サーニャ「空に明星ふたつ」 (65)

~1945年6月、ブリーフィングルーム~


エイラ「あついなぁ、サーニャ」

サーニャ「そ、そうね」

サーニャ(エイラがそんなに寄りかかって来るからじゃ……)

エーリカ「ふふっ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401439220

ミーナ「はい、では今日のブリーフィングを始めます」

ミーナ「なにか変ったことはない?」

エーリカ「ふわぁ……」

サーニャ「あ……あの……」

ミーナ「発言したいことがあるなら、大きな声でお願いします」

サーニャ「はい。夜間哨戒中に、正体不明の物体の存在を探知しました。おそらくネウロイかと思われます」

ミーナ「……困ったわね、この時期に」

ミーナ「了解しました。では夜間哨戒の数を増員して様子を見ましょう。サーニャと、あと、誰がいいかしら……」

ミーナ「って、聞くまでもないわよね」

バルクホルン「まあ、そうだな」

芳佳「そうですよね、ね、リーネちゃん」

リーネ「うん!」

ミーナ「エイラ中尉。お願いできる?」

エイラ「え、あ、うん、分かったゾ」///

シャーリー「まあ、そうなるわな」

ペリーヌ「当然ですわね」

エイラ「……」///

エーリカ「照れてる照れてる」

ミーナ「他になにかありませんか。――ありませんね。では今日のブリーフィングは終了します。各自訓練に励むこと。エイラさんとサーニャさんは夜に備えて眠っておいてね」

サーニャ「了解」

エイラ「分かっタ」

エイラ(またサーニャと同じ部屋で、同じ時間に寝れるんダナ)

エイラ(でもこうして、正式に認めて貰ってからなら――なんだか興奮してくるゾ)

エイラ(これってもしかして、公認カップルってやつ……)

エーリカ「このラブラブ夫婦め!」

エイラ「そんなんじゃネエからナ! 絶対に違うからナ!」///

~夜、夜間哨戒~

エイラ「さすがに6月とはいえ、夜は肌寒いナ」

サーニャ「手、繋ぐ?」

エイラ「お、オウ」///

サーニャ「エイラの手、温かくて、柔らかくて――まるでお母さんみたいで好き」

エイラ「ソ、ソウカ? サーニャの手も、大きくて強そうでいいじゃないカ」

サーニャ「……分かってないわね」

エイラ「エ?」

サーニャ「まあいいわ。この手は、お父さんがくれた手」

サーニャ「ピアノを弾くのに、とても便利だわ」

エイラ「……そう言えば最近、サーニャのピアノ聞いてねーナ」

エイラ「たまには聞かせて欲しいゾ」

サーニャ「……また今度、ね」

♪♪♪~

サーニャ「エイラ、聞こえる?」

エイラ「聞こえるゾ」

サーニャ「これ、リリーマルレーンね」

エイラ「リリー? 丸? なんだそれ」

サーニャ「ほら、この前ミーナ隊長が歌ってた曲よ」

エイラ「ああ、あの曲かー」

エイラ(全然気付かなかったゾ……)

サーニャ「でも、おかしいわ」

エイラ「どうしたんダ?」

サーニャ「私は別に、ラジオ放送を傍受しようとはしていなかったのに、曲が聞こえてくるなんて」

エイラ「疲れてて、余計なものまで受信しちゃってるんじゃないカ? 今日ぐっすり眠れてなかったみたいだし」

サーニャ「そうかしらね……」

サーニャ(エイラを意識しすぎて眠れなかった、なんて言えない)

サーニャ「それにしても、いい曲よね……」

エイラ「……」

エイラ(音楽を聞いてうっとりしてるサーニャ、可愛いゾ)

~明け方~

エイラ「結局今日はネウロイ、見つけられなかったナ」

サーニャ「夜間哨戒ではいつもほとんど見つからないんだし、気長にいきましょう」

エイラ「説得力あるナ。サーニャ、今日はしっかり寝るんだゾ」

サーニャ「う、うん……」

~朝、飛行場~

ミーナ「では行ってくるわね」

芳佳「いってらっしゃーい!」ブンブン

エーリカ「ミーナ、どこ行くの?」

美緒「朝のブリーフィングを聞いていなかったのか」

エーリカ「……すいません、寝てました」

美緒「上層部から、招集命令が出ているらしい」

エーリカ「ふーん。面倒なことにならなきゃいいけどね」

~二人の個室~

エイラ「zzz……」

サーニャ「……眠れない」

サーニャ(エイラのかわいらしいパジャマ、健やかな寝息……)

サーニャ(これまでそんなに意識したことなかったのに……)

サーニャ(エイラのことを思うと胸がドキドキするの、どうして――)

エイラ「zzz……」

サーニャ(こんなに大胆に脚を広げちゃって……)

サーニャ「……もしかして、誘ってるのかしら」

サーニャ(って、私、何を考えて――)

サーニャ(早く寝なきゃ)モゾモゾ

サーニャ「……」

サーニャ「やっぱり、眠れないわ」

サーニャ(ちょっと部屋をうろうろしてみよう)

サーニャ「……? これは……ハンカチ? 子猫のアップリケがついてる」

サーニャ「私がこの部屋にこんなもの持ち込んだ覚えはないし……」

サーニャ「ふふっ、エイラもけっこう可愛いもの、好きなんじゃない」

~夜~

♪♪♪~

サーニャ「まただわ」

エイラ「今度はなんの曲ダ?」

サーニャ「えーと、忘れちゃった。確かショパンの曲だったと思うんだけど……」

エイラ「ショパン、名前だけは聞いたことあるゾ」

エイラ「また今度弾いてクレ」

サーニャ「無理よ、ショパンは難しいもの。私の腕じゃ……」

エイラ「もし、サーニャが普通にウィーンで音楽の勉強を続けていられたら?」

サーニャ「弾けたかもしれないわ……」

エイラ「早く戦争を終わらせて、お父さんも探して、ピアノをやりたいんダロ?」

サーニャ「うん……うん」

エイラ「じゃあまず目の前の敵を倒さなきゃナ」

サーニャ「敵ネウロイの探知はされてるんだけど……また、姿の見えないタイプかもしれないわ」

エイラ「厄介ダナ」

~翌朝~

芳佳「あ、輸送機だ」

リーネ「あれはJU52。ミーナ中佐が帰ってきたみたい」

ブーン

リーネ「あ!」

芳佳「飛んだ!」

シュタッ

リーネ「うわぁー!」

芳佳「すごーい……」

ハンナ「やあ、初めまして、子猫ちゃん達」

~ブリーフィング~

ミーナ「まず、今回の作戦の援軍として参加することになった、第31飛行隊のハンナ・マルセイユ大尉」

ハンナ「……」

ハンナ(なんだ、この左のいちゃいちゃしたカップルは)

―――

ミーナ「では、これで会議を終了します。エイラさん、サーニャさんは少し話があるので残ってください」

エイラ「話って何ダヨ」

ミーナ「貴方達が探しているネウロイのことよ」

ミーナ「もしネウロイが現れたとしても、私たちは増援を差し出すことはできないわ」

サーニャ「どうして……ですか」

ミーナ「作戦遂行のためにマルセイユが援軍に来たことは会議で聞いたわよね? これは実は、上層部の人気取りのためなの」

ミーナ「だから彼女があげる戦果は大々的に公表されなければならない……裏を返せば、作戦期間とその前後数日間に、目立った作戦行動は取れない」

エイラ「極秘作戦というわけダナ」

ミーナ「一応501の皆には報告しておくけど、他人には絶対口外しないように」

しばらく席を外します
続きはおそらく深夜になるかと

ミーナ「本当にごめんなさい。上層部の勝手な判断のために、貴方達を危険な目にあわせることになってしまって」

サーニャ「いいですよ」

ミーナ「サーニャさん……」

サーニャ「私とエイラのコンビネーションは抜群ですし、ね、エイラ」

エイラ「オ、オウ」///

ミーナ「色々と気苦労をかけるけど、お願いね」

サーニャ「マルセイユ大尉、かっこいい」

エイラ「はあ?」

サーニャ「私、サイン欲しくなっちゃったかも」キラキラ

エイラ「……」

エイラ(サーニャが私から離れて行ってしまう……)

~サーニャ、エイラの部屋~

サーニャ「ふわぁ……」

エイラ「眠いノカ、サーニャ」

サーニャ「エイラも眠い癖に」

エイラ「ふふっ、ふたり同じベッドで寝ようカ」

サーニャ「う、うん」///

エイラ「やっぱり昨日も眠れてないみたいダナ」

エイラ「なにか心配ごとでもあるノカ? なんでも相談に乗るゾ」

ギュッ

サーニャ(エイラ、私の手を握って――)

サーニャ「――このまま」

エイラ「このまま?」

サーニャ「このまま手を繋いでて」

エイラ「え、うん、分かっタ」///

エイラ(勇気を出して良かっタ)

゙チャ

ハンナ「よいしょ……と、ああすまん」

サーニャ「zzz……」

エイラ「zzz……」

ハンナ「って、寝てるのか」

ハンナ「お手々繋いで仲良くおねんねかい……こりゃめでたいな」

エーリカ「あ、そこ、サーニャ達の部屋」

ハンナ「そうみたいだな。アフリカに長いこと居続けると、どうもこういう大きな建物では迷ってしまうようになる」

ハンナ「この二人はなんだ、恋人同士か何かか?」

エーリカ「その通り」

ハンナ「ほーう……。それよりハルトマン、勝負だ!」

エーリカ「へいへい」

~夜~

サーニャ「今日は、ぐっすり眠れた」

エイラ「良かったナ」

サーニャ(分かった、私の気持ち)

サーニャ(私は、エイラのそばにいたい)

サーニャ(エイラに、触れたい。エイラに、キスしたい)

エイラ「ドウシタ?」

サーニャ「ううん、なんでもないわ」

♪♪♪~

サーニャ「また、音楽が流れてきた――」

エイラ「もう、間違いないナ」

サーニャ「ええ、音楽を流してるのは、ネウロイみたいね」

エイラ「この曲は?」

サーニャ「えーと、……」

サーニャ(ハッ! この曲は……)バッ

エイラ「どうしたんダ、サーニャ」

サーニャ「嫌だ、聞きたくない、聞きたくない!」

サーニャ(どうして、どうして耳をふさいでも音が聞こえるの?)

夏の日々は暮らしやすい
魚は飛び跳ねて、木綿の木は高く育つ
パパはお金持ちで、ママは美しい
だから赤ちゃん、どうか泣かないで

ある朝、あなたは歌い出し
翼を広げて大空へ羽ばたくだろう
でもその朝まで、怖がることなんて何もない
パパとママが側にいるから

サーニャ(パパもママも、そばにいなかった)

サーニャ(私は、――私は、一人)

エイラ「この歌詞が気に入らないノカ?」

サーニャ「エイラ、エイラには、分からないわ」

エイラ「惑わされるんじゃない、サーニャ! こんなのただの音楽じゃナイカ!」

サーニャ「……っ!」

サーニャ「音楽を侮辱するのね、エイラ」

エイラ「え、いや、そういう意味じゃなくって」

サーニャ「エイラなんて、知らない!」

サーニャ(私がどれだけ音楽を好きか、音楽に影響されてきたか、エイラは分かっちゃいないのよ)

エイラ「サーニャ……」

~明け方~

エイラ「今日も出てこなかったナ」

サーニャ「……」

エイラ「サーニャ……」

今回はここまでになります
次回は今日の夜ごろから

~朝、食堂~

ハンナ「もう一杯!」

芳佳「あ、はい!」

ハンナ「戦士たるもの、たらふく食ってどんどんエネルギーにしなければな……」

ハンナ(ハルトマンには負けられん!)

ハンナ(……それにしても、あのサーニャとかいう奴、ほとんど飯に手を付けてないぞ)

ハンナ(夜間哨戒担当のウィッチと聞いていたが、大丈夫か……?)

ハンナ「おい、サーニャ」

サーニャ「は、はい、何でしょうか」

ハンナ「戦士がそんな落ち込んだ顔をしていては、戦いでベストパフォーマンスは出せないぞ」

サーニャ「はい……」

ハンナ「夜間哨戒は重要な任務だ。なにか悩みがあるなら、早くあのエイラに打ち明けるといい」

サーニャ「エイラには……相談できません」

ハンナ「ど、どうしてだ」

サーニャ「私、エイラと喧嘩しちゃったんです」

ハンナ「そうか……ウィッチの士気の維持は最優先事項だからな、私が相談に乗ってやろう」

サーニャ「あ、ありがとう、ございます」

サーニャ(マルセイユ大尉、こんな優しい一面があったのね)

サーニャ「実は私たち二人は、あるネウロイを探知しせん滅するという極秘任務を受けています――」

――

ハンナ「なるほどな、父親が行方不明になった身に、サマータイムはつらいか……」

ハンナ「エイラも多分本気で怒ってるわけではないだろうし、今日から普段通りに接するのがいいんじゃないか」

サーニャ「でも……」

ハンナ「極秘任務の件は、絶対に口外しないから安心してくれ」

サーニャ「あ、いっちゃった……」

サーニャ(でも、相談に乗ってくれて、根は優しい人だと感じたわ)

サーニャ(戦う姿はかっこいいし――ファンになっちゃいそう)

エーリカ「惚れちゃった?」

サーニャ「きゃっ!? ハルトマンさん」

エーリカ「根はいい奴なんだけどね……ただ、勝利にこだわりすぎてる部分があるだけで」

サーニャ「そうなんですか」

エーリカ「もちろん私も、極秘任務のことは黙っておくから安心して」

サーニャ「ありがとうございます」

エーリカ「今バルクホルンに、ハンナのサインを頼まれたんだけど、サーニャも欲しい?」

サーニャ(マルセイユ大尉の、サイン……)

サーニャ「欲しい……です。頂けるなら」

エイラ「……」ジーッ

~サーニャ、エイラの部屋~

エイラ「……私なんかより、マルセイユ大尉の方が頼りがいがあるヨナ」

サーニャ「え? 何言って……」

エイラ「もう分かってるんだよ。私のこと、信用してないダロ」

サーニャ「いや、そんなことは……」

エイラ「……」

サーニャ「寝たふり……はあ」

サーニャ(私、どうすればいいんだろう……)

サーニャ(……あ、またあの、子猫のハンカチだ)

サーニャ(湿ってるわ……)

エイラ「……」

~夜~

エイラ「……」

サーニャ「……」

サーニャ「来てくれないかと思った」

エイラ「これは任務ダカラナ」

サーニャ「……」

エイラ「ほら、行くゾ」

サーニャ「うん」

♪♪♪~

サーニャ「また、あの曲……サマータイム」

エイラ「サマータイムっていうのか、この曲」

サーニャ「前よりも、大きな音……嫌、やめて!」ブンブン

エイラ(サーニャ、取り乱してる)

ヒュゴオオオオオ

エイラ(……あ、あれは……ネウロイ!?)

エイラ(なんだあの巨大なアンテナは……)

エイラ(なるほど、あれでサーニャを妨害するラジオを受信してたんダナ)

エイラ『こちらエイラ、敵ネウロイを発見、攻撃に移るゾ』

ミーナ『了解。気をつけてね』

エイラ(サーニャは動けないし……私一人での戦いだな)

エイラ「さあ来い!」ダダダダダ…

エイラ「……効かないか。フリーガーハマーなら、もしかして……」

エイラ「サーニャ! フリーガーハマーを!」

サーニャ「うううううぅ……ッ!」

エイラ「サーニャ!」

サーニャ(胸が苦しい、頭が痛い……っ!)

エイラ「サーニャ! レーザーダ! シールドを貼るんダ!」

サーニャ「……」

エイラ「サーニャ!」グオオオン

エイラ(サーニャを、守らないと)

バシュウウウウウ

エイラ「ハア、ハア……」

サーニャ「エイラ……」

サーニャ(エイラが、攻撃を受け止めてくれた……)

エイラ「シールドが張れるようになっといて良かっタ」

夏の日々は暮らしやすい
魚は飛び跳ねて、木綿の木は高く育つ
パパはお金持ちで、ママは美しい
だから赤ちゃん、どうか泣かないで

ある朝、あなたは歌い出し
翼を広げて大空へ羽ばたくだろう
でもその朝まで、怖がることなんて何もない
パパとママが側にいるから

エイラ「サーニャ! 今はお父さんもお母さんも、近くにいない」

エイラ「でもきっと見つけ出す! 約束したじゃないか!」

エイラ「お父さんもお母さんも、探せばきっと見つかる! お父さんもお母さんも、サーニャの心の側で応援してくれてる!」

サーニャ「エイラ……」

サーニャ「……ええええい!」

バシュッ、ドドドド

エイラ「私も……!」

ガガガガガガ

パリーン

エイラ「やったな」

サーニャ「最後に、また一曲音楽を流し始めたわ……」

サーニャ「これは、二日目の時と同じ曲……あ、どうして思い出せなかったんだろう」

エイラ「なんていう曲名ダ?」

サーニャ「ショパンOP28の15……この曲を聞くと、お父さんとの暮らしを思い出す」

サーニャ「雨だれの前奏曲よ」

サラサラサラサラ……

サーニャ「ばいばい、音楽好きのネウロイさん……」

サーニャ『こちらサーニャ。ネウロイ、撃墜しました』

ミーナ『お疲れ様、よくやってくれたわ。では、サーニャさん、エイラさん、今日はもう基地に帰投してください』

エイラ『了解』

サーニャ「……っ!」

ミーナ『どうしたの、サーニャさん』

ラサラサラサラ…

サーニャ「綺麗……」

サーニャ「カシオペヤの弓の中心から、線を斜め上に引いた直線上に、北極星が見えます」

サーニャ「そして、そこからペルセウスの方へ、西へ90度向きを変えると、あるんです、金星がふたつ」

ミーナ『金星が、ふたつ?』

サーニャ「今にも地平線に沈んでいきそうな金星と、もうひとつ、びっくりするくらい近くに、その金星と同じくらい輝いている人がいるんです」

ミーナ『……もうすぐ、日付が変わるわ』

サーニャ「金星は今にも沈みそうです……でも、それでも」

サーニャ「私の明星は、いつも私の側にいてくれるんです」

エイラ「……」ダキッ

サーニャ「え!?」

エイラ「サーニャ、好きダ」

サーニャ「……」ホロホロ

エイラ「な、泣くなよ」オロオロ

サーニャ「でも、嬉しくて……」

エイラ(今しかない今しかない今しかないぞエイラ)

チュッ

サーニャ「……私も、エイラに触れたい、キスしたいと思ってたの」

エイラ「サーニャ……サーニャぁあああああ」ギュー

サーニャ「痛いよ、エイラ」

エイラ「さあ、一緒に帰ろう……そして、色々な曲を聞かせてクレ」

サーニャ「……ピアノが手に入ったら、ね」

~翌朝~

エーリカ「ふわあ……おはよー、サーニャにエイラ」

サーニャ「おはようございます」

エーリカ「もうすぐ私とハンナの作戦が始まるんだけど、なんか勝負みたいになっててさー」

サーニャ「撃墜数を競うんですか」

エーリカ「そ。まあ、適当にやるけどね」

エーリカ(さすがに私も、トゥルーデを馬鹿にされちゃ黙っていられないんだけどね)

サーニャ「そうだ、ハルトマンさん」

エーリカ「なに?」

サーニャ「マルセイユ大尉のサインの件なんですけど……やっぱり、いらないです」

エーリカ「どうして?」

サーニャ「私、あこがれのヒーローはすぐ近くにいることに気づいたんです」

――

エイラ「そ、その、サーニャ」

サーニャ「どうしたの、エイラ」

エイラ「じ、実は受け取って欲しいものがあるんダ」

サーニャ「なに?」

エイラ「これなんだけど……」

サーニャ「……! ぷっ、あっはははははは」

エイラ「なにがおかしいんダヨ」

サーニャ「いやだってそれ、エイラが泣いて涙とか鼻水とかでぐじゅぐじゅになったハンカチでしょ? そんなのいらないわよ」

エイラ「エ! なんでそれを知ってんダヨ!?」

サーニャ「内緒よ。でもやきもちやいてたんでしょ、マルセイユ大尉にあこがれる私に」

エイラ「ぐぬぬ……」

サーニャ「でも、そんなエイラも可愛いからいいわよ」

エイラ「か、可愛い、って……」///

サーニャ(ちょろいわ)

~数日後~

サーニャ「マルセイユさん、凄かったですね」

エーリカ「私も負けてないけどね」

エイラ「ピアノ、ピアノを買おう!」

ミーナ「ウチにそんな余裕はありません」

エイラ「サーニャのピアノにはウィッチの士気を高める効果があるゾ。士気の保持は軍隊において最優先事項じゃないノカ?」

エーリカ「誰かさんの受け売りだね」

ミーナ「まあ、余裕ができたら購入を検討しましょうか。――軍人にも遊び心は必要だものね」

エイラ「なあサーニャ、ピアノが手に入ったら、まず何を弾く?」

サーニャ「もちろん決まってるわ」

サーニャ(見守っててね、お父さん……)

サーニャ「サマータイムよ」


おわり

ストパンで書くのは初めてでした
読んで下さりありがとうございました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom