吏人「長野のライトウィング」 京太郎「東京のライトウィング」 (71)

咲×LIGHTWINGスレ
咲SSというか、京太郎SS
短いです
女の子はほとんど出てこないです

SOUL CATCHER(S)一周年突破、おめでとうございます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401083919

ハンドボールという競技がある。
分かりやすく言うと、7対7でやる、サッカーとバスケを足して2で割ったような競技だ。

日本では決してメジャーとは言えないが、ヨーロッパではサッカー、麻雀に次ぐ人気競技。
サッカーに比べてコートが狭く、ボールが片手でも扱えるため、非常に試合展開が速いのが特徴だ。

また、バスケでいうアリウープのような空中プレー、空中から放つダイナミックなシュートモーション等、派手なプレイが見どころである。







そして、俺の青春と、痛みの詰まった競技でもある。




あの日。



ぶちり、と、音がした。



未来がねじ切れる、音がした。



八月、東京。




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、暑すぎんだろ東京………」



ヒートアイランド現象とかいう、ゲームのステージ名みたいな現象のせいだろうか。
単純に、人が多すぎるだけなのだろうか。

ここ、東京は俺の地元に比べて暑すぎる。
そんな中、スーパー目指して走る男が一人。
まぁ俺なんだけど。



「くっそぉ…盲点だった。県大会決勝みたいにならないよう、タコスを作れるようになったってのに…材料買わねえといけないなら結局一緒じゃねえか」



いやまぁ味付けのバリエーションとか、タコスそのものは売ってなくても材料を売ってる店は多いとか、自分で作る利点はあるけども。





「………ま。これでタコス娘が頑張ってくれるなら別にいいか」

須賀京太郎、15歳。
チームのために、街を駆ける。





………なんて言えば聞こえはいいが、そんなかっこいいものではない。

あいつらに対して俺に出来ることなんて、これくらいしかないというだけの話だ。





あの人たちは、俺の何倍も努力をしている。
俺の何倍も頑張っている。
俺の何倍も、麻雀を愛している。

ただ楽しむだけに麻雀をしている俺とは、想いの純度が違う。

そんなやつらと同じ卓を囲むことに、抵抗があった。


唯一の男であること、素人であることを理由に対局を遠慮し、雑用に存在意義を見出していた。



…いっそ、メンバーなんて揃わなければ。
…いっそ、県大会なんて勝たなければ。

我ながら最低だと思うが、そう考えてしまったもある。


そうすれば、俺もあそこに混ざれた。
みんなと楽しく、麻雀を打つことができた。



今のあいつらは、俺には眩しすぎる。
今のあいつらは、俺には妬ましすぎる。



部員が足りないっていうから、人助けのつもりで入ったのに。
それで全国にいくとか、そんなの考慮してねえよ。
信じて入部させた幼馴染が、嶺上魔王になって帰ってくるなんて……。

……俺だって、同じ舞台に立ったことがあったんだ。
こんなケガさえしなけりゃ、同じ舞台で戦うことができたんだ。


なんで、俺だけ…………。






暗いことを考え始めると、人の視線は自然と下に下がる。

故に気付かなかった。
ビルの角から飛び出してきた、その人影に。



「………うおっ!? 危な……っ!?」


「…………………っ!?」








…刹那、閃光が疾走った。

目を疑った。

俺を飛び越えて、遥か向こう側に着地した彼の背中に。



翼が見えた気がした。









……これがマンガやゲームなら、変装した人気アイドルにでもぶつかって、そこから恋愛の一つや二つ始まったんだろうが………なるほど、俺に主人公の素質はないらしい。








「わざわざ道案内までしてもらっちゃって悪いっスね」


「いや。あんな路地裏でスポーツショップ探しちゃう人、ほっとけないですし」





出会ったばかりの人間であれ、分かることはある。
例えば、この人が方向音痴だということとか。



幼馴染にも言えることだが、どうして方向音痴というのは未開の地を進みたがるんだ?
よほど怪しい場所に向かう用事でもないかぎり、大通りを歩いた方が目的地にたどり着けると思うんだが……。






「……携帯って、地図にもなるんスね」


「いや、地図になるというか、地図を調べれるというか……携帯使うの苦手なんですか?」


「そもそも使ったこともねぇっス」


「今時珍しっ!?」

もっと厳つい性格だと思っていたのだが…割と付き合いやすい性格してんだな。





……出会ってばかりの人間であれ、分かることはある。


茶髪というよりは、むしろ赤色に近い髪。
猛禽類を思わせる眼光。
そしてなによりも、鍛え抜かれた脚。



種目は違えど、憧れた。

初めて見た時から、記憶に焼き付いて離れなかった。


俺の原点。
夢であり、目標であり、憧れであった人物。

「……というか、別に敬語じゃなくてもいいですよ? 同学年ですし」


「同学年なら、そっちもタメ語でいいんじゃないっスか? ………つーか、なんでそんなこと分かるんだ?」


「いやまぁ分かるというか、知ってるというか………」








「………天谷……吏人さん………ですよね?」




「………俺のこと知ってんのか?」


「…東京ヴェリタスJrユースのスタメン。東京最強の右ウィングですよね」


「…お前もサッカーしてんのか?」


「サッカーとは違いますけど…まぁ、似たような競技です」





多少驚いたように、質問を繰り出す吏人さん。


自分は相手を知っているが、相手は自分を知らない。
別に珍しくもない、よくある話だ。
光と、それに群がる昆虫のようなもの。







だから彼…吏人さんが何やら思案し始めた際にも、俺は漠然としか考えていなかった。

じゃあ何の競技してたんだ? とか、サッカー好きなのか? とか、そもそもお前の名前は? とか。

そんな質問がくるんだろうなぁ、なんて考えていた。







ふむ、と声が聞こえたのは、それから二秒ほど後だったか。



「……思い出した…………長野…ハンドボールの……右ウィング………名前は確か……須賀…京太郎だ」










………………………………え?




「え……えぇええぇええええぇえええぇえぇえぇええぇっ!?」


「うるせェ!! いきなりどうした」


「いや、なんで吏人さんが俺のこと知ってるんですか!?」


「そりゃお前が俺のこと知ってんだから、俺がお前のこと知っててもおかしくねェだろ」


「いや、だって吏人さんはJrユースで活躍してたじゃないですか!!」


「須賀だってハンドボールで活躍してたじゃん」


「いやまぁそれなりには活躍してたかもしれないですけど…第一知名度が全然違うじゃないですか!?」


「テレビでよくやってる、ルールも分からねェ麻雀見るよりは、サッカーと似てるハンドボール見てた方が面白ェよ。そういうことだ」


「…なるほど……」









「それに。競技は違ェけど、長野に切り替えしがメチャクチャ速い選手がいるから、参考に見てみろってコーチにも勧められたしな」


「……へぇ……。吏人さんが、俺の切り替えしを参考に……なんかうれしいですね」


「敬語いらねェよ。さん付けもいらねェ。同学年だろ」


「あ、いえ……おう。じゃあ、タメ口使わせてもらうな? 吏人」


「タメなんだから当然だろ? ………でも、確かに。お前の切り替えしはよかった。速さ以上に、キレがあったからな」


「あ、ありがとうござ、じゃなくて…さんきゅー」


「あと、お前中学生の頃はもっと小さくなかったか? 俺とあんま変わらなかったと思ったが…」


「中三の頃に一気に伸びたん…だよ。今年も少し伸びてたな」


「マジかよ。健太といい、タケノコかっての」

憧れの選手にタメ口を利くというのは、少しドキドキするな。
いつもテレビの向こう側にいた人が、目の前にいるというのも不思議な気分だ。






「……でも、どうして東京に来てんだ? 試合か?」


「……まぁ、間違っちゃいないかな。俺が直接出るわけじゃねえけどさ」


「へェ? 須賀でもスタメン入り出来ねェのか。相当強いチームに行ったみてェだな」


「……まぁ、それもあながち間違いじゃないか」


「?」

そりゃ、吏人さ…吏人…いや、心の中で呼ぶ分にはさん付けでいいだろ。
吏人さんが知ってるはずないよな。


俺だって吏人さんの近況なんて、この前新聞で読むまで知らなかった。
Jrユースでエースを張っていたはずの吏人さんが、なぜか高校…それも公立校からインターハイに出場しているなんて。


ヴェリタスユースに【あの人】が入ってから名前を聞かないなぁと思っていたけど…まさか部活の方で活躍しているとは、夢にも思わなんだ。



だから吏人さんも、俺の近況なんて知ってるわけがない。









「俺さ。ハンドボール、辞めたんだ」








「前十字靭帯断裂………か」


「あぁ。中学最後の大会で、ブチっと行っちまった」


「試合結果は?」


「負けた。勝てば全国だったんだけどなー……ま、相手チームもかなり強かったし、ケガしてなくても変わらなかったんじゃねーかな?」


「ケガは治ったのか?」


「歩いたり、軽く走ったりは問題ない。ただ、前みたく動くのは無理っぽいな。断裂した後も試合続けて出たのがマズかったらしい」


「…倒れるときには倒れるのも強さだぞ?」


「俺の中学は部員カツカツだったからな。俺、一応チームでは重要な役割だったし」


「須賀のポジション……」


「右ウィング。吏人さ…吏人と一緒。つっても、サッカーとは微妙に役割が違うけどな」

サッカーにおけるウィングとは、サイドからの攻撃の起点。
サイドからのドリブル突破や中央へのクロス、時には自ら直接切り込んで点を取りにいくこともある。


対して、ハンドボールのウィングは違う。
ハンドボールではキーパー以外はゴールの周りに入れないため、サイドから見るとゴール面積が非常に狭く、直接ゴールが狙いにくい。

サッカーでは後衛とされるサイドバック、特にレフトバックが、ハンドボールでは最も点を取れるポジションだと言われている。
ハンドボールのウィングとは、サイドから中央へ走り込んで攻撃の変化を生みだしたり、コート端からコート全体を見渡すことで攻撃と守備の入れ替わりにいち早く反応したり、むしろサポート的なポジションなんだ。





「へェ。その割には、やたらゴール狙ってなかったか?」

「常にライトウィングがゴールを狙って相手ディフィンスを右に寄せることで、本命のレフトバックのシュートを通すってのが我らがキャプテンの意向だったからな。俺が重要だったってのも、それが理由」




我らがキャプテン、嫁田君(仮名)。
俺ですら見下ろされる、長身ポストプレーヤー。

「………まぁ、昔の話だ。散々走り回った挙句、靭帯やって、今じゃ麻雀部の雑用係だよ」

「ふーん…………」




いかにも興味なさげに、吏人さんが相槌を打つ。

まぁ、お互いに存在を知っているとはいえ、ほぼ初対面だ。
そんな相手にいきなり辛気臭いされても、反応に困るだけだよな。

「それ、面白ェか?」










「え?」


「だから、現状は楽しいかって聞いてんだ」






「……楽しいよ。形は違うとはいえ、仲間のために力になれるってのは……」


「そりゃ嘘だ。そうやって、自分を納得させてェだけだろ」






「……しょうがねえだろ。俺が今更麻雀頑張ったって、今のあの人らにとっちゃ足手まといに…」


「そう言って逃げてんだろ? 麻雀からも、過去からも、本気になることからも」






「……会ったばかりのあんたが、一体俺の何を知ってるって言うんだ…っ!」


「何も知らねぇ。それでも、分かることはある。あんな暗ェ顔して、下向きながら雑用してるやつが楽しんでるわけねェだろ」



なんだよ、『この人』。
いきなり人の領域にズカズカ入り込んできやがって。

尊敬している選手とはいえ、いきなり知った風な口利かれたら、俺だって怒るぞ?



『お前』には分かんないだろうよ。
挫折したことなんて、多分一回もないんだろ?



分かるかよ、分かってたまるかよ。



好きであれば好きであるほど。
本気であれば本気であるほど。

挫折したとき、辛ぇんだ。


上に行けば、上に行くほど。
高く飛べば、高く飛ぶほど。

墜ちた時は、痛ぇんだ。







「勝ちしかしらねぇ人生はさぞ楽しいだろうよ。Jrユースでも高校でも、負け知らずの『アンタ』ならなぁ…っ!」

………情けねぇ、どう見ても三下じゃねえか。



でも、これでいい。



俺はもう、本気になるのは辞めたんだ。

手を抜いて、楽しく、遊び半分で頑張るって決めたんだ。


嫌いになるくらいなら、本気にならない方がいい。
趣味の範囲なら、永遠に好きでいられる。



転んでも、立ち上がればいい。
墜ちたらもう、立ち上がれない。



夢見ねぇ方が…楽なんだ。





「好きなものが嫌いになるのがどんだけ辛いことか…『お前』には分かんねえだろ!!」

「あぁ、全くわからん」


「…………は?」


「俺はサッカー嫌いになったことなんか一度もねェからな。全っ然分かんねェ」





…………ほら見ろ。

やっぱ俺と『アンタ』は違うん……。






「…んで、もう一つ分かんねェことがある………。…………お前、ハンドボール嫌いなのか?」







…………………………え?






「負けるのが辛いのは分かる。好きなことが出来ねぇのが嫌なのも分かる。ケガなんて考えたくもねェ」



「でも。お前は本当に、それでハンドボールのことまで嫌いになっちまったのか?」

…………あの日。
ぶちり、と、音がした。
未来がねじ切れる、音がした。




あんなに好きだったのに、裏切られたと思った。
なんで俺がと、涙を流した。


俺のせいで、みんなが負けた。
俺がすべてを、台無しにした。


ハンドボールを見なくなった。
もう、思い出したくもなかった。


でも。
それでも……。

「嫌いになれるわけねーだろ」



「たった14年のしょーもない命でも賭けてたんだ。ハンドボールでなら、死んでもいいと思ったんだ」




「須賀京太郎は、ハンドボールと共に生きてたんだ」




「……俺は、ハンドボールが嫌いになったんじゃない…………」





「俺は、ハンドボールが出来ない、俺自身が嫌になったんだ」




「そんな俺は、もう死んだも同然なんだよ!!」

「そうか」


「……いや、そうかって…。アンタが話振ってきたんだろ?」


「別に俺はお前の過去になんか興味ねェしな。ただハンドーボールが嫌いなのか、純粋に疑問に思っただけだ」


「なんだそりゃ。それ聞いてどうなるってんだよ」


「どうにもなんねえよ。どうにかすんのは、お前だろ?」


「……………まぁ、そりゃそうだけど……」








「そもそもお前ハンドボールに命賭けてたくせに、ハンドボールやめても生きてんじゃねェか」


「うぐ……それはあれだ。若気の至り的な……」




「ラッキーだな。もう一回、命賭けれるぜ?」


「は?」


「ハンドボールしてた須賀京太郎は死んだんだろ? それでも命が残ってんだから、別のことに賭けてみりゃいーじゃねェか」

この人が言ってることは、ただの綺麗事だ。

これくらいのことなら誰にだって言えるし、誰も納得しない。




なのに…この説得力は、なんだ?







「麻雀だっけか? いいじゃねェか。次はそいつに命賭けてみれば」


「いや、だから本気になればそれだけ挫折した時が辛いって……」


「そん時ゃそん時だ。二秒で忘れりゃいい」


「無茶言うなぁ……」

「それに。ホントに頑張ってるヤツってのは、挫折しても周りが黙ってねェよ」


「…そんなもんか?」


「お前がケガした試合で、勝負を諦めた奴はいたか? お前がハンドボール辞めるって言った時に、すんなり受け入れてくれた奴はいたか?」


「………いなかったな」


「そういうこった。マジで頑張ってるやつってのは、自分が諦めたって、周りが諦めてくれねェんだ」

俺もそうだしな、と、吏人さんは呟く。






………そうだよな。
こんなにサッカーに打ち込んでる人が、挫折の一度や二度、経験してないわけがねーよな。


この人だって、折れそうになったことくらいあるだろう。
知り合いの心が、折れそうになるのに直面したことだってあるだろう。


それでも。
誰か一人でも立っていられたのなら。



立ち上がれる可能性は、きっと0じゃない。






「俺は、倒さねえとならねェんだ。焛童心亜を」


「……はぁっ!? いや、冗談はよせって!! 【あの人】に勝てるやつなんているわけ……」


「だから、俺だけは折れちゃいけねェんだ。俺が折れない限り、あいつに心折られたヤツだって、いつかきっと、立ち上がれる」

……道理で、この人の綺麗事には説得力があるわけだ。

この人の綺麗事は、汚れを知らない綺麗さじゃない。
何度も何度も、汚れて、穢れて。
それでもひたすら磨き続けてきた、どうしようもない、バカの綺麗事だ。








「かっこいいなぁ…畜生……」







「あ、京ちゃん。お帰り」



買い出しに行っていた幼馴染が、ようやく帰ってきた。





「遅い!! どこで道草くってたんだじぇ!?」


「悪いな。ちょっと二人ほど、道に迷ってる人がいて…」


「うわぁ…災難ねぇ」


「うち一人は携帯も持ってないみたいで…咲かと思いましたよ」


「わ、私だって携帯くらい持ってるもん!!」


「方向音痴は否定しないんだな…」


「うっ……」





しょうがないじゃん、迷っちゃうものは迷っちゃうんだもん。

なんもかんも、道が悪い。

「ま、すぐにタコス作るから待っててくれ」


「早くするじぇ!!」


「こら、優希。モノを頼む態度というものがあるでしょう?」


「うっ…ゴメンだじぇ……」


「ははっ、まるで親子じゃのう」


「ふふふっ。あ、なんか手伝うことある?」



進んで雑用を引き受けてくれるからといって、なんでも任せっきりにするのはよくないもんね。
そういって、京ちゃんの前に行った時、違和感に気付いた。

「あれ? 京ちゃん…その目……」


「ん? どうした、咲?」


「………ううん? 何でもない」






懐かしい輝き。
京ちゃんが一番輝いてたころの光だ。



中学最後の夏。

あの日、京ちゃんの瞳から、未来が消えた。


でも、今の京ちゃんの瞳からは、とても力強い意思を感じる。




まるで、翼を与えられたかのような、その瞳から。

「……ねぇ、まこ。気付いた? 須賀君…」


「おう。今までとは、なんか違うのう」


「なんか吹っ切れたみたいね…。……今なら、本気で麻雀に向き合ってくれるかも?」


「今夜あたり、一局誘ってみるか」


「えぇ。ようやく須賀君にも、心から麻雀を楽しんでもらえそうね」


「まぁその分、わしらの雑用が増えるっちゅうことじゃがのう」


「しょうがないわね。その辺は美穂子のことを見習うとしましょう」





「おい、吏人。」


「あ、うっス。佐治さん」


「さっきの金髪、誰だよ」


「まぁ、道を教えあった仲っス」


「はぁ? お前が道を教えるって……」







「そういえば…あいつは佐治さんに似てるかもしんねェっすね」


「はぁ? んだそりゃ」


「潜在能力はかなり高ェのに、自分で勝手に殺してる。バカっスね」


「テメェおいこら吏人ぉ。喧嘩売ってるなら買うぜェ?」


「んな時間ないっス。もう集合時間過ぎてるんスから」


「テメェが遅いからわざわざ迎えにきてんだろうが!!!」ゲシゲシ


「ほら、さっさとして下さい。一度勝ってるとはいえ、油断は禁物っスよ」


「たりめーだ。高円宮杯決勝でアイツぶっ倒すまで俺たちは負けられねーんだ。こんな、インハイ決勝なんかで躓くわけにはいかねェんだよ」


「その意気っスよ、佐治さん」











「折れんなよ、須賀。お前の翼は、お前だけのもんじゃねェんだからな」

カンッ!

靭帯断裂した人間に麻雀卓担がせる部長って…


ハンドボール界でも【あの人】有名なのかよ

清澄が畜生だという風潮、一理ない。
もしかしたら原因は京ちゃんの方にあるかもしれないという話。

京ちゃんと佐治君はいろいろ似てると思います。
潜在能力4は果たして出番あるのか。


短い話でごめんなさい。
ずっと温めてた、京ちゃんが中学のときサッカー部だったという設定の咲×LIGHTWINGスレが死んだので、建てました。


あと、ハンドボール知識は>>1のガキの頃の記憶と、wikipediaの記述を参照にしながら書きました。
間違ってたらごめんなさい。



HTML化依頼出してきます。




>>45
部長は京ちゃんの中学時代を知らないんです!!
清澄を安易に畜生にしてはいけません。


京太郎の異名は雑草魂(ネバーギブアップ)かな












­
後日閃








清澄高校が優勝した、その翌日。









「部長……麻雀が、打ちたいです」




吏人さんに会って、昔を思い出して。
本気になりたいと思った。

遊びだと割り切った麻雀で、本気になろうと思った。

貴女達と同じ舞台に、立ちたいと思った。




「俺に一から…麻雀を教えてください!!」




今更虫が良すぎる話なのは分かってる。
いずれ心折れるだろうことも予想が付く。

それでも、もう一度あの舞台を目指してみたいんだ。



「俺も全国優勝、目指してみたいんです!! 来年までに…強くなりたいんです!!」











「………何を甘えたことを言ってるの?」

………だよな。

つい先日まで、本気になることすら躊躇ってたやつがいきなり全国とか…信じて貰えるわけねぇよな。





「私たち、清澄高校は今年の全国優勝チームなのよ? 分かってる?」




分かってる。


俺なんかの練習に付き合うより、今いるメンバーの強化の方が大事に決まってる。
来年以降も勝つために、強いメンバーも集めなきゃならない。

俺なんかに構ってる時間なんてないはずだ。





「だから。貴方も今年、全国優勝しなさい」








それでも…それでも俺は、勝ちたいっ!! ………って。

…………え?




………………………………………………え?

「……何よ、その鳩が試合開始直後にボール奪われたみたいな顔は」


「言ってる意味わかんないです」


「来年まで待ってたら、私卒業しちゃってるじゃない」


「いや、だってもう全国大会は終わっちゃったじゃないですか」


「ふっふ~ん。そんなんだから、貴方は詰めが甘いって言われるのよ」


「言われたことないです」











「まだ国麻があるじゃない」


「あぁ、その手があったか……………うぇえええぇえええぇえええっ!?」

おま、国麻っつったら高校生最大の大会じゃねぇか!!


予選なら誰でも参加できるインターハイとは違う。

県から選ばれた精鋭を、さらに県予選で篩にかける。
強いヤツ同士で蹴落としあい、本当の強者が選ばれる、県代表。

そんな奴らだけで行われる、全国大会。



県で強いやつがいる高校が選ばれるんじゃない。
県で、上から順番に強いやつが出てくるんだ。






それだけじゃない。
国麻は高校生が参加する大会で唯一、参加者の規定がない。


学年だって関係ない。
男子も女子も関係ない。

そして、プロもその他も関係ない。






高校生の部活とは別に、県毎のプロのユースチームからも出場枠が設けられている。

つまり、公式大会で唯一、プロと部活がぶつかる戦いなんだ。

「男子の強い子は全員ユースにいる。だから県代表はほとんど女子から選ばれるわ。…そんな中、一人だけ男子として代表に選ばれてみなさい? ハーレムよ!! ハーレム!!」


「いや、そんな不純な動機で麻雀するのはどうかと……」


「あら、本気になりたくないから麻雀を選ぶってのは、不純じゃないの?」


「うぐ………不純デス……」







言うなれば麻雀版、高円宮杯。

部活麻雀の男子とは違う、ユースのヤバイ男子達が出てくる。
ニーマンやブルーメンタール姉妹、女子でも化け物クラスのやつらがユースから当然のように出てくる。

そして、白糸台と臨海、千里山と姫松と三箇牧。
全国トップの化け物たちが、一つのチームとして出てくる。


怖ぇよっ!!




怖ぇのに………。

「どう? これで優勝できたら、貴方は本物。掛け値なしの最強よ?」


「…………それはちょっとズルいですよ、部長」












「『最強』だなんて言われたら、目指すしかないじゃないですか」

「ま、なんにせよ。まずは基礎からね~。基礎は私と和が教えるわ」


「あ、はい」


「それから、対人における駆け引きはまこと優希に教わりなさい。デジタルとは違う景色が見えるはずよ」


「なるほど」


「それが終わったら、もう一度私ね。悪待ちとか、+αのテクニックを叩き込むわ」


「咲の出番はまだなんですね」


「いえ、咲とは毎回対局してもらうわよ?」


「あ、そうなんですか」


「えぇ。目標は、咲の±0を阻止しつつ一位になること」


「レベル高ぇ!?」







「私たちは優勝チームだから、きっと優先的に代表選抜のスカウトが来るわ。まずはそこで、予選に参加できるくらいの力はあるということを…」


「スカウトに見抜かれる程度には力をつけろってことですね」


「そーゆうこと。話が速くて助かるわ」

上に行けば、上に行くほど。
高く飛べば、高く飛ぶほど。

墜ちた時は、痛ぇんだ。





それでも。
墜ちてる間はきっと。
風が、気持ちよさそうだ。

吏人さん。

次は、同じ高さで逢いましょう。



最強の座で、待っててください。

カンッ

蛇足。



京太郎…お前まさか、世界最強になる気か…………!!

みたいな話。





もうHTML化は出してるので、あとは消滅を待つばかりです。
それでは今度こそ、さようなら。





>>46
知名度だけなら、宮永照クラスの有名人ってことで。
競技知らなくても名前は知ってる、みたいな。


>>50
須賀から連想されるスサノオノミコト(統治領域が海原だった)と掛けて
"神の海の英雄(ワイルド・ルーラー)"
なんてよくない? どう?

あ、今更ながら。
設定捏造注意です。

それでは。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom