まどか「あのねほむらちゃん」 (61)


ほむら「なにかしらまどか」

まどか「私はね、今とっても悲しいんだよ?」

ほむら「そう、……そうね」


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ほむら「で、なにかしら」

まどか「……」

まどか「……ええと、なにしてるの?」

ほむら「朝のティータイムよ。欧州では当然にあるのでしょう?」

まどか「あ、私が居たのはアメリカだよ?」

ほむら「欧米?」

まどか「そう」

ほむら「けれど大本は同じなのでしょう? それともまどかは、メリケンヤンキーには朝にティータイムを設けられる程の心の余裕なんて無い。と、そう言いたいのかしら?」

まどか「あらぬ誤解だよ……」


ほむら「けれどまどか、アメリカ人だって全く紅茶を飲まないというわけでは無いのだから、米国にかぶれたまどかの前でこれみよがしに紅茶を飲んでも良いという事よ」

まどか「良いという事になるかどうかはともかくその言い方……」

まどか「……う、ううん、間違ってはいないし、あっちだと確かになにかしら文化や価値観の違いってあって私も嫌な思いをしたことあるから、こういう他の人の考え方に、ね? ……その、私とほむらちゃんは友達だと思ってるし、あんまりこういう酷いことを言いたくはないんだけど」

ほむら「なによ」ズズッ

まどか「ほむらちゃんって馬鹿なのかな……?」

ほむら「ひどいことを言うわね」ズズッ

まどか「とりあえずお茶飲むの止めよう」

ほむら「どうして?」

まどか「どうしてって……」

まどか「往来の、しかも通学路の真ん中で机と椅子まで用意して紅茶はないよほむらちゃん」

ほむら「そうは言ってもまどか、立って飲むわけにはいかないのだからしかたないでしょう?」

まどか「うん、そうだね…‥」

ほむら「……」ズズッ


まどか「いや、やっぱりおかしいよほむらちゃん。それにその、恥ずかしいよ」

ほむら「恥ずかしいとは思わないけど」

まどか「私がだよ、私が」

ほむら「あらそう、いよいよなのかしらね」

まどか「さも『潮時か……』みたいな口調で言わないで」

まどか「……あ、ひょっとして罰ゲームとか? ダメだよほむらちゃん、嫌なことは嫌って言わないと」

ほむら「いいえ、これは私の意思よ。貴女のために私は悪魔になったのだから」

まどか「うん、いや、……うん」

まどか(ほむらちゃんは馬鹿じゃないと思うけど、どうやら私を馬鹿にしているのは間違いないなぁ)

さやか「……」スタスタ

まどか「あ! さやかちゃん!」ホッ


さやか「おはよう、まどか」

まどか「おはようさやかちゃん!」

ほむら「おはよう美樹さやか」

さやか「ああ、おはよう、暁美ほむら」

まどか「どうしてお互いフルネーム呼びなのかな?かな?」

さやか「私たちは仲良しだからだよ」

ほむら「そうとも言うわ」

まどか「いやいやなんでそこで言葉に含みを持たせるの? そのやりとりは全然仲良くないやつじゃない」

ほむら「心配しなくてもこの娘に持たせる含みは無いわよ」

まどか「心配じゃなくて警戒だよほむらちゃん。私の人間関係に裏側を持たせようとしないで」

ほむら「随分と的はずれな警戒してるのね」

さやか「まどかは別にステップを踏んでないじゃん、適当な事を言わないでよほむら」

まどか「ステップ? ……あ、ああ軽快から取ったんだね?」

まどか「……い、いや考えるまでもなくそれは苦しいよさやかちゃん。それはなに? 対抗意識?」

さやか「いやいや、まどか。そいつには言いたいことが山ほどあるけど、これだけは言っとかないとってのがあるわけよ」

まどか「会話が絶妙に噛み合って無い気がするけどいいねいいねさやかちゃん。私もちょっとわずかにほむらちゃんには物申したいことがあったし、代わりにバシッと言ってあげて」

さやか「あんただけは絶対に許さない。 私がこの手であの世へ導いてやる」

まどか「」ズルッ


ほむら「あらら、怖いわね」

まどか「……あ、あの、さやかちゃん? 幾らなんでも沸点が低すぎない? ほむらちゃんの奇行は奇行だけど悪行じゃないんじゃないかな……?」

まどか(善行かって言われると、私は首を横に振るしかないけど……)

まどか「ところであの、許せないことって?」

さやか「こいつはね、まどか。あんたの願いを、想いを、踏みにじったのよ」

まどか「私を巻き込まないで」


さやか「まー巻き込まれたのはむしろ私なんだけどさ」

まどか「えっと?」

さやか「ともかく! こいつは悪い奴だからねまどか」

まどか「悪い奴って、…‥そんなことないよねほむらちゃん」

ほむら「いいえ、事実よ」

まどか「事実なの!?」ヒビクッ

ほむら「まどかのすべてを飲み干して、奪い、世界を変えたのよ」

まどか「あ、なんだ、紅茶を私の分まで飲んじゃたってことだね。ははっ、オーバーだなぁー! いや、世界というかこの空気は明らかにほむらちゃん由来だけど、いいよいいよ、別にそんなことで怒らないよ?」

さやか「まどか、あんたは忘れてるだけ。思い出して、まどかの使命を」

まどか(あぁ、帰って来た時から思ってたけどこの子、めんどくさい性格になってるなぁ……)


杏子「いよーぅお前らおそろいで」

まどか「ああ、もう私には杏子ちゃんしかいない!」ガシッ

仁美「あら^~」

杏子「ん、なんだよキモいな」ペシッ

まどか「あひん」ポテッ

ほむら「あら、おはよう二人共」

さやか「おはよー!」

杏子「おうっ!」

仁美「ええ、おはようございます」

杏子「おい、変態まどかはほっといてさっさと教室いこーぜ」

まどか「あ、ひどいよ杏子ちゃん!」

さやか「まどかさんってば春ですなー」

ほむら「待って待って、今これ片付けるから」

まどか「なんでこんなめんどくさいことを毎日するかなぁ……」

ほむら「いやいや、まどか。」

まどか「うるさい!」

ーー教室

まどか(私がこの町に帰ってきてもう一週間。最初の頃はそんなに意識してなかったけど、やっぱり、みんな変だよね……)

QB(変って、どの辺りがだい?)

まどか「ひょわっ!?」


QB(なにをそんなに驚いているんだい? キミにとってテレパシーだなんて、もはや日常の物と言い切ってもいい頃だろうに)

まどか(そ、そりゃあそうだけど、いきなり話しかけられたらびっくりするってば)

QB(そうなのかい? ……いや、おぼえておこう。君たち人間は突然話しかけられたら驚く)

まどか「……」

QB(あれ? おーいまどか、どうしたんだい? 僕が何か怒らせるようなことを言ったのかい? テレパシーを切るまでのことを言ったのかい?)

まどか(QBにしてもそう、こっちに帰ってきて急にしつこくなったというか、……うざくなったというか……)

まどか(いやでも、前からこんなんだったような気もしなくもないし……)

ほむら(キュウべぇがどうかしたのかしら?)

まどか「くひん!?」

まどか(ほ、ほむらちゃん!?)

ほむら(さっきからあなたが嬌声、……いえ、奇声を上げるものだから。まさかと思って美樹さやかを取っ詰めたのだけど、何も知らないと言うのよ。だったら、こそこそと動き回るネズミを疑った方が早いじゃない?)

まどか(ね、ネズミ?)

ほむら(いえ、どうかしたのかしら?)

まどか(いや、別になんにもないけど……)

ほむら(そう、だったら授業にしなさい。いつまでも中学生ではいられないのだから)

まどか(……そうだね。ごめんなさい)

ほむら(そう、さすがまどかね)

まどか(なにが?)

ほむら(とても素直で、かわいいということよ)

まどか(あ、あはは)

放課後

さやか「おーいまどか~。帰ろうぜぃ」

まどか「あ、えっとごめんね? ちょっと寄るところがあるから」

さやか「ふーん?」

さやか「……」ジー

さやか「帰ってきて間もないのにまどかってば忙しいねぇ~」

まどか「えっと、うん。親戚のおじさんに挨拶とかママの会社の人とお食事会とかいろいろあって……」

まどか(嘘だけど)

さやか「いやちょっと、会社のって接待ってこと? そりゃあちょっと青年誌でも危ういのではないですかな?」

まどか「ち、ちがうちがう。えっと、家族で仲の良い人だから。お祝いにというか、久しぶりに~ってママたち盛り上がっちゃって」

さやか「……」

さやか「あ、なーんだてっきり、あはっ、ちょっとさやかちゃんってば大人になりすぎましたなぁ? あっはっは!」

まどか「あ、あはは」

まどか(さやかちゃんは、なんだかんだで優しいなぁ)

まどか(うー、ほむらちゃんは、まぁどうせ付いて来るんだろうけど、来ないでって言ったら隠れててはくれるかな?)


ほむら「……ずーん……」

杏子「おいおいどしたよほむら。ズーンとか口で言っちまうほど凹んじゃってさ?」

ほむら「心配ないわ」

杏子「いや、そうは見えねえよ。人間相当凹まないとズーンなんて言わないぞ? まーあたしは相当凹んだってズーンなんて言わないけどさ、せいぜいガーンとか、ごーんとかだろ」

ほむら「いえちょっと、まど、……あんな純粋な子に一切信用されていないという事実は思った以上に……」

杏子「あー?」

デパート CDショップ

まどか(なんとなく一人で帰りたくてこんなところまで来たけど、この町も思ったより変わってないなぁ)ブラブラ

まどか(あ、でもアイドルとかは知らない人ばっかりだな。AWB24とか、巴マミとか、BIILとか全然わかんないや)


???「あ、あぁ~ごほん。キミに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

まどか「?」

???「私は呉キリカ。……まぁ名前なんてどうでもいいんだよね。キミと私はこの場限りの関係なんだ」

まどか「???」

キリカ「おっと、ごめんなさい」ペコリ

まどか(……なにに謝ったんだろう)

キリカ「よければキミの名前も教えてもらえると、私はキミととても話かけやすくなるんだけどいいかな?」

キリカ「もちろんキミが急に現れた私のことを信用出来ないと、どこかへ行ってしまえというのなら私はそうしようかな」

キリカ「うん、私はそれでも構わないんだ、できれば私はキミと仲良くなりたいのだけれど、好意というのは相互関係であるべきなんだよ。そう思うだろ?」

キリカ「なにせ愛は、無限に有限なのだから」


まどか(……この人は、あやしい)

まどか(怪しいというより、妖しい)

まどか(私はこの人とお話するべきじゃない、気がする)

まどか(……でも)

まどか「まどか、です。鹿目まどか」

キリカ「まどかか、うん、いい名前だね。とてもいい名前だ。なにせ私の大好きな名前であるのだからね。いい名前に決まっているんだ」

キリカ「そう、反吐が出るほどに」


まどか(なんだろう、この感覚)

キリカ「おっと、それどころじゃなかった。ねえまどか、キミ巴なんとかってアイドルのCDがどこにあるか知らないかい?」

まどか(とても怖いのに、とても懐かしい)

キリカ「知り合いの女の子に欲しい欲しいとせがまれててね。一緒に住んでいるのだから直接渡してもらえと私なんかは思うのだけど、おっと、これは関係のない話だった」

まどか(巴?)

まどか「あ、それってひょっとして、これ?」オズオズ

キリカ「ああ! それだよ! いやまったく彼女はどこまでも私の恩人だ!!」

キリカ「私の愛を何度も何度も殺さないでいてくれる!! しかも手っ取り早く機会をくれた! なんてことだ! 好きになってしまいそうだ!」

キリカ「……」

キリカ「私が? 誰を? 好きになるだって?」

まどか(……?)

キリカ「まったく、冗談はよしてくれ 私が織莉子以外を愛するだって? だめだだめだ! ……これは、この呪いは思ったよりも厄介なようだ。ひょっとすると私が織莉子を嫌う世界もあるということじゃないか!」

まどか「あの……?」

キリカ「こうしちゃあいられない。ありがとう鹿目まどか、そしてサヨナラだね」

まどか(なんかいちいちオーバーな人だなぁ。このCDショップに私達以外がいたらきっと、私まで変に見られてたかも……)



と、そこまで思っても、私はちっとも疑問に思わなかった。

私だって魔法少女なんだから、冷静に考えれば何かがおかしいって気付くはずなのに

なんで今、この場所には誰も居ないんだろうって

後になって思えば、それはおかしいってことに慣らされすぎてたせいなんだろうけど

とにかく私はその時、より正確には『目の前の少女のからだが真っ二つに割れる』まで

まったく、これっぽっちも、違和感すら感じていなかった。



まどか「あっ……」


息を呑むということさえ忘れていた。

放心状態になることすら怠っていた。

まるで私の存在だけがひどくノロマなものになってしまったかのように、前触れもなく、世界がぐるりと色を変えた。

幾何学模様のなにかが私のいるデパートを包んでいく。

なんだろうこれ、わからない。

わからないけど、とても懐かしい。

そうだ、私はコレを知って――



ほむら「まだよ、まだ早いわ」


そして世界が、動きを止めた。



ほむら「忘れていたわ。私があの人を遠ざけた時、誰が来るのかを。けれど、そうね。まさかイレギュラー要素が私に歯向かうだなんて思いもしなかった」

ほむら「つくづく、悪魔に優しくない世界だと思わない?」

キリカ「だったら、[ピーーー]ば?」

ほむら「それはイヤ」スッ


まどか「!!」

まどか「……あっ、いやぁああああああああああああああああああ!!」


ほむら「ほら、まどかに謝りなさいよ。トラウマになったらどうしてくれるのよ」

キリカ「うーん、確かにショッキングだったかなとは思うけれど、それはまぁどうせ、些細な事さ」











まどか「あ、あれ……?」

キリカ「やぁ、どうしたんだい?」

まどか「あ、れ、? でも、今さっき、え?」

キリカ「ははっ! 私は『あんな魔法』にやられはしないよ。今キミに見せたのは『幻』さ」

まどか「幻?」

まどか「えっと、じゃあ……」

キリカ「ああ、ピンピンしてる」

まどか「よ、良かった……」

キリカ「さて」


キリカ「『よくもやってくれたね暁美ほむら』、危うく死ぬところだったじゃないか」


まどか「……え?」


まどか「えっ? え?」

ほむら「……なにがどういうつもりかわからないけど、まどかになにかを吹き込むつもりなら」


全部言い終わらない内に、ほむらちゃんは黙った。

しゅるしゅるとまるで生き物のように動く黄色のリボンが、ほむらちゃんの口を塞いだからなんだけれど

その人はこんこんと空中を蹴ると、ほむらちゃんのすぐ近くに降り立った。

とても優雅、というか芝居がかった仕草で、既に手足を縛られて身動きの取れなくなったほむらちゃんの顎をくいと持ち上げる。


マミ「初めまして、暁美ほむらさん……だっけ?」

ほむら「……」


――まただ。

また、なにかが違ってる。


マミ「なぎさ、お願い」


私の中に生まれた疑念を疑念として受け入れる前に、その人は誰かに向けてそう言った。

答えるように現れたとても大きなそれは、がばと大きな口を開けて、そのままほむらちゃんを呑み込んだ。

またしても私は、息を呑む間すら与えてもらえなかった。


キリカ「愛だの時間だのは彼女だけの特権じゃないってことさ。どうだった? まさに電光石火だったろう?」

キリカ「最近ね、魔獣じゃなくて『魔法少女だけが殺される事件』っていうのが起きててね」

キリカ「まったく、とんでもない話だと私は忸怩たる思いでいたんだ」

キリカ「そうしていたら、彼女に愛を、いや命を助けてもらってね」

キリカ「ようやく私は抱えていたものを信頼の置ける人に相談することが出来たのさ」

キリカ「結論を言ってしまうと、私達は罠を張っていた。おびき寄せるための餌は『なにも知らないよそ者の魔法少女』、……まぁ、キミだね」

キリカ「そしてその後は、キミの知る通りさ」


キリカさんに別れを告げた後、私はふらふらと家路についた。

ほむらちゃんがそんなひどいことをするはずがない

何かの間違いだと叫びたかったのだけれど

その度にあの光景が馬鹿な私の頭をガンと叩く


キリカ「彼女はまだ、殺さない。一応、彼女はまだ容疑者にすぎないからね」

そんな言葉を、私はいったいどんな顔をして聞いたのだろう。



結局、その日の夜は一睡もできなかった。

_


キリカ「時に織莉子。聞きたいことがあるのだけど」

キリカ「いや、時間を取らせるつもりはないんだ。……ううん、どうだろうね、長くなるかもしれないな。もちろん、きみが否というのであれば、私は口を噤むのもまた吝かではないさ。そう、永遠にと言われても完遂してみせるね。キミという須臾の無限を思えば、私の永遠なんて些細な有限なのだから」

織莉子「いつものように要領を得ない台詞ねキリカ、いったいどうしたというの?」

キリカ「あはは、大したことじゃないんだ。……ねえねえ、キミは二週目をどう思う?」

織莉子「二週目?」

キリカ「強くてニューゲームでもいいけど、それだとキミには不親切で不適当だからなぁ」

織莉子「それは、ええと、テレビゲームのお話かしら?」

キリカ「おっと、それで子供っぽいというのは無しだよ織莉子、…でもそうだなあ。きみにわかるように言うと、転生、とでも言うべきなのかな

織莉子「転生?」

キリカ「いや? 本質的にはそのままなのだから転移、あるいは跳躍なのかも。空間転移、時空跳躍」

織莉子「夢のあるお話ね」」

キリカ「ドンピシャ、夢のお話だよ。まぁ、うっすらとしか覚えていないのだけどね。頭の中がまるで霧の中だよ。……まぁ、きみに夢中、という部分もある」

織莉子「……キリカ」

キリカ「私の力はね織莉子。誰よりも速く駆けることができるけど、誰とでも駆けるってわけにはいかないんだ」

キリカ「私はキミの側にいたいんだよ。望みもしないお節介で一方的に連れて行かれるなんて御免こうむるね」

織莉子「つまり?」

キリカ「これはチャンスなんだ織莉子。キミがいて私もいる。やり直せるんだ、私たちの悲願を。完膚なきまでに。念入りに。執念深く」

織莉子「……」

キリカ「ダメかな」

織莉子「私は、今を生きています。……そして、貴女も」

織莉子「キリカ」

織莉子「私の力はねキリカ。未来を見通すことはできるけれど、過去を見透かすことはできない。私は私の定規でしか物事を図れない。私にとって貴女は、私の中の貴女でしかないわ」

キリカ「とーぜんだね!」

織莉子「ならば何も変わらない。……私は私とあなたの未来のために彼女を」

織莉子「鹿目まどかを殺すわ」

キリカ「いいね。それでこそ私の織莉子だよ。」

キリカ「それじゃあ私は、きみの使命にほんの少しの私怨を乗っけようじゃないか」

キリカ「さあぶっ壊そうよ。独りよがりなこの世界を。神も悪魔も、まとめて堕としてしまおうよ」



キリカ「これは、私達の叛逆だ」

プロローグここまで
疲れたから続きはまた明日

やぁ、挨拶は大事だと君たちには教わっているからね。こんにちは。あと、どういう経緯があったにせよ僕は彼女を恨んだりはしないから安心していいよ。僕はただ事実、まぁそうだね、彼女が僕達の手に負えなくなったということだけど、それを受け入れるつもりでいる。本当に興味深い事象だよ。絶望をも凌駕する感情なんて寡聞にして知らなかったし、持たざる僕等には観測と実験の果てに、ようやく理解するほかないだろうさ。彼女が生きている内には結論を出したいところだね。もっともそれはおいおい、僕以外の僕に任せるとしようじゃないか。

おっと、挨拶のあとは自己紹介しないといけないんだったね。
僕はキュウべぇ。
もう今更詳しく説明はしないけど、君たちの味方さ。
インキュベーターでもいいけど、君には是非キュウべぇと呼んで欲しい。君とは良好な関係を結んでおきたいんだ。

君に伝えるべきことの要点を掻い摘んでおくと、彼女が世界を改変して以来、魔獣の数が激増した。
不安定で絶対的な感情で創造されたこの世界ではさもありなんと言ったところだね。
こうなることを予想したからなのだろう、彼女が僕達を君たちの星に残したのは。
そうでなければ僕等はとっくに君たちから身を引いている。

何度も言うけどこの世界は歪で、非効率的だ。
僕たちはこの世界を正さなければならない。

……まったく、気の長い話だよ

第一章


杏子「……で、お前あんなところでなにしてたんだ? 遊んでるようには見えなかったから思わず叩き切っちまったが」

ほむら「……助かったわ。ありがとう。容赦無いのね」

杏子「でも結局逃げられちまったんだよな。あいつ一体なんだ? バケモノかと思ったら人間になって逃げてったし」

杏子「逃げたつってるのに時止めてまであたしたちまで逃げるだなんてお前にしては徹底してるしさ」

ほむら「……あなたこそ、どうしたのよ」

杏子「あたしか? ……いや、さやかの様子がおかしくてな」

ほむら「あの子はいつもそうじゃないの」

杏子「あーいやいや、そういう話じゃなくてだな」

杏子「なんて言うの? 円環がどうとか、そういうのはまだいいんだ。けどさ、お前のことを悪魔だって言うんだよ」

ほむら「……その通りよ、よかったわね。悪魔退治できるわよ」

杏子「だーから、やめろってお前までそんな事言うの。あたしは神様とかそんなんが大嫌いなんだよ」

ほむら「そう、じゃあ悪魔の仲間にでもなる?」

杏子「いや、悪魔はもっと嫌いだけど」

ほむら「……そう、残念ね」


杏子「なんかさ、どうも気に入らねえんだ」

杏子「こう、あたしの知らないところで知らないもんが勝手に何かをしてるっていうのは苛つくじゃん? ここらはあたしのシマだっての」

ほむら「その通り、あなたには関係のない話よ」スッ

杏子「おいおい、どこ行くんだ」

ほむら「帰るのよ、家が荒らされてないか確認してこないと」

杏子「あ、じゃああたしも行く」

ほむら「はぁ? どうして?」

杏子「いや、さやかとは派手に喧嘩しちまったから帰りにくくてさ。しばらく匿ってくれよ」

ほむら「いやよ。どうして私が」

杏子「いいだろ? 久しぶりにお前んとこのチビどもにも会いたいしさ」

杏子「それに、実はその、なぁ?」

ほむら「なによ」

杏子「いや実はだな」

ほむら「……わかったわよ、あの子も連れて来なさい」

杏子「ひょぇっ?」

ほむら「ちらちら見切れてるのよさっきから」

杏子「あー」

ゆま「……」


ほむほーむ

QB「誰のそばにいるべきなのかというのは、僕にとってとても重要な選択肢だったのだけれど。杏子にゆままでいるとなればどうやら君を選んで正解だったようだね」

ほむら「……」ジャキン

QB「」

QB「ふぅ、お願いだからこういうことはやめてくれないかい?……勿体無いじゃないか」

ほむら「どうして私の家にいるのよ」

杏子「お前なぁ、ゆまの前なんだからそういうことは……」

ほむら「心配いらないわ」

杏子「あるわこのサイコ野郎」

QB「喧嘩している場合じゃない」

ほむら「だれのせいよだれの」

杏子「お前だろ」

QB「緊急事態なんだ。魔法少女狩りが現れた。それを伝えたくて君を待っていた」

杏子「あん?」

QB「正確には、何人かの魔法少女たちのソウルジェムが何者かによって砕かれていたんだ」

QB「もちろん僕だって君たちのことはちゃんと見ている」

QB「ところが今回の事件では僕達が必ず死の瞬間を見逃しているんだ」

QB「そこで僕たちはまず君たちに当たりをつけた。魔法の特性上、君たちの能力は欺くことに特化しているからね」

QB「もちろん、杏子がその力を使いたがらないことも知っているよ。念のためというやつだ」

QB「ほむらの能力は使われるとどうしようもないからね。その力を使ったかどうかすらわからない」

QB「だから僕は、何人かの魔法少女に君を襲わせた」



QB「」

杏子「……まぁ、今のはこいつが悪いな」

ゆま「キョーコが悪い魔法少女のわけないじゃない! だってゆまのお願いは」

杏子「わかってるよ、ありがとね」

ほむら「……」

ほむら「で、どうしてほしいのかしら」

QB「真犯人を見つけてほしい」

杏子「なぁ、それなら」

杏子「白い魔法少女って心当りないか?」

杏子「……いや、やっぱ答えなくていい」

杏子「そいつらには少し借りがあるってね」

杏子「あんたらには関係のないことさ」

_


さやか「知らないし、興味もないね」


さやか「だいたい、だれ? あんた」

織莉子「私は美国織莉子と申します」

さやか「ふぅーん、オリコね」

さやか「さやかちゃんってば頭悪いからさー、はっきり言って欲しいんだけど」

さやか「それって私を疑ってるわけ?」

織莉子「いいえ、私はあなたに協力をお願いしに来たのよ」

さやか「だーかーらー。興味ないって言ってるじゃん」

さやか「私が正義の味方ってのはさ、ちょっとばっかしトラウマなのよ」


さやか「神様も悪魔もついでにシスターも、それからなぜかアイドルも。私はもうお腹いっぱい。勘弁して」

織莉子「でも」

さやか「勘違いしないで。私は他にやることがあるのさ」

織莉子「やること、ですか」

さやか「そうさ。悪いけど、それはほんとにあんたらにはなんの関係もないから」

織莉子「知っていますよ」

さやか「わっかんないかなー」

さやか「……へ?」

織莉子「あなたの敵、ひいては世界の敵。暁美ほむらを殺すのでしょう?」クスッ

さやか「……」チャキ

織莉子「うふふ、物騒ね」クスクス

さやか「経験上、あいつともう一人を付け狙う奴にはね。ろくな奴がいないのよ」

織莉子「協力しなさい。美樹さやか」

さやか「やなこった」

織莉子「そう、それは残念」

織莉子「けれど覚えておいて、あなたはこの先必ず私と共闘する。望む望まないに関わらずね」

さやか「……?」


織莉子「さようなら、さやかさん。また会いましょう」

なぎさ「……いてて」

なぎさ「……」キョロキョロ

なぎさ「……逃げられたのです」

なぎさ(……マミはお仕事や魔獣退治、それから学校ですごく忙しいのです)

なぎさ(マミがいない間はおりこ達が遊んでくれるけど、今日はそうも言ってられないのですよね)

なぎさ「……つまりはいたいけど、いたがってばかりもいられないのです」

なぎさ「さしあたっては、おりこやキリカに怒られないように言い訳を考えないとなのです……」

なぎさ(…………)

なぎさ「勝てば良かろう、なのです。幸いにしてほむら?の家はキリカに聞いてあります。今から乗り込めばきっと間に合う筈なのです」

なぎさ「チーズのためにがんばるぞー、なのです」


ほむら「……で、わざわざ捕まりに来てくれた訳なのねこの子」

なぎさ「」チーン

杏子「改めて見ると結構幼かったんだな」

ゆま「ひどい怪我……」

杏子「で、どうすんだこいつ、気絶してる内に放り出すのか?」

ほむら「そうしてもおそらくは助かるでしょうね。そうでしょう?」

QB「うーん、見たところ確かに魔法少女の生命力なら死にはしないね」

ほむら「決まりね」

ゆま「……だ、ダメだよ! かわいそうだもん! 」

ほむら「私もそうよ」

杏子「いや、そうは見えねえよ」

QB「傷を治したいだけであれば、ゆまの魔法なら元通り完治させられるだろうから、やってみればいいよ」

ゆま「わかった」

杏子「おい、余計なこと言うなよ」

ゆま「」パァァ……

なぎさ「」パァァ……

ほむら「へぇ、治癒魔法」

杏子(……なんとなくこいつには知られたくなかったんだが)

なぎさ「ナスは嫌いなのです!!!」ガバッ

ほむら「おはよう」

杏子「おはようさん」

なぎさ「え、あ、おはようございま、す……?」ペコリ

ゆま「よかった、起きたねキョーコ」

なぎさ「助けて?くれた?のですか?それは、……えっと、ありがとうございます……?」

ほむら「えらく台詞に疑問符を付けるのね」

杏子「十割お前のせいだけどな」

ほむら「下手人はあなたでしょう。なにさらっと無かったことにしてるのよ」

杏子「八割お前のせいだけどな」

ほむら「三割と七十パーセントあなたの責任よ」

杏子「三割となんだって?」

ほむら「七十パーセント」

杏子「えっと、んー、……?」

杏子「まぁ、そんなことはどうでもいいや。問題はこいつをどうするってことだろ?」

ゆま「ははっ」

杏子「何笑ってんだ」

ゆま「キョーコ、買い物するときはゆまに任せてね。大丈夫だから。ゆま得意だから」

杏子「お、おう」

ほむら「はっはっは」

杏子「何笑ってんだてめー殺すぞ」



なぎさ「……」

なぎさ(……ほむらと赤ポニーテール、勝てるか勝てないかで言ったらまず勝てないのです)


杏子「止めは刺さないにしても、なんで助けたんだよ」

ほむら「知らないわよ。あんたのとこの子がやったのでしょ? 責任をもって拷問とかしなさいよ」

杏子「なにを聞き出すつもりだよ……」

ほむら「捕虜は拷問するものだと本で読んだわ」

杏子「おお、そういやそうだな」


なぎさ(な、なんか物騒なこと言ってるのです)ガタガタ

ゆま(……)チョイチョイ

なぎさ(……?)

ゆま(逃げよう)

なぎさ(なのです)


杏子「……だから、と、やっと逃げたか?」

ほむら「そうね」

杏子「ゆまは大丈夫だろうな」

ほむら「ええ、さっき『テレパシー』であなたたちに言った通りよ」

杏子「そうか、まぁ『さやか』大丈夫だろうが……」

ほむら「キュウべぇに道案内は頼んでおいたわ」

杏子「……なぁ、一体お前はなにがしたいんだ?」

ほむら「それはまだよ、まだ。……まだ、早い」


ーーーー

QB「暁美ほむらが何をしようとしているのか」

QB「美樹さやかがどの程度までの記憶を有しているのか」

QB「イレギュラー呉キリカの目的はなにか」

QB「御国織莉子の視た未来とはなにか」

QB「巴マミ、並びに佐倉杏子はどのように動くのか」

QB「魔法少女を付け狙う魔法少女狩りの正体とは」

QB「……やれやれ、それにしても暁美ほむらが改変した記憶の隙間を縫うようなキャスティングじゃあないか」

QB「改変し徹底的に遠ざけた巴マミはほむら一派との接点を失い、あの佐倉杏子ですら、巴マミの記憶を殆ど有していないようだ。呉キリカが目を着けるのも仕方がないだろう」

QB「そして円環勢力のうち百恵なぎさもまた、改変に呑み込まれ記憶を改竄された、と見るべきだろう」

QB「もちろん正体を仄めかせつつ絶対的な力を使わない暁美ほむらの真意がどこにあるかわからない以上、僕ら観測者も迂闊なことはできない」

QB「今しばらくは傍観者に徹し、経過を見守る必要があるだろう」


ーーーー


さやか「はぁ? 匿えって?」

QB「うん、この子たちをよろしくって杏子とほむらが言ってたよ」

さやか「は? ほむら? マミさんじゃなくて?」

なぎさ「え、マミを知っているのですか?」

さやか「いやいやあんた……、知ってるも何も」

なぎさ「・・・?」

さやか「……あー、そういうこと」

QB「なんだい?」

さやか「べつに? 初めまして、久しぶりだねおちびちゃんたち。と言ってもまぁそっちの緑の子は知らないんだけどもね」

なぎさ「はぁ・・・?」

さやか「私は美樹さやか。私のことは気軽にさやかちゃんって呼んでくれい」

ゆま「千歳ゆま、です」

なぎさ「百恵なぎさなのです」

さやか「しかし匿えって言われてもなぁ」

QB「それについては、杏子から伝言を預かっているよ」

さやか「はぁ・・・?」

QB「暁美ほむらに気をつけろだそうだ」

さやか「はーん、鋭いねぇ、さすが杏子」

QB「まったくだ」

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