かなみ「あ、あの...」クーガー「ん?」 (24)

クーガー「カズヤのところのお嬢ちゃんか。こんな朝っぱらから、どうしたんだ?」

かなみ「カズマです。カズくんを連れて来てくれた人...ですよね?」

クーガー「ああ」

かなみ「カズくんを連れてきてくれて、ありがとうございました。えっと...」

クーガー「ストレイト・クーガーだ。なあに、大したことじゃないさ。なんたって、俺は最速の男だからな」

かなみ「そ、そうですか...」

クーガー「お嬢ちゃんの名前は?」

かなみ「かなみ...由詫かなみです」

クーガー「かなみか...いい名前だ」


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かなみ「あの、朝ご飯...まだですよね?」

クーガー「そりゃあ、まだこんな時間だからなぁ」

かなみ「よかったら、一緒に食べませんか?」

クーガー「カズヤはいいのか?」

かなみ「カズくんは、ねぼすけさんですから」

クーガー「ハハッ、相変わらずな奴だ。まあ、おかげでこんなに可憐な少女と食事ができるのだから、感謝しておくとしよう」

かなみ「か、可憐って...///」

モグモグ

クーガー「ほう、大した腕前じゃあないか。カズヤにしても劉鳳にしても、こんなものを作ってくれる子がいるなんざ、羨ましい限りだ」

かなみ「ありがとうございます。あと、カズヤじゃなくて、カズマですよ」

クーガー「スマンスマン。どうにも、人の名前を覚えるのが苦手でな」

かなみ(でも、劉鳳さんは間違えてないような...わざと、なのかな?)

水守「あら、かなみちゃん。それに、クーガーさんも」

橘「珍しい組み合わせですね」

かなみ「おはようございます、水守さん。それに、えっと...橘さん」

クーガー「おはようございます、みのりさん!早起きとはいいものですね。睡眠時間を必要最低限に抑えその分時間を有意義に使うことができ、尚且つ目が覚めた時の清々しい解放感味わうこともできる。それになにより、こうして麗しきご令嬢とのにこやかな挨拶を一番乗りで行えるなんて、まさに速さの有能さの証明になりませんか!?」

水守「みもりです」

クーガー「あぁ~、すみませぇん」

橘「僕は無視ですか?」

クーガー「いたのか、社長」

橘「いましたよ!ちゃんと喋ってるじゃないですか!」

かなみ(水守さんとカズくんは間違えてて、劉鳳さんと私は間違えてない...なにか、意味があるのかな?)

水守「私と橘さんは、この村の診療所にいますから、なにか用があればそちらに」

クーガー「でしたら、そちらの用事が終わりましたら、久しぶりに俺とステキなドライブにでも行きませんか!?」

水守「か、考えておきますね...」ソソクサ


クーガー「さて、と。どこから聞きたい?」

かなみ「えっ?」

クーガー「わざわざ、こんな朝早くから弁当を作ってきてくれたんだ。純粋にお礼って意味もあるんだろうが、そのついでに聞きたかったんだろ?カズヤについて」

かなみ「カズマです。...はい」

クーガー「何故、俺のところに?」

かなみ「なんとなく、そう思ったんです。あなたなら、カズくんを知っているって」

クーガー「なんとなく、ねぇ...まあ、女性は昔からそういう感覚が強いらしいからな。それが当たっていても不思議じゃないな」

かなみ「クーガーさんは、カズくんとはどんな関係なんですか?」

クーガー「大した仲じゃあない。他人同士でツルんでただけさ。それに、俺たちがツルんでたのはほんの一年半ばかしだ」

かなみ「そうなんですか?」

クーガー「ああ。キッカケも些細なもんさ。確か、あれは雨の日だったかな...」

************************

クーガー「よう、坊主。一人で何してる。こんなところで食事か?」

カズマ「...!」

クーガー「ほう、ドーナツか。美味そうだな」

カズマ「ほ、欲しいのかよ?」

クーガー「だとしたら...どうする?」

カズマ(物盗りのワリに身なりは悪くねえな...今日はコイツから奪ってやるか)

カズマ「欲しいなら、奪ってみろよ。ガタイのでかいあんたには敵わねえかもしれねえが、俺はこの喰いもんを放さないぜ」

クーガー「ハッハハハ!冗談だよ、俺は物盗りなんかじゃねぇ」

カズマ「わかるもんか!そうやって優しい声をかけてくる奴には、何度もイタイ目を見せられてるからな」

クーガー「痛いのも裏切りもそこら辺に転がってる...そういうもんだろ?」

カズマ「......」

クーガー「お前はその食い物をどうする。どの道を選ぶ?」

カズマ「渡さねえ。三日ぶりの食事だ!」

クーガー「だったらそうしろ。それでいいんだ。そういう気持ちでいいんだよ」

カズマ「あんた...?」

クーガー「あんたなんかじゃねえ。俺の名前はストレイト・クーガー。誰よりも速く走る男だ」

カズマ「ストレイト・クーガー...」

クーガー「坊主、お前の名前は?」

カズマ「坊主なんかじゃねえ。カズマだ」

クーガー「カズヤか...」

カズマ「カズマだ。アルター使いのカズマだ」

クーガー「だから、カズヤだろ?」

カズマ「カズマだって言ってんだろ?」

クーガー「わかったわかった」

クーガー「ところで、そのドーナツ...美味そうだな」

カズマ「やっぱり食い物狙ってるじゃねえか!」

クーガー「知り合いだから、頼んでるんだよ」

カズマ「...チェッ。しょうがねえな...少しだけなら分けてやるよ」

クーガー「助かる。実は俺も三日食ってないんだ。愛車に乗って気ままに一人旅をしていた俺なんだがな、道中か弱い女性があ~れ~な(以下略)」

************************

クーガー「と、まあこんな具合だ。あっけないもんだろ?」

かなみ「そうですね...ふふっ」

クーガー「どうした?」

かなみ「私がカズくんと初めて会った時と似てるんです。私がカズくんと出会ったのも雨の日で、クーガーさんと似たようなことを聞かれました」

クーガー「ほう」

かなみ「私は、カズくんみたいには抵抗しようとしなかったんですけど...カズくんは」



カズマ『全部くれてやるか、自分の物にするか、腹を据えてからかかれよ』



かなみ「って...」

クーガー「そうか、あいつがか...くくっ」

――――――――――――――
診療所


カズマ「邪魔するぜ」

水守「あら、いらっしゃい。どこか痛むの?」

カズマ「ちげーよ。かなみの奴を知らねえか?起きたらいなかったんだけどよ」

橘「かなみちゃんならクーガーと一緒にいますが」

カズマ「なにぃ!?なんでよりによってあいつと!?」

橘「なにをそんなに慌ててるんですか?確かに珍しいといえば珍しいですが」

カズマ「てめえはあいつの女の目移りの早さを知らねえからそう言えるんだ!えっと、名前なんつったっけ?」

橘「橘ですよ、橘あすか!」

水守「女って...かなみちゃんはまだ子供よ?」

カズマ「女は女だろうが!おい、あいつらはどこだ!?」

水守「あっちの崖の方に...」

カズマ「崖だな、わかった!」ダッ

橘「行っちゃった...意外ですね、彼がかなみちゃんを女だと見ていたなんて」

水守「いえ...きっと、そういう意味じゃないと思いますよ」

――――――――――――――――

かなみ「それでカズくんってば、いつもおばさん達に怒られてるんですよ」

クーガー「ハハハッ!そういうところは変わってねえなぁ。あいつにとってつまらないと思う依頼の時はいっつも寝坊して、時には依頼主と喧嘩しやがったこともある」

かなみ「ほんとうに変わらないんですね」

クーガー「ああ。甲斐性無しのロクデナシだが...根っこには譲らないものを秘めている...あいつはそんなバカさ」

かなみ「私も、同じことを言おうとしてました」

クーガー「お嬢ちゃんにかかればあいつのことはお見通しってわけか」

かなみ「...そうだったら...よかったんですけどね」

クーガー「?」

かなみ「クーガーさんの話を聞いてて、思ったんです。やっぱり私って、カズくんのことをなんにも知らないって」

クーガー「......」

かなみ「...私、あの日まで知らなかったんです。カズくんがアルター使いだってこと。カズくんが私たちのために闘っていたこと...」

かなみ「もし、私がそのことを知っていたら、カズくんはもっと自由に戦えたのかもしれない。君島さんが死んじゃうこともなかったかもしれない。もっと、私にもできることがあったのかもしれない...そう思うと...」ギュッ

クーガー「自分は、あいつの力になれていない。だから、少しでもあいつを知らなきゃ支えれない...そう思うのか?」

かなみ「...はい」

クーガー「...なあ、どうして、あいつの傍にいるんだ?俺からしてみれば、あいつは根っからのケンカ馬鹿だ。血の気の多さを隠すつもりもないガキだ。そんな奴を、どうして信頼できた?」

かなみ「...私の前だと、カズくんは、甲斐性なしのロクデナシでした。でも、カズくんといるとホッとするんです。うまく言えないけど、そんな感じです」

クーガー「それが、あいつがアルター使いと分かった後でもついていきたいと思った理由か?」

かなみ「はい」

クーガー「あいつもそうさ」

かなみ「えっ?」

クーガー「本当にお嬢ちゃんを足手まといだとか思っていたなら、奴は構いもしなかっただろう。あいつはそういう奴だ」

かなみ「そう...なんですか?」

クーガー「ああ。お嬢ちゃんを守りたいから、一緒にいたいから、あいつは反逆し続けた。あいつが俺の知らない力を身に付けたのもそのためだ。もっとも、あいつはそう言わないだろうがな」

クーガー「よっぽど気に入っていたんだろうな。お嬢ちゃんたちとの暮らしを」

かなみ「カズくんが...」

クーガー「あいつはお嬢ちゃんが知らなかったことを重荷になんて思わんさ。だからあまり深く考えすぎるな」ポン

かなみ「......」

クーガー「それに、知らなかったっていうのは俺も同じさ。まさかあいつがおばさん相手に頭があがらないなんて思ってもいなかったからな」

かなみ「そうですね」クスッ

クーガー「とはいえ、知りたいと思うのは大切なことだ。その一環として、まずは俺の車に乗ってみるか?」

かなみ「車ですか?」

クーガー「最速のドライブだ。めったに体験できるもんじゃあないぞ」

かなみ「カズくんも乗せて貰ったことがあるんですか?」

クーガー「ああ。あいつもこれがお気に入りでな。よく乗せてやったもんさ」

かなみ「そうなんですか...じゃあ、お願いしm「クーガーァァァ!!」

クーガー「そんなに声を荒げてどうしたカズヤ」

カズマ「カズマだ!どうもこうもあるか!てめえ、かなみになにするつもりだ!?」

かなみ「ドライブに連れていってもらうだけだよ、カズくん」

カズマ「止めろかなみ!死にてえのか!?」

クーガー「どういう意味だカズヤァ!?」

カズマ「カズマだ!」

かなみ「でも、カズくんは気に入ってたって...」

カズマ「んなわけあるか!あんなもん、頼まれても乗りたくねえよ...とにかく、だ」

カズマ「いいかクーガー、もしかなみを傷付けたりしたら容赦しねえ。例え相手があんたであってもな!」

かなみ「!」

クーガー「...ったく、相変わらず極端な野郎だ。わかったよ、今回のドライブはやめだ」

カズマ「ケッ」

かなみ「もう、カズくんってば...ほら行くよ。お腹空いてるでしょ?」グイッ

カズマ「ん?そういやそうだな」

かなみ「クーガーさん、今日はありがとうございました」ペコ

クーガー「いやいや。俺も美味い飯は食えたし、面白い話も聞けた。礼なら俺からも言わせてもらう」

カズマ「かなみの飯を喰ったのか!?」

クーガー「彼女はお前の所有物じゃないだろう」

カズマ「それはそうだけどよ...それよりかなみ、こいつに変なこと吹き込まれてねえだろうな?」

かなみ「それは秘密だよ。ね、クーガーさん」

クーガー「ああ。これは俺たちだけの秘め事さ」

カズマ「なんだそりゃ...」

テクテク

かなみ「~♪」

カズマ「なんでそんなにゴキゲンなんだ?」

かなみ「ひみつだよ」

カズマ「またかよ...」



カズマ『いいかクーガー、もしかなみを傷付けたりしたら容赦しねえ。例え相手があんたであってもな!』



かなみ「...ふふっ♪」

かなみ「カズくん、今日こそおいしいって言わせてみせるんだから!」

カズマ「言うじゃねえか。期待はしないでおくぜ」

かなみ「そう言ってられるのも今の内だよ。クーガーさんはおいしいって言ってくれたもん」

カズマ「市街の奴の舌なんざアテにならねーよ。基本は不味いし、うまいもんも量が少ねえからな」

かなみ「もう、そんなこと言って...だったら、食べてみてよ」

カズマ「へいへい」

モグモグ

かなみ「どう?少しはうまくなった?」

カズマ「いや、相変わらずだ」

かなみ「むう...」

カズマ「けどまあ...懐かしい」

終わり

素晴らしかったです! ありがとうございました。

終わりです。スクライド本編の20話開始前のイメージで書いてみました。そういえばかなみとクーガーの会話シーンってなかったなという思いつきです。

バカズマ(アニメ)と反逆カズマ(漫画)どっちが好き?



いいスクライド感だ

これは良い原作再現
GJ

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