IS不純恋愛物語(235)

役割上嫌な役になる女の子も居ます。

気分が悪くなったら、読むのを止めてハニーカミングみたいな純愛系で心を落ち着けましょう。

一夏「……箒、そろそろ……」ハァハァ

箒「んっ……私も…」ビクッ

一夏「うっ……」ビュルッ

箒「あッ!……」ガク

一夏「……大丈夫か?」

箒「……ああ、問題ない」

箒「じっとしていろ、綺麗にしてやる」ペロ

一夏「……」

is学園、今や世界を席巻する兵器インフィニット・ストラトスを主眼においた学術機関。

その寮で、俺は箒と肌を重ねていた。

別に付き合っている訳でもない。お互いただ欲を満たすための便利な関係だった。

とりあえず様子見しつつ期待

きっかけは俺と箒の部屋が一緒になったことだと思う。

どちらが誘った訳でもない。今考えてみれば、部活帰りで上気したその顔に俺はやられたのかもしれない。

箒は処女だった。俺も童貞だったし、初めてのセックスは力任せに欲望をぶつけるだけ。

一夏「先、風呂入るか?」

箒「…そうする」

行為の後はほとんど会話はしない。

多分、お互いに割り切った振りがしたいんだと思う。シャワーの時、箒が泣いているのには気付いていた。

俺は適当にシーツを纏めると、選択籠の中に放り込む。

こんな風になるつもりは無かった。けれど、一度覚えた女の味は、なかなか俺を正常な道に戻してはくれない。

箒「……あがったぞ、一夏」

一夏「おう」

箒はどこか虚ろな目をしていた。

通り過ぎようとして、振り返り抱きしめる。

箒「…どうした?シたりなかったか?」

一夏「……ご」

ごめん、と言いそうになって慌てて口を噤んだ。一体何を謝るつもりなのか、それすら分からないのに。

一夏「……何でもない」

一夏「風呂出たら、一緒に飯でも食いに行かないか?」

箒「……分かった」

こんな関係がいつまでも続くとは思えない。それでも、お互いそういう話はしなかった。

解消はいつでも出来る、それが爛れた俺たちの逃げ道だから。

食堂は閑散としていた。時間も遅く、人気のメニューなら売り切れていてもおかしくない。

一夏「箒、お前何食べる?」

箒「…素うどんでいい」

一夏「そっか、じゃあ持っていくから席取っておいてくれよ」

箒「分かった」

箒はまだツンケンしている。いつものことなのでそう気にする事もないだろう。

一夏「ん?」

ふと前を見ると、見覚えのある、しかし出会いたくない女の姿が映った。

セシリア「……あら、織斑さん」

一夏「…よ」

セシリア・オルコット。同じクラスでイギリスの代表候補生。

まるで輝いているような金髪をかき上げる仕草は、上流階級の余裕と気品に満ち溢れている。

もともとisの登場により極端な女尊男卑社会になった今、セシリアのような気位の高い女は幾らでもいる。

しかし、その中でもこいつは質が悪かった。

セシリア「……また、ですか」

セシリア「少しは控えないと、篠ノ之さんに愛想を尽かされますわよ」

一夏「……お前には関係ないだろ」

セシリアは俺と箒が何をしているのか知っている。タイミング悪く現場を目撃されたからだ。

以来、この女は何かにつけてはネチネチと煩く言ってくる。教師に告げ口していないのは、自分が楽しむ為に違いない。

セシリア「それにしても、篠ノ之さんもバカですわね」

セシリア「貴方のような偶然isを動かした程度の男に身体を売るなんて」

一夏「…そのド素人に負けたのはどこのどいつだよ」

セシリア「結果はわたくしの勝ち、ですわよ?」

一夏「でも、あのまま続けていれば……」

セシリア「何を言われようとも、結果は覆りませんわ」

一夏「ぐっ……」

やはり、こいつは嫌いだ。自分の優位を疑わない青い目が、俺の心をざわつかせる。

一夏「それに、…箒をバカにすんな」

セシリア「あら、織斑さんにもプライドはあるんですね」

セシリア「自分の女は守る、立派な心がけですわ」

一夏「…っ!お前」

思わず肩を掴んだ。だが、セシリアは顔色どころか眉一つ動かさない。

セシリア「殴りますか?"女"のわたくしを?」

一夏「オルコット…!」

セシリア「ふんっ、汚らわしい」

セシリアは俺の手を払いのけると、これ見よがしにハンカチで両手を拭った。

セシリア「今のあなた方は、猿と変わりません」

セシリア「せめて人間レベルの知性を得てから、このわたくしに意見なさいな」

セシリア「それでは、ご機嫌よう」

セシリアは優雅に踵を返すと、そのまま食堂を出て行った。

一夏「……早く飯、買わないと」

周りに人が居なくて良かった。さっきまでの俺の姿は、さぞかし無様だったろう。

この学園に男は俺一人。ナメられれば迫害されかねない。

箒「…遅かったな」

一夏「悪い、ちょっと手間取って」

箒は特に追及して来なかった。セシリアとのことを知っているのか、あるいは俺のことなど興味がないのか、真相は分からない。

俺は丼を抱えながら、こっそり箒を見た。

いつもの制服姿ではなく、大人しめのパジャマを着ている。髪も下ろしていて、どこか少女的な印象が強まっていた。

一夏(俺は、箒のことをどう思っているんだろう)

嫌いな訳は無い。どちらかと言えばマグロ気味だが、スタイルはいいし、反応を押し殺そうとする姿は可愛らしい。

だが、好きなのかは分からなかった。正確には箒の身体を目当てにしていないという自信が、俺には持てなかった。

箒「む?どうかしたのか、一夏?」

一夏「…いや、美人だなってさ」

箒「…褒めても、今日は無しだ」

箒「……でも、手ぐらいならいいかも、な」

そんなつもりで言ったわけでは無い。でも結局流される。ひたすらに、自分の主体性の無さが恨めしかった。

俺の鈴ちゃんがどうなってるか楽しみです

そんな生活も、この後一月を数えずに、唐突に終わる。

一夏「そうか、部屋、決まったんだ」

箒「ああ、隣に転校生が来ただろう」

箒「名前は確か、凰…」

一夏「凰鈴音だ」

凰鈴音、中国の代表候補生で、俺の二人目の幼馴染。

もともと一人部屋を二つ作れないというのが、俺と箒が同室で居られた理由だった。

だが、鈴が来たことで、箒はそちらに移り、俺は晴れて一人部屋を獲得することになったのだ。

一夏「何か手伝おうか?」

箒「大丈夫、自分で出来る」

二ヶ月以上一緒に居たのに、俺たちには思い出の品一つ増えてはいなかった。

箒「……それではな、一夏」

一夏「おう、元気でな」

また、とは言わなかった。この後ろめたい気持ちをズルズル引きずりながら、それでも箒と接することが出来るとは、俺には思えなかった。

鈴「いーちか!」

それを、凰鈴音はいとも容易く引き千切った。

鈴「ほーきもほら、そんなとこいないでさ、一緒にご飯食べようよ」

箒「あ、…うん」

俺と箒がどうして疎遠になっているか、本当の理由なんて知っているはずがない。

けれど、同じ幼馴染のよしみなのか、単に面倒見がいいのか、俺に会いにくる時は決まって、箒を連れてくるようになった。

箒も最初は嫌がっている風だったが、慣れてしまえば昔のようにくだらない話でもよく笑った。

一夏「それでさ、昔見た映画の話なんだけど……」

鈴「えー、嘘だよそんなの!」

一夏「嘘じゃねぇって」

箒「一夏、さすがに分かりやす過ぎるぞ」

一夏「だーかーら!」

鈴「きゃー!一夏が怒ったー」

箒「あはは、逃げるぞ」

まるで、今までのことが皆嘘で、悪い夢から覚めたような心地だった。

そうだ、忘れてしまえばいい。

俺たちの秘密は、俺たちの中に閉まっておけばいい。

時間が経てば、きっと笑い話にだって出来る。

鈴の明るさが、俺たちの淀みを照らして、カラカラに干からびさせてくれるのを感じていた。

一夏「なあ、鈴」

鈴「ん?何よ」

一夏「…ありがとな」

鈴「はぁ?突然何言ってんの」

一夏「とにかく、ありがとう」

鈴「…変な一夏」

鈴「でもいいや、感謝してるならジュース奢りなさいよ」

一夏「いいぜ、じゃあ行こうか」

唐突に現れた平穏は、まるで最初からそう決められていたかのようにそこに広がっていた。

そう、あの時までは。

何が起こるのか……。続き期待。

鈴「……一夏、何これ」

一夏「ん?」

それは、夏休み中の登校日のことだった。

鈴が持って来たのはありふれた装丁の茶封筒。俺が戸惑っていると、鈴は黙ってそっと中を見るように視線で促した。

一夏「……!」

慌てて封筒を閉じる。幸いここはis学園、この中身を悪用する人間は、箒の人柄を鑑みても少ないはずだ。

一夏「鈴、これをどこで…」

鈴「箒の机に隠されてたわ」

鈴「悪いと思ったけど、興味本位で覗くんじゃなかったわね」

鈴は大して気にした風もなくそう言った。

そもそも鈴がこの封筒に気付いたのも、箒が時折ぼんやりとしたり、何かを隠す素振りを見せていたからだそうだ。

鈴「…一応確認するけど、…その相手って一夏よね?」

一夏「……そうだ」

鈴「……ふぅん」

中身は写真だった。俺と箒が行為に及ぶ一部始終を集めた写真。

oh……

撮られた位置から考えても隠し撮りだろう。だが、中には核心的な様子も写されており、箒がこれを見た時のショックは想像するに余りあった。

鈴は何かを言おうとして止めるを繰り返していた。

短い期間ではあるが、箒と鈴は波長が合いかなり親密になっていた。

ルームメイトでもあるし、もともと面倒見の良い鈴が箒の悩みに深入りしようとするのは、簡単に想像がつく。

だが、その悩みの発端が親友と幼馴染の肉体関係だとは、流石に思わなかっただろう。

鈴は慎重に言葉を選んでいるようだった。

鈴「それの撮影主に心当たりは無いの?」

一夏「無い」

鈴「……あたしは別に構いやしないわ」

鈴「一夏と箒がどんな関係だったとしても…まあ、少しくらいは話しておいて欲しかったけど」

光の加減か、鈴が泣きそうになっているように見えた。だが、全てを振り払うように頬を叩くと、鈴はずいと身を乗り出してくる。

鈴「ともかく、その中身を知っている第三者は、あんたと箒両方にプレッシャーを掛けられるの」

鈴「箒が狙われたのも、もしかしたら篠ノ之博士とかis関係かもしれないし」

鈴「そうでなくたって、こんな写真が公表されれば」

鈴「あんたたちだけじゃない、日本も相当な痛手を被ることになるわ」

is学園は国際機関でもある。そんな中で日本人同士の不純な交際が明るみに出れば、教師の監督、教育方針、様々な分野に飛び火しかねない。

鈴「箒だって、どれだけ傷付くか……」

一夏「……ごめん」

俺には謝ることしか出来なかった。

元はと言えば、碌な警戒もせずにヤリまくっていた自分の責任だ。

これだけ広い寮だ、内部生であれば、さほど目立つこともなく部屋に侵入することも出来る。

鈴「あたしに謝られても、困る」

鈴「ともかく、犯人を探さないと」

鈴「早いとこ手を打って、箒を安心させてあげたいし」

鈴「…あんたらも、そうすれば真っ当な付き合い出来るでしょ?」

一夏「……俺と箒は、別に付き合っていた訳じゃない」

鈴「……え?」

一夏「…俺は、俺たちは、ただ……」

鈴「…何?」

一夏「…」

俺は黙って俯いた。答えなんて出るわけがない。目を背け続けてきたのだから。

鈴「……箒のこと、好きじゃないの?」

一夏「……分からない」

鈴は控えめに舌打ちをした。聞こえるか聞こえないかの小さな音が、鋭い矢となって心に突き刺さる。

鈴「…一夏、ちょっと歯ァ食いしばりなさい」

一夏「……っ」

俺は目を瞑り、鈴に委ねた。直後、熱い感覚と衝撃が左頬を襲う。

グーで行っても構わないと思います。

鈴「……ごめん、あたしがやる事じゃないってのは分かってるんだけど」

鈴「でも、……箒はして来なかったんでしょ?」

一夏「…ああ」

じんじんと痛むが、嫌な感じはしなかった。

少しだけ重しが取れたような感覚。何の利益も無く、ただ思慮からの行動が俺に鈴の優しさを伝えてくれる。

鈴「…言っとくけど、こっちの手も痛いんだから」

鈴「それに、この程度で救われるなんて思わない事ね」

鈴「箒は、憐れみとか義務感なんかであんたとヤってた訳じゃない」

鈴「分かってる?」

一夏「……なんとなく、な」

鈴「…はぁ」

心底飽きれた、と大袈裟にジェスチャーすると、机の上に倒れこんだ。

一夏「あ、おい……」

鈴「……なんだかなぁ」

仰向けに見える先には消灯された蛍光灯が二つ。その一つ一つを追うように、鈴は緩やかに首を振る。

一夏「どうしたんだ、鈴?」

鈴「いやぁ、なんかね……」

夕陽の射す教室、鈴の表情は読めない。

鈴「思ってた以上にさ…自分って嫌な奴だなって」

鈴は両手で顔を覆った。

一夏「嫌な奴?正反対だろ」

現に、こうして俺に警戒を促してくれた。

俺を叱ってもくれ、箒のことも気遣っている。

鈴「……あんたには、分からないわよ」

その声は、チャイムにかき消されて、俺の耳には届かなかった。

鈴は立ち上がり、乱雑に袖で顔を拭う。やはり泣いていたのだろうか。そこまで箒に感情移入してしまったのか、あるいは…

鈴「一夏、あんたの事を恨んでる人間に、本当に心当たりは無いの?」

一夏「俺を恨んでいる?」

鈴「そう」

鈴は封筒を指差し、そしてそのまま俺に向けた。

鈴「受け取ったのは箒、経緯はあたしには分からない」

鈴「けど、これにはあんたもかなり関わって居るはずよ」

一夏「どういうことだ?」

鈴「その封筒、中身はそれで全部だった」

鈴「要求は無し」

鈴「どういうことか分かる?」

一夏「…いや、さっぱりだ」

鈴「ああもう!鈍いわね!」

ツインテールを振り乱し地団駄を踏む。

眠いから寝る。また来るかもしれない。

良かったら読んでってくれ。暇つぶしくらいにはなると思う。

じゃ

乙~俺ももう寝るわ。

待ってます

鈴「つまりね、これは脅しってこと」

一夏「?それなら、むしろマシなんじゃ…」

鈴「バカね、もう少し頭使いなさいよ」

鈴「どうすれば原本を処分してくれるか、そういう具体的な対策は何も出来ないの」

鈴「相手の目的も分からないから、これからどうなるのかも当然分からない」

鈴「これのどこがマシだってのよ」

そうか、この写真だけでは、対処のしようが無い。

お前の秘密を握っているというアピールしかされて居ないのだから。

鈴「だからこそ、あんたの力が要るのよ」

鈴は腕組みをしてどかっと椅子に座った。

その瞳は、メラメラと怒りの炎を燃やしている。

鈴「脅すなら、本当はあんたの方がいいはずなんだから」

それはそうだ。学園に男は俺しか居ない。

こんなことが発覚すれば、箒は俺に全てをなすりつけることだって出来るが、俺には出来ないのだから。

鈴「それに、あんたを恨んだり、嫌ってる人間なんてそう多く無いんじゃない?」

一夏「え?何でだ?」

鈴「だって、ここの生徒は好奇の目で一夏を見てる人が多いでしょう?」

鈴「あんたは……箒とその、こんなことしてた訳だし、付き合いもいい方じゃなかったと思う」

一夏「……ああ、確かに」

鈴「人ってね、知らない人間まで嫌いになるのは難しいのよ」

鈴「それと、この写真も気になるところだらけだし」

一夏「え?変なプレイとかはしていないぞ」

鈴「そ、そんな話してないでしょ!」

鋭い蹴りが飛んでくる。座った姿勢から、器用な奴だ。

その顔は羞恥で真っ赤になっている。

鈴は誤魔化すように咳払いを一つして、話を再開した。

鈴「だって、この写真を撮った媒体も回収しなきゃならないのよ?」

鈴「つまり、あんたと箒の行動パターンをかなり詳しく知らないと出来ないわ」

一夏「……あれ?」

そこで、俺の中に引っかかりを感じた。

そんな人物に、心当たりがある……

鈴「どうしたの?」

怪訝そうに見上げてくる鈴。

それが、まるでキスをねだっているように見えて、慌てて鈴を椅子に押し戻した。

一夏「も、もしかしたらって奴を知ってる。」

鈴「そ、そう?ってか、何を焦ってるわけ?」

一夏「な、何でも無い」

鈴は、変な一夏とあまり追及してこなかった。

俺は何を考えているんだろう。まさに女のことで問題を起こしかけて。

それを気遣ってくれる奴にまで…

淫獣ワンサマ化まだ?

まあ……すぐに思いつく容疑者は、一人だわな。

鈴「じゃ、とりあえず行って見ましょ」

立ち上がろうとする鈴を、俺はそっと止めた。

鈴「え?何?」

一夏「俺一人で行ってくる」

鈴「はぁ?ここまできて何を言ってんの」

鈴「あたしも付き合うから」

鈴「一夏、女の子に怒ったりするの苦手でしょ?」

一夏「…いや、それでも俺だけで行くよ」

一夏「下手に鈴が狙われたら、それこそ申し訳ない」

鈴「あたしには弱みなんて…」

一夏「頼む、この通りだ」

鈴「一夏……」

鈴は納得いかないといった様子だ。

しかし、もし犯人が俺の思っている奴なら、鈴と会わせたく無かった。

あの気位の高い姫君は、それだけ影響力のある人間だから……

鈴「……分かった、だから顔上げなさい」

数十秒か、数分か、体感ではよく分からない時間が経って、鈴はそう言った。

鈴「正直納得出来ないけど、一夏が無駄にそんなこと言うような奴じゃ無いのは知ってるつもりだし」

鈴「……それに、あたしは当事者じゃないからね」

一夏「鈴………ごめん」

鈴「謝んじゃないの」

鈴「もし、一夏の思う人じゃ無かったら」

鈴「その時は、探すの手伝わせてもらうからね」

一夏「…ありがとう」

鈴「じゃ、早く行ってこい、バカ一夏」

一夏「……おう」

鈴はくるりと背を向け、あっち行けと言わんばかりに手を払った。

>>30見てくれれば、なるか分かる

教室の中にはあたし一人しか居ない。

鈴「…本当、バカは誰なんだろ」

突っ伏した先の机がひんやりと頬を冷やす。熱い雫がとめど無く溢れるが、拭う気力も無い。

一夏が居なくなって、張っていた糸がプツリと切れてしまったようだ。

鈴「……一夏、変わって無いと思ってたけど」

二人は既にそういう関係だった、いや付き合ってる訳じゃないって言ってたし、思っているよりもずっと複雑なのかもしれないけど。

鈴「…一夏」

自分の気持ちは変わって無い。

けれど……

鈴「……なんで、あんなお人よしの振りしちゃったんだろ」

本当は、一夏を問い詰めてやるつもりだった。

でも、写真を見た時のあいつの顔…

それは、写真云々よりもまず……

鈴「あたしが嫌ってないか、探ってるみたいだった」

イタズラが見つかった子供のような、不安そうな顔。

それを見たら、言葉が出てこなくなった。

あいつを叩いた時だって、全部が箒の為じゃない。

鈴「……嫌な子だな、あたし」

しばらく、動く気がしない。

涙が止まるまで、人の居ない教室に居続けた。

100%拒絶されるだろうけど
この鈴ちゃんは、優しく抱きしめてやりたい。

寮に入ると、よく見知った顔がそこに居た。

一夏「箒……」

箒「一夏、聞いてくれ、実は…」

走り寄ってきた箒は、何かを言いかけて。

そして、俺の持っている封筒を見て絶句した。

箒「…そ、それを、ど、どこで......」

一夏「色々あってな」

少し考えれば、それが鈴によるものだと気づくだろう。

でも、あえて口にすることはしなかった。

一夏「心配すんな、ちゃんと終わらせてくるから」

箒「……終わらせる……?」

一夏「だから、部屋で待っていればいい」

箒はまだ何かを言いたそうだったが、内容は分かっているし、話しにくいことを無理に話させる必要も無い。

一夏「じゃ、箒、またな」

箒「い、一夏……」

思えば、鈴が居ないところでこんなに普通の受け答えが出来たのは久しぶりだ。

……いや、決して普通では無いが、これが普通に思えるくらい、俺たちのやり取りはずっとぎこちなかった。

一夏「……早く、安心させてやろう」

ふつふつと、怒りが湧いてきていた。

確かに、俺たちは学生としてあまり健全な付き合いをしていたとは言い難い。

けれど、それをネタに脅されるほど酷いこともしていないと思う。

俺は寮の中を、目的地まで走った。

扉を開けると、そいつは優雅に紅茶を飲んでいた。

セシリア「あら、ノックも無しに不躾な人ですわね」

ソーサーにカップを戻すと、椅子の上で脚を組み直す。

セシリア「それで?どんなご用事かしら、織斑さん」

一夏「話があって来た」

セシリア「お話?一体何でしょう」

一夏「とぼけないでくれ、もう分かってるんだ」

セシリア「……ふむ」

一夏「俺と箒がどんなタイミングで何をしているのか何故か知っていて、俺のことを敵視している人間」

一夏「そんなのお前くらいだ、オルコット」

セシリア「あらあら、随分な言われようですこと」

セシリアは特に悪びれる様子も、狼狽することもない。

至って自然体だった。

そして、それが俺の怒りをさらに増幅させた。

一夏「お前、ふざけるなよ!」

セシリアをベッドの方へ投げ飛ばした。

やけに軽いと思えば、器用に一回転し、ベッドに腰掛けている。

セシリア「わたくし、暴力は嫌いですわ」

一夏「くっ……」

セシリアはいつの間にか封筒を奪っていた。さっき投げ飛ばされる間に盗ったのか。

セシリア「……なるほど」

ちらりと一瞥する。その表情は、依然余裕の笑みが浮かんでいた。

セシリア「何故織斑さんがこの写真を?」

一夏「箒が困ってたんだ」

セシリア「あの箒さんが、それだけで弱音を吐くとも思えませんが」

一夏「ん?」

セシリア「確かに、これを撮影したのはわたくしです。」

セシリア「貴方がたに、少しくらい分別を持っていただければと思ったのですが」

セシリア「心配なさらずとも、写真はお送りしたもので全てです」

セシリア「フィルムも既に処分していますし」

一夏「それを信じろってのか?」

セシリア「…ふふ」

セシリアは小さく笑うと、そのまま仰向けに寝転んだ。

セシリア「何なら、ボディチェックでもしてみますか?」

一夏「何だと?」

セシリア「今回の件、何から何までわたくしが悪いというわけでもありませんし」

セシリア「疑われたままというのも癪ですわ」

セシリアの細い指が、タイを解いていく。

ベルトも外し、今制服を支えるのは小さなボタン数個だけだった。

セシリア「まあ、貴方の下劣な指に触れられることが、わたくしへの罰にもなるでしょうし」

この女は、何故こうも高慢でいられるのだろうか。

自分の絶対性を疑わない青い瞳が、俺を見下すように映していた。

罠っぽいねぇ……

いいさ、やってやるよ。

俺の中で、どす黒い何かが蠢くのを感じた。

この女を、この高潔さを汚してやりたいと思った。

俺には大義名分がある。今なら、何をしたって大丈夫だ。

それに、この女もやれと言っている。もしかしたら、遠回しに誘っているのかもしれない。

一夏「お前、俺の事を何だと思ってるんだ?」

一夏「どういうつもりで、こんなことするんだよ」

気が付けば、俺の口からそんな言葉が飛び出していた。

セシリアは大して悩むでもなく、直ぐに返答する。

セシリア「そうですわね」

セシリア「貴方のことを、愛してしまったから」

セシリア「他の女と、関係を持って欲しく無いんです」

何だって?今何と言った?

セシリアの目を見る。潤んだ瞳が、俺のことをじっと見つめている。

まさか本当に?

セシリア「……とでも言って欲しかったのですか?」

一夏「は?」

瞬間豹変した。さっきまでとは別人の冷たい視線。体を起こした際にはだけた制服に気をやる事も無く、セシリアは笑いをこらえるように手を口元に当てた。

セシリア「まさか、こんな簡単に騙されるなんて、やっぱり男は信用なりませんわ」

セシリア「どんな思考回路があれば、わたくしが貴方に好意を抱くなんて妄想に行きつけるんですの?」

もはやこらえる事もない、完全に嗤っていた。

セシリア「貴方の相手をしてくれる女なんて、あの猿二人くらいでしょう」

セシリア「今すぐ泣きついてみたらどうかしら」

セシリア「傷を舐め合ってる方が、あなた方にはお似合いだと思いますわ」

もうダメだった。こんなにコケにされて、友達まで馬鹿にされて。

一夏「うわぁぁぁぁあ!!」

セシリアをベッドに押さえつける。

両手を取られても、セシリアは顔色一つ変えなかった。

セシリア「わたくしのルームメイトはお風呂が大好きなので」

セシリア「大浴場から食堂で夕食」

セシリア「あと二時間は帰ってきません」

セシリア「…お気の済むまで調べて結構ですわ」

一夏「…お前、ただの変態か?」

セシリア「あら、犯せなんて一言も言っていませんけど」

セシリア「まあ、貴方程度、意識に入れる価値もありませんし」

セシリア「わたくしは明日の授業についてでも考えておきますわ」

一夏「……」

セシリア「さあ、時間はあると言えども有限なのですから」

セシリア「早く終わらせて下さいな」

ちょっと休憩。

普段よりずっと疲れるわ、これ。

ごめん、今日はここまで。

明日多分エロい。かも

乙。セッシーがペロペロされるのか……

シャルロットはリョナでいこう

>>50リョナはゴメンだ。あれとスカトロだけはマジで理解に苦しむんだ……

これは期待

こんな態度とりながら結局セシリアがチョロかったら笑う

うーむ続きが気になるな

一夏は改めてセシリアを見た。

表情はあくまで挑発的、口元には笑みすら浮かべている。

緩められたせいで体型は曖昧に見える程度だが、盛り上がった胸は呼吸に合わせて上下し、その存在感をアピールしていた。

一夏「……」

思わず見入ってしまう。ごくりと唾を飲み込む音がやけに大きく感じた。

セシリア「あら?いいんですの?」

一夏「え?」

セシリア「ただそこで見ているだけで」

妖しく光る瞳、ぺろりと真っ赤な舌が瑞々しい唇の上を滑る。

セシリア「わたくしは、少々期待していましたのに」

一瞬、理性が飛んだ。

ボタンを外す手間すら惜しかった。

セシリア「きゃっ」

制服を荒々しく剥ぎ取る。ビリッと嫌な音が聞こえたが、そんなものは俺に何の関係もない。

中から現れたのは、神殿の前に聳える石像のように均整のとれた身体と、それを申し訳程度に覆う黒い下着だった。

一夏「……っ!」

美しい、ただそれだけが強烈に心を打った。

初めて箒の裸を見た時とは違った感動。雪のように白い肌は、人種の違いを実感させられる。

下着は細かな装飾があるが、嫌味のないおとなしめのものだ。

これも、箒のスポーツタイプを見慣れていた俺には新しい刺激だった。

セシリア「あまりジロジロ見ないで下さる?」

セシリア「今日は、良いものを身につけている訳ではないので」

下着姿でも、その余裕は健在だった。

一夏「……ん?」

いや、そうでもないんじゃないか?

俺は試しにセシリアの耳に触れてみた。

セシリア「…っ!」

大きく身体が跳ねる。

一夏「お前、耳真っ赤だぞ」

やっぱりチョロホワイトはチョロホワイトだった

セシリア「…ふふ、わたくしも生きているのですから」

セシリア「人並みに羞恥もありますし、生理的な反応もありますわ」

セシリア「……貴方だって」

一夏「っ!?」

セシリアの指が、そっと俺自身に添えられた。

セシリア「ほら、随分たくましくしているではないですか」

形をなぞるように、ゆっくりと上下させる。

ズボン越しとはいえ、その指使いは強烈だった。

一夏「ふっ……うあっ」

セシリア「ふふふ、どんどんカタくなってますわよ」

セシリア「いいんですか?嫌う女の手でそんなに反応してしまって」

セシリアの手の動きは、どんどん容赦を無くしていく。

もどかしさがさらに快感を加速させた。

一夏「くっ……やめろ」

意地だけで言葉を吐き出した。

セシリア「やめろ?やめてよろしいんですの?」

セシリアはジッパーに手をかけながら、歌うように言う。

セシリア「てっきり、早く出させて欲しいと言うかと思っていたのですが」

セシリア「この手で、直接扱かれたくはありませんか?」

一夏「……」

セシリア「…だんまりなら、大人しく止めますか」

そっとセシリアの手が離れて行く。

一夏「あっ…」

思わず、そんな声が出てしまう。慌てて口を噤んだが、もう遅い。

セシリア「…やはり、続けて欲しいのですね」

ニヤリと笑うセシリア。今や完全に主導権を握られ、俺にはいつにも増して、その笑顔が憎らしく見えた。

一夏「…調子に乗るなよ」

セシリア「ふふ、調子に乗っているなんて、滅相もない」

セシリアはブラジャーに手を当て、ズラすように少し動かした。

セシリア「誰かさんがわたくしに覆い被さったきり、何も行動なされないので」

セシリア「気を利かせて差し上げただけですのに」

一夏「…このっ!」

ブラジャーを取ろうとするが、背中側に手が届かない。

一夏「おい、自分で取れよ」

セシリア「……分かりましたわ」

抵抗らしい抵抗もない。始めからそうだが、この女の目的は一から十まで訳が分からなかった。

セシリア「…これでよろしいかしら?」

ストラップを肩から抜き、ブラジャーを枕元に置いた。

一夏「腕もどけろ」

セシリア「……」

何故か急に静かだった。饒舌だった先ほどまでとは、まるで別人のように。

二つの山は支えを失ってもたっぷりとそこに留まっていた。先端は充血して紅く尖り、柔らかそうな乳房を強調している。

一夏「……触るぞ」

セシリア「止めるつもりがないなら、そんな言い方結構です」

わざと強く揉んでみた。セシリアの顔が苦痛に歪む。それでも弱めることはしない。

先端を摘み、指で弾く。

本来の目的は、もはや頭の中に残って居なかった。今はただ、どうやってセシリアの余裕を崩せるのか、それだけが俺を突き動かしている。

セシリア「あ、あまり強くされると痛いですわ」

一夏「知るか、我慢しろ」

片方の乳首を口に含み、周りの肉に噛み跡を付ける。赤く歯型が残った乳房は、痛々しさに目を背けたくなる程だ。

セシリア「……っ」

それでも、セシリアは涙の一つも流さなかった。俺は噛み跡をなぞるように舐める。

セシリア「…ふふ、噛み付いて、舐めまわして」

セシリア「なるほど、犬にはお似合いの姿ですわね」

セシリアの手が、ズボンの中に侵入してきた。

セシリア「さっきはもどかしかったでしょう?」

セシリア「こんなものがあるから、いつまでたっても男は愚かなままなのでしょうね」

スリスリと緩く扱かれる。

一夏「ううっ」

セシリア「ふふ、何か汁が出てますわよ?」

取り出されると、待ってましたと言わんばかりにソレはそそり立つ。

セシリア「さて、どのくらい堪えられるのでしょうか」

指で先端を挟み込み、もう片方の手で全体を握ってきた。

そして、中身を搾り出そうとするかのように強めに締め付ける。

一夏「あ……う…」

自分でするのとは違う。意思の介入しないランダムな刺激。

セシリア「ほらほら、もっと早くしましょうか?」

一夏「ふざけんなっ」

苦し紛れにセシリアの下半身へ手を伸ばす。

ショーツの内部にいきなり手を入れると、そこは相当な潤いに満ちていた。

セシリア「ふふ、濡れていますか?」

セシリアはどこか楽しそうに言う。

セシリア「その中にも、データが入っているかもしれませんわね」

そうだ、データだ。俺はもともとそれを隠し持っていないかを調べるためにセシリアを脱がせたんだ。

だけど、そんなことは今、どうでもいい。

指に感じる熱い滑り。この中は、一体どうなっている?

ここに入れたら、どれだけ……

セシリア「あら、さらに大きくなるとは思いませんでしたわ」

セシリアの言葉も頭に入ってこない。俺は形を探るように指をなぞらせた。

セシリア「あっ……ふっ…」

今までより大きな反応が返ってくる。その元を探るために、俺はより大きく指を動かした。

箒とは同じ女でも構造が違うようだ。触りながら少しずつ確かめていく。

セシリア「あンっ…あまり、好き勝手に触られるのも癪ですわ」

セシリアの手の動きも大きく、ピンポイントに弱い部分をついてくる。

一夏「くっ……」

もはやお互いを責め立てることが目的とすり替わっていた。

セシリアの肌が上気して、桜色に染まっている。

口の端しからもれる艶のある声が、俺から正常な判断を失わせていくのを感じた。

俺はセシリア・オルコットという女を嫌っていたはずなのに、今見返してくる熱のこもった瞳に、何か愛情めいたものまで感じている。

流されまいと思えば思うほど、身体がズブズブと深みに嵌っていくような感覚。

一夏「…オルコット、俺…」

セシリア「……そろそろ出してしまいそうですか?」

セシリア「いいですよ、出してしまっても」

セシリア「もう少し、強めに扱きます」

俺は誤解していたのか?目の前の女を嫌っていたことがまるで夢のように思えた。

セシリアの指が俺自身に絡みついてくる。溢れた汁が潤滑油になり、にちゃにちゃと卑猥な音がお互いの股間から零れる。

セシリア「あ…ンっ…わ、わたくしも、イきそう…」

セシリアの腰が浮いてきた。それを促すように、俺も指の動きを早める。

セシリア「織斑さん、一緒に……」

甘えるような眼差し。息が上がり、白い喉が空気を求めて動く。

一夏「…ああ、分かった」

俺も余裕は無かった。まるで性交しているような強い快感に、いつ体液を迸らせてもおかしくないほどだった。

セシリア「あっ……ンッ………!」

一夏「うっ……ふっ…!」

セシリアの身体が痙攣し、俺もどくどくとセシリアの手の中に放出した。

気怠さが身体を包む。妙な達成感と一体感が心の中を埋めていた。

ピピッ。

そんな音が、俺を現実に引き戻す。

何だ?聞きなれない音だ。タイマーか、あるいは……

セシリア「あら、なかなかいいお顔で写ってますわね」

セシリア「まぁ、わたくしには及びませんが」

一夏「…何をしているんだ?」

目の前で起こっていることが、頭に入ってこない。

セシリア「何って、折角撮影したのですから、確認しませんと」

セシリアが操作しているのはisの操作盤。

一夏「一体いつから……」

セシリア「ふふ、始めからですわ」

セシリア「…この辺り、切なそうな顔」

どういうことだ?これは……

セシリア「……はぁ、まだわからないんですの?」

セシリアはまるで子供でも相手にするような、小馬鹿にした様子で話し始めた。

セシリア「何故わたくしが貴方なんかにここまでして差し上げたと思っているんですか?」

セシリア「貴方を嵌めるためです、まあ疑いもしなかったようですが」

セシリア「この映像さえあれば、篠ノ之さんなんて必要ありませんわ」

セシリア「その写真もそれきりです、お好きに処分なさって下さい」

一夏「お前、俺を……」

セシリア「演技って、結構疲れるものですわね」

セシリア「歯型なんて付けられるとは、正直想定外ですが」

一夏「オルコット!」

セシリア「いちいち喧しいですわ、少しは静かにしたら如何です?」

セシリア「これで、今日から織斑さんはわたくしの奴隷ですわね」

一夏「奴隷、だと?」

セシリア「別にこき使おうという訳ではありません」

セシリア「便利ですからね、いざという時の為に温存しておきますわ」

一夏「そんなもの、お前も映ってるんだから…」

セシリア「わたくしがそんなヘマをするわけ無いでしょう」

セシリア「ご心配なさらずとも、映っているのは織斑さん、貴方一人です」

セシリア「…ああ、ベッドが汚れてしまいましたわ」

セシリア「ま、仕方ありませんわね」

一夏「俺は……俺は!」

セシリア「……」

セシリアは、まるでゴミを見るような目で俺を見下ろした。

セシリア「貴方が下半身だけで生きているから、こんな簡単な策略にもハマるのです」

セシリア「今のところ、貴方をどうこうする予定はありません」

セシリア「少しは自らの行動を見つめ直したら如何ですか」

ごめんなさい。とりあえずここまで。

……やりすぎ?やらなすぎ?分からんね

いいね、面白くなってきた

これ某テンペストのワンサマとシャルのカラミに見えてしまうwww

>>71それが何かわからないけど、似たらごめん。

>>72
いや、すまんすまん。『絶園のテンペスト』ってアニメに中の人つながりで
ワンサマが出てるんだわ。で、その彼女役が中の人つながりでシャル。
セシリアの口調がモロそんな感じなんで、そう見えるってだけなのよ。
気に触った、とかじゃないんで続けてください。

後、サゲが全角になっとった。上げてすまん。

>>73へえ、そうなんですか(*´ω`*)見てみようかな。これを書き終わったら。

ちなみに、気に障るで、障るとしたら私なんですけどね。……おっぱい

sage推奨なの?と言ってみるテスト

セシリアは棚からバスタオルを取り出し、手や身体を拭いていく。

俺はいまいち状況を掴みきれず、ただ呆然とその姿を見ていた。

セシリア「……ほら、織斑さんにも」

それをどう受け取ったのか、こちらにもタオルを投げてくる。のろのろとした手つきで広げてみるが、その先が繋がらない。

セシリア「……はあ」

見るに見兼ねたか、セシリアの手がタオルを拾い上げ、俺の体に掛けた。

そのまま下着姿で俺の体も拭いていく。

セシリア「そんなにこの映像をどうこうされるのが怖いんですの?」

一夏「……」

分からなかった。頭の中がぐちゃぐちゃで、今はただセシリアの指の感触だけが、俺がここにいると証明していた。

セシリア「……」

さっきまでの視線が嘘のように、どこか憐れみを含んだ目が俺を見る。この段階に至っても、俺はまだセシリア・オルコットという人間が何を考えているのか、全く理解出来ずにいた。

セシリア「はい、これでよし」

汗と体液を拭きとったタオルを片付け、セシリアは着替えを促す。

セシリア「……わたくしは確かに貴方のような男は嫌いですわ」

セシリアは自身も着替えながら、こちらに話しかける風でもなく、独り言でもなく、そう口火を切った。

セシリア「ですけど、鬼というわけでもありません」

セシリア「だから、ゲームを考えたのですが」

そこで、こちらを見る。

セシリア「織斑さん、乗ってみますか?」

一夏「……内容は?」

間髪入れず、そう答えていた。

まさに無意識。さっき騙されたばかりだというのに、俺はまたこの女の話を聞こうとしている。

セシリア「そう難しいものではありませんわ」

セシリアはどこか楽しそうだ。うっすら浮かぶ笑みは、一体何を意味しているのか。

セシリア「これは、先程の映像を賭けたゲームです」

セシリア「織斑さんがルールを守り、ゲームに参加している間は、このメモリーの安全はわたくしが保証しましょう」

セシリア「もちろん、わたくしがルールを破り、ゲームを降りた場合は、そっくりそのままお返しします」

一夏「……でもそれじゃあ、オルコットに得が無いじゃないか」

そう。まるで俺の為のゲームだ。

セシリア「いえ、ちゃんとメリットはありますわよ」

セシリアはイタズラっぽく俺の唇に触れる。

俺はその指を跳ね除けることが出来なかった。

セシリア「肝心のゲーム内容ですが」

セシリア「まず、わたくしのことをセシリア、と呼ぶこと」

セシリア「そしてわたくしも一夏さん、とお呼びします」

一夏「…は?」

どういうことだ?今さら親交を深めようってことか?それともまた別の方法で俺を嵌めようとしているのか?

セシリア「話はまだ終わっていませんよ」

セシリア「一週間に一度、わたくしの言う事を聞いてくださいな」

一夏「そんなの、内容によるだろ」

セシリア「不可能なものはお願いしません」

セシリア「そして、ルールが一つ」

セシリア「決してお互いに触れないこと」

セシリア「たったこれだけです、簡単でしょう?」

どういうことだろう。考えてみなければならない。

セシリア「全く、自分で服の乱れくらい直して下さいな」

セシリアは俺の服のボタンを留めたり、ベルトを締めたりしている。

甲斐甲斐しくも見えるが、言動を含めて不気味以外の何物でもない。

一週間に一度、命令を聞く?俺はあの映像を盾に取られている。どのみちどうゴネても従わざるを得ないのは分かっている。

だが、それをわざわざゲームとしたことには、オルコットなりの意味があるはずだ。

突拍子と常識のない行動ばかりされて来ているが、それはこいつなりに自分のメリットに基づいてのことなのは間違いない。

簡単に信用すれば、また今回のように痛い目を見る。何とかしてゲームをする理由を知らなければ……

セシリア「……ふふ」

突然、セシリアが笑った。ベッドの上で脚を揃えて笑う姿はまさに深窓の令嬢といった風情だが、中身はそんなものとはかけ離れている。

一夏「何がおかしい」

セシリア「だって、凄く難しい顔をなさるから」

セシリア「これは、わたくしの気まぐれにすぎません」

セシリア「ただ、何の根拠もなくビクビクされても不快ですからね」

セシリア「これは貴方の為のゲーム、それは間違いありませんわよ」

セシリア「い、ち、か、さん」

ぞわっと、背筋に電流が走ったようだった。思わずセシリアから目を逸らす。ダメだ、この女を直視してはいけない。

セシリア「それに、お願いも痛かったり、そういうのはしません」

セシリア「ただ、わたくしのオモチャになっていただければ」

オモチャ?今だって状況は変わらないだろう。

セシリア「だから、一夏さんの為のゲームなんですってば」

セシリア「わたくしがこの楽しみを失いたくないと思う限り、貴方の秘密が露見することはあり得ません」

セシリア「わたくしはルールが無くても楽しめますが、これなら一夏さんも頑張り甲斐があるでしょう?」

セシリアの手が、俺の頬に触れる。そのまま指が輪郭をなぞり、顎を掴んだ。

セシリア「貴方が話さなければ、二人の秘密は守られるでしょう」

セシリア「乗るか乗らないかは貴方次第、乗ればルールが貴方を守り、乗らなければ見えざる恐怖に怯える日々」

セシリア「どうなさいますか?」

この女は楽しんでいる。

選択肢は用意されて居ない。あくまで自分が楽しめるようなルールを、お為ごかしに並べ立てただけだ。

俺はこのゲームに乗るしかないのだろう。そして再びこの女にいいようにされ、場合によってはさらに立場が悪くなる。

だが、全てが全て悪いというわけではない。

要はゲームにかこつけてこいつの弱味を探ればいい。

……そうでも考えないと、正直やっていられないのも心情ではあるが。

一夏「……乗る」

セシリア「ええ、きっとそう言うと思っていました」

白々しい態度に腹が煮えるが、じっと抑えた。ここで爆発しても何も進展しない。

見てろよオルコット、その綺麗な顔を涙でぐちゃぐちゃにしてやる。

一夏「……じゃ、オルコット、詳しいことは後で……」

セシリア「セ、シ、リ、ア」

セシリアは一言一言で俺の胸を突つきながら、そう言った。

セシリア「それが、このゲーム開始の合図になるのですから」

セシリア「さ、呼んで下さいな」

満面の笑み。本当に呼ばれることを期待するような態度。

これが演技だと思うと薄ら寒かった。俺には判別できない。

一夏「……セシリア」

セシリア「はい、一夏さん」

ここだけみれば、まるで友人から恋人にでもなりそうな一場面だが、実際は俺の奴隷契約の完了を示す呪いだ。

セシリア「日程と内容は適宜わたくしがお知らせします」

セシリア「もちろん、篠ノ之さんとの関係も今まで通り続けて下さいな」

セシリア「まあ、それらの情報を集めないという保証は出来かねますが、ね」

一夏「くっ……」

セシリア「ふふ、どうかお気をつけて」

ゆったりと手を振るセシリア。俺は何か引っかかりながらも、これ以上この部屋に居たくも無かったので何も言わずに扉を閉めた。

セシリアの言葉を信じるなら、この写真さえ処分してしまえば、少なくとも箒の安全は保証される。

問題は俺だが、それは自分でどうにかするしかない。

一夏(……これからは、他の奴らともあまり親しくしない方がいいかもしれないな)

いつどんなところでセシリアが罠を張っているかも分からない。

ルールはお互いに触れないこと。それに抵触しない限り、セシリアの行動に制限はない。

俺と親しくすることで、その相手に迷惑がかかるのは、避けたかった。

一夏(……セシリア、必ず目にもの見せてやる)

もう騙されない。信用しない。俺はそう胸に誓い、箒の部屋に向かうのだった。

短いけどここまで。

そろそろシャルロットのターン。

期待して待ってりゅ

このワンサマはダメ臭しかしないな……

箒は喜びよりも戸惑いが先立っているようだった。

俺は何の問題も無かったと伝え、写真も早く処分してしまうように言った。

箒「……一夏!」

一夏「このまま、俺たちの関係も解消しよう」

一夏「普通に戻ろう」

一夏「これまでみたいに、俺とお前と、鈴の三人でさ」

一夏「な?」

勝手な言い分だ。だが、セシリアとのゲームの話は出来ない。

俺がおとなしくしてさえいれば、セシリアは俺以外に関わってはこないはず。

簡単な話だ。もともと恋人を作る柄でもない。

箒「でも……」

箒の目には困惑と怯えが浮かんでいる。俺はそっと抱き寄せ、頭を撫でた。

一夏「…ごめん」

箒「…………ううん」

箒「私も、忘れる」

一夏「……ごめん」

箒「謝らないで」

箒「短い間だけど、私は嬉しかったから」

いつもの無愛想さのカケラもない、純粋な言葉だった。

箒「…もう少し、こうしていていいか?」

一夏「ああ」

ほんの少しだけ見えた、箒の本当の姿。

最初から見る努力をしていれば、もっと違った結末になっていたのかもしれない。

箒「……」

一夏「……」

何も話していないのに気まずさは無く、ただ穏やかな気持ちで満たされていた。

だが、それも長くは続かない。

箒「…鈴が帰ってくる」

一夏「…そうだな」

どちらともなく離れる。これから先、俺が箒を抱くことは、もう無いのだろう。

箒「これからも……よろしく頼む、一夏」

友達として、その言葉は飲み込んだ。

改めて宣言してしまえば、取り返しのつかない距離が出来てしまう。

お互い、なんとなくそう思ったのだろう。

一夏「…ああ、よろしく」

具体的には何も語らず、俺たちはそっと握手を交わした。

何が正しいかなんて分かる訳が無い。

だが、俺の中でも箒の中でも、ただなんとなく、終わってしまったのだ。

目の前にいる女をもう抱けない、そう思うだけで自分の中の黒い感情がまた蠢き出す。

妙な独占欲と下衆な算盤勘定が頭をぐるぐると回り出すまえに、俺は部屋を後にした。

部屋には誰も居ない。

当然だ。俺は一人部屋なんだから。

だが、それなら、目の前にいるこいつは誰だ?

???「ありゃ、この部屋の人?」

???「ごめん、勝手に入っちゃって」

???「男ならいいだろうって、入れてもらえちゃったから、荷物の片付けをしていて……」

男にしては長いブロンドを後ろで緩く縛り、顔立ちも中性的。

シャル「ボクはシャルル・デュノア」

シャルルと名乗る少年は、握手を求めて手を伸べた。

シャル「今日から君の同室になる、男の子だよ」

妙な奴だ。ただそう思った。触れた右手も、女の手と言われたら分からないだろう。

一夏「……あ、俺は……」

呆気にとられてばかりも居られない。

まずは相手がどんな奴なのかを知る必要がある。

シャル「織斑一夏くん、だよね?」

一夏「え?」

シャル「あはは、男でis学園にいるんだもん、すぐ分かるよ」

シャル「そもそも、同室の人のことくらい聞いているし」

一夏「そ、そうか」

何だろう、馴れ馴れしいというか、まるで以前からの知り合いのような距離感で接してくる。

外国人だからか?多分、弾にもここまで砕けた調子で話されたことはないと思う。

シャル「これからよろしくね、一夏」

一夏「よ、よろしく」

勢いのままにそう答えてしまう。シャルルは嬉しそうに俺の手をブンブンと振った。

シャル「あ、ボクのことはシャルって呼んでね」

シャル「数少ない男同士、仲良くやっていこ?」

一夏「…ああ、そうだな」

何と無くだが、そう悪い奴にも見えない。

シャルは運び込んだ荷物を整理しているようだった。

……ん?何かおかしいような気がする。

何だろう……

シャル「ねえ一夏」

一夏「え?何だ?」

シャル「ベッドはどっち使ってるの?」

シャル「私物全然ないから分からなくて」

一夏「奥の方使ってくれ」

一夏「棚は向こうの二つがシャルの分だ」

シャル「うん、分かった」

……まあいい、今はセシリアの事もあるし、面倒ごとはこれ以上抱えたく無い。

一夏「……なあシャル」

シャル「ん?なぁに?」

一夏「お前明日から転入なのか?」

シャル「あ、うん」

シャル「本当はもう少し後に来るつもりだったんだけどね」

シャル「こっちに慣れておいた方がいいと思って」

一夏「なるほどな」

旅行カバンの中身は見ない方がいいだろう。俺も自分の立場なら見られたくは無いし。

丸まって荷物を整理するシャルは、小動物的で少しだけ心が和んだ。

明日鈴に会ったらどうするか……箒が上手い事話してるかもしれないけど、やっぱり説明しておいた方がいいんだろうな。

一夏「シャルはどこの国から来たんだ?」

シャル「あはは、名前で分かって貰えるかと思ってたよ」

シャルは背中を向けたまま言う。生憎と相当分かりやすくない限りは判断出来ない。

シャル「ボクはフランス、それも代表候補生だよ」

凄いでしょう、と言わんばかりにチラチラ見てくるが、そもそも俺の周りには鈴と、不本意ながらセシリアも居るし、あまり希少性はない。

一夏「それじゃ、isの操縦も上手いのか」

シャル「んー、まあそこそこはね」

俺はあまり訓練に熱心という訳では無いから、腕も大したことはない。

セシリアと戦ったこともあるが、火事場の馬鹿力と、あとは機体の力だと思っている。

不思議と、同じ男だと思うだけでちょっとした対抗心が湧いてきた。我ながら単純なもんだ。

シャル「お風呂とかはどうなってるの?」

一夏「一応学園には大浴場もあるけど」

一夏「……ま、俺たちは使えないよ」

シャル「あはは、やっぱりそうなんだ」

一夏「部屋にシャワー付いてるし、交代で使うことになるな」

シャル「そっか、ありがとう」

荷解きは終わったようだ。カバンを端に寄せて、再びこちらに寄って来る。

シャル「一夏のisってどんなの?」

一夏「え?……まあ専用機だけど」

シャル「いいなぁ!ボクのなんて改良してるけど元は量産型なんだよ」

シャル「専用機って言っても、地味でさぁ」

シャル「きっと強いんでしょ?」

一夏「今の所は最新世代らしいぜ」

シャル「うう、羨ましい……」

本気で悔しがっている。

何だか弟みたいな奴だ。セシリアも流石に男にはちょっかい出せないだろうし、本当にいい友達になれるかもしれない。

シャル「でも、ボクだってそこそこやれるんだからね」

シャル「ラファールはデュノア社製の傑作なんだから」

一夏「デュノアって、お前の家が作ってんのか?」

シャルは一瞬苦々しい表情になった。

なんだろう、そんなに悪いことを聞いてしまったのだろうか。

シャル「…うん、そうだよ!」

先程の暗さは何処へやら、再び明るい調子でそう言った。

シャル「第二世代だけど、性能は他の国の第三世代に引けを取らないんだから」

一夏「へぇ、凄いんだな」

シャル「でしょ?でもやっぱり一夏の白式みたいなのが欲しかったな」

一夏「あはは、こいつも変な機体なんだぜ?」

シャル「そうなの?」

一夏「まあ、訓練の時とかに見てみろよ」

シャル「……うん、そうする」

シャルはじっと俺の顔を見ていた。何か付いているのか?

一夏「ど、どうしたんだ?」

シャル「……一夏って、彼女とかいるの?」

一夏「は?」

いや、確かにシャルは中性的な要旨をしているし、体格も小柄だけど。

もしかして、アッチ系の奴なんだろうか。

シャル「?あ、そ、そういうことじゃなくて」

シャルも思い当たったのか、慌てて俺から距離を取る。

シャル「今までずっと一人だったんでしょ?」

シャル「周りは女の子だけなんだし、そういう相手はいなかったのかなぁってさ」

一夏「……いや、居なかったよ」

事実だ。箒は別に付き合っていた訳じゃない。それに、箒が居たから他の女子と付き合うこともしなかった。

シャル「えー、もったいないなぁ」

シャル「カッコいいのに」

一夏「そんなことない」

シャル「ううん、カッコいいよ」

シャル「羨ましいくらいだもん」

フランス人は恋愛に寛容なんだったっけか?うろ覚えの知識が頭をよぎった。

一夏「お前こそ、作ろうと思えばすぐ作れるだろ」

シャル「えー、無理だよ」

シャル「ボクなんて相手にされないって」

こいつが相手にされないとしたら、それこそ俺には無理な気もする。

……セシリアがいる時点で、卒業まで彼女なんて夢のまた夢だろうけど。

シャル「あれ?どうかした?一夏」

シャルが怪訝そうに覗き込んで来る。もしかしたら顔に出てしまったのかもしれない。

一夏「いや、何でもない」

一夏「飯は食ったのか?」

シャル「うん、ここに来るまえに食べて来たから」

一夏「んじゃ、後は風呂入って寝るだけか」

シャル「一夏、先に入る?」

一夏「いや、今日は譲ってやるよ」

一夏「明日からはジャンケンな」

シャル「うん、分かったよ」

一夏「風呂用具とかは備品使えばいいし」

一夏「タオルはそこに入ってるから」

シャル「ふふ、ありがとう、一夏」

シャルの微笑みは、男だと分かって居ても、なんだか落ち着かない気持ちにさせられた。

一夏「べ、別に普通だろ、このくらい」

シャル「ううん」

シャル「ボク、こんなに親切にしてもらうの、初めてだよ」

一夏「え?」

聞き返すまえに、シャルは浴室に消えてしまった。

朗らかで明るいシャルと、時折見せる暗いシャル。

俺はベッドに身体を預け、目を閉じる。

俺にだって話せないことはいくつもある。シャルにも、そういうのがあるのかもしれないな。

唐突に睡魔が襲って来る。思えば今日は色々疲れた。

セシリア、箒、鈴。明日からはシャルも加わるのか。

セシリアの好きにさせる訳にはいかない。何とかしてあいつの弱みを握らないと。

シャワーの音が聞こえる。きっと風呂から上がれば起こしてくれるだろう。

瞼が上がらない。俺はゆっくりと眠りについた。

寝落ちて悪かった。

まだラウラは来ないです。

ではまた。

ラウラ期待してる

乙バレ

すごいハニトラっぽい

どのくらいの時間が経ったのか、俺の意識は甘く覚醒した。

何だろう、柔らかい?

それに少し重い……いや、少しでは無いな。

???「………?………」

声?馴染みが無いが……女?何をしているんだろう。

???「どうして?……では、ふつ……」

徐々にハッキリとする世界の中で、流れる金色が俺の視界を遮った。

一夏「…?お前、誰、だ…?」

シャル「……あはは、やだな一夏、起きてたの?」

一夏「シャル?」

身体を起こす。見れば、上から布団がかけられていた。

一夏「お前が?」

シャル「う、うん…一夏、疲れているみたいだったから」

シャルはさっき見た時と変わらない様子だった。

髪はまだ湿っている。そう長い時間眠ってしまったわけではないらしい。

一夏「…そっか、悪い、気ぃ遣わせたな」

シャルと俺はほぼ初対面なんだ。突然無防備になられても困るだろう。

シャル「ううん、そんなことないよ」

シャルは手を振り乱して否定する。男のくせに妙にその仕草は可愛らしかった。

シャル「それより、一夏、ずっと起きてたの?」

一夏「え?いや、さっき起きたばかりだけど……」

シャル「そ、そっか、それならいいんだ」

変な反応だ。微睡んでいる間に感じた違和感も気になる。

一夏「お前、もしかして俺が寝ている間に」

一夏「……何かしたのか?」

びくっ、と。

こちらに振動が伝わるように大きく、シャルが反応した。

一夏「おい、マジで何かしたのかよ?」

シャル「あ、あはは、その…」

一夏「何やった?言えよ」

シャルの手を掴み、壁に追い込む。俺を覗き込むように見る瞳は動揺なのか揺れていた。

シャル「……あの、怒らない?」

一夏「いいから、何をやったのか言えって!」

語気を強める。セシリアの事もあるし、俺はそもそもこいつの事を殆ど知らない。

何をされたのかは分からないが、録でも無いやつだとすれば、千冬姉にでも言って部屋を変えてもらうなりしないと……

シャル「ご、ごめんなさい」

シャルは蛇に睨まれたカエル…いや、見た目は良いから蛇に睨まれたリスくらいか?とにかく萎縮してしまっている。

一夏「誤魔化そうとしてもダメだ、早く何をしたのか……」

シャル「……はい」

シャルはポケットから何かを取り出した。俺の持ち物にポケットサイズの貴重品なんてあったか?

一夏「って、お前の携帯かよ」

シャル「だって…何をしたか見せろって」

一夏「携帯で何したんだ?」

シャル「ちょっと待って、今見せるよ」

ポチポチとボタンを操作するシャル。やがて目的のものを見つけたのか、そっと画面を向けてきた。

一夏「……って、これは…」

シャル「つい、出来心で…」

そこに写っていたのは、俺の寝顔だった。

何の変哲もない。目を瞑り、どこか間の抜けた自分の顔だ。

シャル「お風呂から出たら、一夏が寝てて」

シャル「…何かいいなって思ってさ」

一夏「は?」

シャル「ごめんね、嫌だったよね」

シャル「すぐに消すから」

一夏「あ、いや、そのくらいなら別にいいんだけど」

シャル「本当?」

一夏「お前、男なんだよな?」

シャル「うん、そうだよ」

一夏「それじゃ、なんで男の寝顔なんか携帯で撮るんだよ」

シャルはきょとんとした顔で俺を見つめた。だが、俺からすればその表情自体がすでに怪しげに感じる。

もしかして、こいつ、ゲイなのか?

そりゃあ、女と言われても分からないくらいの美形だし、線も細い。

フランスってそういうの大らかだって聞いた事があるような気もする。もしかすると、こいつの常識と俺の常識はズレているのかもしれない。

シャル「だって、可愛かったんだもん」

一夏「ぶっ……!」

可愛いというなら今のシャルの顔がそれだ。頬を膨らませ、不貞腐れたような仕草はこいつのルックスと相俟って、まるでアイドルのグラビアだ。

だが、こいつは男なんだ。こんな考えを持っている俺は、多分今この異常空間に毒されているに違いない。

シャルは可愛くなんてない。そう、顔をこんなに近付けられたって…

シャル「一夏?」

気が付くと、シャルは俺のすぐ目の前にいた。まさに目と鼻の先。少し歩み寄ればキスできる距離。

一夏(ってアホか!なんで俺がシャルとキスするんだよ)

まさか、is学園で、箒とシたせいで。

俺は男もイケるようになっちまったのか?

一夏「ちょ、近いって…」

シャル「だって、一夏顔赤いよ?」

シャル「さっきも寝てたし、具合悪いんじゃない?」

小さな手が、俺の額にそっと触れる。

ひんやりとした感触、柔らかな掌。俺を案ずるひそめた眉。

甘い香りがふわりと舞った。ボディソープにしては強く、だがくどく無い香り。

鼻を擽った匂いの元は、唇を尖らせて自分の体温との違いを測っている。

シャル「うーん、平熱、かなぁ?」

心臓の音が、耳の奥で大きく響く。脳みそがそのまま心臓になってしまったかのようだ。

シャルの体温が俺の身体に触れる。密着した部分が焼けるように熱い。

おかしい。変だ。何故俺はこんなにこいつを抱きしめたいと思う?

シャル「一夏?」

待て。落ち着くんだ。

相手は男。それもさっき会ったばかりだ。今日は色々なことがありすぎた。きっと俺の中のネジがどこか外れてしまっている。

シャル「一夏、なんだか目が怖いよ…?」

シャル「いち、か…?」

何故こいつは俺の名前を呼ぶ?

そうだ、俺はこんなことをしている場合じゃないんだ。セシリアのことも、箒のことも、鈴のことも。

何も考えていないじゃないか。まともに頭を働かせるんだ。ぼんやりしてはいられない。

一夏「あ……う…」

シャル「きゃっ!」

脚がもつれた。シャルを巻き込んで倒れこんでしまう。それにしてもシャル、きゃって何だよ。女々しい奴だ。

そう、女々しい。可愛い顔しやがって。深い色の瞳は濡れ光っている。この目が悪い。まっすぐ俺を見るから、俺の心がざわつくんだ。

シャル「一夏、苦しいよ」

シャルの手が、俺の手を包む。顎を掴んでいた俺の手。そうか、俺はシャルの顎を掴んでいたのか。

シャルの手を退ける。抵抗は弱い。俺はシャルの小さな身体に覆い被さった。

一夏「シャル……」

シャル「な、何?」

一夏「……ごめん」

謝った。何を?いや、そんなつまらないことはどうでもいい。

この匂いだ。シャルの身体から香る匂い。

これが、俺の頭を痺れさせる。

もっと触れたい。もっと感じたい。

シャル「や、やめて…」

言葉とは裏腹に、シャルは弱々しく俺の胸を押すだけだった。

シャルの前髪を掻き上げる。柔らかい髪、大きな瞳、瑞々しい唇。その唇が動いている。なんだよ、誘ってんのか?

中はどうなっているんだ?この香りで一杯なのか?触れた肌より熱いのか?

確かめたい。

俺はシャルの抵抗をそのままに顔を近付ける。顔を背けないんだ、こいつだって本当はしたがっているに決まってる。

シャル「一夏……」

吐息が、言葉が、シャルの全部が俺の中に入ってくる。

シャル「……むぐっ……」

一夏「っ……」

歯が当たった。血の味が広がる。でも、それも関係無い。

甘い。しょっぱい。そして熱い。

初めてじゃない。いや、男となんて初めてか。もう訳が分からない。

この匂い。味。もっと、もっと知りたい。

シャル「いち、か…ぁ……」

呼吸が、息が続かない。それでも、シャルを求めて唇を合わせる。

シャルの顔は蕩けて、口の周りは俺とシャルの唾液でべちゃべちゃだ。

それでも。

一夏「…綺麗だ」

シャル「……ふぇ?」

一夏「……」

足りない。シャルの後頭部が壁にぶつかった。それを庇うように腕を回す。より強くシャルを抱き締める。より深く、シャルを貪る。

静かな部屋に、口元からの水音がぴちゃぴちゃと響く。後に聞こえるのは苦しげな吐息と、衣擦れのみ。

一夏「…シャル、ごめん、…ごめん」

無理矢理キスをしながら、俺は謝るだけだった。最低なのはどうしようもない。それでも、何も言わずには居られなかった。

シャル「……一夏」

初めての、抵抗らしい抵抗だった。

慌てて身体を離そうとする。だが、それは出来なかった。

シャルの腕は俺の首に回ったまま、その瞳は俺を見詰めたままだ。

シャル「…一夏、どうしてボクに謝るの?」

シャル「……どうして、謝りながらキスするの?」

一夏「…だって」

シャル「ボクは!」

シャルは俺の言葉を遮った。腕に力がこもる。

シャル「……ボクは、嬉しいよ?」

シャル「一夏と、こうやってキス出来て」

一夏「シャル…」

シャル「ねぇ、どうして謝るの?」

一夏「だって、無理矢理だし」

シャル「ボクは情熱的なのもいいと思うよ」

一夏「それに、お前、……男じゃんか」

一番大きな問題だ。自分が一番凹む事実でもある。

さっきまでは頭の中が熱に浮かされて隅に追いやられていたが、これは救い難い。

幾ら見た目は中性的でも、そこは曲げられない。俺は男に襲いかかったあげく、押し倒して無理矢理唇を奪ったのだ。

シャル「……」

シャルも言葉がない。もしかしたらソッチ系のカミングアウトでもあるかと思ったが、それも違うみたいだ。

シャル「……いいや、一夏になら言っても」

一夏「は?」

シャル「ボク、女の子だよ」

一夏「……はぁ」

シャル「あ!信じて無いでしょ」

一夏「……いいよ、そんな無理な慰め方してくれなくてもさ」

一夏「俺だって、お前以外の奴にこんなことしようなんて、思ったこと無かった」

シャル「ボク、だけ?」

一夏「…何でだか、俺にも分からねぇ」

一夏「でも、……止まんなかった」

シャル「……ふふっ」

一夏「シャル?」

シャル「いーちかっ」

一夏「うわっ!!」

シャルは力一杯俺を抱き寄せた。

急に動いたシャルの力で、俺は体勢を崩して床に転げてしまう。

一夏「…ってて……」

シャル「これで、ボクが上、だね」

俺に跨る形で、シャルは胸に指を突きつける。

シャル「……いい?先に言っておくけど」

シャル「……ボクだって、誰にでもこんなことしないんだからね」

一夏「シャル、お前一体何を……」

シャルは羽織っていたジャージを脱ぎ、続いてtシャツも脱ぎ捨てた。

しかし、その中から出てきたのは生身の肌では無かった。

一夏「な、何だよ、それ」

シャル「コルセット、みたいなもの」

シャル「体型を男のコっぽく見せるためのね」

シャル「一夏、よく見てて」

シャル「……あ、でも恥ずかしいから少しだけね」

矛盾したことを言いながら、シャルは手を脇の留め具に掛ける。

程なく、コルセットが外れた。押さえつけられていた胸が、零れるように外気に晒される。

一夏「って!何で下裸なんだよ!」

シャル「しょうがないでしょ、このコルセット、かなりキツいんだから」

腕で胸を庇うようにするシャル。二つの膨らみは、シャルが女であることを強く主張していた。

シャル「…でも、これで分かった?」

一夏「ああ、うん」

認めない訳にはいかない。柔らかそうに形を歪ませる胸は、俺の目の前にあるのだから。

シャル「……それじゃあ、さ」

一夏「お、おい」

シャルは俺に身体を預けるように倒れこむ。

シャル「……んっ」

啄ばむようなキス。シャルはそのまま身体を起こした。

一夏「おまっ、それじゃ見えて…」

シャル「……いいよ、見ても」

シャルの態度は変わらない。顔が上気しているようだが、挑発するような表情はそのままだ。

シャル「ボク、一夏のこと」

シャル「すっごく気に入っちゃった」

見上げるシャルのプロポーションは完璧だった。絵画のように、そうあるべく作られた、そんな美しさ。

シャル「だから、ボクのどんな姿を見られたって、いいんだ」

チロリと、小さな赤が口元を滑る。

一夏「だ、ダメだ、俺は……」

シャル「ふふ、今更なに?」

シャル「それとも、本当はボクが男のコの方が良かった?」

一夏「そ、そんなことねぇ!」

シャル「だよね、ちょっと心配しちゃったよ」

シャルの顔が近付いてくる。頭は拒否を望んでいるのに、身体は全く言うことを聞かなかった。

シャル「……自己主張は認めるけど、最後まではしてあげないよ」

そっと、シャルの指が俺自身をなぞる。それだけで身体が跳ね上がるような痺れが走った。

シャル「ふふ、……今日は、だけどね」

口の中にシャルの指が侵入してくる。俺はただ呆然と、その様子を眺めていた。

とりあえずここまで。まだまだ続くよ。適当に見てくれると嬉しい。

おやすみなさい

おつかれー



シャル「一夏の中、熱いね」

細い指が舌を弄び、歯を確かめるように押す。

シャル「んふふ、……あむ」

その指を、ゆっくりと自分の口に含んだ。

シャル「変なカンジ」

シャル「やっぱり、直接しないと分からないよね」

シャルは顔を近付けてくる。

だが、まさに目と鼻の先で静止した。

一夏「え?」

シャル「ふふ、したい?」

あと数センチ。少し身体を起こせば届く距離。

シャルは俺を誘っている。それが分かっていながら、シャルを味わいたい気持ちが膨らむのを止められなかった。

一夏「……したい」

気がつくと、俺はそう言ってしまっていた。

シャル「…ふーん」

シャルはうっとりと俺を見下ろしている。

勝ち誇った、優越感に満ちた顔だ。今主導権を握っているのは自分だと確信している、そんな顔。

シャル「それじゃあさ、お願いしてよ」

シャル「一夏は、ボクと何がしたいのかな?」

ゾクッと、嫌な電流が背筋を走った。

シャルの言葉が、視線が、俺の身体を縛り付ける。

逆らえない、いや、逆らいたくない。

俺の全てが、シャルという女に魅入られてしまっていた。

一夏「…キスさせてくれ」

シャル「くれ?日本語でお願いはどうするんだっけ?」

シャルは完全に楽しんでいる。口元に浮かぶ笑みは、昆虫の羽を毟る子供のように純粋で残酷だ。

一夏「キス、させて下さい」

妙な高揚感と屈辱感がない交ぜになって、頭の中を埋め尽くした。

シャル「あはは、一夏は謙虚だねぇ」

シャル「セックスさせて下さいって言えば、シてあげたのに」

一夏「え!」

シャル「うーん、反応しすぎ」

シャル「冗談だよ、冗談」

鼻の頭を指がつつく。シャルの本心は、未だに見えないままだ。

本当、この妾の豚は死ぬべきたよなぁ。
豚と言われてるスグルやハルユキに謝りやがれ

黒シャルは大好物だ
続けてくれ

シャル「ふふ、一夏の顔」

シャル「すっごく切ないカンジ」

シャル「そんな顔されたら、ボクの方が我慢出来なくなっちゃうよ」

シャルはじゃれるように頬を摺り寄せる。耳元で囁かれた言葉が身体の中心をピリピリと刺激した。

一夏「し、シャル…」

シャル「はいはい、よく頑張ったね」

シャル「……はむっ」

一夏「!」

唇を甘噛み、そのまま強引に舌を捻じ込まれる。シャルの唾液が俺の口内に流れ込んで来た。

一夏「……」ゴク

シャル「ふふ、ボクの唾、美味しい?」

一夏「っ!、それは……」

シャル「いいよ、もっとあげる」

シャル「…じゅるっ」

シャルは俺の唾液を吸い上げ、代わりとばかりに自分のものを渡してくる。息継ぎもままならない中、俺は貪るようにそれを飲み込んだ。

シャル「んっ、ひた、らひて?」

舌を伸ばすと、唇で挟み舌先を舐られる。口以外の感覚が希薄になり、シャルと一体化してしまったかのような錯覚に襲われた。

シャル「……んっ」

シャル「…はぁ、苦しっ……」

唇が離れていく。それだけで、身体の一部を失うような喪失感を感じた。

シャル「一夏とキスすると、凄くドキドキしちゃうね」

シャル「それに」

シャル「凄く気持ちイイ」

シャルの指が、俺自身に添えられる。

シャル「もし、コレで繋がっちゃったらさ」

シャル「ボク、おかしくなっちゃうかも……」

一言一言が俺から思考力を削いでいく。シャルの中は、一体どうなっているのだろう。それだけで頭が一杯になる。

シャル「一夏も、シたいんだね」

声も出ない。俺は力一杯首を縦に振った。

シャル「ふふ、でもダーメ」

シャル「ああ、そんな顔しないでよ」

俺は一体どんな顔をしているのだろうか。シャルの言葉に翻弄される間抜けな姿を見たいとは思わないが。

シャル「さっきも言ったでしょう?今日はダメ」

シャル「ボクも心の準備したいし」

シャル「それに、さ」

シャル「今日、ボク以外のコと、えっちなことしたでしょ?」

不意を突かれて、分かりやすく動揺してしまった。シャルはやっぱり…と言いたげに俺を見る。

シャル「一夏の身体からしたんだよね、甘い匂い」

シャル「……だからさ」

シャルの指が、今度はしっかりと包み込んでくる。そのままゆるゆると上下に動かし始めた。

もどかしい刺激に身体をよじるが、シャルの脚がしっかりと抑えていて思うように動けない。

シャル「これから一週間、ココに沢山溜めておいてよ」

シャル「もちろん、オナニーも禁止」

シャル「一週間我慢したら」

シャル「……ボクが全部搾り取ってあげる」

シャル「ボクのココ、好きなだけ使わせてあげるよ」

ドクンっ、と。

身体中の血液が沸騰した。今すぐシャルを犯して欲望の捌け口にしたいと、それだけが心を支配した。

シャル「ふふ、一夏のえっち……」

俺自身をさすりながら、シャルは楽しそうにそう言った。俺の反応が期待通りだったからか、あるいは他の理由なのか。

シャル「その代わり、一夏だけに辛い思いはさせないよ」

シャル「ボクも我慢するから」

シャル「一週間後は、コレで沢山イかせてね?」

俺の答えは決まっている。頷く俺を見て、シャルはにっこりと笑った。

シャル「楽しみにしてるからね」

シャル「……それと」

もじもじと言葉を濁すシャル。目が泳ぎ、何かを言いかけてはやめるを繰り返した。

一夏「…どうした?」

シャル「……うう」

しばらくそうしていたが、やがて意を決するかのようにジッと俺を見る。

シャル「あのね、一夏」

一夏「何だ?」

シャル「……今更言うのもなんだけど」

シャル「……ボクと、付き合ってくれない、かな?」

そう言うシャルは、さっきまでの妖艶さは無く、年相応の少女に見えた。

セシリアのことも、箒のことも鈴のことも、俺には解決しなくちゃならない問題が山ほどある。

シャルを受け入れる訳にはいかない。

分かっている。分かっているはずなのに。

シャル「…!い、一夏?」

俺はシャルを力一杯抱きしめていた。この女を手放したくない、その思いに勝てなかった。

一夏「シャル、俺と付き合ってくれ」

シャル「!うん、もちろんだよ……」

俺たちはしばらくそうやって抱き合った後、啄ばむようにキスをしてゆっくり立ち上がった。

妙に気恥ずかしい空気の中、俺はシャワーを浴びるために下着とタオルを取り出す。

シャル「あ、一夏」

シャルはピタッと俺の背中に張り付き、囁いて来た。

シャル「……お風呂でヌかないでね」

確認しなくていい、と思いながらもモヤモヤしながらシャワーを浴びたのだった。

こんな雰囲気のまま進んで行きます。普段絶対書かないことをコンセプトにやっているので鬱陶しいと感じるかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。

お休みなさい。

続ききてた
ゆっくりでいいから完結までやってくれ

毎日楽しみだ

需要あるんですね、良かったです。

完結は絶対しますよ。ただ書き溜めは無いので、進行はあまり早くないと思います。

あと、夜に書くことが多くなりそうです。

期待

明日書く。お休みなさい。

乙!
続き待ってます

欲を言うなら肉体関係まで行かず普通にイチャイチャしてるのが見たかった

>>149あー、そういう明るい話じゃないので、気になるなら読まない方がいいと思います。無駄に貴方の心が傷付くことになると思うので。

ハニトラに見せかけてハニトラなのか

isのいちゃラブなんか探せばいくらでもあるだろ

こういうのは珍しいから嬉しいわ

さて、今日は書きますよ。

トイレ行ってくるから、少し待っててね。

トイレ長すぎだろw

シャル「シャルル・デュノアです」

シャル「これからよろしくお願いします」

シャルは次の日に転校生としてやって来た。

クラスは奇しくも俺と同じ。設定上男だから、纏められたのかもしれないが。

当然のごとく、シャルは周りの女子に質問責めを受けている。隣の席にいるはずのシャルは、人ごみで姿を見ることは出来ない。

あの後、シャルは俺のベッドに潜り込んで来た。

甘えるシャルは愛らしく、俺も頭を撫でたり頬をつついたり、楽しい時間ではあったが。

抱きついてくるシャルの柔らかさを腕に感じながら寝られるほど、俺は神経が太く無い。

箒とシャルは、俺の意識の中だけでも随分違うようだった。

それとも、いくら肌を重ねても慣れるものでは無いということか。

おかげで今日は寝不足だ。

セシリア「……一夏さん、大丈夫ですか?」

セシリア「顔色が良く無いようですが」

後ろから声がした。その声の主は、姿を見ずともよく分かっている。

一夏「お前に心配される筋合いはない」

一夏「いいから俺に構わないでくれ、オルコット」

セシリア「あら、早速約束を破るんですか?」

セシリア「わたくしのことはセシリアと、そう呼んで下さるという話でしたが」

一夏「……っ、セシリア」

セシリア「よろしい、そのままでお願いしますわ」

セシリア「それはそうと、本当に無理は禁物ですわよ」

セシリア「わたくしの遊び甲斐がなくなってしまいますし」

一夏「!」

そうだ、この女が素直に俺の心配なんてする訳がない。

一瞬でも良心を期待してしまった自分を殴り飛ばしたかった。そうやってすぐに信用すれば、また手痛い仕打ちを受けることになるのに。

一夏「…大丈夫だ、少し寝不足ってだけで」

セシリア「ふふ、オナニーはほどほどに、ですわよ?」

一夏「!違う!」

セシリア「そうですか」

からかわれていると分かっていても、こいつに言われたままでいることが許せなかった。

セシリア「歯型、まだヒリヒリするんですのよ?」

セシリア「でも、あの時のことを考えて、二回ほど自分でシてしまいました」

セシリア「一週間後が楽しみですわね」

一週間……そうだ、一週間だ。

シャルとの約束も一週間後。セシリアとシャルの予定が被っている。

一夏「なあ、オ…セシリア」

セシリア「なんですか?一夏さん」

一夏「その約束、ズラせないか?」

一夏「一日でいいんだ」

セシリア「無理です」

一夏「いいだろ?別にやらないとは言ってないんだ」

一夏「一日くらい……」

セシリア「ルールは絶対です」

セシリア「一週間という日程は、一日たりともズラしません」

セシリア「風邪で寝込んだとしても、キチンと私に会っていただきます」

セシリア「それでは、ご機嫌よう」

一夏「あ、おい!」

セシリアはこれ以上話すことは無いと言わんばかりに教室を出て行った。次の授業は受けないつもりなのかもしれない。

しかし、あの時の目。何を執着しているのか分からないが、

そうまでして守る理由があるのだろうか。

いや、こうやって考えること自体が無駄なのだろう。

シャルのことを気を付けさえすれば、セシリアが何をしようとも俺が我慢しておけばいい。

むしろ、相手にしなければあいつが飽きるかもしれないし、居ないものとして扱おう。

それにしても気の回るやつだ。俺の不調なんて、誰にも指摘されなかったのに。

箒「一夏…」

一夏「…箒か」

ふと見ると、箒が心配そうに俺を見ていた。

俺は余り話さない方がいいと言う意味を込めて首を振る。

箒も何と無く察したのか、それ以上何も言ってこなかった。

セシリアと箒はお互い何も話していないようだったが、その間の確執は想像するに余りある。

これ以上箒とセシリアを関わらせない方がいい。

箒は深く傷付いているはずだし、……ん?

あれ?俺は箒に……

シャル「うう、やっと終わったよ…」

俺の思考は、シャルの登場で唐突に打ち切られた。

シャル「一夏、助けてくれれば良かったのに…」

一夏「はは、皆の気持ちも分かるからさ」

少しドギマギしてしまったが、平静を保って話すことが出来た。

シャルの顔が近付く度に、キスの感触が生々しく俺の中に蘇った。

髪が揺れる時の香りは、身体の芯を痺れさせる。

シャル(ふふ、そんなにえっちな目してたら、バレちゃうよ?)

一夏「…っ!」

シャルが耳元でそう囁いてくる。見れば、悪戯っ子のような無邪気な笑みを浮かべて俺を見ていた。

シャル「お楽しみは後にとっておく方がいいと思うけど?」

一夏「……そ、そうだな」

股間に血液が集中した。一週間後に待っているであろう快楽を想像するだけで、気持ちが先走ってしまう。

シャル「うーん、やっぱり辛い?」

一夏「まだ一日目だぞ?そんなことないって」

シャル「…どうしても無理なら言ってね?」

シャル「ボクも一夏が辛いのは見たくないからさ」

一夏「……おう」

シャルの瞳には、ただ心配の色が浮かんでいる。セシリアとの会話を洗い流すような優しさが心に染みた。

そうだ、俺にはシャルがいる。シャルに誠実でいれば、きっとこれからも大丈夫だ。

また酢豚のsekkyouがくるぞー

今日は疲れた。目覚めてから書く。

安定しなくてすまん。

一時限目の担当は千冬姉だった。

千冬姉はセシリアのことを二三生徒に聞く以上は、特に気に留めていない様子だった。

セシリアは代表候補生というだけでなく、成績も優秀で素行も悪くない。

たまのサボりくらいならば、体調不良で通せるレベルの信用はある。

俺は難易度の高いis学園の授業に着いて行くべく、机に噛り付いた。

前方には僕箒が、後方にはシャルが居るはずだが、極力意識から外す。

千冬姉はそんな俺の態度に満足したようで、珍しく注意もされなかった。

だが、もし箒やセシリア、シャルとの関係が発覚すれば、俺の命の保証は無い。

何としても、大事になる前にセシリアを止めなければ。

授業はあっという間に終了した。考えたくないことから目を背けた結果、普段より真面目に授業を受けることになっているのは、皮肉としてはイマイチだが。

シャル「いーちか」

チャイムがなり終わるとほぼ同時に、シャルが声をかけて来た。

一夏「ん?どうした?」

シャル「いやぁ、ここって勉強難しいんだね」

シャル「ボク、ついていけるか不安だよ」

一夏「ま、確かにレベル高いよな」

一夏「俺も分からないとこかなりあるし」

シャル「あ、それならさ」

シャル「一緒に勉強しない?」

一夏「俺は構わないけど」

シャル「じゃあ決まりだね」

シャルは今にも飛び跳ねんばかりにはしゃいでいた。

同室なんだから、別に部屋で言っても良さそうなものだが。

小さな理由でも俺と話したいと思ってくれたのだろうか?聞くのも照れ臭いが、それなら悪い気はしない。

実感はまだ沸かないが、俺とシャルは隠れた恋人なんだ。

身体を解す振りをして、シャルの様子を伺う。

シャルはそんな俺に気付いて、小さく手を振って来た。そんな小さな反応がたまらなく可愛く見える。

顔がニヤけそうになるのを咳払いで誤魔化し、ふと教室の入り口を見ると、セシリアが入ってくるのが見えた。

途端に、妙な緊張が俺を襲う。セシリアの席は俺の真後ろ。シャルと違い、こいつに背後を取られるのはゾッとしない。

セシリア「……ふぅ」

通り過ぎる時も座る時も、特に何の反応も無い。警戒で強張った肩に安堵がそっと降りてくるのを感じた。

セシリアの目的は俺をオモチャにすること。今は気が乗らないといったところか。

もしくは、律儀にルールとやらに従うつもりかもしれない。

意識しないようにすればするほど、背後から覗かれているような錯覚は大きくなるばかりだった。

おいついた
おもろい

誰と誰がグルなんや一体…

昼食まで、俺は当たり障りなく過ごしていた。

シャルが来たせいか興味も分散したようで、いつもに比べれば周りの干渉も少ない。

セシリアと箒も、それぞれの席から動かず、見えない三すくみが俺たちを縛っているように何事も起こらなかった。

鈴「一夏、箒、ご飯食べに行こ」

それを壊したのは鈴の声だ。いつものままの姿で鈴は教室の入り口に立っている。

昨日の事など気にも留めないと主張するような元気な声音。それが凝った空気を吹き飛ばした。

俺は箒と目を合わせないように鈴の元へ歩く。どんな顔をしているのか、どんな顔をすればいいのか、それが分からなかったからだ。

鈴はそれをあえて追及することもなく、俺たちを連れて教室を出ようとする。

だが、そこに不穏な影がそっと近付いた。

セシリア「凰鈴音さん」

セシリアだ。待ち構えていたのか、完璧なタイミングで戸口を塞いでいる。

そもそもいつの間に教室の外に移動したのか、それすら気付けなかった。

鈴「ん?何か用?」

セシリア「不躾なお願いとは思いますが」

セシリア「わたくしも、仲間に入れてもらえませんこと?」

セシリアは何の気負いもなく、さらりと言ってのけた。

俺や箒との蟠りなどまるで意識に無い。口元には自然な微笑みまで浮かんでいる。

鈴「あんた、セシリア・オルコットだったっけ」

鈴「確かイギリスの代表候補生の」

セシリア「ええ、その通りです」

鈴「目的は何?」

セシリア「同じ代表候補生として、親交を深めたいと思っているだけですわ」

セシリア「いけませんか?」

鈴「んー……ま、別にいいけど」

鈴はあっさり許可した。もとより人見知りしない、懐の大きい奴だから当然だ。

セシリアは完璧に猫を被っているし、こんな人の多いところで箒の話を出す訳にもいかない。

箒も諦めたように黙っている。俺が事を荒立てるのは箒の不利になるだけだ。

鈴の、いいでしょ?という目配せにも、俺たちは特に反論しなかった。

鈴「んじゃ、改めて……」

シャル「ま、待って!」

鈴の頭の上に怒りマークが見えるようだ。シャルは気付いているのかいないのか、鈴の手をとって話しかけている。

シャル「ボク転校して来たばかりでこの学園のこと、よく知らないんだ」

シャル「ボクも仲間に入れてよ」

鈴「……で?とりあえず、あんたが誰なのか」

鈴「あたし知らないんだけど」

シャル「あ、ごめんなさい」

シャル「ボク、シャルル・デュノア」

シャル「よろしくね、凰鈴音さん」

鈴「知らない間に、あたしも有名人になったものね」

鈴「てか、その制服……」

鈴「男?」

シャル「うん」

鈴「……なよなよっちいわね」

鈴「あんた、普段何食べてるわけ?」

シャル「えっと、サンドウィッチとか、後は…」

鈴「あーだめだめ、そんなの食べてるから女の子みたいになるのよ」

一瞬、時間が止まったように感じた。確かに、知っていればシャルはどう見ても女だし、体型をいくら誤魔化しても、顔までは変えられない。

しかし、シャルは特に気にした様子は無かった。

シャル「あはは、やっぱりそうなのかな」

シャル「ボク、一夏みたいになりたいんだよね」

シャルがチラリとこちらを見てくる。小さくウィンクするその顔が、まるでイタズラをする子供のようで可愛らしい。

鈴「なーるほどね、何となく分かるわ」

鈴「よし、あんたも一緒に来なさい」

鈴「あたしがもっと男らしくしたげるから」

シャル「いいの?ありがとう!」

シャルは再び鈴の手を取り、ブンブン振り回した。鈴は、これがフランス流なの?と小さく呟きつつも、されるがままになっている。

箒「みんな、とりあえずここを動こう」

箒「通行の邪魔になっている」

気がつけば、こちらを遠巻きに見る生徒で廊下は混み合っていた。

鈴「そうね、早く上に行きましょ」

セシリア「上?」

鈴「ああ、あたしら屋上でいつも食べてるからさ」

セシリア「そうでしたの」

そう言うセシリアの顔に、何か違和感を感じた。その正体は分からないが、妙に引っかかる。

鈴「ほら、シャルルも遅れんじゃないわよ」

シャル「ボクのことはシャルでいいよ」

鈴「そう?んじゃ、シャルね」

鈴「あたしのことは鈴でいいから」

鈴「セシリアも、それでよろしく」

セシリア「はい、そうします」

本性を知っている身としては、白々しいセシリアの猫被りはもはや芸術と言ってもいいだろう。

今までは魔が差しただけで、こちらが本当だと言われても納得してしまいそうになる。

何せ見てくれは完璧なのだ。性格と一致していないのが悔やまれるほどに。

屋上にはいつも通り誰も居なかった。

セシリア「なかなか、いい眺めですわね」

シャル「うん」

シャル「どうして誰も居ないんだろう?」

鈴「ま、買い弁派は少ないからね、ここ」

鈴「あんだけ豪華な学食があるんだもの、当然っちゃあ当然だけど」

鈴は話しながら持っていたビニールシートを広げた。

人数が増えて少し狭くなったそこに、全員で座る。

鈴「そういえば、あんた達ご飯買ってある?」

俺と箒、鈴はいつも朝に買ってから学園に向かっている。

シャル「あ、ボクは今朝一夏と一緒に買ったのがあるよ」

シャルは得意げに焼きそばパンを取り出した。

鈴「セシリアは?」

セシリア「わたくしもありますわ」

そう言って、持っていたミニバスケットを開ける。

鈴「おにぎりに、唐揚げ、それとサラダねぇ」

鈴「また随分と日本贔屓じゃない」

セシリア「せっかくの異国ですから」

セシリア「こちらの食べ物に触れてみたいと思うのは自然だと思いますけど?」

それにしても意外な昼食メニューだ。

セシリアのイメージなら、サンドウィッチあたりを食べて、紅茶でも飲みそうなものだが。

箒「……今日は私の番だったな」

黙っていた箒が口を開く。その前には二段の重箱がそっと置かれていた。

シャル「箒の番?」

鈴「買ったやつだけじゃ足りないでしょ?」

鈴「だから、日交代で追加のおかずを持って来てるのよ」

飯食って来ます。また時間ある時に書きまーす。

乙乙!


鈴ちゃんかわいい!

鈴ちゃんは潤滑剤兼清涼剤

セカンドなんて言われてるけど一番幼馴染らしいんだよね
報われてほしい

現状モップ以外全員チンカス並の扱いだからな

シャル「わぁ、凄い……」

シャルが重箱の中を見て目を丸くしている。箒の作る料理は凝った和食が多く、俺も悔しく感じることがしばしば。和食を見慣れていないであろうシャルにとってみれば、宝箱のようなものだろう。

箒「シャルル、オルコット…」

セシリア「セシリアでいいですわ」

箒「…セシリア、良かったら食べてくれ」

箒はそう言うと、重箱をシートの中央に置く。セシリアとは目を合わせず、俯いたままだ。

当のセシリアはどこ吹く風といった様子で割り箸を手にとっている。どこまで神経の太い女なんだろう。

シャル「あ、これが日本のハシだね」

シャル「ボクも使ってみたい」

シャルは無邪気に箸と戯れている。どうやらなかなか使い方が分からなくて困っているようだ。

シャル「ぐぬぬ、難しい……」

一夏「はは、まあ初めてじゃ仕方ないさ」

俺はシャルに、箸の持ち方を見せる。シャルは指をバタバタさせながら何とか再現しようと必死になっていた。

鈴「……そう言われると、セシリアは上手いものね」

セシリア「……ええ、練習しましたから」

セシリアが箸の使い方を練習?何故だろう。

今日の昼食といい、実はかなりの親日家なのか?

まあ、そんなことは俺に何の関係も無いのだが。

シャル「うーん、まだ使えないみたい」

シャル「しょうがないから、一夏、ボクに食べさせて」

一夏「は?」

鈴「え?」

箒「む…」

セシリア「……」

四者四様の反応が起こる。シャルは準備は出来ていると言わんばかりに口を開けた。

シャル「あの、早くしてほしいんだけど?」

一夏「あ、ああ」

急かされるままに俺は卵焼きをとり、シャルの口に差し入れた。

シャル「……美味しい!!」

シャルは卵焼きの味が気に入ったらしく、一人はしゃいでいるが、俺は気が気ではなかった。

あからさまに鈴と箒が俺を見ている。背中に嫌な汗が流れた。

鈴「……随分仲がいいのね」

箒「……」

一夏「あー、まあ男だし、これ位は、なぁ?」

そう、俺たちは出会ってまだ一日。鈴達に取っては初対面だ。

箒は朝の俺とシャルの会話を聞いていなかったのだろう。妙な疑いの目が痛い。

この場合、シャルの正体云々より、俺が男色だと思われる方がキツい。箒のこともあるから尚更だ。

セシリア「……」

セシリア「ほら、シャルルさん」

セシリア「わたくしが食べさせてあげますわ」

シャル「いいの?わーい」

不穏な空気を打ち消すように、セシリアがそう切り出し、鈴も話のキッカケを逃したのかそれ以上の追及は無かった。

まさか、俺を助けるために?そう思いセシリアを見ても、セシリアは澄ました顔でおにぎりを食べているだけだ。

まあいい、俺の目下の懸案事項はシャルについてだ。セシリアも皆がいる所で何かを仕掛けては来ないだろう。

改めて考えると、俺はシャルに一目惚れをしたのだろう。何もかもどうでもよくなって、頭の中が真っ白になった。

自分でも、節操がなさ過ぎるとは思う。舌の根も乾かぬうちにとはまさにこのことだ。

しかし、止められなかった。シャルを逃したくなかった。後悔が全く無いわけではないが、撤回したいとも思わない。

俺もシャルも、お互い知らなければならないことが沢山ある。周りにバレないように取り決めておくことも多い。

そう考えると、シャルはよく俺を受け入れてくれたものだ。初対面で襲いかかって来るような男、俺が女なら頬を張っておしまいだろう。

シャルはセシリアに箸の使い方を習っている。その姿は弾けるように明るい。

鈴や箒もシャルに食べさせるのが楽しくなってきたのか、時たま呼びつけてはおかずを放り込んでいた。

ぎこちなかった雰囲気が、徐々に軟化していくのを感じる。それは、ひとえにシャルのキャラクターが周りを和ませているからだ。

鈴「ほら、一夏も食べれば?」

鈴「あんた達、午後にisの訓練があったでしょ?」

一夏「ああ、そう言えばそうだな」

よく他のクラスの時間割まで把握しているものだ。そう言えば昔もよく俺に時間割くらい気にしろと怒っていた。それだけ俺がズボラということか。

シャル「isの訓練って、何をやるの?」

箒「今はちょっとした模擬戦や、基本の動きの反復だな」

箒「一年次ではそこまで高度なことはやらん」

シャル「そうなんだ」

鈴「ま、個人のis適性にもバラつきあるからね」

鈴「一年目で大体クラスを分けるのよ」

シャル「うう、何だか心配だよ」

セシリア「代表候補生なら、そう問題ありませんでしょう」

セシリア「適性試験はパスしたのでしょうし」

シャルを囲んでisトークに花を咲かせる女子達。本来、俺がここにいることが異質なのだ。

箒の作ってきた料理に手を付ける。重箱の中はあらかた食べ尽くされて、寂しさを感じさせた。

休憩します。

まだ女だってバラしてないから3人的にはホモに妬いてるようなもんだな

はよ

支援

これは千冬姉にも期待していいんでしょうか

千冬についてはまだ考えていません。どうにかするかもしれませんし、何もしないかもしれません。

始めます。

待ってたぞ

結局、昼食は何事もなく終わった。

セシリアは片付けを手伝い、さらに鈴と連絡先まで交換していたが、それ以外にはいたって普通の受け答えしかしていない。

シャルは食べ過ぎたと腹を押さえていたが、食事会を大いに楽しんだようだ。

シャル「ねぇ、次はボクが料理を作ってきてもいい?」

鈴「あんた、何か作れるの?」

シャル「そんなに凝ったものは無理だけど」

シャル「食べるだけより、そっちの方が楽しそうだから」

鈴「…どうする?」

箒「いいんじゃないか?」

一夏「俺も、いいと思うぜ」

一夏「アジアにヨーロッパ成分プラスだ」

鈴「うーん」

鈴「それじゃ、とりあえず明日任せるわ」

鈴「変なもの出さないように」

シャル「だ、大丈夫だよ」

シャル「そうだ、セシリアも一緒に持ってこようよ」

セシリア「…わたくしが?」

シャル「うん」

セシリアに注目が集まる。セシリアは珍しくバツの悪そうな顔をした。

セシリア「……わたくし、あまり料理は得意では無いので」

シャル「そうなの?」

鈴「ま、本人が言うんだから疑うことも無いでしょ」

鈴「別に強制じゃないんだし、いいわよ、別に」

セシリア「ごめんなさい」

鈴「はいはい、気にしない気にしない」

鈴「んじゃ、明日は期待してるわよ、シャル」

シャル「任せて」

鈴「さ、午後の授業も頑張りましょ」

セシリア「ええ」

屋上の扉を閉じると、辺りが一瞬シンと静まり返る。

ふと目に入ったセシリアの顔は、どこか悲しげに見えた。

一夏「…あのさ」

箒と鈴、シャルは既に階段を降りている。ここにいるのは一夏とセシリアだけだ。

何故声をかけたのか、一夏自身にも分からない。ただ、そうせずにはいられなかった。

セシリア「何ですか、一夏さん」

セシリアは階下を眺めたまま応える。手摺を掴む指が鍵盤を叩くように動いた。

一夏「……何が目的なんだ?」

セシリア「目的?」

一夏「どうして俺たちに近付く」

本当に言いたかったことは別にあるのかもしれない。だが、一夏の口から出たのはそっけない言葉だけだった。

セシリア「…分かりませんか、一夏さん」

セシリア「貴方を見張る為ですよ」

一夏「見張る?」

セシリアは柔らかに微笑んだ。嫌味のない笑顔にうすら寒さを感じる。

セシリア「観察する、の方が正しいかもしれませんね」

セシリア「それには、出来るだけ近くの方がいいでしょう?」

一夏「……」

不思議と怒りは湧いてこなかった。セシリアがずいと近付いて来ても、不快感はない。

セシリア「どうしましたか?」

一夏「お前が本気で言ってる感じがしなくてさ」

セシリア「嘘をついていると?」

一夏「……そういうわけじゃないけど」

セシリアは一歩下がり、思案するように目を泳がせた。

一夏「なあ」

セシリア「何ですか?」

一夏「ルールは受け入れるよ」

一夏「だから、それ以外は普通にしないか?」

セシリア「普通に、とは?」

一夏「クラスメイトとしてさ」

一夏「普通に笑ったり」

一夏「さっきまでのセシリアでいてくれないか?」

セシリア「……わたくしは、別段態度を変えているつもりはありませんが」

セシリア「そうですね、あまりビクビクされても面白くありませんし」

セシリア「ルールを明確にしましょう」

一夏「聞かせてくれ」

セシリア「一週間に一度、わたくしの言うことを聞いてもらう」

セシリア「これがゲームの内容です」

セシリア「ゲームが続く限り、メモリーは責任を持って管理します」

一夏「ああ」

セシリア「そして、お互いのことは名前で呼び合うこと」

セシリア「ゲーム中はお互いに触れないこと」

セシリア「これは、言うことを聞いてもらっている間の話です」

セシリア「よろしいですか?」

一夏は黙って頷いた。自分の知っている内容と相違ないか確認しておかなければならない。

セシリア「そして、これはわたくしの落ち度ですが」

セシリア「ゲームの期限、そしてその間のわたくしたちの立場を説明していませんでした」

一夏「…続けてくれ」

セシリア「ええ」

セシリア「期限は、来年度までといたしましょう」

セシリア「ちなみに、一夏さんには拒否権がありません」

セシリア「そして、その間」

セシリア「わたくしから一夏さんの不利になるようなことはいたしません」

セシリア「クラスメイトとしての付き合いを望むなら、それもまたいいでしょう」

セシリア「何か異存がありますか?」

一夏「……いや、それでいい」

一夏「その代わり、約束してくれないか?」

セシリア「何をですか?」

一夏「その矛先は、俺にだけ向けてくれ」

一夏「箒や鈴、シャルは」

一夏「お前の友達として、真っ直ぐ付き合って欲しいんだ」

一夏「……きっと、箒もそれを望んでいる」

実際、それはどうか分からない。箒はもともと素直に自分の気持ちを言うような性格ではないし、自分で抱え込むことの方が多い。

だが、さっきの箒はセシリアに対して嫌悪感を持っているとは思えなかった。

セシリアは、箒の名前を聞くと目を伏せた。自分が貶めた相手のことを話すのは、流石に嫌なのかもしれない。

しかし、その葛藤もすぐに終わったようで、再びこちらを見た。

セシリア「……わかりました」

セシリア「彼女達とのお付き合いは、一夏さんとのゲームに関係なく、わたくし個人としてします」

セシリア「もっとも、今のところそのような材料を、わたくしは持ち合わせていませんが」

一夏「約束してくれればいいんだ」

セシリア「…約束しましょう」

一夏「それじゃあ、握手だ」

セシリア「必要ありますか?」

一夏「約束の印にな」

セシリア「……仕方ありませんわね」

渋々、といった様子で握手に応じるセシリア。男の俺と手をつなぐのが嫌なのだろうか。

それ以上のことを既にしてしまっているように思うが、セシリアの拘りがあるのかもしれない。

ごめんなさい、先を考えるのでここでストップします。

遅くなると思いますが、気長にお待ちください。

おけ

期待。

はよ

はよ

お久しぶりです。一応読み返してみましたが、クソですね。長いし読みにくかった。ま、話を考えてしまった以上書き切る予定ですけどね。精進します。

~更衣室~

シャル「へえ、ここが更衣室かぁ」

シャル「広いねぇ」

一夏「もともとは俺一人で使ってたんだぜ?」

一夏「最初は女子と時間交代だったんだけど、結局面倒ってのがあったみたいだな」

シャル「女の子達も匂いとか気になったんじゃない?」

シャル「is動かすと汗とかかくでしょ」

一夏「そうかもしれないな」

一夏「とりあえず、さっさと着替えようぜ」

シャル「うん、そうしよっか」

シャルはそういうと、躊躇いなく服を脱ぎ始めた。

一夏「俺がいるとか気にしないのか?」

シャル「え?」

制服をハンガーに掛けながら振り返るシャル。上はコルセットで隠れているが、下は下着一枚。あまりに無防備だ。

シャル「あ、そういえばそうだよね」

シャル「ごめんね、いつもあまり気にする方じゃないからさ」

シャル「それに、一夏には結構見られちゃってるし」

シャル「別にいいかなって」

ふぅ……







あ、乙ばれ

乙、期待してるで

シャルは言葉通り大して気にしている風では無かった。

よく考えてみれば実家は大企業でフランスの代表候補生だから、相当な上流階級の出なのは間違いない。

もしかしたら、執事やメードがうじゃうじゃいるような家に住んでいるのでは?

シャルにそう言ってみると、ぎこちない笑みでそういうわけじゃないけど、と言葉を濁した。

シャル「ともかく、一夏にならどこを見られてもいいの」

シャル「…あ、それとも反応しちゃう?」

そういってシャルは俺の下半身に目を向ける。

シャル「あれ、そうでもないなぁ」

一夏「さすがにそんなので反応してられないって」

一夏「ここ、俺以外はみんな女子だからさ」

一夏「寮でもだらしない格好の奴結構いるし」

今の社会は完全女性優位。昔のように痴漢でもしようものなら、そのまま無期懲役を言い渡されかねない。

そんな環境で育ってきた子供が大勢集まれば、男に対する警戒心は自ずと薄れてしまう。

男が私たちに逆らうはずがない、それが刻み込まれてしまっているからだ。

鈴のように男女とも分け隔てなく付き合う人間はあくまで少数。俺や男装シャルが持て囃されるのも、動物園でライオンを眺めるのと何ら変わらない。

男という狼が牙を持っていたところで、法律という檻に閉じ込めてしまえば、それは愛玩動物と同じ。

シャル「……本当にそれだけかな?」

そこまで聞いて、シャルはゆっくりと口を開いた。

シャル「本当に、彼女たちは一夏を物珍しいってだけで話しかけたり、もてはやしたりしているのかな?」

一夏「何か間違ってたか?」

シャル「ううん、そういう人もいるとは思うよ」

シャル「でも、それが全てじゃない」

シャルの腕が俺の首に回った。ロッカーを背に抱き合う形になり、お互いの体が密着する。

一夏「お、おい、シャル……」

シャル「だってさ」

シャル「ボクはそんな風には見られないよ?」

シャルの指が俺の身体にそっと触れた。そのまま文字を書くように動き出す。



ええぞええぞ

はよ

まだか

支援

落ちないようにあげ。そのうち書き始める。

頼むわ

君が書くまで支援するのをやめないッ!

しえん

あげ

読み返したら死にたくなったんでちょっと富士までドライブ行ってくる

いってら
それまで支援

支援

あげ

あげ

ho

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