男「僕らのヒーロー、激臭マン!」 (7)

「キャー!助けて!怪人よ!」

2XXX年

怪人・怪獣
数十年前。
それらの存在が突如として現れた世界。

世界の秩序は乱れ、人々は恐怖した。

怪人「こいつは上玉じゃねえか……。宇宙市場でも高値が付きそうだ」


蹂躙される地球人社会。
なす術もなく、逃げ惑う人々。

「待て!そこまでだ!」


そんな状況に終止符を打つべく、各国政府は一つの対策を打ち出した……。

それが……。

激臭マン「正義の味方!激臭マン!」


ヒーローである。



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怪人「そんな弱っちいなりして、俺と遣り合おうってのかい?」

激臭マン「御託はいい。早く、その子を離すんだ!」


女「」

怪人「そうはいかないねぇ」


口から出した粘着性の糸を女性に巻き付けると同時に
怪人は激臭マンに向かって駆け出す。

そのスピードは、怪人の後方に残像を残すほどのものだった。

怪人「邪魔なんだよ、お前!」

怪人は、鋭利な刃物の様な腕を激臭マンへと向ける。
二人の距離は見る見るうちに縮まる。

激臭マンが怪人の間合いに入る。

怪人「ぐっ!」


激臭マンとの距離はおよそ1m。
怪人は突然倒れこみ、
勢いをを[ピーーー]こともできずに、アスファルトの上を滑っていく。

激臭マン「俺の臭いを甘く見たこと……。それが貴様の敗因だ」

アスファルトにより、全身に裂傷を負った怪人。
激臭マンは怪人の顔に口を近づけ、大きな吐息を吐き掛ける。

怪人「ぐ、ぐあああああ!!!」


数秒の間、怪人の断末魔が辺りを支配する。

激臭マンは怪人が絶命したことを確認すると、女性の糸をやさしくほどく。

激臭マン「大丈夫かい?怪人は倒した。安心していいよ」

女「」

激臭マンの腕の中で、女性は気絶していた。

激臭マン「余程、怖かったんだね、可哀想に」


激臭マンはそっと女性を横たえ、去って行った。


今日も、世界の平和は彼らヒーローの存在により守られている。

---

男は一人、新聞を広げコーヒーを口にした。

コーヒー豆は臭いをリセットする作用がある。
フレグランス等、いくつもの臭いをかぎ分ける専門家たちは
コーヒー豆の効能により、臭いの感覚をリセットし、いくつもの香りを評価し、選別する。

脂ぎった頭皮が朝日にきらめく。
その、ぬったりとした光沢の上を幾筋かの髪の毛が這うように生えている。

「ヒーローランキング、激臭マンは現在12位か……」

男の吐息に、コーヒーカップから上がる湯気が揺らいだ。

「まだまだだな。俺も」

男は自嘲気味に笑みをこぼし、濃いブラウンのテーブルへとカップを置いた。
水面には波紋が広がり、カップに一筋の筋が伝った。

原 太(はら ふとし)42歳

職業はヒーロー。
激臭マンといえば、名の知れたものだった。


各国の援助の下、設立された「国際英雄機構」
彼らヒーローはその機関の一員として、日々命を懸けて働いている。

新聞、ニュースでは、彼らの日々の活躍をランキング形式にして発表しているものもある。


ランキングに意味はない。
ただ、それをモチベーションに、誇りに働くヒーローもいる。

激臭マンもその一人なのだ。

---

爆発音と共に上がる黒煙。
その黒は炎の赤を抱え、轟々と上がり続ける。

怪人「……」


怪人はまるで、固まった溶岩のような姿をしていた。
ゆっくりと歩くたびに、皮膚はひび割れぽろぽろと破片が落ちる。
真っ黒な体表に入った日々からは、オレンジがかった炎が噴き出す。


太(こんなところに、怪人が……)

太は左腕にした怪人レーダーを見た。
反応はない。

太(レーダーに反応しない?なぜ?)


怪人「……」

怪人は無言で建物に手をかざす。
その手からは大きな火の手が上がった。

太(そんなことは後回しだ!)

麗らかな昼下がり。
突如として、地獄絵図へと変わりゆくオフィス街。

そんな光景を止めるべく、太は手を高く掲げた。

太「変身!」

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