安部菜々「バイバイウサミンドリーム」 (32)

アイドルマスターシンデレラガールズのSSになります。
よろしくお願いします。

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5月13日
午前 8:45 シンデレラガールズプロダクション某支部

P「おはようございます!」

P「って、俺が一番ノリか。どいつもこいつも遅刻で困るな!」

週報『今日の予定』

P「あ…他のプロデューサーは朝から出てるのか…。一番遅いのは俺か…。」

P「まあいいや、菜々がくるまで、少し事務仕事を片付けておこう。」

午前 9:06同場所

安部菜々「おはようございます!」

P「おはよう、菜々。」

菜々「Pさん、一番乗りですね!」

P「いや…俺が最後に出社だった。」

菜々「そうなんですか…。」

菜々「そうなんですか…。」

菜々「今日は…インタビューと撮影でしたよね。」

P「ああ、そうだよ。雑誌にそのまま載るな。」

P「ムーだけど。」

菜々「いいじゃないですか!ムーでも!」

菜々「それに仕事取ってきたのはPさんじゃないですか。」

P「あれはウサミン星人関連で向こうから申し込まれてきたんだ。」

P「どうやらお前の返答一つで地球の未来が決定するらしい。」

菜々「!…そうですか…。」

P「? どうした。菜々?」

菜々「い、いえ!なんでもありません…!」

菜々「いやーあんまり真実を話しちゃうとウサミン星に強制送還とかされちゃうかなーっておもいまして、あはは…。」

P「ハハハ、そのへんは大丈夫じゃないか。今までもたくさんウサミン星については話してるだろう。」

P「今日はノート忘れるなよ?」

菜々「キャラはつくってないモン!ナナは本当にウサミン星人なんですよ!」

<prrrr

菜々「あ、ナナのですね、ちょっと失礼します。」ステテテ

P(…そういえば菜々はまだガラケーだったな。)

P(そろそろ誕生日だし、事務所からもお祝いでスマホに新調させてもらうか。)

菜々「…はい。…はい。…わかった。…うん、また後で…。」ピッ

P「? 誰からだ?」

菜々「え、ああ。お母さんからです。時間がないので、また後にしてもらいました。」

P「時間?10時くらいに出ればいいからたっぷりあるぞ?」

菜々「いいんです。後でも。」

P「…? まあいいけど。」

菜々「お、お茶淹れてきますよ。」

P「ああ、ありがとう。」

P「そういや木場Pが茶菓子作って冷蔵庫に入れといたとか言ってたな。持ってきていいぞ。」

菜々「いいんですか?…でも、カロリーは気をつけないと、体型の維持に…。」

P「今日ぐらいはいいって。」

菜々「Pさんがそういうなら、ちょっとだけ…。すこし待っててくださいね。」

P「ああ。」

P(なんか様子が変だな…。)

P(今度一緒に食事でも行くか。そこで聞こう。)


P(今度一緒に食事でも行くか。そこで聞こう。)

菜々「お待たせしました。どうぞ、ご主人様♪」

P「うむ、ご苦労ご苦労。」

P「作ってたの羊羹だったか。おもしろい趣味のやつもいたもんだ。」

菜々「Pさんもお料理くらいできないと今どきモテませんよ?」

P「俺は別にいいんだよ、できなくても苦労してないし。」

P「毎日カップラーメンでも無問題よ。」

菜々「体に悪いですよ、お昼だけでもナナがお弁当つくってきますよ?」

P「え、いいの?大変じゃない?」

菜々「だいたいいつも作ってきてるんですから、一人増えたところで変わりませんよ…?」

菜々「ウサミン弁当でいやしをお届け!キャハっ!」

P「菜々は家庭的でいいなあ、将来いい嫁さんになるって。」

菜々「! アイドルは恋愛厳禁です!」

P「未来の話さ、5年後でも10年後でもな。」

P「まあ20年後でも菜々は17歳なことには変わりないか、ハハハ。」

菜々「もう!本気にしてませんね!ナナは本当に17歳ですよ!」

P「体力もたなくても?」

菜々「もたなくてもですぅ!」

P「ごめんごめん、じゃあ弁当の件、毎日じゃなくてもいいから、できればお願い致します…。」

菜々「ご主人様からのご用命とあらば、ナナ、がんばっちゃいます♪」

P「本当に、無理はしないでいいから、おにぎりとかでいいから…。」


午前 10:00 

P「さて、時間も頃合いだし出かけようか。」

菜々「はい!」

午前 10:20 都内一角

P「今日はよろしくおねがいします。」

記者「こちらこそ、よろしくお願いします。本物のウサミン星人と出会えて嬉しいです。」

菜々「よろしくお願いします。」

記者「セッティングなどなど、もう少し時間があるので、申し訳ありませんが待機していていただけますか?」

P「はい、ではまたあとで。」

記者「ではでは。」


P「…横断幕すごかったな…。」

P「なんてったって、『人類滅亡直前!太古の昔より地球を監視するウサミン星人に聞く地球復活のシナリオ』だもんな。」

菜々「なんでナナに依頼がきたんでしょうね…。」

P「そりゃまあ、ウサミン星人だからだろうなあ。」

菜々「ですよね…。」



(取材終了)

午後 15:00 同場所

記者「今日はありがとうございました。できあがりましたら、お持ちいたします。」

P「はい、よろしくお願いします。」

菜々「今日はありがとうございました…。」


(外)

P「やっと終わったな。」

菜々「…はい。」

P「長いとは聞いてたけど、昼食はさんで3時間ちょっと…。疲れた。」

菜々「ちょっとネタが切れそうになりましたよ…。」

P「え?」

菜々「いや!いやいやいや!あんまり話しすぎると本国に…。」

P「まあ、お疲れ様。なんか甘いもんでも食べて帰るか?」

菜々「いいんですか!でも…。」

P「あの長丁場を乗り切ったご褒美だよ。」

菜々「…じゃあお言葉に甘えちゃいます…えへへ…。」

P「よし、行こうか。」


午後 16:15 シンデレラガールズプロダクション某支部

P「ただいまー。」

菜々「ただいま帰りました―。」

P「あれ、誰も居ないな…。おかしいな、もう帰ってきててもいい頃なんだけどな。」

菜々「どうしたんでしょうね。」

<prrrrr

菜々「…。」

P「? いいぞ、出なよ。」

菜々「はい…、ちょっと外行きますね。」

P「ああ…?」

ガチャリ

P「…なんだろうな。」

P「菜々のスマホの申請書出しとこ。」

P「…経費で出るよな。うん。」


(数分後)

ガチャリ

P「お、帰ってきたか。菜々、お前、明後日誕生日だろう?事務所から経費出してもらってスマホを…。」

菜々「…。」

P「どうした菜々?」

菜々「はっ!い、いえ、なんでもありませんよ?スマホですか?ナナ難しいのは苦手で…。」

P「…菜々。お前なんか今朝からおかしいぞ、どうした?」

菜々「なにもおかしくないですよ?ナナはいつも元気いっぱいの17歳ですよ!」

P「…。」

P「…どれだけ一緒にアイドルやってきたと思ってんだ。わかるさ。」

菜々「…。」

P「…隠さないで教えてくれ…。なにかあったのか?」

菜々「…信じてくれますか?」

P「当たり前だ。それがプロデューサーってやつだ。」


菜々「…。」

菜々「…ナナは…ウサミン星人なんです。」


P「は?」

菜々「だから、本当にウサミン星人なんです。」

P「いつも言ってることじゃないのか?」

菜々「…。」

P「悪い、続けてくれ。」

菜々「ナナは100年とちょっと前くらいに、地球にやってきました。」

P「!?」

菜々「ウサミン星は銀河連邦に属している惑星です。」

菜々「銀河連邦に所属している惑星は今地球に多くの外交官を派遣しています。」

菜々「ナナもその一人なんです。」

P「ちょっともう話がよくわからないぞ、菜々は本当に宇宙人で、ウサミン星の外交官?」

P「他にもたくさんいるってのか?」

菜々「この前、ドイツのツアーで真尋ちゃんが会ったおじさんもそうです。」

P「なんだと…?」


菜々「他にも大勢の異星人が地球に来ているんです。」

菜々「まだ地球は連邦に登録できるほど成長しきってはいないので、知らないのは無理ないと思います。」

菜々「ナナのような外交官には任期があります。」

P「…それは何年くらいなんだ?」

菜々「本来なら100年です。」

P「じゃあ、お前はもう向こうへ帰っているはず…。」

菜々「ナナが地球に降り立った頃、地球は争いに包まれていました。」

菜々「二度の世界大戦があって、もう帰りたい気でいっぱいでした。」

菜々「任期も終わりそうな頃、日本にやってきました。」

菜々「ナナはもう帰れると思って帰還の日が早くこないか、楽しみで仕方なかったんです。」


菜々「でも…。」

P「でも?」

菜々「ナナはアイドルに魅せられました。あのステージで輝く女の子たちに。」

菜々「アイドルに憧れる日々は、赴任してから過ごしてきた時間よりも、とても充実していました。」

菜々「滞在期間をズルズル延長してしまう程に…。」

菜々「世間の目を欺くためにメイド喫茶で働きはじめて、それもまたすごく楽しくて、」

菜々「多くのご主人様とお話するうちに声優にもあこがれるようになって」

菜々「それでも、そろそろ帰らないとまずいと思っていた時に」

菜々「Pさん、あなたに出会ってしまいました。」

P「…。」

菜々「アイドルになれる、そのことが、嬉しくて嬉しくて、」

P「更に延長した、と。」

菜々「はい。」


菜々「でも、それももう限界です。」

菜々「朝から来ていた電話は本星からの帰還命令です。」

P(ガラケーに来るのか…。)

菜々「半分強制送還のような形で、ナナは帰ることになりました。」

P「それは…いつになるんだ?」

菜々「今日の…夜9時です。」

P「今は…!」

時計『16:50』

P「なんで…そんなこと早く言ってくれなかったんだ…。」

菜々「言っても信じてもらえないかもしれないじゃないですか。」

菜々「今までもこの秘密を明かした人は何人かいました。この人なら信じてくれるだろうって。」

菜々「でも皆、話した途端、変なものを見るような目でナナを見るようになりました。」

菜々「そしてだんだんナナから離れていってしまいました。」

P「それは、まあ、そうなるんじゃないか…?」

菜々「Pさんは…信じてくれますか?」

P「正直、信じられない、意味もわからない。」

菜々「…。」


P「でも、菜々がこれだけ苦しんで、やっと話してくれたというなら、信じないと決めつけるのは早いと思う。」

P「お前が地球で過ごしてきた時間から比べれば短いが、それなりに長い付き合いだしな。」

菜々「初めて…初めて信じてくれる人が…。」

菜々「ありがとう…ございます…。」

P「約束の時間までまだ時間がある。今日の残りの仕事は明日に回して、今日は遊びに行こう。」

菜々「え?」

P「何、心配するな、人払いはしておくよ。」

P「菜々の行きたいところに行こう。一つでも多く思い出をつくろう。」

P「今まで仕事してきたコネもある、高い店だって頼み込めばだいたいは予約なしでも入れてくれるはずだ。」

菜々「Pさん…。」

P「…。」

P「行こう、菜々。」

菜々「はい…!」


《ゲームセンター》

P「うおっ、菜々つえッ。」

菜々「フフフ、ゲーセン荒らしのウサミンと言われたナナの実力は伊達じゃないですよぉ!」

P(ウサミン星人なんでばれなかったのか不思議なくらいの自己主張だな…。)


《レストラン》

菜々「いいんですか?こんな高そうなところ。」

P「菜々の…思い出づくりだから…金に糸目はつけない…。」

P「ちょっと厳しい…。」

菜々「無理しなくていいんですよ?」

P「いや!大丈夫、出す!」


《遊園地 観覧車》

菜々「夜景きれいですね…。」

P「この前無重力体験したときも外見たらわりと絶景だったよな。」

菜々「あの時ですね、窓からちょっと宇宙船が見えまして…。」

P「マジで?」

菜々「隠すのに必死でした。」

P「ウサミン星の方角指差したりしてたのはそのせいか…。」

菜々「でも、本当に綺麗…。」

菜々「宇宙から見る星々より何倍も…。」

P「菜々…。」

菜々「Pさんがいるからですかね、いつもより輝いてみえるのかもしれませんね。」

菜々「Pさん、ナナは…!」

P「菜々…。必ず戻ってきてくれよ? また一緒に、アイドル活動しよう。」

P「その続きはその後でゆっくり聞きたいな…。」

菜々「はい…!」



午後 20:45 シンデレラガールズプロダクション某支部 屋上

P「いやあ、久しぶりに遊んだな。金はだいぶなくなったが、楽しかった!」

菜々「ナナもはしゃいじゃいました、年甲斐も…いえ、ナナは17歳です!」

P「ハハハ。菜々、写真を撮ろう。」

菜々「?」

P「さっきは大見得きって、戻ってこいとか言ったけど、なかなかそれも難しいんだろう?」

菜々「…はい。」

P「だから、お互いを忘れないように、写真を撮ろう。」

P「簡単なので悪いけど。」スッ

菜々「この辺でいいですか?」

P「いいぞ、タイマーかけて…。」

ピピピピ

ピー

ギュッ

パシャッ

P「菜々…。」

菜々「えへへ、ごめんなさい。最後のワガママです…。」

P「まあ…いいか。プリントも終わったみたいだな。」

P「はい、写真。」

菜々「ありがとうございます。大切にします。」

時計『21:00』ピピピピピピ

P「時間か…。」

フユーンフユーン

P「UFOだ…本当に来た…!」

菜々「…。」

パァァァァ

P「光が…。菜々!」

菜々「お別れですね…Pさん…。」フイヨフイヨ

菜々「菜々はこのハートウェイブに乗って、月を通ってウサミン星に帰ります…。」

P「ああ、向こうに戻っても元気で暮らせよ…。」

菜々「ナナ、Pさんのこと忘れませんから…。」

P「俺もだよ。絶対忘れない、死ぬまで、死んでも。」

P「それじゃあ、俺はこれで…。じゃあな、菜々。」

菜々「Pさん…。」


菜々「…。」

菜々「Pさん!」

菜々「ナナは!本当に幸せでした!」

菜々「Pさんのアイドルになれて!楽しかった!」

菜々「もし…もしナナが地球人に生まれ変わったなら…」

菜々「いつかまた、ナナと出会ってくださいね…!」

P「…。」ググッ

P「…!」

P「行くな!菜々!行くんじゃない!!」

P「まだやり残したことがたくさんあるんだ!!!」

P「まだお前をプロデュースしたりないんだ!!」

菜々「あ…ああ…ナナも!ナナもです!!離れたくない!!」

菜々「まだPさんのアイドルでいたい!!ここでお別れなんて嫌です!!!」

P「まだそんなに高くない…!うおおおおおお!!!」ダンッ

P「菜々!手を伸ばせぇ!!!」

菜々「Pさん!!」

…カスッ

ドタッ

P「菜々ァァァァァァァ!!!!!」

―――――
――――
――


P「…あああああああああああッ!!!」

P「ここは、事務所の仮眠室…つッ…。」

バタン

木村夏樹「なんだなんだ…?」

夏樹「菜々さんのプロデューサーさん…どうしたんだ?」

P「夏樹か…。今いつだ?」

夏樹「え? 5月14日で9時半だけど…。どうかしたの?」

P「! ちょっとごめん…。」ダッ

夏樹「わぁ! なんなんだよ、もう…。」

P「おい!」

夏樹P「よぉ、おめざめか?朝っぱらから屋上でノびてるのを見つけてな、俺と木場Pで運んでおいてやったぜ。」

木場真奈美「おはようPくん、仕事がキツイからといって屋上で寝るのは関心しないな。」

木場P「その通りだ。プロデュースに支障があったらどうする。あと俺の羊羹食べただろ、お前。」

P「俺のことはどうでもいいんだよ!菜々は?菜々はまだ来てないのか?」

木場P「菜々なら、さっき病欠だと連絡が来たぞ。」

P「何…?ちょっと電話見せてくれ。」

P「確かに菜々の番号からだ…。」

木場P「ちゃんと、菜々だったぞ?」

P「…ちょっと、行ってくる。」

夏樹P「どこへ?」

P「菜々の家だよ!!」

バタン

夏樹「さっき出てったのは…?」

真奈美「菜々さん担当のPくんだが…?」

夏樹「めちゃくちゃ急いでたみたいだけど、どうしたんだろ。」

夏樹P「さてな?わからん。」

真奈美「何か理由があるのだろう。」

木場P「確かに菜々の声だったんだがな…。」

午前 10:40 安部菜々宅

ドンドン

P「菜々!」

ガチャ

P「鍵が開いてる…。」

P「入るぞ!」

ガラン

P「夢じゃなかったのか…畜生…菜々…。」

P「強がらずに引き止めていけばよかった…。あの時早く飛び出していればよかった…。」

P「こんなに後悔するなら…くっ…。」

?「Pさん…。」

P「!!」

?「何してるんですか?人の家で…。」

P「あ…ああ…。」

P「菜々!」

菜々「うわぁああ!」

P「夢みたいだ!」

菜々「なんなんですか!?」

P「今度は離さない、絶対に。」

菜々「そんなにきつく抱きつかなくても、ナナはどこにも行きませんよ!」

P「本当か…?」

菜々「それと…ナナただいま絶賛体の調子が悪いんです…。寝かせてくれませんか?」

P「あ、ああ、ゴメン…。」

菜々「おかしなPさん…。」

P「明日は出てこれそうなのか?」

菜々「はい!明日にはウサミンパワー充填完了しますよ!」

菜々「なので今日は…ぐったりです…。」

P「…急に来て悪かったな、明日はお前の誕生日だから、支部の皆もお祝いの準備とかいろいろしてくれてるだろ。」

P「ぜったい元気になって来いよ!」

菜々「はい♪ご主人様♪」

P「それじゃあ、帰るから。」

菜々「はい、ありがとうございました。」

バタン

菜々「…。」

菜々「夢みたいだけど、夢じゃないんですよ…Pさん。」

[写真]ナデナデ

菜々「これからもウサミンをおねがいしますね♪」


Fin

以上になります。

ウサミン、ハッピーバースデー
苦節云十年といった感じのキャラクターはだいたい無条件で好きになります。
夢を叶えて躍進していく菜々さんはとても輝いていて、
まさにシンデレラドリームといった感じではないでしょうか。

短いですが、お読みいただき、ありがとうございました。

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