? 今朝のこと」

サシャ「今朝ですか?」

アルミン「ほら、みんなが食堂に現れなくて、
     この施設内を探し回ったでしょ?」




アルミン『どうだった?』

サシャ『だ、ダメです…! どこにもいません!』ハアハア

アニ『こっちもだよ。部屋に行っても誰も出ないし、
   大浴場にもいなかった』

アルミン『この訓練所も探したけど、隠れられるような場所も少ないし…』

サシャ『それなら一体…』



サシャ「…そういえばそうでした」

サシャ「いくら待っても誰も食堂に来なくて、
    それでなんだか不安になって…」

アニ「寄宿舎や訓練所を3人で
   手分けして探した後に…」
   
アニ「一緒に残りの場所を見に行ったんだったね」




アニ『倉庫、飼育小屋、ライブハウス、書庫、林…』

サシャ『こうして見るとたくさんありますね…
    もう一度手分けして探しましょうか?』

アルミン『いや、やっぱり単独行動は控えよう。
     何が起こるかわからないから』

アニ『…そうだね。このまま3人で虱潰しに当たっていこう』




アルミン「その次は憶えてるかな?」

サシャ「えっと… 3人で結構走り回って…」

サシャ「…あっ、でもその後、
    割とすぐにユミルに会いましたよね」




アルミン『ユミル!?』

ユミル『よう』

サシャ『ど、どこ行ってたんですか! 散々探したんですよ!?』

ユミル『それはこっちのセリフだよ。ヒヤヒヤさせやがって…』



ライナー「その時の俺たちは全員…
     いや、ミカサを除いた全員がパーティー会場にいたからな」

ライナー「ユミルがお前らを連れてくるのを待ってたんだ」

アルミン「ちなみに聞くけど、ライナー達がユミルにお願いしたの?
     僕らを連れてくるようにって」

ライナー「いや… あれはユミルが言い出したんだ」

ライナー「『あいつらを連れてくるから、お前達は驚かす準備しとけ』ってな」





サシャ『あれ…? ていうかユミル、1人ですか?』

ユミル『ああ』

アルミン『他のみんなは?』

ユミル『ここにはいない。“お使い”として来たのは私だけだからな』




サシャ「…そういえばユミル、自分のこと
    “お使い”って言ってましたね」

サシャ「じゃあ、やっぱり…
    ユミルは私たちを呼びにあそこまで…」

アルミン「それにしては妙じゃないかな」

サシャ「え?」

アルミン「いや、だってさ…」

アルミン「あの時のユミルを思い出してみてよ」









アルミン⦅ユミルを見つけたのは飼育小屋の前だった⦆

アルミン⦅腕組みをして扉にもたれかかるユミルに、
     僕らは一斉に駆け寄ったのだ⦆




アニ『どういう事? ここで何してるの?』

ユミル『私もお前らを探してたんだよ。
    食堂に行ってもいないから、かなり焦ったんだぞ』




アルミン⦅どうやら、僕らとユミルは
     どこかで入れ違いになっていたらしい⦆

アルミン⦅ユミルは平静を装っていたが、
     よく見ると肩が小さく上下していた⦆







アルミン「あの時のユミルは、腕組みをしながら
     飼育小屋の扉にもたれかかっていたんだよ?」

アルミン「僕らを呼びに来たって言うよりは…
     まるで僕らがそこに来るのを待ってたみたいだ」

サシャ「…ま、まあ、確かに…」

サシャ「そう言われれば、そう見えなくもありませんでしたけど…」

ライナー「…ちょっと待て。飼育小屋だと?」

ベルトルト「そ、そこって確か…」

アニ「…犯人が毒薬の実験をした場所だね」

ベルトルト「…!!」

アニ「入念に計画した事件なら、
   あの時点ではとっくに実験を済ませていたはず」

アニ「つまり、あの時の飼育小屋は
   ブヨブヨの変死体でいっぱいだった…」

アルミン「僕たちを呼びに来たはずのユミルが、
     どうしてあんな所にいたんだろうね?」

アルミン「よりにもよってあんな場所に…」

ミカサ「…まさか」

ミカサ「まさかユミルは… アルミン達を
    飼育小屋の中に入れないようにしていたの?」

アルミン「…うん、おそらくね」




ユミル『私もお前らを探してたんだよ。
    食堂に行ってもいないから、かなり焦ったんだぞ』




アルミン「多分、あの言葉の通り…」

アルミン「ユミルも最初は、
     僕らを迎えに行っていたんだと思う」

アルミン「だけど、僕たちはみんなを探しに
     既に食堂を後にしていた…」

アルミン「その事に気が付いたユミルは、
     一目散に飼育小屋へと向かったんだ」

アニ「…なるほどね」

アニ「先に出た私たちよりも早く着いたのなら、
   ユミルは相当なスピードで走っていったんだろうね」




アルミン⦅どうやら、僕らとユミルは
     どこかで入れ違いになっていたらしい⦆

アルミン⦅ユミルは平静を装っていたが、
     よく見ると肩が小さく上下していた⦆




アルミン「言い換えれば、それだけ焦っていたって事だよ」

アルミン「ユミルとしては、僕たちを
     飼育小屋の中に入れる訳にはいかなかったんだ」

アルミン「僕たちがあの異変を目にすれば、最悪の場合、
     事件計画が露呈してしまうかもしれなかったから」

サシャ「じゃ、じゃあ…」

サシャ「あの時の言葉は…」




ユミル『それはこっちのセリフだよ。ヒヤヒヤさせやがって…』




サシャ「あれは、『私たちに何かが起こったと思ったから
    ヒヤヒヤした』訳じゃなくて…」

アルミン「『僕たちが飼育小屋の中を覗かないかヒヤヒヤした』
     …そういう事だったんだろうね」

今日はここまで

コニー「ちょ、ちょっと待てよ!」

コニー「その言い方じゃまるで…
    ユミルが動物に毒を盛ったみたいじゃねーか!」

ライナー「…いや、だからそうなんだろ」

ライナー「アルミンの言うように、
     事件の全てをユミルが仕組んだのなら…」

ライナー「当然、動物実験も含まれていたはずだ」

サシャ「そ、そんな…」

サシャ「ユミルが… あの子たちを…?」

ライナー「だが、腑に落ちないな…」

ライナー「あの実験は元々、『ニワトリを介して被験者に
     C-2を摂取させられるか』を確かめるものだったはずだ」

ライナー「つまり、『事前にユミルにC粉を呑ませずに済む方法』を
     探るものであったはず…」

ライナー「ユミルが自分で呑んだって言うなら…
     なぜわざわざそんな実験をやる必要があったんだ?」

アルミン「僕が思うに… 
     あれは一種のブラフだったんじゃないかな」

コニー「ブ、ブラ…?」

アルミン「もちろん、毒の効能を
     確かめる意味もあったとは思う」

アルミン「でも、主な目的は… 僕らの推理を
     ミスリードさせることだったんじゃないかな」

ベルトルト「推理を… ミスリードさせる?」

アルミン「実際、あの実験があったせいで
     僕らの議論はそういう方向に傾いた訳だし…」

アルミン「自分で毒を服用したことを隠すために…
     ユミルはあえてあんな手間を加えたんだ」

ジャン「ちょ、ちょっと待て!
    聞けば聞くほど訳がわかんねーぞ!?」

ジャン「自分で毒を呑んだのなら…
    結局はユミルの自殺って事なんだろ!?」

ジャン「だったらなんで、そんな面倒な事を
    やる必要があったんだよ!?」

ミカサ「確かに…」

ミカサ「自殺するだけなら、他に色々とやりようはあったはず」




クリスタ『ど、毒薬…!?』

アルミン『種類もいろいろあったよ。即効性のあるものから
     遅延性のあるもの、さらには混ぜ合わせるタイプとかね』

ユミル『…そいつはまた物騒だな』




ミカサ「服毒するにしても… もっとシンプルな毒を選べばいい。
    わざわざ混ぜ合わせるタイプのものを使ったり…」

ミカサ「パーティーを利用したり、アルミンの言うような
    ブラフをかける意味が…全くわからない」

クリスタ「で、でもさ… もういいんじゃないかな」

コニー「…? 何がだよ」

クリスタ「どうしてユミルがそんな事をしたのかなんて、
     いくら考えても意味がないよ」

クリスタ「だって… 本当にユミルの自殺だったのなら、
     私たち全員助かるかもしれないんだよ?」

サシャ「ど、どういう事ですか…?」

クリスタ「ほら、自殺ってつまりは
     『その人が自分自身を殺した』っていう事でしょ?」

クリスタ「だとすれば、今回のクロはユミル自身…
     ユミルに投票すれば、私たち全員処刑されずに済むよ!」

ライナー「そうなのか? モノクマ」

モノクマ「…まあ、一応説明しておきますか」

モノクマ「えーっとですね、
     それが事件の答えかどうかは別として…」

モノクマ「もし自殺だった場合は、
     『クロは自殺した本人』という事になります」









クリスタ『本当に…この中に犯人がいるの?』

モノクマ『当然です』

ジャン『事故とかじゃ…ねえよな?』

モノクマ『というか、事故だって突き詰めれば
     【誰かの行動に起因した死】になるよね?』

モノクマ『それはそれでさ…
     れっきとした【殺人】だよね?』

ジャン『な、何だよそれ…』

モノクマ『普段はうやむやになって終わっちゃうけど、
     この兵団生活では白黒はっきりさせて貰います…』

モノクマ『この施設ではね、殺人以外の死なんて
     病死くらいしか存在しないんだよ』

モノクマ『ま、病死なんてほとんど心配しなくていいけどね。
     面倒見のいいボクがいるしね』







モノクマ「裁判の冒頭でも話した通り…」

モノクマ「この施設では、病死以外の死は全て
     【殺人】と見なされます」

モノクマ「したがって、自殺も立派な【殺人】です」

サシャ「そ、それなら…
    その場合に投票すればいいのって…」

モノクマ「『クロである被害者本人』という事になるね」

モノクマ「もっとも、“ユミルさんが自殺した”っていう推理が
     合っていればの話だけどね… うぷぷ」

クリスタ「ほら、やっぱり!」

クリスタ「ユミルが自殺して、クロになったのなら…」

クリスタ「もう死んでるから処刑も無くなる!
     ここにいる誰も死ななくていいんだよ!」

コニー「そ、そうか! そうだよな!」

コニー「誰も死ななくていいなら万々歳じゃねーか!
    それならもう、早いとこ投票して…」

アルミン「ユミルが自殺したなんて一言も言ってないよ」

クリスタ「…え?」

アルミン「いや、正確に言うなら…」

アルミン「“単なる自殺じゃなかった”ってところかな」

ミカサ「…どういう事?」

アルミン「おそらくユミルは…」









アルミン「ここにいる誰かに自分自身を殺させたんだ」







今日はここまで

このスレでは終わりそうにないので、キリのいいところで立て直します

クリスタ「…!!」

コニー「…??」

ジャン「は!?」

ライナー「なっ…!」

アニ「………………」

サシャ「…えっ? ど、どういう意味ですか?」

アルミン「そのままの意味だよ」




モノクマ『というか、事故だって突き詰めれば
     【誰かの行動に起因した死】になるよね?』

モノクマ『それはそれでさ…
     れっきとした【殺人】だよね?』




アルミン「この事件のポイントは、【誰のせいでユミルが死んだのか】
     という部分にあると思うんだ」

アルミン「ユミルの死を引き起こした人物…
     その人物こそが、今回の事件のクロなんだ」

アルミン「そしてもし、それが【毒を盛った人物】を指すのなら…」

アルミン「それはきっと… この中の誰かなんじゃないかな」

サシャ「い、いや、だから…
    それがユミルなんじゃないんですか?」

サシャ「さっき言ってましたよね?
    事件を企てたのはユミルで、毒を呑んだのもユミルだって…」

アルミン「企てたのはユミルでも、
     それを実行したのが別の人間だったとしたら?」

サシャ「は、はい…? 言ってる意味が…」

アルミン「ユミルが誰かを使って…」

アルミン「A-2やB-2粉を料理に仕込ませていたとしたら?」

サシャ「はい…!?」

アルミン「ユミルは、特定の誰かが
     A-2やB-2粉を仕込むように誘導していた」

アルミン「そして、その誘導が成功した後に、
     ユミルがその料理を食べて死ぬ」

アルミン「そうすれば、ユミルは
     A-2やB-2粉のせいで死んだことになり…」

アルミン「結果として、それらを仕込んだ人物が
     ユミルを殺したクロになる」

アルミン「つまり… その人間をクロに仕立て上げることができる」

ジャン「ま、待て待て待て! ぶっ飛び過ぎてて
    ついていけねーよ!」

ジャン「じゃあ何か!? そいつは自身が気付かないうちに、
    ユミル殺しの犯人にされたってのか!?」

アルミン「…僕の考えではね」

ジャン「い、いやいや… つーか、それが本当なら
    ますますわかんねーよ!」

ジャン「なんでユミルはそんな事したんだ!?
    誰かを犯人に仕立て上げるだなんて…そんな意味不明な事を!!」

アルミン(ユミルが誰かをクロに仕立て上げた理由)

アルミン(それは…)




【おしおきを逃れるため】
【その人を殺すため】
▶【その人を助けるため】








これだ!







アルミン「おそらく、ユミルは…
     その人を助けたかったんじゃないかな」

ジャン「は!?」




10 兵団裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、
  クロだけが卒業となり、残りの訓練兵は全員処刑です。




アルミン「裁判でクロが言い当てられなかった場合は、
     クロだけが卒業できる…」

アルミン「あの規則を利用して、ユミルは…
     その人を卒業させたかったんじゃないかな」









モノクマ『では、ここで話を戻しましょう』

モノクマ『ボクは先ほど、キミが提示した三つの願いを
     それぞれ検証した訳ですが…』




【巨人に関する重大なヒミツを手に入れる】
【あんたを処刑する】
【全員でここから脱出する】




モノクマ『結果は全てダメダメでしたね。
     どの願いを選んだとしても、明るい未来なんてありませんでしたね』















モノクマ『しかし、そんなキミに朗報です』

モノクマ『これからボクが提示する“ある事”をすれば…』

モノクマ『【巨人に関する重大なヒミツ】を手に入れた上で、
     ここから出ていくことができます』

モノクマ『その“ある事”とはズバリ…これでーす!』















ミーナ『い、イヤよ!そんなの絶対にイヤ!』

モノクマ『いやいや、イヤとかそういう問題じゃなくてさ…』

モノクマ『もはやキミに選択肢なんてないと思うけど』

ミーナ『なっ…!?』

モノクマ『だってキミは、この施設で一生を過ごしたくないんでしょ?
     一刻も早くここから出ていきたいんでしょ?』

モノクマ『だけど外は地獄だよ?
     【巨人に関する重大なヒミツ】を知っているならともかく…』

モノクマ『何も知らない状態で出ていったら、
     訳もわからずに死んでしまうのがオチだよ?』















モノクマ『だけどもし、キミが生きて【巨人に関する重大なヒミツ】を
     持ち帰ったとしたら…どうなると思う?』

ミーナ『…!』

モノクマ『残った人類と力を合わせて、
     【巨人に関する重大なヒミツ】を最大限に活かせば…』

モノクマ『シーナ、ローゼ、マリアの奪還はもちろん…』




モノクマ『巨人そのものを葬り去ることだってできちゃうかもよ?』















エレン『ミーナ…』

エレン『一体…何の話を…』




モノクマ『このまま巨人が人類を喰らい尽くすか』

モノクマ『それとも人類が共喰いを始めるか』

モノクマ『どちらにしろ時間の問題だよ』















ミーナ『………………』




エレン『おい…ミーナ…』




モノクマ『もう一度、冷静に考えてみなよ』

モノクマ『50日も訓練してる暇あるの?
     その先に彼らを救う未来はあるの?』

モノクマ『キミに迷ってる時間なんてあるの?』







アルミン「ミーナが言っていた、
     コロシアイを起こさないと未来が無いという話…」

アルミン「もし、あの話を信じたのなら、
     ユミルが今回のような凶行に走ったとしても不思議じゃない」

アルミン「いや… むしろ、そう考えた方が辻褄が合うんだよ」

アルミン「ユミルが誰かをクロに仕立て上げようとした事も…」

アルミン「わざわざ複雑な用途の毒を選んだのも、
     動物実験というブラフをかけたのも…」

アルミン「全ては、僕らに間違った答えを出させて
     その人を卒業させるため」









アルミン「卒業させて、その人に人類の命運を託すためだと…」







今日はここまで

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月07日 (土) 19:23:16   ID: Tve4kgrE

期待!

2 :  SS好きの774さん   2014年06月08日 (日) 19:49:53   ID: UWlmBynd

了解しました!

3 :  SS好きの774さん   2014年07月25日 (金) 18:51:12   ID: W76qboHI

続きが楽しみ。更新まだかなー

4 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 17:22:14   ID: zVM76nPI

期待です!

5 :  SS好きの774さん   2014年09月10日 (水) 20:22:54   ID: 9VnwRLwo

死ぬなジャァァァァン!

6 :  SS好きの774さん   2014年11月07日 (金) 16:00:25   ID: 7x-s8Rhn

ミカサか、サシャが怪しい。

7 :  SS好きの774さん   2014年11月09日 (日) 14:38:14   ID: OCxgnCCg

おもしろい。

8 :  SS好きの774さん   2014年11月11日 (火) 17:21:41   ID: 0w9y8yLH

更新だかなー?楽しみにしてます!

9 :  SS好きの774さん   2015年02月08日 (日) 23:21:34   ID: Og-OlGoX

どう考えても
クリスタが一番怪しいんだが・・・

10 :  SS好きの774さん   2015年02月18日 (水) 17:57:52   ID: j83te-sQ

さてさて犯人は…?

11 :  SS好きの774さん   2015年03月01日 (日) 18:22:26   ID: rvVsm_7S

何となくアニの言葉的にユミルって絶望側の人か?あの人(幸運)みたいに

12 :  SS好きの774さん   2015年03月16日 (月) 18:21:52   ID: 8B66oAUi

ライナー何か知ってる感じだな


13 :  SS好きの774さん   2015年03月17日 (火) 22:47:14   ID: ujX4CdwC

やっと追い付いた・・・今後の展開にwktk

14 :  SS好きの774さん   2015年03月21日 (土) 08:25:39   ID: p1gZIEy0

ライナーめちゃくちゃあやしいな

15 :  SS好きの774さん   2015年04月24日 (金) 16:33:17   ID: 5cSy-YjZ

明らか一人怪しいやついるよな?



16 :  SS好きの774さん   2015年05月05日 (火) 20:26:50   ID: pbfhDCpV

予想が合ってるなら
ヒストリアが可哀想な事になる…
そしてライナーは気付いてる

17 :  SS好きの774さん   2015年05月14日 (木) 18:57:29   ID: TYBUUCoq

今更ながらマルコが出てないのはなぜだ??

18 :  SS好きの774さん   2015年05月18日 (月) 14:43:36   ID: iA0AzAGw

あ!本当だ

19 :  SS好きの774さん   2015年06月09日 (火) 11:10:09   ID: baxxgP-C

ちゃんと纏めてくれよ……
何故本文抜かしたし。

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