サシャ「やった! 『透明になる薬』の完成です!!」(316)


サシャ「植物由来の十数種類の漢方薬……それと、何種類もの動物の肝を乾燥させた生薬……」

サシャ「ふふふ……仕上げに、この数十年に一度だけ咲くと言われているリュウゼツランの花……」

サシャ「それを乾燥させて粉末にした物を加えれば、我が家の秘伝『透明になる薬』の完成ですよ!」

サシャ「…………」

サシャ「なーんて……こんな怪しい薬、効果が有る訳ないんですけど。」 ハァ…


サシャ「家を出る時にこっそり秘伝書を持ち出してはみたものの……こんな迷信レベルの代物が書かれてるとは思いませんでした。」

サシャ「ま、作っちゃったんで、飲むだけ飲みますけど……」 ゴクン

サシャ(苦ッ!! 苦い上に舌がピリピリしますよ!?)

サシャ(舌がおかしくなったら味が分からなくなる……ご飯の楽しさが激減ですよ……)

サシャ(鏡で異常が無いか確認しておかないと……)

サシャ「…………」← 鏡に映っているのは服だけ。


サシャ「ふぇっ!?」 パッ!

サシャ「も、戻っちゃいました……? え、今のは目の錯覚……?」

サシャ「まさか、本物……? もう一度試してみましょう……」 ゴクン

サシャ(苦ッ!! まっず!!)

サシャ「…………」← 鏡に映っているのは服だけ。

サシャ「ひぇぇぇぇぇ!!」 パッ!

サシャ「あ、戻っちゃった! まさか、しゃべったら駄目なんでしょうか。」

サシャ「薬はまだまだありますし……これは色々と確かめてみる必要がありますね……」 フッフッフ…


『透明になる薬』

【服用上の注意事項】

① 透明になれるのは自分の肉体のみ。

② 口に含んだ物や飲み込んだ物は透明になる。

③ しゃべったら効果が無くなる。腹から声を出すとアウト。小声や囁き声程度なら問題なし。

④ 効果時間は不明だが、休日を使って計測した所、少なくとも丸一日以上はもつ。

⑤ 一度の服用は小さじ半分程度で充分。





サシャ「うん。ざっとこんな感じですね。これだけわかってれば大丈夫でしょう。」

サシャ「これは使い方次第で面白い事になりそうですよ……」 フッフッフ…



―――― それからしばらく後の夕食 ――――


アルミン「昨夜、また出たらしいよ……」

ジャン「おいおい、マジかよ……」

エレン「出たって、何が?」

アルミン「エレン、知らないの!?」

ミカサ「……………………」

エレン「え、いや、何の話だよ……」

ジャン「やめとけ、アルミン。ガキに教えて寝小便でもされたら堪らねぇよ。」

エレン「なんだとこの野郎!」

ミカサ「エレン……あなたは知る必要の無い事。気にしないで。」

エレン「ミカサまで何だよ! 俺だけ仲間外れとかやめてくれよ!」


ライナー「おい、また教員が寝込んだんだって?」

ベルトルト「これでもう5人目だよ……」

エレン「ライナー、ベルトルト。お前たちも知ってるのか?」

ライナー「なんだ、エレンは知らないのか。いや、あくまで噂なんだが……」







エレン「ゆ、幽霊ッ!?」 ガタタッ!!

ミカサ「……………………」

アルミン「うん……もう何件も目撃情報が出てるんだ……」

ライナー「噂じゃ、死んだ訓練兵が化けて出たって話だぞ……」


エレン「そ、それで教員が……」

ベルトルト「うん、かなりの数の教員がノイローゼになってるらしいよ。」

エレン「で、でも、ゆ、幽霊なんて、い、いる訳ないだろッ!?」 カチャカチャカチャ

ミカサ「大丈夫だから。エレン、落ち着いて。」

ジャン「だから言ったろ。ガキは知らない方が良いってよ。」 ニヤニヤ

エレン「お、お前だって、俺と同い年だろうが!!」

ジャン「年齢じゃなくて中身の話をしてるんだよ、俺は。」 ニヤニヤ

エレン「ぅぐっ……!」


ライナー「だが実際、教員の被害は深刻らしくてな…マズい事に俺達にも影響が出そうだぞ。」

ジャン「何だよ、俺達にお祓いでもやれってのか? 無茶言うなよ。」

ベルトルト「いや、そうじゃなくて……教員が倒れてしまったから、食糧庫の見張りが足りないみたいなんだ。」

ベルトルト「それで、もしこれ以上教官が倒れるようならだけど……代わりに僕たちに見張りの役目が課せられそうなんだよ。」

エレン「み、見張りって! 夜中に教員が一人でやってるやつだろ!?」

ライナー「ああ、報酬として少しばかりの給金と翌日の休みをもらえるらしいが……」

アルミン「流石に幽霊騒ぎの中で志願する人はいないだろうね……」


コニー「何言ってんだよ、お前ら。幽霊なんかホントにいる訳ないだろー?」

ライナー「ほう、それならコニーが志願したらどうだ?」

コニー「別に幽霊なんか怖くねぇけど、一人で食糧庫の前で徹夜は御免だな。退屈すぎる。」

エレン「そ、そんなこと言うなよ! 志願者がいなかったら、誰かが指名されるなり、クジ引くなりする事になるんだぞ!?」

コニー「なんだよ、エレン。怖いのか?」 ニヤニヤ

エレン「こ、ここ、怖くなんかねぇよ!! ゆ、幽霊なんか、い、いる訳無いんだからな!!」 カチャカチャカチャ

ジャン「アホか。スプーン震わせながら強がり言ってんじゃねぇ。」


アルミン「あれ、ミカサ……そのパン残すのかい? 珍しいね。」

ミカサ「いえ、これは――――」

サシャ「あ、ミカサ。そのパンもらって良いですか?」

ミカサ「ええ、これはあなたのために残しておいた分だから。」

サシャ「それじゃあ、ありがたくもらって行きますね。」~♪

エレン「なんだ? サシャに借りでも作ったのか?」

ミカサ「ちょっとしたお礼のような物。エレンは気にしないで。」

エレン「ふーん。」





サシャ(よしよし……どうやら良い感じに噂が広まっているようですね……)

アニ「これは私からの分。」

ミーナ「あ、こっちは私のね。」

クリスタ「はい、サシャ。今夜もお願いね。」

ユミル「ほらよ、これで良いだろ。」

サシャ「ありがとうございます、みなさん! ではいただきます!!」 モグモグモグ!

サシャ(四分の一ずつでも、5人からもらえばパン1個以上になりますからね。) フッフッフ…

マルコ「あれ? どうしてサシャにパンを渡したんだい?」

サシャ「ふふふ、いわゆる交換条件ってやつですよ。」 モグモグ

マルコ「?」



―――― 女子寮就寝時刻 ――――


サシャ「では、そろそろ用意しましょうか?」

クリスタ「うん! お願いね、サシャ。」

サシャ「私もみなさんに気に入ってもらえて嬉しいですし。」

ユミル「しっかし、お前に香作りの才能があったとは意外だった。」

ミーナ「しかも凄く効き目があるよね。朝までぐっすりだもん。」

アニ「おかげで疲れもよく取れるからね。悪くないよ。」

ミカサ「寝覚めも良いし、訓練に集中できるのはありがたい。」

サシャ「えへへ、私もその代わりにパンを頂いてるんで、大満足ですよ。」

サシャ(この香も秘伝書のレシピの通りにハーブを配合しただけなんですけどね……) シュボッ


クリスタ「うーん……いつもながら良い香り……それじゃあ、みんな、おやすみなさい……」 スヤスヤ

ユミル「おう、お休み……」 スヤスヤ

サシャ(鎮静効果と睡眠効果のある香ですからね……みなさん朝までぐっすりって訳ですよ。)

サシャ(こっそり布団に忍ばせた特製のマスクを使い、私は香を吸わないように気をつけて、と……)

ミカサ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

アニ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

ミーナ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

クリスタ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

ユミル「」 スゥ…スゥ…スゥ…

サシャ(そして、みなさんが寝静まったのを見計らい、私は部屋を出るのです……) フッフッフ…





サシャ(さて、そろそろ食糧庫です……周りには誰もいませんね……) キョロキョロ

サシャ(では『透明になる薬』を服用して……うげっ、相変わらず酷い味です……) ゴクン

サシャ(外で裸になるのも慣れてきました……何事も順応出来るもんなんですねぇ……) ヌギヌギ

サシャ(後は茂みに服を隠して、と……) ガサガサ

サシャ(冬だったら凍死しちゃいますよ……今が夏で助かりました……)


教員a(幽霊なんか、ただの噂だ……!) ガクガク

教員a(そんなもの、本当に存在する訳が無い……!) ブルブル

サシャ(おやおや、見るからにびびってますねぇ……それでは、今日も気絶するほど脅かしてあげますからね……) ニヤニヤ


                         <カツン…


教員a「ひぃっ!」 ビクッ

教員a「だ、誰だ!?」


                         <カツン…
                

                         <カツン…カツン…


教員a「だ、誰かいるのか!?」 ビクビク


サシャ(ふふふ……木に小石をぶつけてるだけなんですが……怖がってますね……) クスクス

教員a「く、くく、訓練兵か!? い、悪戯なら罰則だぞ!!」 ビクビク


                         <カツン…カツン…カツン…


教員a「に、逃げるんじゃないぞ! 今そっちに行くからな!」 ブルブル

サシャ(狙い通り、こっちに来ましたね……おっかなびっくり歩いている、そこに!!) サッ!

教員a「ひぎゃぁぁああああああああ!!」 ビクーーン!!

サシャ(目を見開いて驚いている所に駄目押しですよ!) グシャッ!!

教員a「」 フラッ…   バタン

サシャ(やった! ドッキリ大成功です!!)

教員a「」 ジョワワワワワワ

サシャ(ありゃ、やり過ぎちゃいましたね……まさか失禁してしまうとは……)

サシャ(でも夏ですし、朝になれば乾いてますよね……)

サシャ(さて邪魔者は気絶してくれましたし、さっそく収穫に移るとしましょうか。) フッフッフ…



―――― 翌日の昼食 ――――


アルミン「昨夜、また出たらしいよ……」

エレン「なんだって!?」 ビクッ!

ミカサ「そんな……」

ジャン「おいおい、マジかよ……」

アルミン「噂によると、生首が浮いてたんだってさ……」

ライナー「生首だと……もしかしたら誰かの悪戯じゃないかと思ってたんだが、その線は消えたな……」

アルミン「いきなり現れた生首に教員が驚いてたら……」

ベルトルト「お、驚いてたら……?」 ゴクッ

アルミン「次の瞬間、ひとりでに粉々になったらしいよ。」

エレン(――ッッ!?) ビクビクーーン!!

ミカサ(エレンが怯えている……) ギリッ…


ベルトルト「……嘘だろ……そんなの、完全に本物の幽霊じゃないか……」 ゾゾゾゾ

ジャン「……何かの見間違いじゃねぇのか?」

エレン「だ、だよな!? い、いきなり頭が破裂するとか、あ、ああ、有り得ないもんな!!」 ビクビク…

ミカサ「エレンの言う通り。そんな事は有り得ない。だから怖がる必要は無い。」

アルミン「それがね……昨日の当番だった教員なんだけど……」

ジャン「お、おう……」 ゴクッ

アルミン「みんな、“闇討ち”って知ってるよね……?」

ベルトルト「立体機動訓練の時に、命綱をいきなり切られるアレの事だよね……?」

アルミン「うん……昨日の教員が過去に仕掛けた“闇討ち”で……何人か訓練兵が亡くなってるんだ……」

エレン(――ッッ!?) ビクビクーーン!!

ミカサ(エレンが……!) ギリリッ…


ライナー「それじゃあ、まさか……」 ゴクリ

アルミン「亡くなった訓練兵の中には、頭蓋骨が割れて即死だった人もいたらしいよ……」

アルミン「昨日の幽霊は、それを怨んで……化けて出たんじゃないかって……」

ベルトルト「頭が破裂したってのは、その事を指してたのか……」 ゾクッ








サシャ(おやおや……良い感じに誇張されて噂が広まってますよ……) フッフッフ…

サシャ(適当に悪戯してるだけなのに、周りが勝手にストーリーを仕立ててくれるとは……)

サシャ(昨日使ったのは、人の顔型に固めた土に石膏を塗っただけの代物なんですけどね。)

サシャ(まあ、食紅も使って、多少はそれっぽく見えるように化粧してあげましたけど。)

サシャ(髪の部分なんて、細い蔓草を束ねただけなのに……暗いから細かい部分までは見えないんですねぇ。)

サシャ(元が土なので、適当に周りの土をかぶせるだけで証拠隠滅できるのは有り難いですけど。) クスクス


クリスタ「そう言えば、サシャ。最近調子良いよね?」

サシャ「そ、そうですか?」

ユミル「お前の香のおかげで、私らも悪くは無いんだが……」

マルコ「香? 何だいそれ。」

クリスタ「うん、サシャが配合してくれたハーブなんだけどね。それを焚くとグッスリ眠れるの。」

コニー「……へー、お前にそんな特技があったのか。」

サシャ「や、山育ちなので、ハーブなんかには多少詳しいんですよ!」 アセアセッ

マルコ「ふーん、ちょっと意外だけど、良い特技だと思うよ。」

サシャ「あ、あはは……」


ミーナ「言われてみれば……確かに、サシャは私たちの中でも特に成績が伸びてるよね。」

サシャ「ま、まあ……そんな事言っても、ミカサやアニには全然届かないんですよね!」

アニ「けど、最近になって、かなり体力がもつようになってるよね。何かコツでも掴んだ?」

サシャ「そ、それは、育ち盛りですし! 体力がついてきたって事じゃないですかね!」 アハハ…

サシャ(しょっちゅう食糧庫からつまみ食いしてるおかげで、空腹になる事が減ってるだけなんですが……)

ユミル「逆に男連中は微妙に調子悪そうだよな。」

クリスタ「そう言えばそうだね。みんな、どうかしたの?」

マルコ「いや、実は……あの噂のせいで、寝不足気味なんだ……」

コニー「俺はそんなこと無いけどな。」 フフン

アニ「ああ……あの幽霊がどうこうってやつ? 馬鹿らしい。」 ハァ…


クリスタ「でも正直、サシャのお香がなかったら、私も寝付けないかも……」

ユミル「なんだ、クリスタちゃんはお化けが怖いのか。何なら一緒に寝てやっても良いぞ。」 ニヤニヤ

クリスタ「もう、からかわないでよ!」 ムー!

ミーナ「けど、向こうのテーブルの様子を見る限り、一番怖がってるのはエレンみたい。ちょっと意外かも。」

サシャ「ふーん、何だか意外ですねぇ。巨人には『駆逐してやる!』って強気なのに。」

マルコ「いや、正直僕はエレンの気持ちもわかるんだ……巨人の倒し方なら知ってるけど、幽霊はそうじゃないから……」

コニー「ま、確かに、幽霊のうなじを削いでも意味無さそうだよな。」

ミーナ「う……そう言われると、怖くなってくるわね……もし幽霊と出会っちゃったら、どうしたら良いのかな……」

クリスタ「お、お化けなんかいる訳ないよ……」 ビクッ…


ユミル「いや、わかんねぇぞ。これまでにこの訓練所で死んだ奴なんて、それこそ数え切れねぇだろうしな。」

ユミル「その内の一人や二人、化けて出たとしても、不思議は無いだろ。」 ニヤニヤ

クリスタ「や、やめてよ、ユミル!」 ビクビク…!

サシャ「大丈夫ですよ、クリスタ。香の量を多めにしときますから、朝までグッスリ眠れますって。」

クリスタ「そ、そうかな……お願いね、サシャ……」

コニー「……………………」





エレン「な、なぁ、アルミン……教員も一人で見張りをしてるから駄目なんじゃないか……?」

エレン「何かあっても大丈夫なように、二人以上で見張りについてもらえば……」

アルミン「うん……理屈で考えればそうなんだけど……多分、それは無理だろうね……」

エレン「何でだよ!?」 ガタタッ!

ミカサ「落ち着いて、エレン。」

アルミン「これまでずっと一人で見張りをしてたのに、どういう理由で二人体制にするのさ。」

エレン「そ、それは……!」

ライナー「……確かに、教員が幽霊に怯えてるなんて認める訳がないな。」

ベルトルト「……そんな事をすれば威厳とかが一気に地に落ちてしまう。」

ジャン「そんな事になるくらいなら、適当な理由をでっち上げて俺達に押しつけるだろうな……」

エレン「そんな……!」


ミカサ「大丈夫、エレン。もしあなたが見張りの役目を課せられたとしても、私もついていく。」

エレン「いくらお前でも、幽霊相手に何が出来るんだよ!?」

ミカサ「それは……わからない。」 シュン…

アルミン「でも、翌日の休暇がもらえるのは多分一人だけだよ……いくらミカサでも流石にキツイんじゃ……」

ミカサ「問題ない。エレンのためなら、三日三晩でも徹夜して見せる。」

エレン「いや、気持ちは嬉しいけど、そんなには必要ないぞ……」

ライナー「まぁ、なんだ。仮に俺達に押しつけられたとしても、いきなりエレンがピンポイントで当たるとは思えん。」

ベルトルト「そうだね。こういうのって、意外と取り越し苦労で終わるものだよ。」

エレン「そ、そうだよな……何十分の一って確率だもんな……ははは……」 ホッ

ジャン(夜中にミカサと二人きりだと!? そうはいかねぇぞ、エレン!) ギリリッ



―――― 夕方の訓練終了時 ――――


キース「では本日の訓練はこれにて終了!」

キース「通常であれば解散する所だが、今日から貴様らに新しい訓練を用意してある! 光栄に思うが良い!!」

エレン(ま、まさか……う、嘘だろ……) ビクビク…

クリスタ(違うよね……ま、まさか夜中の見張りとかさせられないよね……) ビクビク…

キース「貴様らも既に聞いているやもしれんが、不甲斐ない教員達が病で寝込んでしまっている!!」

ライナー(病だと……まったく、よく言う……)

ベルトルト(まあ、幽霊にびびって寝込んでるなんて、口が裂けても言え無いんだろうけど……)


キース「訓練とは言っても、それほど難しい事ではない! 夜の間、食糧庫の前で見張りを務めるだけだ!!」

エレン「!」 ビクーーン!

クリスタ「!」 ビクーーン!

アルミン(はぁ……やっぱりこうなったよ……)

ミカサ(エレンが怯えている……) ギリッ…

キース「特別に、見張りを務めた者には金一封と翌日の休暇が与えられる!」

キース「誰か、自ら立候補するものはいないか!!」


                        < シ ー ン


キース「ふむ、立候補者は無しか……明日は立体機動の試験だ。気持ちはわからんでも無い……」

ジャン(条件的には悪くねぇんだが……普段ならともかく、一番得点が高い立体機動の試験は外せねぇ……)

マルコ(見張りは別日に個別で受ける事になるんだろうけど、それだと色々とやりにくそうだしな……)


キース「だが、だからと言って、見張りを立てないという訳にもいかん! よって、クジを引いて決める事とする!!」

キース「事前に用意しておいたこの箱には、貴様ら訓練兵の名前が書かれたクジが入っている!」

ユミル(こりゃまた、用意の良い事で……)

ミーナ(え、本当に誰かが一人で見張りをやらされるの……?) ビクビク…

キース「この箱から一名を選出する! 選ばれた者は、速やかに前に出るように!!」 ガサゴソ… ガサゴソ…

キース「…………」 スッ

エレン(や、やめてくれ……せめて幽霊騒ぎが収まるまでは……!) ビクビク…!

クリスタ(だ、大丈夫だよね……当たるのは一人だけだもんね……?) ビクビク…!


キース「……エレン・イェーガー訓練兵! 速やかに前へ!!」

エレン「ッッ!?」 クラッ…

クリスタ(やったぁ!) ホッ…

キース「聞こえなかったのか、イェーガー訓練兵! さっさと前に出ろ!!」

エレン「ハッ……!」 フラフラ…

アルミン(駄目だ……ショックで真っ直ぐ歩く事すら出来てない……!)

ライナー(おい、大丈夫なのか……顔面蒼白だぞ……)

ベルトルト(あのエレンがなんて姿だ……さすがにこれは……)


ミカサ「教官! エレ――イェーガー訓練兵は体調に問題があるように見受けられます!!」

ミカサ「私が代わりに夜の番を務めます! 対価も求めません!!」

キース「ほう……わからないな、アッカーマン訓練兵。」 ジロッ…

キース「自ら務める意志があるなら、何故先程、私が呼びかけた際に立候補しなかった……?」

ミカサ「そ、それは……」

キース「イェーガー訓練兵、貴様はどうなのだ? 自らに課せられた任を務められぬ程に衰弱しているのか?」

エレン「じ、自分は……!」 ビクッ…!

キース「貴様は巨人と戦う際も、アッカーマンがいなければ戦えないのか!? 貴様はそれで兵士のつもりかッ!!」 クワッ!

エレン「ッ!!」 ハッ!


エレン「いえ、何も問題ありません! 指示通り、務めを果たさせて頂きます!!」 ザッ!

キース「……なら良い。日付が変わる時間から明朝までが貴様の担当だ。決して居眠りなどせぬように。」

エレン「ハッ!」 ザッ

アルミン(あぁ、もう……あんな風に言われたら、そりゃ断れないよ……)

ジャン(くく、こいつは良い。ああ言われりゃ、エレンの性格からしてミカサの同行は絶対に拒否するからな。)

サシャ(明日は立体機動の試験ですし……今夜も食糧庫で体力をつけないといけませんね……) フッフッフ…


後もう少し投下するつもり。

二、三日で完結する予定で。



―――― その日の夕食 ――――


エレン「どうしよう、アルミン! さっきは思わず啖呵切っちまったけど、どうしたら良いんだ!?」 カチャカチャカチャ

アルミン「やっぱり考え無しだったんだね……いや、あの状況は仕方ないと思うけど……」 ハァ…

ミカサ「エレン、今からでも遅くない。私と一緒に見張りにつこう。」

ライナー「だが、それだとミカサの立体機動試験はどうするんだ?」

ミカサ「問題ない。一晩くらい眠らなくても、行動に支障は無い。」

エレン「いや、それじゃあ駄目だ……さっき俺が頷いたのは、意地だけじゃない……」 カチャカチャカチャ

エレン「ここでミカサに甘えたんじゃ、教官に言われた通り、俺は一人じゃ何もできないって認めるのと同じなんだ……!」 カチャカチャカチャ

ジャン(こいつ、本気で恐怖心を克服するつもりなのか。……からかってやろうと思ったが、そんな空気じゃねぇな。)


ミカサ「そんな……今のエレンはまともにスプーンも持てない程に動揺している。そんなエレンを一人になんてさせられない!」

アルミン「……駄目だよ、ミカサ。エレンが自分の意思で決めたんだ。いくら君でも、それを曲げるのは許されない。」

エレン「だが……正直言って、俺は今心底びびっちまってる……だから、アルミン! 頼む、力を貸してくれ!!」

アルミン「え? ミカサじゃなくて、僕に同行しろと……?」

エレン「違う、そうじゃない!!」

エレン「俺が幽霊にびびってるのは、どうすれば勝てるのかがわからないからだ……!」

エレン「父さんも母さんも、どうすれば幽霊を駆逐できるか教えてくれなかった……!」

ベルトルト(そりゃまあ、そうだろうね……)

エレン「だから、頼む、アルミン! どうすれば幽霊を駆逐できるのか、俺に教えてくれ!!」

アルミン(……エレン、君とは長い付き合いだけど……今まで、これ程までの無茶振りがあっただろうか。) クラッ…


ライナー「おいおいエレン……いくらアルミンでも流石にそれは無理だろう……」

ミカサ「それでもアルミンなら……アルミンならきっと何とかしてくれる……」

アルミン(そもそも、幽霊なんて存在しない……だから、駆逐するべきは幽霊じゃなくて、自分の恐怖心だ……)

ベルトルト「魔除けって事で、焚き火でもしてみるとか……?」

ジャン「いや、万が一食糧庫に火が移れば洒落にならねぇ。火気は厳禁だろ。」

ライナー「火以外の魔除けか……他には何があったか……」

エレン「お、お前ら!」 パァァァァ

ライナー「エレンにだけ怖い思いをさせるのは本意じゃないからな。」

ベルトルト「僕達も、微力ながら尽くさせてもらうよ。」

ジャン「今日だけだからな。せいぜい感謝しやがれ。」

ミカサ(やはりエレンは素晴らしい。こんなに良い仲間に慕われているのだから……) ジワッ…


アルミン(実在しない相手に対巨人用の武器は通用しない……心強いかもしれないが、根本的解決にはならない。)

アルミン(だから……今ここでエレンが武装すべきは“刃”じゃない……“概念”だ……!) カッ!

アルミン「エレン、思い出したよ!」

エレン「本当か、アルミン!?」

アルミン「外の世界の本に載ってたんだ! 間違いない!!」

アルミン(エレンにこう言えば、たいていの事は信じてくれる! ここはそれを利用するしかない!!)

エレン「よし! これで勝ったも同然だな! それで、俺はどうしたら良いんだ!?」

エレン「幽霊の急所は何処を狙えば良いんだ!? うなじか!? 頭か!? 心臓か!?」

ジャン(こいつ、本物のアホか……なんで幽霊を物理的に倒そうとしてんだよ……)

ミカサ「エレン、立体機動装置を使わせてもらえるよう、私が教官に掛け合ってくる。」

ジャン(ちょっと待て! ミカサ、お前もか!?)


アルミン「二人とも、落ち着いて聞いて欲しい……残念だけど、幽霊を駆逐する方法は無いんだ……」

エレン「な、なんだって……」 サァァァァ

ミカサ「そんな……」

アルミン「でも大丈夫。幽霊を“駆逐”する事は出来ないけど、代わりに“浄化”させる事で追い払う事は出来るんだ。」

エレン「そ、そうなのか! それで、どうしたらその“浄化”ってやつはできるんだ!?」

アルミン「うん、幽霊には弱点があってね……」

エレン「弱点……」 ゴクリ…

アルミン「幽霊は“塩”に弱いんだ。塩には強力な魔除けの力が備わってるからね。」

アルミン「それを浴びせるだけで、幽霊はひとたまりも無いんだよ。」

ライナー「そ、そうだったのか……初めて聞いたな……」

ベルトルト「うん、僕も知らなかったよ……」

エレン「そりゃそうだ。なんてったって、外の世界の知識だからな。」 エッヘン!

ジャン(なんでお前が胸張ってんだよ……ん、こいつ……明らかにさっきよりびびってねぇぞ。)

ジャン(なるほどな……アルミンの奴め、これが狙いか……ま、今日は邪魔するつもりはねぇよ。)


アルミン(そういう情報が載ってたのは確かだけど、それが事実である確証はない……)

アルミン(でもエレンはすっかり信じ込んだ。この心の拠り所があれば、かなり恐怖心は軽減される筈だ。)

ミカサ「でも、アルミン……塩は貴重だ。そうそう簡単に手に入るものでは……」

アルミン「うん、そうなんだ……だから、これから僕は調理室に行って、塩を分けてもらえないか頼みに行こうと思う。」

アルミン「既に教員にも犠牲者が出てるんだ……事情を話せばきっと分けてもらえる筈……!」

エレン「アルミン、お前、俺のためにそこまで……!」

アルミン「エレンはまだ時間があるからね。今の内に準備を整えておいて欲しい。」

エレン「ああ、わかった……アルミン、お前はやっぱり俺の最高の親友だ!」

アルミン「良いんだよ、エレンも頑張ってね。」

アルミン(実際は騙してるようなものだから……そんなに感謝されると、心が痛むよ……) ホロリ…


今日はここまでです。

続きはまた明日に。





マルコ「幽霊について?」

エレン「ああ、何でも良いんだ! 知ってる事があれば教えてくれ!!」

マルコ「僕もそんなに詳しくないけど、一般的な話でよければ……」

エレン「この際、情報なら何でも良いんだ! 少しでも対抗策を練らなきゃいけないんだ。」

ミカサ「今のところ、幽霊には“塩”が有効という事しかわかっていない……出来れば他にも選択肢が欲しい。」

マルコ「そ、そうだなぁ……ほら、一般的には、何か悔いを残して死んだら幽霊になるって言うよね。」

マルコ「それで、抱えていた生前の悔いが無くなったら“成仏”してくれるらしいよ。」

エレン「じょ、成仏って何だ……?」

マルコ「僕も詳しくないけど……簡単に言うと、この世からあの世に行ってくれるって事じゃないかな。」


エレン「それ、本当か!?」

ミカサ「これはとても有力な情報だ。」

マルコ「う、うん……僕が育った土地ではそういう風に言われてたんだけど……」

エレン「ありがとうな、マルコ! 」

ミカサ「マルコ、とても良い情報なのだけど、何かこう……具体例のようなものを教えてもらえないだろうか。」

マルコ「そうだね……昔、食べる物が無くて行き倒れてしまった旅人がいたそうなんだけど……」

マルコ「その人が亡くなってから、その辺りで夜な夜な幽霊が現れるようになったそうなんだ……」

エレン「お、おう……」 ビクビク…

マルコ「その時から、流行病が広まったりもしてさ……街の住人はその幽霊の仕業だと考え、恐怖に怯えていたそうなんだ……」

エレン「ゆ、幽霊が流行病を……!? ま、まじかよ……」 ビクビク…

ミカサ「なんて恐ろしい……」


マルコ「そこで街の住民は餓死した旅人のために自分たちの食糧を供物として捧げ、成仏してくれるように祈ったんだ……」

マルコ「そうしたら、夜な夜な現れていた幽霊は姿を消し、流行病も治まったそうだよ。」

マルコ「その名残で、僕が育った街では、それがちょっとしたお祭りとして現在も残ってたからね。」

エレン「なるほど……餓死した人に食糧を捧げる事で、満足して成仏してくれたって事だな……」

ミカサ「現在まで語り継がれているという事は、歴史に裏打ちされた方法。これは期待できる。」

エレン「よし! もし幽霊が出てきても、何とかなりそうな気がしてきたぞ!」

マルコ「それは良かった。一人で大変だと思うけど、見張り頑張ってね。」

エレン「おう、マルコも明日の立体起動試験頑張れよ。応援してるぜ!」





コニー「幽霊?」

エレン「ああ、この際何でも良いんだ! 知ってる事があったら教えてくれ!!」

コニー「だから、幽霊なんかいないって――――」

エレン「そんな訳ないだろ! 実際に何人も教員が倒れてるんだぞ!!」

ミカサ「一般常識に囚われていては、エレンが取り返しのつかない事になるかも知れない。」

コニー「いや、そんな事言われてもなぁ……」

エレン「頼む、コニー! 俺は幽霊なんかに負けたくないんだ!!」

ミカサ「大丈夫、エレンならきっと勝てる。」

コニー「いや、二人ともマジで言ってるみたいだけど……どうやって見えない相手と戦うんだよ。」

エレン「!?」

ミカサ「見えない?」


コニー「ああ、幽霊だろ? 幽霊なんだから、見えないに決まってるだろ。」

エレン「…………ッ」 ガクガク ブルブル…

コニー「もし幽霊が見えるんなら、そこら辺幽霊だらけの筈だろ?」

ミカサ「言われてみれば、確かに……」

コニー「まぁ、もしかしたら幽霊もいるのかもしんねぇけど、見えないんだから気にしなきゃ良いんだよ。」

エレン「そ、そんな事、で、でで、出来る訳ないだろ!?」 ビクビク…!

コニー「そうか? じゃあ、あれだ……気配はするかもしれねぇが、獣か何かだと思えよ。」

エレン「む、無茶言うな! や、山育ちの、お、お前と一緒にするな!!」 ビクビク…!

コニー「なんだよー。人がせっかく怖がらないようにアドバイスしてやってんのに……」

ミカサ「エレン、もう行こう……別の情報を探した方が良い……」

エレン「……うん。」 グスン…

コニー「頑張れよー。」





エレン「でも、もう駄目だ……いくらなんでも見えない相手となんて戦えない……」 グスッ…

ミカサ「それは……でも、きっと何か方法がある筈。エレン、最後まであきらめては駄目。」

アニ「……何泣いてるの?」

エレン「ああ、アニか……お前にも世話になった……今までありがとうな……」 グスッ…グスン…

ミカサ「エレン、弱気にならないで……見えない相手でも、きっとやりようはある筈。」

アニ「……いったい何の話?」

ミカサ「それが――――」


アニ「――――なるほどね、確かに幽霊なんだから見えなくて当然か。」

エレン「ごめんな、せっかく技を教えてもらったのに……俺はここまでみたいだ……」 グスッ…グスン…

ミカサ「エレン……」

アニ「……………………」 ハァ…

アニ「エレン、ちょっと付き合いな。」

エレン「……?」 グスン…




エレン「食堂の外に出て、どうするんだよ。」

アニ「いいから、ちょっと待ちなって。」 ギュッ…ギュッ…

エレン「……? ハンカチを顔に巻いて……何で目隠しなんか?」


アニ「こんなもんか。さ、来なよ。」 スッ

エレン「ッ!? 何言ってるんだよ! 目隠しした相手を殴れるかよ!」

アニ「良いから、かかってきな。」

エレン「できないって言ってるだろ!」

アニ「……まったく、情けない。そんなだから幽霊なんかにびびるんだろ。」 ハァ…

エレン「ッ!」

エレン「くそ……怪我しても文句言うなよ!」 タッ!

エレン(顎に一発入れて気絶させてやる!) ヒュッ!

アニ「…………」 パシッ!

エレン(――――捌かれた!? 嘘だろ!?)


アニ「ふッ……!」 パンッ!

エレン「!」 グルッ!     …ズダン!

エレン「痛ててて…………」

アニ「ふぅ……」

エレン「い、今のは何だったんだ!? どうやって俺の動きを!?」

アニ「……見えなくても、気配を読めば戦えるって事。」

エレン「ッ!」 ハッ

アニ「……勝てるかどうかは、あんた次第だけどね。」 スタスタスタ

エレン「アニ……」





ライナー「見てたぞ、アニ。また腕を上げたみたいだな。」

アニ「…………」 スッ

ライナー「さっきのハンカチか……む、これは……」

ライナー「布の目が粗いから目隠しになってなかったのか……はは、こいつは騙されたな。」

アニ「あいつは単純だし、これで少しはその気になるだろ。」

ミカサ「アニ……ありがとう。」

アニ「別に良いって。この調子で教員が倒れていったら、この訓練所が運営できなくなりかねない。」

アニ「こんな馬鹿げた幽霊騒ぎで行き場をなくすなんて御免だからね。」

ライナー「確かに、それはマズいな……」

ミカサ「大丈夫。エレンなら、きっと幽霊を駆逐できる。」 キリッ

アニ「……だと良いけど。」





ミカサ「という訳で、エレン……私たちが考えていたよりも重大な話になっている。」

エレン「なんてこった……でも、そうだよな……教員がいなくなっちまったら、ここも閉鎖するしかないもんな……」

エレン「調査兵団に入って巨人を駆逐する為にも、先ずは幽霊を成仏させてやらないと……!」 ギリッ

フランツ「エレン、何時にも増して怖い顔だけど……どうかしたのかい?」

ハンナ「ミカサもいつもより暗い表情だけど。」

エレン「フランツ、ハンナ……実は――――」


フランツ「――――そ、そうだったんだ。そんな大事になってたんだね。」

エレン「ああ、だから何とかして幽霊を成仏させないといけないんだ……」

エレン「成仏させるには、生前の悔いを無くさせてやらなきゃいけないんだが……相手の事も知らないのに、いったいどうすれば良いのか……」

ハンナ「大丈夫だよ、エレン! まずは状況を整理してみよう。そうしたらきっと何かわかるよ!」

フランツ「ハンナの言う通りだ! 落ち込んでも仕方ない、出来る事をやらないと!」

ミカサ「エレン……」

エレン「そうだな……自分にできる事を考えるしかないよな。それじゃあ、今までの目撃情報をまとめてみるか―――――」


エレン「――――幽霊騒ぎの最初の頃は、いろんな所で目撃されてたみたいだけど……最近は食糧庫の辺りばかりだ。」

フランツ「出てくるのも、食糧庫の見張りの前に集中してるね……」

ハンナ「そう言えば、寝込んでるのも全部教員ばかりだし……何か理由があるのかな……」

ミカサ「でも、教員も気絶しただけで、それ以外の外傷などは無いらしい。だからこそ、対応が遅れているのだろうけど……」

ジャン「おいおい……お前ら、今頃気付いたのかよ。」

エレン「ジャン! ……ってなんだ、その紙。」

ジャン「訓練所に保管してあった、訓練兵の死亡記録に決まってんだろうが。」

ジャン「十年以上前の記録だが、それっぽいやつがあったから書き写してきたんだよ……ったく、お前もちったぁ頭使って行動しやがれ。」

エレン「ッ! ジャン……お前、ホントは良い奴だったんだな……」 ジワッ…

ジャン「勘違いすんな! 訓練所が閉鎖されたら俺も困るんだよ!」

ジャン(こんな馬鹿げた事で、俺の内地での快適生活をぶち壊されてたまるかってんだ!)

ジャン「ま、とにかくだ……多分だが、目撃されてる幽霊ってのはこいつじゃねぇかと思うんだよ……」 スッ





エレン「食糧庫に忍び込んで盗み食いの挙句、喉を詰まらせて死亡……まるで先代サシャじゃないか……」

ミカサ「まさかサシャ以外にこんな馬鹿な訓練兵が存在していたなんて……にわかには信じ難い……」

フランツ「容赦ないね、二人とも……」 タラリ

エレン「だって、どう見てもサシャじゃないか……」

ミカサ「世界には自分と同じ顔の人間が三人いるという……この訓練兵も、もしかしたら……」

ハンナ「いや、サシャも仲間なんだし、少しはフォローとか……」 タラリ

ジャン「ま、確かにサシャは馬鹿だが、この先代サシャはそれ以上の馬鹿だったみたいでな。」

エレン「じょ、冗談だろ……サシャ以上の馬鹿がいるなんて……」

ミカサ「……世も末。」


ジャン「こいつは同じ訓練兵と逢引ついでに食糧庫に忍び込んだらしくてな……事に及ぶ前に、食糧をつまもうとしたらしいんだが……」

ジャン「緊張のあまり喉に干し肉を詰まらせ、そのままあっけなく逝っちまったそうだ。」

エレン「……………………」 クラッ…

ミカサ「……………………」

フランツ「……………………」

ハンナ「……………………」

ジャン「お相手の男は、それがバレたのが原因で開拓地送りになったらしい。救えねぇ話だろ……」 ハァ…

エレン「……おい、なんでそれで化けて出るんだよ。完全に自業自得じゃねぇか。」

ジャン「俺に言われたって、知るかよ。だが、食糧庫に執着しそうな死亡者はこいつだけだ。」


フランツ「いや、でも……もし僕がその訓練兵だったとしても、化けて出るかもしれない……」

ハンナ「私も…………」

ミカサ「……………………」

エレン「はぁ!? 正気か、お前ら!?」 ガタタッ

ハンナ「だって考えても見てよ……大切な相手と結ばれる寸前に死んでしまったのよ?」

フランツ「きっと悔しかったと思う……僕なら、死んでも死にきれないよ……」

ハンナ「安心して、フランツ……あなただけを死なせたりなんてしないから……」

フランツ「ハンナ……」 キラキラキラ

ハンナ「フランツ……」 キラキラキラ

ジャン「…………」 イラッ…


エレン「でも、おかしいだろ! 十年以上経ってるんだぞ!? 俺達にどうしろっていうんだよ!?」

エレン「相手の男だって開拓地に送られたんだぞ!? 今更訓練兵団に化けて出られたって、どうしようも無いじゃないか!」

フランツ「!」 ハッ!

ハンナ「!」 ハッ!

フランツ「そうだよ、エレン! きっとそれが原因なんだ!」

エレン「ど、どういう事だよ……」

フランツ「きっとその幽霊は恋人を探しているんだ! 恋人が開拓地に送られた事を知らないんだよ!!」

ハンナ「きっとそうよ! だから二人の思い出の場所の、食糧庫にばかり現れてるんだわ!」

エレン「いや、そんな無茶な……もしそうなら、もっと早く化けて出るんじゃないのか……」 タラリ…


エレン「ジャン、どう思う……?」 ヒソッ

ジャン「無茶苦茶な理屈だが、恋愛脳のこいつらが言うんなら、正解なのかもしれねぇ……」 ヒソッ

ジャン「ま、理由はともかくだ……幽霊の正体がコイツだったなら、びびる事ぁねぇだろ。」

エレン「ああ、今までサシャの幽霊にびびってたかと思うと、自分が情けなくなる……」

フランツ「いや、サシャはまだちゃんと生きてるからね……」

エレン「ジャン……今回はお前に助けられちまったな。」

ジャン「言っただろ、これは俺自身の為だってな。こんな事で俺の将来を潰されたら洒落にならねぇんだよ。」

ジャン「ま、恩に感じるなら、きっちり幽霊の奴を締め上げてやってくれや。二度と面見せねぇようにな。」

エレン「おう、任せとけ!」 ニッ

ミカサ「……………………」






サシャ(お腹空いたなぁ……最近いつも満腹だったから胃が大きくなっちゃいました……) グゥー

サシャ(ま、すぐに就寝時間ですし、もう少しの辛抱ですけどね!) グゥググゥー


アルミン「お待たせ、エレン! なんとか大さじ一杯分だけ分けてもらえたよ!」

エレン「サンキュー、アルミン! これで幽霊を追い払ってやれるぜ!」

アルミン「あれ、エレン……?」

エレン「おう、どうかしたか?」

アルミン「あ、いや、さっきまでと比べて随分雰囲気が変わったなぁと思って。」

エレン「皆のおかげで、もうあんまり怖いと思ってないんだ。だから、しっかりと役目を果たして見せるからな。」

アルミン「そ、そうなんだ……それは良かった。それじゃあ、これ……失くさないようにね。」

アルミン(そんな簡単に恐怖に打ち勝てるとは思わないけど……ホントに大丈夫かなぁ……)

エレン「ああ、みんなの期待に応えて見せるぜ!」


エレン「さてと……それじゃあ俺は準備もあるし、寮に戻ろうかな。」

ミカサ「エレン……」 ギュッ

エレン「なんだよ、ミカサ。袖引っ張るなよ。」

ミカサ「……本当に、一人で平気なの?」

エレン「ああ、もう何も怖くねぇ!」

ミカサ「エレンが決めた事だから、私はそれに従おう……」

ミカサ「でも、覚えておいて……もしエレンに何かあれば、きっと私も化けて出てしまう……」

エレン「……? 何が言いたいんだよ。」

ミカサ「……いえ、なんでもない。でも無理はしないで……危険を感じたらすぐに逃げて。」

エレン「兵士が持ち場から逃げてどうするんだ。……俺の事はいいから、お前は明日の試験の事考えろよ。」

ミカサ「……………………」





サシャ(お腹空いたなぁ。今日は何を食べようかなぁ。)~♪

クリスタ「ねぇ、みんな。就寝時間には少し早いけど、今日はもう休まない?」

ミーナ「そうだね。明日は大事な試験だし、睡眠時間は長めの方がいいかも。」

ユミル「私は別に構わねぇぞ。」

アニ「私も。」

ミカサ「……うん、起きていても心配なだけだし……いっそ眠ってしまった方が良いのかもしれない。」

サシャ「それじゃあ、ちょっと早いけど、香を焚いちゃいますね。」

サシャ(これは好都合……みんなが早く寝てくれれば、私もそれだけやり易いですし……) フッフッフ…


ミカサ「サシャ、頼みがある。」

サシャ「どうかしたんですか?」

ミカサ「心配のあまり、無意識にエレンの元に向かってしまうかもしれない……」

ミカサ「なので、私がしっかり意識を失えるよう、香を強めに焚いてもらえないだろうか。」

クリスタ「あ、あの……私もできればそうしてもらえると……」 モジモジ

ユミル「なんだ、お化けが怖いんなら一緒に寝てやっても良いんだぞ?」 ニヤニヤ

クリスタ「そ、そんなんじゃないの!」 ムー!

サシャ(ああ、そうでした。今日の見張りはエレンでしたっけ……ミカサが見張りに合流すると厄介です……)

サシャ「わかりました! みなさんがグッスリ眠れるように強めにしておきますから!」 シュボッ





エレン(く……真夜中の森ってのはこんなに雰囲気が変わるものなのかよ……)

エレン(あ、見えてきた……あれが食糧庫だな。……ん? 誰かいるのか?)

キース「来たか、イェーガー訓練兵。」

エレン「あ、あれ……教官がどうして食糧庫に?」

キース「うむ。貴様が来るまでの見張りだ。」

エレン「そうだったんですか……教官が見張りにつく程、人手不足だったんですね……」

キース「いや、そう言う訳ではない。私がここにいるのは、私の意思だ。」

エレン「え?」

キース「死んだとはいえ、元は訓練兵だ……言いたい事があるなら、聞いてやらねばならん。」

キース「しかし、やはり時間が早いのだろう。まだ幽霊と出会った事はないのだがな。」

エレン「幽霊って……」

キース「貴様らもとっくに知っているのだろう? 今更隠しても仕方が無い。」 フゥ…

キース「ふむ、貴様の担当時間まで少しあるな……それまで話をしようか。」

エレン「ハッ!」









サシャ「ふふふ……そろそろ食糧庫ですね。」 コソコソ

サシャ「この薬も、せめてもう少しマシな味なら文句無しなんですが……」 ゴクン

サシャ(うわ、まっず! やっぱり苦すぎます!) スゥゥゥゥ

サシャ(さてと……ではいつも通り、服は茂みの中に隠して、と。) ヌギヌギ

サシャ(いつも強気なエレンはどんな顔で驚いてくれるんでしょうか……楽しみです。) クスクス


キース「ほう、貴様らも幽霊の正体に目星をつけていたのか。」

エレン「ハッ! ジャ――キルシュタイン訓練兵が、過去の死亡記録からそれらしきものを見付けたので!」

キース「ふむ。キルシュタインか……訓練に励む動機はともかく、なかなか有能な兵士だ。」

キース「我々も、ここ最近の食糧庫の在庫が腑に落ちなかったのでな……調べは進めていたのだ。」

エレン「え……それは、つまり……幽霊が食糧を消費している、という事でしょうか?」

キース「うむ。以前から在庫が一致せぬ事はあったのだが、ここ最近は特におかしくてな。」

キース「かといって、死者に罰則を科す事も出来ぬ故、どうしたものかと考えていたのだ。」


エレン(なんてこった……既に死んでいる筈の幽霊が食糧を消費するなんて……)

エレン(これは人類存亡の危機なんじゃねぇのか!? 巨人に食われなくても、食う物がなければ人は生きられない!)

エレン「教官、ご安心ください! もし幽霊が現れたなら、必ず自分が成仏させてみせます!」

キース「ふむ……確かに、同じ訓練兵の貴様なら、死者と通じる事もできるやもしれん……」

キース「うまく説得する事が出来れば、成仏させる事も可能だろう。」









サシャ(あれ? 今日は見張りが二人……?)

サシャ(いや、多分違いますね……恐らく、ちょうど交代のタイミングだったって事でしょう……)

サシャ(ッ!?) ビクッ

サシャ(きょ、教官!? 教官がどうしてここに!?) ガクガク ブルブル…

サシャ(いくら相手から見えないとはいえ、教官にだけは悪戯する気になれないんですよね……) ガクガク ブルブル…

サシャ(エレンと二人で何を話してるんでしょうか……慎重にもう少し近付いてみましょう……) コソコソ


キース「さて、それでは私はそろそろ戻るとしよう。」

エレン「ハッ!」

キース「だが、その前に……イェーガー訓練兵、これを受け取るが良い。」

エレン「これは……?」

キース「うむ。流石に朝まで飲まず食わずというのは辛かろう。水と食料だ。」

エレン「あ、ありがとうございます……」 ガサゴソ

エレン「え!? これ、サンドイッチじゃないですか!?」

エレン「こ、こんな物をもらってしまって、本当に良いんですか!?」

サシャ(サ、サンドイッチ!?)


エレン「新鮮なレタスにトマト……それに、ハムとマスタードまで!?」

キース「代金なら、寝込んでいる腑抜けの給料から天引きしてある。遠慮せずに受け取るが良い。」

エレン「ありがとうございます!!」

キース「うむ、それでは後は任せたぞ。」 ザッ ザッ ザッ ザッ …

エレン(やった! まさかこんな良い物を食べられるなんて!!) パァァァァ

サシャ(私は干し肉やドライフルーツで我慢してるというのに! どうしてエレンがこんな美味しい目に!!) グヌヌ…!

サシャ(よーし、決めました……脅かすついでに、そのサンドイッチも頂いてしまいましょう……) ジュルリ


エレン「とりあえず、椅子を置いてくれてるのは有り難い……」 ストン

エレン「流石に一晩立ちっぱなしはキツイもんな。」 フゥ

エレン「それにしても……」 チラッ


                       <ザワザワザワザワ…

                       <キー キー キー

                       <アオーーン……


エレン「夜の森って、以外と騒がしいんだな……虫の鳴き声とか風の音とか……」

サシャ(教官もそろそろ寮に戻った頃合いですね……さてと、どうやってサンドイッチをいただきましょうか……)


エレン「月明かりしかないから、あんまり周囲の様子が分からないのが不安だけど……」 キョロキョロ

サシャ(ッ!) サッ

エレン「暗いから、ただの枝とか葉が違う物に見えてきそうだ……いや、大丈夫だ! 怖くない! 怖くないぞ!」 フルフルフル…

サシャ(……相手から見えないのはわかってても、ちょっと恥ずかしいですね。) モジモジ

サシャ(よく考えたら、私……男の子の前で裸になってるんですよね……) カァ…(///

エレン「くそ……幽霊にさえ気をつければ良いと思ってたのに、まさかこんな伏兵がいたなんて……」 フルフルフル…

サシャ(ははーん……さてはエレン、夜の森は初めてですね? これならちょっと脅かしてやればすぐに追い払えそうです……) フッフッフ…

サシャ(あまり過激なのはかわいそうですし……シンプルなのから試していきましょうか……)


                       <カーン…カーン…


エレン「うわぁ!?」 ビクゥ!

エレン「な、なんだ今の音は!? 明らかに虫や獣の鳴き声じゃなかったぞ……!」 フルフルフル…


サシャ(石で木の幹を叩いただけなんですけどね。あ、こっちに来ました……)

エレン「こ、この辺から聞こえたよな……?」 ビクビク…

エレン「何も無いぞ……気のせいだったかな……」 ホッ

サシャ(……油断させた所で、不意打ちで背後から強いのを!)


                       <カーン!


エレン「うわぁあああ!? わあああああああ!?」 ドテッ!

エレン「なんだ!? 誰かいるのか!?」 キョロキョロ

サシャ(驚いてます……驚いてますよ……!) プー クスクス

エレン「今のは、笑い声……!? おい、誰かいるのか!? いるんだろ!?」

サシャ(おっと、いけないいけない……思わず息を漏らしてしまいました……)

サシャ(どのくらいの発声で薬の効果が切れるかは十分に確認してるので、抜かりは無いですけどね……) フッフッフ…



                       <シーン…
 

エレン「…………ッ」 ブルブルブル…

サシャ(なるほど、今のは単なる失敗でしたが……こういう脅かし方もありですね……) フムフム

サシャ(尻餅をついたまま周囲の様子をうかがってます……どんな顔をしてるのか、ちょっと近くで見てみましょう……)

エレン「…………ッ」 キッ

サシャ(涙目になりながらも、必死で泣かないように我慢してるって感じですね……)

サシャ(確かに、これはかわいいです……ミカサが世話を焼きたがるのも納得ですよ……) キュン…

サシャ(もう少し追い込んだら泣いちゃうんでしょうか……そんな顔されたらもっと悪戯したくなるじゃないですか……) ドキドキ

エレン「……誰も、いないのか?」 オソル オソル

サシャ(こっそり横から近付いて、と……)

エレン「……気のせいだったか。」 ホッ


サシャ(耳に息を吹きかけてみましょう……) フーッ

エレン「うわぁあああああ!?」 ブンッ!

サシャ(ッ!)  ムニュッ

エレン「なんだ!? 今、何かに触れた!? でも、何もないぞ!?」 キョロキョロ キョロキョロ

サシャ(…………) カァァ(///

サシャ(エレンに触られてしまいました……あんまり近付くのは危険ですね……) コソコソ


                       <ザワザワザワザワ…


エレン「うわあああああああああああああ!?」

サシャ(今のはただの風の音なんですけど……もう何でも怖いものに見える状態ですね……)

エレン「だ、駄目だ……ここは駄目だ……食糧庫の前に戻らないと……」 ガサガサ ガサガサ…

サシャ(あ……戻ってしまいました。あれだけ怯えながらも腰が抜けてないのは流石の精神力ですね……)


エレン「な、何だったんだ今のは……」 ハァハァ…

エレン「や、やっぱり、幽霊か……? 幽霊なのか……?」 ブルブルブル…

エレン(いや、何をしている、エレン・イェーガー! 幽霊が出るのはわかってただろうが!!)

エレン(そうだ……だからみんなに協力してもらったんじゃないか……知恵を借りたんじゃないか……!) ギリッ…

エレン(幽霊に食糧を消費されたら俺達が飢え死にしてしまう……いや、俺達だけの話じゃ済まない……!)

エレン(これは全人類にかかわる問題だ……言ってみれば、人類存亡の危機ってやつだろ!) ※違います

エレン(俺が何とかしなきゃ……ミカサ、アルミン……俺に力を貸してくれ……!)

エレン(――そうだ……!) ハッ

エレン(アルミンから切り札を渡されてたんだ……この“塩”があれば、幽霊を撃退できる……!) ギュッ…


サシャ(エレンを怖がらせるのも楽しいですけど……本来の趣旨を忘れてはいけませんね……)

サシャ(私も明日は試験ですし……さっさと追い払って、もらう物をもらって行くとしましょう……)

サシャ(うーん、小出しにして恐怖に耐性がついてしまっても厄介です……一気に決めちゃった方が良いですね……)

エレン(……さっき、指先に柔らかい感触があった……きっとあれが幽霊だったんだ。)

エレン(つまり幽霊にも肉体……かどうかはわからないが、本体のようなものがあるんだ……)

エレン(そこにこの“塩”をぶつけてやれば、撃退できる……!) ギュッ…

サシャ(……? なんでしょう。何か小さな袋を握り締めてますね。お守りでしょうか。)

サシャ(ま、私は幽霊じゃないので……お守りなんて意味無いんですけど……)

サシャ(それでは、一気に落としにかかるとしましょうか……ひとまず森に戻らないと……) フッフッフ…



                           <カーン…カーン…カーン…


エレン「ッ!」 ビクゥ!

エレン「ま、まただ……」 フルフルフル…

エレン「落ち着け、落ち着くんだ……相手の動きを見極めるんだ……」 ガクガク ブルブル…


                        <カーン…カーン…カーン…


エレン「下手に森に入れば、相手の思うつぼだ……さっきの二の舞になっちまう……!」 ガクガク ブルブル…

エレン「ただの物音だ……惑わされるな、エレン・イェーガー……ここは耐えるんだ……!」 ガクガク ブルブル…


                    <カーン…カーン…カーン…


エレン「ッ!?」 ビクッ

エレン「音が……近づいて、来てる……?」 サァァァァァァァ



            <カーン…カーン…カーン…


エレン「ッ!!」 ビクビクッ!

エレン「今、すぐそこから聞こえたぞ……」 ガクガク ブルブル…!

サシャ(ふふふ、いい感じに怯えてますね……)

エレン(いや、違う! これはチャンスだ……! 相手が近付いて来てるのなら、俺にとっても攻撃のチャンスじゃないか!) ハッ

エレン(神経を集中させろ……近づいてくる気配を見逃すな……!) キッ


                       <ザワザワザワザワ…

                       <キー キー キー

                       <アオーーン……


エレン(畜生! 雑音が多過ぎる!!) ギリッ…!


サシャ(実は既に背後に回ってるんですが、やっぱり気付いてないですねぇ……)

サシャ(気配を消すのは狩りの基本ですし……エレンといえど、透明になった私を捉えるのは不可能ですよ……) クスクス…


    <パァァン!!


エレン「うわぁあぁあああああ!?」 ガタタッ!! ゴロゴロゴロ…

サシャ(おやおや、椅子から転げ落ちてしまいました……怪我をしてなきゃ良いんですけど……)

エレン「い、今、耳元で……」 ガタガタ…!

エレン「ま、まさか……今のが、ラ、ラップ音ってやつなのか……!?」 サァァァァァァァ

サシャ(いえ、単なる柏手です。)


エレン「ち、近くにいるのか……!?」 グスッ…

エレン「く、来るなら来い……こ、怖くない、怖くなんかないぞ……!」 ポロポロポロ

サシャ(ああ、ついに泣いてしまいました……うーん、かわいい……) キュン…

エレン「や、やめろよ! なんでこんな事するんだよ……!」 グスッ…グスン…

エレン「お前も訓練兵だったんだろ!? こんな事やめて、言いたい事があるんなら言ってくれよ!」 グスン…グスン…

サシャ(……? ああ、そうでした、訓練兵の幽霊が出るって話でしたっけ。)

サシャ(残念ながら、声を出すと薬の効果が切れちゃうので、おしゃべりはできませんよ。)

サシャ(声から正体がバレないとも限りませんし……さて、もう一度耳元で……)



    <パァァン!!


エレン「うぁああああああ!?」 ゴロゴロゴロ!

サシャ(おお、転がって距離を取るとは……必死な姿もかわいい……) キュン…

エレン「……ぐっ!」 ザッ!

サシャ(こんなに怯えてるのに、立ちあがってファイティングポーズを取れるんですね……)

サシャ(やっぱりエレンの芯はかなり強いです……今まで脅かしてきた教員とは比べ物になりません……)

サシャ(私も危険を覚悟しないと、追い払うのは難しそうですね……) ムムム…

エレンの中の人もお化け苦手だけどこのエレンはそこから取ったの?


エレン「なぁ……死んじまったのはかわいそうだと思うけど、こんな事はもうやめてくれよ……!」 グスッ…

エレン「勝手に食糧を持ってかれるのは困るんだ! 食糧が無ければ、巨人と戦えない!」 グスン…

エレン「お前も俺達と同じ、公に心臓を捧げた兵士なんだろ!? だったら、俺の言ってる事はわかるよな!?」

サシャ(…………ッ) チクッ…

サシャ(そんな事を言われても、お腹が空くんです……そこに食糧があるのに、食べちゃ駄目なんて……)

サシャ(そっちの方がおかしいんです……ご飯を食べたいと思うのは人間の本能なんですから……)


エレン「…………何とか言えよぉ。」 グスッ…グスン…

サシャ(…………エレン、かわいい。) ドキドキ ドキドキ…

サシャ(あ、頬に涙の跡が……) ペロッ

エレン「うわぁぁあ!?」 ゾゾゾゾッ

サシャ(そんなに嫌がらなくても……傷つくじゃないですか……) ムゥ…

エレン(な、何だ今の感触は!? ぬるっとして、な、生あたたかくて……) ガクガク ブルブル…

サシャ(でも、今のはかなり効いたみたいですね……では、次は背後に回って首筋に……) ペロッ

エレン「わぁぁぁああッ!?」 ビクゥ!!

エレン「……うッ……ッ……ッ」 ハァー! ハァー! ハァー!

エレン(まただ、今度は首筋に……! なんなんだよ、いったい……!?) ガクガク ブルブル…

サシャ(……………………) ドキドキ ドキドキ…


サシャ(怯えるエレンを見てると、体が熱く……なんだか変な気分です……) ドキドキ ドキドキ…

サシャ(なめる距離まで近づくのはリスクが大きいですけど、効果は絶大ですね……)

サシャ(もう言葉にならないくらい怯えてるみたいですし……そろそろ限界でしょうね……)

サシャ(それでは、次は背後から耳をあまがみする感じで――――) コソコソ


―――― パ キ ッ


エレン「ッ!」 クルッ

サシャ(――し、しまった! 足元に小枝が!?)

エレン「そこかッ!!」 ブンッ!

サシャ(駄目です! な、殴られ――――)


サシャ(…………あれ?) パラパラパラ…

エレン「や、やったか……?」 ハァ…ハァ…ハァ…

サシャ(エレンが握り締めてたお守りの中身をかけられた……? 何ですか、これ?) ペロッ

サシャ(むっ! これ、お塩じゃないですか!) ペロペロペロ!

エレン「ど、どうだ……ちゃんと命中したよな……?」 オソル オソル

サシャ(いったいどういうつもりか知りませんが……貴重なお塩を無駄にするなんて、許せません……!) ペロペロペロ!

サシャ(デコピンでお仕置きです!) ベチン!

エレン「痛っ!?」


エレン「ッ! ……は、外しちまったのかよ……!?」 ブルブルブル…

エレン(なんてこった……お、終わりだ……もう、俺に対抗できる手段は残ってねぇ……) サァァァァァァァ

サシャ(あれ、どうして今までで最大級のショックを受けているんでしょうか……?)

エレン「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 タッタッタッタッタ…!

サシャ(あ……行ってしまいました……)

サシャ(もしや、さっきのお塩が心の拠り所だったんでしょうか……? うーん、謎ですね。)

サシャ(でも、完全に心が折れたみたいですし……流石にもう戻って来ないでしょう。)

サシャ(もう少し色々してみたかった気もしますが……とりあえず、先に戦利品をいただかないと。) ~♪





エレン「――ッ!」 ガッ!

エレン「うわぁ!」 ズザザザザァ…

エレン「痛ててて……木の根っこに足を取られたのか……」 サスサス

エレン「はぁ……………………」 ボー

エレン「ッ!」 ハッ!

エレン(何やってんだよ、俺は!? ミカサに大口叩いておきながら、何て様だ……!) ジワッ…

エレン(畜生……持ち場を放棄するなんて、兵士失格だ……みんなに合わせる顔が無い……) ポロポロポロ

エレン(でも、こんなのどうしろって言うんだよ! いくら塩が弱点でも、見えない相手に当てるなんて出来っこなかったんだ!) ダンッ!

エレン(せっかくアルミンが調達してくれた塩も無駄にしちまった……もう、こんなの、どうしようもないじゃないか……) グスン…


エレン(幽霊が相手なんだ……最初から勝ち目なんてなかったんだ……せめて、ミカサやアルミンがいてくれれば――――)

―――― キース「貴様は巨人と戦う際も、アッカーマンがいなければ戦えないのか!? 貴様はそれで兵士のつもりかッ!!」

エレン「――ッ!」 ハッ!

エレン(何を考えてるんだ、俺は……!) ギリリッ

エレン(ミカサがいなければ、アルミンがいなければ、刃がなければ、ガスがなければ、立体起動装置がなければ……)

エレン(巨人と戦う時も、言い訳考えて逃げるつもりか!? 違うだろ!!) クワッ!

エレン(勝ち目なんかなくても、それを言い訳にしてどうする!!)

エレン(俺は兵士だ……! どんな状況にあっても、兵士としての責任を果たして見せる!!) タッタッタッタッタ…!





サシャ(美味しい~♪ 今までの見張りもこんな良い物を持ってたんでしょうか。惜しい事をしました。) モグモグ

サシャ(シャキシャキしたレタスと瑞々しいトマト、肉厚のハムとバターが塗られたパンのハーモニー、最高です♪) モグモグ

サシャ(エレンには悪い事をしましたが……まあ、大丈夫でしょう。幽霊が相手なら、誰も責めないでしょうし。) モグモグ

エレン(なんだ、この光景は……!) ハァ…ハァ…ハァ…

サシャ(エレンのかわいい姿を堪能できただけでなく、こんな美味しい物も食べられるなんて……) モグモグ

エレン(サンドイッチが宙に浮き……削り取られるみたいに消えていく……) ブルブルブル…

エレン(木陰から様子を窺って正解だった……あそこに幽霊の奴がいるって事だな……) ブルブル…

サシャ(ふぅ、ごちそうさまでした……) …ゴクン

サシャ(でも、まだ物足りないので、食糧庫にもお邪魔しておきましょう……) ギィ…

エレン(食糧庫の扉がひとりでに開いた!?) ビクッ

エレン(これは、幽霊が中に入って行ったって事か!? マズい、食糧が奪われる……!)

エレン(急いで止めないと取り返しがつかなくなる……だけど……!) ガクガク ブルブル…


エレン(サンドイッチが食われたんだ……俺も食われたっておかしくない……!) ガクガク ブルブル…

エレン(逃げ場の無い食糧庫じゃ、さっきみたいに逃げる事も出来ない……!) ガクガク ブルブル…

エレン(いくらなんでも分が悪すぎる……ここで突入するのは自殺行為――――)

―――― ライナー「お前の言いたい事はわかった。でもな……それじゃあやっぱり無責任だと思うぞ」

―――― ライナー「俺達は兵士だろ? いくら不利な状況でも逃げてはいけない時がある。」

―――― ライナー「守る対象が脅威に晒された時、その間に入って盾にならなければならない。」

―――― ライナー「相手が何であろうと、だ。俺達は大砲でも格闘術でも使いこなして力をつけなきゃならん……」

―――― ライナー「それが……力を持つ兵士としての、責任だと思う……俺は……」

エレン「…………ッ!」 グググッ

エレン「だよな、ライナー!」 ダッ!





エレン「そこを動くなッ!!」 バァン!!

サシャ(――ッッ!!) ビクッ!

エレン「い、いるんだろ!? しょ、食糧は渡さないからな!!」 キョロキョロ

サシャ(あっぶない所でした……ビックリして思わず声を出しちゃいそうになりましたよ……) ドキドキ…

サシャ(それにしても、まさか戻ってくるとは……やはりエレンはエレンですね……侮れない……)

サシャ(でも怖がってるのが見え見えですよ……それでは、また適当に脅かしてお引き取り願いましょうか……) クスクス…

エレン(くそっ! やっぱり何も見えねぇ……!!)

エレン(天窓から月明かりが差し込んでるが……外よりも更に薄暗い……!) ガクガク ブルブル…

エレン(だが、扉を開けて入ったって事は、扉をすり抜ける事は出来ないって事だろ……!)

エレン(だったら……!) バタン…

サシャ(ッ! 扉を閉められてしまいました……これではこっそり横から抜ける事も出来ません……)

サシャ(天窓までよじ登れるのはコニーぐらいでしょうし……これはもうエレンをどうにかするしかないですね……)


エレン(さっき扉を開けた時、そこに積まれた干し肉の山が崩れた……おそらく幽霊はあそこだ!) ジリジリ…

サシャ(む、こっちに近付いてきます……さっき私が干し肉を落としたのを見逃さなかったんですね……)

サシャ(少し撹乱した方が良さそうです。) スッ

エレン「芋が……浮いた!?」 ビクッ

サシャ(ほーら、よく見て下さいよぉ……この芋を、こうやって……) ポイッ  …コロコロコロ

エレン「ッ!?」 ドキッ!

サシャ(この隙に私は逆方向へ移動する、と……) コソコソ

エレン(何だったんだ、今のは!? 何で芋がひとりでに転がったんだ!?) ガクガク ブルブル…

サシャ(…………) コソコソ


                            < ミキ ミキ ミキ…


エレン「うわぁ!?」 キョロキョロ


サシャ(む、室内は外と違って雑音が少ない……絨毯のおかげで床板は鳴りにくいですが、気をつけないと……)

サシャ(痛い思いはさせたくないので……こっそり近付いて、顎をキレイに打ち抜いてあげましょう……)

エレン(畜生ッ! やっぱり駄目なのか……! そもそも、見えない相手とどうやって戦えっていうんだよ――――)

―――― アニ「……見えなくても、気配を読めば戦えるって事。」

―――― アニ「……勝てるかどうかは、あんた次第だけどね。」

エレン「ッ!」 ハッ

エレン(そうだ……アニはやって見せたんだ……俺にだって!) ギリッ

エレン(神経を研ぎ澄ませ! せめて、どこから近付いてくるかがわかれば……!)

サシャ(…………) コソコソ


エレン(……? なん、だ……? よく見ると、絨毯にヘコみが……)

エレン(そうかッ! 幽霊も地面を歩いているんだから、足跡が残るんだ!)

エレン(注意すべきは絨毯だ! 近付いてくるなら、必ず絨毯に跡が残る!!)

サシャ(…………) コソコソ

エレン(これか! 右前方からゆっくりと足跡が近付いてきてる……!)

エレン(こいつが訓練兵の幽霊なら、俺と同じ訓練を受けてる筈だ……!)

エレン(それなら、手の内は読める……!) キッ!

サシャ(流石はエレン……隙が無い……まともに対人格闘で挑めば勝ち目は無いでしょう……)

サシャ(でも、今なら違います! 相手が見えないなら、力の差なんて関係ないんですよ!!) ヒュッ!

エレン(絨毯が大きくへこんだ! 踏み込み! 来るッ!!) ――バシッ!!

サシャ(ふぇ?) …キョトン


エレン「ふっ!」 パァン!!

サシャ(!?) グルン!    …ドサッ

エレン(手応えあった! 絨毯も人型にへこんでる! ここかッ!) ガシッ

サシャ(え……? 今、いったい何が? どうして、エレンが馬乗りに……?)

サシャ(えッ!? 見切られた!? しかも、組み伏せられてるって事ですか!?) アワアワ…!

サシャ(ひぇええ! 早く逃げないと!!) ジタバタ ジタバタ

エレン「ぐっ! 暴れるな! 俺は話がしたいだけだ!!」 グ…グググ…

サシャ(なんで見えないのに押さえつけられるんですか!? まるで私の行動が読めるみたいな!?) ジタバタ ジタバタ

エレン(幽霊とはいえ、相手は人型だ……! アニに習った技術は十分通用する!!) グ…グググ…

エレン(だが、何だよこれ……! 見えないのに、触れられるし体温も感じる……怖ぇよ!!) ゾゾゾッ


エレン(取っ組み合いのおかげで、相手の体格もわかった……ほぼ俺と同じ身長だ……!)

エレン(体重は俺の方が上……肉のつき方から考えて、相手は女だ……やっぱり十年前に死んだ、あの訓練兵か!)

エレン(次も上手くいくとは思えない……下手に殴りかかって抜けだされたら俺の負けだ……ここは相手の体力を奪う事に集中しないと!) グ…グググ…

サシャ(上に乗られてるだけなのに、た、体力が……) ゼェ…ゼェ…

サシャ(ど、どうしよう……声も出せない、逃げられない……) オロオロ…

サシャ(そもそも私、服すら着てないんですよ!? そんな状態で男の子にのしかかられるなんて!?) アワワ…!


エレン「大人しく……しろって……!」 ガシッ

エレン(よし、両手を封じた……それに、どうやら格闘の腕は俺の方が上だ……)

エレン「暴れるなよ! 俺は話がしたいだけなんだ!!」 キッ

サシャ(あわ、あわわわわわわわわわわ) カァァ(///

サシャ(み、見えてないんですよね!? 本当に、エレンには見えてないんですよね!?) アワワ…(///

サシャ(覆いかぶさられて、両手を掴まれて……そんな真っ直ぐに見つめられたら……) アワアワ…(///

エレン(……なんとなく、大人しくなった気がする。今なら話が通じるかもしれない。)


エレン「なあ、間違ってたら言ってくれ……お前はここで死んだ訓練兵だろ?」

サシャ(ふぇ!? 何の話ですか!? というか、何で食糧庫で人死にが出るんですか!?)

エレン「……否定しないって事は、やっぱり正解だったか。」

サシャ(違いますけど、しゃべれないんですよ!!) ヌググ…!

エレン「お前の恋人はもう開拓地に移ってるんだ! だから、ここに化けて出られても困るんだよ!」

エレン「もし他に何か悔いが残ってるんなら言ってくれ! 俺から教官達にかけあってみるから!!」

サシャ(だから、しゃべれないんですってば!) ヌググ…!

エレン「そうか、他に悔いは無いんだな……良かった……」 ホッ…

エレン「それじゃあ、今までに食べちまった食糧については見逃してやるから、早く成仏してくれ。」

サシャ(…………へ? 成仏? 何ですか、それ?)

エレン「……………………」


エレン「…………………………………………あれ?」

エレン「なあ、早くしてくれよ。お前が成仏してくれないと、俺も困るんだ。」

サシャ(え、いや、だから……成仏って何なんですか!?)

エレン「まさか、他にも何か悔いがあるのを隠してるのか!?」

エレン「なあ、俺に出来る事なら協力するから! 教えてくれ、頼む!!」


                         < シーン…


サシャ(さっきからエレンが何を言ってるのか、さっぱりわかりません!)

エレン(くそ、なんてこった……自分から成仏する気はないって事か……)


エレン(さっき無駄にしちまった“塩”があれば、ここでケリをつけれたのに……) ギリッ…!

エレン(……“塩”があれば? いや、違う! “塩”ならあるじゃないか!!) ハッ!

エレン(さっきの取っ組み合いで手の平に汗をかいてる……汗には塩分が含まれてる!)

エレン(同じ“塩”なんだから、きっと汗でも効果がある筈だ!!) キッ!

エレン「お前が自分から成仏してくれないのなら、無理やりにでも成仏させてやるからな!!」 ペタペタペタ

サシャ(ひっ!?) ビクン!

エレン(よし……手の平の汗を塗り込む感じで……) ムニュ ムニムニ

サシャ(ひゃん! ちょ、エレン!? どこ触ってるんですか!?) ビクッ ピクン…!


サシャ(やめて、ください……そんな、駄目ですってば……っ……) ハァハァ…

エレン「あれ、これ胸か……? 結構大きいんだな……」 ムニムニ ムニムニ

サシャ(…………ッ!!) カァァァァ(///

エレン(うん。掴み易いし、ここを重点的に攻めてみよう……) ムニムニ モミモミ

サシャ(あっ……はぁ……っ……!) ピクン ピクッ…

エレン(……? なんだ? 胸の先の部分が硬くなってきたような……) モミモミ モミモミ

サシャ(もう……やだぁ……声が、出ちゃいますよぅ……) グスン…グスッ…

エレン(く……駄目か……! きっと手の平の汗だけじゃ塩分が足りないんだ!) モミモミ モミモミ


サシャ(うぅ……っ……そん、な……先っぽばかり、触られたら……っ!) ピクッ…ビクッ…

エレン(――そうか!) ハッ!

サシャ(……ようやく、やめてくれました……?) ハァ…ハァ…

エレン(手の平だけじゃ足りないんなら、これでどうだッ!!) ヌギッ!

サシャ(ええっ!? なんで上を脱ぎ捨てたんですか!?) ビクッ!

サシャ(エレンは私を幽霊だと思ってるんですよね!? 幽霊相手に何するつもりなんですか!?) ドキドキ…!


エレン(夏の室内は蒸し暑いからな……嫌でも汗をかいちまう……)

エレン(普段ならうざったい暑さだが、今日だけはそれに感謝するぜ!) ダキッ!

サシャ(ええええええ!?) カァァ(///

サシャ(な、なんで、私はエレンに抱き締められてるんですか!? なんでなんでなんで!?) アワワワワ…

エレン(これで塩分は確保できる筈だ……! これならきっと成仏させられる!!) ギュッ…!

サシャ(そんなに力強く抱きしめないで下さいよ……! 息苦しいし、こっちまで変な気分に……) アワアワ…

サシャ(あ……やせてると思ってましたけど、エレンって意外と逞しい身体だったんですね……) モジモジ…

サシャ(肌と肌が密着して、エレンの体温を直に感じて……頭がぼうっとしてきました……) ハァ…ハァ…

サシャ(お互いの汗が混ざり合って、ぬるぬるしてる……さっきから鼓動が治まりません……) ドキドキ…

エレン(ど、どうなんだ……? ちゃんと効いてるんだよな!? 俺、間違ってないよな!?) アセアセ…


エレン(でも、なんか……) スンスン

エレン(相手は幽霊なのに、なんか良い匂いが……吸い込むとドキドキする……) ハァ…ハァ…

サシャ(うう……髪に顔を埋めて息を吸い込まないでくださいよぉ……私も汗かいちゃってるのに……) カァァァ(///

エレン(体を重ねても、相手が見えないから気持ち悪いんだよ……畜生、なんで俺が幽霊とこんな事……) グスン…

エレン(なんか、情けなくて泣けてきた……誰かに見られたら、一人で上半身裸になって何やってるんだって話だよ……) グスッ…グスン…

サシャ(またエレンがべそをかいてる……) クスクス…

サシャ(もう、仕方ないですねぇ……) ギュッ…ナデナデ…ナデナデ…

エレン「俺は幽霊にまで笑われるのかよ……慰めなんかやめてくれ、余計泣けてくるだろ……」 グスッ…

サシャ(意地っぱりな男の子ってかわいいものだったんですねぇ……) クスクス…

エレン(そうだ……さわれるのに見えないから気持ち悪いんだ……だったら目を閉じれば良いのか……?)


エレン(おお、目を閉じたら普通に人間とくっついてるみたいだ……) サワサワ…

サシャ(う、またそんな……) ピクッ…

エレン(すべすべなのに、しっとりしてるな……幽霊も人間と変わらない肌触りなのか……) サワサワ…

サシャ(今度は……全身を確かめるような手つきで……エレン、何してるんですか……) ピクン…ピクッ…

エレン(髪は長いな……後ろでくくってるのか……? ユミル、よりも長い感じだな……サシャと同じくらいか……?) サワサワ…ナデナデ…

サシャ(優しく頭を撫でないでくださいよ……そんな事されたら……) モジモジ…

エレン「なあ、俺と同期にサシャって女の子がいるんだ……」 サワサワ…

サシャ(――ッッ!?) ビクーーン!!

エレン「変な所もあるけど、いつも笑っててさ、みんなそいつに元気づけられてる……」

サシャ(…………) ドキドキ…

エレン「そいつもお前みたいに食糧を盗んだりする奴なんだけど、それでも人類の為に兵士になるべく頑張ってるんだ。」

サシャ(…………) チクッ…


エレン「俺には、お前に何の未練があって幽霊やってるのかなんてわからない……」

エレン「でも巨人を駆逐する為に俺達は兵士になったんだ……それはお前にもわかるだろ……!?」

エレン「だから、きっとお前も理由があるんだろうけど……人類の為に、成仏してくれないか!?」 ギュゥ…

サシャ(…………なんでしょう、この気持ちは。申し訳ないような、自分が情けないような……)

サシャ(これが、恥というやつなんでしょうか……)

サシャ(……食糧庫に忍び込むのは今夜で終わりにしましょう。エレンに知られたら、きっと嫌われてしまいます。) ジワァ…

サシャ(私も明日から心を入れ替えて……エレンのように真っ直ぐ訓練に励みます……) グスン…

エレン「……………………」

エレン「…………………………………………やっぱり駄目か。」 ハァ…

サシャ(いや、もう改心しましたから!! というか、成仏って何なんですか!?)

サシャ(ま、まさか……煙のように消える事を期待してるんじゃ……そんなの不可能ですよ!?)

もう地面に書いちゃえよ

まどろっこしい
エレンさんは純粋なんだよ

ダメ、このままではサシャエレエンドを迎えてしまう
サシャエレなんて原作にないし、エレンには可愛い幼なじみがいる
ので、>>1は今すぐミカエレに軌道を修正し、食い意地の張ったサシャには制裁を加えるべき


>>126
エレンの中の人もお化け苦手だけどこのエレンはそこから取ったの?

いえ、知りませんでした。でも嬉しい偶然ですね。流石にここまでじゃないでしょうけど……

>>176
もう地面に書いちゃえよ

ほら、床には絨毯がしいてあるので……(ゲス顔)

>>177
獲物を奪うのに作法は必要ないってサシャが言ってました……(震え声)


なんか頭痛が治まらないので、治ったら続き書きます……

それまでパンツはいて待ってて……


エレン(くそ、どうする……全然消える気配が無いぞ……) ペタペタ…

エレン(アルミンの言う事が間違ってるとは思えない……って事は、もっともっと塩分が必要なのか……!) ペタペタ…

エレン(恐らくバケツ一杯分ぐらいの量が必要なんだ……畜生! いくらなんでも、そんなの用意できねぇぞ……!) ペタペタ…

エレン(“塩”で成仏させるのは諦めるしかない……! だが、それなら、他にどんな手があるってんだ!?) ペタペタ…

サシャ(ちょ、エレン……いつまでさわってるんですか……もう諦めて解放してくださいよぉ……) ピクン…ピクッ…

エレン(思い出せ……! みんなの情報の中に手掛かりがある筈だ……!)

―――― マルコ「そ、そうだなぁ……ほら、一般的には、何か悔いを残して死んだら幽霊になるって言うよね。」

―――― マルコ「それで、抱えていた生前の悔いが無くなったら“成仏”してくれるらしいよ。」

―――― ハンナ「だって考えても見てよ……大切な相手と結ばれる寸前に死んでしまったのよ?」

―――― フランツ「きっと悔しかったと思う……僕なら、死んでも死にきれないよ……」

エレン「…………………………………………」 サァァァァァァァ


サシャ(エレンの動きが止まった……やっと解放してくれるんでしょうか……) ハァ…ハァ…

エレン(冗談だろ……相手は幽霊だぞ……) ガクガク ブルブル…

サシャ(あれ? 急にエレンの体温が下がったような……?)

エレン(いや、待て待て……こいつにとって大事な相手は俺じゃない……きっと、そんな事しても意味が無い……)

エレン(でも……ライナー達も『童貞で死ぬのは嫌だ』ってよく言ってる……)

エレン(女もそうなのか……? やっぱり経験が無いままじゃ、死んでも死にきれないのか……?)

サシャ(……? 急に真面目な顔で考えこんじゃってますよ……?)

エレン「なあ、間違ってたらハッキリ答えてくれ……」

サシャ(真剣な表情……いったい何を聞くつもりでしょうか……?)

エレン「俺がお前を抱いたら、満足して成仏してくれるのか……?」


サシャ「」…

サシャ「 」……

サシャ「 」…………

サシャ「――ッ!?」 ハッ!

サシャ(理解不能すぎて意識が飛んじゃってました!?)

エレン「……………………」 ジー

サシャ(いやいやいやいや! そんな訳ないですから!? “抱く”ってそういう意味で言ってるんですよね!?) ブンブンブン!

エレン「何も見えないが……動いてる気配がする……頷いてるのか……?」 ゾゾゾゾゾ

エレン「間違ってたら『違う』って答えるもんな……マジかよ……なんてこった……」 ガクガク ブルブル…

サシャ(違います! 首を振ってるんです!! 拒否してるんです!!) ブンブンブン!


サシャ(こ、こうなったら、いっそ声を出してしまえば――――) ハッ!

サシャ(駄目です! もしもこの幽霊騒ぎが私の仕業だとバレれば……教官からどんな罰を受けるか……!) ガクガク ブルブル…

サシャ(あれだけ食糧を盗んだんです……よくて開拓地送り……下手したら、銃殺なんて可能性も……!!) ガクガク ブルブル…

エレン「畜生……俺の初体験の相手は幽霊かよ……」 グスッ…グスン…

サシャ(泣きたいのはこっちですよ!? マズい……こうなったら死ぬ気で抵抗するしか!!) ジタバタ ジタバタ!!

エレン「うわっ!?」 グラッ

サシャ(よし、エレンの体勢が崩れた……! あともう少し……!!) ジタバタ ジタバタ!!

エレン「くっ……! 上体を立て直さないと……!」 ザッ!    …ニュルン

サシャ(――――ッ!) カァァァァ(///

エレン「な、なんだ……? 何かに指がはまった……?」 ニュップ ニュップ…

サシャ(っ……! そ、こは……っ……) ビクッ! …ビクン!


エレン「え、まさか……これって……」 サァァァァァァァ

サシャ(指、動かさ……ないで……っ……) ギュッ…

エレン(これって“濡れる”ってやつだよな……幽霊なのに、そういう反応するのかよ……) ガクガク ブルブル…

エレン(でも指が入った途端に大人しくなったぞ……やっぱりこれが望みなのか……) ニュップ ニュップ…

エレン(こういうのは結婚してからするもんだって思ってたのに……何でこんな事に……) グスン…グスッ…

エレン(違う! 覚悟を決めろ、エレン・イェーガー! 兵士としての務めを果たすんだ!) ニュプッ ニュプッ ニュプッ!

エレン(ここで俺がこいつを成仏させてやらなきゃ、また食糧が消費されちまう!!) ニュプッ ニュプッ ニュプッ!

エレン(そうなったら巨人を駆逐するどころじゃねぇ! やるしかないんだ!!) ニュプッ ニュプッ ニュプッ!

サシャ(……っ……っ……!!) ビクン ビクッ ビクン…

サシャ(逃げな、あかんのに……体に力がはいらんし……口を押さえんと、声がもれてまう……) グスン…


エレン「こうなったら、やってやる……そうだ……もう、やるしかねぇんだ……!」 カチャカチャカチャ…!  ヌギッ!

サシャ(ッ!) ビクッ!

サシャ(下も脱いだって事は……エレンのあれが……) ドキドキドキ

サシャ(逃げる前に、ちょっとだけ……) チラッ

エレン「……くっ!」 ギリッ

えれん「」(´・ω・`) ショボーン


※イメージ画像
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サシャ(……かわいいです。) クスクス…

エレン「ッ!?」 ギリリッ!

エレン(幽霊のくせに笑いやがって……!)

エレン(だが、勢いで脱いではみたものの……こんな状況でまともに勃つ訳がねぇ……!)

エレン(相手は幽霊だぞ!? まだ一人でやる方がマシじゃねぇか…!!)

エレン(行為については座学で習ったが……こういう時の対処法までは教えてくれなった……!) ギリッ…!

エレン(父さんなら……医者の父さんなら、こんな時にどうすれば良いか知ってたのか……?)

エレン「ぐっ!?」 ズキン!

―――― エレン「父さん! やめてよ、父さん! 何をしようとしているの!」

―――― エレン「父さんは母さんが死んでおかしくなったんだ!!」

―――― グリシャ「エレン!! 腕を出しなさい!」


エレン(くそ……こんな時に……!) ズキン…ズキッ…!

サシャ(エレンの様子が……? チャンスです!!) ジタバタ ジタバタ!!

エレン(ぐッ! 大人しく、しやがれ……!) ズキン…ズキッ…!

服と一緒に脱ぎ捨てた鍵「」 キラッ

エレン「ッ!」

―――― グリシャ「エレン、この鍵をずっと……肌身離さずに持っているんだ……」

―――― グリシャ「そして、この鍵を見るたびに思い出せ……」


えれん「」ググググググ…!


※ イメージ画像
http://uploda.cc/img/img51cbd1dac0ca7.jpg



エレン「ぐ、頭が……!」 ズキン…ズキン…!

いぇーがー「」(`・ω・´)シャキーン!

サシャ(えッ!?) ビクッ!

サシャ(な、なんで急におっきく……) ドキドキ…

エレン「…………ッ」 ゼェ…ゼェ…

サシャ(ちょ、ちょっとエレン、押しつけないでくださいよ!?) アワアワ…!

いぇーがー「」 (`・ω・´)ガチーン!!

サシャ(な、ななな、なんでこんなに硬くなってるんですか!?) アワアワ…!

サシャ(さっきまでのかわいい姿は何だったんですか!?) アワアワ…!

サシャ(…………) チラッ

いぇーがー「」(`・ω・´)シャキーン!

サシャ(こんな硬くて大きいの、はいる訳無いじゃないんですかぁぁ!?) カァァァァ(///


エレン「くそっ……頭が割れそうだ……!」 ズキン ズキン ズキン!


―――― グリシャ「使い方は彼らの記憶が教えてくれるだろう……」

―――― グリシャ「ミカサやアルミン……みんなを救いたいなら……」

―――― グリシャ「お前はこの力を……支配しなくてはならない!」


エレン「」 ガリッ!

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」


※ イメージ画像
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エレン「」 ゼェ…ゼェ…

サシャ「」 チラッ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」

サシャ(こ、殺される……!) サァァァァァ


サシャ(パ、パン並の大きさじゃないですか……え、これを……私に……?) ゾゾゾゾ…

サシャ(わ、私、初めてなんですよ!? こ、ここ、こんなの絶対無理……!!) ガクガク ブルブル…!

エレン「」 ゼェ…ゼェ…

サシャ(あれ、エレン……もしかして、意識を失ってる……?) ハッ…!

サシャ(今なら逃げられます!!) ジタバタ ジタバタ!!

エレン「」 グラッ…

サシャ(やった! 抜け出せた――――!)


エレン「」 ガシッ

サシャ(わぶっ!) ベシャッ!

サシャ(あ、足首を掴まれた!? せっかく抜け出せたと思ったのに!?)

エレン「」 ゼェ…ゼェ…ゼェ…

サシャ(う、後ろから伸し掛からないでください!!) ジタバタ ジタバタ!!

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 グイッ

サシャ(ひッ!?) ビクッ!

サシャ(とっさに足で挟んだこれって、まさか……) チラッ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」グググググ↑

サシャ「」 サァァァァァ…


サシャ(え、何ですかこれ……木の棒か何かですか……?) ガクガク ブルブル…!

サシャ(こ、ここ、こんなに硬いんですか!? あかん、ほんまに死んでまう!!) ガクガク ブルブル…!

エレン「」 ゼェ…ゼェ…ゼェ…

サシャ(離したら串刺しにされてまう……こんなん、絶対に離したらあかん……!) ギュゥゥゥゥ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」グググググ↑

サシャ(ひぅっ……おしつけられて力入らへん……! でも、絶対に離したらあかん……殺されてまう……!) ギュゥゥゥゥ…

エレン「」 ゼェ…ゼェ…ゼェ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」

サシャ(動きが止まった……? あきらめてくれたん……?) ハァ…ハァ…


エレン「」 ゼェ…ゼェ…ゼェ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 ググ…← ググ…→ ググ…← ググ…→

サシャ(ぅあッ!!) ビクン!

サシャ(そんな、前後はあかん……っ……そんな大きいので擦られたら……!) ギュゥゥゥゥ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 ググッ→ ググッ← ググッ→ ググッ←

サシャ(あかん……私ので、すべってまう……それに……さっきから敏感な所をずっと……) ギュゥゥゥゥ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 ググッ!← ググッ!→ ググッ!← ググッ!→

サシャ(っ!……声出さんようにするんで精いっぱい……っ……もう、無理……!) ギュゥゥゥゥ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 ニュック!← ニュック!→ ニュック!← ニュック!→

サシャ(んっ……んーーッ!!) ビクン ビクン ビクン…!

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 スポンッ!


エレン「」 ゼェ…ゼェ…ゼェ…

サシャ「」 ハァ…ハァ…ハァ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」グググググッ↑

エレン「」 グイッ

サシャ(あれ、なんで私足を広げて……) ボー

サシャ(――ッ!!) ハッ!

サシャ(あかん、すぐに閉じな――――!) バッ!

エレン「」 グググググッ…

サシャ(エレン!? 手ぇ離して!? 無理やから、ほんまに無理やからぁぁ!!) サァァァァァ…


えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 ターゲット ロックオン…

サシャ(ひぃッ!) ビクッ!

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 イツデモ イケルゾ!!

サシャ(む、無理……こんなん入る訳ない……こんなん入れられたら、壊れてまう……) ポロポロポロ

サシャ「ご、ごめんなざーーーい!!」 パッ!

サシャ「私です、エレン! サシャです! 幽霊じゃながったんでずぅぅ!!」 ビエエーーン!

サシャ「どんな罰でも受げまずがら、許じで下ざいぃぃ!!」 ウェーーン エーーン!!

サシャ「お願いじまず……なんでもしますから!」 ウワァァン!!

エレン「」 ゼェ…ゼェ…ゼェ…


実はここがルート分岐ポイントで、反応を見て分岐する予定だったんですが……

結果はほぼ満場一致って感じでしたね(諦観)


続きはまた明日。


エレン「……ちく……やる」 ブツブツ…

サシャ「エ、エレン……?」

エレン「駆逐……してやる……!」 ブツブツ…

サシャ「エレン!? あの、私の事わかります!? 幽霊じゃないですよ!?」

えれんげりおん「オアェ!! ガアッ!!」 ビキビキビキ

サシャ「ひっ!?」 ビクッ!

エレン「駆逐、してやる……!」 グググ…

サシャ「ま、待って、エレン! 私です、サシャです! わからないんですか!?」 ジタバタ ジタバタ!!

エレン「チクショウ……チクショウ……!」 ググ… クチュッ…

サシャ「さっきは脅かしてごめんなさい! サンドイッチ食べちゃったのも謝ります!!」 ガクガク ブルブル…


エレン「駆逐してやる……この世から……一匹残らず……!」 ズヌヌヌ…

サシャ「待って、エレン! 話を聞いて下さい!?」 ミリミリ…

エレン「俺が……この手で……ッ!」 ズヌヌヌ…

サシャ「エ、エレン……そん、な、無理……大き、すぎ……っ!」 ミリミリ…

えれんげりおん「オオオオオオォォォォォォ!!」 エモノヲホフル イェーガー!!

サシャ「もっと、ゆっ……くり……せめて、優し……く……」 ミリミリ…

えれんげりおん「オアン! オォッ!!」 ズパァァン!!

サシャ「あっ……!?」 …ブツン!

サシャ(う、そ……? 入っちゃった……?) ボーゼン


エレン「駆逐……してやる……」 パァン パァン パァン!!

サシャ(息が、出来ない……内臓が揺さぶられ……!)

エレン「この世カラ……一匹残ラズ……」 パァン パァン パァン!!

サシャ「あっ……がっ……ひぅっ……!」

エレン「モットダ……」 パァン パァン パァン!!

サシャ「……っ……あっ……!」

エレン「モットコロス……」 パァン パァン パァン!!

サシャ「……はっ……うっ……っ!」

エレン「モット コロシタイ……」 パァン パァン パァン!!

サシャ(エレンがおかしくなってる……私が散々脅かしたから……) グスン…


エレン「モット……イッパイ……」 パァン パァン パァン!!

サシャ(一人でお腹いっぱい食べてた罰があたったんや……みんなも、ごめん……) ポロポロポロ

エレン「殺シテヤル……」 パァン パァン パァン!!

サシャ(もう、無理……きっと私はここで――――)


―――― ゴ ン ッ !


エレン「」 グラッ…

サシャ「…………え?」 ハァ…ハァ…

エレン「」 ドサッ…

サシャ「エ、エレン……?」 オソル オソル…

サシャ「動かない……気絶してる……?」


サシャ「でも、なんで……? そういえば、鈍い音が聞こえたような……」 キョロキョロ


                       < ミキ ミキ ミキ…


サシャ「え!?」 バッ!


                       < ミキ ミキ ミキ…


サシャ(また!? 何かが歩いてる!?) キョロキョロ


                       < ミキ ミキ ミキ…


サシャ「だ、誰かいるんですか!?」


                       <シーン…


サシャ「…………ッ」 ハァ…ハァ…


サシャ(いや、待って下さいよ……確か、さっきエレンが……) ハァ…ハァ…

―――― エレン「なあ、間違ってたら言ってくれ……お前はここで死んだ訓練兵だろ?」

―――― エレン「お前の恋人はもう開拓地に移ってるんだ! だから、ここに化けて出られても困るんだよ!」

サシャ(ま、まさか……) サァァァァァァァ


                       <カチャ カチャ カチャ…


サシャ「ッ!」 ビクーーン!


                 <カチャ カチャ カチャ…


サシャ(う、後ろから何か聞こえる……) ハァ…ハァ…ハァ…


サシャ(しかも……徐々に近付いて……ッ!) ハァ…ハァ…ハァ… 


         <カチャ カチャ カチャ…


サシャ(背後に気配が……!) ハァ…ハァ…ハァ…! 

サシャ(振り向いちゃ駄目……でも、このままじゃ……!) ハァ…ハァ…ハァ…!

サシャ「誰ですか――――!」 クルッ!

頭骸骨「」 カチャ カチャ カチャ…

サシャ「」



頭骸骨「」 カチャ カチャ カチャ…

サシャ「」 クラッ…



頭骸骨「」 カチャ カチャ カチャ…

サシャ「」 ドサッ… 


――――――――

――――――

――――

――


   「おーい、こんな所で何やってんだ。」 ペチペチ

サシャ「う……」

   「おい、起きろって。寝るなら寮に戻れよ。」 ペチペチ

サシャ「う、ううん……」

コニー「おー、起きたか。何やってんだ、お前?」

サシャ「コニー……――み、見ないでくださいッ!!」 ハッ!

サシャ(あ、あれ……裸じゃない……!?)

コニー「何だよ、寝ぼけてんのか?」 

サシャ「あれ、どうして……? ここは……え、食堂……?」 キョロキョロ

コニー「喉渇いたから水飲みに来たら、お前が寝てたんだよ。」


コニー「いくら夏だからって、こんな所で寝てたら風邪ひくぞー。」 

サシャ「す、すいません――――」 ズキッ

サシャ「う……いたた……」

コニー「腹でも壊したのか? 明日は立体起動のテストだってのに。あーあ、俺しーらね。」 フフン

サシャ「あ、あはは……」

コニー「じゃ、俺は寮に戻って寝るわ。お前もちゃんと寮で寝ろよー。」  

サシャ(やっぱり夢なんかじゃない……でも、じゃあ何で……)





サシャ(こっそりお風呂に入ったおかげで大分マシになりました……) コソコソ

サシャ(まさかエレンがあんなに激しかったなんて……もう少し優しくしてくれるかと……) グスン…

サシャ(いえ、今夜の事は自業自得ですね……エレンを責めるのは筋違いです……)

サシャ(ッ! そうでした! エレンに姿を見せてしまったんでした!! ど、どうしよう……) アワワ…

サシャ(で、でも、エレンも正気を失ってたっぽいですし……あんな事、誰かに言えるとも思えませんし……)

サシャ(うぅ……今考えても仕方ないですね……明日のエレンの様子を見てから考えましょう……)

サシャ(もう今日はくたくたです……頭が回りません……)

サシャ(身体の節々も痛みますし……少しでもベッドで寝て回復しないと……)

サシャ(……あれ?) ゴソゴソ

サシャ(なんで!?) ゴソゴソ!

サシャ(布団の下に隠しておいた秘伝書と『透明になる薬』がなくなってる!?) ガサゴソ!


ミカサ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

アニ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

ミーナ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

クリスタ「」 スゥ…スゥ…スゥ…

ユミル「」 スゥ…スゥ…スゥ…

サシャ(部屋のみなさんは香の効果でぐっすり眠ってる……なら、いったい誰が!?)


                      <ザワザワザワザワ

サシャ「ひっ!」 ビクッ!

サシャ「た、ただの、風の音ですよね……」 ブルブル…

―――― 頭骸骨「」 カチャ カチャ カチャ…

サシャ「ッ!」 ガクガク ブルブル…!

サシャ(ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい…) ガクガク ブルブル…!

サシャ(もう食糧庫に盗みに入ったりしません……ごめんなさい、許して下さい……!) ガクガク ブルブル…!





エレン「う……」

エレン「あれ……俺、何してたんだっけか……」 キョロキョロ

エレン「ああ、そうだった……食糧庫の見張りだったんだ……」

エレン「ッ!!」 ハッ

エレン「そうだよ! 幽霊と戦ってたんだ!!」

エレン「幽霊のやつは――――ぐっ!」 ズキッ!

エレン「何だよ、これ……頭にコブが出来てる……」 ズキズキ…

エレン「途中から記憶が無いけど、どうなったんだ……?」

エレン「幽霊のやつはちゃんと成仏してくれたのか……?」

エレン「……あれ? 俺、食糧庫の中にいたよな? 服も脱いでたような気が……」

エレン「なのに、なんで食糧庫の前で椅子に座ってるんだ? 服もちゃんと着てるし……」


ライナー「お、エレン! 無事に戻って来れたか!」

ジャン「びびって小便漏らしたんじゃねぇだろうな?」 ニヤニヤ

エレン「んな訳ねぇだろ!」

サシャ(ひッ!!) ビクーーン!!

アルミン「でも、見た感じ平気そうだし……幽霊は出なかったみたいだね。」

エレン「いや、幽霊は出たぞ。せっかくもらったサンドイッチを食われちまった。」

ベルトルト「何その人間味にあふれた幽霊……」

エレン「けど、みんなのおかげで撃退できた……と、思う!」

ジャン「何だそりゃ。ハッキリしねぇな。」

エレン「いや、途中からあまり覚えてなくてさ……」

サシャ(良かった……やっぱり姿を見せた時点で無意識だったんですね……) ホッ


エレン「でも食糧庫の備蓄も減ってなかったみたいだし、きっと成仏してくれたんだよ。」

ライナー「おいおい、それじゃまるで幽霊が食糧を盗んでたみたいだぞ。」 ハハハ

ベルトルト「冗談を言える余裕があるなら、エレンは大丈夫そうだね。」 アハハ

エレン「冗談じゃないんだけど……ま、良いか。」

ミカサ「……エレン!」 ギュッ!

エレン「ちょ……ひっつくなよ、ミカサ! 暑苦しいだろ!」

ミカサ「無事で良かった……凄く心配した……」 ギュゥゥゥ

ジャン(死んじまえばよかったのに……!) イライライラ…!


ミカサ「…………?」 スンスン

エレン「なんだよ?」

ミカサ「エレン以外の匂いがするような……?」 スンスン

サシャ(ッ!?) ドキッ!

エレン「お前は犬か何かか! 暑いんだから離れろって!」

ミカサ「わかった……」 シュン…


エレン「……あれ、ミカサ。今日はサシャにパンをやらないのか?」

ミカサ「うん。サシャがもう香を作れないと言っているので、お礼をする必要が無くなった。」

エレン「ふーん……そう言えばサシャ、何か顔色が悪くないか? 大丈夫か?」

サシャ「え、ええ、ちょっとお腹が痛くて……」 アハハ…

サシャ(エレンが乱暴にしたからじゃないですか! こんな事、絶対に言えませんけど……)

ジャン「腹痛程度でサシャが大人しくしてるとはな。珍しい事もあるもんだ。」

コニー「何か痛い目でも見たんじゃねーの? 馬鹿は口で言っても懲りねぇからな。」

ジャン「ハッ! 馬鹿が言うと説得力があるな。」

コニー「何だと、ジャン! この野郎!」

エレン「それじゃ……俺は風呂入って寝るから、皆は立体起動の試験頑張ってな。」

サシャ(うう……こんなのまともに動けませんよ……せっかく最近成績伸びてたのに……) グスン…

サシャが自業自得すぎて可愛そうだと思えない
もっと罰が当ってもいいな

もういいだろwwwwwww

まあミカサさんにバレたらフルボッコにされるんですけどね





エレン「よう、サシャ。今日の試験、かなり酷かったらしいな。」

サシャ「ええ、まあ……また十位ギリギリになっちゃいました……」

サシャ(お腹が痛くてまともに動けなかったんですよ……エレンが乱暴にするから……) グスン…

エレン「せっかく最近調子良かったのにな。下手したら今回の試験で抜かれるかと思ってたのに。」

サシャ「いえ、良いんです……ちゃんと納得してますから……」 グスッ…

エレン「ふーん、それなら良いけど……元気出せよ。」

サシャ「ところで、エレンはどうしてここに?」

エレン「死んだ訓練兵の慰霊碑が立てられたって聞いたから、見に来たんだ。」


サシャ「訓練の終わりに教官から連絡がありましたけど、誰かから聞いたんですか?」

エレン「ああ、さっきライナーから聞いた。それで、せっかくだし手を合わせておこうかと思って。」

サシャ「手を合わせる?」

エレン「おう、こうやって手と手を合わせて死者の冥福を祈るんだってさ。マルコが教えてくれた。」 スッ

サシャ「そ、それじゃあ私も……」 スッ

エレン「……? なんでパンなんか持ってるんだ? 飯は食堂で食えよ。」

サシャ「あ……これは供え物で……」

エレン「え!? お前が食い物を誰かに分けるとか……そんなに腹の具合が悪いのか?」

サシャ「そんなんじゃないです!」

サシャ(成仏してください 成仏してください 成仏してください 成仏してください……!) ガクガク ブルブル…


サシャ「う、いたた……」 ズキズキ…

エレン「おいおい、座りこむぐらい腹が痛いのか? 」

サシャ(お腹というか、何と言うか……無理やりエレンがするから……) ズキズキ…

エレン「な、なんだよ……何で俺をにらむんだよ……」 ビクッ

サシャ「エレンが、優しくしてくれないから……」 ポソッ

エレン「すまん、聞こえなかった。もう一回言って――――」

サシャ「なんでもないです!」 ムー!

エレン「なら、なんで怒るんだよ……」 ビクッ

エレン(何か知らないけど、俺が悪いっぽいぞ……覚えがないけど、仕方ないな。) ハァ…

エレン「腹が痛いなら、おぶるより抱えた方が良いか。」 ヒョイ

サシャ「ふぇ!?」 ドキッ


サシャ「エレン!? なんで抱っこしてるんですか!?」 ジタバタ ジタバタ

エレン「おい、危ないだろ! 大人しくしろって!」

エレン「医務室まで運んでやるから、今日は大人しくしとけよ。」

サシャ「…………はい。」 モジモジ…

エレン(サシャは俺と同じ体格だから、ちょっとしんどいな……まあ、運べないほどじゃない……)

エレン(重さはいいとして、流石にくっつくと暑いな……夏だし、我慢するしかないけど……)

サシャ「…………」 ドキドキ…

エレン「…………ん?」 スンスン

サシャ「な、何やってるんですか!?」

エレン「いや、何か……覚えのある匂いのような……?」 スンスン スンスン

サシャ「…………ッ!」 カァァァァァ(///

サシャ「だ、駄目ですよ、エレン! 女の子の匂いを嗅ぐなんて、失礼です!」

エレン「そ、そうだよな……ごめん。」


ミカサ「……エレン?」

エレン「おう、ミカサ。どうかしたのか?」

サシャ「!」 ビクッ!

ミカサ「なぜ、サシャを抱きかかえているの……?」

エレン「ああ、何か腹が痛いらしいから医務室まで運ぶ所だ。用があるなら後にしてくれ。」

ミカサ「……………………わかった。」 ジー

サシャ(すっごい見られてますよ!? あれは獲物を見る目です……!) ガクガク ブルブル…!


コニー「何だ、面白い事やってんなぁ、お前ら。」

エレン「サシャが腹が痛くて動けなかったから、医務室まで運んでるんだよ。」

コニー「あー、なるほどな。かなり無茶したもんなぁ。」

エレン「無茶? 何の話だ?」 キョトン

サシャ「コ、ココ、コニー!? な、ななな、何言ってるんですか!?」 カァァァァ! (///

コニー「…………んー?」

コニー「昨夜、サシャが食堂で居眠りして腹冷やしたんだろ?」

コニー「せっかく俺が起こしてやったのに、残念だったな。」

サシャ「あ、ああ……そういう意味ですか……」 ホッ


エレン「そうだ! 今日の見張り担当はコニーだったよな? 塩を忘れるなよ!」

コニー「そんなのいらないって。幽霊なんかいないんだから。」

サシャ「何言ってるんですか、コニー! 幽霊はいるんですよ!?」

コニー「そんな訳ないだろ……そんなのより、寝不足なのに更に徹夜ってのがキツいぜ……」 ファァ…

エレン「何だ、そんな事言いながら、コニーも昨夜眠れなかったのか。やっぱり幽霊が怖いんだろ。」

コニー「そんなんじゃねぇよ。ま、どうでも良いけど。」

サシャ「どうでも良くなんかないですよ! 幽霊が出るんですよ!? どうするんですか!?」

コニー「はいはい、もし出たらその時に考えるから、お前らはさっさと医務室に行けよ。皆見てんぞ。」

サシャ「…………あ。」 カァァ(///

エレン「無理はするなよ、コニー。無事を祈ってるからな!」

コニー「気持ちだけもらっとくぜー。」



―――― 次の日の朝 ――――


ミカサ「エレン……お腹が痛い。医務室まで運んでもらえないだろうか。」

エレン「お前が体調悪くするなんて珍しいな。それじゃ、抱き上げるからじっとしてろよ……」

エレン「よ、っと……」 ヒョイ

ミカサ(エレンの顔がすぐそこに……これは良いものだ。毎朝お願いする事にしよう……) ドキドキ…

エレン「お前、こんなに重かったのか……ライナーに頼んだ方が良いかもしれないな……」 フラフラ…

ミカサ「」 ガーーン!












             ―――― おわり ――――

最後の行に何書いてあるのか見えない

最近

ラストにシコリを残すのが流行ってるのかな



最後が読めないよ


エロコメなら何でも良かった。
今は色々と間違えた気がしてならない。


>>266>>271
やはりこの世界は残酷だ……(震え声)

もっと軽いノリで書くつもりだったのに、なんでこんな事に……(絶望)



※まとめサイト様へ
もしまとめサイトに掲載されるなら>>1の頭に↓を追加してください。

注意!【ネタバレ・下ネタ・エロ有り】

よろしくお願い致します。


>>280>>282

なんでや! キレイに終わったやないか!

これ以上どうしろと……(震え声)

犯人はコニーだったのか……?

>>284
おもしろいオチだとは思ったけどもっと可愛いサシャが見たかったんだよコノヤロー!

それはそうと乙でした

認めたくないものだな、乙でしたと言うべき流れを

いや、結局エレンの頭殴ってサシャから薬取り上げたの誰やねん!?


>>285
教員に悪戯したり食糧を盗み食いしてたのはサシャだけです。

>>286
これ以上先を書くと、ミカサさんが参戦してしまうので……(恐怖)

>>287
消去法で考えていけば、きっとわかる筈! 真実はいつもひとつ!!

マヂだれやねん

男子はあり得ないやろうし
女子は寝てた

骸骨?
本物がいたって事?

アルミンだよ(適当)


>>290

エレンが殴られた時、食糧庫の入り口は閉まっていた。

食糧庫に窓はなく、あるのは天窓だけ。天窓に鍵はついてない。

可能性のある人物を思いついたら、その人の言動を追ってみると何となく分かる筈。


>>291>>289宛てでした。

ということは天窓から入ってきたことは確定なのか・・・
まだわからんけど二人を抱えて天窓から脱出って凄い体力だな

ライナーかベルトルトか?


>>295
帰りは入口から出て、外からカギ(閂)をかければ良いので……

                   




                  
                   ∴





                                          .

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