【艦これ】提督「――奴が、来る!」 (226)


提督「……以上が本日の遠征の概要だ。第三艦隊は海上警備の任に」

木曾「ハッ!木曾以下第三艦隊、近海警備にあたるぜ!」

提督「第四艦隊は対戦警戒任務へ」

五十鈴「ハッ!五十鈴以下第四艦隊、対潜警戒の任に就きます!」

提督「なお、先述の件は厳重に秘匿義務を課す。任務中の他艦娘に決して気取られるな」

木曾「了解!!」ビシッ

五十鈴「りょ、了解いたしました……」(こ、これが今日一番厳しいミッションかも……)

提督「……両隊とも、本日ヒトハチマルマルには泊地に帰還することを厳命する。いいな」

木曾・五十鈴「ハッ!」



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バタン

提督「……ふぅ」

提督(いかんな……私も普段通りの表情を取り繕うのに精一杯だ)チラ

提督(……やっとマルキュウ時か。予定時刻まではまだまだある)ソワソワ

提督「今のうちに書類をさっさとやっつけてしまうか」

コンコン

提督「入れ」

ガチャ

金剛「HI、提督ゥー?グッモーニン!」

提督「なんだ、お前か」


金剛「『ナンダ』とはまたシッツレイねー!私、仮にも第一艦隊の旗艦デショー!?冷たくないデスカー!?」

提督「なるほど、配置換えを希望か」

金剛「ノォーンッ!提督の秘書艦のこの地位は誰にも譲らないヨー!」

提督「うるさくしていると本当にすげ替えるぞ」

金剛「OH……どうかそれだけは……じゃなくてー!私、提督にクエスチョンあって来たヨ」

提督「クエスチョン?ああ、質問か。何だ」

金剛「ンー、第一艦隊の今日の出撃予定表が真っ白なんだヨー。提督、書き忘れてませんカー?」

提督「ああ、それなら問題ない」

金剛「へっ?」

提督「第一艦隊は本日より三日の間、当泊地より出撃は一切ない」

金剛「ワァット!?」


金剛「ホワイ!?何故!?私、何かまずいことしましたカー!?」

提督「本件に関してはこれ以上の質問を認めん」

金剛「て、提督ゥー……?」

提督「……お前に何か怒っているわけではない。だが、これは緊急シフトなんだ」

金剛「緊急……シフト?」

提督「今日の泊地の様子を見ているか」

金剛「ンー……?あ、そういえば今日は、珍しく朝から第二艦隊の娘たちがいましたネ」

提督「ああ。彼女らにも今日は出撃命令を下していないからな」

金剛「第二の娘たちはいつも長期間の遠征に出かけているから、あんまり馴染みがないネー」


金剛「……でもそれが何か関係あるんデス?」

提督「あるといえばある」

金剛「ンッンー!煮え切らない提督ネー!さ、キリキリと白状するのデース!」

提督「……はぁー」

金剛「ホラ!ハリアップ!レッツハクジョータイム!」



提督「本当に秘書艦を降ろされたいらしいな」



金剛「」


提督「第一艦隊に命ずる」

金剛「ォ……ぉぅぃぇ……」シュン

提督「本日より三日の間は当泊地にて待機。
    なお、泊地周辺は状況変化が予想される、それを察知した場合は臨機応変に対応しろ」

金剛「い、イエッサー!」ビシッ

提督「……状況変化が予想される時刻は、本日ヒトヨン時頃だ。それまでは訓練メニューでもこなしておけ」

金剛「OH?訓練してていいんですカ?状況変化って、その……何かマズいこと、あるんでショ?」

提督「……」ギロッ

金剛「ヒッ!?」

提督「……本日は私もその時刻までに書類を片付ける予定だ。状況変化があればすぐに知らせること」

金剛「お、オッケー」

提督「よし。では行け。私は集中して書類に取り掛かる」

金剛「……イエッサー。失礼しましたヨー」

バタン



提督(……許せよ、金剛)



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金剛「ハァー……」

比叡「あれ、お姉さま」

金剛「OH、比叡ではありませんカー。……ハァー」

比叡「ど、どうされたんですか?空気がものすごく重たいですよ」

金剛「提督に怒られちゃったヨー。私、もうすぐ秘書艦クビかもしれまセーン……」グスン

比叡「ひぇっ!?だ、大丈夫ですよお姉さま!私も一緒に謝りますから!」

金剛「……今、提督室には行かないほうがいいデスヨー」

比叡「……マジですか?」

金剛「マジですヨー……」


金剛「あ、悪いんだけど比叡から第一のメンバーに伝言してクダサーイ」

比叡「え?」

金剛「今日の出撃がないのは間違いじゃなかったデース。みんなでトレーニングやりますヨー」

比叡「あ、はいっ」

金剛「私もお手洗いで顔を洗ったらすぐに合流しますネー」

比叡「わかりました……」

金剛「フゥ……」トボトボ



比叡(お姉さま……)


比叡「……というわけで、今日は出撃はないそうです」

赤城「あら」

龍田「それはめずらしいわねぇ」

北上「ま、たまにはそういう日があってもいいよねー」

島風「えー?実戦に行かないと足がなまっちゃうよー」プンスコ

比叡「まぁまぁ。金剛お姉さまはすぐ戻られますから、私達は先に訓練場に行きましょう」

赤城「そうですね、ではすぐに」

島風「よーし、みんなで訓練場まで競争しよー!」バタバタ

北上「一人でやっとれ」

龍田「あらあら」クスクス


ゾロゾロ

赤城「そういえば例のフォーメーションだが――」ペチャクチャ

北上「そう、そこで魚雷を撃つ時さ――」ペチャクチャ

島風「もー!おっそいー!」ピョンコピョンコ

比叡「みんな、移動中も熱心ですねえ」

龍田「うふふ、そうねぇ、真面目ねぇ。……あらぁ?」

比叡「ん?あれは……」



龍田「天龍ちゃーん?おひさしぶりぃ」



天龍「んあ?おー、龍田じゃん」


龍田「どうしたのぉ?泊地にいるなんて珍しいじゃなぁい」

天龍「やー、どうも今日は第二艦隊は出撃がないみたいでな」

龍田「そうなのぉ。うふふ、姉妹なのに会うのはホントに久しぶりねぇ」

比叡「そうそう、いつも長距離遠征で何日もここを空けてますもんね、天龍さん」

天龍「まぁオレも第二艦隊のチビ共を任されてる立場だしな。仕方ねぇさ」

龍田「うふふ、そうねぇ。旗艦は責任重大よねぇ」

天龍「ハハハ!まぁな!」ドヤァ

龍田「(……すっかり『引率のお姉ちゃん』が板についたわねぇ)」

比叡「(シーッ!?聴こえますよ!?)」

天龍「あん?何か言ったか?」

龍田「なんでもないわよぉ」


天龍「第一はこれから訓練か?」

比叡「そ、そうそう。今からみんなで訓練場に」

天龍「そっか。オレ達はどうするかなぁ、出撃命令がないだけで休暇ってわけじゃないみたいだし」

龍田「あらぁー、じゃあ訓練の一環だしぃ、私達と演習戦でもしてみる?」

天龍「おいおい、よしてくれよ。あいつらが自信なくしちまうだろ」

龍田「うふふ、冗談よぉ。じゃあまたあとでねぇ、お昼ごはんは一緒に食べましょ?」

天龍「お、いいね。じゃあ後でな」

比叡「はい、それではまた」



比叡(ふーん……。第二艦隊も今日はここにいるのか)

龍田(……うふふ。そういうことかぁ)


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比叡(その後、すぐに金剛お姉さまも訓練に合流。ヒトフタ時まで有意義な訓練を行う)

比叡(お昼ごはんは、第二艦隊所属の暁型の娘たちも一緒になってのにぎやかなものとなった)

比叡(しかし、そういえば今日は鎮守府にいる艦娘たちが妙に多い。最初は第二艦隊が居るせいかと思ったけど)

比叡(本部で哨戒や通信にあたる娘たちの編成も、明らかに最小限度にされている。
    昼時とはいえ、食堂がこんなにごったがえしているところを見るのは初めてだ)

比叡(いったい、今日の泊地はどうしちゃったんだろう……)



金剛「比叡?どうしましたカー?」ヒョイ

比叡「うわっ!?お、お姉さま」

金剛「浮かない顔をしていましたヨ。どうしました?悩み事ですカ?」

比叡「な、悩み?いや、悩みというか、その……」


比叡「……というわけです。妙じゃないですか?」

金剛「……つまり、比叡が言いたいのはこういうことネー?」

金剛「こんなにたくさんの艦娘たちが集まっているのは、これから何かが起こる前触れ、ってコトネ?」

比叡「それか既に起こっているか……。そうでも思わないとおかしいですよ、この数は」

金剛「……そういえば、提督が今朝ミョーなことを口走ってたヨー?」



提督『状況変化が予想される時刻は、本日ヒトヨン時頃だ――』



比叡「それって……つまり!?」

金剛「この泊地にデンジャーなanythingが迫っていて……
    わ、私達は本土ケッセンのために集結させられているんデース!?」



金剛「……そういえば、第三、第四艦隊の今日のシフト」

比叡「え?……あっ!!」ガタッ



金剛・比叡「「"領海内の警戒任務"……!!」」



比叡「これって、もしかするともしかします!?」

金剛「これは提督に、ドーユーことか直接聞き出すしかアリマセーン!!」


金剛「第一のミンナー!私と比叡はチョーット提督と会ってくるネー!」

比叡「すぐに戻りますんで、食堂で待っててください!」

赤城「え?あ、はい」

金剛「じゃ!シーユー!」クルッ

バタバタバタ…

北上「……どしちゃったの?二人とも」

島風「さぁ?」

赤城「まぁ、帰ってくればわかることです。……ふぅ」

龍田「んー?どうしたのぉ赤城さん、ため息なんかついちゃってぇ」

赤城「いえ……。最近、味噌汁の"浮遊物"が減ったなぁと思いまして」

北上「"浮遊物"?……あぁ、具ね。確かに今日はまた一段と侘しいねー」

島風「ついにお麩も昨日なくなって、今朝からわかめオンリーだもんね」


コンコンコン!!!

金剛「テートクー!?金剛デース!!入りますヨー!?」バタン

比叡「比叡です!!失礼致します!!」

提督「……ど、どうしたお前ら!?血相を変えて」

金剛「しらばっくれないでヨー!!私達にはゼーンブわかってるんだからネー!?」ガシッ

比叡「一体この泊地にどんな敵が来るんです!?」ガシッ

提督「な、何の話だ!?」

金剛「ヒトヨン時にデンジャーなエネミーがココに来るんでショー!?」ブンブン

比叡「決戦のためにみんなを集めているんですよね!?
    提督、どうして教えてくれなかったんです!?」ガシガシ

提督「ちょ、ちょっと待て!?何の話かさっぱりわからん!!あと離せ!!」



提督「……落ち着いたか」ハァハァ

金剛「……」ジトー

比叡「……」ジトー

提督「わかった、確かにお前らの推測ももっともだ!観念した、話す、全部話す!」

金剛「オウ!それを待ってたヨー!」

比叡「私達が相手にするのはどんな敵なんですか!?」

提督「いや、ヒトヨン時に来るのは敵じゃない」

比叡「へ?」

金剛「どういうことデース?」

提督「この新興泊地に"奴"が来るのは初めてだが……
    お前たちも噂ぐらいは聞いたことがあるだろう」

金剛・比叡「「???」」



提督「いいか、今日やって来る"奴"の名前は――」



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―― 領海遠洋

チャプチャプ

木曾「うーい」

まるゆ「ふぇっ!?あ、木曽さん!」

木曾「ちゃんと見張ってるかー?」

まるゆ「はいっ!まるゆ、がんばってます!」ビシッ

木曾「……お前のその敬礼、ムカつくなぁ。海軍じゃこうだよ、こう」ビシッ

まるゆ「うぅ……。ま、まるゆは陸軍の子ですもん……」

木曾「ま、とりあえず今はいい。ちょっとだけ雑談しようぜ」

まるゆ「ざつだん、ですか?」

木曾「ああ。提督には『話すな』って言われてるけど、まぁお前にならいいだろ」

まるゆ「??」


まるゆ「……"まみや"さん?」

木曾「そうだ。陸さんじゃあ聞いたことないか?」

まるゆ「まるゆ、不勉強なもので……。
     こんな風にお出迎えするほどのすごい艦娘さんなんですか?」

木曾「ああ。アイツが来る!ってだけでこの警戒っぷりだ、わかるだろ」

まるゆ「そうですね!きっと噂の大和さんみたいな、たくさんのおっきな砲門を構えた……」

木曾「あーいや、そんなもんはない」

まるゆ「へっ?」

木曾「自前で持ってる砲門……あったっけ?いや、あったとは思うんだけど」

まるゆ「……あ、空母さんなんですね?まるゆ、うっかり」

木曾「航空甲板もついてねぇなぁ」

まるゆ「ふぇっ!?じゃ、じゃあ駆逐艦さん!?」

木曾「それも違う」



まるゆ「えーっ……?じゃ、じゃあ"まみや"さんって一体」

木曾「クックック、それはな……(ピーガー)んお?通信か」

球磨『木曾ー?応答願うクマー』

木曾「おう、こちら木曾だ。クマ、どうかしたかよ」

球磨『クマの哨戒海域に友軍らしき一団が現れたクマー』

木曾「おう、そいつはグッドニュース。何隻だ」

球磨『えーと、3隻かなー?2隻に前後を護衛されてる船g……き、木曾ォ!?』

木曾「どうした」クスクス

球磨『あ、あれ、あれってもしかして、"間宮"!?』

木曾「せーいかーい」

球磨『ウッヒョォォォ!!!みなぎってきたクマァァァ!!!』



まるゆ「……まるゆ、ぽつーん」


木曾「えーと、クマの僚艦は……と。おい、聞こえてるかタマ」

多摩『にゃ!感度良好にゃ!』

木曾「クマと一緒に向こうさん……よその泊地の艦娘だな、そいつらから護衛任務を引き継げ。
    引き継ぎの手続きが終わり次第、間宮を泊地までエスコートしろ」

多摩『了解だにゃ!』

球磨『了解だクマー!』

木曾「港湾についたら先に上がっちまっていいからな」

多摩『にゃ?木曾たちはどうするにゃ?』

木曾「バッカ、しんがり務める奴は必要だろ。向こうの護衛艦娘の背後も見てねぇとだし」

球磨『えー……それは悪いクマよ』

木曾「あぁ心配すんな、居残り組には提督が特別にお夜食を"奢って"くださるそうだから」

多摩『お夜食って何にゃ?』

木曾「善哉」

球磨『クマー!ズルいクマ!』


木曾「じゃあお前らが残るか?別に俺は夜食を蹴って三時のおやつでもいいけど」

球磨『うー……。な、悩むクマー……』

多摩『にゃ、球磨。こんなことで時間を取られてる場合じゃないにゃ。
    泊地で待ってるみんなのところに、急いで間宮を連れて行くにゃ』

球磨『ぐぬぬ……、わかったクマ。木曾、後は頼むクマー』

木曾「あいよぉ。……ん、どした、まるゆ」

まるゆ「いいんだもん……。どうせまるゆは一人ぼっち……」

木曾「……」コツン

まるゆ「いひゃい!?な、何するんですか木曾さん!」

木曾「オラ、いいからこっち来い。おもしれーモン見せてやる」グイグイ

まるゆ「や、やめてくださいー!まるゆは一人で泳げますよぅ……あぅー」ズルズル


木曾「このへんでいいか。ほれ、この双眼鏡使え」ポイ

まるゆ「むー……。えっと、あっちは球磨さんたちのいる方角ですよね」

木曾「あぁ。お前、間宮を見たことねーんだろ?」

まるゆ「だから、初めて聞きましたよぅ。まみやさんって、どんな方なんですか」

木曾「びっくりするぜー?俺が保証してやるよ」

まるゆ「どんな保証ですか!……えーっと」キョロキョロ

木曾「もうちょい左。そうそう、そこだ」

まるゆ「……え、えっ?えーっ!?」

木曾「な、驚いたろ」



まるゆ(海の上を……"でぱぁと"みたいな船が走ってる……!?)


まるゆ「な、なんですか!?あのすっごいお船は!?」

木曾「クク。糧食積載量、おおよそ1000トン!
    冷蔵庫完備どころか野菜も家畜も中で育てられる!」

まるゆ「ふぁっ!?」

木曾「それだけじゃねぇ。医療施設も完備、それどころか美容院までついてるぜ!」

まるゆ「ホントに"でぱぁと"じゃないですか!?」

木曾「あったぼうよ。お前、食いもんだってすげぇぞ。あの中で豆腐やこんにゃくつくってるんだぜ」

まるゆ「お船なのに!?」ガビーン

木曾「それだけじゃねぇ。饅頭、餡パン、ラムネにアイスもお手のもんよ」

まるゆ「えぇっ!?ま、まるゆ、しばらく甘いものなんて口にしてません!!」

木曾「ちなみにあの船最大の名物は羊羹だ。あの味はと○屋と肩を並べるね」

まるゆ「ふぇぇ……あ、あはは……」

まるゆ(まるゆ、ショックすぎてもう……笑うしかありません……)

木曾「お、舳先を見てみろ、まるゆ」

まるゆ「へ……?」

木曾「あいつが"間宮"。あの給糧船を取り仕切ってる艦娘だよ」



木曾「しばらく世話になるからな。顔を覚えて、後でちゃんと挨拶しとけよ」

まるゆ「んー?ど、どこですか、間宮さんは?」

木曾「あれだあれ、あの赤いリボンに割烹着の」

まるゆ「あ……」



まるゆ(長い髪を大きなリボンで結わえ、ピンクのブラウスに青いスカート。
    そんな"はいから"な格好の上から割烹着を着こみ、買い物かごを横に下げ。
    まっすぐ泊地の方角を見つめて、やさしそうな微笑みを浮かべている女の人)



まるゆ「お母さんみたい……」

木曾「」プーッ

まるゆ「なっ!?なんですか木曽さん!!いきなり吹き出して!!」

木曾「だ、だってお前、お母さんて!!間宮がおかんか、こりゃいいや!!ぶっははは!!」

まるゆ「も、もう!!///人の素を笑うなんて失礼ですよ!!///」


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間宮「護衛ありがとうねぇ、クマちゃんタマちゃん」

球磨「クマー!」

多摩「こんなの、何でもないですにゃ」

間宮「うちは深海棲艦に襲われたらひとたまりもないからね、悪いけど頼むね」

球磨「そのための軽巡ですクマー」

多摩「今日はうちの泊地から対潜警戒部隊も出てる……大丈夫にゃ」

間宮「そうなの、それは頼もしいわ。じゃあ私たちもはりきっていかないとね」

多摩「楽しみですにゃ」

間宮「しかしあなたたち、変わった喋り方ねー」

球磨「クマー。これは方言とかじゃないクマ」

多摩「……"キャラ付け"という努力の賜物にゃ」


間宮「泊地はもうすぐかしら?」

球磨「そうクマ。あの岬を回ったところが球磨たちの泊地だクマ」

間宮「そう。……あなたたちー、用意はできてるー?」

???「ダイジョーブデース」「オマンジューフカシタヨー」「ラムネモヒエヒエー」

球磨「く、クマ!?今の声はどこから!?」

間宮「あら、おどろかせちゃった?この給糧艦専属の妖精さんたちよ」

妖精「コンニチワー」「ヨロシクネー」「モウスグオヤツダヨー」

多摩「こ、工廠の妖精さんみたいな子が、いっぱいにゃ……」

球磨「この子たちが"間宮の職人妖精"さんクマ……?」

間宮「そーよぉ。あとでゆっくり紹介するわね」


間宮「さぁ、いよいよ到着ね……って、あら?」

球磨「クマ?港湾がすごい人混みだクマ」

多摩「……にゃ。泊地のみんなが総出で来てるにゃ」

間宮「え?え?」



金剛「見えましたデース!!OH、噂に違わぬビューティホーなShipネー!」

比叡「よーし、楽隊演奏用ー意!さん、はいっ!」

パラパパッパッパッパー♪

赤城「あれが……あれが、私たちの夢と希望の船……間宮なのですね……!!」プルプル

島風「すっごーい!ああもー、アタシがここまで案内したかったよー!!」

北上「いいねーいいねー、シビれるねー!んっふふ♪」

金剛「オーケー、エビバディ!ここはひとつ、バンザイ・サンショーでお出迎えネー!そーれ、」



「「「「「ばんざーい!!!ばんざーい!!!ヴァンザァァァァイ!!!」」」」」



間宮「あらあら、すごい歓迎ねー」ウフフ


提督「おい、あんまり大騒ぎするんじゃないお前たち!」

金剛「ナーニ言ってるノー!だいたい提督が間宮のこと、シークレットにしてたのがよくないヨー!」

比叡「そうですよ!もう、言ってくれればよかったのに!」

提督「うるさい!サプライズにしたかったんだよ、この件は!」

金剛「OH、Supply(補給)だけにSurprise(ドッキリ)ネー?HAHAHA、提督もジョークがおジョーズネ!」

提督「やかましい!!」

比叡「……あ、間宮さん、着岸されました!」



間宮「○○泊地のみなさん、こんにちは!お待たせいたしました、間宮、到着です!!」



「「「「「わぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」パチパチパチパチ


間宮「この泊地の責任者であらせられますか?」ビシィッ

提督「はっ。この度は世話になります」ビシィッ

間宮「給養担当の方は」

提督「はっ。鳳翔!いるか」

鳳翔「はっ!」

提督「補給の目録と実数の確認を任せる。受領証を作成したら直接私のところに持ってこい」

鳳翔「了解いたしました!」ビシッ

間宮「はい、これが目録です。運び出しはうちの妖精さんがやりますからね」

提督「うちからも何人か出しましょう」

間宮「あら、ありがとうございます」


提督「よし、みな、傾注!」

金剛「オゥ?」

比叡「はい」

提督「本日は間宮の到着により、久々に我らの泊地に生鮮食品が給与された!
    だが、長期保存の厳しい食品も多い!よって、本日はそれら足の早い食品のうち、
    鶏卵、牛肉、野菜類をふんだんに使用した――」



提督「すき焼きを、夕食に振る舞うこととする!!!」



「「「「「よっしゃああああああああ!!!」」」」」


提督「(くーっ、これこれ。これを言ってみたかったんだよ私は)」ボソボソ

鳳翔「ふふふ。頑張ってお支度いたしますね」

島風「提督ていとく!!あの、間宮のお菓子については!?」

提督「うむ!間宮の停泊予定は本日を含めて三日である」

北上「およ。案外短いんですね」

提督「その期間中、この給糧艦は臨時の酒保として開放される!
    みな、自由に買物をするように。羊羹も饅頭も買えるだけ買っておけ!」

島風「やった!!お給料、貯まってるんだよね!!」

北上「艦隊メンバーは出動多いからねぇ。もちろんアタシも……ぬふふ♪」

赤城「……」ゴゴゴゴゴ…

龍田「あらぁ。これは早目に買わないと、危ないかもねぇ」クスクス


間宮「みなさーん!私からも、いいですかー?」

提督「むっ。みな、間宮に傾注!」

「「「「「はいっ!」」」」」

間宮「うふ、ありがとう。この給糧艦には、病院や美容院にクリーニング施設も併設されています」

金剛「OH……『びょういん』と『びよういん』……」プー

比叡「お姉さま、そこ笑うとこじゃないですよ」

間宮「お買い物だけじゃなくて、そこもご自由に利用してくださいね。
    プロの妖精さんたちが、バッチリ対応させていただきますから!」

金剛「オー、そういえば比叡、最近ちょっと髪の毛伸びてきてるネー」

比叡「そういえばしばらくカットなんてしてないなぁ……」



間宮「それでは短い間ですが、よろしくお願いいたします!」



パチパチパチパチ……

今日はここまで


間宮が喋ったり、給糧艦の規模だけ他の子と比べておかしいだろ!とか
ツッコミどころ多いです

でも許してくれたら、それはとっても嬉しいなって

今日の夜、投下を再開します

そろそろ始めます



  【 パ ー ラ ー ま み や 】


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


――給糧艦『間宮』 艦内

ガチャ

間宮「ヒトゴーマルマル。……なんとか間に合ったわね、三時のおやつに」

暁「おおお……」ワクワク

雷「これが……噂の……!」ワクワク

響「ハラショー」

電「『パーラーまみや』……なのですね!」

間宮「あら、早速かわいらしいお客様ね。いらっしゃいませ!」ニコッ

暁「か、かわいらしい言うな!私はレディーよ!」

電「ま、まぁまぁ暁ちゃん」

響「しかし、こんな洒脱な一室に"喫茶室"などという呼び名は確かに野暮だね」

雷「そうねぇ、みんなが"パーラー"って呼ぶの、よくわかるわ」

間宮「あらあら、ありがとうね」


天龍「ったく、お前らはどこでも姦しいな。ほれ、早く席につくぞ」

間宮「はーい、それでは5名様、あちらのお席へどうぞ」

雷「はいはーい!私ここの窓際!」

暁「あ、雷ずるい!じゃあ私はこっち!」

響「……」ヤレヤレ

電「では私はこっちに座るのです」

天龍「席なんかどこだって一緒だろ、これだからお子様は」

暁「お子様じゃなーい!何よ、天龍だって歳は私たちとそう大差ないでしょ!」

天龍「けっ、それが戦力の決定的な差だよ」

間宮「……あの、ご注文とってもいいかしら?あと、ここでケンカはやめてね?」

天龍「おっと、メニューメニュー……っと」



赤城「はい、一名です。……カウンター席?はい」


天龍「お前ら何にする?」

暁・雷「「アイスクリーム!!」」

響「お、いいね。僕もアイスで」

電「あ、私もアイスクリームがいいのです」

天龍「仲のおよろしいこって。すいませーん、アイスクリーム4つとレイコー1つ」

間宮「はい、かしこまりましたー。すぐにお持ちしますね」

電「はわわ、天龍さんはコーヒーだなんてオトナなのです!」

雷「んなことないわよ電、きっと砂糖やミルクをドバドバ入れるに違いないわ!」

天龍「へっへーん。オレは根っからのブラック派だよ」ドヤァ

響「へぇ。それはすごい」

暁「ブラックですって!?あんなもの艦娘の飲むものじゃないわよ!」



赤城「すいません、アイスクリームを1つ」


間宮「はい、お待たせしました。アイスクリーム4つとアイスコーヒー1つです」

電「……お、おおお!なのです!」

雷「これは……!」ゴクリ

暁「お、おいしそう……!」

響「白くつややかなアイスに餡蜜とウェハースをあしらい、てっぺんにはシラップ漬けの桜桃……。
  噂には聞いていたけれど、実にいい仕事だね。芸術と言い換えても差し支えない」

天龍「ほ、ほぉー……」

電「……天龍さん?」ジー

天龍「んなっ!?ば、バカ、早く食えよお前ら!アイス溶けちまうぞ!」

雷「そうね、これを目の前にして食べないなんて失礼だわ!」

暁「それじゃあ!いっただっきまーす♪」

響「いただきます」

電「なのです!」



赤城「あの、すいません。アイスクリームもう1つ」ペロリ


天龍「……」チュー

電「んー♪冷たくって、おいしいのです!」

雷「牛乳の甘さがよく出てるわねぇ」

暁「そしてこの餡蜜と一緒に食べると……くぅ~っ♪」

響「実にハラショーだね。僕は今とても幸せだよ」

天龍「……けっ」チュー

暁「なによ天龍。コーヒーは眉間にシワ寄せながら飲むものじゃないわよ」

雷「苦いのガマンするくらいなら砂糖入れなさいよ」

天龍「べっ、別にガマンなんかしてねーよ!」



赤城「すいません、アイスクリーム……もう5つください」ケロリ


間宮「はーい、お水のおかわりよ。アイスはおいしい?」

電「はいなのです!」

雷「最高よ!」

間宮「うふふ、ありがとう」

天龍「……こ、コーヒーもうめぇよ?」

間宮「あらあら、ありがとう。おかわりはいつでも言ってね」ニコ

天龍「……」グヌヌ

響「このアイス、他の泊地でも大人気なんだって?」

間宮「ええ、そうね。いろーんな艦娘さんから好評をいただいてるわ」

天龍「……『いろーんな』?」

間宮「ええ、……ふふっ。ちょっとお話してもかまわないかしら?」



赤城「」 キーン

赤城「痛たたた。……でも美味しい」パク


間宮「ここに来る前の前、ちょっと遠くの泊地での話なんだけどね――」

  …  ─ ── ─── ──────────────── ─── ──  ─…
           …… … ────────────── … ……
                     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

間宮(ふぅ、とっくに泊地は消灯……日付も変わっちゃったか。今日はがんばったなぁ)フー

間宮(さて、明日の仕込みも終わったし、寝ようかな……ん?)

???「」コソコソ

間宮(……誰かしら)

???「」キョロキョロ

間宮(……まさか、誰かがつまみ食いでもしに来たのかしら)

間宮(艦装は……つけてないわね。なら!)

間宮「不心得者なら、このフライパンの錆にしてあげるわ……!」グッ



間宮(……向こうはこっちに気付いてないわね) ヌキアシサシアシ

???「ふむ、ここにも姿が見えない……となると、冷蔵室を見るか」ブツブツ

間宮(冷凍室……?)

???「……いかん、この格好で冷蔵室に入るのはマズいか?」

間宮(……この服、ああ!この人か)

ポンポン

間宮「……そもそも銀蝿自体がマズいことについてはどう思われますか」

???「ぅおうっ!?」

間宮「……艦娘の規範となるべき立場にあるあなたともあろう方が、何をやっているんですか!」



長門「いや、これは、その……す、すまない」


間宮「そこに正座!!」

長門「は、はい」シュン

間宮「ことと次第によってはタダでは済ませませんよ!さあ、何が目的でここに忍び込んだんです!」

長門「ご、誤解だ!決して盗みを働こうとしたわけではないんだ!
   ほら、こうして財布も持ってきている!無銭飲食など、ビッグ7の誇りにかけてするものか!」アタフタ

間宮「じゃあ一体、何故あんなにキョロキョロしていたんですか!」

長門「あなたを探していたんだ!あ、いや、あなただけではないけれど」

間宮「はい?」

長門「じ……実は……その、うん……」モジモジ

間宮「……?」



長門「あ、アイスクリーム……ひとつ、ください……っ///」


間宮「へ?えっと、確かあなた……昼間にも来てたでしょう?何故そのときに注文しなかったの」

長門「ほ、他の者も大勢いたから仕方なかったんだ!この泊地の第一艦隊旗艦であるこの私が、
   まさかアイスクリームが大好きなどと知れたらっ……皆の士気に関わるっ……!」

間宮「……は?」

長門「大好きなんだ!アイスクリーム!それはもう、全く目がないくらいっ……」

間宮「それは、まぁ、うん。……で、あなたまさか」

長門「……。駆逐艦の子たちが食べている間……私は、ずっと視線を逸らしていた。
   アイスの白い艶めきも、ガラスの器の輝きもっ……目にしていたら、心が折れそうでッ……」

間宮「……要するに、見栄を張ってたわけね」

長門「"負けじ魂"と言ってくれ!」

間宮「一体何と戦っているのよ、まったくもう。……ひとつでいいのね?」

長門「えっ……」

間宮「もう喫茶室の鍵は閉めちゃったから、ここでしばらく待ってなさい。
   ……窓際に立たないようにね、誰かに見られたら困るんでしょ。あ、お代は先払いでね」

長門「……!」パァァァ


間宮「おいしい?」

長門「ああ、こんなにおいしいアイスクリームは食べたことがない!
   これで明日からの出撃も、より一層奮起できるというものだ……!」

間宮「大げさねぇ。……私としては、あなたのそういう一面は知られるべきだと思うけどな」

長門「な、なにを言うんだ!この件はこの泊地の者たちには絶対内緒にしてくれ!」アワアワ

間宮「んー、どうしようかな」

長門「頼む!後生だ!このとおり!お願いします!」ペコペコ

間宮「もう、しょうがないビッグ7さんだこと。じゃあ、約束ね」ユビキリ

                   _________
          …… … ────────────── … ……
…  ─ ── ─── ──────────────── ─── ──  ─…

間宮「……ってことがあったのよ」

暁・雷「「し、信じらんなーい!!!」」ゲラゲラ

響「実に興味深いね」

天龍「……」ポカーン


電「で、でもいいのですか?その、ナイショにする約束は」

間宮「いいのよ。"彼女のいる泊地の子"には、ちゃーんと秘密にしたもの」

電「あっ……」

間宮「この話を聞いて、あなたたちどう思った?」

雷「そっ、そうね、ビッグ7もた、大変なんだなーって、お、思ったわ!あ、腹筋攣る」ヒィヒィ

暁「好きなものも好きって言えないなんて、つらいわねぇ」ゲラゲラ

電「でも、すごく親近感が湧いたのですよ。アイスが大好きな戦艦さんもいるのですね」

響「……天龍、どうかしたのかい」

天龍「あ゛!?べ、別にどうもしねーよ!」

間宮「ふふ」クスクス



赤城「」 キンコンキンコン


間宮「これが『いろーんな』話のひとつかな」

天龍「……」ブスッ

間宮「見栄を張るのもいいけれど、もっと素直な自分を表に出していくのも大切なことよ」

暁「い、"一人前のレディー"はそういうものかしら」

間宮「ええ、きっとそうね」

暁「じゃ、じゃあ私、もっと素直になるわ。……次は餡パンください!」

間宮「へっ?」ズコッ

雷「あ、暁だけずるい!私はだいふく!間宮大福ちょうだい!」

電「わ、私はラムネを飲みたいのです!」

響「僕もラムネください」

天龍「……ったく!さっき昼飯食ったばかりだろ、お前らの腹はどうなってやがんだ」

雷「あら、甘いモノは別腹よ!」

響「全く同意だね」



赤城「……はぅっ!!」 グギュルルルル


間宮「じゃあ、餡パン1つ、大福1つ、ラムネ2つ……以上でよろしい?」

天龍「……っ、……」ボソッ

間宮「うん?何かしら」

天龍「~~~ッ!コーヒ―!おかわり!」プイッ

間宮「……はぁ。コーヒー、ですね。かしこまりました」

暁「(……天龍も強情っぱりねぇ)」ヒソヒソ

響「(みんなわかってるのにね)」ボソボソ

天龍「なんか言ったか暁!!」

暁「なんも言ってないわよーっと」

間宮「じゃあ、しばらくお待ち下さいませ」



赤城「……い、一航戦の誇り……こんな、ところ、で……」 ヒクヒク


間宮「はい、お待たせしました!」

暁「うふふ!ふかふかのパン生地に甘ーいあんこ……餡パンは最高ね!」

雷「この大福、すべすべしっとりしてるわ!」

響「ラムネはよく冷えてるね」

電「こうやって、プシュっと……なのです!」

天龍「……けっ。けーっ!」グビグビ

間宮「……あの、ところで天龍さん」

天龍「ああん!?」ギロッ

間宮「こちらをどうぞ」サッ

天龍「……な、こ、これは!?」

暁「あら?アイスじゃない」

電「なのです」


天龍「なんだよ、オレはアイスなんて頼んでねぇぞ!」

間宮「いえ、これは先ほど『お腹が痛い』と言って帰られた赤城さんからです」

天龍「へ?」

間宮「『注文しすぎて余ってしまった、できれば食べてほしい』、という伝言を言付かってますよ」

雷「えー、天龍だけずるいー」

響「全くだね」

間宮「みなさんもアイスの食べ過ぎは禁物ですよ、お腹を壊しますからね」

電「そ、そうですね。気をつけるのです」

天龍「……。し、仕方ねぇな。お前らは腹を壊しかねねぇし、オレが食うしかねぇな」

暁「(嬉しそうな顔しちゃってまぁ)」

電「(シーッ……なのです)」

間宮「協力してもらってごめんなさいね」

天龍「き、気にすんなって。……いただきます」パク



天龍「~~~っ♪」パァァァ…



間宮「うふふ。じゃあ空いたカップは下げますね。皆さんどうぞごゆっくり」


間宮(さぁって……次のお客様が来られる前に片付けないとね)

間宮(赤城さんの食べた"7つ"分のカップと、あの子達の食べたぶん)

間宮(ちゃっちゃと洗ってしまいましょうっ!) フンス



暁「どう天龍?おいしい?」

天龍「……ん、まぁ……う、うめーんじゃん?」

雷「おりょ、素直」

天龍「ば、バカヤロ!美味しいもんを素直に『美味しい』って言って悪いかよ!」

電「うふふ。天龍さんの眉間からシワがなくなったのです」

響「アイスの力は偉大だね」

天龍「んな、なんだよその生暖かい視線はよ!」

電「なんでもないのですよ」ニコニコ

響「世は全て事もなし、だね」フッ

天龍「クソッ、お前ら今度おぼえてろよ!」 パクパク



間宮(……また真夜中に忍び込まれると、困っちゃうものね)フフッ

今日はここまで

こんな感じに間宮が登場する短編を、あといくつか投下する予定です
この話は艦これ開始時にお世話になった、天龍好きの知人を意識してつくりました

赤城「鳳翔さん。……これを、(ドサッ)今日の晩御飯にしていただけませんか」

鳳翔「……あの、このクジラはどうやって曳航してきたんですか?」

赤城「一航戦にできないことなどありません」

鳳翔「……鯨鍋とみぞれ煮と竜田揚げ、どれがお好みですか」

赤城「全部ください」

鳳翔「えっ」

赤城「全部ください」 ゴゴゴゴゴ…



赤城さんが捕鯨したらきっとこうなると信じてる
明日の夜投下できそうです

お待たせしました
今日の20時頃に始めます

そろそろ始めます



【 ヘ ア サ ロ ン ま み や 】


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


――基地司令室

五十鈴「――以上、報告を終わります!」

提督「御苦労。貧乏くじを引かせてすまなかったな、五十鈴」

五十鈴「いえ、五十鈴は気にしてませんよ」

提督「もうまもなく夕食の時間だな。今日はすき焼きだ、存分に食べてくれ」

五十鈴「はいっ!それはもうっ!」ビシッ

提督「ああ、そうだ。明日は編成を変更してある。本日の第四艦隊勤務者は、明日一日全員非番だ」

五十鈴「ええっ!?ホントですか!やった!」

提督「明後日以降に備えて英気を養うように。他のものにも伝えておいてくれ」

五十鈴「了解いたしました!では、失礼致します!」

バタン タッタッタ…

提督(……そういえばあいつらをこんなにしっかり休ませてやろうとするの、初めてだな)


提督(……しかし木曾は遅いな。何をやってるんだ)

コンコン

提督「入れ」

木曾「……失礼致します。木曾以下第三艦隊、先刻帰投致しました」

提督「遅かったじゃないか。まぁいい、報告から聞こう」

木曾「ハッ。球磨・多摩は間宮を伴い先行帰港。残った奴で海上監視任務を続行し――」

コレコレシカジカノ カクカクウマウマ

木曾「――以上で報告を終わります。……すんません、報告来るの遅れて」

提督「そうだな。報告通りなら帰港してからかなり時間が開いているようじゃないか」

木曾「これ書くのに手間取りまして。書類とか滅多に書かねぇからなぁ、俺……」

提督「ん?何だこれは。……『申請書』?」

木曾「はぁ。提出先は提督でいいんすかね、他に適当な部署があるんならそこに回しますけど」


提督「……いや、多分私で大丈夫だろう。今夜のうちに"向こう"に話を通しておく」

木曾「さすが話がわかる、ありがたいねぇ。……っとと、任務中は言葉遣いを乱さないようにしねーと」

提督「……気遣い、恐れ入る。よし、御苦労だったな。今から言葉遣いはオフでいいぞ」

木曾「ぷっはぁぁぁ!!!あークソ、敬語とか使ってらんねぇってんだよ!提督、今日のメシは」

提督「すき焼きだ」

木曾「アリだな。ゴチんなるぜ、お前もちゃんと食えよ」

提督「言われずともだ。牛肉も久しぶりだからな、じっくり堪能するつもりだ」

木曾「はっは。じゃあまた夕飯の席で」ビシッ

バタン スタスタスタ…

提督「……ったく、上官を上官とも思わん奴だ」


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


―― 夕食時 食堂

グツグツグツ

五十鈴「……というわけで、私たちは明日オフよ!」ハフハフ

夕張「本当!?やった!」ハフハフ

五十鈴「他の娘にはもう伝えてあるけど、みんな喜んでたわよ。
    やっぱりどの娘もパーラーまみやが気になるみたいで」

夕張「そうねぇ。たしかに噂の間宮アイスも気になるけど……私、美容院に行きたいのよね」

五十鈴「およ?どして」

夕張「実は鬢付け油のストックがそろそろピンチでさー。あと、最近髪のボリュームも気になるし」

五十鈴「あぁ、たしかにねぇ。私も毎日括ってごまかしてるけど、そろそろどうにかしたいわ」

夕張「じゃ、明日は一緒に行ってみる?"ヘアサロンまみや"」

五十鈴「そうね、そうしましょ。……んー、お肉おいひー♪」

夕張「お肉もお野菜もどんどん乗せてー♪……イイ気持ちぃ♪」



赤城「……」メラメラメラ


夕張「実はここに配備になってから、すき焼きなんて初めてなのよねー」モグモグ

五十鈴「私も私も!……って、あれ?夕張ってたしか最先任組だったわよね?」ハフハフ

夕張「うん、そーねぇ。この泊地は電ちゃんと雷ちゃん、長良と私でスタートしたからね」

五十鈴「ほほう。そのメンバーの初日の話とか気になるわね」

夕張「べ、別に大したことはなかったわよ?提督も交えて一人ずつ自己紹介しあって、
   打倒深海棲艦を誓い合って、ごはん食べておしまい……みたいな感じ」

五十鈴「そのときのご飯は?」

夕張「まだその時は鳳翔さんいなかったから、ちゃんとしたご飯つくれるのが私と長良だけでね。
   あの日は二人がかりでカレーにしたのよ、材料も揃ってたしちょうど曜日も合ってたから」

五十鈴「なるほどねぇ。……いやはや、あの提督の下で長い間苦労したのねぇ、夕張は」

夕張「ちょっとやだ、別に大したことないってばー。
   長いっていってもまだ数ヶ月だし、みんないい人ばっかりじゃない」

五十鈴「えー、でも提督ってちょっと言葉足らずでわかりにくくない?」

夕張「う゛……。ま、まぁ、それはそうかも……。でも、ホントはいい人よ?」

五十鈴「お、やけに庇うねぇ提督のこと。……んんー?」

夕張「ちょ、ちょっとやだ、そんなんじゃないってば!///」



赤城「材料追加を急いで!」クワッ


五十鈴「おおっ、アヤシイ反応だねぇ夕張ちゃーん?ほれ、とっととゲロしちゃいなさい」

夕張「だからもうっ、そんなんじゃないのよ!私だってね、ちょっとは思うところはあるのよ!」

五十鈴「ほほう?」

夕張「最初の頃こそ第一艦隊旗艦だったのに、重巡や……戦艦の子たちが来たらさ、
   すーぐに取って代わられちゃったじゃない!……まぁ、そりゃしょうがないけど」

五十鈴「ふむふむ。……む?」

夕張「それに私のこと便利屋扱いしすぎ!機銃と高角砲ガン積みで飛行機駆除させたら、
   次の日はドラム缶満載で遠征に出したり!今日だって爆雷とソナーのフルコースよ!?」

五十鈴「ちょ、ちょっと夕張」アワアワ

夕張「そのくせ扱いだけはどんどん下になっていって、いつの間にか旗艦だって
   他の子ばっかりが任されてるじゃない!私、最近の提督が何考えてるのか全然ッ……!」

五十鈴「夕張!後ろ後ろ!」

夕張「へ?」クルッ



提督「……」



夕張「えっ……えぇ~っ!?」



赤城「第二次材料隊、全機発艦!」ババッ

北上「赤城さん、それ第三次」


提督「ゆ、夕張……その……」

夕張「ひゃ……ひゃあああ!!!」ダダダッ

五十鈴「夕張!?」

提督「ちょ、ちょっと待て夕張!!」

バタバタバタ…

五十鈴「い、行っちゃった……」

提督「……」

五十鈴「……」ジローリ

提督「……メシを不味くしてしまってすまなかった」

五十鈴「……バカね、提督(アンタ)も。普段から言葉を惜しみすぎよ」

提督「そ、そういうつもりはないんだが……」シドモド

五十鈴「全くスマートじゃないわね。それでも船乗り?ちゃんちゃらおかしいわ」

提督「そこまで言うか!?」

五十鈴「と・に・か・く!明後日までにちゃんと夕張にフォローをしてよね!
    腑抜けたまんまで任務に出したら、沈むのはあの子なのよ!?わかった!?」

提督「す、すまん……。わかった、努力する」

五十鈴「んもぅ!……世話の焼けるったら」プリプリ



赤城「何やら向こうが騒がしいですが、そんなことよりまだこの鍋は煮えませんか」


金剛「比叡、箸が止まってますヨ?いったいどうしたネー?」

比叡「あ、お姉さま。……いえ、赤城さんの様子を見ていると、その……」

金剛「what?」

赤城「北上さん、ごはんのおかわりを」スッ

北上「おー、食うねえ赤城さん。何杯目だったっけ」ヨソイヨソイ

赤城「ごはんは3杯目、すき焼きは5杯目です。……よそって頂き感謝します」

北上「いんえの。私もせっかくだしごはん2杯目いっちゃおっかなー」

島風「もー、そんなことより赤城!まだそれ生煮えだよ!食べるのはっやーい!」

赤城「これくらいがおいしいのです」ハフハフ

比叡「……ね?」

金剛「Oh……」



赤城「おかわり」ドン


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――翌朝

五十鈴「……いい加減元気だしなよ、夕張」

夕張「うぅ~……」グシグシ

五十鈴「ほら、髪の毛切りに行くんでしょ。オフなのに引きこもりなんて勿体無いわよ」グイ

夕張「うん……わかった、わかったから引っ張らないで……」

五十鈴「んもう。待っててあげるからすぐに準備してよね」

夕張「了解……」ノロノロ

五十鈴(……重症ねえ。目の周り真っ赤だし、眠れなかったかなこりゃ)



夕張「お待たせ……」

五十鈴「ん。じゃあ行こうか、"ヘアサロンまみや"」

夕張「ん」

五十鈴「えーと、給糧艦の出入り口からこっちに曲がって、あの向こうの――」


五十鈴「――っと、ここね。ごめんくださーい」カランコロン

妖精「ハーイ」「イラッシャイマセー」「2メイサマゴアンナーイ」

五十鈴「あら!ホントに妖精さんがやってるのね、ここ」

妖精「ソウデスヨー」「キョウハカットデスカー?」

五十鈴「ええ、ちょっと梳いて、毛先を揃えていただける?」

妖精「ワカリマシター」「ソチラノオキャクサマハー?」

夕張「……この際だから、ばっさり切っちゃおうかな」

五十鈴「え!?」

妖精「ヨロシインデスカー?」「セッカクキレイニノバシテアルノニー」

五十鈴「そ、そうよ夕張。もったいないわよ、そんなにきれいな髪なのに」

夕張「んー……」



??「あら、あなた方も来てらしたの。ごきげんよう」カランコロン


五十鈴「あら、熊野じゃない。どうしたの、あなたも髪を切りに?」

熊野「いいえ、わたくしは三日に一度はカットしておりますもの。必要ございませんわ」

五十鈴「……そういえばあんた、自前でエステとか建ててたわね。基地の隣に」

夕張「へ!?あの小さい建物ってエステだったの!?」

熊野「うふふ、またいずれご招待いたしますわ。……それより、妖精さん?」

妖精「ハーイ」「ゴヨウハナンデショー?」

熊野「シャンプーとコンディショナーをいただきたいの。どんなものを扱ってらっしゃるのかしら」

五十鈴「明石さんとこでも売ってるじゃない、シャンプー」

熊野「いえ、やはり餅は餅屋。ヘアサロンのシャンプーは使い心地が一味も二味も違うものですわ」

五十鈴「……そういうものかしら?」


夕張「……そういえば、私も鬢付け油買おうと思ってたんだっけ」

五十鈴「あら、そういえばそうだったわね」

熊野「ヘアオイルですの?わたくしもちょっと見せていただきたいですわね」

妖精「ハーイドウゾー」「コンカイハシンサクアルヨー」

熊野「ふむふむ。椿油に……こちらはアンズ油ですのね。……こちらは?」

妖精「ソレハシンサクダヨー」「"モロッカンオイル"ッテイウンダヨー」

熊野「まぁ!雑誌で読んだことがありますわ、モロッカンオイル!」

五十鈴「もろっかん?何それ」

熊野「雑誌に乗っていた口コミ情報で、今一番人気のアウトバストリートメントですの!」

妖精「アトコレトー」「コレモシンサクー」

熊野「まぁまぁまぁ!これも!それも!どれも評判のオイルではありませんの!」

五十鈴「……さっすが間宮ね、艦娘の喜ぶツボを心得てるわー」

熊野「潮風にあたるお仕事は髪が痛みますもの。むしろこれくらい当然ですわ!」


五十鈴「夕張ってこういうのにはときめかないの?新装備フェチのくせに」

夕張「ふぇ、フェチって言わないでよ!確かに新商品もすごく気になるけど……」

熊野「あら、夕張さんはご贔屓の銘柄がありますの?」

夕張「私は……」キュッ



(『……いい匂いがしたんだ、夕張の髪』)



夕張「……これ」

五十鈴「アンズ油?」

熊野「そういえばいつも、夕張さんはこれをつけておいででしたわね」

夕張「ん。……好きなのよ、この匂い」

五十鈴「ふーん。いろいろ試してみればいいのに」

熊野「そうですわよ。私なんて全く節操なくとっかえひっかえしておりますのに」

五十鈴「その言い方はやめなさい熊野」


夕張「ほ、ほら。私も最近"とっかえひっかえ"に疲れちゃってるから、ね?」

五十鈴「あー……そっか、そうね。うん、変えなくていいところは変える必要ないわよね」

熊野「??? 何の話ですの?」

五十鈴「いいのいいの、熊野は気にしなくって!」

熊野「む、わたくしは仲間はずれですの!?」

五十鈴「あ、それより髪!どうするのよ夕張」

夕張「うーん、そうね……。それじゃあやっぱり、」



                       ! !
 ○     ○     ○   ---++:
                        i i



妖精「デキマシタヨー」「カワイクナッタネー」

五十鈴「んー、すっごくすっきりしたわ!見た目のイメージそんなに変わらないのに」

夕張「ふぅ……。うん、私もすっきりさっぱり。いい気持ちぃ」

熊野「さすが間宮の妖精さんたち、いい仕事をなさいますのね」



五十鈴「よし、あと私はこのシャンプーとこのオイルを買ってー、」

熊野「わたくしもこれとあれとそれと、あとそっちを!」

夕張「私はこれね!」

妖精「ヘイ、マイドアリ!!」「オジョーサン、イイカイモノシタネー」「オマケドゾー」

五十鈴「うふふ、ありがとう!」

熊野「また来ますわね。ごきげんよう」

夕張「……よっし!行こう!」



カランコロン



妖精「マタオコシクダサイマセー!!」 (`・ω・´)


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


――同日昼過ぎ 基地内

金剛「テートク?んー、今部屋にはいないネー。急ぎの用ですカー?」

夕張「あ、なら大丈夫です。また後で来ますね」

金剛「オゥケーイ。シーユーレイター、夕張」ヒラヒラ

夕張(……ふぅ。提督、どこ行っちゃったんだろ。昨日のこと謝りたいのに)トボトボ

夕張(……避けられてたり、しないよね。……しないよねぇ?)

夕張(いや、避けられてるだけならまだこっちから出向けばいいけどっ……もしも……もしも……)

夕張(もしも私に愛想尽かして、「前線から外す」なんて言われたらっ……!)

夕張「やだぁー!!!そんなのやだぁー!!!」ブワッ

提督「のわっ!?」ビクゥッ

夕張「ひょわっ!?」

提督「こ、こんなところにいたのか夕張!!探したぞ」

夕張「て、提督……!!」


提督「お前に話があって探していたんだ。今、時間いいか」

夕張「えっ、えっと、その……。あの、私も話があるんですけど、いいですか?」

提督「……お前の話は昨日しっかり聞いている。その件だ」

夕張「え!?あ、あの、ちょっと」アワアワ

提督「本当にすまなかった!(バッ)お前の気持ちを知りもしないで、俺は今までッ……」

夕張「い、いえ、その、違うんです、顔を上げてください提督ーッ!!」

提督「……違う?」

夕張「昨日のあれはその、売り言葉に買い言葉っていうか、五十鈴を誤魔化すためにわざと……ッ、
   と、とにかくあれはホントの本音じゃないんですっ!私、全然怒ってたりなんかしないですよっ!」

提督「だ、だが」

夕張「察してください!お願いします!」ペコペコ

提督「……」

提督「……わからんが、わかった」


夕張「わ、私、扱いが悪いっていうのも、その……別に、怒ってなんかないんです、よ?
   だって、提督が第四艦隊でいろんな子を入れ替えて旗艦にしているのは……」

提督「……そうだ、僚艦を練達者で固め、なるべく難しい任務を経験させることによって
   早期に練度を上げてもらいたいと考えての配置だ」

夕張「それくらい言われなくてもわかってます!だから、いつも僚艦に配置されるのは
   別にイヤじゃないんです!提督がそこまで信頼してくれてる証拠だって、私わかってます」

提督「……」

夕張「それに、新しい装備をいつも先に私に回してくれていることだって……わかってます」

提督「……しかし、それは結果的にお前を酷使していることと変わらん」

夕張「私は!兵装実験軽巡なんです!兵器のデータを収集することが生きがいなんです!
   私のそういう気持ちを汲んでくれてるんでしょう、提督。……違いますか」

提督「……そう思ってくれていたのか」

夕張「もう、だいぶ付き合い、長いじゃないですか」

提督「初日にこの泊地に参じてくれたものな、お前は」


提督「……昨日な、お前が五十鈴にこぼしているところに行き合わせて、正直動揺した。
   お前にガマンをさせているかもしれないことに思い至らなかったからな」

夕張「いや、だからアレは……」

提督「見損なってくれるな。お前が嘘や誤魔化しがヘタなことぐらいはわかってる。
   ああいう気持ちがほんの少しでもなくては、とてもあのスピードで口からは出ない」

夕張「……」

提督「昨日の気持ちもさっきの言葉も、どっちも本音のはずだ。……そうだろう、夕張」

夕張「……」

提督「お前の日々の働きと気持ちにしっかりと向き合わなかった俺のせいだ。……すまなかった」

夕張「提督ぅ……」ウルウル

提督「こんな言葉足らずで情けない俺だが、これからもついてきてくれるか」

夕張「は……はひっ……!」ズズッ

提督「な、泣くな!ほら、ハンカチだ、使え」ゴソゴソ

夕張「お゛、お゛借゛り゛じまずっ!」グシグシ

提督「……。夕張、お前髪の毛切ったのか?」


夕張「へ?あ、はい、軽く梳いて毛先を整えてもらった程度ですが」

提督「そうか。いや、やっぱり夕張はポニーテールが似合うな」

夕張「……提督、ポニーテール好きなんですか?」

提督「ん?あ、いや、うん。まぁ……そうだな」

夕張「(ばっさりやらなくてよかったぁ……)」

提督「何か言ったか?」

夕張「い、いえ、何でもないです!……ふふ、この件は貴重なデータとして残しておきます」

提督「そんなものは残さなくていい!」

夕張「……じゃあお返しに教えてあげます。提督、夕張は頭をナデナデされるのが好きなんですよ」

提督「んお?そ、そうなのか?……しかし、ポニーテールが乱れるじゃないか」

夕張「んー。んん」グイ

提督「……なんだ、頭をこっちに向けて」

夕張「んー!」グイグイ

提督「……。わ、わかったわかった」ポム


ナデナデ


フワッ…


提督(……あの時と同じ匂いがするな。そう、あれはこの泊地で初めてこいつらと出会った時――)

  …  ─ ── ─── ──────────────── ─── ──  ─…
           …… … ────────────── … ……
                     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

『いいか。この泊地は最前線でこそないが、この地域を深海棲艦の脅威から守るための重要な拠点だ。
 各自、個々の能力を存分に発揮して任務にあたってほしい!よろしく頼む!』

『了解致しました!』
『りょーかいですっ!』
『了解よ!』
『なのです!』

『よーし、今日は夕張と長良のつくってくれたカレーだ!配膳は任せておけ!』

『あ、いいですいいです提督は!私がやりますから座っていてください』

『いや、しかしだな……』

フワッ…

『……ぬ、いい匂いだな』

『え?カレーがですか?』

『あ、いや。……いい匂いがしたんだ、夕張の髪から』

『ふ、ふぇっ!?///』



                   _________
          …… … ────────────── … ……
…  ─ ── ─── ──────────────── ─── ──  ─…


提督「……夕張は髪に何かつけているのか?」

夕張「んー?ふふ、それはナイショのデータですね」

提督「なんだ?そんなに重要な機密なのか?」

夕張「そうでーす!特に提督にはナイショですよ!」

提督「おかしな奴だな……」

夕張「うふふ。さ、もうすぐお夕飯ですよ提督!今日は一体なんでしょうね」

提督「お、もうそんな時間か」



夕張(これは私の"絶対に変えない兵装"だなんて、提督には絶対ナイショなんだから)

今日はここまで

たまにはこういう乙女な夕張ちゃんどうでしょうというプロモーションでした

何事もなければ、いつもどおり20時頃に投下開始します

今回はいつもの半分くらいの長さです
というか、スレ建て当初は書く予定も発想もなかった話です
ここに至るまでに散々筆が滑った挙句のフォロー回だと思ってください

それでは始めます


【 番 外 編 】 一 航 戦 の 誇 り


――間宮来港、二日目の朝

グゥー…

北上「んうー……?ん……朝だよ赤城さん……起きよ……」

赤城「……」グゥー

北上「……起ーきーてー。赤城さーん、起きてー」

赤城「……。今、ここで目覚めるわけには……」グゥー

北上「何言ってるのー……。お腹鳴ってるよー……起きろー……」

赤城「……」グゥー

北上「んもー……。ほら、もうすぐ朝ごはんだよ……」

赤城「……目が……覚めてしまいました」グゥー

北上「……ちなみに、今日は何の夢だったんですー?」

赤城「わんこそば……」グゥー

北上「……そっかぁー」

赤城「はい……」グゥー



グゥー…


チュンチュン

北上「んー、今日もいい天気になりそうだー」

赤城「……わんこそば、まだ140杯目でしたのに。惜しいことをしました」

北上「それにしても便利ですよねー。夜が明ける直前に必ずお腹が鳴るって」

赤城「……それ、あまり大きな声で言わないでくださいね?」

北上「まぁ、アタシがルームメイトなうちはヒミツにしときますよ」

赤城「お願いします。私にも羞恥心はあるのです」

北上「……いやぁー、これが冗談じゃないから赤城さんはかわいいなぁ」

赤城「何のことですか?」

北上「いんえ、何でもないです」


赤城「さ、朝ごはんの前にランニングに行きましょう北上さん」

北上「ほいほい、行きましょう」



赤城「……」タッタッタ…

北上「ハッ……ハッ……」タッタッタ…

赤城「……ふぅ。いい汗かきましたね」

北上「んはぁー!……もう、赤城さん朝から飛ばし過ぎですよ!」ゼェゼェ

赤城「そうですか?すいません、急かしてしまって」

北上「……航空甲板に艦載機を山盛り積んで海を行く空母だもんなぁ、赤城さんは。
   軽巡上がりのアタシじゃあ、基礎体力が丸っきり追いつかないや」

赤城「あなたも重雷装巡洋艦に改装したばかりじゃないですか。
   聞きましたよ?両舷合わせて40本の魚雷が追加装備で搭載されたと」

北上「いやぁー、アレ重くて重くて……。速度を落とさないようにするだけで精一杯ですよ」

赤城「ふふ。私のペースについてこれるなら、きっとすぐ慣れますよ」

北上「そーですかねぇ……?」

赤城「はい、きっと。……さ、汗を流したら朝ごはんに行きましょう」


――食堂

赤城「……!!」

北上「おぉう。これはまた一気に豪華になりましたね」

赤城「浮遊物の絶えていたお味噌汁に……お豆腐とお大根が入ってます……!」

北上「さりげなく玉子焼きの厚みも元に戻ってますね!!」

赤城「お新香も漬けたてほやほやのきゅうり!それに……それにこれは……!!」

北上「鮭の切り身の塩焼きッ!!」

赤城「おお、神よ。あなたは果たして死んだのかと疑っていた私をどうかお赦しください!!」

北上「赤城さん!ほら!お櫃にもたんとお代わりが入ってるよ!
   朝ごはんの、しかも一杯目から大盛りができますよ!」

赤城「……こ、こんなに幸せで……いいのでじょうがッ……!」ベソベソ

北上「今は泣く時じゃないです!さ、牛乳で乾杯しましょう赤城さん!」

赤城「は……はいっ!!それでは!一航戦、赤城!いただきますッ!!」



島風「もー、そこの二人うるさい!」プンスコ

龍田「ふふ、まぁまぁ島風ちゃん。しばらくは許してあげて?」クスクス


島風「ったく、龍田も龍田よ!赤城にガツンと言わなくていいの!?」

龍田「何をー?」

島風「ほら、『食べ過ぎ』とか『意地汚い』とか!昨日のすき焼きも、ほとんど一人で鍋三杯分もっ……」

龍田「……島風ちゃん?赤城さんをそういう風に見ていたのぉ?」

島風「えっ……、だ、だってそうじゃない!大食らいで、いっつもお腹すかせてて……」

龍田「そうねぇ、それは間違いじゃあないわねぇ」クスクス

島風「だ、だったら!」

龍田「でも、それを『意地汚い』とは思わないなぁ。だって"仕方ない"じゃない、空母なんだから」

島風「……"仕方ない"?」

龍田「ふふ。島風ちゃんにはわかんないかなぁ」

島風「……なによ、どういうこと?」


龍田「私たちの普段のお仕事って、足を活かして敵陣に切り込んでいくことよね?」

島風「そ、そうね」

龍田「……じゃあ、空母のお仕事はなぁに?島風ちゃん」

島風「く、空母の仕事!?そ、そりゃあ艦載機を飛ばして攻撃することじゃない?」

龍田「それだけ?」クスクス

島風「……さ、索敵とか……?」

龍田「そうよね、それも私たちの戦線を支える大事なお仕事よねぇ」

島風「……で、それがどうかしたっていうの?」

龍田「赤城さんの最大艦載量って、知ってる?」

島風「82機?だっけ」

龍田「その82機を一度に操って、その82機全ての状況を把握して、
   その82機から送られてくる情報を全て処理して、その上で私たちに指示まで出すのよ?」

島風「……う」

龍田「島風ちゃんはもし目の前に映像モニターが82枚あったとして、
   そこに映っている内容を全部一度に把握できるかしら?」

島風「……む、無理」

龍田「よねぇ」クスクス


龍田「で、その82枚の画面を全部同時に操作できるとして……」

島風「……わかった!わかったわよ!私には不可能よ!連装砲ちゃんだけで精一杯!」

龍田「それを愚痴一つ言わずに、自分の役割だからって毎回こなしてる赤城さんよぉ?
   私、そんなすごい人のことを『意地汚い』なんて言えないなぁ」

島風「……うー」

龍田「きっと、そういう作業にすごーくカロリーを使うんだろうなぁ、って思ってあげましょ?
   だって私たち、同じ艦隊の仲間じゃなーい。ね?」

島風「……」

龍田「……島風ちゃーん?」クスクス

島風「……っ!ちょっと行ってくる!」ダッ

龍田「いってらっしゃーい」ニコニコ



島風「赤城っ!!」

赤城「ほぁひっ!?」モゴモゴ

北上「赤城さん、食べながら返事はやめようよ」


島風「……これっ!」バッ

北上「これ?……島風のぶんの玉子焼き?」

島風「わ、わたし、今お腹すいてないからっ!赤城、食べるっ!?」

赤城「……」モグモグ

北上「突然どしたの島風。あんた、玉子焼き好きじゃなかったっけ?」

島風「い、いいのっ!残すのもったいないしっ!」

赤城「……」ゴックン

島風「い、いらないなら金剛か比叡にあげちゃうからねっ!?」

赤城「ありがとうございます。いただきます」

北上「だってさ」

島風「……ん!いっぱい食べてね、赤城!」タタタッ


赤城「北上さん、ご飯のおかわりお願いします」

北上「ほいほい」


龍田「おかえりぃ」

島風「……ん」

龍田「島風ちゃんはやさしいねぇ」クスクス

島風「……///」

龍田「あ、そういえばこの話は知ってる?」

島風「なに?」

龍田「赤城さんね、昨日3時のおやつに一人でパーラーまみやへ行ったんですって」

島風「うん」

龍田「それで、その場でアイスクリームを7皿一気に食べてお腹を壊したらしいわよぉ」

島風「うん。……うん?」

龍田「で、お腹壊したまますき焼き食べに来たんですって」

島風「ちょっと待って?……ちょっと待って!?」


龍田「ちなみにこれ、その場に居合わせた天龍ちゃんから聞いた話だからー」クスクス

島風「お腹壊しててあの暴食っぷりだったの!?赤城ってちょっとおかしいよ!?
   あ、そういえば昨日は出撃だってなかったのに!!どういうこと!?」

龍田「さぁ?」

島風「空母って……どういうイキモノなのよ……」

龍田「さぁー?」クスクス

島風(……この基地がこないだまで慢性的な食料不足だったのって、まさか)

龍田「野暮な詮索はやめましょ、島風ちゃん」

島風「う゛……。わ、わかったわよ龍田」

龍田「そうそう。キケンなものには触れない、それが長生きのコツよぉ?」ニヤッ

島風「」ゾクッ



赤城「おかわりっ!!」

北上「あいよっ!」

今日はここまで


実はちょこちょこ脇で輝いてた赤城さんですが
最初は全く登場する予定がなかったんです
なのにいつの間にかあんなことになってしまったので、申し訳なくなってしまい…

ということでフォロー回でした(フォローするとは言ってない

お待たせしました
21時頃から始めます

大変お待たせしました
それでは始めます


【 な い し ょ の ま み や 】


―― 間宮来港初日 夕飯後

提督(……お、いた)

提督「間宮」

間宮「はい?あ、提督さん」

提督「今大丈夫かな」

間宮「はい、どうされました?」

提督「申請書が一通あるんだが、目を通してもらえるか。私の押印はしてある」

間宮「拝見します。……んー、ふむふむ。なるほど」

提督「"使える"かな?」

間宮「はい、問題ありませんよ。では明日、この時間までに準備しておきます」

提督「よろしく頼む」

間宮「それにしても……。ふふ、友達っていいものですね」

提督「そうだな……」


間宮「あ、そういえば聞きましたよ提督さん。せっかくのすき焼きの席であんな」

提督「あーあー、その、なんだ、その話はやめてくれないか」

間宮「夕張ちゃんかわいそー」

提督「……明日しっかり謝っておく。だから勘弁してくれ」

間宮「約束ですよ?」

提督「うむ……。……間宮は、自分の仕事に対して思うところはあるのか?」

間宮「え?私が……ですか?」

提督「軍の規模や展開範囲は広がる一方だ。きっと、これからも拡大していくだろうな。
   だが、その動きに対して給糧艦は間宮の他にはもう一隻だけというじゃないか。
   そういったことがずいぶんな負担になっているのではないか?そういう現状に対して……」

間宮「んー……。確かにもう少し仲間がいれば、もっと充実した補給が実施できるんでしょうけどね」

提督「だろう」

間宮「でも、それが負担になっているかと言われたら、そんなことはありませんよ」

提督「……」


間宮「私一隻にできることにはたしかに限界があります。
   仲間のために武器をとって戦えない自分を、たまに歯がゆく思うことだってありますよ。
   でも、それが仕事へのやりがいを損なうなんてことはちっともないです」

提督「そういう……ものか」

間宮「夕張ちゃんだって、きっと同じ気持ちですよ」

提督「夕張が?」

間宮「軽巡の彼女には、戦艦や空母の子たちを羨ましく思うことだって多いはずです。
   火力としてはどうしても劣りますし、他の仕事を担当する局面でも防御力で足を引っ張ります」

提督「……」

間宮「私にできることは皆さんに補給を届ける、ただそれだけです。
   ですが、それに誇りを持っていますよ。……夕張ちゃんのその気持ちを汲んであげてください」

提督「……よく心にとめておく」

間宮「よろしくお願いします。……ところで、申請書のこの部分ですけど」

提督「む?」


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


―― 翌日の朝食時

木曾「……おっす、まるゆ」

まるゆ「あ、木曾さん!おはようございます」

木曾「おう、おはよ。……お前、今日はなんか予定あるのか?」

まるゆ「まるゆですか?いいえ、急なお休みだったので何も……」

木曾「そっか。そんならいいや」フイッ

まるゆ「……?木曾さん?」

木曾「ん?なんだ?」

まるゆ「いえ、木曾さんは何かご予定が?」

木曾「おう、大忙しだ。見かけても引き止めたりしてくれるなよ?」フイッ

まるゆ「は、はい。ではまたお夕飯のときにでも」

木曾「うい。じゃな」ヒラヒラ



まるゆ(……暇だったら、ご一緒に遊びにいきませんか?って誘いたかったなぁ)


まるゆ「……」モグモグ

木曾「……」コソコソ

ピーガガー…

木曾『……こちら木曾。聞こえるか』ザザッ

多摩『にゃ』

球磨『クマ』

木曾『Mに本日の予定なし、作戦はプランA。繰り返す、作戦はプランA』

多摩『ラジャーにゃ』

球磨『了解クマー』

木曾『俺は先に"現地"へ入って準備する。あとは任せたぞ』

球磨『ういうい。……よし、せーの』

球磨・多摩『『"貴船の航海の無事を祈る"』』

木曾『……何だそりゃ?』

多摩『いっぺん言ってみたかっただけにゃ』

球磨『クマー』

木曾『……。やーれやれ、ありがとさん。じゃな』ブツッ



木曾「……たまにはおもしろいこと言うじゃねーか、普段は不肖のバカ姉のくせに」


まるゆ(……そうだ、たまにはお手紙を出さないと)モグモグ

まるゆ(陸軍のみなさん……お元気かなぁ。あきつ丸さんとも海で会わないし……)

球磨「クマ?変な顔してどうしたクマ、まるゆ」

まるゆ「ふぇっ!?く、球磨さん!」

多摩「にゃー。寂しそうな顔してたにゃー」

まるゆ「し、してないですよそんな顔!」アタフタ

球磨「そうクマー?まぁ、それならいいんだクマー」

まるゆ「そ、そうだ!まるゆ、お手紙を出したいんですけど、ここではどこに出せばいいんでしょう」

多摩「お手紙?宛先はどこにゃ?」

まるゆ「……あ、宛先!?そ、そういえば……どこに出せばいいんでしょう……」

球磨「……クマ?」


球磨「なるほど、陸軍のお友達に手紙を出したいのかクマ」

まるゆ「まるゆ、こっちに派遣されてから向こうの事情がさっぱりでして……。
    出したい人が今どのあたりでお仕事されているのか、わからないんです」

多摩「……どうすればいいのかにゃー。
   タマ達はお手紙出したい相手もいないし、考えたこともなかったにゃ」

球磨「そうそう。うーん、こういうときは提督に尋ねてみるしかないクマ」

まるゆ「ううっ……。なんだかご迷惑をおかけしてしまってすみません」

球磨「え、別に迷惑じゃないクマよ?むしろ、いい勉強になるからありがたいクマ」

まるゆ「えっ?」

多摩「タマたちが"出す必要性を感じたことがない"だけで、他の子までそうだとは思わないにゃ。
   たとえば……もしかしたら、北上には出したい相手がいるかもしれないにゃね」

まるゆ「??」

球磨「ああ……そうクマね。うちの泊地にはまだ"あの子"が来ていないから」

多摩「まったく、どこをほっつき歩いているんだか……にゃ」

まるゆ「えっと……それって、どなたでしょう?」

球磨「不肖の妹」

まるゆ「へ??」


多摩「"大井"っていうんだけど、まるゆはどこかで会ったことないにゃ?」

まるゆ「お、おおいさん、ですか?いえ、ここに来るまでにお会いしたことは……」

球磨「クマー。ま、あいつは気まぐれだからしょーがねークマ」

多摩「にゃ」

まるゆ(……血は争えないんだろうなぁ。気まぐれ、ってところ……)

球磨「……今度はすげー生暖かい笑顔になってるクマね、まるゆ」

まるゆ「ふぇっ!?」

多摩「にゃ、まるゆはわかりやすくって大好きだにゃ。うりうり」プニプニ

まるゆ「ふぁっ!?あわわ、ほっぺたはやめてくださいよぅ!!」

球磨「クマー。じゃあこっちだクマー」コチョコチョ

まるゆ「うひゃう!?わ、わきばらひゃ、ひゃあっ、だ、だめぇー!!」

球磨「ういやつだクマー」

多摩「にゃ、それよりも早く提督のところに行くにゃ。お手紙の出し方を聞きに行くにゃ」

球磨「おお、そうだったクマ。さ、まるゆもこっちにくるんだクマー」グイグイ

まるゆ「あぅ~……離して~……まるゆはちゃんと歩けますよぅ……」ズリズリ


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


――昼下がり 基地の埠頭

まるゆ(その後、お昼までずっと球磨さんと多摩さんに遊ばれてしまったまるゆです……
     まるゆです……いじられキャラがすっかり定着してしまいました……まるゆです……)

まるゆ「……木曾さん、いないなー」ショボーン

まるゆ「いつもなら、あんなふうにまるゆがくしゃくしゃにされてたら……」

  …  ─ ── ─── ──────────────── ─── ──  ─…
           …… … ────────────── … ……
                     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

木曾「こーら球磨多摩。まるゆが困ってんじゃねーか、そろそろ離してやれって」

球磨「クマー!こら木曾、離すクマー!」ジタバタ

多摩「にゃー」パタパタ

                   _________
          …… … ────────────── … ……
…  ─ ── ─── ──────────────── ─── ──  ─…

まるゆ「……みたいな感じで助けてくれるのになぁ」

まるゆ(……ふぅ)

まるゆ(……木曾さん。海軍で初めてできた、お友達。
    荒っぽくて、喧嘩っ早くて、でも、とってもあったかい艦(ひと)……)

まるゆ(……どこいっちゃったのかなぁ)

まるゆ「まるゆ、ぽつーん……」


球磨「……ううむ、あの様子をどう見るクマ、多摩」

多摩「にゃー……。前倒しに出来るものならしてあげたいところだにゃ。
   よし、ここは本部の状況を聞いておくことにするにゃ」

ピーガガッ

多摩『こちら多摩にゃ。木曾、そちらの状況は?』

木曾『んー、あー、ちょっと待ってくれ。……ん、よしよし。おう、待たせたな』

多摩『そっちの準備はどうにゃ?』

木曾『すこぶる順調だぜ、手空きの妖精さんが応援に来てくれてるおかげだな。
   ただ、"会場"は完成したが"アレ"が出来上がるのにはまだ時間がかかるぜ……今は焼成してる途中だ』

多摩『にゃ……それは仕方ないにゃ。急いでどうにかなるもんでもないしにゃー』

球磨『でも、Mを二人で自然に引き止めるのもそろそろ限界クマー』

木曾『そう言うなよ。お前ら普段から不自然なんだからいけるいける、もうちょっと粘れって』

球磨『それはどういう意味クマ!?』

木曾『いや、そのままの意味だよ』


多摩「にゃ?……球磨、ちょっと、球磨」

球磨「クマ?……むむ、Mに接近する者あり。あれは……天龍?」

木曾『どした』

球磨『木曾、すまんクマ。天龍が今Mに最接近中。このまま観察を続けるクマ』

木曾『了解』



天龍「うら、どうしたまるゆ。しけたツラしやがって」

まるゆ「あっ……天龍さん」

天龍「ここいいか?」

まるゆ「あ、どうぞどうぞ」

天龍「サンキュー」


まるゆ「今日はどうされたんですか?お一人なんて珍しいですね」

天龍「あー、昨日のおやつから暁どもがキャーキャーうるさくてな。ちょっと逃げてきた」

まるゆ「逃げてきた……?」

天龍「聞くな聞くな、頼むから。お前こそ一人なんて珍しいな、木曾はどうしたんだ」

まるゆ「木曾さんは……なんだか知らないんですけど、ご用事があるみたいで」

天龍「フーン……。……ん?んん……?」

天龍(……あいつによく懐いてるコイツを遠ざけて、木曾がコソコソしてる?
   なんだ?よっぽどコイツに見られたくないようなことをしてるのか、あいつ?)

天龍「……行き先とか聞いてねぇの?」

まるゆ「いえ、聞いてないですよ。朝、お尋ねする前にどこかへ行かれちゃって」

天龍「……へぇ?」キラン☆


天龍(今この状況で木曾がまるゆにナイショで行きそうなところ、か……)

まるゆ「??」

天龍(……言うまでもなくひとつしかねーじゃねーか。パーラー間宮!そこしかねぇ!)

天龍「……そうか、そういうことか。フフ、あいつも可愛いとこあるじゃねーか」ニヤニヤ

まるゆ「天龍さん……?」

天龍(いや、しかしここでそれをまるゆに知らせると、あいつが可哀想か?
   だが、ここであいつにも『隠れ甘いもの好き』の称号がつけば……
   オレだけが暁たちにからかわれるような事態は……回避される!!)

天龍「フフ……僅かな隙を見せたお前が悪いんだぜ、木曾……!」

まるゆ(うわぁ……天龍さんがすっごく悪い笑顔になってます……)

天龍「まるゆ」ギラッ

まるゆ「ひっ!?」

天龍「オレは今からスッゲー面白いとこに行くが……お前も来るか?」


まるゆ「お、おもしろいところですか?」

天龍「おう。今までの価値観をひっくり返すような面白いところだ」

まるゆ「え、えっと、でも、その、」

天龍「ていうか、お前が来ないと面白くならないんだ!頼む!来てくれ!」ペコ

まるゆ「え、えぇ~……?な、なんなんですかぁ~……?」

天龍「いいからいいから!来いって!こっちだこっち」グイ

まるゆ「え、えぇぇ~……?」ズルズル

まるゆ(き、今日はなんでこんなことばっかりなんですかぁ~……?)



球磨『……!?て、天龍がMを拉致したクマ!』

多摩『……まずいにゃ。この方向……間宮に向かってるにゃ!?』

木曾『なんだと!?おい、早く止めろ!なんとしても止めろ!』

球磨『ガッテン承知だクマー!』ダッシュ


まるゆ「天龍さーん!!まるゆは一人で歩けますよーぅ!!」ジタバタ

天龍「ハッハッハ、気にするな気にするな!」ズイズイ

球磨(まずいクマ!急いで止めないと、下手したらバレちゃうクマー!)タタタタ

球磨「ちょーっと待ったァー!!クマ!!」バッ

多摩「ここから先は!通さないにゃ!天龍!!」バッ

天龍「なっ!球磨、多摩!?」

球磨「どういうつもりクマ、天龍!」

天龍「な、なんだよ。ちょっとこいつと一緒に、パーラー間宮で茶でもと思って」

多摩「……!」

球磨「それを聞いてしまっちゃあ……意地でも通せねぇクマ……!」ポキポキ

天龍「……。そうか、お前らがそんなにムキになるってことは……」ニヤ

まるゆ「え、え!?な、なんなんですか、この展開!?」


球磨「多摩!天龍を抑えこむクマ!クマは右から!」バッ

多摩「多摩は左から……!」バッ

天龍「へっ、さすが姉妹艦だけあらぁ……!いいコンビネーションだな!」タタッ

まるゆ「ふぇえ!?ま、まるゆを抱えたままで……かわしたぁ!?」

球磨「く、クマッ!?天龍のくせに、潜水艦を抱えてあんなダッシュができるなんて!!」

天龍「伊達に暁型どもの面倒を毎日みてるわけじゃねぇよ!!
   こんなちびっ子、錘にもならねぇや!はっはっは!!」タッタッタ…

多摩「まずいにゃ!突破された!」

球磨『木曾!すまねぇクマ、そっちに天龍とまるゆが!』

木曾『んだとォ!?まずい、まだ俺はここを動けねぇ!!』

多摩『と、とにかく"アレ"を見られないところに隠し……いや、そもそも隠せるにゃ!?』

木曾『無理だ!今下手に動かすと崩れちまう!』

球磨『ぐぬぬ……万策尽きたクマ……!!』



??『……聞こえる?クマちゃん、タマちゃん。私に任せて』

球磨・多摩「「!!」」


タッタッタ…

天龍「おっしゃあ、間宮にタッチダウンだ!……待ってろよ、木曾ぉ!」フンス

まるゆ「ぐ……ぐるぐる~……」クラクラ

天龍「……おい、まるゆ。伸びてるんじゃねぇよ、これから本番だってのに」

まるゆ「え、あ、あぅ……はい……。……えっと、『待ってろ木曾』って、どういうことですか?」

天龍「かーっ、察しの悪い奴だな。いいか、あの二人が全力で止めに来たのはだな……」



間宮「そこまでよ」



天龍「!?」

間宮「全く、外で大騒ぎしてるから何事かと思ったら……。ダメよ、そういうおイタしちゃ」

天龍「な、なんだよ。間宮まで木曾の味方かよ」

間宮「ええ。……いいえ、むしろまるゆちゃんの味方、なのかしらね?」ウフフ

天龍「へ?」

まるゆ「ふぇ?」


間宮「と・に・か・く!ここから先は通せないわ。さ、回れ右して」

天龍「な、なんだよ!どういうことだよ、この先に木曾がいるのはわかってんだ!」

間宮「そうね」

天龍「……! それは否定しないのか」

間宮「それを隠す必要はないもの。……でも、今の木曾ちゃんには会わせられないわ」

天龍「……なんだ?さっぱり話が見えてこねえ。木曾はこの先にいるんだろ?
   だったら、あいつがやってることといやぁ、普段のキャラに似合わねぇことに決まっt……」

間宮「ストップ!……ちょっとごめんね。まるゆちゃん、少しの間だけ向こうに行っててもらえるかしら」

まるゆ「え?あ、はい」タタタ…

天龍「……な、なんだよ、怖い顔して」タジ…

間宮「……"侠気"に関わる話なのよ。話さないと納得できないかしら?」

天龍「話すも話さないも!向こうで木曾がスイーツ食ってるだけだろ!?なんでそういう話になるんだ!」

間宮「ああ……なるほど。なぁんだ、そういう勘違いをしてたわけね」ホッ

天龍「な、なんだよ……?」


間宮「このことは絶対にまるゆちゃんには話さないって、約束できる?」

天龍「お、おう……?」

間宮「あのね……」ヒソヒソ

天龍「……」



天龍「……はぁ!?!?」



間宮「……以上。このことを喋ったらパーラー間宮には出入り禁止にするわよ」

天龍「わ、わかった。なんだよ、そういう話なら最初からちょっかいかけたりしなかったぜ」

間宮「ん、いい子ね。……さ、クマちゃんたちにごめんなさいしてきなさい」

天龍「へーい……。いくぞ、まるゆ」スタスタ

まるゆ「??? あ、はい……」



間宮「……んもう。ホントに手間のかかる子たちね」クスクス


球磨「……あ、天龍が戻ってきたクマ」

多摩「間宮……感謝だにゃ」

天龍「……おぅ、悪かったな二人とも。こいつは返すぜ」ポンッ

まるゆ「ま、まるゆを物扱いしないでくださいよぅ!」プンスコ

球磨「……聞いたのかクマ」

天龍「ああ。……邪魔はしねぇよ、オレも女だ」

多摩「……球磨、ちょっといいにゃ?こうなったら、天龍にも参加してもらって……」

球磨「……お、それはいい考えクマ。天龍、ちょっとこっち来るにゃ」

多摩「まるゆ、ごめんね。ちょっと待っててにゃ」

まるゆ「え、え、え……?」



多摩「……だから、天龍からも……に声をかけてもらって……だにゃ」ヒソヒソ

天龍「……おう……それで、……OK、じゃあ……」ボソボソ

球磨「……クマー、これでもっと賑やかになるクマー」コソコソ



まるゆ「まるゆ、ぽつーん……」ショボン


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


――同日 夕刻

まるゆ(……なんだか今日は、あちこちに振り回されてばかりでした)

まるゆ(しかも、あれから球磨さんと多摩さんがずっとまるゆにつきっきりで……)

まるゆ「あ、あのぅ……。そろそろ、お夕飯の時間ですよ」

球磨「お、やっとかクマー。……ふふふ、待ちわびたクマー」

まるゆ「今日のお夕飯はなんでしょうね?さすがに昨日の今日で、贅沢なご飯ってことは……」

多摩「んふふ……。さ、行こうかにゃ」

まるゆ「あれ?こっちは食堂じゃないですよ?」

球磨「いいからいいから。さ、こっちだクマー」ズリズリ

まるゆ「だ、だからまるゆは一人で歩けますよぅ!あぅ~……今日、これで何回目だろ……」

多摩「球磨、さすがにもう引っ張らないであげようにゃ」

球磨「クマ?まぁ、多摩がそう言うなら」パッ

まるゆ「ふわっ!……って、あれ?ここって」

多摩「そ、間宮だにゃ」

まるゆ「……お夕飯の前にお菓子ですか?まるゆ、それはちょっと……」


球磨「いいからいいから。ほれ、こっちの階段を登るクマ」

まるゆ「え?でもこっちって、パーラーの方向じゃないですよ?」

多摩「いいんだにゃ、とにかくついてくるにゃ」

まるゆ「……?」


                       ! !
 ○     ○     ○   ---++:
                        i i


球磨「さ、到着だクマー」

まるゆ「ここって……『大広間』?間宮ってこんなところもあったんですか?」

多摩「まぁ、言ってもそんなに広いわけじゃないにゃー」

球磨「さ、まるゆが扉をあけるクマ」

まるゆ「は、はい」ギィ…


パパパパン!!!

まるゆ「ひゃあっ!?て、敵襲っ!?」ガバッ

球磨「……ぷっ、あははは!!違う違う、クラッカーだクマ、まるゆ」

まるゆ「……え。え、ええっ!?」


【 海 と 陸 の 親 睦 を 深 め る 会 】


まるゆ「こ、この横断幕って、え!?」

間宮「いらっしゃい、まるゆちゃん」

木曾「やれやれ、遅かったじゃねーか。いらん時にはすぐ来るくせに」

まるゆ「木曾さん!?」

天龍「いや、昼間は悪かったな。まさか、こんな準備をしてたとは知らなくってさ」

龍田「ごめんなさいねぇ。天龍ちゃんってぇ、昔っから空気読めなくって……」

まるゆ「天龍さん、龍田さんも……」


暁「全く、今日の主役がお客を待たせるなんて、レディ失格よ!」

雷「いいのいいの。主役ってそういうもんでしょ」

電「まるゆさん、今日はよろしくおねがいするのです!」

響「よろしく」

まるゆ「暁型のみなさんまで!!」

木曾「天龍のバカが呼んでくれたのさ。あんまり大げさにするつもりはなかったんだがな」

球磨「いやいや、こういうのは賑やかな方が楽しいクマー」

天龍「ていうか、バカって言うな木曾!」

間宮「さ、主役が到着したことだし……"アレ"、出しますよ」ニコニコ

雷「いよっ、待ってました!」ヒューヒュー

まるゆ「アレ?」

間宮「ふふふ……ジャーン!!」バッ

まるゆ「……!!こ、これって……」



まるゆ(シラップ漬けフルーツたっぷりの……ロールケーキ!?)


天龍「これをつくるのに一日かかりっきりだったんだとよ、木曾のやつ」

木曾「ば、バカ野郎!!喋るんじゃねぇって言っただろうが!!」

まるゆ「ええっ!?こ、これ、木曾さんが!?間宮さんじゃなくって!?」

木曾「……いや、もちろん間宮に横で教えてもらいながらだ。こんな甘いもん、つくったこともねぇし……」

間宮「わざわざ申請書でケーキづくりのお手伝いを願い出てたのよ。木曾ちゃんったら。
   ふふ。それにしてもかわいかったわよー、木曾ちゃんのエプロン姿」

木曾「チッ……言ってろ」///

まるゆ「……」フルフル

多摩「まるゆ?どうしたにゃ」

まるゆ「ううっ……。か、感激です……皆さん、まるゆのために……!」

木曾「なんだよ、仲間……いや、"ダチ"のためにこういうことするの、おかしいか」

まるゆ「!!! う……嬉しい!です!!あっ、ありがとうございますっ!!」

間宮「さ、デザートのお披露目は先にしちゃったけど……お夕飯、先に食べましょ。
   今日は私もみなさんといただいても、いいかしら?」

球磨「もちろんだクマー!さ、みんなそろって……」



「「「いただきまーす!」」」


球磨「(……まるゆ)」ヒソヒソ

まるゆ「(は、はいっ)」

球磨「今日は驚かせてゴメンクマ。この会はね……木曾がやろう、って言い出したんだクマ」

まるゆ「木曾さんが?」

球磨「あいつ、柄にもなくずっと気にしてたんだクマ。ほら、初日に言っちゃった一言……」

まるゆ「……『何だお前、泳げるのか?』、ですか?」

球磨「そうそう。それに、まるゆの歓迎会は泊地の備蓄が怪しくって、先延ばしにしてたんだクマ。
   木曾、そのことも相当気にしてたみたいで……まるゆが居心地悪くしてやしないかって」

まるゆ「そんなこと……」

球磨「あ、木曾にはこのこと絶対ナイショだクマよ。喋ったのバレたら……」

木曾「……クマよぅ。命いらないってか?いい覚悟だな」ギロリ

球磨「く、クマー!?聞こえてたクマー!?」

木曾「あったりめぇだろ!!アホなこと言ってたら次の演習は先行させるぞ!!」

球磨「そ、そんな殺生なクマ―!」

まるゆ「き、木曾さん!まるゆは嬉しかったですよ!球磨さんも悪気があったわけじゃ……」オロオロ

木曾「……チッ。命拾いしたな、クマ」

球磨「く、クマー……助かったクマ……」


まるゆ「木曾さん」

木曾「……な、なんだよ」

まるゆ「今日は、本当にありがとうございました」

木曾「お、おう。……そう改まるなよ、照れくさいだろ」

まるゆ「……"ダチ"って言ってくれて、まるゆ、とっても嬉しかったです」

木曾「……」カーッ///

まるゆ「木曾さん、これからも……よろしくお願いしますね!!」サッ

木曾「……おう。よろしく頼むぜ、まるゆ」グッ…



間宮「さ、特製ケーキを切り分けますよ」

天龍「待ってました!……あ、いや、オレが待ってたわけじゃねーからな!?」アタフタ

雷「……天龍ってさー」

響「うん。アレだよね」

電「なのです……」

龍田「我が姉ながら、フォローできないわぁ」クスクス


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


―― 二週間後 遠くの港にて

あきつ丸「お仕事ご苦労様であります。あきつ丸、たしかにこちらの書簡、受け取りました」

陸軍妖精「ハーイ」「ソレジャーネー」「ツギノハイタツダー」

あきつ丸「さてさて、差出人は……と。おや、まるゆでありますか」

あきつ丸(まるゆ、海軍の泊地に出向になって以来のお手紙でありますね。
     元気にやっているのでありましょうか……何しろ、慣れぬ環境でありますし。
     ともあれ、便りがあって一安心であります。どれ、まずは拝見……)パサッ





あきつ丸「……。……ふふ、そうでありますか」

あきつ丸(どうやら、私の心配は全くの杞憂だったようでありますな)


あきつ丸さんへ

お元気ですか?まるゆは元気です。

こちらでのお仕事も最初は慣れませんでしたが、今ではしっかり励んでいます。

そちらの方はお変わりありませんか?


そうそう、海軍にもすてきなお友達ができました。歓迎会も開いていただいたんです。

このあいだは、おいしいカレーのつくりかたも教わりました。

今度そちらに戻った際に、あきつ丸さんにも食べてもらえるように

今からしっかり練習しておきます。楽しみに待っていてくださいね。


それでは、本日もまるゆ、出撃してまいります。

あきつ丸さんの航海のご無事を、遠くよりお祈りしております。


                                      まるゆ

今日はここまで

「間宮はしばしば同窓会会場としても利用された」という行を読んで
絶対に書こうと思っていた話でした
伏線張るだけ張った挙句に、こんなに投下が遅くなったのだけが計算外でしたが…

そして間宮さん、久しぶりの登場すぎてもうね
一応といえば一応、このスレの主役のはずなのに←

22時くらいに始めます

この間も書きましたが、今回が最終回です

それでは始めます



 【 さ よ な ら ま み や 】


―― 間宮来港3日目早朝 執務室


提督「……」

金剛「
……」ジー

比叡「……」ジー

提督「……二人して何をバカなことを言っとるんだ。却下だ、却下」

金剛「なに言ってるノ、提督!!日本にはこんな素晴らしい言葉があるんだヨ!?
   曰く、『受けたオンはヨメをシチに入れてでもリターン』!スンバらしーフレーズだヨ!」

提督「そんな言葉は過去現在未来のどこにもない!!」

比叡「で、ですが!万が一を考えますと」

提督「万が一も億が一もない!万難を排するという視点から見ても、お前らの提案に
   一部の理もないことがわからんのか!」

金剛「どーしてですカー!提督は私たちにオンシラズでいろ、といいますデスかー!?」

比叡「私たちの守備力に提督はご不審がお有りですか!?」

提督「そういうことではない!……あー、ったく!バカな秘書艦を持つといつもこうだ」

比叡「提督!?お姉さまをバカにするのですか!?」ガタッ

提督「違うわ!こんなものはそもそも金剛が止めて然るべき案件だと言っとるんだ!」


金剛「どーしてデスか!?『間宮の護衛任務』に第一艦隊が当たる、
   これ以上に効率がグッドで合理的なハンダンがあるのデスか!?」

提督「……。わかった、そこにかけろ二人とも」

金剛「Oh。失礼するヨ」スチャ

比叡「……」スチャ

提督「まず『護衛任務』の定義からだ。金剛、さすがにこれくらいは言えるな?」

金剛「オウイエ!『間宮を次の泊地まで無事に送り届ける』!
   戦闘能力をほとんど持たない間宮のエスコートをするのが、私たちのお仕事ネ!」

提督「そのとおりだ。……で、比叡。うちの第一艦隊のメンバーは?」

比叡「へ?えっと、お姉さまに私、赤城さん、北上さん、島風に龍田さんですが」

提督「どうしてそのメンバーがうちの第一艦隊をやってるか、わかるか」

比叡「うちで最も攻撃力のあるメンバーを揃えているから……ですよね?」

提督「ああ、概ね正しい。……ここまで言えばわかるだろう」

金剛「……提督。こういうことネー?」

比叡「……『うちで最も攻撃力のあるメンバーを遠ざけることで、
   この泊地の守備力が低下することを懸念した』?そういうことですか!?」

金剛「テイトクってば自分のことばっかりネー!間宮に受けたオンをアダで返すノー!?」

提督「ちがわい!!お前ら本当に教練を受けた戦艦か、涙が出てくるわ!!」


提督「いいか!お前らはあくまで遊撃部隊だ!求められとる職分は『見敵必殺』、
   この四文字につきる!そのために攻撃できる敵種を広く取れるような編成にしてあり、
   またそれぞれの艦種から生え抜きを選抜しとるんだ!」

金剛「キャッホー!比叡、私たち褒められてますヨー!」

提督「叱責しとるんだこのドアホウ!!」

比叡「お、お姉さま、今はちょっと黙っておきましょう」

提督「全く……。いいか、そして『護衛任務』だ。お前ら、間宮を伴って外洋に出て、
   途中で深海棲艦と出くわしたらどうするつもりだった」

金剛「もちろん!サーチ・アーンド……デストローイ!」

比叡「間宮に近づく脅威など、海の藻屑にしてやりますとも!」

提督「そっから間違っとるんだ、このバカタレどもが!!」

金剛「ワット!?」

提督「いいか、それはあくまで最終手段だ。この任務で最も重要なことは
   『敵に存在を察知されないこと』、これに尽きる。事と次第によっては、
   こちらが先に敵の存在を察知しても、それを回避することさえ求められるんだ!!」

金剛「……お、オオウ?」


提督「間宮の近隣で行われる戦闘行為は、それそのものが間宮の脅威になりかねん。
   お前らが海で派手にドンパチやれば、敵の増援を呼び、護衛先の正体がバレる可能性だってある。
   向こうだって、こちらの陣営の生命線を間宮が繋いでいることくらいは察知しているはずだ」

比叡「じゃ、じゃあ私たちの戦闘力は、お役に立てないと……?」

提督「はっきり言えば、そうだ。あくまで『この任務に限っては』、という但し書きはつくが」

金剛「……」ショボーン

比叡「……」ショボーン

提督「……この際だから言っておこう。この任務における最大の脅威は、
   航空機による先行索敵が非常に困難である敵潜水艦だ」

金剛「うっ……」

提督「対潜索敵と戦闘を島風と龍田に依存する第一艦隊編成では、
   万が一潜水艦部隊と出くわしてしまった場合、お前らを盾にするしかない」

比叡「……」

提督「……できれば、そういう事態は俺も避けたい。だから、承服しろ。
   お前らは今回一切出さん。間宮護衛任務には、こいつらを出す」ペラッ

金剛「オウ……命令書ですか。拝見しますヨ」

提督「金剛、秘書艦のお前に命ずる。命令書にあるものを直ちに司令室へ呼べ」

金剛「い、イエッサー!」ビシッ

提督「そして比叡も。お前たち二人の気持ちだけは確かに預かった。
   この気持ちは護衛任務につくものたちへ必ず渡しておく。……ありがとうな」

比叡「……ハッ!ありがとうございます!」ビシッ


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


提督「揃ったようだな」

夕張「ハッ!こんな名誉な任務にお呼びいただけて、光栄ですッ!」ビシッ

五十鈴「そりゃ、対潜作戦とくれば私と夕張ですよね」

鳳翔「そして索敵班に私、ですか……。久々の実戦ですが、致し方ありませんね」

電「……」アワアワ

提督「お前たち4名の任務は、間宮を△△泊地近海まで護衛することだ。
   戦闘は可能な限り避けること。装備は以下にあるとおりだ」

五十鈴「いつもの対空電探に……爆雷投射機ね。あらっ、水中聴音機ですって!?」

提督「夕張がこの間ようやっと開発してくれた虎の子だ。大事に扱えよ」

夕張「ふふふ。私だって伊達に新兵器マニアじゃないのよ?」ニヤッ

五十鈴「へへい、おみそれしました」

鳳翔「私も夕張ちゃん謹製レーダーに……。あらあら、彩雲だなんていいんですか提督」

提督「構わん。そもそもそれは、お前が開発したものを赤城持ちにしていただけだろうに」

鳳翔「ふふっ。では、お預かりしますね」

電「……あ、あのぅ。提督、ひとつ質問してもいいですか」

提督「なんだ、電」


電「どうして電が選抜されたのですか?駆逐艦なら島風ちゃんの方が、その」

提督「有能だと?」

電「……はいなのです。電にはあの足の早さは真似できないのです」

提督「本作戦は護衛任務だ。したがって、護衛対象である間宮より極端に
   速力で上回る必要はない。もちろん、足があるに越したことはないがな」

電「そう……なのですか?」

提督「……あと、これは絶対に島風には言わないでほしいが」

電「はい」

提督「あいつはかなりせっかちで堪え性がないからな。その上、喧嘩っ早いときている」

夕張「ブッ」

五十鈴「提督、ぶっちゃけすぎぶっちゃけすぎ」

提督「その性質を考慮した上で、慎重で周りと合わせられるお前を選んだ。これが理由だ」

電「……」フルフル

鳳翔「電ちゃん、提督がああ仰ってくれているのよ。みんなで一緒にがんばりましょ」

電「はいなのです!絶対に絶対に、電の本気を見せるのです!」

五十鈴「(……夕張の普段の気苦労が偲ばれるわぁ)」

夕張「(え゛ッ!?な、何がよ、苦労なんて別にしてないわよッ、もう!!)」バシバシ


提督「出発は本日のヒトサンマルマル。昼食は早めに食べておけ」

鳳翔「あ、そういえばお夕飯の準備を他の子に引き継いでおかないといけませんね」

提督「ああ、それは長良と木曾に一任してある。あいつらのカレーならお前も心配なかろう」

五十鈴「お、じゃあ私たちが帰ってくる頃にはいい感じに寝かせてありますね!」

電「おいしそうなのです……!」

夕張「そうね、やる気が湧いてくるわ」

提督「そうだ、先方に護衛を引き継ぎ、ここに帰ってくるまでが任務だぞ。
   おいしいカレーが待っていると心得て、全員が無事で帰ってくること!これは命令だ!」


「「「「ハッ!」」」」


提督「よし!それでは駆け足!」


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


間宮「それでは皆さん、お世話になりました。またお会いしましょう!」

球磨「クマー。またおいしいアイスを食べに行くクマ」

多摩「羊羹とおまんじゅうもにゃ」

まるゆ「ケーキのこと、まるゆずーっと忘れません!」

天龍「……またな」

赤城「うぐっ……えっぐ……グスン……」メソメソ

北上「赤城さん、ほら、ハンカチの替えだよ」

赤城「ずびばぜん゛っ……ううう……」

島風「こんなことでマジ泣きする一航戦って……アタシ、やっぱり赤城がわかんない!」

龍田「島風ちゃんも、オトナになれば赤城さんの気持ちがわかるわよー」クスクス

島風「……アタシ、オトナになれなくてもいーかも」プクー


提督「では皆!間宮に向かって、礼!」

「「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」」

間宮「はい!こちらこそ、いい仕事させてもらいました!また伺いますね!」


間宮「では、次の泊地までよろしくお願いしますね、みなさん」

夕張「はいっ!」

鳳翔「お任せください」

五十鈴「まっかせといて!」

電「なのです!」

間宮「それでは!給糧艦間宮、出港します!」


提督「……行ったな」

赤城「……次に間宮にまみえるのは、一体いつになるでしょうね……」

提督「いや、そんな先のことでもないだろう」

赤城「えっ……!?」

提督「予定通りなら、年が変わるまでにはまた来るさ。それまで励めよ」

赤城「本当ですかっ!?はい、はい……!一航戦赤城、その希望を胸に励みます!」

金剛「赤城、よかったデスねー」ナデナデ

赤城「はい……!」グスッ


島風「……ま、たしかにアイスはおいしかったもんね」

龍田「ふふっ」


―― 洋上


間宮「次の泊地でのお仕事が終わったら、一度本土に戻るんですよ」

夕張「あ、そうなんですか?」

間宮「小麦粉やお砂糖みたいなものなら、本土じゃなくても補給ができるんですけどねぇ。
   こんにゃく芋みたいな特殊なものや、化粧品はなかなか手に入らないので」

五十鈴「なるほど」

鳳翔「お化粧かぁ。そういえばここのところお仕事ばかりでご無沙汰だわ」

電「ほ、鳳翔さんはそのままでも十分に綺麗なのです」

鳳翔「あらやだ電ちゃん、お世辞なんていいのに」

夕張「いやー、すっぴんでそれって鳳翔さんずるいですよ」

五十鈴「ホントホント。その秘訣を聞いてみたいもんだわ」

鳳翔「どうしたのみんな急に、そんなに褒めても何も……あら」ピキーン

電「?」

鳳翔「……先遣隊から入電。予定航路の海域周辺に深海棲艦と思しき航跡を発見。
   速度・進路このままだと1時間半後に我々が相手の捕捉圏内に侵入する可能性アリ、
   ……だそうです。如何しますか、夕張さん」

五十鈴「マジで……!?」

夕張「ってことは……下手したら洋上戦闘になるわけ?このメンバーで!?」


鳳翔「かといって足を止めれば、潜水艦の的になりますしね……。さて、どうしましょう」

夕張「……間宮さん、今全速出して何ノットまでいけますか」

間宮「そ、そうねぇ。だいぶ荷物が軽くなってるから、今の倍くらいは出せる……かしら?」

夕張「となると……大急ぎで突っ切れば、行き合わずに通り抜けられるかしら」ブツブツ

五十鈴「で、でも夕張。全速で泳ぐと航跡がハデに残るし、対潜警戒も……」

夕張「ああっ、そうか、それがあるかぁ!んぐぐ、ど、どうしよう」

電「……夕張さん、この海域の地図はありますですか?」

夕張「地図?あるわよ、これね」パサッ

電「お借りしますのです。……ええと、よろしいですか、皆さん」

鳳翔「どうしました」

電「ここ……この群島のある海域。予定航路をこちらに変えて通り抜ければ、
  深海棲艦とぶつかる予想ポイントを回避……できないでしょうか?」

五十鈴「え、そ、そうね。うん、この海峡からこちら側に抜ければ……」

鳳翔「なるほど……。確かに相手の背後を通り過ぎる形になります」

夕張「電ちゃん、すごいじゃない!ものしりさんだ!」


電「い、電がものしりなのではないのです。遠征中に天龍さんに教えてもらったのですよ、
  『いざってときのためにいろんな道を通れるようになっとけ』、って」

五十鈴「あの俺女、たまにはいいことするじゃないの!」

夕張「伊達にお姉さんぶってるわけじゃなかったのね!」

電「ただ。……問題があるのです」

鳳翔「問題?」

電「この海域は海峡の幅が狭い上に、遠浅のポイントがいくつかあるのです。
  電は何度か通っているので、そのポイント自体は知っているのですが……」

間宮「……私が通れるかどうか、か」

電「なのです……」

夕張「そうか……間宮さんはただでさえ制動が効く方じゃないし、喫水も深い」

鳳翔「しかし、そうなると停船してやり過ごすしか……」

五十鈴「どうにも困ったわね……」グヌヌ

電「……夕張さん」

夕張「……」ムムム

間宮「……夕張さん。あなたに任せます。私は私にできる全力を尽くすわ。
   だから、私を信じて。あなたの全力をぶつけてください」

夕張「間宮さん……!」


夕張「……決めました。電ちゃん、あなたの具申してくれたルートで行くわ。
   ただし、なるべく難易度の低いルートを教えてちょうだいね。ゆっくり進めればいいから」

電「は、はいっ!」

夕張「五十鈴、鳳翔さん、いいわね」

鳳翔「はい」

五十鈴「オッケーよ!」

夕張「間宮さん」

間宮「ええ、わかったわ。急な転舵に備えるよう、艦内の妖精さんに連絡しておきます」

夕張「当該海域までは、このまま間宮さんを中心に輪形陣を維持。
   狭い島嶼部に入ったら、単縦陣を組むわよ。先頭は五十鈴、その後に電ちゃん。
   間宮さんが真ん中で、次が鳳翔さん。私は殿で、潜水艦に最大警戒しておくわ」テキパキ

鳳翔「了解!残った索敵機を発艦させて、そちらの海域の様子をもう一度探らせておきます」

五十鈴「はーっ、しかしまぁいきなりカッコよくなっちゃって」

夕張「茶化さないの!私だって必死なのよ、もう!」

電「ふふ。夕張さんは、この鎮守府に来た最初からずっと頼もしいのですよ」


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


―― 島嶼部

夕張「五十鈴!進路は大丈夫!?」

五十鈴「な、なんとか!でもごめん、狭すぎて徐行しないと危ないわ!」

夕張「わかった!みんな、微速前進!速度は五十鈴に合わせて!」

電「はいなのです!」

間宮「わかりました!」

鳳翔「索敵機から続報、進路周辺に敵影なし」

夕張「了解!……頼むわよー、ここで待ち伏せなんてされてたら一巻の終わりなんだから」

五十鈴「こっちのソナーには潜水艦の反応はないわ、夕張」

夕張「了解!あとはどこにもこすらないように祈って、静かに行くわよ」

電「あ、ここから一時方向の海底に岩場がありますのです、五十鈴さん」

五十鈴「わかったわ!……これくらい避ければいいかしら?」

電「ですね。このまま微速でよーそろーなのです」

間宮「……なんだかすごくドキドキするわね」

夕張「ハハハ……。こんなこと、滅多にないんですけどね」


電「はい、そちらは深度がないので、こちら側へ大回りして……あそこを抜けるのです」

五十鈴「お、オッケー……。しかし、間宮でギリギリいっぱいの難所ばっかりね」

電「ご、ごめんなさいなのです。これでも一番広い道を選んでいるのですが」

五十鈴「こ、ここより狭い航路に遠征で毎回来てるの、あんた!?」

電「毎回ではないのです。同じ目的地でも、毎回違うルートを通るようにしていますので……」

五十鈴「開いた口が塞がらないわね……。航法だけなら、電ちゃんの方が私より上だわ」

電「ふぇっ!?そ、そんなことはないのですよ!」アタフタ

鳳翔「いえ、実際すごいですよ電ちゃん。自信を持ってください。
   かくいう私も私も全機発艦してなかったら、どこかで引っかかっていたかも」

間宮「……ごめんなさいね、私のために」

電「とんでもないのです!お役に立てて光栄なのです!」

夕張「地図だともうすぐここを抜けるわね。電ちゃん、間違いない?」

電「は、はい!もう2つ先の海峡を捌いたら、この海域を抜けることが出来ますのです」

五十鈴「あと2つね!よーし、全そk……いえ、微速で急いで向かうわよ!」


―― 外洋


五十鈴「ぬ……抜けた……!」ハァハァ

間宮「よ、ようやく……ですね……!」ゼェゼェ

鳳翔「み、みなさんお疲れ様でした……」フゥフゥ

夕張「……皆さん、休んでる暇はないですよ!遠回りしたぶんを取り返さないと!」ヒィヒィ

電「そうですね!がんばって先を急ぐのです!」

五十鈴「で、こっから目的地までは?」

夕張「そうね、ここからほとんどまっすぐ北西に進路をとって、……まだ結構距離は残ってるわね」

鳳翔「明日の朝のカレーは、諦めたほうがいいかもしれませんね」

電「お、お昼や晩御飯でも、いいのではないでしょうかっ!?」

夕張「そうね……。いい、みんな。カレーと仲間が待ってる泊地へ帰るために、がんばるわよ!」

五十鈴「おーっ!」

鳳翔「ええ!」

間宮「……」


間宮「(……『帰る』、か)」


間宮「……なーんか、羨ましいなあ」クスクス

夕張「え?」

間宮「帰ってくるのを待っていてくれる人がいる、っていうのがね」

鳳翔「えっ?間宮さんにも、あるでしょう?ご自分の『帰る』場所、港が……」

間宮「うーん。……どうなのかな」

五十鈴「今度、本土に帰るんでしょう?そこって『帰る』場所にならないの?」

間宮「どうなんだろうなぁ。……点検や休憩もそこそこに放り出されちゃうからかな、
   所属している基地への愛着がないのかもしれないなぁ、ってちょっと思っちゃって」

電「間宮さん……」

間宮「あ、愚痴とかじゃないのよ?仕事には満足してるの、これも本音よ」

夕張「……『私たちが待ってますから』じゃ、代わりにならないですよね」

間宮「……。……そうね、気持ちはすごく嬉しいけど。きっと違うわね」

五十鈴「……」

間宮「あ、ご、ごめんなさい!ダメよ、こんな湿っぽい空気になっちゃ!
   さあ、先を急ごましょう!夕張ちゃん、お願いするわね」

夕張「は、はい!さ、みんなもう一度輪形陣を組むわよ!……」



その日、その時に聞いた言葉だけが、ずっと心に引っかかっていました。

間宮さんを形どるたくさんの何かは「誰かのために」ばかりで出来ていて、

「間宮さんのために」を埋めてくれる何かが、なかったんじゃないのかな、って。


その本当の答えはまだ、今の私たちには出せません。

深海棲艦と戦い続ける限り、私たちの"任務"は終わらないから――


だからいつか戦いが終わって、給糧艦としてのお仕事が減る頃になったら。

間宮さんにもきっと、「間宮さんのために」を埋めてくれる何かが見つかるんじゃないかな……。


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


―― 翌日夕方 司令室

夕張「……そんなことを思いました、まる。報告は以上です」

提督「御苦労。……難しい話だな」

夕張「……はい」グゥー

提督「……ま、今はそんなことを考えている時ではないな。早くカレーを食ってこい」

夕張「す、すいません!ええい、こんなときに鳴るな、おなか!」ダダッ

提督「フフッ……」



提督「(艦娘の『帰る場所』、か……)」

提督「(確かに、今考える必要性はないだろう。だが、いずれは考えるべき問題だ)」

提督「(そう――)」



提督「(そういう存在となることも、俺達の仕事かもしれないな)」

以上でおしまいとなります


ふぅ疲(ry

あ、書き忘れましたが
依頼は明日出すつもりです

もしかしたら少し書き足してからになるかもしれませんが…

それでは皆さん
約一ヶ月の長期間、コメントくださってありがとうございました
久々にセリフ系SS書くといろいろ発見があって面白かったです

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