妹「お姉ちゃんが帰って来た」姉「何か飲みものちょーだい」 (42)

姉妹、百合、ホラー、コメディです。 書きためなしです。



姉「たっだいまー!」

妹「わー! おねえちゃああああん!! お姉ちゃんだあああ!!」

姉「妹ちゃんに会うのも、3年ぶりだね!」

妹「大阪で大手の自動車会社受かって、一人でなんでも決めて……メールで『またね!』はさすがに辛かったんだから!」

姉「だ、だって私だってさ、面と向かってさよなら言うのって慣れてないんだもん。悲しいじゃん、それってさ。だから、最後は潔くすぱっとね」

妹「そういう性格なのは知ってるけどね……おねえちゃああああん!」

姉「だあああ! うるさいわ!」

妹「お姉ちゃんぺろぺろさせてえええ!」ガシッ

姉「あんたがそんなんだから、最後のお別れもあんな感じにしたんだから…… こ、こら離れなさい!」


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妹「ここを愛の巣にしようねええ!」

姉「そーよ、あんたなかなかいい部屋に住んでるじゃん」

妹「お母さんがさ、大学生の女の子はちょっと小奇麗な方がいいでしょって」

姉「あたしんときは、あんなに一人暮らし反対してたのにさ……」ブツブツ

妹「だって、お姉ちゃんそそっかしいから」

姉「言っておくけど、この3年大手で鍛えられた私の精神力は半端じゃないんだから」

妹「まあ、そんなことはどうでもいいから、玄関先で立ち話もなんだから上がってよ」

姉「おい、こら……よ、お邪魔しまーす」

リビング――


姉「おー、カウンターキッチンとか憧れるね」

妹「だよね! やっぱりお姉ちゃんなら分かってくれると思ってた」

姉「所でさ、飲み物何かない? すごく喉か湧いててさー」

妹「ミネラルウォーターしかないけど、それでもいいなら」

姉「おお、贅沢品だ」

妹「そう?」

姉「そうだよー、お湯をお沸かしなさいな」

妹「面倒だもん」

姉「スイッチ一つ、簡単じゃんか」

妹「家電って苦手なんだよね。はい、お水」

姉「嘘コケ……お、ありがとうね」ゴクゴク

妹「で、さ」

姉「うん?」

妹「あのー、なんでいきなり帰って来たの? しかも、お母さんには内緒って」

姉「じ、実はね……」

妹「う、うん」

姉「し、失業しました!」

妹「リストラ!?」

姉「言い直す必要はないと思うけど、そう、リストラさ!」

妹「……ど、どうして」

姉「そ、それが仕事でちょっとぽかやってさ……いずらくなっちゃって……」

妹「さっき、精神力が上がって言ってたところなのに?!」

姉「面目ない」

妹「そ、そんな……大学出てからお姉ちゃんの所に新妻ごっこしに行こうと思ってた私の計画は……」

姉「そんな物騒な遊び止めたげて……」

妹「路線変更して、お姉ちゃんを養う方向で……」

姉「あー、確かに失業したけど……大丈夫、たぶん、なんとかなるよ。面倒見てくれる人も当てがあるし、保険とかも」

妹「でも、今現在は?」

姉「浮浪中ですね」

妹「だよね……可愛いお姉ちゃんのためだからずっとここにいて欲しいけど……やっぱりお母さんに」

姉「わあッ……それは、もうちょっと待って、お願い! 何でも言うこと聞くから!」

妹「うッ……そんなニンジンぶら下げられても……言うこと聞いちゃうのは私のほうなんだからね!」

姉「妹ちゃんは、本当に私のことが好きだね!」

妹「うん、たぶん世界で一番愛してるよ」

姉「……お姉ちゃんはたまに、心配になるよ……」

妹「世の中には、結婚せずに姉妹でお家建てて暮らしてる人たちもいるんだよ。全然心配ないよ」

姉「そういうことではなくてね……まあ、妹ちゃん可愛いからどこぞの馬の骨には渡せないけど」

妹「お姉ちゃんも私のこと大好きだね」

姉「否定はしませんよ」

妹「あ、お姉ちゃん夕ご飯まだ?」

姉「あー、食べてきたからいいよ」

妹「そうなんだ。着替えとか持ってきてる?」

姉「実は、身一つで勢いよく来ちゃってさ……」

妹「スーツのまま?」

姉「うん」

妹「ほんと、そそっかしいなあ」

姉「えへへ……」

妹「じゃあ、私の服でお姉ちゃんを食べちゃうことにするね」

姉「お、おう」

妹「もー、変態だこいつみたいな目で見ないで欲しいな」

姉「ごめんごめん」

妹「ちょっと、パジャマとかいろいろ持ってくるねー」

姉「不束者ですが、よろしくお願いします」

妹「お任せあれッ」

トタタタ――

姉「……変わらないなあ」

姉「もう、大学生なんだ。早いなあ」

姉「3年も経ったんだ。がむしゃらに頑張ってきたもんね……」

姉「立ち止まって見れば、あっという間だなあ」

『お姉ちゃんー? ジャージでいいかな? 体系そんなに変わらないから大丈夫だよねー?』

姉「あー! 大丈夫だと思うよ!」

『はーい!』

姉「ありがとねー!」

『あ……これいいかもうえへへへッ……」

姉「……なに?」

トタタタ――

妹「お姉ちゃああん」

姉「どうしたの、猫なで声で?」

バッ

妹「この、猫パジャマ着て欲しいにゃー」

姉「……20代半ばの私にそんなものを着ろと?」

妹「似合うとか似合わないとか問題じゃないんだよ?」

姉「?」

妹「お姉ちゃんが着るからイイ! の」

姉「お助け……」ソロソロ

妹「逃げても無駄だもんね」

姉「あひい」

妹「じゃあ、さっそく試着タイムと」

姉「試着しなくてもいいよ」

妹「え?」

姉「え?」

妹「……」

プチプチ――

姉「お、こらなんで無言で私のボタンを脱がし始めた!?」

妹「いいからいいから」

姉「もー、自分でやるから、あっち行って」

妹「恥ずかしがらなくてもいいのに」

姉「妹ちゃんにやらせるのが怖いだけですー」

妹「私って、信用ないんだねえ」

姉「うん」

妹「……ペロペロ!!」

姉「やめえ!」

妹「昔は、着せ替えなんて普通にやってたのに……」

姉「妹ちゃん、よく覚えてるね。それ、小学生の時だっけ?」ゴソゴソ

妹「そうだよ。それで、その時、お姉ちゃんの体でお医者様ごっこをして以来……」

姉「……っしょ、お、意外と着れるね、これ」

妹「お姉ちゃんの身体以外、興味が無くなって」

姉「んしょ」ゴソゴソ

妹「今も昔もお姉ちゃんが大好き」

姉「どう、着れてる?」

妹「微動だにしないお姉ちゃんも好きだよお。うん、着れてる。ぴったりだね。すっごく可愛い。今日、一緒に寝ようね」

姉「え、ベッド狭くなっちゃし、悪いよ」

妹「くっついて寝ればいいだけだよ」

姉「やんわり断ってるのわかってるくせにー」

妹「それでも一緒に寝るのが私なのもわかってるくせにー」

就寝時――

ベッドにて

姉「妹ちゃん、明日大学だよね」

妹「うん。あ、合い鍵明日渡すね」サワサワ

姉「妹ちゃん、さっきからお姉ちゃんの猫耳ずっと触ってて飽きない?」

妹「うん、なんだかお姉ちゃんから生えてるって思ったら……止まらないよ」

姉「寝なくていいの?」

妹「お姉ちゃんが寝たら寝るよ。そういう風にできてるの」

姉「また、珍妙な」

妹「お姉ちゃんこそ、寝れる? 大丈夫?」

姉「何が?」

妹「不安なことあったら、私の所に来るの知ってるよ……小さい時も、お母さんに心配かけさせたくないんだよね」

姉「……うわッ……恥ずかしいな。バレバレかあ」

妹「誰にも言わないよ。今は二人の秘密だもん」

姉「妹ちゃん……」

妹「……怖いの怖いの飛んでいけー」

姉「妹に頭を撫でられる私って……」

妹「ぺろぺろの方がいい?」

姉「いえ、思う存分撫でてください」

妹「よろしい」

姉「……」モゾモゾ

妹「?」

姉「ぎゅうっと……」

妹「ふふッ、くすぐったい」

姉「妹ちゃん、やわっこくなったねえ。女の子だ」

妹「お姉ちゃんの方がよっぽど乙女だよ」

姉「……妹ちゃん、あのね」

妹「?」

姉「もし私に子どもができたらどうする?」

妹「え、お姉ちゃん子どもできたの?」

姉「も、もしだよ。もし」

妹「……そうだね」

姉「……うん」

妹「お姉ちゃんと同じくらい、可愛い可愛いって言ってあげるかなあ。だんなさんはね、威嚇しちゃうかも」ニコ

姉「そっか、へへ」

妹「嬉しそうだね」

姉「それが聞けて嬉しい」

妹「変なお姉ちゃん」

姉「ごめんごめん。もう、寝るね」

妹「また、言いたくなったら言ってね、色々」

姉「うん」

妹(う……ん)

妹(なんだろ……喉が湧いたな…)ゴソゴソ

妹(お姉ちゃんは……)

姉「すー……」

妹「寝てるね……起こさないようにっと」

姉「っしょ……」

ギシッ――

妹「……ねむ」

トタトタ――

妹「……お水お水」

妹「お昼のラーメンが濃すぎたかあ。夜にお水飲んだらむくんじゃう……」

ガチャ――(冷蔵庫を開けた)

妹「……っと」ヒヤッ

子ども「……」

妹「え?」クルッ

妹「……なに」

妹「気のせいか」

妹「お姉ちゃんが子どもができたなんて言うから、もう」

こぽこぽ――

妹「ッん」ゴクゴク

妹「……ぷはッ」

妹「早くお姉ちゃんの温もりを感じに行かないと……うふふ」

妹「嬉しいな……ほんとに、突然いなくなったから」

妹「お姉ちゃん、少しでも役に立てたらいいのに……」

トタタ――

次の日――

姉「わたし、夕方まではちょっと行くところあるから」

妹「職業安定所?」

姉「痛いところをついてきますね」

妹「どこでもいいけど、帰り遅くならないでね。心配だから。これ、合い鍵」

姉「ありがとう。大丈夫、二人の愛の巣に必ず帰ってくるよ」ニコ

妹「本心じゃなくても、言ってくれるお姉ちゃんが好き!」ニコ

姉「はっはっは!」

妹「じゃあ、行ってきまーす」

姉「うん」

妹「行ってきますのちゅーは?」

姉「……チュッ」

妹「お姉ちゃんの投げキッス頂きました。ごちそうさまでした」ホクホク

ガチャ――バタン


姉「そんなのでいいのか、妹よ」

とある大学――

妹「……」ゴクゴク

友「妹ちゃん、今日やけに飲むね」

妹「うん、昨日からすごく喉が渇くの」

友「……」

妹「なあに?」

友「ううん、気のせいかな」

妹「そう? たぶんね、昨日たくさんしゃべり過ぎたんだと思うの。あと、お昼のラーメンのせい」

友「お姉さん帰ってきてるんだっけ?」

妹「そうなの……」二へラ


友「まあ、嬉しそうな顔」

妹「妄想の中だけで、もう満足しなくていいと思ったら」

友「……お姉さんは大変だね」

妹「ううん、お姉ちゃんはねそれが好きなの」

友「ほおー」

妹「妹にいじられるの好きな人なの」

友「確信に満ちてるね」

妹「そういう風になってるの、私たち。両想いっていうことだね」

友「あんた、彼氏作らないと思ったら……そっちの人だったの」

妹「お姉ちゃんは特別なんだよ」

友「友人として、アドバイスできることは何もないけど、まあ頑張れ」

妹「うん……あ、友ちゃん」

友「なに」

妹「今度、お姉ちゃん紹介するね」ニコ

友「あざーす」ニコ

夕方――


妹「ただいま……って、鍵しまってるし、お姉ちゃんいないか」

トタトタ――

妹「ふー……」

妹「お姉ちゃんがいると、いないとでこんなに違うんだ……」

妹「心なしか部屋が広い……」

妹「外で食べてくるのかな……」

妹「お金あるのかな……」

妹「……」ウトウト

妹「ねむ……」

妹はソファに横になる。

妹「昨日……変な時間に起きたから……」コテ

妹(……ん)

妹(なに……なんだか、体が重い)

妹(……)パチッ

子ども「……」

妹「!」

妹「ひ……」パチパチ

妹「あれ……」

妹「夢?」

妹「……あ、また喉からから……」

妹「汗が出てるわけでもないし……」

妹「なんだろ……」

妹はキッチンへ移動する。

妹「……あれ、水出したっけ……」

シンクが水で濡れていた。

妹「お姉ちゃん、一回帰ってきたのかな……」

妹は冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出す。

妹「あれ、何か減り早いなあ……お姉ちゃんかな」

コポポ――

妹「……っと」

妹「……」ゴクゴク

コト――

妹はコップを机に置いた。

コツンコツン――

妹「え?」

その時、コップを握っていた手にぞわりと違和感を感じた。妹は反射的に手を引っ込めた。

子ども「……」

コップを子どもの手が掴んでいた。

妹「……え」びくッ

妹が瞬きを一度終えると、その手はすぐに消えた。

妹「……あれ?」

妹「白昼夢……?」

妹「わたし……お姉ちゃん帰ってきて、相当舞い上がってるみたい……」

ガチャ――

姉「ただいまー」

妹「あ、お姉ちゃん!」

姉「疲れたー、お水ちょうだーい」

妹「口移し?」

姉「うん、お願いって、そんなわけあるかーい」

妹「えへへ」

妹「お仕事見つかりそう?」

姉「え……ああ」ゴクゴク

妹「焦らないでね。私はいつでもどこでもお姉ちゃんの味方だよ」

姉「ありがとう」

妹「あ、今度ね、私の友だちお姉ちゃんにも紹介するね」

姉「うん……ありがとう」

妹「今日は夕飯は?」

姉「あ、いいよ。もう食べてきてるから」

妹「私の手料理、そんなに食べたくないんだ……」

姉「違う違う。今、ちょっとお腹壊してるから。下手なもん食べれないの」

妹「ううッ……やっぱり」

姉「こらこら……また、今度お願いね」

妹「うん!」

妹「あ、お姉ちゃん明日は暇? 私、学校ないから映画見に行かない?」

姉「映画か……いいね、行こうか」

妹「やったあ! 映画館でなら暗すぎて何してるかわからないしちょうどいいよね」

姉「何するつもりなのかな?」

妹「何してほしいのかな?」

姉「映画、普通に見せてほしいなあ」

妹「はいはい、わかってるもん」

姉「……妹ちゃんは、彼氏とかつくらんのかね?」

妹「お姉ちゃんこそ」

姉「……今はいいかな」

妹「じゃあ、私も」

姉「困ったねえ……」

妹「お姉ちゃんに彼氏できたら、報告してね」

姉「……うん」

妹「速攻で潰しに行くから。色々再起不能にしてや・るもん」

姉「妹ちゃん、君はいったいどこへ行くのかい?」

今日はここまでです。たぶん2・3日で完結します。

妹「お姉ちゃんと一緒ならどこへでも」

姉「……ほんとに?」

妹「?」

姉「妹ちゃん……あの」

妹「なあに、改まって」

姉「私が…‥」ごくッ

妹「う、うん」

姉「もし、妹ちゃんより先に……」

妹「……?」

姉「あ……いや、なんでもない! 忘れて! わはは!」

妹「えーなにそれ!?」

姉「ごめん、ごめん。ちょっち、姉妹の絆を試そうと」

妹「良くわからないけど、そんなのしなくたって大丈夫だもん」

姉「そっか、そうだよね。ふふ」

妹「変な、お姉ちゃん」

姉「妹ちゃん、大好きだよ」

妹「お姉ちゃんがデレた!」

次の日――


映画館――


妹「お姉ちゃん、早く早くー!」

姉「待って、待って!」

妹「どの映画見るー?」

姉「妹ちゃんの好きなのでいいよー」

妹「じゃあじゃあ、プラトニックな恋愛系で……」

姉「お姉ちゃん、身の危険を感じるんだけど」

妹「やだなー、何もしないもん。ただ、お姉ちゃんの隣に座って、見てるだけ。お姉ちゃんを」

姉「映画見ろよ」

妹「映画も見るって。あ、チケット買ってくるから、ここで待てしててね」

姉「わん」

妹「……わんって」

姉「わんわん」

妹「その可愛さは反則かも……何か食べるものいる?」

姉「ううん、大丈夫」

妹「そう? 私はポップコーンでも買おうかなあ。欲しい時は言ってね」

姉「わん」

妹「抱き付いてもいい?」

姉「んー、だめ」

妹「生殺しだよ!」

『ノーモア! 映画泥棒!』


妹「お姉ちゃんはさ、休みの日はいつもどうしてたの?」

姉「休みの日か。なんだろ、いっつも寝てたかな」

妹「やっぱり、そんなにお仕事忙しいの?」

姉「そうだね。けっこう残業で夜遅くまで残ることもあったしね」

妹「そっか、癒しが必要だよね。私みたいに可愛い姉想いの癒しが」

姉「妹ちゃんは十分私のオアシスだよ」

妹「ほんとに?」スリスリ

姉「ほんと、だから暗がりに紛れて太ももとか胸とかお腹とか撫でまわさないこと」

妹「ちぇっ」

姉「あ、始まるよ」

スクリーンに楽しそうな男女が移っている。船の上、客船のようだ。
抱きしめ合って、キスをしている。

妹「……」

姉「……」

突然、女が急に胸を押さえて蹲った。男が彼女の名を呼びながら、場面がフェードアウトする。

妹「……」ごく

女は原因不明の流行病にかかっていた。男はそうとは知らず、女とずっと一緒にいたことを後悔し、別れを宣告した。

妹「……」

姉「……」

女の腹には子どもがいた。その子どもが病にかかっているかはわからなかった。女はそれを家族に打ち明けた。女の両親はすでに他界していた。女には、たった一人妹がいた。女は妹に子どもを育てて欲しいと言い残して、死んだ。妹は狼狽して、しばらく生まれたばかりの子どもを見つめていた。妹は姉のことを何も知らなかった。なぜ、病にかかったのか。なぜその男と付き合うことになったのか。妹は姉のルーツを探しに出かけた。その赤ん坊とともに。

妹「……」ヒヤッ

妹「?」クル

妹(気のせいか)

姉「……」


――――――――




ガヤガヤ――


映画館の外――


妹「はー……はらはらしたけど、最後二人が幸せになって良かったよ」

姉「そうだね、まさかハッピーエンドになるなんて」

妹「お姉さんのためにあそこまでできるなんて、妹の鏡だと思うの」

姉「はは……」

妹「でも一つ残念なのが、映画に集中し過ぎて、お姉ちゃんの手をぎゅっと握ったり、ぺろってしたりするの忘れてた」

姉「そんなアクションの必要な所はなかったよ、妹ちゃん」

妹「あったよ、お姉ちゃん。今思い返せば、盛りだくさんだったんだもん」

姉「一度、妹ちゃんの視点に立って、世の中を見てみたい……あ、妹ちゃん、この後どうする?」

妹「素敵なカフェを予約してます」

姉「紳士!」

妹「ふふんッ」

カフェ――

姉「うわあ! うわあ! 何これ、可愛い!」ダンダン!

妹「でしょでしょ! 羊さん型の白ハンバーグ! 予約客限定なんだよ!」

姉「こっちの、きりんさんチーズケーキもやばいよおッ」キラキラ

妹「お姉ちゃんが喜んでくれて嬉しい……!」

姉「向うじゃ、時間なくてカフェとか全然行かなかったからなー……」

妹「大変だったんだね、ホントに」

姉「そうなの、うっかり居眠り運転した時は、ホントにどうしようかとね」

妹「お姉ちゃん、眠眠打破でもなんでもいいから飲んでおいてね」

姉「そうだね、まあ、もおどうしようもないけど……あはは」

妹「お姉ちゃんがいなくなったら生きてる意味なくなっちゃうんだから、ダメだよ? 私より先に天国行ったら」

姉「うん、そうだね……って、妹ちゃんはまたそんなこと言って」

妹「……言うのはタダだもん、いいでしょ?」

姉「……妹ちゃんてさ、どうして私のことそんなに好きになったの?」

妹「え、何急に」

姉「どーしてかなーって思って。妹ちゃんがこのまま私にべったりで、彼氏とかできなかったらどうしようかとも思うし」

妹「んー、お姉ちゃん覚えてるかなあ」

姉「?」

妹「昔、私が男の子に姉妹でべったりしてて気持ち悪いってからかわれたことあったんだよね」

姉「そうだっけ……?」

妹「そうなんだよ……でも、お姉ちゃんね泣きながら帰って来た私を、ずっとよしよししてくれたの。それが、きっかけだったかな」


姉「……」

妹「記憶にございませんって顔」

妹は姉の頬を引っ張る。

姉「いひゃい」

妹「ほんとに、それはきっかけだったの。それから、お姉ちゃんの優しさに気づいたの」

姉「へー……」

妹「私、こんな感じだから人にちょっと敬遠されちゃうこともあるんだよ。だって、世間一般的にお姉ちゃんが好きだなんておかしいもんね」

姉「分かってたんだ」

妹「納得はしてないもん」

姉「妹ちゃんらしい」

妹「お姉ちゃんって、口ではなんだかかんだ言う人だけど、本心から私のこと気持ち悪いとか思ったことないでしょ?」

姉「そんなんこと思うわけないじゃん」

妹「……ね、でもその思わせぶりが……お姉ちゃんから離れられない理由かも」

姉「私のせい?」

妹「うん」

姉「ごめんね」

妹「許さないもん」ニコ

夕方――

海岸沿い――

ザアアア

二人は砂浜に腰を降ろして夕日を眺めていた。


姉「そろそろ陽が暮れちゃうね……」

妹「うん……」

姉「帰ろっか」

妹「あ……待って」

姉「うん?」

妹は砂浜に、文字を描いた。

妹「お姉ちゃん、私……本気なんだよ」

姉「……」

妹「分かってるよね。だから、正直に言って欲しいの」

姉「うん……」

姉も砂浜に何か描こうと指を滑らした。けれど、文字になる前に素早く指でかき消す。姉は何も言わなかった。妹は待った。漸く姉が口を開いたのは30分程経ってからだった。

姉「……ごめんね」

妹「いいよ、謝らないでよ……ッ」

姉「……」

次の日――


妹が学校から帰宅した時のことだった。妹の友人も一緒だった。


リビング――


妹「ただいまー、お姉ちゃん?」

友「こんにちはー」

妹「……?」

友「……ねえ」

妹「なに?」

友「いっつも、そこのキッチンで水飲んでるでしょ……」

妹「うん……そうだけど」

友「すっごく小さい子が、口開けて待ってる……」

妹「え」

妹はカウンターを見た。そこには、何もいなかった。

姉がいなくなった日の夜、実家から一本の電話があった。


それは、姉が大阪の病院で昨日亡くなったこと。
交通事故で、車が炎上。その中に取り残されたらしい。
車も大破し、焼けただれて、身元がわかるのに苦労したと。
母も突然の知らせに動揺していた。

母はこうも言った。
姉の子どもは無事だったと。







終わり

読んでくれてありがとう。いつも唐突に終わってすまん

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