国広一「ライバルは執事さん」 (93)


透華「では今日より、あなたたち三人は我が龍門渕家のメイドということで……はあ」

透華「三人とも。本当に、よろしいんですのね?」

智紀「ん」

純「拾ってもらった身としちゃあ、その恩義に報いないと寝覚めが悪いんだよ」

透華「……学校では、対等の友人として接してくれると嬉しいですわ」

一「もっちろんだよ、透華」

透華「ふふ。ありがとう、はじめ」ニコ

一「えへへ///」モジモジ

智紀(嬉しそうにしちゃって)

純(やっぱガチだよなぁ、国広くん)


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透華「さて。それではあなたたちの教育係を紹介しますわ」

一(教育係?)

透華「ハギヨシ!」パチン


シュン


ハギヨシ「御前に」

一「!?」ビクッ

智紀「!?」ガタッ

純「!?」ギョッ


透華「紹介しますわ、我が家の筆頭執事の萩原。私はハギヨシと呼んでいます」

透華「差し当たり三ヶ月ほど、あなたたちの面倒を見させますわ」

ハギヨシ「」ペコリ

純「今こいつ、何もないところから現れなかったか?」ヒソヒソ

智紀「まさかリアルで『指パッチン召喚』が拝めるなんて……今度動画撮らせてもらおう」ヒソヒソ

一「え、なにそれそんな名前があるの?」ヒソヒソ

一(っていうか、うわぁ……男、かぁ)ゲンナリ


ハギヨシ「お三方」

三人「「「!!」」」ビクッ

ハギヨシ「国広一様、井上純様、沢村智紀様でございますね」

ハギヨシ「ただいまご紹介に預かりました、萩原です。非才の身ながら当家の家宰を務めさせていただいております」

ハギヨシ「透華お嬢様のご友人ということで、本来ならば賓客として遇させていただくところなのですが……」

ハギヨシ「この度お三方の教育係を仰せつかりましたからには、貴女方の立場は私の教え子ということになります」

ハギヨシ「研修期間中、多分に礼を失した言動がありましょう。先立って、かかる無礼をお詫びさせていただきます」ペコ

三人「「「……」」」ポカン


透華「もう、ハギヨシったら。みんな唖然としておりますわよ」クスクス

ハギヨシ「はは。三行でまとめた方がよろしかったでしょうか?」

透華「そうしてあげなさいな」

ハギヨシ「私は執事の萩原です」

ハギヨシ「貴女方の教育係でもあります」

ハギヨシ「使用人道を志すからには、少なからず御覚悟くださいませ」

透華「と、いうことらしいですわよ?」

一「え。あ、うん」


透華「さてハギヨシ。はじめたちの研修中、貴方を私の側仕えから外しますわ」

透華「衣の世話と並行して教育指導と三足の草鞋では、さしもの貴方とて大変でしょうから」

ハギヨシ「お気遣いいただき汗顔のいたり」

ハギヨシ「しかしお嬢様……僭上に申し上げるようですが、無用の儀にございますれば」

透華「ふむ?」

ハギヨシ「主君へのお側仕えと主命の履行、すべてを精到に果たせなくてなにが執事でありましょうか」

ハギヨシ「透華様におかれましてはこれからも、常と変わらず私にご下命くださればよいのです」

ハギヨシ「いついかなる時でも『ハギヨシ』と……そう、お呼びいただければ」

透華「……ふふっ。野暮なことを言ったようですわね」ニコ


一「……」

智紀「なんだか、圧倒される」ヒソヒソ

純「あーんな『満身これ忠義』、みたいな御仁がオレらの目付になんのかよ」ヒソヒソ

純「こりゃ覚悟した方がよさそうだぜ国広くん」ヒソヒソ

一「……」

純「おい、国広くん……はじめ?」

智紀「?」

一「……」ジー


透華「私はそろそろ行きますわ。ハギヨシ、後のことは頼みましたわよ」

ハギヨシ「はっ」

一「あ……」

透華「一、純、智紀。がんばってくださいましね」


ガチャ バタン


一(ああ、行っちゃった)シュン


ハギヨシ「さて。国広様、井上様、沢村様」

一「……」

ハギヨシ「これから支給品の配布やお屋敷の案内などを行っていきますが」

ハギヨシ「その前に、一つ。大前提として確かめさせていただきたいことがあります」

智紀「前提?」

ハギヨシ「ええ。皆さまはお嬢様より、もう一人の我が主である天江衣様の『遊び相手』として勧誘された、と承っております」

純「ああ、その通りだぜ。衣本人との面通しも済んでる。実力については疑ってくれるなよ」

ハギヨシ「めっそうもない。お嬢様のお目に適った以上、お三方の雀力について、私ごときが口を差し挟む余地はございません」


一「……だったら、なにが問題なワケ?」

ハギヨシ「簡単なことです。皆さまはあくまで『遊び相手』としてスカウトされたのであって」

ハギヨシ「お嬢様より、当家のメイドとなることを強要されたわけではない。そうですね?」

智紀「ん」コクリ

純「違いないな」

ハギヨシ「自らの意思で、龍門渕のしもべたることを選ぶと、そういうのですね?」

一「……さっきからそう言ってるじゃん」フン

ハギヨシ「よろしい」ピシャリ


ハギヨシ「それではこれより、貴方たち三人がメイドとして最低限の水準に達するまで」

純「……ん?」

ハギヨシ「私は貴方たちを、お嬢様のご学友とも、衣様のご朋輩とも見なしません。極論女性とさえ、人間とさえ見なしません」

智紀「えっ」

ハギヨシ「妥協はしません。遠慮もしません。容赦などもってのほか」

一「ちょ」

ハギヨシ「国広『さん』、井上『さん』、沢村『さん』」

三人「「「……」」」

ハギヨシ「どうか、御覚悟召されますよう」ニッコリ


一(そうしてボクたちの、地獄の三ヶ月が幕を開けた……)



ハギヨシ「こちらが皆さんに支給する制服となります」

智紀「ヘッドドレスにロングスカート、エプロンドレス……オールドスタイルあるいはヴィクトリアンスタイルと呼ばれる、華美さを取り除いた実用型メイド服……」マジマジ

一「く、詳しいねともきー」

純「なあ。オレもこれ着なきゃあ、当然ダメだよな?」

ハギヨシ「いえいえ。こんなこともあろうかと、井上さん用に燕尾服の用意もしてあります」

純「えっ」

智紀「で、出た! 執事名物『こんなこともあろうかと』!」ガタッ

一「ともきー……」


一(まあ、一番濃い地獄を見たのは、主に純くんだったんだけど)



純「んでさあ、ハギヨシ」

ハギヨシ「『萩原さん、お聞きしたいことがあるのですが』」

純「……へ?」

ハギヨシ「そういう時は『え?』です。使用人たるもの感嘆符は口に出さず、胸の内にしまいこむのが本来の形ですが、今はそこまで求めません」

純「ちょ、ちょっと待ってくれハギヨシさんよ」

ハギヨシ「『少しお待ちいただけませんか萩原さん』……その服に袖を通した以上、妥協しないと申し上げたはずですが?」ニッコリ

純「」

一「うわあ」

智紀「がんばって……くださいませ、純さん」

一(順応早いなぁ)

ハギヨシ「『沢村さんは順応がはようございますね』、ですよ国広さん」

一「!?」


一(でもきつかった。うん、きつかった)



ハギヨシ「国広さん」

一「」ビクッ

ハギヨシ「向こうの窓枠に埃が残っています」ニッコリ

一「も、申し訳、ございませんでした……」ピクピク

ハギヨシ「沢村さん」

智紀「……」

ハギヨシ「奥から三番目の部屋のベッドメイク、端が乱れています。直してきてください」ニッコリ

智紀「はい」ガックリ

純「あの人、あそのこの部屋一度も入ってないはずだよな?」ヒソヒソ

一「……エスパー?」


一(貧困な語彙をさらすようだけど、ホント、他に言葉が見つからなかったんだよ。いやマジで)



ハギヨシ「いってらっしゃいませ、お嬢様!」

三人「「「いってらっしゃいませ、お嬢様」」」

ハギヨシ「声が小さい。元気よく、張りを出していきましょう」ニッコリ

三人「「「いってらっしゃいませ、お嬢様ッ!!!」」」

ハギヨシ「怒鳴ればいいというものではありません」ニッコリ

三人「「「いってらっしゃいませ、お嬢様!」」」

ハギヨシ「お辞儀の角度が甘い。最敬礼は45度です、それ以上でも以下でもなく、45度。忘れないように」ニッコリ

三人「「「いってらっしゃいませ、お嬢様」」」

ハギヨシ「今度は声が小さくなりました。もう一度最初からやり直し」ニッコリ


一(そんな日々の中で一つ、嫌というほど思い知らされたことがあった)



純「スープの仕込み終わったぜ……終わりました、萩原さん」

ハギヨシ「井上さんは料理の才能がお有りのようですね。メイドではなくシェフ、という道もありますよ」カチャカチャ

純「そっちの方が肩肘こらなくていいかもな、ってなにしてんすか」

ハギヨシ「そろそろ衣様がりんごジュースを御所望される時間かと思いまして、その準備を」

智紀「……それって、毎日かっちり時間が決まってるんですか?」

ハギヨシ「いえいえ。あの通り気まぐれなお方ですから。そういう気配を察したまでで」ニッコリ

一「ちょっとなに言ってるのかわかりません」


一「っていうかそれ、ジュースじゃなくて紅茶の用意じゃあ」

ハギヨシ「お嬢様のお呼び出しも間近に迫っておりますので」

ハギヨシ「あの方はティータイムの時間をきっちり決めておられます」

一「透華……お嬢様の? でもそれじゃあ、どっちか片方しか対応できないんじゃ」

ハギヨシ「あ、ちょっと失礼」


シュン


一「!?」


シュン


ハギヨシ「ただいま戻りました。衣様のお世話はこれで一段落です。では次はお嬢様の方に」


シュン


一「!?!?!?」


ハギヨシ「お待たせしました。研修の続きをしましょう」

純「あの、一つ聞いていいですか」

ハギヨシ「どうしました?」

純「その『シュン』ってヤツは、どういう原理になってるんですか? 気になってしょうがないんすけど」

ハギヨシ「使用人道を極めれば、いずれ自ずと理解できるようになりますよ」ニッコリ

純「答えになってねえ」ヒソヒソ

智紀「っていうか、使用人道ってなに」ヒソヒソ

一「ボクらはいったい、なにを極めさせられようとしているんだろう……」ヒソヒソ



一(なんていうか、次元の違いってヤツだよね。教えを受ければ受けるほど思い知らされたよ)

一(それがもう、ボクには悔しくて悔しくて、しょうがなくて……)


ハギヨシ「三ヶ月間お疲れ様でした、皆さん。これにて研修を終了します」

純「」グッタリ

智紀「」ゲッソリ

一「……」

ハギヨシ「これ以降、日常生活で常に敬語を使わずとも、咎めることはありません」

純「や、やった……」

ハギヨシ「ただ、メイド服あるいは執事服に袖を通した時は別ですよ」

智紀「私も執事服着ていいのかな」ボソ

ハギヨシ「お嬢様のお許しがない限り、あの服を着た貴女たちは『使用人』です。そこのところを弁えるように」

一「そんなこと、いちいち言われなくてもわかってます」ムスッ


純「しっかし、きつかった。世のメイドってヤツはみんな、こんな苦労を味わってるもんなのか……」

智紀「今度メイド喫茶に行ったらチップ弾んであげよう……」

一「これで最低水準とか、恐ろしい業界だよ……」

ハギヨシ「む? なにか勘違いなさってるようですね」

三人「「「?」」」

ハギヨシ「貴女たちはすでに、いつ世に出ても恥ずかしくないレベルのメイドですよ?」

三人「「「えっ」」」

ハギヨシ「貴女たちにはこの三ヶ月で、基礎から中級の応用まで叩きこみました」

ハギヨシ「仮に今すぐ社会に出たとしても、満足に暮らしていける程度のお給金は、確実に頂けることでしょう」


純「……おい」

ハギヨシ「はい?」

一「ボクらを、騙したってワケ?」

ハギヨシ「騙したなどとは人聞きの悪い」

智紀「だって萩原さん、これが最低限だって」

ハギヨシ「御当家の最低限とは、これすなわち社会一般における標準以上です」ニッコリ

三人「「「……」」」

ハギヨシ「諒解いただけましたか? それでは本日は解散としましょう」

ハギヨシ「私は所用がございますので、これにて失礼」



ガチャ バ゙タン


純「普通にドアから出てく姿に違和感を覚えるあたり、オレも相当毒されてるな」

智紀「同感」

純「ともあれ、オレらの地獄もこれにて一段落ってわけだ」

純「どうよ二人とも、記念になんか美味いもんでも食いにいかねえ?」

智紀「なんの、記念?」

純「無事生き延びた記念、かな」

智紀「ああ……」

純「国広くんはどうする?」

一「……」


純「って、またかよ。おいはじめ? どうした、どっか調子悪いのか?」

智紀「ふふ、とうとう私の看護テクが火を吹く時が来た。萩原さんのお墨付きだから任せて」フンス

一「……ボクは、さ」

智紀「?」

一「ボクはさ、透華の一番になりたかったんだ」

純「……はじめ、お前」

一「ボクにとっての本当の地獄っていうのは、透華に出会う前の日々のことをいうんだ」

智紀「……」

一「あの地獄から引きずり上げてくれた透華のためなら、なんだってする。してあげたい。だからメイドにだって志願した」


一「透華が一番に想ってる人は、やっぱり衣だよね。これはもう、しょうがないってボクも納得した」

一「だからボクは、透華『を』一番に想ってる人間になりたかった」

一「透華の一番側にいて、一番役に立つ人間になって、一番に褒めてもらいたかった」

一「でも……」



『ハギヨシ』

『ここに』



一「あの姿を見ちゃうとさ。あらゆる意味で――遠い、って思わせられるんだよね」


純「……」

智紀「……」

一「ボクのライバルは強すぎる。強敵すぎるんだ」

一「仮にも、あの人から一人前と認められるレベルのメイドになったっていうのに」

一「いまだに、目指すべき山の、頂のかたちすら見えてこない」

一「そう思うと、どうしても……沈んじゃってさ」

一「はは、ごめんね。なんか愚痴聞かせちゃって」

純「別に構わねえよ、そんなの。それよりもさ、お前」

智紀「もしかして、はじめは……萩原さんが、憎いの?」


一「んー………………」ウデグミ

一「かも、ね。あの人の顔見ると、無性にむしゃくしゃする瞬間があるんだ」

一「上司として、能力も忠誠心も尊敬に値する人だけど……なんていうかな」

一「ボクの側からは正直、受け入れがたい人に、なるのかもしんない」

一「あの人はなんも悪くないんだけどね。とにかく、ボクがダメなんだ。あの人を」

純「……」

智紀「……」

一「あ。いやいや二人とも、そんな深刻な顔しないでよ!」


一「ボクだって、これからはプロのメイドだからねっ」

一「そんな、職場に個人的な好悪を持ちこんだりはしないからさ」

純「そういう問題じゃ、ねえ気がすんだけどよ」

一「じゃ、どういう問題なのさ」

純「……上手く言葉じゃ言い表せないな」

一「あはは、なにそれ」

智紀「はじめの気持ちはわかった。それで、これからどうするの?」

一「ん。いろいろ考えたけど、やっぱり……」

智紀「やっぱり?」


一「奪いとらなきゃ、ね」

純「……」

智紀「……」

一「あの人から、透華の隣を、一番を、奪いとってやるんだ」

一「そのためならなんだってする。当のあの人に頭を下げて、今まで以上の教えを請うたっていい」

一「地獄の修業で追い付けないなら、地獄の二倍でも三倍でもどんとこい、ってね」

純「……はあ。意気込みはわかったけど、ほどほどにしとけよ」

智紀「そろそろ私たちも、インハイに向けての特訓と調整をしなきゃいけない」

純「オレらがここに集められた、本来的な理由はそっちなんだからな。本末転倒にはなるなよ」

一「わかってるよ」ムスッ


一(純くんにはそう答えたけど……結局ボクは、なんもわかってなかったんだろうな)

一(ボクがそのことに気付いたのは高校一年の夏、東京の地でのことだった)



「試合終了ー! 長野王者風越の牙城を崩したのは、なんとメンバー全員が一年生、龍門渕高校です!!」



一(主に衣の圧倒的な力あってのことだったけど、とにかく龍門渕は全国に駒を進めた)

一(ボクはといえば、衣の『遊び相手』をして力をつける一方で)

一(寝る間も惜しんで研鑽を積み、メイドとしての技術を、知識を、飢えた狼のように貪っていった)

一(そして……)





「準決勝戦決着ゥーッ!! 一、二回戦で猛威を振るった長野の龍門渕高校、ここで惜しくも敗退となりました……ッ!!」




一(全国大会準決勝。龍門渕は『前半の失点』が響き、透華の奮闘と覚醒も虚しく三位敗退)

一(最後の最後、衣に回すことさえできずに、龍門渕の夏は終わった)


純「惜しかったな」

透華「っ。ごめんなさい、衣」

衣「……こういうことも起こるのが麻雀だ」プイ

智紀「だったらそんな、むくれた顔しないの」

衣「ふんっ」

一「……」



一(純は全国区のエース級にも怯まず立ち向かった)

一(智紀は大方の予想を覆し、強豪臨海女子を相手に互角の奮戦を見せた)


一(……そう。要するに。龍門渕の『前半の失点』というのは)



智紀「そろそろ、帰ろう?」

純「おうよ。初出場でベスト8なんだ、胸張ろうぜ」

透華「私の不手際で、最後に嫌な思いをさせてしまいましたけれど……素晴らしい戦いぶりでしたわよ、衣」

衣「必定の結果よ。あのような有象無象相手に、殊更誇ることでもないわ」



一(このボクが、ほとんど、一人で。叩き出してしまったものなのだ)


一(実力が足りなかった、といえばそれまでなのかもしれない)

一(それでもボクはこの日、明らかに集中力を欠いてしまっていた)

一(理由は……言うまでもない)

一(透華の一番になりたくて、寝る間も惜しんで努力して)

一(その結果が、このザマだった)

一(ちゃんとやってれば勝てたかも、とかそういう問題じゃあない)

一(最善を尽くさなかった。できることをやらなかった。やるべきでないことをやった)

一(そして透華に迷惑をかけた。悲しませた)

一(衣や純や智紀だって、少なからず不快な思いをしただろう)

一(本末転倒。まさしく本末転倒の結末だった)


一(誰の責任で負けたのかなんて、誰の目にも一目瞭然だったはずだ)

一(それでもみんなはボクを責めなかった)

一(責めてもらった方がいっそ、気分が楽だった)

一(……とかいうありがちな罪悪感は、実はボクにはなかった)

一(ボクが本当に辛かったのは)



透華「さ、はじめ、あなたも。一緒に、帰りましょう?」



一(透華に責められずに、嫌われずにすんで。ああ、本当に、よかった)

一(そんな、あまりにもさもしく、利己的な安堵感に浸っている自分に――気が付いてしまったことだった)


一(その時だった。控室のドアが開いて、あの人が入ってきたのは……)



ハギヨシ「失礼いたします。お車の準備が整いましてございます」



一(ボクはその顔を見てしまった。あの人もボクを見た)

一(試合の経過を知っていたのだろう。あの人はボクの方を向いて、ボクの目を見て)

一(そして、ボクだけに言った)



ハギヨシ「お疲れ様でした、国広様」


一「~~~~~~っ!!!!!」

透華「は、はじめ!?」



一(すべてを見透かされたような気がした)

一(とても勘の鋭い人で、心の内を読まれたようなことは一度や二度ではなかった)

一(だからボクはこの時も、己の浅ましい利己心を見透かされたような気が、してしまった)

一(よりにもよって……この人に!)

一(気が付けば、ボクは控室を飛び出していた)


一(夕暮れの公園で一人、黄昏ていた)

一(どう帰ればいいのかわからない。携帯は控室に置いてきちゃったし)

一(帰っても、透華たちに合わせる顔がない)

一(どうにでもなれ、という気分できぃきぃ錆びたブランコを揺らしていると)



ハギヨシ「お探ししましたよ、国広様」

一「……」



一(最初に思ったのは、透華じゃなかった、ということだった)


ハギヨシ「皆で手分けして、貴女を探していたのですよ」

ハギヨシ「お嬢様はもちろんのこと、衣様までもが行くと仰って聞かなくて。困ったものです」

ハギヨシ「さすがに衣様だけは、宿舎にてお待ちいただきましたがね」

一「……っ!」



一(また、見透かされた。そんな思いがした)

一(この人はボクの内心を、実に正確に見通していた)

一(どうせバレバレなら、全部言ってしまおうか。そうも思った)

一(だから、言うことにした)

一(その目を見たら、頭に血が上って、ひどいことを言ってしまいそうだった)

一(だから、顔を伏せたままで……言ってしまう、ことにした)


ハギヨシ「さあ、皆さま心配しておいでです。今車を呼びましたので……」

一「ボクはいったい、なにをしてるんだろう」

ハギヨシ「……」

一「……やりたいことと、やらなきゃいけないことがあった」

一「その二つは、ボクの中では綺麗に一致している、はずだった」

一「なのに、いつの間にかそうじゃなくなってた」

一「透華の役に立ちたい。その一心が、結果として透華の足を引っ張った」

一「本当、ボクって……なにがしたかったんだろう」

ハギヨシ「……」


一「……あなたは、どうだったの?」

ハギヨシ「私ですか?」

一「あなたは、どうして執事になったの?」

一「どうして透華の隣を選んだの?」

一「それはあなたにとって、やらなきゃいけないことだったの? それとも……」

ハギヨシ「……」

一「すいません、なんでもないです。どうかしてますね、私」

ハギヨシ「……」

一「帰りましょうか。透華たちに謝らないと」


ハギヨシ「一つ」

一「え?」

ハギヨシ「車の到着まで少し時間があります。お慰みに一つ、昔話など聞いていきませんか」

一「むかし……ばなし?」

ハギヨシ「ええ。ある少年の話です」

ハギヨシ「むかしむかしあるところに、大きなお屋敷に仕える執事の、息子である少年がいました」

ハギヨシ「こんな出だしで、始まるお話ですよ」

一「……!」


「むかしむかしあるところに、大きなお屋敷に仕える執事の、息子である少年がいました」

「執事の息子であるからといって、特に変わったところはない、ごく普通の少年でした」

「十になるまで、父の職場を訪れたことさえありませんでしたが」

「ある日のこと、お屋敷の奥方の招待を受けて、その席で言われました」

「私の娘の、友だちになってはくれませんか、と」


「特に断る理由もなかったので、少年はそれを承諾しました」

「母親ほどの年齢の女性の熱意に、多少ほだされるところもあったのかもしれません」

「そして少年は、お嬢様の友だちになりました」

「広いお庭のど真ん中で、おままごとに付き合いました」

「裏の山でかくれんぼをしたら、鬼役のお嬢様が先に帰ってしまって、置き去りにされたこともありました」

「行儀作法のお稽古が辛いと泣きつかれたら、辛抱強く頭を撫でてあげました」

「少年にとってお嬢様は、本当に、頭を抱えたくなるほどに手のかかるお子様で」

「それ以上に、感情をむき出しにして接してくる、そのあたたかい鼓動が」

「――愛おしくて、たまらない。そんな存在、でした」


「少年とお嬢様が頑是なく打ち解けていく様を、奥方はいつも笑顔で見守っていました」

「旦那様も奥方様も二人とも、お嬢様を愛していたことに間違いはありません」

「しかしあの年頃の幼子には、やはり母の愛がなくてはならないのです」

「泣きたくなった時に優しく包み込んでくれる、母の柔らかな愛が」

「そのことを、少年はよく知っていました」

「生まれて間もなく母をなくした少年には、痛いほどわかっていました」



「数年後」

「奥方は、ご病気で亡くなられました」


「母の墓前で崩れ落ち、動けなくなってしまったお嬢様」

「彼女の小さな背中を見つめながら、少年は茫然と佇んでいました」

「胸の内を様々な思いが去来します」

「自分は奥方に、覚えてもいない母の温もりを重ねていたのかもしれない、とか」

「これからお屋敷は、旦那様は、お嬢様はどうなるのだろう、とか」

「自分とお嬢様の友だち付き合いもこれで終わりなのかな、とか」

「お嬢様を、彼女を。目の前で震える孤独な少女を、放ってはおけないな――とか」


一「……」

ハギヨシ「少年はその日のうちに、通っていた高校を辞めました」

ハギヨシ「そしてお屋敷に押しかけ、使用人として働かせてほしい、と無礼にも旦那様に対して直訴したのです」

一「それで、今に至る、ってこと?」

ハギヨシ「さあ、どうでしょうか?」

ハギヨシ「果たして少年が、過日の思いを遂げられたのか……私には、よくわかりませんから」

一「……」

ハギヨシ「どのみち、昔話はここで終わりです。御清聴ありがとうございました」


一「聞いていいかな」

ハギヨシ「なんなりと」

一「少年は、お嬢様が好きだったの?」

一「だから側にいようと思ったの?」

一「そのためだけに、自分の人生を全部、かけちゃったの?」

ハギヨシ「ははは……直球ですね」

ハギヨシ「しかし少年とお嬢様は、歳がそれなりに離れておりましたから」

ハギヨシ「あまり、そういった感情は……抱かなかったのでは、ありませんかね」

一「……」

ハギヨシ「ただ、守りたかった。突き詰めてしまえば、それだけのことなのでしょう」


一「それだけ……」

ハギヨシ「それだけの理由があれば、男が身命を賭すには十分かと」

一「案外情熱的なんだね」

ハギヨシ「おや。男が情熱的ではいけませんか」

一「……」

一「悪くは、ないね」クスッ

ハギヨシ「お褒めにあずかり、光栄至極」


ハギヨシ「国広さん、私はね」

一「?」

ハギヨシ「少年と貴女は、よく似ていると思うのですよ」

一「……!」

ハギヨシ「似ているという言い方は正確ではありませんね」

ハギヨシ「同位体、と呼ぶのが的確かもしれない」

ハギヨシ「存在の根幹を成すものが、貴女と少年では同一なのですから」

一(……透華)

ハギヨシ「だから少年には、国広さん」

ハギヨシ「貴女の考えてることが、よくわかってしまうのではないでしょうか?」

一「っ」ビクッ


ハギヨシ「しかし、まあ。そんな二人にも決定的な違いはあります」

一「……ボクみたいなのとあなたとじゃあ、なにもかもが違いすぎるよ」

ハギヨシ「少年は、『友』であることをやめました」

一「あ……」

ハギヨシ「『友』であることに、あまり価値を見出せなかったのです」

ハギヨシ「今のお嬢様に必要なのは、『友』ではなく『母』だと」

ハギヨシ「そう、少年は思ったのかもしれませんね」


一「男、なのに? 母親にでもなろうとしたの?」

ハギヨシ「明確にそういう意識があったわけではないでしょうが……」

ハギヨシ「どちらにせよ少年のしたことは、まったくの的外れでしたよ」

ハギヨシ「気が付いた時にはお嬢様は、従姉妹の少女をお引き取りになって」

ハギヨシ「御自ら、『母性』を身に付けてしまわれましたからね」

ハギヨシ「あるいは、ご母堂を喪ったからこそ、母性にお目覚めになったのやもしれませんが」

一(衣のことか……)


ハギヨシ「ですから、これは忠言です」

ハギヨシ「国広さん。貴女は透華様の『友』であり続けてあげてください」

ハギヨシ「少年は……もう少年には、戻れませんから」

一「……」

ハギヨシ「良き友であることと、良き従者であることは、必ずしも相反しません」

ハギヨシ「王たる者の隣にそういった存在があってくれれば、それは王にとっての幸福たり得ます」

一「……そんなこと、ボクにできるのかな」

ハギヨシ「貴女ならできます。少なくとも、私はそう確信していますよ」

一「………………ありがと」ボソ


ハギヨシ「なにか仰いましたか?」

一「絶対聞こえてたくせに……」プイ

ハギヨシ「いえいえ、聞こえませんでした。よろしければもう一度言って」

一「うおっほんおっほん! そ、それよりさぁ!」

ハギヨシ「ふふ。どうされましたか」

一「ボクに透華の『友』であってほしいって、あなたはそう言ったけどさ!」

ハギヨシ「はい」

一「……」

ハギヨシ「……」

一「……」

ハギヨシ「……?」


一(ああ、どうしよ。言おうかなこれ。言っちゃまずいかな)

一(……言おう。この人がこれだけ胸の内を明かしてくれたんだ、ボクも言おう)

一(なんか完全に勢いだけになっちゃったけど、言っとこう)

一(この微妙な空気を打破するためにも)

一(そして、これから先。ボクが堂々と、この人と向き合うためにも……!)



一「ボク、透華とさ」

ハギヨシ「はい」

一「その……友だちの……」

ハギヨシ「はい、友だちの」

一「……その、先にまで行きたい、って思ってる、って言ったらさ、ど、どうするの?」


ハギヨシ「ふむ。それはつまり、どういうことでしょうか」

一「あーその。アレだよ。品の良くない言葉でいうところの……れ、レズビアン」

ハギヨシ(品が悪い、ということはないと思いますがね)

一「透華のこと、そういう目で見てる、きき、危険人物、だったりする、かもよ?」

ハギヨシ「かも?」

一「っ! かもじゃない! ボクは透華が好きなの!」

ハギヨシ「……」

一「女で、メイドだけど、女主人の透華様が――大好きなのっ!!」


ハギヨシ「……」

一「……はぁ、はぁ」

ハギヨシ「……なるほど」

一「……」

ハギヨシ「……」


シーーーン


一(やばい、死にたくなってきた)


ハギヨシ「それで?」

一「え?」

ハギヨシ「国広さんはレズビアン。それで話はお終いでしょうか?」

一「お、お、おしまい、って」

ハギヨシ「昨今同性愛者など珍しくもありませんよ。同性婚を許す国もそこここにあります」

一「え、いや、でも」

ハギヨシ「かくいう私もホモセクシャルです」

一「マジで!?」ガーン

ハギヨシ「ウソです」

一「……マジで?」

ハギヨシ「なにゆえ後者の方が疑い深い声色なのかは、この際聞かないでおきましょう」


ハギヨシ「とにかく。お嬢様の御意思は、お嬢様だけのものです」

ハギヨシ「貴女がこの先、その道ならぬ恋をどうするにせよ」

ハギヨシ「貴女を受け入れるのかどうか、最後には、お嬢様の御意思がすべてとなります」

一「まあ、確かにそうだけど……」

ハギヨシ「でしたら私は、その御心に従うのみです」

一「……執事だね」

ハギヨシ「ええ、骨の髄まで」ニッコリ


ハギヨシ「まあ、本音を申し上げるならば、惜しいとは思いますよ」

一「惜しい?」キョトン

ハギヨシ「ただでさえ少子化の昨今、百合の花を愛でる女性が増えるほど、世の男は涙を飲むこととなります」

ハギヨシ「それが国広さんのように可憐な方となれば、なおさらです」

一「……」

ハギヨシ「おやおや。そのように、露骨に嫌そうな顔をせずとも」

一(しなくたってお見通しのくせに)

一「……くっさい口説き文句も執事の嗜みの内に入るワケ、ですか?」

ハギヨシ「男の嗜み、ですよ」

一(ああ言えばこう言う)


一「まったく。もしここでボクがバイセクシャルだってカミングアウトしたら、いったいどうするつもり?」

ハギヨシ「私もバイだとカミングアウトします」

一「やっぱりホモじゃんかー!!」

ハギヨシ「ウソですよ」ニッコリ

一「その笑顔が一番信用ならないんだよもー!」

ハギヨシ「私はノーマルです。これだけは信じていただきたい」

一「証拠でもあるわけ!? ないでしょ!?」ウガー

ハギヨシ「証拠ですか? ならばこういう話はどうでしょう」

一「えっあるの?」


ハギヨシ「私の父が龍門渕の執事であったことは御存じでしょうか」

一「まあ、一応はね」

一(さっき『昔話』を聞いたばっかだし)

ハギヨシ「では、私の母が同じ屋敷でメイドをしていたことは?」

一「えっ」

ハギヨシ「父と母は、いわゆる職場恋愛というやつでして」

一「え、え?」

ハギヨシ「父が新米メイドだった母の世話を焼くうちに、情が移ってしまったらしいのですね」

一「え、ええ、ええっ!?///」


ハギヨシ「……」

一「……」モジモジ

ハギヨシ「……」

一「あの、つ、続きは?」

ハギヨシ「あ、終わりです」

一「」ズコー

ハギヨシ「おやおや」

一「終わりってことはないでしょお!? この話でいったいなにが言いたかったのさ萩原さーん!?」

ハギヨシ「さあ、なんだったんでしょうねぇ……おや」


一「こ、今度はなにさ」

ハギヨシ「いえ、たいしたことではないのですが」

ハギヨシ「今、国広さんが私を、初めて名前で呼んでくれたものですから」

一「……え」

ハギヨシ「嫌われているものだとばかり思っていましたし、教育係としては嫌われるのもやむなし、とも思っていたのですが」

一「え、あ、ううう///」

ハギヨシ「いやはや、なかなか嬉しいものですね。やはり同輩とは良好な関係を保っていきたいものですから」

一「も、もう許してぇ……///」グスッ

ハギヨシ「ふふふ」ニッコリ


ハギヨシ「……さて、ようやく車が来ました。さすがに都心は込んだようですね」

一「今さらだけど萩原さん」

ハギヨシ「ん?」

一「な、名前で呼んだらなんか悪い?」プイ

ハギヨシ「そのようなことは申しておりませんが……それで?」

一「ボクのこと、歩きで探してたんだね」

ハギヨシ「その方が『速い』ですからね」

一「えっ」


ハギヨシ「さ、お乗りください」

一「……透華たち、許してくれるかな」

ハギヨシ「許すもなにもありませんよ」

一「でも、ボクがしたことは……」

ハギヨシ「……実はここに一つ、レシピのメモがあるのですが」

一「れ、レシピ?」

ハギヨシ「お嬢様がティータイムに好んでお召し上がりになる、お茶菓子のレシピです」

一「!」


ハギヨシ「今まではティータイムに合わせて、私が一人で用意しておりましたから」

ハギヨシ「これをもう一人、誰かがマスターしてくれると、私としてもいかほど助かることか……」

ハギヨシ「どうです、国広さん?」ニッコリ

一「……参りました」クスッ



一(本音だった。その如才ない笑顔を向けられた瞬間、ボクは思ったんだ)

一(ああ、やられた。これはもう、参っちゃったな――って)

一(ボクのこっぱずかしい内心が、わかってるのかそうでないのか)

一(萩原さんは、ボクの最強のライバルは、なにもわかっていないようなふりをしながら)

一(いっそう笑みを深めて、こう言ったのであった)


ハギヨシ「よろしい。それでは今日よりまた、貴女は私の教え子です」

一「……早まったかな」

ハギヨシ「龍門渕のしもべに妥協も遠慮も容赦もないことは、貴女とて御承知の通り」

一「わかってるよ、もちろん」

ハギヨシ「必ずや、お嬢様のお口に入れるに相応しい一品を、習得して頂きますよ?」

一「お安い御用さ。なんたってボクは、透華お嬢様のメイドなんだからね」

ハギヨシ「……ふふ」

一「ふふふっ」




「国広さん。どうか、御覚悟召されますよう」



「覚悟なら決めたよ、たった今。これから先、一生分のをね」




後日


一「はい萩原さん、あーん♪」

ハギヨシ「おやおや、これはこれは」

一「いいからほら、食べて食べてー♪」

ハギヨシ「では失礼して……あーん」

一「よいっ」

ハギヨシ「……」モグモグ

一「……」ドキドキ


ハギヨシ「ふむ」ゴックン

一「っ」ゴクリ

ハギヨシ「国広さん」

一「は、はいっ」

ハギヨシ「大変美味しゅうございましたよ」ニッコリ

一「本当!?」パァッ

ハギヨシ「ええ、ウソは申しません」

一「やったやった! じゃあさじゃあさ、これなら……」







一「透華に食べさせても、喜んでもらえるかなっ!?」


ハギヨシ「ええ、ええ。必ずやお喜びいただけることでしょう」

一「いえーい! 萩原さんありがとー!」ダキッ

ハギヨシ「おやおや」ニコニコ

一「あとさあとさ、このあいだ萩原さんに付き合ってもらって買った、この私服!」ガサゴソッ

ハギヨシ「はい」

一「透華に見せたら、なんて言ってくれるかなっ!?」

ハギヨシ「直視しがたいまばゆさだ、とお褒めいただけましょう」

ハギヨシ「私も思わず、目を逸らしたくなるほどです」

一「やっほー!」ギュー

一「それじゃあそれじゃあ、昨日萩原さんが結ってくれた、この髪型はー……」ウキウキ

ハギヨシ「ええ、ええ」ニコニコ


純「……」

智紀「……」

衣「……」

透華「……え。なにあれ。なんなんですのあれ」

純「うん、まあ、なんだ。御愁傷様、透華」

智紀「ヤキモチ? ねえヤキモチ? それはいったいどっちに対して? ねえ今どんな気持ち?」

衣「とーかとーか! はじめのあの服、衣も欲しい!」

透華「ちょっと待って。ちょおおおっと待ってくださいまし。どうか私に、心の整理をする時間をちょうだいな」


透華「すーはーすーはーひっひっふー」

透華「……私の執事とメイドが、私の知らないところで、とんでもないことになっていた」

透華「この場合私は、どうすればいいんですの」

透華「ねえ、どうすればいいんですのー!?」

智紀「知らない」

純「わからん」

衣「それより服!」

透華「うわあああああああああああああああんんんんん!!!!!!」


一「あ、今透華の声がした。ボクの対透華専用聴覚も捨てたもんじゃないね」フフン

ハギヨシ「はは、まだまだですね国広さん」

ハギヨシ「私は、お嬢様が半径1km以内にさえいらっしゃれば、その一挙手一投足までが手に取るように把握できます」

一「ううん……敵わないなぁ」

ハギヨシ「なんの。国広さんなら、五年もあればできるようになりますよ」

一「五年、かぁ……ねえ萩原さん」

ハギヨシ「はい?」

一「五年なんて言わずに、さ」




「一生ボクの、最強のライバルでいてちょうだいねっ」



カン!

お嬢様ラブなメイドと執事のラブストーリーにしたかったのに、ノンケが好きなレズがホモと触れ合ってバイに目覚める話に、気が付けばなっていました
世の中ままなりませんね
ご一読ありがとうございました

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