上条「御坂の雷を受けたらおかしな場所で手術された……」 (116)



御坂『戦えって…』バチバチィッッ


━━━━━ あの時、確かに御坂は俺に向けて憤怒を露にしていた。


━━━━━ どうしようもなく、止められない、本来なら向けようのなかった矛先を俺に。


御坂『……言ってんのよ!!!!』

< ギュァッ!!


━━━━━ 渦巻くモノを俺の眼球が捉えるよりも先に走る衝撃。


━━━━━ 覚悟は出来ていた。


━━━━━ これに耐える事が出来たなら、いや……できるはずだった。


━━━━━ 御坂は、本当に俺を殺すような雷撃を撃つなんてこと、出来ないからだ。



上条「……そ、そこまで上条さんは覚悟してたんですけど…?」

ドクター「何の話か知らないが、やはり日本人は手術になるとナーバスになるようだな」

ドクター「安心したまえ、今から約半日後に確率を越えれば君は生まれ変わる」クックック


ドクター「鬼塚慶次君」

上条「ちがぁああああぁあああああっっう!!!!! やめて離して下さいっ、いやぁあああああああああ!!!!!!!!」ズルズル……




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━━━━━ 「やぁ、お目覚めかね?」


上条「……」

上条(……い、生きてる…?)パチッ

上条(なんか色々変なの入れられたり、カプセルにぶちこまれたり…したけど)

上条(これ、夢じゃないのかよ……)


ドクター「……さて、手術は成功」

ドクター「しかし妙な問題があってねぇ」


上条「……?」

ドクター「なんと君が鬼塚慶次ではないことが分かってしまった」

上条(だからそう言っただろ!! 聞けよ聞いてくださいお願いします!!)

< 「ぁ……う」


ドクター「まだ麻酔のせいで声が出せないだろう」

ドクター「本物らしき鬼塚慶次君の手術も成功したんだが……君も彼もこれは凄い奇跡だ」

ドクター「君には当面の研究対象になって貰うとしよう、それまではゆっくり寝ていてくれたまえ」


上条(えっ)


< ガチャッ

ドクター「……おや」


「例の日本人は?」


ドクター「目を覚ましたようですが、まだ会話は出来ませんよ」

ドクター「明日には出来るでしょうが」


「……なら出直そう、少し気になってたんだが」


ドクター「オフィサーの貴方が、何故に?」


「話は聞いた」

「俺のいた研究機関に引き渡されるそうだな」

「……となれば、気にもなる…『あそこの特色』は知っているからな」


ドクター「なるほど」

ドクター「では私はこれにて……」スタスタ




< 「…………アドルフ殿」



アドルフ「……」


━━━━━ 翌日。


━━━━━ よく分からない連中に再び検査の様なものを俺は受けるらしかった。


上条「……」

上条(御坂の所に……今から行ってもどうなったのかも分からないか)

上条(それより今は……)


< 『まずはそこのテーブルに置かれた数種類の薬品を吸引、もしくは注射してくれたまえ』


上条「……こんな得体の知れないモン、体に入れられるわけないだろ」


< 『体に害は無いと説明した筈だ』

< 『君は非公式で破格の手術を受け、奇跡的にも生還した』

< 『手術段階で、細胞変異を引き起こす為に必要な薬剤は判明している』

< 『……不満は聞き入れんよ、上条当麻君』


上条「……」

上条(くそ、やるしかないのか……そもそもコイツらは何の手術をしたんだ?)

上条(たしか……モザイク…ガンとか、何か英語みたいなので言ってたけど)



上条(……)カチャッ

上条「本当に、大丈夫なんだろうな」


< 『問題ない』


上条「……」

上条(どうせやるなら、この注射器の方が…… )スッ

< プスッ

< プシュッ!

上条「っ……」


上条「ぐぁっ……!?」ズキッ

上条(体が急に熱く……なんだこれ、何か、おかし…)ドクンッ…ドクンッ…


< 『心配しなくていい、人為変態……即ちそれこそが我々人類が生み出した武器であり新たな進化だ』

< 『慣れないうちは痛むだろうが、問題ない』


< 『……もっとも、初めて変異するならこのスピーカーも聴こえていないか』


上条「うぁ……グゥゥッ……!!」メキメキ…

< バツンッ!!


上条(なん…だ? 腕が……いや、それより……)

上条(視界に色んな光が入ってくる……というか、何か流れのようなものまで見える…?)

上条(……身体が軽い、腕もこんなに膨張…というか、固くなってんのに軽い)


< 『変態完了か、では幾つかのテストを行うので別室に……』


上条「ふざけんじゃねぇ!!」

< ゴシャアンッ!!


< 『!』


上条「てめぇらよく分からない奴等に、良いように実験動物扱いされて…」

上条「いつまでも黙ってると思うなよ……!!」ヒュッ


< ドゴォォッ!!



< ドゴォォ…

研究員「脳波に異常な乱れ、かなりの激怒状態です」

研究員2「加えて過度のストレスと多量のアドレナリンを計測……これは」


ドクター「どういう事だ? こんなのは初めてだ」

< ゴォンッ!!

研究員「あの……防護壁が破られそうですけど」

ドクター「何だと…? まさか、ベースになった生物の身体能力が現れているのか」

ドクター「直ぐに鎮静剤をガスで投与、迅速に……」

< ゴガァアアッ!!

ドクター「んなっ…!?」


上条「……シュゥゥゥゥ」ゴキッ…バキッ



< ゴバァァンッ!!


研究員3「うわぁ! 逃げろぉ!!」

研究員「こちら投薬実験室、直ぐに警備を寄越してくれ!!」

ドクター「あれの一撃は砲撃級に相当する筈だ、同じ防護壁に囲まれた部屋と通路を介して逃げるぞ」

研究員4「ど、どこにですか!!」

ドクター「『薬品保管庫』……あそこなら奴でも突破は難しい」


< 「待てゴラァ!!」


ドクター「まずは走れよ若造」

研究員「ひぃっ!」



━━━━━ 「何の騒ぎだ」


警備「それが、どうやら実験中の日本人が暴走しているらしく……」


アドルフ「……」

アドルフ「監視カメラの映像を映せ」

警備「はい……えーと…」カタカタカタ


< 『待てゴラァ!!』


アドルフ「……投薬済みなのか、この姿は」

アドルフ(見た所ベースが『アレ』のせいか、脚力はそれほど発達していない)

アドルフ「甲殻型ならいけるな」ボソッ


警備「はい?」

アドルフ「行かせた警備を退かせろ」

アドルフ「……以前にイザベラが同じ状態になった事はある、死人を出したくないなら言う通りにしろ」

警備「は、はい!」 カタカタカタ


アドルフ(向かった先は薬品保管庫……通路反対側から行けば防護壁に囲まれた中で奴を止められる)

アドルフ(……丁度、薬もあるようだしな)スタスタ




< ザッ


上条「フーッ…フーッ…」

上条(くそが……何でかイライラして仕方ねぇ…しかも、身体中に力が湧いてくる…)

上条(……この拳があったなら)ミシッ


上条「……あいつらの逃げていったこの分厚い扉も 」ヒュッッ


━━━━━ ゴォンッ!!

< ミシミシッ…ビキィッ!


上条「どんな奴も……!」ヒュッッ


< ドゴォォッ!!


上条(容易くぶち破れる……! 今の俺なら、今まで勝てなかった奴等に勝てる……ぶち破れる!!)ギシッ


アドルフ「……派手に扉を破ってくれるな」ザッ


上条「……?」


アドルフ(腕力に加えての甲殻、対C4爆弾の防護壁も破ってこれるか)

< スッ

アドルフ「……『武器』は無いが、この建物ならそれも必要ない」ズズズ…


上条(なんだ……? 粉を吸引して……)

上条(!)


アドルフ「……悪いな、日本人」パリパリッ


上条(電流が……あいつの腕や身体のあちこちから出てるのが『見える』…!)


アドルフ「少し……」パリッ

上条(上……!)バッ


アドルフ「……濡れるが、構わないな?」

━━━━━ バチバチィィッ!



< ジリリリリリリ・・・!


< プシュッ! ザァァァァ……

上条(っ、水……って!?)


アドルフ「……」スッ

< パリッ…バチバチィッ


上条「やっ…べぇッ……!!」ダッ


アドルフ「遅い」バリバリバリィィッ!!

< ギュァッ!!


上条(電流が水の上を走って一直線に……ッ)

上条「ふ…」

< バチッ…


上条「不幸だぁああああああああああああああああああ!!!!」バチバチィッッ!!



━━━━━ バチィッッ!!

━━━━━ ドゴォォォンッ!!




< ドゴォォォンッ!!


アドルフ(ッ……周辺の機器まで感電したか)

アドルフ(だがこれで終わった筈だ、加減はしたがギリギリまで強めの電流を流した)

アドルフ(……)

アドルフ(それにしても、さっきの反応……俺の電気を見ていたのか?)

アドルフ(こちらがスプリンクラーを狙うよりも早く、先に上を見ていたようだったが)


< シュゥゥゥ・・・


アドルフ「……」

アドルフ「?」


アドルフ(これは、どういうことだ……? 今の爆発で吹き飛んだのか?)





アドルフ(……何故、周囲ごと奴が消えている……)





━━━━━ 俺は夢を見ていた。


━━━━━ その夢では、俺の頭の上で涙を流していた。


━━━━━ ・・・ごめんな、訳の分からない事に巻き込まれちゃってさ。


━━━━━ 正直。


上条「……今回は俺も被害者だと思うんだ」ボソッ

御坂「!」

御坂「アンタ……馬鹿よ」

上条(あれ、御坂?)

御坂「……なんで能力を使わなかったのよ…いや、使ったのかもしれないけど…」

御坂「死んじゃうかもしれないじゃない……」ポロポロ


上条「……」

上条「死ぬかと思いました……」



━━━━━ 結局、御坂は本当に人を殺すような真似はしなかったのだ。


━━━━━ いや……分かんないけど、おかしな『あの夢』を見る位にはヤバかったとは思うけど。


━━━━━ それでも御坂は……助けを求めているには違いなかった。


━━━━━ けれど1つ問題がある。


上条「……実は上条さんとしては何だか二日前の話みたいにしか覚えてないので……」

上条「いま、一方通行とか御坂ってどうなってたっけ」

御坂「…ごめん、やっぱり記憶飛ぶよね」

上条「お前は一方通行に勝てないのは分かってる、それは間違いない……んだけど」

上条「……だからどうすればいいのか、何を考えてたのか忘れちまったんだ」

御坂「わかったわ……1から話すけど、もう時間は無いのよ」

上条「?」

御坂「もうすぐ…次の実験が、またあの子達が一人殺されるの」



━━━━━ タッタッタッ・・!


上条(次の実験場は倉庫街……!間に合えよ…っ)ダッ

上条(……にしても…)

< タッタッタッ…!

上条(もう大分このペースで走ってんのに、息切れもしない…)

上条(……)スッ



━━━ 『分かった……なら、俺が一方通行を止める』

━━━ 『! 無理よ……アイツは軍隊を相手にしても笑ってられるような奴なのよ?!』

━━━ 『それでもこのままお前を行かせるわけにはいかない』

━━━ 『それに……何も無策って訳じゃ無いんだ』


━━━ 『……ねぇ、もしかしてアンタの能力って…』


━━━ 『……』

━━━ 『【物体移動】系なの?』

━━━ 『へ?』


━━━ 『だって、見てよこれ……』カチャッ


━━━ 『!!』




━━━ 『悪い御坂! まだその辺に散らばってるかもしれないから【それ】拾っといてくれ!!』

< バッ!

━━━ 『ちょっと! どういうことよ!!』


━━━ 『これなら、これなら御坂妹を救えるかもしれないんだ……!』






上条(……)タッタッタッ

上条(夢なんかじゃなかった)

上条(俺は確かにあのおかしな施設で……いや、『あの世界』で手術を受けたんだ)

上条「そりゃ今までの運動ペースくらい、大した事ねえよな……」スッ


上条(待ってろよ一方通行……)


上条(絶対お前から御坂達を救ってやる……)プシュッ!


━━━━━ メキメキ・・!


━━━━━ 頬を撫でるように触れられただけだった。


御坂妹「……ッ、……ハァ…ッ」ズシャッ…


━━━ それだけで全身を打つような衝撃が走り、同時に首が妙な音を立て、地面に転がる。

━━━ それでもう動けるとは思えなかった。


━━━ 例え、逃げなければ死ぬとしても。


━━━ どれ程の思いがあっても、全身を打ちのめす苦痛が思考を惑わす。


御坂妹「……」


「……」ザッ


━━━ 視界に映る最強の能力者の足。

━━━ このまま足を乗せるだけで彼女を死に至らしめる事が出来る。

━━━ しかし朦朧とする意識の中で、ぼんやりと御坂妹と呼ばれていた彼女は気づく。


━━━ いつまで待っても、最強の能力者……『一方通行』は彼女にトドメを刺さないのだ。




一方通行「……なァオイ、ありゃ何だ」

御坂妹「…?」


━━━ 怪訝そうに見据える方へ視線を走らせたその時。


━━━ 御坂妹は静かに夜闇の中で妖しく光るモノを見た。



上条「……」ザッザッ…


━━━ 胴体に匹敵する肥大化した両腕。

━━━ 進む度に見える装甲のような、鎧にも見えるその腕の甲殻。

━━━ 明らかに先日に見た時とは違う骨格。


━━━ そして、眼より上で光る…複眼のような物。


御坂妹「……?、…………?」


━━━ 御坂妹はどういう反応をすべきか迷っていた。


━━━ 彼は、恐らく上条当麻の筈だ。


━━━ しかし何故にここにいて、そしてあのような姿なのか。


━━━ それが彼女が理解出来ずにいる理由の全てだった。




上条「……」ザッザッ…


━━━ 止めない歩み。



一方通行「……あー、なンだ、 もしかしてコイツの知り合いかァ?」


上条「……離れろよ」


━━━ 否、止められなかったのだ。

━━━ 既にその歩みは御坂妹を直ぐにでも抱ける位置に着いても、上条当麻は止まれなかった。


━━━ 未だ慣れぬ『変態』による副作用による、過剰なまでの攻撃性。


━━━ その全てが、御坂妹をまさに今、虐殺せんとする一方通行に向けられていた。



一方通行「は?」

上条「御坂妹からッ!!」ゴッッ


━━━ 刹那に振り被り、必殺の拳を弓の如く引き絞る。

━━━ 既にこの時点で常人ならば二十は死んでいるこれを、更に引き絞るかのように腰を。

━━━ 踏み込みを。


上条「離れろって聞こえねえのか三下ァッ!!!!」


━━━ 全てが込められた破壊の一撃を、一方通行に打つ。




━━━━━ ドッッ!!!


━━━ 巻き上がる粉塵、そして土砂が砲弾の如く直線を描いて轟音を打ち鳴らす。

━━━ 上条当麻が打ち放った掌撃は一方通行のこめかみ辺りで揺れる白髪すら揺らす事は無かったのだ。


上条「~~ッ!!」ズザァッ


一方通行「……悪ィ悪ィ、咄嗟に出ちまった」ニタァ


━━━ それが爪先で地面を蹴っただけの威力とは、上条には僅かにしか理解できていなかった。

━━━ しかし、この時の彼は見えていた。


上条(……今のが、アレが、一方通行の能力)


━━━ 上条当麻には見えていた。

━━━ 暗闇の中にいる一方通行、そしてその体を全て包み、『流れを変えている膜』。


━━━ 彼が変態し得た特性という名の『のうりょく』。


━━━ 人間には視認出来ない光すら『視える』その驚異の視力が、一方通行に届かずに流れを乱す光線を捉えたのだ。


上条(……右手で消せるのは能力、つまり殆どはアイツを倒す瞬間の間合いになった時だけだ)

上条(だったらァ……!!)シュゥゥゥゥ…!


< ミシミシィッ……


一方通行「……はン、馬鹿かコイツ」


━━━ 鼻で嗤いながらも、一方通行もまた怒りが湧き上がっているには違いなかった。

━━━ それもその筈だろう、これまであらゆる能力者を地に這いつくばらせてきた彼を『三下』と呼んだのだから。


一方通行「オイオイ……なンだよ、何? その石でどうすンだよ」


上条「…… 」ギシッ


一方通行「投げてみろよ…?」


< ドンッッ!!

一方通行「あァ?」


━━━ 直後に舞う土砂。

━━━ 上条が投擲した石は一方通行の足元を吹き飛ばし、視界を妨げる。




━━━━━ バォッッ!!


一方通行「読めてンだよ三下ァ!!」

上条「!?」


━━━ 粉塵を突き破ったのは一方通行。

━━━ 土砂のカーテンを薙いだ先にあった驚愕の色を含んだ上条当麻の顔に、白濁した雰囲気を孕んだ一方通行が笑う。

━━━ 突き出される左手は毒よりも最凶の死を纏っている。



上条(く……ぁ…ッ!!)

━━━ 目前に迫る細腕が凄まじい危険を帯びている事を、上条当麻は理解していた。


━━━ だが果たして。


< ヒュッッ・・・!


━━━━━ グシャァアッ!!


━━━ 左腕が壮絶な音を挙げて砕けたのは、決して無駄ではない。


一方通行「!?」



上条「がァァァアアアアアッッ!!!!」


━━━ 甲殻が砕け散り、同時に噴き出す鮮血よりも、かけた王手に全身が沸き立つ。

━━━ 握り締めた拳を更に固くして、上条当麻の右腕が唸りを上げた。



一方通行(な……)ミシッ


< ゴンッ!!

一方通行「ぎゅひぇァッ!?」バキンッ


━━━ 壮絶な衝撃、粉砕される顎の骨が数本の歯と共に血飛沫が舞う。

━━━ この時、一方通行が幸いだったのは顎に『ずれた』事で一撃で意識が潰えていた事だろう。


━━━━━ ズシャッ・・・


上条「はぁ…っ、はぁ…っ……」

上条(……大丈夫だ、顎が砕けたみたいだけど…死んではいない)

上条(……)ズキズキッ

上条「腕が折れたってのに……そこまで痛まないな…」




上条(……今のは危なかった)

上条(咄嗟に左腕でガードしちまったけど……あの御坂妹みたいに血液爆散させられなくて良かった)


━━━ 彼は知らない。

━━━ 一方通行は確かに左腕をベクトル変換のみで血流を逆流させ、爆散させる事は可能だった。

━━━ しかし、一方通行へ『最低限』の加減を彼はしたつもりでも反射的な右フックは一方通行が血液を『操作しようとする』よりも早く打ち砕いたのだ。



上条「……そうだ、御坂妹は…!」バッ

上条(まずい……我を忘れてまるで周囲を気にしてなかった)

上条(一方通行の能力に巻き込まれてるかもしれない……)


< ザリッ……


上条「!」

御坂妹「……」

上条「良かった、無事だったんだな……」

御坂妹「あなたは、何を……しているのですか」


上条「……?」


御坂妹「…何故ここへ来てしまったのですかと御坂は……」フラッ

上条「っ、おい!」ガシッ

御坂妹「……」

上条(気絶……いや、そもそもやっぱり一方通行の能力に巻き込まれてたなら無傷なわけないか)

上条(連れて行かないと……)



━━━━━ プツンッ



上条「……」

上条「……」ミシッ


上条(……ッ!!)ヒュッッ


< ゴガァンッッ!!


上条「ハーッ……ハーッ……ッ、ゥゥゥッ!!」ガクガクッッ

上条(だ、駄目だ……抑えろ、『それは』御坂妹だぞ……しっかりしろ…ッ)

上条「……ッ、ハーッ……」ミシッ‥ミシッ‥




━━━━━━━━━━

━━━━━━━

━━━━━

━━




━━━━━ 結果として、御坂達を巻き込んでいた実験はこれで終わった。


━━━━━ 例え『無能力者ではないレベル』だとしても、『無能力』に倒されたのは事実。


━━━━━ 後日、御坂妹から実験は凍結されるとも聞いた。


━━━━━ 御坂妹や御坂本人もあれ以降は何も無いと言っていたのだから、これはこれで良しと思っていいと考えた。


━━━━━ だけど……。



上条「……何で一本だけ?」

御坂「あの日、アンタが私に拾わせた薬、何に使うのよ」

上条「それは……」

御坂「麻薬」

御坂「そんな生易しい代物ではないのは確かよね、アンタ……学園都市に目をつけられるわよ」


上条「……」



上条「一本じゃ、多分……ダメなんだ」

御坂「はぁ? まさか本当に麻薬じゃ……!」

上条「ちょ、やめて! 大きな声でそんなこと言うなぁ!!」

< 「ヒソヒソ……」

< 「ヒソヒソ……」


上条「……」

御坂「あー……場所変える?」

上条「警備員来る前にな! 店の裏で待ってるからなー」

< ガタッ

御坂「ちょっと待ちなさいよ!」ガタッ


上条(……)

上条(それになんか……やけに今日は眩しいような気がして、頭痛がすんだよな)




━━━━━ 【2619年…某所…】



アドルフ「……薬品の副作用?」

イザベラ「らしいよ、少し前に『UーNASA』の研究所で薬品ごと消えた奴いたろ?」

アドルフ「ああ……」

アドルフ(結局、手品のように消えた上に製造後に保存されていた物も棚1つ分失ったせいで……大騒ぎだったな)

イザベラ「あの日本人以外でも、甲殻型やその他のベースの奴等で前から近い症状が確認されてたらしい」

イザベラ「つまるところ、適した摂取法や細かい所がまずかったらしい」


アドルフ「……俺やロシアのオフィサーは問題ないが」

イザベラ「『人による』、って事じゃない? まぁ何にせよ……」

< ゴトッ

アドルフ「さっきから持っていたアタッシュは薬か」

イザベラ「そーいうこと」




< バチバチバチィィッッ!!「のわぁああああああああああああ!!?」ドサッ



イザベラ「!?」

アドルフ「!?」


━━━━━ 最強の『レベル5』、即ち『超能力者』。


━━━━━ そんな一方通行を御坂妹達を救う為に倒した俺は、学園都市で一躍有名人となってしまった。


━━━━━ 統括理事会は混乱が収拾するまでの間、俺に一時的に学園都市の外……海の旅館に滞在するよう指示してくる。


━━━━━ しかし、温泉旅館「わだつみ」へ宿泊した俺とインデックス(何故か)の前に現れたのは中身と外見が入れ替わった俺の両親だった。


━━━━━ 混乱する俺は、その後にロシア正教の殲滅白書に所属する『ミーシャ・クロイツェフ』と遭遇する。


━━━━━ 更には神裂、土御門と知り合いの魔術師に会うこととなるのだが・・・。






上条「……なのに、何故かいきなり電撃を受けて……」ボソッ

イザベラ「なに言ってんだ?」

上条「このテープほどいて貰えませんか……?」

イザベラ「薬狙ってきたコソドロをまた逃がすわけないだろ」


アドルフ「……」

アドルフ(何故、天井から落ちてきた‥それもバチバチとか聴こえたが……?)


イザベラ「いやー、お手柄じゃんアタシら?」

アドルフ「……」

イザベラ「ワック呼んでくるわ、自慢しよう」

アドルフ(……楽しそうだな)


上条(どうすりゃいいんだこれ……ていうか、泥棒ってなんの話だよ)

イザベラ「それじゃぁ班長、見張り頼みましたよー」ガチャッ


< パタンッ


アドルフ「……」

上条「……あの」

アドルフ「‥‥なんだ」

上条「‥……」


上条「俺がこことは違う世界から事故で来てるって言ったら、信じます……?」


アドルフ「……」

アドルフ「興味はあっても、信じないだろうな」

上条「で、ですよねー……」

アドルフ「……」

上条「……」


アドルフ「薬は何に使っている」


上条「薬……?」

上条(もしかして、一方通行の時に使った……?)

上条「アンタ達が勝手に手術した俺の体だ、使う必要があったから使った……」

アドルフ「使う必要?」

上条「……」

アドルフ(……)

アドルフ「話してみろ、上条当麻」


上条「友達を救うため……いや、救うために戦う為…」

上条「……上手く説明は出来ない、でも別に悪用したつもりはない」

上条「アンタ達が何をしようとしてこんな能力を開発してるのかは知らないけどな 」


アドルフ「……」

アドルフ(救うためか)

アドルフ(嘘では無さそうだが、本当かも怪しいのが現状か)

アドルフ「仮に聞くが、証明できるのか」


上条「証…明……?」

アドルフ「聞けば学園都市という研究機関の一員だったり、そこに問い合わせてみろと言ったそうだな」

アドルフ「何か証明できるのか」

上条「……それは」

アドルフ「……」

上条「アンタの電撃……それを消せたら信用して貰えるか」

アドルフ「!」







上条「なんか……未成年が葉巻って…」


アドルフ「……中身の成分は煙草ではない、臭いも同じだ」

上条「見た目がアウトだと思うのですよ上条さんは」

アドルフ「……」カシャッ

< ズズッ…


アドルフ「……」ズズズズズ……

アドルフ「よし」パリィッ


上条「……これ、吸わなくてもいいよな…うん」スッ

アドルフ「万一を考えれば変身するのが良いと思うが」

上条「右手さえあれば打ち消せるから大丈夫、だと…思うんだけど」

アドルフ(大丈夫か本当に……)




上条(前回は……変身時で冷静になれなかった)

上条(そしてあの時は右手で打ち消す前に水を伝っての感電だったんだ、なら今度は御坂みたいに消せる)

上条「いつでも良いぜ」スッ


アドルフ「…………」ググッ

< バチッ…

< バチバチバチィィッ!!


上条(来るッ!!)






━━━━━ バリバリバリッ!バチバチバチィィッ!!!!!!


上条「ギニャァアアアアアぁぁぁぁあぁアアアアアアアアアアアアアアアぁああアアアアア!!!??」


アドルフ「Wasッ……!?」


< シュゥウウウウ・・・

アドルフ「……上条当麻! 」


アドルフ「……」

アドルフ「何……?」


< シュゥウウウウ・・・


アドルフ「……消えた、のか…?」



━━━━━ 俺は夢を見ていた。


━━━━━ その夢では、俺はどこかの和室で寝かされている。


━━━━━ そしていつの間にか俺の手を握っている女の子が傍に座っていた。


━━━━━ 青髪ピアスの姿をしたインデックスではない、肩に付くか付かないか程度のショートヘアーの女の子。


━━━━━ ただ、俺は知らないはずなのにその子は俺を心配そうに手を胸に……胸に?




上条「……何やってるんでしょうか」

短髪?「脈等から貴方の状態を診ていたのですが……」

短髪?「と、ミサカはそれでも尚胸に押し当てて反応を見ます」


上条「……………………………………」

上条「ミサカ?」

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