男「別れるか」女「いやよ!」(36)

女「ただいまー」

女「ふう、ご飯でも作りますか」ピラ

女「ん?」

「女へ
 俺は家から離れることにした。君とは別々に暮らすことにするよ。
 10時には東京に着く。そのころにはこの手紙は着いてるかな?
 家のことは心配しなくていい。じゃあね。俺の心は変わらない
                           男より」

女「」

翌日

モブ子「ねえ聞いた?女さん…」ヒソヒソ

モブ美「ええ…彼氏に逃げられちゃったって…」ヒソヒソ

友「え?」

友(意外だなあ…二人とも凄く仲良かったのに)

友(ちょっと慰めに行ってやるか)

女宅

ピンポーン

友「女ちゃーん。お邪魔するねー」

友(う…空気重…つーか女のお兄さんいるじゃん…やばい凄い場違い早く帰りたい
  死にたい)

女「…ああ、ようこそ…兄のことは覚えてるわよね?以前会ったでしょう?」

友「ああ…うん…ご無沙汰です」ガシ

兄「こちらこそ」ガシ

女「…コーヒーでも」

女「兄さんもいかが?」

兄「いやいいよ」

女「そう」

兄「そういえば君は煙草を吸うな。一本どうだ?」

友「あ…じゃあお言葉に甘えて…」スパー

友「…」スパー

友「あの…灰皿ありません?」

女「ちょっと待って…」

女「…」

女「…ないみたい」

女「…う」

女「うわああああああああん!!!!」ダダダッ

友「え!?」

友「ちょ、女ちゃん!?」

友「…行っちゃった」

兄「そっとしといてやれ…大方、あのろくでなしを思い出したんだろう。あいつ
  はいつも灰皿を持ってたからな…」

兄「もうご存じだろうが」

友「…お暇したほうがいいようですね…」

兄「まったく…あの野郎、女つくって東京へ駆け落ちしやがって…」シカト

友「(無視すんなよ…てかどうやって答えればいいのこれ?)…お気の毒に」

兄「5年も付き合ってたんだぞ!!あいつはこれからどうやってくっていくんだ?」シカト2

兄「はじめから気に入らなかったんだ!!でも法の上では弟だし…こっちも精一杯
  努力したさ。あいつを紳士と思ったことがあるか?」

友「(うるせえな…)終わりにする気ですか?」

兄「女にできるのは離婚だけだ。ちょうど君が来た時その話をしてたのさ」

友「そうですか…(あ、女帰ってきた)」

女「取り乱してごめんね。まだ帰ってなくてよかった」

女「…実は頼みたいことがあって」

女「男にあってきてくれない?」ヒソヒソ

友「ええ~…」

友「俺あんま事情しらないんだけど…」

女「そのほうが都合がいいの。兄をみたでしょう?」ヒソヒソ

友「(…確かに。半殺しにしかねん)まあ、役に立てるならよろこんで」

女「ありがとう…じゃあここにいってくれない?」ピラ

友「ん」

某ホテル

友「ここか」ピンポーン

男「はーい…」

男「あっ!!友じゃん」

男「まあまあ入って。よく来てくれたね」

友(意外な反応だな…つか部屋ぼろっ)

男「ところで、何のようかな?」

友「女に頼まれました」

男「一緒に夕飯を食わないか?君はいけるクチかい?」

友「ええ、まあ」

男「じゃ、いこう」

男「せっかくだ。私がおごろう」

友「おひとりですか?」

男「ああ。それどころか3日も喋ってないんだ。東京人とは人種
  がちがくてね」

友「東京には詳しいんですか?」

男「いいや」

友「このホテルはどうやって見つけたんです?」

男「教えてもらったんだ。安いのがよくてね」

友「私がきた理由がわかりますか?」

男「そろそろ誰か来るとおもってたんだ。女から手紙が何通も
  きていたし」

友「それなら話がはやい」

男「まだ一通も読んでないけどね」

男「面倒な役を引き受けたな」ニヤッ

友「まあ」

男「じゃ、早くすませるか。それから夕食だ」

友「女がどれほど悲しんでるかご存知ですか?」

男「いずれ立ち直る」

友「女が何かしましたか?」

男「いいや」

友「女に不満でも?」

男「なかったよ」

友「なら、あなたは酷いことをする奴だ。あっちには何の非も
  ないのだから」

男「そのとおりだ」

男「それで?」

友「わかってないようなら、これ以上何もいいません」

男「だろうな」

友「だろうなじゃないでしょう!一円も残さずにすてるなんて、信
  じられない!」

男「どうして?」

友「どうやって食っていけというのです?」

男「5年もおれに養ってもらったんだ。目先を変えて自活という
  も悪くない」

友「できるもんですか」

男「させてやればいい」

訂正
男「させてやればいい」じゃなくて

男「させてみればいい」です

友「もう女を愛していないんですね?」

男「かけらもね」

友「子供たちはどうするんです?」

男「小さいころは可愛かったけど、大きくなってからはどうでもいいね」

友「あなたは人でなしだ」

男「ご明察」

友「少しは恥ずかしいとおもわないのですか?」

男「ああ」

友「みんながあなたの噂をしていますよ」

男「いわせておけばいいよ」

友「金がなくなったらどうする気ですか?」

男「稼ぐさ」

友「あなただけの問題じゃないんですよ」

男「女のことかい?だったら再婚すればいいじゃん」

友「女にその気はないようです」

男「俺を悪くいって離婚しても構わない」

友「女とそんなに離れたいんですか」

男「毛ほどの違いもない」

友「またまた、舐めてもらっちゃ困りますよ」

友「どうせ駆け落ちでもしたんでしょう」

男「おれが?」

男「あはははははははははは!!!」ゲラゲラ

男「馬鹿じゃないの」ギロッ

友「では駆け落ちではないんですね?」ビク

男「冗談じゃない」

友「本当に?」

男「しつこいな」

男「じゃあどうして女を捨てたんです?」

男「ラノベ作家になるためだ」

休憩

友「…は?」アゼン

男「中学のころからの夢なんだ」

友「でももう三十じゃないですか」

男「だから今しかないと思ったんだ」

友「飽きたらどうするんですか?」

男「あるわけがない」

友「そんなもののために全財産捨てたんですか?」

男「少なくとも女と子供よりは価値がある」

友「もし才能がなかったらどうするんです?」

男「書かなくてはいけないんだ」

友「別の職業にしたらどうです?ほどほどでも、楽しくやっていける。けど作家はちがう」

男「君は大バカ者だ」

友「なぜです?本当のことを言ったまでだ」

男「俺は書かなくてはならないと言ったのだよ。書かずにはいられないんだ。川に落ちれば流されるか
岸にあがるかの二つに一つじゃないか」

友「…女はやり直したいと思っているようです」

男「くだらないね」

友「子供が物乞いする羽目になってもいいんですね?」

男「知ったことじゃない」

友「…あなたは最低な男だ」

男「言いたいことは全部言い切ったかい?じゃあ、ごはんをいたただこうよ」

友(それから俺は女のもとに戻ってことの次第を報告した。女は顔面
  を蒼白にして怒った。男の逃げた理由が愛人でなかったのが許せ
  なかったようだ。多分、相手になれるものではないからだろう。男
  は俺とわかれる直前に女について一言だけこう呟いた。「どうして
  女性というものは美しくあろうとするのだろう?」と。俺は何もいわな
  かったし、男も何も言わなかった。)

友(あれから5年たった)

友(俺は東京に住むことにした)

友(親には地方の短大で十分といわれていたのだが、ここらの人間は余りにも退屈だった。日々の日常の話は無論のこと、エロ話を
 している時でさえ、驚かせるものなど何もなかった。親なんて、一応反対はしたが、まったく情熱をそそらせず、簡単に言いくるめること
 ができた)

友(むこうには大先輩が一人いて、まったく面白くないラノベを書いている。その先輩は馬鹿みたいにお人よしで、馬鹿みたいに太っているゆえに、何度も金を貸しては損失している。ねこばばしたやつも、一緒に
 なって笑ってしまうほど滑稽な人だ。とりあえずその人の近くに住んで
 見ようと思う)

友(東京に発つ前に女と話をした)

友「男について何か聞きましたか?」

女「いいえ、死んだんじゃないかしら」クスクス

友「東京でばったり出くわすかもしれません」

女「睨んでくれれば結構よ」

友「金に困っていたらどうしましょう?」

女「飢えるがいいわ。私の老後の楽しみに貢献するわね」

友「男があなたを求めてたらどうします?」

女「そのときは―」

女「そうね、そのときは、キスの一つでも送ってやろうかしら」ニッコリ

東京

友「ふう、ここが先輩の家か」ピンポーン

先輩「はーい…?…あ!!友じゃん!!!!!!!」

友「ご無沙汰です」

先輩「なんだよ~来るなら言えよ!!で、なんでここにきたの?高校は?あ、もう大学生だっけ?そういえば何年ぶり?
   元気にしてた?ちゃんと飯食ってる?トマトみたいな髪形じゃないか。美容院でも紹介しようか?なんなら今からでも…」

友(やべえばかみたい)

先輩「あ!そうだ!僕に恋人ができたんだ!!」

友「知ってます」

友「4年前から、そして一カ月ごとにメールで」

先輩「あれ、そうだっけ?」

先輩「ていうかここにいるけどな」

友「ええ、世界一かわいいんでしょう」

先輩「おーい、妻!!」

妻「なに?」

友(は!?なにあれ!?ボン・キュッ・ボンすぎだろ!!なんつーエロい体してんだ訴えるぞ!)

先輩「覚えているだろ?」

先輩「この前話した後輩だよ」

妻「ええ、もちろん」

先輩「ああ、あと一時間早かったら夕食を一緒にできたのに!」

妻「あなた騒がないでよ。恥ずかしい」

友「苦労しますか?先輩が相手だと」

妻「ええ」

妻「…とっても」ニッコリ

友「仕事のほうはどうです?」

先輩「絶好調さ。いい作品じゃないけど、売れるんだ」

友「アニメ化はしましたか?」

先輩「したらメールを百通おくるよ」

友「男っていう作家ってしってますか?」

先輩「……知ってるの!?」

友「ええ、まあ」

妻「あんな人、二度とみたくないわ」

先輩「まあまあ」

友「男とは知り合いなんですか?」

先輩「まあね……彼は素晴らしい作家だ。あんなの見たことがない」

友「男が?だったら人違しました」

先輩「男の瞳の色は?」

友「灰色」

先輩「愛想、無愛想?」

友「無愛想」

先輩「体格は?」

友「小柄」

先輩「人違いじゃないね」

友「でも書き始めたのは5年前ですよ」

先輩「そのとおり。すごいやつだ」

友「いやまさか」

友「ぼくの評価が間違ってたことなんてないだろ?はっきり言うが、あの男は天才だ。
  百年後もし僕の名前が残っているとすれば、それは男と知り合いとしてだ」

妻「私は酷い作品だと思ったわ」

先輩「あの作品はおなじ作家でないとわからないよ」

先輩「じゃあ、ぼくは散歩がてら客を送って行こうかな」

先輩「きみの家はどこ?」

友「○○です」

先輩「あ、それなら寄り道していかないか?」

友「…?いいですよ?」

20分後

先輩「ここだ」

友(あ、5年前に男と一緒に入った店だ)

先輩「ここに男がよく来るんだ」

友(いかにもこだわりのないあの人らしい)

先輩「入ってこうか?」

友「ええ、ぜひ」

先輩「やあ、男。ひさしぶり」

男「ようデブ君。出口は右手だよ」

先輩「実はきみの古い友人をつれてきたんだ」

男「…?見ない顔だな」

友「女の近況でも教えましょうか?」

男「…!懐かしいな。あれから何年たった?」

友「5年です。調子はどうです?」

男「どう見える?」

友「飢え死にしそうですね」

男「飢え死にしそうなんだ」

友「貯金はどうしたんです?」

男「すべて原稿用紙に変えた」

友「家じゅう紙だらけでしょうね」

男「すべて焼いたから問題ない」

友「失敗作だったんですか?」

男「素晴らしい出来だった」

友「ではなぜ」

男「書き終えたら興味が失せた。あとはじゃまなだけだ」

友「作品を見せてくれますか?」

男「なぜ」

友「買う気になるかもしれない」

男「売る気にならないかもしれない」

友「これからどうするんです?」

男「ここに泊るさ」

友「徹夜で仕上げるんですか?」

男「いや、公園は寝心地が悪くて」

友「追い出されますよ」

男「店を変えるさ」

友「いつまで続けるつもりです?」

男「生活が変わるまで」

友「夕食を奢りましょうか?」

男「必要ない」

友「言っておきますが善意ではありません。あなたが死のうが生きようがどうでもいいことです。」

男「ではなぜ」

友「あなたともっと話がしたいからだ」

男「じゃ、行こう。まともな飯は久しぶりだ」スタスタ

先輩「…おいてかれた」

友「…」ペラッ

男「…何か面白い記事でもあるか?」

友「いいえ」

男「…うまかった」

友「一服でもしていきます?」

男「ああ」

友「コーヒーでも飲みましょう」

友「この五年間何してたんですか?」

男「小説を書いていた」

友「金はどうしてたんです?貯金なんてとっくに切れたでしょうに」

男「あらすじを書く仕事をしていた」

友「食っていけるんですか」

男「雑草を食う分には問題ない」

友「病気になりますよ」

男「いざとなったら頼らせてもらおう」

友「お断りします」

男「だろうな」

友「家族のことは思い出しますか?」

男「そういえば妻がいたな」

友「子供もいましたよ」

男「よくおぼえていない」

友「原稿を持ち込んでみたらどうです?」

男「興味がない」

友「嘘だ。評価が気になるはずです」

男「知り合いの意見も気にしないが」

友「作家ならば名声には無関心でいられないはずだ」

男「どうでもいいね」

友「魅力的だとは思いませんか?あなたの本を読んで多くの人が感動するんですよ?」

男「まるでメロドラマだな」

友「誰もいない無人島で書く気になれますか?」

男「おおいに創作力が湧くね」

男「きみは俺に不満があるようだな」

友「まさか、獰猛な動物がどんなに残酷に弱い動物をたべようと不満がないのと同じです」

男「ではなぜ俺を訪ねてきた?」

友「あなたの心に興味があるのです」

男「人としてか?」

友「ええ、単純に」

男「なら俺に不満がないのも当然か」

友「そういうことです」

男「いやな奴だな」

友「だから気が合うんでしょう」

友「恋愛はしましたか?」

男「5年前にしつくしたさ」

友「おモテになりますね」

男「色恋にはうんざりだ」

友「奇妙なことを言いますね」

男「時間の無駄だからな」

友「では本能は酷く厄介でしょう」ケラケラ

男「なぜ笑う」

友「あなたは清らかでいたいのに、性という泥のなかを転げ回り、キスしたいという欲求にかられる」

男「つづけろ」

友「すると奇妙なことが起きる。泥から出た後なほうが、あなたはずっと清らかな気分になっている」

友「どういう気もちになるか教えてくれますか?」

男「…」

友「…帰りましょうか」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年08月30日 (水) 18:55:45   ID: Gz5gk0UE

2 :  SS好きの774さん   2017年10月28日 (土) 05:29:17   ID: BuoQm9K7

くっそつまらん時間の無駄だったわ

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