コナン「真実はいつもひとつ!」灰原「バカね」 (48)

コナン「あれからもう10年か」

灰原「そうね。あなたとの腐れ縁も、もう10年になるわね」


俺たちは元の体に戻れずに江戸川コナンと灰原哀として10年の歳月を過ごした。


コナン「色々なことがあったな」

灰原「そうね」

この10年間色々なことが起こりすぎた。
黒の組織のボスが死亡。その結果、組織は壊滅。
脅威は無くなったが同時に元の体に戻るすべも失った。

この事実はベルモットから聞いた。
彼女は組織に対して含むことがあったようで
裏ではボスとの対立もあったようだ。

同時期、阿笠博士も何者かによる犯行で殺害された。
事故現場の博士の家からは32口径の弾痕が見つかっている。
現場から逃走する大型バイクを運転する女性が目撃されたが
犯人はいまだ捕まっていない。

元の体に戻れないと知った俺は
蘭に真実を話すことをやめ
江戸川コナンとして生きることを決意した。

灰原(私は事件の真相を知っている)

灰原(ベルモットと取引をした)

灰原(あの方の命と引き換えに、彼と私の命の保証)


灰原(あの方は小さくなった私を、組織には秘密のまま匿い利用し続けた)

灰原(それは私が私の命を守るためにあの方とした取引)

コナン「どうしたんだ灰原、難しい顔をして」

灰原「なんでもないわ」

灰原「それより工藤君、あなたはこれからどうする気?」

コナン「俺か?俺は……」

コナン「このまま江戸川コナンとして平凡に生きるさ」

灰原「あなたらしくないわね」

コナン「仕方ねえだろ、もし工藤新一に戻れたとしても戻る理由もない」

博士の死後、博士からもらった道具は時の流れとともに壊れていった。
直せる人はもういない。麻酔が使えない。声も変えられない。
眠りの小五郎はいつしか名探偵の名声を失い
酒に溺れ体を壊し、入退院を繰り返すようになった。
お金にも困りはじめた。

そんな状態の中おっちゃんを懸命に看病する蘭は
俺を、工藤新一を待つことはなかった。
蘭が大学を中退し、おっちゃんの看病中に知り合った男と寄り添うようになった……。

その頃から、蘭と同じ家に住むのが苦痛になり
親父に事情を全て話し、家族と一緒に暮らすことにした。
灰原も博士の死後、おっちゃんの家で一緒に暮らしていたが
俺と一緒に日本を出ることを決めた。

パスポートはどうやったかは知らないが親父が工面した。

灰原(彼はきっと探偵に未練を持っている)

灰原(私は彼の力になりたい)

灰原(あれから本当に色々なことがあった)

灰原(彼にも迷惑をかけた)

灰原(どうにかして償いたい)

灰原(できることなら彼とずっと一緒に……でも……)

コナン「また難しい顔してるな」

灰原「悪かったわね。生まれつきよ」

コナン「なあ灰原、俺は……江戸川コナンとして来年18歳になる」

コナン「灰原と一緒に暮らしてて思ったんだ」

コナン「俺の家族と暮らし始めたころ申し訳なさそうにしてたな」

コナン「俺はなんとかして笑わせたい、楽しませたい、そうやって生活してた」

コナン「でもある時気づいたんだ」

コナン「俺は灰原の笑顔が好きだってことを」

コナン「いつも無愛想にしてる灰原の時折見せる笑顔が好きだったんだ」

灰原「バカね」

コナン「灰原、俺と結婚してくれ」

コナン「平凡な生き方でいいんだ。少しの幸せでいいんだ」

コナン「これからも俺と一緒にいてくれ」

灰原「バカね……」

灰原「……ありがとう」

灰原「でも……」

灰原はゆっくりと博士の事件の真相を話し始めた。

涙を浮かべながら……時折激しく感情を露わにし
自分を責めながら全てを話してくれた。

ここまで感情を表に出す灰原は

『どうしてお姉ちゃんを助けてくれなかったの?』

この時以来見たことがなかった。


そして灰原は続ける……

灰原「私のせいで工藤君は探偵を続けられなくなった」

灰原「少年探偵団もあの事件があって解散」

灰原「どうにかして工藤君に償いをしたかった」

灰原「私だって工藤君と一緒にいたい」

灰原「これからもずっとずっと一緒にいたい」

灰原「でもこのことを話さないと私は笑えない」

灰原「心の底から笑えないの」

コナン「バーロー」

コナン「なんでもっと早く言わなかったんだ」

灰原「言えるわけないでしょ」

コナン「……そうだな」

コナン「気づいてやれなくてごめんな」

コナン「ごめんな……」

この日、二人で手を繋ぎながら家に帰った。
言葉を交わすわけでもなく
ただ静かにゆっくりとゆっくりと歩いた。

それから俺と灰原は、あの時の歩幅のように
ゆっくりとお互いの距離を縮めていった。

だが、たまに見せる哀しそうな顔はいつになっても変わることがなかった。

コナン「なあ灰原」

灰原「なに工藤君」

コナン「最近本を読んでること多いな」

灰原「そうね。工藤君のお父さんのお仕事をお手伝いしてるから」

灰原「その影響かしら」

灰原「でもこうやって本を読んでると自分の世界に入れるから好きよ」

灰原「それに私も……いいえ……なんでもないわ」





またこの顔だ、目をそらし少しうつむきながら……灰原は言葉をやめた。

灰原の哀しそうな顔
俺が探偵をやめたことに関係してるだろう。
俺だって好きでやめたわけじゃない。
あの時の俺には続けることができなかった。
江戸川コナンとしてあれ以上のことはできなかった。

俺は推理が好きだ。
でもそれだけじゃ生きていけない
推理が仕事になるようなものなんて滅多にない。
探偵、弁護士、検事
戸籍が危うい俺にはどれも無理な話だ。
いっそのこと親父のように推理小説でも書ければいいが
俺にはそんな文章力はない。

コナン「最近眠そうだな」

コナン「ちゃんと寝てるのか」

灰原「昔から変わらないわよ」

灰原「工藤君だって言ってたじゃない『目つきの悪いあくび娘』って」

コナン「バーローそうじゃねえよ」

コナン「いつもより目つきの悪いあくび娘だから言ってんだよ」

灰原「失礼ね。工藤君のことを考えてるから寝不足なのよ」

コナン「なっ!なにいってんd 灰原「なーんてね」

コナン「ニャロー」

こんな日常を繰り返しもうすぐ俺は18歳になる。
あの日、告白してから
結局あやふやなまま過ごしている。

灰原「工藤君ちょっといいかしら」


そういって俺を去年のあの場所に連れて行った。


灰原「あの日ここで工藤君からのプロポーズ嬉しかったわ」

灰原「今でも私はあなたと一緒にいたいと思ってる」

灰原「償いたいとも思ってる」

灰原「私は工藤君が推理してる時の真剣な表情が好きだった」

灰原「でも私のせいであなたは推理を、探偵をやめてしまった」

灰原「本当にごめんなさい。許されるなら」

灰原「もう一度あの真剣な表情を見せてほしい」

灰原「これ。私が書いた推理小説」

灰原「ここに私の気持ちを全て書いたわ」

灰原「私と推理勝負よ」





コナン「バーロー俺を誰だと思ってるんだ」

灰原「期限は三日後の同じ時間にここで聞くわ」

さすが親父の手伝いをしてただけあって
文章がしっかりしてる。
元々頭のいい灰原が書いたのだから当たり前か。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
幼馴染とかわいい同級生、突如現れた転校生
メガネの男の子を巡っての恋愛バトル
そこに巻き込まれたソバカスの男の子
メガネの男の子は誰を選ぶのか?
『真実の愛はいつもひとつ!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「バーロー」思わずつぶやいた
読む前から答えなんてきまってる。
博士のことがあったとしても関係ない


俺は灰原が好きだ。

~三日後~

灰原「工藤君、答えを聞かせてくれる」

灰原「私は工藤君が好き」

灰原「…………」


うつむき手を差し出す灰原
その手を無視し俺は灰原を抱きしめた。


コナン「俺も灰原が好きだ」

灰原「ありがとう」


灰原はまた感情を表に出し泣いた。
でも一つだけ違うのは、笑いながら泣いていた。

コナン「なあ灰原」

コナン「ひとつだけ字の間違いがあったぞ」

コナン「正しくは『真実の哀はいつもひとつ!』」


灰原「バカね」

灰原「でもその表情…ありがとう」




~Fin~

~後日談~

元太「おーい歩美ー」

歩美「なあに元太君」

元太「あの小説読んだかー」

歩美「もちろん読んだよ」


元太&歩美「「ソバカス少年殺人事件」」


元太「なあこれってやっぱりあの事件のことだよな」

歩美「元太君もそう思ったんだ」



探偵『昼寝の小太郎』が、無残にも殺されたソバカス少年殺人事件の真相を暴く探偵推理小説
その収益の一部はモデルとなった探偵に支払われる契約となっている。



歩美「みて元太君、この小説書いた人の名前」





著 South Lake&Rose Gray

短いですが以上です
象速は禁止でお願いします

ありがとうございました

スレタイ訂正
×コナン「真実はいつもひとつ!」灰原「バカね」
○コナン「真実はいつもひとつ!」灰原「そうね」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom