「千早のグルメ」 (23)


千早「お疲れ様でした」

レコーディングが終わり、PA卓に座るエンジニアさんに挨拶をしてスタジオをスタジオを後にします。
今日は朝から新曲の収録があり、昼過ぎの今さっきそれが終わったところです。

歌ってはリテイクを繰り返し、ディレクターからの指示と自分で納得がいくまで歌わせてもらいました。
半ば私のワガママだというのに皆さん最後まで熱意を持って付き合ってくれて、本当に頭が下がります。


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千早「ずっとブースに篭もりっぱなしだったからお腹が空いたわね……」

途中何度か休憩は挟みましたが、水分を補給するだけだったので朝食を食べてから何も口にしていません。
スタジオから駅はほど近いので、事務所近くのコンビニでお弁当でも買っていきましょう。

ICカードをタッチして改札の中に入ります。
大きな駅なので、私が乗る電車のホームまでは結構な距離がある為少し歩かなければなりません。
一度階を上がりコンコースに出て、そこからまたホームまで下る必要があります。

コンコースに上がるとコンビニや惣菜屋さん等が軒を連ねていました。


千早「そういえばこういうのもあるんだったわね」

最寄駅に着いてから買おうと思ったけれど、ここで買えるのならそれに越したことは無いわね。
少し見て回りましょう。

まず一番近くにあったお惣菜屋さんを覗いてみます。
レジ下のガラスケースには量り売りの惣菜が並んでいます。
店内にはパック詰めされたお弁当やお惣菜、サラダ等が綺麗に陳列されていました。
ぐるりとお店を一周してみたけれど、どれも揚げ物が多くて私には少し食べるのが大変そうだったので別のお店に行くことにします。


結局行き慣れたコンビニに行こうと歩を進めると、コンコースの中心で開かれている催事に気がつきました。
地方の物産展なんかと一緒に駅弁が沢山売られています。

千早「駅弁……そういうのもあるのね」

選択肢に無かったお弁当に心惹かれます。

千早「少し高いけれど……うん、買って帰りましょう」

本来なら新幹線の座席で食べるような物なのだけれど、たまにはこういうのもいいかもしれませんね。


売り場を見て回ると、やっぱりお肉系のお弁当が人気のようです。
牛タンやステーキ、どれも美味しそうだけれどやっぱり重そうですね……。
別の什器には幕の内弁当や魚介系のお弁当が並んでいました。

千早「うん、コンパクトで美味しそう」

什器の上に貼られた見本写真で中身と値段を比べて、並べてある駅弁を一つ取りお会計へ向かいます。

店員「1点で1054円になります」

ICカードで支払い、ビニール袋に入れられた駅弁を受け取ります。


店員「ありがとうございました」

袋を提げてホームへ降り、丁度よく来た電車に乗ります。
数駅揺られるとすぐに最寄駅に着きました。
改札を抜け、通い慣れた道を歩き事務所へ。

収録が上手くいった事で足取りは軽く、気が付けばあっという間に事務所へと到着しました。

階段を登る途中から、事務所内の喧騒が聞こえてきました。
何となく静かな場所で食べたかった私は扉を開けず、更に階段を上ります。


最上階へ上がり、軋んだ音を立てる鉄扉を開いて屋上に出ました。

少し日差しはキツイですが、食事の間くらいだったら我慢できます。
敷物も何もありませんが、濡れている訳でもなく、結局洗濯するので地べたにそのまま座ることにしました。
柵に寄りかかり、ビニール袋から買ってきた駅弁を取り出します。
紙の包みを剥がして蓋を開けると、真ん中に大きな焼き鮭どんと乗っていて、その下にはそぼろ状の玉子が満遍なく散りばめられています。
さらにウニを煮たものといくらが少しだけ乗っていました。
端には付け合せのレンコンと里芋の煮物、高菜が。


千早「いただきます」

割り箸を割ってまずは大きな鮭から口に運びます。

千早「はむっ……んっ……あむっ」

塩味の良く効いた鮭は適度に柔らかく、あまじょっぱくてすごく食べやすいです。
続いてご飯を食べようとしましたが、敷き詰められた玉子がぽろぽろとこぼれてしまいます。
お弁当箱の中に落ちる分にはいいのだけれど、地面に落ちたら片すのが大変そうですね。
とりあえず掴んだご飯を口に入れ、それからこぼれた玉子を食べていきます。


千早「あ~むっ……はむっ……んむっ」

少し甘めの玉子とご飯だけを食べる。
あんまり味はしません、当然ではありますけれどどこまでいっても玉子とご飯です。

もう一度ご飯を口に運び、同じように玉子を食べ、そこで鮭にかぶりつく。

千早「あぐっ……はぐっ……んくっ」

玉子と鮭の甘さと塩加減がお口の中で混じり合い、その甘じょっぱさに箸と口を動かす早さが増します。


ウニはあんまり食べたことが無いけれど、独特の臭みもなく回転寿司で食べるような物よりも食べやすく美味しいですね。
煮てあるからかしら?
いくらは噛もうとすると、押し返されるんじゃないかいうくらい弾力というか張りがあってプチプチとした食感が食べていて楽しくなってきます。
玉子、ウニと鮭の甘さ、そこにいくらと鮭の絶妙なしょっぱさがまるで一つの音楽のように口の中でハーモニーを奏でています。
……なんて、少し気取ってしまっているかしら?

メインのご飯と鮭を半分位食べたところで、端にある煮物に箸を伸ばします。

千早「端に箸……ふふふっ」

春香あたりに言えば結構ウケるんじゃないかしら?
自信作よ。


レンコンを掴んで半分位を一口でかじります。

千早「はむっ……んむっ……」

シャキシャキとしたレンコンは味がしっかりと染み込んでいました。
丸々とした里芋もそれは同じでした。
レンコンとは違い柔らかな食感と、里芋特有の滑りを楽しみます。

続いておかずカップに入れられた高菜をひとつまみして口に運びます。


千早「あ~んっ……んん!?」

普通の高菜のお漬物かと思いきやとっても辛い。
これは辛子高菜ですね。
油断してました……。
美味しいんですけどやっぱり辛いです。

もう一口だけ食べ、すぐに玉子とご飯を口に入れます。
玉子の甘さで、高菜の辛さが少し抑えられて食べやすくなりました。
このくらいなら逆にご飯が進む辛さですね。


千早「はぐっ……あむっ……んむっ……んっく……ぷぁ」

ご飯とおかずの間をお箸が忙しなく動き、気がついたらもう完食です。

千早「ごちそうさまでした」

お弁当箱とお箸をビニール袋に放り込んで口を縛ります。
あとはゴミ箱に捨てるだけですね。


カバンからペットボトルの水を取り出し、喉へ流し込む。

千早「んっ……んっ……ぷは」

食後の満腹感と多幸感に包まれて屋上を後にしました。

最低限の栄養が摂れればそれで良いのだけれど、たまにはこういう食事も良いかもしれません。



おしまい

終わりです。

たまたま立ち寄った駅で駅弁が売られていたので衝動買いした結果書きました。

少しでもお腹が空かせられたら幸いです。
それではお目汚し失礼しました。

以前書いた
「律子のグルメ」
「春香のグルメ」
「貴音のグルメ」
「響のグルメ」
「やよいのグルメ」
と同系統の作品ですので、こちらも合わせてよろしくお願いします。

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