鶫「お嬢が……子供のできない体……?」(90)

千棘「そうなんだー。あはは、参っちゃうよね」

鶫「それは、治らないものなんですか……?どんな医者でも?」

千棘「うん……検査してもらって、どうしようもないんだって」

千棘「おかしいと思ってたんだよね。結婚して二年間、別に、欲しくないわけじゃないのにって」

鶫「それは……あいつは、なんと」

千棘「そっかって笑ってた。仕方ないって。でも私には、寂しそうに見えた……」

鶫「そうですか……いや、でもこれはもう、あいつの言う通り仕方ないとしか」

鶫「そうだ、養子という手も」

千棘「ねえ……もしさ」

鶫「はい?」

千棘「あいつの子供を産んで欲しいって、私が言ったら……どうする?」

鶫「……は?」

とか

鶫「な、何を言ってるんですか!?こんな時に、そんな冗談*??*

千棘「冗談じゃないよ」

鶫「そ、そんなの余計問題です!!」

千棘「……いきなりこんなこと言われて、混乱するだろうけど」

鶫「お嬢が変なことを言うからですよ!よ、よりにもよって、私とあいつが……」

千棘「鶫は高校の時に、楽のことを好きだったでしょ」

鶫「……昔のことです」

千棘「それなのに、今でも私たちの側にこうして一緒に居てくれることを、私はすごく感謝してる」

鶫「感謝なんて……私はただ、お嬢の為に」

千棘「……そんな鶫に、こんなことを頼むのは、すごく酷いことかもしれない。酷く失礼なことだとも思う」

千棘「でももし、鶫に、その気があれば……」

鶫「あいつと私がなんて……そんなこと、ありえません……私はもう……あいつの……一条楽のことなんて……」

鶫「……」

鶫「あいつは……あいつには言ったのですか、このことを」

千棘「言ってないよ。こんなこと言ったら怒られるわ」

鶫(……それなのに、お嬢は私に……)

鶫「そんなの、当たり前です。だから、私はこのことを聞かなかったことにします」

鶫「お嬢も、こんなことは誰にも言わないでください」



鶫(くそ……なんていうことだ……お嬢が……)

鶫(……私と、あいつで子供を……?)

鶫(最早女を捨て、生涯お嬢と、そしていずれ生まれるであろうそのお子の為に尽くそうと決めた私が……)

鶫(……な、何をバカなことを!そんなこと、ありえん!!)

楽「」ポケー

鶫(ぶふぅ!な、なぜ人が考えてるときにこいつは!!)

楽「お、よう鶫」ヒック

鶫「貴様……酔っているのか?月見酒とは……珍しいな。普段下戸の貴様が」

楽「なんだよ。俺だって飲みたい夜もあんだよ……」ウイー

鶫「そ……そうだな。すまない」

楽「やけに素直だな……聞いたんだろ」

鶫「……ああ」

楽「お前にも面倒をかけるけど。しばらくあいつのこと、頼む」

鶫「……そんなの、当たり前だ」

楽「ははは、そりゃそうだな」

楽「よし、お前も今日は飲もうぜ」

鶫「な、なぜ私がお前と二人で!」

楽「……頼むわ。色々話、聞いてほしいんだ」

楽「この家だと、千棘以外で色々話せるのは、お前くらいだし」

鶫「……少しだけだぞ」

こんな感じでな

楽「はぁ……」

鶫「おい。何回ため息を吐くつもりだ。お前がしっかりしないでどうする!お前がそんな態度だと余計お嬢が!」

楽「そんなことはわかってる」

鶫「ハッ!」


千棘『そっかって笑ってた。仕方ないって。でも私には、寂しそうに見えた……』


鶫「い、いや、すまない。お前だって辛いのは分かっている……」

楽「……謝らなくていいって。実際その通りだし。たださ」

楽「このこと、まだうちの親と、向こうの義親。あとお前しか知らないんだ」

鶫「あ……」

楽「この屋敷で暮らしてると、うちのあいつらが、色々言うだろ?悪気はないんだろうけど、跡取りがどうとか、さ」

楽「今までもそれはそれで恥ずかしいし、しめてはいたけどさ。今のあいつには、辛すぎるだろうし……」

楽「あいつらだけじゃない。たとえば、集とかだって、言わなきゃ、ぽろっと言いかねない」

楽「でも、こういうのってあんまり周りに言っても、あいつにとって辛いんじゃないかって思うんだ」

楽「それを、どうしようかなってさ」

鶫「……」

楽「いっそしばらく、二人きりでどっか遠くでのんびり暮らすのも悪くないか、ははは」

鶫「そうだな。いや、それならお嬢の助けとして私だって一緒に……」

鶫(お嬢と、こいつと、私、三人で……)

鶫(いかんいかん!こいつはお嬢の為を思って言っているのに!私はなぜこんなことばかり!)

鶫「いや、やはりこういうのは夫婦ふt」

楽「そうだな。鶫が一緒に来てくれたら、助かるかもな」ニカッ

鶫「うっ!!」

鶫(わ、私のこいつへの想いは……もう、捨てたはず……そのはずなのに……

鶫(すっぱり諦めたはずなのに……どうして、こんな……)ギュッ

楽「うん……マジでこれいい考えかもしれない」

鶫「え」

楽「ちょっと千棘と相談してくるわ!!」

鶫「ちょ、ちょっと待て!私は!!」

ドタドタドタ

鶫「行ってしまった……」

鶫(もし、本当にそうなった場合、私は……)

鶫(いや!私のやることは決まっている!お嬢を守る!それだけだ!うん!)

とかね。
今週のジャンプ読んだら、鶫が未来の妄想で
楽の二号さんになる気まんまんだったのを見て
ついスレを立てた。

鶫(あれから数ヶ月が過ぎた)

鶫(三人で引っ越すというのはお嬢も賛成し、すぐに現実のものとなった)

鶫(集英組の組長の知り合いという人物のご好意で借家を安く借り受け)

鶫(一条楽は近くの役場で働きだした)

鶫(私とお嬢も、生活にそれほど困っているわけではなかったが、気分転換のためといった感じで、パートなどをしている)

鶫(家事は三人で行っているが、必然的に休みの多い私とお嬢の持ち回りが多くなる、わけだが)

鶫「な、なんだこれは!!」


[鶫は、うふ~んな雑誌を見つけた!!]


鶫(あの愚かものめ!こんなものを!お嬢が見つけたらどうするつもりだ!ちょっとそうじをしたくらいで見つかるところに隠しおって!!)

鶫(くそ、どうする!?処分すべきか!?だが、下手に捨ててお嬢の目に入ったら……)

鶫「……」


[うふ~んな雑誌]ゴゴゴゴゴゴゴ


鶫「……」パラッ

鶫(待て待て待て私!何を読み初めているんだ!こんなもの、とっとと捨てて……)

鶫(……しかし、わざわざ隠してあるということは、気に入ったということだよな)

鶫(つまりあいつの好みは……)

「へー、巨乳特集ねえ」

鶫「」

千棘「まああいつも男だもんねえ」

鶫「お、お嬢?こ、これは違うんです……決して私の」

鶫(い、いや待て!ここで私のではないと言ったらどうなる?そうなれば当然一条楽のものというにがばれる)

鶫(お嬢は今ナイーブな時期……!愛する……あんなやつでも愛する夫がこんな不埒な本を持っているとばれるのは危険だ!)

鶫「これは私の持ち物です!!」

千棘「……」

鶫(く、これで私はお嬢の中で変態扱いに……しかし悔いはない!だが一条楽、あいつはコロス!)

千棘「プッ……あはは、そんなの違うってすぐ分かるのに」

鶫「い、いや、嘘じゃなくてですね」

千棘「あいつのでしょ。前から知ってる」

鶫「知ってたんですか!?」

千棘「うん」ケロッ

鶫「ならどうして……」

千棘「処分しないのかって?昔なら即処分して、あいつをぶん殴ってたかもしれないけど……ま、仕方ないのよ」

千棘「……やっぱあれ以来どうしてもね、その、する気がさ」

鶫「……!」

千棘「私から断ることも多いし、あいつも私に気を使ってるのか、あんまり誘ってこないしね」

鶫「は、はぁ……」

鶫(こ、こんな話をまさかお嬢からされるとは……)

千棘「でも、流石に外で浮気されたら辛いかなあ。ま、今んとこそんな様子はないけど」

鶫「あ、あいつは……確かに情けないし、優柔不断だし、女たらしで助平なやつですが」

鶫「そんな、最低なことはしませんよ……絶対」

千棘「……そうだよね。うん、私も知ってる」

千棘「……外で浮気されるのは嫌だけど」

千棘「覚えてる?前に私が言ったこと?」

鶫「!あ、あれは忘れてくださいと言ったはずです!!」

鶫「私にもあいつにもその気はありません……それに」

鶫「それに、お嬢はそんなことになって、本当にいいんですか!?」

千棘「うーん、なんでかな。鶫が相手なら、そんな嫌って気がしないのよね」

鶫「は、はぁ!?何を」

千棘「鶫となら、私と一心同体って気がするし……鶫が産んでくれたあいつのあかちゃんなら、私も愛せると思う」

鶫「あ、あかちゃん!?」

千棘「きっとかわいいよ。鶫に似て」

鶫「……お嬢は変です。なんでそんなにあかちゃんにこだわるんですか!?」

鶫「夫婦の愛の形はそれだけではないでしょう!?」

鶫「もし、集英組の跡継ぎのことなんかで悩んでいるんだとしたら、それならいっそ私の手で集英組を壊滅させて!!」

千棘「いや、それはまずいって」

千棘「別に、跡継ぎのことなんてって、そこまで気にしないわけにもいかないけど」

千棘「でも、お義父さんはこの事話しても、笑って構わない、それでもうちの嫁だって言ってくれたし」

千棘「きっと組の人たちだって、事情を話せば、なにも言ってこない」

千棘「だからこれは、本当に私からのお願いね」

千棘「あいつのあかちゃんが見たい。だっこしたい。鶫にしか、それは頼めない」

千棘「それに、楽だって鶫相手なら、きっとその気になるよ。ほら、今巨乳好きみたいだし」

鶫「そ、そんな言い方……卑怯です!」ダッ

千棘「あっ」



鶫(飛び出してきてしまった……帰りづらい)

鶫(しかし、どう考えても今のお嬢はおかしい)

鶫(やはりお嬢は今とてもナイーブな時期なのだ。変な刺激を与えてはいけない)

鶫(そのためには……やはり私はついてこないほうがよかったのでは)

鶫(私がついてきたことが、お嬢を苦しめているのか……?)

「お、いたいた」

鶫「ひっ!」

楽「な、なんだよ、変な声出して」

鶫「なんだ……貴様か」

楽「喧嘩したんだって?」

鶫「なっ!喧嘩などではない!私とお嬢が喧嘩などできるものか!恐れ多い!」

楽「じゃあこのまますぐ帰るか?」

鶫「そ、それは……」

楽「ふっ……なあどこか晩飯食いにいこうぜ」

鶫「はぁ!?お前は帰れ!お嬢が一人になるだろうが!」

楽「そのお嬢様から、今日は二人で外で食ってこいって連絡が来たんだよ」

鶫「お嬢から……?」

楽「そ。たまには少し一人になりたいんだってさ」

鶫「……お前はお嬢が心配じゃないのか?」

楽「そりゃあな。まあ、でもそういうことだから。その話もとりあえずどこかで食うか決めてからにしようぜ」

鶫「……わかった」



鶫「居酒屋とは……」

楽「ここ、結構いけるらしいんだよ。最近この辺の店の開拓しててな」

鶫(正直、こういうところに普通に入るのは初めてだから勝手がわからん)

楽「頼んだの来るまで、話の続きでもするか」

鶫「あ、ああ」

楽「まずあいつの心配だったよな。そりゃあ俺も心配はしてる。あんなこともあったんだしな」

楽「でもさ、千棘は別に、心配して欲しいわけじゃないんだ」

鶫「!」

楽「こう言ったらなんだけど、できないだけで、普通に生活できるし、放っておけば死ぬわけでもない」

楽「ただ、今の自分を受け入れて欲しいって、あいつはそう言ってた」

楽「だから俺も、あいつを過剰に心配したり、気を使うのはやめた」

鶫「そうか……」

楽「それに、いざという時は、お前がいつもあいつにはついていてくれるしな」ニカッ

鶫「っ!だ、だからお前はそういうのが!!」

「どうぞー」

鶫「うっ」

楽「あ、すいません。ほら、食おうぜ」

鶫「あ、ああ」

楽「……」

鶫「……」

楽「ちょっと飲むか。お前も飲むか?」

鶫「……そうだな。たまには」

楽「すいませーん」

「はーい」


楽「いや、でも、お前がついてきてくれて良かったよ」

鶫「え」

楽「俺とあいつだけだったら、かなりギクシャクしてたかもしれないし」

鶫「いや、しかし、私がついてきたことで、逆にお嬢に……」

鶫(お嬢に変な考えを……)

楽「そんなことないって」

楽「あいつ、いつもお前の話してるぜ」

楽「俺も仕事あるし、俺がいない間、お前が一緒にいてくれてるから、俺は安心できる」

楽「一緒に来てくれて、ありがとな」

鶫「……う」

鶫(……変わらない……変わってなかった)

楽「お、おい!急に泣き出してどうしたんだ!?泣き上戸だっけお前」

鶫「う、うるさい!これはなんでもない!」


鶫「た、ただいま、戻りました……」

千棘「おかえり、ごめんね、私が変なこと言ったせいで……」

鶫「いえ、私も急に飛び出したりして……」

楽「変なこと?」

千棘「なんでもないわよ」

鶫「そ、そうだ!お前は気にするな!」

楽「そういう言い方されると、逆に気になるだろ」

千棘「いいからいいから。ていうか楽、あんた酒臭い。今日は一緒に寝ないから」

楽「はあ!?」

鶫(変わってない……お嬢はお嬢。私の忠誠を誓った人だ)

鶫(そして、それを気づかせてくれたお前への、私の想いも)

鶫(忘れた気になっても、捨てた気になっても)

鶫(変わらずに、この胸のなかにあった……)

鶫(……だ、だが流石に……子作りは……)

まあこんな感じやな、うん

千棘「楽」

楽「おう、千棘って、なんで鶫が一緒なんだ?」

千棘「今日からは、この子も一緒に可愛がってあげて」

鶫「お、お嬢……やはり私はこういうことは……それに、私はかわいくないですし……」

千棘「そんなことないわよ。その下着も似合ってて、今の鶫、すごくかわいい」

楽「ああ、お前は可愛いぞ、鶫。来い、可愛がってやる」

鶫「なっ」


鶫「なああああ!!」ガバッ

鶫「ゆ、夢……?」

鶫「私はなんという夢を……!」

鶫「一回顔でも洗ってくるか……」

鶫(二人とも寝ているだろう。足音を立てないように洗面所まで)

「*????*

鶫(ん?二人ともまだ起きているのか?話し声が)

「高校のときに一度告白された相手と一つ屋根の下で暮らしていて、相手への感想がいい奴だなって、あんた本気?」

鶫「」ピタッ

「それ以外ないだろ。それに、俺もあいつもそのことはもう」

「そうなの?じゃあ今でも鶫があんたのこと好きって言ってくれたら、嬉しくないの?」

鶫(ふ、二人とも!なんの話を!?)

「う、嬉しい嬉しくないの話じゃないだろ。だいたい俺にはお前が」

「じゃあ私がいいよって言ったら?」

鶫「……」ドッドッドッド

「はあ?何言ってんだよ。いいわけないだろ」

鶫「……フゥー」

「……そっか」

「でもさ、あの胸で攻めてこられたら、あんたころっとやられちゃうんじゃないの?」

「う」

鶫「」耳ダンボ

「そ、そんなことねえよ」

「口ごもったわね?」

「そんなことないからな!」

鶫(こ、これ以上聞いてはダメだ)


鶫(いいわけない、か。その通りだ……お嬢がなんと言おうと)

鶫(しっかりしろ、私)パンッ


千棘「じゃ、というわけで私は出掛けてくるから、留守番お願いね」

鶫「お嬢!やはり私も影ながら護衛を!」

千棘「大丈夫だって。パート先の友達とちょっとご飯しに行くだけなんだから」

鶫「しかし!」

千棘「ここら辺の治安は、お義父さんの知り合いの人が保証してくれてるし、怪しい奴が来たら連絡が来ることになってるでしょ」

千棘「だから大丈夫。ね」

鶫「はぁ……」

楽「ま、たまには千棘も息抜きしたいだろうし、行かせてやってくれよ」

鶫「うむ……」

千棘「私がいない分、二人とも留守番しっかりするのよ」

楽「へいへい」

千棘「鶫もこいつのこと、頼んだわよ?」

鶫「あ、はい!……え?」

千棘「じゃあ」

楽「おう」

鶫(し、しまったぁぁーー!)


鶫(そういえば、お嬢が出掛けられたら、この家で私たちが二人きり……)

楽「とりあえず飯にすっか」

鶫(いや待て、二人きりだからなんだというんだ!)

鶫(こいつもそんな気はないと言うし、もちろん私だって……)



楽『来い、可愛がってやる』


鶫(ぶふ!こ、こんなときにあの夢を……)

楽「おい、鶫?どうしたんだよ」ポンッ

鶫「ひぃ!?」バッ

楽「な、なんだよ」

鶫「」ドッドッドッド

鶫「い、いや……なんでもない」

楽「じゃあとりあえず飯にしようぜ」

鶫「あ、ああ」

楽「えーと、何にすっかな」ガチャッ

楽「そういや、安売りしてたってうなぎがあるとか千棘が」

鶫(うなぎ!?)

楽「そういや山芋も」

鶫(こ、これは俗に言う……精のつく……)



楽『すまねえ鶫……お前を見ていたら、俺、もう我慢が……』



鶫「」

鶫「」ガンッ

楽「うお!?あ、あぶねえ!台所で何してんだよ!」

鶫「い、いや、なんでもない……」

楽「……プッ」

鶫「な、なんだ急に笑ったりして」

楽「いや、なんかさっきから鶫の様子が懐かしくてな」

楽「高校のときは、たまにそんな感じで変になったりしてただろ?」

鶫「そ、それは!」

楽「最近は、一歩引いてるっていうか。いや、すごい真面目なお前に助かってたけど」

楽「壁を感じてたからさ」

鶫「……」

鶫(確かに、お嬢とこいつが結婚して、もう昔のように接してはいけないと思っていた)

鶫(その為に、自分の気持ちもなかったように振る舞っていた)

鶫(こいつも、それにきづいていたのか……)

まあまあこんなもんでな

鶫(それからしばし、なごやかに時間が過ぎた)

鶫(夕食の準備をし、食べ、後片付けをした後に、まったりとする)

鶫(奴の冗談に私が突っ込んだり、私のおかしな行動を奴が呆れたり、二人で笑い合った)

鶫(こんな風に、私が誰かと過ごすことができるなんて、想像もしていなかった)

鶫(まるで、私が一条楽と、結ばれたかのように……)

鶫(何度もそう思っては、胸を罪悪感がちくりと刺すのを感じる)

鶫(今私がいる位置は、本来それを勝ち取ったのはお嬢なのだ)

鶫(私はたまたまお嬢に忠誠を誓っていたため、一緒にいられるだけ)

鶫(昔、この男を好きだった女子は他にもいた。だがみんな、一条楽がお嬢と結ばれると、それを祝福し、身を引いていった)

鶫(私もそうしたつもりだった)

鶫(なのに、それはつもりだっただけで、今もこうして、この男といられることを喜んでいる)

鶫(お嬢の護衛で良かったとさえ思っている卑怯な私がいる)

鶫(浮気を外道だと言った私こそが外道だ)

鶫(子供の産めないお嬢の代わりに、そんな免罪符を目の前でちらつかされて、それに飛び付こうとしている私は)

鶫(ただの牝犬に成り下がろうとしているのだ)

鶫(しかし)

鶫(どんなに自分を見下げても、貶めても)

鶫(この胸の高鳴りを止められない)

鶫(この男は、この間の晩、お嬢と私の話をしてどう思ったのだろう?)

鶫(もし私に迫られたら、なんて妄想をしたのだろうか?こいつでも)

鶫(お嬢に、私に子供を産んでもらえとまで言われたのだろうか?)

鶫(言われたら、それをどう思うのか)

鶫(もし今ここで……私から、この男を求めたら……)

楽「遅いな」

鶫「ひゃ、な、何が遅いのだ?」

鶫(や、やはり私から行くべきで)

楽「いや、千棘のやつ」

鶫「……そうだな」

鶫(さっと頭は冷えた。時間を見る。十一時近い)

楽「飯を食って、まさかちょっと飲んできて……なんことになってたりして」

鶫「……まさか。流石に、お嬢も、ご自分のお酒の弱さは……」

楽「でもあいつ、一回でも飲んだら、見境無くなるだろ……」

鶫「……」

楽「よし、とりあえず俺が千棘と、あと聞いてる今日一緒に行ってる人の携帯に電話してみる」

鶫「私は一足先に出発しよう。貴様は分かり次第こちらに連絡をくれ」

楽「頼むわ」

鶫(何かおかしな事件にでも巻き込まれてなければいいが)

鶫(さっきまで浮かれていた自分を叱咤する)

鶫(私こそお嬢が遅いことに気づくべきだった。なによりも一番に考える相手がお嬢なのに)

鶫(罪悪感が私の足を早めた)

いやいや、ちょっとそろそろな。苦しくてな。

鶫(聞いていた店は既に出た後か……)

鶫(……ん、一条楽から連絡か)

鶫「どうだ」

楽『千棘は出ねえ。一緒にいった人の話だと、もう解散したみたいんなんだが』

鶫「そうか……」

鶫(こうなると、もはや事件の可能性も……)

楽『ただ、聞いた話によると、二次会で相当飲んだようなんだよ、あいつ……』

鶫「なんだと……」

鶫(思わずうめいてしまった。危険度が増したな……)

楽『そうだ。お前の方から電話してみたか?』

鶫「いや、私はしてないが……」

楽『じゃあしてみてくれ。俺ももう探しに出てるから、このままばらばらで探そう』

鶫「わかった……」

鶫「……」

鶫(お嬢に連絡する。そんな当然の選択肢を、私を無視していた)

鶫(家を出るときも、それを一条楽に任せた。それは……罪悪感からだった気がする)

鶫(自分がさっきまで、一条楽と二人きりで舞い上がっていたのを、声から察せられるのではないか)

鶫(その恐怖が、私からお嬢に連絡する選択肢を、私の頭から消していた)

鶫(だが、もはやそんなことを言っていられる場合ではない)

鶫(恐る恐る、お嬢へと電話をかける。落ち着いて、変な声を出さないように)フー

『はぁい』

鶫(お嬢は、あっさり電話へと出た。思わず拍子抜けしてしまった)

千棘『鶫?ちょうど良かった、私からも電話しようと思ってたんだ』

鶫「は、そうだったんですか。しかしお嬢、今どこですか?あまり遅いので、私たちは心配を」

千棘『ごめんね。とりあえず、今から言う店に迎えに来てよ』

鶫(お嬢に言われた店に向かう。一条楽には、お嬢が見つかったことと、自分が迎えにいくから先に家に戻って欲しいことを伝えた)

鶫(そしてようやくその店に行くと、そこには完全に酔っぱらったお嬢が待っていた……)

千棘「あ、やっときたぁ」

鶫「お嬢……さあ、帰りましょう」

千棘「えー。もうちょっと飲んでかない?あんたも一緒に」

鶫「もう遅いからダメです」

千棘「いいじゃない。それとも……早くダーリンのとこに行きたい?」

鶫「……!」

鶫「そういうわけでは……だいたい、あいつの顔なんて、見たいわけが……」

千棘「なら、ちょっとぐらいいいじゃない」

鶫「……」

鶫(私は何度もこの性分で高校時代苦労したはずなのに)

鶫(そのことを私はすっかり忘れていた)

これでそろそろな、もうええんじゃないかとな

鶫(案の定というべきか、二人で飲み始めてしばらくもすると、私はこれ以上ないくらい酔っていた)

鶫「そりゃあ一条楽のことを好きか嫌いかと問われれば、今も好きですよ!?」

千棘「ふんふん」

鶫「でも私は既にその想いは断ち切ったんです!!ええ、そりゃもう!すっぱりと!」

千棘「へー」

鶫「そうでなければ、あの男と結婚したお嬢に仕え続けられるわけないじゃないですか!」

千棘「鶫も大変だったのね」

鶫「ええそうです!大変な覚悟ですよ!もう女の自分は完全に捨て去ったんです!」

千棘「それはちょっともったいなくない?」

鶫「なくないです!お嬢のためですから!」

千棘「うーん、その私のためって言われると心苦しいのよね」

鶫「ですがそれが私の使命、人生ですからぁ!」

鶫「それなのに……それなのにお嬢があんなこと言うから!また一条楽のことが気になっちゃったじゃないですか!」

鶫「私に一条楽の子供を生んで欲しい!?私は気にしないから!?私が気になるんです!私の心が許さないんです!」

千棘「うーん、そっか。じゃあ私がいいって言うくらいじゃダメかあ」

鶫「今日だって、そりゃあ一条楽と一緒に過ごして、楽しかったですよ……でも、そこにお嬢も一緒にいなきゃダメなんです!」

千棘「うーん……あ、じゃあ」

鶫「はい?」

千棘「子作りも一緒にやればいいじゃない」

鶫(酔った私の脳みそ、この完全な酔っぱらいの戯れ言を、その時はなぜか、なるほど!と思ってしまった)

しゃあないからこれだけやで
あとは自分でなんとかせな

男「湾岸線ついたよー」

男「ETCないからめんどくさ。」

父「お前ってAT・MT両方取ってるよな?免許。」

男「AT限定普通一種だよ。」ブォォォォォ

父「そっか」

男「タコが上がってくの見るのが楽しいなぁ。」ブォォォォンン ブォォォォォォォォォォ

父「大丈夫かおい。200kmこえてんぞ」

母「危ないよ。飛ばすと」

男「大丈夫。湾岸線だし。車あんまいないし。オービスだって180kmまでしかはかれないし」ブォォォォォォォォォォ

父「そういうことをいってんじゃない。飛ばしすぎなんだよ。事故でも起こしたらどうするんだよ」

男「大丈夫だって」ブォォォォォォォォォォォ

男「260km・・・270km・・・」」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月12日 (木) 09:12:39   ID: YBOVo68y

未完になったな…………

2 :  SS好きの774さん   2014年06月20日 (金) 21:37:13   ID: PbBafT5O

だらしなっ

3 :  SS好きの774さん   2014年06月22日 (日) 15:47:32   ID: l_xu1Js4

元スレの>>67の言うようにそもそも>>1が続けて書いてくれてるように見えないんだよな………
推測だけど、交代で代わりに書いてくれてるリレー方式で書かれてるように見えるんだよな………はっきり言うけど、こういう作品は代わりに書いてくれる人が現れない限りずっとこのままだよ?

4 :  SS好きの774さん   2014年08月04日 (月) 03:27:37   ID: SVgcnPjT

続き読みたい

5 :  SS好きの774さん   2014年08月07日 (木) 00:56:13   ID: C3ZzXTAR

早よせいかな

6 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 18:35:30   ID: rxO72WT-

失踪やろこれ

7 :  SS好きの774さん   2014年08月13日 (水) 00:34:03   ID: CO3JgMEM

つづきー!
見たいぞー!!

8 :  SS好きの774さん   2014年08月18日 (月) 03:47:43   ID: MhZcMLNg

これは何人で作っているの?

9 :  SS好きの774さん   2014年11月01日 (土) 18:29:04   ID: 7bRzU_8A

おれの鶫はだれにも渡さんっっっ!!!!!!!!!

10 :  SS好きの774さん   2014年12月26日 (金) 21:49:09   ID: yLfdkE1v

ちとげまるいな

11 :  SS好きの774さん   2015年01月04日 (日) 23:03:10   ID: PcVIxGlq

なんかすごい歯がゆさをかんじる。関係は悪いわけではないのに子供が産めないという事実のせいで、二人の会話に中身がないような感じを覚える
てか続きはよ

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