モバP「旅行に行こう!」 (49)

P「夏って言えば海ですよね」

ちひろ「え、山ですよ」

P「ほ?」

ちひろ「どうせ海は水着があるからでしょう?」

P「わかってんじゃん」

ちひろ「本能に忠実というかなんというか……」

P「ということで行きましょう」

ちひろ「海ですか? 山ですか?」

P「両方です」

ちひろ「そんな都合のいい宿が取れるはずないでしょう」

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ちひろ「ずいぶんと立派な宿が取れましたね」

P「どうやら団体でのキャンセルがあったそうで」

ちひろ「……何をしたのですか」

P「ちょっと知り合いのプロデューサーにかけあって鷹富士さんと握手を」

ちひろ「なるほど。しかし……」

ワイワイ ガヤガヤ

ちひろ「本当に事務所の子みんな連れてきたんですね」

P「仲間はずれ作ったら可愛そうじゃないですか!!」

ちひろ「そういう心がけは素晴しいと思います」

みく「Pチャーン! そろそろ荷物置きたーい!」

P「おお、そうだったな。じゃあチェックインするか。
 みんなー着いてこーい」

ハーイ

ちひろ「まるで修学旅行……いえ、年齢がそぐわない人もいますけど」

菜々「なんでナナを見るんですか」

ちひろ「いえ、なんでも。引率一緒に頑張りましょう」

菜々「ナナは十七歳だから引率される側ですよ!」

幸子「何やってるんですか。みんな行っちゃいましたよ」

ちひろ「おおっと」

菜々「行きましょう行きましょう」

P「部屋は大部屋が二つと小部屋が一つだ。小部屋は俺が使うから
 あとの全員は大部屋な」

ありす「十五人で二部屋……割り切れないじゃないですか」

晶葉「割り切れる必要はないだろう。そもそも一部屋にどのぐらい入るんだ?」

奈緒「おー、結構広いぞー。詰めれば十人ぐらい入れるんじゃないか?」

七海「こっちは海が見えるのれす~♪」

桃華「ベッドがありませんわ」

凛「和室だしね」

P「なかなかいい部屋みたいだな。俺の部屋はこっちだったな」テクテク

P「少し離れてるな。まぁ問題はないだろう」

P「おお、いい部屋だな。一人で使うにはもったいないぐらいだ」

雪美「いっしょに……ね?」

ライラ「ライラさんもー」

P「はい、二人とも戻ろうねー」テクテク

みく「Pチャン! 大変にゃ!」

幸子「加蓮さんが!」

P「加蓮がどうしたんだ!」

雫「浮き輪に空気入れてたら酸欠で倒れましたー」

加蓮「きゅう」

P「昨日までだるいだるい言ってた人間の行動とは思えないな」

晶葉「こんなこともあろうかと空気入れマシンを作っておいた」

P「先に出してやれよ」

晶葉「出したのだが加蓮が自分で入れたいと駄々を捏ねて……」

P「めんどくさい奴だな」

志希「加蓮ちゃ~ん。呼吸が楽になるクスリだよ」

加蓮「んぐんぐ……シャキーン!」

ちひろ「この旅館って外にもシャワーあるんですね」

P「ええ。海も近いですし水着でそのまま行けて帰ってきたらシャワーで軽く
 海水を落とせるんですよ」

加蓮「海行こっ! 海!」

P「テンションたけーな。またぶったおれるなよ」

加蓮「大丈夫大丈夫。ささ、Pさんは出てって」

P「はいはい。じゃあ海行く奴は着替えておけよー」

ハーイ

P「……一人くらい旅館でゆっくりしてるって奴がいてもおかしくないと思ったんだがな」

菜々「こんな綺麗な砂浜と海が目の前にあるのに泳がないなんてもったいないじゃないですか」

P「それで君はなんで泳ぎに行かないのかな?」

菜々「え! いや、ちょっと……ウサミン星の事情で……」

P「あれ? じゃあ下は水着じゃないの?」

菜々「一応着替えましたけど」

P「ぬへへ。じゃあその上着抜いてもらおうか」

菜々「い、いやー! 引っ張らないでー!」

P「大丈夫だって。ちひろさんも水着で遊んでるんだから」

菜々「ああ、なんでちひろさんはあんなに肌が……」

P「そら、あれだろ。万札を詰め込んだ風呂に毎日入ってるんだろ」

菜々「肌にいいんですかね。それ」

奈緒「おーい、Pさんもビーチボールバレーやろうぜー」

P「また定番中の定番を選んだな。ほら、菜々も行くぞ。
 ビーチボールバレーなら脱がなくてもいいだろう」

菜々「いえ、ここは……安部菜々! 行きます!」ヌギッ

P「ヘソだしはやっぱりしないんだな」

菜々「恥かしいので……」

P「そんな気にするほどでもないと思うけどな」

雫「トース」

みく「アタックッ!!」バシッ

P「ングフ」バシン

七海「ナイスアタックれす~」

P「ずいぶんと本格的なアタックだなぁ……。
 てっきりトスしあうだけのものかと思ってたよ」

みく「そんな甘い幻想は捨てるにゃ。さぁ勝負にゃ!
   あ、奈緒チャンはあっちのチームにゃ」

奈緒「おう。よろしくな。Pさん、菜々さん」

菜々「足を引っ張らないように頑張ります!」

P「行こっ……私たちのステージへ」

奈緒「裏声で言うのやめろ!」

ちひろ(審判)「プレイボール」

※ビートボールバレーとはビーチバレーと別の競技です。
 また本来は一チーム四人競技です。詳しくはウィキペディアへどうぞ。

P「」チーン

菜々「」チーン

奈緒「つ、疲れた……」

みく「ぜーんぜんだめだめにゃ」

雫「いい汗かきましたー」

七海「そうれすね~」

P「どこ打っても七海が高速で移動して拾うとか予想外すぎるわ」

志希「はい、飲み物だよ!」

ちひろ「結構ギャラリーいましたね」

奈緒「これでも一応アイドルだしな」

凛「お疲れ。頑張ってたね」

P「他の奴らはどこいったんだ?」

志希「あっちで砂遊びしてたり、浮き輪で浮いてたり」

P「それぞれ楽しんでるみたいだな。そろそろ戻るから呼びに行こう。
 お前達は先戻っててくれ。ちひろさん、みんなをよろしくお願いします」

ハーイ

P「さーてどこにいるかな……。お、あれかな」

晶葉「おお、丁度いいところに来たな。
   見るがいい。我々の合作、うちの事務所見取り図だ」

P「またずいぶんと地味なもの作ったな」

雪美「お城……出来なかった……」

桃華「わたくしは城なら洋風がよかったのですけど」

ありす「日本の城のほうがいいです」

晶葉「まぁこんな具合でな。結局こういうのになった」

P「そうかそうか。しかしずいぶんと細かいところまで作ったな」

ありす「特に流しの周りは私が丹精込めて作りました」

桃華「このデスク周辺は芸術的だと思いますわ」

雪美「ソファー……」

P「うんうん。よく出来てるぞ。マジで」

晶葉「そろそろ戻るのか?」

P「ああ、夕飯の前に軽くでも風呂に入ったほうがいいだろうしな」

雪美「これ……どうする?」

桃華「壊しますの?」

ありす「事務所内部の機密情報が漏れるかもしれませんからね」ゲシゲシ

桃華「それは危ないですわね。壊しますわ」ゲシゲシ

雪美「でも……」

晶葉「仕方ないさ、雪美。さぁ、壊そう壊そう」ゲシゲシ

P「えーっと、さっき帰ったのが……ちひろさん含め八人か。
 ここに四人いるから後三人だな。幸子とライラと加蓮か」

桃華「それでしたらさきほどあちらにいましたわ」

P「お、そうか。晶葉、三人を頼んでもいいか」

晶葉「うむ、任された」

ありす「一人でも帰れます」

P「そう言うな。七時に夕飯だからそれまでに軽くでもいいから
 風呂入っとけ。海入らなくても結構べたべたしたりするから」

ハーイ

P「さてと、あっちだったかな。
 ……あの浮いてるのかな」

ライラ「」ボー

幸子「」ボー

加蓮「」ボー

P「三人で手を繋いで漂っている。大丈夫なのか、あれ。
 おーい、そこの三人娘ー」

加蓮「あ、Pさーん……」ユラユラ

幸子「いいですねぇ。これ……」ユラユラ

ライラ「しあわせでございますよ」ユラユラ

P「仲良く浮き輪にケツ突っ込んでくらげごっこしてるところ悪いが帰るぞ」

加蓮「あれ、もうそんな時間なの?」

幸子「あっという間でしたね」

ライラ「では浮き輪からぬけて……ん……」スポッ

幸子「よっこいしょっと」スポッ

加蓮「ん……あれ……」グイグイ

P「どうした?」」

加蓮「なんか、嵌まって抜けない。ぐぬぬ……あっ」バシャッ

ライラ「カレンさんがひっくり返って浮き輪からお尻だけ出してるです」

幸子「加蓮さんがひっくり返って浮き輪からお尻だけ出してますね」

P「なんだこれ」

加蓮「ぷはっ」

幸子「大丈夫でしたか?」

加蓮「助けてよ!」

ライラ「新しい遊びでございますね?」

加蓮「違うよ!」

P「まぁケツから浮き輪取れてよかったじゃないか。さぁ帰ろう帰ろう」

加蓮「ケツケツ言わないで!」

P「結構夕飯うまかったな」

七海「魚がおいしかったれす~」

みく「許されないよ」

凛「七海に押し付けたんだからいいでしょ」

ライラ「満腹でございますです」

ありす「思ったよりもシンプルな料理でしたね」

奈緒「変に凝ったものよりかいいんじゃないか?」

桃華「その通りですわ。いつもよりずっとおいしく食べれましたわ」

菜々「それじゃあお風呂に入りますか」

晶葉「ここは温泉が出ているそうだな」

雫「楽しみですー」

P「じゃあ各自荷物持って向かえよー。
 休みたいやつは少し休んでから入れよー」

ハーイ

P「さーてと、俺も行くか」

志希「そこのキミ。こっちこっち」

P「どうしたんだ、志希? ……ん?」

【家族風呂】

志希「……にゃはっ」

P「おら、出て来い。さっさと女湯に行け」

志希「あーん、つれないなぁ。もう」

P「大体こういうのは予約するもんじゃないのか?
 ほら、ここに予約表があるじゃないか。この時間帯は既に埋まってるぞ」

【渋谷凛】

P「ほ?」

凛「そういうこと」

志希「凛ちゃんやるじゃーん!」

凛「志希もこのぐらい手回しできるようになりな」

P「じゃあロン毛同士交友を深めてくれ。俺はこの辺で」

加蓮「行かせないよ」

P「……やれやれ、何を好き好んで俺なんかと入りたがるんだ」

志希「直接臭いを嗅ぎたいからさー♪」

P「そうか。凛と加蓮もそういう……」

凛、加蓮「「違う!」」

P「じゃあいいじゃないか。俺は行くぞ」

加蓮「だって……今じゃないと」

P「加蓮」

加蓮「……」

P「別に明日帰るわけでもあるまい。そう生き急ぐこともないだろう」

凛「じゃあ明日は入ってくれるの?」

P「そりゃ約束出来ないな。これでも一応はプロデューサーだからな。
 俺の目が黒いうちはそんなことやらんさ」

凛「……」

P「じゃ、俺は男湯行くから」

加蓮「……」

志希「……凛ちゃんで我慢しようかな」ボソッ

凛「!?」

加蓮「じゃあ凛、私女湯行くね」スタコラサッサ

凛「ちょっ」

志希「つーかまーえた♪」ガシッ

凛「まっ」

志希「せっかく予約したんだしねー。入らないともったいないよ!」ズルズル

凛「たすっ」バタン

P「ふー」

P「結構広い露天風呂だな」

P「時間帯がいいのか俺しかいないのもグッドだ」

P「あ゛~ゆったり出来る~」

P「そして耳をすますと」

「ここのお湯は白いんだな」

「牛乳みたいですねー」

「この看板に効能が書いてあるな。んー、眼鏡がないとどうも……」

「美肌効果と書いてあります」

「お魚肌になるれす~」

「にゃ゛!?」

「美肌とは言いがたいですわね。それですと」

「ツルツルになれーツルツルになれー……」

「菜々さん、塗りこんでも仕方ないよ」

「カワイイボクが更なる段階へとステップアップ……?」

「Pは……?」

「あちら側にいるかもしれませんね」

P「まぁあっちも貸し切り状態のようだな」

P「はー……空が綺麗だ……」

ライラ「そうでございますね」

P「都会じゃ見れるもんじゃないからな。今の内に見とけよ、ライ……ラ?」

ライラ「あ、流れ星ですよ」

P「いや、待て待て。なぜお前が男湯にいる」

ライラ「お風呂に潜ってたらいつの間にか」

P「しかもタオルしてないだろ」

ライラ「タオルを湯船につけるのはマナー違反でございますよ」

P「風呂で潜水して男湯に来るのも相当なんだよなぁ……」

「あれ、ライラちゃんどこ行きました?」

ライラ「こっちですよー」ザバァ

P「ギャー! 立つなー!」

「お、男湯から声が聞こえましたよ!」

「Pさんの悲鳴も聞こえたぞ!」

「Pさんのお背中流しに行ったんですねー。私も行きますー。
 どうやって行くんですかー」

ライラ「そこの奥にある岩の」

P「説明しなくていい! お前も戻れ戻れ!」

ライラ「お背中流しますよー」

P「羞恥心はどこに置いてきたのかな?」

「ライラさーん、戻ってきてくださいましー」

ライラ「しょうがないので帰りますです」ポチャン

P「ふー……まさか凛に言った事を一時間足らずで反故するとは」

「ライラさんだけずるいですよ。どこから入るんですか」

「ここでございますよー」

「ここですかー」

P「おーい、あんまり変な事してると従業員に見つかって」

ポチャ

雫「……」

P「……」

雫「本当に繋がってるんですねー」

P「そうだな」

雫「えーっと、タオルを体に巻いて無いので顔だけで失礼しますー」

P「お、おう」

雫「もぉーそろそろ上がりましょうか」

P「そうだな……」

ゴクゴクゴク プハー

P「やっぱり風呂上りはこれだな!」

雫「牛乳はおいしいですねー」

雪美「おいしい……」

幸子「これでボクもさらにカワイクなってしまう」

桃華「牛乳で口の周り汚している人の台詞ではありませんわ」

ありす「桃華さんもついてます」

みく「そういえば凛ちゃんと志希ちゃんがいなかったにゃ」

奈緒「加蓮、風呂入る前に凛と一緒にいたよな? 加蓮?」

加蓮「……凛は、遠いところに行ったよ」

晶葉「縁起でもないことを言うな」

ライラ「なぜみなさん、腰に手を当てて牛乳を飲むです?」

七海「不思議れすよね~」

ちひろ「あ、志希ちゃん。凛ちゃん見ませんでした?」

志希「んっふっふっふっふ~」

P「なんだか嬉しそうだな」

志希「キミが一番だけど凛ちゃんもなかなかよかったからさ~。
   ついテンション上がっちゃってね。今頃部屋に戻ってるんじゃないかな~♪」

ちひろ「あれ、でも鍵はここに」チャリン

P「とりあえず戻ろうか。みんなー、帰るぞー」

ハーイ

奈緒「……あれは」

加蓮「凛! どうしたの、そんな買ったばかりのアイスを
   間違えて落としたライラみたいな絶望的な顔して!」

ライラ「あの時のアイス……」ズーン

P「おい、無駄に被害者増やすな。ライラ、後でアイス買ってやるからな」

幸子「ボクはソーダ味がいいです」

P「おめえじゃねぇよ」

凛「……奈緒、加蓮」

奈緒「大丈夫か? 元気の出るクスリ飲むか?」

P「エナドリなんて持って無いぞ」

ちひろ「はい、どうぞ」

P「商売根性たくましいな」

凛「んぐんぐ……ふぅ。志希はどこ行った!」

晶葉「志希ならさっきちひろさんがエナドリ出した辺りでどっか行ったぞ」

凛「絶対に捕まえてやる!」

P「おい、あんまり走り回るな……行ってしまった」

雪美「凛……どうしたの?」

菜々「雪美ちゃんたちは知らなくて大丈夫ですよ。部屋に入りましょう」

みく「みんなでトランプにゃ!」

雫「人数多すぎませんかー?」

桃華「わたくしまくらなげとやらをしてみたいですわ!」

七海「それは寝る前にやるものれす~」

ありす「一応未開封ボックスと土地持って来ましたけど」

P「やるじゃん、ありす」

ありす「撫でてくれてもいいんですよ」

P「お前、幸子みたいなこと言うな」

ありす「え゛っ」

幸子「その反応どういうことですか」

ライラ「リミテッドする前にアイス買うです」

P「じゃあどっちかの部屋に集まって遊ぶかー」

ハーイ

P「ん……朝か」

P「ふあぁ……まだ朝飯まで時間あるな……」

P「風呂にでも入るかな」ゴソゴソ

P「朝は風呂空いてるのかな」ガチャ

桃華「あら」

P「おや、どうしたんだ」

桃華「Pちゃまを誘って温泉に入ろうかと思いまして」

P「誘うのは構わんが一緒には入らんぞ」

桃華「ライラさんと雫さんとは一緒に入ったでしょう?」

P「あれは事故だ。ちゃんと旅館側には伝えたからあの穴もふさがっているだろう」

桃華「せっかくPちゃまと親交を深められると思っていたのに残念ですわ」

P「揃いも揃って一緒に風呂に入りたがりやがって」

桃華「……仕方ありませんわ」

P「……」

桃華「そういえば昨日、湯船に使っているときに頭にタオルを乗せている人が
   いましたけどあれもマナーですの?」

P「いや、風呂にタオルつけなきゃいいだけだから頭に乗せる必要はないな」

桃華「そうですの。さも当然のように乗せていたので気になりましたの」

P「本人に聞けばいいじゃないか、と言いたいところだがおそらく……」

桃華「ええ、あの方に尋ねると余計なことまで喋りそうになって慌てるので
   ちょっと聞きにくいですわ」

P「菜々……」

桃華「ではわたくしはこちらに。また後でお会いいたしましょう」

P「ああ、またな」

P「さーてと、一風呂浴びるかな」

ゴチソーサマデシタ

P「満腹満腹」

ちひろ「今日はどのようなご予定で?」

P「俺はちょっと町……というか村というか山のほうに行ってみますけど」

ちひろ「じゃあ今日は山のほうに行ってみますか」

P「え、でも海行きたい奴は海行けばいいんじゃないか?」

ちひろ「プロデューサーさんが山行くって言えばみんな山行きますよ。
    ということで今日は山ですよ」

ハーイ

凛「でも山って何があるの? 登るの?」

P「見晴らしのいい場所があるんだってさ。山自体はそんなに
 急じゃないし散歩には丁度いいそうだ」

奈緒「へー、随分と詳しいな」

P「旅館の人に聞いたのさ」

雫「じゃあ帽子被ったほうがいいですねー」

P「そうだな。持ってる奴はちゃんとつけろよ。
 一時間後ぐらいに出発するからな」

ハーイ

七海「近くに川はあるんれすか~?」

P「いや、川があるかは聞いてないな。釣りでもするのか?」

七海「そうれす~♪」

P「ちゃんと竿を持ってきたのか。まぁ海が近いとは言ってたからな」

七海「持ってるのは糸だけれす~。後は現地調達れす~」

P「ああ、木の枝やら使うのか。まぁ糸なら荷物にならないだろうし
 一応持って行けばいいさ」

七海「そうれすね~♪」

P「俺も準備……するほどのことはないか。最低限の手荷物だけまとめておこう」

P「しかしいい天気だな。今日も暑くなりそうだ」

ミーンミンミン

P「……どこからか聞こえてくる蝉の声も心なしかウサミンコールに」

菜々「聞こえません」

P「おおっと。いつの間に」

菜々「もう時間ですよ?」

P「あら、そんな経ってたか。行くとするか」

みく「あー、やっと来たにゃ」

幸子「遅いですよ! カワイイボク……ボク達を待たせるなんて
   何考えているんですか」

P「今日も幸子がカワイイなぁって」

幸子「そんな……」

ありす(チョロい)

奈緒(チョロい)

ちひろ(あなたたちがそれを言う資格はないかと)

ありす、奈緒(!?)

P「それじゃあ出発するぞー」

ハーイ

加蓮「……ねぇ、これどこまで続いてるの?」

凛「終わりが見えない」

奈緒「おい、どうなってんだよ。Pさん」

P「おっかしいなぁ。石段が続いてるなんて聞いて無いんだけどな。
 もしかして違う場所だったとかかな」

雫「待ってくださいー。雪美ちゃんがダウンしちゃいましたー」

P「ああ、雪美。ごめんな、俺のせいで」

雪美「ううん……」

P「ほら、俺の背中に乗れ。汗臭いかもしれんが我慢してくれ」

雪美「うん……」

ありす「あ、すみません。私も気分が」

桃華「お待ちなさい。わたくしが先ですわ」

ちひろ「はいはい、我侭言わないでください」

みく「とは言っても」

幸子「長い石段ですね。木陰なのが不幸中の幸いですけど」

晶葉「一体どこまで続くのやら……」

菜々「本当に……いつになったら……」

志希「こうなったらもうこれを使うしかない!」スッ

P「なんだ、それは?」

志希「体にかけるとひんやりするスプレー!」シュッ

P「うおっ! つめたっ! ……お、なんだかひんやりしてきたぞ」

志希「それそれー♪」シュッシュッ

ライラ「おお、なんだかすずやかですね」

七海「もう少し頑張れそうれす~」

P「よし! 頑張って登りきろう!」

オー

P「ゴール……ッ!」

みく「やっと着いたにゃー!」

菜々「ナナの体力も限界です」

雫「でもいい風が吹いてますねー」

奈緒「こっちから海を見渡せるな」

加蓮「きれーい」

凛「蒼いね」

ありす「結構高いところだったんですね」

桃華「あれだけ登ったのですから当然ですわ」

晶葉「……あっちにも小高い丘があるな」

志希「もーしーかーしーてー」

P「テヘペロッ☆」

幸子「しっかりしてください!」

ちひろ「一休みしたら戻りますか」

七海「また石段れすね……」

ライラ「あっちにも道がありますです」

P「お、じゃあ今度はそっちから行くかー」

桃華「ところでPちゃま」

P「ん?」

桃華「そろそろ背中の雪美さんを降ろしてもいいのでは?」

P「おお、そうだったな。ほら、降りろ」

雪美「ん……」

ありす「では次に私が」

桃華「わたくしですわ」

ライラ「ライラさんもー」

加蓮「まぁ落ち着いて。私にいい考えがあるの」

奈緒(碌でもない考えだ)

凛(絶対碌でもない考えだ)

加蓮「Pさんも雪美ちゃんずっと背負ってたから疲れちゃったと思うの。
   だからありすや桃華を背負ったら倒れちゃうかもしれないでしょ?」

ありす「まぁ確かにそうかもしれませんね」

加蓮「だからまず体重の重い私が乗ってみて確かめてみよう」

晶葉「何言ってんだ、君は」

みく「加蓮ちゃん、おクスリの時間にゃ」

志希「はーい、苦くないですよー」

加蓮「え、ちょ、やめモガモガ」

雫「みんなまだまだ元気ですねー」

P「うん、そうだな」

加蓮「よっし! じゃあ張り切って下山しよう!!」

幸子「あ、待ってください」ゴソゴソ

ちひろ「どうしたんですか?」

幸子「ふふーん。カワイイボクはこういう時のためにカメラを用意してたんですよ!
   さぁ、写真を撮りましょう!」

七海「海をバックに写真なんていいれすね~」

幸子「じゃあそこに並んでください。カメラはここに置けそうですね。
   えーっと、タイマーにするにはどうすれば……」

晶葉「どれ、貸してみろ。ふむ、ここをこうして……よし、並べ並べ」

ピピピ  カシャ

幸子「カワイク撮れてますよ! さすがボクのカワイイカメラと晶葉さんです!」

奈緒「携帯で取りたいけどタイマー付いてないんだよな」

幸子「デジタルカメラですしデータはあとでみなさんに送りますよ」

加蓮「よろしくおねがいしまぁす!!」

凛「加蓮、うるさい」

P「じゃあ下山するぞー」

ハーイ

P「田んぼだな」

ちひろ「あっちには畑もありますね」

桃華「家がほとんどありませんわ」

ありす「山を降りたらこんな田舎に出るなんて」

雫「地元を思い出しますー」

菜々「ナナのところも昔はここまでじゃないですけど田んぼがちらほら
   あったんですけどね。開発でどんどんなくなっちゃいましたよ。
   にじゅ……ンン! あの頃を思い出しますね」

ライラ「ウサミン星にも田んぼがありますです?」

菜々「あああああるに決まってるじゃないですか! そうじゃなきゃ
   お米が食べれないですよ!」

奈緒「しかし絵に書いた様な田舎だな。本当にこういうところあるんだな」

凛「そりゃああるでしょ」

P「お前らも目に焼き付けておけ。こんなド田舎そのうちなくなっちまうんだから」

雪美「なくなるの……?」

P「ここの場合、海も綺麗だしそう遠い未来でもないんじゃないかな。
 この世に不変なものなんてないさ」ドヤッ

晶葉「ドヤ顔しているが大したことは言ってないだろ」

みく「ここはバス亭? 小屋つきにゃ」

幸子「この時刻表ずいぶんと空白がありますね」

志希「乗り逃したら終わりだねー」

七海「あっちにあるのもしかしてお店れすか~?」

加蓮「うわー、駄菓子屋だ。初めて見た」

P「おおう、懐かしい世界だ」

桃華「なんですのこれ! なんですのこれ!」

菜々「これはですねー……」

奈緒「このガチャガチャはなんだ」

凛「光る時計が当たるんだって。奈緒やれば?」

奈緒「嫌だよ。中身のカプセル真っ黒だしとんでもないモノが出てくるんだろう」

幸子「ふふーん。ここはカワイイボクが引いてカワイイものを当てて見せましょう!」ガチャガチャ

【ぴにゃこら太ストラップ】

凛、奈緒「!?」

幸子「カワイイですね、これ!」

凛、奈緒「!!?」

ライラ「このアイスくださいです」

「120万円だよ」

ライラ「!? こ、高級アイスでございますか?」

P「騙されるなよ。120円だ。このラムネください」

「はいよ、100万円ね」

P「よっと」ポン

P「ゴクゴク……プハァ! やっぱり瓶のラムネだな」

ちひろ「なんだか子どもの頃を思い出しますよ」

P「ちひろさんにも子ども時代が?」

ちひろ「私を何だと思っているんですか」

P「そら、天使ですよ」

ちひろ「褒めても何も出ませんよー」

七海「プロデューサー、近くに川があるらしいれすよ~」

P「お、そうか。買い物したらそっちまで行ってみるか」

桃華「Pちゃま! Pちゃま! 練れば練るほど色が変わりますの!」

P「おうおう。桃華はこういうところ初めてっぽいもんな」

桃華「ピィー! ピィー!」

P「フエラムネを吹くのやめなさい」

晶葉「私もこういうのはあまり馴染み無いな」モグモグ

志希「あたしもー。あっちで飛び級してたからねー」モグモグ

晶葉、志希「」プクゥー パン

晶葉「なかなか難しいな」モグモグ

志希「顔について取れないー」ベタベタ

加蓮「二人がフーセンガムで遊んでる」モグモグ

みく「加蓮ちゃんも焼き肉さん太郎食べながら何言ってるにゃ。
   というかテンション戻ったね」

加蓮「うん、クスリ切れたっぽい。でもこれおいしいなぁ……」

P「ほら、いくぞー。このままじゃ店の物全部食い尽くしてしまいそうだ」

ハーイ モグモグ

P「それで川はえーっと、あっちだっけ?」

七海「はい、そうれす~。楽しみれす~」

P「どんな川なんだろうな。綺麗だといいんだけど」

七海「そうれすね~」

P「後、近くに食事できるところもあれば完璧なんだけどな」

七海「みんなお菓子でお腹いっぱいじゃないれすか~?」

P「まぁそういう奴らもいるだろうけど。七海はそんな食べてないだろ?」

七海「そうれすね~。食べてないれすよ~」

P「なら食事組と川で遊ぶ組で別れて行動すればいいかな」

七海「……川で釣った魚を食べる組はどうれすか」

P「それはダメ。お、あれだな」

七海「おお~、大きいれす~」

ちひろ「あっちには食事出来そうな場所もありますよ」

P「完璧だな」

加蓮「見て! 川だよ! 川!」

奈緒「そりゃ見えてるからわかってるよ」

凛「結構綺麗だね」

みく「奥までいかなければ割りと浅そうにゃ」

志希「くー! 冷たーい!」ジャブジャブ

晶葉「素足にサンダルだからってそのまま入らなくてもいいだろう」

雫「よーし、私も靴を抜いて入りますよー」ヌギヌギ

P「あー、こら。遊ぶ前に腹減った奴は上で飯食うぞ」

桃華「わたくしは少々お菓子を頂きすぎましたわ」

P「よくはないがそういう奴は川で遊んでろ。浅瀬だけだぞ。
 絶対あっちの深そうな場所に行くなよ。わかったな」

ハーイ

P「じゃあ飯食いに行くか」

ハーイ

P「おいしい蕎麦でしたね」

ちひろ「そうですね」

P「みんなも満足していたしよかったですよ」

ちひろ「川を眺めながら食べる蕎麦というのもなかなかオツなものですね」

P「その割には空いてましたね。おかげですぐに座れたわけですけど」

ちひろ「隠れた名店ってやつですよ」

P「なるほど」

ちひろ「……」

P「……本当にいいところだ。来て良かった」

ちひろ「最初は突然何言い始めたんだと思いましたが」

P「食事会くらいでもよかったのかもしれませんけどね。
 どうせなら記念にと。みんなで旅行なんてこれで最後でしょうし」

ちひろ「そうですね。これからみんな忙しくなるでしょうしね」

P「思い出作りなわけですよ」

ちひろ「これからもみんなと思い出を作ればいいじゃないですか」

P「そうもいかないでしょう」

ちひろ「私がかけあってみますよ」

P「ちひろさんのかけあうって脅しじゃ」

ちひろ「失礼ですね。これでも……」

P「まぁいいじゃあないですか。これで」

ちひろ「でも……」

P「別にもう二度と会えないわけじゃあないんです。
 会いたくなったらまた会えばいいんですよ」

ちひろ「……」

P「さて、そろそろ戻りますか。おーい、みんなー。帰るぞー」

ハーイ

P「……ん」

P「あれ、いつの間に寝てたんだ……?」

P「確か飯を食べて、風呂に入って、トランプでもするかーってなって……」

P「その後どうしたっけな……。しかし暗いな。部屋の電気、電気……」ムニュ

P「おやぁ……何かな、この感覚は……」

「んん……」

P(今のはみくの声だな。なんだか危険な感じがするぞ)

P(独り言もやめたほうがよさそうだ。だいぶ目が暗闇に慣れてきたな)

みく「スー……スー……」

P(やっぱりみくか。俺の右手はみくのあれを揉んだわけだな)

P(許せ、みく。事故だ)

P(さて、左側には誰がいるのかな)

凛「スゥ……」

P(凛か。気のせいかずいぶんと浴衣がはだけているな。まるで……)

P(……よし、大丈夫そうだ。多分。何もしていないはずだ。多分)

P(しかし酒なんて飲んだ記憶もないんだがなんでみんなに囲まれて寝ているんだ)

P(いや、こうなると答えは一つか。ああ、あいつの笑い声が聞こえて来るようだ)ニャーッハッハ

P(とりあえず脱出しよう。みくと凛を避けながらうまく立ち上がって……)

P(うお、足元に幸子がいるじゃねぇか。なんてところで寝てるんだ)

P(俺のいた場所に寝かせてあげるか。というか掛け布団かけろよ。みんな)

P(よっこいしょっと。起きるなよ……)

幸子「Pさん……」

P(!?)

幸子「お手……」

P(どんな夢を見てるのかな?)

P(これでよし、と。なんか幸子が二人に抱かれて寝ているように見えるがまぁいいか)

P(足元に気をつけながら……あ、鍵がいるな。どこにおいてあるんだろう)

P(うーむ、暗くて見えない。玄関の棚の上とかに置いてないのか)ゴソゴソ

P(あ、あった)

P(よし、じゃあこれで鍵を閉めて……いや、待てよ。閉めたらこの鍵はどうすんだ?)

P(このまま俺の部屋に持ち帰って……しかし明日出るときに困るかもしれない)

P(つまり中の人に閉めて貰うのが一番なんだがみんな寝ている)

P(せめてちひろさんがいれば鍵を閉めてもらうんだが……)

P(ここにいるかな。いなさそうだけど)

P(どうすればいいんだ……)

P(とりあえず鍵持って外に出よう)カチャ

P「ふぅ……」

P「明日朝になって鍵がなければ俺のところに来るだろうと信じて
 自分の部屋に戻ろう」

P「今何時なんだろう。携帯も手元にないし」

P「自分の部屋に置いてあるのか、それともあの部屋に置き去りになっているのか」

P「まぁいいや。明日考えよう」ガチャ

P「……」

P「……」ガチャガチャ

P「閉まってる……?」

P「部屋……間違えてないな。考えれば閉まっててもおかしくはないんだが……」

P「じゃあこの部屋の鍵はどこだ?」

P「……どうすればいいんだ」

カチャ

P「ん?」

菜々「ふあぁ……おかえりなさい……」ムニャムニャ

P「菜々! なんで俺の部屋に……」

菜々「とりあえず入ってください……。他の宿泊客に迷惑ですよ……」

P「あ、ああ。そうだな」バタン

菜々「あっちの部屋の鍵ですよね。それ。靴箱の上に置いといてください」

P「わかった……というか菜々があちらの部屋に行けばいいんじゃないか?」

菜々「やですよ。あっちの部屋ぎゅうぎゅうなんですもん」

P「しかしアイドルと同室になるわけには……」

菜々「スヤァ」

P「あ、もう寝てる」

P「布団はちゃんと二つ敷いてあるのか」

P「……ちょっと布団を離して寝よう」

P「ふあぁ……なんか雨音が聞こえるような……ぐぅ」

P「ん……朝か……」

菜々「おはようございます……」

P「ああ、おはよう……なんだ、その絶望に満ちた顔は」

菜々「せっかくプロデューサーさんと一緒に寝れるように一人で
   部屋で待っていたのに睡魔に負けて鍵を開けるだけで終わるなんて……」

P「おかげで助かったけどさ」

菜々「プロデューサーさんが喜んでくれて何よりです……」

P「雨降ってるのか。予報では明日から雨だったんだがな」

菜々「海にも山にもいけませんね。どうしましょうか」

P「とりあえずあっちの部屋の鍵を持って行くか」

菜々「ナナもお供しますよ」

P「そういれば俺の携帯知らない?」

菜々「多分あっちの部屋かと」

P「あっちか。やれやれ、無事だといいのだが。
 寝返りで壊されてたりしないかな」

菜々「携帯って思ったより脆いですからね」

P「おーい、起きてるかー」コンコン

幸子「おはようございます。いつの間に抜け出したのですか」

P「おう、幸子。おはよう。夜中にこっそりとな」

幸子「Pさんがボクを自分のいた位置に置いたせいで目が覚めたら
   みくさんに体を捕まれ、凛さんの顔が目の前にありましたよ」

P「抜け出してよかったわ」

幸子「そういえばPさんの携帯が落ちてましたよ」

P「それを探しに来たんだ」

幸子「はい、どうぞ」

P「なんか生暖かいな。これ」

幸子「加蓮さんが一晩中懐に入れていたんです」

P「何やってんの?」

幸子「部屋上がりますか?」

P「……いや、やめておこう。見てはいけないものを見てしまいそうだし」

幸子「賢明です。ところでPさん、せっかく起きたわけですしカワイイボクと
   一緒にお風呂なんてどうですか」

P「入らないよ」

幸子「ちぇっ」

P「ところで昨日の夜は何があったんだ?」

幸子「昨日の夜ですか。それは――」

幸子の回想

P「ぐぅぐぅ」

凛「プロデューサー寝たね」

志希「あたしのクスリにかかればイチコロだね!」

ありす「一体何をやったんですか。ちひろさんも突然寝ちゃいましたし」

晶葉「まぁ飲み物に睡眠薬でも盛っていたのだろう。なんでこんなことを……」

加蓮「こうすれば『Pさんが遊んでいる途中で寝て、部屋に戻せないから
   仕方なくここで一緒に寝る』ということが出来るじゃん?」

雫「Pさんぐらいなら部屋まで運べますよー」

ありす「そもそもクスリを盛るなんて犯罪では?」

凛「雫、ありす。せっかくのチャンスに水を差しちゃダメ」

奈緒「で、どうすんだ? 誰がこの部屋で寝るんだ?」

「…………」

雫「私はあちらにいきますねー。ちひろさん運ばないといけないですしー」

桃華「わたくしもあちらへ行きますわ」

七海「七海もそういうの興味ないのであちらにいきましゅ~」

ライラ「ライラさんもー」

晶葉「私もあっちに行くかな。なんだかうるさくなりそうだし」

幸子「これで六人ですね。ちょっと窮屈じゃないですか?」

桃華「雪美さんもあちらに行きますよ」

雪美「Pと……一緒がいい……」

桃華「ダメですわ。これからここで起きることはきっとよろしくない
   ことでしょうから」

七海「そうれすね~。なのでありすちゃんも一緒にいきましゅ~」

ありす「私は残ろうかと」

七海「連行~」

ありす「ちょ、私は、まだ……」ズルズル

加蓮「残りはPさん含めて八人。大丈夫かな」

凛「個人的に志希はあっちに行ってほしい」

志希「え、ひどくない?」

みく「どうしたの、志希ちゃん。言葉が変にゃ!」

志希「あたしはクスリ作った本人だからちゃんと見届けたいしー」

加蓮「本音は?」

志希「ハスハスしたい」

奈緒「正直だな、オイ……」

幸子「そういう奈緒さんも残るんですね」

奈緒「え、な、べ別にいいだろ!」

幸子「悪いとは言ってませんよ? ふふーん」

P「んー……」ゴロリ

菜々「ああ、プロデューサーさんの浴衣がはだけてますね。
   直さないと……あっ」チャリン

凛「どうしたの?」

菜々「……ナナもこの部屋から失礼しますねー」

加蓮「菜々さん」

菜々「なんですか?」

加蓮「今、何をPさんから取った?」

菜々「……ナンノコトカナ?」

加蓮「それってもしかして……」

菜々「失礼ッ!」ピューン

幸子「逃げました!」

志希「は、早い!」

加蓮「うーん……やっぱりそうだ。Pさんの部屋の鍵持ってったんだ」ゴソゴソ

凛「……その手があったね」

加蓮「これしかない……」

みく「Pチャンの携帯にゃ」

加蓮「うん」モゾモゾ

奈緒「おい、なんで懐に仕舞ってんだよ」

加蓮「ナンノコトカナ?」

幸子「菜々さんのマネはいいですから」

志希「それよりさー、みんながどこで寝るか考えようよー」

凛「まずプロデューサーを真ん中に配置して、その周りを囲む感じかな」

加蓮「それをどうやって決めるの?」

凛「私はここに寝るから」

幸子「なんで普通に隣を陣取るんですか」

凛「立案者だよ?」

志希「じゃああたしもクスリ作ったからー、上にー!」

みく「上って本当にPチャンに圧し掛かってるにゃ!」

P「ウーン」

志希「ハスハス~♪」クンクンクンクンクンクンクン

奈緒「おい、Pさんが寝苦しそうだぞ」

幸子「そりゃあ人が乗れば寝苦しくもなりそうですね」

P「あー、もういい。もう回想いい。お腹いっぱい」

幸子「そうですか。その後は色々あってな具合ですね」

菜々「イヤァ、タイヘンデシタネェ」

P「まぁこの様子なら何事もなかったようだしとりあえず
 よしとしよう。じゃあ俺は戻るわ」

幸子「ええ、ではまた朝食に」

P「さて、雨降りなわけだが」

志希「それよりかこの縄解いてよー」

ちひろ「額に『肉』って書きましょうか」

志希「反省してまーす」

晶葉「出来たぞ! 三日間絶対に消えないペンだ!」

ちひろ「では早速」

志希「やめてー! 何でもするからー!」

ちひろ「ん? 今なんでもするって言いましたね」

志希「あっ……」

P「志希が残念な結果になったこともわかったし今日のことを決めよう」

みく「雨だからお外はダメにゃ」

凛「この辺で屋内の遊び場とかはないみたいだね」

加蓮「そして今日のチェックアウトが一時間後」

ありす「ここから導き出される答えは?」

P「まっすぐ帰るべ」

エー!?

P「だって雨降ってるしさー。あんま遅くなる前に帰らないといけないしさー」

ちひろ「まぁそうですけど」

P「帰りに寄れる場所があるわけでもないし、仕方あるまい」

加蓮「えー、やだー、遊び足りないよー」

P「我侭言うんじゃあない。ほら、各自荷物まとめろ」

ハーイ

ちひろ「みんなを下ろすのは集合場所と同じでいいんですか?」

P「そうですね。それでいいかと」

凛「事務所」

P「ん?」

凛「事務所にしよう」

P「なんでまた」

凛「ダメ?」

P「ダメじゃないけど。行っても何もないぞ?」

凛「あるよ。私たちの足跡が」

P「鍵どこにしまったっけな」ゴソゴソ

ちひろ「私の出しましょうか?」

P「いえ、自分のが……あったあった」カチャン

P「いやー、綺麗になったね。何もないよ」

ライラ「アイスの入った冷蔵庫も」

雪美「お気に入りの……ソファーも……」

晶葉「私が占領していた机も」

加蓮「何にもないね」

P「まぁ什器も私物も全部片付けた後だしな。
 今月末までは一応うちの事務所だけど」

加蓮「今月末までか……」

ありす「……Pさん。やっぱり納得出来ません」

P「一度終わった話だろう」

ありす「Pさんが終わらせただけです。納得してない人のほうが
    多いんじゃないんですか?」

P「もちろんお前らがちゃんと納得した上でというのが一番いい。
 だが今回の件についてはお前らには納得してもらうしかない」

ありす「だから事務所をたたみ、Pさんがプロデューサーをやめて、
    私達がみんな違う事務所に移籍するのを納得しろと」

P「まぁ閑古鳥の鳴く様なアイドルどもなら十五人ぐらいプロデュース
 出来なくは無いけどな。お前達割と人気になったし。嬉しい誤算だ」

ありす「ならPさんも私達の移籍した事務所でプロデューサーを
    すればいいじゃないですか」

P「ところがどっこいプロデューサーの手は足りてるんだとさ。
 大手は違うねぇ……」

凛「嘘だね」

P「ほ?」

凛「プロデューサーは仮にも十五人をプロデュースして割りと人気なアイドル
  にまで仕立て上げたんでしょ? そんな有能な人を大手が放って置くの?」

P「俺以上のプロデューサーがいれば問題あるまい」

凛「いないよ。私にとってプロデューサーはPさんだけだから」

P「うーん」

P「……どう言ったものかな」

ザー……

P「ライブ前でもお前達そんな目つきしなかったのにな」

P「これはあくまで俺の持論だけどな。そうだな、凛。
 俺とお前の関係ってなんだ?」

凛「……アイドルとプロデューサー」

P「そうだ。それ以上でも以下でもない。それ以外であってはならないんだよ。
 だけどお前達の中にはその距離をさらに縮めようとしてる奴がいる」

P「それはあってはならないのだよ。お前達を応援しているファンに対する
 背徳行為だ。どこの事務所もそれは徹底している。表向きは、な」

P「人間である以上その間に何かが生じることもあるだろうが
 俺からすれば自分のアイドルと恋愛、さらには結婚するなんて正気の沙汰とは思えん」

P「距離感の維持が難しくなった。だから俺はプロデューサーをやめたんだよ」

P「納得は出来たか?」

サー……

P「お前達はまだアイドルとして輝ける。プロデューサーが変わったどうこうで
 足を止めてる場合じゃないんだよ」

P「お、外を見てみろ」

雪美「虹……」

P「ほら、拍手が止んだ」

P「世界がお前達の登場を待ち望んでいる」

P「行って来い。お前達のステージがそこにあるんだ」

それから一ヵ月後
櫻井邸の庭

桃華「もう一ヶ月経ちますのね」

雫「早いものですねー」

ありす「結構忙しかったのであっと言う間でしたね」

みく「で、Pチャン」

元P「ん? このケーキうまくね?」

桃華「おかわりもありますわよ」

元P「やったぜ」

みく「ケーキは置いといて。あんな凛チャンも真っ青なセリフを
   吐いておきながら本当の理由はこれだったってわけにゃ」

元P「おう、プロデューサーじゃなくて友人としてなら気兼ねなく会えるだろう?」

雫「それもそれでスキャンダルになりそうですけどねー」

ありす「むしろプロデューサーとアイドルの間柄よりも問題があるのでは」

元P「でもジレンマはなくなったじゃん? 一般人と結婚する分には問題ないべ?」

みく「Pチャンのモラルがクライシスにゃ」

元P「さすがに旅行なんかは行けないけどな。だから夏に行ったんだけど」

桃華「はぁ……。まぁPちゃまとこうしてお茶会が出来るなら悪くは無いのかも
   しれませんわね」

元P「そういうこった。あ、お茶おかわり」

みく「やれやれにゃ」

以上

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