ユミル「キュンとしたいお年頃ってか?」(122)

クリスタ「ふふっ」ニコニコ

サシャ「クリスタ、どうしたんですか?ずいぶんとご機嫌ですね」

クリスタ「サシャ、これ見て!」ヒラッ

サシャ「わぁ!きれいな花柄のハンカチですね!街で新しく買ってきたんですか?」

クリスタ「これ、アルミンがくれたの!」エヘヘ

サシャ「アルミンもなかなかやりますねー。で、なんでユミルはぐったりしてるんですか?」

ユミル「……」グテー

クリスタ「私をからかい疲れたみたい。放っておいても大丈夫だよ」

サシャ「そうですか。それにしてもアルミンはクリスタに告白でもしたんですか?」

クリスタ「ち、違うよ!アルミンの足にすり傷があったから私のハンカチを貸したんだけど、洗って返してくれたのとは別に新品を一枚買ってプレゼントしてくれたの」

サシャ「あー……さりげないプレゼントって憧れちゃいますね!」ウットリ

ミーナ「へー、サシャにもそんな感性があったんだね」クスクス

サシャ「し、失礼ですね!私だって山奥育ちとはいえロマンチックな事くらい考えたりもしますよ」

ハンナ「正直言ったらちょっと意外かも。サシャはご飯が最優先って感じに見えるから」

ミーナ「ね、何か体験談はないの?キュンとしちゃった話とか!」

サシャ「う~ん……あ、確かこんな事がありましたね」

・・・・・

サシャ「お腹すきました……」グゥ

コニー「野営訓練で携帯食を初日の昼で食いきるバカは口を開くな」ムスッ

サシャ「日帰りかと思ってたんですってばぁ」グッタリ

コニー「それがバカだって言ってんだろうが!野営訓練だぞ、野営!朝出発して夜に兵舎にいるのはただのピクニックだろ!」

サシャ「怒らないでくださいよ~お腹すいちゃいます」

コニー「普通腹が減るのは怒ってる方だろ……」ゲンナリ

サムエル「火の用意が出来たぞー。サシャ、やっぱり少し食糧を分けてやろうか?」

サシャ「サムエル!本当ですか!?」パアァ

コニー「おい、このバカを甘やかすなよ。それに俺たちと違ってお前は山道が苦手だろ?サシャは自業自得だ、得意な山道なら飯抜きでも歩けよな」

サシャ「それもそうですね……サムエルの体力がもたなくなったら困りますし」ガッカリ

サシャ「サムエルの体力がもたなくなったら困りますし……」ガッカリ

サシャ「サムエルの……」ガッカリ

コニー「だぁぁぁ!何回もしつこいっつーの!もう俺たちを寝かせろ!最初の火番はお前なんだからな!」

───


サシャ「で、私が翌朝目を覚ましたら何故か私のカバンには携帯食が一食分入っていたんです」

ミーナ「えー!それってサムエルが入れてくれたって事?」ワクワク

ハンナ「それは結構キュンとくるかもね」

サシャ「いえ、それが携帯食を分けてくれたのはコニーだったんですよ」

クリスタ「え!?本当に!?」

サシャ「はい、私も驚いて最初はサムエルのところにお礼に行ったんですが、自分ではないって彼も驚いていて……」

サシャ「私がコニーに聞いたらすごいムスッとした顔で──」

──コニー「訓練の日程位ちゃんと聞いておけよな。俺は天才だから一食くらい抜こうが何の問題もなく歩けるが……次も同じ班になれるとは限らねーからな」プイッ

サシャ「──って言われたんです。勿論自分の注意不足に不甲斐なさも感じましたけど、不覚にもキュンとしましたね」

ミーナ「わぁ……」キュン

クリスタ「……いいっ!」キラキラ

ハンナ「“同じ班になれるとは…”ってことはぁ……ふふっ!ごちそうさま!」キラキラ

ユミル「ケッ、てめぇが食い意地はってたってだけの話じゃねぇか」

クリスタ「もう!わからないならユミルは黙ってて!」

ユミル「へいへい」ハァ

ミーナ「叱責、からの優しさ。これはくるね!」ウットリ

クリスタ「あのコニーが、っていうところも高得点だね」

サシャ「……思い出したら少し恥ずかしくなってしまいました///」

ミーナ「このぉ!サシャも青春しちゃってますなぁ!他には?誰か私にキュンキュンエピソードを聞かせてよ!」

ハンナ「あ、私フランツの話ならいっぱいあるけど!」

ミーナ「無し。毎晩聞いてるからフランツはお腹いっぱい」

ハンナ「そんなぁ……聞いてよ」ショボン

ミーナ「別の人の話ならいいけど?」

ハンナ「うーん……あ、そういえばこんな事があったよ!」

・・・・・

ハンナ「くっ……重い……」フラフラ

ハンナ(普通この量の資料なら手伝いは二人呼ぶでしょ!?一人で運べとか酷いよ……)フラフラ

???「……重そうだね。手伝うよ」スッ

ハンナ「わ、ありがとう!……ってベルトルト?」

ベルトルト「うん。これは次の座学用?」

ハンナ「そうなの。時間もないから一気に運んだんだけど思ったよりも大変で。どうもありがとう」

ベルトルト「気にしないでいいよ」

ハンナ「……」スタスタ

ベルトルト「……」スタスタ

ハンナ(フランツ以外の男の子と二人っきりで歩くのって初めてかも)

ベルトルト「……」スタスタ

ハンナ(ベルトルトもフランツみたいに身長高いんだなー)

ベルトルト「……どうかした?」

ハンナ「!何でもないよ。その……ベルトルトも背が高くてフランツみたいだなって思って」

ベルトルト「ああ、二人は付き合ってるんだったね」

ハンナ「うん」

ベルトルト「……じゃあ今は僕をフランツだと思ってみたら?」

ハンナ「……え?」

ベルトルト「好きな人と一緒だと思ったら資料の重さも忘れるかも」フフッ

ハンナ「!」

──


ハンナ「──っていうことがあったの。冗談言い合うほど話した事はなかったから少し新鮮で……正直ちょっとドキッとしたわ」

クリスタ「ベルトルトって物静かだよね。私も殆ど話したことないけど優しいんだ」

ユミル「根暗なんだろ」ケケケ

ミーナ「うーん、なんかいい雰囲気ね!ユミルはチャチャいれないの!他には?誰か話してー!」

ハンナ「そういうミーナはどうなのよ。自分がキュンとした体験はないの?」

ミーナ「私!?私は特に……あ、そういえばこんな事があった!」

・・・・・

ジャン「今回はチーム戦なんだからな、足引っ張るんじゃねぇぞ!」

コニー「一番を目指すぜ!」

ミーナ「……はーい」

ミーナ(立体機動でこの二人についていけるわけないじゃない)ハァ…

ジャン「行くぞ!」パシュッ

コニー「おう!」パシュッ

ミーナ「わ!待って待って!」パシュッ

ジャン「ミーナ!遅れてるぞ!?」

ミーナ「ハァ、ハァ……ごめんなさい!」

ミーナ(ついて行くのでやっとだよぉ……)

ミーナ「うっ!」バシッ

ミーナ(枝が避けきれなくて痛い……)グスン





ミーナ「結局遅れて足を引っ張っちゃってごめんなさい」ショボン

ジャン「……」

コニー「まぁ四位だったんだし、気にするもんでもねえよ」

ミーナ(ジャン怒ってたなぁ……)

ジャン「おい、ミーナ」

ミーナ「あ……」ビクッ

ジャン「……怒りにきた訳じゃねえからそんなにビビるなよ」ハァ

ミーナ「え?じゃあ何か……」

ジャン「悪かったな、上手いこと誘導出来なくてよ」ムスッ

ジャン「ちょっとスピードに特化し過ぎちまって……お前にはきつかっただろ?」

ミーナ「あ、うん……私が未熟だからついていけなくてごめんなさい」

ジャン「そうじゃねぇよ。探せばもっといいルートがあったはずなんだ」

ミーナ「……?」

ジャン「枝にぶつかったんだろ?……顔に傷つけちまって悪かったな」プイッ スタスタ…

──


ミーナ「──っていうことがあったの。枝を避けきれなくて頬から血が出てたのが気になったみたいね」

ミーナ「正直兵士になってから生傷も絶えないし、今更心配されるとは思わなかったから……へへっ///」

サシャ「な……なんかいいですね!私怒鳴られたことしかありませんよ!」

ハンナ「へぇ、あのジャンがねぇ。……普段とのギャップにキュンとしちゃうわね!」

ミーナ「まぁ本命はミカサなんでしょうけどね」クスクス

クリスタ「わかりやすいもんね」クスクス

ユミル「よし!今度この話であいつをからかってや─モガッ」フガフガ

クリスタ「いーじーわーるーしーなーいーのー!」ホッペグイグイ

ユミル「いはい!いはいお、ふりすた!」ヒリヒリ

ミーナ「ユミル、本当にやめてよ?話したのがバレたら私が怒られるわ」ブルブル

アニ「……」ソーッ…

ミーナ「あ、アニ!なんで無言で部屋を出ようとするのよ!」グイグイ

アニ「わ、私は興味ないから!」グググッ

ミーナ「最初から輪に入ってずっと大人しく聞いてたじゃない!話を振られそうだからって逃げないの!」グググッ

アニ「あんたたちも知ってるでしょ。私は男と話すこと自体少ないから……わっ」ドサッ

ミーナ「はい座ってー!じゃあキュンとまではいかなくてもいいから、なんか優しくされた体験とか!とかとか!」

アニ(……このテンションのミーナにはいつも勝てない)オシリヒリヒリ

アニ「えーと……困ったな。うーん……あ」ピコーン!

ミーナ「やっぱりあるんじゃないの!何?」ワクワク

アニ「この前ライナーが高い場所の本を取ってくれた」

ミーナ「……つまんない。次!」

アニ「……マルコがハンカチを拾ってくれた」

ミーナ「次!」

アニ「……講義中に寝てたらトーマスが起こしてくれた」

ミーナ「も~~~!ちょっとアニ!これならハンナのフランツ日記読んでた方が面白いわよ!?」

ハンナ「ミーナ!?何で日記の事知ってるのよ!いやぁぁぁぁあ///」カアァ

意を決して投稿始めると眠くなる不思議

また来ます
レスくれた方どうもありがとう

続きはります

ちょっと話の毛色が変わるのでガッカリさせたらすまぬ

アニ「……」ドヨーン

ミーナ(気の毒になってきた……)

アニ「ハッ!これなら!……」ガタンッ

ミーナ「!立ち上がる程自信があるのね!?」ワクワク

アニ「訓練兵になりたてで、初めて行軍訓練をした日の夜……」

ハンナ「うんうん!」

アニ「経験した事が無かった疲労に、思わず兵舎の隅で吐いてしまったんだけど……」

ミーナ「……」ゴクリ

アニ「ダズが吐瀉物を代わりに片付けて“医務室にいっておいで”って言ってくれたことがある!」キリッ

一同「うーん……」

アニ「これもダメ……?」

クリスタ「あ……うん、よく考えたらすごく感動的な話かも……?」

ミーナ「内容は悪くないんだけど……何なの?この不思議な感じ。キュンまでいかない、いけない壁があるような」ウーン

サシャ「私の中の狩人は反応しませんでしたね」

ハンナ「はっきり言うとコレジャナイって感じ」ズバッ

ユミル「私はお前に問いたい。お前自身はそれでキュンとしたのかと」

アニ「うぐっ……」ウツムキ

・・・・・

ユミル「はっ!終わってみりゃ皆大した話じゃなかったな!」フンッ

ミーナ「ユミル!あんた自分が話してないくせに文句言わないでよねー」プンスカ

クリスタ「ふふふっ、でも色んな男子の名前が出たね。皆結構優しいのかも」

ハンナ「あれ?そういえばエレンの名前は出なかったね」

ユミル「あの巨人バカの名前が出たところでアニレベルだろ」ケッケッケ

アニ「!……私レベルって何?」イラッ

ユミル「そのまんま、あんたがさっき話した日常レベルの優しさ程度だろって事さ!」ヒッヒッヒ

ミカサ「聞き捨てならない」ニョキッ

アニ「!」ズササッ

ユミル「うおっ!?いたのかよミカサ」ドキドキ

ミカサ「ベッドで横になっていたの。ユミル、エレンの優しさは留まるところ知らない。さっきのは訂正してほしい」ジーッ

ミーナ(ヤバっ!さっきジャンの本命はミカサとか言っちゃったよ。ジャンごめん)

ユミル「おま……だ、だったらその体験を話せよ。内容聞いてみなきゃ判断出来ねえだろ?」ニヤニヤ


ハンナ「エレンのキュンキュン話って貴重なんじゃない?聞いてみたいかも」

ミーナ「ちょっと期待」ワクワク

ミカサ「私の大切な思い出だけど仕方がない……エレンの名誉の為に聞かせてあげる」

ミカサ「そう、あれは私がまだエレンと家族になって間もない時のこと……」

───


ミカサ(お父さん……お母さん……)グスッ

エレン「ただいまー」

カルラ「お帰りなさいエレン、遅かったわね。……何か言うことがあるんじゃない?」

エレン「……」プイッ

カルラ「こんなに夜遅くなるまで帰らないで……しかもエレン、ミカサと一緒にいてあげてって言ったのに置いて行っちゃったんですって?ミカサはまだ街に不慣れなんだから……」

エレン「ふ、不慣れだからついて来ない方がいいんだよ!」

カルラ「こら!だったらあんたが案内してあげなさい!」

ミカサ「おばさん、私が悪いの……私がお花を見てたせいでエレンとはぐれちゃったんだから」ショボン

エレン「そうだそうだ!ミカサが悪っ……痛い痛い!」バタバタ

カルラ「エーレーンー!?女の子には優しくしなさいっていつも言ってるでしょ!?」ホッペギュー

エレン「わかっは!わかっはってば!……あぅー痛かった」ヒリヒリ

エレン「ミカサ!その……はぐれたの気づかなくて悪かったな」

ミカサ「エレン、謝らないで」

───


ミカサ「──と言う事があった」

ユミル「……おい、今までで最低レベルのキュンキュンじゃねえか?」

クリスタ「キュンキュンと言うよりむしろ……置き去りにされた話?」

ミーナ「うーん……」

ハンナ(フォローのしようがない……)

アニ(よし!私以下がいた)グッ

ミカサ「待って欲しい。これにはちゃんと続きがある」

・・・・・

ミカサ「エレン、謝らないで。……足がとっても汚れてるけど、大丈夫?」

エレン「!……何でもねーよ!」ダダッ

カルラ「またミカサにそんな事言って!あんたは泥だらけなんだからさっさとお風呂入っちゃいなさい!」プンプン

ミカサ「……?」

──…翌日

エレン「遊びいってきま~す」

ミカサ「あ、待って!私も……」

エレン「……今日はついてくるなよ」ボソッ

ミカサ「!……うん、わかった」ショボン

エレン「……」タタッ ガチャッ バタン…





ミカサ(置いていかれちゃった……おばさんもお隣さんに呼ばれて出掛けちゃったし、近くだけでもお散歩しようかな)トテトテ

ミカサ(あ、やっぱりこのお花きれい)

ミカサ(あ、大きい蝶々!)

ミカサ(川キラキラしてる)

──


ミカサ(あ、あれ?……ここどこ?)

ミカサ(また道わからなくなっちゃった……)キョロキョロ

ミカサ「……エレン」ボソッ

ミカサ「エレン!」

ミカサ「……」ウルッ

ミカサ「エレーン!!!」ウワーン!

エレン「!みつけたっ!なんか声が聞こえると思ったら……このバカ!また迷子になったのかよ!」

ミカサ「!……エレン!」ギューッ

アルミン「エレン!あ、この子がミカサ?」

エレン「ああ。いきなり走り出しちまって悪かったな」

ミカサ「あ……」モジモジ

アルミン「やあミカサ、今日も迷子だったの?でもすぐに見つかって良かったね。またエレンが泣いて探し回るところだったよ」ニコッ

エレン「……っ!言うなよアルミン!」ワタワタ

ミカサ「……?」

アルミン「昨日君とはぐれた時もエレンは大慌てでね、僕の家まで来て“大変なんだ!一緒に探してくれ!”って大泣きで遅くまで探し回って……」

エレン「ぬぁぁぁぁあ!アルミンのバカ野郎!///」ダダダダッ

ミカサ「エレン、どこに行くの!?」オロオロ

アルミン「大丈夫だよ、恥ずかしがってるだけだからすぐ戻ってくるよ」クスクス

ミカサ「……アルミン、じゃあエレンは昨日ずっと私を探していてくれたの?」

アルミン「うん、エレンも混乱したみたいで随分的外れな場所を探しちゃったよ。最後に話を聞いた人から君がカルラおばさんと一緒に居るのを見たって聞いて安心して帰ったんだけどさ」

ミカサ「私、買い物帰りのカルラおばさんに会って寄り道して帰ったから……どうしよう私のせいで」ウルッ

アルミン「大丈夫だよ、エレンはそんな事をひきずるような性格じゃないから」

エレン「……ミカサ、今日はもう帰るぞ」ボソッ

アルミン「ほらね?すぐに帰ってきただろ。もうミカサを置いていったりしないはずだよ」ニコッ

ミカサ「……ありがとうアルミン」

エレン「アルミン、今日はもうこいつと一緒に家に帰ることにするよ。悪いな」

アルミン「いいよ、じゃあまた明日ね、エレン。あとミカサも」

ミカサ「あ……ごめんなさ……」オロオロ

エレン「いくぞっ」グイッ

ミカサ(私のせいで帰ることに……?また迷惑掛けちゃった)ショボン

エレン「こっちだ」グイグイ

ミカサ「……」トテトテ

エレン「ついたぞ」

ミカサ「?……ここは野原だよ?」キョトン

エレン「いいからお前はここで待ってろよ」タタッ

ミカサ(何か探してる……)

エレン「……あった!」ガサゴソ

エレン「ほら、これやるよ」スッ

ミカサ「!これ、私が見てたお花……」

エレン「ああ、お前が見てたのは人んちの花壇の花だったから。ここにも少しだけ咲いてたのを思い出してな」

ミカサ「……貰っていいの?」

エレン「……昨日置いていった詫びだ」プイッ

ミカサ「これを探すから今日は連れて行ってくれなかったの?」

エレン「……見つからないかもしれないモンを目の前で探すなんて格好悪いだろ?」

ミカサ「格好悪くなんてない、エレンはすごく格好良い」ニコッ

エレン「!へへっ……帰るぞ!」

ミカサ「うん!」

───


ミカサ「──ということがあり、今に至る。そしてこれがその時エレンからもらった花。おばさんに押し花にしてもらった」ドヤァ

クリスタ「いいなぁ!思い出の品が残ってるなんて羨ましい」キラキラ

ハンナ「王道って感じね」ウンウン

ミーナ「いい体験談持ってるじゃな~い」クスクス

アニ(……負けちゃった)ショボン

ユミル「いやいや、花一輪だろ?それって安上がりって言うかよぉ……使い古されたやり方っていうか……」シドロモドロ

ハンナ「ちょっとユミル……」

クリスタ「もう!なんでユミルは素直に話を聞けないかなぁ」プンプン

ユミル「だってエレンだぜ?きっと深い考えもなくくれてやったに決まって──」

ミカサ「ユミル、エレンにだって花を選んだ理由は勿論ある。私はその話を聞いた上で、この花を貰ったの。でもその話は私にとって大切過ぎるので簡単には話したくないだけ」

ユミル「うぐっ……ハッ、わかりました、わかりましたよお嬢さまがた。気持ちを共有出来なくて残念だなーってか?」ヨッコイショ

クリスタ「ユミル、こんな遅くにどこに行くの?」

ユミル「便所だよ便所。遅くなったら先に寝ててくれて構わないからな」スタスタ

クリスタ「そう……気をつけてね」

ミーナ「じゃあ私たちは話を続けようか!……アニ!逃げない!」ガシッ

アニ「私もトイレ……」グググッ

ミーナ「もっとキュンキュン度の高い話をしたらトイレに行かせてあげるっ!」グググッ ドサッ

アニ「」オシリヒリヒリ

─────
───


ザッザッザッザッ…

ユミル「ふぅ……」ストン

ユミル「なんだよ皆して……」

ユミル「携帯食糧なんて所詮は支給品じゃねぇか」

ユミル「荷物ぐらい誰でも手伝うだろうが」

ユミル「顔に傷ついてたら心配すんのは当たり前だろ?」

ユミル「中途半端な優しさなんて無駄だっつーの」

ユミル「……」

ユミル「花なんてそこら中に……」

ユミル「花なんて……」

ユミル「……」



ユミル「羨ましいよぉぉぉ……」ゴロゴロ

ユミル「なんで私にはキュンキュンする体験談がないんだ!」

ユミル「花とか……貰ったこともねぇ」

ユミル「押し花にして残すとか卑怯だろ……覚えておこう」

ユミル「あーちくしょうミカサめ!」

ユミル「あいつが一番縁が無いと思って油断してたけど、幼なじみの男が二人もいるとかよく考えたら無双状態だろ」

ユミル「しかも花。あのエレンが花!」

ユミル「……エレンって“あいつ”に似てるんだよなぁ」ショボン

ユミル「せっかく明日になったらあいつに会えるのに……超楽しみにしてたのに……」

ユミル「もう月刊オトメ兵団読む気しなくなってきた。定期購入やめようかな」ガッカリ

ユミル「……でも今月号のあいつはかなり気になるんだよな。それ見て決めようかな」

ユミル「定期やめると定期継続特典がなくなるし……でもでもぉ!」ウガァァ


月刊オトメ兵団──…

それは少女達の恋愛聖書。
様々な少女達の甘い恋愛模様が綴られた内地で大人気の読み物である。

定期購入で配達を受けることも可能なそれは、各地の訓練所の図書室には毎月新刊が2冊置かれる。
しかし自分で所有したい者も多く、訓練所内の個人定期購入者はかなりの数にのぼっていた。

───


月刊オトメ兵団で連載中の少女漫画『ユメルは秘密のドッキドキ☆プリンセス』

~先月号までの概要~

お忍びで城を抜け出したおてんば姫ユメルは、街で騎士エルンストと出会う。

次第に惹かれ合う二人……しかし隣国との戦争の為、出兵の日が迫るエルンスト。
出兵の前日を最後の逢瀬と決め、別れを告げる為にいつもの野原で待ち合わせた。

その時彼はこの国にしか咲かない、しかし国中に咲いている野の花一輪をユメルへと手渡しこう言った……

──この花が敵に踏みにじられる未来を防ぐ為、私はこの命を掛けてでも敵を倒して参ります。
この国で一番愛されているこの花は、人々の慰めであり、守らねばならない特別な存在……まるで貴女のようですね、姫様。
それではお元気で──


え~!?
エルンストはユメルが姫だと気づいていた!
身分を隠していたことを謝りたいのに、もうユメルには彼と話す時間が残されていない……
戦争へと向かったエルンストは無事に帰って来てくれるの!?

次回『姫を忘れたエルンスト』
乞うご期待!

暇なの?訓練兵団

ユミル(最初は図書室での暇つぶしに手にとっただけの雑誌……)

ユミル(巻頭での第一話、自分に似た名前が気になって読んでみたらとんでもなく甘い恋愛話だった)

ユミル(黒髪で強い瞳をした騎士エルンスト……なんか知ったような奴がいるなとバカにして見てたけど……)

ユミル(読み終わる頃には主人公に感情移入しまくってエルンストに惚れてる始末)ハァ

ユミル(先月号で花を貰ったのは私……いやいやユメルだったのになぁ)

ユミル(実際は何年も前にミカサが貰ってましたってか?冗談きついぜ……いやいやエレンはエルンストじゃないけども)

ユミル(ないけども……)ショボン

ユミル(もう私の中のイメージがユメル=私じゃなくてミカサになっちゃったからなぁ)

ユミル(続き読みたくねー……)ハァ

ユミル「もう……助けてエルンスト」ボソッ


エレン「よう、頭抱えて何やってんだ?」

ユミル「ほあちゃっ!?」ビクッ

エレン「」ビクッ

ユミル「な、な、な、な……なんだよお前夜中に!」

エレン「オレは自主トレの帰りだよ。お前こそどうした?座り込んで腹でも痛いのか?」

ユミル「ケッ!色気のねぇ心配の仕方だな」

エレン「……そりゃ便所の前で小さくなって座ってりゃそう思うだろうが」

ユミル(ぐっ……そういや寮から出て営庭前の便所に来たんだった)

エレン「本当に腹が痛いんじゃないんだな?辛いなら強がり言わない方がいいぞ?」

ユミル「腹が痛いんじゃなくて花が欲しいんだっつーの」ボソッ

エレン「あ?」

ユミル「何でもねーよ……もう一人にしてくれ」ヒラヒラ

エレン「お、おう。お前も早く寮に帰って寝ろよ?見回りに見つかったら大変だからな」スタスタ…

ユミル(色気の無さは……結局自分のせいか)ハァ

──翌日・夕飯

クリスタ「一日通しでの行軍訓練が一番キツいよね……」グッタリ

ユミル「まぁ飯が進まねぇのは確かだな」ズズッ

クリスタ「知ってる?エレン、行軍訓練の最中に教官から叱責されて、罰則で訓練と同じ装備背負って今走らされてるんだってさ」

ユミル「割と高確率で死にそうな話だな。また水でもやりにいくのか?」

クリスタ「もし私が食べ終わっても来なかったら、ちょっと様子でも見に行こうかなー……」チラッ

ユミル「ご苦労なこって……好きにしな。私は行かないけど」

クリスタ「でもさ、ユミル……」

ユミル「んあ?」モグモグ

クリスタ「こういう所から生まれる“キュン”っていうのも、あるんだよ?」

ユミル「ブフーッ!」ビシャッ

クリスタ「きゃぁっ!」

ユミル「クリスタ!お前何をいきなり……っ!」

クリスタ「だ、だってユミル、昨日キュンとした体験談が話せなかった事が寂しそうに見えたから!それにユミルげっかん……っ!」

ユミル「こーむーすーめーがぁー!私の事は放っておけ!」グリグリ

クリスタ「いやぁ~頭グリグリ痛い~!」イヤイヤ

クスクス…
ユミルガアバレテル
モットヤレー!

エレン「何だよユミル、元気そうだな」ゼーゼー

ユミル「!」

クリスタ「エレン、すごい汗だよ?大丈夫?」

エレン「あ?おう、走り終わったばっかりなんだ。汗臭かったらごめんな」

ミカサ「エレン、席はこっちにとってある」

エレン「ありがとな。でも一旦着替えてからまた来るからよ」

ミカサ「?じゃあ早く着替えた方が……」

ユミル「ったく……汚ねー格好で来るんじゃねぇよ」ケッ

エレン「だから悪かったって。まぁとりあえずユミル、これ」スッ

ユミル「!」

クリスタ「わぁ!綺麗な花だね。こんな鮮やかな赤は初めて見たかも……」

ミカサ「エレン!?一体どうして……っ!」オロオロ

エレン「ん?ユミルが元気になるようにと思って。カバンに突っ込んだからちょっとくたびれちまったけど」

ユミル「……なんだって?」

エレン「昨日一人で頭抱えるぐらい落ち込んでただろ?」

ユミル「チッ、言うんじゃねぇよクソッタレ……それでなんでこんな花になるんだよ?」

エレン「この花は嫌いか?」

ユミル「!別に嫌いじゃないが……」

エレン「本当はお前の好きな花が分かれば良かったんだが好みなんて知らないし。訓練中に目を引く花があったから取って来たんだ」

クリスタ「……もしかしてそれで罰則受けたの?」

エレン「花はバレないように荷物に入れられたんだけどな。一人でルート外れたのが見つかっちまって」

ユミル「……」

エレン「ほらユミル、早く受け取れよ。オレ着替えてくるから」

ユミル「……そんなもんで慰めになるかよ」ケッ

クリスタ「!ユミル!?もう、なんでいつも……」オロオロ

エレン「なるに決まってる。オレが思いを込めたからな」

ユミル「!」

エレン「医療で人を癒せても、花より人を慰められはしない。そうオレの親父が言ってた」

エレン「そしてオレの母さんも、思いのこもった花に優るものはないと言っていた」

エレン「だからこそ、オレは慰めたいと思った相手に花を贈るんだ」

ザワザワ…

アルミン「……エレンここが食堂だって忘れちゃってるのかな?」ガタガタ

ミカサ「エレンそれは私だけの大切な思い出……なぜ話してしまうの……」フラフラ

ミーナ「これはすごい!期待大!」ゴクリ

ハンナ「ちょ……見えない!」ゲシッ

フランツ「痛っ!ちょっとハンナ、座りなよ……どうしたの?」オロオロ

ガヤガヤ…

ユミル(過酷な条件下で傷つくのも厭わずに摘まれた特別な花!!)※訓練and罰則

ユミル(くっそ欲しい!あいつは王子か!?いやエルンストだから騎士なのか!?)メダパニ

ユミル(でも食堂ってなんだよ!?いやむしろアリなのかシチュエーション的には!?)

ユミル(でもダメだ……私にだってイメージってもんがあるんだ!)ギラッ

ユミル「よく聞けよ、この劇場版死に急ぎ野郎!(さよなら私のお花ちゃん!)」ビシッ

エレン「ゲキジョウバ……?な、なんだよ」ビクッ

ユミル「私は──(本当は──)」

エレン「あ、マジで花いらなかったか?」

ユミル「こんなもん押し花にしてやろうかぁっ!(そんなモンいらねえ!)」イタダキマス!パッ

エレン「おう……ん?」

コニー「押し花?アルミン、それってすげー大事にするって事か?」

アルミン「……勢い的には蝋人形にしてやるって感じだったけど、たぶんそうだね。ちゃんと花受け取ってるし」

ワァァァァァ!
ユミルガウケトッタゾ!
コクハクセイコー!
…アレコクハクナノカ?

ユミル(しまったぁぁぁぁぁ!)

クリスタ「ユミル……」キラキラ

ハンナ「ユミル……」キラキラ

ミーナ「ユミル……」キラキラ

アニ(……)チッ

ユミル「そ、そんな目で見るんじゃねぇぇぇえ!///」ドタドタドタ…

クリスタ「待ってよー!」キラキラ

ハンナ「いいネタが出来たじゃない!」キラキラ

ミーナ「話そう!とことん!」キラキラ グイグイ

アニ「は、離して……ぐぇ」ズルズル

エレン「……」フフッ

アルミン「エレン、何で君一人だけそんなに穏やかな顔してるの?何したかわかってるの?」バカナノ?

エレン「え?だって相手が受け取って、場が盛り上がれば成功だろ?」

アルミン「……何それ」

エレン「親父が母さんに花をあげたとき、思いを込めて渡したら母さんが受け取って、酒場は大盛り上がりだったって」

エレン「母さんもその時貰った花に毎日慰められてるって言ってたしな」

アルミン「その時ってまさか……」

エレン「母さんが結婚を決めた時だってさ。それぐらい貰って嬉しいもんならあいつも元気になるだろ」ハハッ

アルミン(それはグリシャさんがプロポーズの為の花だから思いを込めたんだろぉぉぉ!?)マッシロ

ユミル(とんでもないことになった……)トボトボ

ユミル(……)チラッ

花(……ナンスカ)

ユミル(でも綺麗だなぁ)ウットリ

クリスタ「ユミル捕まえた!」ガシッ

ユミル「!」

ハンナ「さぁさぁ!部屋で昨日の続き!私遠くにいたから声があんまり聞こえなかったし、詳しく話してよね!」

ユミル「ふざけ……っ!」バタバタ

ミーナ「逃がさないわよ~?今日は今月号のオトメ兵団読みながらゆっくり話しましょうよ!」



ユミル「……え?」

ミーナ「月刊オトメ兵団!今日届いたからもう枕元にユミルの分は置いておいたわよ!」

ユミル「え?……なんで読んでるのバレて……え?」

ミーナ「え?私結構前から郵便担当してるし……」

クリスタ「……もしかして隠してたつもりだったの?」

ハンナ「一人で楽しみたい派なだけかと思ってた」ビックリ

クリスタ「ユミルって『ユメルは秘密のドッキドキ☆プリンセス』が好きなんだよね?前読者コーナーに感想投稿してたし……」

ミーナ「その漫画だけ切り取って保存してるしねぇ?好きなんでしょ?」

ユミル「」

ユミル(バレてないと思ってたのに!)

ユミル(切り取ったのも毎回荷物の一番下に隠してたのに!)

ユミル(っていうか全然オトメ兵団の話なんかしてなかった癖になんで……)ギギギ…

クリスタ「!ダメだよユミル!そんなに握り締めたらお花が傷んじゃうよ!?」

ユミル「ハッ!」ワタワタ

ハンナ「ユミル、お花貰っちゃってユメル姫みたいだね!」

ミーナ「あー!なんかデジャヴ激しいと思ったら確かに先月号みたいな展開だったね!」

ユミル「……」ワナワナ

ミカサ「ユミル……」スッ

ユミル「!ミカサ……」

ミカサ「あなたの本心を知りたい」

ユミル「私は……っ!」

ユミル(私は……)



ユミル「エルンスト格好良いよな……///」ボソッ

クリスタ「ねー!」キラキラ

ミーナ「オトメ兵団で一番だよねー!」キラキラ

ハンナ「正直最高だよねー!」キラキラ

アニ「……」コクン

ミカサ「完全同意」ガシッ

ユミル「お、おう」ガシッ

ハンナ「よーし!皆で話そうね!」

クリスタ「ユミルが最初だね!」

アニ(エレンの前で落ち込んでこよう)ソロソロ…

ミーナ「今夜は寝かさないからね!」ガシッ ズルズル

アニ「うぐっ……」ズルズル

ミカサ「ユミル、今回の事はエルンストに免じて許そう……後で押し花の作り方も教えよう」

ユミル「わ、悪いな……」


ユミル(初めてのキュンキュンはちょっと刺激が強すぎたから……)

ユミル(もうちょいこいつらとレベルアップしていくかな)

ユミル(ま、一応乙女の一員として……)





おまけ


クリスタ「ユミル、オトメ兵団の包み開けていい?」

ユミル「ああ、構わないよ」


キャー!エルンストガタオレタ!
キオクソウシツ!?
リンゴクノヒメ!?
ナニソレ!?
イヤァァァ…

ユミル「あ、お前ら折り目つけるなよ!?あとサシャは物食いながら読むからあいつには渡すなよ!?」

サシャ「もう見てます」モグモグ

ユミル「やめてぇぇぇぇ!」イヤァァァ…


おしまい

お粗末様でした

進撃ss11作目です
前作はミカサ「行方」でした。

>>76
死線をさ迷う彼らが暇な訳ないですよね
暇なのは間違いなく私の脳内です

レスいただいた方、読んでくれた方、ありがとうございました!

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